JP2013159830A - 表面被覆金属ナノ粒子、およびその製造方法 - Google Patents

表面被覆金属ナノ粒子、およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低温での焼結が可能な金属ナノ粒子を備えており、この金属ナノ粒子の表面に、不活性ガス雰囲気中、低温での熱処理により容易に熱分解が可能な有機被膜が配置されている表面被覆金属ナノ粒子を提供すること。
【解決手段】平均粒子径が1〜40nmの金属ナノ粒子と、該金属ナノ粒子表面に配置された有機被膜とを備えており、
前記有機被膜の含有量は金属ナノ粒子100質量部に対して0.1〜7質量部であり、
前記有機被膜は、炭素数3〜8の脂肪酸を含有し、不活性ガス雰囲気中での熱分解ピーク温度が300℃以下であり、不活性ガス雰囲気中、350℃以下の温度で95質量%以上熱分解されるものであることを特徴とする表面被覆金属ナノ粒子。
【選択図】なし

Description

本発明は、表面被覆金属ナノ粒子およびその製造方法に関し、より詳しくは、金属ナノ粒子の表面に有機被膜が配置された表面被覆金属ナノ粒子およびその製造方法に関する。
半導体素子の電極接合などにおいては、従来、Sn−Pb系はんだが用いられていたが、近年、環境保全の観点から、鉛フリーはんだといった新規な接合材料が求められている。また、半導体装置の小型化、高密度化に伴い、微細な配線形成が必要となり、これに対応した新規な配線形成材料が求められている。さらに、半導体素子の接合技術や微細配線形成技術においては、半導体素子への負荷を低減するために、低温での接合が可能な材料や低温での配線形成が可能な材料が求められている。
Ag、Cu、Niなどの金属ナノ粒子は、従来から、上記のような微細配線形成用材料として注目されている。超微粒子技術入門の28〜29頁(非特許文献1)には、このような金属ナノ粒子は、粒径が20nm以下になると、その融点よりはるかに低い温度(焼結温度200℃以下)で焼結させることが可能となることが報告されている。このため、半導体素子の低温接合や微細配線の低温形成などへの応用が期待されている。
金属ナノ粒子の製造方法としては気相法や液相法など様々な方法が提案されているが、簡便な設備で安価に且つ大量に製造できるという観点から、液相中で金属イオンを還元して金属ナノ粒子を形成させる方法が検討されている。しかしながら、金属ナノ粒子は非常に凝集しやすく、そのままの状態では上記のような低温焼結特性を十分に発現させることは困難であった。
このため、通常、金属ナノ粒子の表面にポリビニルピロリドンやポリビニルアルコール、ポリエチレンイミンなどの高分子化合物からなる有機被膜を形成させて金属ナノ粒子の凝集を抑制している。ところが、このような高分子化合物は熱分解温度が比較的高いため、接合時や配線形成時の加熱温度を低くすると、有機被膜成分が十分に熱分解されず、接合部分や配線中に残存して接合特性や熱伝導特性、電気伝導特性が低下するといった問題があった。また、接合や配線形成は、電極材料や接合材料、配線材料の酸化を防止するため、不活性ガス雰囲気下で行なわれることが多いが、前記高分子化合物は不活性ガス雰囲気下では熱分解されにくく、配線などの電気伝導性や半導体素子などの接合強度が低下するといった問題があった。
そこで、低温焼結が可能な金属ナノ粒子として、国際公開第2009/090846号(特許文献1)には、平均粒子径が1〜20nmの銀核と、この銀核の周囲に炭素数1〜12のアルコール分子誘導体などからなる有機被覆層が配置されている複合銀ナノ粒子が、その製造方法とともに提案されている。また、国際公開第2004/012884号(特許文献2)には、アミン化合物の存在下、またはアミン化合物と脂肪酸の共存下で金属塩を熱処理することによって分散安定性に優れた金属ナノ粒子を得る方法が開示されている。
国際公開第2009/090846号 国際公開第2004/012884号
一ノ瀬昇、尾崎義治、賀集誠一郎、超微粒子技術入門、オーム社、1988年7月発行、28〜29頁
しかしながら、特許文献1に記載された、炭素数9〜12のアルコール分子誘導体などからなる有機被覆層が配置されている複合銀ナノ粒子を用いた場合でも、不活性ガス雰囲気下、300℃以下の温度での接合や配線形成においては、十分な接合強度や電気伝導性は未だ達成されていない。
さらに、特許文献1には、平均粒子径が1〜20nmの銀核と、この銀核の周囲に炭素数1〜8のアルコール分子誘導体などからなる有機被覆層が配置されている複合銀ナノ粒子は、具体的には記載されていない。そこで、本発明者らが確認したところ、特許文献1に記載の複合銀ナノ粒子の製造方法において炭素数6または8のアルコール溶媒を用いた場合、得られる銀ナノ粒子は、平均粒子径が40nmを超えるものであった。すなわち、特許文献1に記載の複合銀ナノ粒子の製造方法によって、平均粒子径が1〜20nmの銀核と、この銀核の周囲に炭素数1〜8のアルコール分子誘導体などからなる有機被覆層が配置されている複合銀ナノ粒子を得ることは困難であった。
また、特許文献2に記載の金属ナノ粒子は、熱分解されにくいアミン化合物を多く含有する有機成分で保護されているため、不活性ガス雰囲気下、300℃以下の温度での接合や配線形成においては、有機成分が十分に熱分解されずに残存し、接合強度や電気伝導性が低下するという問題があった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、低温(好ましくは、300℃以下)での焼結が可能な金属ナノ粒子を備えており、この金属ナノ粒子の表面に、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での熱処理により容易に熱分解が可能な有機被膜が配置されている表面被覆金属ナノ粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、平均粒子径が1〜40nmの金属ナノ粒子と該金属ナノ粒子表面に配置された炭素数12以上の脂肪酸を含有する第一の有機被膜とを備える表面被覆金属ナノ粒子と、少なくとも炭素数3〜8の脂肪酸とを混合して、前記第一の有機被膜を炭素数3〜8の脂肪酸を含有する第二の有機被膜に交換することによって、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での熱処理により焼結が可能な金属ナノ粒子の表面に、前記熱処理により容易に熱分解が可能な有機被膜が配置されている表面被覆金属ナノ粒子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の表面被覆金属ナノ粒子は、平均粒子径が1〜40nmの金属ナノ粒子と、該金属ナノ粒子表面に配置された有機被膜とを備えており、前記有機被膜の含有量は金属ナノ粒子100質量部に対して0.1〜7質量部であり、前記有機被膜は、炭素数3〜8の脂肪酸を含有し、不活性ガス雰囲気中での熱分解ピーク温度が300℃以下であり、不活性ガス雰囲気中、350℃以下の温度で95質量%以上熱分解されるものであることを特徴とするものである。
このような本発明の表面被覆金属ナノ粒子において、前記金属ナノ粒子としては、Au、Pt、Pd、Ag、Rh、Ru、Cu、Bi、Pb、SnおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含有するものが好ましい。また、前記有機被膜としては、炭素数3〜8の脂肪族アミンをさらに含有していてもよい。
本発明の表面被覆金属ナノ粒子の製造方法は、
平均粒子径が1〜40nmの金属ナノ粒子と該金属ナノ粒子表面に配置された炭素数12以上の脂肪酸を含有する第一の有機被膜とを備える表面被覆金属ナノ粒子を調製するナノ粒子調製工程と、
前記第一の有機被膜を備える表面被覆金属ナノ粒子と炭素数3〜8の脂肪酸とを無極性溶媒中で混合し、前記第一の有機被膜を炭素数3〜8の脂肪酸を含有する第二の有機被膜に交換して、前記金属ナノ粒子と該金属ナノ粒子表面に配置された前記第二の有機被膜とを備える表面被覆金属ナノ粒子を得る被膜交換工程と、
を含むことを特徴とするものである。
前記被膜交換工程においては、炭素数3〜8の脂肪族アミンをさらに混合し、前記第一の有機被膜を炭素数3〜8の脂肪酸および炭素数3〜8の脂肪族アミンを含有する第二の有機被膜に交換して、前記金属ナノ粒子と該金属ナノ粒子表面に配置された前記第二の有機被膜とを備える表面被覆金属ナノ粒子を得ることも可能であり、この場合、前記第一の有機被膜としては、炭素数12以上の脂肪族アミンをさらに含有するものが好ましい。
本発明にかかる前記ナノ粒子調製工程においては、炭素数12以上の脂肪族アルコール系溶媒を用いて前記脂肪族アルコール系溶媒に不溶な金属塩(好ましくは、該金属の炭酸塩および水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種)を還元せしめることにより該金属のナノ粒子を形成させ、且つ該金属ナノ粒子の表面に、前記脂肪族アルコール系溶媒が酸化して生成する炭素数12以上の脂肪酸を含有する第一の有機被膜を形成させることが好ましい。
また、前記ナノ粒子調製工程においては、アルコール系溶媒(好ましくは、ポリオール)中、炭素数12以上の脂肪酸および炭素数12以上の脂肪族アミンの共存下で、前記アルコール系溶媒に不溶な金属塩(好ましくは、該金属の炭酸塩および水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種)を還元せしめることにより、該金属のナノ粒子を形成させ、且つ該金属ナノ粒子の表面に、前記炭素数12以上の脂肪酸および前記炭素数12以上の脂肪族アミンを含有する第一の有機被膜を形成させることも好ましい。
