JP2016092918A - dq三相座標の電流位相を制御するモータ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】dq三相座標変換を用いて三相交流のモータを制御する際の演算処理時間を短縮したモータ制御装置を実現する。
【解決手段】dq三相座標変換を用いて三相交流のモータ2を制御するモータ制御装置1は、検出されたモータ速度とq軸電流指令初期値とを用いて位相補正量を算出する位相補正量演算部11と、検出されたモータ2のロータ位相角に位相補正量を加算もしくは減算することで、補正後ロータ位相角を算出するロータ位相角補正部12と、補正後ロータ位相角に基づいて、dq座標系上のパラメータと三相座標系上とのパラメータとの間で座標変換する座標変換部13と、を備える。
【選択図】図1
【解決手段】dq三相座標変換を用いて三相交流のモータ2を制御するモータ制御装置1は、検出されたモータ速度とq軸電流指令初期値とを用いて位相補正量を算出する位相補正量演算部11と、検出されたモータ2のロータ位相角に位相補正量を加算もしくは減算することで、補正後ロータ位相角を算出するロータ位相角補正部12と、補正後ロータ位相角に基づいて、dq座標系上のパラメータと三相座標系上とのパラメータとの間で座標変換する座標変換部13と、を備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、dq三相座標変換を用いて三相交流のモータを制御するモータ制御装置に関する。
dq三相座標変換を用いて三相交流の永久磁石同期モータ(PMSM:Permanent Magnet Synchronous Motor)(以下、単に「モータ」と称することがある。)を電流ベクトル制御するモータ制御装置が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。図10は、dq三相座標変換を用いて三相交流のモータを制御する一般的なモータ制御装置の制御ループを示すブロック図である。dq座標制御系において、ロータの磁極の方向をd軸に設定し、d軸と電気的および磁気的に直交する軸をq軸に設定すると、d軸電流は磁束を発生させるのに使われる励磁電流成分を表し、q軸電流は負荷のトルクに対応した電機子電流成分を表す。図10において、d軸電流指令をid *、q軸電流指令をiq *、モータのd軸インダクタンスをLd、モータのq軸インダクタンスをLq、ステータ鎖交磁束をΨa、モータのd軸電圧をVd、モータのq軸電圧をVq、モータのd軸電流をid、モータのq軸電流をiq、モータのイナーシャをJ、係数をKt、モータのロータの角速度をωとする。
入力されたd軸電流指令id *およびq軸電流指令iq *に従いモータ制御装置100はモータを駆動するための駆動電力を出力する。これにより、モータにはd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqが印加され、d軸電流idおよびq軸電流iqが流れる。このとき、モータのd軸電圧Vd、モータのq軸電圧Vq、モータのd軸電流idおよびモータのq軸電流iqの間で式1で表される電圧方程式が成り立つ。
また、モータの極対数をPnとしたとき、モータのトルクTは、式2で表されるトルク方程式で計算できる。
また、図10においては、モータに印加される電圧および電流をdq座標系で表記したが、モータに実際に印加される電圧は三相座標系上の交流値である。すなわち、モータ制御装置によりモータには三相の交流電圧が印加され、この結果、モータには三相交流電流が流れる。電流ベクトル制御を行うモータ制御装置では、検出された三相交流のモータ電流を三相dq変換してd軸制御およびq軸制御を行い、これらd軸制御およびq軸制御により得られたd軸およびq軸についての各指令をdq三相変換して三相交流の電圧指令を生成している。つまり、モータ制御装置は、その内部処理として、dq座標系上のパラメータと三相座標系上とのパラメータとの間で座標変換する処理を伴う。図11は、一般的なモータ制御装置におけるdq−三相座標変換処理を説明するブロック図である。図11において、モータ2を駆動するモータ制御装置は、d軸制御器101、q軸制御器102、dq三相変換部103、PWMインバータ部104、dq三相変換部104、および三相dq変換部105を備える。
入力されたd軸電流指令id *およびq軸電流指令iq *に従い、制御器101および102は、d軸電圧指令Vd *およびq軸電圧指令Vq *をそれぞれ生成する。dq三相変換部103は、dq座標系上のd軸電圧指令Vd *およびq軸電圧指令Vq *を、式3に従って三相座標系上の三相電圧指令Vu *、Vv *およびVw *に変換する。
PMWインバータ部104は、三相電圧指令Vu *、Vv *およびVw *と所定のキャリア周波数を有する三角波キャリア信号とを比較し、PWMインバータ部104の主回路部(図示せず)内の半導体スイッチング素子のスイッチング動作を制御するためのPWM制御信号を生成する。PWMインバータ部104の主回路部は、例えばスイッチング素子およびこれに逆並列に接続されたダイオードのフルブリッジ回路からなる。PWMインバータ部104の主回路部は、内部のスイッチング素子のスイッチング動作がPWM制御信号により制御され、三相交流電圧Vu、VvおよびVwを出力する。モータ2に印加された三相交流電圧Vu、VvおよびVwにより、モータ2には三相交流電流iu、ivおよびiwが流れるが、これを電流検出器(図示せず)により検出する。三相dq変換部104は、三相座標系上の三相交流電流iu、ivおよびiwを、式4に従ってdq座標系上のd軸電流idおよびq軸電流iqに変換し、d軸制御器101およびq軸制御器102にフィードバックする。
d軸制御器101は、入力されたd軸電流指令id *とフィードバックされたd軸電流idとを用いてd軸電圧指令Vd *を生成する。また、q軸制御器102は、入力されたq軸電流指令iq *とフィードバックされたq軸電流iqとを用いてq軸電圧指令Vq *を生成する。
また、非特許文献1に記載されているように、永久磁石により界磁制御を得る永久磁石同期モータ(PMSM)では、巻線界磁型同期モータのように界磁磁束を直接制御できないが、負のd軸電流を流すことで、d軸電機子反作用による減磁効果を利用してd軸方向の磁束を減少させる「弱め磁束制御」を用いることができる。弱め磁束制御によってモータ端子電圧を制限値Vom以下に抑える場合、d軸電流として式5を用いればよいことが一般的に知られている。
例えば、サーボモータのDQ変換による電流制御において、高速回転域まではd相には電流を流さずq相にのみ電流を流し、高速回転時にのみd相に無効電流を流し、この無効電流によってモータの端子電圧を下げることによって、電圧飽和が発生しない領域では無効電流を少なくして無効電流による発熱を抑制し、高速域においても安定した回転を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また例えば、永久磁石を持つ同期式電動機の制御において、電力増幅器に入力される交流の電源電圧、あるいは入力電圧を整流した直流のDCリンク電圧を測定し、この電源電圧に応じて無効電流(d軸電流)を変化させ、あるいは、電流制御位相進め量を変化させることによって、無効電流制御や位相制御を入力電源電圧の変化に応じて直接的に行う方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
また例えば、ACサーボモータの駆動電流とロータ位相からd−q変換によって界磁の作る磁束方向のd相電流と直交するq相電流を求め、d相電流を零としq相電流を電流指令として直流方式で電流制御を行なう電流制御方式を用い、この直流方式の電流制御において、磁気飽和発生時に電流指令の有効成分であるq相電流指令の位相を進めることにより、磁気飽和の影響を抑制してトルクの低下を低減する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
