JP2017197804A - 基材とdlc層との間に形成される中間層の形成方法およびdlc膜被覆部材の製造方法 - Google Patents
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に関する。
また、別の観点による本発明として、上記中間層の形成方法により形成された中間層上に、DLC層を成膜するDLC膜被覆部材の製造方法が提供される。
また、UBMスパッタ法は、チャンバー内の温度が低温(200℃以下)でも中間層の形成が可能なため、基材の変形や変寸を抑えることが可能となる。また、中間層とDLC層の形成に用いる装置は、中間層が形成されるチャンバーと同一チャンバー内においてプラズマCVDを行うことが可能なUBMスパッタ装置を使用する。このようなUBMスパッタ装置は周知のものであるため、本明細書においては装置構造等の説明は省略する。
まず、UBMスパッタ装置のチャンバー内に基材2としてSCM415、SUS310、SKD11等の鉄系材料を搬入する。続いて、チャンバー内を真空引きし、例えば2.6×10−3Pa程度まで減圧する。その後、必要に応じて、タングステンフィラメントの加熱によるアルゴン(Ar)ボンバードメント処理を施して基材表面のクリーニングを行っても良い。なお、Arボンバードメント処理の処理条件は、例えばチャンバー内圧力が1.3〜1.4Pa、処理時間が30分、フィラメント放電電圧は40V、フィラメント放電電流は10A、バイアス電圧は300〜400Vである。
まず、基材2の表面にTi層4aを形成する。Ti層4aは、例えばスパッタ法にて形成する。Ti層4aにより基材2と後述するTi‐TiC傾斜層4bとの密着性の向上を図ることが可能となる。
なお、Ti層4aの厚みは、0.05〜0.2μmにすることが好ましい。Ti層4aの厚みが0.05μm未満であると、ナノインデンテーション硬さが5〜10GPaの柔らかい層が薄くなりすぎることによってTi層4aが基材2の変形に追従できなくなり、基材2から剥離しやすくなる場合がある。一方、Ti層4aの厚みが0.2μmを超えると、その柔らかい層が厚くなりすぎることでその部分の強度が低下し、ファレックス試験時においてTi層4aで破壊が生じる場合がある。
また、Ti層成膜工程におけるTiターゲットのスパッタ出力は5kW以上9kW以下であることが好ましい。Tiターゲットのスパッタ出力が低すぎると、イオンのエネルギーが低くなり密着性が低下する場合がある。一方、Tiターゲットのスパッタ出力が高すぎると、基材温度が高くなりすぎてしまう場合がある。
次に、Ti層4aの表面にTiCを含む、Ti‐TiC傾斜層4bを形成する。
Ti‐TiC傾斜層4bは、後述するTiC層4cとの密着性を向上させるために、Ti‐TiC傾斜層4bに含まれるTiC量を当該層の基材側からDLC層側に近づくに従って増加させて層中の濃度勾配が傾斜するように形成する。
Ti‐TiC傾斜層4bは、例えば不活性ガスと炭素源ガスの混合ガスを用いてスパッタ法にて形成する。スパッタ法は、混合ガスを供給してターゲット用パルス電源を作動させると共にバイアス用パルス電源を作動させて、基材2にバイアス電圧を印加することで膜を形成する方法である。不活性ガスとしては例えばアルゴン(Ar)を用いる。炭素源ガスとしては例えば、メタン(CH4)やアセチレン(C2H2)、エチレン(C2H4)、エタン(C2H6)、ベンゼン(C6H6)、トルエン(C7H8)などの炭化水素系のガスを用いる。
本実施形態のTi‐TiC傾斜層4bの形成方法の一例として、スパッタに用いる不活性ガスと炭素源ガスの流量比の制御する方法がある。例えば基材側からDLC層側に向かって炭素源ガスの流量比を段階的または連続的に漸増させるように制御する。このような流量制御で成膜することで、Ti層4aとの界面から離れるに従ってTi量に対するTiC量が増加していくTi‐TiC傾斜層4bが形成される。
