JP2017050386A - 電解質及び色素増感太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】色素増感太陽電池の発電性能の維持率が向上する電解質、及びその電解質を備えた色素増感太陽電池を目的とする。【解決手段】[1]色素増感太陽電池に使用される電解質であって、前記電解質は、複素環式化合物を金属配位子として有する金属錯体化合物と、前記複素環式化合物又はその誘導体と、を含有する電解質。[2]前記複素環式化合物が下記一般式(1)で表される電解質。式中、X1〜X10は窒素原子又は「C−R」で表される基(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基)であり、X1〜X5の少なくとも一つ及びX6〜X10の少なくとも一つは窒素原子であり;X5及びX10が「C−R」である場合、X5とX10のRが互いに連結して、アルキレン基又はアルケニレン基を形成していてもよい。[化1]【選択図】なし
Description
本発明は、電解質及び色素増感太陽電池に関する。
色素増感太陽電池は、透明導電基材、半導体、色素、電解液及び対極を備えたフレキシブルで軽量な発電素子であり、その製造プロセスが簡易であるため、盛んに開発されている。色素増感太陽電池の重要な特性である光電変換効率が低下する原因として、半導体からレドックス酸化種であるI3 -やCo(III)錯体への再結合反応が生じ、開放電圧(Voc)が減少することが挙げられる。
この再結合反応を抑制する試みとして、電解液中にtert-ブチルピリジン(TBP)を添加することが提案されている(非特許文献1参照)。
この再結合反応を抑制する試みとして、電解液中にtert-ブチルピリジン(TBP)を添加することが提案されている(非特許文献1参照)。
しかしながら、本発明者らが検討したところ、非特許文献1に記載のTBPが添加された電解液を備えた色素増感太陽電池は、使用時に想定される程度の温度で加熱されると発電性能が低下する、という問題があることが分かった。
本発明は、色素増感太陽電池の発電性能の維持率が向上する電解質、及びその電解質を備えた色素増感太陽電池を目的とする。
[1] 色素増感太陽電池に使用される電解質であって、前記電解質は、複素環式化合物を金属配位子として有する金属錯体化合物と、前記複素環式化合物又はその誘導体(但し、前記金属錯体化合物を除く。)と、を含有する電解質。
[2] 前記複素環式化合物が下記一般式(1)で表される[1]に記載の電解質。
[2] 前記複素環式化合物が下記一般式(1)で表される[1]に記載の電解質。
[3] 前記複素環式化合物が下記一般式(2)で表される[1]又は[2]に記載の電解質。
[4] 前記金属錯体化合物が、Co錯体化合物又はFe錯体化合物である[1]〜[3]の何れか一項に記載の電解質。
[5] 溶媒をさらに含有する[1]〜[4]の何れか一項に記載の電解質。
[6] (前記複素環式化合物及びその誘導体のモル濃度)/(前記金属錯体化合物のモル濃度)の比が、0.01〜20である[1]〜[5]の何れか一項に記載の電解質。
[7] (前記複素環式化合物及びその誘導体のモル数)/(前記金属錯体化合物に含まれる複素環式化合物のモル数)の比が、0.01〜20である[1]〜[6]の何れか一項に記載の電解質。
[8] [1]〜[7]の何れか一項に記載の電解質を備えたことを特徴とする色素増感太陽電池。
[5] 溶媒をさらに含有する[1]〜[4]の何れか一項に記載の電解質。
[6] (前記複素環式化合物及びその誘導体のモル濃度)/(前記金属錯体化合物のモル濃度)の比が、0.01〜20である[1]〜[5]の何れか一項に記載の電解質。
[7] (前記複素環式化合物及びその誘導体のモル数)/(前記金属錯体化合物に含まれる複素環式化合物のモル数)の比が、0.01〜20である[1]〜[6]の何れか一項に記載の電解質。
[8] [1]〜[7]の何れか一項に記載の電解質を備えたことを特徴とする色素増感太陽電池。
本発明の電解質を備えた色素増感太陽電池の発電性能の維持率が向上する。この理由として、本発明の電解質の熱による劣化が従来よりも低減されることが要因として考えられる。したがって、本発明の電解質を備えた色素増感太陽電池の耐久性を向上させることができる。
図1に、本発明にかかる光電変換素子の第一実施形態の断面図を示す。光電変換素子10は、色素増感太陽電池であって、光電極基板11と、対向電極基板12と、電荷輸送層20とを備えている。
光電極基板11は、透明基材13と、透明基材13の対向電極基板12側の面上に形成された透明導電膜14と、透明導電膜14の上に形成された半導体層15と、半導体層15に担持された増感色素(不図示)とを備える。光電極は半導体層15及び増感色素によって構成されている。
