JP2016079454A - アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温特性(高温環境下での疲労強度)に優れたアルミニウム合金鍛造材を提供する。
【解決手段】本発明に係るアルミニウム合金鍛造材は、Cu:3.0〜8.0質量%、Mg:0.01〜2.0質量%、Ag:0.05〜1.0質量%、Mn:0.05〜1.5質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を鍛造して形成されるアルミニウム合金鍛造材であって、平均結晶粒径が500μm以下であり、結晶粒径比(長軸/短軸)が10以下であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、高速で回転または摺動する高速動部品用のアルミニウム合金鍛造材およびその製造方法に関する。
アルミニウムは、低密度かつ高強度であり、加工が容易という特性を有する。これらの特性を活かし、軽量で、強度や加工特性が要求される鉄道車両、自動車、船舶などの輸送機械や、各種機械部品、エンジン部品などにアルミニウム合金鍛造材が用いられている。具体的には、例えば、発電機、コンプレッサーなどの回転ローター(小型羽根)、回転インペラー(大型羽根)、エンジンのピストンなどといった高速で回転または摺動する高速動部品にアルミニウム合金鍛造材が用いられている。
これらの用途に用いられる高速動部品には、100℃を超える高温使用環境や、回転および/または摺動するという部品の性質上、高温特性(耐熱性および高温耐力)が要求される。当該要求に応えるべく開発されたアルミニウム合金やアルミニウム合金鍛造材に関する発明が、例えば、特許文献1〜6に開示されている。
特許文献1には、Cu:4.0〜7.0質量%、Mg:0.2〜0.4質量%、Ag:0.05〜0.7質量%を含み、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金鍛造材の製造方法であって、この組成からなる鋳造材を500〜545℃の温度で均質化熱処理後、280〜360℃の温度で熱間鍛造し、その後510〜545℃の温度で溶体化および焼入れ処理し、人工時効硬化処理を施した場合のアルミニウム合金鍛造材の室温での耐力が400MPa以上である特性を有することを特徴とする高温特性に優れたアルミニウム合金鍛造材の製造方法が開示されている。
特許文献2には、Cu:4.0〜7.0質量%、Mg:0.2〜0.4質量%、Ag:0.05〜0.7質量%、V:0.05〜0.15質量%を含み、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金鍛造材であって、鍛造材組織中のAl−V系析出物の分布密度が1.5個/(μm)3以上であることを特徴とする高温疲労強度に優れたアルミニウム合金鍛造材が開示されている。
特許文献3には、Cu:1.5〜7.0質量%、Mg:0.01〜2.0質量%を含み残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金冷間鍛造材であって、ミクロ組織がθ’相および/またはΩ相を有するとともに、結晶粒径が500μm以下の等軸再結晶粒からなり、この等軸再結晶粒の組織中の互いにくっついた形で集合体化している1μm以下の微細再結晶粒の面積率が10%以下であり、1000hrクリープ破断強度が250N/mm2以上および高温耐力が280N/mm2以上であることを特徴とする高速動部品用アルミニウム合金冷間鍛造材が開示されている。
特許文献4には、Cu5.1〜6.5%(mass%、以下同じ)、Mg0.10〜0.7%、Ag0.10〜1.0%、Mn0.10〜0.50%、Ti0.22〜0.50%を含有し、しかもMn量とTi量との比Mn/Tiが0.5〜2.5の範囲内にあり、残部がAlおよび不可避的不純物よりなることを特徴とする靭性に優れた展伸加工用耐熱アルミニウム合金が開示されている。
特許文献5には、Cu5.1〜6.5%(mass%、以下同じ)、Mg0.30〜0.70%、Ag0.10〜1.0%、Mn0.10〜0.50%、Cr0.07〜0.11%、Ti0.06〜0.30%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金において、200℃、160MPaでのクリープ破断寿命が500hr以上であることを特徴とする耐熱性に優れたアルミニウム合金鍛造材が開示されている。
特許文献6には、Si:0.1質量%を超えて1.0質量%以下、Cu:3.0質量%以上7.0質量%以下、Mn:0.05質量%以上1.5質量%以下、Mg:0.01質量%以上2.0質量%以下、Ti:0.01質量%以上0.10質量%以下、Ag:0.05質量%以上1.0質量%以下を含有し、かつ、Zr:0.1質量%未満に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなることを特徴とする高温特性に優れたアルミニウム合金が開示されている。
特許第4088546号公報 特許第4058398号公報 特許第3997009号公報 特許第4676906号公報 特開2013−142168号公報 特開2013−14835号公報
近年、回転ローターや回転インペラーなどに対して、高温環境下での安定性、材料特性の性能向上が高まっている。前記した特許文献1、3〜6に開示されている発明はそのような要求に応え得るものではあるが、高温環境下での疲労強度の向上については何ら検討されていない。そのため、特許文献1、3〜6に開示されている発明には、高温環境下での疲労強度を向上させたアルミニウム合金鍛造材を具現できないという問題があった。
特許文献2に開示されている発明は、Vを必須成分とし、Al−V系析出物という特殊な析出物を特定の分布密度で析出させることによって、高温環境下での疲労強度を向上させている。しかしながら、高温環境下での疲労強度の更なる向上が求められている。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、高温特性(高温環境下での疲労強度)に優れたアルミニウム合金鍛造材およびその製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決した本発明に係るアルミニウム合金鍛造材は、Cu:3.0〜8.0質量%、Mg:0.01〜2.0質量%、Ag:0.05〜1.0質量%、Mn:0.05〜1.5質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を鍛造して形成されるアルミニウム合金鍛造材であって、平均結晶粒径が500μm以下であり、結晶粒径比(長軸/短軸)が10以下であることを特徴としている。
