特許文献1で提案されているリッド装置では、モータとプランジャーとが同軸に配置されている。そのため、設置スペースが大きくなって、レイアウトの自由度が低くなるとともに、組付け作業が煩雑であった。
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、小型のリッド装置を提供することを主目的とする。
本発明に係るリッド装置(20,70)のある側面は、回動可能に枢支されたリッド(10)を閉位置から開放開始位置に押し出し、前記リッドを前記閉位置で解除可能にロックし得るリッド装置であって、遊端側がリッドによって押し込まれるたびに前記リッドを前記開放開始位置に押し出す伸長状態と前記リッドの前記閉位置を許容する収縮状態との間の相互変位を交互に繰り返すプッシュリフタ(32)と、前記プッシュリフタの近傍に配置される駆動装置(46)と、前記閉位置において、前記リッドを係止する係止位置及び前記リッドを解放する解放位置の間を移動するロック部材(18,72)と、前記駆動装置の駆動力を前記ロック部材に伝達し、前記ロック部材を前記係止位置及び前記解放位置間で移動させる伝達機構(64,76)とを備え、前記プッシュリフタ及び前記駆動装置は、前記プッシュリフタの長手方向と前記駆動装置の長手方向とが平行になるように配置されたことを特徴とする。
この基本構成によれば、リッド装置は、ロック部材の可動方向の厚みを薄くすることができる。よって、リッド装置を小型化することができ、組付け作業性を向上させることができる。また、他の部材のレイアウトの自由度を高めることができる。
本発明の他の側面に係るリッド装置(20)は、上記構成において、前記駆動装置は、その長手方向に延在するモータ回転軸(48)を有するモータ(46)を有し、前記伝達機構(64)は、前記モータが駆動するピニオン(56)と、前記ロック部材に固定され前記ピニオンと噛み合って前記プッシュリフタの長手方向に直交する方向に往復運動するラック(58)とを有することを特徴とする。
この構成によれば、簡素な構成で、ロック部材を係止位置と解放位置との間で移動させることができる。
本発明の他の側面は、上記構成において、前記伝達機構は、前記モータ回転軸に同軸に取り付けられた駆動歯車(52)と、前記モータ回転軸と前記プッシュリフタとの間に配置されて前記駆動歯車と噛み合い前記駆動歯車よりも歯数の多い被動歯車(54)と、前記被動歯車と同軸に取り付けられて前記被動歯車よりも歯数の少ない前記ピニオンとによって構成される減速歯車列を有することを特徴とする。
この構成によれば、装置の小型化を阻害せずに、モータの回転を十分に減速させることができる。
本発明の他の側面は、上記構成において、前記ラックは、長孔(60)内に内歯として設けられたラック歯(62)を有し、前記ピニオンは、前記長孔内に突入していることを特徴とする。
この構成によれば、ラックを摺動可能に保持するための構造を簡素化でき、装置を小型化できる。
本発明の他の側面は、上記構成のいずれかにおいて、前記駆動装置の長手方向の長さは、前記プッシュリフタの突出時の長手方向長さよりも短く、前記ロック部材及び前記伝達機構は、前記駆動装置の長手方向の一方の端部に近接し、かつ前記プッシュリフタに対する前記駆動装置の遠位側の輪郭よりも前記プッシュリフタ側に配置されたことを特徴とする。
この構成によれば、ロック部材及び伝達機構が、プッシュリフタと駆動装置とを並列させた方向において、駆動装置の幅の範囲に収まるため、リッド装置をさらに小型化できる。
本発明の他の側面に係るリッド装置(70)は、上記基本構成において、前記駆動装置は、その長手方向に延在するモータ回転軸(48)を有するモータ(46)を有し、前記伝達機構(76)は、前記モータの前記モータ回転軸に同軸に取り付けられたウォーム(98)と、内歯(100)及び前記ウォームに噛み合う外歯(102)を有するウォームホイール(104)と、前記ロック部材に固定され、前記ウォームホイールの前記内歯に噛み合って前記プッシュリフタの長手方向に直交する方向に往復運動するラック(106)とを有することを特徴とする。
この構成によれば、低温化で潤滑油の粘性が増加しても作動可能な伝達機構を提供できるとともに、フューエルリッド装置の小型化が可能になる。
本発明の他の側面は、上記基本構成において、前記駆動装置は所定の区間往復動するアクチュエータからなり、前記伝達機構はカム又はリンクを有することを特徴とする。
