JP2016091898A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】層状岩塩型の結晶構造を有する正極活物質を用いたときに、微小短絡の発生が抑制され、高い容量維持率を実現し得るリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】本発明によって提供されるリチウムイオン二次電池は、正極活物質層と負極活物質層とが対向し、かつ、負極活物質層が正極活物質層の端部から所定の非対向領域分だけ突出するように構成されている。また、正極活物質層は、負極活物質層の非対向領域の隣接領域と対向する端部に沿って、帯状に配置される領域Aと、領域A以外の領域である領域Bとを備えている。ここで、領域Aには、層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物からなる第1の正極活物質が含まれ、領域Bには、層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物からなる第2の正極活物質が含まれている。そして、第1の正極活物質の結晶子径は、第2の正極活物質の結晶子径よりも200Å以上500Å以下の範囲で大きい。
【選択図】図3

Description

本発明は、層状岩塩型の結晶構造を有する正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池(リチウム二次電池等ともいう)は、既存の電池に比べて軽量かつエネルギー密度が高いことから、従来より、パソコンや携帯端末等のいわゆるポータブル電源や車両駆動用電源として用いられている。特に近年では、大容量が求められ、ハイレートでの充放電を行う、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両の駆動用高出力電源として、リチウムイオン二次電池は好ましく用いられている。
この種のリチウムイオン二次電池では、正極活物質層を備える正極と、負極活物質層を備える負極とを、セパレータを介して対向配置させ、両電極間で電荷担体(リチウムイオン)を往き来させることにより充放電が行われる。ここで、正極活物質層から放出されたリチウムイオンを負極活物質層が完全に吸蔵できないと、たとえ微量であっても、その部位に金属リチウムが析出してしまう。そのため、リチウムイオン二次電池の典型的な構成においては、負極活物質層の電荷担体の受入容量を十分に確保するべく、負極活物質層の寸法を正極活物質層の寸法よりも大きくし、負極活物質層で正極活物質層を覆うように構成している(特許文献1参照)。
特開2005−190913号公報 特開2005−209411号公報 国際公開第2011/122448号 特開2008−078109号公報
上記の構成によると、負極活物質層の端部には、正極活物質層と対向しない非対向領域が形成される。この負極活物質層の非対向領域に充電されたリチウムイオンは、その後の充放電反応に関与し難くなる。また、非対向領域では他の対向領域に比べてリチウムイオンが充電され難い。そのため、リチウムイオンの濃度平衡を満たすため、かかる非対向領域に隣接する負極活物質層(すなわち対向領域の端部)から非対向領域へと、充電されたリチウムイオンが拡散する現象が起こる。その結果、負極活物質層の対向領域の端部からはリチウムイオンが放電され難く、正極活物質層の端部領域では、中央領域に比較してリチウムイオンが抜けた状態が生じ易くなっていた。
かかる状態は、正極活物質として層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物を使用した場合に、正極活物質の結晶構造を不安定化させる要因となり得る。そのため、正極活物質から遷移金属が溶出し、負極活物質層上に析出するという、新たな問題が生じ得た。このような負極活物質層での金属の析出は、容量低下や微小短絡の原因となり得るため、未然に防ぐことが重要である。そしてこのような問題は、一度の充放電で多量のリチウムイオンが吸蔵および放出される、高容量でハイレート充放電(急速充放電)を繰り返す用途のリチウムイオン二次電池について特に生じ易い問題であった。
本発明は、上記の従来の課題を解決すべく創出されたものであり、その目的は、層状岩塩型の結晶構造を有する正極活物質を用いたときに、微小短絡の発生が抑制されて、高い容量維持率を実現し得るリチウムイオン二次電池を提供することである。
上記目的を実現すべく、本発明により、正極活物質層を備える正極と、負極活物質層を備える負極と、非水電解質とを含むリチウムイオン二次電池が提供される。上記正極と上記負極とは、上記正極活物質層と上記負極活物質層とが対向し、かつ、上記負極活物質層が上記正極活物質層の端部から所定の非対向領域分だけ突出するように構成されている。また、上記正極活物質層は、上記負極活物質層の非対向領域に隣接する領域と対向する端部に沿って、帯状に配置される領域Aと、上記領域A以外の領域である領域Bとを備えている。ここで、上記領域Aには、層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物からなる第1の正極活物質が含まれ、上記領域Bには、層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物からなる第2の正極活物質が含まれている。そして、上記第1の正極活物質の結晶子径は、上記第2の正極活物質の結晶子径よりも200Å以上500Å以下の範囲で大きいことにより特徴づけられる。
層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物は、リチウムイオンが引き抜かれた状態が進行すると、結晶構造を維持できなくなり崩壊し得る。すなわち、例えば遷移金属イオンの溶出が生じ易くなる。本発明者らの鋭意研究によると、層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物については、結晶構造が維持される範囲で結晶子径が大きくなると、リチウムイオンの引き抜き(放出)に対する結晶構造の安定性が高められることがわかった。そこで、ここに開示される技術では、リチウムイオンの抜けが起こり易い正極活物質層の領域Aにおいて、上記のとおり結晶子径のより大きな正極活物質を用いることで、正極活物質の結晶構造を安定化させ、微小短絡の発生や容量低下を抑制するようにしている。またこのような構成により、出力を高く維持することも可能とされる。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の好ましい一態様において、上記層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物は、一般式:Li1+δ(NiCoMn)M;で表される。そして上記第1の正極活物質の(003)結晶子径は、上記第2の正極活物質の(003)結晶子径よりも200Å以上500Å以下の範囲で大きいことを特徴としている。ただし、式中、Mは、NiCo,Mnを除く遷移金属元素,Ca,Mg,Al,B,およびFからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。δは、−0.05≦δ≦0.2で電荷中性条件を満たすように定まる値である。a,b,c,dは、a×b×c≠0かつa+b+c+d=1を満たす。このような構成により、上記の効果をより確実に発揮し得るリチウムイオン二次電池が実現される。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の好ましい一態様において、上記第1の正極活物質の(003)結晶子径は、1100Å以上1500Å以下であることを特徴としている。これにより、容量維持率がより一層高いリチウムイオン二次電池が提供される。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の好ましい一態様において、上記第2の正極活物質の(003)結晶子径は、900Å以上1400Å以下であることを特徴としている。