本発明に係るアルミニウム合金鍛造材は、前記アルミニウム合金が、Zn:0.01〜0.40質量%、Si:0.01〜1.00質量%、V:0.01〜0.15質量%、Cr:0.01〜0.30質量%、Zr:0.01〜0.50質量%、Sc:0.01〜1.00質量%、および、Ti:0.01〜0.20質量%の中から選択される1種または2種以上を含有していてもよい。
また、前記課題を解決した本発明に係るアルミニウム合金鍛造材の製造方法は、前記した組成からなるアルミニウム合金を溶解して鋳造材を鋳造する鋳造工程と、前記鋳造材を500〜545℃の保持温度で均質化熱処理する均質化熱処理工程と、前記均質化熱処理を行った鋳造材を180〜360℃の鍛造温度で鍛錬比が1.5以上の熱間鍛造を行う熱間鍛造工程と、前記熱間鍛造を行った鍛造材を510〜545℃の保持温度で溶体化処理する溶体化処理工程と、前記溶体化処理を行った鍛造材を400〜290℃の間の平均冷却速度が10℃/分以上、30000℃/分未満で焼入れ処理する焼入れ処理工程と、前記焼入れ処理を行った鍛造材を人工時効硬化処理する人工時効硬化処理工程と、を含むことを特徴としている。
本発明に係るアルミニウム合金鍛造材の製造方法において、前記熱間鍛造は、少なくとも前記鋳造材の異なる2つの面に対して順に鍛錬を行うものであるのが好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金鍛造材の製造方法において、前記熱間鍛造は、前記鋳造材の異なる3つの面に対して順に鍛錬を行うものであるのが好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金鍛造材の製造方法は、前記鍛造温度を180℃以上、280℃未満とするのが好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金鍛造材の製造方法は、前記熱間鍛造工程と前記溶体化処理工程との間に、前記鍛造材を180〜360℃の型打鍛造温度で型打鍛造する型打鍛造工程を含んでいてもよい。
本発明に係るアルミニウム合金鍛造材の製造方法は、前記型打鍛造温度を180℃以上、280℃未満とするのが好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金鍛造材は、高温特性(高温環境下での疲労強度)に優れている。
本発明に係るアルミニウム合金鍛造材の製造方法は、高温特性(高温環境下での疲労強度)に優れたアルミニウム合金鍛造材を製造することができる。
本発明の一実施形態に係るアルミニウム合金鍛造材の製造方法の内容を説明するフローチャートである。 平均結晶粒径および結晶粒径比(長軸/短軸)を算出する際の手法を説明する説明図である。 平均結晶粒径および結晶粒径比(長軸/短軸)を算出する際の手法を説明する説明図である。
以下、適宜図面を参照して本発明に係るアルミニウム合金鍛造材およびその製造方法を実施するための形態(実施形態)について詳細に説明する。
[アルミニウム合金鍛造材]
本発明の一実施形態に係るアルミニウム合金鍛造材(以下、「Al鍛造材」という。)は、Cu:3.0〜8.0質量%、Mg:0.01〜2.0質量%、Ag:0.05〜1.0質量%、Mn:0.05〜1.5質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を鍛造して形成されたものである。本実施形態に係るAl鍛造材は、平均結晶粒径が500μm以下であり、結晶粒径比(長軸/短軸)が10以下である。
当該Al鍛造材は、後記する熱間鍛造工程S3終了後に溶体化処理工程S5から人工時効硬化処理工程S8を行ったもの(図1参照)、および、熱間鍛造工程S3終了後に型打鍛造工程S4を行い、これに続けて溶体化処理工程S5から人工時効硬化処理工程S8を行ったもの(同じく図1参照)が該当する。後述するが、いずれの場合であっても、冷間圧縮(加工)工程S7は任意に行うことができる。本発明に係るAl鍛造材の平均結晶粒径および結晶粒径比は、成分も影響するものの、熱間鍛造工程S3および/または型打鍛造工程S4の鍛造条件で与えられる材料内部のひずみ状態によりほぼ決まり、溶体化処理工程S5を行うことによって組織の形、すなわち、平均結晶粒径および結晶粒径比で現れる。溶体化処理工程S5を行うことによって現れた平均結晶粒径および結晶粒径比は、その後の処理によってあまり変化せず、また、現れた平均結晶粒径および結晶粒径比によって得られる効果もあまり変化しない。そのため、平均結晶粒および結晶粒径比の算出は、溶体化処理工程S5後に焼入れ処理工程S6や人工時効硬化処理工程S8を行っても測定することができる。
なお、本実施形態に係るAl鍛造材は、アルミニウム合金が、Zn:0.01〜0.40質量%、Si:0.01〜1.00質量%、V:0.01〜0.15質量%、Cr:0.01〜0.30質量%、Zr:0.01〜0.50質量%、Sc:0.01〜1.00質量%、および、Ti:0.01〜0.20質量%の中から選択される1種または2種以上を含有していてもよい。
以下、合金成分および結晶粒の性状について分説する。
<合金成分>
(Cu)
Cuは、本実施形態に係るAl鍛造材の基本成分である。Cuは、固溶強化および析出強化の双方の作用により、主としてAl鍛造材の常温環境下でのクリープ特性と、高温環境下でのクリープ特性と、高温耐力(高温環境下での疲労強度)と、を向上させることができる。より具体的には、Cuは、高温の人工時効硬化処理時に、θ’相やΩ相をAl合金の(100)面や(111)面に微細でかつ高密度に析出させ、人工時効硬化処理後のAl鍛造材の強度を向上させる。この効果は、Cuの含有量が3.0質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上であると発揮される。Cuの含有量が3.0質量%未満では前記した効果が小さく、Al鍛造材が常温環境下と高温環境下において十分なクリープ特性および高温耐力を得ることができない。一方、Cuの含有量が8.0質量%を超えると、強度が高くなりすぎ、Al鍛造材の鍛造性が低下する。
したがって、Cuの含有量は3.0〜8.0質量%とし、好ましくは4.0〜7.0質量%とし、より好ましくは4.5〜7.0質量%とする。
なお、本明細書において、常温とは、室温程度、具体的には約25℃程度のことをいい、高温とは、約100℃以上の温度のことをいう。
(Mg)
Mgは、Cuと同様に、固溶強化および析出強化の双方の作用により、主としてAl鍛造材の高温環境下でのクリープ特性と、常温耐力と、高温耐力と、を向上させることができる。より具体的には、Mgは、Cuと同様に、高温の人工時効硬化処理時に、θ’相やΩ相をAl合金の(100)面や(111)面に微細でかつ高密度に析出させ、人工時効硬化処理後のAl鍛造材の強度を向上させる。この効果は、Mgの含有量が0.01質量%以上であると発揮される。Mgの含有量が0.01質量%未満では、前記した効果が小さく、Al鍛造材が高温環境下において十分なクリープ特性と、常温耐力と、高温耐力と、を得ることができない。一方、Mgの含有量が2.0質量%を超えると、強度が高くなりすぎ、Al鍛造材の鍛造性が低下する。
