JP2016194124A - ニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ニッケル及びコバルトを含有し、鉄濃度が高い硫酸酸性溶液を硫化反応始液として処理する場合であっても、コストを増加させることなく、硫化反応終液中のニッケル及びコバルトの濃度を低い水準で安定させ、ニッケル及びコバルトの回収率の低下を抑えることができるニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法は、ニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液に硫化水素ガスを吹き込むことによって硫化反応を生じさせて混合硫化物を得る方法であって、硫化反応始液である硫酸酸性溶液は1.0〜4.0g/Lの割合で鉄を含有し、その硫化反応始液に対して、硫化水素ガスを吹き込むとともに、硫化反応により生じた硫化水素ガスを含む排ガスをアルカリ溶液に吸収させて得られる硫化水素ナトリウム(NaHS)を添加して硫化反応を生じさせる。
【選択図】図3
【解決手段】本発明に係るニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法は、ニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液に硫化水素ガスを吹き込むことによって硫化反応を生じさせて混合硫化物を得る方法であって、硫化反応始液である硫酸酸性溶液は1.0〜4.0g/Lの割合で鉄を含有し、その硫化反応始液に対して、硫化水素ガスを吹き込むとともに、硫化反応により生じた硫化水素ガスを含む排ガスをアルカリ溶液に吸収させて得られる硫化水素ナトリウム(NaHS)を添加して硫化反応を生じさせる。
【選択図】図3
Description
本発明は、ニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法に関し、より詳しくは、ニッケル及びコバルトを含有する硫酸酸性溶液から硫化反応によりニッケル及びコバルトの混合硫化物を製造する方法、及びその方法を硫化工程に適用したニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法に関する。
ニッケル酸化鉱石からのニッケルの湿式製錬においては、硫化工程として、ニッケル及びコバルトを含む浸出液を硫化反応始液として用いて加圧下で硫化反応を生じさせ、不純物を分離しながらニッケル及びコバルトの混合硫化物を製造する処理が行われている。このように加圧下で硫化反応を生じさせることにより、特に、亜鉛や銅等の分離が可能であり、実用化されている。
ここで、硫化工程では、主に下記の反応式(i)に示す反応が進行する。反応式(i)に示すように、硫化工程では、反応の進行に伴って溶液中の[H+]イオン濃度が上昇し、反応が進むにつれてpHが低下していく。
H2S + NiSO4 → H2SO4 + NiS ・・(i)
H2S + NiSO4 → H2SO4 + NiS ・・(i)
ところが、反応式(i)の進行によって溶液のpHが下がると、生成したNiSが再溶解するため、反応終点での溶液中のニッケル濃度は上がり、ニッケル回収率が悪化する。したがって、硫化反応始液のpHが低い場合には、終液のpHも低くなり、ニッケル回収率は低下する。
さらに、硫化工程では、他の金属と比較して分離が困難な鉄イオンが増加すると、下記の反応式(ii)に示す反応が促進され、ニッケルの硫化と同様に溶液中の[H+]イオン濃度が上昇して、反応が進むにつれてpHを低下させる。
H2S + FeSO4 → H2SO4 + FeS ・・(ii)
H2S + FeSO4 → H2SO4 + FeS ・・(ii)
硫化反応始液中の鉄濃度と終液中のニッケルイオンとの関係においては、鉄濃度の増加に伴って終液中のニッケルイオンが増加する。つまり、鉄濃度の増加に伴ってニッケル回収率が低下することを意味する。硫化反応始液中の鉄濃度は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法における硫化工程より前の工程の操業パラメーターに依存するため、硫化工程の処理開始時における始液中の鉄濃度は一定ではなく、“ばらついた状態”となる。したがって、この硫化工程において、ニッケル回収率の低下を抑えるために、硫化反応始液中の鉄濃度の“ばらついた状態”に対応することが求められている。
特許文献1には、ニッケル及び/又はコバルトを含む酸性水溶液に硫化アルカリを添加して、ニッケル及び/又はコバルト硫化物を沈殿回収する方法において、S/(Ni+Co)モル比が、硫化水素を用いて生成された硫化物なみの1.05以下、望ましくはNiS、CoSの化学量論組成である1近傍の値に制御した硫化物沈殿の回収方法が開示されている。具体的には、反応容器内を非酸化性ガス雰囲気下とした後に、水溶液に硫化アルカリを添加して、酸化還元電位(Ag/AgCl電極規準)を−300mV〜100mVに保持しながら硫化物を沈殿生成させる方法が開示されている。
