本発明に係る冷蔵庫の第一実施形態例を,図1〜図8を参照しながら説明する。まず,本実施形態例の冷蔵庫の構成を,図1〜図4を参照しながら説明する。図1は本実施形態例の冷蔵庫の正面外形図,図2は本実施形態例の冷蔵庫の庫内の構成を表す縦断面図,図3は本実施形態例の冷蔵庫の冷却器付近の構成を表す拡大断面図,図4は本実施形態例の冷蔵庫の冷凍サイクル構成を表す図である。
図1に示すように本実施形態例の冷蔵庫は、冷蔵庫本体1に上方から,冷蔵室2,製氷室4及び上段冷凍室5,下段冷凍室6,野菜室8を備えている。製氷室4と上段冷凍室5は,冷蔵室2と下段冷凍室6との間に左右に並べて設けられている。冷蔵室2及び野菜室8は,5℃程度の冷蔵温度帯の貯蔵室である。また,製氷室4,上段冷凍室5及び下段冷凍室6は,−18〜−20℃程度の冷凍温度帯の貯蔵室である(以下,製氷室4,上段冷凍室5,下段冷凍室6の総称を冷凍室7とする)。
冷蔵室2には,前方に左右に分割された観音開き型の冷蔵室扉2a,2bが備えられている。製氷室4,上段冷凍室5,下段冷凍室6,野菜室8には,それぞれ引き出し式の製氷室扉4a,上段冷凍室扉5a,下段冷凍室扉6a,野菜室扉8aが備えられている。
図2に示すように,本実施形態例の冷蔵庫の庫外と庫内は,外箱1aと内箱1bとの間に発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体50により隔てられている。また,本実施形態例の冷蔵庫には,背面,両側面に真空断熱材60が実装されている(両側面は不図示)。
冷蔵室扉2a,2bの貯蔵室内側には,複数の扉ポケット47,冷蔵室2内には複数の棚46が備えられている。また,製氷室4,上段冷凍室5,下段冷凍室6及び野菜室8は,それぞれの貯蔵室の前方に備えられた扉4a,5a,6a,8aと一体に前後方向に移動する収納容器4b,5b,6b,8bが備えられている。扉4a,5a,6a,8aは,それぞれ図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより,収納容器4b,5b,6b,8bが引き出せるようになっている。
図2に示すように本実施形態例の冷蔵庫では,冷蔵室2と,上段冷凍室5及び製氷室4(図1参照)とが上側断熱仕切壁51によって隔てられ,下段冷凍室6と野菜室8とが下側断熱仕切壁52によって断熱的に隔てられている。なお,冷蔵室2の最下段(上側断熱仕切り壁51の上部)には,−1〜1℃程度に維持されるチルド室3が備えられている。また、冷凍室7の背部に冷却器収納室9を備え,冷却器収納室9内には冷却手段として冷却器21を備えている。また,冷却器21の上方には,送風手段として庫内送風機22を備えている。冷蔵室2,冷凍室7,野菜室8への送風経路には,それぞれ冷蔵室ダンパ24,冷凍室ダンパ26,野菜室ダンパ(不図示)を備えており,各室への送風が制御される。
冷蔵室ダンパ24が開放状態の場合,庫内送風機22により昇圧された冷気は,冷蔵室送風ダクト11を流れ,冷蔵室吐出口31から冷蔵室2に吹き出す。冷蔵室2を冷却して温度が上昇した冷気は,冷蔵室戻り口(不図示),冷蔵室戻りダクト(不図示)を介して冷却器収納室9に戻り,冷却器21と熱交換して再び低温冷気となる。
冷凍室ダンパ26が開放状態の場合,庫内送風機22により昇圧された低温冷気は,冷凍室送風ダクト13を流れ,冷凍室吐出口33から冷凍室7に吹き出す。冷凍室7を冷却して温度が上昇した冷気は,冷凍室戻り口36を介して冷却器収納室9に戻り,冷却器21と熱交換して再び低温冷気となる。
野菜室ダンパ(不図示)が開放状態の場合,庫内送風機22により昇圧された低温冷気は,野菜室送風ダクト(不図示)を流れ,野菜室吐出口(不図示)から野菜室8に吹き出す。野菜室8を冷却して温度が上昇した冷気は,野菜室戻り口37,野菜室戻りダクト17を介して冷却器収納室9に戻り,冷却器21と熱交換して再び低温冷気となる。
