以下、本発明の硬化性組成物、硬化物の製造方法、およびその硬化物につき、詳細に説明する。
本発明の硬化性組成物は、グリシジル基を有する化合物と、脂環式エポキシ化合物およびオキセタン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物、構造中にヒドロキシメチン基を有する化合物、および水からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、重合開始剤と、を含む硬化性組成物であって、グリシジル基を有する化合物100質量部に対して、脂環式エポキシ化合物0〜50質量部、オキセタン化合物0〜50質量部、構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物、構造中にヒドロキシメチン基を有する化合物、および水からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物0.05〜10質量部、重合開始剤0.5〜10質量部を含む。
本発明の硬化性組成物に用いるグリシジル基を有する化合物は、グリシジル基を有する化合物であればよく、特に限定されないが、グリシジル基を有する脂肪族化合物を好ましく使用することができ、なかでもグリシジルエーテル化合物またはポリグリシジルエーテル化合物を好ましく用いることができ、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルを特に好適に用いることができる。
例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールボノラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。粘度が低い点からも、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルが好ましい。
グリシジル基を有する化合物の市販品には、例えば、(株)ADEKA製アデカグリシロールED−523(ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル)、アデカグリシロールED−503(1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル)、アデカレジンEP−4085(シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル)、アデカレジンEP−4080(水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル)、アデカレジンEP−4100L、アデカレジンEP−4901、共栄社化学(株)製エポライト100MF(トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル)、ナガセケムテックス(株)製EX−321L(トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル)がある。これらの中でも、重量平均分子量が500以下である場合には、本発明の硬化性組成物を塗工する際に塗工面が均一になる効果が高いことや接着力が高くなることから好ましい。また、化学純度98%以上のグリシジル基を有する化合物を用いることが好ましい。化学純度98%以上とは、グリシジル基を有する化合物中に存在するグリシジル基を有する化合物以外の不純有機物が2%未満である場合を意味する。
本発明の硬化性組成物に用いる脂環式エポキシ化合物の例としては、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、1,2:8,9ジエポキシリモネン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート等が挙げられる。これらは、ダイセル化学工業(株)より、商品名CEL2000、CEL3000、CEL2021Pで市販されている。本発明の硬化性組成物に用いる脂環式エポキシ化合物は、その構造中にエポキシ基が2つ以上あるものが好ましい。
オキセタン化合物は、分子内に4員環エーテル、すなわち、オキセタン環を有する化合物である。本発明の硬化性組成物に用いるオキセタン化合物の例として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス〔{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}メチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン)、3−エチル−〔{(3−トリエトキシシリルプロポキシ)メチル)オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン等が挙げられる。ここで、オキセタニルシルセスキオキサンとは、オキセタニル基を有するシラン化合物、例えば、前述の3−エチル−3−〔{(3−トリエトキシシリル)プロポキシ}メチル〕オキセタンを加水分解縮合させることにより得られる、オキセタニル基を複数有するネットワーク状ポリシロキサン化合物である。これらのオキセタン化合物の中でも、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンが好ましい。
オキセタン化合物の市販品には、例えば、東亞合成(株)から市販されている、商品名OXT−101(3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン)、OXT−211(3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン)、OXT−221(3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン)、OXT−212(2−エチルヘキシルオキセタン)があり、OXT−221のように、その構造中にオキセタン環が2つ以上あるものが好ましい。
