JP2016159498A - 部材、該部材を備えたタッチパネル、及び該タッチパネルを備えた画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
Description
したがって、上記物品の表面には、汚れの付着防止性や汚れの拭き取りやすさといった特性(防汚性)を付与することが必要となる。
そこで、物品表面に防汚性あるいは撥水性のある薄膜を形成することが種々検討されている。
また、特許文献2には、固体表面に有機シランと金属アルコキシドとを加水分解、縮重合させて形成させた有機‐無機ハイブリット皮膜が開示されている。
また、特許文献2に記載の皮膜は、有機シランと共に金属アルコキシドを用いることにより、従来の有機シラン単独で形成した薄膜と比較して、該皮膜表面の液滴の滑落性を改善させているものの、アルキルシランを用いた場合には表面自由エネルギーが十分に低下しないことや、パーフルオロアルキルシランを用いた場合にはパーフルオロアルキル基が剛直であることから、汚れの付着防止や拭き取りに対する効果は十分なものではなかった。
しかしながら、上述したような従来の防汚部材では、実際に指で圧力をかけながら触れつつ指紋を付着させるという、タッチパネル特有の指紋付着問題の解決には不十分であった。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
[1]基材上に防汚層を形成してなる部材であって、該防汚層は、パーフルオロ構造及びシロキサン構造を含有する海島構造からなり、該防汚層表面の高さ分布曲線の頻度のピーク値を示す高さHと、該高さ分布曲線の頻度のピーク値の1/2を示す高さのうち標高が低い側の高さH1/2Lとが、下記式(I)の関係を満たす、部材。
H−H1/2L≦2.5nm (I)
[2]前記高さ分布曲線の頻度のピーク値を示す高さHと、該高さ分布曲線の頻度のピーク値の1/2を示す高さのうち標高が高い側の高さH1/2Hとが、下記式(II)の関係を満たす、上記[1]に記載の部材。
H1/2H−H≦3.0nm (II)
[3]前記高さ分布曲線の頻度のピーク値を示す高さHと、該高さ分布曲線の頻度のピーク値の1/3を示す高さのうち標高が低い側の高さH1/3Lとが、下記式(III)の関係を満たす、上記[1]又は[2]に記載の部材。
H−H1/3L≦3.0nm (III)
[4]前記高さ分布曲線の頻度のピーク値を示す高さHと、該高さ分布曲線の頻度のピーク値の1/10を示す高さのうち標高が低い側の高さH1/10Lとが、下記式(IV)の関係を満たす、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の部材。
H−H1/10L≦10.0nm (IV)
[5]前記海島構造中の島部分の割合が20〜50%である、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の部材。
[6]前記パーフルオロ構造及びシロキサン構造が、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランの縮重合物である、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の部材。
[7]前記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランの縮重合物が、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの縮重合物である、上記[6]に記載の部材。
[8]上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の部材を備えたタッチパネル。
[9]上記[8]に記載のタッチパネルを備えた画像表示装置。
<部材>
本発明の部材は、基材上に防汚層を形成したものである。該防汚層は、パーフルオロ構造及びシロキサン構造を含有する海島構造からなり、該防汚層表面の高さ分布曲線の頻度のピーク値を示す高さHと、該高さ分布曲線の頻度のピーク値の1/2を示す高さのうち標高が低い側の高さH1/2Lとが、下記式(I)の関係を満たす。
H−H1/2L≦2.5nm (I)
本発明の部材に用いる防汚層は、防汚性を有する層であり、海島構造からなる。
実際に、本発明の部材の防汚層表面についてAFM観察画像を分析したところ、図1に示すように、該防汚層表面は、緩やかな波形状(海部分)であり、該波形状(海部分)の中に直径200〜1000nm程度、高さ8〜20nm程度の不連続な突出部(島部分)が存在する海島構造であった。
