以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、複数の実施の形態及び変形例について説明するが、各実施の形態及び変形例で説明された構成を適宜組合わせることは出願当初から予定されている。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に従うハイブリッド車両の全体構成を説明するためのブロック図である。図1を参照して、ハイブリッド車両100は、エンジン2と、駆動装置22と、伝達ギヤ8と、駆動軸12と、車輪14と、蓄電装置16と、ECU(Electronic Control Unit)26と、モードスイッチ(モードSW)28とを備える。また、このハイブリッド車両100は、電力変換器23と、接続部24とをさらに備える。
エンジン2は、燃料の燃焼による熱エネルギーをピストンやロータなどの運動子の運動エネルギーに変換することによって動力を出力する内燃機関である。エンジン2の燃料としては、ガソリンや軽油、エタノール、液体水素、天然ガスなどの炭化水素系燃料、又は、液体若しくは気体の水素燃料が好適である。
駆動装置22は、動力分割装置4と、モータジェネレータ6,10と、電力変換器18,20とを含む。モータジェネレータ6,10は、交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。モータジェネレータ6は、動力分割装置4を経由してエンジン2により駆動される発電機として用いられるとともに、エンジン2を始動するための電動機としても用いられる。モータジェネレータ10は、主として電動機として動作し、駆動軸12を駆動する。一方で、車両の制動時や下り斜面での加速度低減時には、モータジェネレータ10は、発電機として動作して回生発電を行なう。
動力分割装置4は、たとえば、サンギヤ、キャリア、リングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構を含む。動力分割装置4は、エンジン2の駆動力を、モータジェネレータ6の回転軸に伝達される動力と、伝達ギヤ8に伝達される動力とに分割する。伝達ギヤ8は、車輪14を駆動するための駆動軸12に連結される。また、伝達ギヤ8は、モータジェネレータ10の回転軸にも連結される。
蓄電装置16は、再充電可能な直流電源であり、たとえば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池や、大容量のキャパシタ等を含んで構成される。蓄電装置16は、電力変換器18,20へ電力を供給する。また、蓄電装置16は、モータジェネレータ6及び/又は10の発電時に発電電力を受けて充電される。さらに、蓄電装置16は、接続部24を通じて車両外部の電源から供給される電力を受けて充電され得る。
なお、蓄電装置16の充電状態は、たとえば、蓄電装置16の満充電状態に対する現在の蓄電量を百分率で表したSOCによって示される。SOCは、たとえば、図示されない電圧センサ及び/又は電流センサによって検出される、蓄電装置16の出力電圧及び/又は入出力電流に基づいて算出される。SOCは、蓄電装置16に別途設けられるECUで算出してもよいし、蓄電装置16の出力電圧及び/又は入出力電流の検出値に基づいてECU26で算出してもよい。
電力変換器18は、ECU26から受ける制御信号に基づいて、モータジェネレータ6と蓄電装置16との間で双方向の直流/交流電力変換を実行する。同様に、電力変換器20は、ECU26から受ける制御信号に基づいて、モータジェネレータ10と蓄電装置16との間で双方向の直流/交流電力変換を実行する。これにより、モータジェネレータ6,10は、蓄電装置16との間での電力の授受を伴なって、電動機として動作するための正トルク又は発電機として動作するための負トルクを出力することができる。電力変換器18,20は、たとえばインバータによって構成される。なお、蓄電装置16と電力変換器18,20との間に、直流電圧変換のための昇圧コンバータを配置することも可能である。