本発明によれば、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での熱処理により焼結が可能な平均粒子径が1〜40nmの金属ナノ粒子と、この金属ナノ粒子の表面に配置されており、前記熱処理により容易に熱分解が可能な有機被膜とを備える表面被覆金属ナノ粒子を得ることが可能となる。
本発明にかかるナノ粒子調製工程の実施態様の一例を示す模式図である。 本発明にかかる被膜交換工程の実施態様の一例を示す模式図である。 従来の表面被覆金属ナノ粒子の調製方法の一例を示す模式図である。 本発明にかかるナノ粒子調製工程の実施態様の他の例を示す模式図である。 本発明にかかる被膜交換工程の実施態様の他の例を示す模式図である。 従来の表面被覆金属ナノ粒子の調製方法の他の例を示す模式図である。 実施例1〜2および比較例1〜3で得られた微粒子のXRDスペクトルを示すグラフである。 実施例3〜6および比較例4〜5で得られた微粒子のXRDスペクトルを示すグラフである。 実施例7および比較例6で得られた微粒子のXRDスペクトルを示すグラフである。 実施例8で得られた微粒子のXRDスペクトルを示すグラフである。 比較例7で得られた微粒子のXRDスペクトルを示すグラフである。 実施例9〜11および比較例8で得られた微粒子のXRDスペクトルを示すグラフである。 比較例9で得られた微粒子のXRDスペクトルを示すグラフである。 実施例1で得られた微粒子を示す透過型電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られた微粒子を示す透過型電子顕微鏡写真である。 比較例1で得られた微粒子を示す透過型電子顕微鏡写真である。 比較例2で得られた微粒子を示す透過型電子顕微鏡写真である。 比較例3で得られた微粒子を示す透過型電子顕微鏡写真である。 比較例7で得られた微粒子を示す透過型電子顕微鏡写真である。 実施例1〜2および比較例1で得られた微粒子のMALDI−MSスペクトルを示すグラフである。 実施例3〜4および比較例4で得られた微粒子のMALDI−MSスペクトルを示すグラフである。 実施例5〜6で得られた微粒子のMALDI−MSスペクトルを示すグラフである。 実施例1で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 実施例2で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 比較例1で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 比較例2で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 比較例3で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 実施例3で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 実施例4で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 実施例5で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 実施例6で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 比較例4で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 比較例5で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 実施例7で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 実施例8で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 比較例6で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 比較例7で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 実施例9で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 実施例10で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 実施例11で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 比較例8で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。 比較例9で得られた微粒子のTG−DTA測定結果を示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
<表面被覆金属ナノ粒子>
先ず、本発明の表面被覆金属ナノ粒子について説明する。本発明の表面被覆金属ナノ粒子は、平均粒子径が1〜40nmの金属ナノ粒子と、該金属ナノ粒子表面に配置された有機被膜とを備えており、前記有機被膜の含有量は金属ナノ粒子100質量部に対して0.1〜7質量部であり、前記有機被膜は、炭素数3〜8の脂肪酸を含有し、不活性ガス雰囲気中での熱分解ピーク温度が300℃以下であり、不活性ガス雰囲気中、350℃以下の温度で95質量%以上熱分解されるものである。
(金属ナノ粒子)
本発明にかかる金属ナノ粒子は、平均粒子径が1〜40nmのものである。平均粒子径が前記範囲にあると、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)で焼結させることが可能となり、本発明の表面被覆金属ナノ粒子を微細配線形成用インクや接合材料などに使用することができる。一方、平均粒子径が40nmを超えると、不活性ガス雰囲気中、300℃以下で焼結させることが困難となり、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での接合や配線形成において、高い接合強度を有する接合部、熱伝導性および電気伝導性に優れた配線や接合部を形成することが困難となる。また、低温焼結特性に優れているという観点から、金属ナノ粒子の平均粒子径としては、1〜30nmが好ましい。
また、本発明の表面被覆金属ナノ粒子を、後述する本発明の製造方法により製造すると、粒子径が均一な金属ナノ粒子が得られる。このように粒子径が均一な金属ナノ粒子は、緻密な焼結組織を形成することが可能であり、高い接合強度を有する接合部、熱伝導性および電気伝導性に優れた配線や接合部を形成することができる。
このような金属ナノ粒子としては、Au、Pt、Pd、Ag、Rh、Ru、Cu、Bi、Pb、SnおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含有するものが好ましく、Ag、CuおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含有するものがより好ましく、安価であり、耐エレクトロマイグレーション性に優れているという観点から、Cuナノ粒子が特に好ましい。
(有機被膜)
本発明の本発明の表面被覆金属ナノ粒子において、有機被膜は炭素数3〜8の脂肪酸を含有するものである。また、炭素数3〜8の脂肪族アミンをさらに含有していてもよい。特に、金属ナノ粒子が銅ナノ粒子である場合には、有機被膜が安定して形成され、表面被覆銅ナノ粒子を安定して合成できるという観点から、前記有機被膜は、炭素数3〜8の脂肪酸と炭素数3〜8の脂肪族アミンとを含んでいることが好ましい。脂肪酸および脂肪族アミンの炭素数が前記範囲にあると、不活性ガス雰囲気での有機被膜の熱分解ピーク温度が300℃以下、好ましくは295℃以下となる。一方、脂肪酸および脂肪族アミンの炭素数が2以下になると、有機被膜が金属ナノ粒子表面に安定に存在せず、金属ナノ粒子の粒子径が増大し、不活性ガス雰囲気中、300℃以下で焼結させることが困難となる。他方、脂肪酸および脂肪族アミンの炭素数が9以上になると、不活性ガス雰囲気での有機被膜の熱分解ピーク温度が300℃を超え、さらに、脂肪酸および脂肪族アミンの炭素数が18以上になると、有機被膜の含有量が金属ナノ粒子100質量部に対して7質量部を超え、また、不活性ガス雰囲気中、350℃以下の温度での有機被膜の熱分解率が95質量%未満となる。その結果、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での接合や配線形成において、高い接合強度を有する接合部、熱伝導性および電気伝導性に優れた配線や接合部を形成することが困難となる。
前記有機被膜を構成する脂肪酸としては、炭素数が3〜8であれば、飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。また、直鎖状のものであっても分岐状のものであってもよい。このような脂肪酸としては、例えば、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸などの炭素数3〜8の飽和脂肪酸、ブテン酸(クロトン酸など)、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ソルビン酸(2,4−ヘキサジエン酸)などの炭素数3〜8の不飽和脂肪酸が挙げられる。本発明にかかる有機被膜には、これらの脂肪酸が1種単独で含まれていても2種以上含まれていてもよい。また、前記有機被膜を構成する脂肪族アミンとしては、炭素数が3〜8であれば、飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。また、1級、2級、3級のいずれのアミンであってもよい。さらに、直鎖状のものであっても分岐状のものであってもよい。このような脂肪族アミンとしては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミンなどの炭素数3〜8のアルキルアミン、アリルアミンなどの炭素数3〜8のアルケニルアミンが挙げられる。本発明にかかる有機被膜には、これらの脂肪族アミンが1種単独で含まれていても2種以上含まれていてもよい。
