特許文献1に記載の鞍乗り型車両では、下面の排気口からの排風が下方の部品に当たり、効率的な通気は実現されていない。その結果、取り入れ口からの空気の取り入れにあたって冷却装置内の冷却ファンには大きな動力が要求されてしまう。
本発明は、燃料電池の利用にあたってもっと効率的な通気を実現することができる鞍乗り型車両を提供することを目的とする。
本発明の第1側面によれば、フロントフォークを操向可能に支持するヘッドパイプから、ピボット回りで揺動自在に後輪ユニットを支持する左右1対のピボットフレームまで延びる左右のメインフレーム、および、後輪の上側を後方に延びて乗員が跨がる乗員シートを支持するシートフレームを含む車体フレームと、前記ヘッドパイプの後方であって前記ピボットフレームの前方で前記車体フレームに搭載され、取り入れた外気を酸素の供給および機器の冷却に使用する空冷式の燃料電池ユニットとを備える鞍乗り型車両は提供される。燃料電池ユニットは前記ピボットの上方で後方に向けて排出口を開口し、シートフレームは、前記メインフレームに取り付けられて、前記燃料電池ユニットからの排気を前記乗員シートの後方まで案内する筒体からなる。
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、鞍乗り型車両は、前記燃料電池ユニットに連続して後方に延び、前記筒体内に収容されて、貯蔵した高圧水素を前記燃料電池ユニットに供給する燃料タンクを備える。
第3側面によれば、第2側面の構成に加えて、前記シートフレームは、当該シートフレームにかかる荷重全体を受け、前記燃料タンクを支持する下体と、前記乗員シートから荷重を受け、前記燃料タンクの上方を覆って、完成車状態で前記下体から着脱自在な上体とを備える。
第4側面によれば、第2または第3側面の構成に加えて、前記シートフレームは導電性部材にて構成される。
第5側面によれば、第2〜第4側面のいずれかの構成に加えて、前記シートフレームは、前記燃料電池ユニットと前記燃料タンクとを接続する燃料供給経路に設けられた調圧弁の上方に開閉部を有する。
第6側面によれば、第1〜第5側面のいずれかの構成に加えて、前記排気ダクトの前端は、前記排気口を区画する枠体に嵌め合わせられる。
第7側面によれば、第6側面の構成に加えて、前記枠体と前記排気ダクトとの間にはシール部材が挟まれる。
第8側面によれば、第6または第7側面の構成に加えて、前記シートフレームは、前記排気ダクトの前端の外方に設けられて、左右のメインフレームに取り付けられる取り付け部を有する。
第1側面によれば、燃料電池ユニットから後方の筒体の排気口まで直線的な通風経路が確立されるので、外気の排出にあたって効率的な通気構造は実現される。加えて、排気を案内する筒体が乗員シートを支持するので、乗員シートに固有のシートレールといった部材が省略されることができ、鞍乗り型車両を軽量化することができる。
第2側面によれば、燃料電池ユニットの作動中、燃料タンクは断熱膨張で冷却されるものの、燃料電池ユニットの排熱によって冷却効果は緩和される。
第3側面によれば、シートフレームの下体上で燃料タンクの小組みが可能であって、しかも、完成車状態でメンテナンスが容易に実現されることができる。
第4側面によれば、シートフレームからメインフレームを介して電位が散在する(アース効果)ため、燃料タンク近傍における静電気の発生を抑制できる。
第5側面によれば、万が一、燃料(例えば水素といった気体燃料)が漏れても、開閉部を開けることで燃料を車外に排出することができる。
第6側面によれば、燃料電池ユニットの排気は確実にシートフレームの排気ダクトに流れ込む。
第7側面によれば、燃料電池ユニットと排気ダクトとの間で熱気漏れは防止されるので、商品性向上に寄与する。加えて、シートフレームの振動はシール部材で吸収されることができ、シートフレームから燃料電池ユニットに伝わる振動は抑制されることができる。
第8側面によれば、燃料電池ユニットから後方に出される排気をスムースに車両後方へ導くとともに、シートフレームを左右の車体フレームに取り付けることで、剛性を向上させる。シートフレームはクロスフレームの役割を果たすことができる。