対向電極基板12は、透明基材13と離間して対向配置された対向基材16と、対向基材16の光電極基板11側の面上に形成された対向導電膜17とを備える。対向電極は対向導電膜17によって構成されている。
電荷輸送層20は半導体層15と対向導電膜17の間の空隙部に充填されており、電荷輸送層20の側方は、封止材21によって封止されている。
光電極基板11は、透明基材13と、透明基材13の対向電極基板12側の面上に形成された透明導電膜14と、透明導電膜14の上に形成された半導体層15と、半導体層15に担持された増感色素(不図示)とを備える。光電極は半導体層15及び増感色素によって構成されている。
対向電極基板12は、透明基材13と離間して対向配置された対向基材16と、対向基材16の光電極基板11側の面上に形成された対向導電膜17とを備える。対向電極は対向導電膜17によって構成されている。
電荷輸送層20は半導体層15と対向導電膜17の間の空隙部に充填されており、電荷輸送層20の側方は、封止材21によって封止されている。
透明基材13は、透明導電膜14の基台となる部材であり、色素増感太陽電池の製造及び利用に適用可能であって透明な材質で構成されていれば、種類等は特に限定されない。
透明基材13としては例えば、透明なガラスや透明な樹脂材料からなるフィルム基材が好適である。
透明基材13としては例えば、透明なガラスや透明な樹脂材料からなるフィルム基材が好適である。
透明導電膜14は、スパッタリング法や印刷法により透明基材13の一方の板面上に形成されている。透明導電膜14には、例えば、スズドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化スズ、アルミドープ酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、酸化インジウム/酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛等が用いられる。
半導体層15は、増感色素を吸着可能であり、光励起された増感色素から電子を受け取り、透明導電膜14へ電子を渡すことが可能なn型半導体であれば特に制限されない。このような半導体層の材料としては、例えば金属酸化物半導体、金属カルコゲナイド等の半導体からなる微粒子が好ましく、酸化チタン微粒子がより好ましい。
半導体層15の形態としては、緻密層であってもよく、多孔質層であってもよい。光電変換効率を高める観点から、多孔質層であることが好ましく、前記微粒子同士が焼結した多孔質層又はエアロゾル・デポジション法による粉体吹付けの物理的衝突により接合された多孔質層であることがより好ましい。
酸化チタンの種類としては、酸化チタン微粒子同士の電気的接合を向上させる点から、アナターゼ型酸化チタンが好ましい。酸化チタン微粒子は、アナターゼ型とルチル型が混合された酸化チタンであることも好ましく、ルチル型酸化チタンのみであってもよい。色素増感太陽電池において、酸化チタン製の多孔質膜の比表面積及び入射光の利用効率を高める観点から、酸化チタン微粒子の平均粒径は10nm以上500nm以下が好ましい。
半導体層15に吸着される増感色素は、光電変換素子10に照射された光によって励起されると電子を放出する化合物である。放出された電子は、バンドギャップが広く、可視光領域に吸収帯を持たない半導体層15に受け渡されて、さらに透明導電膜14に移動する。このような増感色素として、従来の色素増感太陽電池で使用される色素が適用可能であり、例えばルテニウム錯体、シアニンやクロロフィルといった有機色素が挙げられる。増感色素としては、吸収する波長域が広く、光励起の寿命が長く、半導体層15に受け渡された電子が安定する点から、ルテニウム錯体が好適であり、例えば、N3、N719、N749、CYC-B11と一般に呼ばれる色素が挙げられる。また、MK2等のカルバゾール骨格を有するカルバゾール系有機色素も好適である。
対向基材16は、対向導電膜17の基台となる部材であり、色素増感太陽電池の製造及び利用に適用可能な材質で構成されていれば、種類等は特に限定されない。対向基材16としては例えばガラスや樹脂材料からなるフィルム基材が好適である。
対向導電膜17は、スパッタリング法や印刷法により対向基材16の透明基材13側の板面上に形成されている。対向導電膜17の材料としては、電荷輸送層20の酸化還元反応を促進し得る触媒が好ましい。このような触媒として、例えば、金、白金等の金属触媒、カーボンナノチューブ、グラファイト等の導電性炭素、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等のp型半導体として働く導電性高分子等が挙げられる。対向基材16及び対向導電膜17は不透明であってもよい。外部から対向電極基板12を透過した光が光電極基板11に届くようにするために、透明であることが好ましい。