なお、Ti‐TiC傾斜層4bの厚みは、0.02〜0.2μmにすることが好ましい。Ti‐TiC傾斜層4bの厚みが0.02μm未満であると、ナノインデンテーション硬さが5〜10GPaの柔らかい層が薄くなりすぎることによってTi‐TiC傾斜層4bが基材2の変形に追従できなくなり、基材2から剥離しやすくなる場合がある。一方、Ti‐TiC傾斜層4bの厚みが0.2μmを超えると、その柔らかい層が厚くなりすぎることでその部分の強度が低下し、ファレックス試験時においてTi‐TiC傾斜層4bで破壊が生じる場合がある。
また、Ti‐TiC傾斜層成膜工程におけるTiターゲットのスパッタ出力は5kW以上9kW以下であることが好ましい。Tiターゲットのスパッタ出力が低すぎると、イオンのエネルギーが低くなり密着性が低下する場合がある。一方、Tiターゲットのスパッタ出力が高すぎると、基材温度が高くなりすぎてしまう場合がある。
次に、Ti‐TiC傾斜層4bの表面にTiC層4cを形成する。TiC層4cは、基材2とDLC層5との硬度差などの相違を小さくするために形成する。
TiC層4cは、層中に含まれるTiC量の濃度勾配が一定となるように形成することが好ましい。そのため、成膜工程中の不活性ガスと炭素源ガスの流量比、スパッタ出力、バイアス電圧および成膜圧力は一定にすることが好ましい。
なお、TiC層4cを形成する際の不活性ガスと炭素源ガスのガス流量比は、85:15〜97:3にすることが好ましい。また、TiC層4cの厚みは、0.1〜0.5μmにすることが好ましい。TiC層4cの厚みが0.1μm未満であると、ナノインデンテーション硬さが5〜10GPaの柔らかい層が薄くなりすぎることによってTiC層4cが基材2の変形に追従できなくなり、基材2から剥離しやすくなる場合がある。一方、TiC層4cの厚みが0.5μmを超えると、その柔らかい層が厚くなりすぎることでその部分の強度が低下し、ファレックス試験時においてTiC層4cで破壊が生じる場合がある。
また、TiC層成膜工程におけるTiターゲットのスパッタ出力は5kW以上9kW以下であることが好ましい。Tiターゲットのスパッタ出力が低すぎると、イオンのエネルギーが低くなり密着性が低下する場合がある。一方、Tiターゲットのスパッタ出力が高すぎると、基材温度が高くなりすぎてしまう場合がある。
次に、TiC層4cの表面にTiCとWCを含むTiC‐WC傾斜層4dを形成する。
TiC‐WC傾斜層4dは、後述するWC層4eとの密着性を向上させるために、TiC‐WC傾斜層4dの基材側からDLC層側に向かって当該層に含まれるWC量をTiC量に対して相対的に増加させて濃度勾配が傾斜するように形成する。換言すると、TiC‐WC傾斜層4dの基材側からDLC層側に向かって当該層に含まれるTiC量がWC量に対して相対的に減少するように層中の濃度勾配が傾斜している。すなわち、このTiC‐WC傾斜層4dの形成におけるTiCとWCの成分濃度は、相対的に増減するような関係にある。
このようなTiC−WCからなる傾斜層は、例えば上記TiC層4cの形成後に炭素原ガスを供給しつつ、雰囲気中のTi濃度を漸減させながら雰囲気中のWC濃度を漸増または一定にすることで、あるいは雰囲気中のTi濃度を一定にし、雰囲気中のWC濃度を漸増させることで形成される。層中の成分濃度は雰囲気中の原料濃度により制御できるため、雰囲気中の各原料濃度を制御すれば所望の成分濃度のTiC‐WC傾斜層4dを形成することができる。
