以下、図面を参照しながら本件に関する実施形態を詳細に説明する。
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るチップ部品の固定用治具10を示す図である。図2は、実施形態1に係る固定用治具10を上面側から眺めた斜視図である。図3は、実施形態1に係る固定用治具10を下面側から眺めた斜視図である。図4は、実施形態1に係る固定用治具10によってチップ部品を固定(保持)している状態を示す図である。図1には、固定用治具10の上面図、立面図、右側面図を示している。
固定用治具10は、配線基板に実装されている、例えば下面に半田ボール等の電極(バンプ)を格子状に配列させたチップ部品を新たな別のチップ部品と交換するリペア時に用いる治具であり、チップ部品を固定(保持)する用途で用いられる。より具体的には、配線基板に実装されたチップ部品に不良が発見された場合、当該不良のチップ部品を配線基板から取り外した後、良品のチップ部品を配線基板へと新たに搭載する。配線基板に対する新たなチップ部品の搭載は、チップ部品の下面に配列された半田ボールにクリーム半田を塗布してからリフロー炉で加熱することで行われる。本実施形態に係る固定用治具10は、例えば、チップ部品のリペアを行うに当たり、新たなチップ部品の半田ボールにクリーム半田を塗布する際に、チップ部品を固定、保持する用途で好適に使用される。
図1〜4に示すように、固定用治具10は、ハウジング11、ハウジング11に形成されるチップ収容凹部12、ハウジング11に取り付けられる第1押圧体13a及び第2押圧体13b等を備えている。チップ収容凹部12は、チップ部品1を収容する収容空間であり、ハウジング11の上面11aに対して開口する凹部として形成されている。ハウジング11は、略直方体形状を有するベース部材であり、固定用治具10の各部品が配設されている。図中の符号11b〜11fは、それぞれハウジング11の下面、右面、正面(前面)、左面、背面(後面)を示す。上面11a及び下面11b、右面11c及び左面11e、正面11d及び背面11fは互いに対向している。但し、固定用治具10における
ハウジング11の形状は特に限定されない。
ここで、ハウジング11におけるチップ収容凹部12について説明する。図1に示すように、チップ収容凹部12は略正方形の平面形状を有している。チップ収容凹部12は、互いに直交する第1壁部121及び第2壁部122、互いに直交する第3壁部123及び第4壁部124によって、その平面形状が画定されている。これらの各壁部121〜124は、チップ収容凹部12の底面12aから垂直に立設されている。以下、第1壁部121及び第2壁部122によって形成される角部を「位置決め角部125」と呼ぶ。この位置決め角部125は、チップ収容凹部12にチップ部品1を収容する際、チップ部品1の角部を位置決め(位置合わせ)するために用いられる。位置決め角部125は、第1壁部121及び第2壁部122によって形成される直角面ともいえる。また、第3壁部123及び第4壁部124によって形成される角部を「第2角部126」と呼ぶ。第2角部126は、第3壁部123及び第4壁部124によって形成される直角面ともいえる。
図1における符号127a、127bはチップ収容凹部12の底面12aに形成される「第1載置部」及び「第2載置部」である。第1載置部127aは、位置決め角部125を形成する第1壁部121及び第2壁部122に近接して配置されている。一方、第2載置部127bは、第2角部126を形成する第3壁部123及び第4壁部124に近接して配置されている。第1載置部127a及び第2載置部127bは、固定用治具10によって固定するチップ部品1を載置するための支持面である。第1載置部127a及び第2載置部127bは、底面12aと平行で、底面12aからの高さが等しい平坦面として形成されている。
