「第1実施形態」
本発明の第1実施形態に係る緩衝器を図1〜図3を参照して以下に説明する。
図1に示す第1実施形態に係る緩衝器11は、作動流体として油液が用いられる油圧緩衝器であり、具体的には、自動車等の車両のサスペンション装置に用いられるものである。緩衝器11は、作動流体が封入される円筒状のシリンダ12と、シリンダ12の中心軸線上に配置されるとともに軸方向の一端(図1の下端)がシリンダ12の内部に挿入され図示略の軸方向の他端がシリンダ12の外部へ延出されるピストンロッド13と、このピストンロッド13におけるシリンダ12の内部側の一端部に連結されシリンダ12内に摺動可能に嵌装されてシリンダ12内を二つの室14,15に区画するピストン16とを有している。なお、本発明は、作動流体として気体を用いる緩衝器にも適用可能である。
ピストンロッド13は、円柱状の主軸部21と、シリンダ12に挿入される側の端部の、主軸部21よりも小径の略円柱状の取付軸部22とを有している。この取付軸部22は、主軸部21とは反対側の端部の外周部にオネジ23が形成されており、このオネジ23と主軸部21との間が柱状部24となっている。柱状部24は、円柱をその外周面の一側から中心軸より手前までの範囲で平面状に切り欠いた形状をなしており、よって、径方向の一側に軸方向に平行な平面状の切欠部25が形成された形状をなしている。
取付軸部22には、軸方向の主軸部21側から順に、いずれも円環状をなす、挟持ベース31、スペーサ32、積層ディスク33、バルブベース34、積層ディスク35、通路形成部材36、スペーサ37、規制部材38、スペーサ39、積層ディスク40、上記ピストン16、積層ディスク45、スペーサ46、規制部材47、スペーサ48、通路形成部材49、積層ディスク50、バルブベース51、積層ディスク52、スペーサ53および挟持ベース54が、それぞれの内周側に柱状部24を挿入させた状態で設けられている。そして、この挿入状態で、挟持ベース54から突出するオネジ23にナット56が螺合されている。これにより、挟持ベース31から挟持ベース54までの部材を主軸部21の取付軸部22側の端面とナット56とが挟持して軸方向に締結する。
ピストン16は、ピストンロッド13に連結されてこれと一体的に移動する。ピストン16は、円環状をなしてその内周側にピストンロッド13の取付軸部22を挿通させるピストン本体61と、ピストン本体61の外周面に装着されてシリンダ12内に摺接する円環帯状の摺接部材62とを有している。ピストン本体61は、軸方向に分割された二つの分割体63,64が連結されることにより形成されている。二つの分割体63,64は、凹凸嵌合する位置決め部65で円周方向に位置決めされて連結される。
ピストン本体61には、シリンダ12内の室14と室15とを連通可能な主通路68および主通路69が形成されている。主通路68は、室14側がピストン本体61の径方向の内側に開口し、室15側がピストン本体61の径方向の外側に開口している。主通路69は、室14側がピストン本体61の径方向の外側に開口し、室15側がピストン本体61の径方向の内側に開口している。主通路68および主通路69は、図示は略すがピストン本体61の周方向に交互に複数箇所ずつ形成されている。ピストン本体61には、その軸方向の室14側に、主通路68を開閉可能に上記した積層ディスク40が配置されており、その軸方向の室15側に、主通路69を開閉可能に上記した積層ディスク45が配置されている。
ピストンロッド13がシリンダ12内への進入量を増やす縮み側(図1の下側)に移動する縮み行程では、このピストンロッド13と一体に移動するピストン16がシリンダ12内で摺動して室14の容積を増大させ室15の容積を減少させる。このとき、室15の作動流体は、積層ディスク45によって主通路69での流通が規制され、主通路68で流通して積層ディスク40を開いて室14に排出される。つまり、主通路68が、縮み行程におけるピストン16の摺動によって作動流体を室15から室14に流通させる縮み側主通路68となっている。
