JP2017171731A - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温条件下での使用に耐える高い強度と耐熱性とを有し、且つ高い振動耐性を有する成形品を付与するポリフェニレンスフィド樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)10〜94質量%と、エポキシ基及びカルボジイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含む官能基含有オレフィン重合体(B)6〜20質量%と、無機充填材(C)0〜70質量%(但し、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計は100質量%である)とを含む、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物及びその成形品に関する。
ポリフェニレンスルフィド樹脂は、剛性、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性、寸法安定性をバランス良く備えているため、様々な用途に広く用いられている。近年、自動車の燃費改善を目的として、自動車のエンジンルーム内部品の金属製部品を樹脂製部品に置き換えて軽量化することが検討されている。ポリフェニレンスルフィド樹脂は、前述の通り、金属製部品の代替に適した特性を有することから、冷却系部品やエンジン周辺部品として使用されている。
冷却部品やエンジン周辺部品は、高温条件下での使用に耐える剛性(例えば、引張強度)と耐熱性を有するだけでなく、車両走行時の振動耐性(例えば、ウェルド強度、引張り伸び、衝撃強度)を有することが求められる。樹脂製部品の振動耐性を高めるためには、使用される樹脂の靱性を高めることが必要である。しかしながら、ポリフェニレンスルフィド樹脂は、一般的に、他のエンジニアリングプラスチックに比べて、靱性に劣る傾向にある。従って、ポリフェニレンスルフィド樹脂の靱性を高めることが検討されている。
これに対して、ポリフェニレンスルフィド樹脂に、各種エラストマーを配合した樹脂組成物が提案されている。例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂と、エチレン・α−オレフィン系エラストマーとを含む樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献1参照)。ポリフェニレンスルフィド樹脂に、エチレン・α−オレフィン系エラストマーを配合することで、靱性を高めることができるが、その一方で、成形加工性が低下するという問題があった。これに対して、ポリフェニレンスルフィド樹脂と、エチレン・α−オレフィン系エラストマーと、カルボン酸アミド系ワックスとを含む樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献2)。
また、エンジン周辺の冷却部品や吸気部品の樹脂化だけでなく、金属配管やパイプ等の中空部品の樹脂化も検討されている。また、金属製部品の樹脂化だけでなく、エンジンルームのコンパクト化、それによる部品の小型化も急速に進んでいる。それに伴い、これらの部品に用いられる樹脂には、これまで以上に高い靱性が求められつつある。
特開2000−198923号公報 特許第5218706号公報
しかしながら、特許文献1及び2の樹脂組成物は、高温環境下での靱性が十分ではないことから、その成形品は十分な振動耐性(例えば、ウェルド強度、引張り伸び、衝撃強度)を有するものではなかった。
また、中空部品を得るためには、押出し成形性やブロー成形性に優れることが求められる。具体的には、中空部品は肉厚変動が少ないことが求められることから、溶融時の粘度が適度に高いことが求められる。しかしながら、特許文献1及び2の樹脂組成物は、溶融時の粘度が低いことから、肉厚変動(ドローダウン)が生じやすく、押出し成形性やブロー成形性が低かった。
さらに、特許文献1及び2の樹脂組成物は、エチレン・α−オレフィン系エラストマーの熱分解に起因するガスが発生し、成形性の低下や成形品の外観悪化が生じる懸念もあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高温条件下での使用に耐える高い強度と耐熱性とを有し、且つ高い振動耐性を有する成形品を付与するポリフェニレンスフィド樹脂組成物を提供することを目的とする。
[1] ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)10〜94質量%と、
エポキシ基及びカルボジイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含む官能基含有オレフィン重合体(B)6〜20質量%と、
繊維状充填材(C)0〜70質量%(但し、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計は100質量%である)と
を含む、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
[2] 前記官能基が、カルボジイミド基である、[1]に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
[3] 前記繊維状充填材(C)を、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計に対して20〜60質量%含む、[1]又は[2]に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
[4] 前記官能基含有オレフィン重合体(B)の官能基の含有量が、前記官能基含有オレフィン重合体(B)の全質量に対して0.1〜6.0質量%である、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
[5] 前記官能基含有オレフィン重合体(B)の含有量は、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)の全質量に対して11〜40質量%である、[1]〜[4]のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形した、成形品。
[7] [1]〜[5]のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形した、中空部を有する成形品。
本発明によれば、高温条件下での使用に耐える高い強度と耐熱性とを有し、且つ高い振動耐性を有する成形品を付与するポリフェニレンスフィド樹脂組成物を提供することができる。
1.ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、少なくともポリフェニレンスルフィド樹脂(A)と、官能基含有オレフィン重合体(B)とを含む。
1−1.ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)
ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)は、下記式(1)で示される構造単位を含む重合体である。
Figure 2017171731
式(1)で示される構造単位は、p−ジクロロベンゼンとスルフィド化剤(例えば、アルカリ金属硫化物やアルカリ金属水硫化物)との重縮合物に由来する。
式(1)で示される構造単位の含有割合は、強度や耐熱性の観点から、重合体を構成する構造単位の合計に対して70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)は、必要に応じて式(1)で示される構造単位以外の他の構造単位をさらに含んでもよい。