構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物は、特に限定されるものではなく、その構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物であればよい。本発明の硬化性組成物に好ましく使用できる化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、トリプロピレングリコール等の低分子グリコール類化合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の高分子グリコール類化合物(重量平均分子量200〜2,000程度);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、および3−メチル−3−メトキシ−3−メトキシブタノール等の低分子グリコールエーテル類化合物;ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、およびポリエチレングリコールモノブチルエーテル等の高分子グリコールエーテル化合物(重量平均分子量:200〜2,000程度)等を挙げることができ、これらの中でも、低分子グリコール類化合物および高分子グリコール類化合物が好ましく、これらの重量平均分子量が50〜1,000の範囲である場合が特に好ましい。
構造中にヒドロキシメチン基を有する化合物は、特に限定されるものではなく、その構造中にヒドロキシメチン基を有する化合物であればよい。本発明の硬化性組成物に好ましく使用できる化合物としては、例えば、シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジオール等を挙げることができる。
本発明の硬化性組成物に用いられる、構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物、構造中にヒドロキシメチン基を有する化合物および水からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物としては、粘度が低く、密着性に優れた硬化性組成物が得られることから、構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物または水を少なくとも1種以上用いることが好ましく、重量平均分子量が50〜1,000の範囲である構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物または水を少なくとも1種以上用いることが特に好ましい。
本発明の硬化性組成物に用いられる重合開始剤としては特に限定されるものではなく、周知一般の重合開始剤を使用することができるが、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤を挙げることができる。
ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、非結晶性ポリオレフィン系樹脂やシクロオレフィン系樹脂等を他の樹脂、例えばPVA樹脂に貼り合わせるための接着剤として用いる場合には、光重合開始剤により光カチオン硬化させるのが、簡便で有利である。
例えば、偏光板に保護フィルムまたは光学補償フィルムとして近年よく用いられる特殊加工を施したアクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂は、従来の接着剤によって偏光板に貼り付けても直ぐに剥がれることが問題となっていた。しかしながら、本発明のグリシジル基を有する化合物と、脂環式エポキシ化合物と、オキセタン化合物と、構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物、構造中にヒドロキシメチン基を有する化合物、および水からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の4成分を組み合わせて、光重合開始剤により光カチオン硬化させることにより、または熱重合開始剤により熱カチオン硬化させることにより、特殊加工を施したアクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂でも偏光板に十分な接着力を発揮し、剥がれることがない。
光重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射によって、カチオン種またはルイス酸を発生し、エポキシ基の重合を開始する。
本発明の硬化性組成物に用いることができる光重合開始剤は特に制限されるものではなく、周知一般の光重合開始剤を用いることができる。本発明に好適に用いられる光重合開始剤としては、スルホニウム塩やヨードニウム塩を挙げることができる。
スルホニウム系の例として、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロホスフェート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
ヨードニウム塩系の例として、例えば、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で使用しても、または二種以上を使用してもよい。これらの光重合開始剤の市販品には、例えば、ローディア社(株)から市販されている、商品名PI−2074がある。
さらに、本発明の硬化性組成物には、必要に応じて光増感剤を併用することができる。光増感剤を使用することで、反応性が向上し、硬化物の機械強度や接着強度を向上させることができる。光増感剤としては、アントラセン系化合物、ナフタレン系化合物、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素が挙げられる。
アントラセン系化合物としては、例えば、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
ここで、式(1)中、R
1およびR
2は、各々独立に水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数2〜12のアルコキシアルキル基を表し、R
3は水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。
上記式(1)で表されるアントラセン系化合物の具体例を挙げると、次のような化合物がある。
9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジイソプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジペンチルオキシアントラセン、9,10−ジヘキシルオキシアントラセン、9,10−ビス(2−メトキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−エトキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ブトキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−または2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−メチル−または2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−メチル−または2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−メチル−または2−エチル−9,10−ジイソプロポキシアントラセン、2−メチル−または2−エチル−9,10−ジブトキシアントラセン、2−メチル−または2−エチル−9,10−ジペンチルオキシアントラセン、2−メチル−または2−エチル−9,10−ジヘキシルオキシアントラセン等。
