JP2017169661A - 医療用チューブの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生物学的物質又は医療用液体が付着しにくい医療用チューブの製造方法を提供する。
【解決手段】内面に微細凹凸構造を有する医療用チューブの製造方法であって、内面に前記微細凹凸構造を有する基礎チューブの外面から前記基礎チューブの径方向外側に向かって複数のシート部材を積層する積層工程を含む。
【選択図】図5
【解決手段】内面に微細凹凸構造を有する医療用チューブの製造方法であって、内面に前記微細凹凸構造を有する基礎チューブの外面から前記基礎チューブの径方向外側に向かって複数のシート部材を積層する積層工程を含む。
【選択図】図5
Description
本発明は、医療用チューブの製造方法に関する。
従来から、自発呼吸困難な患者や、自力で痰の排出が困難な患者等に対し、体外と気管内を直接つなぎ、気道を確保すると共に、呼吸や痰等の異物の吸引を行うことが可能な気管チューブが知られている。
このような気管チューブは、例えば特許文献1に開示されている。具体的に特許文献1には、基端部から先端部にかけて貫通する気道確保用ルーメンを備えた管腔体と、前記管腔体の基端部に形成されたコネクタ部と、前記管腔体の先端側部分の外周に形成され膨張収縮が可能なカフと、前記管腔体を構成する壁部に形成され前記コネクタ部の表面部と前記カフ内とを連通させるカフ膨張用ルーメンと、前記管腔体を構成する壁部に形成され前記コネクタ部の表面部と前記管腔体の表面部とを連通させる吸引用ルーメンとを備えた気管切開チューブが開示されている。
特許文献1に開示の気管チューブでは、コネクタ部の表面から管腔体の表面における所定部分に連通する吸引用ルーメンを管腔体の壁部に形成して、コネクタ部側から吸引することにより、管腔体と気管との間に溜まった痰等を吸引用ルーメンを介して外部に排出することができるようにしている。
また、引用文献1に開示の気管チューブでは、前記気管切開チューブの表面と、前記管腔体の気道確保用ルーメンを形成する内面とに、湿潤時に表面潤滑性を発現する被膜が形成されていることを特徴としている。このような構造とすることにより、患者が呼吸をする際の息やつば等によって、管腔体の内面が湿ると表面潤滑性が発現して、管腔体の内面に痰等が付着し難くなるということが記載されている。
しかしながら、本発明者らが検討した限りでは、特許文献1に記載された気管切開チューブでは、痰の付着抑制に関して、更なる改良の余地が残されていることが知見された。また、気管チューブ以外で用いられる医療用チューブについても、痰等の生物学的物質又は輸液剤等の医療用液体の付着抑制について更なる改良の余地が残されている。
本発明は、生物学的物質又は医療用液体が付着しにくい医療用チューブの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明の第1の態様としての医療用チューブの製造方法は、内面に微細凹凸構造を有する医療用チューブの製造方法であって、内面に前記微細凹凸構造を有する基礎チューブの外面から前記基礎チューブの径方向外側に向かって複数のシート部材を積層する積層工程を含むものである。
本発明の1つの実施形態として、前記基礎チューブは、表面に前記微細凹凸構造が形成されたシート状の基材を円筒状に曲げ、前記基材の両端部を接合することにより形成されることが好ましい。
本発明の1つの実施形態として、前記積層工程は、複数のシート部材を前記基礎チューブの周囲に巻き付ける巻き付け工程と、巻き付けられた前記複数のシート部材を前記基礎チューブと一体化する一体化工程と、を含むことが好ましい。
本発明の1つの実施形態として、前記積層工程では、各シート部材を前記基礎チューブの周囲に巻き付けた状態で、前記各シート部材を前記基礎チューブと一体化する巻付一体化工程を繰り返すことが好ましい。
本発明の1つの実施形態として、前記複数のシート部材は、医療用チューブの外面を構成する外層を形成する外層シート部材を含み、前記積層工程では、前記基礎チューブの周囲に巻き付けられた前記外層シート部材の端部同士を接合することが好ましい。
本発明の1つの実施形態として、前記複数のシート部材は、前記基礎チューブと前記外層シート部材との間に挟まれる中間シート部材を含み、前記中間シート部材を、端面同士が間隙を隔てて対向するように前記基礎チューブの周囲に巻き付けることが好ましい。
本発明の1つの実施形態として、前記中間シート部材を内側中間シート部材とした場合に、前記複数のシート部材は、前記内側中間シート部材の径方向外側に位置する外側中間シート部材を含み、前記外側中間シート部材を、端面同士が間隙を隔てて対向するように前記基礎チューブの周囲に巻き付け、前記基礎チューブの周方向において、前記外側中間シート部材の端面間に形成される間隙の位置を、前記内側中間シート部材の端面間に形成される間隙の位置と異なるように配置することが好ましい。
本発明の1つの実施形態として、前記複数のシート部材は、前記基礎チューブと前記外層シート部材との間に挟まれる中間シート部材を含み、前記中間シート部材を、前記基礎チューブの周方向に所定の間隔を空けて複数配置することが好ましい。
本発明の1つの実施形態として、前記積層工程では、前記基礎チューブと積層される前記複数のシート部材との間、又は、積層される前記複数のシート部材の間に、チューブを配置することが好ましい。
本発明の1つの実施形態として、前記積層工程は、前記基礎チューブ内に芯棒部材がある状態で実行されることが好ましい。
本発明の1つの実施形態としての医療用チューブの製造方法は、前記微細凹凸構造にフッ素コーティングを施すコーティング工程を更に含むことが好ましい。
本発明によれば、生物学的物質又は医療用液体が付着しにくい医療用チューブの製造方法を提供することができる。
以下、本発明に係る医療用チューブの製造方法の実施形態について、図1〜図15を参照して説明する。ここでは、本発明に係る医療用チューブの製造方法の一例として、気管チューブに用いられる医療用チューブとしてのチューブ本体の製造方法について説明する。なお、各図において共通の部材、部位には、同一の符号を付している。
初めに、本発明に係る医療用チューブの製造方法を用いて製造される気管チューブの一例について説明する。図1は、本発明の医療用チューブの製造方法を用いて製造される気管チューブの一例としての気管チューブ1を気管内に留置した状態を示す図である。図2は、気管チューブ1における医療用チューブとしてのチューブ本体2を単体で示す斜視図である。図3は図2に示すチューブ本体2の断面図の一部であり、チューブ本体2の内面に形成された微細凹凸構造100を示す図である。図4は、気管チューブ1を基端側から見た図である。図1に示すように、気管チューブ1は、チューブ本体2と、このチューブ本体2の外周面上に取り付けられた収縮及び拡張可能なカフ3と、チューブ本体2の一方の端部に取り付けられたフランジ部材4とを備える。
図2に示すように、チューブ本体2は、先端5を含む先端部8と、チューブ本体2の内面の中心軸線O1の延在方向(以下、単に「中心軸線方向A」と記載する。)において先端部8の基端6側で連続し、外周面上にカフ3が取り付けられるカフ装着部9と、このカフ装着部9の基端6側で連続する湾曲部10と、この湾曲部10の基端6側で連続し、基端6を含む基端部11と、を備える。