他の構造単位は、p−ジクロロベンゼン以外の他のポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤との重縮合物に由来する。他のポリハロゲン化芳香族化合物の例には、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、及び1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン等が含まれる。他の構造単位の例には、下記式のものが含まれる。これらの他の構造単位を含む重合体は、融点が高すぎず、高い成形性を有し得る。
Figure 2017171731
他の構造単位の含有割合は、耐熱性を損なわない観点からは、重合体を構成する構造単位の合計に対して30モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)は、任意の方法で製造される。例えば、有機極性溶媒中で、ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させて、ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)を製造することができる。具体的な製造方法は、例えば特許第5218706号と同様である。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)は、クロロホルム抽出量が1.8質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
クロロホルム抽出量が1.8質量%以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂(A)は、高いウェルド強度を有しやすい。クロロホルム抽出量を1.8質量%以下とするためには、例えばポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを重合反応させた後、得られる固形物を後処理する工程において、有機溶剤で固形物を洗浄することが好ましい。
クロロホルム抽出量は、ソックスレー抽出器を用い、ポリフェニレンスルフィド樹脂の試料10gを、クロロホルム200mlを用いて5時間抽出し、その抽出液を50℃で乾燥することにより求められる。乾燥後に得られた残渣重量の、抽出前の試料の重量に対する割合(百分率)を、クロロホルム抽出量とする。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)の溶融粘度は、押し出し成形やブロー成形を行う際に、溶融樹脂の流動性を損なわずに肉厚変動を少なくする等の観点から、5〜2000Pa・sであることが好ましく、20〜1300Pa・sであることがより好ましい。溶融粘度は、320℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定することができる。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)の、ISO 1133による190℃、5kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)は、押し出し成形やブロー成形を行う際に、溶融樹脂の流動性を損なうことなく、肉厚変動を少なくする観点から、10〜1000g/10分であることが好ましく、50〜800g/10分であることがより好ましい。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対して10〜94質量%であることが好ましく、30〜72質量%であることがより好ましく、40〜66質量%であることが更に好ましい。ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)の、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対する含有量が10質量%以上であると、樹脂組成物の成形品に高い強度や耐熱性を付与しやすく、94質量%以下であると、成形品の振動耐性が損なわれにくい。
1−2.官能基含有オレフィン重合体(B)
官能基含有オレフィン重合体(B)は、エポキシ基及びカルボジイミド基からなる群より選ばれる一以上の官能基を含むオレフィン重合体である。カルボジイミド基は、カルボジイミド単位(−N=C=N−R−、R:2価の有機基)を1以上含む基である。
官能基含有オレフィン重合体(B)を含むポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、官能基含有オレフィン重合体(B)の官能基が、ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)の分子末端と反応するか、又は相互作用する。それにより、ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)とカルボジイミド化合物とを単に混合したものよりも、官能基含有オレフィン重合体(B)がポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中に均一に分散しやすい。そのようなポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の成形品は、高い剛性と耐熱性に加えて、高い耐衝撃性を有する。
官能基含有オレフィン重合体(B)は、変性オレフィン重合体(b1)を、カルボジイミド基含有化合物(b2)又はエポキシ基含有化合物(b3)でグラフト変性して得られる重合体である。
変性オレフィン重合体(b1)は、オレフィン重合体を、反応性官能基を有する化合物でグラフト変性して得ることができる。
オレフィン重合体は、エチレン(共)重合体、プロピレン(共)重合体、又はブテン(共)重合体であることが好ましく、エチレン(共)重合体であることがより好ましい。
エチレン(共)重合体は、エチレン単独重合体又はエチレン・α−オレフィン共重合体である。エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体であり、好ましくはエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体である。α−オレフィンの例には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン及び1−デセン等が含まれる。エチレン・α−オレフィン共重合体の例には、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体及びエチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等が含まれる。これらの中でも、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体及びエチレン・1−オクテン共重合体が好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体におけるエチレン由来の構造単位の含有割合は、70〜99.5モル%であることが好ましく、80〜99モル%であることがより好ましい。一方、α−オレフィン由来の構造単位の含有割合は、0.5〜30モル%であることが好ましく、1〜20モル%であることがより好ましい。
オレフィン重合体は、ASTM D1238による190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)は、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の成形時の流動性を高める観点では、0.01〜20g/10分であることが好ましく、0.05〜20g/10分であることがより好ましい。
反応性官能基を有する化合物は、不飽和カルボン酸又はその誘導体であることが好ましい。不飽和カルボン酸又はその誘導体の例には、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸及びエンドシス−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸〔登録商標〕)等の不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン酸、並びにそれらの酸ハライド、アミド、イミド、酸無水物及びエステル等の誘導体が含まれる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸及びその酸無水物が好ましく、マレイン酸、ナジック酸(登録商標)及びそれらの酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
