JP6415380B2 - 光電変換素子 - Google Patents

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Description

本開示は、ニトロキシルラジカルを有する化合物を含む電解液を用いた光電変換素子に関する。
近年、光増感剤として色素を用いた、色素増感太陽電池の研究開発が進められている。従来の色素増感太陽電池は、典型的には、色素を含む光アノードと、対極と、光アノードと対極との間に設けられた電子輸送層および正孔輸送層と、酸化還元対を含む電解液とを備える。色素増感太陽電池の特性を向上させるために、それぞれの構成要素の特性の向上が求められている。
非特許文献1には、ヨウ素を含まない電解質として、ニトロキシルラジカルを有する化合物である2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(以下、「TEMPO」という)をメディエータとして用いる色素増感太陽電池が開示されている。非特許文献1によると、ヨウ素を含む電解質を用いないので、望ましい耐久性が得られる。
また、特許文献1には、TEMPOを含むラジカル化合物の平均分子量を200以上とすることによって光電変換効率(以下、単に、「変換効率」という。)を向上させた光電変換素子が開示されている。
特許文献2には、メディエータとしてイミダゾリウムヨージドとヨウ素とを含む電解液を用いることによって、光電変換素子の耐久性と変換効率とを向上させ得ることが開示されている。
また、非特許文献2には、電解液に、TEMPOとともに、TEMPOカチオン(以下、「TEMPO+」と表記することがある。)を添加することによって、フィルファクター(FF)や短絡電流値(以下、単に「電流値」ということがある。)を向上させることが記載されている。このように、色素増感太陽電池の電解液にメディエータの酸化体を添加することによって得られる効果は、例えばヨウ化物イオンを主成分として含む電解液にヨウ素を添加した場合などでも知られている。
国際公開第2011/118197号 特開2003−031270号公報
Z. Zhang, P. Chen, TN Murakami, SM Zakeeruddin, M. Gratzel, Adv. Funct. Mater. 2008, 18, 341 Angewandte Chemie International Edition, Volume 51, Issue 40, pages 10177−10180, October 1, 2012(DOI: 10.1002/anie.201205036)
本開示は、ニトロキシルラジカルを有する化合物をメディエータとして含む電解液を用いる光電変換素子の高い電圧を維持しつつ、耐久性を向上させた光電変換素子を提供する。
本開示のある実施形態による光電変換素子は、光アノードと、対極と、前記光アノードと前記対極との間に設けられ、ニトロキシルラジカルを有する化合物と、0.2mol/L以上5mol/L以下のジメチルイミダゾリウムカチオンと、アニオンとを含む電解液とを備える。
本開示のある実施形態によると、ニトロキシルラジカルを有する化合物をメディエータとして含む電解液を用いる光電変換素子の高い電圧を維持しつつ、耐久性を向上させることができる。
本開示の第1の実施形態による光電変換素子100の構造を模式的に示す図である。 本開示の第2の実施形態による光電変換素子150の構造を模式的に示す断面図である。 本開示の第3の実施形態による光電変換素子200の構造を模式的に示す断面図である。
(本開示の基礎となった知見)
本発明者らの検討によると、特許文献1に記載の光電変換素子の耐久性は特許文献2に記載の光電変換素子よりも劣り、特許文献2に記載の光電変換素子の開放電圧(以下、単に「電圧」ということがある。)は、特許文献1に記載の光電変換素子よりも劣る。また、本発明者らの検討によると、ニトロキシルラジカルを有する化合物である2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(以下、「TEMPO」という)とTEMPO+とを含む電解液においては、安定性が低く、電解液の可使時間が短いという問題がある。これは、TEMPO+の安定性が低いことに起因している。そこで、本発明者らは、光増感された光電変換素子の性能を向上させるべく、鋭意研究した。ここで、光増感された光電変換素子は、いわゆる色素増感太陽電池を包含し、さらに、屋内等の照度の比較的低い環境においても発電することができる光電気化学型の発電素子を含む。
本開示は、以下の項目に記載の光電変換素子を含む。
[項目1]
光アノードと、
対極と、
前記光アノードと前記対極との間に設けられ、ニトロキシルラジカルを有する化合物と、0.2mol/L以上5mol/L以下のジメチルイミダゾリウムカチオン[化学式追記1]と、アニオンとを含む電解液と
を備える光電変換素子。
前記ジメチルイミダゾリウムカチオンは、下記の化学式[化1]で表され、
Figure 0006415380
前記化学式[化1]中のR1およびR2は、それぞれ独立にメチル基である。
[項目2]
前記電解液に含まれる、前記ニトロキシルラジカルを有する化合物以外のメディエータの濃度は、0.001mol/Lを超えない、項目1に記載の光電変換素子。
[項目3]
前記アニオンは、ハロゲンアニオン、ハロゲンホウ素系アニオン、ハロゲンリン系アニオン、炭化フッ素アニオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオンである、項目1または2に記載の光電変換素子。
[項目4]
前記アニオンは、アルキルフッ素系のアニオンである、項目3に記載の光電変換素子。
[項目5]
前記アルキルフッ素系のアニオンは、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンである、項目4に記載の光電変換素子。
[項目6]