冷蔵室2の背部,冷凍室7の背部,野菜室8の背部には,それぞれ冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ43,野菜室温度センサ44が備えられており,各室の温度を検知できるようになっている。断熱箱体50の天井面前方には,庫外の温湿度を検知する庫外温湿度センサ(不図示)が備えられている。また,冷蔵室扉2a,2b,製氷室扉4a,上段冷凍室扉5a,下段冷凍室扉6a,野菜室扉8の各扉の開閉状態は,冷蔵室扉センサ(不図示),製氷室扉センサ(不図示),上段冷凍室扉センサ(不図示),下段冷凍室扉センサ(不図示),野菜室扉センサ(不図示)により検知できるようになっている。
なお,上側断熱仕切壁51により区画された領域の左端には,製氷用の水を貯留する製氷水タンク(不図示)が備えられている。製氷水タンク内の水は,ポンプ(不図示)を駆動することにより,配管(不図示)を介して製氷室4内に備えられた製氷皿(図示せず)に供給される。
図3に示すように,冷却器収納室9に収納されている冷却器21は流れ方向に7段で,高さ寸法Hより,奥行き寸法Dが小さいフィンチューブ型熱交換器である(本実施形態例の冷蔵庫ではH=210mm、D=77mm)。このように高さ寸法Hより奥行き寸法Dを小さくすることで,冷却器収納室9の前方の貯蔵室(本実施形態例の冷蔵庫では冷凍室7)の有効内容積を大きくできる。
冷却器21下部の前面側と背面側には,バイパス流路55a(本実施形態例の冷蔵庫では流路幅L1=5mm),バイパス流路56b(本実施形態例の冷蔵庫では流路幅L1=7mm)がそれぞれ設けられている。このようにバイパス流路の流路幅を冷却器の奥行き寸法D(=77mm)の10%以下の寸法にしているので、冷却器21への着霜量が少ない状態において,多くの気流が冷却器21をバイパスして流れることによる冷却効率低下を抑えられる。
また,冷却器収納室9の背面には着霜制御手段(詳細は後述)として,加熱手段であるヒータ80(プレートヒータ)が備えられており,背面側のバイパス流路55bを流れる冷気や,冷却器21の背面側下部を加熱できるようになっている。なお,冷却器21の最上段近傍の入口配管には,冷却器21の温度を検知する冷却器温度センサ(不図示)が備えられている。
冷却器21及びその周辺の冷却器収納室9の壁に成長した霜は,除霜ヒータ56(ガラス管ヒータ)とヒータ80に通電する除霜運転によって解かされる(詳細後述)。霜が融解することで生じた除霜水は,冷却器収納室9の下部に備えられた樋57に流れ落ち,排水管58を介して機械室10に備えられた蒸発皿59に達する。蒸発皿59内の除霜水は,機械室10内に備えられた圧縮機23及び放熱器70(図4参照,図2中には不図示)の放熱と,機械室10内に備えられた庫外送風機(不図示)による通風作用により蒸発する。なお,除霜ヒータ56の上部には上部カバー53が備えられており,融解水や冷却器21から離脱した霜が除霜ヒータ56のガラス管に当たることを防いでいる。
図4に示すように,本実施形態例の冷蔵庫の冷凍サイクルは,圧縮機23,放熱器70(フィンチューブ型熱交換器),放熱パイプ71,結露抑制パイプ72,キャピラリチューブ74(以下,放熱器70,放熱パイプ71,結露防止パイプ72の総称として放熱手段73と呼ぶことがある),冷却器21が冷媒配管77で接続されることで構成される。冷却器21出口から圧縮機23に向かう配管の一部77aはキャピラリチューブ74と接触させて熱交換するようにしている。なお,放熱パイプ71とは,外箱1aと内箱1bの間であって外箱1a面に接するように備えられた冷媒管(図2中に不図示)である。また,結露抑制パイプ72とは,断熱箱体10の上部断熱仕切壁51の前面や下部断熱仕切壁52の前面等に配設された冷媒管(図2参照)であり,管内を流れる高温冷媒による加熱作用で結露を抑制するために配設されるものである。
圧縮機23により昇圧された高温高圧冷媒は,放熱手段73を流れて放熱し,減圧手段であるキャピラリチューブで減圧されることで低温低圧冷媒となる。低温低圧冷媒が冷却器21に流れることで空気と熱交換することで各貯蔵室を冷却する低温冷気が生成される。なお,冷媒はイソブタンである。
本実施形態例の冷蔵庫は,冷蔵室2,チルド室3,冷凍室7や野菜室8の温度設定をする温度設定器等(図示せず)を備えている。