本実施形態では、チップ部品1をチップ収容凹部12に収容する際、チップ部品1の角部を位置決め角部125(第1壁部121及び第2壁部122)に当接させて位置決め固定する。そのため、例えば、サイズが比較的小さい小サイズのチップ部品1は、第1載置部127aのみを用いて支持する場合がある。また、サイズが比較的大きいチップ部品1については、第1載置部127a及び第2載置部127bの双方に跨るようにしてチップ部品1を支持する場合がある。以上のように、チップ収容凹部12に収容するチップ部品1のサイズの大きさに応じて、第1載置部127a単独で支持するのか、第1載置部127a及び第2載置部127bの双方で支持するのかが決定される。図4に示す例では、第1載置部127a及び第2載置部127bの双方に跨るようにして、チップ部品1がチップ収容凹部12に収容されている。
第1押圧体13a及び第2押圧体13bは、同一構造を有している。以下、第1押圧体13a及び第2押圧体13bを総称する場合は、単に「押圧体13」と呼ぶ。図5は、実施形態1に係る押圧体13を非表示にした固定用治具10の上面図である。また、図6及び7は、実施形態1に係る押圧体13(第1押圧体13a、第2押圧体13b)の斜視図である。
押圧体13は、ハウジング11に対してスライド自在に取り付けられた細長部材であり、その一端側には、平面状の押圧面130と、この押圧面130に比べて一段、前方に突出した突出部131が形成されている。以下では、押圧体13のうち、押圧面130及び突出部131が形成されている方の端部を「前端」とし、他方の端部を「後端」とする。また、押圧体13の突出部131の上面を「チップ支持面131a」と呼ぶ。押圧体13のチップ支持面131aは、押圧面130と直交し、且つ底面12aと平行な平坦面である。本実施形態においては、押圧体13におけるチップ支持面131aの高さが、チップ収容凹部12における第1載置部127a及び第2載置部127bの高さと等しくなっている。
ハウジング11には、チップ収容凹部12に対してそれぞれ連通すると共に上面11aに開口する凹部である第1押圧体収容凹部14a及び第2押圧体収容凹部14bが設けられている。そして、第1押圧体収容凹部14a及び第2押圧体収容凹部14bには、これらの長手軸に沿って第1押圧体13a及び第2押圧体13bがスライド自在に配設されている。以下では、第1押圧体収容凹部14a及び第2押圧体収容凹部14bを総称する場合は、「押圧体収容凹部14」と呼ぶ。図1に示すように、押圧体13は、その前端側、即ち押圧面130及び突出部131が設けられている方の端部がチップ収容凹部12側を向くように、押圧体収容凹部14に設置されている。
図6、7を参照して押圧体13を更に詳しく説明すると、押圧体13の上面132には、作業者が押圧体13をスライド操作する際に指を係止するための操作部133が形成されている。操作部133は、例えば押圧体13の上面132に形成された凹凸部であるが、これには限定されない。押圧体13の上面132は、押圧体収容凹部14の上部開放面に位置付けられている。これにより、押圧体収容凹部14に押圧体13が収容された状態において、押圧体13の操作部133が外部に露出する。その結果、作業者は容易に操作部133にアクセスすることができる。また、押圧体13の下面134には、後述するバネ部材15のバネ圧を受けるバネ受け部135が下方へ向かって突設されている。このバネ受け部135は、押圧体13の長手軸方向に沿って連設される第1領域部135a及び第2領域部135bを含み、第1領域部135aの方が第2領域部135bよりも横幅が大きい。また、押圧体13には、これを厚さ方向に貫通するネジ孔136が形成されている。バネ受け部135やネジ孔136の詳細については後述する。