したがって、Mgの含有量は0.01〜2.0質量%とし、好ましくは0.01〜1.5質量%とし、より好ましくは0.01〜1.0質量%とする。
(Ag)
Agは、Al鍛造材中において、微細で均一なΩ相を形成すると共に、析出相が存在しない領域(PFZ;solute−depleted recipitate ree one)の幅を極めて狭くすることができる。そのため、Agは、Al鍛造材の常温強度と、高温強度と、高温クリープ特性と、を向上させることができる。Agの含有量が0.05質量%未満ではこの効果が少ない。その一方でAgの含有量が1.0質量%を超えてもその効果は飽和する。
したがって、Agの含有量は0.05〜1.0質量%とし、好ましくは0.05〜0.7質量%とする。
(Mn)
Mnは、Al鍛造材のミクロ組織を繊維組織化して、常温強度および高温強度を向上させる。そして、Mnは、均質化熱処理時にAl合金マトリックス中で熱的に安定な化合物であるAl−Mn系分散粒子を析出させる。当該分散粒子としては、Al20Cu2Mn3が挙げられる。当該分散粒子は、再結晶後の粒界移動を妨げる作用があるため、結晶粒の粗大化防止に効果がある。Mnの含有量が0.05質量%未満では、常温強度および高温強度を向上させる効果や結晶粒の粗大化を防止する効果は少ない。一方、Mnの含有量が1.5質量%を超えると、溶解鋳造時に粗大な不溶性金属間化合物を生成しやすくAl鍛造材の成形不良および破壊の原因となる。
したがって、Mnの含有量は0.05〜1.5質量%とし、好ましくは0.05〜1.0質量%とし、より好ましくは0.05〜0.8質量%とする。
(残部)
残部は、Alおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、例えば、Ni、Feなどを例示することができる。不可避的不純物は、これらの元素を合計で0.15質量%程度以下であれば本発明の効果に影響しないので、この程度の含有は許容することができる。
(Zn)
Znは、Mg−Zn系の微細な化合物を形成するため、強度を向上させることができる。Znの含有量が0.01質量%未満では顕著な効果がない。一方、Znの含有量が0.40質量%を超えると、耐食性の低下が生じる。
したがって、Znの含有量は0.01〜0.40質量%とするのが好ましく、0.10〜0.30質量%とするのがより好ましい。
(Si)
Siは、Al鍛造材の強度を高める作用があり、Siが添加されることにより、強度向上に効果のある析出物が増える傾向にある。また、Siが添加されることにより、Al合金内の転位ループの抑制に効果がある。このため、Siの添加は、析出相の微細化、均一析出に有効である。Siの含有量が0.01質量%未満ではこれらの効果が少ない。一方、Siの含有量が1.0質量%を超えると粗大な金属間化合物を生じ、回転ローター、回転インペラーやピストンなどの高速動部品を型打鍛造する際の成形不良や金属疲労強度の低下、破壊の原因となる。
したがって、Siの含有量は0.01〜1.00質量%とするのが好ましく、0.01〜0.60質量%とするのがより好ましい。
(V)
Vは、Al−V系化合物としてAl合金マトリックス中に析出し、高温環境下での疲労強度を向上させることができる。また、Vは、均質化熱処理時においても、Al合金マトリックス中で熱的に安定な化合物であるAl−V系分散粒子を析出させる。この分散粒子が再結晶後の粒界移動を妨げる作用があるため、結晶粒の粗大化防止に効果がある。
この効果によりVは、Al鍛造材のミクロ組織を繊維組織化して、常温強度および高温強度、特に高温環境下での疲労強度を向上させることができる。そして、安定相を粗大に析出させる作用がZr、Cr、Mnに比べて比較的小さいため、常温強度、高温強度、そして高温環境下での疲労強度を向上させるためにより好ましい。
これらのことから、Al鍛造材の高温特性の確保をより確実に保証する目的で、結晶粒径を500μm以下に微細化させるために、Vの含有量は0.01〜0.15質量%となるように選択的に含有させることが好ましい。Vの含有量が0.01質量%未満ではこれらの効果が小さい。一方、Vの含有量が0.15質量%を超えると、溶解鋳造時に粗大な不溶性金属間化合物を生成しやすく、Al鍛造材の成形不良および破壊の原因となる。
したがって、Vの含有量は0.01〜0.15質量%とするのが好ましく、0.01〜0.10質量%とするのがより好ましい。
(Cr)
Crは、Vと同様に、均質化熱処理時にAl鍛造材の組織中で、熱的に安定な化合物であるAl−Cr系分散粒子を析出させる。この分散粒子は、再結晶後の粒界移動を妨げる作用があるため、結晶粒の粗大化防止に効果がある。Crの含有量が0.01質量%未満では結晶粒の粗大化を防止する効果が少ない。一方、Crの含有量が0.30質量%を超えると溶解鋳造時に粗大な不溶性金属間化合物を生成しやすく、Al鍛造材の成形不良および破壊の原因となる。
したがって、Crの含有量は0.01〜0.30質量%とするのが好ましく、0.01〜0.15質量%とするのがより好ましい。
(Zr)
(Sc)
ZrおよびScは、均質化熱処理時にAl鍛造材の組織中で、熱的に安定な化合物であるAl−Zr系分散粒子およびAl−Sc系分散粒子をそれぞれ析出させる。これらの分散粒子には再結晶後の粒界移動を妨げる作用があるため、結晶粒の粗大化防止に効果がある。Zrの含有量が0.01質量%未満であったり、Scの含有量が0.01質量%未満であったりすると、結晶粒の粗大化を防止する効果が少ない。一方、Zrの含有量が0.50質量%を超えたり、Scの含有量が1.00質量%を超えたりすると、溶解鋳造時に粗大な不溶性金属間化合物を生成しやすく、Al鍛造材の成形不良の原因となる。
したがって、ZrとScを含有させる場合、Zrの含有量は0.01〜0.50質量%とするのが好ましく、Scの含有量は0.01〜1.00質量%とするのが好ましい。
(Ti)
Tiは、鋳造時の結晶粒を微細化する効果を有する。Tiの含有量が0.01質量%未満ではこの効果が少ない。一方、Tiの含有量が0.20質量%を超えると粗大な金属間化合物を形成する。そして、この金属間化合物が成形加工時にAl鍛造材の破壊の起点になるため、0.20質量%を超えて添加すると、Al鍛造材の成形性が低下する。
従って、Tiの含有量は0.01〜0.20質量%とする。
(Fe)
Feは、通常、不可避的不純物として混入されるものである。ただし、スクラップ等から混入されるものであり、Al鍛造材の高温特性を向上させる効果もあるので、0.15質量%までは含有させることができる。Feの含有量が0.15質量%を超えると、不溶性金属間化合物を生成し、成形不良および破壊の原因となりやすい。
(平均結晶粒径および結晶粒径比(長軸/短軸))