無水マレイン酸は、オレフィン重合体との反応性が高い一方で、無水マレイン酸同士の反応は生じにくい。従って、無水マレイン酸は、安定してオレフィン重合体と反応し得る。
オレフィン重合体の、反応性官能基を有する化合物によるグラフト変性は、反応効率等の観点から、ラジカル開始剤(例えば有機ペルオキシド等の過酸化物)の存在下で行ってもよい。
カルボジイミド基含有化合物(b2)は、下記式(2)で示される構造単位を2以上有するポリカルボジイミド化合物である。
Figure 2017171731
式(2)のRは、2価の有機基を示す。2価の有機基の例には、アルキレン基、シクロアルキレン基、及びアリーレン基が含まれる。式(2)で表される構造単位の数は、2〜32であり得る。
カルボジイミド基含有化合物(b2)の例には、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等が含まれる。
カルボジイミド基含有化合物(b2)の数平均分子量(Mn)は、通常、400〜500000であることが好ましく、1000〜10000であることがより好ましく、2000〜4000であることが更に好ましい。数平均分子量(Mn)がこの範囲にあると、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の成形品の耐衝撃性が高まりやすい。数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算にて測定される。
カルボジイミド基含有化合物(b2)は、市販品であってもよい。市販品の例には、日清紡績株式会社製カルボジライトHMV−8CAやLA1等が含まれる。
エポキシ基含有化合物(b3)は、グリシジル(メタ)アクリレートであることが好ましい。グリシジル(メタ)アクリレートの例には、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル等が含まれる。
変性オレフィン重合体(b1)の、カルボジイミド基含有化合物(b2)又はエポキシ基含有化合物(b3)によるグラフト変性は、公知の方法で行うことができる。例えば、変性オレフィン重合体(b1)と、カルボジイミド基含有化合物(b2)又はエポキシ基含有化合物(b3)とを溶融混練して、官能性基含有オレフィン重合体(B)を得ることができる。反応温度は、例えば変性オレフィン重合体(b11)の融点以上、具体的には100〜350℃とし得る。反応時間は、通常、0.5〜10分間とし得る。
エポキシ基を含むオレフィン重合体は、前述の方法の他にも、オレフィン単量体とエポキシ基含有化合物(b3)とをラジカル共重合させて得ることもできる。その場合、必要に応じて他の共重合成分も共重合させてもよい。他の共重合成分の例には、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル等のα,β−不飽和グリシジルエーテル;スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、クロロスチレン、2,4−ジメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等の不飽和ビニルエステル等が含まれる。
官能基含有オレフィン重合体(B)の官能基は、カルボジイミド基であることが好ましい。官能基含有オレフィン重合体(B)は、そのカルボジイミド基のポリフェニレンスルフィド樹脂(A)の分子末端基との反応性が高いので、ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)と相溶しやすく、樹脂組成物中に均一に分散しやすい。それにより、強度を損なうことなく高い耐衝撃性が得られやすい。
官能基含有オレフィン重合体(B)における官能基の含有量は、官能基含有オレフィン重合体(B)の全質量に対して0.1〜6.0質量%であることが好ましい。官能基の含有量が0.1質量%以上であると、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の成形品の振動耐性を高めやすい。官能基の含有量が6.0質量%以下であると、官能基含有オレフィン重合体(B)とポリフェニレンスルフィド樹脂(A)との反応又は相互作用が過度になることによる、溶融流動性の過度な増大を抑制しやすい。官能基がカルボジイミド基である場合、カルボジイミド基の末端部分のカルボジイミド単位だけでなく、主鎖部分のカルボジイミド単位もポリフェニレンスルフィド樹脂(A)との反応又は相互作用に寄与し得る。官能基含有オレフィン重合体(B)における官能基の含有量は、官能基含有オレフィン重合体(B)の全質量に対して0.5〜5.0質量%であることが好ましく、1.5〜5.0質量%であることがより好ましい。また、官能基含有オレフィン重合体(B)の単位質量当たりに含まれる官能基の数は、官能基含有オレフィン重合体(B)100g当たりに1.5〜20mmol/100gであることが好ましく、5〜20mmol/100gであることがより好ましい。
官能基含有オレフィン重合体(B)の官能基の含有量は、13C−NMRにより測定できる。
13C−NMR測定は、測定装置は日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒をオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒とする。また、測定温度は120℃、観測核は13C(125MHz)、シングルパルスプロトンデカップリング、45°パルス、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値とする。各種シグナルのアサインは、常法を基にして行い、シグナル強度の積算値を基に定量を行うことができる。
カルボジイミド基に由来するピークは、13C−NMRでは130〜142ppm、エポキシ基に由来するピークは、13C−NMRでは43〜69ppmで観察される。これらのピークから、カルボジイミド基やエポキシ基の含有量を特定することができる。
官能基含有オレフィン重合体(B)の135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]は、0.2〜3.0dl/gであることが好ましい。官能基含有オレフィン重合体(B)の極限粘度が0.2dl/g以上であると、良好な耐衝撃性を得やすく、3.0dl/g以下であると、優れた流動性が得られやすい。官能基含有オレフィン重合体(B)の135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]は、0.2〜2.0dl/gであることがより好ましい。
官能基含有オレフィン重合体(B)の135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]は、常法に基づき、以下の様にして測定される。サンプル20mgをデカリン15mlに溶解し、ウベローデ粘度計を用い、135℃雰囲気にて比粘度(ηsp)を測定する。このデカリン溶液に更にデカリン5mlを加えて希釈後、同様の比粘度測定を行う。この希釈操作と粘度測定を更に2度繰り返した測定結果を基に、濃度(C)をゼロに外挿したときの「ηsp/C」値を極限粘度[η]とする。
官能基含有オレフィン重合体(B)の、ASTM−D1238に準拠した190℃、2160g荷重で測定されるメルトフローレートは、0.3〜50g/分であることが好ましい。官能基含有オレフィン重合体(B)のメルトフローレートが0.3g/分以上であると、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の溶融時の流動性を適度に高め得るので、成形性が損なわれにくい。官能基含有オレフィン重合体(B)のメルトフローレートが50g/分以下であると、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の成形品の強度を大幅に損ないにくいだけでなく、成形時の流動性が適度に低いので得、例えば押し出し成形やブロー成形を行う際のドローダウンを抑制しやすい。