前記ニトロキシルラジカルを含有する化合物は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルである、項目1から5のいずれかに記載の光電変換素子。
[項目7] 前記ニトロキシルラジカルを有する化合物は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル又はその誘導体の何れかであるラジカル化合物であり、
前記電解液において、前記ラジカル化合物の酸化体をさらに含む場合であっても、前記ラジカル化合物および前記酸化体の総量に対する前記酸化体のモル比率が5%を超えず、
前記光アノードと前記対極との距離が30μmを超えない、項目1から6のいずれかに記載の光電変換素子。
[項目8]
前記電解液に含まれる前記ラジカル化合物の濃度は、50mmol/Lを超えない、項目7に記載の光電変換素子。
[項目9]
前記電解液において、前記ラジカル化合物の酸化体がさらに含まれる場合であっても、前記ラジカル化合物および前記酸化体の総量に対する前記酸化体のモル比率が1%を超えない、項目7または8に記載の光電変換素子。
[項目10]
前記光アノードが形成された第1基板および前記対極が形成された第2基板をさらに有し、
前記電解液は、前記第1基板と第2基板との間に、樹脂を含むシール部によって封止されている、項目7から9のいずれかに記載の光電変換素子。
[項目11]
前記第1基板または前記第2基板の少なくとも一方は、深さが10μm以上の深さの凹部、または、高さが10μm以上の凸部を有している、項目10に記載の光電変換素子。
[項目12]
前記電解液が封止されている領域は、短辺の長さが50mmを超えない矩形の領域である、項目10または11に記載の光電変換素子。
(実施形態)
以下、図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1に、本開示の第1の実施形態による光電変換素子100の構造を模式的に示す。光電変換素子100は、光アノード15と、対極35と、光アノード15と対極35との間に配置された電解液22とを有する。
光アノード15は、基板12に支持されており、例えば、可視光を透過する導電層(「透明導電層」ということがある。)14と、導電層14上に形成された固体半導体層16とを有する。固体半導体層16は光増感剤としての色素分子を含んでいる。固体半導体層16は、例えば、多孔質半導体層であり、多孔質酸化チタンを用いることが望ましい。固体半導体層16を単に半導体層16ということがある。
対極35は、電解液22を間に介して半導体層16に対向するように配置されている。対極35は、基板52に支持されており、例えば、酸化物導電層34と、酸化物導電層34上に形成された金属層(例えば、白金層)36とを有する。
電解液22は、例えば、メディエータを含む電解液であり、シール部によって、光アノード15と対極35との間に封止されている。
以下に、光電変換素子100の上記の構成要素の形成に用いられる材料を詳細に説明する。
<光アノード>
光アノード15は、光電変換素子100の負極として機能する。光アノード15は、上述したように、例えば、可視光を透過する導電層14と、導電層14上に形成された半導体層16を有し、半導体層16は光増感剤を含んでいる。光増感剤を含む半導体層16は、光吸収層と呼ばれることもある。このとき、基板12は、例えば、可視光を透過するガラス基板またはプラスチック基板(プラスチックフィルムを含む)である。
可視光を透過する導電層14は、例えば、可視光を透過する材料(以下、「透明導電材料」という。)で形成され得る。透明導電材料としては、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、インジウム−スズ複合酸化物層と銀層からなる積層体、アンチモンがドープされた酸化スズ、フッ素がドープされた酸化スズ等を例示することができる。この内、フッ素がドープされた酸化スズは、導電性および透光性が特に高いので望ましい。導電層14の光透過率は高い程よいが、50%以上であることが望ましく、80%以上であることがより望ましい。
導電層14の厚さは、例えば、0.1μm〜10μmの範囲内にある。この範囲内であれば、均一な厚さの導電層14を形成することができるとともに、光透過性が低下せず、十分な光を半導体層16に入射させることができる。導電層14の表面抵抗は、低い程よく、望ましくは200Ω/cm2以下、より望ましくは50Ω/cm2以下である。下限は特に制限しないが、例えば0.1Ω/cm2である。太陽光の下で使用される光電変換素子の導電層のシート抵抗が10Ω/cm2程度であることが多い。しかし、太陽光よりも照度の低い蛍光灯等の下で使用される光電変換素子100では、光電子量(光電流値)が小さいために、導電層14に含まれる抵抗成分による悪影響を受けにくい。従って、低照度環境下で使用される光電変換素子100では、導電層14の表面抵抗は、導電層14に含まれる導電性材料の削減による低コスト化の観点から30〜200Ω/cm2の範囲内にあることが望ましい。
可視光を透過する導電層14はまた、透光性を有しない導電材料を用いて形成することができる。例えば、線状(ストライプ状)、波線状、格子状(メッシュ状)、パンチングメタル状(多数の微細な貫通孔が規則的または不規則に配列された様子をいう。)のパターンを有する金属層または、これらとはネガ・ポジが反転したパターンを有する金属層を用いることができる。これらの金属層では、金属が存在しない部分を光が透過することができる。金属として、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、チタン、鉄、ニッケル、スズ、亜鉛、またはこれらのいずれかを含む合金を挙げることができる。さらに、金属に代えて、導電性を有する炭素材料を用いることもできる。
可視光を透過する導電層14の透過率は、例えば50%以上であり、80%以上であることが望ましい。透過すべき光の波長は、光増感剤の吸収波長に依存する。