しかしながら、この特許文献1の方法では、Na2SやNaHS等の硫化アルカリを新たに使用するため、コストの著しい増加を招く。このことから、新たに硫化アルカリを使用することなく、硫化反応始液中の鉄濃度が増加してもニッケル回収率の低下を抑えることができるニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法が求められている。
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、ニッケル及びコバルトを含有し、鉄濃度が高い硫酸酸性溶液を硫化反応始液として処理する場合であっても、コストを増加させることなく、硫化反応終液中のニッケル及びコバルトの濃度を低い水準で安定させ、ニッケル及びコバルトの回収率の低下を抑えることができるニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、1.0〜4.0g/Lの割合で鉄を含有するニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液に対して、硫化水素ガスを吹き込むとともに、硫化反応により生じた硫化水素ガスを含む排ガスをアルカリ溶液に吸収させて得られる硫化水素ナトリウム(NaHS)溶液を繰り返し添加して硫化反応を生じさせることにより、硫化反応終液中のニッケル及びコバルトの濃度を低い水準で安定させ、ニッケル及びコバルトの回収率の低下を抑えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の発明は、ニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液に硫化水素ガスを吹き込むことによって硫化反応を生じさせてニッケル及びコバルトの混合硫化物を得る方法であって、前記硫酸酸性溶液は、1.0〜4.0g/Lの割合で鉄を含有し、前記硫酸酸性溶液に対して、前記硫化水素ガスを吹き込むとともに、前記硫化反応により生じた硫化水素ガスを含む排ガスをアルカリ溶液に吸収させて得られる硫化水素ナトリウムを添加して硫化反応を生じさせることを特徴とするニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記硫化水素ナトリウムの添加量は、前記硫酸酸性溶液に含まれる前記鉄の硫化に必要な当量以上の量であることを特徴とするニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記硫化水素ナトリウムの添加量は、該硫化水素ナトリウムを20〜35質量%の割合で含む溶液を、前記硫酸酸性溶液1000m3/Hに対して1.7〜3.8m3/Hの割合とすることを特徴とするニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記硫化水素ガスの吹き込み量は、前記硫酸酸性溶液に含まれるニッケル及びコバルトを硫化するのに必要な理論当量の1.5〜2.5倍の量とすることを特徴とするニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法である。
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記アルカリ溶液は水酸化ナトリウム溶液であることを特徴とするニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法である。
(6)本発明の第6の発明は、ニッケル酸化鉱石に対して硫酸を用いて浸出処理を施し、得られたニッケル及びコバルトを含む浸出液からニッケル及びコバルトの混合硫化物を生成させるニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法において、前記浸出液に硫化水素ガスを吹き込むことによって硫化反応を生じさせてニッケル及びコバルトの混合硫化物を得る硫化工程を含み、前記浸出液は、1.0〜4.0g/Lの割合で鉄を含有し、前記硫化工程では、前記浸出液に対して、前記硫化水素ガスを吹き込むとともに、前記硫化反応により生じた硫化水素ガスを含む排ガスをアルカリ溶液に吸収させて得られる硫化水素ナトリウムを添加して硫化反応を生じさせることを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法である。
本発明によれば、鉄濃度が高い硫化反応始液を処理する場合であっても、コストを増加させることなく、その硫化反応終液中のニッケル及びコバルトの濃度を低い水準で安定させ、ニッケル及びコバルトの回収率の低下を抑えることができる。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
≪1.ニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法≫