より具体的には、基材側からDLC層側に向かってTiC量が段階的または連続的に漸減し、基材側からDLC層側に向かってWC量が段階的または連続的に漸増させるために、TiターゲットおよびWCターゲットへのスパッタ出力を調節する。例えば、基材側からDLC層側に向かってTi量を漸減させるためにTiターゲットのスパッタ出力を徐々に下げ、基材側からDLC層側に向かってWC量を漸増させるためにWCターゲットのスパッタ出力を徐々に上げることでTiC‐WC傾斜層4dを形成する。また、Tiターゲットへのスパッタ出力のみを上げるか、またはWCターゲットへのスパッタ出力のみを上げてもTiC‐WC傾斜層4dを形成することができる。
なお、TiC‐WC傾斜層4dの厚みは、0.1〜0.3μmであることが好ましい。TiC‐WC傾斜層4dの厚みが0.1μm未満であると、ナノインデンテーション硬さが10〜20GPaの硬い層が薄くなりすぎることでその部分の強度が低下し、ファレックス試験時においてTiC‐WC傾斜層4dで破壊が生じる場合がある。一方、TiC‐WC傾斜層4dの厚みが0.3μmを超えると、その硬い層が厚くなりすぎることによってTiC‐WC傾斜層4dが基材2の変形に追従できなくなり、基材2から剥離しやすくなる場合がある。
また、Tiターゲットのスパッタ出力は、TiC‐WC傾斜層4dの成膜初期では5kW以上9kW以下とし、TiC‐WC傾斜層4dの成膜終期では2kW以上4kW以下となるように連続的に漸減することが好ましい。一方、WCターゲットのスパッタ出力は、TiC‐WC傾斜層4dの成膜初期では0kW超、2kW以下とし、TiC‐WC傾斜層4dの成膜終期では2kW超4kW以下となるように連続的に漸増することが好ましい。
また、TiC‐WC傾斜層4dの成膜工程中の不活性ガスと炭素源ガスの流量比は85:15〜97:3にすることが好ましい。また、TiC‐WC傾斜層4dの成膜工程におけるバイアス電圧は50〜500Vであることが好ましい。
なお、TiC‐WC傾斜層4dの成膜終期においては、層中に含まれるC量を基材側からDLC層側に向かって増加させて濃度勾配が傾斜するように成膜しても良い。層中の炭素量を段階的または連続的に漸増させるためには、成膜工程中の不活性ガスと炭素源ガスの流量比を調節したり、CターゲットをスパッタしてC量を調節したりすれば良い。各ターゲットのスパッタ出力を調節して成膜する場合には、Tiターゲットのスパッタ出力を2kW以上4kW以下から2kW未満0kWまで漸減させ、WCターゲットのスパッタ出力を2kW超4kW以下で維持し、Cターゲットのスパッタ出力を0kWから6kW以上8kW以下まで漸増させることが好ましい。これにより、TiC‐WC傾斜層4dの成膜終期において、Ti量が漸減し、かつ、C量が漸増するようなTiC,WCおよびCから成る傾斜層(不図示)が形成される。この傾斜層は、TiCおよびWCから成る傾斜層から後述のWC層に向かって硬度が徐々に大きくなる層であるため、TiC−WC傾斜層とWC層との間の硬度差を小さくすることができる。これにより、高負荷摺動時における耐焼き付き性を更に向上させることができる。
なお、TiC,WCおよびCから成る傾斜層(不図示)の厚みは、0.02〜0.2μmであることが好ましい。膜厚が0.2μmを超えると、ナノインデンテーション硬さが15〜20GPaの硬い層が厚くなりすぎることによって基材の変形に追従できなくなり、この傾斜層が基材から剥離しやすくなる場合がある。
次に、TiC‐WC傾斜層4dの表面にWC層4eを形成する。
WC層4eは、層中に含まれるWC量の濃度勾配が一定となるように成膜してもよいし、基材側からDLC層側に近づくにつれて段階的または連続的にC量が漸増させて組成を傾斜させるように成膜しても良い。WC量の濃度勾配を一定とするためには、例えば成膜工程中の不活性ガスと炭素源ガスの流量比、バイアス電圧および成膜圧力を一定に維持する。また、WC層4eに含まれるC量を漸増させるためには、Cターゲットのスパッタ出力を上げても良いし、炭素源ガスの流量比を上げても良い。