また例えば、dq変換で制御されるサーボモータの電流制御において、電流ループの遅れに相当する角度を求めて補正角とし、この補正角を用いて位相角を補正し、補正した位相角を用いて、dq変換における三相からdq座標系への座標変換、あるいはdq座標系から3相への座標変換を行うことによって、電流ループの遅れを補償する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
武田洋次、松井信行、森本茂雄、本田幸夫著、「埋込磁石同期モータの設計と制御」、株式会社オーム社、第1版第7刷、16〜17頁および26〜27頁、2007年
上述のように、永久磁石同期モータ(PMSM)では弱め磁束制御が行われるが、式5に示されるように計算式が複雑であり、演算処理に時間がかかる。
したがって本発明の目的は、上記問題に鑑み、dq三相座標変換を用いて三相交流のモータを制御する際の演算処理時間を短縮したモータ制御装置を提供することにある。
上記目的を実現するために、本発明においては、dq三相座標変換を用いて三相交流のモータを制御するモータ制御装置は、検出されたモータ速度とq軸電流指令初期値とを用いて位相補正量を算出する位相補正量演算部と、検出されたモータのロータ位相角に位相補正量を加算もしくは減算することで、補正後ロータ位相角を算出するロータ位相角補正部と、補正後ロータ位相角に基づいて、dq座標系上のパラメータと三相座標系上とのパラメータとの間で座標変換する座標変換部と、を備える。
ここで、位相補正量演算部は、
予め規定されたパラメータとして、速度係数NA、第1の基準速度NB、位相補正量の制限値NL、電流係数TA、および、基準電流率TBを記憶する記憶部と、
モータ速度をNとしたとき、速度補正項を、
に基づいて算出する速度補正項演算部と、
直流電力を交流電力に変換してこれをモータの駆動電力として供給するインバータが出力可能な最大電流に対するq軸電流指令初期値の割合である初期q軸電流指令率をTrとしたとき、電流補正項を、
に基づいて算出する電流補正項演算部と、
速度補正項と電流補正項とを乗算した値を、位相補正量として出力する出力部と、
を有する。
予め規定されたパラメータとして、速度係数NA、第1の基準速度NB、位相補正量の制限値NL、電流係数TA、および、基準電流率TBを記憶する記憶部と、
モータ速度をNとしたとき、速度補正項を、
直流電力を交流電力に変換してこれをモータの駆動電力として供給するインバータが出力可能な最大電流に対するq軸電流指令初期値の割合である初期q軸電流指令率をTrとしたとき、電流補正項を、
速度補正項と電流補正項とを乗算した値を、位相補正量として出力する出力部と、
を有する。
また、記憶部は、予め規定されたパラメータとして、基準電圧をさらに記憶し、位相補正量演算部は、インバータの直流側で検出された直流電圧値と、記憶部に予め記憶された基準電圧と、を用いて、記憶部から読み出された速度係数、第1の基準速度、および位相補正量の制限値をそれぞれ補正する補正部を有するようにしてもよい。
また、モータ制御装置は、モータ速度を独立変数とする関数からなるd軸電流指令初期値を算出するd軸電流指令初期値演算部をさらに備える。
また、ロータ位相角補正部は、モータに流れる電流が電流指令に従うように制御する電流制御ループが有する時間遅れに対応する位相角、または、モータのトルクを最大化するのに必要なq軸電流指令の位相進みに対応する位相角、または、これら位相角の両方、を補正後ロータ位相角に対してさらに加算もしくは減算することで、座標変換部における座標変換で用いられる新たなる補正後ロータ位相角を算出するようにしてもよい。
本発明によれば、dq三相座標変換を用いて三相交流のモータを制御する際の演算処理時間を短縮したモータ制御装置を実現することができる。従来より永久磁石同期モータ(PMSM)の制御には、負のd軸電流を用いる「弱め磁束制御」が用いられてきたが、弱め磁束制御に用いる計算式は複雑であり、演算処理に時間がかかる問題があった。これに対し、本発明によれば、弱め磁束制御特有の複雑な計算式を用いずに、ロータ位相角の補正に用いる位相補正量を制御パラメータとして用いて永久磁石同期モータ(PMSM)を駆動制御するので、従来の弱め磁束制御に比べて演算処理内容が容易であり、したがって演算処理時間を短縮することができる。
図1は、本発明の第1の実施例によるモータ制御装置を示すブロック図である。以降、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。ここでは、一例として、モータ制御装置1の交流電源側(すなわち整流器51の交流電源側)に商用三相の交流電源3が接続され、モータ制御装置1の交流モータ側(すなわちインバータ2の交流モータ側)に三相の永久磁石同期モータ(PMSM)2(以下、単に「モータ」と称する。)が接続される場合について説明する。
モータ制御装置1は、整流器51と、整流器51の直流側である直流リンクに接続されるインバータ(逆変換器)2とを備える。また、直流リンクには直流コンデンサ53が設けられる。なお、整流器51およびインバータ52の回路構成は本発明を限定するものではない。整流器51は、例えばダイオード整流器やPWM整流器で構成される。インバータ52は、例えばスイッチング素子およびこれに逆並列に接続されたダイオードのフルブリッジ回路からなるPWMインバータとして構成される。このスイッチング素子の例としては、IGBT、サイリスタ、GTO(Gate Turn−OFF thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがある。
本発明の第1の実施例によるモータ制御装置1は、検出されたモータ速度とq軸電流指令初期値とを用いて位相補正量を算出する位相補正量演算部11と、検出されたモータ2のロータ位相角θに位相補正量φを加算もしくは減算することで、補正後ロータ位相角を算出するロータ位相角補正部12と、補正後ロータ位相角に基づいて、dq座標系上のパラメータと三相座標系上とのパラメータとの間で座標変換する座標変換部13と、を備える。座標変換部13は、dq三相変換部13−1および三相dq変換部13−2を備える。
また、モータ制御装置1は、従来同様、制御器14およびPWM制御信号生成部15を備える。制御器14は、入力されたd軸電流指令id *およびq軸電流指令iq *と、後述する三相dq変換部13−2から出力されたd軸電流id1およびq軸電流iq1とを用いてd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *をそれぞれ生成する。制御器14におけるd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *の生成方法自体は本発明を限定するものではなく、例えば公知の方法で実現すればよい。PWM制御信号生成部15は、後述するdq三相変換部13−1から出力された三相電圧指令Vu *、Vv *およびVw *と所定のキャリア周波数を有する三角波キャリア信号とを比較し、インバータ52内の半導体スイッチング素子のスイッチング動作を制御するためのPWM制御信号を生成する。PWM制御信号生成部15におけるPWM制御信号の生成方法自体は本発明を限定するものではなく、例えば公知の方法で実現すればよい。
次に、位相補正量演算部11、ロータ位相角補正部12、および座標変換部13について説明する。
本発明の第1の実施例では、ロータ位相角補正部12は、座標変換部13による座標変換処理に用いられるロータ位相角を予め補正するものであり、速度検出器16によって検出されたモータ2のロータ位相角θに位相補正量φを加算もしくは減算することで補正後ロータ位相角を算出する。なお、位相補正量φの具体的な算出方法については後述する。