この構成によれば、リッド装置の部品点数を削減することができる。
本発明の他の側面は、上記構成のいずれかにおいて、前記プッシュリフタ、前記駆動装置及び前記伝達機構を保持するハウジング(24)をさらに備えることを特徴とする。
この構成によれば、リッド装置をユニット化できるため、リッド装置の車両への取り付けが容易になる。
本発明の他の側面は、上記構成において、前記ハウジングは、前記プッシュリフタを保持する第1保持部(86)と前記駆動装置及び前記伝達機構を保持する第2保持部(88)との間に隔壁(90)を有することを特徴とする。
この構成によれば、第1保持部にプッシュリフタに対するプッシュ動作によって生じる空気の流れを逃がす空気孔を設けるとともに、駆動装置を保護するために第2保持部に水密性を持たせることが容易になる。また、第1保持部及び第2保持部をそれぞれ独立に設計できるため、それぞれに機能を付加することが容易になる。
本発明に係るフューエルリッド構造(2)のある側面は、車両本体の燃料供給用開口を開閉するように枢支されたフューエルリッドと、前記フューエルリッドを前記閉位置でロック可能な上記のいずれかの構成のリッド装置とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、リッド装置が小型化されたため、フューエルリッドにリッド装置を取り付けた状態で、そのユニットを車両に組付けることができ、組付け作業性を向上させることができる。
本発明によれば、リッド装置は、ロック部材の可動方向の厚みが薄くなるため、小型化でき、組付け作業性を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。説明に当たり、方向を示す用語は、図面に示すように装置を車両に取り付けたときの車両の方向に従う。図1は、第1実施形態に係るフューエルリッドアセンブリ2の斜視図である。以下、フューエルリッドアセンブリ2は、図示しない車両の後部の左側面に取り付けられるものについて説明するが、フューエルリッドアセンブリ2は、車両の後部や、右側面等の他の位置に取り付けられても良い。
フューエルリッドアセンブリ2の主な外形を形成する開口部ハウジング4は、底部に開口を有するカップ形状を呈し、広径側の車室外側端部にフランジ6が形成されている。開口部ハウジング4は、車体に取り付けられたとき、燃料タンクに連通した燃料給油口が車室内側端部から内部に突入するように構成されており、燃料給油口にはキャップが取り付けられる(図示せず)。開口部ハウジング4の車室外側端部に形成された燃料給油用開口8を開閉するフューエルリッド10は、金属又は樹脂を素材とし、略円板状を呈する部材であり、ヒンジ12を介して開口部ハウジング4と連結している。なお、フューエルリッド10の形状は、円板状に代えて、長方形等の他の平板形状であっても良い。ヒンジ12は、開口部ハウジング4の前側に配置され、その回転軸は上下方向を向いている。フューエルリッド10は、ヒンジ12の回転軸周りに回動することによって、燃料給油用開口8を開閉する。フューエルリッド10の表面は、燃料給油用開口8を閉鎖した閉位置において、車両のボデーの輪郭と連続する。また、フューエルリッド10の裏面側には、図示しないインナーリッドが設けられており、そのインナーリッドには、遊端側(ヒンジ12と結合した基端の反対側)近傍の裏面から突出した係合片14が設けられている。係合片14には、閉位置における前後方向に貫通した係合孔16が設けられている。係合孔16に突入して係合片14を係止するロック部材18(図2参照)を備えたフューエルリッド装置20は、ねじ22で開口部ハウジング4の外面に固定される。
図2及び図3は、それぞれ、フューエルリッド装置20の分解斜視図及びハウジング24の後ケース26を省略した斜視図である。図4及び図5は、ロック部材18を通り、かつ車室内外方向及び前後方向に平行な断面で切ったフューエルリッド装置20の断面図であり、それぞれ、フューエルリッド装置20の非ロック状態及びロック状態を示す。フューエルリッド装置20は、フューエルリッド10を開閉するための機能と、フューエルリッド10を閉位置で解除可能にロックするための機能とを有する。