官能基含有オレフィン重合体(B)の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対して6〜20質量%であることが好ましい。官能基含有オレフィン重合体(B)の(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対する含有量が6質量%以上であると、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の靱性(特に衝撃強度)を高めやすいので、高い振動耐性を有する成形品が得られやすい。官能基含有オレフィン重合体(B)の(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対する含有量が20質量%以下であると、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の成形時の過度な粘度上昇を生じにくいだけでなく、分散が不十分となるのを抑制できるので強度の低下を高度に抑制でき、耐熱性も損なわれにくい。官能基含有オレフィン重合体(B)の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対して8〜18質量%であることがより好ましく、9〜16質量%であることが更に好ましい。
官能基含有オレフィン重合体(B)の含有量は、(A)成分の全質量に対して11〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることがより好ましい。官能基含有オレフィン重合体(B)の(A)成分の全質量に対する含有量が11質量%以上であると、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の靱性を高めやすく、40質量%以下であると、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の強度や耐熱性が損なわれにくい。
1−3.繊維状充填材(C)
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、成形品の強度(剛性)を高めやすくする観点から、繊維状充填材(C)をさらに含むことが好ましい。
繊維状充填材(C)は、成形品に高い強度(剛性)を付与し得る。繊維状充填材(C)の例には、ガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、セピオライト、ゾノトライト、酸化亜鉛ウィスカー等の繊維状の無機充填材が含まれる。これらの中でも、成形品の強度(剛性)や耐熱性を高めやすいことから、ガラス繊維、ワラストナイト及び炭素繊維が好ましい。繊維状充填材(C)は、1種のみ含まれてもよいし、2種以上が含まれてもよい。
繊維状充填材(C)の平均繊維長は、成形性を損なうことなく、十分な強度の成形品を得る観点から、1μm〜20mmであることが好ましく、5μm〜10mmであることがより好ましく、10μm〜7mmであることがさらに好ましい。繊維状充填材(C)のアスペクト比は、5〜2000であることが好ましく、30〜1000であることがより好ましい。
繊維状充填材(C)の平均繊維長と平均繊維径は、以下の方法により測定することができる。
1)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物又はその成形品を、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム溶液(0.1/0.9体積%)に溶解させた後、濾過して得られる濾過物を採取する。
2)前記1)で得られた濾過物を水に分散させ、光学顕微鏡(倍率:50倍)で任意の300本それぞれの繊維長(Li)と繊維径(Di)を計測する。繊維長がLiである繊維の本数をqiとし、次式に基づいて重量平均長さ(Lw)を算出し、これを繊維状充填材(C)の平均繊維長とする。
重量平均長さ(Lw)=(Σqi×Li)/(Σqi×Li)
同様に、繊維径がDiである繊維の本数をriとし、次式に基づいて重量平均径(Dw)を算出し、これを繊維状充填材(C)の平均繊維径とする。
重量平均径(Dw)=(Σri×Di)/(Σri×Di)
ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物及びその成形品における繊維状の繊維状充填材(C)の平均繊維長や平均繊維径は、通常、溶融混練前の繊維状の繊維状充填材(C)の平均繊維長や平均繊維径とほぼ同じである。
繊維状充填材(C)の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対して例えば0〜70質量%であり、20〜60質量%であることが好ましい。繊維状充填材(C)の、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対する含有量が20質量%以上であると、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の成形品に高い強度(剛性)を付与しやすく、70質量%以下であると、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の成形時の過度な粘度上昇や、成形品の耐衝撃性やウェルド強度が損なわれにくい。繊維状充填材(C)の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対して25〜50質量%であることがより好ましい。
繊維状充填材(C)の含有量は、(A)成分の全質量に対して70〜95質量%であることが好ましく、75〜93質量%であることがより好ましい。繊維状充填材(C)の(A)成分の全質量に対する含有量が70質量%以上であると、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の靱性を高めやすく、95質量%以下であると、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の強度や耐熱性が損なわれにくい。
1−4−1.耐熱安定剤(D)
耐熱安定剤(D)は、銅系安定剤(D1)と有機熱安定剤(D2)の少なくとも一方を含むことが好ましい。
銅系安定剤(D1)は、(i)ハロゲンと元素周期律表の1族又は2族金属元素との塩(ハロゲン金属塩)、(ii)銅化合物、及び(iii)高級脂肪酸金属塩の混合物を含む。
(i)ハロゲン金属塩の例には、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム及び塩化ナトリウムが含まれる。中でも、ヨウ化カリウム及び臭化カリウムが好ましい。ハロゲン金属塩は、1種類のみ含まれてもよいし、2種類以上が含まれてもよい。
(ii)銅化合物の例には、銅のハロゲン化物;銅の硫酸塩、酢酸塩、プロピオオン酸塩、安息香酸塩、アジピン酸塩、テレフタル酸塩、サルチル酸塩、ニコチン酸塩、ステアリン酸塩;銅のキレート化合物(銅とエチレンジアミン又はエチレンジアミン四酢酸等との化合物)が含まれる。中でも、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅、及び酢酸銅が好ましい。銅化合物は、1種類のみ含まれてもよいし、2種類以上が含まれてもよい。
(i)ハロゲン金属塩と(ii)銅化合物との含有質量比は、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の成形品の耐熱性や製造時の腐食性を改善しやすくする観点から、ハロゲンと銅とのモル比が、0.1/1〜200/1、好ましくは0.5/1〜100/1、より好ましくは2/1〜40/1となるように調整されうる。
(iii)高級脂肪酸金属塩の例には、高級飽和脂肪酸金属塩及び高級不飽和脂肪酸金属塩が含まれる。