封止材21の材料は、電荷輸送層20を光電極基板11と対向電極基板12の間に封止可能な材料であれば特に制限されず、例えば光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物等が挙げられる。
電荷輸送層20は電解質によって構成される。前記電解質は、複素環式化合物(複素環式基)の環構造を金属配位子として有する金属錯体化合物と、前記複素環式化合物又はその誘導体(但し、前記金属錯体化合物を除く)とを含有する。
前記金属錯体化合物は、酸化還元反応を生じるレドックスであることが好ましい。
ここで、「レドックス」とは、酸化状態と還元状態の両方を取り、増感色素を還元し得る物質をいう。レドックスは酸化還元対と呼び替えることができる。
前記電解質に含まれるレドックスは1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
前記金属錯体化合物は、酸化還元反応を生じるレドックスであることが好ましい。
ここで、「レドックス」とは、酸化状態と還元状態の両方を取り、増感色素を還元し得る物質をいう。レドックスは酸化還元対と呼び替えることができる。
前記電解質に含まれるレドックスは1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
前記金属錯体化合物の種類は特に限定されず、公知の金属錯体化合物が適用可能である。
前記金属錯体化合物の金属配位子(金属に配位する構造)において、2つ以上の複素環式化合物(複素環式基)が含まれ、これらの複素環式化合物のヘテロ原子(炭素以外の窒素や酸素等の原子)が金属に配位していることが好ましい。
上記の様な金属錯体化合物(以下、単に「金属錯体」と呼ぶことがある。)は優れたレドックスとして機能し得る。
前記電解質に含まれる金属錯体は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
前記金属錯体化合物の金属配位子(金属に配位する構造)において、2つ以上の複素環式化合物(複素環式基)が含まれ、これらの複素環式化合物のヘテロ原子(炭素以外の窒素や酸素等の原子)が金属に配位していることが好ましい。
上記の様な金属錯体化合物(以下、単に「金属錯体」と呼ぶことがある。)は優れたレドックスとして機能し得る。
前記電解質に含まれる金属錯体は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
本発明にかかる電解質において、前記金属錯体化合物に含まれる複素環式化合物(複素環式基)の環構造(α)と、前記金属錯体化合物とともに前記電解質に含有される前記複素環式化合物及びその誘導体の環構造(β)とは、同じである。
ここで、前記複素環式化合物の誘導体とは、当該複素環式化合物と同じ環構造を有し、当該環構造に結合する何れか1つ以上の水素原子が炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基によって置換されている化合物、又は、当該複素環式化合物が有する1つ以上の炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が水素原子によって置換されている化合物をいう。
前記複素環式化合物として、例えば、下記一般式(1)で表される複素環式化合物が挙げられる。
上記式中、窒素原子同士は二重結合(アゾ基)を形成しないことが好ましい。
前記一般式(1)中、X1及びX6が金属に配位する窒素原子であることが好ましい。
前記一般式(1)の「C−R」基のRが炭素数1〜10のアルキル基である場合、当該アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状の何れでもよく、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状であることがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が好適なRとして挙げられる。
前記一般式(1)の「C−R」基のRが炭素数2〜10のアルケニル基である場合、当該アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状の何れでもよく、炭素数2〜5の直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、炭素数2〜3の直鎖状又は分岐鎖状であることがより好ましい。具体的には、例えば、ビニル基 (CH2=CH-)、アリル基 (CH2=CHCH2-)等が好適なRとして挙げられる。
