JP2016069716A - 被覆銅粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、酸化銅を還元して生成した金属銅に脂肪酸含有溶液を接触させて、金属銅の表面に脂肪酸の金属塩による表面処理層を形成する銅粉の製造方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
(1) 銅粒子と、銅粒子の表面に1nm2当り2.5〜5.2分子の密度で配置される脂肪族カルボン酸を含む被覆層と、を含む被覆銅粒子である。
(2) 脂肪族カルボン酸の脂肪族基の炭素数が5〜17である(1)に記載の被覆銅粒子である。
(3) 脂肪族カルボン酸が銅表面に物理的に吸着している(1)又は(2)に記載の被覆銅粒子
(4) 被覆層が、脂肪族カルボン酸銅錯体の熱分解物である(1)〜(3)のいずれか1つに記載の被覆銅粒子である。
(5) 銅酸化物及び銅水酸化物の総含有率が5質量%以下である(1)〜(4)のいずれか1つに記載の被覆銅粒子である。
(6) 銅粒子の平均一次粒子径が、0.02〜5.0μmである(1)〜(5)のいずれか1つに記載の被覆銅粒子である。
(7) 媒体中で、脂肪族カルボン酸銅錯体を熱分解することを含む(1)〜(6)のいずれか1つに記載の被覆銅粒子の製造方法である。
(8) (1)〜(6)のいずれか1つに記載の被覆銅粒子と、媒体とを含む導電性組成物である。
(9) 基材と、基材上に配置され、(8)に記載の導電性組成物の熱処理物である配線パターン又は接合層と、を備える回路形成物である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の被覆銅粒子は、銅粒子と、銅粒子の表面に1nm2当り2.5〜5.2分子の密度で配置される脂肪族カルボン酸を含む被覆層と、を含む。
銅粒子の表面に特定の範囲の密度で脂肪族カルボン酸が配置されていることで、従来技術では達成困難であった、優れた耐酸化性と焼結性とを両立して達成することができる。その理由は明確ではないが、例えば以下のように考えることができる。例えば、「エマルジョンの科学(V) 花井哲也著」(調理科学、7巻、3号、1974年)に記載されているミリスチン酸の単分子表面膜の表面膜圧と分子面積の関係プロットから、約3.3〜5.4分子/nm2の範囲は液体凝集膜領域であることが分かる。したがって、本実施形態の被覆銅粒子の表面においては、脂肪族カルボン酸が液体凝集膜に近いような単分子膜を形成しているため、優れた耐酸化性と焼結性とが達成されると考えられる。
また後述する製造方法で得られる被覆銅粒子は、粒子径が揃っているため、分散性に優れる。更に被覆銅粒子を構成する銅粒子の結晶子径とSEM観察径の差が小さいため、被覆銅粒子が複数の銅粒子の凝集により構成されておらず、凝集粒子境界部に被覆材や不純物、酸化層などが存在して、焼結を阻害することが抑制される。
銅粒子の平均一次粒子径は、SEM観察による任意の20個の銅粒子の一次粒子径の算術平均値として算出される。なお、銅粒子の平均一次粒子径は、被覆銅粒子の平均一次粒子径と実質的に同一とみなすことができる。
脂肪族カルボン酸は、飽和脂肪族カルボン酸であっても、不飽和脂肪族カルボン酸であってもよい。脂肪族カルボン酸が不飽和脂肪族カルボン酸の場合、不飽和脂肪族基に含まれる不飽和結合数は、例えば1〜3であり、1〜2が好ましい。
脂肪族カルボン酸に含まれる脂肪族基は、直鎖状でも分岐鎖状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。脂肪族基の炭素数は、例えば5以上であり、5〜21が好ましく、5〜17がより好ましく、7〜17がさらに好ましく、9〜17が特に好ましい。
脂肪族カルボン酸は、1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。