次に、ハウジング11に設けられた押圧体収容凹部14(第1押圧体収容凹部14a及び第2押圧体収容凹部14b)について詳細に説明する。第1押圧体収容凹部14aの長手軸AX1は、チップ収容凹部12の第1壁部121に直交する方向に設定されている。ここで、第1押圧体13aは、第1押圧体収容凹部14aの長手軸AX1に沿ってスライド自在であるため、チップ収容凹部12の第1壁部121に直交する方向に沿ってスライド自在である。一方、第2押圧体収容凹部14bの長手軸AX2は、チップ収容凹部12の第2壁部122に直交する方向に設定されている。第2押圧体13bは、第2押圧体収容凹部14bの長手軸AX2に沿ってスライド自在であるため、チップ収容凹部12の第2壁部122に直交する方向に沿ってスライド自在である。なお、チップ収容凹部12の第1壁部121と第2壁部122とは直交関係にあるため、長手軸AX1と長手軸AX2も直交関係にある。
図1、5等に示す例では、第1押圧体収容凹部14aは、チップ収容凹部12からハウジング11の右面11cに向かって延伸している。一方、第2押圧体収容凹部14bは、チップ収容凹部12からハウジング11の正面11dに向かって延伸している。
ここで、図8は、図1に示す長手軸AX1に沿った固定用治具10の断面図である。図9は、図1に示す長手軸AX1に沿った固定用治具10の斜視断面図である。図10は、図1に示すA−A´矢視断面図である。
押圧体収容凹部14には、押圧体13を付勢するバネ部材15(図5、8、9等を参照)が配設されている。バネ部材15は、押圧体13をチップ収容凹部12側に向かって付勢する弾性体である。なお、図5においては、便宜上、バネ部材15をハッチング表示している。バネ部材15のうち、第1押圧体収容凹部14aに配設されるものを、特に「第1バネ部材15a」と呼ぶ。また、第2押圧体収容凹部14bに配設されるバネ部材15を、特に「第2バネ部材15b」と呼ぶ。第1バネ部材15aは、長手軸AX1に沿って第1押圧体13aをチップ収容凹部12に接近させる方向に付勢している。第2バネ部材15bは、長手軸AX2に沿って第2押圧体13bをチップ収容凹部12に接近させる方
向に付勢している。
押圧体収容凹部14は、バネ部材15を収容するバネ収容部140、バネ収容部140の両側に形成されるスライド底面141、貫通孔部142等を含む。バネ収容部140は、スライド底面141に比べて一段低く凹設された溝部として形成されている。また、スライド底面141は、押圧体収容凹部14に収容された押圧体13の下面134をスライド自在に支持する支持面として機能する。また、押圧体収容凹部14の貫通孔部142は、略矩形の平面形状を有する貫通孔である。貫通孔部142の横幅は、バネ収容部140の横幅よりも大きい寸法に設定されている。ここでいう「横幅」は、押圧体収容凹部14の長手軸方向と直交する方向の寸法を意味する。また、図5に示すように、バネ収容部140及び貫通孔部142は押圧体収容凹部14の長手軸方向に沿って連設されており、バネ収容部140及びチップ収容凹部12の間に貫通孔部142が配設されている。
ここで、押圧体13のバネ受け部135における第1領域部135aの横幅は、押圧体収容凹部14における貫通孔部142の横幅と等しいか僅かに小さく、且つ、バネ収容部140の横幅よりも大きな寸法として設定されている。また、押圧体13のバネ受け部135における第2領域部135bの横幅は、貫通孔部142と等しいか僅かに小さい寸法として設定されている。
ハウジング11への押圧体13の取付けは、押圧体収容凹部14の貫通孔部142に押圧体13のネジ孔136の位置を合わせ、ハウジング11の下面11b側からネジ孔136にネジ18を螺合させることで行う(図3、8〜10等を参照)。本実施形態では、ネジ18とネジ孔136の間に介在させる座金17の外径が、貫通孔部142の横幅よりも大きな寸法に設定されている。これにより、ネジ18の締付け後において、押圧体収容凹部14から押圧体13が抜け出たり、脱落することが抑制される。
また、押圧体13の下面134から突出するバネ受け部135の高さは、貫通孔部142の周囲に形成される縁部の部材厚さよりも若干大きな寸法に設定されている。これにより、ネジ18を締め付けた状態において、押圧体13の下面134及び座金17間の離間寸法が、貫通孔部142における縁部の部材厚さよりも若干大きな寸法として確保される。これにより、押圧体収容凹部14に対する押圧体13のスライド動作が許容される。つまり、押圧体収容凹部14の長手軸方向に沿って押圧体13をスライド自在に取り付けることができる。