前記一般式(1)の「C−R」基のRがアリール基である場合、当該アリール基は単環式であってもよく、多環式であってもよい。具体的には、炭素数6〜12のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が好適なRとして挙げられる。
前記一般式(1)のX5及びX10が前記「C−R」で表される基であり、X5とX10のRが互いに連結して、アルキレン基又はアルケニレン基を形成している場合、その炭素数は2〜5が好ましく、2〜3がより好ましい。具体的には、例えば、エチレン基 (-CH2-CH2-)、ビニレン基 (-CH=CH-)等が好適な連結基として挙げられる。
より好適な複素環式化合物として、例えば、下記一般式(2)及び下記式(2a)〜(2c)で表される複素環式化合物が挙げられる。
上記「−CH2−CH2−」及び「−CH=CH−」の左端及び右端の炭素は、それぞれY1及びY2が結合する炭素原子に結合する。
上記式(2a)〜(2c)で表される複素環式化合物の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基で置換されていてもよい。
具体的な金属錯体としては、例えば、コバルト(Co)錯体、鉄(Fe)錯体等が好ましい。当該金属錯体の金属配位子の構造中に6員環の複素環式化合物(複素環式基)を含むことが好ましく、前記構造中にビピリジン又はフェナントロリンを含むことがより好ましい。この様な金属錯体として、例えば、トリス(ビピリジン)Co(II/III)錯体又はトリス(ビピリジン)Fe(II/III)錯体が挙げられる。
前記Co錯体としては、例えば、コバルト(II / III)トリス(2,2’-ビピリジン)、コバルト(II / III)トリス(4,4’-ジメチル-2,2-ビピリジン)、コバルト(II / III)トリス(4,4’-ジタート-ブチル-2,2-ビピリジン)、コバルト(II / III)トリス(1,10-フェナントロリン)、等が挙げられる。
前記Fe錯体としては、例えば、フェロシアン酸塩、フェロセン等が挙げられる。
前記金属錯体はカウンターアニオンを有する錯塩であってもよい。カウンターアニオンの種類は特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸等が挙げられる。
前記電解質には、前記金属錯体とともに、当該金属錯体に含まれる複素環式化合物(複素環式基)と同じ複素環式化合物又はその誘導体(但し、前記金属錯体を除く。)が1種類又は2種類以上含有されている。
具体的な複素環式化合物として、例えば、前記一般式(1)、前記一般式(2)及び前記式(2a)〜(2c)で表される複素環式化合物が挙げられる。
具体的な複素環式化合物として、例えば、前記一般式(1)、前記一般式(2)及び前記式(2a)〜(2c)で表される複素環式化合物が挙げられる。
電荷輸送層20を構成する電解質に前記複素環式化合物が含まれることによって、半導体層15からレドックス酸化種へ電子が逆流する再結合を防止し、開放電圧(Voc)を高めて光電変換効率が向上するとともに、電荷輸送層20の温度上昇に対する耐久性が向上する、という効果が奏される。これらの詳細なメカニズムは未解明であるが、以下の様に推測される。
開放電圧及び光電変換効率が向上するメカニズムとして、前記複素環式化合物が適度な塩基性を有するので、半導体に担持された色素から半導体への電子移動を阻害する遮蔽効果が従来のTBPと比べて低減していること、及び、前記複素環式化合物が半導体と電荷輸送層の界面において適度な立体障害を提供することにより、半導体とレドックス酸化種との接触が低減して再結合反応が抑制されること、等が考えられる。
温度上昇に対する耐久性が向上するメカニズムとして、従来のTBPは、金属錯体が有する複素環式化合物(複素環式基)とは異なる環構造のピリジンを有するので、TBPが金属錯体の複素環式化合物と置換した場合、当該金属錯体が劣化する変性反応(分解反応)が生じやすい。
例えば、従来のTBPをCo(II)錯体を含む電解質に添加した場合、下記化学式で示すようなCo(II)錯体の変性反応が、使用時の熱によって惹起されると考えられる。この変性反応は、当該Co(II)錯体中の複素環式化合物(複素環式基)であるビピリジン構造が、2つのTBPのピリジン構造と置換し易くなっているために惹起されていると考えられる。
例えば、従来のTBPをCo(II)錯体を含む電解質に添加した場合、下記化学式で示すようなCo(II)錯体の変性反応が、使用時の熱によって惹起されると考えられる。この変性反応は、当該Co(II)錯体中の複素環式化合物(複素環式基)であるビピリジン構造が、2つのTBPのピリジン構造と置換し易くなっているために惹起されていると考えられる。