ナフタレン系化合物としては、例えば、下記式(2)で表されるものが挙げられる。
ここで、式(2)中、R
4およびR
5は各々独立に炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。
上記式(2)で表されるナフタレン系化合物の具体例を挙げると、次のような化合物がある。
4−メトキシ−1−ナフトール、4−エトキシ−1−ナフトール、4−プロポキシ−1−ナフトール、4−ブトキシ−1−ナフトール、4−ヘキシルオキシ−1−ナフトール、1,4−ジメトキシナフタレン、1−エトキシ−4−メトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジプロポキシナフタレン、1,4−ジブトキシナフタレン等。
その他の光増感剤の例としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノンのようなアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体;その他、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらは、単独で使用しても、または二種以上を併用してもよい。光増感剤の市販品には、例えばカヤキュアDETX−S(日本化薬(株)製)等が挙げられる。光増感剤は、グリシジル基を有する化合物100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲で配合するのが好ましい。
グリシジル基を有する化合物と、脂環式エポキシ化合物と、オキセタン化合物と、構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物、構造中にヒドロキシメチン基を有する化合物および水からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、の4成分を組み合わせて、光重合開始剤により光カチオン硬化させる場合は、グリシジル基を有する化合物単独や、グリシジル基を有する化合物と、脂環式エポキシ化合物またはオキセタン化合物と、構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物、構造中にヒドロキシメチン基を有する化合物および水からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の3成分を組み合わせて、光重合開始剤により光カチオン硬化させる場合に比べて更に強い接着力を発揮する。
グリシジル基を有する化合物と、脂環式エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物と、構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物、構造中にヒドロキシメチン基を有する化合物および水からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、光重合開始剤と、の混合比は、グリシジル基を有する化合物100質量部当たり、脂環式エポキシ化合物0〜50質量部、好ましくは5〜35質量部、オキセタン化合物0〜50質量部、好ましくは5〜35質量部、構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物、構造中にヒドロキシメチン基を有する化合物および水からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物0.05〜10質量部、好ましくは0.07〜9質量部、光重合開始剤0.5〜10質量部、好ましくは1〜5質量部である。ただし、脂環式エポキシ化合物およびオキセタン化合物は、同時に0質量部にはならないようにする。
本発明の硬化性組成物に用いることができる熱重合開始剤は特に制限されるものではなく、周知一般の熱重合開始剤を用いることができる。本発明に好適に用いられる熱重合開始剤としては、例えば、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド等が挙げられる。
これらの開始剤は、市販品を入手することが可能であり、例えば、商品名アデカオプトン CP77(以上、(株)ADEKA製)、CI−2639、CI−2624(以上、日本曹達(株)製)、サンエイド SI−80L、サンエイド SI−100L、サンエイド SI−60L(以上、三新化学工業(株)製)等が挙げられる。熱重合開始剤は、グリシジル基を有する化合物100質量部当たり、0.5〜10質量部の範囲で配合するのが好ましい。
グリシジル基を有する化合物と、脂環式エポキシ化合物と、オキセタン化合物と、構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物、構造中にヒドロキシメチン基を有する化合物および水からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、の4成分を組み合わせて、熱重合開始剤により熱カチオン硬化させる場合は、グリシジル基を有する化合物単独や、グリシジル基を有する化合物と、脂環式エポキシ化合物またはオキセタン化合物と、構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物、構造中にヒドロキシメチン基を有する化合物および水からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の3成分を組み合わせて、熱重合開始剤により熱カチオン硬化させる場合に比べて更に強い接着力を発揮する。
グリシジル基を有する化合物と、脂環式エポキシ化合物および/またはオキセタン化合物と、構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物、構造中にヒドロキシメチン基を有する化合物および水からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、熱重合開始剤と、の混合比は、グリシジル基を有する化合物100質量部当たり、脂環式エポキシ化合物0〜50質量部、好ましくは5〜35質量部、オキセタン化合物0〜50質量部、好ましくは5〜35質量部、構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物、構造中にヒドロキシメチン基を有する化合物および水からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物0.05〜10質量部、好ましくは0.07〜9質量部、熱重合開始剤0.5〜10質量部、好ましくは1〜5質量部となるようにし、ただし、脂環式エポキシ化合物およびオキセタン化合物は、同時に0質量部にはならないようにする。