基板12とは反対側から半導体層16に光を入射させる場合、基板12および導電層14は、可視光を透過させる必要はない。したがって、上記の金属または炭素を用いて導電層14を形成する場合、金属または炭素が存在しない領域を形成する必要がなく、さらに、これらの材料が十分な強度を有する場合、導電層14が基板12を兼ねるようにしてもよい。
なお、導電層14の表面における電子の漏れを防ぐため、すなわち、導電層14と半導体層16との間に整流性を持たせるために、導電層14と半導体層16との間に、酸化シリコン、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムなどの酸化物層を形成してもよい。
光増感剤を有する半導体層16は、例えば、多孔質半導体と、多孔質半導体の表面に担持された光増感剤とを含む。多孔質半導体は、例えば、多孔質酸化チタン(TiO2)である。酸化チタンは、光電変換特性が高く、かつ、電解質溶液中への光溶解が起こり難いという特徴を有している。また、多孔質体は、比表面積が大きく、多くの光増感剤を担持することができるという利点を有している。もちろん、多孔質体に限られず、例えば、凝集した半導体粒子によって半導体層16を構成してもよい。
半導体粒子の粒径は、5〜1000nmの範囲内、より望ましくは10〜100nmの範囲内にあることが望ましい。粒径が5〜1000nmの範囲内にあることにより、充分な量の光増感剤を吸着可能な表面積を有する半導体層16を形成し、光の利用効率を高めることができる。また、適度な大きさの空孔を有する半導体層16を形成できるので、電解液(電解質媒体、電荷輸送材料)が半導体層16の中に十分に浸透し、優れた光電変換特性を得ることができる。
半導体層16の厚さは0.1〜100μm、より望ましくは1〜50μm、さらに望ましくは3〜20μm、最も望ましくは5〜10μmの範囲内にある。半導体層16の厚さがこの範囲内にあることにより、十分な光電変換効果が得られ、また可視光及び近赤外光に対する透過性も十分に確保できる。この光電変換素子100では、半導体層16の厚さは、太陽光の下で使用されることを前提とした従来の光電変換素子における半導体層の最適な厚さ(例えば10μm)より小さくてもよい。
半導体層16の厚さは、例えば、0.01μm以上100μm以下である。半導体層16の厚さは、光電変換の効率を考慮して適宜変更され得るが、0.5μm以上50μm以下が望ましく、1μm以上20μm以下がさらに望ましい。また、半導体層16の表面粗さは大きい方が望ましく、実効面積/投影面積で与えられる表面粗さ係数が10以上であることが望ましく、100以上であることがさらに望ましい。なお、実効面積は、半導体層16の投影面積と厚さから求められる体積と、半導体層16を構成する材料の比表面積および嵩密度とから求められる実効表面積を意味する。
半導体層16は、TiO2の他に、下記の無機半導体を用いて形成することができる。例えば、Cd、Zn、In、Pb、Mo、W、Sb、Bi、Cu、Hg、Ti、Ag、Mn、Fe、V、Sn、Zr、Sr、Ga、Si、Crなどの金属元素の酸化物、SrTiO3、CaTiO3などのペロブスカイト、CdS、ZnS、In23、PbS、Mo2S、WS2、Sb23、Bi23、ZnCdS2、Cu2Sなどの硫化物、CdSe、In2Se3、WSe2、HgS、PbSe、CdTeなどの金属カルコゲナイド、その他、GaAs、Si、Se、Cd23、Zn23、InP、AgBr、PbI2、HgI2、BiI3などを用いることができる。これらの内、CdS、ZnS、In23、PbS、Mo2S、WS2、Sb23、Bi23、ZnCdS2、Cu2S、InP、Cu2O、CuO、CdSeは、波長が350nm〜1300nm程度の光を吸収することができるという利点を有している。さらに、上記の半導体から選ばれる少なくとも1種以上を含む複合体、例えば、CdS/TiO2、CdS/AgI、Ag2S/AgI、CdS/ZnO、CdS/HgS、CdS/PbS、ZnO/ZnS、ZnO/ZnSe、CdS/HgS、CdSx/CdSe1-x、CdSx/Te1-x、CdSex/Te1-x、ZnS/CdSe、ZnSe/CdSe、CdS/ZnS、TiO2/Cd32、CdS/CdSeCdyZn1-yS、CdS/HgS/CdSなどを用いることができる。さらに、ポリフェニレンビニレンやポリチオフェンやポリアセチレン、テトラセン、ペンタセン、フタロシアニンなどの有機半導体を用いることもできる。また、ビオロゲンポリマーおよびキノンポリマー等を用いてもよい。
さらに、半導体層16は、その分子内の一部として繰り返し酸化還元が可能な酸化還元部を有すると共に、他の一部として電解質溶液を含んで膨潤してゲルとなる部位を有する有機化合物でもよい(例えば、特開2010−526633号公報参照)。
半導体層16は、公知の種々の方法で形成され得る。無機半導体を用いる場合、例えば、半導体材料の粉末と有機バインダー(有機溶剤を含む)との混合物を導電層14上に付与し、その後、加熱処理を施し有機バインダーを除去することによって、無機半導体からなる半導体層16を得ることができる。上記混合物を付与する方法は、公知の種々の塗布法または印刷法を採用することができる。塗布法としては、例えば、ドクターブレード法、バーコート法、スプレー法、ディップコーティング法、スピンコート法が挙げられ、印刷法としては、スクリーン印刷法が挙げられる。また、必要に応じて、混合物の膜を加圧してもよい。
有機半導体を用いる場合も、種々の公知の方法で半導体層16を形成することができる。有機半導体の溶液を公知の種々の塗布法または印刷法を用いて、導電層14上に付与すればよい。また、例えば、数平均分子量が1000以上の高分子半導体を用いる場合、スピンコート法やドロップキャスト法などの塗布法、スクリーン印刷やグラビア印刷などの印刷法が挙げられる。これらのウェットプロセスの他、スパッタ法や蒸着法などのドライプロセスを採用することもできる。