また冷蔵庫本体1の天井壁上面側にはCPU,ROMやRAM等のメモリ,インターフェース回路等を搭載した制御基板49が配置されている(図2参照)。制御基板49は,前記した冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ43,野菜室温度センサ44,庫外温湿度センサ,冷却器温度センサ,及び,各扉センサ、冷蔵室扉2aに設けられた温度設定器等と接続される。圧縮機23のON/OFFや回転速度制御,冷蔵室ダンパ24,冷凍室ダンパ26,及び,野菜室ダンパ27を個別に駆動するアクチュエータ(不図示)の制御,庫内送風機22のON/OFF制御や回転速度制御,前記した扉開放状態を報知するアラームのON/OFF等の制御は,前記ROMに予め搭載されたプログラムにより行われる。
次に,本実施形態例の冷蔵庫の制御について図5〜図8を参照しながら説明する。図5は本実施形態例の冷蔵庫の制御を表すフローチャート,図6は,本実施形態例の冷蔵庫の着霜過多の判別条件を表す図,図7は本実施形態例の冷蔵庫の除霜開始の判別条件を表す図,図8は本実施形態例の冷蔵庫の制御を表すタイムチャートである。
図5に示すように,本実施形態例の冷蔵庫は,電源の投入により(スタート),圧縮機23が駆動して冷却運転が開始する(ステップS101)。本実施形態例の冷蔵庫の冷却運転は,冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ43,野菜室温度センサ44及び庫外温湿度センサの検知情報に基づいて圧縮機23,庫内送風機22,庫外送風機のオン/オフ制御や回転速度制御と,冷蔵室ダンパ24,冷凍室ダンパ26,野菜室ダンパの開閉状態の制御によって,各室を設定温度(例えば,冷蔵室は3℃程度,野菜室は5℃程度,冷凍室は−18℃程度)に維持する運転が行われる。なお本実施形態例の冷蔵庫では,庫内送風機22は低速運転(1200min-1),中速運転(1500min-1),高速運転(2000min-1)の3段階、圧縮機23は低速運転(1000min-1),中速運転(2000min-1),高速運転(3500min-1)の3段階に回転速度が切り替えられるようになっており、熱負荷(冷却負荷)が大きいほど、より高い回転速度が選択される。
続いて,着霜過多条件にあるか否かの判別が行われる(ステップS102)。着霜過多条件にあるか否かの判別は,庫外温湿度センサが検知する庫外温湿度と,冷蔵室扉2a,2b,製氷室扉4a,上段冷凍室扉5a,下段冷凍室扉6a,野菜室扉8aの開放時間の積算値(扉開累積時間)と,圧縮機高速運転実施時間の積算値(圧縮機高速運転累積時間)に基づいて判別される(詳細は後述)。なお各累積時間は,電源投入時,または,除霜終了時にリセットされる。
ステップS102が不成立の場合(ステップS102がNo),続いて除霜開始条件が成立しているか否かが判別される(ステップS104)。ステップS102が成立した場合(ステップS102がYes),着霜制御運転(詳細は後述)に移行して(ステップS103),除霜開始条件の判別(ステップS104)に移る。
除霜開始条件が成立していない場合(ステップS104がNo)は,着霜過多条件にあるか否かの判別に戻り(ステップS102),除霜開始条件が成立した場合(ステップS104がYes),除霜運転(詳細は後述)に移行する(ステップS105)。除霜運転が終了すると,再び冷却運転に戻る(ステップS101)。
本実施形態例の冷蔵庫では,図6に示す条件が満足された場合に着霜過多条件が成立する(ステップS102がYes)。例えば,(A)庫外温度(Tout)がTout>35℃,庫外湿度(相対湿度)(RHout)がRHout≦50%において,扉開閉累積時間(t1)がt1≧15分,または,圧縮機高速運転累積時間(t2)がt2≧8時間となった場合に成立する。