JP2017186495A - 難着霜性、難結露性、難着氷性を有する低温環境用部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】難着霜性、難結露性、難着氷性に優れた低温環境用部材の提供。【解決手段】基材上に高滑落撥水層を形成してなる部材であって、該防汚層がパーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと、式(1)で表されるアルコキシシランとの縮重合物を含む、低温環境用部材。(R1はC1〜6のアルキル基;R2はC1〜10のアルキル基、C2〜8のアルケニル基、環形成C3〜10のシクロアルキル基又は環形成C6〜20のアリール基;xは2〜4の整数)【選択図】図5
Description
本発明は、基材上に滑落撥水層を形成した低温環境用部材に関する。
従来から、大気温度が低い冬場に、部材表面に霜、露、氷がつくことにより不具合が発生する事案が多くあり、着霜、結露、着氷を防止する検討が多く行われてきている。
たとえば、信号機表面に着氷、着雪すると信号機が見えなくなるという危険性を有している。特にLEDを用いた信号機が多く設置されるようになり、その危険性は増大している。また、自動車の窓、窓ガラス等への着霜、結露、着氷により、その透明性を失うことがあり、問題となっている。エアコンの室外機、ヒートポンプユニットの熱交換器等においては、金属製フィンの表面温度が大気の露点以下となるため、金属製フィンの表面に凝縮によって生じた水滴が付着したり、また、暖房運転時の室外機においては、大気温度が低いため、フィン表面の水滴が霜となって凍り付いたりすることによって、通風抵抗が増大し、且つ風量が減少して、熱交換効率が著しく低下するといった問題がある。
このような問題の解決策として、対象部材の表面を加工して着霜、結露、着氷を防止する対策が行われている。
このような問題の解決策として、対象部材の表面を加工して着霜、結露、着氷を防止する対策が行われている。
例えば、特許文献1には、有機系樹脂溶液と微粒子とからなる撥水性コーティング組成物を塗布することによって、表面を超撥水化することが開示されている。
また、特許文献2には、オルガノポリシロキサンと、シラノール基を有するオルガノポリシロキサンの塗膜により、表面を撥水化することが開示されている。
更に、特許文献3には、シリコーンのホモポリマー膜、コポリマー膜、あるいは非晶性フッ素樹脂の塗膜によって、表面の液滴に対する前進接触角と、後退接触角との差(ヒステリシス)を極めて小さくすることが開示されている。
また、特許文献2には、オルガノポリシロキサンと、シラノール基を有するオルガノポリシロキサンの塗膜により、表面を撥水化することが開示されている。
更に、特許文献3には、シリコーンのホモポリマー膜、コポリマー膜、あるいは非晶性フッ素樹脂の塗膜によって、表面の液滴に対する前進接触角と、後退接触角との差(ヒステリシス)を極めて小さくすることが開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の皮膜は、表面を超撥水化せしめて、着霜時間を長くすることが検討されているのではあるが、撥水性が未だ充分でなく、また耐久性に問題がある。
特許文献2に記載の皮膜は、オルガノポリシロキサンと、シラノール基を有するオルガノポリシロキサンの塗膜により、表面を撥水化しているが、特許文献1と同様に、撥水性が未だ充分でなく、また撥油性が低いため水滴内部の固体不純物の表面付着による着霜機能低下が問題となる場合がある。
特許文献3に記載の皮膜は、シリコーンのホモポリマー膜、コポリマー膜、あるいは非晶性フッ素樹脂の塗膜により、ヒステリシスの極めて小さい表面を、シリコン、ガラス又は石英、並びに、実用金属ないし合金の表面に形成することで、液滴の滑落性、耐水性、固体表面からの液滴の除去性、防食特性を向上させることを可能にする固体表面の改質技術に関するものである。しかしながら、シリコーンのホモポリマー膜、コポリマー膜の場合には、特許文献2と同様に撥水性、撥油性が未だ充分でないため、液滴内部の固体不純物の付着による液滴の滑落性の低下が問題となる場合がある。また非晶性フッ素樹脂の場合には、固体表面との密着性が不十分であり、実用に際しては、耐久性が問題となる場合がある。更に、シリコーンのホモポリマー膜、コポリマー膜、あるいは非晶性フッ素樹脂、いずれの場合においても、低ヒステリシス機能の発現には加熱処理が必要であることから、耐熱性が低い樹脂等のフィルム表面には適用できない場合がある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、滑落撥水性を有し、難着霜性、難結露性、難着氷性に優れ、高い耐久性を有する低温環境用部材、該低温環境用部材の製造方法、及び該低温環境用部材の滑落撥水層を形成する組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと、一般式(1)又は(2)で表される特定の構造を有するアルコキシシランとを組み合わせて用いることにより、部材表面の滑落撥水性を向上させることができることを見出した。
更に、該滑落撥水層は基材表面の酸素含有極性基である水酸基との間で共有結合を介して固定化されているため、実用に耐えうる耐久性を有することも見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供する。
[1]基材上に滑落撥水層を形成してなる部材であって、
該滑落撥水層がパーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと下記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種との縮重合物を含むことを特徴とする、低温環境用部材。
(式中、R1は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、環形成原子数3〜10のシクロアルキル基、環形成原子数6〜20のアリール基である。R1及びR2が複数ある場合、複数のR1及びR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。xは2〜4の整数である。)
(式中、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基であり、Yは2価の有機基である。複数のR3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
[2]前記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランが、パーフルオロポリエーテル構造を有するトリメトキシシランであることを特徴とする、上記[1]に記載の低温環境用部材。
[3]前記一般式(1)で表されるアルコキシシランが、テトラアルコキシシランであることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の低温環境用部材。
[4]前記テトラアルコキシシランが、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の低温環境用部材。
[5]前記滑落撥水層表面の純水の接触角が95°以上120°以下、且つ、滑落角が30°以下であることを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の低温環境用部材。
[6]前記滑落撥水性表面のn−ヘキサデカンの接触角が50°以上75°以下、且つ、滑落角が15°以下であることを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の部材。
[1]基材上に滑落撥水層を形成してなる部材であって、
該滑落撥水層がパーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと下記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種との縮重合物を含むことを特徴とする、低温環境用部材。
[2]前記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランが、パーフルオロポリエーテル構造を有するトリメトキシシランであることを特徴とする、上記[1]に記載の低温環境用部材。
[3]前記一般式(1)で表されるアルコキシシランが、テトラアルコキシシランであることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の低温環境用部材。
[4]前記テトラアルコキシシランが、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の低温環境用部材。
[5]前記滑落撥水層表面の純水の接触角が95°以上120°以下、且つ、滑落角が30°以下であることを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の低温環境用部材。
[6]前記滑落撥水性表面のn−ヘキサデカンの接触角が50°以上75°以下、且つ、滑落角が15°以下であることを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の部材。
本発明によれば、滑落撥水性に優れた低温環境用部材を提供することができる。
まず、本発明の低温環境用部材について説明する。
本発明の低温環境用部材でいう「低温」とは、降雪が可能な温度範囲であり、環境によっては5℃以上になる場合もあるが、一般的には3〜4℃以下である。
[低温環境用部材]
本発明の部材は、基材上にパーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと下記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種との縮重合物を含む滑落撥水層を形成したものである。
ここで、本発明において「パーフルオロポリエーテル構造を有する」とは、パーフルオロポリエーテル結合を含む基を有することを意味する。
(式中、R1は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、環形成原子数3〜10のシクロアルキル基、環形成原子数6〜20のアリール基である。R1及びR2が複数ある場合、複数のR1及びR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。xは2〜4の整数である。)
(式中、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基であり、Yは2価の有機基である。複数のR3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
本発明の低温環境用部材でいう「低温」とは、降雪が可能な温度範囲であり、環境によっては5℃以上になる場合もあるが、一般的には3〜4℃以下である。
[低温環境用部材]
本発明の部材は、基材上にパーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと下記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種との縮重合物を含む滑落撥水層を形成したものである。
ここで、本発明において「パーフルオロポリエーテル構造を有する」とは、パーフルオロポリエーテル結合を含む基を有することを意味する。
<基材>
本発明の低温環境用部材に用いる基材としては、例えば、ガラス板、ガラスフィルム、ガラスシート、酸化アルミ板などの各種無機系材料、スピン−オン−グラス(SOG)材料で表面を加工した材料、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などの各種有機系樹脂材料、有機−無機複合材料、金属材料などが挙げられる。なかでも、シランとの反応性の観点から、表面に水酸基を有するものが好ましく、また、材料の加工性、得られる部材の機械的強度、及び滑落撥水層の形成しやすさなどの観点から、ガラス板、ガラスフィルム、ガラスシート、スピン−オン−グラス(SOG)材料で表面を加工した材料、又は有機−無機複合材料が好ましく、ガラス板、ガラスフィルム、ガラスシートがより好ましい。ガラス板、ガラスフィルム、ガラスシート、樹脂基材は強度を向上させる目的から、化学的に強化をしてもよい。SOG材料としては、メチルシロキサンなどのアルキルシロキサン系材料や、ヒドロキシシルセスキオキサン系材料、シラザン系材料、シルセスキオキサン系材料などが挙げられ、耐久性などの点からシルセスキオキサン系材料が好ましい。