本発明の第1の実施例におけるdq三相変換部13−1は、ロータ位相角補正部12から出力された補正後ロータ位相角に基づいて、dq座標系上のd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *を三相座標系上の三相電圧指令Vu *、Vv *およびVw *に変換する。ここで、dq三相変換部13−1におけるdq三相座標変換処理で用いる補正後ロータ位相角は、速度検出器16によって検出されたモータ2のロータ位相角θに位相補正量φが加算されることにより生成される。dq三相変換部13−1におけるdq三相座標変換処理は、このロータ位相角θを用いて式9にしたがって実行される。
式9は三角関数の加法定理を適用すると式10のように変形できる。
ここで、式11で表されるようなパラメータVd1 *およびVq1 *を導入する。
式10に式11を代入することで式12が得られる。
式9と式12とを比較すると、式9にしたがって実行されるdq三相変換部13−1におけるdq三相座標変換処理は、式12に示すようにd軸電圧指令Vd *およびq軸電圧指令Vq *を位相補正量φだけ進めたVd1 *およびVq1 *に対して実行されるものと等価であることがわかる。
一方、本発明の第1の実施例における三相dq変換部13−2は、ロータ位相角補正部12から出力された補正後ロータ位相角に基づいて、電流検出器17によって検出された三相座標系上の三相交流電流iu、ivおよびiwをdq座標系上のd軸電流idおよびq軸電流iqに変換する。ここで、三相dq変換部13−2における三相dq座標変換処理で用いる補正後ロータ位相角は、速度検出器16によって検出されたモータ2のロータ位相角θから位相補正量φが減算されることにより生成される。三相dq変換部13−2における三相dq座標変換処理は、このロータ位相角θを用いて式13にしたがって実行される。
式13は三角関数の加法定理を適用すると式14のように変形できる。
位相補正量φに係る行列の逆行列を式14の両辺に掛けると、式14は式15のように変形できる。
ここで、式16で表されるようなパラメータid1およびiq1を導入する。
式15に式16を代入することで式17が得られる。
式13と式17とを比較すると、三相座標系上の三相交流電流iu、ivおよびiwに対して式13に基づいて実行される三相dq変換部13−2における三相dq座標変換処理により、式17に示すようにd軸電流idおよびq軸電流iqを位相補正量φだけ進めたid1およびiq1が算出されたことがわかる。
図2は、補正済ロータ位相角を用いた三相dq座標変換処理を説明するベクトル図である。ロータ位相角θを用いて三相座標系上の三相交流電流iu、ivおよびiwを三相dq座標変換すると、dq座標系上のd軸電流idおよびq軸電流iqが得られる。この場合、電流ベクトルはiaとなる。一方、ロータ位相角θから位相補正量φを減算して得られた補正後ロータ位相角(すなわちロータ位相角θを位相補正量φだけ進めたもの)を用いて三相座標系上の三相交流電流iu、ivおよびiwを三相dq座標変換すると、dq座標系上のd軸電流id1およびq軸電流iq1が得られる。この場合、電流ベクトルはia1となる。つまり、位相補正量φの大きさを変化させれば、これに応じてd軸電流idの大きさも変化させることができることがわかる。そこで本発明では、この特性を利用して、ロータ位相角θの補正に用いる位相補正量φを、永久磁石同期モータ(PMSM)を駆動制御するための制御パラメータとして用いる。
すなわち、本発明の第1の実施例によれば、ロータ位相角補正部12は、速度検出器16によって検出されたロータ位相角θから位相補正量φを減算することで三相dq変換部13−2のための補正後ロータ位相角を生成する。この補正後ロータ位相角を用いて、三相dq変換部13−2は、式17に従って電流検出器17によって検出された三相座標系上の三相交流電流iu、ivおよびiwをdq座標系上のd軸電流id1およびq軸電流iq1に変換する。図2を参照して説明したように、補正後ロータ位相角を用いた三相dq変換処理により得られたd軸電流id1およびq軸電流iq1は、ロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだ状態(換言すれば、位相補正しないロータ位相角θを用いた三相dq変換処理により得られたd軸電流idおよびq軸電流iqと比べて位相補正量φだけ進んだ状態)にある。制御器14は、入力されたd軸電流指令id *およびq軸電流指令iq *と三相dq変換部13−2から出力されたd軸電流id1およびq軸電流iq1とを用いてd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *をそれぞれ生成する。これらd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *は、d軸電流id1およびq軸電流iq1同様、ロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだ状態にある。また、ロータ位相角補正部12は、速度検出器16によって検出されたロータ位相角θに位相補正量φを加算することでdq三相変換部13−1のための補正後ロータ位相角を生成する。この補正後ロータ位相角を用いて、dq三相変換部13−1は、式12にしたがってdq座標系上のd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *を三相座標系上の三相電圧指令Vu *、Vv *およびVw *に変換する。上述したようにd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *はロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだ状態にあったが、式12に基づくdq三相変換処理を実行することにより、上記「ロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだ状態」が解消され、もとのロータ位相角θに戻った状態になる。この後、PWM制御信号生成部15は、dq三相変換部13−1から出力された三相電圧指令Vu *、Vv *およびVw *と所定のキャリア周波数を有する三角波キャリア信号とを比較し、インバータ52内の半導体スイッチング素子のスイッチング動作を制御するためのPWM制御信号を生成する。インバータ52は、PWM制御信号生成部15で生成されたPWM制御信号に基づき内部のスイッチング素子をスイッチング動作させて、直流リンク側から供給される直流電力を、モータ(永久磁石同期モータ(PMSM))2を駆動するための所望の電圧および所望の周波数の三相交流電力に変換する。これにより、モータ2は、インバータ52により供給された電圧可変および周波数可変の三相交流電力に基づいて動作することになる。
このように、三相dq変換部13−2は、三相交流電流iu、ivおよびiwに対して式17に基づく三相dq変換処理を実行することで、ロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだd軸電流id1およびq軸電流iq1を生成し、制御器14は、これらd軸電流id1およびq軸電流iq1をd軸電流指令id *およびq軸電流指令iq *を追従させるためのd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *を生成し、そして、dq三相変換部13−1は、ロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *に対して式12に基づくdq三相変換処理を実行することで三相電圧指令Vu *、Vv *、およびVw *を生成する。つまり、本発明の第1の実施例によるモータ制御装置1では、三相dq変換部13−2における補正後ロータ位相角を用いた三相dq変換処理が実行されることにより、「ロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだ状態」が発生し、この状態の下で制御器14によるdq軸電圧指令生成処理が実行され、その後さらにdq三相変換部13−1における補正後ロータ位相角を用いたdq三相変換処理が実行されることにより、上記「ロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだ状態」が解消される。