本発明に係るAl鍛造材の平均結晶粒径および結晶粒径比は、前記したように、成分も影響するものの、熱間鍛造工程S3、型打鍛造工程S4の鍛造条件で与えられる材料内部のひずみ状態によりほぼ決まり、溶体化処理工程S5を行うことによって組織の形で現れる。つまり、平均結晶粒径および結晶粒径比は、熱間鍛造工程S3および/または型打鍛造工程S4を後記する鍛造条件で行うことにより制御することができる。
平均結晶粒径は、以下のようにして算出することができる。まず、図2に示すように、製品または試験材から測定する箇所のサンプルを約15mm×15mm×10〜20mmの大きさに切断し、樹脂埋め込みを行う。そして、樹脂埋め込みを行ったサンプルの一つの面を研磨して電解エッチングを行い、光学顕微鏡により写真撮影を行う。写真撮影の際の倍率は結晶粒径のサイズに合わせて任意に調整するとよい。
結晶粒径の測定は、いわゆる切片法により行うことができる。つまり、結晶粒径の測定は、例えば、図3に示すように、光学顕微鏡写真の縦と横のそれぞれに、均等に各々3本の線を引き(図3のa1〜a3、b1〜b3)、1本ごとに通過する結晶粒界の数を測定する。結晶粒径は、写真の倍率、サイズと結晶粒界の数から算出する。一連の測定を写真3枚で行い、縦9本(つまり、3本×3枚)、横9本(つまり、3本×3枚)の測定から、縦横それぞれN=9の結晶粒径を得て、縦、横それぞれで結晶粒径の平均を算出し、縦、横それぞれの平均結晶粒径を得る。そして、本発明では、縦、横それぞれの平均結晶粒径をさらに足し合わせてその平均を算出することで、平均結晶粒径としている。
また、結晶粒径比(長軸/短軸)は、縦、横それぞれの結晶粒径の平均を用い、結晶粒径の大きい方を長軸、小さい方を短軸として、結晶粒径比を算出することにより得ることができる。
本発明者らは、様々な検討を行った結果、平均結晶粒径を500μm以下、かつ、結晶粒径比(長軸/短軸)を10以下とすることにより、高温環境下での疲労強度が向上することを見出した。平均結晶粒径が500μmより大きくなると、疲労破壊の原因となる初期き裂が入りやすくなるだけでなく、き裂の進展も速くなり、高温環境下での疲労強度の向上が達成されない。また、結晶粒径比(長軸/短軸)が10より大きくなると、結晶の方向性が影響して高温環境下での疲労強度、クリープ特性、材料強度などの材料特性の異方性が大きくなり、均質な製品の製造ができない。これらの検討から、平均結晶粒径を500μm以下、かつ、結晶粒径比(長軸/短軸)を10以下とした。結晶粒径比は7以下が好ましく、5以下がより好ましい。
平均結晶粒径を500μm以下、かつ、結晶粒径比(長軸/短軸)を10以下とすることにより、混粒組織に見られるような、粒径が1μm以下の微細な結晶粒が集合体化した集団や、数mm〜数cm程度の粗大な再結晶粒、あるいは残存する鋳塊組織もなく、高温環境下での疲労強度が良好であり、クリープ特性などの高温特性と被削性とを兼ね備えることができる。なお、Al鍛造材における好ましい結晶粒の組織は、前記した一定サイズの結晶粒が100%のみの組織を必ずしも意味するものではなく、高温環境下での疲労強度や被削性、クリープ特性などの高温特性を低下させない範囲であれば、鋳造組織や混粒組織の混入は許容される。
例えば、粒径が1μm以下の微細な結晶粒は、単一の結晶粒が個々に分散して存在していたとしても、高温環境下での疲労強度やクリープ特性などの高温特性を低下させない。しかし、これがお互いにくっついた形で集団化乃至集合体化した場合は、被削性や高温特性を低下させるようになる。したがって、この点からは、溶体化処理後のミクロ組織において、集合体化している1μm以下の微細結晶粒の面積率が10%以下であることが好ましい。
また、例えば、結晶粒径比が10よりも大きいものが個々に分散していたとしても、高温環境下での疲労強度やクリープ特性などの高温特性を低下させない。しかし、これがお互いにくっついた形で集団化乃至集合体化した場合は、被削性や高温特性を低下させるようになる。したがって、この点からは、溶体化処理後のミクロ組織において、集合体化している結晶粒径比10を超える結晶粒の面積率が10%以下であることが好ましい。
[アルミニウム合金鍛造材の製造方法]
次に、図1を参照して、本発明の一実施形態に係るAl鍛造材の製造方法について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るAl鍛造材の製造方法は、鋳造工程S1と、均質化熱処理工程S2と、熱間鍛造工程S3と、溶体化処理工程S5と、焼入れ処理工程S6と、人工時効硬化処理工程S8と、を含み、これらの工程をこの順に行うことで、前記したAl鍛造材を製造することができる。
なお、本製造方法においては、必要に応じて熱間鍛造工程S3と溶体化処理工程S5との間に型打鍛造工程S4を含めてもよい。型打鍛造工程S4を行った鍛造材も本発明のAl鍛造材であることは前述したとおりである。
また、必要に応じて焼入れ処理工程S6後に冷間圧縮(加工)工程S7を含めてもよい。
さらに、後述するT6調質、T61調質は、溶体化処理工程S5、焼入れ処理工程S6および人工時効硬化処理工程S8にて行うことができる。
またさらに、T652調質は、溶体化処理工程S5、焼入れ処理工程S6、冷間圧縮(加工)工程S7と人工時効硬化処理工程S8にて行うことができる。なお、これらの調質は、製造する部材の大きさや用途に応じて適宜選択される。
なお、本明細書では、調質の具体例として、T6調質、T61調質およびT652調質を挙げて説明するが、これらに限定されるものではなく、これら以外の調質が行われたものであっても、本発明に含まれる。
(鋳造工程)
鋳造工程S1は、前記した組成を有するAl合金を溶解して、鋳造材を鋳造する工程である。鋳造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。例えば、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法から適宜選択した鋳造方法により、本発明の成分範囲内に溶解調整されたAl合金溶湯を用いて鋳塊を鋳造することが可能である。
(均質化熱処理工程)
均質化熱処理工程S2は、500〜545℃の保持温度であって、共晶溶融を生じない温度範囲であり、かつ、可能な限り高温で行うことが好ましい。また、均質化熱処理の時間は、金属間化合物の母材中への溶解、拡散が効果的に行うことができる時間を成分、鋳塊サイズ、製造に適した時間などによって適宜設定することが可能である。均質化熱処理の時間は、例えば、8〜100時間行うのが好ましい。このような条件により、金属間化合物の母材中への溶解や拡散が効果的に行われる。その結果、金属間化合物の大きさを小さくすることが可能となる。なお、金属間化合物の種類によっては、均質化熱処理を少なくとも2段階に分けて行う多段階の均質化熱処理方法が金属間化合物を共晶溶融させずに小さくするための方法としてより効果的である。