また、本発明の表面被覆金属ナノ粒子において、不活性ガス雰囲気での有機被膜の熱分解ピーク温度は300℃以下である。この熱分解ピーク温度が300℃を超えると、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での接合や配線形成において、高い接合強度を有する接合部、熱伝導性および電気伝導性に優れた配線や接合部を形成することが困難となる。また、より低温(好ましくは、295℃以下)での熱処理が可能となる観点から、不活性ガス雰囲気での有機被膜の熱分解ピーク温度としては、295℃以下が好ましい。なお、前記熱分解ピーク温度は、不活性ガス雰囲気下、昇温速度20℃/minで室温から500℃まで昇温して測定したDTA曲線から求めることができる。また、このような熱分解ピーク温度は、例えば、上述したように、脂肪酸および脂肪族アミンの炭素数が3〜8である有機被膜(炭素数が9以上の脂肪酸および脂肪族アミンを含有しないもの)を形成することによって達成できる。
さらに、本発明の表面被覆金属ナノ粒子において、有機被膜は、不活性ガス雰囲気中、350℃以下の温度で95質量%以上熱分解されるものである。不活性ガス雰囲気中、350℃以下の温度での有機被膜の熱分解率が95質量%未満になると、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での接合や配線形成において、有機被膜が十分に熱分解されずに接合部や配線中に残存し、高い接合強度を有する接合部、熱伝導性および電気伝導性に優れた配線や接合部を形成することが困難となる。なお、前記有機被膜の熱分解率は、不活性ガス雰囲気下、昇温速度20℃/minで室温から500℃まで昇温した場合に、有機被膜の全質量に相当する重量減少量に対する、室温から350℃までに減少した重量の割合で表されるものである。また、このような有機被膜の熱分解率は、例えば、脂肪酸の炭素数が3〜8である有機被膜を形成することによって達成できる。
また、前記有機被膜が炭素数3〜8の脂肪酸と炭素数3〜8の脂肪族アミンとを含有するものである場合、脂肪族アミンの含有量を、脂肪酸1モルに対して0.2モル以下(より好ましくは0.15モル以下、特に好ましくは0.1モル以下)にすることが好ましい。脂肪族アミンの含有量を前記範囲とすることによって、不活性ガス雰囲気中、350℃以下の温度での熱分解率が95質量%以上の有機被膜を形成することができる。なお、本発明の表面被覆金属ナノ粒子において、炭素数3〜8の脂肪族アミンは有機被膜に任意に含まれる成分であるため、脂肪族アミンの含有量の下限は特に制限されない。
本発明の表面被覆金属ナノ粒子において、前記有機被膜の含有量は、金属ナノ粒子100質量部に対して0.1〜7質量部である。有機被膜の含有量が前記下限未満になると、表面被覆金属ナノ粒子が凝集するため、不活性ガス雰囲気中、300℃以下で焼結させることが困難となり、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での接合や配線形成において、高い接合強度を有する接合部、熱伝導性および電気伝導性に優れた配線や接合部を形成することが困難となる。他方、前記上限を超えると、低温(好ましくは、300℃以下)での接合や配線形成において、熱分解時に発生するガスの量が多くなったり、有機被膜が十分に熱分解されずに接合部や配線中に残存したりするため、金属ナノ粒子の焼結が阻害され、高い接合強度を有する接合部、熱伝導性および電気伝導性に優れた配線や接合部を形成することが困難となる。表面被覆金属ナノ粒子の凝集が抑制され、熱分解時のガスの発生量や有機被膜の残存量が低減されるという観点から、有機被膜の含有量としては、0.5〜6質量部が好ましく、1〜5質量部が特に好ましい。
このように、本発明の表面被覆金属ナノ粒子は、低温(好ましくは、300℃以下)での焼結が可能な平均粒子径が1〜40nmの金属ナノ粒子と、この金属ナノ粒子の表面に配置されており、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での熱処理により容易に熱分解が可能な有機被膜とを備えるものであるため、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での焼結が可能であり、基材や金属電極、金属ナノ粒子がCuなど酸化されやすい材質や熱により劣化しやすい材質により形成されたものであっても、それらの酸化や熱劣化を引き起こすことなく、接合や配線形成を行うことができ、しかも、高い接合強度を有する接合部、熱伝導性および電気伝導性に優れた配線や接合部を形成することが可能となる。このような本発明の表面被覆金属ナノ粒子は、例えば、以下に説明する本発明の表面被覆金属ナノ粒子の製造方法により得ることができる。
<表面被覆金属ナノ粒子の製造方法>
次に、本発明の表面被覆金属ナノ粒子の製造方法について説明する。本発明の表面被覆金属ナノ粒子の製造方法は、平均粒子径が1〜40nmの金属ナノ粒子と該金属ナノ粒子表面に配置された炭素数12以上の脂肪酸を含有する第一の有機被膜とを備える表面被覆金属ナノ粒子を調製するナノ粒子調製工程と、前記第一の有機被膜を備える表面被覆金属ナノ粒子と炭素数3〜8の脂肪酸とを無極性溶媒中で混合し、前記第一の有機被膜を炭素数3〜8の脂肪酸を含有する第二の有機被膜に交換して、前記金属ナノ粒子と該金属ナノ粒子表面に配置された前記第二の有機被膜とを備える表面被覆金属ナノ粒子を得る被膜交換工程と、を含むものである。
(ナノ粒子調製工程)
本発明の表面被覆金属ナノ粒子の製造方法においては、先ず、平均粒子径が1〜40nm(好ましくは、1〜30nm)の金属ナノ粒子を調製する。このとき、金属ナノ粒子の表面を、炭素数12以上の脂肪酸を含有する第一の有機被膜で覆うことにより、金属ナノ粒子の凝集を抑制することができる。
前記金属ナノ粒子と前記第一の有機被膜とを備える表面被覆金属ナノ粒子(以下、「第一の表面被覆金属ナノ粒子」という)の調製方法としては、炭素数12以上の脂肪族アルコール系溶媒により金属塩を還元せしめる方法(以下、「第一のナノ粒子調製方法」という)、アルコール系溶媒中、炭素数12以上の脂肪酸および炭素数12以上の脂肪族アミンの共存下で、金属塩を還元せしめる方法(以下、「第二のナノ粒子調製方法」という)、が挙げられる。
(金属塩)
第一および第二のナノ粒子調製方法においては、アルコール系溶媒(第一のナノ粒子調製方法においては、炭素数12以上の脂肪族アルコール系溶媒。以下同じ)に不溶な金属塩を使用する。このような金属塩としては、炭酸塩および水酸化物が挙げられる。これらの金属塩は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
前記第一および第二のナノ粒子調製方法においては、アルコール系溶媒中で金属塩を熱分解して金属イオンを生成させるが、金属塩としてアルコール系溶媒に不溶なものを使用すると、溶媒中に存在する金属イオンは少量となる。このような系において金属イオンを還元すると、生成する粒子核は少量であり、金属ナノ粒子は徐々に生成するため、有機被膜は金属ナノ粒子の表面に形成されやすく、且つ安定に存在する。その結果、金属ナノ粒子の凝集を十分に抑制することが可能となる。また、金属塩を徐々に溶解させて金属ナノ粒子を形成するため、多量の溶媒を必要とせず、溶媒量を少なくすることができる。その結果、溶媒の温度を均一に保持することができ、粒子径が均一な大量の金属ナノ粒子を容易に製造することが可能となる。
一方、アルコール系溶媒に可溶な金属塩を使用すると、溶媒中には多くの金属イオンが生成する。このような系において金属イオンを還元すると一度に多くの金属ナノ粒子が生成する。金属ナノ粒子が多量に生成すると、その表面に有機被膜が形成される前に、粒子同士が凝集するため、粒子は粗大化して沈殿する。また、Cuのように酸化されやすい金属においては、表面に有機被膜が形成されないと、酸化されやすくなる。
第一および第二のナノ粒子調製方法において用いられる金属塩としては、Au、Pt、Pd、Ag、Rh、Ru、Cu、Bi、Pb、SnおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩が好ましく、Ag、CuおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩がより好ましく、安価であり、得られる金属ナノ粒子が耐エレクトロマイグレーション性に優れているという観点から、炭酸銅および水酸化銅が特に好ましい。
(第一のナノ粒子調製方法)
本発明にかかる第一のナノ粒子調製方法においては、炭素数12以上の脂肪族アルコール系溶媒により前記金属塩を還元せしめて金属ナノ粒子を形成させる。脂肪族アルコール系溶媒は、金属塩の還元反応における溶媒であるとともに、還元剤としても作用する。従って、本発明にかかる第一のナノ粒子調製方法においては、NaBHやNといった還元剤を添加する必要がなく、簡素化された方法で第一の表面被覆金属ナノ粒子を調製することができる。