本発明の低温環境用部材に用いる基材としては、例えば、ガラス板、ガラスフィルム、ガラスシート、酸化アルミ板などの各種無機系材料、スピン−オン−グラス(SOG)材料で表面を加工した材料、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などの各種有機系樹脂材料、有機−無機複合材料、金属材料などが挙げられる。なかでも、シランとの反応性の観点から、表面に水酸基を有するものが好ましく、また、材料の加工性、得られる部材の機械的強度、及び滑落撥水層の形成しやすさなどの観点から、ガラス板、ガラスフィルム、ガラスシート、スピン−オン−グラス(SOG)材料で表面を加工した材料、又は有機−無機複合材料が好ましく、ガラス板、ガラスフィルム、ガラスシートがより好ましい。ガラス板、ガラスフィルム、ガラスシート、樹脂基材は強度を向上させる目的から、化学的に強化をしてもよい。SOG材料としては、メチルシロキサンなどのアルキルシロキサン系材料や、ヒドロキシシルセスキオキサン系材料、シラザン系材料、シルセスキオキサン系材料などが挙げられ、耐久性などの点からシルセスキオキサン系材料が好ましい。
市販品のSOG材料としては、例えば層間絶縁膜用塗布材料「HSG」(商品名、日立化成(株)製)、東京応化工業(株)製のOCNシリーズなどが挙げられる。また市販品の有機−無機複合材料としては、UV照射により最表面が自発的に無機化する有機−無機複合材料(商品名「NH−1000G」、日本曹達(株)製)、荒川化学工業(株)製のコンポセランSQシリーズなどが挙げられる。
なお、上記基材の形状は、平面構造であってもよいし、立体構造であってもよい。
なお、上記基材の形状は、平面構造であってもよいし、立体構造であってもよい。
透明性が必要とされる場合に基材として用いられるガラス板、ガラスフィルム、ガラスシート、樹脂基材の厚さは、特に制限はないが、光学特性や耐久性の観点から、好ましくは0.01〜100mm、より好ましくは0.02〜10mmである。また基材として用いられる樹脂フィルムの厚さは、強度及び光学特性の観点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは3〜300μmである。
基材の表面には、光学特性の向上のために低反射層を形成してもよい。低反射層はスパッタリング法等により無機化合物を複数層積層することで形成できる。また、基材や上記低反射層の表面には、接着性を向上させて使用環境下での長期の信頼性を向上させるために、アンカー剤又はプライマーと呼ばれる塗料の塗布や、接着層としての無機層の成膜を予め行ってもよい。無機層としてはシリコン系化合物が好ましく、SiO2やSiOxが接着性や耐久性の観点からより好ましい。上記接着層は蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法といった方法を用いて成膜できる。また、これらの層の形成の有無にかかわらず、接着性を向上させるために、コロナ放電処理、酸化処理、プラズマ処理等の物理的な処理を行ってもよい。
また、信号機表面、自動車の窓、窓ガラス等として用いる観点から、上記基材の全光線透過率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠する方法により測定することができる。
基材の表面には、光学特性の向上のために低反射層を形成してもよい。低反射層はスパッタリング法等により無機化合物を複数層積層することで形成できる。また、基材や上記低反射層の表面には、接着性を向上させて使用環境下での長期の信頼性を向上させるために、アンカー剤又はプライマーと呼ばれる塗料の塗布や、接着層としての無機層の成膜を予め行ってもよい。無機層としてはシリコン系化合物が好ましく、SiO2やSiOxが接着性や耐久性の観点からより好ましい。上記接着層は蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法といった方法を用いて成膜できる。また、これらの層の形成の有無にかかわらず、接着性を向上させるために、コロナ放電処理、酸化処理、プラズマ処理等の物理的な処理を行ってもよい。
また、信号機表面、自動車の窓、窓ガラス等として用いる観点から、上記基材の全光線透過率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠する方法により測定することができる。
<滑落撥水層>
本発明の低温環境用部材に用いる滑落撥水層は、難着霜性、難結露性、または難着氷性を有する層であり、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種との縮重合物(以下、単に「縮重合物」ともいう)を含む。上記縮重合物が、パーフルオロポリエーテル構造を有することにより、滑落撥水層の表面自由エネルギーを低下させ、霜、露、氷を着き難くすることができる。また、上記縮重合物が、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種とが縮重合した構造であるため、隣接するパーフルオロポリエーテル構造部位の間隔が広く疎になり、該パーフルオロポリエーテル構造部位が動きやすく柔軟性を有することにより、滑落撥水性が向上し、更に霜、露、氷を着き難くし、かつ、付いた霜、露、氷の拭き取りを容易にすることができる。
上記滑落撥水層を占める上記縮重合物の割合は、60〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましく、80〜100質量%であることが更に好ましい。
本発明の低温環境用部材に用いる滑落撥水層は、難着霜性、難結露性、または難着氷性を有する層であり、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種との縮重合物(以下、単に「縮重合物」ともいう)を含む。上記縮重合物が、パーフルオロポリエーテル構造を有することにより、滑落撥水層の表面自由エネルギーを低下させ、霜、露、氷を着き難くすることができる。また、上記縮重合物が、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種とが縮重合した構造であるため、隣接するパーフルオロポリエーテル構造部位の間隔が広く疎になり、該パーフルオロポリエーテル構造部位が動きやすく柔軟性を有することにより、滑落撥水性が向上し、更に霜、露、氷を着き難くし、かつ、付いた霜、露、氷の拭き取りを容易にすることができる。
上記滑落撥水層を占める上記縮重合物の割合は、60〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましく、80〜100質量%であることが更に好ましい。
(パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン)
前記縮重合物の原料として用いられるパーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランは、パーフルオロポリエーテル構造を有することにより、高落撥水層の表面自由エネルギーを低下させ、霜、露、氷を着き難くする。更に、隣接するパーフルオロポリエーテル構造部位の間隔が広く疎になり、該パーフルオロポリエーテル構造部位が動きやすく柔軟性を有することにより、更に霜、露、氷を着き難くし、かつ、着いた霜、露、氷の拭き取りを容易にする。
上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとしては、例えば、下記一般式(3)乃至(6)で表される化合物が挙げられ、滑落撥水性の観点から、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
前記縮重合物の原料として用いられるパーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランは、パーフルオロポリエーテル構造を有することにより、高落撥水層の表面自由エネルギーを低下させ、霜、露、氷を着き難くする。更に、隣接するパーフルオロポリエーテル構造部位の間隔が広く疎になり、該パーフルオロポリエーテル構造部位が動きやすく柔軟性を有することにより、更に霜、露、氷を着き難くし、かつ、着いた霜、露、氷の拭き取りを容易にする。
上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとしては、例えば、下記一般式(3)乃至(6)で表される化合物が挙げられ、滑落撥水性の観点から、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
上記R4の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられ、滑落撥水性及び反応性の観点からメチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記R5〜R12は、それぞれ独立に、炭素数1〜12、好ましくは炭素数3〜8の2価の有機基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ等が挙げられる。また、これらの基は、エーテル結合、アミド結合、エステル結合、及びビニル結合を含んでいてもよく、更に、酸素原子、窒素原子及びフッ素原子を含んでいてもよい。
上記R5〜R12は、それぞれ独立に、炭素数1〜12、好ましくは炭素数3〜8の2価の有機基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ等が挙げられる。また、これらの基は、エーテル結合、アミド結合、エステル結合、及びビニル結合を含んでいてもよく、更に、酸素原子、窒素原子及びフッ素原子を含んでいてもよい。
上記Z2のシロキサン結合を有する2〜10価のオルガノポリシロキサン基としては、例えば、以下の一般式(7−1)〜(7−12)で表される基が挙げられる。
上記一般式(7−1)〜(7−12)で表される基の中でも、本発明の効果である滑落撥水性を得る観点から、一般式(7−1)、(7−2)、(7−3)、(7−4)、(7−7)で表される基が好ましい。
上記Qのパーフルオロポリエーテル結合を含む基としては、例えば、−CF2O−、−CF2CF2O−、−CF2CF2CF2O−、−CF(CF3)CF2O−、−OCF2OCF2CF2−、−CF2CF2CF2CF2O−、−CF2CF(CF3)CF2O−、−CF2CF2CF2CF2CF2CF2O−、−C(CF3)2O−などが挙げられる。
中でも、滑落撥水性の観点から、−CF2CF2O−、−CF2CF2CF2O−、−CF(CF3)CF2O−、−OCF2OCF2CF2−、−CF2CF(CF3)CF2O−が好ましい。これらは、1種類のみでも2種類以上を含んでもよい。
中でも、滑落撥水性の観点から、−CF2CF2O−、−CF2CF2CF2O−、−CF(CF3)CF2O−、−OCF2OCF2CF2−、−CF2CF(CF3)CF2O−が好ましい。これらは、1種類のみでも2種類以上を含んでもよい。
上記Rfは、直鎖または分岐鎖構造のフッ化アルキル基であり、本発明の効果を得る観点から、直鎖のフッ化アルキル基が好ましい。
直鎖のフッ化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基等が挙げられ、分岐鎖構造のフッ化アルキル基としては、1−(トリフルオロメチル)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、1,1−ジ(トリフルオロメチル)−2,2,2−トリフルオロエチル基、2−(トリフルオロメチル)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基などが挙げられる。
直鎖のフッ化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基等が挙げられ、分岐鎖構造のフッ化アルキル基としては、1−(トリフルオロメチル)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、1,1−ジ(トリフルオロメチル)−2,2,2−トリフルオロエチル基、2−(トリフルオロメチル)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基などが挙げられる。
上記nは、1〜200の整数であり、滑落撥水性の観点から、好ましくは2〜100、より好ましくは、3〜60である。nを1以上とすることで基材表面を十分に被覆することができ、滑落撥水層表面の表面自由エネルギーが低下し、滑落撥水性を向上させることができる。nを200以下とすることで、アルコキシシリル基(−Si(OR4)3)の反応性を高めることができる。