電力変換器23は、接続部24に電気的に接続される車両外部の外部電源(図示せず)からの電力を蓄電装置16の電圧レベルに変換して蓄電装置16へ出力する(以下、外部電源による蓄電装置16の充電を「外部充電」とも称する。)。電力変換器23は、たとえば整流器やインバータを含んで構成される。なお、外部電源の受電方法は、接続部24を用いた接触受電に限定されず、接続部24に代えて受電用コイル等を用いて外部電源から非接触で受電してもよい。
ECU26は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置、入出力バッファ等を含み(いずれも図示せず)、ハイブリッド車両100における各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
ECU26の主要な制御として、ECU26は、車速とアクセルペダルの操作に応じたアクセル開度とに基づいて車両駆動トルク(要求値)を算出し、算出された車両駆動トルクに基づいて車両駆動パワー(要求値)を算出する。そして、ECU26は、蓄電装置16のSOCに基づいて蓄電装置16の充電要求パワーをさらに算出し、車両駆動パワーに充電要求パワーを加えたパワー(以下「車両パワー」と称する。)を発生するようにエンジン2及び駆動装置22を制御する。
ECU26は、車両パワーが小さいときは、エンジン2を停止させてモータジェネレータ10のみで走行(EV走行)するように駆動装置22を制御する。車両パワーが大きくなると、ECU26は、エンジン2を作動させて走行(HV走行)するようにエンジン2及び駆動装置22を制御する。
ここで、ECU26は、HV走行を許容しつつもEV走行を主体的に行なうことによって蓄電装置16のSOCを積極的に消費するCD(Charge Depleting)モードと、HV走行とEV走行とを適宜切替えることによってSOCを所定範囲に制御するCS(Charge Sustaining)モードとを選択的に適用して車両の走行を制御する走行制御を実行する。
図2は、CDモード及びCSモードを説明するための図である。図2を参照して、外部電源による外部充電により蓄電装置16が満充電状態(SOC=MAX)となった後、CDモードで走行が開始されたものとする。
CDモードは、蓄電装置16のSOCを積極的に消費するモードであり、基本的には、蓄電装置16に蓄えられた電力(主には外部充電による電気エネルギー)を消費するものである。CDモードでの走行時は、SOCを維持するためにはエンジン2は作動しない。具体的には、たとえば、CDモードの選択時には蓄電装置16の充電要求パワーが零に設定される。これにより、車両の減速時等に回収される回生電力やエンジン2の作動に伴ない発電される電力により一時的にSOCが増加することはあるものの、結果的に充電よりも放電の割合の方が相対的に大きくなり、全体としては走行距離の増加に伴ないSOCが減少する。
CSモードは、蓄電装置16のSOCを所定範囲に制御するモードである。一例として、時刻t1において、SOCの低下を示す所定値StgにSOCが低下すると、CSモードが選択され、その後のSOCが所定範囲に維持される。具体的には、SOCが低下するとエンジン2が作動し(HV走行)、SOCが上昇するとエンジン2が停止する(EV走行)。すなわち、CSモードでは、SOCを維持するためにエンジン2が作動する。
このハイブリッド車両100では、車両パワーが所定のエンジン始動しきい値よりも小さいときは、エンジン2を停止してモータジェネレータ10によって走行する(EV走行)。一方、車両パワーが上記のエンジン始動しきい値を超えると、エンジン2を作動させて走行する(HV走行)。HV走行では、モータジェネレータ10の駆動力に加えて、又はモータジェネレータ10の代わりに、エンジン2の駆動力を用いてハイブリッド車両100が走行する。HV走行中にエンジン2の作動に伴ないモータジェネレータ6が発電した電力は、モータジェネレータ10に直接供給されたり、蓄電装置16に蓄えられたりする。
CDモードにおけるエンジン始動しきい値は、CSモードにおけるエンジン始動しきい値よりも大きくするのが好ましい。すなわち、CDモードにおいてハイブリッド車両100がEV走行する領域は、CSモードにおいてハイブリッド車両100がEV走行する領域よりも大きいのが好ましい。これにより、CDモードにおいては、エンジン2が始動する頻度が抑制され、CSモードに比べてEV走行の機会をさらに拡大することができる。一方、CSモードにおいては、エンジン2及びモータジェネレータ10の両方を用いて効率よくハイブリッド車両100が走行するように制御することができる。