光増感剤としては、例えば、半導体超微粒子、色素、顔料を用いることができる。無機材料でも有機材料でも、これらの混合物であってもよい。効率よく光を吸収し、電荷を分離する観点からは色素が望ましく、9−フェニルキサンテン系色素、クマリン系色素、アクリジン系色素、トリフェニルメタン系色素、テトラフェニルメタン系色素、キノン系色素、アゾ系色素、インジゴ系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素などが挙げられる。または、RuL2(H2O)2タイプのルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体(ここで、Lは4,4’−ジカルボキシル−2,2’−ビピリジンを示す。)、または、ルテニウム−トリス(RuL3)、ルテニウム−ビス(RuL2)、オスニウム−トリス(OsL3)、オスニウム−ビス(OsL2)などのタイプの遷移金属錯体、または亜鉛−テトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン、鉄−ヘキサシアニド錯体、フタロシアニンなどが挙げられる。その他、例えば、「FPD・DSSC・光メモリーと機能性色素の最新技術と材料開発」((株)エヌ・ティー・エス)のDSSCの章に記載されている色素も適用することができる。それらの中でも、会合性を有する色素は、密に凝集して半導体の表面を覆い、絶縁体層として機能することがある。光増感剤が絶縁体層として機能すると、電荷分離界面(光増感剤と半導体との界面)に整流性を付与することができ、電荷分離後の電荷の再結合を抑制することができる。
会合性を有する色素としては、[化2]の化学式で示される構造を有する色素分子が望ましく、例えば、[化3]の化学式で示される構造を有する色素分子を例示できる。なお、色素分子が会合体を形成しているか否かは、有機溶剤などに溶解している色素分子の吸収スペクトルと、半導体上に担持されている色素分子の吸収スペクトルとを比較することによって、容易に判別できる。
Figure 0006415380
(但し、X1、X2は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基およびヘテロ環からなる群から選ばれる少なくとも1種類の基を含み、また、前記少なくとも1種類の基は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。X2は、例えば、カルボキシル基、スルホニル基、または、ホスホニル基を有する。)
Figure 0006415380
また、光増感剤として用いることができる半導体超微粒子としては、硫化カドミウム、硫化鉛、硫化銀などの硫化物半導体の超微粒子を挙げることができる。半導体超微粒子の直径は、例えば、1nm〜10nmである。
光増感剤は、公知の種々の方法で半導体に担持させられる。例えば、光増感剤を溶解あるいは分散させた溶液に、半導体層(例えば、光増感剤を含まない多孔質半導体)を形成した基板を浸漬させる方法が挙げられる。この溶液の溶媒としては、水、アルコール、トルエン、ジメチルホルムアミドなど光増感剤を溶解可能なものを適宜選択して用いればよい。また、光増感剤の溶液に浸漬させている間に、加熱したり、超音波を印加したりしてもよい。また、浸漬後、溶媒(例えばアルコール)での洗浄、および/または加熱を行うことによって、余剰の光増感剤を除去してもよい。
半導体層16における光増感剤の担持量は、例えば、1×10-10〜1×10-4mol/cm2の範囲内であり、光電変換効率およびコストの観点から、例えば、0.1×10-8〜9.0×10-6mol/cm2の範囲が望ましい。なお、上述のCdS、ZnS、In23、PbS、Mo2S、WS2、Sb23、Bi23、ZnCdS2、Cu2S、InP、Cu2O、CuO、CdSeは、波長が350nm〜1300nm程度の光を吸収することができるので、これらを用いて半導体層16を形成する場合には、光増感剤はなくともよい。
<対極>
対極35は、光電変換素子100の正極として機能する。対極35を形成する材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属、グラファイト、カーボンナノチューブ、白金を担持したカーボン等の炭素材料、インジウム−錫複合酸化物、アンチモンをドープした酸化錫、フッ素をドープした酸化錫等の導電性金属酸化物、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などを挙げることができる。これらのうち、白金、グラファイト、ポリエチレンジオキシチオフェンなどが望ましい。
なお、図1に示すように、対極35は、基板52側に透明導電層34を有してもよい。透明導電層34は、光アノード15が有する導電層14と同じ材料から形成することができる。この場合、対極35も透明であることが望ましく、対極35が透明であれば、基板52側、基板12側の何れからでも受光することができる。これは、反射光等の影響によって光電変換素子100の表裏面両側から光照射が期待される場合に有効である。
<電解液>
電解液22は、電解質溶液またはイオン液体である。電解液22は、ニトロキシルラジカルを有する化合物と、0.2mol/L以上5mol/L以下のジメチルイミダゾリウムカチオンと、アニオンとを含む。これらを含むものであれば、適宜、支持電解質(支持塩)と溶媒とを含んでもよい。
電解液22に含まれる、ニトロキシルラジカルを有する化合物以外のメディエータ(例えば、ヨウ素やコバルト錯体)の濃度は、0.001mol/Lを超えない。このとき、ニトロキシルラジカルを有する化合物の濃度は例えば、200mol/L以上である。電解液22に含まれる実質的なメディエータは、ニトロキシルラジカルを有する化合物のみであってよい。ニトロキシルラジカルを含有する化合物は、例えば、TEMPOである。
ここでいう「実質的な」とは、他のメディエータをほとんど含有せず、ニトロキシルラジカルを有する化合物自体が、その酸化還元の主な役割を示しているということを意味する。また、酸化還元の主な役割を示していることは、電解液のサイクリックボルタモグラムを測定することによって観察される酸化か還元の波形において、ニトロキシルラジカルを有する化合物に起因するCV容量が、そのほかのメディエータ成分と比較して、10倍以上であることを意味する。