上記mは、1〜10の整数であり、滑落撥水性の観点から、好ましくは1〜7、より好ましくは、1〜5である。mを1以上とすることで滑り性が向上し、より高い滑落撥水性が得られる。mを10以下とすることで、表面自由エネルギーの増大を抑制し滑落撥水性の低下を抑制できる。
上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランは、滑落撥水性及び反応性の観点から、パーフルオロポリエーテル構造を有するトリメトキシシランであることが好ましい。
また、上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとしては、信越化学工業(株)製「X−71−195」、「KY−178」、「KY−164」、「KY−108」、「KP−911」、ダイキン工業(株)製「オプツールDSX」、「オプツールDSX−E」等が商業的に入手可能であり、生産性及び滑落撥水性の観点から、「X−71−195」が好ましい。
また、上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとしては、信越化学工業(株)製「X−71−195」、「KY−178」、「KY−164」、「KY−108」、「KP−911」、ダイキン工業(株)製「オプツールDSX」、「オプツールDSX−E」等が商業的に入手可能であり、生産性及び滑落撥水性の観点から、「X−71−195」が好ましい。
(一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシラン)
下記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランは、前記縮重合物の原料として用いられる。
(式中、R1は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、環形成原子数3〜10のシクロアルキル基、環形成原子数6〜20のアリール基である。R1及びR2が複数ある場合、複数のR1及びR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。xは2〜4の整数である。)
(式中、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基であり、Yは2価の有機基である。複数のR3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
下記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランは、前記縮重合物の原料として用いられる。
上記一般式(1)中のR1の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。中でも、滑落撥水性及び反応性の観点から、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記R2は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、環形成原子数3〜10のシクロアルキル基、環形成原子数6〜20のアリール基である。中でも、滑落撥水性及び反応性の観点から、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましい。
上記R2の炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。中でも、滑落撥水性及び反応性の観点から、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記R2の炭素数2〜8、好ましくは2〜4のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などが挙げられ、滑落撥水性及び反応性の観点から、ビニル基が好ましい。
上記R2の環形成原子数3〜10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
上記R2の環形成原子数6〜20、好ましくは6〜12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
上記R2の環形成原子数6〜20、好ましくは6〜12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
上記アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及びアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、アルコキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。中でも、メタクリロイルオキシ基が好ましい。
xは2〜4の整数であり、滑落撥水性及び反応性の観点から、好ましくは3又は4であり、より好ましくは4である。
上記一般式(2)中のR3の炭素数1〜6のアルキル基としては、上記R1と同じものが挙げられ、中でも、滑落撥水性及び反応性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。
上記Yの2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜12のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6〜14のアリーレン基などが挙げられる。中でも耐久性の観点から、メチレン基、エチレン基が好ましい。
上記Yの2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜12のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6〜14のアリーレン基などが挙げられる。中でも耐久性の観点から、メチレン基、エチレン基が好ましい。
前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランは、滑落撥水及び反応性の観点から、前記一般式(1)で表されるアルコキシシランが好ましく、中でも、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランが好ましく、テトラアルコキシシランがより好ましい。
トリアルコキシシランの具体例としては、トリメトキシ(メチル)シラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも、トリメトキシ(メチル)シラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく、トリメトキシ(メチル)シラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランがより好ましく、トリメトキシ(メチル)シラン、ビニルトリメトキシシランがさらに好ましい。
トリアルコキシシランの具体例としては、トリメトキシ(メチル)シラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも、トリメトキシ(メチル)シラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく、トリメトキシ(メチル)シラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランがより好ましく、トリメトキシ(メチル)シラン、ビニルトリメトキシシランがさらに好ましい。
テトラアルコキシシランは、4つのアルコキシ基を有することから、前記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとの反応性が高い。テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
2種以上を併用する場合、その組み合わせは特に限定されないが、滑落撥水性及び反応性の観点から、テトラアルコキシシランと、トリアルコキシシランとの組み合わせが好ましい。テトラアルコキシシランと、トリアルコキシシランとの重量比は、任意の値により本発明の効果を得ることができるが、滑落撥水性に加えて機械的強度、耐薬品性も併せて付与する観点から、好ましくは1:0〜100、より好ましくは1:0.01〜99、更に好ましくは1:0.03〜98である。
2種以上を併用する場合、その組み合わせは特に限定されないが、滑落撥水性及び反応性の観点から、テトラアルコキシシランと、トリアルコキシシランとの組み合わせが好ましい。テトラアルコキシシランと、トリアルコキシシランとの重量比は、任意の値により本発明の効果を得ることができるが、滑落撥水性に加えて機械的強度、耐薬品性も併せて付与する観点から、好ましくは1:0〜100、より好ましくは1:0.01〜99、更に好ましくは1:0.03〜98である。
(組成物)
前記滑落撥水層を形成する組成物は、上記縮重合物を含む。該縮重合物は、有機溶媒と水と酸との混合溶媒中で前記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種とを加水分解、縮重合して得られる態様が好ましい。
具体的には、上記縮重合物は、前記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランのアルコキシ基、並びに前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種が有するアルコキシ基がそれぞれ加水分解してシラノール基を形成した後、それぞれのシラノール基が縮重合することにより得られる。
前記滑落撥水層を形成する組成物は、上記縮重合物を含む。該縮重合物は、有機溶媒と水と酸との混合溶媒中で前記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種とを加水分解、縮重合して得られる態様が好ましい。
具体的には、上記縮重合物は、前記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランのアルコキシ基、並びに前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種が有するアルコキシ基がそれぞれ加水分解してシラノール基を形成した後、それぞれのシラノール基が縮重合することにより得られる。
有機溶媒としては、上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランを溶解させる観点から、好ましくはフッ素系溶媒が用いられる。また、水との溶解性の観点から、フッ素系溶媒と両親媒性溶媒との混合有機溶媒であることが好ましい。
両親媒性溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類等の水溶性の有機溶媒が好適に用いられる。上記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、ターシャリーブチルアルコール等が挙げられる。上記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。その他の水溶性の有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチル等が用いられる。これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
両親媒性溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類等の水溶性の有機溶媒が好適に用いられる。上記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、ターシャリーブチルアルコール等が挙げられる。上記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。その他の水溶性の有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチル等が用いられる。これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
組成物中の有機溶媒の配合量は、好ましくは90.000〜99.999質量%、より好ましくは92.00〜99.99質量%、更に好ましくは95.0〜99.9質量%である。90.000質量%以上とすることで、混合溶媒中での反応を均一に進めると共に、該組成物から形成された滑落撥水層を均一透明なものとすることができ、99.999質量%以下とすることで、基材表面に十分な滑落撥水層を形成することができる。