高級飽和脂肪酸金属塩は、炭素原子数6〜22の飽和脂肪酸と、元素周期律表の1、2、3族元素、亜鉛、及びアルミニウム等の金属元素(M1)との金属塩でることが好ましい。そのような高級飽和脂肪酸金属塩は、下記式(3)で示される。
Figure 2017171731
(式(3)中、金属元素(M1)は、元素周期律表の1、2、3族元素、亜鉛又はアルミニウムであり、nは、8〜30でありうる)
高級飽和脂肪酸金属塩の例には、カプリン酸、ウラデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビル酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアロール酸、2−ヘキサデセン酸、7−ヘキサデセン酸、9−ヘキサデセン酸、ガドレイン酸、ガドエライジン酸、11−エイコセン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩及びアルミニウム塩が含まれる。中でも、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩及びアルミニウム塩が好ましい。
有機熱安定剤(D2)は、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、ホスファイト類、有機リン化合物、及びビスフェノール型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
ヒンダードフェノール化合物の例には、N,N’-ヘキサメチレンビス-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、ビス(3,3-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)ブタン酸)グリコールエステル、2,1’-チオエチルビス-(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、及びトリエチレングリコール-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート等が含まれる。
ヒンダードアミン化合物の例には、フェニレンジアミンのアセトン付加物(Naugard A)、フェニレンジアミンのリノレン付加物、Naugard 445、N,N’-ジナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-シクロヘキシル-p-フェニレンジアミン、及びクラリアント社製Nylostab S−EED[N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,3−ベンゼンジカルボキサミド]等が含まれる。
ホスファイト類及び有機リン化合物の例には、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリス(tert-ブチルフェニル))ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、6-イソオクチルオキシ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12H-ジベンズ-[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、6-フルオロ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12-メチルジベンズ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチルホスファイト及びビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト等が含まれ、好ましくはトリス[2-tert-ブチル-4-チオ-(2’-メチル-4’-ヒドロキシ-5’-tertブチル)フェニル-5-メチル]フェニル ホスファイト及びトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(バーゼル、Clariant社の市販品、Hostanox(登録商標)PAR 24)である。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の例には、油化シェルエポキシ(株)社製EPIKOTE等が含まれる。
有機熱安定剤(D2)は、前述の通り、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、ホスファイト類、有機リン化合物、及びビスフェノール型エポキシ樹脂から選ばれる2種類以上の混合物であってもよい。そのような混合物の例には、BASF社製Irgatec NC66等が含まれる。
耐熱安定剤(D)の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対して0.05〜3.0質量%であることが好ましい。耐熱安定剤(D)の、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対する含有量が0.05質量%以上であると、成形品に高い耐熱性を付与しやすく、3.0質量%以下であると、成形品の強度(剛性)が損なわれにくい。耐熱安定剤(D)の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対して0.1〜1.0質量%であることがより好ましい。
銅系安定剤(D1)と有機熱安定剤(D2)の含有質量比は、例えば10/90〜100/0であり、50/50〜90/10であることが好ましい。銅系安定剤(D1)の比率が多いと、150℃を超える温度域で良好な耐熱老化性を示しやすく;有機熱安定剤(D2)の比率が多いと、100〜150℃の温度域で良好な耐熱老化性を示しやすい。
1−5.その他の成分
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分をさらに含んでもよい。その他の成分の例には、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類及びリン類等)、繊維状以外の無機充填材(クレー、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、石英、マイカ及びグラファイト等)、光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ベンゾエート類、ヒンダードアミン類及びオギザニリド類等)、他の重合体(ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂及びLCP等)、難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系および無機系等)、離型剤、流動性改良剤、加水分解抑制剤、蛍光増白剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、顔料、結晶核剤等が含まれる。中でも、繊維状以外の無機充填材、流動性改良剤及び加水分解抑制剤等が好ましい。
流動性改良剤は、成形時の樹脂組成物の流動性を高める目的で添加され得る。特に、成形品の剛性や耐熱性を高めるために、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が繊維状充填材(C)を比較的多く含むことがある。そのような場合でも、成形時のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の過剰な粘度上昇を抑制でき、成形性や離型性の低下を抑制しうる。そのような流動性改良剤の例には、脂肪族金属塩が含まれる。