この多段階の均質化熱処理方法は、金属間化合物の種類に合わせて適切な条件(昇温速度、均質化温度、処理時間)を設定することにより行われる。例えば、各金属間化合物に適切な熱処理として、均質化熱処理の温度範囲内(500〜545℃)の比較的低温で熱処理を行うことにより金属間化合物を十分に溶解、拡散させる。次に、均質化熱処理の温度範囲内の比較的高温で熱処理を行うことで金属間化合物を小さくする。このような多段階に温度を調整する均質化熱処理が効果的である。
また、この多段階の均質化熱処理方法と同様の効果を得ることができる方法として、均質化熱処理温度への到達速度を比較的低速として金属間化合物が共晶溶融しない温度範囲において昇温する方法がある。この方法は前記した多段階の均質化熱処理と組み合わせて行うこともできる。なお、この場合の昇温速度は金属間化合物の種類、大きさ、量などにより適切に設定する必要がある。
これらの均質化熱処理方法は、金属間化合物の共晶溶融を防止しつつ、金属間化合物の大きさを小さくすることが可能となる。金属間化合物が小さくなることにより、金属間化合物を起点とする疲労破壊が抑制され、高温環境下での疲労強度が向上する。また、均質化熱処理により金属間化合物中に含有される各元素が母材中へ均一に拡散することにより、固溶強化および析出強化による母材の強度向上が可能となる。同時に、Al合金の伸び、衝撃値、および、高温環境下での疲労強度をさらに向上させることもできる。
また、均質化熱処理を行うことにより、凝固によって生じたミクロ偏析の均質化、過飽和固溶元素の析出、準安定相の平衡相への変化が行われる。均質化熱処理の温度が500℃未満では鋳塊の晶出物などの金属間化合物が固溶せず、均質化が不十分となる。一方、均質化熱処理の温度が545℃を超えると、バーニングが生じる可能性が高くなる。したがって、均質化熱処理の温度は500〜545℃の範囲とする。
多段階の均質化熱処理を行う場合は、前記したように金属間化合物の種類に合わせて熱処理条件を設定する必要がある。また、比較的低速度で昇温する均質化熱処理を行う場合も同様に金属間化合物の種類に合わせて熱処理条件を設定する必要がある。
(熱間鍛造工程)
熱間鍛造工程S3は、均質化熱処理を行った鋳造材を180〜360℃の鍛造温度で鍛錬比が1.5以上の熱間鍛造を行う工程である。この熱間鍛造工程S3と後記する型打鍛造工程S4の鍛造条件(鍛造温度、鍛造速度、材料の鍛錬方向など)により、材料内部にひずみを与える。このひずみの集積度合い(方向、密度など)により、次工程の溶体化処理工程S5で得られる結晶粒径、結晶粒径比がほぼ決まる。なお、これらの鍛造工程では、結晶粒径は鋳造材の結晶粒が変形したのみであり、この時点で認められる結晶粒径は最終的な結晶粒径にはあまり反映されない(ただし、鋳造材での結晶粒径が小さいと溶体化処理工程後の結晶粒径も小さい傾向にある。)。後記する溶体化処理工程S5で高温環境下におかれると、これらの鍛造工程で材料に導入された材料内部のひずみが開放され、新しく結晶粒を形成する。
熱間鍛造の温度条件は、後述する鍛練比とともに、Al合金の特性、特に高温環境下での疲労強度の向上を図るために重要である。すなわち、熱間鍛造の温度条件は、Al合金の溶体化処理工程S5後の結晶粒径、結晶粒形状を制御するために重要である。熱間鍛造時の鍛造温度を180〜360℃にすることにより、結晶粒径と結晶粒の形状を制御でき、かつ安定的にAl鍛造材を製造することができる。熱間鍛造の鍛造温度が180℃未満では、熱間鍛造時においてAl合金に割れが生じやすく、鍛造加工自体が困難である。一方、熱間鍛造の鍛造温度が360℃を超えると、Al合金の組織に粗大結晶粒が生じやすくなる。このため、Al鍛造材の高温特性が低下し、高温特性に優れたAl鍛造材を製造することができない。よって、熱間鍛造時の鍛造温度は180〜360℃とする。熱間鍛造時の鍛造温度は、180℃以上280℃未満とするのが好ましい。
また、鍛錬を一方向に偏って行うと、ひずみの集積が一方向に偏り、特に溶体化処理工程S5後の結晶粒形状が長軸側に引き伸ばされ、結晶粒径比が10を超えることがある。このようになると、Al鍛造材の高温特性が低下し、高温特性に優れたAl鍛造材を製造することができない。結晶粒径比を10以下に制御するためには、ひずみの集積の偏りを抑制する鍛造方法が有効であり、2方向以上の鍛造(すなわち、2面鍛造以上)が有効である。
Al合金の溶体化処理後のミクロ組織は、熱間鍛造の鍛練比に大きく影響される。したがって、Al鍛造材の溶体化処理後のミクロ組織を本発明に示す結晶粒径と結晶粒の形状に制御するために鍛練比を1.5以上とする。鍛練比が1.5未満であると、Al合金の組織が混粒となりやすい。また、鍛練の方向は一方向だけではなく、少なくとも、異なる2方向(2面鍛造ということもある。)、好ましくは3方向(3面鍛造ということもある。)以上で行い、各方向での鍛練比を1.5以上とすることが好ましい。ここで、2面鍛造や3面鍛造について説明する。
2面鍛造や3面鍛造を行う鋳造材は、直方体、立方体、円柱体などであってもよい。なお、直方体や立方体とする場合は、熱間鍛造前に予備鍛造を行ったり、切削したりすることによって形成することができる。
例えば、直方体の鋳造材の場合、A面と、このA面に垂直なB面と、このA面およびB面に垂直なC面と、を有する。すなわち、鋳造材は、A面を上面としたときに、A面と、このA面に対向する面(下面)と、側面Bと、この側面Bに対向する面と、C面と、このC面に対向する面との6面で構成されている。
例えば、B面とC面の2面を鍛造して、A面の面積が1/2となるようにする(A面の鍛錬比を2Sとする)。次いで、A面とC面の2面を鍛造して、B面の面積が1/2となるようにする(B面の鍛錬比を2Sとする)。ここまでの鍛造を2面鍛造という。
そして、A面とB面の2面を鍛造して、C面の面積が1/2となるようにする(C面の鍛錬比を2Sとする)。ここまでの鍛造を3面鍛造という。
本発明においては、2面鍛造または3面鍛造を1回として、さらに2面鍛造または3面鍛造を1回以上行ってもよい。鍛造の上限は特に規定されるものではなく、所望の鍛造材のサイズにより決定すればよい。なお、2面鍛造または3面鍛造を1回または複数回行った後、任意の面の鍛造を1回または2回行ってもよいこと(つまり、4面鍛造や5面鍛造、6面鍛造、7面鍛造、8面鍛造としてもよいこと)は言うまでもない。
このように、鋳造材を少なくとも2面鍛造することで、材料強度が増したり、結晶粒の方向性をなくしたりすることができる(均一にすることができる)ので、高温環境下での疲労強度を向上させることができる。
(型打鍛造工程)
型打鍛造工程S4は、熱間鍛造工程S3と溶体化処理工程S5との間に行うことのできる任意の工程であり、鍛造材を180〜360℃の型打鍛造温度で型打鍛造する工程である。
