次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下では、図面の各図において同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略することがある。また、同一の符号に対応する部材等の名称が、簡略的に言い換えられたり、上位概念又は下位概念の名称で言い換えられたりすることがある。
本発明は、予め定められた圃場内で1台又は複数台の作業車両を走行させて、圃場内における農作業の全部又は一部を実行させるときに、作業車両を自律走行させるための走行経路を生成する自律走行経路生成システムに関する。本実施形態では作業車両としてトラクタを例に説明するが、作業車両としては、トラクタの他、田植機、コンバイン、土木・建築作業装置、除雪車等、乗用型作業機に加え、歩行型作業機も含まれる。本明細書において自律走行とは、トラクタが備える走行に関する構成がトラクタの制御部(ECU)により制御されて、予め定められた経路に沿ってトラクタが走行することを意味し、自律作業とは、トラクタが備える作業に関する構成が前記制御部により制御されて、予め定められた経路に沿ってトラクタが作業を行うことを意味する。これに対して、手動走行・手動作業とは、トラクタが備える各構成がオペレータにより操作され、走行・作業が行われることを意味する。
以下の説明では、自律走行・自律作業されるトラクタを「無人(の)トラクタ」又は「ロボットトラクタ」と称することがあり、手動走行・手動作業されるトラクタを「有人(の)トラクタ」と称することがある。圃場内において農作業の一部が無人トラクタにより実行される場合、残りの農作業は有人トラクタにより実行される。単一の圃場における農作業を無人トラクタ及び有人トラクタで実行することを、農作業の協調作業、追従作業、随伴作業等と称することがある。無人トラクタと有人トラクタは、互いに異なる構成とすることもでき、共通の構成とすることもできる。無人トラクタと有人トラクタの構成が共通である場合、無人トラクタであってもオペレータが搭乗(乗車)して操作することが可能であり(即ち有人トラクタとして使用することができ)、或いは有人トラクタであってもオペレータが降車して自律走行・自律作業させることが可能である(即ち、無人トラクタとして使用することができる)。なお、農作業の協調作業としては、「単一圃場における農作業を無人車両及び有人車両で実行すること」に加え、「隣接する圃場等の異なる圃場における農作業を同時期に無人車両及び有人車両で実行すること」が含まれてもよい。
図1は、圃場90において生成された自律走行経路93に沿ってロボットトラクタ1が自律走行・自律作業を行う様子を示す概念図である。図2は、本発明の一実施形態に係る自律走行経路生成システム99が生成した自律走行経路93に沿って走行するロボットトラクタ1の全体的な構成を示す側面図である。図3は、ロボットトラクタ1の平面図である。図4は、ロボットトラクタ1及び無線通信端末46の電気的な構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る自律走行経路生成システム99は、図1に示すように圃場90においてロボットトラクタ1が自律走行・自律作業をするための自律走行経路93を生成するものであって、図2等に示す無線通信端末46に備えられている。ロボットトラクタ1は、図4に示すように、当該ロボットトラクタ1の走行及び作業を制御する制御部4を備えており、前記無線通信端末46は、当該制御部4と無線通信することにより、ロボットトラクタ1に対して自律走行・自律作業に関する所定の信号を出力することができる。無線通信端末46が制御部4に出力する信号としては、自律走行・自律作業の経路に関する信号や自律走行・自律作業の開始信号、停止信号、終了信号等が考えられるが、これらに限定されない。
初めに、ロボットトラクタ(以下、単に「トラクタ」と称する場合がある。)1について、主として図2及び図3を参照して説明する。
トラクタ1は、圃場90を自律走行することが可能な走行機体(車体部)2を備える。走行機体2には、図2及び図3に示す作業機3が着脱可能に取り付けられている。この作業機3としては、例えば、耕耘機(管理機)、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機があり、これらの中から必要に応じて所望の作業機3を選択して走行機体2に装着することができる。走行機体2は、装着された作業機3の高さ及び姿勢を変更可能に構成されている。
トラクタ1の構成について、図2及び図3を参照して説明する。トラクタ1の走行機体2は、図2に示すように、その前部が左右1対の前輪7,7で支持され、その後部が左右1対の後輪8,8で支持されている。
走行機体2の前部にはボンネット9が配置されている。このボンネット9内にはトラクタ1の駆動源であるエンジン10や燃料タンク(図略)等が収容されている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成してもよい。また、駆動源としてエンジン10に加えて、又は、代えて電気モータを採用してもよい。
ボンネット9の後方には、オペレータが搭乗するためのキャビン11が配置されている。このキャビン11の内部には、オペレータが操向操作するためのステアリングハンドル12と、オペレータが着座可能な座席13と、各種の操作を行うための様々な操作装置と、が主として設けられている。ただし、作業車両は、キャビン11付きのものに限るものではなく、キャビン11を備えないものであってもよい。
上記の操作装置としては、図3に示すモニタ装置14、スロットルレバー15、主変速レバー27、複数の油圧操作レバー16、PTOスイッチ17、PTO変速レバー18、副変速レバー19、及び作業機昇降スイッチ28等を例として挙げることができる。これらの操作装置は、座席13の近傍、又はステアリングハンドル12の近傍に配置されている。
