本発明は、1台又は複数台の作業車両を圃場に設定された複数の領域で自律走行・自律作業させることによって農作業を実行する際に、各領域を調整可能な領域調整システムに関する。本実施形態では作業車両としてトラクタを例に説明するが、作業車両としては、トラクタの他、田植機、コンバイン、土木・建築作業装置、除雪車等、乗用型作業機に加え、歩行型作業機も含まれる。本明細書において、自律走行とは、トラクタが備える制御部(ECU)によりトラクタが備える走行に関する構成が制御されて予め定められた経路に沿ってトラクタが走行することを意味する。自律作業とは、トラクタが備える制御部によりトラクタが備える作業に関する構成が制御されて予め定められた経路に沿ってトラクタが作業を行うことを意味する。
以下の説明で自律走行・自律作業されるトラクタを「無人(の)トラクタ」又は「ロボットトラクタ」と称することがあり、手動走行・手動作業されるトラクタを「有人(の)トラクタ」と称することがある。圃場内において農作業の一部が無人トラクタにより実行される場合、残りの農作業は有人トラクタにより実行される。本明細書において無人トラクタと有人トラクタの違いは、ユーザによる操作の有無であり、各構成は共通であるものとする。即ち、無人トラクタであってもユーザが搭乗(乗車)して操作することが可能であり(即ち有人トラクタとして使用することができ)、或いは有人トラクタであってもユーザが降車して自律走行、自律作業させることが可能である(即ち無人トラクタとして使用することができる)。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る領域調整システム99に備えられるロボットトラクタ1の全体的な構成を示す側面図である。図2は、ロボットトラクタ1の平面図である。図3は、ロボットトラクタ1及び遠隔操作装置46の制御系の主要な構成を示すブロック図である。
領域調整システム99は、トラクタ1の走行及び作業を制御する制御部4と、当該制御部4と無線通信することによりトラクタ1に対して自律走行・自律作業に関する所定の制御信号(自律走行・自律作業の経路に関する信号や自律走行・自律作業の開始信号、停止信号、終了信号等)を出力する遠隔操作装置46と、を備えて構成される。
初めに、本発明に係る領域調整システム99に備えられる作業車両の実施の一形態であるロボットトラクタ(以下、単に「トラクタ」と称する場合がある。)1について、主として図1及び図2を参照して説明する。
トラクタ1は、圃場を自律走行する車体部としての走行機体2を備える。走行機体2には、図1及び図2に示す作業機3が着脱可能に取り付けられている。この作業機3としては、例えば、耕耘機、プラウ、施肥機、播種機等の種々の作業機があり、これらの中から必要に応じて所望の作業機3を選択して走行機体2に装着することができる。走行機体2は、装着された作業機3の高さ及び姿勢を変更可能に構成されている。
トラクタ1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。トラクタ1の走行機体2は、図1に示すように、その前部が左右1対の前輪7,7で支持され、その後部が左右1対の後輪8,8で支持されている。
走行機体2の前部にはボンネット9が配置されている。このボンネット9内にはトラクタ1の駆動源であるエンジン10や燃料タンク(不図示)等が収容されている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成してもよい。また、駆動源としてエンジン10に加えて、又は、代えて電気モータを採用してもよい。
ボンネット9の後方には、ユーザが搭乗するためのキャビン11が配置されている。このキャビン11の内部には、ユーザが操向操作するための(ステアリング)ハンドル12と、ユーザが着座可能な座席13と、各種の操作を行うための様々な操作装置と、が主として設けられている。ただし、作業車両は、キャビン11付きのものに限るものではなく、キャビン11を備えないものであってもよい。
上記の操作装置としては、図2に示すモニタ装置14、スロットルレバー15、PTOスイッチ17、PTO変速レバー18、及び複数の油圧変速レバー16等を例として挙げることができる。これらの操作装置は、座席13の近傍、又はハンドル12の近傍に配置されている。モニタ装置14は、トラクタ1の様々な情報を表示可能に構成されている。スロットルレバー15は、エンジン10の回転速度を設定するためのものである。PTOスイッチ17は、トランスミッション22の後端から突出した図略のPTO軸(動力取出軸)への動力の伝達/遮断を切換操作するためのものである。即ち、PTOスイッチがON状態であるときPTO軸に動力が伝達されてPTO軸が回転し、作業機3が駆動される一方、PTOスイッチがOFF状態であるときPTO軸への動力が遮断されてPTO軸が回転せず、作業機3が停止される。PTO変速レバー18は、作業機3に入力される動力の変更操作を行うものであり、具体的にはPTO軸の回転速度の変速操作を行うものである。油圧変速レバー16は、図略の油圧外部取出バルブを切換操作することができる。
また、座席13の右側に配置されたアームレスト19の前部には、主変速レバー27、作業機昇降スイッチ28等の操作装置が設けられている。
主変速レバー27はトラクタ1の走行速度を変更するためのものであり、主変速レバー27を前方に倒すと走行速度が速くなり、後方に倒すと走行速度が遅くなるように構成されている。この主変速レバー27は無段階の操作が可能に構成されており、トラクタ1の走行速度は主変速レバー27の操作量に応じて無段階に変速される。
作業機昇降スイッチ28は、主変速レバー27に設けられた上下操作可能な電気スイッチとして構成されており、作業機3を上昇及び下降させるときに使用される。作業機3がロータリ耕耘装置として構成される場合、これにより、作業機3を下降させて作業機3が備える耕耘爪25による耕耘作業を開始させたり、上昇させて耕耘作業を終了させたりすることができる。本実施形態において、作業機3はロータリ耕耘装置として構成されている。
図1に示すように、走行機体2の下部には、トラクタ1のシャーシ20が設けられている。当該シャーシ20は、機体フレーム21、トランスミッション22、フロントアクスル23、及びリアアクスル24等から構成されている。