以上の分析結果から、被覆銅粒子1gに含まれる脂肪族カルボン酸の分子数は下記式(a)で表される。
[脂肪族カルボン酸の分子数]=Macid/(Mw/NA) ・・・(a)
ここで、Macidは被覆銅粒子1gに含まれる脂肪族カルボン酸量(g)であり、Mwは脂肪族カルボン酸の分子量(g/mol)であり、NAはアボガドロ定数である。
銅粒子の形状を球体と近似して、被覆銅粒子の質量から有機成分量を差し引いて銅粒子量MCu(g)から、被覆銅粒子1g中の銅粒子数は下式(b)で表される。
[銅粒子数]=MCu/[(4πr3/3)×d×10−21] ・・・(b)
ここで、MCuは被覆銅粒子1gに含まれる銅粒子量(g)であり、rはSEM画像観察により算出した一次粒子径の半径(nm)であり、dは銅の密度である(d=8.94)。被覆銅粒子1gに含まれる銅粒子の表面積は式(b)から、下式(c)で表される。
[銅粒子の表面積(nm2)]=[銅粒子数]×4πr2 ・・・(c)
以上から、脂肪族カルボン酸による銅粒子の被覆密度(分子/nm2)は、(a)式及び(c)式を用いて、下記式(d)で算出される。
[被覆密度]=[脂肪族カルボン酸の分子数]/[銅粒子表面積] ・・・(d)
また、被覆銅粒子の粒度分布の変動係数(標準偏差SD/平均一次粒子径DSEM)の値は例えば、0.01〜0.5であり、0.05〜0.3が好ましい。特に、後述する被覆銅粒子の製造方法で製造されていることで、粒度分布の変動係数が小さく、粒子径の揃った状態とすることができる。被覆銅粒子の粒度分布の変動係数が小さいことで、分散性に優れ、高濃度の分散物を作製できるという効果が得られる。
被覆銅粒子中における銅酸化物の生成は、被覆銅粒子のXRD測定により確認することができる。
被覆銅粒子の製造方法は、所望の被覆銅粒子が得られる限り特に限定されない。被覆銅粒子の製造方法は、脂肪族カルボン酸銅錯体を熱分解処理することを含むことが好ましい。被覆銅粒子の製造方法に適用される脂肪族カルボン酸銅錯体の構成は、所望の被覆銅粒子が得られる限り特に制限されない。脂肪族カルボン酸銅錯体は、ギ酸銅、アミノアルコール、脂肪族カルボン酸及び溶媒を含む反応液から形成されることが好ましく、ギ酸銅、アミノアルコール、炭素数が5以上の脂肪族基を有する脂肪族カルボン酸及び溶媒を含む反応液から形成されることがより好ましい。
すなわち、被覆銅粒子の製造方法は、ギ酸銅、アミノアルコール、炭素数が5以上の脂肪族基を有する脂肪族カルボン及び溶媒を含む反応液を得ることと、反応液中に生成する錯化合物を熱分解処理して金属銅を生成することと、を含み、アミノアルコールと溶媒とのSP値の差であるΔSP値が4.2以上である、脂肪族カルボン酸で表面が被覆された被覆銅粒子の製造方法であることが特に好ましい。
更に液相中に脂肪族カルボン酸が存在することで、物理吸着により脂肪族カルボン酸が生成した還元銅粒子を高密度に被覆する。こうして製造される被覆銅粒子は、酸化膜がほとんどない還元銅粒子で構成され、その表面を物理吸着により脂肪族カルボン酸が被覆しているため、耐酸化性と焼結性のバランスに優れている。これにより、被覆銅粒子の焼成工程において、銅粒子を被覆している有機保護剤である脂肪族カルボン酸が400℃以下の温度で除去され、水素ガスなどの還元雰囲気を用いるまでもなく、窒素置換等の手段で達成し得る低酸素雰囲気において、被覆銅粒子同士の焼結を行うことができる。このため、焼結に還元性雰囲気を必要とする従来の銅粒子では、適用が困難であった部位、例えば、水素脆化や水素との反応による変質が問題となる部位にも効果的に使用することができる。また、窒素置換リフロー炉などの既存の設備を利用して焼結させることができて、経済性の点においても優れる。
ギ酸銅は2価の銅イオンと銅イオン1モルに対して2モルのギ酸イオンとから構成される。ギ酸銅は無水物であっても、水和物であってもよい。また、ギ酸銅は市販品を用いてもよく、新たに調製したものを用いてもよい。