モニタ装置14は、トラクタ1の様々な情報を表示可能に構成されている。スロットルレバー15は、エンジン10の出力回転数を設定するための操作具である。主変速レバー27は、トラクタ1の走行速度を無段階で変更するための操作具である。油圧操作レバー16は、図略の油圧外部取出バルブを切換操作するための操作具である。PTOスイッチ17は、トランスミッション22の後端から突出した図略のPTO軸(動力取出軸)への動力の伝達/遮断を切換操作するための操作具である。即ち、PTOスイッチ17がON状態であるときPTO軸に動力が伝達されてPTO軸が回転し、作業機3が駆動される一方、PTOスイッチ17がOFF状態であるときPTO軸への動力が遮断されてPTO軸が回転せず、作業機3が停止される。PTO変速レバー18は、作業機3に入力される動力の変更操作を行うものであり、具体的にはPTO軸の回転速度の変速操作を行うための操作具である。副変速レバー19は、トランスミッション22内の走行副変速ギア機構の変速比を切り換えるための操作具である。作業機昇降スイッチ28は、走行機体2に装着された作業機3の高さを所定範囲内で昇降操作するための操作具である。
図2に示すように、走行機体2の下部には、トラクタ1のシャーシ20が設けられている。当該シャーシ20は、機体フレーム21、トランスミッション22、フロントアクスル23、及びリアアクスル24等から構成されている。
機体フレーム21は、トラクタ1の前部における支持部材であって、直接、又は防振部材等を介してエンジン10を支持している。トランスミッション22は、エンジン10からの動力を変化させてフロントアクスル23及びリアアクスル24に伝達する。フロントアクスル23は、トランスミッション22から入力された動力を前輪7に伝達するように構成されている。リアアクスル24は、トランスミッション22から入力された動力を後輪8に伝達するように構成されている。
図4に示すように、トラクタ1は、走行機体2の動作(前進、後進、停止及び旋回等)及び作業機3の動作(昇降、駆動及び停止等)を制御するための制御部4を備える。制御部4は、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O等を備えて構成されており、CPUは、各種プログラム等をROMから読み出して実行することができる。制御部4には、トラクタ1が備える各構成(例えば、エンジン10等)を制御するためのコントローラ、及び、他の無線通信機器と無線通信可能な無線通信部40等がそれぞれ電気的に接続されている。
上記のコントローラとして、トラクタ1は少なくとも、エンジンコントローラ61、車速コントローラ62、操向コントローラ63、及び昇降コントローラ64を備える。それぞれのコントローラは、制御部4からの電気信号に応じて、トラクタ1の各構成を制御することができる。
エンジンコントローラ61は、エンジン10の回転数を制御するものである。具体的には、エンジン10には、当該エンジン10の回転数を変更させる図略のアクチュエータを備えたガバナ装置41が設けられている。エンジンコントローラ61は、ガバナ装置41を制御することで、エンジン10の回転数を制御することができる。
車速コントローラ62は、トラクタ1の車速を制御するものである。具体的には、トランスミッション22には、例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置である変速装置42が設けられている。車速コントローラ62は、変速装置42の斜板の角度を図略のアクチュエータによって変更することで、トランスミッション22の変速比を変更し、所望の車速を実現することができる。
操向コントローラ63は、ステアリングハンドル12の回動角度を制御するものである。具体的には、ステアリングハンドル12の回転軸(ステアリングシャフト)の中途部には、操向アクチュエータ43が設けられている。この構成で、予め定められた経路をトラクタ1が(無人トラクタとして)走行する場合、制御部4は、当該経路に沿ってトラクタ1が走行するようにステアリングハンドル12の適切な回動角度を計算し、得られた回動角度となるように操向コントローラ63に制御信号を出力する。操向コントローラ63は、制御部4から入力された制御信号に基づいて操向アクチュエータ43を駆動し、ステアリングハンドル12の回動角度を制御する。
昇降コントローラ64は、作業機3の昇降を制御するものである。具体的には、トラクタ1は、作業機3を走行機体2に連結している3点リンク機構の近傍に、油圧シリンダ等からなる昇降アクチュエータ44を備えている。この構成で、昇降コントローラ64は、制御部4から入力された制御信号に基づいて昇降アクチュエータ44を駆動して作業機3を適宜に昇降動作させることにより、所望の高さで作業機3により農作業を行うことができる。この制御により、作業機3を、退避高さ(農作業を行わない高さ)及び作業高さ(農作業を行う高さ)等の所望の高さで支持することができる。
なお、上述したエンジンコントローラ61等の複数のコントローラは、制御部4から入力される信号に基づいてエンジン10等の各部を制御している。従って、制御部4が実質的に各部を制御していると把握することができる。
上述のような制御部4を備えるトラクタ1は、オペレータがキャビン11内に搭乗して各種操作をすることにより、当該制御部4によりトラクタ1の各部(走行機体2、作業機3等)を制御して、圃場90内を走行しながら農作業を行うことができるように構成されている。加えて、本実施形態のトラクタ1は、オペレータがトラクタ1に搭乗しなくても、無線通信端末46により出力される所定の制御信号に基づいて自律走行及び自律作業させることが可能となっている。