なお、上記海島構造の島部分の割合は、防汚層表面の形状を原子間力顕微鏡(AFM)で測定して防汚層表面の高さデータの平均値を算出した後、[平均値以上の高さを有する測定点の数×100/全測定の数]により算出し、これを20点測定し、測定した20点の平均で算出できる。
但し、高さ25nm以上のデータは、異物として計算から除外した。
H−H1/2L≦2.5nm (I)
上記防汚層は、海側の半値半幅(H−H1/2L)が、2.5nm以下であり、好ましくは2.0nm以下、より好ましくは1.8nm以下、更に好ましくは1.5nm以下である。海側の半値半幅(H−H1/2L)が2.5nm以下であることは、上記海島構造内に、島部分の標高より低く、一定の標高を有する海部分が2.5nm以下に多く存在し、図1のAFM観察画像のように該海部分が均一で浅いことを表している。したがって、海側の半値半幅(H−H1/2L)が2.5nm以下であることを満たすことにより、本発明の効果を発揮することができる。なお、海側の半値半幅(H−H1/2L)の下限値は0.8nm程度であっても使用できる。
図6において、比較例1の海側の半値半幅(H−H1/2L)は、実施例1〜3の海側の半値半幅(H−H1/2L)よりも大きくなっている。この原因は、比較例1では、図2に示すように防汚層表面の海島構造が大きく崩れ、海部分の標高が不均一となっているためである。このように海島構造が崩れて海側の半値半幅(H−H1/2L)が大きくなった場合、防汚性に悪影響を与えてしまう。
H1/2H−H≦3.0nm (II)
上記式(II)は、上記防汚層表面の海島構造内の島側の半値半幅を表している。上記島側の半値半幅(H1/2H−H)は、好ましくは3.0nm以下、より好ましくは2.5nm以下、更に好ましくは2.0nm以下である。島側の半値半幅(H1/2H−H)が3.0nm以下であることは、上記海島構造内に、海部分の標高より高く、一定の標高を有する島部分が3.0nm以下に多く存在することを表している。したがって、島側の半値半幅(H1/2H−H)が3.0nm以下であることを満たすことにより、本発明の効果を発揮しやすくすることができる。なお、島側の半値半幅(H1/2H−H)の下限値は1.4nm程度であっても使用できる。
H−H1/3L≦3.0nm (III)
上記式(III)は、上記防汚層表面の海島構造内の海側の1/3幅を表している。上記海側の1/3幅(H−H1/3L)は、好ましくは3.0nm以下、より好ましくは2.8nm以下、更に好ましくは2.5nm以下である。
海側の1/3幅(H−H1/3L)が3.0nm以下であれば、上記海島構造内には、上述の一定の標高を有する海部分よりも低い箇所が少なく、該海部分の標高は均一となり、本発明の効果を発揮しやすくすることができる。なお、海側の1/3幅(H−H1/3L)の下限値は1.4nm程度であっても使用できる。
一方、高さ分布曲線の頻度のピーク値(頻度100)を示す高さHと、該ピーク値の1/3(頻度100/3)を示す高さのうち標高が高い側の高さH1/3Hとの差(H1/3H−H)は、上記防汚層表面の海島構造内の島側の1/3幅を表している。上記島側の1/3幅(H1/3H−H)は、好ましくは3.5nm以下、より好ましくは3.0nm以下、更に好ましくは2.5nm以下である。
島側の1/3幅(H1/3H−H)が3.5nm以下であれば、上記海島構造内には、上述の一定の標高を有する島部分よりも突出した箇所が少なく、該島部分の標高は均一となり、本発明の効果を発揮しやすくすることができる。なお、島側の1/3幅(H1/3H−H)の下限値は1.4nm程度であっても使用できる。
H−H1/10L≦10.0nm (IV)
上記式(IV)は、上記防汚層表面の海島構造内の海側の1/10幅を表している。上記海側の1/10幅(H−H1/10L)は、好ましくは10.0nm以下、より好ましくは9.0nm以下、更に好ましくは8.5nm以下である。
海側の1/10幅(H−H1/10L)が10.0nm以下であれば、上記海島構造内の海部分には、極端に大きな凹部は存在せず、該海部分の標高は均一となり、本発明の効果を発揮しやすくすることができる。なお、海側の1/10幅(H−H1/10L)の下限値は7.0nm程度であっても使用できる。
一方、高さ分布曲線の頻度のピーク値(頻度100)を示す高さHと、該ピーク値の1/10(頻度10)を示す高さのうち標高が高い側の高さH1/10Hとの差(H1/10H−H)は、上記防汚層表面の海島構造内の島側の1/10幅を表している。上記島側の1/10幅(H1/10H−H)は、好ましくは7.5nm以下、より好ましくは6.5nm以下、更に好ましくは5.5nm以下である。
島側の1/10幅(H1/10H−H)が7.5nm以下であれば、上記海島構造内には、極端に突出した島部分は存在せず、標高が均一な島部分となり、本発明の効果を発揮しやすくすることができる。なお、島側の1/10幅(H1/10H−H)の下限値は3.8nm程度であっても使用できる。