そして、縮み行程において縮み側主通路68を開閉する積層ディスク40と、積層ディスク40が縮み側主通路68を閉じるときに着座するピストン本体61の軸方向の積層ディスク40側の弁座部71とが、縮み側主通路68に設けられてこれを開閉する縮み側主減衰弁72を構成している。縮み側主減衰弁72は、ピストンロッド13が縮み側に移動する縮み行程において縮み側主通路68を流通して室15から室14に流れる作動流体の流量を積層ディスク40で調整して減衰力を発生させる。図2に示すように、積層ディスク40は2枚の変形可能なディスク73,74が積層されて構成されており、これらのうち軸方向のピストン16側に配置されたディスク73において弁座部71に着座する。
ピストンロッド13がシリンダ12からの突出量を増やす伸び側(図2の上側)に移動する伸び行程では、このピストンロッド13と一体に移動するピストン16がシリンダ12内で摺動して室15の容積を増大させ室14の容積を減少させる。このとき、室14の作動流体は、積層ディスク40によって縮み側主通路68での流通が規制され、図1に示す主通路69で流通して積層ディスク45を開いて室15に排出される。つまり、主通路69が、伸び行程におけるピストン16の摺動によって作動流体を室14から室15に流通させる伸び側主通路69となっている。
そして、伸び行程において伸び側主通路69を開閉する積層ディスク45と、積層ディスク45が伸び側主通路69を閉じるときに着座するピストン本体61の軸方向の積層ディスク45側の弁座部76とが、伸び側主通路69に設けられてこれを開閉する伸び側主減衰弁77を構成している。伸び側主減衰弁77は、ピストンロッド13が伸び側に移動するときに伸び側主通路69を流通して室14から室15に流れる作動流体の流量を積層ディスク45で調整して減衰力を発生させる。図2に示すように、積層ディスク45は4枚の変形可能なディスク78,79,80,81が積層されて構成されており、ディスク78において弁座部76に着座する。ディスク78,79はディスク73,74と共通部品となっており、ディスク80はこれらよりも外径が小径であり、ディスク81はディスク80よりも外径が小径となっている。
ピストンロッド13の柱状部24には、上記したように切欠部25が形成されており、この切欠部25によって、柱状部24と、挟持ベース31、スペーサ32、積層ディスク33、バルブベース34、積層ディスク35、通路形成部材36、スペーサ37、規制部材38、スペーサ39、積層ディスク40、ピストン16、積層ディスク45、スペーサ46、規制部材47、スペーサ48、通路形成部材49、積層ディスク50、バルブベース51、積層ディスク52、スペーサ53および挟持ベース54との間には、軸方向に延びる内部通路82が形成されている。この内部通路82は、縮み側主通路68および伸び側主通路69とは別に設けられて、ピストン16の摺動によって伸び側縮み側に共通で作動流体を流通させる副通路83の中間部分を構成している。図1に示すナット56は袋ナットになっており、ピストンロッド13とナット56との隙間を介して副通路83が室15に連通するのを規制する。
挟持ベース31は剛性が高く変形困難となっている。スペーサ32は、挟持ベース31よりも外径が小径であり厚さも薄い。
積層ディスク33は、図2に示すように、複数枚、具体的には4枚の変形可能なディスク84,85,86,87が、軸方向のスペーサ32側からこの順番に積層されて構成されている。スペーサ32側から3枚のディスク84〜86は、外径が同径であり、外径がスペーサ32よりも大径となっている。最もスペーサ32とは反対側にあるディスク87は、外径がディスク84〜86よりも小径でスペーサ32よりも大径となっている。
ディスク84は、スペーサ32に当接しておりスペーサ32よりも径方向の外側位置に通路穴84aが厚さ方向に貫通して形成されている。ディスク85は、ディスク84に当接しており、通路穴84aに連通しつつディスク85の径方向の内方に延出する通路穴85aが厚さ方向に貫通して形成されている。ディスク86は、ディスク85に当接しており、通路穴85aのディスク85の径方向の内側部分に連通する通路穴86aが厚さ方向に貫通して形成されている。ディスク87は、ディスク86およびバルブベース34に当接しており、通路穴86aに連通する通路穴87aが厚さ方向に貫通して形成されている。通路穴87aはディスク87を径方向にも貫通している。これにより、積層ディスク33は、通路穴84a,85a,86a,87aを介して室14と内部通路82とを常時連通させている。通路穴84a,85a,86a,87aは室14と内部通路82とを常時連通させる固定絞り部89を構成している。固定絞り部89は、副通路83の端側の一部を構成している。