具体的には、図4等に示すように、トラクタ1は、自律走行・自律作業を可能とするための各種の構成を備えている。例えば、トラクタ1は、測位システムに基づいて自ら(走行機体2)の位置情報を取得するために必要な測位用アンテナ6等の構成を備えている。このような構成により、トラクタ1は、測位システムに基づいて自らの位置情報を取得して、圃場90を自律走行することが可能となっている。
次に、自律走行を可能とするためにトラクタ1が備える構成について詳細に説明する。具体的には、本実施形態のトラクタ1は、図2及び図4に示すように、測位用アンテナ6、無線通信用アンテナ48、及び記憶部55等を備える。また、これらに加えて、トラクタ1には、走行機体2の姿勢(ロール角、ピッチ角、ヨー角)を特定することが可能な慣性計測ユニット(IMU)が備えられていてもよい。
測位用アンテナ6は、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。図2に示すように、測位用アンテナ6は、トラクタ1のキャビン11のルーフ29の上面に配置されている。測位用アンテナ6で受信された測位信号は、図4に示す位置情報算出部49に入力される。位置情報算出部49は、トラクタ1の走行機体2(厳密には、測位用アンテナ6)の位置情報を、例えば緯度・経度情報として算出する。当該位置情報算出部49で検出された位置情報は、制御部4に入力されて、自律走行に利用される。
なお、本実施形態ではGNSS−RTK法を利用した高精度の衛星測位システムが用いられているが、これに限られるものではなく、高精度の位置座標が得られる限りにおいて他の測位システムを用いてもよい。例えば、相対測位方式(DGPS)、又は静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS)を使用することが考えられる。
無線通信用アンテナ48は、オペレータが操作する無線通信端末46からの信号を受信したり、無線通信端末46への信号を送信したりするものである。図1に示すように、無線通信用アンテナ48は、トラクタ1のキャビン11が備えるルーフ29の上面に配置されている。無線通信用アンテナ48で受信した無線通信端末46からの信号は、図4に示す無線通信部40で信号処理された後、制御部4に入力される。また、制御部4等から無線通信端末46に送信する信号は、無線通信部40で信号処理された後、無線通信用アンテナ48から送信されて無線通信端末46で受信される。
記憶部55は、トラクタ1を自律走行させる経路である走行経路(パス)を記憶したり、走行中のトラクタ1(厳密には、測位用アンテナ6)の位置の推移(走行軌跡)を記憶したりすることができる。その他にも、記憶部55は、トラクタ1を自律走行・自律作業させるために必要な様々な情報を記憶している。
無線通信端末46は、図2に示すように、タブレット型のパーソナルコンピュータとして構成されている。オペレータは、無線通信端末46のディスプレイ37に表示された情報を参照して確認することができる。また、オペレータは、ディスプレイ37の近傍に配置されたハードウェアキー38、及びディスプレイ37を覆うように配置された図示しないタッチパネル等を操作して、トラクタ1の制御部4に、トラクタ1を制御するための制御信号(例えば、緊急停止信号等)を送信することができる。なお、無線通信端末46はタブレット型のパーソナルコンピュータに限るものではなく、これに代えて、例えばノート型のパーソナルコンピュータで構成することも可能である。あるいは、前述の協調作業を行うために有人のトラクタを無人のトラクタ1に付随して走行させる場合、有人側のトラクタに搭載されるモニタ装置を無線通信端末とすることもできる。
このように構成されたトラクタ1は、無線通信端末46を用いるオペレータの指示に基づいて、圃場上の経路に沿って自律的に走行しつつ、作業機3による農作業を行うことができる。
具体的には、オペレータは、無線通信端末46を用いて各種設定を行うことにより、図1等に示す自律走行経路93を形成することができる。この自律走行経路93は、農作業を行う直線状又は折れ線状の作業経路93aと、当該作業経路93aの端同士を繋ぐ円弧状の非作業経路93bと、を交互に繋いだ一連の経路として構成される。そして、無線通信端末46側で上記のように生成された自律走行経路93の情報を、トラクタ1の制御部4に電気的に接続された記憶部55に入力(転送)して所定の操作をすることにより、当該制御部4によりトラクタ1を制御して、自律走行経路93に沿って当該トラクタ1に自律走行・自律作業を行わせることができる。
以下では、主として図4を参照して、自律走行経路生成システム99を備える無線通信端末46の構成についてより詳細に説明する。
図4に示すように、無線通信端末46は、制御部71と、ディスプレイ(表示部)37と、通信部72と、作業車両情報設定部51と、圃場情報設定部52と、作業情報設定部53と、作業領域分割部(領域分割部)54と、自律走行経路生成部(経路生成部)47と、を備える。
具体的には、無線通信端末46の制御部71は、トラクタ1の制御部4と同様に、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O等を備えたコンピュータとして構成されており、CPUは、各種プログラム等をROMから読み出して実行することができる。また、前記ROMには、トラクタ1に自律走行・自律作業を行わせるための適宜のプログラムが記憶されている。そして、上記したソフトウェアとハードウェアの協働により、無線通信端末46を、通信部72、作業車両情報設定部51、圃場情報設定部52、作業情報設定部53、作業領域分割部54、及び自律走行経路生成部47等として動作させることができる。