本実施の形態に係るニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法は、ニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液に硫化水素ガスを吹き込むことによって硫化反応を生じさせてニッケル及びコバルトの混合硫化物を得る方法である。ここで、混合硫化物とは、ニッケル硫化物とコバルト硫化物の混合物をいう。以下では、ニッケル及びコバルトの混合硫化物を、単に「混合硫化物」ともいう。
本実施の形態に係るニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法は、ニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液に硫化水素ガスを吹き込むことによって硫化反応を生じさせてニッケル及びコバルトの混合硫化物を得る方法である。ここで、混合硫化物とは、ニッケル硫化物とコバルト硫化物の混合物をいう。以下では、ニッケル及びコバルトの混合硫化物を、単に「混合硫化物」ともいう。
具体的に、この混合硫化物の製造方法は、硫化反応始液であるニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液が1.0〜4.0g/Lの割合で鉄を含有する溶液であって、その硫酸酸性溶液に対して、硫化剤としての硫化水素(H2S)ガスを吹き込むとともに、当該硫化反応により生じた硫化水素ガスを含む排ガスをアルカリ溶液に吸収させて得られる硫化水素ナトリウム(NaHS)を添加して硫化反応を生じさせることを特徴としている。
この混合硫化物の製造方法は、後述するように、例えばニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法における硫化工程での処理に適用することができる。このとき、ニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液としては、ニッケル酸化鉱石に対して硫酸を用いた浸出処理を施して得られた浸出液を用いることができる。なお、後述するように、その浸出処理を経て得られた浸出液に対して中和剤を用いて中和して得られた中和終液を用いてもよい。
ニッケル酸化鉱石には鉄が含まれており、このようなニッケル酸化鉱石に対して浸出処理を経て得られた浸出液には、浸出処理の過程でヘマタイト(Fe2O3)として固定しきれなかった鉄が不純物元素として含まれることになる。また、原料となるニッケル酸化鉱石には植物の根等が混入しているため、ニッケル酸化鉱石中の炭素(C)品位が0.2%を超えると、浸出処理により得られる浸出液のORPが低下して鉄が浸出されるようになり、浸出液中の鉄濃度が1.0g/Lを超えるようになる。なお、この鉄は、浸出液に対して中和処理を施したとしても、他の不純物元素と比べて分離が困難であるため、中和処理を施して得られる中和終液においても所定の濃度で含まれる。
ここで、ニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液を用いて硫化反応により混合硫化物を生成させるにあたって、その硫化反応の重要なパラメーターとして、反応終点のpHが挙げられる。図1は、溶液のpHと各種の金属硫化物の溶解度との関係を示すグラフ図である。図1のグラフ図から、ニッケル硫化物(NiS)、コバルト硫化物(CoS)の溶解度はpHに依存していることが分かる。したがって、pHが高いほど、硫化反応終液中において硫化物の形態が維持され、ニッケルイオン及びコバルトイオンの濃度は低下する。つまり、ニッケル及びコバルトの混合硫化物としての回収率が向上する。
しかしながら、硫化剤として硫化水素ガスを用いた硫化反応においては、下記の反応式(i)の反応が進行することにより、経時的に反応系内のpHが徐々に低下していき、NiSあるいはCoSが溶液中に再溶解していく。
H2S + NiSO4 ⇔ H2SO4 + NiS ・・(i)
H2S + NiSO4 ⇔ H2SO4 + NiS ・・(i)
さらに、硫化反応始液中に含まれる不純物である鉄の濃度が高いほど、図1に示すようにニッケルやコバルトと共に硫化物となり、溶液のpHを低下させ、その結果としてNiSの再溶解を促進させる。図2は、硫化反応始液中の鉄濃度と硫化反応終液中のニッケル濃度との関係を示すグラフ図である。図2に示されるように、硫化反応始液中における鉄濃度が高くなるほど、上述のように溶液のpHを低下させてNiSの再溶解を促進させていき、その結果として、硫化反応終液中におけるニッケル濃度が高くなる傾向が明確に分かる。
そこで、本実施の形態に係る混合硫化物の製造方法においては、濃度が1.0〜4.0g/Lの割合で鉄を含有する、ニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液に対して硫化反応を生じさせ混合硫化物を生成させるにあたり、所定量の硫化水素ガスを吹き込むとともに、当該硫化反応により生じた硫化水素ガスを含む排ガスをアルカリ処理し、そのアルカリ処理により得られる硫化水素ナトリウムを含む溶液(以下、「NaHS溶液」ともいう)を添加して硫化反応を生じさせる。