フューエルリッド装置20の主要部材を収容するハウジング24は、樹脂を素材とする成形品であって、概ね箱形であり、後ケース26及び前ケース28によって構成される。後ケース26は、ねじ30によって前ケース28に固定される。ハウジング24は、開口部ハウジング4の外面に固定される。また、ハウジング24又は前ケース28は、その全体又は一部が開口部ハウジング4と一体に成形されても良い。また、ハウジング24は、車室外側が開口しており、開口部ハウジング4に取り付けられるとその開口がフランジ6等で蓋をされるように形成されても良い。
フューエルリッド10を開閉するためにハウジング24に収容されたプッシュリフタ32は、プッシュボタン34と、カム36と、ロッド38と、アウタースリーブ40と、スプリング42と、インナースリーブ44とを備えた、概ね棒状を呈する部材である。プッシュリフタ32は、プッシュボタン34が押されるたびに、伸長状態と収縮状態とが交互に繰り返される。プッシュリフタ32は、収縮状態では、閉位置にあるフューエルリッド10に干渉せず、フューエルリッド10が閉位置に保たれることを許容し、伸長状態では、フューエルリッド10がわずかに開いた状態でフューエルリッド10を支持する。プッシュリフタ32は、基端となるスプリング42の車室内側の端部がハウジング24に当接し、アウタースリーブ40がハウジング24に固定される。プッシュボタン34は、長手方向である車室内外方向に伸縮する可撓性を備える。プッシュボタン34の車室内側端部がハウジング24の車室外側端部に固定され、車室外側端部が伸長状態及び収縮状態のいずれにおいてもフランジ6に設けられた孔を貫通するように配置されてフューエルリッド10に当接可能となっている。なお、フューエルリッド10は、閉位置にあるときでもプッシュリフタ32のプッシュボタン34を押し込むことができるように、フランジ6との間に所定の隙間が残るように配置されている。プッシュリフタ32は、図示した構造を含め、それ自体は各種の物が公知であり、それらを使用することができる。
次に、フューエルリッド10を閉位置で解除可能にロックするための構成について説明する。
ロック部材18を駆動するための駆動装置である電動モータ46は、モータ回転軸48がプッシュリフタ32の長手方向に平行になるようにハウジング24内に配置される。モータ46は、モータ回転軸48方向が長手方向であり、その長さは、プッシュリフタ32の突出時の長手方向長さよりも短い。モータ回転軸48は、車室外側がモータハウジング50から露出している。モータハウジング50は、その車室内側の底面がプッシュリフタ32の基端と略同じ深さに位置するように、ハウジング24に固定される。モータハウジング50は、モータ回転軸48に直交する断面が偏平な形状を呈し、その長辺方向が上下方向に平行となるように配置される。
モータ回転軸48には、駆動歯車52が同軸に取り付けられている。駆動歯車52は、金属又は樹脂を素材とした平歯車である。駆動歯車52に噛み合う被動歯車54は、モータ回転軸48とプッシュリフタ32との間に配置される。被動歯車54は、POM等の樹脂又は金属を素材とする平歯車であり、径が駆動歯車52よりも大きく、歯数は駆動歯車52よりも多い。被動歯車54と同軸かつ被動歯車54の車室外方向に積層するように配置されたピニオン56は、径が被動歯車54よりも小さく、歯数は被動歯車54よりも少ない。ピニオン56は、POM等の樹脂又は金属を素材とし、被動歯車54と一体成形されてもよい。被動歯車54及びピニオン56は、ハウジング24に回転自在に支持される。駆動歯車52、被動歯車54及びピニオン56は、減速平歯車列を構成する。
ピニオン56と噛み合うラック58は、前後方向に延在する部材であって、車室内外方向に貫通して前後方向に長い長孔60を有し、長孔60の前後方向に延びる内側面の一方にピニオン56と噛み合うラック歯62を有する。ラック58は、POM等の樹脂又は金属を素材とする。ラック58は、モータ46の車室外側方向かつプッシュリフタ32の上方に配置され、前後方向に摺動可能にハウジング24に支持されている。ピニオン56が長孔60内に突入しているため、ラック58の前後方向の摺動可能範囲は、ピニオン56が長孔60の前後の内縁に当接する位置で定まる。
ラック58の前端から前方に延出するロック部材18は、POM等の樹脂又は金属を素材とする棒状の部材である。ロック部材18は、ラック58と一体成形されてもよい。モータ46の駆動力が、駆動歯車52、被動歯車54、ピニオン56及びラック58から構成された伝達機構64を介して、ロック部材18に伝達され、ロック部材18は前後に移動する。ロック部材18は、ラック58が後退したときはハウジング24内に没入しており、ラック58が前進したときはハウジング24から突出するとともに、その前端が開口部ハウジング4に設けられた開口を通過してフューエルリッド10の係合孔16に突入する。