これにより、容量維持率および出力維持率がバランスよく向上されたリチウムイオン二次電池が提供される。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の好ましい一態様において、上記正極は、長尺の正極集電体の長手方向に沿う一方の端部に正極集電体露出部が設けられ、上記正極集電体露出部以外の部分に上記正極活物質層が備えられている。上記負極は、長尺の負極集電体の長手方向に沿う一方の端部に負極集電体露出部が設けられ、上記負極電体露出部以外の部分に上記負極活物質層が備えられている。そして、上記正極集電体露出部と、上記負極集電体露出部とは、上記長手方向に直交する幅方向の一方の端部と他方の端部とにそれぞれ突出するように配置され、上記幅方向を捲回軸として捲回された捲回型電極体を構成している。ここで、上記領域Aは、上記正極集電体露出部に隣接する上記正極活物質層の端部に沿う帯状の領域A1と、該領域A1とは上記幅方向で反対側の端部に沿う帯状の領域A2とからなり、上記領域Bは、上記領域A1と領域A2とに挟まれた中央の領域であることを特徴としている。ここに開示される技術は、捲回型電極体を備えるリチウムイオン二次電池に対しても好ましく適用することができる。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の好ましい一態様において、上記正極活物質層における上記領域A1の幅をa1、上記領域A2の幅をa2とし、上記負極活物質層であって、正極活物質層の上記領域A1より突出した非対向第1領域の幅をd1、正極活物質層の上記領域A2より突出した非対向第2領域の幅をd2とする。このとき、a1,a2,d1およびd2は、次式(2)および(3):d1<a1≦2×d1…(2);d2<a2≦2×d2…(3);を満たすことを特徴としている。このような構成により、容量維持率の向上効果と、出力維持率の向上効果とをより好適に両立することができる。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池の好ましい一態様において、上記負極活物質は、炭素系材料からなることを特徴としている。かかる構成の負極は電位が低いため、金属リチウムや遷移金属の析出の問題が顕著になり得る。このような電池にここに開示される技術を適用すると、その効果がより一層明瞭となるために好ましい。
一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す断面図である。 一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の捲回電極体の構成を説明する模式図である。 一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電極の構成を模式的に説明する分解断面図である。 各例の電池について、領域Aおよび領域Bの正極活物質の結晶子径の差と、容量維持率との関係を示したグラフである。 各例の電池について、領域Aの正極活物質の結晶子径と、容量維持率との関係を示したグラフである。 各例の電池について、領域Bの正極活物質の結晶子径と、出力維持率との関係を示したグラフである。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明に係るリチウムイオン二次電池について、好適な実施形態に基づき説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池構造等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、下記に示す図面における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電解質として非水系の電解液を用いた繰り返し充放電可能な電池であって、電解質イオン(電荷担体)としてリチウム(Li)イオンを利用し、正負極間においてこのリチウムイオンの移動に伴い充放電が実現される二次電池を包含する。一般にリチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等と称される二次電池は、本明細書におけるリチウム二次電池に包含される典型例である。また、本明細書において「活物質」とは、電荷単体となる化学種(リチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出し得る材料をいう。
図1は、一実施形態としてのリチウムイオン二次電池100の構成を示す断面模式図である。このリチウムイオン二次電池100は、本質的に、正極活物質層34を備える正極30と、負極活物質層44を備える負極40と、非水電解質(図示せず)とを備えている。ここで、負極活物質層44は、正極活物質層34の端部から所定の非対向領域Dの分だけ突出するように構成されている。
この図1の例では、正極30および負極40は長尺であり、両者が対向配置されて捲回されることで、捲回型電極体20を構成している。図2は、この捲回型電極体20の構成を説明する図である。図3は、捲回されていない状態の正極30および負極40の構成を説明する断面図である。以下、好適例として、この捲回型電極体20を備えるリチウムイオン二次電池100を例にして、ここに開示される技術について詳細に説明を行う。しかしながら、ここに開示されるリチウムイオン二次電池を、以下の実施形態に限定することを意図したものではない。例えば、正極30および負極40は長尺のものに限定されず、板状の正極30および負極40が複数積層された平板積層型電極体20を構成していても良い。
[正極]
長尺の正極30は、典型的には、長尺の正極集電体32と、この正極集電体32上に保持された正極活物質層34とを備えている。正極集電体32には、典型的には、正極活物質層34が形成された部位と、正極活物質層34が設けられずに集電体32が露出された正極集電体露出部33とが設けられる。この正極集電体露出部33は、典型的には、長尺の正極集電体32の長手方向に沿う一方の端部に帯状に設けられる。そして、正極活物質層34は、この正極集電体32のうち、正極集電体露出部33を除く表面に帯状に設けられる。正極活物質層34は、正極集電体32の両面に設けられてもよいし、いずれか一方の面にのみ設けられてもよい。
正極集電体32としては、導電性の良好な金属(例えばアルミニウム、ニッケル等)からなる導電性部材が好適である。この正極活物質層34は、少なくとも正極活物質を含み、非水電解液の含浸が可能なように多孔質構造を有している。ここに開示されるリチウムイオン二次電池においては、この正極活物質として、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を用いるようにしている。
そして図2および図3に示すように、正極活物質層34は、負極活物質層44の非対向領域Dの隣接領域と対向する端部に沿って、帯状に配置される領域Aと、この領域A以外の領域である領域Bとを備えている。そして、この領域Aと領域Bとには、正極活物質として層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物を共通して含む。しかしながら、領域Aに含まれる第1の正極活物質と、領域Bに含まれる第2の正極活物質とでは、第1の正極活物質の方が、結晶子径が200Å以上500Å以下の範囲だけ大きくなるよう構成される。これは、層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物においては、結晶構造が維持され得る範囲で結晶子径が大きくなるほど結晶構造が安定化されることによるものである。すなわち、結晶子径が大きいと、リチウムイオンが多量に放出された状態が頻繁に生じても、結晶構造が崩壊することなく維持され得る傾向にある。そのため、リチウムイオンの脱離がより起こり易いこの領域Aに、結晶子径のより大きな結晶構造を有する正極活物質を配置して、結晶構造の安定化、延いては耐久性の向上を図るものである。