CDモードにおいても、車両パワー(車両駆動パワーに等しい。)がエンジン始動しきい値を超えれば、エンジン2は作動する。なお、車両パワーがエンジン始動しきい値を超えていなくても、エンジン2や排気触媒の暖機時などエンジン2の作動が許容される場合もある。一方、CSモードにおいても、SOCが上昇すればエンジン2は停止する。すなわち、CDモードは、エンジン2を常時停止させて走行するEV走行に限定されるものではなく、CSモードも、エンジン2を常時作動させて走行するHV走行に限定されるものではない。CDモードにおいても、CSモードにおいても、EV走行とHV走行とが可能である。
再び図1を参照して、モードスイッチ28は、CDモード及びCSモードのいずれかをユーザが選択可能とするための入力装置である。モードスイッチ28は、ユーザの操作により選択されたモードに応答して信号MDをECU26へ出力する。なお、このモードスイッチ28は、必須のものではない。
そして、ECU26は、CDモードとCSモードとのモード切替に応じて、アクセルペダルの操作に対する車両駆動トルクの応答性を変更する。具体的には、ECU26は、SOCに基づいて、或いは運転者によるモードスイッチ28の操作に応じて、CDモードが選択されているときは、CSモードが選択されているときよりも、アクセルペダルの操作に対する車両駆動トルクの応答性を高くする。このようなモード切替に応じたトルク応答性の変更により、CDモードでの特別な走りを実現することができる。以下、この点について説明する。
図3は、比較例として従来のハイブリッド車両における駆動力応答性の設定を示した図である。図3を参照して、横軸は、アクセルペダルを踏んでから駆動力(車両駆動トルク)が所定量増加するまでの時間を示し、すなわち、アクセルペダルの操作に対する車両駆動トルクの応答性を示す。縦軸は、アクセルペダルの操作により駆動力が所定量増加するときの車両振動の大きさを示し、すなわち、車両駆動トルクの変化に伴なうショックの大きさを示す。なお、ショックは、車両駆動トルクが変化したときに、ドライブシャフトやギヤ系の捩れやギヤのガタによる歯打ち等によって生じるものである。
点線は、アクセルペダルの操作に対する車両駆動トルクの応答性と、車両駆動トルクの変化に伴なうショックの大きさとが背反の関係にあることを示している。従来のハイブリッド車両では、たとえば、ショック低減を優先して、アクセルペダルの操作に対する車両駆動トルクの応答性は、点P0で示されるポイント(応答性を抑えたポイント)に一律に設定されている。
図4は、この発明の実施の形態1に従うハイブリッド車両100における駆動力応答性の設定を示した図である。この図4は、図3に対応するものであり、横軸及び縦軸は、図3と同じである。図4を参照して、点P1は、CSモードが選択されているときの駆動力応答性の設定を示し、点P2は、CDモードが選択されているときの駆動力応答性の設定を示す。すなわち、この実施の形態1に従うハイブリッド車両100では、CDモードが選択されているときと、CSモードが選択されているときとで、駆動力応答性の設定が切替えられる。具体的には、CDモードが選択されているときは、CSモードが選択されているときよりも、アクセルペダルの操作に対する車両駆動トルクの応答性が高い。
一般的に、モータジェネレータの応答性は、エンジンの応答性よりも高く、EV走行が主体的に行なわれるCDモードと、HV走行とEV走行とを適宜切替えてSOCを所定範囲に制御するCSモードとでは、求められるトルク応答性は異なる。しかしながら、図3に示したように、従来のハイブリッド車両のように車両駆動トルクの応答性を一律に設定していては、CDモードにおいてユーザ満足度の高い特別な走りを実現することはできない。