チューブ本体2は、中心軸線方向Aにおいて先端5から基端6まで貫通する中空部7を区画している。また、チューブ本体2は、壁内に形成され、基端面に区画された基端開口から中心軸線方向Aに延在する第1〜第3ルーメン12〜14を備える。中空部7により、気管チューブ1が外方から気管内に挿入されて留置されている状態において、気道を確保することができる。第1ルーメン12は、第1基端開口12aからカフ3よりも基端6側に設けられた吸引口まで延在しており、気管内に留置されている状態のカフ3よりも気管上流側(顎側)に貯留する痰、唾液、誤嚥物、血液などの異物Xを吸引して除去するために用いられる。第2ルーメン13は、第2基端開口13aからカフ3よりも先端5側に設けられた吸引口まで延在しており、気管内に留置されているカフ3よりも気管下流側(気管分岐部側)で、先端部8近傍に貯留する痰等の異物Xを吸引して除去するために用いられる。第3ルーメン14は、第3基端開口14aからカフ3の位置に設けられた連通口14bまで延在しており、カフ3を収縮及び拡張させるために用いられる。なお、壁内に区画された小径の第1〜第3ルーメン12〜14についても中空部であるが、説明の便宜上、気道を確保するための大径の中空部7と区別するため、ここでは「ルーメン」と記載する。
図3に示すように、医療用チューブとしてのチューブ本体2の内面には、内面全体に微細凹凸構造100が形成されている。微細凹凸構造100は、数μm〜数百μmサイズ、好ましくは数μm〜数十μmサイズの凹凸が形成された表面を有する。微細凹凸構造100領域は痰の付着を抑制する性質(以下、「撥痰性」と記載する。)を有する。チューブ本体2の内周面に微細凹凸構造100を形成する方法の詳細は後述する。微細凹凸構造100は、チューブ本体2の内周面の全面に亘って形成してもよく、また、内周面の一部のみに形成してもよい。
また、微細凹凸構造100の表面にはフッ素コート層200が形成されている。フッ素コート層200はフッ素樹脂を主成分とするものであれば特に限定されない。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等を用いることができる。
チューブ本体2の構成材料としては、例えば、シリコーン、軟質ポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂を用いることができる。その中でも、成形が容易であるという点で、軟質ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)のような樹脂を用いることが好ましい。
カフ3は、気管チューブ1を気管内の所定の位置で留置させるために用いられる。具体的に、カフ3は、第3ルーメン14を通じて流体が供給されると拡張し、流体が吸引されると収縮する。カフ3が拡張した状態において、カフ3の外面は気管内壁と密着する。カフ3の外面と気管内壁との摩擦力等によって、カフ3が気管内周面に挟持される。このようにして、気管内でのカフ3の位置が固定され、気管チューブ1を気管内の所定の位置で留置させることができる。
フランジ部材4は、図1に示すようにチューブ本体2の基端部11(図2参照)に装着されており、チューブ本体2を体外から気管内に挿入して気管チューブ1を留置した際に、皮膚に当接することで、先端部8を気管内の適切な位置に固定する。図1及び図4に示すように、フランジ部材4は、チューブ本体2の基端部11が内挿され、チューブ本体2と嵌合することでチューブ本体2に対して装着される円筒状の筒部17と、この筒部17の外壁から径方向外側に向かって突出し、気管チューブ1を留置した状態で皮膚に当接する板状のフランジ部18と、を備える。なお、図4では、説明の便宜上、チューブ本体2の第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14の位置を二点鎖線により示している。
図4に示すように、筒部17には、フランジ部18よりも基端側の位置に、上述した第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14それぞれと連通する連通孔17a、17b、17cが区画されている。筒部17内にチューブ本体2の基端部11が嵌合することにより装着されている状態において、第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14は、対応する連通孔17a、17b、17cを介して、気管チューブ1の外方と連通しており、この連通孔17a、17b、17cそれぞれにチューブ本体2とは別の医療用チューブが接続されている。
具体的に、第1ルーメン12は、筒部17に形成された対応する連通孔17aを通じて、気管チューブ1の基端側で気管チューブ1の外方と連通している。従って、体外に露出している筒部17の連通孔17aに一端が嵌合した医療用チューブとしての吸引用チューブ19aの他端にシリンジまたは吸引ポンプ等を接続して吸引を行えば、体外から第1ルーメン12を通じて痰等の異物Xを吸引することができる。また、第2ルーメン13についても、第1ルーメン12と同様であり、医療用チューブとしての吸引用チューブ19b、筒部17に形成された対応する連通孔17b及び第2ルーメン13を通じて異物Xを吸引することができる。
更に、第3ルーメン14は、筒部17に形成された対応する連通孔17cを通じて、気管チューブ1の基端側で気管チューブ1の外方と連通している。従って、体外に露出している筒部17の連通孔17cに一端が嵌合した医療用チューブとしてのカフ用チューブ19cの他端にシリンジ等を接続すれば、体外にあるシリンジ等の操作により、カフ3の環状空間への流体の供給や吸引を行うことができ、それによりカフ3の拡張及び収縮を操作することができる。
なお、フランジ部材4の筒部17は、チューブ本体2の基端部11と同心円状に装着されており、チューブ本体2の周方向Bにおける第1ルーメン12の位置、第2ルーメン13の位置、及び第3ルーメン14の位置は、筒部17の対応する連通孔17a、17b、及び17cの周方向Bの位置の近傍とされている。そのため、各連通孔17a、17b、17cを短くすることができ、筒部17の連通孔17a、17b、及び17cの構成が複雑化することが抑制される。また、図4に示すように、吸引用チューブ19a及び19b、並びにカフ用チューブ19cは、図4の平面視において、各連通孔17a、17b、17cからフランジ部18の突設されている方向に延在するように接続され、先端部8側には延在していない。このように接続することにより、気管チューブ1が気管内に留置された状態において、吸引用チューブ19a及び19b、並びにカフ用チューブ19cが、患者の顎や首元にぶつかることが抑制され、気管チューブ1が留置される患者の不快感を軽減することができる。
フランジ部材4の構成材料としては、例えば、チューブ本体2と同様の材料で形成することができる。
次に、チューブ本体2の更なる詳細について説明する。
図5は、チューブ本体2の、中心軸線方向Aと直交する断面を示す断面図である。より具体的に、図5は、中心軸線方向Aにおいて第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14が全て存在する位置での、チューブ本体2の断面図である。