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る鞍乗り型車両すなわち自動二輪車を概略的に示す。自動二輪車(鞍乗り型車両)11は、車体フレーム12と、車体フレーム12に装着される車体カバー13とを備える。車体フレーム12は、フロントフォーク14を操向可能に支持するヘッドパイプ15と、該ヘッドパイプ15から水平面に対して第1角度で後下がりに延びる左右1対のメインフレーム16、16と、第1接続点17aでメインフレーム16、16の後端に結合されて、メインフレーム16、16の後端から下方に延びる左右1対のピボットフレーム17、17と、ヘッドパイプ15から水平面に対して第1角度よりも大きい第2角度で下方に向かって延びる左右1対のダウンフレーム18、18と、ダウンフレーム18の後端から延びて第1接続点17aよりも下方の第2接続点17bでピボットフレーム17に接続される左右1対のロアフレーム19、19とを備える。フロントフォーク14には車軸21回りで回転自在に前輪WFが支持される。
自動二輪車11は後輪ユニット22を備える。後輪ユニット22は、水平方向に延びるピボット23を介してピボットフレーム17に連結される。後輪ユニット22はピボット23回りで上下方向に揺動自在にピボットフレーム17に支持される。後輪ユニット22の自由端にはピボット23に平行な車軸24回りで回転自在に後輪WRが支持される。車体フレーム12と後輪ユニット22との間にはリアクッション25が設置される。リアクッション25の一端はピボット23よりも上方に設けられた第3接続点17cでピボットフレーム17に連結される。リアクッション25が車体フレーム12に対して後輪ユニット22の揺動を規制することで、後輪WRから車体フレーム12へ振動の伝達は抑制される。後輪ユニット22は、後輪WRに接続されて、供給される電力に基づき後輪WRを駆動する電動機26を備える。
自動二輪車11は燃料供給アセンブリ28を備える。燃料供給アセンブリ28はピボットフレーム17の上方でメインフレーム16に連結される。燃料供給アセンブリ28は、メインフレーム16から後輪WRの上側を後方に延びて乗員シート29を支持するシートフレーム31を備える。シートフレーム31は、後述されるように、燃料電池ユニットからの排気を乗員シート29の後方まで案内する筒体からなる。筒体は排気ダクトを兼ねたモノコック構造を有する。
シートフレーム31は上体31aおよび下体31bを備える。上体31aおよび下体31bはカーボンといった導電性の素材から成形される。上体31aおよび下体31bは相互に結合される。上体31aおよび下体31bの結合面31cはメインフレーム16側から後端に向かって両側面に設けられる。上体31a上に乗員シート29が搭載される。乗員シート29に乗員は跨がる。シートフレーム31の上体31aは乗員シート29から荷重を受ける。シートフレーム31の下体31bは、シートフレーム31にかかる荷重全体を受ける。完成車状態で着脱自在に上体31aは下体31bに結合される。結合にあたってねじ58といった締結具が用いられる。上体31aは、第1接続点17aよりも前方でメインフレーム16に結合される取り付け部59を有する。結合にあたってねじといった締結具が用いられる。下体31bは第1接続点17aと取り付け部59との間でメインフレーム16に結合される取り付け部61を有する。結合にあたってねじといった締結具が用いられる。
乗員シート29よりも後方で上体31aおよび下体31bの車幅方向最外部には開口62a、62bが形成される。開口62a、62bは排気ダクトの内外を接続する。例えば自動二輪車11が横置きされた際に、排気ダクト内の軽量な気体は開口62a、62bから外部に速やかに排出されることができる。万が一、水素が漏れたとしても、水素は速やかに車外に排出されることができる。