従来より永久磁石同期モータ(PMSM)の制御には、負のd軸電流を用いる「弱め磁束制御」が用いられてきたが、弱め磁束制御に用いる式5は複雑であり、演算処理に時間がかかる問題があった。これに対し、本発明によれば、弱め磁束制御特有の式5のような複雑な計算式を用いずに、ロータ位相角θの補正に用いる位相補正量φを制御パラメータとして用いて永久磁石同期モータ(PMSM)を駆動制御するので、従来の弱め磁束制御に比べて演算処理内容が容易であり、したがって演算処理時間を短縮することができる。
続いて、位相法制量φの具体的な算出方法について説明する。図3は、図1に示すモータ制御装置における移動補正量演算部を示すブロック図である。移動補正量演算部11は、記憶部21、速度補正項演算部22、電流補正項演算部23および出力部24を有する。
記憶部21は、予め規定されたパラメータとして、速度係数NA、第1の基準速度NB、位相補正量の制限値NL、電流係数TAおよび基準電流率TBを記憶する。
速度補正項演算部22は、速度検出器16によって検出されたモータ速度をNとしたとき、速度補正項を、式18に従って算出する。すなわち、式18に示されるように、速度補正項演算部22は、まずモータ速度Nから第1の基準速度NBを減算する。次いで速度補正項演算部22は、この減算結果と0とのうちの大きい方の値に速度係数NAを乗算する。この乗算結果は、位相補正量の制限値NLをその上限値とし、すなわち、速度補正項演算部22は、当該乗算結果と位相補正量の制限値NLとのうちの小さい方の値を、速度補正項として出力する。
電流補正項演算部23は、インバータ52が出力可能な最大電流に対するq軸電流指令初期値iq0 *の割合(すなわちq軸電流指令初期値iq0 *をインバータ52が出力可能な最大電流で除算して得られる値)である初期q軸電流指令率をTrとしたとき、電流補正項を、式19に従って算出する。なお、初期q軸電流指令率Trおよび基準電流率TBは、インバータ52から出力可能な最大電流がモータ2に流れるときを1とし、0から1の間の値をとるものとする。すなわち、式19に示されるように、電流補正項演算部22は、まず初期q軸電流指令率Trから基準電流率TBを減算した値と0とのうちの大きい方の値を抽出する。次いで電流補正項演算部22は、当該抽出結果と1とのうちの小さい方の値に電流係数TAを乗算し、この乗算結果を電流補正項として出力する。
出力部24は、速度補正項と電流補正項とを乗算した値を、位相補正量φとして出力する。
式18および式19から分かるように、位相補正量φは、モータ速度Nを独立変数とする関数となる。また、q軸電流指令初期値iq0 *は、入力された加速度指令に応じて時々刻々と変化する。したがって、位相補正量φは、モータ速度Nおよびq軸電流指令初期値iq0 *の大きさによって変化する値となる。ここで、q軸電流指令初期値iq0 *はトルク指令をTcmd、トルク定数をKtとしたとき「iq0 *=トルク指令Tcmd÷Kt」で表される。一方、式5に示されるように弱め磁界制御におけるd軸電流指令id *は、角速度ωおよびq軸電流iqを変数として含んでいる。そこで、本発明では、位相補正量演算部11は、検出されたモータ速度Nとq軸電流指令初期値iq0 *とを用いて位相補正量φを算出する。なお、d軸電流指令初期値id0 *は、例えばq軸電流指令の初期値iq0 *=0とした場合の式5から算出される値とする。この際、d軸電流指令id *の初期値を0とした場合の、速度係数NA、第1の基準速度NB、位相補正量の制限値NL、電流係数TAおよび基準電流率TBについては、「id0 *×sinφ」で計算されるid *が、式5を用いる弱め磁界制御におけるd軸電流指令id *に近い値になるように、シミュレーションや実験をもとに適宜設定する。シミュレーションに基づく設定例については後述する。このようにして設定された各パラメータは記憶部21に記憶される。入力されたq軸電流指令初期値id0 *と、記憶部21に記憶された速度係数NA、第1の基準速度NB、位相補正量の制限値NL、電流係数TAおよび基準電流率TBとを用いて式18および式19にしたがって速度補正項および電流補正項を生成し、速度補正項と電流補正項とを乗算した値を位相補正量φとする。
なお、上述のようにd軸電流指令id *の初期値id0 *を0とした場合は、入力されたq軸電流指令初期値iq0 *に基づき生成された位相補正量φを用いた三相dq変換処理後に制御器14にてq軸電流指令iq *およびd軸電流指令id *を生成しようとすると、d軸電流指令id *については、最大、「iq0 *×sinφ」までしか生成できない。例えばq軸電流指令初期値iq0 *が0に近い値である場合に、大きなd軸電流指令id *を生成することができない。そこで、d軸電流指令id *の初期値id0 *については、0とするのではなく、モータ速度Nに依存した値に設定するのがより好ましい。このため、モータ制御装置1は、モータ速度Nを独立変数とする関数からなるd軸電流指令初期値id0 *を算出するd軸電流指令初期値演算部(図示せず)をさらに備えるようにしてもよい。d軸電流指令初期値演算部は、予め規定されたd軸電流指令初期値係数をIDA、第2の基準速度をIDBとしたとき、d軸電流指令id *の初期値を、式20に従って算出する。すなわち、式20に示されるように、d軸電流指令初期値演算部は、まずモータ速度Nから第2の基準速度IDBを減算する。次いでd軸電流指令初期値演算部は、この減算結果と0とのうちの大きい方の値を、d軸電流指令id *の初期値id0 *として出力する。
次に上述の本発明の第1の実施例と従来の弱め磁束制御との比較について、シミュレーション結果に基づいて説明する。本発明の第1の実施例によるモータ制御装置および従来の弱め磁束制御を用いたモータ制御装置ともに、4極対の永久磁石同期モータ(PMSM)を駆動するシミュレーション回路を構成した。本シミュレーションでは、永久磁石同期モータ(PMSM)および交流電源の各パラメータは、本発明の第1の実施例によるモータ制御装置と従来の弱め磁束制御を用いたモータ制御装置とで共通のものを用いた。すなわち、永久磁石同期モータの磁石によるステータ鎖交磁束Ψaを0.001[Wb]、1相分のステータ巻線抵抗Rを0.57[Ω]、1相分のd軸インダクタンスLdを3.2[mH]、1相分のq軸インダクタンスLqを3.2[mH]とした。また、交流電源は、40[A]、実効値200[V]の三相交流とした。
図4は、従来の弱め磁束制御によるモータ制御装置のシミュレーション結果を示す図であって、(A)はモータの回転数に対するd軸電流指令を示し、(B)はモータの回転数に対するトルクを示す。本シミュレーションでは、q軸電流指令初期値iq0 *を最大電流に対して10%から100%まで10%刻みに設定し、非特許文献1に記載された式に基づきd軸電流指令id *およびトルクを算出した。