機体フレーム21は、トラクタ1の前部における支持部材であって、直接、又は防振部材等を介してエンジン10を支持している。トランスミッション22は、エンジン10からの動力を変化させてフロントアクスル23及びリアアクスル24に伝達する。フロントアクスル23は、トランスミッション22から入力された動力を前輪7に伝達するように構成されている。リアアクスル24は、トランスミッション22から入力された動力を後輪8に伝達するように構成されている。
図3に示すように、トラクタ1は、走行機体2の動作(前進、後進、停止及び旋回等)並びに作業機3の動作(昇降、駆動及び停止等)を制御するための制御部4を備える。制御部4はコンピュータとして構成されており、CPU、ROM、RAM等を備えている。この制御部4には、ガバナ装置41、変速装置42、操舵アクチュエータ43、及び昇降アクチュエータ44等がそれぞれ電気的に接続されている。
ガバナ装置41は、エンジン10の回転数を調整するものである。ガバナ装置41を制御部4により制御してラック位置を適宜に調整することにより、エンジン10の回転数を所望の回転数にすることができる。
変速装置42は、具体的には例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置であり、トランスミッション22に備えられている。変速装置42を制御部4により制御して図略の前記斜板の角度を適宜に調整することにより、トランスミッション22の変速比を所望の変速比にすることができる。
昇降アクチュエータ44は、例えば作業機3を走行機体2に連結している3点リンク機構を動作させることにより、作業機3を退避位置(農作業を行わない位置)又は作業位置(農作業を行う位置)の何れかに上げ下げするものである。なお、本実施形態において作業機3による農作業は耕耘作業を意味する。昇降アクチュエータ44を制御部4により制御して作業機3を適宜に昇降動作させることにより、所望の高さで作業機3により農作業を行うことができる。
以上のような制御部4を備えるトラクタ1は、ユーザがキャビン11内に搭乗して各種操作をすることにより、当該制御部4によりトラクタ1の各部(走行機体2、作業機3等)を制御して、圃場内を走行しながら農作業を行うことができるように構成されている。加えて、本実施形態のトラクタ1は、ユーザがトラクタ1に搭乗しなくても、遠隔操作装置46により出力される所定の制御信号に基づいて自律走行及び自律作業させることが可能となっている。
具体的には、図3等に示すように、トラクタ1は、自律走行及び自律作業を可能とするための各種の構成を備えている。例えば、トラクタ1は、測位システムに基づいて自ら(の走行機体2)の位置情報を取得するために必要な測位用アンテナ6等の構成を備えている。このような構成により、トラクタ1は、測位システムに基づいて自らの位置情報を取得して、圃場上を自律走行及び自律作業することが可能となっている。
次に、自律走行・自律作業を可能とするためにトラクタ1が備える構成について詳細に説明する。具体的には、本実施形態のトラクタ1は、操舵アクチュエータ43、測位用アンテナ6、無線通信用アンテナ48、車速センサ等を含むセンサ群53、及び記憶部55を備える。また、これらに加えて、トラクタ1には、走行機体2の姿勢(ロール角、ピッチ角、ヨー角)を特定することが可能な慣性計測ユニット(IMU)が備えられていてもよい。
図3に示す操舵アクチュエータ43は、例えば、ハンドル12の回転軸(ステアリングシャフト)の中途部に設けられ、ハンドル12の回転角度(操舵角)を調整するものである。トラクタ1が無人トラクタとして予め定められた経路を走行する場合、制御部4は、当該経路に沿ってトラクタ1が走行されるようハンドル12の適切な回動角度を算出し、算出した回動角度にてハンドル12が回動されるように操舵アクチュエータ43を制御する。
測位用アンテナ6は、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。図1に示すように、測位用アンテナ6は、トラクタ1のキャビン11のルーフ92の上面に配置されている。測位用アンテナ6で受信された測位信号は、図3に示す位置情報算出部(位置情報取得部)49に入力されて、当該位置情報算出部49でトラクタ1(厳密には、測位用アンテナ6)の位置情報が、例えば緯度・経度情報として算出される。当該位置情報算出部49で算出された位置情報は、制御部4に入力されて、自律走行に利用される。
なお、本実施形態ではGNSS−RTK法を利用した高精度の衛星測位システムを利用しているが、これに限られるものではなく、高精度の位置座標が得られる限りにおいて他の測位システムを用いてもよい。例えば、相対測位方式(DGPS)、静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS)などにおいて高精度の位置座標が得られれば、これらを用いることが可能である。
無線通信用アンテナ48は、ユーザが操作する遠隔操作装置46からの信号を受信したり、遠隔操作装置46への信号を送信したりするものである。図1に示すように、無線通信用アンテナ48は、トラクタ1のキャビン11のルーフ92の上面に配置されている。無線通信用アンテナ48で受信した遠隔操作装置46からの信号は、図3に示す無線通信部40で信号処理され、制御部4に入力される。また、制御部4から遠隔操作装置46に送信する信号は、無線通信部40で信号処理された後、無線通信用アンテナ48から送信されて遠隔操作装置46で受信される。
記憶部55は、トラクタ1を圃場で自律走行させる経路を記録する。また、記憶部55は、自律走行中のトラクタ1の位置情報(走行軌跡)を記憶したり、当該位置情報と関連付けられた走行機体2の姿勢の情報を記憶したりする。その他にも、記憶部55は、トラクタ1を自律走行・自律作業させるために必要な様々な情報を記憶している。
遠隔操作装置46は、図1及び図3に示すように、タッチパネル39を備えるタブレット型のパーソナルコンピュータとして構成される。ユーザは、遠隔操作装置46のディスプレイ37に表示された情報を参照して確認することができる。また、ユーザは、上記のタッチパネル39、又はディスプレイ37の近傍に配置されたハードウェアキー38等を操作して、トラクタ1の制御部4に、トラクタ1を制御するための制御信号(例えば、緊急停止信号等)を送信することができる。なお、遠隔操作装置46はタブレット型のパーソナルコンピュータに限るものではなく、これに代えて、例えばノート型のパーソナルコンピュータで構成することも可能である。