固定用治具10は、第1押圧体13a及び第2押圧体13bを付勢する第1バネ部材15a及び第2バネ部材15bのバネ圧を変更する第1及び第2バネ圧変更部16a,16bを備えている。第1及び第2バネ圧変更部16a,16bは、摘み部161と、この摘み部161と同軸に配置される軸部162とを含む。ここで、ハウジング11の右面11c及び正面11dには、軸部162を挿通可能な大きさのネジ挿通孔19が穿設されている。一方、軸部162には、ネジ挿通孔19と螺合可能なネジ溝が形成されている。ハウジング11の右面11c及び正面11dに形成されるネジ挿通孔19は、バネ収容部140に対応する位置に形成されている。そのため、第1及び第2バネ圧変更部16a,16bの軸部162をネジ挿通孔19に挿通することで、軸部162をバネ収容部140内に進入させることができる。また、以下では、押圧体13における押圧面130のうち、第1押圧体13aの押圧面を特に「第1押圧面130a」と呼ぶ。また、第2押圧体13bの押圧面を特に「第2押圧面130b」と呼ぶ。
本実施形態では、押圧体収容凹部14のバネ収容部140に配設されたバネ部材15が、第1及び第2バネ圧変更部16a,16bにおける軸部162の先端面と押圧体13のバネ受け部135との間に挟まれ、圧縮された状態で保持されている。そして、第1及び
第2バネ圧変更部16a,16bの軸部162とバネ受け部135との間に挟持されたバネ部材15のバネ圧によって、押圧体13を付勢する付勢力が発現されている。なお、第1及び第2バネ圧変更部16a,16bにおける摘み部161を回転させると、バネ収容部140内への軸部162の進入量が変更される。その結果、バネ部材15の基端位置が変更されることになり、押圧体13を押圧するバネ部材15のバネ圧(付勢力)を変更できる。
図11は、実施形態1に係るチップ部品1を例示する図である。チップ部品1は、板形状を有し、下面1a、上面1b、第1側面1c〜第4側面1fを有している。チップ部品1の下面1aには、格子状に複数の半田ボール1gが設けられている。図11に示す例では、第1側面1c及び第3側面1eが対向して配置され、第2側面1d及び第4側面1fが対向して配置されている。
以上のように、固定用治具10は、チップ部品1を位置決めする位置決め角部125が直交する第1壁部121及び第2壁部122により形成されるチップ収容凹部12、ハウジング11に配設される第1押圧体13aと第2押圧体13bを備える。そして、第1押圧体13aは、第1壁部121との間にチップ部品1を狭持する第1押圧面130aを有し、この第1押圧面130aを第1壁部121と平行に維持した状態でスライドさせることができる。これにより、第1押圧体13aは、第1壁面121と平行に配置された第1押圧面130aによってチップ部品1を第1壁面121に向かって押圧することができる。その結果、チップ収容凹部12の第1壁部121に対してチップ部品1の第1側面1cを垂直方向から押しつけることができ、チップ部品1の第1側面1cと第1壁部121とを密着させることができる。
一方、第2押圧体13bは、第2壁部122との間にチップ部品1を狭持する第2押圧面130bを有し、この第2押圧面130bを第2壁部122と平行に維持した状態でスライドさせることができる。これにより、第2押圧体13bは、第2壁面122と平行に配置された第2押圧面130bによってチップ部品1を第2壁面122に向かって押圧することができる。その結果、チップ収容凹部12の第2壁部122に対してチップ部品1の第2側面1dを垂直方向から押しつけることができ、チップ部品1の第2側面1dと第2壁部122とを密着させることができる。以上より、固定用治具10によれば、チップ収容凹部12の位置決め角部125に対してチップ部品1の角部を精度よく位置決めした状態で、チップ部品1を固定することができる。