本発明の硬化性組成物においては、本発明の効果を損なわない限り、その他の添加剤、例えば、酸化防止剤、シランカップリング剤を配合することできる。
酸化防止剤の市販品としては、例えば、AO−20、AO−30、AO−50およびAO−80(以上、(株)ADEKA社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、イルガノックス1010、イルガノックス1035FF、イルガノックス565等が挙げられる。酸化防止剤の使用量は、グリシジル基を有する化合物100質量部に対して、0〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
シランカップリング剤の市販品としては、例えば、エポキシ系(KBM403、KBM303)、ビニル系(KBM1003)、アクリル系シランカップリング剤(KBM503)、3−エチル(トリエトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン(TESOX(東亞合成(株)製))等が挙げられる。シランカップリング剤の使用量は、グリシジル基を有する化合物100質量部に対して、0〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
本発明の硬化性組成物は、粘度が200mPa・s以下(25℃)、好ましくは120mPa・s以下(25℃)である場合が好ましい。接着剤は、粘度が低い程、塗布が行ない易く、また接着剤層の塗布厚みが薄くでき、例えば偏光板に保護フィルムまたは光学補償フィルムを貼り付けるのに好適に使用することができる。
本発明の硬化性組成物は、上述した成分を容器中で撹拌し、均一な液体になるまで撹拌することで得ることができる。また、本発明における重合開始剤として、光重合開始剤および熱重合開始剤を混合して使用することもできる。このような硬化性組成物も接着剤として好適に使用することができる。
本発明の硬化性組成物から硬化物を製造する方法は、基体を準備する基体準備工程と、本発明の硬化性組成物を基体に塗布する塗布工程と、エネルギー線を照射する照射工程と、を含む。
基体準備工程に用いる基体の材質としては、例えば、シリコン;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタル、酸化チタン、酸化ルテニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン等のセラミックス;ソーダガラス、石英ガラス等のガラス;金属ルテニウム等の金属;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリビニルアルコール;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;シクロオレフィン系樹脂;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン、ノルボルネン樹脂等;が挙げられることができるが、少なくとも基体の片側は可視光を透過する樹脂フィルムである。これらのなかでも、PVA、TAC、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、非結晶性ポリオレフィン系樹脂およびクロオレフィン系樹脂を用いた場合は、硬化物と基体との接着力が良好なことから好ましい。非結晶性ポリオレフィン系樹脂は、通常、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのような環状ポリオレフィンの重合単位を有するものであり、環状オレフィンと鎖状環状オレフィンとの共重合体であってもよい。
市販されている非結晶性ポリオレフィン系樹脂として、JSR(株)の商品名アートン、日本ゼオン(株)のZEONEX、ZEONOR、三井化学(株)のAPO、アペル等がある。非結晶性ポリオレフィン系樹脂を製膜してフィルムにするには、溶剤キャスト法、溶融押出法等、公知の方法が適宜用いられる。基体への貼り合せに先立って、樹脂フィルムの貼り合せ面に、コロナ処理、プラズマ処理、エキシマ処理、UV処理を行ってもよい。このような処理を行うことによって、接着が一層容易になる。基体の形状としては、板状、球状、繊維状、鱗片状が挙げられ、基体表面は、平面であってもよく、トレンチ構造等の三次元構造となっていてもよい。本発明の硬化物を形成する方法に用いられる基体の形状は板状が好ましく、その表面は平面であることが好ましい。
塗布工程に用いられる塗布方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段を用いることができる。各塗布方法には、それぞれ最適な粘度範囲があるため、溶剤を用いて粘度調整を行ってもよい。このための溶剤には、偏光子の光学性能を低下させることなく、光カチオン硬化型接着剤を良好に溶解するものが用いられるが、その種類に特別な限定はない。例えば、トルエンに代表される炭化水素類、酢酸エチルに代表されるエステル類等の有機溶剤が使用できる。
エネルギー線を照射する照射工程に用いられるエネルギー線は、特に限定されるものではないが、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、キセノンアーク灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2000オングストロームから7000オングストロームの波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線を利用することができる。好ましくは、波長300〜450nmの光を発光する超高圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯等が挙げられる。