図5に示すように、チューブ本体2は、径方向に積層された複数の層から構成されている。具体的に、本実施形態のチューブ本体2は、上述した微細凹凸構造100(図3参照)が形成されたチューブ本体2の内面60を構成する内層21と、複数の中間層と、チューブ本体2の外面を構成する外層23と、を備えている。本実施形態では、複数の中間層として、5層の中間層22a、22b、22c、22d及び22eを備えている。以下、説明の便宜上、内層21の外面上に積層されている中間層22aを「第1中間層22a」、この第1中間層22aの外面上に積層されている中間層22bを「第2中間層22b」、この第2中間層22bの外面上に積層されている中間層22cを「第3中間層22c」、この第3中間層22cの外面上に積層されている中間層22dを「第4中間層22d」、この第4中間層22dの外面上に積層されている中間層22eを「第5中間層22e」と記載する。
このように、本実施形態のチューブ本体2は、径方向内側から、内層21、第1中間層22a、第2中間層22b、第3中間層22c、第4中間層22d、第5中間層22e、外層23の順に積層された7層の構成である。
次に、チューブ本体2の内面60、換言すれば、内層21の内面60に形成される微細凹凸構造100の凹凸パターンの例を示す。図6は、チューブ本体2の内面の展開図の一部を拡大した図であり、図の横方向がチューブ本体2の中心軸線方向Aを示し、縦方向がチューブ本体2の周方向Bを示す。上述のように、微細凹凸構造100は、数μm〜数百μmサイズ、好ましくは数μm〜数十μmサイズの凹凸構造である。凹凸構造はいくつかの凹凸パターンを取り得る。例えば、図6(a)に示すように、チューブ本体2の中心軸線方向Aに延在する凸リブ101と凹溝102とが、周方向Bにおいて交互に配置された構造(以下、単に「ラインアンドスペース構造」と記載する。)とすることができる。また、例えば、図6(b)に示すように、円錐台形状の突起103が所定の配列で配置された構造(以下、単に「ピラー構造」と記載する。)とすることができる。なお、ラインアンドスペース構造は、周方向Bに延在する凸リブ101と凹溝102とが、中心軸線方向Aにおいて交互に配置される構造であってもよい。但し、ラインアンドスペース構造を有する面上の痰などの異物X(図1参照)は、凸リブ101及び凹溝102の延在方向に移動し易いため、異物Xがチューブ本体2内に留まることがないように、凸リブ101及び凹溝102を中心軸線方向Aに延在する図6(a)に示す構成とすることが好ましい。また、ピラー構造を構成する突起103の形状は、円錐台形状に限定されるものではなく、円錐形状、円柱形状、三角錐形状又はその他の多角錐形状、角柱形状等とすることもできる。
なお、上述したように、微細凹凸構造100は、数μm〜数百μmサイズ、好ましくは数μm〜数十μmサイズの凹凸構造であり、この条件の下、隣接する、ラインアンドスペース構造における凸リブ101又はピラー構造における突起103(以下、凸リブ101及び突起103を単に「凸部」と記載する。)の中心間の距離は、10μm〜100μmとすることが好ましく、10μm〜50μmとすることがより好ましい。100μmより大きいと、痰が凸部間に入り込み易くなり、撥痰性の効果が小さくなる。また、10μm未満の場合には、痰と凸部との接触面積が大きくなり、撥痰性の効果が小さくなる。
また、微細凹凸構造100のサイズが上記条件の下では、各凸部の頂面105(図3参照)の最大幅は、0.01μm〜50μmとすることが好ましく、1μm〜50μmとすることがより好ましく、1μm〜30μmとすることが更に好ましく、1μm〜20μmとすることが特に好ましい。50μmより大きいと、痰との接触面積が大きくなり、撥痰性の効果が小さくなる。また、0.01μm未満の場合には、凸部の成形が難しく、形状安定性が低下するおそれがある。なお、微細凹凸構造100がラインアンドスペース構造の場合、各凸部の頂面105(図3参照)の最大幅とは、凸リブの延在方向と直交する方向の頂面105の最大長さとなる。
更に、微細凹凸構造100のサイズが上記条件の下、微細凹凸構造100の凸部の最大高さを数μm〜数百μmサイズ、好ましくは数μm〜数十μmサイズとする。
次に、医療用チューブとしてのチューブ本体2の製造方法について説明する。
図1〜図6に示すチューブ本体2は、内面33に微細凹凸構造100を有する基礎チューブ31の外面から基礎チューブ31の径方向外側に向かって複数のシート部材を積層する積層工程を含む製造方法により製造される。
基礎チューブ31は、上述したチューブ本体2の内層21を形成するものである。まず、基礎チューブ31の製造方法の一例を、図7を参照して説明する。図7に示すように、基礎チューブ31は、表面に微細凹凸構造100(図6参照)が形成されたシート状の基材32を円筒状に曲げ、この基材32の両端部を接合することにより形成される。
シート状の基材32は、可撓性を有し、平面視で略矩形状のシート材であり、0.1mm〜1.0mmの厚みを有するものである。また、シート状の基材32は、例えば、例えば軟質ポリ塩化ビニルなど、上述したチューブ本体2の構成材料として列挙したものから形成することができる。
シート状の基材32の一方の表面には、例えば微細凹凸構造100を反転させた微細凹凸パターンが形成された金型を押し当てることにより転写された、微細凹凸構造100(図6参照)が形成されている。
シート状の基材32は、微細凹凸構造100が形成された表面が内面となるように、円筒状に曲げられる。具体的に、シート状の基材32は、微細凹凸構造100が形成された表面が内面となるように一対の対向する両端部34c及び34dを環状に変形させ、別の一対の対向する両端部34a及び34bの端面同士を突き合わせることにより、円筒状に形成される。そして、付き合わされた両端部34a及び34bの端面同士を、例えば、溶着や接着等により接合することにより、図7に示す、内面33に微細凹凸構造100を有する基礎チューブ31を形成することができる。なお、基礎チューブ31の内面33が、上述したチューブ本体2の内面60(図5参照)となる。
ここで、図7に示す例では、両端部34a及び34bの端面同士を突き合わせた状態で接合しているが、このような接合方法に限られるものではなく、例えば、両端部34a及び34bを重ね合わせて接合するようにしてもよい。また、シート状の基材32を、金属製や樹脂製などの芯棒冶具に巻き付けることにより円筒状にしてもよい。
更に、図7に示す例では、基礎チューブ31を、シート状の基材32を円筒状に曲げることにより形成しているが、外面に微細凹凸構造100が形成された、可撓性を有する薄肉(例えば0.1mm〜1.0mm)の筒状部材を射出成形等により成形し、外面と内面を裏返すことにより、上述した基礎チューブ31を作成してもよい。
チューブ本体2は、このようにして形成された基礎チューブ31の外面上に複数のシート部材を積層する積層工程を実行することにより形成される。以下、この積層工程の詳細を説明する。
図8は、本実施形態の積層工程の詳細を示すフローチャートである。図8に示すように、本実施形態の積層工程は、複数のシート部材を基礎チューブ31の周囲に巻き付ける巻き付け工程S1と、巻き付けられた複数のシート部材を基礎チューブ31と一体化する一体化工程S2と、を含むものである。