なお、駆動装置として、モータ46に代えてソレノイドバルブ等の所定の区間往復動するような他のアクチュエータを用いても良く、伝達機構としてカム又はリンクを用いても良い。また、ロック手段として、ロック部材18のような直線運動をする棒状部材に代えて、ピニオン56に噛み合う内歯を有する円弧状部材を用いても良く、また、減速された歯車の回転軸回りに回動する円弧状の部材を用いてもよい。
次に、フューエルリッド10の開閉及びロックの作用について説明する。
車両の走行中は、フューエルリッド10は閉位置にあり、図5に示すように、ロック部材18は係合孔16を貫通した係止位置にある。ロック部材18は、ラック58を介してハウジング24に支持されているため、車室内外方向には動かない。そのため、フューエルリッド10を押し引きしても、係合孔16がロック部材18に係止されるため、フューエルリッド10は閉位置でロックされている。ロック部材18と係合孔16との係合の遊びの範囲は、フューエルリッド10が車室内側に押し込まれてもプッシュリフタ32を収縮状態から伸長状態に変位させない程度であることが望ましい。
モータ46は車両のスイッチ類や電子制御ユニット(ECU)、例えばドアロックシステムと連動しており、車両の停車中にドアロックが解除されると、モータ46が作動し、モータ回転軸48が回転する。モータ46の駆動力は、駆動歯車52、被動歯車54及びピニオン56を介して減速しながら伝達され、ラック58及びラック58に固定されたロック部材18を後退させる。すると、ロック部材18は、フューエルリッド10の係合孔16から離脱し、ラック58の後端が後ケース26に係止されるまで又はピニオン56がラック58の長孔60の前側の内縁に当接するまで後退する。このとき、ロック部材18は、図4に示すように、ハウジング24に没入した解放位置まで後退する。
ロック部材18が解放位置にあるとき、フューエルリッド10のインナーリッドに形成された係合孔16は、ロック部材18から解放され、フューエルリッド10のロックは解除されている。ロックが解除されたフューエルリッド10は、磁力、ばねの付勢力又はラッチ機構等により、所定の値以上の力が加わるまで閉位置に維持される。このとき、使用者が、閉位置にあるフューエルリッド10を車室内側に押し込むと、プッシュボタン34が車室内側に押しこまれる。すると、プッシュボタン34が伸長状態に変形してフューエルリッド10を車室外側に押し返す。このとき、プッシュボタン34は、フューエルリッド10を車両のボデーの輪郭よりも外側に押し出し、フューエルリッド10がわずかに開いた開放開始位置に配置させる。この開放開始位置では、フューエルリッド10の遊端側を使用者が把持することができる程度にフューエルリッド10が開いている。使用者は、フューエルリッド10を開放開始位置から手で動かすことによって、閉位置に対して90°以上回動させた全開位置までフューエルリッド10を開くことができる。全開位置まで開かれたフューエルリッド10は、重力、ばねの付勢力又はラッチ機構等により、所定の値以上の力が加わるまで全開位置に維持される。全開位置では、燃料給油口からキャップを外して、車両に給油することができる。
給油作業を終えると、使用者は、キャップを燃料給油口に取り付け、フューエルリッド10を開放開始位置まで戻し、さらにフューエルリッド10を車室内側に向けて押し込む。すると、フューエルリッド10がプッシュボタン34を車室内側に押し込み、プッシュリフタ32は収縮状態となり、フューエルリッド10は閉位置に配置される。
その後、車両のドアがロックされると、モータ回転軸48が逆回転し、ラック58は、その前端が前ケース28に係止されるまで、又はピニオン56がラック58の長孔60の後側の内縁に当接するまで前進する。そのため、ロック部材18が、ハウジング24から突出し、係合孔16に突入した係止位置に移動し、フューエルリッド10をロックする。