捲回型電極体20を備える構成では、上記の正極集電体露出部33と、負極集電体露出34部とは、長手方向に直交する幅方向の一方の端部と他方の端部とにそれぞれ突出するように配置される。そのため、正極活物質層34は、幅方向の両方の端部において、対向する負極活物質層44からの非対向領域Dが突出する。したがって、領域Aは、正極活物質層34は、幅方向の両方の端部に沿って帯状に配置される。すなわち、領域Aは、正極活物質層34のうち、正極集電体露出部33に隣接する正極活物質層34端部に沿う帯状の領域A1と、この領域A1とは幅方向で反対側の端部に沿う帯状の領域A2とからなる。そして、領域Bは、これら領域A1と領域A2とに挟まれた中央の領域に配置される。
なお、正極活物質層34や負極活物質層44の大きさや相対的な厚み等にもよるため必ずしもこれに限定されないが、おおよその目安として、正極活物質層34における領域Aと負極活物質層44における非対向領域Dとの幅方向の寸法(以下、単に「幅」という場合がある)は、以下の関係を満たすように決定することができる。すなわち、領域Aの幅をaとし、非対向領域Dの幅をdとする。
このとき、未対向領域Dに比べて領域Aの割合が少ないと、未対向領域Dによる容量低下の影響を十分に補うことが困難となり得る。したがって、領域Aの幅は、未対向領域Dの幅に比較して同等かそれより広いことが好ましい。厳密に限定されるものではないが、容量低下をより確実に抑制するには、d≦aとすることができ、d<aとすることが好ましい。また、結晶子径のより大きな結晶構造を有する第1の正極活物質は、高い充電状態において結晶構造が安定しているものの、充放電反応性が低下し得る。換言すると抵抗が高まるという背反が生じ得る。したがって、この第1の正極活物質を含む領域Aの割合が多すぎると却って容量低下の影響を招く可能性があり、出力維持率が不必要に抑制され得るために好ましくない。かかる観点から、領域Aの幅は、未対向領域Dの幅の2倍を目安に設定することができる。具体的には、例えば、出力維持率の低下をより確実に抑制するためには、a≦2d(例えばa<2d)とすることが好ましい。
例えば、具体的な一態様において、高容量型(10Ah以上)で、ハイレート(10C以上)での充放電を行う用途のリチウムイオン二次電池については、正極活物質層34や負極活物質層44の幅が100mm程度のものがあり得る。このような場合、非対向領域Dの幅dは、好ましくは0.5mm以上5mm以下程度であり、より好ましくは1mm以上2mm以下程度に設定することができる。そしてこのとき、領域Aの幅aは、d<a≦2×dの関係を満たしていることが好ましい。例えば、より具体的には、このようなスケールの電池において、非対向領域Dの幅dが1mm以上2mm以下であるとすると、領域Aの幅aは、1mm超過とすることで、より確実に容量維持率の低下を抑制できて好ましい。また、出力維持率の低下を抑制するために、領域Aの幅aは4mm以下とするのが好適である。
また、集電体露出部33,43が設けられた捲回型電極体は、一般的に、2倍幅の長尺の電極を幅方向の中央で切断して2つの長尺の電極を作製することがあり得る。このような場合、集電体露出部33,43に沿う端部と、幅方向で他方の端部とでは、活物質層34,44の端部構造が異なる場合があり得る。すなわち、集電体露出部33,43に沿う端部よりも、幅方向の他方の端部(すなわち、切断端部)の方が、断面形状が角張る傾向にあり、その分、活物質の目付量が多くなることが考えられる。したがって、実際の設計においては、上記の領域A1の幅:a1と、領域A2の幅:a2と、を分けて考えることができる。また、非対向領域Dについても、領域A1の側で突出する非対向領域D1と、領域A2の側で突出する非対向領域D2について、非対向領域D1の幅:d1と、非対向領域D2の幅:d2とを分けて考えることができる。この場合、次式(2)および(3)で示す関係を満たすようにすればよい。
d1≦a1<2×d1 …(2)
d2≦a2<2×d2 …(3)
なお、具体的に図示はしないが、平板積層型電極体を備える構成においても、上記の捲回型電極体の場合と同様に考えることができる。すなわち、平板積層型電極体は、複数の方形型の正極30と負極40とが積層されて構成される。ここで、正極活物質層34が対向する負極活物質層44では、四方の端部に非対向領域Dが突出するよう構成される。したがって、領域Aは、方形の正極活物質層34の外縁に沿って帯状にぐるりと一周配置されることとなる。そして、領域Bは、この領域Aに取り囲まれる形態で、その中央の領域に配置される。
層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物としては、いわゆるコバルト系酸化物(例えば、コバルト酸リチウム;LiCoO),ニッケル系酸化物(例えば、リチウムニッケルコバルト複合酸化物;LiNi0.8Co0.2等),マンガン系酸化物(例えば、マンガン酸リチウム;LiMnO等)等として認識されるリチウム酸化物を考慮することができる。さらには、代表的にはLiMnOで表される、いわゆるリチウムリッチ型(リチウム過剰型)の酸化物であり得る。これらは、Co,Ni,Mnの各サイトの一部をこれらの他の元素で置換したものであってもよく、さらには、Co,Ni,Mnの各サイトの一部を、他の遷移金属元素やその他の元素でさらに置換したものであってもよい。この様な結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物は、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能であり、比較的高い還元電位を有し、比較的高容量な材料である点で好ましい。
なお、これに限定されるものではないが、リチウム遷移金属複合酸化物としては、例えば、下記の一般式(1)で表される組成を有する酸化物を好ましく用いることができる。
Li1+δ(NiCoMn)M …(1)
ここで、式(1)中、Mは、層状岩塩型の結晶構造のNiCoおよびMnを除く遷移金属元素、Ca,Mg,Al,B,およびFからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。遷移金属元素については特に制限されず、例えば、元素周期律表の3族から11族に属する各種の遷移金属元素(ただし、NiCoおよびMnを除く)を考慮することができる。好ましい元素Mとしては、具体的には、B,F,Mg,Al,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wが挙げられる。これらはいずれか1種を単独で含んでも良いし、2種以上を組み合わせて含んでも良い。
δは、結晶構造中に含まれるリチウム成分(Li、イオンの形態であり得る)の割合を示す。このδは、環境条件により変わり得る値であって、電荷中性条件を満たすように、概ね、−0.05≦δ≦0.2の値をとり得る。
また、a,b,c,dは、それぞれNi,Co,MnおよびMの元素の割合を示す。これらa,b,c,dは相互の元素の割合によりその値が変動し得るが、a+b+c+d=1を満たすように決定される。なお、Ni,CoおよびMnのうち、いずれか1種の元素が含まれる必要があるため、a×b×c≠0である。しかしながら、a,bおよびcのいずれか1つ、または2つは、ゼロであってもよい。
そして、層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物においては、典型的には、リチウム層と遷移金属層とが積層する積層方向(c軸方向)の結晶子径を好適に調整することができる。かかる結晶子径は、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法を制御することで調整することができる。このようなリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法としては、各種の手法が知られており、例えば、一般的な水熱法や晶析法が例示される。これらの手法では、所望の組成のリチウム遷移金属複合酸化物と対応する化学量論組成の複合水酸化物を前駆体として用意し、この前駆体を焼成することで酸化物に転換させるようにしている。このとき、焼成の際の昇温速度、焼成温度および保持時間を調整することで、結晶子のc軸方向への成長を制御することができ、結晶子径を所望の値に調整することができる。