このように構成されたトラクタ1は、遠隔操作装置46を用いるユーザの指示に基づいて、圃場に設定された経路に沿って走行しつつ、作業機3による農作業を行うことができる。
具体的には、ユーザは、遠隔操作装置46を用いて各種設定を行うことにより、農作業を行う直線状の第1作業経路(直進経路)P1と、当該作業経路の端同士を接続する接続経路(本実施形態では、トラクタ1が旋回を行う円弧状の旋回路)P2と、を交互に繋いだ経路を生成することが可能である。更に、ユーザは、同様に設定を行うことにより、第1作業経路P1の周囲で農作業を行う第2作業経路P3を生成することが可能である。走行経路(パス)P0は、第1作業経路P1と接続経路P2とを交互に接続した一連の経路と、第2作業経路P3と、によりなる。
この走行経路P0の例が図4に示されている。図4は、トラクタ1に関して設定される走行経路P0の例を示す模式図である。図4に示すように、走行経路P0が生成されるにあたっては、圃場80に、中央作業領域81と、当該中央作業領域81の周囲に配置された枕地領域82と、が設定される。枕地領域82は、第1枕地領域84Aと第2枕地領域84Bとを含む。第1枕地領域84A及び第2枕地領域84Bは、それぞれ、第1作業経路P1におけるトラクタ1の走行方向である第1方向に沿って延びるように、細長く形成されている。第1枕地領域84A及び第2枕地領域84Bは、第1方向と直交する第2方向において、中央作業領域81の両側に位置する。第1作業経路P1,P1,・・・は、中央作業領域81に等間隔で並んで複数配置される。接続経路P2,P2,・・・は、隣り合う第1作業経路P1,P1を接続するように枕地領域82に設定される。第1作業経路P1と接続経路P2とを交互に接続した経路が、中央作業領域81において、予め指定された作業開始位置Sと、作業終了位置Eと、を結ぶように設定される。第2作業経路P3は、枕地領域82に設定される。
そして、このような走行経路P0の情報を制御部4に入力して所定の操作を行うことにより、当該制御部4によりトラクタ1を制御して、トラクタ1を走行経路P0に沿って自律走行させながら、当該トラクタ1に作業機3を用いて農作業(自律作業)をさせることが可能である。
以下では、図3を参照して、本発明の実施の一形態に係る領域調整システム99に備えられる遠隔操作装置46の構成についてより詳細に説明する。
本実施形態の遠隔操作装置46は、ディスプレイ37、ハードウェアキー38、及びタッチパネル39の他、図3に示すように、主要な構成として、作業車両情報取得部31、圃場形状取得部32、領域設定部33、走行経路設定部34、調整部35、及び記憶部36を備える。
具体的には、上述のとおり遠隔操作装置46はコンピュータとして構成されており、図示しないCPU、ROM、RAM等を備えている。また、この遠隔操作装置46には、トラクタ1を制御するための制御アプリケーションが予めインストールされている。そして、上記したハードウェア及びソフトウェアの協働により、遠隔操作装置46を、作業車両情報取得部31、圃場形状取得部32、領域設定部33、走行経路設定部34、調整部35、及び記憶部36等として動作させることができる。
作業車両情報取得部31は、トラクタ1に関する作業車両情報を取得する。作業車両情報には、走行機体2に装着された作業機3によるトラクタ1のW1(図4参照)に関する情報が含まれる。作業車両情報取得部31により取得された作業車両情報は記憶部36に記憶される。
圃場形状取得部32は、例えばトラクタ1を圃場の外周に沿って1回り周回させ、そのときの測位用アンテナ6の位置情報の推移を記録することで、圃場の情報として当該圃場の形状を取得する。圃場形状取得部32で取得された圃場の形状は記憶部36に記憶される。ただし、圃場の形状を取得する方法はこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、圃場の角部の位置情報を記録して、記録した点同士を結ぶ線分が交わらないようにいわゆる閉路グラフにより特定した多角形を、圃場の形状として取得してもよい。
領域設定部33は、圃場において、中央領域と、枕地領域と、を設定する。領域設定部33は、例えばユーザが、圃場形状取得部32で取得した圃場の形状をディスプレイ37に表示させた状態で、複数の点を選択することにより指定した場合に、指定した点同士を結ぶ線分が交わらないようにいわゆる閉路グラフにより特定した多角形の内側領域を中央領域として設定し、当該圃場における中央領域の周囲を枕地領域として設定する。領域設定部33で設定された中央領域、及び枕地領域は記憶部36に記憶される。ただし、中央領域を設定する方法はこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、圃場の外周よりも所定の距離だけ内側の位置を中央領域の外周の位置とすることにより、中央領域の形状を自動的に取得してもよい。
走行経路設定部34は、トラクタ1に入力(送信)する経路を設定する。本実施形態の走行経路設定部34は、圃場でトラクタ1を自律走行させる走行経路P0を設定する。走行経路設定部34は、遠隔操作装置46で所定の操作が行われた場合に、作業車両情報取得部31で取得された作業車両情報、及び領域設定部33で設定された圃場の各領域に関する情報等に基づいて、走行経路P0を自動的に設定する。走行経路設定部34で設定された走行経路P0は、記憶部36に記憶される。
調整部35は、領域設定部33で設定された領域、即ち中央領域及び枕地領域のそれぞれを調整可能である。調整部35は、走行経路設定部34で第1の候補となる走行経路P0が設定された後、この走行経路P0に応じて、中央領域及び枕地領域のそれぞれの大きさ及び形状を調整する。調整部35で調整された調整後の中央領域及び枕地領域は記憶部36に記憶される。なお、調整部35に関する構成については後述する。
記憶部36は、不揮発性のメモリ(例えば、フラッシュROM)を含んで構成されており、作業車両情報等の各種情報を記憶することができる。ここで、記憶部36は、走行経路設定部34で走行経路P0が設定される度に当該走行経路P0に関する情報を記憶することができる。