製品の形状などによっては、前記した熱間鍛造工程S3の後に、型打鍛造工程S4を行うことも選択される。この型打鍛造工程S4においても鍛造時の温度条件はAl合金の特性、特に高温環境下での疲労強度の向上を図るために重要である。すなわち、Al合金の溶体化処理工程S5後の結晶粒径と結晶粒の形状を制御するために重要である。
また、前記した熱間鍛造工程S3と同様、鍛錬が一方向に偏ると、ひずみの集積が一方向に偏り、特に溶体化処理工程S5後の結晶粒形状が長軸側に引き伸ばされ、結晶粒径比が10を超えることがある。このようになると、Al鍛造材の高温特性が低下し、高温特性に優れたAl鍛造材を再現性良く製造することができない。結晶粒径比を10以下に制御するためには、型打鍛造工程S4において、型打時の鍛錬方向が一方向に偏らないよう、金型形状を調整するなど、ひずみの集積の偏りを抑制するような型打鍛造方案を適宜検討し、適用することが効果的である。
前記した熱間鍛造と同様、型打鍛造時の鍛造温度を180〜360℃にすることにより、結晶粒径と結晶粒の形状を制御でき、かつ安定的にAl鍛造材を製造することができる。型打鍛造の鍛造温度が180℃未満では、型打鍛造時においてAl鍛造材に割れが生じやすく、鍛造加工自体が困難である。一方、型打鍛造の鍛造温度が360℃を超えると、Al鍛造材の組織に粗大結晶粒が生じやすくなる。このため、Al鍛造材の高温特性が低下し、高温特性に優れたAl鍛造材を再現性良く製造することができない。よって、型打鍛造時の鍛造温度は180〜360℃とするのが好ましく、180℃以上280℃未満とするのがより好ましい。
(溶体化処理工程および焼入れ処理工程)
次に、溶体化処理工程S5および焼入れ処理工程S6について説明する。
溶体化処理工程S5は、熱間鍛造を行った鍛造材を510〜545℃の保持温度で溶体化処理する工程である。
また、焼入れ処理工程S6は、溶体化処理を行った鍛造材を400〜290℃の間の平均冷却速度が10℃/分以上、30000℃/分未満で焼入れ処理する工程である。
この溶体化処理工程S5および焼入れ処理工程S6において、可溶性金属間化合物を再固溶し、かつ冷却中の再析出を可能な限り抑制するためには、JIS−H−4140、AMS−H−6088などに規定された条件内にて行うことが好ましい。ただし、たとえAMS−H−6088などの規格によって熱処理を行っても、溶体化処理温度が高すぎるとバーニングを生じ、機械的性質を著しく低下させる。逆に、溶体化処理温度が下限温度以下であると人工時効硬化処理後の耐力が本発明の目的に対して十分なものにはならず、また溶体化処理自体も困難となる。従って、溶体化処理温度の上限は545℃とし、下限は510℃とする。
溶体化処理および焼入れ処理などの調質(熱処理)に用いる炉はバッチ炉、連続焼鈍炉、溶融塩浴炉、オイル炉などが適宜使用可能である。また、焼入れに際しての冷却手段も、水浸漬、温水浸漬、沸騰水浸漬、ポリマー液浸漬、水噴射、空気噴射などの手段が適宜選択可能である。なお、ポリマー液浸漬に用いるポリマーは、ポリオキシエチレン・プロピレン・ポリエーテルなどを用いることができる。具体的には、例えば、米国ユニオン・カーバイド社製のユーコンクエンチャント(商品名)を用いることができる。
焼入れ処理工程S6は、次に行う高温の人工時効硬化処理時に、θ’相やΩ相を、Al合金の(100)面や(111)面に微細でかつ高密度に析出させ、人工時効硬化処理後のAl鍛造材の強度を向上させるために重要な工程である。焼入れ処理において、冷却過程の400〜290℃の間の平均冷却速度が遅くなると冷却途中に粗大なθ’相やΩ相が析出してしまい、人工時効硬化処理後の材料強度が低下する。また、実際の製品(Al鍛造材)の大きさは数10mm〜数mまで幅広く、焼入れ肉厚が大きく異なる。そのため、製品の使用条件、使用環境により、焼入れ処理での冷却速度を適宜調整する必要がある。様々な製品において検討を進めた結果、冷却過程の400〜290℃の間の平均冷却速度が10℃/分未満であると、材料強度が低下し、高温環境下での疲労強度を満足することができないことが分かった。また、冷却速度は速いほど強度向上には有効であるため、速い方が良いが、30000℃/分以上であると焼入れ速度の制御が困難となる。よって、400〜290℃の間の平均冷却速度は10℃分以上、30000℃/分未満で行うことが好ましい。400〜290℃の間の平均冷却速度の下限は、例えば、15℃/分とするのが好ましく、20℃/分とするのがより好ましい。また、400〜290℃の間の平均冷却速度の上限は、30000℃/分未満であれば特に限定されるものではないが、例えば、20000℃/分とするのがより好ましく、10000℃/分とするのがさらに好ましく、6000℃/分とするのがさらにより好ましい。
(冷間圧縮(加工)工程)
冷間圧縮(加工)工程S7は、焼入れ処理工程S6後に行うことのできる任意の工程である。冷間圧縮(加工)工程S7を行うと、焼入れ処理時の歪みを矯正することができ、最終製品の耐力やクリープ破断強度等の高温特性を向上させることができる。冷間圧縮(加工)は、冷間圧延機、ストレッチャーおよび冷間鍛造等を用いて行うことができる。冷間圧縮(加工)の圧縮(加工)量が小さいと、十分な残留応力の低減効果が得られない。一方、冷間圧縮(加工)の圧縮(加工)量が大きいと、人工時効硬化処理中やAl鍛造材を高温環境下で使用した際に、θ’相の析出量が増加するため、耐力が低下しやすい。よって、冷間圧縮(加工)は圧縮(加工)率1〜5%とすることが好ましい。
(T6調質)
直径100mm程度までの小物部品やピストンなどは、残留応力が比較的大きくても、切削などの加工上問題とならない。したがって、このような場合には、Al鍛造材を溶体化処理および焼入れ処理した後、人工時効硬化処理を施し、調質T6材とすることが好ましい。この場合、残留応力が比較的大きくなったとしても、高い強度特性および高温特性を得るために、焼入れ処理の温度を50℃以下とすることが好ましい。
(T61調質)
回転インペラーなどの大型の製品では、焼入れ処理時に製品表面と中央部との冷却速度が大きく異なるため、製品(Al鍛造材)の表面には約98MPa(10kgf/mm2)を超える高い残留応力が発生する。Al鍛造材の表面にこのような高い残留応力が発生すると、Al鍛造材の切削加工時に大きな歪みが生じ、精密な切削加工が極めて困難となる。また、場合によっては、切削加工中に残留応力による割れなどが発生し、Al鍛造材の破壊が生じることもあり得る。たとえ、切削加工中に割れなどのAl鍛造材の破壊が生じなくても、材料中に残存する晶出物等の金属間化合物を起点として、または製品搬送中に生じた僅かな表面傷等を起点として、製品の長期間使用中に亀裂が伝播成長しやすく、最終破壊に至る可能性もある。
したがって、回転インペラーなどの残留応力が問題となる製品については、残留応力を好ましくは約29MPa(3.0kgf/mm2)以下に除去ないし低減するため、溶体化処理後の水焼入れ温度を70℃以上の比較的高温とし、その後人工時効硬化処理を施し、調質T61材とすることが好ましい。