一方、本発明にかかる電解質においては、金属錯体と複素環式化合物とが同じ環構造を有する。このため、金属錯体の金属配位子である複素環式化合物(複素環式基)が脱離し、電解質中に共に含有される複素環式化合物によって置換されたとしても、元の金属錯体に戻るため、当該金属錯体は変性しない。すなわち、使用時の熱によって金属錯体の金属配位子が脱離及び置換したとしても、見かけ上その脱離及び置換反応は起きていない。この結果、金属錯体の熱による変性が防止され、当該電解質の耐久性が向上すると考えられる。
本発明にかかる電解質の耐久性を確実に向上させるために、当該電解質には、金属錯体が金属配位子として有する複素環式化合物(複素環式基)とは異なる環構造を有する複素環式化合物が含有されないことが好ましい。
電荷輸送層20を構成する電解質は、溶媒が含まれた電解質溶液であることが好ましい。前記溶媒としては、電解質を均一に溶解又は分散可能な有機溶媒又はイオン液体が好ましい。
前記有機溶媒としては、従来の色素増感太陽電池の電解液に使用される有機溶媒が適用可能であり、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。前記イオン液体としては、従来の色素増感太陽電池の電解液に使用されるイオン液体が適用可能であり、例えば、イミダゾリウム系イオン液体、ピリジニウム系イオン液体、脂肪族系イオン液体等が挙げられる。前記有機溶媒と前記イオン液体を併用してもよい。また、電荷輸送層20は、前記有機溶媒又はイオン液体がポリアクリロニトリル等の公知のゲル化剤によってゲル化されたゲル電解質であってもよい。
前記有機溶媒としては、従来の色素増感太陽電池の電解液に使用される有機溶媒が適用可能であり、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。前記イオン液体としては、従来の色素増感太陽電池の電解液に使用されるイオン液体が適用可能であり、例えば、イミダゾリウム系イオン液体、ピリジニウム系イオン液体、脂肪族系イオン液体等が挙げられる。前記有機溶媒と前記イオン液体を併用してもよい。また、電荷輸送層20は、前記有機溶媒又はイオン液体がポリアクリロニトリル等の公知のゲル化剤によってゲル化されたゲル電解質であってもよい。
本発明にかかる電解質が溶媒を含む電解質溶液である場合、当該電解質溶液における(前記複素環式化合物及びその誘導体のモル濃度)/(前記金属錯体化合物のモル濃度)の比は、溶媒の種類及び溶解度にもよるが、0.01〜20が好ましく、0.05〜5.0がより好ましく、0.10〜2.0がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、光電変換効率を充分に向上させることができるとともに、前記金属錯体化合物の熱による変性若しくは分解を抑制し、電解質溶液及びこれを備えた色素増感太陽電池の耐久性を充分に向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、電解質溶液における前記複素環式化合物の溶解性又は分散性がより良好となり易い。
ここで、「前記複素環式化合物及びその誘導体のモル濃度」は、当該電解質溶液中に含まれる1種類以上の前記複素環式化合物及びその誘導体の合計のモル濃度であり、「前記金属錯体化合物のモル濃度」は、当該電解質溶液中に含まれる1種類以上の前記金属錯体の合計のモル濃度である。
上記範囲の下限値以上であると、光電変換効率を充分に向上させることができるとともに、前記金属錯体化合物の熱による変性若しくは分解を抑制し、電解質溶液及びこれを備えた色素増感太陽電池の耐久性を充分に向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、電解質溶液における前記複素環式化合物の溶解性又は分散性がより良好となり易い。
ここで、「前記複素環式化合物及びその誘導体のモル濃度」は、当該電解質溶液中に含まれる1種類以上の前記複素環式化合物及びその誘導体の合計のモル濃度であり、「前記金属錯体化合物のモル濃度」は、当該電解質溶液中に含まれる1種類以上の前記金属錯体の合計のモル濃度である。
前記電解質溶液に含まれる前記複素環式化合物及びその誘導体の合計のモル濃度は特に限定されず、例えば、0.005〜3M(mol/L)が好ましく、0.01〜1.0Mがより好ましく、0.03〜0.9Mがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、光電変換効率を充分に向上させることができるとともに、前記金属錯体化合物の熱による変性若しくは分解を抑制し、電解質溶液及びこれを備えた色素増感太陽電池の耐久性を充分に向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、電解質溶液における前記複素環式化合物の溶解性又は分散性がより良好となり易い。