ニトロキシルラジカルは下記の化学式[化4]で示されるものであり、繰り返し安定な酸化還元能を有し、ニトロキシルラジカルと、オキソアンモニウムカチオンの状態を可逆にとる化合物である。ニトロキシルラジカルを有する化合物は電解液中に存在することによって、メディエータとしての機能を発現する。これらをメディエータとした光電変換素子は、高い電圧を示すことが知られている。
Figure 0006415380
イミダゾリウムカチオンは、下記の化学式[化5]で示される化合物である。
Figure 0006415380
ここで、R1およびR2は、それぞれ独立にアルキル基を示す。R1およびR2は、それぞれ独立に炭素数が2以下のアルキル鎖であることが望ましく、メチル基であることがより望ましい。
イミダゾリウムカチオンの対アニオンとして電解液に含まれるアニオンは、例えば、ハロゲンアニオン、ハロゲンホウ素系アニオン、ハロゲンリン系アニオン、炭化フッ素アニオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオンである。ハロゲンアニオンとしては、例えば、塩化物イオンや臭化物イオンがあげられる。ハロゲンホウ素系アニオンとしては、例えば、BF4-(テトラフルオロホウ酸アニオン)、ハロゲンリン系アニオンとしては、例えば、PF6-(ヘキサフルオロリン酸アニオン)を挙げることができる。炭化フッ素アニオンとしては、例えば、TFSI-(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、BETI-(ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド)およびトリフルオロメタンアニオンを挙げることができる。
これらの中でも耐熱性の観点から、フッ化アルキル系アニオンが望ましく、その中でもTFSI-およびBETI-が望ましい。これらが対アニオンである場合には、イミダゾリウムカチオンとの組合せが、常温で液体(イオン液体)を形成し、不揮発性の電解液を構成することが可能である。TFSI-の化学式を[化6]に示す。
Figure 0006415380
以上のような特性を有するイミダゾリウムカチオンは、ニトロキシルラジカルを有する化合物がメディエータとして働く電解液中に存在することによって、光照射時に発生するオキソアンモニウムカチオンの安定性を増加させることが分かっている。TEMPOの酸化還元電位に対するイミダゾリウムカチオン(「EMIm」と表記)の添加効果を以下に示す。
LiTFSI中でのTEMPOの酸化還元電位: +0.71V(vs.Ag/Ag+
EMImTFSI中でのTEMPOの酸化還元電位: +0.69V(vs.Ag/Ag+
上記の様に、イミダゾリウム塩を添加することによって、TEMPO+(オキソアンモニウムカチオン)の酸化還元電位は、卑側にシフトしている。
このことから、イミダゾリウムカチオンの添加による光電変換素子の耐久性の向上効果は、以下の様に考えられる。なお、以下は、本発明者らによる考察であり、本開示を限定するものではない。
TEMPOをメディエータとして含む電解液を用いた、従来の光電変換素子の耐久性が劣っていた原因は、TEMPOが正孔を受け取った状態であるTEMPOカチオンの高い酸化力にあり、イミダゾリウムカチオンの添加によって、TEMPOカチオンの酸化力が低下することによって、耐久性を向上させることができたと考えられる。
後に実験例を示すように、ジメチルイミダゾリウムカチオンの濃度は、0.2mol/L以上が望ましく、2mol/L以上がより望ましい。上限は電解液を全てジメチルイミダゾリウム塩によって構成した場合(すなわち、イオン液体とした場合)の濃度であり、通常5mol/L程度である。
支持電解質としては、例えば過塩素酸テトラブチルアンモニウム、六フッ化リン酸テトラエチルアンモニウム、イミダゾリウム塩やピリジニウム塩などのアンモニウム塩、過塩素酸リチウムや四フッ化ホウ素カリウムなどアルカリ金属塩などが挙げられる。
溶媒は、イオン伝導性に優れるものが望ましい。溶媒は、水系溶媒および有機溶媒のいずれも使用できるが、溶質をより安定化するため、有機溶媒が望ましい。例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン等のエステル化合物、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドロフラン等のエーテル化合物、3−メチル−2−オキサゾリジノン、2−メチルピロリドン等の複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル化合物、スルフォラン、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性化合物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いることもでき、また、2種類以上を混合して用いることもできる。中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネ−ト化合物、γ―ブチロラクトン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、2−メチルピロリドン等の複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、吉草酸ニトリル等のニトリル化合物が望ましい。
また、溶媒として、イミダゾリウム塩イオン液体と混和するイオン液体を用いる、もしくはそのようなイオン液体を上記溶媒に混合してもよい。イオン液体は、揮発性が低く、難燃性が高いという特徴を有している。