他の成立条件は,(B)Tout>35℃,50%<RHout≦80%において,t1≧10分またはt2≧7時間となった場合,(C)Tout>35℃, RHout>80%において,t1≧5分またはt2≧6時間が成立した場合,(D)Tout>35℃,RHout≦50%において,t1≧20分,または,t2≧8時間となった場合,(E)20℃<Tout≦35℃,50%<RHout≦80%において, t1≧15分,または, t2≧7時間となった場合,(F)20℃<Tout≦35℃,RHout>80%において,t1≧10分,または, t2≧6時間となった場合,(G)Tout≦20℃,RHout≦50%において, t1≧40分,または, t2≧8時間となった場合, (H)Tout≦20℃,50%<RHout≦80%において, t1≧30分,または, t2≧7時間となった場合,(I)Tout≦20℃,RHout>80%において, t1≧20分,または,t2≧6時間となった場合である。
また,本実施形態例の冷蔵庫では,図7に示す条件が満足された場合に除霜開始の条件が成立する(ステップS104がYes)。例えば,(a)庫外温度(Tout)がTout>35℃,庫外湿度(相対湿度)(RHout)がRHout≦50%において,冷却運転継続時間(t3)(前回の除霜完了後からの経過時間,または,除霜運転未実施の場合の電源投入後からの経過時間)がt3≧12時間且つ扉開閉累積時間(t1)がt1≧20分の場合,または,圧縮機高速運転累積時間(t2)がt2≧12時間の場合,または,冷却運転継続時間(t3)がt3≧48時間の何れかが満足された場合に除霜開始の条件が成立する。他の成立条件は,(b)Tout>35℃,50<RHout≦80%において,t3≧12時間且つt1≧15分,または,t2≧12時間,または,t3≧48時間の何れかが満足された場合,(c)Tout>35℃,RHout>80%において,t3≧12時間且つt1≧10分,または,t2≧12時間,または,t3≧48時間の何れかが満足された場合,(d)20℃<Tout≦35℃,RHout≦50%において,t3≧12時間且つt1≧25分,または,t2≧12時間,または,t3≧72時間の何れかが満足された場合,(e)20℃<Tout≦35℃,50<RHout≦80%において,t3≧12時間且つt1≧20分,または,t2≧12時間,または,t3≧72時間の何れかが満足された場合,(f)20℃<Tout≦35℃,RHout>80%において,t3≧12時間且つt1≧15分,または,t2≧12時間,または,t3≧72時間の何れかが満足された場合,(g)Tout≦20℃,RHout≦50%において,t3≧12時間且つt1≧50分,または,t2≧12時間,または,t3≧96時間の何れかが満足された場合,(h)Tout≦20℃,50<RHout≦80%において,t3≧12時間且つt1≧40分,または,t2≧12時間,または,t3≧96時間の何れかが満足された場合,(i)Tout≦20℃,RHout>80%において,t3≧12時間且つt1≧30分,または,t2≧12時間,または,t3≧96時間の何れかが満足された場合である。
図8は,冷却運転から着霜制御運転を経て除霜運転が実施され,再び冷却運転が行われる際のヒータ80,除霜ヒータ56,圧縮機23の制御状態と,冷蔵室温度,冷凍室温度,冷却器21の上流側温度(図4中の点Pの温度),冷却器21の下流側温度(図4中の点Qの温度)の変化を示している。
なお,図8は冷蔵庫を32℃,相対湿度70%の室内に設置した際の制御状態と庫内要部の温度変化を表すタイムチャートであり,冷蔵室扉2aと下段冷凍室扉6aに隙間を形成した状態で冷蔵庫を運転している。この隙間を介した外気の流入によって冷却負荷が大きくなるとともに,水分も多量に流入するため冷却器21に霜が成長し易くなる。
図8に示すように,経過時間taまでは,ヒータ80非通電状態(OFF),除霜ヒータ56非通電状態(OFF),圧縮機56駆動状態(ON)で,冷却運転が実施されている。本実施形態例の冷蔵庫では,冷蔵室2,冷凍室7,野菜室8のそれぞれに設定温度,上限温度,下限温度があらかじめ設定されており,各室の温度が上限温度を超えた場合には冷気が供給され,下限温度を下回った場合には冷気の供給が停止されるように,冷蔵室ダンパ24,野菜室ダンパ,冷凍室ダンパ26の開閉制御と送風機22のON/OFF制御がなされ,設定温度近傍の温度帯が維持される。