硫化反応により生じた排ガスをアルカリ処理して得られたNaHS溶液を硫化反応始液に添加することにより、下記の反応式(ii)、(iii)に示す反応が進行し、上述した反応式(i)で示す反応において生成した酸の中和が行われる。このことにより、溶液のpHの低下が抑制されて、終液中のニッケル及びコバルトの濃度を低く維持することができ、ニッケル及びコバルトの回収率を向上させることができる。さらに、反応式(iii)に基づいて硫化反応が促進させることができるとともに、後述のように過剰に添加された硫化水素ガスを再利用することで硫化水素ガスの利用効率を向上させることができる。
2NaHS + H2SO4 → Na2SO4 + 2H2S ・・(ii)
2NaHS + NiSO4
→ Na2SO4 + NiS + H2S ・・(iii)
2NaHS + H2SO4 → Na2SO4 + 2H2S ・・(ii)
2NaHS + NiSO4
→ Na2SO4 + NiS + H2S ・・(iii)
このように、硫化水素ガスを添加して硫化反応を生じさせるとともにNaHS溶液を添加することによって、硫化反応に伴う反応系内におけるpHの低下が抑制され、NiS及びCoSの再溶解を低減させることができる。これにより、高い鉄濃度となった硫化反応始液を処理する場合でも、コストを増加させることなく、硫化反応終液中のニッケル濃度を低い水準で安定させ、混合硫化物としてのニッケル及びコバルトの回収率の低下を抑えることができる。なお、NaHS溶液の添加量としては、硫化反応始液に含まれる鉄の硫化に必要な当量以上の量とする。
本実施の形態において、ニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液に対する硫化水素ガスの吹き込み量としては、所望とする回収率を得るとともに、余剰分を排ガスとしてアルカリ処理に供するようにするために、必要理論当量の1.5〜2.5倍の過剰量を添加する。これにより、反応式(i)に示した、硫化反応始液に含まれるニッケルやコバルトの硫化を生じさせるとともに、その反応式(i)に示す反応で消費されなった余剰の硫化水素ガスが系外へ放出され、アルカリ処理に供されるようになる。
ここで、本実施の形態においては、余剰の硫化水素ガスをアルカリ処理に供することによってNaHSを生成させ、そのNaHSを含む溶液を回収して、硫化反応において繰り返し添加することを特徴としている。
具体的に、図3に、余剰の硫化水素ガスを回収してアルカリ溶液による無害化処理(以下、単に「アルカリ処理」という)に供し、得られたNaHS溶液を硫化反応に供給する流れを模式的に示す。図3に示すように、硫化反応始液10を装入した硫化反応槽1では、硫化水素ガス11が反応槽1の気相に吹き込まれて硫化反応を生じ、ニッケル及びコバルトが硫化物となる。このとき、硫化反応槽1には、硫化水素ガスとして、ニッケルやコバルトの硫化処理に必要な理論当量の1.5〜2.5倍の過剰量が吹き込まれる。硫化反応に使用されなかった余剰の硫化水素ガス11aは、排ガス12として回収され、H2Sガス洗浄塔2にてアルカリ処理が行われる。このアルカリ処理においては、硫化水素ガスをアルカリ溶液に接触させて硫化水素をアルカリ溶液に吸収させる反応が生じ、下記の反応式(iv)に示すようにしてNaHS溶液13が得られる。
NaOH + H2S → NaHS + H2O ・・(iv)
NaOH + H2S → NaHS + H2O ・・(iv)
本実施の形態に係る混合硫化物の製造方法では、このようにして得られたNaHS溶液13を、ポンプ等を用いて、硫化反応槽1に装入された硫化反応始液10に添加することを特徴としている。この方法によれば、繰り返し添加されたNaHS溶液も硫化反応に使用され、その硫化反応に伴う反応系内におけるpHの低下が抑制される。これにより、生成したNiS及びCoSの再溶解が低減され、高い鉄濃度となった硫化反応始液10を処理する場合でも、得られる硫化反応終液14中のニッケル濃度を低い水準で安定させることができる。
硫化反応槽から排出された硫化水素ガスをアルカリ処理して得られるNaHS溶液を硫化反応始液に添加するシステムとしては、特に限定されないが、上述のように図3に示すような循環システムとすることができる。すなわち、余剰となった硫化水素ガス11aを含む排ガス12を、アルカリ溶液を循環させているH2Sガス洗浄塔2においてNaHS溶液13とし、得られた排液であるNaHS溶液13を硫化反応槽1に繰り返すシステムとすることができる。なお、H2Sガス洗浄塔2では、アルカリ溶液と硫化水素ガスとの接触を効率的に行うため、スクラバー等の除害設備を設けることが好ましい。
H2Sガス洗浄塔2におけるアルカリ処理に用いるアルカリ溶液としては、特に限定されないが、工業的にはアルカリ強度が高く、溶液として取り扱いが容易な水酸化ナトリウム(NaOH)溶液を用いることが好ましい。具体的に、水酸化ナトリウム溶液の濃度としては、20〜30質量%程度であることが好ましい。水酸化ナトリウムの濃度が20%未満であると、濃度が薄くなるため水酸化ナトリウム溶液の量が増えてしまう。一方で、濃度が30%を超えると、未反応の水酸化ナトリウムが残留してしまう可能性がある。