具体的に、本実施形態の積層工程の巻き付け工程S1は、チューブ本体2の第1中間層22aとなる第1中間シート部材35a(図5参照)を、基礎チューブ31の外面上に巻き付ける第1巻き付け工程S1−1と、第2中間層22bとなる第2中間シート部材35b(図5参照)を第1中間シート部材35aの外面上に巻き付ける第2巻き付け工程S1−2と、第3中間層22cとなる第3中間シート部材35c(図5参照)を第2中間シート部材35bの外面上に巻き付ける第3巻き付け工程S1−3と、第4中間層22dとなる第4中間シート部材35d(図5参照)を第3中間シート部材35cの外面上に巻き付ける第4巻き付け工程S1−4と、第5中間層22eとなる第5中間シート部材35e(図5参照)を第4中間シート部材35dの外面上に巻き付ける第5巻き付け工程S1−5と、外層23となる外層シート部材36を第5中間シート部材35eの外面上に巻き付ける外層巻き付け工程S1−6と、を含むものである。
この巻き付け工程S1において基礎チューブ31の周囲に巻き付けられる第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35e及び外層シート部材36それぞれは、上述した基礎チューブ31の原形となるシート状の基材32と同様、可撓性を有し、平面視で略矩形状のシート材であり、0.1mm〜1.0mmの厚みを有するものである。また、シート状の基材32は、例えば、軟質ポリ塩化ビニルなど、上述したチューブ本体2の構成材料として列挙したものから形成することができる。
更に、本実施形態の積層工程の一体化工程S2で、巻き付け工程S1により巻き付けられた複数のシート部材(本実施形態では第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35e及び外層シート部材36)を、基礎チューブ31と一体化する。例えば、基礎チューブ31の外面上に複数のシート部材が巻き付けられた状態で外部から加熱することにより、径方向に隣接する部材同士を溶着することで、複数のシート部材を基礎チューブ31と一体化することができる。具体的には、例えば、基礎チューブ31の外面上に複数のシート部材が巻き付けられた状態でオーブン(不図示)に投入し、オーブン内で加熱する。設定温度は、好ましくは、100〜180度、より好ましくは150度とする。
なお、上述の巻き付け工程S1では、第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35e及び外層シート部材36を別々に、順次、基礎チューブ31の周囲に巻き付けているが、この方法に限られるものではなく、例えば、第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35e及び外層シート部材36のうち2枚以上のシート部材を、溶着や接着等により予め一体化しておき、一体化された複数のシート部材を基礎チューブ31の周囲に巻き付けるようにしてもよい。したがって、第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35e及び外層シート部材36の全てを、溶着や接着等により予め一体化しておき、基礎チューブ31の周囲に巻き付け、その後、上述の一体化工程S3を実行するようにしてもよい。
また、上述の積層工程では、巻き付け工程S1において、第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35e及び外層シート部材36を別々に、順次、基礎チューブ31の周囲に巻き付け、全てのシート部材を巻き付けた後に一体化工程S2を実行しているが、この方法に限られるものではなく、例えば、各シート部材を基礎チューブ31の周囲に巻き付ける度に、溶着や接着等により、各シート部材を基礎チューブ31と一体化してもよい。このようなチューブ本体の製造方法についての詳細は後述する(図12参照)。
更に、上述の積層工程は、基礎チューブ31の周囲に巻き付けられた、外層23(図5参照)を形成する外層シート部材36の端部同士を接合する工程を含むことが好ましい。このようにすれば、チューブ本体2の外層23を、周方向Bにおいて隙間なく連続した円筒状とすることができ、チューブ本体2の外面に溝が形成されることを抑制できる。これにより、気管チューブ1のチューブ本体2を体外から気管内に挿入する際及び気管内から体外へ抜去する際に、チューブ本体2の外面が皮膚や気管内壁に引っ掛かることを抑制することができる。
なお、基礎チューブ31の周囲に巻き付けられた外層シート部材36の端部同士は、加熱による溶着や接着剤による接着等、各種接合方法により接合することができる。また、外層シート部材36の端部同士の接合は、図5に示すように両端部の端面同士を突き合わせて接合してもよく、端部同士を互いに重ね合わせて接合してもよい。但し、基礎チューブ31の周囲に巻き付けられた外層シート部材36の両端部の端面同士を突き合わせて接合することが好ましい。このようにすれば、チューブ本体2の外面に段差が形成されることを一層抑制することができる。
また、上述の積層工程は、基礎チューブ31内に芯棒部材がある状態で実行されることが好ましい。具体的には、上述の積層工程において、基礎チューブ31内に芯棒部材を挿入し、この状態で巻き付け工程S1及び一体化工程S2を行う。このようにすれば、基礎チューブ31の断面形状を維持した状態で、巻き付け工程S1及び一体化工程S2を実行できるため、積層工程を容易化することができる。なお、ここで言及する芯棒部材としては、上述したシート状の基材32を円筒状にする際に用いた芯棒冶具をそのまま利用してもよく、別の芯棒部材を別途基礎チューブ31内に挿入するようにしてもよい。また、一体化工程S2において、基礎チューブ31及び複数のシート部材を加熱溶融して一体化する場合には、芯棒部材を熱伝導率が低く断熱性の高い樹脂材料で形成することが好ましい。このようにすれば、加熱された芯棒部材によって基礎チューブ31の内面33の微細凹凸構造100が溶融することを抑制することができる。
更に、芯棒部材を挿入した状態で上述の一体化工程S2を行う場合には、図13(a)に示すように、芯棒部材40を、棒状のコア部41と、このコア部41の外面上に配置された環状部42と、で構成することが好ましい。環状部42は可撓性を有する薄肉の部材で形成される。例えば、可撓性を有するシート状の部材をコア部41に巻き回し、端部同士を接合することにより環状部42を形成することができる。そして、一体化工程S2において、基礎チューブ31及び複数のシート部材を加熱溶融して一体化する場合には、コア部41及び環状部42を熱伝導率が低く断熱性の高い樹脂材料で形成することが好ましい。このような樹脂材料としては、スーパーエンジニアリングプラスチックと称される樹脂を用いることができ、例えば、ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(PCP)、ポリイミド(PI)、フッ素樹脂(PFA、EPA)等を用いることができる。
芯棒部材40を上述の構成とすれば、一体化工程S2において基礎チューブ31が縮径し、基礎チューブ31の微細凹凸構造100(図6等参照)が形成された内面33(図7参照)が芯棒部材40の外面に密着したとしても、コア部41を環状部42から抜去し、次いで環状部42を、例えば折りたたむ又は変形させる等することにより、基礎チューブ31の内面33から容易に剥がすことができる。そのため、芯棒部材40を微細凹凸構造100と摺動するように無理抜きする必要がなく、微細凹凸構造100を崩し難くすることができる。