但し、高さ25nm以上のデータは、異物として計算から除外した。
0<SRsk (i)
上記防汚層表面は、0<SRskであることから、該防汚層表面上には、細い形状の突出部(島部分)が適度に存在することを表している。
また、上記防汚層表面の三次元スキューネスSRskの上限値は特に限定されないが、適度な高さの突出部が存在する観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2.6以下、更に好ましくは2.0以下である。
なお、後述のSRa及びSRzの値についても同様に、上記測定面積で20点測定し、その平均により算出するものとする。
0.3nm≦SRa≦3.0nm (ii)
上記SRaは、平坦性の指標とすることができ、防汚層表面のSRaが小さいほど平坦性が高いことを示す。
上記防汚層表面の三次元算術平均粗さSRaは、好ましくは0.3nm以上3.0nm以下であり、より好ましくは0.5nm以上2.5nm以下、より好ましくは0.6nm以上2.0nm以下、更に好ましくは0.6nm以上1.5nm以下である。SRaが条件(ii)を満たすことは、防汚層表面近傍に上記突出部が適切な量で存在すること、及び非突出部が緩やかな波形状であることを示している。このため、SRaが条件(ii)を満たすことにより、本発明の効果をより発揮しやすくできる。
SRz≦20.0nm (iii)
ここで、本発明においてSRzはJIS B0601:1994に記載されている2次元粗さパラメータの十点平均粗さRzを3次元に拡張したものである。
上記防汚層表面の三次元十点平均粗さSRzは、好ましくは20.0nm以下、より好ましくは5.0nm以上16.0nm以下、更に好ましくは6.0nm以上13.0nm以下である。
上記防汚層が、パーフルオロ構造及びシロキサン構造を含有すれば、パーフルオロ構造及びシロキサン構造は、特に限定されないが、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランの縮重合物(以下、単に「縮重合物」ともいう)であることが、好ましい。ここで、本発明において「パーフルオロポリエーテル構造を有する」とは、パーフルオロポリエーテル結合を含む基を有することを意味する。
上記防汚層が、パーフルオロポリエーテル構造を含有する場合、上記防汚層の表面自由エネルギーを低下させ、汚れを付き難くできる。また、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと、該パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランのアルコキシ基と反応する官能基を有する化合物とが縮重合した構造であると、隣接するパーフルオロポリエーテル構造部位の間隔が広く疎になり、該パーフルオロポリエーテル構造部位が動きやすく柔軟性を有することにより、更に汚れを付き難くし、かつ、付いた汚れの拭き取りを容易にできると考えられる。
上記縮重合物は、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと、該パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランのアルコキシ基と反応する官能基を有する化合物との縮重合物である。
上記アルコキシ基と反応する官能基を有する化合物は、アルコキシ基と反応する官能基を有するものであれば特に制限されることなく用いることができ、例えば、アルコキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基等を有する化合物が挙げられる。中でも、反応性、及び防汚性向上の観点から、アルコキシシランが好ましく、特に、テトラアルコキシシランが好ましい。
以下、アルコキシ基と反応する官能基を有する化合物として、テトラアルコキシシランを例示して説明する。
上記縮重合物が、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとテトラアルコキシシランとが縮重合した構造であると、隣接するパーフルオロポリエーテル構造部位の間隔が広く疎になり、該パーフルオロポリエーテル構造部位が動きやすく柔軟性を有することにより、滑落性が向上し、更に汚れを付き難くし、かつ、付いた汚れの拭き取りを容易にすることができると考えられる。また、上述の海島構造を形成しやすくすることができる。
なお、上記防汚層を占める上記縮重合物の割合は、60〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましく、80〜100質量%であることが更に好ましい。