バルブベース34は剛性が高く変形困難となっている。バルブベース34は、軸方向の積層ディスク33側かつ内径側でディスク87に当接しており、軸方向の積層ディスク33側かつ外径側の弁座部91にディスク86を着座させている。バルブベース34は弁座部91にディスク86を着座させた状態でディスク86との間に弁室92を画成することになり、この弁室92は通路穴87aを介して内部通路82に常時連通している。弁室92は副通路83の端側の一部を構成している。
縮み行程でピストン16が室14の容積を増大させ室15の容積を減少させると室15の作動流体が後述するように副通路83を通って室14側に向けて流れることになり、内部通路82から固定絞り部89を通って、あるいはこれに加えて弁室92を通り積層ディスク33のディスク84〜86を弁座部91から離座させて室14に排出される。よって、積層ディスク33および弁座部91は、副通路83の縮み行程での下流側に設けられて副通路83を開閉する流出側の副減衰弁93を構成している。
積層ディスク35は、複数枚、具体的には2枚の変形可能なディスク95,96が積層されて構成されている。軸方向のバルブベース34側に配置されるディスク95は、バルブベース34とは反対側に配置されるディスク96よりも外径が小径となっている。ディスク95は、バルブベース34の軸方向の積層ディスク35側かつ内径側に当接することになり、ディスク96は、バルブベース34の軸方向の積層ディスク35側かつ外径側の弁座部97に着座する。バルブベース34は、弁座部97にディスク96を着座させた状態でディスク96との間に弁室98を画成することになり、この弁室98はディスク95の内径側に形成された通路穴95aを介して内部通路82に常時連通している。ディスク95の通路穴95aの内側は絞り部100となっている。絞り部100および弁室98は副通路83の端側の一部を構成している。
縮み行程でピストン16が室14の容積を増大させ室15の容積を減少させると室15の作動流体が後述するように副通路83を通って室14側に向けて流れることになる。この作動流体は、絞り部100から弁室98を通り、積層ディスク35のディスク96を弁座部97から離座させて室14に排出される。つまり、積層ディスク35と弁座部97とが、副通路83の縮み行程での下流側に設けられて副通路83を開閉する流出側の第3の減衰弁101を構成している。積層ディスク35のディスク96には、ディスク95によって開閉される通路穴96aが形成されている。
通路形成部材36は剛性が高く変形困難となっている。通路形成部材36には、通路穴96aを室14に常時連通させる通路穴36aが軸方向に貫通して設けられている。伸び行程でピストン16が室15の容積を増大させ室14の容積を減少させると室14の作動流体が、通路穴36aおよび通路穴96aを通り、積層ディスク35のディスク95をディスク96から離間させる。すると、室14の作動流体が弁室98に流れ込み、絞り部100を通り、内部通路82を通って室15側に流れる。積層ディスク35は、室14から通路穴36aおよび通路穴96aを通って弁室98に流れ絞り部100を通って内部通路82に流れる作動流体の流れを、ディスク95をディスク96から離間させて許容する一方、内部通路82から絞り部100を通り弁室98から通路穴96aおよび通路穴36aを通って室14に流れる作動流体の流れを、ディスク95をディスク96に当接させて規制するチェック弁を構成している。つまり、積層ディスク35は、副通路83の伸び行程での上流側に設けられる流入側のチェック弁を構成しており、上流側となる伸び行程とは反対行程である縮み行程での流出側の第3の減衰弁101を構成している。絞り部100は、副通路83における積層ディスク35側に設けられている。
スペーサ37は、剛性が高く変形困難となっており、外径が通路形成部材36よりも小さく、通路形成部材36の径方向の通路穴36aよりも内側に設けられている。規制部材38は、剛性が高く変形困難となっており、外径が積層ディスク40の外径と同径に形成されている。スペーサ39は、剛性が高く変形困難となっており、外径が積層ディスク40の外径よりも小径となっている。スペーサ37およびスペーサ39は共通部品となっている。規制部材38は、積層ディスク40のピストン16から離れる方向への変形をディスク74を当接させることにより規制する。