ギ酸銅を熱分解して還元銅の微粒子を得る方法は、例えば、特公昭61−19682号公報などに開示されている。ギ酸は、通常のカルボン酸と異なり、還元性を有するので、ギ酸銅を熱分解すると2価の銅イオンを還元することができる。例えば、無水ギ酸銅は、不活性ガス中で加熱すると210℃〜250℃で熱分解して金属銅を生成することが知られている。
アミノアルコールは、少なくとも1つのアミノ基を有するアルコール化合物であって、ギ酸銅と錯化合物を形成可能であれば特に制限されない。反応液中にアミノアルコールが存在することで、ギ酸銅から錯化合物が生成し、溶媒に可溶化することができる。
アミノアルコールは、モノアミノモノアルコール化合物であることが好ましく、アミノ基が無置換のモノアミノモノアルコール化合物であることがより好ましい。またアミノアルコールは、単座配位性のモノアミノモノアルコール化合物であることもまた好ましい。
分子間結合エネルギーE1は蒸発潜熱から気体エネルギーを差し引いた値である。蒸発潜熱Hbは、試料の沸点Tbとして下式で与えられる。
Hb = 21×(273+Tb)
このHb値から25℃におけるモル蒸発潜熱H25が下式で求められる。
H25 = Hb×[1+0.175×(Tb−25)/100]
モル蒸発潜熱H25から分子間結合エネルギーEが下式より求められる。
E = H25−596
分子間結合エネルギーEから試料1mLあたりの分子間結合エネルギーE1が下式により求められる。
E1 = E×D/Mw
ここで、Dは試料の密度、Mwは試料の分子量であり、E1よりSP値が下式により求められる。
SP =(E1)1/2
なお、OH基を含む溶剤は、OH基1基につき+1の補正が必要である。
〔例えば、三菱石油技資、No.42,p3,p11(1989)参照〕
反応液におけるアミノアルコールの含有量は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。アミノアルコールの含有量は、例えば、反応液中の銅イオンに対して1.5〜4.0倍モルの範囲が好ましく、1.5〜3.0倍モルの範囲がより好ましい。アミノアルコールの含有量が銅イオンに対して1.5倍モル以上であるとギ酸銅の溶解性が充分に得られ、反応に要する時間を短縮することができる。また4.0倍モル以下であると生成する被覆銅粒子の汚染を抑制することができる。
脂肪族カルボン酸は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。なかでも、耐酸化性の観点から、脂肪族基の炭素数が5以上の脂肪族カルボン酸(以下、「長鎖カルボン酸」ともいう)であることが好ましい。脂肪族基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、また飽和脂肪族基及び不飽和脂肪族基のいずれであってもよい。脂肪族基の炭素数は5以上であるが、5以上17以下であることが好ましく、7以上17以下であることがより好ましい。脂肪族基の炭素数が5以上であると、粒度分布の指標となる変動率が小さくなる傾向がある。これは例えば、炭素鎖の長さが会合力を左右するファンデルワールス力の大きさと相関性が高いことで説明できる。すなわち、炭素鎖の長いカルボン酸は、会合力が強く、ミクロ反応場であるWater−in−oil Emulsion類似の相安定化に寄与することで粒子径の揃った銅粒子を効率よく製造できると考えられる。
反応液における脂肪族カルボン酸の含有量は、所望の被覆銅粒子が得られる限り、特に制限されない。脂肪族カルボン酸の含有量は、例えば、反応液中の銅イオンに対して2.5〜25モル%の範囲が好ましく、5.0〜15モル%の範囲がより好ましい。脂肪族カルボン酸の含有量が銅イオンに対して25モル%以下であると反応系の粘度上昇を抑制できる傾向がある。また脂肪族カルボン酸の含有量が銅イオンに対して2.5モル%以上であると、充分な反応速度が得られ生産性が向上する傾向があり、粒度分布の指標となる変動率が小さくなる傾向がある。