(T652調質)
製品(Al鍛造材)の用途によっては、製品の大小に関わらず、残留応力が厳しく管理される場合がある。このような製品については、残留応力を極力小さくすべく、冷間圧縮(加工)を加えて、残留応力を好ましくは約29MPa(3.0kgf/mm2)以下に除去ないし低減し、人工時効硬化処理を施して調質T652材とすることが好ましい。調質T652材とするためには、例えば、焼入れ温度を50℃以下とすることが好ましい。
なお、冷間圧縮(加工)の冷間圧縮(加工)量が小さいと、焼入れ温度を50℃以下とした場合であっても十分な残留応力の低減効果を得ることができない。一方、冷間圧縮(加工)量が大きいと、焼入れ温度を50℃以下とした場合であっても人工時効硬化処理中や高温での使用中にθ’相の析出量が増加するため、耐力が低下しやすい。従って、冷間圧縮(加工)は、圧縮(加工)率1〜5%とすることが好ましい。
(人工時効硬化処理工程)
人工時効硬化処理工程S8は、焼入れ処理工程S6後に行う工程である。なお、焼入れ処理工程S6後に冷間圧縮(加工)工程S7を行った場合は、当該冷間圧縮(加工)工程S7後に人工時効硬化処理工程S8を行う。人工時効硬化処理工程S8は、焼入れ処理や冷間圧縮(加工)を行った鍛造材を人工時効硬化処理する工程である。
前記した各調質における人工時効硬化処理は、Al鍛造材の常温耐力、高温耐力、クリープ破断強さなどの高温特性、高温環境下での疲労強度を付与させるために行われる。この人工時効硬化処理によりAl合金の(111)面に析出するΩ相および(100)面に析出するθ’相を析出させることができ、上述の特性を発現する。人工時効硬化処理の方法は特に限定されるものではなく、本発明に係るAl鍛造材においてΩ相およびθ’相が高温環境下での疲労強度を満足する析出状態となればよく、好ましくは常温耐力、高温耐力、クリープ破断強度などの高温特性、および金属疲労特性を得られるものであればよい。
以上、本発明に係るAl鍛造材およびその製造方法の一実施形態について説明した。
本発明に係るAl鍛造材によれば、平均結晶粒径が500μm以下であり、結晶粒径比(長軸/短軸)が10以下であるため、高温環境下での疲労強度に優れたものとすることができる。
本発明に係るAl鍛造材の製造方法によれば、平均結晶粒径が500μm以下であり、結晶粒径比(長軸/短軸)が10以下であるAl鍛造材を製造することができる。そのため、本発明に係るAl鍛造材の製造方法によれば、高温環境下での疲労強度に優れたAl鍛造材を製造することができる。
次に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に示した実施例に限定されるものではない。
(試験材1〜23)
表1の組成1〜17に示すAl合金を用いて、表2の試験材1〜23に係る鋳塊(直径500mm×長さ2000mm)を溶製した。その後、510℃×15時間の均質化熱処理(空気炉)を施した。そして、平均結晶粒径および結晶粒径比を調整するため、均質化熱処理後の鋳塊を、熱間鍛造にて各方向での鍛練比が1.5以上となるように3面鍛造を行った。なお、熱間鍛造の鍛造温度は180〜360℃の間で設定した。次いで、3面鍛造を行った鍛造材から50mm角(厚み)×300mmの長さの材料を機械加工により作製(切削)した。この切削材を空気炉で加熱速度200℃/時で昇温し、530℃×3時間の溶体化処理を行った後、70〜91℃の温水焼入れ(平均冷却速度約30〜120℃/分)を行い、190℃×18時間の人工時効硬化処理を施し、試験材1〜23(いずれも調質T61材)を作製した。
なお、試験材14は、熱間鍛造の鍛造温度を400℃に変更し、試験材15は、1方向の鍛造(1面鍛造)で試験材を作製した。
なお、表1に示す組成において残部はAlおよび不可避的不純物である。表1において下線を付した数値は、本発明の要件を満たしていないことを示している。
Figure 2016079454
作製した各試験材について、下記のようにして平均結晶粒径および結晶粒径比を測定し、高温環境下での疲労強度を測定した。
(平均結晶粒径、結晶粒径比の測定)
図2に示すように、試験材から測定する箇所のサンプルを約15mm×15mm×10〜20mmの大きさに切断し、樹脂埋め込みを行った。そして、樹脂埋め込みを行ったサンプルの一つの面を研磨して電解エッチングを行い、光学顕微鏡により写真撮影を行った。写真撮影の際の倍率は結晶粒径のサイズに合わせて任意に調整した。
結晶粒径の測定は、いわゆる切片法により行った。つまり、結晶粒径の測定は、図3に示すように、光学顕微鏡写真の縦と横それぞれに、均等に各々3本の線を引き(図3のa1〜a3、b1〜b3)、1本ごとに通過する結晶粒界の数を測定した。結晶粒径は、写真の倍率、サイズと結晶粒界の数から算出した。一連の測定を写真3枚で行い、縦9本(つまり、3本×3枚)、横9本(つまり、3本×3枚)の測定から、縦横それぞれN=9の結晶粒径を得て、縦、横それぞれで結晶粒径の平均を算出し、縦、横それぞれの平均結晶粒径を得た。そして、縦、横それぞれの平均結晶粒径をさらに足し合わせてその平均を算出することで、平均結晶粒径とした。
また、結晶粒径比(長軸/短軸)は、縦、横それぞれの結晶粒径の平均を用い、結晶粒径の大きい方を長軸、小さい方を短軸として、結晶粒径比を算出することにより得た。
(高温環境下での疲労強度)
作製したT61調質材から以下の試験片を作製し、当該試験片を150℃の高温環境下で金属疲労強度試験を行った(最大応力130MPa、応力比−1)。試験片は、平行部の直径6mm、平行部の長さ13.55mmとし、#1000のエメリーペーパー仕上げとした丸棒試験片を回転曲げ疲労強度試験に供した。
回転曲げ疲労強度試験の測定結果である破断繰り返し回数を表2に示す。なお、破断繰り返し回数とは、回転疲労試験での破断までの繰り返し回数をいう。また、表2において下線を付した数値は、本発明の要件を満たしていないことを示している。
破断繰り返し回数が5.0e6未満(5.0×106未満)を「×」と評価し、5.0e6以上8.0e6未満(5.0×106以上8.0×106未満)を「△」と評価し、8.0e6以上(8.0×106以上)を「○」と評価した。本発明においては、「○」を合格とし、「△」および「×」を不合格とした。
Figure 2016079454
表2に示すように、試験材1〜13、20〜23は、本発明の要件を満たしていたので、高温環境下での疲労強度が良好だった(実施例)。
これに対し、試験材14〜19は、本発明の要件を満たさなかったので、高温環境下での疲労強度が良好でない結果となった(比較例)。
具体的には、試験材14は、鍛造温度の条件が400℃であったので、平均結晶粒径が本発明の要件を満たさなかった。その結果、試験材14は、高温環境下での疲労強度が良好でない結果となった。