図5は、本発明の第1の実施例によるモータ制御装置のシミュレーション結果を示す図であって、(A)は位相補正量を示し、(B)はモータの回転数に対するd軸電流指令を示し、(C)はモータの回転数に対するトルクを示す。本シミュレーションでも、q軸電流指令初期値iq0 *については最大電流に対して10%から100%まで10%刻みに設定した。実際のところ、q軸電流指令初期値iq0 *は、上述のように加速度指令に応じて時々刻々と変化する値である。本発明の第1の実施例における各パラメータについては図4に示した従来の弱め磁束制御についてのシミュレーション結果と近い値となるように適宜調整したところ、例えば、速度係数NAを25.4[deg/krpm]、第1の基準速度NBを2000[r/min]、位相補正量の制限値NLを42.2[deg]、電流係数TAを1.5、基準電流率TBを0.05、d軸電流指令初期値係数IDAを3.1[A/krpm]、第2の基準速度IDBを4000[rpm]に設定すると、従来の弱め磁束制御の制御特性にほぼ一致させることができた。ここでは、シミュレーション結果に基づくパラメータ設定について説明したが、永久磁石同期モータを駆動するモータ制御装置の実機モデルを構築して実際に永久磁石同期モータを駆動させて得られる実験結果に基づいてパラメータ設定をしてもよい。
以上説明したように、本発明の第1の実施例によれば、当該パラメータ設定を適切に設定することにより、従来の弱め磁束制御の制御特性に近づけることができる。
続いて、本発明の第2の実施例について説明する。図6は、本発明の第2の実施例によるモータ制御装置を示すブロック図である。また、図7は、図6に示すモータ制御装置における移動補正量演算部を示すブロック図である。第2の実施例は、上述の第1の実施例においてさらに、モータ2の駆動電力を供給するインバータ52の直流側の電圧の変動にも対応できるようにしたものである。
一般に、整流器51とインバータ52とを接続するDCリンクにおける直流電圧(換言すれば直流コンデンサ53の直流電圧)は、交流電源3の電圧変動や、整流器51およびインバータ52内で発生する電圧降下、インバータ52によるモータ側から直流側に回生される電力の大きさなどによって変化する。そこで、第2の実施例では、インバータ52の直流側において電圧検出器18によって検出された直流電圧値Vdcを位相補正量演算部11にフィードバックし、直流電圧値Vdcに応じてd軸電流指令初期値id0 *を変化させる。具体的には、位相補正量演算部11内に設けられた補正部25は、フィードバックされた直流電圧値Vdcを用いて、記憶部21から読み出された速度係数NA、第1の基準速度NBおよび位相補正量の制限値NLをそれぞれ補正する。また、記憶部21は、予め規定されたパラメータとして、基準電圧VBをさらに記憶しておく。なお、位相補正量演算部11および電圧検出器18以外の回路構成要素については図1および図3に示す回路構成要素と同様であるので、同一の回路構成要素には同一符号を付して当該回路構成要素についての詳細な説明は省略し、ここでは、位相補正量演算部11についてより詳細に説明する。
補正部25は、記憶部21から読み出された速度係数NAを、式21に従って補正し、補正後の速度係数NA’を生成する。式21においてNAVは、予め規定されたパラメータとして記憶部21に記憶された「速度係数についての電圧依存係数」である。
補正部25は、記憶部21から読み出された第1の基準速度NBを、式22に従って補正し、補正後の第1の基準速度NB’を生成する。式22においてNBVは、予め規定されたパラメータとして記憶部21に記憶された「第1の基準速度についての電圧依存係数」である。
補正部25は、記憶部21から読み出された位相補正量の制限値NLを、式23に従って補正し、補正後の位相補正量の制限値NL’を生成する。式23においてNCVは、予め規定されたパラメータとして記憶部21に記憶された「位相補正量の制限値についての電圧依存係数」である。
速度補正項演算部22は、補正後の速度係数NA’補正後の第1の基準速度NB’および補正後の位相補正量の制限値NL’を用いて、速度補正項を式18に従って算出する。電流補正項演算部23は、電流補正項を式19に従って算出する。出力部24は、速度補正項と電流補正項とを乗算した値を、位相補正量φとして出力する。上述した補正後の速度係数NA’、 補正後の第1の基準速度NB’および補正後の位相補正量の制限値NL’ はインバータ52の直流側において電圧検出器18によって検出された直流電圧値Vdcを独立変数とする関数であるので、出力部24から出力される位相補正量φは、インバータ52の直流側の電圧の変動にも対応したものとなる。このように第2の実施例によれば、インバータ52の直流側の電圧の変動にも対応した位相補正量φを作成するので、第1の実施例と比較して、より正確に従来の弱め磁束制御の制御特性に近づけさせることができる。d軸電流指令id *の初期値を0とした場合の、記憶部21に記憶される係数NAV、NBVおよびNCV、ならびに基準電圧VBについては、式5を用いる弱め磁界制御におけるd軸電流指令id *に近い値になるように、シミュレーションや実験をもとに適宜設定すればよい。シミュレーションに基づく設定例については後述する。
また、既に説明したように、上述の第1の実施例では、d軸電流指令部は、予め規定されたd軸電流指令初期値係数をIDA、第2の基準速度をIDBとしたとき、d軸電流指令id *の初期値id0 *を、式20に従って算出したが、第2の実施例において、式20における第2の基準速度IDBについても、フィードバックされた直流電圧値Vdcを用いて補正するようにしてもよい。この場合、補正部25は、第2の基準速度をIDB式24に従って補正し、補正後の第2の基準速度NDB’を生成する。式24においてIDBVは、予め規定されたパラメータとして記憶部21に記憶された「d軸電流指令初期値についての電圧依存係数」である。
このように式24に基づき第2の基準速度をインバータ52の直流側の電圧の変動にも対応したものとして設定すれば、より正確に従来の弱め磁束制御の制御特性に近づけさせることができる。
次に上述の本発明の第2の実施例と従来の弱め磁束制御との比較について、シミュレーション結果に基づいて説明する。本シミュレーションでは、本発明の第2の実施例によるモータ制御装置および従来の弱め磁束制御を用いたモータ制御装置ともに、4極対の永久磁石同期モータ(PMSM)を駆動するシミュレーション回路を構成した。また、本シミュレーションでは、第1の実施例のシムレーション同様、永久磁石同期モータ(PMSM)および交流電源の各パラメータは、本発明の第2の実施例によるモータ制御装置と従来の弱め磁束制御を用いたモータ制御装置とで共通のものを用いた。すなわち、永久磁石同期モータの磁石によるステータ鎖交磁束Ψaを0.001[Wb]、1相分のステータ巻線抵抗Rを0.57[Ω]、1相分のd軸インダクタンスLdを3.2[mH]、1相分のq軸インダクタンスLqを3.2[mH]とした。また、交流電源は、40[A]、実効値200[V]の三相交流とした。
図8は、従来の弱め磁束制御によるモータ制御装置のシミュレーション結果を示す図であって、(A)はモータの回転数に対するd軸電流指令を示し、(B)はモータの回転数に対するトルクを示す。本シミュレーションでは、q軸電流指令初期値iq0 *を最大電流に対して10%から100%まで10%刻みに設定し、電圧検出器18によって検出される直流電圧Vdcを282[V]から260[V]まで変化させ、非特許文献1に記載された式に基づきd軸電流指令id *およびトルクを算出した。