前記縮重合物の原料として用いられるパーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランは、パーフルオロポリエーテル構造を有することにより、防汚層の表面自由エネルギーを低下させ、汚れを付き難くする。更に、隣接するパーフルオロポリエーテル構造部位の間隔が広く疎になり、該パーフルオロポリエーテル構造部位が動きやすく柔軟性を有することにより、更に汚れを付き難くし、かつ、付いた汚れの拭き取りを容易にすると考えられる。
上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとしては、例えば、下記一般式(1)乃至(4)で表される化合物が挙げられ、防汚性の観点から、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
上記R3〜R10は、それぞれ独立に、炭素数1〜12、好ましくは炭素数3〜8の2価の有機基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ等が挙げられる。また、これらの基は、エーテル結合、アミド結合、エステル結合、及びビニル結合を含んでいてもよく、更に、酸素原子、窒素原子及びフッ素原子を含んでいてもよい。
中でも、防汚性の観点から、−CF2CF2O−、−CF2CF2CF2O−、−CF(CF3)CF2O−、−OCF2OCF2CF2−、−CF2CF(CF3)CF2O−が好ましい。これらは、1種類のみでも2種類以上を含んでもよい。
直鎖のパーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基等が挙げられ、分岐鎖構造のパーフルオロアルキル基としては、1−(トリフルオロメチル)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、1,1−ジ(トリフルオロメチル)−2,2,2−トリフルオロエチル基、2−(トリフルオロメチル)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基などが挙げられる。
また、上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとしては、信越化学(株)製「X−71−195」、「KY−178」、「KY−164」、「KY−108」、「KP−911」、ダイキン工業(株)製「オプツールDSX」、「オプツールDSX−E」等が商業的に入手可能であり、生産性及び防汚性の観点から、「X−71−195」が好ましい。
テトラアルコキシシランは、4つのアルコキシ基を有することから、上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとの反応性が高い。上記テトラアルコキシシランとしては、例えば、下記一般式(6)で表される化合物を用いることが好ましい。
本発明の部材に用いる基材としては、例えば、ガラス板、酸化アルミ板、スピン−オン−グラス(SOG)材料などの各種無機系材料、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などの各種有機系樹脂材料、有機−無機複合材料などが挙げられる。なかでも、シランとの反応性の観点から、表面に水酸基を有するものが好ましく、また、材料の加工性、得られる部材の機械的強度、及び防汚層の形成しやすさなどの観点から、ガラス板又は有機−無機複合材料が好ましく、ガラス板がより好ましい。ガラス板は強度を向上させる目的から、化学的に強化をしてもよい。SOG材料としては、メチルシロキサンなどのアルキルシロキサン系材料や、ヒドロキシシルセスキオキサン系材料、シラザン系材料、シルセスキオキサン系材料などが挙げられ、耐久性などの点からシルセスキオキサン系材料が好ましい。
市販品のSOG材料としては、例えば層間絶縁膜用塗布材料「HSG」(商品名、日立化成(株)製)、東京応化工業(株)製のOCNシリーズなどが挙げられる。また市販品の有機−無機複合材料としては、UV照射により最表面が自発的に無機化する有機−無機複合材料(商品名「NH−1000G」、日本曹達(株)製)などが挙げられる。
なお、上記基材の形状は、平面構造であってもよいし、立体構造であってもよい。
基材の表面には、光学特性の向上のために低反射層を形成してもよい。低反射層はスパッタリング法等により無機化合物を複数層積層することで形成できる。また、基材や上記低反射層の表面には、接着性を向上させて使用環境下での長期の信頼性を向上させるために、アンカー剤又はプライマーと呼ばれる塗料の塗布や、接着層としての無機層の成膜を予め行ってもよい。無機層としてはシリコン系化合物が好ましく、SiO2やSiOxが接着性や耐久性の観点からより好ましい。上記接着層は蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法といった方法を用いて成膜できる。また、これらの層の形成の有無にかかわらず、接着性を向上させるために、コロナ放電処理、酸化処理、プラズマ処理等の物理的な処理を行ってもよい。