挟持ベース54は、剛性が高く変形困難となっており、挟持ベース31と共通部品になっている。スペーサ53は、挟持ベース54よりも外径が小径であって厚さも薄く、スペーサ32と共通部品になっている。
積層ディスク52は、複数枚、具体的には4枚の変形可能なディスク104,105,106,107が、軸方向のスペーサ53側からこの順番に積層されて構成されている。スペーサ53側から3枚のディスク104〜106は、外径が同径であり、外径がスペーサ53よりも大径となっている。最もスペーサ53とは反対側のディスク107は、外径がディスク104〜106よりも小径でスペーサ53よりも大径となっている。
ディスク104は、スペーサ53に当接しておりスペーサ53よりも径方向の外側位置に通路穴104aが厚さ方向に貫通して形成されている。ディスク104は、ディスク84と共通部品になっている。ディスク105は、ディスク104に当接しており、通路穴104aに連通しつつディスク105の径方向の内方に延出する通路穴105aが厚さ方向に貫通して形成されている。ディスク105は、ディスク85と共通部品になっている。ディスク106は、ディスク105に当接しており、通路穴105aのディスク105の径方向の内側部分に連通する通路穴106aが厚さ方向に貫通して形成されている。ディスク106は、ディスク86と共通部品になっている。ディスク107は、ディスク106およびバルブベース51に当接しており、通路穴106aに連通する通路穴107aが厚さ方向に貫通して形成されている。通路穴107aはディスク107を径方向にも貫通している。ディスク107は、ディスク87と共通部品になっている。積層ディスク52は、通路穴104a,105a,106a,107aを介して室15と内部通路82とを常時連通させており、通路穴104a,105a,106a,107aは室15と内部通路82とを常時連通させる固定絞り部109を構成している。固定絞り部109は、副通路83の端側の一部を構成している。
バルブベース51は、剛性が高く変形困難となっており、バルブベース34と共通部品になっている。バルブベース51は軸方向の積層ディスク52側かつ内径側でディスク107に当接しており、軸方向の積層ディスク52側かつ外径側の弁座部111にディスク106を着座させている。バルブベース51は弁座部111にディスク106を着座させた状態でディスク106との間に弁室112を画成することになり、この弁室112は通路穴107aを介して内部通路82に常時連通している。弁室112は副通路83の端側の一部を構成している。
伸び行程でピストン16が室15の容積を増大させ室14の容積を減少させると室14の作動流体が、通路穴36aおよび通路穴96aを通り、チェック弁としての積層ディスク35のディスク95をディスク96から離間させて、弁室98、絞り部100および内部通路82を通って室15側に流れる。すると、この作動流体は、内部通路82から固定絞り部109を通って、あるいはこれに加えて弁室112を通り積層ディスク52のディスク104〜106を弁座部111から離座させて室15に排出される。つまり、積層ディスク52と弁座部111とが、副通路83の伸び行程での下流側に設けられて副通路83を開閉する流出側の副減衰弁113を構成している。
積層ディスク50は、複数枚、具体的には2枚の変形可能なディスク115,116が積層されて構成されている。軸方向のバルブベース51側に配置されるディスク115は、バルブベース51とは反対側に配置されるディスク116よりも外径が小径となっている。ディスク115は、バルブベース51の軸方向の積層ディスク50側かつ内径側に当接することになり、ディスク116は、バルブベース51の軸方向の積層ディスク50側かつ外径側の弁座部117に着座する。バルブベース51は弁座部117にディスク116を着座させた状態でディスク116との間に弁室118を画成することになり、この弁室118はディスク115の内径側に形成された通路穴115aを介して内部通路82に常時連通している。ディスク115の通路穴115aの内側は絞り部120となっている。絞り部120および弁室118は副通路83の端側の一部を構成している。