図9は、本発明の第2の実施例によるモータ制御装置のシミュレーション結果を示す図であって、(A)は位相補正量を示し、(B)はモータの回転数に対するd軸電流指令を示し、(C)はモータの回転数に対するトルクを示す。本シミュレーションでも、q軸電流指令初期値iq0 *については最大電流に対して10%から100%まで10%刻みに設定し、電圧検出器18によって検出される直流電圧Vdcを282[V]から260[V]まで変化させた。本発明の第2の実施例における各パラメータについては、図8に示した従来の弱め磁束制御についてのシミュレーション結果と近い値となるように適宜調整したところ、例えば、速度係数についての電圧依存係数NAVを0[deg/krpm/V]、第1の基準速度についての電圧依存係数NBVを30.7[rpm/V]、位相補正量の制限値についての電圧依存係数NLVを0[deg/V]、係数IDBVを30.7[rpm/V]に設定し、それ以外のパラメータについては第1の実施例と同様に設定すると、従来の弱め磁束制御の制御特性にほぼ一致させることができた。ここでは、シミュレーション結果に基づくパラメータ設定について説明したが、永久磁石同期モータを駆動するモータ制御装置の実機モデルを構築して実際に永久磁石同期モータを駆動させて得られる実験結果に基づいてパラメータ設定をしてもよい。
以上説明したように、本発明の第2の実施例によれば、当該パラメータ設定により、従来の弱め磁束制御の制御特性に近づけることができる。
なお、一般にモータ制御装置1内の電流制御ループには指令と実際の出力との間に時間遅れが存在する。そこで、上述した第1および第2の実施例の第1の変形例として、モータ2に流れる電流が電流指令に従うように制御する電流制御ループが有する時間遅れに対応する位相角を、補正後ロータ位相角に対してさらに加算もしくは減算することで、座標変換部13における座標変換で用いられる新たなる補正後ロータ位相角を算出するようにしてもよい。これにより、より正確に従来の弱め磁束制御の制御特性に近づけることができる。
また、一般に、交流モータに供給する電流を大きくすると、モータ内部の磁気回路において磁気飽和が発生し、この磁気飽和により、大きな供給電流にもかかわらずトルク定数が低下して所望のトルクを得ることが困難となるという問題が発生することが知られている。この問題に対応するために、q軸電流指令の位相を進めることによってモータのトルクを最大化する方法がある(例えば、特許文献3)。そこで、上述した第1および第2の実施例の第2の変形例として、モータ2のトルクを最大化するのに必要なq軸電流指令の位相進みに対応する位相角を、補正後ロータ位相角に対してさらに加算もしくは減算することで、座標変換部13における座標変換で用いられる新たなる補正後ロータ位相角を算出するようにしてもよい。これにより、より正確に従来の弱め磁束制御の制御特性に近づけることができる。
またさらに、上述した第1の変形例および第2の変形例は併せて実現してもよい。すなわち、モータ2に流れる電流が電流指令に従うように制御する電流制御ループが有する時間遅れに対応する位相角およびモータのトルクを最大化するのに必要なq軸電流指令の位相進みに対応する位相角の両方を補正後ロータ位相角にさらに加算もしくは減算することで、座標変換部13における座標変換で用いられる新たなる補正後ロータ位相角を算出するようにしてもよい。これにより、より正確に従来の弱め磁束制御の制御特性に近づけることができる。
なお、上述した位相補正量演算部11、ロータ位相角補正部12、座標変換部13(dq三相変換部13−1および三相dq変換部13−2、制御器14、PWM制御信号生成部5、速度補正項演算部22、電流補正項演算部23、出力部24、ならび補正部25は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばこれらの手段をソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、モータ制御装置1内の演算処理装置はこのソフトウェアプログラムに従って動作することで上述の各部の機能が実現される。また、既存のモータ制御装置にこれら手段に係るソフトウェアプログラムを当該モータ制御装置内の演算処理装置に追加的にインストールすることで本発明を適用することも可能である。
1 モータ駆動装置
2 モータ
3 交流電源
11 位相補正量演算部
12 ロータ位相角補正部
13 座標変換部
13−1 dq三相変換部
13−2 三相dq変換部
14 制御器
15 PWM制御信号生成部
16 速度検出器
17 電流検出器
18 電圧検出器
21 記憶部
22 速度補正項演算部
23 電流補正項演算部
24 出力部
25 補正部
51 整流器
52 インバータ
53 直流コンデンサ
2 モータ
3 交流電源
11 位相補正量演算部
12 ロータ位相角補正部
13 座標変換部
13−1 dq三相変換部
13−2 三相dq変換部
14 制御器
15 PWM制御信号生成部
16 速度検出器
17 電流検出器
18 電圧検出器
21 記憶部
22 速度補正項演算部
23 電流補正項演算部
24 出力部
25 補正部
51 整流器
52 インバータ
53 直流コンデンサ
また、図10においては、モータに印加される電圧および電流をdq座標系で表記したが、モータに実際に印加される電圧は三相座標系上の交流値である。すなわち、モータ制御装置によりモータには三相の交流電圧が印加され、この結果、モータには三相交流電流が流れる。電流ベクトル制御を行うモータ制御装置では、検出された三相交流のモータ電流を三相dq変換してd軸制御およびq軸制御を行い、これらd軸制御およびq軸制御により得られたd軸およびq軸についての各指令をdq三相変換して三相交流の電圧指令を生成している。つまり、モータ制御装置は、その内部処理として、dq座標系上のパラメータと三相座標系上とのパラメータとの間で座標変換する処理を伴う。図11は、一般的なモータ制御装置におけるdq−三相座標変換処理を説明するブロック図である。図11において、モータ2を駆動するモータ制御装置は、d軸制御器101、q軸制御器102、dq三相変換部103、PWMインバータ部104、および三相dq変換部105を備える。
PMWインバータ部104は、三相電圧指令Vu *、Vv *およびVw *と所定のキャリア周波数を有する三角波キャリア信号とを比較し、PWMインバータ部104の主回路部(図示せず)内の半導体スイッチング素子のスイッチング動作を制御するためのPWM制御信号を生成する。PWMインバータ部104の主回路部は、例えばスイッチング素子およびこれに逆並列に接続されたダイオードのフルブリッジ回路からなる。PWMインバータ部104の主回路部は、内部のスイッチング素子のスイッチング動作がPWM制御信号により制御され、三相交流電圧Vu、VvおよびVwを出力する。モータ2に印加された三相交流電圧Vu、VvおよびVwにより、モータ2には三相交流電流iu、ivおよびiwが流れるが、これを電流検出器(図示せず)により検出する。三相dq変換部105は、三相座標系上の三相交流電流iu、ivおよびiwを、式4に従ってdq座標系上のd軸電流idおよびq軸電流iqに変換し、d軸制御器101およびq軸制御器102にフィードバックする。
図1は、本発明の第1の実施例によるモータ制御装置を示すブロック図である。以降、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。ここでは、一例として、モータ制御装置1の交流電源側(すなわち整流器51の交流電源側)に商用三相の交流電源3が接続され、モータ制御装置1の交流モータ側(すなわちインバータ52の交流モータ側)に三相の永久磁石同期モータ(PMSM)2(以下、単に「モータ」と称する。)が接続される場合について説明する。
モータ制御装置1は、整流器51と、整流器51の直流側である直流リンクに接続されるインバータ(逆変換器)52とを備える。また、直流リンクには直流コンデンサ53が設けられる。なお、整流器51およびインバータ52の回路構成は本発明を限定するものではない。整流器51は、例えばダイオード整流器やPWM整流器で構成される。インバータ52は、例えばスイッチング素子およびこれに逆並列に接続されたダイオードのフルブリッジ回路からなるPWMインバータとして構成される。このスイッチング素子の例としては、IGBT、サイリスタ、GTO(Gate Turn−OFF thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがある。