また、図13(a)に示す芯棒部材40の他に、図13(b)に示すような芯棒部材43としてもよい。図13(b)に示す芯棒部材43は、径方向に拡張及び収縮することが可能な拡張体としてのバルーンである。図13(b)に示すバルーンは、気体や液体を内部空間44に供給することにより径方向に拡張し(図13(b)の太線矢印参照)、気体や液体が内部空間44から排出させることにより径方向に収縮する(図13(b)の白抜き矢印参照)。このようにすれば、一体化工程S2において基礎チューブ31が縮径し、基礎チューブ31の微細凹凸構造100(図6等参照)が形成された内面33(図7参照)が芯棒部材43の外面に密着したとしても、芯棒部材43としての拡張体を収縮させ、基礎チューブ31から容易に抜去することができる。なお、このような拡張体の具体例としては、図13(b)に示すバルーンの他に、自己拡張型の網状筒部材や螺旋状又は渦巻き状のバネ部材等の弾性部材などが挙げられる。
また、図13(a)に示す芯棒部材40や図13(b)に示す芯棒部材43は、一体化工程S2のみならず、上述したように巻き付け工程S1においても用いることができる。図15は、図13(a)に示す芯棒部材40を巻き付け工程S1に利用した場合の概要を示す図である。図15に示すように、芯棒部材40を巻き付け芯として、その周りに第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35e及び外層シート部材36を巻き付けるようにすれば、芯棒部材がない場合と比較して、巻き付け工程S1の作業が容易になる。
ここで、円筒状の基礎チューブ31と円筒状に接合された外層シート部材36との間に挟まれ、チューブ本体2の第1中間層22a〜第5中間層22eを形成する第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35eの詳細について説明する。
図5に示すように、チューブ本体2の壁内には、第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14が設けられている。本実施形態では、第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35eの、基礎チューブ31周囲への巻き付け方を調整することにより、上述の第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14を形成している。
具体的に、本実施形態の第1中間シート部材35a及び第2中間シート部材35bそれぞれは、基礎チューブ31の周方向の同位置において、端面同士が間隙を隔てて対向するように基礎チューブ31の周囲に巻き付けられている。
このように円筒状の基礎チューブ31と円筒状に接合された外層シート部材36との間に位置する中間シート部材が、端面同士が間隙を隔てて対向するように基礎チューブ31の周囲に巻き付けられていれば、この間隙によりチューブ本体2の壁内のルーメンを形成することができる。具体的には、本実施形態の第1中間シート部材35a及び第2中間シート部材35bは、チューブ本体2の第2ルーメン13となる間隙を形成している(図5参照)。
同様に、本実施形態の第3中間シート部材35cも、端面同士が間隙を隔てて対向するように基礎チューブ31の周囲に巻き付けられている。但し、基礎チューブ31の周方向において、第3中間シート部材35cの端面間の間隙の位置は、第1中間シート部材35a及び第2中間シート部材35bそれぞれの端面間の間隙の位置とは異なっている。そして、第3中間シート部材35cは、チューブ本体2の第1ルーメン12となる間隙を形成している(図5参照)。
また、本実施形態の第5中間シート部材35eも、端面同士が間隙を隔てて対向するように基礎チューブ31の周囲に巻き付けられている。但し、基礎チューブ31の周方向において、第5中間シート部材35eの端面間の間隙の位置は、第1中間シート部材35a及び第2中間シート部材35bそれぞれの端面間の間隙の位置、及び、第3中間シート部材35cの端面間の間隙の位置と、異なっている。そして、第5中間シート部材35eは、チューブ本体2の第3ルーメン14となる間隙を形成している(図5参照)。
このように、基礎チューブ31の周方向において、径方向外側の中間シート部材(外側中間シート部材)が形成する間隙の位置を、径方向内側の中間シート部材(内側中間シート部材)が形成する間隙の位置と、異なるように配置することによって、基礎チューブ31の周方向の異なる位置に、複数のルーメンを形成することができる。ここでいう外側中間シート部材及び内側中間シート部材の関係は、本実施形態の第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35eのうち複数の2つの組み合わせにより充足されるが、その中の一例として、第3中間シート部材35c及び第2中間シート部材35bの組み合わせが挙げられる。
なお、本実施形態の第4中間シート部材35dは、基礎チューブ31の周方向に所定の間隔を空けて複数配置されている。具体的に、本実施形態では、2枚の第4中間シート部材35d1及び35d2が第3中間シート部材35cの外面上に積層されている。1つの第4中間シート部材35d1の基礎チューブ31の周方向における一方の端部と、別の第4中間シート部材35d2の基礎チューブ31の周方向における一方の端部との間で、第1ルーメン12となる間隙が形成されている。また、1つの第4中間シート部材35d1の基礎チューブ31の周方向における他方の端部と、別の第4中間シート部材35d2の基礎チューブ31の周方向における他方の端部との間で、第3ルーメン14となる間隙が形成されている。
このように、中間シート部材を基礎チューブ31の周方向に所定の間隔を隔てて複数配置することにより、チューブ本体2の断面視(図5参照)において、チューブ本体2の周方向Bの異なる位置で、かつ、中心軸線O1からの径方向距離が等しい位置に、別のルーメンを形成することができる。
なお、本実施形態では、第4中間層22dを、2つの第4中間シート部材35d1及び35d2により形成しているが、この構成に限られるものではなく、チューブ本体2の壁内のルーメンの数や径方向位置に応じて、別の中間シート部材を、基礎チューブ31の周方向に所定の間隔を空けて複数配置するようにしてもよい。例えば図9に示す医療用チューブとしてのチューブ本体202のように、第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35e全てを、周方向に所定の間隔を隔てて複数配置するようにしてもよい。
なお、図9に示すチューブ本体202では、第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35eそれぞれが、基礎チューブ31の周方向において、所定の間隔を隔てて3つ配置されている。そして、第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35eそれぞれは、基礎チューブ31の周方向Bにおける同位置で、第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14となる間隙を形成している。