そこで、この実施の形態1に従うハイブリッド車両100においては、図4に示されるように、CDモードが選択されているときと、CSモードが選択されているときとで、駆動力応答性の設定を切替えるようにし、CDモードが選択されているときは、CSモードが選択されているときよりも、アクセルペダルの操作に対する車両駆動トルクの応答性が高められる。これにより、EV走行が主体的に行なわれるCDモードにおいて、モータジェネレータの高応答性を十分に活かして特別な走りを実現するとともに、CSモードにおいては、従来のハイブリッド車両に準じた応答性(ショック抑制)の設定とすることができる。
図5は、駆動力応答性の高低を説明するための図である。図5を参照して、横軸は時間であり、縦軸は車両駆動トルクを示す。時刻t1において、アクセルペダルが踏み込まれ、それに伴なって車両駆動トルクの目標値が変化(増加)するものとする。
線k1は、駆動力応答性が相対的に高い場合の車両駆動トルクの変化を示し、具体的には、図4の点P2で示される駆動力応答性に設定されるCDモードが選択されているときの車両駆動トルクの変化を示す。線k2は、駆動力応答性が相対的に低い場合の車両駆動トルクの変化を示し、具体的には、図4の点P1で示される駆動力応答性に設定されるCSモードが選択されているときの車両駆動トルクの変化を示す。
このように、このハイブリッド車両100では、CDモードが選択されているときは、CSモードが選択されているときよりも、アクセルペダルの操作に対する車両駆動トルクの応答性を高くすることによって、CDモードにおいて特別な走りを実現することができる。
再び図1を参照して、モード切替に応じた駆動力応答性の切替は、ECU26によって実行される。すなわち、ECU26は、車速とアクセルペダルの操作に応じたアクセル開度とに基づいて算出される車両駆動トルク(要求値)の変化速度を制限するための処理を実行する。この処理によって、車両駆動トルクの応答性が決定される。そして、ECU26は、上記の処理において車両駆動トルクの変化速度の制限を規定するための設定をCDモードとCSモードとで切替えることによって、CDモードが選択されているときは、CSモードが選択されているときよりも、車両駆動トルクの応答性を高くする。
上記の処理は、たとえば、車両駆動トルクの変化率を制限するレート処理や、遅れフィルタ等による遅れ処理を施す「なまし」処理等である。そして、ECU26は、たとえば、上記レート処理における車両駆動トルクの変化率の制限値や、上記なまし処理における時定数をモードに応じて切替えることによって、CDモードとCSモードとで車両駆動トルクの応答性を切替える。
ECU26は、さらに、モード切替に応じて車両駆動トルクの応答性を変更する場合に、上記応答性をモード切替の前の値からモード切替の後の値へ時間が経過するに従って近づくように変化させる緩変化処理を実行する。すなわち、モード切替に伴ない車両駆動トルクの応答性を変更することにより、CDモードにおいて、アクセルペダル操作に対するトルク応答性が高い特別な走りを実現することができる。しかしながら、モード切替に伴なう車両駆動トルクの応答性の変化がユーザに違和感を与える可能性がある。そこで、このハイブリッド車両100では、モード切替に応じて車両駆動トルクの応答性を変更する場合に、上記の緩変化処理が実行される。これにより、トルク応答性の変化によりユーザが感じ得る違和感の軽減が図られる。
ここで、モード切替に応じた上記応答性の変更時に車両駆動トルクの変更量が大きい場合、上記の緩変化処理のために応答性の変更に時間がかかり、その結果、車両駆動トルクの目標値への追従性が悪化する可能性がある。そこで、この実施の形態1に従うハイブリッド車両100では、モード切替が行なわれてから所定時間が経過すると、所定時間が経過する前に比べて、緩変化処理による応答性の変更速度が高められる。これにより、車両駆動トルクの変更量が大きい場合に、上記応答性の変更が促進され、その結果、車両駆動トルクの追従性の悪化を回避し得る。したがって、このハイブリッド車両100によれば、CDモードでの特別な走りを実現し、かつ、その実現に伴ないユーザに与え得る違和感を軽減することができる。
なお、上記の緩変化処理について、車両駆動トルクの応答性をモード切替の前の値からモード切替の後の値へ時間が経過するに従って近づくように変化させるとは、上記応答性をモード切替の前の値からモード切替の後の値まで一気にステップ状に変化させないという意味である。この緩変化処理は、たとえば、上記応答性の変化率を制限するレート処理や、遅れフィルタ等による遅れ処理を施す「なまし」処理、上記応答性を段階的に変化させる処理等を含み得る。