水としては、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。また、上記混合溶媒中に含有される水の配合量は、0.001質量%以上であれば、特に限定されないが、好ましくは0.001〜1.000質量%、より好ましくは0.005〜0.500質量%の割合で配合する。0.001質量%以上とすることで、上記加水分解が促進され、1.000質量%以下とすることで、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランの沈殿を抑制することができる。
酸としては、上記加水分解を促進する作用を有するものであれば特に限定されず、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸、コハク酸、酢酸、蟻酸、シュウ酸、クエン酸、安息香酸等が挙げられ、反応性や乾燥時の滑落撥水層からの除去の観点から、塩酸が好ましい。また、上記混合溶媒中に含有される酸の配合量は、上記加水分解を促進させる観点から、好ましくは0.000001〜10.000000質量%、より好ましくは0.00001〜5.00000質量%、更に好ましくは0.0001〜1.0000質量%である。
本発明の組成物には、以上の各成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合される光酸発生剤や光塩基発生剤等を必要に応じて配合することができる。該光酸発生剤もしくは光塩基発生剤を配合することにより、より強固な滑落撥水層を形成することができる。
また、上記組成物の固形分濃度は、好ましくは0.01〜15.00質量%であり、より好ましくは0.05〜10.00質量%であり、更に好ましくは0.1〜5.0質量%である。0.01質量%以上とすることで、滑落撥水層の硬化を促進することができ、15.00質量%以下とすることで、滑落撥水層の着色や滑落撥水性の低下を抑制することができる。
また、上記組成物の固形分濃度は、好ましくは0.01〜15.00質量%であり、より好ましくは0.05〜10.00質量%であり、更に好ましくは0.1〜5.0質量%である。0.01質量%以上とすることで、滑落撥水層の硬化を促進することができ、15.00質量%以下とすることで、滑落撥水層の着色や滑落撥水性の低下を抑制することができる。
滑落撥水層の厚さは特に限定されないが、滑落撥水性、及び耐久性の観点から、好ましくは1〜30nm(推定値)、より好ましくは1〜10nm(推定値)である。
滑落撥水層は、従来、霜、露、氷を付き難くするために、水との接触角を大きくすることが検討されてきた。これに対して、本発明では、水と油脂との接触角を大きくするとともに、両者の滑落角を小さくすることで、高い滑落性が得られることにより、霜、露、氷を着き難く、かつ着いた霜、露、氷をふき取りやすくしている。更に、油脂に対する接触角を高くすることで表面は汚れ難く、且つ、滑落角を小さくすることで付着した汚れを拭き取り易くしているため、汚れによる滑落撥水性の低下を防ぐことができる。
滑落性は、純水及びn−ヘキサデカンの滑落角を測定することで評価でき、該滑落角が小さいほど滑落性が良好である。滑落角は、測定対象物である部材の滑落撥水層表面に、水平な状態で10μLの純水及び3μLのn−ヘキサデカンを滴下し、部材を徐々に傾斜させて、液滴が滑り始める傾斜角度(滑落角)を測定することにより求められる。測定装置としては、例えば、協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」を用いることができる。滑落角は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
滑落性は、純水及びn−ヘキサデカンの滑落角を測定することで評価でき、該滑落角が小さいほど滑落性が良好である。滑落角は、測定対象物である部材の滑落撥水層表面に、水平な状態で10μLの純水及び3μLのn−ヘキサデカンを滴下し、部材を徐々に傾斜させて、液滴が滑り始める傾斜角度(滑落角)を測定することにより求められる。測定装置としては、例えば、協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」を用いることができる。滑落角は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の低温環境用部材は、滑落撥水層表面の純水の接触角が好ましくは95°以上120°以下であり、より好ましくは112°以上120°以下であり、更に好ましくは114°以上120°以下である。また、滑落撥水層表面の純水の滑落角が好ましくは30°以下であり、より好ましくは15°以下であり、更に好ましくは8°未満である。
上記接触角が95°以上であると、滑落撥水層が低い表面自由エネルギーを有していることを示しており、霜、露、氷を着き難くすることができる。
また、本発明の部材は、純水の接触角が120°以下であり、純水の接触角が150°以上のいわゆる超撥水性表面を有するものではない。
さらに、上記滑落角が30°以下であると、滑落撥水層表面の滑落性が向上し、さらに霜、露、氷を着き難くし、かつ、着いた霜、露、氷を拭き取りやすくすることができる。
本発明において、上記接触角を95°以上とすることができるのは、上記縮重合物が、パーフルオロポリエーテル構造部位を有することに起因すると考えられる。また、上記滑落角を30°以下とすることができるのは、上記縮重合物が、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種とが縮重合した構造であるため、隣接するパーフルオロポリエーテル構造部位の間隔が広く疎になり、該パーフルオロポリエーテル構造部位が動きやすく柔軟性を有することに起因すると考えられる。
なお、接触角は、接触角測定装置(例えば、協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」)を用いて、純水及びn−ヘキサデカンに対する接触角をθ/2法により測定することで求められる。接触角は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
上記接触角が95°以上であると、滑落撥水層が低い表面自由エネルギーを有していることを示しており、霜、露、氷を着き難くすることができる。
また、本発明の部材は、純水の接触角が120°以下であり、純水の接触角が150°以上のいわゆる超撥水性表面を有するものではない。
さらに、上記滑落角が30°以下であると、滑落撥水層表面の滑落性が向上し、さらに霜、露、氷を着き難くし、かつ、着いた霜、露、氷を拭き取りやすくすることができる。
本発明において、上記接触角を95°以上とすることができるのは、上記縮重合物が、パーフルオロポリエーテル構造部位を有することに起因すると考えられる。また、上記滑落角を30°以下とすることができるのは、上記縮重合物が、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種とが縮重合した構造であるため、隣接するパーフルオロポリエーテル構造部位の間隔が広く疎になり、該パーフルオロポリエーテル構造部位が動きやすく柔軟性を有することに起因すると考えられる。
なお、接触角は、接触角測定装置(例えば、協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」)を用いて、純水及びn−ヘキサデカンに対する接触角をθ/2法により測定することで求められる。接触角は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
また、本発明の部材は、滑落撥水層表面のn−ヘキサデカンの接触角が好ましくは50°以上であり、より好ましくは55°以上であり、更に好ましくは60°以上である。また、滑落撥水層表面のn−ヘキサデカンの滑落角が好ましくは15°以下であり、より好ましくは10°以下であり、更に好ましくは6°以下である。
本発明者らは、滑落撥水層がパーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種との縮重合物を含むことにより、滑落撥水層表面と、指や拭き取りに用いる布等との摩擦係数を小さくし、滑り性を向上させることを見出した。本発明の部材は、水と油脂との接触角を大きくすることにより滑落撥水層の表面自由エネルギーを低下させ、水と油脂との滑落角を小さくすることにより、高い滑落性が得られることに加え、高い滑り性が得られることにより、上記滑落撥水層表面に対し、更に霜、露、氷を着き難くし、かつ着いた霜、露、氷をふき取りやすくすることができる。更に、油脂に対する接触角を高くすることで表面は汚れ難く、且つ、滑落角を小さくすることで付着した汚れを拭き取り易くしているため、汚れによる滑落撥水性の低下を防ぐことができる。
更に、本発明の低温環境用部材は、実用に耐えうる耐久性を有することも見出した。本発明の低温環境用部材は、図5に示すように、該滑落撥水層と基材とが、基材表面の酸素含有極性基である水酸基との間で共有結合を介して固定化されていることにより、実用に耐えうる耐久性を発現することができる。
このように、本発明の低温環境用部材が、従来の滑落撥水層部材では得られなかった極めて優れた滑落撥水性を有するのは、上記縮重合物が有する隣接するパーフルオロポリエーテル構造部位の間隔が広く疎になり、該パーフルオロポリエーテル構造部位が動きやすく柔軟性を有することに起因すると考えられる。
なお、本発明において「滑り性」とは、部材の滑落撥水層表面の滑らかさを表す指標である。滑り性は、具体的には参考例に記載の方法により評価することができる。
なお、本発明において「滑り性」とは、部材の滑落撥水層表面の滑らかさを表す指標である。滑り性は、具体的には参考例に記載の方法により評価することができる。
[低温環境用部材の製造方法]
次に、前述する部材の製造方法を説明する。
本発明の低温環境用部材の製造方法は、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種とを、有機溶媒と水と酸との混合溶媒中で加水分解、縮重合して得られた縮重合物を含む組成物を調製する工程(1)と、該組成物を該基材に塗布して滑落撥水層を形成する工程(2)とを有する。
以下、本発明の低温環境用部材の製造方法について詳細に説明する。
次に、前述する部材の製造方法を説明する。
本発明の低温環境用部材の製造方法は、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種とを、有機溶媒と水と酸との混合溶媒中で加水分解、縮重合して得られた縮重合物を含む組成物を調製する工程(1)と、該組成物を該基材に塗布して滑落撥水層を形成する工程(2)とを有する。
以下、本発明の低温環境用部材の製造方法について詳細に説明する。
(工程(1))
本工程においては、例えば、有機溶媒と水と酸との混合溶媒中に、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種とを混合、攪拌し、上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと、前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種とを加水分解し、次いで縮重合することにより縮重合物を得る。
上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン、前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシラン、有機溶媒、水、酸としては、それぞれ上記部材の項で説明したものを用いることができ、有機溶媒、水、及び酸の配合量は、それぞれ上記部材の項で説明した範囲内で適宜調整する。
また、上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランの重量平均分子量は、GPC測定により求めることができる。
本工程においては、例えば、有機溶媒と水と酸との混合溶媒中に、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種とを混合、攪拌し、上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと、前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種とを加水分解し、次いで縮重合することにより縮重合物を得る。
上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン、前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシラン、有機溶媒、水、酸としては、それぞれ上記部材の項で説明したものを用いることができ、有機溶媒、水、及び酸の配合量は、それぞれ上記部材の項で説明した範囲内で適宜調整する。