また、前記金属塩の還元に伴い、前記脂肪族アルコール系溶媒が酸化して炭素数12以上の脂肪酸が生成する。この炭素数12以上の脂肪酸は前記金属ナノ粒子の表面において有機被膜を形成する。この炭素数12以上の脂肪酸を含有する第一の有機被膜は熱的に安定であるため、生成した金属ナノ粒子の凝集が抑制され、平均粒子径が1〜40nm(好ましくは、1〜30nm)の金属ナノ粒子を安定して得ることができる。一方、炭素数11以下の脂肪族アルコール系溶媒を用いると、脂肪族アルコール系溶媒の酸化により炭素数11以下の脂肪酸が生成し、この脂肪酸が金属ナノ粒子の表面において有機被膜を形成するが、この脂肪酸の立体障害が、金属ナノ粒子の形成時に十分に作用せず、また、炭素数11以下の脂肪酸を含有する有機被膜は熱的安定性に劣るため、金属ナノ粒子が粗大化し、平均粒子径が40nm以下の金属ナノ粒子を得ることが困難となる。また、脂肪族アルコール系溶媒の炭素数が大きくなると、得られる金属ナノ粒子の平均粒子径が小さくなるという観点から、脂肪族アルコール系溶媒の炭素数としては、14以上が好ましい。なお、脂肪族アルコール系溶媒の炭素数の上限としては特に制限はないが、後述する被膜交換が容易であるという観点から、22以下が好ましい。
第一のナノ粒子調製方法に用いられる脂肪族アルコール系溶媒としては、炭素数が12以上であれば、飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。また、直鎖状のものであっても分岐状のものであってもよい。このような脂肪族アルコール系溶媒としては、例えば、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、ドコサノールなどの炭素数12以上の飽和脂肪族アルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、エイコセノール、ドデセノール、テトラデセノール、ヘキサデセノールなどの炭素数12以上の不飽和脂肪族アルコールが挙げられる。このような脂肪族アルコール系溶媒は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、このような脂肪族アルコール系溶媒が酸化して生成する脂肪酸としては、炭素数が12以上の直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられ、具体的には、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、オレイン酸、リノレン酸、エイコセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸などが挙げられる。
前記脂肪族アルコール系溶媒中の金属塩の濃度としては、0.001〜10mol/Lが好ましく、0.01〜1mol/Lがより好ましい。金属塩の濃度が下限未満になると、金属ナノ粒子の生成量が少なくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、金属塩の熱分解に要する時間が長くなる傾向にある。
還元反応温度としては、100℃以上且つ前記脂肪族アルコール系溶媒の沸点以下の温度が好ましい。還元反応温度が前記下限未満になると、金属塩の還元反応が十分に進行せず、金属ナノ粒子が形成されない場合がある。また、還元反応時間としては特に制限はないが、本発明にかかる第一のナノ粒子調製方法によれば、2時間以内の反応時間で90%以上の高収率で大量の第一の表面被覆金属ナノ粒子を調製することができる。さらに、このような還元反応は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
(第二のナノ粒子調製方法)
本発明にかかる第二のナノ粒子調製方法においては、アルコール系溶媒中、炭素数12以上の脂肪酸および炭素数12以上の脂肪族アミンの共存下で、前記金属塩を還元せしめて金属ナノ粒子を形成させる。アルコール系溶媒は、還元反応における溶媒であるとともに、還元剤としても作用する。従って、本発明にかかる第二のナノ粒子調製方法においては、NaBHやNといった還元剤を添加する必要がなく、簡素化された方法で第一の表面被覆金属ナノ粒子を調製することができる。
また、アルコール系溶媒が還元剤として作用すると、金属塩の還元により生成した金属ナノ粒子の周囲にはアルコール系溶媒が多く存在するため、金属ナノ粒子表面に存在する脂肪族アミンが少なくなり、有機被膜中の脂肪族アミンの含有量が低減されると考えられる。一方、アルコール系溶媒を使用せずに、炭素数12以上の脂肪酸および炭素数12以上の脂肪族アミンの共存下で金属塩を還元せしめると、脂肪族アミンが還元剤として作用するため、生成した金属ナノ粒子の表面には脂肪族アミンが多く存在し、有機被膜中の脂肪族アミンの含有量が増大すると考えられる。
第二のナノ粒子調製方法に用いられるアルコール系溶媒としては、CuやNiなどの卑金属を還元するためには、沸点が200℃程度またはそれ以上の溶媒が望ましいという観点から、ポリオールが好ましく、グリコールがより好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールが特に好ましい。これらのアルコール系溶媒は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、このようなアルコール系溶媒とこれに混和可能な溶媒(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフランといったエーテル類;酢酸エチル、酢酸ベンジルといったエステル類;アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなど)とを併用してもよい。
本発明にかかる第二のナノ粒子調製方法に用いられる脂肪酸および脂肪族アミンは、ともに炭素数が12以上のものである。このような炭素数12以上の脂肪酸および炭素数12以上の脂肪族アミンは前記金属ナノ粒子の表面に配位して有機被膜を形成する。この炭素数12以上の脂肪酸および炭素数12以上の脂肪族アミンを含有する第一の有機被膜は熱的に安定であるため、生成した金属ナノ粒子の凝集が抑制され、平均粒子径が1〜40nm(好ましくは、1〜30nm)の金属ナノ粒子を安定して得ることができる。一方、脂肪酸または脂肪族アミノの炭素数が11以下になると、金属ナノ粒子の形成時に、脂肪酸および脂肪族アミンの立体障害が十分に作用せず、また、炭素数11以下の脂肪酸または炭素数11以下の脂肪族アミンの少なくとも一方を含有する有機被膜は熱的安定性に劣るため、金属ナノ粒子が粗大化し、平均粒子径が40nm以下の金属ナノ粒子を得ることが困難となる。また、脂肪酸および脂肪族アミンの炭素数が大きくなると、得られる金属ナノ粒子の平均粒子径が小さくなるという観点から、脂肪酸および脂肪族アミンの炭素数としては14以上が好ましい。なお、脂肪酸および脂肪族アミンの炭素数の上限としては特に制限はないが、後述する被膜交換が容易であるという観点から、22以下が好ましい。
第二のナノ粒子調製方法に用いられる脂肪酸としては、炭素数が12以上であれば、飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。また、直鎖状のものであっても分岐状のものであってもよい。このような脂肪酸としては、例えば、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸などの炭素数12以上の飽和脂肪酸;オレイン酸などの炭素数12以上の不飽和脂肪酸が挙げられる。このような脂肪酸は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、脂肪族アミンとしては、炭素数が12以上であれば、飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。また、直鎖状のものであっても分岐状のものであってもよい。このような脂肪族アミンとしては、例えば、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどの炭素数12以上のアルキルアミン;オレイルアミンなどの炭素数12以上のアルケニルアミンが挙げられる。このような脂肪族アミンは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
アルコール系溶媒中に存在する炭素数12以上の脂肪酸と炭素数12以上の脂肪族アミンのモル比としては特に制限はないが、脂肪酸/脂肪族アミン=75/25〜25/75が好ましく、75/25〜50/50がより好ましい。前記脂肪酸と脂肪族アミンのモル比が前記下限未満になったり前記上限を超えたりすると、有機被膜中の脂肪酸または脂肪族アミンの含有量が過剰となり、熱的に安定な有機被膜が形成されず、金属ナノ粒子が粗大化し、平均粒子径が40nm以下の金属ナノ粒子を得ることが困難となる傾向にある。
前記アルコール系溶媒中の金属塩、炭素数12以上の脂肪酸および炭素数12以上の脂肪族アミンのそれぞれの濃度としては、0.001〜10mol/Lが好ましく、0.01〜1mol/Lがより好ましい。金属塩の濃度が下限未満になると、金属ナノ粒子の生成量が少なくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、金属塩の熱分解に要する時間が長くなる傾向にある。また、前記脂肪酸または前記脂肪族アミンの濃度が前記下限未満になると、金属ナノ粒子の表面に十分な有機被膜が形成されず、金属ナノ粒子が凝集したり、Cuのように酸化されやすい金属においては酸化される傾向にあり、他方、前記上限を超えると、余分な脂肪酸や脂肪族アミンを除去するための洗浄操作が煩雑となり、実用的に好ましくない。