イオン液体としては、公知のイオン液体全般を用いることができるが、例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートなどイミダゾリウム系、ピリジン系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系、アゾニウムアミン系のイオン液体や、欧州特許第718288号明細書、国際公開第95/18456号、電気化学第65巻11号923頁(1997年)、J. Electrochem. Soc.143巻,10号,3099頁(1996年)、Inorg. Chem. 35巻,1168頁(1996年)に記載されたものを挙げることができる。
本開示の光電変換素子において、電解液が封止されている領域は、短辺の長さが50mmを超えない矩形の領域であることが望ましい。ここで、光電変換素子の基本単位をセルと呼び、セルを必要枚配列してパッケージ化したものをモジュールと呼び、さらに、モジュールを複数枚並べて接続したものをアレイと呼ぶことにする。本開示の光電変換素子は、セル、モジュールおよびアレイのいずれの形態をもとり得る。このとき、電解液が封止されている領域は、光電変換素子の基本単位であるセルに対応する。すなわち、本開示における光電変化素子が矩形のセルを有する場合、セルの短辺の長さは50mm以下であることが望ましく、30mm以下であることがさらに望ましい。セルの短辺の長さが50mmを超えると、イミダゾリウム塩の粘度が高いためにセル内部へ十分に電解液が侵入しにくくなり、セルの製造の歩留まりが低下することがある。
(第2の実施形態)
図2に、本開示の第2の実施形態による光電変換素子150の構造を模式的に示す。第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、その説明を省略する。第2の実施形態の光電変換素子150は、光アノード65と、対極35と、光アノード65と対極35との間に配置された電解液22とを有する。光アノード65は、基板62に支持されている。光電変換素子150の構成は、基板62が凹部を有し、シール部66によって凹部内に電解液22が封止されている点において、第1の実施形態の光電変換素子100の構成と異なっており、他の構成は第1の実施形態の光電変換素子100の構成と同じである。
電解液22は、メディエータとして、ニトロキシルラジカルを含有する化合物を含む。ニトロキシルラジカルを含有する化合物は、例えば、TEMPO又はTEMPOの誘導体の何れかであるラジカル化合物(以下、TEMPOを含有するラジカル化合物と呼ぶ場合がある)であってもよい。電解液22は、例えば、ラジカル化合物の酸化体(オキソアンモニウムカチオン)を含まない、あるいは、の酸化体を含む場合であっても、ラジカル化合物および酸化体の総量に対する酸化体のモル比率が5%を超えない。電解液22に含まれるラジカル化合物の濃度は50mmol/L(50mM)を超えないことが望ましく、30mmol/L(30mM)を超えないことがさらに望ましい。ラジカル化合物の濃度が高くなると、電解液22の粘度が増加し、ラジカル化合物の拡散速度が小さくなり、その結果、電流値が低下することがある。
ラジカル化合物がTEMPOのとき、酸化体はTEMPO+であり、それぞれのモル濃度(mol/L)を[TEMPO]および[TEMPO+]で表すと、酸化体のモル比率は、下記式で表される。
酸化体モル比率=[TEMPO+]/([TEMPO]+[TEMPO+])
なお、TEMPOを含有するラジカル化合物は、例えば、TEMPOであり、この他、TEMPOの一部に官能基を付加した化合物を含む。官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基およびシアノ基を例示することができる。なお、ラジカル化合物の分子量は200未満であることが望ましい。ラジカル化合物の分子量が200以上であると、光アノード65の半導体層内に十分に拡散できないことがある。
電解液22は、シール部66によって、光アノード65と対極35との間に封止されている。光アノード65と対極35との距離dは30μmを超えないように調整されている。このように、TEMPOを含有するラジカル化合物を含み、酸化体を含んだとしてもそのモル比率が、ラジカル化合物および酸化体の総量に対して5%を超えない電解液を用い、光アノード65と対極35との距離d(「セルギャップ」ということがある。)が30μmを超えない構成を採用することによって、高い変換効率を有する光電変換素子を得ることができる。セルギャップdの下限値は特に限定されず、光アノード65と対極35とが接触しなければよく、例えば、1μm以上である。
セルギャップdは、シール部66を樹脂を含むシール材で形成する際のプロセス条件を制御することによって調整され得る。シール材としては、例えば、熱融着フィルムや、硬化性樹脂を用いることができる。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂を用いることができる。さらに、これらの樹脂に、必要に応じて、ギャップ材(または、スペーサと呼ばれる。)を混合してもよい。
セルギャップdを30μm以下とするために、例えば、図2に示すように、凹部を有する基板62を用いることができる。凹部の深さは、例えば、10μm以上である。光アノード65の厚さおよびシール部66の厚さ等に応じて適宜設定され得る。
本実施形態の光電変換素子150は、電解液22が、0.2mol/L以上5mol/L以下のジメチルイミダゾリウムカチオンと、アニオンと、TEMPO又はその誘導体の何れかであるラジカル化合物と、を含む。電解液22において、ラジカル化合物の酸化体がさらに含まれる場合であっても、ラジカル化合物および酸化体の総量に対する酸化体のモル比率が5%を超えない。更に、光アノード65と対極35との距離が30μmを超えない。この構成により、高い短絡電流値とFF値を得ることができる。
(第3の実施形態)