脂肪酸金属塩は、公知の化合物であってよい。脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸の例には、モンタン酸、ベヘン酸、及びステアリン酸等が含まれる。脂肪酸金属塩を構成する金属塩の例には、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、及びアルミニウム塩等が含まれる。脂肪酸金属塩の好ましい例には、成形時の流動性を高める観点から、モンタン酸又はベヘン酸の、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、及びアルミニウム塩が含まれ、より好ましくはモンタン酸カルシウムが含まれる。
2.ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、少なくともポリフェニレンスルフィド樹脂(A)と、官能基含有オレフィン重合体(B)と、好ましくはさらに無機充填材(C)と耐熱安定剤(D)とを、公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー若しくはタンブラーブレンダー等で混合する方法、又は混合後さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー若しくはバンバリーミキサー等で溶融混練した後、造粒若しくは粉砕する方法により製造することができる。
3.用途
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、高い強度と耐熱性に加えて、高い靱性を有するので、その成形品は、高い剛性と、高い耐熱性と、高い振動耐性を有する。従って、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、これらの特性が要求される用途に広く用いることができる。
そのような用途の例には、自動車・車両関連部品が含まれる。自動車・車両関連部品の例には、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エンジン支持部材(例えば、エンジンマウント、エンジンマウントブラケット、オイルパンアッパー、エンジントルクロッド等)、冷却系部品、及び灯具部品(例えば、エイミングナット)等が含まれる。
これらの中でも、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、中空部を有する成形品(例えば燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ等)に好ましく用いられる。
中空部を有する成形品は、樹脂組成物をブロー成形又は押し出し成形して製造される。ブロー成形又は押し出し成形では、溶融時の樹脂組成物の粘度が低すぎると、ドローダウンを生じやすい。これに対して、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、溶融時の粘度が適度に高いので、押し出し成形時又はブロー成形時のドローダウンを抑制できる。
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
1.材料
(1)ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)
<ポリフェニレンスルフィド樹脂(A−1)の合成>
撹拌機及び底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム0.513kg(6.25モル)、及びイオン交換水3.82kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水8.09kg及びNMP0.28kgを留出した後、オートクレーブ内を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
オートクレーブ内を200℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン10.34kg(70.32モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、オートクレーブを窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温し、270℃で140分反応させた。次いで、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら、水2.67kg(148.4モル)を圧入した。次いで、250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し、内容物を取り出した。
内容物を、約35リットルのNMPで希釈してスラリーとし、85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を、同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を、70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物及び酢酸32gを、70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過し、更に得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。
得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥させて、ポリフェニレンスルフィド樹脂(A−1)を得た。ポリフェニレンスルフィド樹脂(A−1)のMFR、溶融粘度及びクロロホルム抽出量を前述の方法でそれぞれ測定したところ、MFRは600g/10分、溶融粘度は100Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)、クロロホルム抽出量は1.4質量%であった。
<ポリフェニレンスルフィド樹脂(A−2)の合成>
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.96kg(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム2.58kg(31.50モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kg及びNMP0.28kgを留出した後、オートクレーブ内を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10.24kg(69.63モル)、NMP9.01kg(91.00モル)を加え、オートクレーブを窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1.26kg(70モル)の水を15分かけて圧入しながら、250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後、200℃まで1.0℃/分の速度で冷却して、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26.3kgのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31.9kgのNMPで洗浄、濾別した。これを、56.0kgのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05質量%酢酸水溶液70.0kgで洗浄、濾別した。
さらに、70.0kgのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水ポリフェニレンスルフィド樹脂粒子を80℃で熱風乾燥させ、120℃で減圧乾燥させて、ポリフェニレンスルフィド樹脂(A−2)を得た。得られたポリフェニレンスルフィド樹脂(A−2)のMFR、溶融粘度及びクロロホルム抽出量を前述の方法でそれぞれ測定したところ、MFRは100g/10分、溶融粘度は180Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)、クロロホルム抽出量は1.2質量%であった。
(2)官能基含有オレフィン重合体(B)
<カルボジイミド基含有オレフィン重合体(B−1)の合成>
1)オレフィン重合体PO1の合成