次に、図5から図9を参照して、制御部4により走行経路P0が設定される際に行われる制御について説明する。図5は、走行経路P0の設定が行われる際に制御部4が行う処理を示すフローチャートである。図6は、調整部35による調整前の状態を示す一部拡大模式図である。図7は、調整部35による調整後の状態を示す一部拡大模式図である。図8は、最終の走行経路P0が設定された状態を示す模式図である。図9は、他の例における、調整部35による調整前の状態を示す一部拡大模式図である。以下では、図4に示す圃場80での作業時に行われる制御の例について説明する。
まず、制御部4(走行経路設定部34)は、圃場80の中央作業領域81及び枕地領域82のそれぞれの大きさ及び形状と、トラクタ1の作業幅W1とに基づいて、第1の候補となる走行経路P0を設定する(ステップS101)。第1の候補となる走行経路P0は、遠隔操作装置46のディスプレイ37に表示される。この走行経路P0においては、第1作業経路P1及び接続経路P2を交互に繋いだ経路が、ユーザにより設定された作業開始位置Sから作業終了位置Eに至るように配置される。ただし、上記の経路の始点及び終点が、作業開始位置S及び作業終了位置Eに対して誤差が生じても、当該誤差が所定の大きさを上回らない限り許容される。この走行経路P0においては、直進経路である第1作業経路P1が、中央作業領域81において、作業の重複が生じない限りなるべく多く並ぶように配置される。また、枕地領域82に、第2作業経路P3が圃場80内に収まるように設定される。
続いて、制御部4は、トラクタ1の第1作業経路P1の走行により作業の実行が想定される領域(以下、作業想定領域と呼ぶことがある。)の大きさが、第2方向において、中央作業領域81の大きさよりも小さいか否かを判定する(ステップS102)。作業想定領域とは、仮にトラクタ1が全ての第1作業経路P1を走行して作業した場合に、作業が完了したことになる領域を意味する。前述のとおり、第1方向とは、走行経路P0の第1作業経路P1におけるトラクタ1の走行方向である。第2方向とは、第1方向と直交する方向である。
ステップS102において、作業想定領域の大きさが第2方向において中央作業領域81の大きさよりも小さくなると判定された場合(ステップS102,Yes)、図6に示すように、作業が行われない未作業領域86が中央作業領域81に発生することになる。未作業領域86は、第2方向において幅W2を有する。
次に、制御部4(調整部35)は、中央作業領域81と枕地領域82とを調整する(ステップS103)。枕地領域82の調整としては、第1枕地領域84A又は第2枕地領域84Bの調整が行われる。例えば、第2枕地領域84Bの調整が行われる場合、調整部35は、図6の状態から図7の状態となるように、中央作業領域81と第2枕地領域84Bとを調整する。具体的には、調整部35は、中央作業領域81から未作業領域86を除くように、中央作業領域81の大きさ及び形状を変更する。この結果、中央作業領域81は、第2方向に縮められる。その後、調整部35は、第2方向において、第2枕地領域84Bが中央作業領域81側に向かって未作業領域81分(未作業領域86の幅W2)だけズレるように、第2枕地領域84Bの形状を変更する。この結果、圃場80の第2方向における外周部80a付近に、未作業領域86の幅W2と同等の幅を有する領域87が生じることになる。この領域87では、走行経路P0は設定されない。ここで、第2枕地領域84Bの第2方向の幅W3は、調整の前後で変わらないように、所定値に保たれる。この幅W3は、トラクタ1の作業幅W1の整数倍に設定される。
次に、制御部4(走行経路設定部34)は、調整部35による調整に応じて、第2の候補となる走行経路P0を設定する(ステップS104)。制御部4(走行経路設定部34)は、調整後の第2枕地領域84Bに応じて、走行経路P0の再設定を行う。第2の候補となる走行経路P0は、遠隔操作装置46のディスプレイ37に表示される。オペレータがこの走行経路P0に対して承諾する旨の操作を遠隔操作装置46により行った場合、制御部4は、第2の候補となる走行経路P0を最終の走行経路P0として採用する。従って、図8に示すように、トラクタ1が自律走行及び自律作業を行う際に当該トラクタ1の走行範囲内に未作業領域が発生することがないように、走行経路P0を設定することができる。
また、ステップS102において、作業想定領域の大きさが、第2方向において、中央作業領域81の大きさよりも小さくないと判定された場合(ステップS102,No)、制御部4は、作業想定領域の大きさが第2方向において中央作業領域81の大きさよりも大きいか否かを判定する(ステップS105)。作業想定領域の大きさが第2方向において中央作業領域81の大きさよりも大きくないと判定された場合(ステップS105,No)、作業想定領域の大きさと中央作業領域81の大きさとが同じことになるので、制御部4は処理を終了する。
作業想定領域の大きさが第2方向において中央作業領域81の大きさよりも大きいと判定された場合(ステップS105,Yes)、図9に示すように、中央作業領域81と枕地領域82とで重複して作業が行われる重複領域85が発生することになる。重複領域85は、第2方向において幅W4を有する。この場合、制御部4(走行経路設定部34)は、作業想定領域が中央作業領域81よりも小さくなるように、第1作業経路P1の最終経路を現在の最終経路P1aから当該現在の最終経路P1aの1つ前の経路P1bに変更する(ステップS106)。言い換えれば、複数並んでいる第1作業経路P1のうち、第2方向の端部に位置する第1作業経路P1が削除される。この結果、中央作業領域81に未作業領域86が発生する。その後、制御部4は、前記と同様の処理を行う。
以上に説明したように、本実施形態の領域調整システム99は、位置情報算出部49と、記憶部36と、作業車両情報取得部31と、走行経路設定部34と、調整部35と、を備える。位置情報算出部49は、トラクタ1の位置情報を取得する。記憶部36は、中央作業領域81、及び、中央作業領域81の周囲に設定された枕地領域82を含む圃場80の情報を記憶する。作業車両情報取得部31は、トラクタ1の作業幅W1を含む車両情報を取得する。走行経路設定部34は、中央作業領域81で作業を行うようにトラクタ1を走行させる第1作業経路P1、及び、枕地領域82で作業を行うようにトラクタ1を走行させる第2作業経路P3を、トラクタ1の作業幅W1に基づいて設定する。調整部35は、中央作業領域81及び枕地領域82を調整可能である。枕地領域82は、第1作業経路P1におけるトラクタ1の走行方向である第1方向に沿って延び、かつ、中央作業領域81の両側に配置される第1枕地領域84A及び第2枕地領域84Bを含む。トラクタ1の第1作業経路P1の走行により作業されることが想定される作業想定領域が、第1方向と直交する第2方向において、中央作業領域81よりも小さくなり、中央作業領域81に未作業領域86が発生する場合、調整部35は、中央作業領域81から未作業領域86を除くように中央作業領域81を調整するとともに、第2方向において、第1枕地領域84A又は第2枕地領域84Bを中央作業領域81側に向かって前記未作業領域分だけズラすように枕地領域82を調整する。