反応液を構成する溶媒は、ギ酸による還元反応を過度に阻害せず、アミノアルコールとのSP値の差であるΔSP値が4.2以上となるように選択されることが好ましく、通常用いられる有機溶剤から適宜選択することができる。
アミノアルコールのSP値と溶媒のSP値との差であるΔSP値が4.2以上であると、形成される被覆銅粒子の粒度分布の幅がより狭い、粒子径の揃った被覆銅粒子が得られる。
溶媒のSP値は、アミノアルコールよりも小さいことがより好ましい。溶媒のSP値は11.0以下であることが好ましく、10.0以下であることがより好ましい。溶媒のSP値の下限は特に制限されず、例えば溶媒のSP値は、7.0以上であることが好ましい。
さらに溶媒は、水と共沸混合物を形成可能な有機溶剤であることもまた好ましい。水と共沸混合物を形成可能であると、熱分解処理によって反応液中に生成した水を容易に反応系から除去することができる。
溶媒は1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。
補助溶剤の沸点の好ましい態様は、主溶剤と同様である。補助溶剤のSP値は主溶剤をよりも大きいことが好ましく、アミノアルコールと相溶する程度に大きいことがより好ましい。補助溶剤の具体例としては、EO系グリコールエーテル、PO系グリコールエーテル、ジアルキルグリコールエーテルなどのグリコールエーテルを挙げることができる。より具体的には、メチルジグリコール、イソプロピルグリコール、ブチルグリコール等のEO系グリコールエーテル;メチルプロピレンジグリコール、メチルプロピレントリグリコール、プロピルプロピレングリコール、ブチルプロピレングリコール等のPO系グリコールエーテル、ジメチルジグリコール等のジアルキルグリコールエーテルなどを挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。なお、これらの補助溶剤は、いずれも日本乳化剤(株)等より入手可能である。
δ3=〔V1×δ1+V2×δ2〕/(V1+V2)
δ3:混合溶媒の平均SP値、δ1:溶媒1のSP値、V1:溶媒1のモル容積、δ2:溶媒2のSP値、V2:溶媒2のモル容積
ギ酸銅、アミノアルコール、脂肪族カルボン酸(好ましくは長鎖カルボン酸)及び溶媒を含む反応液からは、ギ酸銅に由来する錯化合物が生成する。錯化合物の構造は特に限定されず、1種のみからなっていてもよく、2種以上を含んでいてもよい。また、反応液中に存在する錯化合物は、熱分解処理の進行に伴い、その構成が変化してもよい。すなわち、熱分解処理の初期において主として存在する錯化合物と、熱分解処理の後期において主として存在する錯化合物は互いに構成が異なるものであってもよい。
反応液中に生成する錯化合物として具体的には、1個の銅イオンに2分子のギ酸イオンと2分子のアミノアルコールとが配位した錯化合物、1個の銅イオンに1分子のギ酸イオンと1分子の脂肪族カルボン酸と2分子のアミノアルコールとが配位した錯化合物等が挙げられる。
錯化合物は、熱分解処理の少なくとも初期においては、ギ酸銅、アミノアルコール及び脂肪族カルボン酸から形成される脂肪族カルボン酸銅錯体を含むことが好ましい。
水の除去方法は特に制限されず、通常用いられる水分除去方法から適宜選択することができる。例えば、溶媒として水と共沸混合物を形成し得る有機溶剤を用いて、共沸により生成する水を除去することが好ましい。