伸び行程でピストン16が室15の容積を増大させ室14の容積を減少させると室14の作動流体が、チェック弁としての積層ディスク35を開き、弁室98、絞り部100および内部通路82を通って室15側に流れることになる。この作動流体は、絞り部120から弁室118を通り、積層ディスク50のディスク116を弁座部117から離座させて室15に排出される。つまり、積層ディスク50と弁座部117とが、副通路83の伸び行程での下流側に設けられて副通路83を開閉する流出側の第3の減衰弁121を構成している。積層ディスク50のディスク116には、ディスク115によって開閉される通路穴116aが形成されている。ディスク115はディスク95と共通部品になっており、ディスク116はディスク96と共通部品になっている。
通路形成部材49は剛性が高く変形困難となっている。通路形成部材49には、通路穴116aを室15に常時連通させる通路穴49aが軸方向に貫通して設けられている。縮み行程でピストン16が室14の容積を増大させ室15の容積を減少させると室15の作動流体が、通路穴49aおよび通路穴116aを通り、積層ディスク50のディスク115をディスク116から離間させる。すると、室15の作動流体が弁室118に流れ込み、絞り部120を通り、内部通路82を通って室14側に流れる。積層ディスク50は、室15から通路穴49aおよび通路穴116aを通って弁室118に流れ絞り部120を通って内部通路82に流れる作動流体の流れを、ディスク115をディスク116から離間させて許容する一方、内部通路82から絞り部120を通り弁室118から通路穴116aおよび通路穴49aを通って室15に流れる作動流体の流れを、ディスク115をディスク116に当接させて規制するチェック弁を構成している。つまり、積層ディスク50は、副通路83の縮み行程での上流側に設けられる流入側のチェック弁を構成しており、上流側となる縮み行程とは反対行程である伸び行程での流出側の第3の減衰弁121を構成している。絞り部120は、副通路83における積層ディスク50側に設けられている。
スペーサ48は、剛性が高く変形困難となっており、外径が通路形成部材49よりも小さく、通路形成部材49の径方向の通路穴49aよりも内側に設けられている。規制部材47は、剛性が高く変形困難となっており、外径が積層ディスク45の外径と同径に形成されている。スペーサ46は、剛性が高く変形困難となっており、外径が積層ディスク45のディスク81および規制部材47の外径よりも小径となっている。スペーサ46は、スペーサ32,53と共通部品になっている。スペーサ48は、スペーサ37,39と共通部品になっている。規制部材47は、積層ディスク45のピストン16から離れる方向への変形をディスク79〜81のいずれかを当接させて規制する。
第1実施形態の緩衝器11の作動について、まず、縮み行程の作動および発生する減衰力特性について説明する。
縮み行程では、ピストン16が室14の容積を増大させ室15の容積を減少させることになる。図3に0以上v1未満で示すピストン速度が遅い微低速域では、室15の作動流体が、通路形成部材49の通路穴49aおよび積層ディスク50のディスク116の通路穴116aを通り、縮み行程での流入側のチェック弁としての積層ディスク50のディスク115をディスク116から離間させる。すると、室15の作動流体が弁室118に流れ込み、絞り部120を通り、内部通路82を通って室14側に流れる。ピストン速度が遅い微低速域0以上v1未満では、内部通路82を通って室14側に流れる作動流体は、積層ディスク33に形成された固定絞り部89を通って室14に排出される。この微低速域0以上v1未満では、ピストン速度の単位上昇変化に対する減衰力の上昇率が高くなる減衰力特性となる。
図3にv1以上v2未満で示すピストン速度が上記した微低速域よりも速い低速域では、上記と同様にして内部通路82を通って室14側に流れる作動流体が、上記に加えて、積層ディスク33のディスク84〜86を変形させバルブベース34の弁座部91から離間させて弁室92から室14に排出されて減衰力特性を変更する。つまり、副通路83の縮み行程での下流側かつ流出側の副減衰弁93を開く。すると、絞り部120によって決まる減衰力特性となり、微低速域0以上v1未満でのピストン速度の単位上昇変化に対する減衰力の上昇率よりも上昇率が低い減衰力特性となる。副減衰弁93は、減衰力特性の切り替えのピストン速度v1を決めるものである。