このアルカリ処理により得られたNaHS溶液は、例えば20〜35質量%のNaHS溶液である。上述したように、本実施の形態においては、このNaHS溶液を硫化反応槽に繰り返し添加して硫化反応を生じさせるが、その添加量としては、硫化反応始液となるニッケル及びコバルトを含有する硫酸酸性溶液1000m3/Hに対して1.7〜3.8m3/H程度の割合で添加することが好ましい。
NaHSの添加量が、硫酸酸性溶液1000m3/Hに対して1.7m3/H未満であると、所望とする効果であるpHの上昇効果、言い換えるとpH低下の抑制効果が十分に得られない可能性がある。一方で、硫酸酸性溶液1000m3/Hに対して3.8m3/Hを越えると、ニッケルやコバルトの回収率が上がらないばかりか、pHの過剰な上昇によって製品へのFeの混入が促進してしまい、好ましくない。
≪2.ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法での適用≫
本実施の形態に係る混合硫化物の製造方法では、硫化反応始液としてニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液を用い、この溶液に対して硫化水素ガス及びアルカリ処理により得られたNaHS溶液を添加して硫化反応を生じさせる。ここで、ニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液としては、例えば、ニッケル酸化鉱石に対して硫酸により浸出処理を施して得られる浸出液を用いることができ、その浸出液に対して硫化反応を生じさせてニッケル及びコバルトの混合硫化物を得る。
本実施の形態に係る混合硫化物の製造方法では、硫化反応始液としてニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液を用い、この溶液に対して硫化水素ガス及びアルカリ処理により得られたNaHS溶液を添加して硫化反応を生じさせる。ここで、ニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液としては、例えば、ニッケル酸化鉱石に対して硫酸により浸出処理を施して得られる浸出液を用いることができ、その浸出液に対して硫化反応を生じさせてニッケル及びコバルトの混合硫化物を得る。
このように、本実施の形態に係る混合硫化物の製造方法は、ニッケル酸化鉱石からニッケルを回収する湿式製錬方法における硫化工程に適用することができる。
以下では、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法についての概要を説明して、その湿式製錬方法における硫化工程での処理に、上述した混合硫化物の製造方法を適用した具体的な態様について説明する。なお、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法として、高温高圧下で浸出を行う高温加圧酸浸出法(以下、「HPAL法」ともいう)による湿式製錬方法を例に挙げて説明する。
<2−1.ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の各工程について>
図4は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の流れの一例を示した工程図である。図4に示すように、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法は、原料のニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理を施す浸出工程S1と、浸出スラリーから残渣を分離してニッケル及びコバルトを含む浸出液を得る固液分離工程S2と、浸出液のpHを調整して浸出液中の不純物元素を中和澱物スラリーとして分離して中和終液を得る中和工程S3と、中和終液に硫化剤としての硫化水素ガスを添加することでニッケル及びコバルトの混合硫化物を生成させる硫化工程S4とを有する。
図4は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の流れの一例を示した工程図である。図4に示すように、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法は、原料のニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理を施す浸出工程S1と、浸出スラリーから残渣を分離してニッケル及びコバルトを含む浸出液を得る固液分離工程S2と、浸出液のpHを調整して浸出液中の不純物元素を中和澱物スラリーとして分離して中和終液を得る中和工程S3と、中和終液に硫化剤としての硫化水素ガスを添加することでニッケル及びコバルトの混合硫化物を生成させる硫化工程S4とを有する。
(1)浸出工程
浸出工程S1では、オートクレーブ等の高温加圧反応槽を用い、ニッケル酸化鉱石のスラリー(以下、「鉱石スラリー」ともいう)に硫酸を添加して温度230〜270℃程度、圧力3〜5MPa程度の条件下で攪拌し、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを生成する。