通信部72は、トラクタ1側との間で通信を行うためのものである。無線通信端末46の制御部71は、通信部72によりトラクタ1の制御部4と通信することで、自律走行経路生成部47が生成した自律走行経路93の情報をトラクタ1側に送信することができる。また、無線通信端末46の制御部71は、通信部72を用いて制御信号をトラクタ1側に送信することで、トラクタ1に対して自律走行の開始及び停止等を指示することができる。また、トラクタ1が自律走行している場合、無線通信端末46の制御部71は、当該トラクタ1の状態(位置、走行速度等)をトラクタ1側から受信してディスプレイ37に表示することができる。
作業車両情報設定部51は、トラクタ1に関する情報(以下、作業車両情報と呼ぶことがある。)を設定するためのものである。作業車両情報設定部51は、トラクタ1の機種、トラクタ1の大きさ、トラクタ1において測位用アンテナ6が取り付けられている位置、作業機3の種類、作業機3のサイズ及び形状、作業機3の位置等について、オペレータが無線通信端末46を適宜操作することにより指定した内容を記憶することができる。
圃場情報設定部52は、圃場90に関する情報(以下、圃場情報と呼ぶことがある。)を設定するためのものである。圃場情報設定部52は、圃場90の位置及び形状、自律走行させたい開始位置及び終了位置、作業方向等について、オペレータが無線通信端末46を操作することにより指定した内容を記憶することができる。なお、作業方向とは、図1に示すように、圃場90から(枕地や非耕作地等の)非作業領域92を除いた領域である作業領域91において、作業機3で作業を行いながらトラクタ1を走行させる方向を意味する。
圃場90の位置及び形状の情報は、例えばオペレータがトラクタ1に搭乗して圃場の外周に沿って1回り周回するように運転し、そのときの測位用アンテナ6の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得することができる。ただし、圃場90の位置及び形状は、ディスプレイ37に地図を表示させた状態でオペレータが無線通信端末46を操作して当該地図上の複数の点を指定することで得られた多角形に基づいて取得することもできる。
作業情報設定部53は、作業を具体的にどのように行うかに関する情報(以下、作業情報と呼ぶことがある。)を設定するためのものである。作業情報設定部53は、作業情報として、ロボットトラクタ1と有人のトラクタの協調作業の有無、トラクタ1が枕地において旋回する場合にスキップする作業経路93aの数であるスキップ数(基準値)、枕地の幅、及び非耕作地の幅等を設定可能に構成されている。
作業領域分割部54は、スキップ走行を伴う自律走行経路93が自律走行経路生成部47において生成されるときに、図11等に示すように、作業領域91を複数の区画Sに分割するためのものである。この分割により生成された区画Sが、スキップ走行を行う作業の単位となる。なお、作業領域91の分割の詳細については後述する。
図4に示す自律走行経路生成部47は、トラクタ1を自律走行させる経路である自律走行経路93を生成するためのものである。自律走行経路生成部47は、作業車両情報設定部51、圃場情報設定部52、及び作業情報設定部53で設定された情報に基づいて、トラクタ1の自律走行経路93を生成して記憶することができる。
自律走行経路93は、図1に示すように、作業領域91に配置される作業経路93aと、非作業領域92に配置される非作業経路93bと、により構成される。自律走行経路生成部47が自律走行経路93を生成する過程では、作業機3の作業幅、作業領域91において互いに隣接する作業経路93aの間で作業機3の作業幅同士が一部重複することの可否(可能な場合は、重複幅の上限値)、非作業領域92の大きさ及び形状(言い換えれば、枕地の幅及び非耕作地の幅)、トラクタ1が枕地での非作業経路93bにおいて旋回する場合にスキップする作業経路93aの数(スキップ数)等が考慮される。また、無人トラクタ1と有人トラクタとで協調作業を行う場合は、自律走行経路93の生成過程において、無人トラクタ1と有人トラクタとの位置関係、有人トラクタの作業機の作業幅等が考慮される。
次に、図5から図7までを参照して、自律走行経路93を生成するための無線通信端末46における設定について説明する。図5は、無線通信端末46に表示される作業車両情報入力画面81の表示例を示す図である。図6は、無線通信端末46に表示される圃場情報入力画面82の表示例を示す図である。図7は、無線通信端末46に表示される作業情報入力画面83の表示例を示す図である。
無線通信端末46においてオペレータが所定の操作を行うと、制御部71は、図5に示す作業車両情報入力画面81をディスプレイ37に表示するように制御する。
作業車両情報入力画面81では、走行機体2及び当該走行機体2に装着される作業機3に関する情報(前記作業車両情報)を入力することができる。具体的には、作業車両情報入力画面81には、トラクタ1の機種、トラクタ1の大きさ、測位用アンテナ6の走行機体2に対する取付位置、作業機3の種類、作業機3の作業幅W、3点リンク機構の後端(ロアリンクの後端)から作業機3の後端までの距離等を入力する欄がそれぞれ配置されている。
オペレータは、無線通信端末46を操作して、作業車両情報入力画面81の各欄に配置されているテキストボックスに数値を入力したりドロップダウンボックスの一覧から選択したりすることにより、設定を行う。これにより、走行機体2及び作業機3に関する各種の情報を設定することができる。
作業車両情報入力画面81においてオペレータが指定した作業車両情報は、作業車両情報設定部51に記憶される。作業車両情報の入力が完了すると、制御部71は、図6に示すような圃場情報入力画面82を表示するようにディスプレイ37を制御する。
圃場情報入力画面82では、走行機体2が走行する圃場90に関する情報(前記圃場情報)を入力することができる。具体的には、圃場情報入力画面82には、圃場90の位置及び形状と、自律走行の開始位置及び終了位置と、を図形で示す平面表示部88が配置されている。また、圃場情報入力画面82には、圃場90の外周、自律走行の開始位置、自律走行の終了位置、及び作業方向のそれぞれについて、「指定」、「リセット」のボタンが配置されている。