図3にv2以上v3未満で示すピストン速度が上記した低速域v1以上v2未満よりも速い中速域では、上記と同様に内部通路82を通って室14側に流れる作動流体が、上記に加えて、さらに積層ディスク35のディスク96をバルブベース34の弁座部97から離間させて弁室98から室14に排出されて減衰力特性を変更する。つまり、副通路83の縮み行程での下流側かつ流出側の第3の減衰弁101を開く。この中速域v2以上v3未満では、低速域v1以上v2未満でのピストン速度の単位上昇変化に対する減衰力の上昇率よりも上昇率が低い減衰力特性となる。
図4にv3以上で示すピストン速度が上記した中速域v2以上v3未満よりも速い高速域では、上記した内部通路82を通って室14側に流れる作動流体に加えて、室15からの作動流体が、縮み側主通路68で流通して積層ディスク40を弁座部71から離間させて縮み側主通路68から室14に排出される。つまり、縮み側主減衰弁72を開く。この高速域v3以上では、中速域v2以上v3未満でのピストン速度の単位上昇変化に対する減衰力の上昇率よりも上昇率が低い減衰力特性となる。
次に、伸び行程の作動および発生する減衰力特性について説明する。
伸び行程では、ピストン16が室15の容積を増大させ室14の容積を減少させることになる。ピストン速度が遅い微低速域では、室14の作動流体が、通路形成部材36の通路穴36aおよび積層ディスク35のディスク96の通路穴96aを通り、伸び行程での流入側のチェック弁としての積層ディスク35のディスク95をディスク96から離間させる。すると、室14の作動流体が弁室98に流れ込み、絞り部100を通り、内部通路82を通って室15側に流れる。ピストン速度が遅いこの微低速域では、内部通路82を通って室15側に流れる作動流体は、積層ディスク52に形成された固定絞り部109を介して室15に排出される。この微低速域では、ピストン速度の単位上昇変化に対する減衰力の上昇率が高くなる減衰力特性となる。
ピストン速度が上記した微低速域よりも速い低速域では、上記と同様にして内部通路82を通って室15側に流れる作動流体は、上記に加えて、積層ディスク52のディスク104〜106を変形させバルブベース51の弁座部111から離間させて弁室112から室15に排出されて減衰力特性を変更する。つまり、副通路83の伸び行程での下流側かつ流出側の副減衰弁113を開く。すると、絞り部100によって決まる減衰力特性となり、微低速域でのピストン速度の単位上昇変化に対する減衰力の上昇率よりも上昇率が低い減衰力特性となる。副減衰弁113は、微低速域から低速域への減衰力特性の切り替えのピストン速度を決めるものである。
ピストン速度が上記した低速域よりも速い中速域では、上記と同様にして内部通路82を通って室15側に流れる作動流体は、上記に加えて、さらに積層ディスク50のディスク116をバルブベース51の弁座部117から離間させて弁室118から室15に排出されて減衰力特性を変更する。つまり、副通路83の伸び行程での下流側かつ流出側の第3の減衰弁121を開く。この中速域では、低速域でのピストン速度の単位上昇変化に対する減衰力の上昇率よりも上昇率が低い減衰力特性となる。
ピストン速度が上記した中速域よりも速い高速域では、上記した内部通路82を通って室15側に流れる作動流体に加えて、室14からの作動流体が、図1に示す伸び側主通路69で流通して積層ディスク45を弁座部76から離間させることにより伸び側主通路69から室15に排出される。つまり、伸び側主減衰弁77を開いて室15に流れる。この高速域では、中速域でのピストン速度の単位上昇変化に対する減衰力の上昇率よりも上昇率が低い減衰力特性となる。
以上に述べたように、第1実施形態に係る緩衝器11によれば、伸び側主減衰弁77が設けられた伸び側主通路69と、縮み側主減衰弁72が設けられた縮み側主通路68と、伸び縮み共用の副通路83とを独立して設ける。そして、この副通路83の伸び行程での上流側に流入側のチェック弁を構成する積層ディスク35を設け、副通路83の伸び行程での下流側に流出側の副減衰弁113を設けるとともに、副通路83の縮み行程での上流側に流入側のチェック弁を構成する積層ディスク50を設け、副通路83の縮み行程での下流側に流出側の副減衰弁93を設けている。これにより、伸び行程および縮み行程で独立して減衰力特性を設定することができ、伸び側主減衰弁77とは独立して伸び側の副減衰弁113の特性を設定することができて、縮み側主減衰弁72とは独立して縮み側の副減衰弁93の特性を設定することができる。