さらに、露光光源にレーザー光を用いることにより、マスクを用いずに、コンピューター等のデジタル情報から直接画像を形成するレーザー直接描画法が、生産性のみならず、解像性や位置精度等の向上も図れることから有用であり、そのレーザー光としては、340〜430nmの波長の光が好適に使用されるが、エキシマーレーザー、窒素レーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザーおよびYAGレーザー等の可視から赤外領域の光を発するものも用いられる。これらのレーザーを使用する場合には、可視から赤外の領域を吸収する増感色素が加えられる。また、ハーフトーンマスクを使用して用いることもできる。エネルギー線を照射する工程の後、室温で一晩または40〜100℃で1〜10分間熱養生して、硬化を確実にすることが好ましい。
本発明の硬化性組成物から硬化物を製造する他の方法は、基体を準備する基体準備工程と、硬化性組成物を基体に塗布する塗布工程と、50〜200℃で加熱する加熱工程と、を含む。
基体準備工程に用いる基体の材質としては、例えば、シリコン;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタル、酸化チタン、酸化ルテニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン等のセラミックス;ソーダガラス、石英ガラス等のガラス;金属ルテニウム等の金属;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリビニルアルコール;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;シクロオレフィン系樹脂;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン、ノルボルネン樹脂等;着色顔料、着色染料、カーボンブラックを含有しているような樹脂;ポリイミドフィルムが挙げられる。基体への貼り合せに先立って、樹脂フィルムの貼り合せ面に、コロナ処理,プラズマ処理、エキシマ処理、UV処理を行ってもよい。このような処理を行うことによって、接着が一層容易になる。基体の形状としては、板状、球状、繊維状、鱗片状が挙げられ、基体表面は、平面であってもよく、トレンチ構造等の三次元構造となっていてもよい。本発明の硬化物を形成する方法に用いられる基体の形状は板状が好ましく、その表面は平面であることが好ましい。
塗布工程に用いられる塗布方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段を用いることができる。各塗布方法には、それぞれ最適な粘度範囲があるため、溶剤を用いて粘度調整を行ってもよい。このための溶剤には、偏光子の光学性能を低下させることなく、熱カチオン硬化型接着剤を良好に溶解するものが用いられるが、その種類に特別な限定はない。例えば、トルエンに代表される炭化水素類、酢酸エチルに代表されるエステル類等の有機溶剤が使用できる。
50〜200℃で加熱する加熱工程で用いられる加熱方法としては、周知一般の方法を使用することができ、例えば、ヒーター等を使用することができる。加熱条件は使用する触媒に応じて50〜200℃の範囲内で適切に調整すればよい。加熱時間は、1〜60分間とすることが好ましい。加熱工程の後、室温で一晩または40〜100℃で1〜10分間熱養生して、硬化を確実にするのが好ましい。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1−1〜1−18および比較例1−1〜1−4]
表1に示す化合物を用いて、表2〜5に示す配合で実施例1−1〜1−18および比較例1−1〜1−4の硬化性組成物を調製した。なお、表中の単位は質量部である。
※1:構造中にヒドロキシメチレン基を有する化合物
※2:構造中にヒドロキシメチレン基もヒドロキシメチン基も有さない化合物
[接着性評価]
実施例1−1〜1−18および比較例1−1〜1−4の硬化性組成物の粘度を、東機産業(株)製のE型粘度計TVE−25Lを用いて測定することで評価した。25℃において粘度が120mPa・s未満である場合を++、粘度が120mPa・s以上である場合を−として評価した。粘度が120mPa・s未満である硬化性組成物は、液晶表示装置に用いられる偏光板に代表される微細な光学部品を製造する場合に用いられる接着剤として有用な硬化性組成物である。結果を表2〜5に併記する。
[接着性評価]
実施例1−1〜1−18および比較例1−1〜1−4の硬化性組成物を、各々1枚のコロナ放電処理をしたTACフィルムに塗布した後、ラミネーターを用いてコロナ放電処理を施したCOP(シクロオレフィンポリマー)フィルムと貼り合わせ、無電極紫外光ランプを用いて1000mJ/cm2のエネルギーを照射して接着して試験片を得た。
実施例1−1〜1−18および比較例1−1〜1−4の試験片の接着力をAIKOH社製FTN−13A/500を用い、90度剥離試験で評価した。接着力が1.0N/mm以上である場合を++、接着力が1.0N/mm未満である場合を−として評価した。結果を表2〜5に併記する。
表2〜5の結果より、実施例1−1〜1−18および比較例1−1〜1−4の硬化性組成物は、粘度が120mPa・s未満であることから接着剤として十分に機能する粘度であることがわかる。
表2〜5の結果より、、実施例1−1〜1−18の硬化性組成物は全てが優れた接着力を示したことがわかる。一方で、比較例1−1〜1−4の硬化性組成物は全てが接着力が乏しいことがわかる。
[実施例2−1〜2−18および比較例2−1〜2−4]
表1に示す化合物を用いて、表6〜9に示す配合で実施例2−1〜2−18および比較例2−1〜2−4の硬化性組成物を調製した。なお、表中の配合量の単位は質量部である。
[粘度評価]
実施例2−1〜2−18および比較例2−1〜2−4の硬化性組成物の粘度を、東機産業(株)製のE型粘度計“TVE−25L”を用いて測定することで評価した。粘度が120mPa・s未満である場合を++、粘度が120mPa・s以上である場合を−として評価した。粘度が120mPa・s未満である硬化性組成物は、液晶表示装置に用いられる偏光板に代表される微細な光学部品を製造する場合に用いられる接着剤として有用な硬化性組成物である。結果を表6〜9に併記する。
[接着性評価]
実施例2−1〜2−18および比較例2−1〜2−4の硬化性組成物を、各々1枚のコロナ放電処理をしたTACフィルムに塗布した後、ラミネーターを用いてコロナ放電処理を施したCOP(シクロオレフィンポリマー)フィルムと貼り合わせ、90℃のオーブンで30分加温することで実施例2−1〜2−18および比較例2−1〜2−4の試験片を得た。
実施例2−1〜2−18および比較例2−1〜2−4の試験片の接着力をAIKOH社製FTN−13A/500を用い、90度剥離試験で評価した。接着力が1.0N/mm以上である場合を++、接着力が1.0N/mm未満である場合を−として評価した。結果を表6〜9に併記する。
表6〜9の結果より、実施例2−1〜2−18は全てが優れた接着力を示したことがわかる。一方で、比較例2−1〜2−4は全てが接着力が乏しいことがわかる。