図3に、本開示の第3実施形態による光電変換素子200模式的な断面図を示す。第2の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、その説明を省略する。第3の実施形態の光電変換素子200は、光アノード115と、対極135と、光アノード115と対極135との間に配置された電解液22とを有する。光アノード115は、基板112に支持されており、対極135は、基板152に支持されている。光電変換素子200の構成は、基板152が凸部を有し、基板112の凹部内に、その凸部の一部が挿入されている点において、第2の実施形態の光電変換素子150の構成と異なっており、他の構成は第2の実施形態の光電変換素子150の構成と同じである。なお、当然のことながら、光アノード115と対極135とは互いに電気的に絶縁されている。例えば、セパレータを光アノード115と対極135との間に挿入される。また、基板152の凸部の幅を小さくしてもよく、種々に改変され得る。
本開示の実施形態による光電変換素子は、上記の例に限られない。光アノードおよび対極を支持する2枚の基板の電解液側の表面は平坦であってもよい。このとき、シール部を形成するシール材として、樹脂にギャップ材を混合したものを用いることによって、セルギャップdを制御することができる。
このように、TEMPOを含有するラジカル化合物を含み、酸化体を含んだとしてもそのモル比率が、ラジカル化合物および酸化体の総量に対して5%を超えない電解液を用い、セルギャップdが30μmを超えない構成を採用することによって、高い変換効率を有する光電変換素子を得ることができる。この理由は、以下のように考えられる。なお、以下の説明は、本発明者らの考察であり、本開示を限定するものではない。
色素増感太陽電池においては、一般に、光アノードに光が照射されると、電解液の光アノード付近ではメディエータの還元体が酸化体になる反応が起こり、対極側では酸化体が還元体になる酸化還元反応が起こる。ここで、電解液中に酸化体が存在せず還元体のみが存在する場合、対極側において酸化体が欠乏しその反応が抑制され、電流値の低下を招くものと言われている。一方、TEMPOは、早い自己電子交換反応と早い電極反応速度を有し、電解液中において、その拡散性の速さからすばやく移動し、また極少量でも効率的に電極反応(正孔授受反応)を行えることが知られている。
これらのことから、TEMPOを含みTEMPOの酸化体を含まない電解液を用いても、セルギャップdが十分に小さければ、光アノード側で生成したTEMPOの酸化体が対極側に速やかに拡散し、対極との間で、効率的に電極反応が起こる結果、上記のような効果が得られたものと考えられる。
また、本開示の光電変換素子において、電解液が封止されている領域は、短辺の長さが50mmを超えない矩形の領域であることが望ましい。ここで、光電変換素子の基本単位をセルと呼び、セルを必要枚配列してパッケージ化したものをモジュールと呼び、さらに、モジュールを複数枚並べて接続したものをアレイと呼ぶことにする。本開示の光電変換素子は、セル、モジュールおよびアレイのいずれの形態をもとり得る。このとき、電解液が封止されている領域は、光電変換素子の基本単位であるセルに対応する。すなわち、本開示における光電変換素子が矩形のセルを有する場合、セルの短辺の長さは50mm以下であることが望ましく、30mm以下であることがさらに望ましい。セルの短辺の長さが50mmを超えると、セルの面積に対してセルギャップを小さくしても、電流値が直線的に増加せず、飽和する現象が起こることがある。セルの面積が小さければ、面積に対して十分な出力を得ることができ、高い電流値を得ることができる。電流をセルの短辺に沿って取り出すように構成すれば、セルの長辺の長さは電流値に影響しない。
以下、本開示を実施例によって具体的に説明する。実施例2、実験例1、3〜7および比較例1〜9の光電変換素子を作製し、特性を評価した。電解液の組成および評価結果を表1にまとめて示す。
[実験例1]
電解液を除き、図1に示した光電変換素子100と実質的に同じ構造を有する光電変換素子を作製した。各構成要素は、以下の通りである。
基板12:ガラス基板 厚さ1mm
透明導電膜14:フッ素ドープSnO2層(表面抵抗10Ω/cm2
半導体層16:多孔質酸化チタン、光増感色素(D358、三菱製紙製)
電解液:エチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにTEMPOを溶解した電解液
基板52:ガラス基板 厚さ1mm
酸化物導電層34:フッ素ドープSnO2層(表面抵抗10Ω/cm2
金属層36:白金層
実験例1の光電変換素子は、以下のようにして作製した。
フッ素ドープSnO2層を有する厚さ1mmの導電性ガラス基板(旭硝子製)を2枚用意した。これらを、透明導電層を有する基板および酸化物導電層を有する基板として用いた。
平均1次粒子径が20nmの高純度酸化チタン粉末をエチルセルロース中に分散させ、スクリーン印刷用のペーストを作製した。
一方の導電性ガラス基板のフッ素ドープSnO2層上にスパッタ法により厚さが約10nm厚の酸化チタン層を形成した後、この上に上記のペーストを塗布して乾燥し、得られた乾燥物を500℃で30分間、空気中で焼成することによって、厚さが2μmの多孔質酸化チタン層(チタンコート)を形成した。
次に、多孔質酸化チタン層を形成した基板を、下記の化学式[化7]で示される光増感色素(D358(三菱製紙製))の濃度が0.3mMであるアセトニトリル−ブタノール1:1混合溶媒溶液中に浸漬し、室温で16時間暗所下静置し、多孔質酸化チタン層に光増感剤を担持させた。このようにして、光アノードを形成した。
Figure 0006415380
他方のガラス基板の酸化物導電層上に、スパッタ法によって白金を堆積することにより対極を形成した。
次に、光アノードの多孔質酸化チタン層が形成された部分を囲むように、熱溶融性接着剤(三井デュポンポリケミカル製「バイネル」)の封止材を2つの導電部を有するガラス基板の上に配置し、その上に光アノードを形成したガラス基板を重ね、加熱しながら加圧して貼り合わせた。この対極を形成したガラス基板にはダイヤモンドドリルで孔をあけておいた。