これにより、例えば、緩衝器11の動き出しのピストン16のシリンダ12との間の機械的フリクションおよびピストンロッド13の図示略のロッドシール等との間の機械的フリクションが、静的フリクションから動的フリクションに切り替わる微低速域において、固定絞り部89,119により作動流体を流してピストン速度に対する減衰力の上昇率を高くして減衰力を即座に立ち上げる特性(図3の0以上v1未満参照)が得られ、速度が少し上がると副減衰弁93,113が開弁し、さらに速度が少し上がると第3の減衰弁101,121が開弁することで、減衰力のピストン速度の単位上昇変化に対する上昇率を徐々に下げて、乗り心地を損なわないようにすることができ、不連続部の少ない減衰力特性を設定することが可能になる。
しかも、副通路83の伸び行程での上流側に流入側のチェック弁を構成する積層ディスク35を設け、副通路83の縮み行程での上流側に流入側のチェック弁を構成する積層ディスク50を設けることで、副通路83を伸び縮み共用とすることができる。
また、副通路83の伸び行程での上流側に設けられた流入側のチェック弁としての積層ディスク35が、上流側となる伸び行程とは反対の縮み行程での流出側の第3の減衰弁101を構成しており、副通路83の縮み行程での上流側に設けられた流入側のチェック弁としての積層ディスク50が、上流側となる縮み行程とは反対の伸び行程での流出側の第3の減衰弁121を構成している。このため、部品点数の増大を抑制しつつ、より不連続部の少ない減衰力特性を設定することが可能になる。
副通路83の伸び行程での流入側のチェック弁としての積層ディスク35側には、絞り部100が設けられており、副通路83の縮み行程での流入側のチェック弁としての積層ディスク50側には、絞り部120が設けられている。このため、伸び行程での流入側のチェック弁としての積層ディスク35を開いた状態での作動流体の副通路83への流入を絞り部100で制限し、縮み行程での流入側のチェック弁としての積層ディスク50を開いた状態での作動流体の副通路83への流入を絞り部120で制限することができる。よって、副減衰弁93,113の開弁後の特性をこれら絞り部100,120によって設定することができる。
「第2実施形態」
本発明の第2実施形態に係る緩衝器を図4を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第2実施形態では、ピストンロッド13の柱状部24に第1実施形態の切欠部25は形成されておらず、ピストンロッド13の取付軸部22の中央に軸方向のオネジ23側の端部から通路穴201が穿設されている。この通路穴201には室15側の開口端にメネジ202が形成されており、このメネジ202に螺合されるボルト203でこの通路穴201の室15側が閉塞されている。通路穴201のメネジ202とは反対側の端部近傍には柱状部24の径方向に沿う通路穴205が形成されており、通路穴201のメネジ202側の中間位置にも柱状部24の径方向に沿う通路穴206が形成されている。加えて、柱状部24には、外周面から平面状に切り欠かれた切欠部207が通路穴205の位置に形成されており、外周面から平面状に切り欠かれた切欠部208が通路穴206の位置に形成されている。
取付軸部22には、第1実施形態と同様に挟持ベース31から挟持ベース54までの部材が装着され、この状態で、挟持ベース54から突出するオネジ23にナット215が螺合される。これにより、挟持ベース31から挟持ベース54までの部材を主軸部21の取付軸部22側の端面とナット215とが挟持して軸方向に締結する。このナット215は袋ナットではなく通常のナットとなっている。
切欠部207は、挟持ベース31、スペーサ32、積層ディスク33およびバルブベース34と軸方向の位置を重ね合わせており、これらとの間に通路209を形成している。通路209は、固定絞り部89および絞り部100に常時連通している。切欠部208は、通路形成部材49、積層ディスク50、バルブベース51、積層ディスク52およびスペーサ53と軸方向の位置を重ね合わせており、これらとの間に通路210を形成している。通路210は、固定絞り部109および絞り部120に常時連通している。
通路穴201,205,206内と、通路209,210とが、第1実施形態の内部通路82と同様、伸び側縮み側に共通の副通路83の中間部分を構成する内部通路211を構成している。