また、ディスプレイ等として用いる観点から、上記基材の全光線透過率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠する方法により測定することができる。
次に、前述する部材の製造方法を説明する。
本発明の部材の製造方法は、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとテトラアルコキシシランとを、有機溶媒と水と酸との混合溶媒中で加水分解、縮重合して得られた縮重合物を含む組成物を調製する工程(1)と、該組成物を該基材に塗布して防汚層を形成する工程(2)とを有する。
本工程においては、例えば、有機溶媒、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランを含む混合溶媒中に、水と酸とを混合、攪拌し、上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランを加水分解し、次いで縮重合することにより縮重合物を得る。
具体的には、上記縮重合物は、上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランのアルコキシ基、及び上記テトラアルコキシシランのアルコキシ基がそれぞれ加水分解してシラノール基を形成した後、該パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランが有するシラノール基と該テトラアルコキシシランが有するシラノール基とが縮重合することにより得られる。
また、上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランの重量平均分子量は、GPC測定により求めることができる。
上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと、上記テトラアルコキシシランとの重量比は、好ましくは1:0.1〜10.0、より好ましくは1:0.15〜8.0、更に好ましくは1:0.2〜6.0である。上記範囲内とすることにより、防汚性を向上させることができる。また、上述の海島構造を形成しやすくし、また、上述の条件(i)〜(iii)を満たしやすくする。
両親媒性溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類等の水溶性の有機溶媒が好適に用いられる。上記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、ターシャリーブチルアルコール等が挙げられる。上記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。その他の水溶性の有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチル等が用いられる。これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
また、上記組成物の固形分濃度は、好ましくは0.01〜15.00質量%、より好ましくは0.05〜10.00質量%、更に好ましくは0.1〜5.0質量%である。0.01質量%以上とすることで、防汚層の硬化を促進することができ、15.00質量%以下とすることで、防汚層の着色や防汚性の低下を抑制することができる。
上記工程(1)で調製した組成物を基材上に塗布して乾燥し、硬化させることにより防汚層を形成する。
上記組成物を塗布する方法は、所望の厚みに均一に塗布できる方法であればよく、従来公知の方法の中から適宜選択すればよい。例えば、グラビアコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法等が挙げられる。
防汚層は、従来、汚れを付き難くするために、水と油脂との接触角を大きくすることが検討されてきた。これに対して、本発明では、水と油脂との接触角を大きくするとともに、両者の滑落角を小さくすることで、高い滑落性が得られることにより、汚れを付き難く、かつ付いた汚れをふき取りやすくしている。