続いて、中間層4の表面、すなわち、WC層4eの表面にDLC層5を形成する。DLC層5の成膜方法としては、例えばプラズマCVD法が用いられ、メタン、アセチレン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素ガスをチャンバー内に導入し、この炭化水素ガスの成分が分解されることによってDLC層5が形成される。また、プラズマCVD法としては、例えば直流パルスプラズマCVD法が使用される。DLC層5の厚みは、使用用途によって適宜設定される。例えば0.5μm〜5.0μmとすることができる。
まず、UBMスパッタ装置のチャンバー内に基材を搬入する。その後、チャンバー内を真空排気し、2.6×10-3Paまで減圧する。続いて、ヒーターの設定温度を700℃とし基材を30分間加熱した後、ヒーターを止め5分間放置する。次に、アルゴン(Ar)ガスのアルゴンイオンを用いてアルゴンボンバードメント処理を行い、基材表面のクリーニングを行う。アルゴンボンバードメント処理は以下の手順で行う。
1) アルゴンガスを流量960sccmでチャンバー内に1分間導入する。
2) アルゴンガス雰囲気下でタングステンフィラメントの放電電流を10A、基材にかかるバイアス電圧を300Vに設定し、1分間放電する。
3) 1)と2)を5回繰り返し行う。
4) アルゴンガスを流量960sccmでチャンバー内に1分間導入する。
5) アルゴンガス雰囲気下でタングステンフィラメントの放電電流を10A、基材にかかるバイアス電圧を400Vに設定し、1分間放電する。
6) チャンバー内へのアルゴンガス流量を維持しつつ、アルゴンガス雰囲気下でタングステンフィラメントの放電電流を10A、基材にかかるバイアス電圧を400Vに設定し、1分間放電する。
7) 5)と6)を10回繰り返し行う。
8) チャンバー内へのアルゴンガス流量を維持しつつ、タングステンフィラメントの放電電流および基材にかかるバイアス電圧への印加を止め、1分間放置する。
アルゴンボンバードメント処理後に、アルゴンガスの流量を300sccmに設定してチャンバー内の圧力を0.4Paとし、その後、Tiターゲットへのスパッタ出力を6kW、基材へのバイアス電圧を200V、チャンバー内に導入するアルゴンガスの流量を300sccmで一定とし、基材表面に0.1μmのTi層を形成した。
次に、Tiターゲットへのスパッタ出力が6kW、アルゴンガスの流量が300sccm、チャンバー内の圧力が0.4Paである状態から、さらに炭素源となるメタン(CH4)ガスを導入し、チャンバー内の圧力が0.4Paで維持されるようにアルゴンガスとメタンガスの流量比を調節した。具体的には本工程における最終的なガス流量比がAr:CH4=95:5になるようアルゴンガスの流量を300sccmから285sccmまで段階的に漸減させながら導入し、メタンガスの流量を0sccmから15sccmまで段階的に漸増させながら導入した。さらに基材へのバイアス電圧も200Vから最終的に75Vになるよう段階的に下げることで、基材側からDLC層側に近づくにつれて層中のC量が漸増するよう組成傾斜させたTi−TiC傾斜層を0.05μm形成した。
次に、Tiターゲットへのスパッタ出力を6kWとしたまま、チャンバー内のガス流量比がAr:CH4=95:5になるようアルゴンガスの流量を285sccm、メタンガスの流量を15sccmに維持し、チャンバー内の圧力が0.2Paとなるよう排気量を調節した。そして、基材に印加されるバイアス電圧を75Vに設定して23.1分間成膜処理を行い、TiC層を形成した。