フューエルリッド装置20は、プッシュリフタ32の長手方向とモータ46の長手方向である回転軸方向とが平行であるため、前後方向及び上下方向の寸法を小さくすることができる。さらに、ロック部材18を動かすための構造は、駆動歯車52、被動歯車54及びピニオン56からなる減速平歯車列、並びにピニオン56に噛み合うラック58によって構成される小型の構造であるため、フューエルリッド装置20の小型化を阻害しない。本実施形態では、このようにフューエルリッド装置20を小型化することによって、フューエルリッド10とフューエルリッド装置20とは、互いに組み合わされた状態、すなわちフューエルリッドアセンブリ2として、車両に組付けることができるため、組付け作業性を向上させることができ、製造コストを削減することができる。また、フューエルリッド装置20は、ワイヤ式の装置に比べても、車両への組付け工数が少なく部品点数が少ない。
次に図6〜8を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。説明に当たって、第1の実施形態と共通する構成は、その説明を省略し同一の符号を付す。図6は、フューエルリッド装置70の分解斜視図である。図7は、前側(紙面上側)の部材の一部を省略したフューエルリッド装置70の斜視図であって、(a)ロック部材72が解放位置にある状態、及び(b)ロック部材72が係止位置にある状態を示す。図8は、ロック部材72の軸線を通り、前後方向及び車室内外方向に平行な断面におけるロック部材72周辺の断面図であり、(a)ロック部材72が解放位置にある状態、(b)ロック部材72が係止位置にある状態、及び(c)ロック部材72を手動で解放位置に移動させた状態を示す。
フューエルリッド装置70は、第1実施形態と同様に、ロック部材72がフューエルリッド10の係合孔16に突入して係合片14を係止できるように、開口部ハウジング4の外面に固定される(図1参照)。フューエルリッド装置70は、ハウジング74と、プッシュリフタ32と、駆動装置としてのモータ46と、モータ46の駆動力をロック部材72に伝達する伝達機構76と、手動でロック部材72を係止位置から解放位置に移動させるための解除レバー78とを含む。
フューエルリッド装置70の主要部材を収容するハウジング74は、樹脂を素材とする成形品であって、前面が開口された箱型の本体80と、本体80の前面の開口を覆う蓋82とによって構成される。本体80及び蓋82は、互いに対となった係合部84を複数有し、対応する係合部84同士を係合させることによって、蓋82が本体80に取り付けられる。ハウジング74には、プッシュリフタ32を保持する第1保持部86と、モータ46及び伝達機構76を保持する第2保持部88とが設けられている。第1保持部86と第2保持部88との間は、本体80に形成された隔壁90によって分離されている。プッシュリフタ32は、ハウジング74の車室外側に設けられた開口からプッシュボタン34が突出するように、第1保持部86に保持されている。プッシュボタン34に対するプッシュ操作によって生じる空気の流れを許容できるように第1保持部86には外部と連通する空気孔が設けられていることが好ましい。ハウジング74の車室外側に設けられた開口とプッシュボタン34との間には防塵用のシール部材が設置されていることが好ましい。一方、モータ46を保持する第2保持部88には、本体80と蓋82との間に防水用のシール部材が設置されることが好ましい。第1保持部86と第2保持部88との間は、本体80に形成された隔壁90によって分離されているため、第1保持部86に空気孔を設け、かつ第2保持部88を水密にすることが可能である。さらに、第1保持部86及び第2保持部88は、隔壁90で分離されているため、互いに独立して設計変更することができ、新たな機能を付加することが容易になっている。例えば、プッシュリフタ32は、スプリング42を有するが、その付勢力によるハウジング74からの飛び出しを防止するための構造を、第2保持部88に影響を与えないように第1保持部86に設けることができる。本体80の上面には、電源(図示せず)と電気的に接続するためのコネクタ部92が設けられている。蓋82には、ロック部材72が出没するための貫通孔94が設けられている。貫通孔94とフューエルリッド10の係合孔16とが整合するように、蓋82側を開口部ハウジング4に向けて、フューエルリッド装置70は開口部ハウジング4に取り付けられる。
プッシュリフタ32及びモータ46の構造及び機能は第1実施形態と同様であって、プッシュリフタ32及びモータ46は、モータ回転軸48がプッシュリフタ32の長手方向である車室内外方向に平行になるようにハウジング74内に配置される。モータ46は、コネクタ部92に突入した接続片96によって、電源と電気的に接続している。