図6は、車両駆動トルクの応答性をモード切替に応じて変更する際の緩変化処理の様子を示した図である。ここでは、車両駆動トルクの応答性の変化率を制限するレート処理によって緩変化処理が実現される場合について代表的に説明される。図6を参照して、縦軸は車両駆動トルクの変化レート(応答性)を示し、横軸は時間を示す。値R1は、CSモード時の車両駆動トルクの変化レート(応答性)を示す。値R2(R2>R1)は、CDモード時の車両駆動トルクの変化レート(応答性)を示す。
時刻t1において、CSモードからCDモードへ切替わると、車両駆動トルクの変化レートの切替が開始される。車両駆動トルクの変化レートは、R1からR2へステップ状に切替えられるのではなく、所定のレートをもって切替えられる。その切替時のレートについては、時刻t1から所定時間Δt後の時刻t2までは第1のレートであり、時刻t2になると、第1のレートよりも変更速度の高い第2のレートとなる。
緩変化処理は、車両駆動トルクの応答性を緩やかに切替えることにより、トルク応答性の変化によりユーザが感じ得る違和感の軽減を図るものであるが、応答性の変更時に車両駆動トルクの変更量が大きい場合(アクセル開度が大きいとき)、緩変化処理のために応答性の変更に時間がかかり、その結果、車両駆動トルクの目標値への追従性が悪化する可能性がある。そこで、この実施の形態1では、モード切替が行なわれてから所定時間Δtが経過すると、緩変化処理の変化レートが高められる。これにより、車両駆動トルクの変更量が大きい場合のトルク追従性の悪化を抑制しつつ、トルク応答性の変化によりユーザが感じ得る違和感の軽減を図ることができる。
なお、所定時間Δtは、車両駆動トルクの変化レート(R1,R2)の大きさや、車両駆動トルクの目標値への追従性等を考慮して、適宜設定することができる。
図7は、図1に示したECU26により実行される車両駆動トルク(要求値)の演算処理の手順を説明するためのフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理は、所定時間毎又は所定条件の成立時にメインルーチンから呼び出されて実行される。
図7を参照して、ECU26は、アクセルペダルの操作量及び車速の検出値を受ける(ステップS10)。なお、アクセルペダルの操作量は、図示しないアクセルポジションセンサによって検出され、車速は、たとえば車軸の回転速度を検出することによって車速を検出する車速センサによって検出される。
次いで、ECU26は、検出されたアクセルペダル操作量及び車速に基づいて、車両の要求駆動トルク(車両駆動トルクの要求値)を算出する(ステップS20)。なお、要求駆動トルクは、アクセルペダル操作量に応じたアクセル開度、車速、及び車両駆動トルクの関係について定めたマップ等を用いて、検出されたアクセルペダル操作量及び車速に基づいて算出することができる。
続いて、ECU26は、CDモードとCSモードとのモード切替があったか否かを判定する(ステップS30)。たとえば、図2に示したようにSOCに基づいて、或いはユーザによるモードスイッチ28(図1)の操作に応じて、モード切替が行なわれ得る。そして、ステップS30においてモード切替があったものと判定されると(ステップS30においてYES)、ECU26は、CDモードが選択されているか否かを判定する(ステップS40)。なお、ここではCSモードが選択されているか否かを判定してもよい。
CDモードが選択されているものと判定されると(ステップS40においてYES)、ECU26は、車両駆動トルクの応答性を決定する応答性定数について、CDモード用の応答性定数(たとえば図6の値R2)を選択する(ステップS50)。一方、ステップS40においてCSモードが選択されているものと判定されると(ステップS40においてNO)、ECU26は、上記応答性定数について、CSモード用の応答性定数(たとえば図6の値R1)を選択する(ステップS60)。なお、CDモード用及びCSモード用の各応答性定数は、CDモードが選択されているときは、CSモードが選択されているときよりも、要求駆動トルクの応答性が高くなるように設定される。