また,庫外温湿度センサが検知する庫外温湿度と,冷気が供給されている状態における冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ43,野菜室温度センサ44が検知する庫内各室の冷却速度(温度降下速度)に基づいて冷却負荷が判別され,冷却負荷が大きい場合には,送風機22と,圧縮機23は高回転速度に制御される。ここでは,冷蔵室扉2aと下段冷凍室扉6aに隙間を形成しているので冷蔵室2,冷凍室7の冷却負荷が大きくなり庫内送風機22、圧縮機23は高速運転となる(庫内送風機22の制御状態は図8中に不図示)。
経過時間taで,圧縮機高速運転累積時間(t2)が7時間に達し,着霜過多条件が成立している(図6の(E)の条件により図5のステップ102がYes)。これにより,着霜制御運転に移行し,ヒータ80が通電状態(ON)になる。ヒータ80が通電状態になることにより,冷却器21の上流側(背面寄り下側)が加熱されるので,図8中に示すように冷却器21上流側温度が上昇して冷凍室温度より高くなっている。一方で,ヒータ80から離れている冷却器21下流側温度は十分低温に保たれている。このように制御することで,冷却器21の上流側には霜が成長し難くなるので冷却器21の流入部付近の目詰まりが生じにくくなり,冷却器21の下流側が有効に活用できて空気と熱交換できるので、霜が成長し易い条件においても庫内を良好に冷却することができる。
続いて経過時間tbで,圧縮機高速運転累積時間(t2)が12hに達し,除霜運転開始条件が成立している(図7の(e)の条件により図5のステップ104がYes)。これにより,除霜運転に移行し,圧縮機23が停止(OFF),ヒータ80,除霜ヒータ56が通電状態(ON)になり,冷却器21に成長した霜の除霜が行われる。
経過時間tcで冷却器温度センサが所定温度(本実施形態例の冷蔵庫では8℃)に到達することで,ヒータ80,除霜ヒータ56の通電が停止(OFF)され除霜運転が終了する。除霜運転終了後は再び冷却運転が開始され,除霜運転中に温度が上昇していた貯蔵室の冷却が速やかに行われる。
以上で,本実施形態例の冷蔵庫の構成と制御を説明したが,以下では,本実施形態例の冷蔵庫の奏する効果について説明する。
本実施形態例の冷蔵庫は,着霜過多条件にあるか否かを判別し(図5のステップS102),着霜過多条件にあると判定した場合には,着霜制御手段による冷却器の着霜制御運転(冷却器21に低温冷媒が供給されている状態で,冷却器収納室9の一部を加熱して冷却器21の一部の霜の成長を抑制する運転(図5のステップS103))を実施する。これにより,冷却器への着霜量が少ない状態での省エネ性の低下を伴わずに、霜が著しく成長し易い環境においても省エネ性と食品保存性が高い冷蔵庫となる。理由を以下で説明する。
湿り空気が冷却器を通過する際に,冷却器表面温度(あるいは既に成長した霜の表面温度)が湿り空気の露点を下回っていると着霜が生じる。霜の成長速度は,物質伝達率(物質の移動し易さ)が大きいほど,また,絶対湿度差(通過する空気の絶対湿度と着霜が生じる表面の飽和絶対湿度の差)が大きいほど大きくなる。一般に,冷却器の前縁部近傍(空気が流入する部分)は物質伝達率が高く,絶対湿度差も大きくなるので霜が成長し易い。したがって,例えば,食品等を挟みこんで扉に隙間ができている,扉を長時間開放する,あるいは,頻繁な扉開閉等により霜が成長し易い条件(着霜過多条件)においては,冷却器の前縁部から霜が急激に成長し,比較的短時間で流路の目詰まりに至ることがある。流路が閉塞に至る時間を延ばすには,バイパス流路を大きくして,霜が成長した場合にも流路を確保することが有効となるが,バイパス流路を抜ける空気が増加するために着霜が少ない状態での冷却器の熱交換効率が下がり,省エネ性が低下する。