線状低密度ポリエチレン(エチレン含量:98.0モル%、密度:0.925g/cm、MFR:2g/10分)100質量部に対して、無水マレイン酸(MAHと略称)0.5質量部、過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3(商品名:パーヘキシン25B、日本油脂製)0.03質量部を混合し、シリンダー温度250℃に設定した30mmφ二軸押出機を用いてグラフト変性を行った。これにより、無水マレイン酸とポリエチレン鎖の仕込み質量比が0.5である無水マレイン酸変性エチレン重合体(オレフィン重合体PO1)を得た。
2)カルボジイミド基含有オレフィン重合体(B−1)の合成
得られた無水マレイン酸変性エチレン重合体(オレフィン重合体PO1)100質量部に対して、カルボジイミド基含有化合物(日清紡績株式会社製ポリカルボジイミド、商品名:カルボジライトHMV−8CA)6.54質量部(カルボジイミド基含有化合物の分子量を2500として計算した場合の、ポリカルボジイミド鎖モル数:無水マレイン酸変性エチレン重合体(オレフィン重合体PO1)中の無水マレイン酸モル数=1:1)を、シリンダー温度250℃に設定した30mmφ二軸押出機にて溶融混練し、カルボジイミド基含有エチレン重合体(カルボジイミド基含有オレフィン重合体(B−1))を得た。得られたカルボジイミド基含有エチレン重合体は、薄黄色半透明のペレットであった。
得られたカルボジイミド基含有エチレン重合体のカルボジイミド基含有量を、前述と同様にして13C−NMRで測定したところ、17mmol/100g(4.73質量%)であった。13C−NMRの測定条件は、以下の通りとした。
13C−NMRの測定条件]
測定装置:日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒をオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒とした。また、測定温度は120℃、観測核は13C(125MHz)、シングルパルスプロトンデカップリング、45°パルス、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値とした。
130〜142ppmの範囲に認められるカルボジイミド基に由来するピークと、43〜69ppmの範囲に認められるエポキシ基に由来するピークから、カルボジイミド基やエポキシ基の含有量を特定した。
さらに、カルボジイミド基含有エチレン重合体のMFR及び極限粘度を、前述の方法でそれぞれ測定したところ、MFR(190℃、2.16kg荷重)は3.1g/10分であり、135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]は1.58g/dlであった。また、IR分析によるマレイン酸ピークが消失していたことから、反応率は100%であった。
<カルボジイミド基含有オレフィン重合体(B−2)の合成>
1)オレフィン重合体PO2の合成
十分に窒素置換したガラス製フラスコに、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを0.63mg入れ、メチルアミノキサンのトルエン溶液(Al;0.13ミリモル/リットル)1.57ml、及びトルエン2.43mlを更に添加して、触媒溶液を得た。
次いで、充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブに、ヘキサン912ml及び1−ブテン320mlを投入し、系内の温度を80℃に昇温した。引き続き、トリイソブチルアルミニウム0.9ミリモル及び上記で調製した触媒溶液2.0ml(Zrとして0.0005ミリモル)をエチレンと共に系内に圧入し、重合反応を開始させた。エチレンを連続的に供給して全圧を8.0kg/cm−Gに保ち、80℃で30分間重合を行った。
少量のエタノールを系中に投入して重合を停止させた後、未反応のエチレンをパージした。得られた溶液を大過剰のメタノール中に投入して、白色固体を析出させた。得られた白色固体を濾過して回収し、減圧下で一晩乾燥し、白色固体(エチレン・1−ブテン共重合体)を得た。
得られたエチレン・1−ブテン共重合体の密度は、0.865g/cm、MFR(ASTM D1238規格、190℃:2160g荷重)は0.5g/10分、1−ブテン構造単位含有率は4モル%であった。
得られたエチレン・1−ブテン共重合体100質量部に、無水マレイン酸2.3質量部と、過酸化物[パーヘキシン25B、日本油脂(株)製、商標]0.04質量部とを混合した。得られた混合物を、230℃に設定した1軸押出機で溶融グラフト変性して、無水マレイン酸変性エチレン・1−ブテン共重合体(オレフィン重合体PO2)を得た。無水マレイン酸変性エチレン・1−ブテン共重合体の無水マレイン酸グラフト変性量は、7.2mmol/100g(2.2質量%)であり、MFR(190℃、2.16kg荷重)は0.5g/10分であり、135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]は、1.98dl/gであった。
2)カルボジイミド基含有オレフィン重合体(B−2)の合成
得られた無水マレイン酸変性エチレン・1−ブテン共重合体(オレフィン重合体PO2)を用い、且つカルボジイミド基含有化合物の添加量を3.28質量部に変更した以外は、カルボジイミド基含有ポリオレフィン(B−1)の合成方法と同様にして、カルボジイミド基含有エチレン・1−ブテン共重合体(カルボジイミド基含有オレフィン重合体(B−2))を得た。得られたカルボジイミド基含有エチレン・1−ブテン共重合体は、薄黄色半透明のペレットであった。
得られたカルボジイミド基含有エチレン・1−ブテン共重合体のカルボジイミド基含有量を前述と同様にして測定したところ、6mmol/100g(1.67質量%)であった。また、カルボジイミド基含有エチレン・1−ブテン共重合体のMFR及び極限粘度を、前述の方法でそれぞれ測定したところ、MFR(190℃、2.16kg荷重)は1.1g/10分であり、135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]は1.81g/dlであった。また、IR分析によるマレイン酸ピークが消失していたことから、反応率は100%であった。
<エポキシ基含有ポリオレフィン(B−3)の合成>
無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(オレフィン重合体PO2)100重量部、グリシジルメタクリレート5重量部、及びジクミルパーオキシド0.1重量部を、スーパーミキサーで十分混合した後、2軸押出機(東芝機械社製 TEM−50:商品名)を用いて、230℃にて溶融混練した。それにより、グリシジル基含有エチレン−ブテン共重合体(グリシジル基含有ポリオレフィン(B−3))を得た。
得られたグリシジル基含有エチレン−ブテン共重合体(グリシジル基含有ポリオレフィン(B−3))のグリシジルメタクリレート含有量を前述と同様にして測定したところ、6.7mmol/100g(2.1質量%)であった。また、グリシジル基含有エチレン−ブテン共重合体のMFR及び極限粘度を、前述の方法でそれぞれ測定したところ、MFR(190℃、2.16kg荷重)は0.4/10分であり、135℃デカリン溶液中で測定される極限粘度[η]は2.22g/dlであった。また、IR分析によるマレイン酸ピークが消失していたことから、反応率は100%であった。
<無水マレイン酸基含有ポリオレフィン(R−1)>
無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(オレフィン重合体PO2)を、無水マレイン酸基含有ポリオレフィン(R−1)とした。
得られた重合体(B−1)〜(B−3)及び(R−1)の物性を表1に示す。
Figure 2017171731
(3)無機充填材(C)
無機充填材(C−1):オーウェンスコーニング社製FT756D、ガラス繊維、平均繊維長:3mm、アスペクト比:300
(4)耐熱安定剤(D)