そして、ステップS50又はステップS60においてモード切替後の応答性定数が選択されると、ECU26は、車両駆動トルクの応答性の切替処理を実行する(ステップS70)。この駆動トルク応答性切替処理においては、車両駆動トルクの応答性がモード切替の前の値からモード切替の後の値へ時間が経過するに従って近づく緩変化処理が実行される。駆動トルク応答性切替処理の詳細については、後ほど説明する。
なお、ステップS30においてモード切替はないものと判定された場合は(ステップS30においてNO)、ECU26は、ステップS40〜S70の処理を実行することなくステップS80へ処理を移行する。
図8は、図7に示した駆動トルク応答性切替処理の手順を説明するためのフローチャートである。図8を参照して、ECU26は、緩変化処理の終了条件が成立しているか否かを判定する(ステップS110)。緩変化処理は、上述のように、車両駆動トルクの応答性をモード切替の前の値からモード切替の後の値へ時間が経過するに従って近づくように変化させるための処理である。そして、たとえば、モード切替後の要求駆動トルクの応答性(切替後目標値)と要求駆動トルクの応答性の現在値との差が所定値以下となった場合に、緩変化処理の終了条件が成立する。
ステップS110において緩変化処理の終了条件が成立したものと判定されると(ステップS110においてYES)、ECU26は、緩変化処理終了フラグをONにする(ステップS120)。一方、ステップS110において緩変化処理の終了条件が成立していないと判定されると(ステップS110においてNO)、ECU26は、緩変化処理終了フラグをOFFにする(ステップS130)。なお、駆動トルク応答性切替処理の開始直後は、緩変化処理終了フラグはOFFである。
次いで、ECU26は、緩変化処理終了フラグがOFFであるか否かを判定する(ステップS140)。そして、緩変化処理終了フラグがOFFであると判定されると(ステップS140においてYES)、ECU26は、さらに、アクセル開度が一定であるか否かを判定する(ステップS150)。なお、アクセル開度が一定であるか否かは、アクセル開度が厳密に一定であるか否かではなく、アクセル開度の変動幅が一定時間一定範囲内かどうかや、車両駆動トルクの実績値(推定値)と目標値との差分が一定範囲内かどうか等によって判定され得る。
ステップS150においてアクセル開度は一定であると判定された場合は(ステップS150においてNO)、モード切替に応じて車両駆動トルクの応答性を直ちに切替えてもユーザに違和感を与えることはないので、ECU26は、後述のステップS190における緩変化処理を実行することなく、ステップS200へ処理を移行する。すなわち、モード切替時にアクセル開度は一定であると判定された場合は、車両駆動トルクの応答性はモード切替後の応答性に直ちに切替えられる。
ステップS150においてアクセル開度は一定ではないと判定されると(ステップS150においてNO)、ECU26は、モード切替後から所定時間Δt(図6)が経過したか否かを判定する(ステップS160)。モード切替後から所定時間Δtが経過していない場合は(ステップS160においてNO)、ECU26は、後述のステップS190において実行される緩変化処理で用いられる応答性定数として、緩変化用の第1の応答性定数を選択する(ステップS170)。一方、モード切替後から所定時間Δtが経過したものと判定されると(ステップS160においてYES)、ECU26は、ステップS190において実行される緩変化処理で用いられる応答性定数として、急変化用の第2の応答性定数を選択する(ステップS180)。
ステップS170又はS180において応答性定数が選択されると、ECU26は、車両駆動トルクの応答性をモード切替の前の値からモード切替の後の値へ時間が経過するに従って近づくように変化させる緩変化処理を実行する(ステップS190)。具体的には、ECU26は、モード切替に伴なう要求駆動トルクの応答性の変更に対して、たとえば、トルク応答性の変化率を制限するレート処理や、遅れフィルタ等による遅れ処理を施す「なまし」処理、上記応答性を段階的に変化させる処理等を施す。その後、ECU26は、ステップS110へ処理を戻す。