還元反応温度としては、100℃以上且つ前記アルコール系溶媒の沸点以下の温度が好ましい。還元反応温度が前記下限未満になると、金属塩の還元反応が十分に進行せず、金属ナノ粒子が形成されない場合がある。また、還元反応時間としては特に制限はないが、本発明にかかる第二のナノ粒子調製方法によれば、2時間以内の反応時間で90%以上の高収率で大量の第一の表面被覆金属ナノ粒子を調製することができる。さらに、このような還元反応は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
このように、本発明にかかる第一または第二のナノ粒子調製方法によって得られた第一の表面被覆金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子の表面が炭素数12以上の脂肪酸を含有する(第二のナノ粒子調製方法においては、炭素数12以上の脂肪族アミンをさらに含有する)有機被膜で覆われたものであるため、アルコール系溶媒に不溶であり、容易に沈殿するが、ヘキサン、トルエンといった親油性溶媒に対して高い分散性を示す。従って、第一の表面被覆金属ナノ粒子を含む前記脂肪族アルコール系溶媒と親油性溶媒を混合して親油性溶媒中に第一の表面被覆金属ナノ粒子を分散させ、その後、前記脂肪族アルコール系溶媒と親油性溶媒を分離することによって、容易に第一の表面被覆金属ナノ粒子を回収することができる。この方法によれば90%以上の回収率で第一の表面被覆金属ナノ粒子を得ることが可能となる。
(被膜交換工程)
次に、前記ナノ粒子調製工程で得られた、炭素数12以上の脂肪酸を含有する第一の有機被膜を備える表面被覆金属ナノ粒子(第一の表面被覆金属ナノ粒子)と炭素数3〜8の脂肪酸とを無極性溶媒中で混合し、前記第一の有機被膜を炭素数3〜8の脂肪酸を含有する第二の有機被膜に交換する。これにより、平均粒子径が1〜40nm(好ましくは1〜30nm)の金属ナノ粒子と、この金属ナノ粒子の表面に配置されている前記炭素数3〜8の脂肪酸を含有する第二の有機被膜とを備える本発明の表面被覆金属ナノ粒子を得ることができる。なお、炭素数3〜8の脂肪酸は、本発明の表面被覆金属ナノ粒子において記載したものである。
また、このような被膜交換工程においては、前記炭素数3〜8の脂肪酸に加えて炭素数3〜8の脂肪族アミンを混合してもよい。特に、前記第一の有機被膜に炭素数12以上の脂肪族アミンが含まれる場合には、炭素数3〜8の脂肪酸と炭素数3〜8の脂肪族アミンとを併用することが好ましい。これにより、前記第一の有機被膜を、炭素数3〜8の脂肪酸および炭素数3〜8の脂肪族アミンを含有する第二の有機被膜に交換することができる。これにより、炭素数3〜8の脂肪族アミンをさらに含有する第二の有機被膜を備える本発明の表面被覆金属ナノ粒子を得ることができる。なお、炭素数3〜8の脂肪族アミンは、本発明の表面被覆金属ナノ粒子において記載したものである。
このような被膜交換工程に用いられる無極性溶媒としては、ヘキサン、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロホルムなどが挙げられる。第一の表面被覆金属ナノ粒子は、このような無極性溶媒に対して高い分散性を示すため、無極性溶媒中で均一に被膜交換を行うことが可能となる。
本発明にかかる被膜交換工程において、前記無極性溶媒中の第一の表面被覆金属ナノ粒子の濃度としては、金属原子換算で0.001〜10mol/Lが好ましく、0.01〜5mol/Lがより好ましい。第一の表面被覆金属ナノ粒子の濃度が前記下限未満になると、被膜交換が十分に進行せず、金属ナノ粒子の表面に炭素数12以上の脂肪酸や炭素数12以上の脂肪族アミンを含有する有機被膜が残存するため、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での接合や配線形成において、有機被膜が十分に熱分解されずに接合部や配線中に残存する傾向にあり、高い接合強度を有する接合部、熱伝導性および電気伝導性に優れた配線や接合部を形成することが困難となる傾向にある。他方、第一の表面被覆金属ナノ粒子の濃度が前記上限を超えると、第一の表面被覆金属ナノ粒子が無極性溶媒中に分散しにくくなり、被膜交換が十分に進行せず、また、交換用の炭素数3〜8の脂肪酸や炭素数3〜8の脂肪族アミンの混合量が多くなるため、被膜交換後の余分な脂肪酸や脂肪族アミンを除去するための洗浄操作が煩雑となり、不純物として残りやすい傾向にあり、実用的に好ましくない。
また、前記炭素数3〜8の脂肪酸や前記炭素数3〜8の脂肪族アミンのそれぞれの混合量としては、第一の表面被覆金属ナノ粒子を構成する金属原子1モルに対して、3〜100モルが好ましく、3〜20モルがより好ましい。前記脂肪酸や前記脂肪族アミンの混合量が前記下限未満になると、被膜交換が十分に進行せず、金属ナノ粒子の表面に炭素数12以上の脂肪酸や炭素数12以上の脂肪族アミンを含有する有機被膜が残存するため、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での接合や配線形成において、有機被膜が十分に熱分解されずに接合部や配線中に残存する傾向にあり、高い接合強度を有する接合部、熱伝導性および電気伝導性に優れた配線や接合部を形成することが困難となる傾向にある。他方、前記脂肪酸や前記脂肪族アミンの混合量が前記上限を超えると、有機被膜の含有量が多くなりすぎ、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での接合や配線形成において、有機被膜が十分に熱分解されずに接合部や配線中に残存する傾向にあり、高い接合強度を有する接合部、熱伝導性および電気伝導性に優れた配線や接合部を形成することが困難となる傾向にある。また、被膜交換後の余分な脂肪酸や脂肪族アミンを除去するための洗浄操作が煩雑となり、実用的に好ましくない。
本発明にかかる被膜交換工程において、無極性溶媒中の炭素数3〜8の脂肪酸と炭素数3〜8の脂肪族アミンとを併用する場合、これらのモル比としては特に制限はないが、脂肪酸/脂肪族アミン=75/25〜25/75が好ましく、75/25〜50/50がより好ましい。無極性溶媒中の前記脂肪酸と前記脂肪族アミンとのモル比をこのような範囲とすることによって、炭素数3〜8の脂肪酸と炭素数3〜8の脂肪族アミンとを上述したモル比で含有する有機被膜に交換することができる。
被膜交換反応温度としては室温以上100℃以下が好ましい。室温未満の温度では被膜交換反応が十分に進行せず、金属ナノ粒子の表面に炭素数12以上の脂肪酸や炭素数12以上の脂肪族アミンを含有する有機被膜が残存するため、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での接合や配線形成において、有機被膜が十分に熱分解されずに接合部や配線中に残存する傾向にあり、高い接合強度を有する接合部、熱伝導性および電気伝導性に優れた配線や接合部を形成することが困難となる傾向にある。他方、100℃を超える温度では、金属ナノ粒子が凝集しやすく、不活性ガス雰囲気中、300℃以下で焼結させることが困難となり、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での接合や配線形成において、高い接合強度を有する接合部、熱伝導性および電気伝導性に優れた配線や接合部を形成することが困難となる傾向にある。
また、被膜交換反応時間としては特に制限はないが、本発明の表面被覆金属ナノ粒子の製造方法によれば、2時間以内の被膜交換反応時間で90%以上の高収率で大量の本発明の表面被覆金属ナノ粒子を製造することが可能である。さらに、このような被膜交換反応は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
図1は、炭素数12以上の脂肪族アルコール系溶媒としてオレイルアルコール(C1835OH)を用い、金属塩として炭酸銀(AgCO)を用いて、オレイン酸(C1735COOH)で被覆された銀ナノ粒子を調製する場合を例として、本発明にかかる第一のナノ粒子調製工程を示す模式図であり、得られる銀ナノ粒子の平均粒子径は1〜40nmとなる。
図2は、第一の有機被膜を備える表面被覆金属ナノ粒子としてオレイン酸(C1735COOH)で被覆された銀ナノ粒子を用い、炭素数3〜8の脂肪酸としてオクタン酸(C15COOH)を用いて被膜交換する場合を例として、本発明にかかる被膜交換工程を示す模式図である。
一方、図3は、脂肪族アルコール系溶媒としてオクタノール(C17OH)を用いて、オクタン酸(C15COOH)で被覆された銀ナノ粒子を調製する方法を示す模式図であり、得られる銀ナノ粒子の平均粒子径は40nmを超えるものとなる。
また、図4は、炭素数12以上の脂肪酸としてオレイン酸(C1735COOH)を用い、炭素数12以上の脂肪族アミンとしてオレイルアミン(C1835NH)を、金属塩として炭酸銅(CuCO)を用いて、オレイン酸およびオレイルアミンで被覆されたCuナノ粒子を調製する場合を例として、本発明にかかる第二のナノ粒子調製工程を示す模式図であり、得られる銀ナノ粒子の平均粒子径は1〜40nmとなる。
図5は、第一の有機被膜を備える表面被覆金属ナノ粒子としてオレイン酸(C1735COOH)およびオレイルアミン(C1835NH)で被覆された銀ナノ粒子を用い、炭素数3〜8の脂肪酸としてオクタン酸(C15COOH)を用い、炭素数3〜8の脂肪族アミンとしてオクチルアミン(C17NH)を用いて被膜交換する場合を例として、本発明にかかる被膜交換工程を示す模式図である。
一方、図6は、脂肪酸としてオクタン酸(C15COOH)を用い、脂肪族アミンとしてオクチルアミン(C17NH)を用いて、オクタン酸およびオクチルアミンで被覆されたCuナノ粒子を調製する方法を示す模式図であり、得られる銀ナノ粒子の平均粒子径は40nmを超えるものとなる。
なお、本発明にかかるナノ粒子調製工程および被膜交換工程は、図1および4、図2および5に限定されるものではない。