滑落性は、純水及びn−ヘキサデカンの滑落角を測定することで評価でき、該滑落角が小さいほど滑落性が良好である。滑落角は、測定対象物である部材の防汚層表面に、水平な状態で10μLの純水及び3μLのn−ヘキサデカンを滴下し、部材を徐々に傾斜させて、液滴が滑り始める傾斜角度(滑落角)を測定することにより求められる。測定装置としては、例えば、協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」を用いることができる。滑落角は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
上記接触角が95°以上であると、防汚層が低い表面自由エネルギーを有していることを示しており、汚れを付き難くすることができる。また、上記滑落角が30°以下であると、防汚層表面の滑落性が向上し、さらに汚れを付き難くし、かつ、付いた汚れを拭き取りやすくすることができる。
本発明において、上記接触角を95°以上とすることができるのは、上記縮重合物が、パーフルオロポリエーテル構造部位を有することに起因すると考えられる。また、上記滑落角を30°以下とすることができるのは、上記縮重合物が、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとテトラアルコキシシランとが縮重合した構造であるため、隣接するパーフルオロポリエーテル構造部位の間隔が広く疎になり、該パーフルオロポリエーテル構造部位が動きやすく柔軟性を有することに起因すると考えられる。
なお、接触角は、接触角測定装置(例えば、協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」)を用いて、純水及びn−ヘキサデカンに対する接触角をθ/2法により測定することで求められる。接触角は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
このように、本発明の部材が、従来の防汚部材では得られなかった極めて優れた防汚性を有するのは、上記縮重合物が有する隣接するパーフルオロポリエーテル構造部位の間隔が広く疎になり、該パーフルオロポリエーテル構造部位が動きやすく柔軟性を有することに起因すると考えられる。
特に、タッチパネル等のような指でスライドさせて用いる表面の防汚性を得るには、上記滑り性の向上は重要である。
なお、本発明において「滑り性」とは、部材の防汚層表面の滑らかさを表す指標である。滑り性は、具体的には実施例に記載の方法により評価することができる。
本発明のタッチパネルは、上記部材を備えるものである。
タッチパネルとしては、静電容量式タッチパネル、抵抗膜式タッチパネル、光学式タッチパネル、超音波式タッチパネル及び電磁誘導式タッチパネル等が挙げられる。
本発明のタッチパネルは、例えば、本発明の部材を表面材として備えた各種画像表示装置に使用することができる。なお、上記部材は、各種画像表示装置の画像表示部表面に用いる防汚性フィルムとして好適に用いることができる。
実施例及び比較例の部材の評価は以下のようにして行った。
<半値半幅、1/3幅、1/10幅>
島津製作所製の原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)SPM‐9600を用い、ソフト:SPMマネージャーにおけるOn‐Line(測定)モード時に、実施例及び比較例で得られた各部材の防汚層表面の形状を測定し、高さ分布のヒストグラムデータを得た。その後、Off‐Line(解析)モードを用いて、傾き補正処理を実施し、高さ:0nmを黒色、高さ:25nm以上を白色とした場合の諧調画像を得た(縦:512×横:512=262144pixel)。その画像についてPhotoshop(登録商標)を用いて画像解析を行った。各画像の各pixelの濃淡を256諧調(黒色:0、白色:255)とした場合の高さ分布のヒストグラムデータを得(1区間0.098nm)、海側の半値半幅(H−H1/2L)、島側の半値半幅(H1/2H−H)、海側の1/3幅(H−H1/3L)、島側の1/3幅(H1/3H−H)、海側の1/10幅(H−H1/10L)、及び島側の1/10幅(H1/10H−H)を算出した。結果を表1に示す。なお、図3〜6は実施例1〜3、及び比較例1の高さ分布のヒストグラムデータである。
(AFM測定条件)
測定モード:位相
走査範囲:10μm×10μm、
走査速度:0.8〜1Hz
画素数:512×512
使用したカンチレバー:ナノワールド社製NCHR(共鳴周波数:320kHz、ばね定数42N/m)
(AFM解析条件)
傾き補正:ラインフィット
<海島構造中の島部分の割合>
海島構造の島部分の割合は、防汚層表面の形状をAFMで測定して防汚層表面の高さデータの平均値を算出した後、[平均値以上の高さを有する測定点の数×100/全測定の数]により算出し、これを20点測定し、測定した20点の平均で算出した。但し、高さ25nm以上のデータは、異物として計算から除外した。結果を表1に示す。