その後、次に形成するTiC−WC傾斜層の成膜条件への移行準備として、0.5分間かけてバイアス電圧を75Vから100Vへ、アルゴンガス流量を285sccmから300sccmへ調節し、チャンバー内の圧力が0.2Paから0.4Paとなるように排気量も調節した。最終的には合計で0.2μmのTiC層を形成した。
次に、TiC層上にTiC−WC傾斜層を形成する。本工程では、アルゴンガス流量を300sccm、メタンガス流量を15sccm、チャンバー内の圧力を0.4Pa、基材へのバイアス電圧を100Vに維持したまま、下記のように成膜条件を変えながらTiC−WC傾斜層を形成した。
1) Tiターゲットへのスパッタ出力を6kW、第1のWCターゲットおよび第2のWCターゲットへのスパッタ出力をそれぞれ0.5kWとして、0.5分間成膜処理を行う。
2) 第1のWCターゲットおよび第2のWCターゲットへのスパッタ出力をそれぞれ0.5kWから1.5kWに上げて、4.6分間成膜処理を行う。
3) 第1のWCターゲットおよび第2のWCターゲットへのスパッタ出力をそれぞれ1.5kWから2.3kWに上げる一方で、Tiターゲットへのスパッタ出力を6kWから4.6kWに下げて、3.1分間成膜処理を行う。
4) 第1のWCターゲットおよび第2のWCターゲットへのスパッタ出力をそれぞれ2.3kWから3kWに上げる一方で、Tiターゲットへのスパッタ出力を4.6kWから3kWに下げて、3.1分間成膜処理を行う。
5) Tiターゲットへのスパッタ出力を3kW、第1のWCターゲットおよび第2のWCターゲットへのスパッタ出力をそれぞれ3kW、第1のCターゲットおよび第2のCターゲットへのスパッタ出力を0.8kWとし、1分間成膜処理を行う。
このような成膜処理によりTiCとWCが混合し、且つ、基材側からDLC層側に向かってTi量が漸減し、WC量が漸増するよう組成傾斜した厚さ0.2μmのTiC−WC傾斜層を形成した。
次に、TiC−WC傾斜層上にWC層を形成する。Tiターゲットへのスパッタ電源を停止し、第1のWCターゲットおよび第2のWCターゲットへのスパッタ出力を3kWに維持し、第1のCターゲットおよび第2のCターゲットへのスパッタ出力を0.8kWから6kwに上げて12.3分間成膜し、厚さ0.05μmのWC層を形成した。
次に、WC層上にプラズマCVD法によってDLC層を形成する。直流パルス電源を作動させて基材にモノポーラDCパルス電圧をバイアス電圧として印加し、チャンバー内に導入されたアセチレンガス(C2H2)をプラズマ化することでプラズマCVD処理を行う。
本実施例では直流パルス電源によって印加されるバイアス電圧1.05kV、パルス放電電流のピーク値8A、周波数1kHz、duty比30%、チャンバー内の圧力が1.0Paになるよう流量1000sccmでアセチレンガスを導入して、75分間成膜処理を行い、厚さ1.5μmのDLC層を形成した。
中間層およびDLC層から成るDLC膜が被覆された基材を試験片とし、以下の条件によるファレックス試験を行い、焼付荷重(N)を測定して焼付特性を評価した。
1) ポリアルファオレフィンをオイルバスにいれる。
2) Vブロックおよび試験片をポリアルファオレフィンにいったん浸けたのちにセットする。
3) オイルバスを持ち上げVブロックおよび試験片がポリアルファオレフィンに浸かるように固定する。
4) ヒーター加熱を行い、油温65±1℃、試験片の温度60±1℃になるまで待つ
5) 最初は試験片の回転は行わず試験片に500Nの荷重をかけ、1分保持する。その後、試験片を300rpmで回転させながら荷重を1分ごとに500Nずつ上げていき、摩擦係数が急激に増加し、異音が発したところで装置を止め、その時の負荷荷重を焼き付き荷重とした。