特に、固定用治具10は、第1押圧体収容凹部14aに格納される第1バネ部材15aのバネ圧を利用して、第1押圧体13aをチップ収容凹部12の第1壁部121に向かって付勢する。これによれば、操作性に優れ、チップ収容凹部12の第1壁部121に対するチップ部品1の位置決めがより一層容易なものとなる。同様に、第2押圧体収容凹部14bに格納される第2バネ部材15bのバネ圧を利用して、第2押圧体13bをチップ収容凹部12の第2壁部122に向かって付勢する。これによれば、操作性に優れ、チップ収容凹部12の第2壁部122に対するチップ部品1の位置決めがより一層容易なものとなる。
ここで、図12A〜図12Fを参照して、固定用治具10を用いてチップ部品1を固定する際の動作例について説明する。なお、図12A〜図12Fは、固定用治具10の一部を拡大した上面図である。図12Aに示す初期状態では、押圧体収容凹部14のバネ収容部140に配設されているバネ部材15の付勢力(バネ圧)によって、押圧体13がチップ収容凹部12に接近する方向(以下、「チップ接近方向」という)に変位している。この初期状態から、図12Bに示すように、バネ部材15の付勢力(バネ圧)に抗して、押圧体13をチップ収容凹部12から離反する方向(以下、「チップ離反方向」という)に
スライドさせる。例えば、作業者は、一方の手(例えば、左手)によって直接的又は間接的にチップ部品1を摘み、他方の手(例えば、右手)によって、第1押圧体13a及び第2押圧体13bをチップ離反方向にスライドさせてもよい。上記の通り、本実施形態に係る固定用治具10においては、第1押圧体13a及び第2押圧体13bの上面132に操作部133が設けられている。そのため、操作部133に指を引っ掛ける等して、第1押圧体13a及び第2押圧体13bを容易にスライド操作することができ、操作性に優れる。
そして、押圧体13(第1押圧体13a、第2押圧体13b)をチップ離反方向にスライドさせた状態で、チップ収容凹部12にチップ部品1を収容する(図12Cを参照)。チップ部品1は、上面1bが下方を向き、下面1a上方に露出するように第1載置部127a及び第2載置部127bに載置する。図12Cに示す例では、チップ収容凹部12の第1壁部121にチップ部品1の第1側面1cが対向し、チップ収容凹部12の第2壁部122にチップ部品1の第2側面1dが対向するように、チップ部品1がチップ収容凹部12に収容されている。
次に、第1押圧体13a及び第2押圧体13bを支えている指の力を緩め、第1押圧体13a及び第2押圧体13bを順次又は同時に、チップ接近方向にスライドさせる。ここでは、第1押圧体13aを長手軸AX1に沿ってチップ接近方向にスライドさせた後、第2押圧体13bを長手軸AX2に沿ってチップ接近方向にスライドさせる操作例を説明する。
まず、第1押圧体13aによる第1押圧操作について説明すると、図12Dに示すように、第1押圧体13aを長手軸AX1に沿ってチップ接近方向にスライドさせてゆく。図12Dに示す状態では、第1押圧体13aの先端側に位置する突出部131が、チップ収容凹部12の領域内に進入している。ところで、第1押圧体13aにおけるチップ支持面131aの高さは、上記のようにチップ部品1を載置する第1載置部127a及び第2載置部127bと同じ高さに設定されている。従って、第1押圧体13aは、突出部131におけるチップ支持面131aをチップ部品1の上面1bに対して摺接させながら、突出部131がチップ部品1の下方に潜り込むようにしてスライドする。
そして、第1押圧体13aの第1押圧面130が、チップ部品1の第3側面1eと当接(衝突)した後も、第1壁部121に第1側面1cが密着するまで、第1バネ部材15aのバネ圧によってチップ部品1が第1壁部121に向かって押し込まれる。そして、最終的には、図12Eに示すように、チップ収容凹部12の第1壁部121と第1押圧体13aの第1押圧面130との間にチップ部品1を挟んだ状態で、チップ部品1の第1側面1cを第1壁部121に対して垂直方向から押し付けることができる。その結果、チップ部品1の第1側面1cとチップ収容凹部12の第1壁部121との間に隙間ができず密着した状態で第1壁部121に対してチップ部品1を位置決めすることができる。