浸出工程S1では、オートクレーブ等の高温加圧反応槽を用い、ニッケル酸化鉱石のスラリー(以下、「鉱石スラリー」ともいう)に硫酸を添加して温度230〜270℃程度、圧力3〜5MPa程度の条件下で攪拌し、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを生成する。
ニッケル酸化鉱石としては、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱が挙げられる。ラテライト鉱のニッケル含有量は、通常、0.8〜2.5重量%であり、水酸化物又はケイ酸マグネシウム鉱物として含有される。また、鉄の含有量は、10〜50重量%であり、主として3価の水酸化物の形態であるが、一部2価の鉄がケイ苦土鉱物に含有される。また、浸出工程S1では、このようなラテライト鉱の他に、ニッケル、コバルト、マンガン、銅等の有価金属を含有する酸化鉱石、例えば深海底に賦存するマンガン瘤等を用いることができる。
浸出工程S1における浸出処理では、例えば下記式(a)〜(e)で表される浸出反応と高温熱加水分解反応が生じ、ニッケル、コバルト等の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行われる。ただし、鉄イオンの固定化は完全には進行しないため、通常、得られる浸出スラリーの液部分には、ニッケル、コバルト等の他に2価と3価の鉄イオンが含まれる。なお、この浸出工程S1では、次工程の固液分離工程S2で生成されるヘマタイトを含む浸出残渣の濾過性の観点から、得られる浸出液のpHが0.1〜1.0にとなるように調整することが好ましい。
・浸出反応
MO+H2SO4 ⇒ MSO4+H2O ・・(a)
(なお、式中Mは、Ni、Co、Fe、Zn、Cu、Mg、Cr、Mn等を表す)
2Fe(OH)3+3H2SO4 ⇒ Fe2(SO4)3+6H2O ・・(b)
FeO+H2SO4 ⇒ FeSO4+H2O ・・(c)
・高温熱加水分解反応
2FeSO4+H2SO4+1/2O2 ⇒ Fe2(SO4)3+H2O・・(d)
Fe2(SO4)3+3H2O ⇒ Fe2O3+3H2SO4 ・・(e)
MO+H2SO4 ⇒ MSO4+H2O ・・(a)
(なお、式中Mは、Ni、Co、Fe、Zn、Cu、Mg、Cr、Mn等を表す)
2Fe(OH)3+3H2SO4 ⇒ Fe2(SO4)3+6H2O ・・(b)
FeO+H2SO4 ⇒ FeSO4+H2O ・・(c)
・高温熱加水分解反応
2FeSO4+H2SO4+1/2O2 ⇒ Fe2(SO4)3+H2O・・(d)
Fe2(SO4)3+3H2O ⇒ Fe2O3+3H2SO4 ・・(e)
なお、鉱石スラリーを装入したオートクレーブへの硫酸の添加量としては、特に限定されないが、鉱石中の鉄が浸出されるような過剰量が用いられる。例えば、鉱石1トン当り300〜400kgとする。
(2)固液分離工程
固液分離工程S2では、浸出工程S1で生成した浸出スラリーを多段洗浄して、ニッケルやコバルト等の有価金属を含む浸出液と浸出残渣とを得る。
固液分離工程S2では、浸出工程S1で生成した浸出スラリーを多段洗浄して、ニッケルやコバルト等の有価金属を含む浸出液と浸出残渣とを得る。
固液分離工程S2では、浸出スラリーを洗浄液と混合した後、シックナー等の固液分離装置を用いて固液分離処理を施す。具体的には、先ず、浸出スラリーが洗浄液により希釈され、次に、浸出スラリー中の浸出残渣がシックナーの沈降物として濃縮される。これにより、浸出残渣に付着するニッケル分をその希釈度合に応じて減少させることができる。なお、実操業では、このような機能を持つシックナーを多段に連結して用いることにより、ニッケルの回収率の向上を図ることができる。
(3)中和工程
中和工程S3では、浸出液の酸化を抑制しながら、pHが4以下となるように酸化マグネシウムや炭酸カルシウム等の中和剤を添加して、3価の鉄を含む中和澱物スラリーとニッケル回収用母液である中和終液とを得る。
中和工程S3では、浸出液の酸化を抑制しながら、pHが4以下となるように酸化マグネシウムや炭酸カルシウム等の中和剤を添加して、3価の鉄を含む中和澱物スラリーとニッケル回収用母液である中和終液とを得る。
中和工程S3では、分離された浸出液の酸化を抑制しながら、得られる中和終液のpHが4以下、好ましくは3.0〜3.5、より好ましくは3.1〜3.2になるように、その浸出液に炭酸カルシウム等の中和剤を添加し、ニッケル及びコバルト回収用の母液となる中和終液と、不純物元素として3価の鉄を含む中和澱物スラリーとを形成する。中和工程S3では、このように浸出液に対する中和処理を施すことで、HPAL法による浸出処理で用いた過剰の酸を中和して中和終液と生成するとともに、溶液中に残留する3価の鉄イオンやアルミニウムイオン等の不純物を中和澱物として除去する。