具体的な一例としては、かかる焼成を、酸化性雰囲気中で行い、少なくとも30℃〜800℃の温度域における昇温速度を2℃/分〜10℃/分とする。そして焼成温度を800℃〜1000℃として、この温度範囲に1時間〜5時間保持するようにする。また、加熱開始から、焼成温度での保持終了までの時間を、3時間〜8時間の範囲に収めるようにする。これにより、無駄な方位での結晶成長を抑制しつつ、c軸方向の結晶子径を調整することができる。結晶子径は、領域Aに含まれる第1の正極活物質が、領域Bに含まれる第2の正極活物質よりも、200Å以上500Å以下の範囲で大きくなるよう調整する。
なお、本明細書において、上記の層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物(典型的には複数の粒子からなる粉末)についての結晶子とは、かかる酸化物を構成する一の粒子内の結晶構造において、単結晶とみなせる領域(集まり)のことをいう。そして、結晶子径とは、その結晶子の大きさのことをいう。この結晶子径は、当業者によく知られているように、X線回折線プロファイルに基づき、Scherrerの式により算出される値を採用することができる。そして、層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物については、X線回折線プロファイルにおいてメインピークとして現れる(003)面に基づく結晶子径を採用することができる(例えば、特許文献3参照)。
ここで、厳密には制限されないものの、リチウムイオン二次電池の高い電池性能を得るために、第1の正極活物質と第2の正極活物質の(003)結晶子径は、いずれも概ね800Å以上1600Å以下の範囲にあることが好ましい。
そして第1の正極活物質の(003)結晶子径が第2の正極活物質よりも上記範囲で大きいとの関係を満たすことから、第1の正極活物質の(003)結晶子径は、1000Å以上であることが好ましく、1100Å以上であることがより好ましい。なお、結晶子径が大きすぎると抵抗が高くなるとの背反が見られ得る。かかる観点から、第1の正極活物質の(003)結晶子径は、1600Å以下であることが好ましく、1500Å以下であることがより好ましく、1400Å以下であることがさらに好ましい。
また、同様の理由から、第2の正極活物質の(003)結晶子径は、900Å以上であることが好ましく、1000Å以上であることがより好ましい。また、第2の正極活物質の(003)結晶子径は、1500Å以下であることが好ましく、1400Å以下であることがより好ましく、1300Å以下であることがさらに好ましい。
なお、正極活物質層34には、上記正極活物質に加えて、一般的なリチウムイオン二次電池において正極活物質層の構成成分として使用され得る1種または2種以上の材料を必要に応じて含有し得る。そのような材料の例として、導電材やバインダが挙げられる。導電材としては、例えば、種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラックやケッチェンブラック)、活性炭、黒鉛、炭素繊維等の炭素材料を好適に用いることができる。また、バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のハロゲン化ビニル樹脂、ポリエチレンオキサイド(PEO)等のポリアルキレンオキサイドを好適に用いることができる。また、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、さらに各種添加剤(例えば、過充電時にガスを発生させる無機化合物、分散剤、増粘剤等)を含ませることもできる。
正極活物質層34全体に占める正極活物質の割合は、高エネルギー密度を実現する観点から、およそ60質量%以上(典型的には60質量%〜95質量%)とすることが適当であり、通常はおよそ70質量%〜95質量%であることが好ましい。また、バインダを使用する場合、正極活物質層全体に占めるバインダの割合は、機械的強度(形状保持性)を好適に確保する観点から、例えばおよそ0.5質量%〜10質量%とすることができ、通常はおよそ1質量%〜5質量%とすることが好ましい。導電材を使用する場合、出力特性とエネルギー密度とを高いレベルで両立する観点から、正極活物質層全体に占める導電材の割合は、例えばおよそ1質量%〜20質量%とすることができ、通常はおよそ2質量%〜10質量%とすることが好ましい。
また、正極集電体32の単位面積当たりに設けられる正極活物質層34の質量(目付量)は、高エネルギー密度を実現する観点から、正極集電体32の片面当たり3mg/cm以上(例えば5mg/cm以上、典型的には7mg/cm以上)とするとよい。優れた出力特性を実現する観点からは、正極集電体32の片面当たり100mg/cm以下(例えば70mg/cm以下、典型的には50mg/cm以下)とするとよい。また、正極活物質層34の片面当たりの平均厚みは、例えば20μm以上(典型的には40μm以上)であって、100μm以下(典型的には80μm以下)とするとよい。また、正極活物質層34の密度は、例えば1.0g/cm以上(典型的には2.0g/cm以上)であって、4.5g/cm以下(例えば4.0g/cm以下)とするとよい。
[負極]
長尺の負極40は、典型的には、長尺の負極集電体42と、負極集電体42上に形成された負極活物質層44とを備えている。負極集電体42には、負極活物質層44が形成される部位と、負極活物質層44が設けられずに集電体42が露出される負極集電体露出部43とが設定される。この負極集電体露出部43は、典型的には、負極集電体42の幅方向の一方の端部に沿って帯状に設けられる。そして、負極活物質層44は、この負極集電体42のうち、負極集電体露出部43を除く表面に設けられる。負極集電体42としては、導電性の良好な金属(例えば銅、ニッケル等)からなる導電性部材が好適である。この負極活物質層44は、少なくとも負極活物質を備えており、非水電解液の含浸が可能なように多孔質構造を有している。なお、ここに開示される負極活物質層44は、上記のとおり、正極活物質層34の端部から所定の非対向領域Dの分だけ突出するように構成されるが、かかる形態については既に詳細に説明したため、ここでは説明を省略する。
負極活物質としては、リチウムイオン二次電池の負極活物質として使用し得ることが知られている各種の材料を1種または2種以上を採用することができる。好適例として、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、カーボンナノチューブ等の炭素材料や、これらを組み合わせた構造を有する炭素材料が挙げられる。なかでも、エネルギー密度の観点から、天然黒鉛(石墨)や人造黒鉛等の黒鉛系材料を好ましく用いることができる。かかる黒鉛系材料は、少なくとも一部の表面に非晶質炭素が配置されているものを特に好ましく用いることができる。より好ましくは、粒状炭素の表面のほぼ全てを非晶質炭素の膜で被覆された形態である。なお、非晶質炭素はその表面にエッジ面が多く露出しており、電荷担体の受入性が高い(すなわち、電荷担体の吸蔵・放出スピードが速い)。また、黒鉛は、理論容量が大きく、エネルギー密度に優れている。したがって、負極活物質として非晶質炭素被覆黒鉛を用いることで、大容量でエネルギー密度が高く、かつ、入出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現することが可能となる。また、かかる炭素系材料のほかに、例えば、LiTi12等のリチウムチタン複合酸化物、リチウム遷移金属複合窒化物等の、リチウム遷移金属複合化物を用いることもできる。