そして、ステップS140において緩変化処理終了フラグがONであると判定されると(ステップS140においてNO)、ECU26は、上述の緩変化処理を非実行とする(ステップS200)。すなわち、要求駆動トルクの応答性は、モード切替後の応答性(切替後の応答性目標値)へ直ちに変更される。
以上のように、この実施の形態1においては、CDモードの選択時とCSモードの選択時とで、アクセルペダルの操作に対する車両駆動トルクの応答性が切替えられる。具体的には、CDモードが選択されているときは、CSモードが選択されているときよりも、アクセルペダルの操作に対する車両駆動トルクの応答性が高い。これにより、CDモードでのユーザ満足度の高い特別な走りを提供することができる。さらに、この実施の形態1では、モード切替に応じて車両駆動トルクの応答性を変更する場合に緩変化処理を実行することによって、トルク応答性の変化によりユーザが感じ得る違和感の軽減が図られる。
また、この実施の形態1では、モード切替が行なわれてから所定時間Δtが経過すると、所定時間Δtが経過する前に比べて、緩変化処理による上記応答性の変更速度を高くする。これにより、車両駆動トルクの変更量が大きい場合に、上記応答性の変更が促進され、その結果、車両駆動トルクの追従性の悪化を回避し得る。したがって、この実施の形態1によれば、CDモードでの特別な走りを実現し、かつ、その実現に伴ないユーザに与え得る違和感を軽減することができる。
[実施の形態2]
上記の実施の形態1では、モード切替が行なわれてから所定時間Δtが経過すると、所定時間Δtが経過する前に比べて、車両駆動トルクの応答性を切替える際の緩変化処理における応答性切替速度が高められる。これにより、モード切替に応じたトルク応答性の変更時にトルク変更量が大きい場合に、トルクの追従性悪化の回避が図られている。
この実施の形態2では、モード切替時に車両駆動トルクの変更量の大小が判断され、モード切替時のトルク変更量が大きい場合には、トルク変更量が小さい場合よりも、モード切替に応じてトルク応答性を切替える際の緩変化処理における応答性変更速度が高められる。
図9は、モード切替時にアクセルペダル操作量が相対的に小さいときの、モード切替に応じてトルク応答性を変更する際の緩変化処理の様子を示した図である。一方、図10は、モード切替時にアクセルペダル操作量が相対的に大きいときの、モード切替に応じてトルク応答性を変更する際の緩変化処理の様子を示した図である。なお、ここでは、車両駆動トルクの応答性の変化率を制限するレート処理によって緩変化処理が実現される場合について代表的に説明される。
図9を参照して、値R1は、CSモード時の車両駆動トルクの変化レート(応答性)を示す。値R2(R2>R1)は、CDモード時の車両駆動トルクの変化レート(応答性)を示す。時刻t11においてCSモードからCDモードへ切替わると、車両駆動トルクの変化レート(応答性)の切替が開始される。車両駆動トルクの変化レート(応答性)は、R1からR2(R2>R1)へステップ状に切替えられるのではなく、所定のレートをもって変更される。
ここで、時刻t11におけるアクセルペダル操作量は、しきい値THよりも小さく、モード切替時の車両駆動トルクの変更量は相対的に小さいものと判断される。したがって、モード切替に応じて車両駆動トルクの変化レート(応答性)を変更する際の切替レートは、緩変化用の第1のレートが採用される。
図10を参照して、時刻t11におけるアクセルペダル操作量がしきい値TH以上である場合には、モード切替時の車両駆動トルクの変更量は相対的に大きいものと判断される。したがって、モード切替に応じて車両駆動トルクの変化レート(応答性)を変更する際の切替レートは、上記の第1レートよりも変更速度の高い、急変化用の第2のレートが採用される。これにより、モード切替に応じたトルク応答性の切替時にトルク変更量が大きい場合に、トルクの追従性が悪化するのを回避することができる。
この実施の形態2に従うハイブリッド車両の全体構成は、図1に示したハイブリッド車両100と同じである。また、この実施の形態2におけるECU26により実行される車両駆動トルク(要求値)の演算処理の全体の流れは、図7に示したフローチャートで示され、この実施の形態2は、図8に示した駆動トルク応答性切替処理の手順が実施の形態1と異なる。