次に、図12Eに示す状態から、第2押圧体13bを長手軸AX2に沿ってチップ接近方向にスライドさせてゆく。第2押圧体13bにおいても、その先端側の突出部131がチップ収容凹部12の領域内に進入した後、チップ支持面131aをチップ部品1の上面1bに対して摺接させながら、チップ接近方向にスライドする。そして、第2押圧体13bの第2押圧面130が、チップ部品1の第4側面1fと当接(衝突)した後も、第2壁部122に第2側面1dが密着するまで、第2バネ部材15bのバネ圧によってチップ部品1が第2壁部122に向かって押し込まれる。そして、図12Fに示すように、チップ収容凹部12の第2壁部122と第2押圧体13bの第2押圧面130との間にチップ部品1を挟んだ状態で、チップ部品1の第2側面1dを第2壁部122に対して垂直方向から押し付けることができる。その結果、チップ部品1の第1側面1c及び第2側面1dを
チップ収容凹部12の第1壁部121及び第2壁部122に対して隙間なく当接させた状態でチップ部品1を位置決めし、固定することができる。
次に、固定用治具10を用いて、上述までのチップ部品1と縦横のサイズが異なる第2のチップ部品100(図13を参照)を固定する態様について説明する。図11に示したチップ部品1は正方形の平面形状を有しているが、図13に示す第2のチップ部品100は、矩形の平面形状を有している。つまり、第2のチップ部品100は、チップ部品1と縦横のサイズが異なっている。図13に示す例では、第2のチップ部品100における第1側面1c及び第3側面1eに沿う方向が短辺方向に該当し、第2側面1d及び第4側面1fに沿う方向が長辺方向に該当する。
図14は、実施形態1に係る固定用治具10によって第2のチップ部品100を固定(保持)している状態を示す部分拡大図である。固定用治具10によれば、チップ部品1,100を位置決めする第1壁部121及び第2壁部122にそれぞれ直交する方向にスライド自在な一対の押圧体13を備えているため、サイズの異なるチップ部品に対しても汎用的に用いることができる。つまり、第1壁部121と直交する方向に沿ってスライド自在な第1押圧体13aによれば、チップ部品1,100における第1側面1cの長さに関わらず、チップ部品1,100の第1側面1cを垂直方向から第1壁部121に押し当てることができる。そして、第2壁部122と直交する方向に沿ってスライド自在な第2押圧体13bによれば、チップ部品1,100における第2側面1dの長さに関わらず、チップ部品1,100の第2側面1dを垂直方向から第2壁部122に押圧できる。
その結果、チップ部品における縦横のサイズが変更されても、これらのチップ部品を汎用的に固定することが可能となる。つまり、縦横のサイズが異なる種々のチップ部品に対応し、これらを好適に固定することがきる。従って、従来のように、固定するチップ部品のサイズに合わせて固定用治具を必ずしも製作する必要がなく、治具の製作コストを低減できる。また、新規なサイズのチップ部品のリペアを行う場合においても、従来のように新たに固定用治具を設計、製作し直す必要がなく、そのリードタイムを短縮することができる。
更に、固定用治具10によれば、第1押圧体13aを押圧する第1バネ部材15aのバネ圧を変更する第1バネ圧変更部16aと、第2押圧体13bを押圧する第2バネ部材15bのバネ圧を変更する第2バネ圧変更部16bとを備えている。従って、固定用治具10におけるチップ収容凹部12に固定するチップ部品1,100のサイズが変更された場合においても、第1バネ部材15a及び第2バネ部材15bのバネ圧を適正に調節することができる。例えば、固定用治具10で固定するチップ部品のサイズが変更された場合においても、チップ部品を固定するバネ圧を一定にすることが可能とある。