すなわち、本発明の第1の実施例によれば、ロータ位相角補正部12は、速度検出器16によって検出されたロータ位相角θから位相補正量φを減算することで三相dq変換部13−2のための補正後ロータ位相角を生成する。この補正後ロータ位相角を用いて、三相dq変換部13−2は、式17に従って電流検出器17によって検出された三相座標系上の三相交流電流iu、ivおよびiwをdq座標系上のd軸電流id1およびq軸電流iq1に変換する。図2を参照して説明したように、補正後ロータ位相角を用いた三相dq変換処理により得られたd軸電流id1およびq軸電流iq1は、ロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだ状態(換言すれば、位相補正しないロータ位相角θを用いた三相dq変換処理により得られたd軸電流idおよびq軸電流iqと比べて位相補正量φだけ進んだ状態)にある。制御器14は、入力されたd軸電流指令id *およびq軸電流指令iq *と三相dq変換部13−2から出力されたd軸電流id1およびq軸電流iq1とを用いてd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *をそれぞれ生成する。これらd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *は、d軸電流i d1 およびq軸電流i q1 同様、ロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだ状態にある。また、ロータ位相角補正部12は、速度検出器16によって検出されたロータ位相角θに位相補正量φを加算することでdq三相変換部13−1のための補正後ロータ位相角を生成する。この補正後ロータ位相角を用いて、dq三相変換部13−1は、式12にしたがってdq座標系上のd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *を三相座標系上の三相電圧指令Vu *、Vv *およびVw *に変換する。上述したようにd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *はロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだ状態にあったが、式12に基づくdq三相変換処理を実行することにより、上記「ロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだ状態」が解消され、もとのロータ位相角θに戻った状態になる。この後、PWM制御信号生成部15は、dq三相変換部13−1から出力された三相電圧指令Vu *、Vv *およびVw *と所定のキャリア周波数を有する三角波キャリア信号とを比較し、インバータ52内の半導体スイッチング素子のスイッチング動作を制御するためのPWM制御信号を生成する。インバータ52は、PWM制御信号生成部15で生成されたPWM制御信号に基づき内部のスイッチング素子をスイッチング動作させて、直流リンク側から供給される直流電力を、モータ(永久磁石同期モータ(PMSM))2を駆動するための所望の電圧および所望の周波数の三相交流電力に変換する。これにより、モータ2は、インバータ52により供給された電圧可変および周波数可変の三相交流電力に基づいて動作することになる。
このように、三相dq変換部13−2は、三相交流電流iu、ivおよびiwに対して式17に基づく三相dq変換処理を実行することで、ロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだd軸電流id1およびq軸電流iq1を生成し、制御器14は、これらd軸電流id1およびq軸電流iq1をd軸電流指令id *およびq軸電流指令iq * に追従させるためのd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *を生成し、そして、dq三相変換部13−1は、ロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだd軸電圧指令Vd1 *およびq軸電圧指令Vq1 *に対して式12に基づくdq三相変換処理を実行することで三相電圧指令Vu *、Vv *、およびVw *を生成する。つまり、本発明の第1の実施例によるモータ制御装置1では、三相dq変換部13−2における補正後ロータ位相角を用いた三相dq変換処理が実行されることにより、「ロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだ状態」が発生し、この状態の下で制御器14によるdq軸電圧指令生成処理が実行され、その後さらにdq三相変換部13−1における補正後ロータ位相角を用いたdq三相変換処理が実行されることにより、上記「ロータ位相角θから位相補正量φだけ進んだ状態」が解消される。
続いて、位相補正量φの具体的な算出方法について説明する。図3は、図1に示すモータ制御装置における位相補正量演算部を示すブロック図である。位相補正量演算部11は、記憶部21、速度補正項演算部22、電流補正項演算部23および出力部24を有する。
式18および式19から分かるように、位相補正量φは、モータ速度Nを独立変数とする関数となる。また、q軸電流指令初期値iq0 *は、入力された加速度指令に応じて時々刻々と変化する。したがって、位相補正量φは、モータ速度Nおよびq軸電流指令初期値iq0 *の大きさによって変化する値となる。ここで、q軸電流指令初期値iq0 *はトルク指令をTcmd、トルク定数をKtとしたとき「iq0 *=トルク指令Tcmd÷Kt」で表される。一方、式5に示されるように弱め磁界制御におけるd軸電流指令id *は、角速度ωおよびq軸電流iqを変数として含んでいる。そこで、本発明では、位相補正量演算部11は、検出されたモータ速度Nとq軸電流指令初期値iq0 *とを用いて位相補正量φを算出する。なお、d軸電流指令初期値id0 *は、例えばq軸電流指令の初期値iq0 *=0とした場合の式5から算出される値とする。この際、d軸電流指令id *の初期値を0とした場合の、速度係数NA、第1の基準速度NB、位相補正量の制限値NL、電流係数TAおよび基準電流率TBについては、「id0 *×sinφ」で計算されるid *が、式5を用いる弱め磁界制御におけるd軸電流指令id *に近い値になるように、シミュレーションや実験をもとに適宜設定する。シミュレーションに基づく設定例については後述する。このようにして設定された各パラメータは記憶部21に記憶される。入力されたq軸電流指令初期値i q0 * と、記憶部21に記憶された速度係数NA、第1の基準速度NB、位相補正量の制限値NL、電流係数TAおよび基準電流率TBとを用いて式18および式19にしたがって速度補正項および電流補正項を生成し、速度補正項と電流補正項とを乗算した値を位相補正量φとする。