上記範囲の下限値以上であると、光電変換効率を充分に向上させることができるとともに、前記金属錯体化合物の熱による変性若しくは分解を抑制し、電解質溶液及びこれを備えた色素増感太陽電池の耐久性を充分に向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、電解質溶液における前記複素環式化合物の溶解性又は分散性がより良好となり易い。
本発明にかかる電解質が溶媒を含む電解質溶液である場合、当該電解質溶液における(前記複素環式化合物及びその誘導体のモル数)/(前記金属錯体化合物に含まれる前記複素環式化合物のモル数)の比は、溶媒の種類及び溶解度にもよるが、0.01〜20が好ましく、0.02〜5.0がより好ましく、0.03〜0.9がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、光電変換効率を充分に向上させることができるとともに、前記金属錯体化合物の熱による変性若しくは分解を抑制し、電解質溶液及びこれを備えた色素増感太陽電池の耐久性を充分に向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、電解質溶液における前記複素環式化合物の溶解性又は分散性がより良好となり易い。
ここで、「前記複素環式化合物及びその誘導体のモル数」は、当該電解質溶液中に含まれる1種類以上の前記複素環式化合物及びその誘導体の合計のモル数であり、「前記金属錯体化合物に含まれる前記複素環式化合物のモル数」は、当該電解質溶液中に含まれる1種類以上の前記金属錯体が有する前記複素環式化合物の合計のモル数である。なお、前記比を計算する際には、モル数ではなくモル濃度で代替することができる。
上記範囲の下限値以上であると、光電変換効率を充分に向上させることができるとともに、前記金属錯体化合物の熱による変性若しくは分解を抑制し、電解質溶液及びこれを備えた色素増感太陽電池の耐久性を充分に向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、電解質溶液における前記複素環式化合物の溶解性又は分散性がより良好となり易い。
ここで、「前記複素環式化合物及びその誘導体のモル数」は、当該電解質溶液中に含まれる1種類以上の前記複素環式化合物及びその誘導体の合計のモル数であり、「前記金属錯体化合物に含まれる前記複素環式化合物のモル数」は、当該電解質溶液中に含まれる1種類以上の前記金属錯体が有する前記複素環式化合物の合計のモル数である。なお、前記比を計算する際には、モル数ではなくモル濃度で代替することができる。
前記電解質溶液に含まれる1種又は2種以上の金属錯体化合物の合計の濃度は特に限定されず、従来の色素増感太陽電池で使用されるレドックスと同様の濃度が適用可能であり、例えば、0.01〜3M(mol/L)が好ましく、0.1〜1Mがより好ましく、0.2〜0.5Mがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、光電変換に必要な酸化還元反応が充分に行われ、光電変換効率が良好となり易い。
上記範囲の上限値以下であると、電解質溶液における前記金属錯体化合物の溶解性又は分散性がより良好となり易い。
上記範囲の下限値以上であると、光電変換に必要な酸化還元反応が充分に行われ、光電変換効率が良好となり易い。
上記範囲の上限値以下であると、電解質溶液における前記金属錯体化合物の溶解性又は分散性がより良好となり易い。
電荷輸送層20において、(前記複素環式化合物及びその誘導体のモル濃度)/(前記金属錯体化合物のモル濃度)の比、(前記複素環式化合物及びその誘導体のモル数)/(前記金属錯体化合物に含まれる前記複素環式化合物(複素環式基)のモル数)の比、複素環式化合物及びその誘導体の濃度、及び前記金属錯体化合物の濃度は、前述した電解質溶液と同様であることが好ましい。
電荷輸送層20を構成する前記電解質には、任意成分として、前記金属錯体化合物以外の他のレドックスが、さらに含まれていてもよい。
前記他のレドックスの種類は特に限定されず、従来の色素増感太陽電池に使用されるレドックスが適用可能であり、例えば、ヨウ素レドックス(I-, I3 -)、臭素レドックス(Br-, Br3 -)等が好適である。
前記他のレドックスの種類は特に限定されず、従来の色素増感太陽電池に使用されるレドックスが適用可能であり、例えば、ヨウ素レドックス(I-, I3 -)、臭素レドックス(Br-, Br3 -)等が好適である。
電荷輸送層20を構成する前記電解質には、前記他のレドックスとして又はレドックスの酸化還元反応を調整する助剤として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン化合物、有機ラジカル化合物などが含まれていてもよい。