すなわち、ギ酸銅を反応溶媒に可溶化するための錯化剤としてのアミノアルコールと溶媒とのSP値の差であるΔSP値を、例えば4.2以上とすることで、ギ酸銅アミノアルコール錯体又はギ酸の1分子が脂肪族カルボン酸で置換されたギ酸銅アミノアルコール錯体の状態では、溶解しているが、錯体が熱分解されて錯化剤であるアミノアルコールが遊離すると、遊離したアミノアルコールは溶媒とは相溶できず、2相を形成し始める。そして、遊離されたアミノアルコールは、ギ酸銅やギ酸銅アミノアルコール錯体と親和性が高く、ギ酸銅の新たなる錯化剤又は溶剤として振る舞い、極性の高い内核(液滴)を形成し、外側を極性の低い溶媒が取り囲むWater in oil Emulsion類似の2相構造を取るようになり、これがマイクロ反応場として機能すると推定される。
さらに反応系中の水も脂肪族カルボン酸の置換で脱離したギ酸もこのマイクロ反応場に存在している。マイクロ反応場の中に金属核、その成長粒子及び金属核の発生源であるギ酸銅アミノアルコール錯体、ギ酸の1分子が脂肪族カルボン酸で置換されたギ酸銅アミノアルコール錯体、水及びギ酸が隔離されて反応が進行する。脂肪族カルボン酸が金属銅成長粒子の被覆材として固定化され、減少するにつれて反応初期ではギ酸銅錯体の熱分解機構が後述する反応式1〜3で進行していたものが、次第に反応式4の機構で進行するようになり、発生ガス成分が変化してくる。マイクロ反応場では、反応式5に示す水によるギ酸銅アミノアルコール錯体の加水分解でCuOが生成するが、反応式6又は反応式7を経由して再び還元されるため、亜酸化銅や酸化銅を含まない銅粒子が製造可能となっている。また、マイクロ反応場に含まれる銅原子数が限定されているため、銅粒子の粒子径は一定に制御される。
(HCOO−)(HCOO−)Cu2+・(H2NC3H6OH)2+C11H23COOH
→(C11H23COO−)(HCOO−)Cu2+・(H2NC3H6OH)2+HCOOH
(反応式2)
(C11H23COO−)(HCOO−)Cu2+・(H2NC3H6OH)2
→Cu:C11H23COOH+2H2NC3H6OH+CO2
(反応式3)
Cu:C11H23COOH
↑↓
Cu+C11H23COOH
(反応式4)
(HCOO−)(HCOO−)Cu2+・(H2NC3H6OH)2
→Cu+2H2NC3H6OH+H2+2CO2
(反応式5)
(HCOO−)(HCOO−)Cu2+・(H2NC3H6OH)2+H2O
→CuO+2H2NC3H6OH+2HCOOH
(反応式6)
2CuO+2HCOOH→Cu2O+HCOOH+H2O+CO2
→2Cu+2H2O+2CO2
(反応式7)
CuO+2HCOOH
→(HCOO−)(HCOO−)Cu2++H2O
なお、上記反応式では便宜上、アミノアルコールをプロパノールアミン、脂肪族カルボン酸をラウリン酸として記載したが、これらに限定されないことは言うまでもない。
本実施形態の導電性組成物は、既述の被覆銅粒子の少なくとも1種と、媒体とを含む。導電性組成物は、配線パターン、接合層等の形成に好適に用いることができ、低温で、導電性に優れる配線パターン、接合層等を容易に形成することができる。
例えば、導電性組成物がスクリーン印刷用である場合、媒体としては、炭化水素系溶剤、高級アルコール系溶剤、セロソルブ、セロソルブアセテート系溶剤等を挙げることができる。
また、スクリーン印刷用の導電性組成物の固形分濃度は、例えば、40〜95質量%とすることができる。ここで導電性組成物の固形分とは不揮発性成分の総量を意味する。
インクジェット印刷用の導電性組成物の固形分濃度は、例えば、40〜90質量%とすることができる。
本実施形態の回路形成物は、基材と、基材上に配置される上記導電性組成物の熱処理物である配線パターン又は接合層とを備える。配線パターン又は接合層が上記導電性組成物から形成されることで、配線パターン又は接合層の導電性に優れる。また低温で配線パターン又は接合層を形成することができるため、基材の選択肢の自由度大きい。
また接合層は、例えば、半導体素子がダイボンド接合で配置される領域であり、その形状、大きさ、厚み等は目的等に応じて適宜選択すればよい。
すなわち、回路形成物は、例えば、基材を準備する工程と、基材上に導電性組成物を付与する工程と、導電性組成物を熱処理する工程とを含む製造方法で製造できる。