このように、被膜調製工程で得られた本発明の表面被覆金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子の表面が炭素数3〜8の脂肪酸を含有する(必要に応じて、炭素数3〜8の脂肪族アミンをさらに含有する)有機被膜で覆われたものであるため、前記無極性溶媒に難溶であり、容易に沈殿するが、アルコール系溶媒に対して高い分散性を示す。従って、本発明の表面被覆金属ナノ粒子を含む無極性溶媒とアルコール系溶媒を混合してアルコール系溶媒中に本発明の表面被覆金属ナノ粒子を分散させ、その後、前記無極性溶媒とアルコール系溶媒を分離することによって、容易に本発明の表面被覆金属ナノ粒子を回収することができる。この方法によれば90%以上の回収率で本発明の表面被覆金属ナノ粒子を得ることが可能となる。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(比較例1)
容量500mlのフラスコにオレイルアルコール(C1835OH)350mlを入れ、これに炭酸銀(AgCO)72mmolを添加したところ、炭酸銀はオレイルアルコールにほとんど溶解せずに沈殿した。これに窒素ガスを1L/minで流しながら、140℃で80分間加熱還流させたところ、微粒子が生成した。この微粒子を含む分散液を氷水で室温まで冷却した後、微粒子を回収した。
この微粒子をヘキサン200ml中に分散させ、さらにエタノール800mlを添加して、残存するオレイルアルコールなどを除去した。その後、遠心分離(3000rpm、20min)を施して微粒子を回収した。この一連の操作を2回以上繰り返して微粒子を十分に洗浄した後、真空乾燥(50℃、30min)を施し、オレイン酸を含有する有機被膜を備える微粒子を得た。
(実施例1)
比較例1と同様にして、オレイン酸を含有する第一の有機被膜を備える微粒子を調製した。この第一の有機被膜を備える微粒子2g、トルエン200mlおよびオクタン酸(C15COOH)185mmolを容量300mlのフラスコに入れ、窒素ガスを1L/minで流しながら、60℃で60分間加熱還流させて被膜交換を行なった。得られた分散液を氷水で室温まで冷却した後、微粒子を回収した。
この微粒子をヘキサン100ml中に分散させ、さらにエタノール400mlを添加して、第一の有機被膜成分や残存するトルエンなどを除去した。その後、遠心分離(3000rpm、10min)を施して微粒子を回収した。この一連の操作を2回以上繰り返して微粒子を十分に洗浄した後、真空乾燥(50℃、30min)を施し、オクタン酸を含有する第二の有機被膜を備える微粒子を得た。
(実施例2)
オクタン酸の代わりにヘキサン酸(C11COOH)185mmolを用いた以外は実施例1と同様に被膜交換を行い、ヘキサン酸を含有する第二の有機被膜を備える微粒子を得た。
(比較例2)
オレイルアルコールの代わりにオクタノール(C17OH)350mlを用い、加熱還流時間を30分間に変更した以外は比較例1と同様にして、オクタン酸を含有する有機被膜を備える微粒子を得た。
(比較例3)
オレイルアルコールの代わりにヘキサノール(C13OH)350mlを用い、加熱還流時間を25分間に変更した以外は比較例1と同様にして、ヘキサン酸を含有する有機被膜を備える微粒子を得た。
(比較例4)
オレイルアルコールの代わりにドデカノール(C1225OH)350mlを用い、加熱還流時間を100分間に変更した以外は比較例1と同様にして、ドデカン酸を含有する有機被膜を備える微粒子を得た。
(実施例3)
比較例4と同様にして、ドデカン酸を含有する第一の有機被膜を備える微粒子を調製した。オレイン酸を含有する第一の有機被膜を備える微粒子の代わりに前記ドデカン酸を含有する第一の有機被膜を備える微粒子2gを用いた以外は実施例1と同様に被膜交換を行い、オクタン酸を含有する第二の有機被膜を備える微粒子を得た。
(実施例4)
オクタン酸の代わりにヘキサン酸(C11COOH)185mmolを用いた以外は実施例3と同様に被膜交換を行い、ヘキサン酸を含有する第二の有機被膜を備える微粒子を得た。
(実施例5)
オクタン酸の代わりに酪酸(CCOOH、n−ブタン酸)185mmolを用いた以外は実施例3と同様に被膜交換を行い、酪酸を含有する第二の有機被膜を備える微粒子を得た。
(実施例6)
オクタン酸の代わりにプロピオン酸(CCOOH)185mmolを用いた以外は実施例3と同様に被膜交換を行い、プロピオン酸を含有する第二の有機被膜を備える微粒子を得た。
(比較例5)
オクタン酸の代わりに酢酸(CHCOOH)185mmolを用いた以外は実施例3と同様に被膜交換を行い、酢酸を含有する有機被膜を備える微粒子を得た。
(比較例6)
容量500mlのフラスコにエチレングリコール(HO(CHOH)300mlを入れ、これに炭酸銀(AgCO)30mmolを添加したところ、炭酸銀はエチレングリコールにほとんど溶解せずに沈殿した。これに、オレイン酸(C1733COOH)30mmol(50mol%)およびオレイルアミン(C1835NH)30mmol(50mol%)を添加した後、窒素ガスを1L/minで流しながら、198℃で60分間加熱還流させたところ、微粒子が生成した。この微粒子を含む分散液を氷水で室温まで冷却した後、微粒子を回収した。
この微粒子をヘキサン200ml中に分散させ、さらにエタノール800mlを添加して、残存するエチレングリコールなどを除去した。その後、遠心分離(3000rpm、20min)を施して微粒子を回収した。この一連の操作を2回以上繰り返して微粒子を十分に洗浄した後、真空乾燥(50℃、30min)を施し、オレイン酸およびオレイルアミンを含有する有機被膜を備える微粒子を得た。
(実施例7)
比較例6と同様にして、オレイン酸およびオレイルアミンを含有する第一の有機被膜を備える微粒子を調製した。この第一の有機被膜を備える微粒子3g、トルエン200ml、ヘキサン酸(C11COOH)139mmol(50mol%)およびヘキシルアミン(C13NH)139mmol(50mol%)を容量300mlのフラスコに入れ、窒素ガスを1L/minで流しながら、60℃で60分間加熱還流させて被膜交換を行なった。得られた分散液を氷水で室温まで冷却した後、微粒子を回収した。
この微粒子をヘキサン100ml中に分散させ、さらにエタノール400mlを添加して、第一の有機被膜成分や残存するトルエンなどを除去した。その後、遠心分離(3000rpm、10min)を施して微粒子を回収した。この一連の操作を2回以上繰り返して微粒子を十分に洗浄した後、真空乾燥(50℃、30min)を施し、ヘキサン酸およびヘキシルアミンを含有する第二の有機被膜を備える微粒子を得た。
(実施例8)
炭酸銀の量を60mmolに、オレイン酸の量を90mmol(75mol%)に、オレイルアミンの量を30mmol(25mol%)に変更した以外は比較例6と同様にして、オレイン酸およびオレイルアミンを含有する第一の有機被膜を備える微粒子を調製した。この第一の有機被膜を備える微粒子2gを用い、ヘキサン酸の代わりにプロピオン酸139mmol(75mol%)を、ヘキシルアミンの代わりにプロピルアミン46.4(25mol%)を用いた以外は実施例7と同様に被膜交換を行い、プロピオン酸およびプロピルアミンを含有する第二の有機被膜を備える微粒子を得た。
(比較例7)
フラスコに炭酸銀(AgCO)23.2mmolおよびドデシルアミン(C1225NH)42.7mmolを入れ、これにオクタン酸(C15COOH)46.7mmolを添加して、窒素雰囲気下、150℃で5時間加熱したところ、微粒子が生成した。この微粒子を含む分散液を70℃まで冷却した後、メタノールを添加して洗浄し、ろ過により微粒子を回収した。その後、真空乾燥(50℃、30min)を施し、有機被膜を有する微粒子を得た。
(比較例8)
炭酸銀の代わりに炭酸銅(CuCO・Cu(OH)・HO)30mmolを用い、オレイン酸の量を45mmol(75mol%)に、オレイルアミンの量を15mmol(25mol%)に変更し、加熱還流時間を10分間に変更した以外は比較例6と同様にして、オレイン酸およびオレイルアミンを含有する有機被膜を備える微粒子を得た。
(実施例9)
比較例8と同様にして、オレイン酸およびオレイルアミンを含有する第一の有機被膜を備える微粒子を調製した。この第一の有機被膜を備える微粒子1gを用い、ヘキサン酸の量を118mmol(75mol%)に、ヘキシルアミンの量を39.4mmol(25mol%)に変更した以外は実施例7と同様に被膜交換を行い、ヘキサン酸およびヘキシルアミンを含有する第二の有機被膜を備える微粒子を得た。
(実施例10)
ヘキサン酸の量を39.4(25mol%)に、ヘキシルアミンの量を118mmol(75mol%)に変更した以外は実施例9と同様に被膜交換を行い、ヘキサン酸およびヘキシルアミンを含有する第二の有機被膜を備える微粒子を得た。
(実施例11)
ヘキサン酸の代わりにプロピオン酸(CCOOH)118mmol(75mol%)を、ヘキシルアミンの代わりにプロピルアミン39.4(25mol%)を用いた以外は実施例9と同様に被膜交換を行い、プロピオン酸およびプロピルアミンを含有する第二の有機被膜を備える微粒子を得た。
(比較例9)
オレイン酸の代わりにオクタン酸(C15COOH)30mmol(50mol%)を、オレイルアミンの代わりにオクチルアミン(C17NH)30mmol(50mol%)を用い、加熱還流時間を60分間に変更した以外は比較例8と同様にして、オクタン酸およびオクチルアミンを含有する有機被膜を備える微粒子を得た。
<金属成分の同定および金属ナノ粒子の平均粒子径測定>