ここで、図5に示すチューブ本体2の製造方法や図9に示すチューブ本体202の製造方法では、第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35eを端部同士が間隙を隔てて対向するように基礎チューブ31の周囲に巻き付けることにより、又は、周方向に複数の中間シート部材を所定の間隔を隔てて配置することにより(例えば図5に示す2つの第4中間シート部材35d1及び35d2)、上述した第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14を形成しているが、チューブ本体の壁内のルーメンの形成方法は、この方法に限られるものではない。
例えば、図10に示す医療用チューブとしてのチューブ本体302のように、基礎チューブ31と積層される複数のシート部材(図10では第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35e及び外層シート部材36)との間、又は、積層される複数のシート部材の間に、細径のチューブ50a、50b及び50cを配置するようにしてもよい。チューブ50a、50b、50cは、それぞれチューブ本体302の第1ルーメン12、第2ルーメン13、第3ルーメン14を構成する。なお、チューブ本体302の中心軸線方向と直交する断面(図10参照)において、チューブ50a、50b、50cの外形は、図10に示す円形状や湾曲した楕円形状に限らず、四角等の多角形状としてもよい。また、チューブ50a、50b、50cの最大外径は、基礎チューブ31の外径よりも小さい。ここで、チューブの断面外形が円形状以外の場合における「チューブの最大外径」とは、チューブの横断面において、外縁上の2点間の直線距離が最大となる長さを意味している。
このように、チューブ本体302の壁内のルーメンを、細径のチューブ50a、50b、50cにより形成することで、細径のチューブを使用しない場合と比較して、ルーメンの断面形状を安定させることができる。
また、本実施形態では、チューブ本体2の断面視において、チューブ本体2の厚みが周方向Bの位置によらず略等しくなるようにしているが、この構成に限られるものではなく、チューブ本体の周方向Bに応じてチューブ本体の厚みが異なるようにしてもよい。図11は、周方向Bに応じて厚みが異なるチューブ本体の一例を示す断面図である。
図11に示すように、医療用チューブとしてのチューブ本体402では、上述したチューブ本体2と同様、内層21を形成する基礎チューブ31から径方向外側に、第1中間層22aを形成する第1中間シート部材35a、第2中間層22bを形成する第2中間シート部材35b、第3中間層22cを形成する第3中間シート部材35c、第4中間層22dを形成する第4中間シート部材35d、第5中間層22eを形成する第5中間シート部材35e、外層23を形成する外層シート部材36、の順に積層されている。但し、図11に示すチューブ本体402では、チューブ本体402の断面視において、チューブ本体402の周方向Bにおいて第1ルーメン12及び第2ルーメン13が形成されている部分のみに、第6中間層22fを形成する第6中間シート部材35fが設けられている。つまり、チューブ本体402の断面視において、第1ルーメン12及び第2ルーメン13が形成されている部分が、他の部分と比較して肉厚に形成されている。
このように、チューブ本体402の厚みを、周方向Bの位置に応じて異ならせるようにしてもよい。例えば、複数のルーメンのうち一部のルーメンの内径を大きくしたい場合には、そのルーメンの位置を厚くするようにすればよい。また、例えば、上述の積層工程により直線状のチューブ材を形成した後、チューブ材を湾曲させて湾曲部(図2のチューブ本体2における湾曲部10を参照)を形成する場合には、チューブ材に伸びる力が作用する部分、すなわち、図11に示す例では周方向Bにおいて第2ルーメン13が形成されている部分を、周方向Bの別の位置と比較して厚くすればよい。このようにすれば、湾曲部を形成する際に厚肉化した部分が伸び変形して若干薄くなり、湾曲部を有するチューブ本体402が形成された時点で周方向Bの位置によらず略均一な厚みを有するチューブ本体402を実現することができる。このように、各種目的に応じて、チューブ本体の厚みを調整することができる。
次に、チューブ本体2の製造方法における積層工程の別の例を説明する。上述の積層工程は、複数のシート部材を基礎チューブ31の周囲に巻き付ける巻き付け工程S1と、巻き付けられた複数のシート部材を基礎チューブ31と一体化する一体化工程S2と、を含むものであったが、ここで説明する積層工程は、各シート部材を基礎チューブ31の周囲に巻き付けた状態で、各シート部材を基礎チューブ31と一体化する工程を繰り返すものである。図12は、この積層工程をチューブ本体2の製造方法に適用した場合のフローチャートである。なお、基礎チューブ31の製造方法は、上述したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
図12に示すように、上述の積層工程は、基礎チューブ31の外面上に第1中間層22aとなる第1中間シート部材35aを巻き付け、基礎チューブ31と第1中間シート部材35aとを一体化する第1巻付一体化工程T1と、第1中間シート部材35aの外面上に第2中間層22bとなる第2中間シート部材35bを巻き付け、第1中間シート部材35aと第2中間シート部材35bとを一体化する第2巻付一体化工程T2と、第2中間シート部材35bの外面上に第3中間層22cとなる第3中間シート部材35cを巻き付け、第2中間シート部材35bと第3中間シート部材35cとを一体化する第3巻付一体化工程T3と、第3中間シート部材35cの外面上に第4中間層22dとなる第4中間シート部材35dを巻き付け、第3中間シート部材35cと第4中間シート部材35dとを一体化する第4巻付一体化工程T4と、第4中間シート部材35dの外面上に第5中間層22eとなる第5中間シート部材35eを巻き付け、第4中間シート部材35dと第5中間シート部材35eとを一体化する第5巻付一体化工程T5と、第5中間シート部材35eの外面上に外層23となる外層シート部材36を巻き付け、第5中間シート部材35eと外層シート部材36とを一体化する第6巻付一体化工程T6と、を含むものであり、第1工程T1〜第6工程T6はいずれも、巻き付け及び一体化の同様の工程の繰り返しである。なお、基礎チューブ31の径方向において隣接する層同士を一体化する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、加熱による溶着や接着剤等による接着とすることができる。
以上のように、医療用チューブとしてのチューブ本体2は、上述したような積層工程(図8、図12参照)を通じて製造可能である。ここで、上述した積層工程(図8、図12参照)の前又は後で、基礎チューブ31の内面33に形成されている微細凹凸構造100の表面にフッ素コート層200(図3参照)を形成するコーティング工程を実行してもよい。図14は、図8に示す積層工程の前に、コーティング工程S0を行う場合の、チューブ本体2の製造方法を示すフローチャートである。なお、図14に示す巻き付け工程S1及び一体化工程S2は上述したものと同様であるため、ここでは説明を省略し、コーティング工程S0について説明する。