熱処理の時間は、例えば1〜120分間とすることができ、1〜60分間であることが好ましい。
熱処理の雰囲気は、低酸素雰囲気であることが好ましい。低酸素雰囲気としては、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等を挙げることができる。また酸素濃度が1,000ppm以下であることが好ましい。
<平均一次粒子径及び変動率の計算>
測定装置:日本電子製FE−EPMA JXA−8510F
平均一次粒子径:サンプル20点の平均値
変動率:サンプル20点の標準偏差/平均値で計算される値
測定装置:日本電子製FE−EPMA JXA−8510F
測定条件:加速電圧 6KV又は15KV
観察倍率 ×10,000〜×75,000
測定器:島津製 XRD−6100
測定条件:ターゲット Cu
管電圧 40KV、管電流 30.0mA
測定器;ULVAC−PHI製 PHI TRIFT IV型
測定条件:1次イオン種 Au、加速電圧 30KV
測定装置:リガク製 TG8120
昇温速度:10℃/min
測定温度範囲:25℃〜600℃
測定雰囲気:窒素 100ml/min
測定器:Waters製 ACQUITY UPLC H−Class System
カラム:ACQUITY UPLC(R) BEH C18 1.7μm 2.1×50mm
測定温度:50℃
測定溶媒:水/アセトニトリル
流量:0.8mL/min
サンプル瓶に被覆銅粒子1g、アセトニトリル9mLを加えた。そこに0.36重量%塩酸水溶液1mLを加えた。この混合溶液を30min超音波照射処理して攪拌・混合した。抽出処理完了後、スラリー液を静置し固液分離した後、上清を採取した。その上清を0.2μmフィルターでろ過し、LC測定用のサンプルとした。
測定器:パーキンエルマー AutoIMAGE FT−IR Microscope
攪拌機、温度計、還流冷却管、75mLディーンスターク管、窒素導入管を備えた3000mLガラス製四ツ口フラスコをオイルバスに設置した。そこへ、ギ酸銅無水物484g(3.1モル)と、ラウリン酸(関東化学社製)34.0g(0.055当量/ギ酸銅無水物)と、反応溶媒としてトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成社製)150g(0.23当量/ギ酸銅無水物)及びスワクリーン150(ゴードー社製)562g(1.42当量/ギ酸銅無水物)とを添加し、200rpmで攪拌しながら混合した。窒素雰囲気下、液温度が50℃になるまで200rpmで加温攪拌した。そこへ、3−アミノ−1−プロパノール(東京化成社製)472g(2.00当量/ギ酸銅無水物)ゆっくり滴下した。滴下終了後、約1℃/minの昇温速度で液温度が120℃付近になるまで、340rpmで加温攪拌した。ディーンスターク管によりトラップされた水層は適時除去し、反応系内に還流されないようにした。液温度が上昇するにつれて、反応溶液は濃青色から茶褐色に変化し始め、炭酸ガスの発泡が生じた。炭酸ガスの発泡が収まったところを反応終点として、オイルバス温調を停止し、室温まで冷却した。
室温まで冷却後、メタノール(関東化学社製)550gを添加し、混合させた。この混合溶液を30分以上静置して、上澄みをデカンテーションし、沈殿物を得た。この沈殿物にメタノール(関東化学社製)550g、アセトン(関東化学社製)300gを添加し、混合した。この混合溶液を30分以上静置して、上澄みをデカンテーションし、沈殿物を得て、この操作を更にもう一回繰り返した。この沈殿物にメタノール(関東化学社製)550gを用いて共洗いしながら500mLナスフラスコに移した。30分以上静置して、上澄みをデカンテーションし、得られた沈殿物を回転式エバポレーターに設置し、40℃、1kPa以下で真空乾燥した。真空乾燥終了後、室温まで冷却し窒素置換しながら減圧解除し、194gの茶褐色の被覆銅粒子を得た。