車体カバー13は、左右のメインフレーム16の上側に共通に結合される上カバー32と、メインフレーム16の下側で個々のメインフレーム16ごとに結合されるサイドカバー33と、サイドカバー33に結合される後端から前方に広がる導風板34と、乗員シート29の後方でシートフレーム31に被さるリアカバー35とを含む。上カバー32は上方から2つのメインフレーム16に跨がってメインフレーム16に結合される。リアカバー35はシートフレーム31の後端に排気口54bを形成する。
図2に示されるように、車体フレーム12には燃料電池ユニット36が搭載される。燃料電池ユニット36はヘッドパイプ15の後方で、上方から後述のアッパーハンガープレート46に支持されるとともに下方から左右1対のロアフレーム19に支持される。こうして燃料電池ユニット36は、ヘッドパイプ15の後方であってピボットフレーム17の前方で車体フレーム12に搭載される。ダウンフレーム18は燃料電池ユニット36の前方を延びる。燃料電池ユニット36は地表に垂直で車両左右方向に広がる前向きの仮想平面37に沿って外気の取り入れ口38を配置する。燃料電池ユニット36では水素および大気中の酸素の化学反応に基づき電力が生成される。燃料電池ユニット36は酸素の供給および冷却にあたって取り入れ口38から流入する大気を利用する。
車体フレーム12にはフレームカバー39が連結される。フレームカバー39は、前壁39aと、前壁39aの左右両縁から車両後方に向かって広がる側壁39bとを有する。側壁39bには吸気口41が区画される。
車体フレーム12には円筒形状の燃料タンク42が搭載される。燃料タンク42は燃料電池ユニット36に接続される調圧弁43から後方に延びる。燃料タンク42は高圧水素を貯蔵する。シートフレーム31の下体31bは下方から燃料タンク42を支持する。燃料タンク42はシートフレーム31内に収容される。
車体フレーム12には制御装置44が搭載される。制御装置44は燃料タンク42よりも下方で後輪WRの前方に配置される。制御装置44は、燃料電池ユニット36から供給される電力を電動機26に供給する。
車体フレーム12には二次電池45が搭載される。二次電池45は燃料電池ユニット36の下方で制御装置44の前方に並んで配置される。二次電池45は制御装置44の制御に応じて電力の充電および放電を実施する。
図3に示されるように、車体フレーム12はさらにアッパーハンガープレート46およびロアーハンガープレート65を備える。アッパーハンガープレート46は燃料電池ユニット36の上方を跨いで左右のメインフレーム16に連結される。連結にあたってねじ63といった締結具が用いられる。アッパーハンガープレート46には燃料電池ユニット36の上端が結合される。結合にあたってねじ64といった締結具が用いられる。アッパーハンガープレート46はメインフレーム16に燃料電池ユニット36を結合する。
ロアーハンガープレート65は燃料電池ユニット36の下方で左右のロアフレーム19に連結される。連結にあたって前後1対のクロスバー66が左右のロアフレーム19に固定される。個々のクロスバー66はロアフレーム19から左右に水平に延びる。ロアーハンガープレート65はクロスバー66にねじ留めされる。このとき、クロスバー66とロアーハンガープレート65との間にはゴムブッシュといった弾性部材が挟まれる。ロアーハンガープレート65に燃料電池ユニット36の下端が結合される。結合にあたって下方からロアーハンガープレート65にねじ67がねじ込まれる。ロアーハンガープレート65はメインフレーム16に燃料電池ユニット36を結合する。
図4に示されるように、フレームカバー39は取り入れ口38の前方に吸気空間48を区画しながら取り入れ口38の前方を塞ぐ。吸気口41は吸気空間48に通じながら後方に向かって開口する。吸気口41の形成にあたって、側壁39bの開口には、後方に向かうにつれて側壁39bを含む仮想平面から遠ざかる遮蔽板49が配置される。遮蔽板49の後端と側壁39bとの間に吸気口41は形成される。