コーティング工程S0では、基礎チューブ31の内面33に形成された微細凹凸構造100の表面にフッ素コーティングを施し、フッ素コート層200(図3参照)を形成する。具体的には、微細凹凸構造100の表面に、上述したフッ素樹脂を含むフッ素コーティング剤を塗着する。フッ素コーティング剤を塗着する方法としては、フッ素コーティング剤が含まれる溶媒中に基礎チューブ31を浸漬するディップコーティング法や、フッ素コーティング剤が含まれる溶媒を基礎チューブ31内に流し込み、微細凹凸構造100が形成されている領域全域に拡げる方法や、スプレーで吹き付ける方法や、箆部材を用いて微細凹凸構造100の表面に塗り拡げる方法など、各種方法を用いることができる。次に、フッ素コーティング剤が含まれる溶媒が塗着された状態で基礎チューブ31を乾燥させる。溶媒が除去されフッ素コーティング剤の皮膜が形成される。次に、フッ素コーティング剤を硬化し、微細凹凸構造100との結合を形成する。フッ素コーティング剤を硬化する態様の一例として、例えば、基礎チューブ31をオーブン(不図示)に投入し、オーブン内で所定時間、所定の温度で加熱して硬化することができる。設定温度は、好ましくは、約70〜100度、より好ましくは80度とし、加熱時間は好ましくは約30〜90分とする。このようにして、微細凹凸構造100の表面にフッ素コート層200を形成する。
微細凹凸構造100の表面にフッ素コーティングを施し、フッ素コート層200を形成することにより、基礎チューブ31の内面33の撥水性、撥油性、耐摩擦性を向上させることができると共に、内面33に形成された微細凹凸構造100の強度を向上させることができる。そのため、巻き付け工程S2及び一体化工程S3の際に、微細凹凸構造100を損傷しにくくすることができる。
なお、コーティング工程S0は一体化工程S2の後に行ってもよい。また、同様のコーティング工程を、図12に示す積層工程の前に行ってもよい。つまり、コーティング工程後に第1巻付一体化工程T1〜第6巻付一体化工程T6を実行することによりチューブ本体2を製造するようにしてもよい。更に、図7に示すように、基礎チューブ31をシート状の基材32から形成する場合には、微細凹凸構造100が形成されたシート状の基材32を円筒状に曲げる前に、微細凹凸構造100の表面にフッ素コーティングを施すことが好ましい。このようにすれば、微細凹凸構造100の強度が向上するため、シート状の基材32を円筒状に曲げる工程においても、微細凹凸構造100を損傷しにくくすることができる。
本発明に係る医療用チューブの製造方法は、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲で、様々な具体的手法により実現することが可能であり、上述した実施形態で示した方法に限られるものではない。したがって、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲であれば、上述した医療用チューブとしてのチューブ本体の製造方法における各工程を組み合わせ、別の製造方法とすることも技術的範囲に属するものである。例えば、上述したチューブ本体2の製造方法では、巻き付けられた中間シート部材の端部同士の間に間隙を形成し、その間隙を利用してチューブ本体2の壁内の第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14を形成しているが、この間隙を作成した上で、この間隙の部分に、図10に示す細径のチューブ50a、50b、50cを配置することにより、第1ルーメン12、第2ルーメン13及び第3ルーメン14を形成してもよい。
また、上述した医療用チューブとしてのチューブ本体2、202、302及び402は複数層の中間層を備える構成であるが、少なくとも1層の中間層が存在すればよく、上述した層構成に限られるものではない。したがって、図8では第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35eをそれぞれ巻き付ける第1巻き付け工程S1−1〜第5巻き付け工程S1−5を示したが、これら巻き付け工程の工数は中間層の層数に応じて変更されるものである。同様に、図12では第1中間シート部材35a〜第5中間シート部材35eをそれぞれ巻き付け、一体化する第1巻付一体化工程T1〜第5巻付一体化工程T5を示したが、これら巻付一体化工程の工数についても中間層の層数に応じて変更されるものである。
なお、本願において「チューブ本体の内層」とは、基礎チューブにより形成される層を意味しており、上述した実施形態のように、基礎チューブ31が一層(単層)の場合には、チューブ本体2の内層21も一層となるが、基礎チューブを複数層とした場合には、チューブ本体の内層についても複数層となるものである。
更に、上述した実施形態では、医療用チューブとしてのチューブ本体の製造方法について説明したが、本発明に係るチューブの製造方法は、気管チューブのチューブ本体に限らず、他の用途や目的で使用される医療用チューブの製造方法としても適用可能である。
本発明に係る製造方法により製造可能な医療用チューブとしては、例えば、(1)胃管カテーテル、栄養カテーテル、経管栄養用チューブなどの経口もしくは経鼻的に消化器官内に挿入ないし留置されるカテーテル類;(2)酸素カテーテル、気管内チューブ、気管内吸引カテーテルなどの経口または経鼻的に気道ないし気管内に挿入ないし留置されるカテーテル類;(3)尿道カテーテル、導尿カテーテル、尿道バルーンカテーテルのカテーテルやバルーンなどの尿道ないし尿管内に挿入ないし留置されるカテーテル類;(4)吸引カテーテル、排液カテーテル、直腸カテーテルなどの各種体腔、臓器、組織内に挿入ないし留置されるカテーテル類;(5)輸液チューブ、IVH(intravenous hyperalimentationの略)カテーテル、サーモダイリューションカテーテル、血管造影用カテーテル、血管拡張用カテーテルおよびダイレーターあるいはイントロデューサーなどの血管内に間接的あるいは直接的に挿入ないし留置されるカテーテル類;(6)人工気管、人工気管支などの医療用人工管;(7)体外循環治療用の医療器具(人工肺、人工心臓、人工腎臓など)の回路類、などが挙げられる。
本発明に係る製造方法により製造される各種医療用チューブによれば、広範囲の生物学的物質又は医療用液体が内面に付着することを抑制することができる。なお、「生物学的物質」としては、例えば、全血、血漿、血清、汗、便、尿、唾液、涙、膣液、前立腺液、歯肉滲出液、羊水、眼液、脳脊髄液、***、痰、腹水、膿、鼻咽頭液、創傷浸出液、房水、硝子体液、胆汁、耳垢、内リンパ、外リンパ、胃液、粘液、腹液、胸水、皮脂、嘔吐物、これらの組み合わせからなる群、などが挙げられる。また、「医療用液体」としては、例えば、輸液剤、栄養剤、造影剤、肝動脈化学塞栓療法(TACE)などで使用される塞栓剤、などが挙げられる。
本発明は、医療用チューブの製造方法に関する。
1:気管チューブ
2、202、302、402:チューブ本体(医療用チューブ)
3:カフ
4:フランジ部材
5:チューブ本体の先端
6:チューブ本体の基端
7:チューブ本体の中空部
8:チューブ本体の先端部
9:チューブ本体のカフ装着部
10:チューブ本体の湾曲部
11:チューブ本体の基端部
12:第1ルーメン