これにより、中央作業領域81と枕地領域82との間で未作業領域が発生しないように走行経路P0を設定し、この走行経路P0に沿ってトラクタ1を走行させながら作業を行うことが可能となる。従って、作業効率を向上させることができる。また、既に作業が行われたにもかかわらず再度同じ作業が行われる領域を縮小させることができ、同じ作業の繰り返しによる不都合を生じにくくすることができる。
本実施形態の領域調整システム99において、作業想定領域が第2方向において中央作業領域81よりも大きくなる場合、走行経路設定部34は、作業想定領域の第2方向での大きさが中央作業領域81よりも小さくなるように、複数並べて配置される第1作業経路P1のうち第2方向の端部の第1作業経路P1を削除する。
これにより、第1作業経路P1及び第2作業経路P3を走行するトラクタ1が同じ領域に対して重複して作業を行うことを回避することができる。また、枕地領域82に狭い部分が生じないようにすることができる。
次に、第2実施形態を説明する。図10は、本実施形態において、走行経路P0の設定が行われる際に制御部4が行う処理を示すフローチャートである。図11は、調整部35による第1段階の調整後の状態を示す一部拡大模式図である。図12は、調整部35による第1段階の調整後の状態を示す一部拡大模式図である。図13は、他の例における、最終の走行経路P0が設定された状態を示す模式図である。以下では、図4に示す圃場80での作業時に行われる制御の例について説明する。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
本実施形態は、前述のステップS105で、作業想定領域が中央領域より大きくなると制御部4が判定した後の処理に関して、第1実施形態と相違する。
即ち、図10に示すステップS105で、制御部4により作業想定領域が中央領域より大きくなると判定された場合、ユーザが許容したとき、又は、未作業領域86が所定の条件を満たすとき、制御部4(調整部35)は、中央作業領域81を調整する(ステップS201)。具体的には、制御部4(調整部35)は、図11に示すように、第2方向において、中央作業領域81が図9に示す重複領域85を含みトラクタ1の作業想定領域と略一致するように、中央作業領域81を拡大させる。即ち、制御部4(調整部35)は、図11において、第2方向において第2枕地領域84Bと隣接する中央作業領域81の外周部を、二点鎖線で示す位置81aから実線で示す位置81bに移動させる。
次に、制御部4(調整部35)は、中央作業領域81の調整に応じて、枕地領域82を調整する(ステップS202)。枕地領域82の調整としては、第2枕地領域84B、又は第1枕地領域84A及び第2枕地領域84Bの調整が行われる。例えば、第2枕地領域84Bの調整が行われる場合、制御部4(調整部35)は、第2枕地領域84Bを、圃場80に収まるように縮小させる。この際、第2方向における第2枕地領域84Bの幅W5は、中央作業領域81の調整前の幅W3に比べて小さくなるように変更されるが、この幅W5はトラクタ1の作業幅W1の整数倍に保たれる。例えば、中央作業領域81の調整前における第2方向における第2枕地領域84Bの幅W3がトラクタ1の作業幅W1のN倍(Nは2以上)とされていた場合、幅W3がN−1倍となる幅W5に変更される。
この場合、第2枕地領域84Bの幅W3がトラクタ1の作業幅W1のN倍とされていたことから、図11に示すように、調整後の中央作業領域81と、調整後の第2枕地領域84Bと、の間に余剰領域88が発生することになる。余剰領域88は、第2方向において、幅W6を有する。
次に、制御部4(調整部35)は、枕地領域82を再調整する(ステップS203)。前述の例で言えば、第2枕地領域84Bの調整が行われる場合、調整部35は、図11の状態から図12の状態となるように、第2枕地領域84Bを調整する。具体的には、調整部35は、調整後の中央作業領域81と、調整後の第2枕地領域84Bと、の間から、余剰領域88を除き、第2枕地領域84Bが中央作業領域81側に向かって余剰領域88分(余剰領域88の幅W6)だけズレるように、第2枕地領域84Bの形状を変更する。この結果、圃場80の第2方向における外周部80a付近に、余剰領域88の幅W6と同等の幅を有する領域89が生じる。この領域89には走行経路P0が設定されないため、トラクタ1の自律走行及び自律作業は行われない。ここで、第2枕地領域84Bの第2方向の幅W5は、再調整の前後で変わらないように、所定値に保たれる。
次に、制御部4(走行経路設定部34)は、調整部35による調整に応じて、走行経路P0の第2の候補となる走行経路P0を設定する(ステップS204)。制御部4(走行経路設定部34)は、再調整後の第2枕地領域84Bに応じて、走行経路P0を再設定する。再設定された走行経路P0は、遠隔操作装置46のディスプレイ37に表示される。オペレータがこの走行経路P0に対して承諾する旨の操作を遠隔操作装置46により行った場合、制御部4は、再設定された走行経路P0を最終の走行経路P0として採用する。
以上に説明したように、本実施形態の領域調整システム99において、作業想定領域が第2方向において中央作業領域81よりも大きくなる場合、調整部35が、中央作業領域81の第2方向での大きさが作業想定領域と一致するように中央作業領域81を調整し、中央作業領域81の調整に応じて第1枕地領域84A又は第2枕地領域84Bが縮小するように枕地領域82を調整する。調整後の中央作業領域81と、調整後の第1枕地領域84A又は第2枕地領域84Bと、の間に余剰領域88が発生したとき、調整部35は、第2方向において、調整後の第1枕地領域84A又は第2枕地領域84Bを中央作業領域81側に向かって余剰領域88分ズラすように、中央作業領域81と枕地領域82を再調整する。
これにより、第1作業経路P1及び第2作業経路P3を走行するトラクタ1が同じ領域に重複して作業を行うことを回避することができる。