そこで,本実施形態例の冷蔵庫では,着霜過多条件にあるか否かを判別し,着霜過多条件にあると判定した場合には,冷却器への着霜状態を制御する着霜制御運転を実施している。上述のとおり,冷却器の前縁部から霜が成長するので冷却器の上流側は霜が成長し易いが,本実施形態例の冷蔵庫では,着霜制御手段により冷却器の上流側の温度を上げて霜が成長し難くなるように制御している。これにより冷却器の上流側で流路が閉塞することなく,冷却器下流側を有効に活用した冷却運転を行うことができる。すなわち,バイパス流路を大きくしたり,頻繁な除霜運転を行うことなく着霜過多条件における冷却器の目詰まりを回避できるので,冷却器への着霜量が少ない状態での省エネ性の低下を伴わずに、霜が著しく成長し易い環境においても省エネ性と食品保存性が高い冷蔵庫となる。
本実施形態例の冷蔵庫は,着霜制御手段として,冷却器収納室9の一部を加熱する加熱手段を採用している。比較的簡単な構成で着霜制御運転を実現できるので,低コストで信頼性と省エネ性が高い冷蔵庫を提供できる。
本実施形態例の冷蔵庫は,着霜制御手段としてのヒータ80を,除霜運転時にも通電状態(ON)にしている。これにより除霜運転時の冷却器21の加熱効率が高くなり短時間で除霜運転を完了することができるようになる。
本実施形態例の冷蔵庫は,着霜制御運転中は,冷却器21の温度の一部が冷凍室7の温度より高い状態になるように着霜制御手段により制御している。これにより温度を上げた部分の霜の成長を十分緩和でき,除霜運転の頻度を下げることができるので省エネ性と信頼性が高い冷蔵庫になる。
本実施形態例の冷蔵庫は,着霜制御運転中は,着霜制御手段により加熱がなされる冷却器21の一部の温度は,0℃より低い温度(氷の融点未満の温度)となるように制御している。霜を融解させるには融解潜熱分の加熱が必要となりより多くの加熱エネルギーが必要となるが,本実施形態例の冷蔵庫における着霜制御運転では,霜を融解させない範囲で温度を上げて霜の成長を抑えるので,加熱エネルギーを抑えて着霜制御を行うことができ、省エネ性が高い冷蔵庫となる。
本発明に係る冷蔵庫の第二実施形態例を,図9及び図10を参照しながら説明する。なお,第一実施形態例の冷蔵庫と同一の機能部品については,同一符号を付して説明を省略する。また,第二実施形態例の基本制御フローは第一実施形態例と同一であるため説明を省略する。
図9は第二実施形態例の冷蔵庫の冷却器付近の構成を表す拡大断面図である。図9に示すように,第二実施形態例の冷蔵庫では,冷却器21の前面側と背面側の下部4段(上流側4段)にはヒータ80a(着霜制御手段)が,上部3段(下流側3段)にはヒータ80bが冷却器21のフィンに接触するように設けられている。
図10は第二実施形態例の冷蔵庫を32℃,相対湿度70%の室内に設置した際の制御状態と庫内要部の温度変化を表すタイムチャートである。図10には,冷却運転から着霜制御運転を経て除霜運転が実施され,再び冷却運転が行われる際の冷蔵室温度,冷凍室温度,冷却器21の上流側温度(図9中の点Pの温度),冷却器21の下流側温度(図9中の点Qの温度)の変化と,ヒータ80,除霜ヒータ56,圧縮機23の制御状態が示されている。
ここでは,着霜過多条件になるように,冷蔵室扉2aと下段冷凍室扉6aに隙間を形成した状態で冷蔵庫を運転している。これにより冷蔵室2,冷凍室7の冷却負荷が大きくなり庫内送風機22、圧縮機23は高速運転となる(庫内送風機22の制御状態は図10中に不図示)。
図10では,経過時間taで,圧縮機高速運転累積時間(t2)が7時間に達し,着霜過多条件が成立している(図6の(E)の条件により図5のステップ102がYes)。これにより,着霜制御運転に移行し,ヒータ80aが通電状態(ON)になる。ヒータ80aが通電状態になることにより,冷却器21の上流側が加熱され,冷却器21上流側温度は,冷凍室温度より高くなっている。一方で,ヒータ80bは非通電状態(OFF)のため,冷却器21下流側温度は十分低温に保たれている。
このように制御することで,冷却器21の上流側には霜が成長し難くなるので冷却器21の流入部付近の目詰まりが生じにくくなり,冷却器21の下流側が有効に活用できるようになるので霜が成長し易い条件において庫内を良好に冷却することができる。