実施例1において、ラウリン酸の代わりにオレイン酸を用いたこと以外は実施例1と同様にして被覆銅粒子200gを得た。
実施例1において、ラウリン酸の代わりにステアリン酸を用いたこと以外は実施例1と同様にして被覆銅粒子200gを得た。
実施例1において、ラウリン酸68.1g、3−アミノ−1−プロパノール 712gに変更した以外は実施例1と同様にして被覆銅粒子200gを得た。
実施例4において、昇温速度を約0.5℃/minに変更した以外は実施例4と同様にして被覆銅粒子200gを得た。実施例4より平均一次粒子径が大きいものを得た。
特開2013−047365号公報の実施例1に記載の方法に準じて、以下のようにして被覆銅粒子を合成した。
銅化合物として亜酸化銅(I)(古河ケミカルズ社製)を71.5g(0.5モル)、被覆材として酢酸15.0g(250mmol)、還元剤としてヒドラジン・一水和物(和光純薬工業製〕25.0g(0.5モル)、溶媒としてイソプロパノールを500ml混合し、1,000mlの4ツ口フラスコに加えた。フラスコには、冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた。窒素を200ml/minを通気しながら、攪拌しつつ70℃まで昇温させ、2時間加熱・攪拌を継続して亜酸化銅(I)を還元させ、被覆銅粒子分散液を得た。
被覆銅粒子分散液を桐山濾紙No.5Bで減圧濾過して、粉体を濾別した。濾別した粉体をメタノール(関東化学工業製)で3回洗浄して40℃、1kPa以下で減圧乾燥させ、室温まで冷却後に窒素置換をして取り出し、62gの茶褐色粉体を得た。
特開2002−332502号公報の実施例に準じて以下のようにして表面処理銅粉を得た。50gのメタノール(関東化学工業製)中に平均一次粒子径672nmの銅粉25gとオレイン酸(日油製)0.025gとを加えて、攪拌混合して銅粉表面に表面処理層を形成した。その後、桐山濾紙No.5Bで減圧濾過して、粉体を濾別した。濾別した粉体にメタノール(関東化学工業製)25gを滴下することで、表面処理銅粉を濾過洗浄し、40℃、1kPa以下で減圧乾燥させ、室温まで冷却後に窒素置換をして取り出し、20gの茶褐色粉体を得た。
上記で製造された被覆銅粒子を用いて脂肪族カルボン酸で被覆された被覆銅粒子の組成をあきらかにするために、粉体X線分析(XRD測定)、SEM画像観察、Tof−SIMS測定、TG−DTA測定及びLC測定等を実施した。
D=Kλ/(βcosθ)・・・(1)
ここで、Dは結晶粒子径、KはScherrer定数(球体と仮定し、K=1として代入)、λは測定X線の波長(CuKα:1.5418A)、βは式(2)で表される。
β=b−B・・・(2)
ここで、bはピークの半値幅、Bは装置の補正係数(B=0.114)である。
LC測定の解析結果にしたがって、加熱減量成分の全量をラウリン酸とすると、被覆銅粒子に含まれるラウリン酸の分子数は式(3)で表される。
[ラウリン酸分子数] = Macid/(MW/NA) ・・・(3)
ここで、Macidは加熱減量測定質量値(g)、MWはラウリン酸分子量(g/mo
l)、NAはアボガドロ定数(6.02×1023本/mol)である。
SEM観測により算出した一次粒子径はほぼすべて還元銅由来とし、その形状は球体と仮定すると、銅粒子1g中の粒子数は式(4)で表される。
[1g中の粒子数]=MCu/[(4πr3/3)×d×10−21]・・・(4)
ここで、MCuは加熱減量測定値より求められる質量計算値(g)、rはSEM観測により算出した一次粒子径の半径(nm)、dは密度である(銅の密度として代入した;d=8.94)。銅粒子1g中の粒子表面積は式(4)を用いて、式(5)で表される。
[1g中の銅粒子表面積(nm2)]=[1g中の粒子数]×4πr2・・・(5)
ラウリン酸による銅粒子の被覆密度(分子/nm2)は、(3)式及び(5)式を用いて、式(6)で表される。