また、上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランの重量平均分子量は、GPC測定により求めることができる。
上記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと、前記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種との重量比は、好ましくは1:0.1〜10.0、より好ましくは1:0.15〜8.0、更に好ましくは1:0.2〜6.0である。上記範囲内とすることにより、滑落撥水性を向上させることができる。
加水分解および縮重合反応は、これらの反応が適切に起こる一定の雰囲気下で行うことが好ましい。具体的には、−25〜120℃の範囲で、0.1〜200時間程度行うことが好ましく、−10〜100℃で、0.5〜150時間程度行うことがより好ましく、0〜70℃で、1〜120時間程度行うことが更に好ましい。
なお、上記成分の他に、必要に応じて上記部材の項で説明したその他の成分を添加することができる。
なお、上記成分の他に、必要に応じて上記部材の項で説明したその他の成分を添加することができる。
(工程(2))
上記工程(1)で調製した組成物を基材上に塗布して乾燥し、硬化させることにより滑落撥水層を形成する。
上記組成物を塗布する方法は、所望の厚さに均一に塗布できる方法であればよく、従来公知の方法の中から適宜選択すればよい。例えば、グラビアコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法等が挙げられる。
上記工程(1)で調製した組成物を基材上に塗布して乾燥し、硬化させることにより滑落撥水層を形成する。
上記組成物を塗布する方法は、所望の厚さに均一に塗布できる方法であればよく、従来公知の方法の中から適宜選択すればよい。例えば、グラビアコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法等が挙げられる。
上記組成物を塗布して形成した膜の乾燥処理の設定条件は、原料、溶媒や、雰囲気の温度や湿度によって変わるが、本発明の効果が得られるのに適した一定の雰囲気下にコントロールした状況で行うことが好ましい。例えば、通常、室温(25℃)〜300℃で、0.1〜48時間程度行うことが好ましく、25〜250℃で、0.2〜24時間程度行うことがより好ましい。これらの処理は1種類の雰囲気下で完結させてもよく、2種類以上の雰囲気下で段階的に処理してもよい。
本発明の低温環境用部材は、滑落撥水性に優れ、難着霜性、難結露性、難着氷性を有するため、信号機、自動車の窓、窓ガラス、航空機の表面材、エアコンの室外機、ヒートポンプユニットの熱交換器等に好適に使用することができる。また防汚性に優れるため、手で触れた際に表面に指紋、皮脂、汗などの汚れが付着しやすいもの、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機・無機ELディスプレイ、電子ペーパー、VFD、EPDなどの画像表示装置、タッチパネル、携帯電話、音楽プレーヤーなどの携帯用電子機器、CD、DVD、ブルーレイディスクなどの光記録媒体、自動車、電車、航空機などの窓ガラス、外壁用建材、壁紙等の内壁、家電、車載パネル等の表面材として好適に用いられる。
以下、参考例、比較例、及び実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、実施例に記載の形態に限定されるものではない。
参考例、比較例、及び実施例の部材の評価は以下のようにして行った。
参考例、比較例、及び実施例の部材の評価は以下のようにして行った。
(1)接触角の測定
協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」を用いて、純水及びn−ヘキサデカンの接触角を測定した。部材の滑落撥水層表面に1.5μLの純水を滴下し、着滴1秒後に、θ/2法に従って、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を算出した。5回測定した平均値を、接触角の値とした。
(2)表面自由エネルギー
上記接触角の測定結果から、以下の基準で表面自由エネルギーを評価した。接触角が大きいほど、表面自由エネルギーが低く優れることを示す。
◎:純水110°以上、かつn−ヘキサデカン60°以上
○:純水110°未満95°以上、かつn−ヘキサデカン60°未満50°以上
×:純水95°未満もしくはn−ヘキサデカン50°未満
(3)滑落角の測定
協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」を用いて、純水及びn−ヘキサデカンの滑落角を測定した。部材を水平に配置し、該部材の滑落撥水層表面に10μLの純水、及び3μLのn−ヘキサデカンをそれぞれ滴下し、部材を徐々に傾斜させて、液滴が滑り始める傾斜角度(滑落角)を測定した。5回測定した平均値を、滑落角の値とした。
(4)滑落性
上記滑落角の測定結果から、以下の基準で滑落性を評価した。滑落角が小さいほど、滑落性に優れることを示す。
◎:純水15°未満、かつn−ヘキサデカン10°未満
○:純水15°以上30°以下、もしくはn−ヘキサデカン10°以上15°以下
×:純水30°超もしくはn−ヘキサデカン15°超
(5)滑り性の評価
被験者10名が、参考例1〜5および比較例1〜6で作製した各部材の滑落撥水層表面に指を接触させて、その指を滑落撥水層表面と平行に横方向に往復移動させた(スマートフォンでスライド操作をする様な動き)。その際の指と滑落撥水層表面との摩擦による触感を下記評価基準により判定し、被験者10名の平均値を求めた。この平均値を下記判定基準に従って判定した。
<評価基準>
5点:常に滑らか
3点:滑らか
0点:悪い
<判定基準>
○:4.4点以上
△:2.1点以上4.4点未満
×:2.1点未満
(6)指紋付着
シリコーン樹脂版(10mmφ×30mmの円柱状)に人工指紋液(伊勢久(株)製、JIS C9606の付属書4に準拠)を付着させたものを部材の滑落撥水層表面に押し付けて指紋を付着させた。指紋の付着状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:指紋を強く弾いており、付着量が非常に少ない
○:指紋を弾いており、付着量が少ない
△:指紋を弾くが、付着する
×:指紋が広く付着する
(7)指紋拭取性
シリコーン樹脂版(10mmφ×30mmの円柱状)に人工指紋液(伊勢久(株)製、JIS C9606の付属書4に準拠)を付着させたものを部材の滑落撥水層表面に押し付けて指紋を付着させた。付着させた指紋を旭化成(株)製 ベンコットンで拭取り、指紋の残り跡を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:3回までの拭取りで、指紋の付着跡が完全に見えない
○:4〜7回の拭取りで、指紋の付着跡が完全に見えない
△:8回〜10回の拭取りで、指紋の付着跡が完全に見えない
×:10回の拭取り後に指紋の拭き取り跡がはっきりと視認できる
協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」を用いて、純水及びn−ヘキサデカンの接触角を測定した。部材の滑落撥水層表面に1.5μLの純水を滴下し、着滴1秒後に、θ/2法に従って、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を算出した。5回測定した平均値を、接触角の値とした。
(2)表面自由エネルギー
上記接触角の測定結果から、以下の基準で表面自由エネルギーを評価した。接触角が大きいほど、表面自由エネルギーが低く優れることを示す。
◎:純水110°以上、かつn−ヘキサデカン60°以上
○:純水110°未満95°以上、かつn−ヘキサデカン60°未満50°以上
×:純水95°未満もしくはn−ヘキサデカン50°未満
(3)滑落角の測定
協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」を用いて、純水及びn−ヘキサデカンの滑落角を測定した。部材を水平に配置し、該部材の滑落撥水層表面に10μLの純水、及び3μLのn−ヘキサデカンをそれぞれ滴下し、部材を徐々に傾斜させて、液滴が滑り始める傾斜角度(滑落角)を測定した。5回測定した平均値を、滑落角の値とした。
(4)滑落性
上記滑落角の測定結果から、以下の基準で滑落性を評価した。滑落角が小さいほど、滑落性に優れることを示す。
◎:純水15°未満、かつn−ヘキサデカン10°未満
○:純水15°以上30°以下、もしくはn−ヘキサデカン10°以上15°以下
×:純水30°超もしくはn−ヘキサデカン15°超
(5)滑り性の評価
被験者10名が、参考例1〜5および比較例1〜6で作製した各部材の滑落撥水層表面に指を接触させて、その指を滑落撥水層表面と平行に横方向に往復移動させた(スマートフォンでスライド操作をする様な動き)。その際の指と滑落撥水層表面との摩擦による触感を下記評価基準により判定し、被験者10名の平均値を求めた。この平均値を下記判定基準に従って判定した。
<評価基準>
5点:常に滑らか
3点:滑らか
0点:悪い
<判定基準>
○:4.4点以上
△:2.1点以上4.4点未満
×:2.1点未満
(6)指紋付着
シリコーン樹脂版(10mmφ×30mmの円柱状)に人工指紋液(伊勢久(株)製、JIS C9606の付属書4に準拠)を付着させたものを部材の滑落撥水層表面に押し付けて指紋を付着させた。指紋の付着状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:指紋を強く弾いており、付着量が非常に少ない
○:指紋を弾いており、付着量が少ない
△:指紋を弾くが、付着する
×:指紋が広く付着する
(7)指紋拭取性
シリコーン樹脂版(10mmφ×30mmの円柱状)に人工指紋液(伊勢久(株)製、JIS C9606の付属書4に準拠)を付着させたものを部材の滑落撥水層表面に押し付けて指紋を付着させた。付着させた指紋を旭化成(株)製 ベンコットンで拭取り、指紋の残り跡を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:3回までの拭取りで、指紋の付着跡が完全に見えない
○:4〜7回の拭取りで、指紋の付着跡が完全に見えない
△:8回〜10回の拭取りで、指紋の付着跡が完全に見えない
×:10回の拭取り後に指紋の拭き取り跡がはっきりと視認できる
参考例1
(組成物の調製)
フッ素系有機溶媒(3M製、商品名:Novec 7300)28.1gと、両親媒性溶媒(関東化学(株)製、商品名:2−プロパノール)4.8gと、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)0.15gと、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)0.076gとを混合した混合溶液中に、水5.9mgと、1M 塩酸31.1mgとを添加し、25℃で3時間攪拌し、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの縮重合物を含む組成物1を得た。
(部材の製造)
ガラス基板(日本電気硝子(株)製、商品名:OA−10G、厚さ700μm)上にスピンコーターを用いて、上記組成物1を、回転速度3000回転/minにて塗布し、塗膜を形成した。該塗膜を室温(25℃)で12時間乾燥し、溶剤を除去し、硬化させ、膜厚10nm(推定値)の部材を得た。
(組成物の調製)
フッ素系有機溶媒(3M製、商品名:Novec 7300)28.1gと、両親媒性溶媒(関東化学(株)製、商品名:2−プロパノール)4.8gと、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)0.15gと、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)0.076gとを混合した混合溶液中に、水5.9mgと、1M 塩酸31.1mgとを添加し、25℃で3時間攪拌し、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの縮重合物を含む組成物1を得た。
(部材の製造)
ガラス基板(日本電気硝子(株)製、商品名:OA−10G、厚さ700μm)上にスピンコーターを用いて、上記組成物1を、回転速度3000回転/minにて塗布し、塗膜を形成した。該塗膜を室温(25℃)で12時間乾燥し、溶剤を除去し、硬化させ、膜厚10nm(推定値)の部材を得た。
参考例2
(基材の作製)