続いて経過時間tbで,圧縮機高速運転累積時間(t2)が12hに達し,除霜運転開始条件が成立している(図7の(e)の条件により図5のステップ104がYes)。これにより,除霜運転に移行し,圧縮機23が停止(OFF),ヒータ80a,ヒータ80b,除霜ヒータ56が通電状態(ON)になり,冷却器21に成長した霜の除霜が行われる。このように,除霜ヒータ56とともに,フィンに接触するように設けられたヒータ80a,ヒータ80bも通電状態とするので,空気層を介して霜を加熱するより効率よく霜に熱を伝えることができる。
経過時間tcで冷却器温度センサが所定温度(本実施形態例の冷蔵庫では8℃)に到達することで,ヒータ80,除霜ヒータ56の通電が停止され除霜運転が終了する。除霜運転終了後は再び冷却運転が開始され,除霜運転中に温度が上昇していた冷蔵室2と冷凍室7の冷却が速やかに行われる。
以上のように本実施形態例の冷蔵庫では,冷却器21に接触するように設けられたヒータ80aを備え,着霜制御運転として,圧縮機23駆動状態で冷却器21に低温冷媒を供給しつつ,冷却器21の一部を加熱することで温度を上昇させて着霜を制御している。これにより冷却器21の一部を効率よく加熱できるので,より少ない消費電力で着霜制御運転を実施できる。
本発明に係る冷蔵庫の第三実施形態例を,図11〜図13を参照しながら説明する。なお,第一実施形態例の冷蔵庫と同一の機能部品については,同一符号を付して説明を省略する。また,第二実施形態例の基本制御フローは第一実施形態例と同一であるため説明を省略する。
図11は第三実施形態例の冷蔵庫の冷却器付近の構成を表す拡大断面図,図12は,第三実施形態例の冷蔵庫の冷凍サイクル構成を表す図である。図13は,第三実施形態例の冷蔵庫を32℃,相対湿度70%の室内に設置した際の制御状態と庫内要部の温度変化を表すタイムチャートである。
図11に示すように,第三実施形態例の冷蔵庫では,冷却器21はフィンチューブ型熱交換器であり,上流側21aと下流側21bの冷媒流れをそれぞれ独立に制御できるようになっている(着霜制御手段)。具体的には,冷却器21の上流側21aには,入口冷媒配管77bから低温冷媒が供給され,冷却器21の上流側21aで空気と熱交換して,出口冷媒配管77cから流出する。また,冷却器21の下流側21bには,入口冷媒配管77dから低温冷媒が供給され,冷却器21の下流側21bで空気と熱交換して,出口冷媒配管77eから流出する。
図12に示すように,冷却器21とキャピラリチューブ74の間には,三方弁79が備えられており,冷却器21の上流側21a,下流側21bへの冷媒供給を制御できるようになっている。三方弁79は,入口79a,出口79b,79cを備えており,出口79b,79cの開閉状態により,「出口79b開放状態,出口79c開放状態」,「出口79b開放状態,出口79c閉鎖状態」,「出口79b閉鎖状態,出口79c開放状態」,「出口79b閉鎖状態,出口79c閉鎖状態」の4つの状態を取ることができる。
「出口79b開放状態,出口79c開放状態」では,低温冷媒は,冷却器21の上流側21aの入口冷媒配管77bと,冷却器21の下流側21bの入口冷媒配管77dの双方に供給される。「出口79b開放状態,出口79c閉鎖状態」では,低温冷媒は,冷却器21の上流側21aの入口冷媒配管77bにのみ供給される。「出口79b閉鎖状態,出口79c開放状態」では,低温冷媒は,冷却器21の下流側21aの入口冷媒配管77bにのみ供給される。また,「出口79b閉鎖状態,出口79c閉鎖状態」では,キャピラリチューブ74から,冷却器21への冷媒の流れは遮断される。
図13には,冷却運転から着霜制御運転を経て除霜運転が実施され,再び冷却運転が行われる際の冷蔵室温度,冷凍室温度,冷却器21の上流側21aの温度(図11中の点Pの温度),冷却器21の下流側21bの温度(図11中の点Qの温度)の変化と,三方弁79,除霜ヒータ56,圧縮機23の制御状態が示されている。
なお,図13では,三方弁の状態が「出口79b開放状態,出口79c開放状態」にある場合を「状態1」,「出口79b開放状態,出口79c閉鎖状態」にある場合を「状態2」,「出口79b閉鎖状態,出口79c開放状態」にある場合を「状態3」,「出口79b閉鎖状態,出口79c閉鎖状態」にある場合を「状態4」とする。