図11は、実施の形態2における駆動トルク応答性切替処理の手順を説明するためのフローチャートである。図11を参照して、このフローチャートは、図8に示したフローチャートにおいて、ステップS160に代えてステップS165を含む。
すなわち、ステップS150においてアクセル開度は一定ではないと判定されると(ステップS150においてNO)、ECU26は、アクセル開度がしきい値THであるか否かを判定する(ステップS165)。アクセル開度がしきい値THよりも小さいと判定されると(ステップS165においてNO)、モード切替時の車両駆動トルクの変更量は相対的に小さいものと判断され、ステップS170へ処理が移行される。すなわち、ステップS190において実行される緩変化処理で用いられる応答性定数として、緩変化用の第1の応答性定数が選択される。
一方、ステップS165においてアクセル開度がしきい値TH以上であると判定されると(ステップS165においてYES)、モード切替時の車両駆動トルクの変更量は相対的に大きいものと判断され、ステップS180へ処理が移行される。すなわち、ステップS190において実行される緩変化処理で用いられる応答性定数として、急変化用の第2の応答性定数が選択される。なお、その他の各ステップにおける処理は、図8で説明したとおりである。
なお、上記においては、モード切替時のアクセル開度がしきい値TH以上であるか否かを判定することによって、モード切替時の車両駆動トルクの変更量が相対的に大きいか否かを判定するものとしたが、アクセル開度に代えて車両駆動トルクによって直接判定してもよい。たとえば、モード切替時の要求駆動トルクの変更量が所定のしきい値以上であるか否かによって、ステップS190において実行される緩変化処理で用いられる応答性定数を切替えるようにしてもよい。
以上のように、この実施の形態2においては、アクセルペダルの操作量が相対的に大きい場合(車両駆動トルクの変更量が相対的に大きい場合)には、車両駆動トルクの応答性の変更が速められ、その結果、車両駆動トルクの追従性の悪化を回避し得る。したがって、この実施の形態2によっても、CDモードでの特別な走りを実現し、かつ、その実現に伴ないユーザに与え得る違和感を軽減することができる。
なお、上記の各実施の形態では、エンジン2と2つのモータジェネレータ6,10とが動力分割装置4によって連結された構成のハイブリッド車両100(図1)における制御について説明したが、この発明が適用されるハイブリッド車両は、このような構成のものに限定されない。
たとえば、図12に示されるように、エンジン2と1つのモータジェネレータ10とが、クラッチ15を介して直列的に連結された構成のハイブリッド車両100Aに対しても、上記の各実施の形態で説明した制御を適用することが可能である。
また、特に図示しないが、モータジェネレータ6を駆動するためにのみエンジン2を用い、モータジェネレータ10でのみ車両の駆動力を発生する、いわゆるシリーズ型のハイブリッド車両にも、この発明は適用可能である。
また、上記の各実施の形態においては、ハイブリッド車両100(100A)は、外部電源によって蓄電装置16を外部充電可能なハイブリッド車としたが、この発明は、外部充電機構(電力変換器23及び接続部24)を有していないハイブリッド車両にも適用可能である。CDモード/CSモードは、外部充電可能なハイブリッド車両に好適なものであるが、必ずしも外部充電可能なハイブリッド車両のみに限定されるものでもない。
なお、上記において、エンジン2は、この発明における「内燃機関」の一実施例に対応し、モータジェネレータ10は、この発明における「電動機」の一実施例に対応する。また、ECU26は、この発明における「制御装置」の一実施例に対応し、電力変換器23及び接続部24は、この発明における「充電機構」の一実施例を形成する。
今回開示された各実施の形態は、適宜組合わせて実施することも予定されている。そして、今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。