12a:第1基端開口
13:第2ルーメン
13a:第2基端開口
14:第3ルーメン
14a:第3基端開口
14b:連通口
17:筒部
17a、17b、17c:連通孔
18:フランジ部
19a、19b:吸引用チューブ
19c:カフ用チューブ
21:チューブ本体の内層
22:チューブ本体の中間層
22a:第1中間層
22b:第2中間層
22c:第3中間層
22d:第4中間層
22e:第5中間層
22f:第6中間層
23:チューブ本体の外層
31:基礎チューブ
32:基材
33:基礎チューブの内面
34a、34b、34c、34d:基材の端部
35a:第1中間シート部材
35b:第2中間シート部材(内側中間シート部材)
35c:第3中間シート部材(外側中間シート部材)
35d、35d1、35d2:第4中間シート部材
35e:第5中間シート部材
35f:第6中間シート部材
36:外層シート部材
40:芯棒部材
41:コア部
42:環状部
43:芯棒部材
44:内部空間
50a、50b、50c:チューブ
60:チューブ本体の内面
100:微細凹凸構造
101:凸リブ(凸部)
102:凹溝
103:突起(凸部)
105:頂面
200:フッ素コート層
A:チューブ本体の中心軸線方向
B:チューブ本体の周方向
O1:チューブ本体の内面の中心軸線
X:異物
2、202、302、402:チューブ本体(医療用チューブ)
3:カフ
4:フランジ部材
5:チューブ本体の先端
6:チューブ本体の基端
7:チューブ本体の中空部
8:チューブ本体の先端部
9:チューブ本体のカフ装着部
10:チューブ本体の湾曲部
11:チューブ本体の基端部
12:第1ルーメン
12a:第1基端開口
13:第2ルーメン
13a:第2基端開口
14:第3ルーメン
14a:第3基端開口
14b:連通口
17:筒部
17a、17b、17c:連通孔
18:フランジ部
19a、19b:吸引用チューブ
19c:カフ用チューブ
21:チューブ本体の内層
22:チューブ本体の中間層
22a:第1中間層
22b:第2中間層
22c:第3中間層
22d:第4中間層
22e:第5中間層
22f:第6中間層
23:チューブ本体の外層
31:基礎チューブ
32:基材
33:基礎チューブの内面
34a、34b、34c、34d:基材の端部
35a:第1中間シート部材
35b:第2中間シート部材(内側中間シート部材)
35c:第3中間シート部材(外側中間シート部材)
35d、35d1、35d2:第4中間シート部材
35e:第5中間シート部材
35f:第6中間シート部材
36:外層シート部材
40:芯棒部材
41:コア部
42:環状部
43:芯棒部材
44:内部空間
50a、50b、50c:チューブ
60:チューブ本体の内面
100:微細凹凸構造
101:凸リブ(凸部)
102:凹溝
103:突起(凸部)
105:頂面
200:フッ素コート層
A:チューブ本体の中心軸線方向
B:チューブ本体の周方向
O1:チューブ本体の内面の中心軸線
X:異物
Claims (11)
- 内面に微細凹凸構造を有する医療用チューブの製造方法であって、
内面に前記微細凹凸構造を有する基礎チューブの外面から前記基礎チューブの径方向外側に向かって複数のシート部材を積層する積層工程を含む、医療用チューブの製造方法。 - 前記基礎チューブは、表面に前記微細凹凸構造が形成されたシート状の基材を円筒状に曲げ、前記基材の両端部を接合することにより形成される、請求項1に記載の医療用チューブの製造方法。
- 前記積層工程は、複数のシート部材を前記基礎チューブの周囲に巻き付ける巻き付け工程と、
巻き付けられた前記複数のシート部材を前記基礎チューブと一体化する一体化工程と、を含む、請求項1又は2に記載の医療用チューブの製造方法。 - 前記積層工程では、各シート部材を前記基礎チューブの周囲に巻き付けた状態で、前記各シート部材を前記基礎チューブと一体化する巻付一体化工程を繰り返す、請求項1又は2に記載の医療用チューブの製造方法。
- 前記複数のシート部材は、医療用チューブの外面を構成する外層を形成する外層シート部材を含み、
前記積層工程では、前記基礎チューブの周囲に巻き付けられた前記外層シート部材の端部同士を接合する、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の医療用チューブの製造方法。 - 前記複数のシート部材は、前記基礎チューブと前記外層シート部材との間に挟まれる中間シート部材を含み、
前記中間シート部材を、端面同士が間隙を隔てて対向するように前記基礎チューブの周囲に巻き付ける、請求項5に記載の医療用チューブの製造方法。 - 前記中間シート部材を内側中間シート部材とした場合に、前記複数のシート部材は、前記内側中間シート部材の径方向外側に位置する外側中間シート部材を含み、
前記外側中間シート部材を、端面同士が間隙を隔てて対向するように前記基礎チューブの周囲に巻き付け、
前記基礎チューブの周方向において、前記外側中間シート部材の端面間に形成される間隙の位置を、前記内側中間シート部材の端面間に形成される間隙の位置と異なるように配置する、請求項6に記載の医療用チューブの製造方法。 - 前記複数のシート部材は、前記基礎チューブと前記外層シート部材との間に挟まれる中間シート部材を含み、
前記中間シート部材を、前記基礎チューブの周方向に所定の間隔を空けて複数配置する、請求項5に記載の医療用チューブの製造方法。 - 前記積層工程では、前記基礎チューブと積層される前記複数のシート部材との間、又は、積層される前記複数のシート部材の間に、チューブを配置する、請求項1乃至8のいずれか1つに記載の医療用チューブの製造方法。
- 前記積層工程は、前記基礎チューブ内に芯棒部材がある状態で実行される、請求項1乃至9のいずれか1つに記載の医療用チューブの製造方法。
- 前記微細凹凸構造にフッ素コーティングを施すコーティング工程を更に含む、請求項1乃至10のいずれか1つに記載の医療用チューブの製造方法。
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---|---|---|---|
JP2016056621A JP2017169661A (ja) | 2016-03-22 | 2016-03-22 | 医療用チューブの製造方法 |
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JP2016056621A JP2017169661A (ja) | 2016-03-22 | 2016-03-22 | 医療用チューブの製造方法 |
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JP2017169661A true JP2017169661A (ja) | 2017-09-28 |
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-
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- 2016-03-22 JP JP2016056621A patent/JP2017169661A/ja active Pending
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