ポリエステルフィルム(東洋紡(株)製、商品名:コスモシャインA4100、厚さ100μm)上にバーコーターを用いて、有機−無機複合材料(日本曹達(株)製、商品名「NH−1000G」)の53質量%メチルイソブチルケトン(MIBK)溶液を塗布し、塗膜を形成した。その塗膜を70℃で60秒間乾燥し、溶剤を除去した。
次いで、上記塗膜に高圧水銀灯を用いて、照射量100mJ/cm2で照射し、塗膜を硬化させて、硬化後の膜厚が10μmの表面が無機化された基材を得た。
(組成物の調製)
フッ素系有機溶媒(3M製、商品名:Novec 7300)18.7gと、両親媒性溶媒(関東化学(株)製、商品名:2−プロパノール)3.2gと、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)0.1gと、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)0.051gとを混合した混合溶液中に、水4.0mgと、1M 塩酸20.7mgとを添加し、室温(25℃)で3時間攪拌し、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの縮重合物を含む組成物2を得た。
(部材の製造)
上記基材上にスピンコーターを用いて、上記組成物2を、回転速度3000回転/minにて塗布し、塗膜を形成した。該塗膜を25℃で12時間乾燥し、溶剤を除去し、硬化させ、膜厚10nm(推定値)の部材を得た。
(基材の作製)
ポリエステルフィルム(東洋紡(株)製、商品名:コスモシャインA4100、厚さ100μm)上にバーコーターを用いて、有機−無機複合材料(日本曹達(株)製、商品名「NH−1000G」)の53質量%メチルイソブチルケトン(MIBK)溶液を塗布し、塗膜を形成した。その塗膜を70℃で60秒間乾燥し、溶剤を除去した。
次いで、上記塗膜に高圧水銀灯を用いて、照射量100mJ/cm2で照射し、塗膜を硬化させて、硬化後の膜厚が10μmの表面が無機化された基材を得た。
(組成物の調製)
フッ素系有機溶媒(3M製、商品名:Novec 7300)18.7gと、両親媒性溶媒(関東化学(株)製、商品名:2−プロパノール)3.2gと、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)0.1gと、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)0.051gとを混合した混合溶液中に、水4.0mgと、1M 塩酸20.7mgとを添加し、室温(25℃)で3時間攪拌し、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの縮重合物を含む組成物2を得た。
(部材の製造)
上記基材上にスピンコーターを用いて、上記組成物2を、回転速度3000回転/minにて塗布し、塗膜を形成した。該塗膜を25℃で12時間乾燥し、溶剤を除去し、硬化させ、膜厚10nm(推定値)の部材を得た。
参考例3
パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「KY−178」、固形分20%)を0.165g、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を0.076g用いた以外は、参考例1と同様にして部材を得た。
パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「KY−178」、固形分20%)を0.165g、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を0.076g用いた以外は、参考例1と同様にして部材を得た。
参考例4
パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「KY−178」、固形分20%)を0.11g、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を0.051g用いた以外は、参考例2と同様にして部材を得た。
パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「KY−178」、固形分20%)を0.11g、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を0.051g用いた以外は、参考例2と同様にして部材を得た。
参考例5
パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)を1.0g、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を50.7mg用いた以外は参考例1と同様にして部材を得た。
パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)を1.0g、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を50.7mg用いた以外は参考例1と同様にして部材を得た。
参考例6
(組成物の調製)
フッ素系有機溶媒(3M製、商品名:Novec 7300)28.1gと、両親媒性溶媒(関東化学(株)製、商品名:2−プロパノール)4.8gと、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)0.15gと、トリアルコキシシラン(トリメトキシ(メチル)シラン)(東京化成工業(株)製、固形分100%)0.14gとを混合した混合溶液中に、水11.9mgと、1M 塩酸60.6mgとを添加し、25℃で3時間攪拌し、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとトリアルコキシシランとの縮重合物を含む組成物6を得た。
(部材の製造)
ガラス基板(日本電気硝子(株)製、商品名:OA−10G、厚さ700μm)上にスピンコーターを用いて、上記組成物6を、回転速度3000回転/minにて塗布し、塗膜を形成した。該塗膜を室温(25℃)で12時間乾燥し、溶剤を除去し、硬化させ、膜厚10nm(推定値)の部材を得た。
(組成物の調製)
フッ素系有機溶媒(3M製、商品名:Novec 7300)28.1gと、両親媒性溶媒(関東化学(株)製、商品名:2−プロパノール)4.8gと、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)0.15gと、トリアルコキシシラン(トリメトキシ(メチル)シラン)(東京化成工業(株)製、固形分100%)0.14gとを混合した混合溶液中に、水11.9mgと、1M 塩酸60.6mgとを添加し、25℃で3時間攪拌し、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランとトリアルコキシシランとの縮重合物を含む組成物6を得た。
(部材の製造)
ガラス基板(日本電気硝子(株)製、商品名:OA−10G、厚さ700μm)上にスピンコーターを用いて、上記組成物6を、回転速度3000回転/minにて塗布し、塗膜を形成した。該塗膜を室温(25℃)で12時間乾燥し、溶剤を除去し、硬化させ、膜厚10nm(推定値)の部材を得た。
参考例7
トリアルコキシシランとして、トリメトキシ(メチル)シランの代わりにビニルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製、固形分100%)を0.15g用いた以外は、参考例6と同様にして部材を得た。
トリアルコキシシランとして、トリメトキシ(メチル)シランの代わりにビニルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製、固形分100%)を0.15g用いた以外は、参考例6と同様にして部材を得た。
参考例8
トリアルコキシシランとして、トリメトキシ(メチル)シランの代わりにフェニルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製、固形分100%)を0.20g用いた以外は、参考例6と同様にして部材を得た。
トリアルコキシシランとして、トリメトキシ(メチル)シランの代わりにフェニルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製、固形分100%)を0.20g用いた以外は、参考例6と同様にして部材を得た。
参考例9
トリアルコキシシランとして、トリメトキシ(メチル)シランの代わりに3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503、固形分100%)を0.25g用いた以外は、参考例6と同様にして部材を得た。
トリアルコキシシランとして、トリメトキシ(メチル)シランの代わりに3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503、固形分100%)を0.25g用いた以外は、参考例6と同様にして部材を得た。
参考例10
トリアルコキシシランとして、トリメトキシ(メチル)シランの代わりに3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−5103、固形分100%)を0.23g用いた以外は、参考例6と同様にして部材を得た。
トリアルコキシシランとして、トリメトキシ(メチル)シランの代わりに3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−5103、固形分100%)を0.23g用いた以外は、参考例6と同様にして部材を得た。
参考例11
トリアルコキシシランの代わりに下記式(8)で表されるアルコキシシラン(ビス(トリエトキシシリル)メタン)(Gelest製、固形分100%)を0.17g用いた以外は、参考例6と同様にして部材を得た。
トリアルコキシシランの代わりに下記式(8)で表されるアルコキシシラン(ビス(トリエトキシシリル)メタン)(Gelest製、固形分100%)を0.17g用いた以外は、参考例6と同様にして部材を得た。
参考例12
テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を0.076g、トリアルコキシシラン(トリメトキシ(メチル)シラン)(東京化成工業(株)製、固形分100%)を0.068g併用した以外は、参考例6と同様にして部材を得た。
テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を0.076g、トリアルコキシシラン(トリメトキシ(メチル)シラン)(東京化成工業(株)製、固形分100%)を0.068g併用した以外は、参考例6と同様にして部材を得た。
参考例13
パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)を0.15gと、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を0.038gと、トリアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン)(東京化成工業(株)製、固形分100%)を0.11gとを混合した混合溶液中に、1M 塩酸60.6mgを添加した以外は、参考例6と同様にして部材を得た。
パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)を0.15gと、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を0.038gと、トリアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン)(東京化成工業(株)製、固形分100%)を0.11gとを混合した混合溶液中に、1M 塩酸60.6mgを添加した以外は、参考例6と同様にして部材を得た。
参考例14
パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)を0.15gと、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を0.076gと、トリアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン)(東京化成工業(株)製、固形分100%)を0.074gとを混合した混合溶液中に、水2.94mgと、1M 塩酸60.6mgを添加した以外は、参考例13と同様にして部材を得た。
パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)を0.15gと、テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を0.076gと、トリアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン)(東京化成工業(株)製、固形分100%)を0.074gとを混合した混合溶液中に、水2.94mgと、1M 塩酸60.6mgを添加した以外は、参考例13と同様にして部材を得た。
参考例15
テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を0.11g、トリアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン)(東京化成工業(株)製、固形分100%)を0.037g、水7.44mgに変更した以外は、参考例14と同様にして部材を得た。
テトラアルコキシシラン(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)を0.11g、トリアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン)(東京化成工業(株)製、固形分100%)を0.037g、水7.44mgに変更した以外は、参考例14と同様にして部材を得た。
比較例1
パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)中の溶剤を除去して得られたパーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランをガラス基板上に電子ビーム蒸着法(真空度=1.0×10-3Pa、電流値=9mA)により蒸着し、厚さ10nm(推定値)の滑落撥水層を全面に製膜して、部材を得た。
パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)中の溶剤を除去して得られたパーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランをガラス基板上に電子ビーム蒸着法(真空度=1.0×10-3Pa、電流値=9mA)により蒸着し、厚さ10nm(推定値)の滑落撥水層を全面に製膜して、部材を得た。
比較例2
パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「KY−178」、固形分20%)を用いた以外は、比較例1と同様にして部材を得た。
パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「KY−178」、固形分20%)を用いた以外は、比較例1と同様にして部材を得た。
比較例3
エタノール4.6gと、アルキルシラン(Gelest製、商品名:デシルトリエトキシシラン)0.22gと、金属アルコキシド(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)1.6gとを混合した混合溶媒中(デシルトリエトキシシラン/オルトけい酸テトラメチル=1/14)に、0.01M 塩酸0.78gを添加し、室温(25℃)で24時間攪拌した。得られた溶液をガラス基板(日本電気硝子(株)製、商品名:OA−10G、厚さ700μm)上にスピンコートし、一日、室温(25℃)で静置し、膜厚10nm(推定値)の部材を得た。
エタノール4.6gと、アルキルシラン(Gelest製、商品名:デシルトリエトキシシラン)0.22gと、金属アルコキシド(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)1.6gとを混合した混合溶媒中(デシルトリエトキシシラン/オルトけい酸テトラメチル=1/14)に、0.01M 塩酸0.78gを添加し、室温(25℃)で24時間攪拌した。得られた溶液をガラス基板(日本電気硝子(株)製、商品名:OA−10G、厚さ700μm)上にスピンコートし、一日、室温(25℃)で静置し、膜厚10nm(推定値)の部材を得た。
比較例4
エタノール2.4gと、フッ化アルキルシラン(Gelest製、商品名:トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン)0.37gと、金属アルコキシド(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)0.78gとを混合した混合溶媒中(トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン/オルトけい酸テトラメチル=1/7)に、0.01M 塩酸0.41gを添加し、室温(25℃)で24時間攪拌した。得られた溶液をガラス基板(日本電気硝子(株)製、商品名:OA−10G、厚さ700μm)上にスピンコートし、一日、室温(25℃)で静置し、膜厚10nm(推定値)の部材を得た。
エタノール2.4gと、フッ化アルキルシラン(Gelest製、商品名:トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン)0.37gと、金属アルコキシド(東京化成工業(株)製、商品名:オルトけい酸テトラメチル)0.78gとを混合した混合溶媒中(トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン/オルトけい酸テトラメチル=1/7)に、0.01M 塩酸0.41gを添加し、室温(25℃)で24時間攪拌した。得られた溶液をガラス基板(日本電気硝子(株)製、商品名:OA−10G、厚さ700μm)上にスピンコートし、一日、室温(25℃)で静置し、膜厚10nm(推定値)の部材を得た。
比較例5
フッ素系有機溶媒(3M製、商品名:Novec 7300)28.1gと、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)0.15gとを混合した混合溶液をガラス基板(日本電気硝子(株)製、商品名:OA−10G、厚さ700μm)上にスピンコーターを用いて、回転速度3000回転/minにて塗布し、塗膜を形成した。該塗膜を25℃で12時間乾燥し、溶剤を除去し、硬化させ、膜厚10nm(推定値)の部材を得た。
フッ素系有機溶媒(3M製、商品名:Novec 7300)28.1gと、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)0.15gとを混合した混合溶液をガラス基板(日本電気硝子(株)製、商品名:OA−10G、厚さ700μm)上にスピンコーターを用いて、回転速度3000回転/minにて塗布し、塗膜を形成した。該塗膜を25℃で12時間乾燥し、溶剤を除去し、硬化させ、膜厚10nm(推定値)の部材を得た。
比較例6
フッ素系有機溶媒(3M製、商品名:Novec 7300)18.7gと、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)0.05gとを混合した混合溶液を参考例2で作製した基材上にスピンコーターを用いて、回転速度3000回転/minにて塗布し、塗膜を形成した。該塗膜を25℃で12時間乾燥し、溶剤を除去し、硬化させ、膜厚10nm(推定値)の部材を得た。
フッ素系有機溶媒(3M製、商品名:Novec 7300)18.7gと、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシラン溶液(信越化学工業(株)製、商品名「X−71−195」、固形分20%)0.05gとを混合した混合溶液を参考例2で作製した基材上にスピンコーターを用いて、回転速度3000回転/minにて塗布し、塗膜を形成した。該塗膜を25℃で12時間乾燥し、溶剤を除去し、硬化させ、膜厚10nm(推定値)の部材を得た。
実施例
以下の試料を用いて着霜性、結露性、着氷性、耐久性の評価を行った。
試料1:参考例1で作成した部材(透明基材)
試料2:参考例2で作成した部材(樹脂基材)
試料3:未処理のコーニング社製ゴリラガラス(Gorilla3、厚さ0.7mmt)
以下の試料を用いて着霜性、結露性、着氷性、耐久性の評価を行った。
試料1:参考例1で作成した部材(透明基材)
試料2:参考例2で作成した部材(樹脂基材)
試料3:未処理のコーニング社製ゴリラガラス(Gorilla3、厚さ0.7mmt)
実施例1
(着霜性)
試料1、2、3を、冬場(夜間の最低気温は−2.7℃)に自動車のフロントガラスに貼り付けて一晩放置した後、早朝にそれぞれの表面の様子を観察した。観察時の気温は1℃であった。
(結果)
試料1、2、3を比較した結果、試料1、2は、試料3よりも着霜した霜の厚さが薄く、解氷速度も速かった。
(着霜性)
試料1、2、3を、冬場(夜間の最低気温は−2.7℃)に自動車のフロントガラスに貼り付けて一晩放置した後、早朝にそれぞれの表面の様子を観察した。観察時の気温は1℃であった。
(結果)
試料1、2、3を比較した結果、試料1、2は、試料3よりも着霜した霜の厚さが薄く、解氷速度も速かった。
実施例2
(結露性)
試料1、2、3を断熱ボックスの窓材として、試料1、2、3を、その処理面が断熱ボックスの内側面になるように設置した。該断熱ボックス内の容器に熱湯を入れた状態で、該断熱ボックスを室内温度−7℃の環境に2時間保管し、試料1、2の断熱ボックス内側面に付着した霜の様子を観察した。
(結果)
試料1、2は、パウダー状の霜が付着していた。この霜は、ブラシや手袋でなでる程度の力で容易に拭き取ることができた。
試料3は、水滴状の氷が付着していた。この氷は、ナイフでもなかなか削れない程度に強固に付着していた。
(結露性)
試料1、2、3を断熱ボックスの窓材として、試料1、2、3を、その処理面が断熱ボックスの内側面になるように設置した。該断熱ボックス内の容器に熱湯を入れた状態で、該断熱ボックスを室内温度−7℃の環境に2時間保管し、試料1、2の断熱ボックス内側面に付着した霜の様子を観察した。
(結果)
試料1、2は、パウダー状の霜が付着していた。この霜は、ブラシや手袋でなでる程度の力で容易に拭き取ることができた。
試料3は、水滴状の氷が付着していた。この氷は、ナイフでもなかなか削れない程度に強固に付着していた。
実施例3
(着氷性1)パウダースノーの積雪評価
試料1、2、3を、水平から45度および60度の角度をつけて設置し、−7℃の環境下で、上部より人工雪を降雪させた。
(結果)
試料1、2は、雪が滑落し、積雪しなかった。
試料3は、積雪し、水平から45度に設置したサンプルは20mmの積雪で、水平から60度に設置したサンプルは10mmの積雪で落雪した。
(着氷性1)パウダースノーの積雪評価
試料1、2、3を、水平から45度および60度の角度をつけて設置し、−7℃の環境下で、上部より人工雪を降雪させた。
(結果)
試料1、2は、雪が滑落し、積雪しなかった。
試料3は、積雪し、水平から45度に設置したサンプルは20mmの積雪で、水平から60度に設置したサンプルは10mmの積雪で落雪した。
実施例4
(着氷性2)ウェットスノーの積雪評価
0℃以上の降雪は、氷状態ではなく水状態の水分を多く含み、ウェットスノーと呼ばれる。本実施例では、+2℃の環境下で、降雪実験を行った。
試料1、2、3を、水平、水平から45度および60度の角度をつけて設置し、+2℃の環境下で、上部より人工雪を降雪させた。
(結果)
水平から60度に設置した試料1、2のサンプルは、一面に積雪する前に、面滑りが発生し、雪が滑落した。
水平から45度に設置した試料1、2のサンプルは、約10mm積雪した後、面滑りが発生し、雪が滑落した。
水平に設置した試料1、2のサンプルは、積雪したが、60mm積雪後、水平から30度傾けると、面滑りが発生し、雪が滑落した。
水平から60度に設置した試料3のサンプルは13mm積雪、水平から45度に設置した試料3のサンプルは20mm積雪、水平に設置した試料3のサンプルは60mm積雪した。これらのサンプルは、積雪後に傾斜角度を90度まで増加しても面滑りは発生せず、雪は滑落しなかった。
(着氷性2)ウェットスノーの積雪評価
0℃以上の降雪は、氷状態ではなく水状態の水分を多く含み、ウェットスノーと呼ばれる。本実施例では、+2℃の環境下で、降雪実験を行った。
試料1、2、3を、水平、水平から45度および60度の角度をつけて設置し、+2℃の環境下で、上部より人工雪を降雪させた。
(結果)
水平から60度に設置した試料1、2のサンプルは、一面に積雪する前に、面滑りが発生し、雪が滑落した。
水平から45度に設置した試料1、2のサンプルは、約10mm積雪した後、面滑りが発生し、雪が滑落した。
水平に設置した試料1、2のサンプルは、積雪したが、60mm積雪後、水平から30度傾けると、面滑りが発生し、雪が滑落した。
水平から60度に設置した試料3のサンプルは13mm積雪、水平から45度に設置した試料3のサンプルは20mm積雪、水平に設置した試料3のサンプルは60mm積雪した。これらのサンプルは、積雪後に傾斜角度を90度まで増加しても面滑りは発生せず、雪は滑落しなかった。