ここでは,着霜過多条件になるように,冷蔵室扉2aと下段冷凍室扉6aに隙間を形成した状態で冷蔵庫を運転している。これにより冷蔵室2,冷凍室7の冷却負荷が大きくなり庫内送風機22、圧縮機23は高速運転となる(庫内送風機22の制御状態は図8中に不図示)。
図13に示すように,経過時間taまでは,三方弁79は状態1に制御され,除霜ヒータ56非通電状態(OFF),圧縮機23駆動状態(ON)で,冷却器21の上流側21aと下流側21bの双方に低温冷媒を供給しながら冷却運転が実施されている。
経過時間taで,圧縮機高速運転累積時間(t2)が7時間に達し,着霜過多条件が成立している(図6の(E)の条件により図5のステップ102がYes)。これにより,着霜制御運転に移行し,三方弁が状態3に制御され,冷却器21の上流側には低温冷媒が供給されなくなるので,冷却器21の上流側21aの温度は上昇している。一方,冷却器21の下流側21bには低温冷媒が供給され続けるので,冷却器21の下流側21bの温度は十分低温に保たれている。
このように制御することで,冷却器21の上流側21aには霜が成長し難くなるため,冷却器21の上流側21aにおける目詰まりが生じにくくなり,冷却器21の下流側が有効に活用できる。したがって,霜が成長し易い条件においても冷却器21の目詰まりを回避しながら庫内を良好に冷却することができる。
続いて経過時間tbで,圧縮機高速運転累積時間(t2)が12hに達し,除霜運転開始条件が成立している(図7の(e)の条件により図5のステップ104がYes)。これにより,除霜運転に移行し,三方弁が状態4,圧縮機23が停止(OFF),除霜ヒータ56が通電状態(ON)になり,冷却器21に成長した霜の除霜が行われる。
除霜運転時には,霜とともに冷却器内の冷媒も加熱負荷となるが,ここでは,三方弁を状態4とすることで,高圧側の冷媒(放熱器70,放熱パイプ71,結露抑制パイプ72内の冷媒)が冷却器21に流入することを阻止することで,霜が融解するまでの加熱負荷を削減している。
経過時間tcで,冷却器温度センサが検知する温度が所定温度(本実施形態例の冷蔵庫では1℃)まで上昇したことを受けて,三方弁が開放状態(状態1)になり,遮断されていた高圧側の冷媒が流入し,高圧側と低圧側の差圧が解消される。
経過時間tdで冷却器温度センサが検知する温度が所定温度(本実施形態例の冷蔵庫では8℃)に到達することで,除霜ヒータ56の通電が停止され除霜運転が終了する。除霜運転終了後は再び冷却運転が開始され,除霜運転中に温度が上昇していた冷蔵室2と冷凍室7の冷却が速やかに行われる。なお,本実施形態例の冷蔵庫では,経過時間tcで,高圧側と低圧側の差圧が解消されているので,圧縮機起動負荷を十分低くでき圧縮機の起動に失敗することがない信頼性の高い冷蔵庫となる。
以上のように本実施形態例の冷蔵庫では,冷却器21を流れる冷媒流を制御することで,冷却器21の温度分布を可変させ,着霜を制御している。すなわちヒータに拠らない手段で冷却器の温度分布を制御しているので,より少ない消費電力で着霜制御運転を実施でき,省エネ性の高い冷蔵庫となる。
なお,本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく,様々な変形例が含まれる。例えば,第一実施形態例の冷蔵庫では,着霜制御に用いるヒータを冷却器収納室の背面に備えているが,前面や,側面に備える構成としても良い。また,着霜過多条件にあるか否かの判別ができれば,第一実施形態例の冷蔵庫で示す判別手段以外によって判別しても良い。例えば,扉開閉回数や冷却器温度センサ検知温度を判別条件に加えたり,冷却器収納室に赤外線センサを搭載して,霜高さを検知することで判別しても良い。さらには,冷却器に複数の温度センサを設けて、温度センサの検知情報に基づいて着霜制御手段の制御状態を可変させ、所望の温度状態を得やすくしても良い。すなわち,上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり,必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。