次に、第3実施形態を説明する。図14は、本実施形態における調整部35による調整を説明する一部拡大模式図である。図15は、本実施形態におけるトラクタ1及び遠隔操作装置46の制御系の主要な構成を示すブロック図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
本実施形態は、前述のステップS103における中央作業領域81及び枕地領域82の調整及び当該調整後における処理に関して、第1実施形態と相違する。ここでは、枕地領域82の調整として、概ね第1方向に延びる第2枕地領域84Bの調整が行われる場合を例に挙げて説明する。
本実施形態では、中央作業領域81に発生する未作業領域86が、平面視で5つ以上の辺を有する多角形状となっている場合を想定する。図14の例では、未作業領域86は、平面視で6角形状となっている。未作業領域86は、その多角形の形状を規定する複数の辺として、第1辺201、第2辺202、第3辺203、及び辺群204を備える。
第1辺201及び第2辺202は、互いに第1方向に所定間隔をあけて対向するように配置され、それぞれ第2方向に延びている。第3辺203は、第1辺201及び第2辺202のそれぞれの一端(作業想定領域側に近い側の端部)を結ぶように、作業想定領域に隣接しつつ、第1方向に延びている。第1辺201と第3辺203とは、交点C1で交わる。辺群204は、概ね第1方向で並ぶように折れ線状に配置されている。辺群204に属するそれぞれの辺は、第3辺203に対して第2方向に間隔をあけて配置され、概ね第1方向に延びている。ただし、辺群204の中には、第1方向(第1作業経路P1)に対して斜めに延びる辺が含まれている。
作業想定領域の大きさが第2方向において中央作業領域81の大きさよりも小さくなり、前述のような形状の未作業領域86が中央作業領域81に発生した場合を考える。本実施形態では、未作業領域86が中央作業領域81に含まれる代わりに枕地領域82に含まれるように、調整部35により中央作業領域81及び枕地領域82の調整が行われる。
図15に示すように、遠隔操作装置46は、仮想境界線設定部211を備える。本実施形態では、遠隔操作装置46を仮想境界線設定部211として動作させることができる。仮想境界線設定部211は、作業想定領域と未作業領域86との境界に仮想境界線215を設定する。仮想境界線215は、未作業領域86の平面視での形状に応じて決定される。未作業領域86の平面視での形状は、遠隔操作装置46の記憶部36に予め記憶された圃場80の平面視での形状に基づいて推定される。
このような構成において、本実施形態でも、原則として第1実施形態と同様に処理が行われる。ただし、図5に示すステップS103では、調整部35による調整が以下のように行われる。即ち、調整の実行開始後、まず調整部35が、圃場80の平面視での形状を取得する。この取得結果に基づいて、調整部35は、中央作業領域81に発生する未作業領域86の平面視での形状を推定する。本実施形態では、未作業領域86の形状は、図14に示すように平面視で6角形状と推定されることになる。
次に、仮想境界線設定部211が、作業想定領域と未作業領域86との境界に仮想境界線215を設定する。仮想境界線215は、前述の交点C1を通過し、第1作業経路P1と平行に延びる直線となる。
続いて、調整部35が、仮想境界線215に対する中央作業領域81及び第2枕地領域84Bのそれぞれの変更を行う。具体的には、調整部35は、中央作業領域81の外周部の位置、及び、第2枕地領域84Bの内周部の位置が、それぞれ仮想境界線215と一致するように、中央作業領域81及び第2枕地領域84Bを調整する。この結果、図14において、中央作業領域81の外周部の位置及び第2枕地領域84Bの内周部の位置は、実線で示す位置81cから仮想境界線215へ移動する。
具体的に言えば、調整部35は、中央作業領域81から未作業領域86を除くように、中央作業領域81の大きさ及び形状を変更する。同時に、調整部35は、中央作業領域81から除かれた未作業領域86が第2枕地領域84Bに追加されるように、第2枕地領域84Bの大きさ及び形状を変更する。従って、圃場80においては、当初(調整前)に比べて、未作業領域86の分だけ、中央作業領域81が縮小する一方、第2枕地領域84Bが拡大することになる。
調整部35による調整が終了すると、図5に示すステップS104と同様の処理が行われる。即ち、制御部4(走行経路設定部34)は、調整後の第2枕地領域84Bに応じて走行経路P0の再設定を行い、第2の候補となる走行経路P0を設定する。
以上に説明したように、本実施形態の領域調整システム99は、位置情報算出部49と、記憶部36と、作業車両情報取得部31と、走行経路設定部34と、調整部35と、を備える。位置情報算出部49は、トラクタ1の位置情報を取得する。記憶部36は、中央作業領域81、及び、中央作業領域81の周囲に設定された枕地領域82を含む圃場80の情報を記憶する。作業車両情報取得部31は、トラクタ1の作業幅W1を含む車両情報を取得する。走行経路設定部34は、中央作業領域81で作業を行うようにトラクタ1を走行させる第1作業経路P1、及び、枕地領域82で作業を行うようにトラクタ1を走行させる第2作業経路P3を、トラクタ1の作業幅W1に基づいて設定する。調整部35は、中央作業領域81及び枕地領域82を調整可能である。トラクタ1の第1作業経路P1の走行により作業されることが想定される作業想定領域が、トラクタ1の走行方向である第1方向と直交する第2方向において、中央作業領域81よりも小さくなり、中央作業領域81に未作業領域86が発生する場合、調整部35は、未作業領域86が枕地領域82(第2枕地領域84B)に含まれるように、中央作業領域81及び枕地領域82を調整する。
これにより、中央作業領域81内において未作業領域86が発生した場合であっても、トラクタ1の走行経路P0を適切に設定して、作業効率を低下させることなくトラクタ1に作業を行わせることができる。
また、本実施形態の領域調整システム99は、作業想定領域と未作業領域86との境界に仮想境界線215を設定する仮想境界線設定部211を備える。
これにより、仮想境界線設定部211を用いて中央作業領域81及び枕地領域82の調整を円滑に行うことができる。
なお、未作業領域86の平面視での形状が第1実施形態及び第2実施形態のように矩形状である場合には、本実施形態のように多角形状である場合と同様に、調整部35による調整を行うことができる。