なお、圃場情報入力画面82等におけるボタンは、何れもディスプレイ37に表示される仮想的なボタンとして構成され、当該ボタンの表示領域に相当するタッチパネルの位置をオペレータが指で触れることによって操作することができる。
「圃場外周」の「指定」ボタンを操作すると、無線通信端末46が圃場形状記録モードに切り換わる。この圃場形状記録モードにおいて、オペレータがトラクタ1に乗り込んで運転し、圃場90の外周に沿って1回り周回させると、そのときの測位用アンテナ6の位置情報の推移に基づいて、圃場90の位置及び形状が取得(算出)される。これにより、圃場90の位置及び形状の指定を行うことができる。
無線通信端末46の制御部71は、得られた圃場90の位置及び形状を、図6に示すように、圃場情報入力画面82の平面表示部88にグラフィカルに表示する。圃場90の位置及び形状の指定をやり直したい場合は、今まで指定した内容を「リセット」ボタンの操作により破棄し、再度「指定」ボタンを操作すれば良い。
なお、上記のように圃場90においてトラクタ1を実際に走行させることで圃場90の位置及び形状を指定することに代えて、例えば、無線通信端末46のディスプレイ37に地図を表示させ、地図上においてオペレータが複数の点を指定することにより、指定した点同士を結ぶ線が交わらないようにいわゆる閉路グラフにより特定した多角形の位置及び形状を圃場90の位置及び形状として指定することもできる。
「作業開始位置」の「指定」ボタンを操作すると、図6に示すように、指定された圃場90の位置及び形状が平面表示部88に表示された状態で、オペレータは適宜の点を自律走行の開始位置として指定することができる。指定された開始位置には開始位置マークF1が表示される。なお、「リセット」ボタンの動作は上記と同様である。
「作業終了位置」の「指定」ボタンを操作すると、「作業開始位置」の「指定」ボタンと同様に、適宜の点を、自律走行の終了位置として指定することができる。指定された終了位置には、終了位置マークF2が表示される。「リセット」ボタンの動作は上記と同様である。
圃場情報入力画面82においてオペレータが指定した圃場情報は、圃場情報設定部52に記憶される。圃場情報の入力が完了すると、制御部71は、図7に示すような作業情報入力画面83を表示するようにディスプレイ37を制御する。
作業情報入力画面83では、具体的な作業の情報(前記作業情報)を入力することができる。具体的には、作業情報入力画面83には、ロボットトラクタ1と有人のトラクタの協調作業の有無、有人のトラクタが協調作業する場合のパターン、有人のトラクタが協調作業する場合の当該有人のトラクタの作業幅、ロボットトラクタ1のスキップ数、隣接する作業経路93aにおける作業幅のオーバーラップ許容量、枕地の幅、及び非耕作地の幅等を入力する欄がそれぞれ設けられている。
「有人トラクタの協調作業の有無」の欄では、ロボットトラクタ1を単独で自律走行させて農作業を行うか(有人トラクタの随伴無し)、又は、自律走行するロボットトラクタ1と有人のトラクタ(オペレータが搭乗するトラクタ)とを随伴させることにより農作業を行うか(有人トラクタの随伴有り)、の何れかを選択することが可能となっている。
「随伴有り」の場合、「協調作業パターン」の欄で、ロボットトラクタ1に対する有人のトラクタの位置のパターンを、ロボットトラクタ1の真後ろ、左斜め後ろ、右斜め後ろ、の何れかから選択することが可能となっている。また、「有人トラクタの作業幅」の欄で、有人トラクタの作業幅(作業機により作業が行われる有効幅)を入力することができる。
「ロボットトラクタのスキップ数」の欄には、ドロップダウンリストボックスが配置されており、ドロップダウン操作により、スキップ数として設定可能な数値の一覧が選択可能に表示される。オペレータは、その一覧から1つを選択することで、作業経路93aをいくつ飛ばして農作業を行うかを指定することができる。本実施形態においては、スキップ数SNを、0、1又は2の何れかから選択することで設定することができる。スキップ走行を希望しない場合は、スキップ数SNとしてゼロを選択すれば良い。
「作業幅のオーバーラップ許容量」の欄では、互いに隣接する作業経路93aの間で作業幅同士が一部重複しても良い場合、その重複幅の上限値を入力することができる。重複を全く許容しない場合は、この欄にゼロを入力すれば良い。
「枕地の幅」の欄では、例えば、無人のトラクタ1に装着される作業機3のサイズ等に基づいて予め算出される枕地幅の下限値と同じかそれよりも大きい値を設定することができる。
「非耕作地の幅」の欄では、自律走行の終了後に圃場90の外周に沿って手動走行で周回しつつ作業すること等を考慮しながら、適宜の値を設定することができる。
オペレータが作業情報入力画面83の入力欄を全て入力して「自律走行経路を生成」ボタンを操作した場合、自律走行経路生成部47により自律走行経路93が生成されるとともに、当該自律走行経路93が作業領域分割部54に記憶される。生成された自律走行経路93は確認のためにディスプレイ37に適宜表示され、オペレータが図略の「確定」ボタンを操作することで、自律走行経路93を確定させることができる。
自律走行経路93の確定後は、制御部71は、図示しない経路データ転送画面をディスプレイ37に表示するように制御する。この経路データ転送画面では、オペレータは、自律走行経路生成部47により生成した自律走行経路93のデータを、トラクタ1側へ例えば無線により転送し、トラクタ1が備える記憶部55に記憶させることができる。