なお、負極活物質層44には、上記負極活物質に加えて、一般的なリチウムイオン二次電池において負極活物質層44の構成成分として使用され得る1種または2種以上の材料を必要に応じて含有し得る。そのような材料の例として、バインダや各種添加剤が挙げられる。バインダとしては、一般的なリチウムイオン二次電池の負極に使用されるバインダと同様のものを適宜採用することができる。例えば、正極30におけるのと同様のバインダを用いることができる。そして好ましい形態として、負極活物質層44を形成するために上記の水性溶媒を用いる場合には、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類、ポリエチレンオキサイド(PEO)、酢酸ビニル共重合体等の水溶性のポリマー材料または水分散性のポリマー材料を好ましく採用し得る。その他、増粘剤、分散剤、導電材等の各種添加剤を適宜使用することもできる。例えば、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)やメチルセルロース(MC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)等のセルロース系ポリマーが挙げられる。
負極活物質層全体に占める負極活物質の割合は、およそ50質量%以上とすることが適当であり、通常は90質量%〜99質量%(例えば95質量%〜99質量%)とすることが好ましい。これにより、高エネルギー密度を実現することができる。バインダを使用する場合、負極活物質層全体に占めるバインダの割合は、例えばおよそ1質量%〜10質量%とすることができ、通常はおよそ1質量%〜5質量%とすることが好ましい。これにより、負極活物質層の機械的強度(形状保持性)を好適に確保することができ、良好な耐久性を実現することができる。増粘剤を使用する場合、負極活物質層全体に占める増粘剤の割合は、例えばおよそ1質量%〜10質量%とすることができ、通常はおよそ1質量%〜5質量%とすることが好ましい。
負極集電体42の単位面積当たりに設けられる負極活物質層44の質量(目付量)は、高エネルギー密度と出力密度とを実現する観点から、負極集電体42の片面当たり5mg/cm以上(典型的には7mg/cm以上)であって、20mg/cm以下(典型的には15mg/cm以下)程度とするとよい。また、負極活物質層44の片面当たりの厚みは、例えば40μm以上(典型的には50μm以上)であって、100μm以下(典型的には80μm以下)とするとよい。また、負極活物質層44の密度は、例えば0.5g/cm以上(典型的には1.0g/cm以上)であって、2.0g/cm以下(典型的には1.5g/cm以下)とするとよい。
[セパレータ]
なお、上記リチウムイオン二次電池においては、正極30と負極40との間にセパレータ50を備えていてもよい。セパレータ50は、正極30と負極40とを絶縁するとともに、電荷担体を保持し、この電荷担体の通過性を可能とする構成材料である。このようなセパレータ50は、各種の材料からなる微多孔質樹脂シートにより好適に構成することができる。特に限定されるものではないが、このセパレータ50は、捲回型電極体20が所定の温度となったときに軟化溶融し、電荷担体の通過を遮断すするシャットダウン機能を備えるように構成してもよい。例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)に代表されるポリオレフィン樹脂からなる微多孔質シートは、シャットダウン温度を80℃〜140℃(典型的には110℃〜140℃、例えば120℃〜135℃)の範囲で好適に設定できるためにセパレータ50として好ましい。
なお、セパレータ50は、上記の微多孔質樹脂シートを基材として、その片面または両面に、耐熱性および絶縁性を有する無機骨材からなる耐熱層(Heat Resistant Layer:HRL)を備えることができる。これにより、たとえば、捲回型電極体20の温度がセパレータ50の融点よりも高い温度となりセパレータ50が縮んだり破断したりしても、正極30および負極40が短絡するのを防止することができる。
セパレータ50の全体の平均厚みは特に限定されないが、通常、10μm以上、典型的には15μm以上、例えば17μm以上とすることができる。また、上限については、40μm以下、典型的には30μm以下、例えば25μm以下とすることができる。平均厚みが上記範囲内にあることで、電荷担体の透過性を良好に保つことができ、かつ、微小な短絡(漏れ電流)がより生じ難くなる。このため、入出力密度と安全性とを高いレベルで両立することができる。
[捲回型電極体]
既に簡単に説明したが、正極30、負極40およびセパレータ50を用い、図2に示すような捲回型電極体20を構成することができる。より詳細には、長尺の正極30と長尺の負極40とを計二枚の長尺のセパレータ50を介在させて積層し、長手方向に捲回する。換言すると、長手方向に直交する幅方向を倦回軸W方向として捲回する。これにより、円柱型(円筒型)の捲回型電極体20を得ることができる。なお、図2の例では、得られた捲回型電極体20を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって、扁平形状の捲回型電極体20を構築している。このような捲回型電極体20の形状は、使用する電池ケース10の形状に合わせて適切に成形することができる。
なお、正極30、負極40およびセパレータ50の積層の際には、正極30の正極集電体露出部33と、負極40の負極集電体露出部43とが、セパレータ50の幅方向の両側からそれぞれ互いに異なる側にはみ出すように、正極30と負極40とを幅方向でややずらして重ね合わせるとよい。その結果、捲回型電極体20の捲回軸W方向では、正極集電体露出部33と負極集電体露出部43とが、それぞれ捲回コア部分(すなわち正負の活物質層34,44が対向した部分)から外方にはみ出すこととなる。この正極集電体露出部33と負極集電体露出部43とを利用することで、高効率な集電を行うことができる。
[正極と負極の容量]
上記の正極30と負極40とは、電荷担体の受入特性の違い等から、容量比を調整することができる。具体的には、正極容量C(mAh)と負極容量C(mAh)との比(C/C)を、1.0〜2.0とすることが適切であり、1.5〜1.9(例えば1.7〜1.9)とすることが好ましい。ここで、正極容量C(mAh)は、正極活物質の単位質量当たりの理論容量(mAh/g)と該正極活物質の質量(g)との積として規定される。また、負極容量C(mAh)は、負極活物質の単位質量当たりの理論容量(mAh/g)と該負極活物質の質量(g)との積として規定される。かかる容量比は、上記の通り、対向する正極活物質層34よりも負極活物質層44が大きくなるよう構成することで好適に調整することができる。これにより、電池容量やエネルギー密度等の電池特性を良好に維持しつつ、全体として正負極間の電荷バランスを整えることができる。
[非水電解質]
非水電解質としては、典型的には、非水溶媒中に支持塩(例えば、リチウムイオン二次電池ではリチウム塩)を溶解または分散させたものを採用し得る。あるいは、液状の非水電解質にポリマーが添加されてゲル状となった、いわゆる固体電解質としてもよい。
非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池において電解液として用いられるカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の各種の有機溶媒を特に制限なく用いることができる。例えば、具体的には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等が挙げられる。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を混合溶媒として用いることができる。
支持塩としては、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられる各種のものを適宜選択して採用することができる。例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、Li(CFSON、LiCFSO等のリチウム塩を用いることが例示される。このような支持塩は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。かかる支持塩は、非水電解質における濃度が0.7mol/L〜1.3mol/Lの範囲内となるように調製することが好ましい。