<SRa、SRsk、SRz>
白色干渉顕微鏡(New View7300、Zygo社製)を用いて、実施例及び比較例で得られた各部材の防汚層表面の形状の測定・解析を行った。その結果を表1に示す。
なお、測定・解析ソフトにはMetro Pro Version 9.0.10 64−bitのMicroscope Applicationを用いた。
(測定条件)
対物レンズ:100倍
Zoom:2倍
測定領域:50μm×50μm
解像度(1点当たりの間隔):0.57μm
(解析条件)
Removed:Plane
Filter:OFF
FilterType:OFF
Low wavelength:OFF
High wavelength:OFF
Remove spikes:OFF
Spike Height(xRMS):OFF
協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」を用いて、純水及びn−ヘキサデカンの接触角を測定した。部材の防汚層表面に1.5μLの純水を滴下し、着滴1秒後に、θ/2法に従って、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を算出した。5回測定した平均値を、接触角の値とした。なお、結果を表2に示す。
上記接触角の測定結果から、以下の基準で表面自由エネルギーを評価した。接触角が大きいほど、表面自由エネルギーが低く優れることを示す。なお、結果を表2に示す。
◎:純水110°以上、かつn−ヘキサデカン60°以上
○:純水110°未満95°以上、かつn−ヘキサデカン60°未満50°以上
×:純水95°未満もしくはn−ヘキサデカン50°未満
協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」を用いて、純水及びn−ヘキサデカンの滑落角を測定した。部材を水平に配置し、該部材の防汚層表面に10μLの純水、及び3μLのn−ヘキサデカンをそれぞれ滴下し、部材を徐々に傾斜させて、液滴が滑り始める傾斜角度(滑落角)を測定した。5回測定した平均値を、滑落角の値とした。なお、結果を表2に示す。
上記滑落角の測定結果から、以下の基準で滑落性を評価した。滑落角が小さいほど、滑落性に優れることを示す。なお、結果を表2に示す。
◎:純水15°未満、かつn−ヘキサデカン10°未満
○:純水15°以上30°以下、もしくはn−ヘキサデカン10°以上15°以下
×:純水30°超もしくはn−ヘキサデカン15°超
被験者10名が、実施例1〜3および比較例1で作製した各部材の防汚層表面に指を接触させて、その指を防汚層表面と平行に横方向に往復移動させた(スマートフォンでスライド操作をする様な動き)。その際の指と防汚層表面との摩擦による触感を下記評価基準により判定し、被験者10名の平均値を求めた。この平均値を下記判定基準に従って判定した。なお、結果を表2に示す。
<評価基準>
5点:常に滑らか
3点:滑らか
0点:悪い
<判定基準>
○:4.4点以上
△:2.1点以上4.4点未満
×:2.1点未満
シリコーン樹脂版(10mmφ×30mmの円柱状)に人工指紋液(伊勢久(株)製、JIS C9606の付属書4に準拠)を付着させたものを部材の防汚層表面に押し付けて指紋を付着させた。指紋の付着状態を目視観察し、以下の基準で評価した。なお、結果を表2に示す。
◎:指紋を強く弾いており、付着量が非常に少ない
○:指紋を弾いており、付着量が少ない
△:指紋を弾くが、付着する
×:指紋が広く付着する
シリコーン樹脂版(10mmφ×30mmの円柱状)に人工指紋液(伊勢久(株)製、JIS C9606の付属書4に準拠)を付着させたものを部材の防汚層表面に押し付けて指紋を付着させた。付着させた指紋を旭化成(株)製 ベンコットンで拭取り、指紋の残り跡を目視観察し、以下の基準で評価した。なお、結果を表2に示す。
◎:3回までの拭取りで、指紋の付着跡が完全に見えない
○:4〜7回の拭取りで、指紋の付着跡が完全に見えない
△:8回〜10回の拭取りで、指紋の付着跡が完全に見えない
×:10回の拭取り後に指紋の拭き取り跡がはっきりと視認できる
(組成物の調製)
フッ素系有機溶媒(3M製、商品名:Novec 7300)20.2gと、両親媒性溶媒(関東化学(株)製、商品名:2−プロパノール)3.5gと、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)0.75gと、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)0.051gとを混合した混合溶液中に、水3.8mgと、1M 塩酸22.4mgとを添加し、25℃で3時間攪拌し、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの縮重合物を含む組成物1を得た。