自律走行経路93のデータがトラクタ1に入力されると、オペレータが無線通信端末46を適宜操作することで、トラクタ1に自律走行の開始を指示することができる。自律走行の開始が指示されると、トラクタ1は、無線通信端末46から当該トラクタ1に送信された自律走行経路93に従って自律走行し、自律作業を行う。
次に、自律走行経路93を生成するときに自律走行経路生成部47で行われる具体的な処理について、図8から図14までを参照して説明する。図8は、自律走行経路生成部47を生成するときに自律走行経路生成部47で行われる処理を示すフローチャートである。図9は、スキップ走行を行う自律走行経路93を生成するために、作業領域91に複数の作業経路93aが配置される様子を示す図である。図10は、スキップ走行を行う場合に作業の単位となる、特定の数の作業経路93aからなるグループを示す図である。図11は、作業領域91が分割されて複数の区画Sが生成される様子を示す図である。図12は、作業領域91が分割されて、作業経路93aの数が特定の数より大きい例外の区画SEを含む複数の区画S,SEが生成される様子を示す図である。図13は、作業経路93aの作業順序が決定された様子を示す図である。図14は、図13で決定された作業順序に基づいて自律走行経路93が生成される様子を示す図である。
図7に示す作業情報入力画面83において「自律走行経路を生成」ボタンが操作されると、最初に、圃場情報入力画面82において設定された圃場90の形状と、作業情報入力画面83において設定された枕地の幅及び非耕作地の幅と、に基づいて、作業領域91及び非作業領域92が定められる。その後に図8の処理が開始され、自律走行経路生成部47は、作業領域91内に作業経路93aを互いに間隔をあけて配置する(ステップS101)。それぞれの作業経路93aは、図6の圃場情報入力画面82で設定された作業方向に沿うように配置される。また、作業経路93aを配置する間隔は、作業領域91に対する作業機3の作業漏れが生じないように、かつ、作業効率が良好となるように、当該作業機3の作業幅W等を考慮して決定される。なお、作業領域91において配される作業経路93aの列数(本数)は、作業領域91の大きさ、作業機3の作業幅W、及び、オーバーラップ許容量に基づいて算出可能であるため、本ステップにおいては作業領域91に作業経路93aを配することなく、配されるべき作業経路93aの列数を算出し、ステップS102に進むこととしてもよい。
次に、自律走行経路生成部47は、作業情報設定部53で設定された(作業情報入力画面83で入力された)ロボットトラクタ1のスキップ数SNの情報を取得して、スキップ数SNが1以上であるか否かを判断する(ステップS102)。
ステップS102の判断の結果、スキップ数SNが0である場合、自律走行経路生成部47は、作業経路93aが並べられる方向の一側の端から当該作業経路93aを順番に(飛ばすことなく)走行して他側の端まで到達する自律走行経路93を生成し(ステップS103)、処理を終了する。これにより、スキップなしの自律走行経路93が生成される。
ステップS102の判断の結果、スキップ数SNが1以上である場合、自律走行経路生成部47は、作業領域91における作業経路93aの数(作業経路数TP)が、基本単位経路数BP以上であるか否かを判断する(ステップS104)。
ここで、基本単位経路数BPについて説明する。即ち、本実施形態のロボットトラクタ1におけるスキップ走行は、互いに隣接しながら並ぶ特定の数の作業経路93aからなるグループを単位として行われる。あるグループについてスキップ走行がいったん開始されると、当該グループに属する全ての作業経路93aについて作業が完了するまで、他のグループについてスキップ走行が行われることはない。
例えばスキップ数SNが1である場合、図10(a)に示すように、互いに隣接しながら並ぶ5つ(5列)の作業経路93aを考える。なお、以下の説明では、それぞれの作業経路93aを、自律走行の開始位置に近い側からA,B,C,D,Eというようにアルファベットで呼ぶことがある。このグループについてスキップ走行を行う場合、トラクタ1は、Aを走行した後、1つ飛ばしてCを走行し、更に1つ飛ばしてEを走行する。その後、飛ばす方向をいったん反転させ、かつ通常よりも多く2つ飛ばして、Bを走行する。その後、飛ばす方向を更に反転して、Dを走行する。以上のように、A,C,E,B,Dの順に作業を行うことで、設定されたスキップ数SN(即ち、1)に概ね従いながら、5つの作業経路93aについて作業を完了させることができる。
また、スキップ数SNが2である場合、図10(b)に示すように、互いに隣接しながら並ぶ7つの作業経路93aを考える。なお、以下の説明では、それぞれの作業経路93aを、自律走行の開始位置に近い側からA,B,C,D,E,F,Gというようにアルファベットで呼ぶことがある。このグループについてスキップ走行を行う場合、トラクタ1は、Aを走行した後、2つ飛ばしてDを走行し、更に2つ飛ばしてGを走行する。その後、飛ばす方向をいったん反転させ、かつ設定数よりも多く3つ飛ばして、Cを走行する。続いて、飛ばす方向を反転してFを走行する。その後、飛ばす方向を反転させ、かつ設定数よりも多く3つ飛ばして、Bを走行する。続いて、飛ばす方向を反転させ、Eを走行する。以上のように、A,D,G,C,F,B,Eの順に作業を行うことで、設定されたスキップ数SN(即ち、2)に概ね従いながら、7つの作業経路93aについて作業を完了させることができる。
以上を踏まえて説明すると、基本単位経路数BPとは、スキップ走行によって作業を完了させる基本的な単位(グループ)における作業経路93aの数を意味する。スキップ数SNが1の場合は、基本単位経路数BPは5となり、スキップ数SNが2の場合は、基本単位経路数BPは7となる。一般化すると、基本単位経路数BPは、スキップ数SNに対して、2(SN+1)+1で表される。
従って、ステップS104は、ステップS101で配置された作業経路93aの数が、上記のグループを少なくとも1つ形成するのに十分であるか否かを判断することを実質的に意味する。