伝達機構76は、モータ回転軸48の回転運動をロック部材72の直線的往復運動に変換するように、モータ46の駆動力をロック部材72に伝える。伝達機構76は、モータ46のモータ回転軸48に同軸に取り付けられたウォーム98と、内歯100及びウォーム98に噛み合う外歯102を有するウォームホイール104と、ロック部材72に固定され、ウォームホイール104の内歯100に噛み合って前後方向に往復運動するラック106とを有する。
金属又は樹脂を素材とするウォーム98は、ウォームホイール104の外歯102と噛み合っている。金属又は樹脂を素材とするウォームホイール104には、その回転軸方向に貫通する貫通孔108が形成されており、その内周面に、内歯100が形成されている。ウォーム98は、モータ回転軸48の回転を減速させてウォームホイール104に伝えるとともに、回転の方向を車室内外方向を軸とした回転から前後方向を軸とした回転に変換する。
金属又は樹脂を素材とするラック106は、ウォームホイール104の内歯100と噛み合うラック歯110を有する。ラック106は、概ね、直方体形状に対して、車室内外方向を向いた2つの面にラック歯110が形成され、上面に前後方向に延在する溝112が形成され、後面に溝112と連通する貫通孔114が形成された形状を呈する。また、ラック106の前端からはロック部材72が延出しており、ラック106及びロック部材72は、一体成形されてもよい。ウォームホイール104の回転運動は、ラック106及びロック部材72の前後方向の直線運動に変換される。
ウォーム98は、第1実施形態のピニオン56に比べて径が大きく、大きなトルク値でウォームホイール104を動かす。そのため、低温時に潤滑油の粘性が増加しても、伝達機構76は動作不良を起こさず、第2実施形態のフューエルリッド装置70は寒冷地での使用に適する。さらに、ラック106をウォームホイール104の中に配置したため、フューエルリッド装置70の省スペース化も実現している。また、ウォームホイール104を収容するため、ハウジング74は、車室外側で上方に膨らんで凸部116を形成しているが、コネクタ部92が凸部116の近傍の、凸部116よりも車室内側から上方に延出するように設けられているため、ハウジング74を直方体で囲ったときに無駄なスペースが少ないという省スペース型の形状となる。このように、フューエルリッド装置70の小型化が可能であるため、フューエルリッド装置70を開口部ハウジング4に取り付けた状態で、当該アセンブリを車体に組み付けることができ、作業性が向上する。
一体成形されたロック部材72及びラック106は、ハウジング74に取り付けられた第1支持部材118及び第2支持部材120によって、前後に摺動可能に支持される。ウォームホイール104は、ラック106に螺合することによって支持されている。
第1支持部材118は、ハウジング74の蓋82の裏面に取り付けられる略円板形状の基部122と、基部122から後方に延出する一対の脚部124とを備える。基部122の中心には、蓋82の貫通孔94と整合する貫通孔126が形成されており、貫通孔126は、ロック部材72を摺動可能に支持している。円板状の基部122の周縁には凹部128が設けられており、凹部128が蓋82の裏面に係合することにより、第1支持部材118の前後方向を軸とした回転が防止される。一対の脚部124は、各々長方形形状の平板からなり、貫通孔126を挟んで上下方向に対向し、その遊端側は、ラック106の上下の面に摺動可能に当接している。一対の脚部124の遊端側が、挟むようにラック106に当接しているため、ウォームホイール104が回転してもラック106は回転しない。基部122と蓋82との間には、第2保持部88の水密性を確保するため、ロック部材72を摺動可能に嵌合するOリング130が配置されている。