得られた微粒子について、X線回折装置((株)リガク製「試料水平型強力X線回折装置RINT−TTR」)を用い、X線源:CuKα線(λ=0.15418nm)、加速電圧:50kV、加速電流:300mAの条件で粉末X線回折(XRD)測定を行なった。得られたXRDスペクトルを図7〜13に示す。
これらのXRDスペクトルから金属成分を同定した。また、XRDスペクトルの最強ピーク(Ag(111)またはCu(111)に相当するピーク)の半値幅からシェラーの式を用いて、得られた微粒子中の金属ナノ粒子の平均粒子径を求めた。これらの結果を表1〜4に示す。
<電子顕微鏡観察>
得られた微粒子をトルエンに分散させ、この分散液をエラスチックカーボン支持膜(高分子材料膜(15〜20nm厚)+カーボン膜(20〜25nm厚))付きCuマイクログリッド(応研商事(株)製)上に滴下した後、自然乾燥させて観察用試料を作製した。この観察用試料を、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子(株)製「JEM−2000EX」)を用いて加速電圧200kVで観察した。図14〜19には、実施例1〜2、比較例1〜3および比較例7で得られた微粒子のTEM写真を示す。
<有機被膜成分の分析>
得られた微粒子中の有機被膜をマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI−MS法)により分析した。先ず、微粒子を20mg/mlの濃度でヘキサンに分散させ、この分散液1μlを、マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析計(ブルカー・ダルトニクス(株)製「autoflex」)のターゲットプレート上に滴下した。有機マトリックスを使用せずに、試料にNガスレーザー(波長:337nm)を照射して有機被膜成分の分析を行なった。
得られたMALDI−MSスペクトルから、有機被膜の成分を同定した。その結果を表1〜4に示す。また、図20〜22には、実施例1〜6、比較例1および4で得られた微粒子のMALDI−MSスペクトルを示す。
<熱分解特性>
得られた微粒子50mgをアルミニウム製パン((株)リガク製、No.8579)に入れ、示差熱・熱重量同時測定装置(TG−DTA、(株)リガク製)を用いて、100ml/minのアルゴン流通下、昇温速度20℃/minで室温から500℃まで昇温してTG−DTA測定を行なった。その結果を図23〜42に示す。
得られたDTA曲線から、アルゴンガス雰囲気中での有機被膜の熱分解ピーク温度を求めた。また、TG曲線において、500℃まで昇温する間に減少した質量を求め、これを微粒子中の有機被膜の全質量とみなして微粒子中の金属ナノ粒子100質量部に対する有機被膜の含有量(A)を求めた。さらに、TG曲線において、350℃まで昇温する間に減少した質量(350℃以下での有機被膜の分解量)を求め、微粒子中の金属ナノ粒子100質量部に対する値(B)に換算した。得られたA値およびB値から、350℃以下の温度で熱分解される有機被膜の割合(B/A(質量%))を求めた。これらの結果を表1〜4に示す。
<接合強度測定>
得られた微粒子0.4gにオクタノール0.07g添加し、自転・公転方式真空ミキサー((株)シンキー製「ARV−200AJ」)を用いて2000rpmで100秒間撹拌して金属ナノ粒子ペーストを作製した。この金属ナノ粒子ペーストを銅板(22mm×10mm、厚さ3mm)の表面にメタルマスクを用いて直径5mmの領域に厚さ0.15mmで塗布した。このペースト膜の上に銅円板(直径5mm、厚さ2mm)を配置した後、窒素雰囲気中で、銅円板の上部から5MPaで加圧しながら、120℃で3分間保持した後、さらに300℃で3分間保持して銅板と銅円板とを接合し、接合試験片を作製した。この接合試験片は、各金属ナノ粒子ペーストについて、それぞれ3個ずつ作製した。なお、前記銅板および銅円板としては、予め、リン酸250mlと硫酸10mlの混合溶液中で2Vの電圧を5分間印加して電界研磨処理を施して表面酸化膜を除去した後、蒸留水で洗浄したものを用いた。
得られた接合試験片の接合強度をJIS Z3198−5「鉛フリーはんだ試験方法−第5部:はんだ継手の引張及びせん断試験方法」に準拠して以下の方法により測定した。すなわち、前記接合試験片の銅円板の側面に室温で銅板表面と平行な方向の荷重を剪断速度1mm/minで加え、破断時の最大荷重を測定した。この最大荷重を接合面積(直径5mm)で除し、接合強度(せん断強度)を求めた。各金属ナノ粒子ペーストについて、3個の試験片の接合強度を測定し、その平均値を求めた。その結果を表1〜4に示す。
図7〜8および表1〜2に示した結果から明らかなように、オレイルアルコールまたはドデカノールなどの炭素数12以上の脂肪族アルコール系溶媒を用いて炭酸銀または炭酸銅などの金属塩を還元せしめることによって、AgまたはCuなどの金属を主成分とし、平均粒子径が1〜40nmの金属ナノ粒子が得られた(比較例1および4)。特に、脂肪族アルコール系溶媒の炭素数が大きくなる、金属ナノ粒子の平均粒子径が小さくなることがわかった。また、XRDのピーク解析により求めた平均粒子径を有する金属ナノ粒子が形成していることを電子顕微鏡観察により確認した(図16参照)。さらに、図20〜21および表1〜2に示した結果から明らかなように、前記金属ナノ粒子の表面にはオレイン酸またはドデカン酸などの炭素数12以上の脂肪酸を含有する有機被膜が形成されていることが確認された(比較例1および4)。
一方、図20〜22および表1〜2に示した結果から明らかなように、比較例1または4と同様にして調製した、オレイン酸またはドデカン酸などの炭素数12以上の脂肪酸を含有する第一の有機被膜が表面に配置している金属ナノ粒子を、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸またはオクタン酸などの炭素数3〜8の脂肪酸で処理することによって、前記第一の有機被膜が前記炭素数3〜8の脂肪酸を含有する第二の有機被膜に交換されることが確認された(実施例1〜6)。また、図7〜8および表1〜2に示した結果から明らかなように、前記第二の有機被膜を備える表面被覆金属ナノ粒子は、AgまたはCuなどの金属を主成分とするものであり、その平均粒子径は1〜40nmであった(実施例1〜6)。特に、実施例1〜2と比較例1、実施例3〜6と比較例4とを対比すると、被膜交換の前後において金属ナノ粒子の平均粒子径はほとんど変化しておらず、被膜交換処理を行なっても金属ナノ粒子の粒子径は維持されることが確認された。なお、これらの実施例においても、XRDのピーク解析により求めた平均粒子径を有する金属ナノ粒子が形成していることを電子顕微鏡観察により確認した(図14〜15参照)。
これに対して、図7、図17〜18および表1に示した結果から明らかなように、オクタノールまたはヘキサノールなどの炭素数11以下の脂肪族アルコール系溶媒を用いて炭酸銀などの金属塩を還元せしめた場合(比較例2〜3)には、Agなどの金属を主成分とし、オクタン酸またはヘキサン酸などの炭素数11以下の脂肪酸を含有する有機被膜が表面に配置している金属ナノ粒子は得られるものの、その平均粒子径は40nmを超えるものであった。
また、図8および表2に示した結果から明らかなように、比較例4と同様にして調製した、ドデカン酸などの炭素数12以上の脂肪酸を含有する第一の有機被膜が表面に配置している金属ナノ粒子を、酢酸などの炭素数2以下の脂肪酸で処理した場合(比較例5)には、前記第一の有機被膜が前記炭素数2以下の脂肪酸を含有する有機被膜に交換されるものの、その平均粒子径は79.7nmと非常に大きいものであった。
さらに、表1〜2に示した結果から明らかなように、実施例1〜6で得られた表面被覆金属ナノ粒子においては、不活性ガス雰囲気中での有機被膜の熱分解ピーク温度は300℃以下であり、有機被膜の含有量は金属ナノ粒子100質量部に対して0.1〜7質量部であり、不活性ガス雰囲気中、350℃以下の温度で熱分解される有機被膜の量は有機被膜の全質量の95%以上であった。
このような特性を有する有機被膜と平均粒子径が1〜40nmである金属ナノ粒子とを特定の割合で備える本発明の表面被覆金属ナノ粒子を用いて銅板と銅円板とを、不活性ガス雰囲気下、300℃で接合したところ、表1〜2に示した結果から明らかなように、30MPa以上の高い接合強度が得られた(実施例1〜6)。これは、本発明の表面被覆金属ナノ粒子においては、不活性ガス雰囲気下、300℃の接合温度で金属ナノ粒子が焼結するとともに、有機被膜が95質量%以上熱分解されるため、接合部分に金属ナノ粒子以外の成分が残存しにくいためと推察される。
一方、有機被膜中の脂肪酸の炭素数が12以上の場合(比較例1および4)には、不活性ガス雰囲気中での有機被膜の熱分解ピーク温度が300℃を超え、さらに脂肪酸の炭素数が18の場合(比較例1)には、有機被膜の含有量が金属ナノ粒子100質量部に対して7質量部を超え、不活性ガス雰囲気中、350℃以下の温度で熱分解される有機被膜の量が有機被膜の全質量の95%未満であった。
表1〜2に示した結果から明らかなように、このような特性(特に、熱分解特性)を有する有機被膜を備える表面被覆金属ナノ粒子を銅板と銅円板との接合に用いた場合(比較例1および4)には、30MPa以上の高い接合強度は得られなかった。これは、不活性ガス雰囲気下、300℃の接合温度での有機被膜の熱分解量が少ないため、接合部分に金属ナノ粒子以外の成分が残存しているためと推察される。
また、有機被膜が本発明にかかる特性を有するものであっても金属ナノ粒子の平均粒子径が40nmを超える場合(比較例2〜3および5)においては、30MPa以上の高い接合強度は得られなかった。これは、平均粒子径が40nmを超える金属ナノ粒子が、不活性ガス雰囲気下、300℃の接合温度で焼結しにくいためと推察される。