導風板34は吸気口41の後方でフレームカバー39に結合される。導風板34は、吸気口41に対し向き合う位置に前方からの走行風を導入する導入空間51を形成するように前方に開口するとともに、吸気口41および遮蔽板49の側方を覆うように設けられる。
燃料電池ユニット36は地表に垂直で車両左右方向に広がる仮想平面52に沿って後方に向かって開口するように排出口53を配置する。このように、燃料電池ユニット36は、ヘッドパイプ15の上端より後方かつ下方で車両前方に向けて外気の取り入れ口38を開口し、ピボット23よりも前方かつ上方で後方に向けて排出口53を開口する。燃料電池ユニット36では内蔵のファンユニットの働きで前述の取り入れ口38から排出口53に向かって筐体内を気流が流通する。
図5に示されるように、シートフレーム31は排気ダクトを構成する。排気ダクトは上体31aおよび下体31bの間に通風路54を区画する。通風路54は前端の導入口54aで開口し後端のリアカバー35の排気口54bまで延びる。排気ダクト内に燃料タンク42は収容される。
上カバー32の内側や排気ダクトの導入口54a近傍(後述する開閉部68の内側)、排気ダクトの排気口54b近傍(リアカバー35の内側)には水素センサー67が設置される。水素センサー67は、空洞の中で最も上方の領域に配置される。いずれかの水素センサー67で所定濃度を超える水素が検知されると、インジケーター(図示されず)が点灯して運転手に知らせるとともに、調圧弁43を閉じる制御が行われる。
シートフレーム31は調圧弁43の上方に開閉部68を有する。開閉部68は、排気ダクトの内外を接続する開口を開閉する扉を有する。開閉部68が開放されると、排気ダクト内の気体は外部に放出されることができる。万が一、水素が排気ダクトの前方に溜まったとしても、水素は車外に速やかに排出されることができる。
図6に示されるように、排気ダクトの前端の導入口54aは燃料電池ユニット36の排出口53を区画する枠体55に嵌め合わせられる。枠体55とシートフレーム(排気ダクト)31との間にはシール部材56が挟まれる。シール部材56は例えば柔軟なゴム素材から成形される。
車体フレーム12に搭載された燃料電池ユニット36は、ヘッドパイプ15の上端より後方かつ下方で車両前方に向けて外気の取り入れ口38を開口し、ピボット23より前方かつ上方で後方に向けて排出口53を開口する。シートフレーム31は、燃料電池ユニット36からの排気を乗員シート29の後方まで案内する排気ダクトの形状を兼ねたモノコック構造を有する。図5に示されるように、燃料電池ユニット36の取り入れ口38から排気ダクトの排気口54bまで車両の前後方向に直線的な通風経路が確立されるので、外気の導入にあたって効率的な通気構造は実現される。加えて、排気を案内する筒体を形成するシートフレーム31が乗員シート29を支持するので、乗員シート29に固有の金属製シートレールといった部材が省略されることができ、自動二輪車11を軽量化することができる。
自動二輪車11では、燃料タンク42は、燃料電池ユニットから後方に延び、排気ダクト内に収容される。燃料電池ユニット36の作動中、燃料タンク42は断熱膨張で冷却されるものの、燃料電池ユニット36の排熱によって冷却効果は緩和される。
シートフレーム31すなわち排気ダクトの前端は排出口53の枠体55に嵌め合わせられる。したがって、燃料電池ユニット36の排気は確実にシートフレーム31の排気ダクトに流れ込む。しかも、枠体55とシートフレーム31(排気ダクト)との間にはシール部材56が挟まれる。燃料電池ユニット36と排気ダクトとの間で空気漏れは防止される。加えて、シートフレーム31の振動をシール部材56で吸収することができ、シートフレーム31から燃料電池ユニット36に伝わる振動を抑制することができる。
シートフレーム31は、前述のように、下体31bおよび上体31aを備える。上体31aは完成車状態で下体13bから分離されることができる。したがって、シートフレーム31の下体31b上で燃料タンク42の小組みが可能であって、しかも、完成車状態でメンテナンスが容易に実現されることができる。