例えば、小サイズのチップ部品を固定するときよりも、大サイズのチップ部品を固定するときの方が、第1及び第2バネ圧変更部16a,16bの軸部162と押圧体13のバネ受け部135との間に挟まれるバネ部材15の縮み度合いが大きい。その結果、小サイズのチップ部品を固定するときよりも、大サイズのチップ部品を固定するときの方が押圧体13を付勢する、バネ部材15のバネ圧(付勢力)が相対的に増大する。ここで、押圧体13を付勢するバネ部材15のバネ圧が過度に大きくなると、押圧体13をチップ離反方向にスライドさせるために大きな力が要求される場合がある。そうすると、固定用治具10によるチップ部品の固定を解除するのに手間が掛かり、固定用治具10の操作性、使用性が悪化する虞がある。一方、押圧体13を付勢するバネ部材15のバネ圧が小さすぎると、チップ部品の固定度合いが不足してしまう虞がある。そこで、バネ部材15のバネ圧が大きくなり過ぎたり、逆に小さくなり過ぎたりすることがないように、チップ部品のサイズに応じてバネ部材15のバネ圧を調整するとよい。そうすることで、チップ部品の
サイズ寸法によらず、押圧体13を付勢するバネ部材15のバネ圧を適正な範囲内に調整することができる。
また、本実施形態における固定用治具10によれば、チップ収容凹部12における位置決め角部125及び第2角部126に近接して第1載置部127a及び第2載置部127bを配置し、その他の領域を一段低い底面12aとしている。これは、チップ接近方向にスライドする押圧体13の進路上に第1載置部127a及び第2載置部127bを配置しないようにすることで、これらに押圧体13が衝突することを抑制している。また、第1載置部127a及び第2載置部127bを上記のように配置することで、チップ部品1の下方に、押圧体13の突出部131を潜り込ませる空間が形成される。これによれば、チップ部品1を固定する際に押圧体13のチップ支持面131aによってもチップ部品1が支持されることになり、チップ部品1をより安定した状態で固定することができる。
なお、チップ収容凹部12における第1載置部127a及び第2載置部127bは、チップ部品1の支持高さを調整するためのスペーサとして利用できる。例えば、固定用治具10にチップ部品1を固定した際、半田ボール1gにおける頂部の高さがチップ収容凹部12を囲む縁部の高さと同一か、それよりも若干高くなるように第1載置部127a及び第2載置部127bの高さが設定されている。これにより、固定用治具10に固定されたチップ部品1の半田ボール1gにクリーム半田を好適に塗布することができる。なお、半田ボール1gに対するクリーム半田の塗布はクリーム半田印刷機、印刷用マスク等を適宜使用して行うことができる。
本実施形態に係る固定用治具10において、第1押圧体13aは、チップ収容凹部12の第1壁部121に直交する長手軸AX1に沿ってスライド自在としていたが、これには限られない。即ち、第1押圧体13aは、第1壁面121と平行に配置された第1押圧面130aによってチップ部品1を第1壁面121に向かって押圧することができれば、例えば、第1押圧体13aのスライド軸が第1壁部121に対して傾斜していてもよい。また、第2押圧体13bは、チップ収容凹部12の第2壁部122に直交する長手軸AX2に沿ってスライド自在としていたが、これには限られない。即ち、第2押圧体13bは、第2壁面122と平行に配置された第2押圧面130bによってチップ部品1を第2壁面122に向かって押圧することができれば、例えば、第2押圧体13bのスライド軸が第2壁部122に対して傾斜していてもよい。
また、本実施形態においては、第1押圧体13a及び第2押圧体13bをバネ部材15のバネ圧によって付勢しているが、これには限られない。例えば、ネジ等の回転運動を直線運動に変換する機構を採用し、第1押圧体13a及び第2押圧体13bを長手軸AX1及び長手軸AX2に沿ってスライドさせてもよい。
以上、実施形態及び変形例に沿ってチップ部品の固定用治具について説明したが、上記実施形態及び変形例は種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者にとって自明である。