前記ハロゲン化合物としては、例えば、ハロゲン化された、リチウム、マグネシウム、カルシウム等の無機ハロゲン化合物、前記ハロゲンをカウンターアニオンとして含む、1-エチル-3メチルイミダゾリウム・ヨウ化物塩、1-エチル-3メチルイミダゾリウム・臭化物塩、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム・ヨウ化物塩(略称:DMPImI)、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム・臭化物塩等の有機ハロゲン化物塩が挙げられる。
前記有機ラジカル化合物としては、例えば、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル (2,2,6,6-tetramethylpiperidine 1-oxyl))、ベンゾキノン、ビオロゲン等が挙げられる。
電荷輸送層20を構成する前記電解質に含まれていてもよい、前記金属錯体以外の他のレドックスの濃度は特に限定されず、従来の色素増感太陽電池で使用されるレドックスと同様の濃度が適用可能であり、前記金属錯体がレドックスとして機能することを阻害しない濃度であることが好ましく、例えば、0.001〜3M程度にすることができる。
上記範囲の下限値以上であると、光電変換に必要な酸化還元反応が充分に行われ、光電変換効率が良好となり易い。
上記範囲の上限値以下であると、電荷輸送層20における前記他のレドックスの溶解性又は分散性がより良好となり易い。
上記範囲の下限値以上であると、光電変換に必要な酸化還元反応が充分に行われ、光電変換効率が良好となり易い。
上記範囲の上限値以下であると、電荷輸送層20における前記他のレドックスの溶解性又は分散性がより良好となり易い。
電荷輸送層20は、従来の色素増感太陽電池で使用される液状、ゲル状及び固体状の電解質と同様の方法で作製される。例えば、溶媒に前記金属錯体化合物及び前記複素環式化合物又はその誘導体を投入し、公知方法で均一に混合することによって、電荷輸送層20としての電解液を得ることができる。また、光電変換素子の公知の部材を常法により組み立てて、光電極基板11と対向電極基板12の間に公知方法によって電荷輸送層20を封止することによって、光電変換素子を得ることができる。光電変換素子の光電極に光を照射することによって、光電極基板11と対向電極基板12に接続された引出配線を介して外部回路に電流を取り出すことが可能な色素増感太陽電池として使用することができる。
次に、本発明を以下の実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
<色素増感太陽電池の作製>
透明導電基材として、表面抵抗10Ω/sqのFTO膜を形成したガラス基板(日本板硝子社製)を用いた。この基板のFTO膜が形成された面上に、スクリーン印刷法によってSolaronix社製 Nanoxideペーストを塗布し、大気雰囲気下500℃で30分の焼成を行い、膜厚約5μm、セル面積0.16cm2の酸化チタン多孔質膜を形成した。
酸化チタン多孔質膜を色素溶液「色素:0.3mM MK2、溶媒:トルエン」に24時間浸漬し、光電極を作製した。この光電極と対極としてのPt箔を対向させて、両電極間にハイミラン(登録商標)で形成された枠型セパレータ(三井デュポンケミカル社製)を配置し、電極間の空間を封止したセルを形成した。このセル内に、対極を備える対向電極基板に予め空けておいた注入孔から下記の電解液を注入した。
透明導電基材として、表面抵抗10Ω/sqのFTO膜を形成したガラス基板(日本板硝子社製)を用いた。この基板のFTO膜が形成された面上に、スクリーン印刷法によってSolaronix社製 Nanoxideペーストを塗布し、大気雰囲気下500℃で30分の焼成を行い、膜厚約5μm、セル面積0.16cm2の酸化チタン多孔質膜を形成した。
酸化チタン多孔質膜を色素溶液「色素:0.3mM MK2、溶媒:トルエン」に24時間浸漬し、光電極を作製した。この光電極と対極としてのPt箔を対向させて、両電極間にハイミラン(登録商標)で形成された枠型セパレータ(三井デュポンケミカル社製)を配置し、電極間の空間を封止したセルを形成した。このセル内に、対極を備える対向電極基板に予め空けておいた注入孔から下記の電解液を注入した。
<電解液の調製>
溶媒である3−メトキシプロピオニトリルに、レドックス対としてCo錯体(A)又はCo錯体(B)と、添加剤としてビピリジン又はフェナントロリンとを溶解させて、実施例及び比較例の電解液をそれぞれ調製した。各電解液におけるCo錯体と添加剤との組み合わせ、及びそれぞれの配合濃度は表1に示す通りである。