また、非水電解質は、ここに開示されるリチウムイオン二次電池の特長を損なわない限り、各種の添加剤等を含んでいても良い。かかる添加剤としては、ビニレンカーボネート(VC),フルオロエチレンカーボネート(FEC)等の皮膜形成剤、ビフェニル(BP),シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生添加剤等が挙げられる。
[リチウムイオン二次電池]
なお、上記で用意した捲回型電極体20および非水電解液を電池ケース10内に収容することで、リチウムイオン二次電池が構築される。
電池ケース10は、例えば、アルミニウムおよびその合金、鉄およびその合金などからなる金属製、ポリアミド等の樹脂製、ラミネートフィルム製等の各種のものを好適に用いることができる。図1の例では、アルミニウム合金製の薄い角型の電池ケース10であって、上面が開放された有底の扁平な箱型形状(典型的には直方体形状)のケース本体(外装ケース)12と、該ケース本体12の開口部を塞ぐ封口体14とを備えている。電池ケース10の上面(すなわち封口体14)には、上記捲回電極体20の正極30と電気的に接続する正極端子60と、捲回電極体20の負極40と電気的に接続する負極端子70とが設けられている。また、封口体14には、典型的には、捲回電極体20が収容されたケース本体12内に非水電解液を注入するための注液口84が形成されている。さらに、封口体14には、従来のリチウムイオン二次電池のケースと同様に、電池異常の際に電池ケース10内部で発生したガスを電池ケース10の外部に排出するための安全弁82が設けられていてもよい。捲回電極体20は、この封口体14に固定した状態でケース本体12内に収容すると、収容位置が安定すると共に、破損等の虞が低減されて好ましい。
封口体14への捲回電極体20の固定に際しては、具体的には、図1に示すように、正極集電体露出部33と正極端子60(例えばアルミニウム製)とを、正極集電部材62を介して接合する。これにより、捲回型電極体20の正極30と正極端子60とを電気的に接続することができる。同様に、負極集電体露出部43と負極端子70(例えばニッケル製)とを、負極集電部材72を介して接合する。これにより、負極40と負極端子70とを電気的に接続することができる。このような集電構造によると、捲回電極体20は、封口体14が上方となるように電池ケース10を水平面に置いたとき、捲回軸Wが水平方向となるよう前記電池ケース内に収容されることとなる。すると、後述のとおり非水電解液を含浸する際に、含浸方向と一致する捲回軸W方向が水平となり、非水電解液の含浸がスムーズに進行し、非水電解液の含浸に要する時間が短縮され得るために好ましい。なお、正負の集電部材62,72と、正負極端子60,70および正負極集電体32,42とは、例えば、超音波溶接、抵抗溶接等によりそれぞれ接合することができる。その後、ケース本体12の開口部を封口体14によって封止することで、二次電池100を組み立てることができる。封口体14とケース本体12とは溶接等によって好適に接合(密閉)することができる。
なお、電池ケース10の内部には、電池ケース10内の圧力が所定の圧力にまで上昇した際に作動する電流遮断機構(CID)80が設けられていてもよい。CID80は、電池ケース10の内圧が上昇した場合に少なくとも一方の電極端子から電極体20に至る導電経路(例えば、充電経路)を切断するように構成されていればよく、特定の形状に限定されない。典型的には、正極端子60と電極体20との間に設けられ、電池ケース10の内圧が上昇した場合に正極端子60から電極体20に至る導電経路を切断するように構成されている。
封口体14とケース本体12とを密閉したのち、例えば、封口体14に設けられた注液口84から電池ケース10内に非水電解液を注液する。非水電解液の注液は、電池ケース10内を減圧しながら、或いは減圧後に、行っても良い。非水電解液の注液後に注液口84を蓋等により封止することで、リチウムイオン二次電池を用意することができる。組立後の電池は、例えば、非水電解液の注液後、非水電解液が捲回型電極体に十分に浸透するように、例えば、5時間〜50時間程度静置することが好ましい。また、適切な初期充電処理を施すことで、電池としての機能が備えられる。
ここに開示されるリチウムイオン二次電池100は各種用途に利用可能であるが、従来品と比較して、例えば、ハイレート充放電におけるサイクル特性が向上されて、容量維持率が高く、また、短絡発生の虞が低減された信頼性(安全性)の高いものであり得る。これにより、エネルギー密度と過充電耐性との両立を高いレベルで達成することができる。換言すると、このような優れた電池性能と安全性とを、高いレベルで両立可能なものであり得る。また、比較的大きな容量(例えば電池容量が20Ah以上の、典型的には25Ah以上の、例えば30Ah以上)が求められる電池にも、好ましく適用することができる。したがって、このような特徴を活かして、高エネルギー密度,高入出力密度およびサイクル特性等が要求される用途ならびに高い信頼性を要求される用途で、特に好ましく用いることができる。かかる用途としては、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。このリチウムイオン二次電池は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態としても使用され得る。
以下、具体的な実施例として、ここに開示されるリチウムイオン二次電池を作製し、その特性について評価した。なお、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
(実施態様1)
[評価用リチウムイオン電池の構築]
[正極]
正極活物質としては、組成が一般式:Li1.14(Ni1/3Co1/3Mn1/3)0.993Zr0.0020.005(NCM、平均粒径4〜8μm、比表面積0.6〜2.0m/g)で表されるリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を用いた。このNCMは、活物質の作製条件を調整することにより、結晶構造における(003)結晶子径を、およそ(a)900Å,(b)1000Å,(c)1100Å,(d)1200Å,(e)1300Å,(f)1400Å,(g)1500Åの7通りに変化させたものを用意した。
なお、これらの活物質は、一般的な晶析法により、上記組成の複合酸化物と対応する化学量論組成の複合水酸化物からなる前駆体粒子を用意し、焼成することで得た。具体的には、焼成の際の昇温速度、焼成温度および保持時間を調整することで、(003)結晶子径を7通りに変化させたものである。また、(003)結晶子径の測定は、X線回折装置(スペクトリス(株)製、X’Pert PRO MPD)を用い、X線源としてCu−kα線を利用した粉末X線回折により得たX線回折パターン解析することで算出した。(003)結晶子径の算出には、シェラーの式を利用した。
また、導電材としてはアセチレンブラック(AB)を、バインダとしてはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた。そして、上記(a)〜(g)のいずれかの正極活物質と、導電財およびバインダの質量比が、NCM:AB:PVdF=88:10:2となるよう秤量し、固形分濃度(NV)がおよそ50質量%となるようにN−メチルピロリドン(NMP)を加えて混練することで、(a)〜(g)の7通りの正極活物質層形成用スラリーを調製した。