なお、中和終液は、上述したように、浸出工程S1において原料のニッケル酸化鉱石に対して硫酸による浸出処理を施して得られた浸出液に基づく溶液であって、ニッケルを含む硫酸酸性溶液である。この中和終液は、後述する硫化工程S4における硫化反応の反応始液となるものであり、ニッケル濃度がおよそ0.5〜5.0g/Lの範囲である。また、この中和終液中には、ニッケル以外にも有価金属としてコバルトが含まれている。また浄液処理を施して得られた溶液であるとしても、鉄、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、クロム、鉛等が含まれることがある。具体的に、鉄としては、1.0〜4.0g/Lの割合で含まれている。
[硫化工程]
硫化工程S4では、ニッケル及びコバルト回収用母液である中和終液を硫化反応始液として、その硫化反応始液に対して硫化剤としての硫化水素ガスを吹き込むことによって硫化反応を生じさせ、不純物成分の少ないニッケル及びコバルトの混合硫化物と、ニッケル及びコバルトの濃度を低い水準で安定させた貧液である硫化反応終液とを生成させる。
硫化工程S4では、ニッケル及びコバルト回収用母液である中和終液を硫化反応始液として、その硫化反応始液に対して硫化剤としての硫化水素ガスを吹き込むことによって硫化反応を生じさせ、不純物成分の少ないニッケル及びコバルトの混合硫化物と、ニッケル及びコバルトの濃度を低い水準で安定させた貧液である硫化反応終液とを生成させる。
なお、中和終液中に亜鉛が含まれる場合には、硫化物としてニッケルやコバルトを分離するに先立って、亜鉛を硫化物として選択的に分離することができる。
硫化工程S4における硫化処理は、硫化反応槽等を用いて行うことができ、硫化反応槽に導入した硫化反応始液に対して、その反応槽内の気相部分に硫化水素ガスを吹き込み、溶液中に硫化水素ガスを溶解させることで硫化反応を生じさせる。この硫化処理により、硫化反応始液中に含まれるニッケル及びコバルトを混合硫化物として固定化する。
硫化反応の終了後においては、得られたニッケル及びコバルトの混合硫化物を含むスラリーをシックナー等の沈降分離装置に装入して沈降分離処理を施し、その混合硫化物のみをシックナーの底部より分離回収する。一方で、水溶液成分は、シックナーの上部からオーバーフローさせて貧液として回収する。
<2−2.湿式製錬方法の硫化工程について>
ここで、硫化工程S4での処理、つまりニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液である中和終液からニッケル及びコバルトの混合硫化物を生成させる硫化処理においては、その中和終液を硫化反応始液として、上述した混合硫化物の製造方法を適用できる。
ここで、硫化工程S4での処理、つまりニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液である中和終液からニッケル及びコバルトの混合硫化物を生成させる硫化処理においては、その中和終液を硫化反応始液として、上述した混合硫化物の製造方法を適用できる。
すなわち、本実施の形態における硫化工程S4では、ニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液であって鉄濃度が1.0〜4.0g/Lである中和終液に対して、硫化水素ガスを吹き込むとともに、当該硫化反応により生じた硫化水素ガスを含む排ガスをアルカリ溶液に吸収させて得られるNaHSの溶液を添加して、硫化反応を生じさせる。
具体的な硫化処理の方法については上述したニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略するが、本実施の形態においては、硫化水素ガスとしてニッケルやコバルトの硫化処理に必要な理論当量の1.5〜2.5倍の過剰量が吹き込まれ、硫化反応に使用されなかった余剰の硫化水素ガスがアルカリ処理によりアルカリ溶液と接触してNaHSとなる。このようにして余剰の硫化水素ガスをアルカリ処理して得られたNaHSを含む溶液を、硫化反応に繰り返し使用する。
本実施の形態においては、このようにして、硫化水素ガスを添加して硫化反応を生じさせるとともにNaHS溶液を添加することによって、硫化反応に伴う反応系内におけるpHの低下が抑制され、NiS及びCoSの再溶解が低減する。このことにより、高い鉄濃度となった硫化反応始液を処理する場合でも、コストを増加させることなく、ニッケル及びコバルトの混合硫化物としての回収率の低下を効果的に抑えることができる。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
ニッケル濃度が1.0〜3.0g/L、コバルト濃度が1.0〜3.0g/L、鉄濃度が1.0〜2.0g/Lである硫酸酸性溶液を硫化反応始液として用いて、それを硫化反応槽に装入し、硫化水素ガスを吹き込みながら硫化反応を生じさせた。
ニッケル濃度が1.0〜3.0g/L、コバルト濃度が1.0〜3.0g/L、鉄濃度が1.0〜2.0g/Lである硫酸酸性溶液を硫化反応始液として用いて、それを硫化反応槽に装入し、硫化水素ガスを吹き込みながら硫化反応を生じさせた。