次に、第4実施形態を説明する。図16は、本実施形態における調整部35による調整を説明する一部拡大模式図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
本実施形態は、前述のステップS103における中央作業領域81及び枕地領域82の調整及び当該調整後における処理に関して、第1実施形態と相違する。ここでは、枕地領域82の調整として、概ね第1方向に延びる第2枕地領域84Bの調整が行われる場合を例に挙げて説明する。
本実施形態では、図16に示すように、中央作業領域81に発生する未作業領域86が、平面視で3角形状となっている場合を想定する。未作業領域86は、その3角形を規定する3つの辺として、第5辺225、第6辺226、及び第7辺227を備える。
第5辺225は、第2方向に延びている。第6辺226は、作業想定領域に隣接しつつ、第5辺225の端部から第1方向に延びている。第5辺225と第6辺226は、交点C2で交わる。第7辺227は、第5辺225の端部と第6辺226の端部とを結ぶように、第1作業経路P1に対して斜めに延びている。
作業想定領域の大きさが第2方向において中央作業領域81の大きさよりも小さくなり、前述のような形状の未作業領域86が中央作業領域81に発生した場合を考える。本実施形態では、未作業領域86が、中央作業領域81に含まれる代わりに枕地領域82に含まれるように、遠隔操作装置46の調整部35により中央作業領域81及び枕地領域82の調整が行われる。
遠隔操作装置46は、前記の第3実施形態と同様に、仮想境界線設定部211を備える。
このような構成において、本実施形態でも、原則として第1実施形態と同様に処理が行われる。ただし、図5に示すステップS103では、調整部35による調整が以下のように行われる。即ち、調整の実行開始後、まず調整部35が、圃場80の平面視での形状を取得する。この取得結果に基づいて、調整部35は、中央作業領域81に発生する未作業領域86について平面視での形状を推定する。本実施形態では、未作業領域86の形状は、図16に示すように平面視で3角形状と推定されることになる。
次に、仮想境界線設定部211が、作業想定領域と未作業領域86との境界に仮想境界線215を設定する。具体的に説明すると、未作業領域86の3つの辺から、作業想定領域と隣接した1辺(第6辺226)を除き、残った2辺のうち短い方の辺を考える。図16の例では、そのような辺は第5辺225である。仮想境界線設定部211は、この第5辺225を選択する。そして、仮想境界線設定部211は、第2枕地領域84Bの第2方向における外周部84Baと平行である直線を、仮想境界線215として設定する。この仮想境界線215は、前述の選択された辺(第5辺225)において作業想定領域に近い側の端部(前述の交点C2)を通過するように定められる。第2枕地領域84Bの第2方向における外周部84Baは、前記の2辺のうち長い方の辺である第7辺227と、略平行に延びている。
続いて、調整部35が、仮想境界線215に対する中央作業領域81及び第2枕地領域84Bのそれぞれの変更を行う。具体的には、調整部35は、中央作業領域81の外周部の位置、及び、第2枕地領域84Bの内周部の位置が、それぞれ仮想境界線215と一致するように、中央作業領域81及び第2枕地領域84Bを調整する。この結果、図16において、中央作業領域81の外周部の位置及び第2枕地領域84Bの内周部の位置は、実線で示す位置81dから仮想境界線215へ移動する。
具体的に言えば、調整部35は、中央作業領域81から未作業領域86を除き、更に、作業想定領域の一部(仮想境界線215よりも第2枕地領域84B側に位置する部分)228を除くように、中央作業領域81の大きさ及び形状を変更する。一方、調整部35は、中央作業領域81から除かれた未作業領域86及び上記の作業想定領域の一部228が第2枕地領域84Bに追加されるように、第2枕地領域84Bの大きさ及び形状を変更する。
従って、圃場80においては、当初(調整前)に比べて、未作業領域86及び作業想定領域の一部228の分だけ、中央作業領域81が縮小する一方、第2枕地領域84Bが拡大することになる。
調整部35による調整が終了すると、図5に示すステップS104と同様の処理が行われる。即ち、制御部4(走行経路設定部34)は、調整後の第2枕地領域84Bに応じて走行経路P0の再設定を行い、第2の候補となる走行経路P0を設定する。
以上に説明したように、本実施形態の領域調整システム99において、調整部35は、中央作業領域81及び枕地領域82を調整するとき、第2枕地領域84Bに作業想定領域の一部を含める。
これにより、中央作業領域81及び枕地領域82の調整が行い易くなる。
本実施形態の領域調整システム99において、仮想境界線設定部211は、仮想境界線215を設定する。仮想境界線215は、未作業領域86の周縁部を形成する複数の辺のうち第2方向に延びる1辺(第5辺225)において作業想定領域に近い側の一端(交点C2)を通過する直線である。枕地領域82のうち、第2方向において作業想定領域との間に未作業領域86を発生させる一部分である第2枕地領域84Bを考えた場合、仮想境界線215は、この第2枕地領域84Bの第2方向における外周部84Baと平行である。
これにより、未作業領域86に応じて適切に仮想境界線215を設定することができる。
本実施形態の領域調整システム99において、未作業領域86は平面視で3角形状である場合、仮想境界線設定部211は、未作業領域86の周縁部を形成する3辺から作業想定領域と隣接した1辺(第6辺226)を除いた2辺のうちの短い方の辺(第5辺225)の、作業想定領域に近い側の端点(交点C1)を通過し、かつ、第2枕地領域84Bの第2方向における外周部84Baと平行である直線を、仮想境界線215として設定する。
これにより、未作業領域86が平面視で3角形状の場合に、当該未作業領域86に応じた適切な仮想境界線215を得ることができる。
次に、第5実施形態を説明する。図17は、本実施形態における調整部35による調整を説明する一部拡大模式図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