実施例5
(着氷性3)ウェットスノーの着氷性評価
試料1、2、3を水平に設置し、上部より人工雪(+2℃)を約20mm積雪させた後、−5℃の環境に1時間保管した。それぞれの試料上の積雪にナイフで切れ目を入れて剥離しやすさを比較した。
(結果)
試料1、2は、積雪が、切れ目からきれいに剥離しガラス表面が露出した。
試料3は、ガラス表面に凍結した雪氷が残り、ナイフで削ってもガラス表面を容易に露出することができなかった。
(着氷性3)ウェットスノーの着氷性評価
試料1、2、3を水平に設置し、上部より人工雪(+2℃)を約20mm積雪させた後、−5℃の環境に1時間保管した。それぞれの試料上の積雪にナイフで切れ目を入れて剥離しやすさを比較した。
(結果)
試料1、2は、積雪が、切れ目からきれいに剥離しガラス表面が露出した。
試料3は、ガラス表面に凍結した雪氷が残り、ナイフで削ってもガラス表面を容易に露出することができなかった。
実施例6
(着氷性4)
図1に示す引手を有する治具10を準備した。該治具10は、SUS製で、内径44mm、高さ30mmの円柱であり、その側面に直径10mmの引手を溶接してある。
着氷性の評価は、図2に示すように試料20を鉄板30に貼り付け、試料10の表面に治具10を設置した後、該治具10の円筒内部に水を満たし−7℃の環境下に一昼夜保管し、試料10の表面に氷が着氷した状態を人工的に形成した。
このように作成した被検体を、図3に示すように、治具10の引手部に荷重計測装置40を取り付け、垂直に引っ張りあげて、試料表面と氷が剥離した際の荷重の測定を行い、着氷性の評価を行った。
(結果)
試料1は、56.6Nで剥離、試料3は95.3Nで剥離した。
(着氷性4)
図1に示す引手を有する治具10を準備した。該治具10は、SUS製で、内径44mm、高さ30mmの円柱であり、その側面に直径10mmの引手を溶接してある。
着氷性の評価は、図2に示すように試料20を鉄板30に貼り付け、試料10の表面に治具10を設置した後、該治具10の円筒内部に水を満たし−7℃の環境下に一昼夜保管し、試料10の表面に氷が着氷した状態を人工的に形成した。
このように作成した被検体を、図3に示すように、治具10の引手部に荷重計測装置40を取り付け、垂直に引っ張りあげて、試料表面と氷が剥離した際の荷重の測定を行い、着氷性の評価を行った。
(結果)
試料1は、56.6Nで剥離、試料3は95.3Nで剥離した。
実施例7
(耐久性)
試料1に対して、スチールウールを用いた擦傷試験を行い、純水の接触角を評価した。試験は、ボンスタースチールウール#0000を用い、該スチールウールを荷重1kg/cm2で試料表面し押し付け、ストローク片道70mm、往復140mm、擦傷速度140mm/sで、0回から10,000回の擦傷回数のテストを行い、純水の接触角の評価を行った。
(結果)
評価結果を図4に示す。
図4に示すように、10,000回の擦傷試験後も純水接触角100°を保持していた。
(耐久性)
試料1に対して、スチールウールを用いた擦傷試験を行い、純水の接触角を評価した。試験は、ボンスタースチールウール#0000を用い、該スチールウールを荷重1kg/cm2で試料表面し押し付け、ストローク片道70mm、往復140mm、擦傷速度140mm/sで、0回から10,000回の擦傷回数のテストを行い、純水の接触角の評価を行った。
(結果)
評価結果を図4に示す。
図4に示すように、10,000回の擦傷試験後も純水接触角100°を保持していた。
(結果のまとめ)
表1に示すように、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと特定の構造を有するアルコキシシランとを組み合わせて用いた参考例1〜15では、純水の接触角が112〜117°、n−ヘキサデカンの接触角が65〜68°であり、いずれも表面自由エネルギーが低く優れていた。また、純水の滑落角が3〜14°、n−ヘキサデカンの滑落角が2〜6°であり、いずれも滑落性に優れており、更に、滑り性の評価も高く、高い滑落撥水性を有する表面が形成されていることがわかる。
また、実施例3から5の結果から、本発明の滑落撥水層には、積雪が着氷しにくいことがわかる。
このように、実施例1から7の着霜性、結露性、着氷性、耐久性の評価結果から、本発明の滑落撥水層を備えた部材は、難着霜性、難結露性、難着氷性、耐久性を有していることが確認できた。特に、実施例5に示すように、ウェットスノーが氷結した状態でも、本発明の低温環境用部材は、未処理のガラスに対して優位性を有していることが確認できた。
表1に示すように、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと特定の構造を有するアルコキシシランとを組み合わせて用いた参考例1〜15では、純水の接触角が112〜117°、n−ヘキサデカンの接触角が65〜68°であり、いずれも表面自由エネルギーが低く優れていた。また、純水の滑落角が3〜14°、n−ヘキサデカンの滑落角が2〜6°であり、いずれも滑落性に優れており、更に、滑り性の評価も高く、高い滑落撥水性を有する表面が形成されていることがわかる。
また、実施例3から5の結果から、本発明の滑落撥水層には、積雪が着氷しにくいことがわかる。
このように、実施例1から7の着霜性、結露性、着氷性、耐久性の評価結果から、本発明の滑落撥水層を備えた部材は、難着霜性、難結露性、難着氷性、耐久性を有していることが確認できた。特に、実施例5に示すように、ウェットスノーが氷結した状態でも、本発明の低温環境用部材は、未処理のガラスに対して優位性を有していることが確認できた。
また、(6)指紋付着、(7)指紋拭取性の結果から、参考例1〜15の部材は、いずれも指紋が付着し難く、指紋の拭取性に優れていることがわかり、これらの効果は、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと特定の構造を有するアルコキシシランとの縮重合物が有する隣接するパーフルオロポリエーテル構造部位の間隔が広く疎になり、該パーフルオロポリエーテル構造部位が動きやすく柔軟性を有することに起因すると考えられる。
一方、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランを蒸着法により蒸着した比較例1及び2では、表面自由エネルギーが低く、滑落性が良好であるが、滑り性の評価が参考例に比べて劣るため、いずれも参考例と比較して指紋付着及び指紋拭取性の評価が劣っていた。また、アルキルシランを用いた比較例3では、滑落性に優れるものの、表面自由エネルギーが高く、滑り性の評価が悪く、その結果、指紋が広く付着し、10回の拭取り後にも指紋の拭き取り跡がはっきりと視認できた。フッ化アルキルシランを用いた比較例4では、表面自由エネルギーが低く、滑落性が優れるものの、滑り性の評価が悪く、その結果、指紋が広く付着し、10回の拭取り後にも指紋の拭き取り跡がはっきりと視認できた。比較例5及び6では、特定の構造を有するアルコキシシランを使用していないため、いずれも参考例と比較して指紋付着及び指紋拭取性の評価が劣っていた。
一方、パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランを蒸着法により蒸着した比較例1及び2では、表面自由エネルギーが低く、滑落性が良好であるが、滑り性の評価が参考例に比べて劣るため、いずれも参考例と比較して指紋付着及び指紋拭取性の評価が劣っていた。また、アルキルシランを用いた比較例3では、滑落性に優れるものの、表面自由エネルギーが高く、滑り性の評価が悪く、その結果、指紋が広く付着し、10回の拭取り後にも指紋の拭き取り跡がはっきりと視認できた。フッ化アルキルシランを用いた比較例4では、表面自由エネルギーが低く、滑落性が優れるものの、滑り性の評価が悪く、その結果、指紋が広く付着し、10回の拭取り後にも指紋の拭き取り跡がはっきりと視認できた。比較例5及び6では、特定の構造を有するアルコキシシランを使用していないため、いずれも参考例と比較して指紋付着及び指紋拭取性の評価が劣っていた。
本発明の低温環境用部材は、滑落撥水性を有し、難着霜性、難結露性、難着氷性、耐久性に優れるため、難着霜性、難結露性、または難着氷性のうち少なくとも一つの性質を必要とする製品、たとえば、信号機、自動車の窓、窓ガラス、航空機の表面材、エアコンの室外機、ヒートポンプユニットの熱交換器等に好適に使用することができる。
10 治具
20 試料
30 鉄板
40 荷重計測装置
20 試料
30 鉄板
40 荷重計測装置
Claims (6)
- 基材上に滑落撥水層を形成してなる部材であって、
該滑落撥水層がパーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランと下記一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシランの中から選ばれる少なくとも1種との縮重合物を含むことを特徴とする、低温環境用部材。
- 前記パーフルオロポリエーテル構造を有するアルコキシシランが、パーフルオロポリエーテル構造を有するトリメトキシシランであることを特徴とする、請求項1に記載の低温環境用部材。
- 前記一般式(1)で表されるアルコキシシランが、テトラアルコキシシランであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の低温環境用部材。
- 前記テトラアルコキシシランが、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の低温環境用部材。
- 前記滑落撥水層表面の純水の接触角が95°以上120°以下、且つ、滑落角が30°以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の低温環境用部材。
- 前記滑落撥水層表面のn−ヘキサデカンの接触角が50°以上75°以下、且つ、滑落角が15°以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の低温環境用部材。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016070706 | 2016-03-31 | ||
JP2016070706 | 2016-03-31 |
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---|---|
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JP (1) | JP2017186495A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019143103A (ja) * | 2018-02-23 | 2019-08-29 | ユニマテック株式会社 | 含フッ素シリカコンポジット粒子 |
JP2020158649A (ja) * | 2019-03-27 | 2020-10-01 | 三菱マテリアル電子化成株式会社 | 防汚性膜形成用液組成物 |
WO2020213486A1 (ja) * | 2019-04-18 | 2020-10-22 | Dic株式会社 | 構造体、熱交換器用部材、輸送機用部材 |
WO2023167203A1 (ja) * | 2022-03-01 | 2023-09-07 | ダイキン工業株式会社 | 着氷着雪防止組成物 |
-
2016
- 2016-05-23 JP JP2016102743A patent/JP2017186495A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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JP7067700B2 (ja) | 2018-02-23 | 2022-05-16 | ユニマテック株式会社 | 含フッ素シリカコンポジット粒子 |
JP2020158649A (ja) * | 2019-03-27 | 2020-10-01 | 三菱マテリアル電子化成株式会社 | 防汚性膜形成用液組成物 |
JP7266438B2 (ja) | 2019-03-27 | 2023-04-28 | 三菱マテリアル電子化成株式会社 | 防汚性膜形成用液組成物 |
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WO2023167203A1 (ja) * | 2022-03-01 | 2023-09-07 | ダイキン工業株式会社 | 着氷着雪防止組成物 |
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