溶媒である3−メトキシプロピオニトリルに、レドックス対としてCo錯体(A)又はCo錯体(B)と、添加剤としてビピリジン又はフェナントロリンとを溶解させて、実施例及び比較例の電解液をそれぞれ調製した。各電解液におけるCo錯体と添加剤との組み合わせ、及びそれぞれの配合濃度は表1に示す通りである。
前記電解液中のCo錯体(A)は、下記式(A)で表されるCo(II)(bpy)3(PF6)2とCo(III)(bpy)3(PF6)3との混合物である。ここで、上記「bpy」は2,2’-ビピリジンを表し、上記「PF6」はヘキサフルオロリン酸を表す。
前記電解液中のCo錯体(B)は、下記式(B)で表されるCo(II)(phen)3(PF6)2とCo(III)(phen)3(PF6)3との混合物である。ここで、上記「phen」は1,10-フェナントロリンを表し、上記「PF6」はヘキサフルオロリン酸を表す。
前記電解液中のビピリジンは下記式(a)で表される添加剤であり、フェナントロリンは下記式(b)で表される添加剤であり、TBPは下記式で表される添加剤である。
調製した各電解液における、1分子の金属錯体が有する複素環式化合物(複素環式基)の数と種類、(添加剤のモル数/金属錯体が有する複素環式化合物(複素環式基)のモル数)で表される比を表2に示す。
<色素増感太陽電池の評価>
まず、耐熱試験を行う前に、ソーラーシミュレーター(型番:XES−301S、株式会社三永電機製作所製)を使用して光量100mW/cm2の疑似太陽光を照射し、上記で作製した実施例及び比較例の色素増感太陽電池の光電変換効率を測定した。この結果を表3に示す。
次に、遮光条件での条件で85℃耐熱試験を行った後の各色素増感太陽電池の光電変換効率を測定した。各試験例の維持率の結果を、比較例3又は4の光電変換効率の維持率を基準として、表3に併記する。
まず、耐熱試験を行う前に、ソーラーシミュレーター(型番:XES−301S、株式会社三永電機製作所製)を使用して光量100mW/cm2の疑似太陽光を照射し、上記で作製した実施例及び比較例の色素増感太陽電池の光電変換効率を測定した。この結果を表3に示す。
次に、遮光条件での条件で85℃耐熱試験を行った後の各色素増感太陽電池の光電変換効率を測定した。各試験例の維持率の結果を、比較例3又は4の光電変換効率の維持率を基準として、表3に併記する。
以上の結果から、本発明に係る実施例1〜6の色素増感太陽電池の光電変換効率は、耐熱試験前において従来と同等以上であり、85℃の耐熱試験を経た後の光電変換効率の維持率は、比較例3又は4に比べて向上していることが明らかである。
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
本発明は、色素増感太陽電池の分野で広く利用可能である。
10…光電変換素子、11…光電極基板、12…対向電極基板、13…透明基材(基材)、14…透明導電膜、15…半導体層(光電極)、16…対向基材、17…対向導電膜(対向電極)、20…電荷輸送層、21…封止材
Claims (8)
- 色素増感太陽電池に使用される電解質であって、
前記電解質は、複素環式化合物を金属配位子として有する金属錯体化合物と、
前記複素環式化合物又はその誘導体(但し、前記金属錯体化合物を除く。)と、
を含有する電解質。 - 前記金属錯体化合物が、Co錯体化合物又はFe錯体化合物である請求項1〜3の何れか一項に記載の電解質。
- 溶媒をさらに含有する請求項1〜4の何れか一項に記載の電解質。
- (前記複素環式化合物及びその誘導体のモル濃度)/(前記金属錯体化合物のモル濃度)の比が、0.01〜20である請求項1〜5の何れか一項に記載の電解質。
- (前記複素環式化合物及びその誘導体のモル数)/(前記金属錯体化合物に含まれる前記複素環式化合物のモル数)の比が、0.01〜20である請求項1〜6の何れか一項に記載の電解質。
- 請求項1〜7の何れか一項に記載の電解質を備えたことを特徴とする色素増感太陽電池。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2015172092A JP2017050386A (ja) | 2015-09-01 | 2015-09-01 | 電解質及び色素増感太陽電池 |
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Publications (1)
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- 2015-09-01 JP JP2015172092A patent/JP2017050386A/ja not_active Withdrawn
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