耐熱安定剤(D−1):銅系安定剤(14.3質量%のヨウ化銅(I)と85.7質量%のヨウ化カリウム/ジステアリン酸カルシウム(98/2質量比)との混合物)
(5)その他成分
タルク:平均粒子径1.6μm(他の無機充填材)
モンタン酸カルシウム:離型性改良剤・流動性向上剤
<実施例1>
ポリフェニレンスルフィド樹脂(A−1)を89質量部、官能基含有オレフィン重合体(B−1)を10質量部、耐熱安定剤(D−1)を0.25質量部、タルクを0.5質量部、及びモンタン酸カルシウムを0.25質量部、タンブラーブレンダーを用いて混合し、二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α)にて、シリンダー温度320℃で原料を溶融混錬した。その後、溶融混練物をストランド状に押出し、水槽で冷却した。その後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットしてペレット状の樹脂組成物を得た。
<実施例2〜6、比較例1〜4>
表2又は3に示される組成に変更した以外は実施例1と同様にしてペレット状の樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物の、引張強度及び引張伸び、ウェルド部曲げ強度、アイゾッド衝撃強度(−23℃、40℃)並びにブロー成形性を、以下の方法で評価した。
(引張強度・引張伸び)
上記の方法で調整した各樹脂組成物を下記の射出成型機を用い、下記の成型条件で調整した厚さ3.2mmのASTM−1(ダンベル片)の試験片を、ASTMD638に準拠し、温度23℃、窒素雰囲気下で24時間放置した。次いで、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で引張試験を行い、引張強度及び伸び率(%)を測定した。
成型機:(株)ソディック プラスティック、ツパールTR40S3A
成型機シリンダー温度:320℃、
金型温度:130℃
(ウェルド部曲げ強度)
下記の射出成形機を用い、下記の成形条件で、ASTM1号型のウェルド部を有する厚み3.2mmの試験片を作製した。
成形機:(株)ソディック プラスティック、ツパールTR40S3A
成型機シリンダー温度:320℃、
金型温度:130℃
そして、得られた試験片を温度23℃、窒素雰囲気下で24時間放置した。次いで、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で曲げ試験機INTESCO社製 AB5、スパン51mm、曲げ速度12.7mm/分の条件で曲げ試験を行い、弾性率(MPa)を測定した。
(アイゾッド衝撃強度)
下記の射出成型機を用い、下記の成形条件で、ノッチ付き、厚み3.2mmの試験片を作製した。この試験片のIZOD衝撃強度を、ASTMD256に準拠し、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下、及び温度−40℃、相対湿度50%の雰囲気下でそれぞれ測定した。
成型機:住友重機械工業(株)社製、SE50DU
成型機シリンダー温度:320℃
金型温度:130℃
(ブロー成形性)
大型のブロー成形機(ベクム社製、ダイレクトブロー成形機)を用い、ダイスφ70mm、マンドレルφ60mmでアキュムレーターを使用せずに連続方式で円筒状(パイプ状)のパリソンを押し出した。押し出し条件は、シリンダー温度を320℃とし、金型温度は130℃とした。エアーの吹き付けは、型締め直後に、吹き付け時間10時間で行った。
そして、パリソンの賦形性(固化、伸び状態)とドローダウンの状態を、以下の基準で評価した。
A:パリソン賦形性が安定し、ドローダウンすることなく成形品が得られる
B:パリソン賦形は可能もドローダウンが激しく、成形品に顕著な厚みムラが見られる
C:パリソン賦形が安定せずドローダウンしてしまい、また著しい成形不良(穴あき、破れ)が見られる
実施例1〜6の評価結果を表2に示し、比較例1〜4の評価結果を表3に示す。
Figure 2017171731
Figure 2017171731
表2に示されるように、エポキシ基又はカルボジイミド基を含むオレフィン重合体(B)を含む実施例1〜6の樹脂組成物は、高い引張強度を有し、且つ高い引張り伸び、ウェルド部曲げ強度、及びアイゾット衝撃強度を有することがわかる。つまり、実施例1〜6の樹脂組成物は、高い強度と靱性とを両立できることがわかる。さらに、実施例1〜6の樹脂組成物は、ブロー成形性も良好であることがわかる。
中でも、実施例3、5及び6の対比から、カルボジイミド基を含むオレフィン重合体(B−1)又は(B−2)を含む実施例3及び5の樹脂組成物は、エポキシ基を含むオレフィン重合体(B−3)を含む実施例6の樹脂組成物よりも強度(引張強度)と靱性(引張伸び、ウェルド部曲げ強度、アイゾット衝撃強度)がより高いことがわかる。
これに対し、表3に示されるように、比較例1〜4の樹脂組成物は、高い強度と靱性(特に衝撃強度)とを両立できないことがわかる。具体的には、比較例1の樹脂組成物は、エポキシ基又はカルボジイミド基を含むオレフィン重合体(B)を含まないことから、アイゾット衝撃強度が低く、ブロー成形性も低いことがわかる。比較例2の樹脂組成物は、エポキシ基又はカルボジイミド基を含むオレフィン重合体(B)の含有量が多すぎて分散が不十分となり、分散状態が不均一となることから、強度が低下することがわかる。また、比較例4の樹脂組成物は、エポキシ基又はカルボジイミド基を含むオレフィン重合体(B)の含有量が少なすぎて衝撃強度の改善効果が得られにくく、アイゾット衝撃強度が低いことがわかる。比較例3の樹脂組成物は、無水マレイン酸基を含むオレフィン重合体(R−1)を含むので、エポキシ基又はカルボジイミド基を含むオレフィン重合体(B)と比べてポリフェニレンスルフィド樹脂との相互作用が起こりにくい。それにより、オレフィン重合体(R−1)の分散が不十分となり、分散状態が不均一となることから、強度(引張強度)と靱性(引張伸び、ウェルド部曲げ強度、アイゾット衝撃強度)がいずれも低いことがわかる。

Claims (7)

  1. ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)10〜94質量%と、
    エポキシ基及びカルボジイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含む官能基含有オレフィン重合体(B)6〜20質量%と、
    繊維状充填材(C)0〜70質量%(但し、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計は100質量%である)と
    を含む、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  2. 前記官能基が、カルボジイミド基である、請求項1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  3. 前記繊維状充填材(C)を、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計に対して20〜60質量%含む、請求項1又は2に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 前記官能基含有オレフィン重合体(B)の官能基の含有量が、前記官能基含有オレフィン重合体(B)の全質量に対して0.1〜6.0質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  5. 前記官能基含有オレフィン重合体(B)の含有量は、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂(A)の全質量に対して11〜40質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形した、成形品。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形した、中空部を有する成形品。
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