以上の条件でファレックス試験を行った結果、本実施例における試験片の焼付き荷重は12000Nであった。
試験片のアルゴンボンバードメント処理までは上記実施例と同様とし、下記の方法により図2に示す中間層4を形成したのち、中間層の上にDLC層5を形成した。
アルゴンボンバードメント処理後、チャンバー内の圧力が0.4Paになるまで、アルゴンガスを300sccm導入し、Tiターゲットへのスパッタ出力を6kW、基材2へのバイアス電力を200Vとして1分間スパッタし、基材表面に厚さ0.1μmのTi層4aを形成した。
続いて、Tiターゲットへのスパッタ出力が6kW、アルゴンガスの流量が300sccm、チャンバー内の圧力が0.4Paである状態から、さらに炭素源となるメタン(CH4)ガスを導入した。アルゴンガスとメタンガスは、最終的なガス流量比がAr:CH4=95:5になるようアルゴンガス流量を300sccmから285sccmになるよう段階的に減じて導入し、メタンガス流量を0sccmから15sccmになるよう段階的に増して導入した。さらに基材2へのバイアス電圧も200Vから最終的に75Vになるよう段階的に下げた。上記条件にて7.5分間スパッタを行い、Ti層表面から離れるにつれてC量が漸増する厚さ0.05μmのTi−TiC傾斜層4bを形成した。
次に、Tiターゲットへのスパッタ出力を6kWとしたまま、チャンバー内のガス流量比がAr:CH4=95:5になるようアルゴンガスの流量を285sccm、メタンガスの流量を15sccmに維持し、チャンバー内の圧力が0.2Paとなるよう排気量を調節した。そして、基材2へのバイアス電圧を75Vに設定して90分間スパッタを行い、厚さ0.45μmのTiC層4cを形成した。
その後、上記実施例と同様のDLC層5を形成した。
2 基材
3 DLC膜
4 中間層
4a Ti層
4b Ti−TiC傾斜層
4c TiC層
4d TiC‐WC層
4e WC層
5 DLC層
Claims (4)
- 基材とDLC層との間に形成されるスパッタ法による中間層の形成方法であって、
前記基材表面に形成されるTiC層上に、TiターゲットとWCターゲットをスパッタすることでWCおよびTiCからなるTiC−WC傾斜層を形成する工程において、前記基材側から前記DLC層側に向かってTi量を漸減させるためにTiターゲットのスパッタ出力を下げる工程、および、前記基材側から前記DLC層側に向かってWC量を漸増させるためにWCターゲットのスパッタ出力を上げる工程の少なくともいずれか一方の工程を有し、
前記TiC―WC傾斜層上に、WC層を形成する工程を有する、中間層の形成方法。 - 請求項1に記載された方法により形成された中間層上にDLC層を形成する、DLC膜被覆部材の製造方法。
- 基材とDLC層との間に形成される中間層であって、
基材上に形成されるTiC層と、
前記TiC層上に形成される、前記基材側から前記DLC層側に向かって層中のWC量がTiC量に対して相対的に漸増するような濃度勾配を有するTiC−WC傾斜層と、
前記TiC−WC傾斜層上に形成されるWC層とを有する、中間層。 - 基材とDLC層との間に中間層を有するDLC膜被覆部材であって、
基材上に形成されるTiC層と、
前記TiC層上に形成される、前記基材側から前記DLC層側に向かって層中のWC量がTiC量に対して相対的に漸増するような濃度勾配を有するTiC−WC傾斜層と、
前記TiC−WC傾斜層上に形成されるWC層とを有する中間層と、
前記中間層上に形成されるDLC層とを有する、DLC膜被覆部材。
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