なお、上述のようにd軸電流指令id *の初期値id0 *を0とした場合は、入力されたq軸電流指令初期値iq0 *に基づき生成された位相補正量φを用いた三相dq変換処理後に制御器14にてq軸電流指令iq *およびd軸電流指令id *を生成しようとすると、d軸電流指令id *については、最大、「i d0 * ×sinφ」までしか生成できない。例えばq軸電流指令初期値iq0 *が0に近い値である場合に、大きなd軸電流指令id *を生成することができない。そこで、d軸電流指令id *の初期値id0 *については、0とするのではなく、モータ速度Nに依存した値に設定するのがより好ましい。このため、モータ制御装置1は、モータ速度Nを独立変数とする関数からなるd軸電流指令初期値id0 *を算出するd軸電流指令初期値演算部(図示せず)をさらに備えるようにしてもよい。d軸電流指令初期値演算部は、予め規定されたd軸電流指令初期値係数をIDA、第2の基準速度をIDBとしたとき、d軸電流指令id *の初期値を、式20に従って算出する。すなわち、式20に示されるように、d軸電流指令初期値演算部は、まずモータ速度Nから第2の基準速度IDBを減算する。次いでd軸電流指令初期値演算部は、この減算結果にd軸電流指令初期値係数I DA を乗算した結果と0とのうちの大きい方の値を、d軸電流指令id *の初期値id0 *として出力する。
続いて、本発明の第2の実施例について説明する。図6は、本発明の第2の実施例によるモータ制御装置を示すブロック図である。また、図7は、図6に示すモータ制御装置における位相補正量演算部を示すブロック図である。第2の実施例は、上述の第1の実施例においてさらに、モータ2の駆動電力を供給するインバータ52の直流側の電圧の変動にも対応できるようにしたものである。
補正部25は、記憶部21から読み出された位相補正量の制限値NLを、式23に従って補正し、補正後の位相補正量の制限値NL’を生成する。式23においてN LV は、予め規定されたパラメータとして記憶部21に記憶された「位相補正量の制限値についての電圧依存係数」である。
速度補正項演算部22は、補正後の速度係数NA’補正後の第1の基準速度NB’および補正後の位相補正量の制限値NL’を用いて、速度補正項を式18に従って算出する。電流補正項演算部23は、電流補正項を式19に従って算出する。出力部24は、速度補正項と電流補正項とを乗算した値を、位相補正量φとして出力する。上述した補正後の速度係数NA’、 補正後の第1の基準速度NB’および補正後の位相補正量の制限値NL’ はインバータ52の直流側において電圧検出器18によって検出された直流電圧値Vdcを独立変数とする関数であるので、出力部24から出力される位相補正量φは、インバータ52の直流側の電圧の変動にも対応したものとなる。このように第2の実施例によれば、インバータ52の直流側の電圧の変動にも対応した位相補正量φを作成するので、第1の実施例と比較して、より正確に従来の弱め磁束制御の制御特性に近づけさせることができる。d軸電流指令id *の初期値を0とした場合の、記憶部21に記憶される係数NAV、NBVおよびN LV 、ならびに基準電圧VBについては、式5を用いる弱め磁界制御におけるd軸電流指令id *に近い値になるように、シミュレーションや実験をもとに適宜設定すればよい。シミュレーションに基づく設定例については後述する。
また、既に説明したように、上述の第1の実施例では、d軸電流指令部は、予め規定されたd軸電流指令初期値係数をIDA、第2の基準速度をIDBとしたとき、d軸電流指令id *の初期値id0 *を、式20に従って算出したが、第2の実施例において、式20における第2の基準速度IDBについても、フィードバックされた直流電圧値Vdcを用いて補正するようにしてもよい。この場合、補正部25は、第2の基準速度I DB を式24に従って補正し、補正後の第2の基準速度I DB’を生成する。式24においてIDBVは、予め規定されたパラメータとして記憶部21に記憶された「d軸電流指令初期値についての電圧依存係数」である。
次に上述の本発明の第2の実施例と従来の弱め磁束制御との比較について、シミュレーション結果に基づいて説明する。本シミュレーションでは、本発明の第2の実施例によるモータ制御装置および従来の弱め磁束制御を用いたモータ制御装置ともに、4極対の永久磁石同期モータ(PMSM)を駆動するシミュレーション回路を構成した。また、本シミュレーションでは、第1の実施例のシミュレーション同様、永久磁石同期モータ(PMSM)および交流電源の各パラメータは、本発明の第2の実施例によるモータ制御装置と従来の弱め磁束制御を用いたモータ制御装置とで共通のものを用いた。すなわち、永久磁石同期モータの磁石によるステータ鎖交磁束Ψaを0.001[Wb]、1相分のステータ巻線抵抗Rを0.57[Ω]、1相分のd軸インダクタンスLdを3.2[mH]、1相分のq軸インダクタンスLqを3.2[mH]とした。また、交流電源は、40[A]、実効値200[V]の三相交流とした。
なお、上述した位相補正量演算部11、ロータ位相角補正部12、座標変換部13(dq三相変換部13−1および三相dq変換部13−2、制御器14、PWM制御信号生成部15、速度補正項演算部22、電流補正項演算部23、出力部24、ならび補正部25は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばこれらの手段をソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、モータ制御装置1内の演算処理装置はこのソフトウェアプログラムに従って動作することで上述の各部の機能が実現される。また、既存のモータ制御装置にこれら手段に係るソフトウェアプログラムを当該モータ制御装置内の演算処理装置に追加的にインストールすることで本発明を適用することも可能である。
Claims (6)
- dq三相座標変換を用いて三相交流のモータを制御するモータ制御装置であって、
検出されたモータ速度とq軸電流指令初期値とを用いて位相補正量を算出する位相補正量演算部と、
検出されたモータのロータ位相角に前記位相補正量を加算もしくは減算することで、補正後ロータ位相角を算出するロータ位相角補正部と、
前記補正後ロータ位相角に基づいて、dq座標系上のパラメータと三相座標系上とのパラメータとの間で座標変換する座標変換部と、
を備えることを特徴とするモータ制御装置。 - 前記位相補正量演算部は、
予め規定されたパラメータとして、速度係数NA、第1の基準速度NB、位相補正量の制限値NL、電流係数TA、および、基準電流率TBを記憶する記憶部と、
前記モータ速度をNとしたとき、速度補正項を、
直流電力を交流電力に変換してこれをモータの駆動電力として供給するインバータが出力可能な最大電流に対する前記q軸電流指令初期値の割合である初期q軸電流指令率をTrとしたとき、電流補正項を、
前記速度補正項と前記電流補正項とを乗算した値を、前記位相補正量として出力する出力部と、
を有する請求項1に記載のモータ制御装置。 - 前記記憶部は、予め規定されたパラメータとして、基準電圧をさらに記憶し、
前記位相補正量演算部は、前記インバータの直流側で検出された直流電圧値と、前記記憶部に予め記憶された基準電圧と、を用いて、前記記憶部から読み出された前記速度係数、前記第1の基準速度、および前記位相補正量の制限値をそれぞれ補正する補正部を有する請求項2に記載のモータ制御装置。 - 前記モータ速度を独立変数とする関数からなるd軸電流指令初期値を算出するd軸電流指令初期値演算部をさらに備える請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
- 前記ロータ位相角補正部は、モータに流れる電流が電流指令に従うように制御する電流制御ループが有する時間遅れに対応する位相角、または、モータのトルクを最大化するのに必要なq軸電流指令の位相進みに対応する位相角、または、これら位相角の両方、を前記補正後ロータ位相角に対してさらに加算もしくは減算することで、前記座標変換部における座標変換で用いられる新たなる補正後ロータ位相角を算出する請求項1〜5のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
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