図9および12および表3〜4に示した結果から明らかなように、エチレングリコールなどのグリコール中、オレイン酸などの炭素数12以上の脂肪酸およびオレイルアミンなどの炭素数12以上の脂肪族アミンの共存下で、炭酸銀または炭酸銅などの金属塩を還元せしめることによって、AgまたはCuなどの金属を主成分とし、平均粒子径が1〜40nmの金属ナノ粒子が得られた(比較例6および8)。また、表3〜4に示した結果から明らかなように、前記金属ナノ粒子の表面にはオレイン酸などの炭素数12以上の脂肪酸およびオレイルアミンなどの炭素数12以上の脂肪族アミンを含有する有機被膜が形成されていることが確認された(比較例6および8)。
一方、表3〜4に示した結果から明らかなように、比較例6または8と同様にして調製した、オレイン酸などの炭素数12以上の脂肪酸およびオレイルアミンなどの炭素数12以上の脂肪族アミンを含有する第一の有機被膜を備える金属ナノ粒子を、プロピオン酸またはヘキサン酸などの炭素数3〜8の脂肪酸およびプロピルアミンまたはヘキシルアミンなどの炭素数3〜8の脂肪族アミンで処理することによって、前記第一の有機被膜が前記炭素数3〜8の脂肪酸および前記炭素数3〜8の脂肪族アミンを含有する第二の有機被膜に交換されることが確認された(実施例7〜11)。また、図9〜10、図12および表1〜2に示した結果から明らかなように、前記第二の有機被膜を備える金属ナノ粒子は、AgまたはCuなどの金属を主成分とするものであり、その平均粒子径は1〜40nmであった(実施例7〜11)。特に、実施例7と比較例6、実施例9〜11と比較例8とを対比すると、被膜交換の前後において金属ナノ粒子の平均粒子径はほとんど変化しておらず、被膜交換処理を行なっても金属ナノ粒子の粒子径は維持されることが確認された。
これに対して、図13および表4に示した結果から明らかなように、エチレングリコールなどのグリコール中、オクタン酸などの炭素数11以下の脂肪酸およびオクチルアミンなどの炭素数11以下の脂肪族アミンの共存下で、炭酸銅などの金属塩を還元せしめた場合(比較例9)には、Cuなどの金属を主成分とし、前記炭素数11以下の脂肪酸および前記炭素数11以下の脂肪族アミンを含有する有機被膜を表面に備えている金属ナノ粒子は得られるものの、その平均粒子径は71.5nmと非常に大きいものであった。
なお、図11、図19および表3に示した結果から明らかなように、国際公開第2004/012884号公報に記載の方法に従って、アルコール系溶媒を使用せずに、脂肪酸と脂肪族アミンの共存下で炭酸銀を還元させた場合(比較例7)には、Agを主成分とし、平均粒子径が約30nmの金属ナノ粒子が形成されることがわかった。また、前記金属ナノ粒子の表面には前記脂肪酸および前記脂肪族アミンを含有する有機被膜が形成されていることも確認された。
また、表3〜4に示した結果から明らかなように、実施例7〜11で得られた表面被覆金属ナノ粒子においては、不活性ガス雰囲気での有機被膜の熱分解ピーク温度は300℃以下であり、有機被膜の含有量は金属ナノ粒子100質量部に対して0.1〜7質量部であり、不活性ガス雰囲気中、350℃以下の温度で熱分解される有機被膜の量は有機被膜の全質量の95%以上であった。
このような特性を有する有機被膜と平均粒子径が1〜40nmである金属ナノ粒子とを特定の割合で備える本発明の表面被覆金属ナノ粒子を用いて銅板と銅円板とを、不活性ガス雰囲気下、300℃で接合したところ、表3〜4に示した結果から明らかなように、30MPa以上の高い接合強度が得られた(実施例7〜11)。これは、本発明の表面被覆金属ナノ粒子においては、不活性ガス雰囲気下、300℃の接合温度で有機被膜が95質量%以上熱分解されるため、接合部分に金属ナノ粒子以外の成分が残存しにくいためと推察される。
一方、有機被膜がオレイン酸およびオレイルアミン(ともに炭素数18)を含有するものである場合(比較例6および8)には、不活性ガス雰囲気での有機被膜の熱分解ピーク温度が300℃を超え、有機被膜の含有量が金属ナノ粒子100質量部に対して7質量部を超え、不活性ガス雰囲気中、350℃以下の温度で熱分解される有機被膜の量が有機被膜の全質量の95%未満であった。また、有機被膜がドデシルアミンを含有するものである場合(比較例7)には、不活性ガス雰囲気中、350℃以下の温度で熱分解される有機被膜の量が有機被膜の全質量の90%未満であった。さらに、比較例9においては、有機被膜中の脂肪酸および脂肪族アミンの炭素数が8であるものの、不活性ガス雰囲気中、350℃以下の温度で熱分解される有機被膜の量が有機被膜の全質量の85%未満であった。これは、比較的熱分解されにくいドデシルアミンやオクチルアミンが有機被膜に多く含まれているためと推察される。
表3〜4に示した結果から明らかなように、このような特性(特に、熱分解特性)を有する有機被膜を備える表面被覆金属ナノ粒子を銅板と銅円板との接合に用いた場合(比較例6〜9)や金属ナノ粒子の平均粒子径が40nmを超える場合(比較例9)には、30MPa以上の高い接合強度は得られなかった。これは、不活性ガス雰囲気下、300℃の接合温度での有機被膜の熱分解量が少ないため、接合部分に金属ナノ粒子以外の成分が残存しているためと推察される。また、比較例9においては、平均粒子径が40nmを超える金属ナノ粒子が、不活性ガス雰囲気下、300℃の接合温度で焼結しにくいことも原因であると推察される。
以上説明したように、本発明によれば、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での熱処理により焼結可能な金属ナノ粒子と、前記熱処理により容易に熱分解される有機被膜とを備える表面被覆金属ナノ粒子を得ることが可能となる。
したがって、本発明の表面被覆金属ナノ粒子は、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での焼結が可能であるとともに有機被膜の残存量が少なく、不活性ガス雰囲気中、低温(好ましくは、300℃以下)での接合や配線形成において高い接合強度や電気伝導性を達成できることから、半導体素子の電極接合や半導体素子を備える微細配線の形成などにおいて低温での接合や配線形成が可能な材料として有用である。

Claims (10)

  1. 平均粒子径が1〜40nmの金属ナノ粒子と、該金属ナノ粒子表面に配置された有機被膜とを備えており、
    前記有機被膜の含有量は金属ナノ粒子100質量部に対して0.1〜7質量部であり、
    前記有機被膜は、炭素数3〜8の脂肪酸を含有し、不活性ガス雰囲気中での熱分解ピーク温度が300℃以下であり、不活性ガス雰囲気中、350℃以下の温度で95質量%以上熱分解されるものであることを特徴とする表面被覆金属ナノ粒子。
  2. 前記金属ナノ粒子が、Au、Pt、Pd、Ag、Rh、Ru、Cu、Bi、Pb、SnおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆金属ナノ粒子。
  3. 前記有機被膜が炭素数3〜8の脂肪族アミンをさらに含有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆金属ナノ粒子。
  4. 平均粒子径が1〜40nmの金属ナノ粒子と該金属ナノ粒子表面に配置された炭素数12以上の脂肪酸を含有する第一の有機被膜とを備える表面被覆金属ナノ粒子を調製するナノ粒子調製工程と、
    前記第一の有機被膜を備える表面被覆金属ナノ粒子と炭素数3〜8の脂肪酸とを無極性溶媒中で混合し、前記第一の有機被膜を炭素数3〜8の脂肪酸を含有する第二の有機被膜に交換して、前記金属ナノ粒子と該金属ナノ粒子表面に配置された前記第二の有機被膜とを備える表面被覆金属ナノ粒子を得る被膜交換工程と、
    を含むことを特徴とする表面被覆金属ナノ粒子の製造方法。
  5. 前記被膜交換工程において、炭素数3〜8の脂肪族アミンをさらに混合し、前記第一の有機被膜を炭素数3〜8の脂肪酸および炭素数3〜8の脂肪族アミンを含有する第二の有機被膜に交換して、前記金属ナノ粒子と該金属ナノ粒子表面に配置された前記第二の有機被膜とを備える表面被覆金属ナノ粒子を得ることを特徴とする請求項4に記載の表面被覆金属ナノ粒子の製造方法。
  6. 前記第一の有機被膜が炭素数12以上の脂肪族アミンをさらに含有するものであることを特徴とする請求項5に記載の表面被覆金属ナノ粒子の製造方法。
  7. 前記ナノ粒子調製工程において、炭素数12以上の脂肪族アルコール系溶媒を用いて前記脂肪族アルコール系溶媒に不溶な金属塩を還元せしめることにより該金属のナノ粒子を形成させ、且つ該金属ナノ粒子の表面に、前記脂肪族アルコール系溶媒が酸化して生成する炭素数12以上の脂肪酸を含有する第一の有機被膜を形成させることを特徴とする請求項4または5に記載の表面被覆金属ナノ粒子の製造方法。
  8. 前記ナノ粒子調製工程において、アルコール系溶媒中、炭素数12以上の脂肪酸および炭素数12以上の脂肪族アミンの共存下で、前記アルコール系溶媒に不溶な金属塩を還元せしめることにより、該金属のナノ粒子を形成させ、且つ該金属ナノ粒子の表面に、前記炭素数12以上の脂肪酸および前記炭素数12以上の脂肪族アミンを含有する第一の有機被膜を形成させることを特徴とする請求項6に記載の表面被覆金属ナノ粒子の製造方法。
  9. 前記アルコール系溶媒がポリオールであることを特徴とする請求項8に記載の表面被覆金属ナノ粒子の製造方法。
  10. 前記金属塩が該金属の炭酸塩および水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項7〜9のうちのいずれか一項に記載の表面被覆金属ナノ粒子の製造方法。
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