[被覆密度]=[ラウリン酸分子数]/[1g中の銅粒子表面積]・・・(6)
『化学と教育 40巻2号(1992年)ステアリン酸分子の断面積を求める−実験値と計算値−』より、ステアリン酸分子のVan der waals半径から最小面積が算出されており、その計算値から換算される飽和被覆面積理論値は約5.00分子/nm2である。この理論値から、本実施形態の被覆銅粒子は比較的高密度にラウリン酸が粒子表面に吸着していると推測される。この濃密な被覆効果が、ラウリン酸被覆が化学吸着よりも弱い物理吸着であるにも関わらず、耐酸化性に優れている理由として考えられる。
またIRスペクトル測定結果(図7)によると、カルボン酸-金属塩由来の伸縮振動ピークのみが検出された。フリーのカルボン酸の伸縮振動ピークが見られなかったことから、オレイン酸は単分子膜を形成し銅表面に物理吸着していることが示唆される。
TG−DTA測定結果から、加熱減量は1.68質量%であり、オレイン酸の沸点付近ではほぼすべて脱離していることが分かった。
LC測定を行った。LC測定の結果によると、有機成分としてはオレイン酸が主として検出された。
オレイン酸は二重結合を有する不飽和脂肪酸であり、この二重結合の位置で曲がった分子構造をとっている。ラウリン酸のような飽和脂肪酸と比較して、オレイン酸が単分子膜を形成する際、その立体障害から液体膨張膜を形成しやすい。「エマルジョンの科学(V) 花井哲也著」(調理科学、7巻、3号、1974年)より、表面膜圧対分子面積の関係プロットから、水面上の表面膜モデルにおけるオレイン酸の被覆密度は約1.25分子/nm2と算出できる。
これに対して、実施例2で製造された被覆銅粒子は、比較的高密度な被覆効果が見られ、液体凝集膜に近しい単分子膜を形成していることが分かった。
実施例1で製造された直後の粉体X線測定結果(図1)と25℃、大気雰囲気下で2ヶ月貯蔵した後に同様に測定して酸化の進行の有無を確認した(図8)。2ヶ月後でも酸化成分は検出されず、本実施形態の被覆銅粒子は優れた耐酸化性を有することが確認された。
一方、比較例1で製造された直後の粉体X線測定結果と25℃、大気雰囲気下で2ヶ月貯蔵した後に同様に測定した結果を図9に示す。図9に示すように、比較例1の条件で製造された被覆銅粒子では、2カ月後に亜酸化銅に由来するシグナルが明確に観測された。
Claims (9)
- 銅粒子と、
銅粒子の表面に1nm2当り2.5〜5.2分子の密度で配置される脂肪族カルボン酸を含む被覆層と、を含む被覆銅粒子。 - 脂肪族カルボン酸の脂肪族基の炭素数が5〜17である請求項1に記載の被覆銅粒子。
- 脂肪族カルボン酸が銅表面に物理吸着している請求項1又は2に記載の被覆銅粒子。
- 被覆層が、脂肪族カルボン酸銅錯体の熱分解物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆銅粒子。
- 銅酸化物及び銅水酸化物の総含有率が5質量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆銅粒子。
- 平均一次粒子径が0.02〜5.0μmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆銅粒子。
- 媒体中で、脂肪族カルボン酸銅錯体を熱分解することを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の被覆銅粒子の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の被覆銅粒子と、媒体とを含む導電性組成物。
- 基材と、基材上に配置され、請求項8に記載の導電性組成物の熱処理物である配線パターン又は接合層と、を備える回路形成物。
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