ステップS104の判断で、作業経路数TPが基本単位経路数BPに満たない場合、上記のグループを1つも形成することができないことを意味する。従って、制御部71は、設定されたスキップ数SNでの自律走行経路93の生成ができない旨のメッセージをディスプレイ37に表示させるように制御して(ステップS105)、処理を終了する。
ステップS104の判断で、作業経路数TPが基本単位経路数BP以上である場合、自律走行経路生成部47は、作業経路数TPが基本単位経路数BPの整数倍であるか否かを判断する(ステップS106)。
ステップS106の判断で、作業経路数TPが基本単位経路数BPの整数倍である場合、自律走行経路生成部47は、作業経路93aが並べられる方向で作業領域91を分割して、複数の区画Sを生成する(ステップS107)。この分割は、それぞれの区画Sに含まれる作業経路93aの数が基本単位経路数BPと等しくなるように行われる。図11には、スキップ数SNが1(基本単位経路数BPが5)である場合に、15つの作業経路93aが配置された作業領域91を分割して、それぞれが5つの作業経路93aを有する3つの区画Sを形成する例が示されている。ただし、作業経路数TPが基本単位経路数BPと等しい場合は、分割する必要がないので、作業領域91の全体に1つの区画Sが生成される。
ステップS106の判断で、作業経路数TPが基本単位経路数BPの整数倍と異なる場合でも、自律走行経路生成部47は、作業経路93aが並べられる方向で作業領域91を分割して、複数の区画Sを生成する(ステップS108)。この分割は、それぞれの区画Sに含まれる作業経路93aの数が基本単位経路数BPと等しくなるのを原則とするが、例外として、1つの区画SEだけは、当該区画SEに含まれる作業経路93aの数が基本単位経路数BPを上回るように行われる。図12には、スキップ数SNが1(基本単位経路数BPが5)である場合に、16つの作業経路93aが配置された作業領域91を分割して、それぞれが5つの作業経路93aを有する2つの区画(第1区画)Sと、6つの作業経路93aを有する1つの例外の区画(第2区画)SEと、を形成する例が示されている。この例外の区画SEは、作業経路93aが並べられる方向の端部、更に言えば、自律走行の終了位置に近い側の端部に配置されることが好ましい。作業経路数TPが基本単位経路数BPの2倍を下回る場合は、分割する必要がないので、作業領域91の全体に1つの(例外の)区画SEが生成される。
1又は複数の区画Sが生成されると、自律走行経路生成部47は、作業経路93aの数が基本単位経路数BPと等しい(原則の)区画Sと、基本単位経路数BPを上回る(例外の)区画SEと、の両方について、作業経路93aをトラクタ1が所定の作業順序に従って走行するように自律走行経路93を生成する(ステップS109)。
上記の作業順序とは、作業経路93aの数が基本単位経路数BPと等しい(原則の)区画Sについては、スキップ数SNが1の場合は上述したA,C,E,B,Dの順を意味し、スキップ数SNが2の場合は上述したA,D,G,C,F,B,Eの順を意味する。なお、図13には、スキップ数SNが1であって作業領域91が図11のように分割された場合に、作業経路93aの作業順序が決定される様子が示されている。図13においてそれぞれの作業経路93aに付されている丸付き数字は、決定された作業順序を示す。
それぞれの区画Sに配置されている作業経路93aを上記の順序に従って走行するように自律走行経路93を(図14に示すように)生成することで、当該区画Sを単位とする細かいスキップ走行パターンの繰返しが実現される。即ち、自律走行開始位置に最も近い区画Sについてスキップ走行が上記のスキップ走行パターンに従って行われ、当該区画Sの作業が完了すると、それに隣接する区画Sについてスキップ走行が上記のスキップ走行パターンに従って行われる。上記を反復しながら自律走行・自律作業を行うことで、作業が途中で中断しても、作業済の箇所と未作業の箇所とが交互に現れる部分を区画S内の小さな範囲に留めることができる。
なお、作業経路93aの数が基本単位経路数BPを上回る区画(例外の区画)SEについては、原則の区画Sでの作業順序と類似した作業順序となることが好ましいが、作業経路93aをスキップする数をある程度柔軟に考えて、適当な作業順序で作業経路93aを走行するように自律走行経路93を生成すれば良い。
以上の処理により、スキップ走行を伴う作業に適した自律走行経路93を生成することができる。なお、図11から図14までにはスキップ数SNが1である場合が示されているが、スキップ数SNが2である場合も、図10(b)に示すように基本単位経路数BPが7になる点、作業順序がA,D,G,C,F,B,Eとなる点を除いて、上記と全く同様に生成することができる。
以上に説明したように、本実施形態の自律走行経路生成システム99は、予め定められた作業領域91に対して作業を行うためにトラクタ1を自律走行させる自律走行経路93を生成する。自律走行経路生成システム99は、作業領域分割部54と、自律走行経路生成部47と、を備える。作業領域分割部54は、作業領域91を複数の区画Sに分割する。自律走行経路生成部47は、作業領域分割部54により分割された各区画Sのそれぞれに配置された複数の作業経路93aを含むように自律走行経路93を生成する。作業領域分割部54は、各区画Sに含まれる作業経路93aの数が互いに等しい基本単位経路数BPとなるように作業領域91を分割可能である。
これにより、スキップ走行による作業を行う場合でも、分割された小さな区画Sを単位として、作業領域91の端から順番に作業していくことができる。従って、作業が途中で中断した場合でも、作業領域91において作業済みの箇所と未作業の箇所が交互に現れる部分を、区画S内の小さな範囲に留めることができる。従って、作業済みの箇所が明確になり易く、円滑に作業の再開を行うことができる。また、作業の中断前後で雨等により土壌環境が変化した場合でも、作業品質が異なる部分が広範囲にわたって櫛歯状に生じるのを防止することができる。