そしてこれらのスラリーを、正極集電体としての厚み15μmの長尺のアルミニウム箔の長手方向の一方の端部から、幅方向に順に、非塗工領域(すなわち、集電体露出部),領域A1,領域B,領域A2の構成となるよう、ストライプ状に塗布した。ここで、領域A1と領域A2には同一のスラリーを塗布した。また、領域A1および領域A2と、領域Bに塗布したスラリーは、下記の表1に示す49通りの組み合わせとした。なお、各領域の幅方向の寸法は、順に、非塗工領域:15mm,領域A1:2mm,領域B:91mm,領域A2:2mmとし、片面当たりの目付量は6.0mg/cmで一定とした。以下、領域A1と領域A2とを特に区別する必要のないときは、便宜上、領域Aと表現する。
次いで、このように塗布したスラリーを乾燥(乾燥温度80℃、5分間)させ、正極活物質層の片面当たりの厚みが約25μm、密度が約2.3g/cmとなるよう圧延することで、例1〜49の正極シートを作製した。
[負極]
負極活物質としては、黒鉛粒子の表面を非晶質炭素で被覆した非晶質炭素被覆黒鉛(C、平均粒径25μm、比表面積2.5m/g)を用いた。そしてこの非晶質炭素被覆黒鉛と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、質量比が、C:SBR:CMC=98:1:1となるように秤量し、イオン交換水を加えて混練することで、負極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、負極集電体としての厚み10μmの長尺の銅箔の長手方向の一方の端部から幅約98mmの領域に帯状に塗布し、乾燥(乾燥温度100℃、5分間)することにより、負極活物質層を備える負極シートを作製した。この負極シートの長手方向の他方の端部には、負極活物質層の形成されていない集電体露出部が設定されている。なお、負極活物質層の片面当たりの目付量は4.0mg/cm、密度は約1.1g/cm、片面当たりの厚みは約35μmとなるよう、スラリーの供給量および圧延条件を調整した。
[セパレータ]
セパレータとしては、幅が105mmで、総厚みが平均25μmのHRL付きセパレータを用いた。セパレータの基材には、ポリエチレン(PE)の両面をポリプロピレン(PP)で挟んだ形態の3層構造(PP/PE/PP)の長尺の微多孔質シートを用いた。HRLは、アルミナ微粒子,アクリル系バインダ,CMCを含むHRL形成用水溶液を基材に塗布することで形成したものである。
上記で用意した正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、断面楕円形状に捲回した。この時、負極活物質層が幅方向で正極活物質層の両端からD:1.5mmずつ突出して正極活物質層を覆うとともに、正極集電体の露出部と負極集電体の露出部とが幅方向で異なる側で突出するように、正極と負極とを配置させた。また、セパレータは、HRLを正極側に向けて、正負の活物質層を絶縁するように配置した。捲回体は、常温(25℃)にて4kN/cmの圧力で2分間平板プレスし、扁平形状に成形することで、捲回電極体とした。
次いで、電池ケースに上記捲回型電極体を収容した。電池ケースとしては、アルミニウム製で上方に開口を有する薄い角型(幅150mm×高さ90mm×厚み26mm)の電池ケース本体と、この電池ケース本体の開口を封する封口体とからなるものを用意した。そして、封口体に正極端子および負極端子を取り付け、これらの端子を、集電端子を介して、捲回電極体から突出している正極集電体と負極集電体との露出部にそれぞれ溶接した。そして、封口体と連結された捲回電極体を、電池ケース本体の開口部からその内部に収容し、開口部と封口体とを溶接(密閉)した。すなわち、捲回型電極体は、捲回軸Wが封口体の面内方向(すなわち、水平)となる配置で電池ケース内に収容されている。
非水電解液としては、次の2通りのものを用意した。
すなわち、一つ目は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:DMC:EMC=3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.0mol/Lの濃度で、また被膜形成剤としてのLiBOBを0.025mol/Lの割合で、溶解させたものを用意した。そして、上記電池ケースの封口体に設けられた注液口から非水電解液を約45mL注入し、例1〜49のリチウムイオン電池を構築した。
[ハイレートサイクル試験]
[初期容量の測定]
上記のように作製した例1〜49のリチウムイオン電池について、以下の手順で初期容量を測定した。すなわち、まず、25℃の温度条件下、各例の電池に対し、1Cのレートで4.1Vまで定電流(CC)充電した後に5分間休止し、1Cのレートで3.0Vまで定電流(CC)放電した後に5分間休止した。次いで、CCCV充電(4.1V、レート1C、0.1Cカット)を行い10分間休止した後、CCCV放電(3.0V、レート1C,0.1Cカット)を行った。この時の放電容量を測定し、初期容量とした。
[初期出力の測定]
また、以下の手順で初期出力を測定した。すなわち、−10℃の温度条件下、各例の電池を定電流定電圧(CC−CV)充電することによりSOC(充電深度)50%の状態に調整し、一定の出力[W]で3V(カット電圧)まで放電したときに要した時間を測定した。測定は、150W、200W、250Wの出力でそれぞれ放電を行い、各出力で放電したときに測定された時間を横軸に取り、該測定時の出力[W]を縦軸に取って、近似曲線から5秒時の出力[W]を算出し、初期出力とした。
次いで、−10℃の環境下、各電池のSOCを80%に調整し、100Aで10秒間充電した後放電するハイレートでの矩形波充放電を1000サイクル行った。
そして、サイクル後の容量を、上記初期容量測定に準じて測定することで、容量維持率を算出した。なお、容量維持率は、初期容量に対する、1000サイクル後の放電容量の割合を、次式:容量維持率(%)=(1000サイクル目の放電容量/初期容量)×100;に基づき算出した。
このようにして求めた容量維持率を表1および表2に示した。また、容量維持率と、領域Aと領域Bに用いた正極活物質の結晶子の大きさの差(ΔLc=Lc−Lc)との関係を、図4に示した。さらに、容量維持率と、領域Aに用いた正極活物質の結晶子径(Lc)との関係を、図5に示した。
また、サイクル後の出力を、上記初期出力の測定に準じて測定することで、出力維持率を算出した。なお、出力維持率は、初期出力に対する、1000サイクル後の出力の割合を、次式:出力維持率(%)=(1000サイクル目の出力/初期出力)×100;に基づき算出した。
このようにして求めた出力維持率を表1および表3に示した。まあ、出力維持率と、正極活物質の結晶子の大きさの差との関係を、図6に示した。
Figure 2016091898
Figure 2016091898
Figure 2016091898
図3示されるように、容量維持率と、領域Aに用いた正極活物質の結晶子径(Lc)と領域Bに用いた正極活物質の結晶子径(Lc)の差(ΔLc=Lc−Lc)との間には一定の関係が見られることがわかった。すなわち、領域Aにおいて領域Bよりも結晶子径の大きな活物質を用いることで、容量維持率が高くなること、逆に、領域Aにおいて領域Bよりも結晶子径の小さな活物質を用いることで、容量維持率が低くなることが確認できた。
表2と図5に、領域Aと領域Bとの正極活物質の組み合わせと容量維持率との関係をまとめた。領域Aと領域Bとで正極活物質の結晶子径が同じ(ΔLc=0)である例(例7,13,19,25,31,37および43)は、表2に右上がりの斜め対角線上に現される。
これらの結果からは、容量維持率の観点で、正極活物質層の大部分を占める領域Bには結晶子径が900Åから1500Å程度の活物質を用いるのが良いことがわかる。そして領域Aに結晶子径のより大きな活物質を用いること(すなわち、表2では左上側)で、容量維持率が確実に向上されることがわかる。しかしながらその差が600Å(例1)となると、容量維持率が低下しているようにも見られる。そこで、ΔLcは0より大きく、600Å以下程度を目安とするのが良く200Å以上500Å以下とするのがより好ましいことがわかる。