試験材15は、1方向の鍛造で作製したため、結晶粒径比(長軸/短軸)が本発明の要件を満たさなかった。その結果、試験材15は、高温環境下での疲労強度が良好でない結果となった。
試験材16は、Cuの含有量が下限値未満だったので、材料強度を十分に得ることができず、高温環境下での疲労強度が良好でない結果となった。
試験材17は、Mgの含有量が下限値未満だったので、材料強度を十分に得ることができず、高温環境下での疲労強度が良好でない結果となった。
試験材18は、Mnの含有量が下限値未満だったので、結晶粒径が大きくなり、疲労強度が十分得られなかった。そのため、試験材18は、高温環境下での疲労強度が良好でない結果となった。
試験材19は、Agの含有量が下限値未満だったので、PFZの幅を十分に狭くすることができなかった。そのため、試験材19は、高温環境下での疲労強度が良好でない結果となった。
(試験材24)
次に、表1の組成1に示すAl合金を用いて試験材24を作製した。試験材24は、各方向に鍛錬比2の3面鍛造を行った以外は、試験材1と同様にして作製した。
作製した試験材24について、前記と同様の条件で回転曲げ疲労強度試験を行い、高温環境下での疲労強度を評価したところ、試験材1〜13、20〜23と同様、150℃という高温環境下での疲労特性を満足するものであった(実施例)。
(試験材25〜35)
次に、表3に示すように、組成1を用いて表3に示す熱間鍛造温度(℃)と、溶体化処理を行った後の400〜290℃の間の平均冷却速度(℃/分)と、を種々制御した以外は、試験材1と同様にして試験材25〜35を作製した。
そして、試験材25〜35について、前記と同様の条件で回転曲げ疲労強度試験を行い、高温環境下での疲労強度を測定した。
熱間鍛造温度(℃)および平均冷却速度(℃/分)とともに、試験材25〜35における高温環境下での疲労強度の評価結果を表3に示す。なお、表3において下線を付した数値は、本発明の要件を満たしていないことを示している。
Figure 2016079454
試験材25〜32は、本発明の要件を満たしていた(いずれも平均結晶粒径が500μm以下であり、結晶粒径比(長軸/短軸)も10以下となった。)ので、表3に示すように、高温環境下での疲労強度が良好だった(実施例)。特に、試験材26、30は、溶体化処理を行った後の400〜290℃の間の平均冷却速度が大きいので、引張強度が高かった(表3には示さず)。
これに対し、試験材33〜35は、本発明の要件を満たさなかったので、高温環境下での疲労強度が良好でない結果となった(比較例)。
具体的には、試験材33、34は、熱間鍛造温度が上限を超えていたので、結晶粒径が大きくなり(平均結晶粒径が500μmを超えていた。)、疲労強度が十分得られなかった。そのため、試験材33、34は、高温環境下での疲労強度が良好でない結果となった。
試験材35は、平均冷却速度が下限未満であったので、材料強度が十分得られず(耐力が350MPa未満であった。)、疲労強度が十分得られなかった。そのため、試験材35は、高温環境下での疲労強度が良好でない結果となった。
(試験材36)
次に、表1の組成1に示すAl合金を用い、熱間鍛造として各方向に鍛錬比2の3面鍛造を行って試験材36を作製した。試験材36は、熱間鍛造後、270℃で略円盤形状の型打鍛造を行った以外は、試験材1と同様にして作製した。
作製した試験材36について、前記と同様の条件で回転曲げ疲労強度試験を行い、高温環境下での疲労強度を評価したところ、試験材1〜13、20〜23と同様、150℃という高温環境下での疲労特性を満足するものであった(実施例)。
S1 鋳造工程
S2 均質化熱処理工程
S3 熱間鍛造工程
S4 型打鍛造工程
S5 溶体化処理工程
S6 焼入れ処理工程
S7 冷間圧縮(加工)工程
S8 人工時効硬化処理工程

Claims (8)

  1. Cu:3.0〜8.0質量%、
    Mg:0.01〜2.0質量%、
    Ag:0.05〜1.0質量%、
    Mn:0.05〜1.5質量%を含有し、
    残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を鍛造して形成されるアルミニウム合金鍛造材であって、
    平均結晶粒径が500μm以下であり、
    結晶粒径比(長軸/短軸)が10以下である
    ことを特徴とするアルミニウム合金鍛造材。
  2. 前記アルミニウム合金が、
    Zn:0.01〜0.40質量%、
    Si:0.01〜1.00質量%、
    V:0.01〜0.15質量%、
    Cr:0.01〜0.30質量%、
    Zr:0.01〜0.50質量%、
    Sc:0.01〜1.00質量%、および、
    Ti:0.01〜0.20質量%の中から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金鍛造材。
  3. 請求項1または請求項2に示す組成からなるアルミニウム合金を溶解して鋳造材を鋳造する鋳造工程と、
    前記鋳造材を500〜545℃の保持温度で均質化熱処理する均質化熱処理工程と、
    前記均質化熱処理を行った鋳造材を180〜360℃の鍛造温度で鍛錬比が1.5以上の熱間鍛造を行う熱間鍛造工程と、
    前記熱間鍛造を行った鍛造材を510〜545℃の保持温度で溶体化処理する溶体化処理工程と、
    前記溶体化処理を行った鍛造材を400〜290℃の間の平均冷却速度が10℃/分以上、30000℃/分未満で焼入れ処理する焼入れ処理工程と、
    前記焼入れ処理を行った鍛造材を人工時効硬化処理する人工時効硬化処理工程と、を含むことを特徴とするアルミニウム合金鍛造材の製造方法。
  4. 前記熱間鍛造は、少なくとも前記鋳造材の異なる2つの面に対して順に鍛錬を行うものであることを特徴とする請求項3に記載のアルミニウム合金鍛造材の製造方法。
  5. 前記熱間鍛造は、前記鋳造材の異なる3つの面に対して順に鍛錬を行うものであることを特徴とする請求項3に記載のアルミニウム合金鍛造材の製造方法。
  6. 前記鍛造温度を180℃以上、280℃未満としたことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金鍛造材の製造方法。
  7. 前記熱間鍛造工程と前記溶体化処理工程との間に、
    前記鍛造材を180〜360℃の型打鍛造温度で型打鍛造する型打鍛造工程を含む
    ことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金鍛造材の製造方法。
  8. 前記型打鍛造温度を180℃以上、280℃未満としたことを特徴とする請求項7に記載のアルミニウム合金鍛造材の製造方法。
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