このとき、硫化水素ガスの吹き込み量は0.30〜0.85Nm3/kg・Niとし、また硫化水素ナトリウム(NaHS)を含む溶液をその硫酸酸性溶液に添加した。NaHS溶液の添加量は、硫酸酸性溶液1000m3/Hに対して1.7〜3.8m3/Hの割合とした。なお、このNaHSは、硫化反応により生じた余剰の硫化水素ガスを含む排ガスを水酸化ナトリウム溶液と接触させて得られたものであり、これを繰り返し硫化反応槽内の硫酸酸性溶液に添加した。
このようにして硫化反応を施すことによって、硫化反応始液である硫酸酸性溶液中のニッケル及びコバルトをそれぞれ硫化物とした混合硫化物を得た。得られた混合硫化物を、シックナーを用いた沈降分離処理によって水溶液成分と分離した後、その水溶液成分である硫化反応終液中のニッケル濃度を分析した。
その結果、硫化反応終液中のニッケル濃度は0.10g/L未満となり、低い水準で安定化させることができた。
[比較例1]
実施例1と同じ、ニッケル及びコバルトを含み、また1.0〜2.0g/Lの割合で鉄を含有する硫酸酸性溶液を硫化反応始液として用いて、硫化反応を生じさせた。
実施例1と同じ、ニッケル及びコバルトを含み、また1.0〜2.0g/Lの割合で鉄を含有する硫酸酸性溶液を硫化反応始液として用いて、硫化反応を生じさせた。
このとき、比較例1では、硫化水素ガスを吹き込むとともに、硫酸酸性溶液中にNaHS液を硫酸酸性溶液1000m3/Hに対して1.0〜1.5m3/Hの割合で添加した。なお、このNaHSも、硫化反応により生じた余剰の硫化水素ガスを含む排ガスを水酸化ナトリウム溶液と接触させて得られたものを用いた。
このようにして硫化反応を施すことによって、硫化反応始液である硫酸酸性溶液中のニッケル及びコバルトをそれぞれ硫化物とした混合硫化物を得た。得られた混合硫化物を、シックナーを用いた沈降分離処理によって水溶液成分と分離した後、その水溶液成分である硫化反応終液中のニッケル濃度を分析した。
その結果、硫化反応終液中のニッケル濃度は0.10g/Lを超え、ニッケル濃度が高くなってしまった。このことは、溶液のpHの低下を抑制させることができず、生成したNiSの再溶解が促進してしまったためであると考えられる。
1 硫化反応槽
2 H2Sガス洗浄塔
10 硫化反応始液
11 硫化水素ガス
11a 余剰の硫化水素ガス
12 排ガス
13 NaHS溶液
14 硫化反応終液
2 H2Sガス洗浄塔
10 硫化反応始液
11 硫化水素ガス
11a 余剰の硫化水素ガス
12 排ガス
13 NaHS溶液
14 硫化反応終液
Claims (6)
- ニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液に硫化水素ガスを吹き込むことによって硫化反応を生じさせてニッケル及びコバルトの混合硫化物を得る方法であって、
前記硫酸酸性溶液は、1.0〜4.0g/Lの割合で鉄を含有し、
前記硫酸酸性溶液に対して、前記硫化水素ガスを吹き込むとともに、前記硫化反応により生じた硫化水素ガスを含む排ガスをアルカリ溶液に吸収させて得られる硫化水素ナトリウム(NaHS)を添加して硫化反応を生じさせる
ことを特徴とするニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法。 - 前記硫化水素ナトリウムの添加量は、前記硫酸酸性溶液に含まれる前記鉄の硫化に必要な当量以上の量であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法。
- 前記硫化水素ナトリウムの添加量は、該硫化水素ナトリウムを20〜35質量%の割合で含む溶液を、前記硫酸酸性溶液1000m3/Hに対して1.7〜3.8m3/Hの割合とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法。
- 前記硫化水素ガスの吹き込み量は、前記硫酸酸性溶液に含まれるニッケル及びコバルトを硫化するのに必要な理論当量の1.5〜2.5倍の量とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法。
- 前記アルカリ溶液は水酸化ナトリウム溶液であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のニッケル及びコバルトの混合硫化物の製造方法。
- ニッケル酸化鉱石に対して硫酸を用いて浸出処理を施し、得られたニッケル及びコバルトを含む浸出液からニッケル及びコバルトの混合硫化物を生成させるニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法において、
前記浸出液に硫化水素ガスを吹き込むことによって硫化反応を生じさせてニッケル及びコバルトの混合硫化物を得る硫化工程を含み、
前記浸出液は、1.0〜4.0g/Lの割合で鉄を含有し、
前記硫化工程では、前記浸出液に対して、前記硫化水素ガスを吹き込むとともに、前記硫化反応により生じた硫化水素ガスを含む排ガスをアルカリ溶液に吸収させて得られる硫化水素ナトリウム(NaHS)を添加して硫化反応を生じさせる
ことを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
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