なお、ハイレート充放電試験における容量維持率からは、金属リチウムや正極活物質を構成する遷移金属の負極への析出の程度を推察することができる。したがって、この種の正極活物質は、結晶格子径が大きい方が、充電によりリチウムイオンが結晶構造から抜けた状態においても結晶安定性が高く、Mn等の他の遷移金属イオンの溶出が抑制されているものと考えられる。かかる観点から、領域Aの正極活物質の結晶子径は、1000Å以上が好ましく、1100Å以上がより好ましいことがわかる。
表3と図6に、領域Aと領域Bとの正極活物質の組み合わせと出力維持率との関係をまとめた。領域Aと領域Bとで正極活物質の結晶子径が同じ(ΔLc=0)である例(例7,13,19,25,31,37および43)は、表3に右上がりの斜め対角線上に現される。
これらの結果からは、出力維持率の観点で、領域Bには結晶子径が900Åから1500Å程度の活物質を用いるのが良いこと、領域Aには結晶子径が900Åから1400Å程度の活物質を用いるのが良いことがわかった。なお、出力維持率については容量維持率ほど明確な傾向は見られず、おおむね領域Aに結晶子径のより大きな活物質を用いることがよいこと、領域Bには結晶子径が900Åから1100Å程度の活物質を用いるのが良いことが見て取れる。
(実施態様2)
領域Aの正極活物質として、上記実施形態1で用いた(003)結晶子径が(e)1300Åのリチウム遷移金属複合酸化物を用いた。また、領域Bの正極活物質として、上記実施形態1で用いた(003)結晶子径が(b)1000Åのリチウム遷移金属複合酸化物を用いた。そして、領域A(領域A1=領域A2)の幅:aと、負極活物質層の非対向領域の幅:dとを、下記の表4に示すように変化させた。そして、その他の条件は上記の実施形態1と同様にして、リチウムイオン二次電池を構築した。
また、各例のリチウムイオン二次電池に対し、実施形態1と同様にして、ハイレートサイクル試験後の容量維持率と出力維持率を算出し、併せて表4に示した。
Figure 2016091898
表4のaおよびdは、実際の測定値ではなく、規格化された値(設計値)を採用している。表4に示されるように、領域Aはd≧aであると、必ずではないが、容量維持率が低くなる傾向(例えば、81%以下)にあり得ることがわかった。一方で、a>2×dとなると、正極活物質層に占める領域Aの割合が大きくなり、必ずではないが、出力維持率が急激に低下(例えば、81%以下)してしまう事態が起こり得ることがわかる。したがって、例えば、d<a≦2×dの場合に、高い容量維持率と高い出力維持率とを高いレベルで両立できることがわかった。この結果から、例えば、上記のとおり幅が100mm前後の活物質層を備える電池においては、領域Dの幅dを1mm〜2mm程度の範囲とした場合、d<a≦2×dであること、具体的には、領域Aの幅aが1mmを超えて4mm以下であるのが良いことが判る。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。例えば、上記実施形態には、1種類の組成の正極活物質について結晶子径を変化させた場合について示したが、同じ層状岩塩型の結晶構造を有する他の組成のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物においても同様であることは、当業者に理解され得る。また、領域Aおよび領域Bの寸法についても、本発明の趣旨が損なわれない範囲で変更可能であることは、当業者に理解され得る。本出願の請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 電池ケース
12 ケース本体
14 封口体
20 捲回型電極体
30 正極
32 正極集電体
33 正極集電体露出部
34 正極活物質層
40 負極
42 負極集電体
43 負極集電体露出部
44 負極活物質層
50 セパレータ
60 正極端子
70 負極端子
80 電流遮断機構(CID)
82 安全弁
84 注液口
100 リチウムイオン二次電池

Claims (7)

  1. 正極活物質層を備える正極と、負極活物質層を備える負極と、非水電解質とを含み、
    前記正極と前記負極とは、前記正極活物質層と前記負極活物質層とが対向し、かつ、前記負極活物質層が前記正極活物質層の端部から所定の非対向領域分だけ突出するように構成されており、
    前記正極活物質層は、前記負極活物質層の非対向領域の隣接領域と対向する端部に沿って、帯状に配置される領域Aと、前記領域A以外の領域である領域Bとを備えており、
    前記領域Aには、層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物からなる第1の正極活物質が含まれ、前記領域Bには、層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物からなる第2の正極活物質が含まれ、
    前記第1の正極活物質の結晶子径は、前記第2の正極活物質の結晶子径よりも200Å以上500Å以下の範囲で大きい、リチウムイオン二次電池。
  2. 前記層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物は、一般式(1):
    Li1+δ(NiCoMn)M …(1)
    (ただし、式中、Mは、NiCo,Mnを除く遷移金属元素、Ca,Mg,Al,B,およびFからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、δは、−0.05≦δ≦0.2で電荷中性条件を満たすように定まる値であり、a,b,c,dは、a×b×c≠0かつa+b+c+d=1を満たす);
    で表され、
    前記第1の正極活物質の(003)結晶子径は、前記第2の正極活物質の(003)結晶子径よりも200Å以上500Å以下の範囲で大きい、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記第1の正極活物質の(003)結晶子径は、1100Å以上1500Å以下である、請求項2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記第2の正極活物質の(003)結晶子径は、900Å以上1400Å以下である、請求項2または3に記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記正極は、長尺の正極集電体の長手方向に沿う一方の端部に正極集電体露出部が設けられ、前記正極集電体露出部以外の部分に前記正極活物質層が備えられており、
    前記負極は、長尺の負極集電体の長手方向に沿う一方の端部に負極集電体露出部が設けられ、前記負極電体露出部以外の部分に前記負極活物質層が備えられており、
    前記正極集電体露出部と、前記負極集電体露出部とは、前記長手方向に直交する幅方向の一方の端部と他方の端部とにそれぞれ突出するように配置され、前記幅方向を捲回軸として捲回された捲回型電極体を構成しており、
    前記領域Aは、前記正極集電体露出部に隣接する前記正極活物質層の端部に沿う帯状の領域A1と、該領域A1とは前記幅方向で反対側の端部に沿う帯状の領域A2とからなり、
    前記領域Bは、前記領域A1と領域A2とに挟まれた中央の領域である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
  6. 前記正極活物質層における前記領域A1の幅をa1、前記領域A2の幅をa2とし、
    前記負極活物質層であって、正極活物質層の前記領域A1より突出した非対向第1領域の幅をd1、正極活物質層の前記領域A2より突出した非対向第2領域の幅をd2としたとき、a1,a2,d1およびd2は、次式(2)および(3):
    d1<a1≦2×d1 …(2);
    d2<a2≦2×d2 …(3);
    を満たす、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
  7. 前記負極活物質は、炭素系材料からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
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