また、本実施形態の自律走行経路生成システム99において、自律走行経路生成部47は、複数の作業経路93aに対してスキップ数SNに基づいて作業順序を設定する。含まれる作業経路93aの数が基本単位経路数BPと等しい区画Sが複数ある場合に、自律走行経路生成部47は、図13に示すように、当該区画Sの間で互いに対応する各々の作業経路93aに対して同一の作業順序を設定する。
これにより、区画Sを単位として一定の作業順序を作業経路93aに対して設定することができるので、規則的なスキップ走行を実現できるとともに、自律走行経路93の生成処理を簡略化することができる。
また、本実施形態の自律走行経路生成システム99において、作業領域分割部54は、作業領域91に含まれる作業経路93aの数が基本単位経路数BPの整数倍でない場合に、図12に示すように、含まれる作業経路93aの数が基本単位経路数BPと等しい原則の区画Sと、含まれる作業経路93aの数が基本単位経路数BPより大きい例外の区画SEと、を形成するように作業領域91を複数の区画S,SEに分割する。
これにより、含まれる作業経路93aの数が基本単位経路数BPに満たない区画が生じなくなるので、スキップ走行を伴う自律走行経路93を容易に生成することができる。
次に、図15及び図16を参照して、圃場90及び作業領域91の形状によって、トラクタ1が非作業領域92において複数回の旋回や切返し操作を必要とする例を説明する。図15は、非作業領域92においてトラクタ1が複数回の旋回を行う例を示す図である。図16は、非作業領域92においてトラクタ1が複数回の旋回及び切返しを行う例を示す図である。
図15に示した圃場90pでは、非作業領域92に、L字路が連続するクランク形状の部分が存在している。作業順序が決定された作業経路93aの端点同士を繋ぐ非作業経路93bが当該部分を通過する場合、非作業経路93bは、非作業領域92に収まるように(即ち、トラクタ1が作業領域91に進入することも、圃場90pの外側にハミ出すこともないように)、所定のマージンを見込んで生成される。このとき、L字路の部分においては、走行機体2の旋回半径Rが考慮される。図15の例では、非作業領域92がクランク状の部分を有するために、図14で示した圃場90と比較して、非作業領域92での旋回が2回余分に必要となっている。
また、図15と同様の圃場90pであっても、図16に示すように、作業経路93aから非作業経路93bに入った直後にクランク形状の部分を通過する必要が生じる場合がある。このとき、非作業経路93bに入った直後にL字路での旋回を行ったとしても、走行機体2又は作業機3が圃場90pの外側にはみ出してしまう。この場合は、図16に示すように、非作業経路93bは、L字路の部分の旋回に加えて、走行機体2を一端前後させる切返しも伴う経路として生成される。
このように、非作業領域92が不定形である場合、自律走行経路生成部47が必要に応じて旋回や切返しを伴うように非作業経路93bを生成することで、スキップ走行を適切に行うことができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態においては、基本単位経路数BPがスキップ数SNに対して2(SN+1)+1で表される数値としたが、他の数値に変更しても良い。即ち、基本単位経路数BPは、M(SN+1)+1(Mは2以上の自然数)で表される。
上記の実施形態においては、スキップ数SNは1又は2から選択できるとしたが、必要に応じて3以上の数値を選択できる構成にしても良い。
作業を行う作業経路93aの順番(作業順序)は、図10で示した例に限らず、適宜変更することもできる。
ステップS102の判断の結果、スキップ数SNが0である場合、自律走行経路生成部47は、作業領域91を分割することなく自律走行経路93を生成することとしたが、作業領域91を分割した上で、自律走行経路93を生成することとしてもよい。
図8に示すステップS105において、メッセージを表示する代わりに、上述の発明が解決しようとする課題で述べた(単純なスキップ走行を行う)自律走行経路を生成しても良い。或いは、作業経路数TPが基本単位経路数BPに満たない場合には、スキップ数SNを0に変更するよう促し、ユーザがスキップ数SNを0に変更した場合はステップS103に進み、ユーザがスキップ数SNを0に変更しなかった場合にステップS105に進むこととしてもよい。
ところで、図13及び図14に示すように作業領域91が複数の区画Sに分割され、或いは、複数の区画Sと単一の区画SEに分割される場合、トラクタ1により自律走行・自律作業される区画に対する作業順は、例えば、開始位置に近い区画から順に設定され、特定の区画について作業が完了すると、それに隣接する区画にて作業が行われる。しかしながら各区画に対する作業順は、これに限られるものではなく任意の順番が設定可能であってもよい。
上記の実施形態では、作業情報入力画面83で設定された枕地の幅及び非耕作地の幅に基づいて非作業領域92が定められ、圃場90から非作業領域92を除外した残りの領域として作業領域91が定められている。しかしながら、作業領域91を設定する方法は上記に限らず、例えば、上述の圃場情報入力画面82において平面表示部88に表示された圃場90の任意の点をオペレータが指定することで作業領域91及び非作業領域92を設定できるように構成されても良い。
上記の実施形態では、自律走行経路生成システム99を構成する作業領域分割部54及び自律走行経路生成部47は、無線通信端末46側に備えられている。しかしながら、作業領域分割部54及び自律走行経路生成部47のうちの一部又は全部がトラクタ1側に備えられても良い。