本実施形態は、前述のステップS103における中央作業領域81及び枕地領域82の調整及び当該調整後における処理に関して、第1実施形態と相違する。ここでは、枕地領域82の調整として、概ね第1方向に延びる第2枕地領域84Bの調整が行われる場合を例に挙げて説明する。
本実施形態では、中央作業領域81に発生する未作業領域86が、4角形状(ただし、矩形を除く。)となっている場合を想定する。図17の例では、未作業領域86は、平面視で台形状となっている。未作業領域86は、その4角形を規定する4つの辺として、第8辺238、第9辺239、第10辺240、及び第11辺241を備える。
第8辺238及び第9辺239は、互いに第1方向に所定間隔をあけて対向するように配置され、それぞれ第2方向に延びている。第10辺240は、第8辺238及び第9辺239のそれぞれの一端(作業想定領域に近い側の端部)を結ぶように、作業想定領域に隣接しつつ、第1方向に延びている。第8辺238と第10辺240とは、交点C3で交わる。第11辺241は、第10辺240に対して第2方向に間隔をあけて配置され、第1方向(第1作業経路P1)に対して斜めに延びている。
作業想定領域の大きさが第2方向において中央作業領域81の大きさよりも小さくなり、前述のような形状の未作業領域86が中央作業領域81に発生した場合を考える。本実施形態では、この未作業領域86が、中央作業領域81に含まれる代わりに枕地領域82に含まれるように、調整部35により中央作業領域81及び枕地領域82の調整が行われる。
また、遠隔操作装置46は、前記の第3実施形態と同様に、仮想境界線設定部211を備える。
このような構成において、本実施形態でも、原則として第1実施形態と同様に処理が行われる。ただし、図5に示すステップS103では、調整部35による調整が以下のように行われる。即ち、調整の実行開始後、まず調整部35が、圃場80の平面視での形状を取得する。この取得結果に基づいて、調整部35は、中央作業領域81に発生する未作業領域86について平面視での形状を推定する。本実施形態では、未作業領域86の形状は、図17に示すように平面視で台形状と推定されることになる。
次に、仮想境界線設定部211が、作業想定領域と未作業領域86との境界に仮想境界線215を設定する。仮想境界線設定部211は、平面視で未作業領域86の周縁部を形成する4つ辺のうち、作業想定領域と隣接する1辺を特定する。図17の例で、このような辺は第10辺240である。次に、仮想境界線設定部211は、この辺に両側で隣接する2辺を特定する。図17の例で、このような辺は第8辺238及び第9辺239である。その後、仮想境界線設定部211は、この2辺のうち長い方の辺(第8辺238)を選択する。仮想境界線設定部211は、第2枕地領域84Bの第2方向における外周部84Baと平行である直線を仮想境界線215として設定する。仮想境界線215は、前述の選択された辺(第8辺238)において作業想定領域に近い側の端部(交点C3)を通過するように定められる。前記の1辺である第10辺240と対向する辺は第11辺241であるが、第2枕地領域84Bの第2方向における外周部84Baは、この第11辺241と略平行に延びている。
続いて、調整部35が、仮想境界線215に対する中央作業領域81及び第2枕地領域84Bのそれぞれの変更を行う。具体的には、調整部35は、中央作業領域81の外周部の位置、及び、第2枕地領域84Bの内周部の位置が、それぞれ仮想境界線215と一致するように、中央作業領域81及び第2枕地領域84Bを調整する。この結果、図17において、中央作業領域81の外周部の位置及び第2枕地領域84Bの内周部の位置は、実線で示す位置81eから仮想境界線215へ移動する。
具体的に言えば、調整部35は、中央作業領域81から未作業領域86を除き、更に、作業想定領域の一部(仮想境界線215よりも第2枕地領域84B側に位置する部分)248を除くように、中央作業領域81の大きさ及び形状を変更する。一方、調整部35は、中央作業領域81から除かれた未作業領域86及び上記の作業想定領域の一部248が第2枕地領域84Bに追加されるように、第2枕地領域84Bの大きさ及び形状を変更する。
従って、圃場80においては、当初(調整前)に比べて、未作業領域86及び作業想定領域の一部248の分だけ、中央作業領域81が縮小する一方、第2枕地領域84Bが拡大することになる。
調整部35による調整が終了すると、図5に示すステップS104と同様の処理が行われる。即ち、制御部4(走行経路設定部34)は、調整後の第2枕地領域84Bに応じて走行経路P0の再設定を行い、第2の候補となる走行経路P0を設定する。
以上に説明したように、本実施形態の領域調整システム99において、未作業領域86は平面視で4角形状である場合(ただし、未作業領域86は矩形状ではない)、仮想境界線設定部211は、以下のように仮想境界線215を設定する。即ち、未作業領域86の周縁部を形成する4辺のうち、作業想定領域に隣接した1辺(第10辺240)に着目し、この着目した1辺に隣接する2辺のうち長い方の辺(第8辺238)を考える。仮想境界線設定部211は、この第8辺238における作業想定領域に近い側の端点(交点C3)を通過し、かつ、第2枕地領域84Bの第2方向における外周部84Baと平行である直線を、仮想境界線215として設定する。
これにより、未作業領域86が平面視で4角形状の場合に、当該未作業領域86に応じた適切な仮想境界線215を得ることができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
トラクタ1における作業機3として、例えば草刈機を採用することもできる。この場合、作業機3は、トラクタ1の走行機体2に対して左右方向にオフセットした状態で走行機体2に装着される。そして、例えば、中央作業領域81において、トラクタ1の自律走行の終了位置が中央作業領域81の中央に設定された場合、図13に示すように、第1作業経路P1及び接続経路P2が、中央作業領域81内を外側から内側へ角渦巻き状に周回する周回走行経路とされる。この構成であっても、トラクタ1が自律走行及び自律作業を行う際に当該トラクタ1の走行範囲内に未作業領域が発生することを回避することができる。
上記の実施形態では、調整部35により枕地領域82の調整を行うために、第2枕地領域84Bの調整を行う構成を例として挙げているが、これに代えて、第1枕地領域84Aの調整を行う構成としてもよい。
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。