(部材の製造)
ガラス基板(日本電気硝子(株)製、商品名:OA−10G、厚さ700μm)上にスピンコーターを用いて、上記組成物1を、回転速度3000回転/minにて塗布し、塗膜を形成した。該塗膜を室温(25℃)で12時間乾燥し、溶剤を除去し、硬化させ、平均膜厚10nm(塗布量からの推定値)の部材を得た。
フッ素系有機溶媒(3M製、商品名:Novec 7300)を28.1g、両親媒性溶媒(関東化学(株)製、商品名:2−プロパノール)を4.8g、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)を0.15g、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を0.076g、水5.9mg、1M 塩酸31.1mg用いた以外は実施例1と同様にして部材を得た。
得られた部材の防汚層表面のAFM観察画像を図1に示す。AFM観察画像を分析したところ、該防汚層表面の形状は、直径250〜500nm程度、高さ10〜20nm程度の不連続な突起状の構造がみられる海島構造であった。
混合溶液の攪拌時間を24時間に変更した以外は、実施例2と同様にして部材を得た。
混合溶液の攪拌時間を168時間に変更した以外は、実施例2と同様にして部材を得た。
表2に示すように、防汚層がパーフルオロ構造及びシロキサン構造を含有する海島構造からなり、海側の半値半幅(H−H1/2L)が2.5nm以下である実施例1〜3では、純水の接触角が112〜116°、n−ヘキサデカンの接触角が66〜67°であり、いずれも表面自由エネルギーが低く優れていた。また、純水の滑落角が3〜20°、n−ヘキサデカンの滑落角が2〜4°であり、いずれも滑落性が良好であり、更に、滑り性の評価も高かった。これらの結果から、実施例1〜3の部材は、いずれも指紋が付着し難く、指紋の拭取性に優れていることがわかった。
一方、海側の半値半幅(H−H1/2L)が2.7nmである比較例1では、表面自由エネルギーが実施例と比較して高く、滑落性の評価が悪かった。また、実施例と比較して指紋付着及び指紋拭取性の評価が劣っていた。
Claims (9)
- 基材上に防汚層を形成してなる部材であって、
該防汚層は、パーフルオロ構造及びシロキサン構造を含有する海島構造からなり、該防汚層表面の高さ分布曲線の頻度のピーク値を示す高さHと、該高さ分布曲線の頻度のピーク値の1/2を示す高さのうち標高が低い側の高さH1/2Lとが、下記式(I)の関係を満たす、部材。
H−H1/2L≦2.5nm (I) - 前記高さ分布曲線の頻度のピーク値を示す高さHと、該高さ分布曲線の頻度のピーク値の1/2を示す高さのうち標高が高い側の高さH1/2Hとが、下記式(II)の関係を満たす、請求項1に記載の部材。
H1/2H−H≦3.0nm (II) - 前記高さ分布曲線の頻度のピーク値を示す高さHと、該高さ分布曲線の頻度のピーク値の1/3を示す高さのうち標高が低い側の高さH1/3Lとが、下記式(III)の関係を満たす、請求項1又は2に記載の部材。
H−H1/3L≦3.0nm (III) - 前記高さ分布曲線の頻度のピーク値を示す高さHと、該高さ分布曲線の頻度のピーク値の1/10を示す高さのうち標高が低い側の高さH1/10Lとが、下記式(IV)の関係を満たす、請求項1〜3のいずれか一項に記載の部材。
H−H1/10L≦10.0nm (IV) - 前記海島構造中の島部分の割合が20〜50%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の部材。
- 前記パーフルオロ構造及びシロキサン構造が、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランの縮重合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の部材。
- 前記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランの縮重合物が、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの縮重合物である、請求項6に記載の部材。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の部材を備えたタッチパネル。
- 請求項8に記載のタッチパネルを備えた画像表示装置。
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