第2支持部材120は、前後方向に延在する円柱部132と、円柱部132の前端から上方に突出する平板状のストッパ134とを備える。円柱部132は、通常はモータ46の駆動力によっては動かないように、後端側においてハウジング74の本体80の後面(底面)に形成された貫通孔(図示せず)に嵌合している。この貫通孔は、蓋82の貫通孔94と略同軸である。さらに、円柱部132の後端側は、ハウジング74の外側において、第2保持部88の水密性を確保するためのOリング136に嵌合し、かつ金属を素材とする略長方形形状の薄板からなるカバー138の貫通孔140に挿通されている。Oリング136がハウジング74とカバー138とによって挟持されるように、カバー138は、ハウジング74に取り付けられている。円柱部132の後端側のカバー138よりも後方に突出した部分には、周方向に沿って溝142が設けられている。円柱部132は、ラック106の貫通孔114に挿通されて、前端側がラック106の溝112に摺動可能に当接することにより、ラック106を支持している。ストッパ134は、ロック部材72が係止位置にあるときに、ラック106の貫通孔114の一部を画定している後壁144の前面を係止し、ラック106及びロック部材72の前方への移動を規制する(図8(b)参照)。なお、ロック部材72が解放位置にあるときは、ストッパ134がラック106の溝112の前端面を係止し、又は、ハウジング74の本体80の底壁(後壁)がラック106の後壁144の後面を係止することにより、ラック106及びロック部材72の後方への移動が規制される(図8(a)参照)。したがって、モータ46の駆動により、ロック部材72は、係止位置と解放位置との間を移動する。
モータ46の故障や断線等により、ロック部材72が係止位置から解放位置に向かって移動できなくなった非常時に、解除レバー78は、手動でロック部材72を解放位置に移動させるために使用される。ラック106、ウォームホイール104及びウォーム98は、ラック106に外力が加わったときに逆駆動できるように、これらの歯の進み角は摩擦角よりも大きく設定されている。解除レバー78は、樹脂を素材とする成形品であって、前後方向に延在する紐部146と、後端側に形成された環状の把持部148とを有する。紐部146の前端側は、第2支持部材120の溝142に係合して第2支持部材120に固定されている。環状の把持部148は、ユーザーの指を差し入れることができる程度の大きさを有する。
ユーザーが解除レバー78を後方に引っ張ると、第2支持部材120が後方に移動する。この時、第2支持部材120のストッパ134が、ラック106の後壁144を係止しているため、ラック106は、ウォームホイール104及びウォーム98を回転させながら後方に移動する。したがって、ロック部材72は、フューエルリッド10の係合孔16に挿通した係止位置から、係合孔16から離脱した解放位置に移動し、フューエルリッド10のロックが解除される。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、第1実施形態において、ハウジング24は、2色成形により、ラック58を摺動可能に支持する部位を軟質材としてシール性を持たせても良い。また、第1実施形態において、モータ46として高トルクかつ低回転のものを用いることにより、又は小さいモジュールの設定をすることにより、減速歯車列を省略しても良い。また、第2実施形態において、第1保持部と第2保持部とを互いに組み付け可能な別体のハウジングによって形成してもよい。実施形態に係るフューエルリッド装置は、フューエルリッド以外の蓋をロックするリッド装置として使用することもできる。
本発明に係るリッド装置(20,70)のある側面は、回動可能に枢支されたリッド(10)を閉位置から開放開始位置に押し出し、前記リッドを前記閉位置で解除可能にロックし得るリッド装置であって、遊端側がリッドによって押し込まれるたびに前記リッドを前記開放開始位置に押し出す伸長状態と前記リッドの前記閉位置を許容する収縮状態との間の相互変位を交互に繰り返すプッシュリフタ(32)と、前記プッシュリフタの近傍に配置される駆動装置(46)と、前記閉位置において、前記リッドを係止する係止位置及び前記リッドを解放する解放位置の間を移動するロック部材(18,72)と、前記駆動装置の駆動力を前記ロック部材に伝達し、前記ロック部材を前記係止位置及び前記解放位置間で移動させる伝達機構(64,76)とを備え、前記ロック部材及び前記伝達機構は、前記プッシュリフタよりも前記駆動装置側に配置され、かつ、前記プッシュリフタに対して遠位側となる前記駆動装置の端部を通る、前記駆動装置の長手方向の延長線よりも前記プッシュリフタ側に配置されたことを特徴とする。前記ロック部材は、前記プッシュリフタの長手方向及び前記プッシュリフタに対する近接離間方向に対して直交する方向に変位することが好ましい。