次に、エチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに0.01mol/L TEMPOを溶解した電解液を調製し、この電解液を上記の孔から注入し、実験例1の光電変換素子を得た。
この光電変換素子を、安定化蛍光灯を用いて200lxの照度の光を照射し、電流−電圧特性を測定して安定化後の変換効率を求めた。尚、本測定環境は太陽光に対しては約500分の1ではあるが、当然、太陽光下でも適用でき、用途を限定するものではない。結果を表1に示す。
また、この光電変換素子の耐久性(耐熱性)は、85℃で100時間保管後の変換効率を測定し、下記の式で求められる維持率によって評価した(JISC 8938準拠)。
(維持率)=(初期の変換効率)/(85℃、100時間保管後の変換効率)
(実施例2、実験例3〜7および比較例1〜9)
実験例1の光電変換素子における電解液を変更することによって、実施例2、実験例3〜7および比較例1〜9の光電変換素子を得た。これらの光電変換素子の製造方法は、実験例1と同じである。電解液の組成と特性を評価した結果を表1に示す。
Figure 0006415380
実施例2および実験例1、3〜7の結果からわかるように、イミダゾリウムカチオンを0.2mol/L以上含む電解液を用いた光電変換素子は、初期電圧および耐久性に優れている。特に、ジメチルイミダゾリウムカチオンを含む電解液を用いた実施例2は初期電圧および耐久性に優れている。イミダゾリウム塩を含まない電解液を用いた比較例1および2、および、イミダゾリウム塩の濃度が0.2mol/L未満の電解液を用いた比較例3の光電変換素子では、いずれも維持率の低下が大きく、耐久性が劣っている。
また、実施例2および実験例1、3〜4のイオン液体を構成しているもの(濃度がほぼ5mol/L)の維持率が高いこと、その中でも、アニオンがTFSI-のものの維持率が高いことがわかる。また、実験例1、5と、実験例6、7との比較から、イミダゾリウムカチオンの濃度が2mol/L以上であることが維持率の観点から望ましいことがわかる。また、実施例2、実験例1および3の比較から、イミダゾリウムカチオンが有するアルキル鎖の炭素数が小さいほど、維持率が高いことがわかる。
本開示の光電変換素子は、例えば、屋内等の照度の比較的低い環境においても発電することができる色素増感型発電素子として利用することができる。
12 基板
14 透明導電層
15 光アノード
16 光増感剤を含む半導体層
22 電解液
34 酸化物導電層(透明導電層)
35 対極
36 金属層(白金層)
52 基板
100 光電変換素子

Claims (12)

  1. 光アノードと、
    対極と、
    前記光アノードと前記対極との間に設けられ、ニトロキシルラジカルを有する化合物と、0.2mol/L以上5mol/L以下のジメチルイミダゾリウムカチオンと、アニオンとを含む電解液と
    を備え、
    前記ジメチルイミダゾリウムカチオンは、下記の化学式[化1]で表され、
    Figure 0006415380
    前記化学式[化1]中のR1およびR2は、それぞれ独立にメチル基である光電変換素子。
  2. 前記電解液に含まれる、前記ニトロキシルラジカルを有する化合物以外のメディエータの濃度は、0.001mol/Lを超えない、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記アニオンは、ハロゲンアニオン、ハロゲンホウ素系アニオン、ハロゲンリン系アニオン、炭化フッ素アニオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオンである、請求項1または2に記載の光電変換素子。
  4. 前記アニオンは、アルキルフッ素系のアニオンである、請求項3に記載の光電変換素子。
  5. 前記アルキルフッ素系のアニオンは、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンである、請求項4に記載の光電変換素子。
  6. 前記ニトロキシルラジカルを有する化合物は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルである、請求項1から5のいずれかに記載の光電変換素子。
  7. 前記ニトロキシルラジカルを有する化合物は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル又はその誘導体の何れかであるラジカル化合物であり、
    前記電解液において、前記ラジカル化合物の酸化体がさらに含まれる場合であっても、前記ラジカル化合物および前記酸化体の総量に対する前記酸化体のモル比率が5%を超えず、
    前記光アノードと前記対極との距離が30μmを超えない、請求項1から6のいずれかに記載の光電変換素子。
  8. 前記電解液に含まれる前記ラジカル化合物の濃度は、50mmol/Lを超えない、請求項7に記載の光電変換素子。
  9. 前記電解液において、前記ラジカル化合物の酸化体がさらに含まれる場合であっても、前記ラジカル化合物および前記酸化体の総量に対する前記酸化体のモル比率が1%を超えない、請求項7または8に記載の光電変換素子。
  10. 前記光アノードが形成された第1基板および前記対極が形成された第2基板をさらに有し、
    前記電解液は、前記第1基板と第2基板との間に、樹脂を含むシール部によって封止されている、請求項7から9のいずれかに記載の光電変換素子。
  11. 前記第1基板または前記第2基板の少なくとも一方は、10μm以上の深さを有する凹部、または、10μm以上の高さを有する凸部を有している、請求項10に記載の光電変換素子。
  12. 前記電解液が封止されている領域は、短辺の長さが50mmを超えない矩形の領域である、請求項10または11に記載の光電変換素子。
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