このような第2実施形態も、第1実施形態と同様に作動する。
「第3実施形態」
本発明の第3実施形態に係る緩衝器を図5を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第3実施形態においては、ピストンロッド13の取付軸部22に、挟持ベース31、スペーサ32、通路形成部材36、積層ディスク35、バルブベース34、積層ディスク33、スペーサ301、スペーサ37、規制部材38、スペーサ39、積層ディスク40、ピストン16、積層ディスク45、スペーサ46、規制部材47、スペーサ48、スペーサ302、積層ディスク52、バルブベース51、積層ディスク50、通路形成部材49、スペーサ53および挟持ベース54がこの順に取り付けられている。
ここで、積層ディスク35、バルブベース34、積層ディスク33、積層ディスク52、バルブベース51および積層ディスク50は、それぞれが、第1実施形態とは向きが軸方向に反転させられている。よって、積層ディスク35は、軸方向の挟持ベース31側にディスク96が、挟持ベース31とは反対側にディスク95が設けられている。また、バルブベース34は、軸方向の挟持ベース31側に弁座部97が、挟持ベース31とは反対側に弁座部91が、それぞれ配置されている。また、積層ディスク33は、軸方向の挟持ベース31側から順にディスク87、ディスク86、ディスク85およびディスク84が配置されている。また、積層ディスク52は、軸方向の挟持ベース31とは反対側から順に、ディスク107、ディスク106、ディスク105およびディスク104が配置されている。バルブベース51は、弁座部111が軸方向の挟持ベース31側に、弁座部117が挟持ベース31とは反対側に配置されている。また、積層ディスク50は、軸方向の挟持ベース31側にディスク115が、挟持ベース31とは反対側にディスク116が配置されている。つまり、第3実施形態は、第1実施形態の積層ディスク33、バルブベース34、積層ディスク35および通路形成部材36の組み合わせ全体を軸方向に反転させ、第1実施形態の通路形成部材49、積層ディスク50、バルブベース51および積層ディスク52の組み合わせ全体を軸方向に反転させたものとなっている。
このような第3実施形態も、第1実施形態と同様に作動する。
第1〜第3実施形態では、副通路83の伸び行程での上流側に設けられた積層ディスク35が、流入側のチェック弁を構成し且つ上流側となる行程とは反対の縮み行程での流出側の第3の減衰弁101を構成するとともに、縮み行程での上流側に設けられた積層ディスク50が、流入側のチェック弁を構成し且つ上流側となる行程とは反対の伸び行程での流出側の第3の減衰弁121を構成する場合を例にとり説明したが、これらの積層ディスク35,50のうちの少なくとも一方が上記構成となっていれば良い。
また、第1〜第3実施形態では、副通路83の伸び行程での流入側のチェック弁である積層ディスク35側に絞り部100を設け、副通路83の縮み行程での流入側のチェック弁である積層ディスク50側に絞り部120を設けているが、絞り部100,120のうちの少なくとも一方が設けられていれば良い。
以上に述べた実施形態は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装されて該シリンダ内を二室に区画するピストンと、一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの外部へ延出されるピストンロッドと、前記ピストンの摺動によって作動流体をそれぞれ流通させる、伸び側主通路、縮み側主通路、および伸び側縮み側に共通の副通路と、を有する緩衝器であって、前記伸び側主通路には伸び側主減衰弁が、前記縮み側主通路には縮み側主減衰弁が、それぞれ設けられ、前記副通路の伸び行程での上流側および縮み行程での上流側には、それぞれ流入側のチェック弁が設けられ、前記副通路の伸び行程での下流側および縮み行程での下流側には、それぞれ流出側の副減衰弁が設けられていることを特徴とする。これにより、伸び行程および縮み行程で独立して減衰力特性を設定することができ、伸び側主減衰弁とは独立して伸び側の副減衰弁の特性を設定することができて、縮み側主減衰弁とは独立して縮み側の副減衰弁の特性を設定することができる。しかも、副通路の伸び行程での上流側に流入側のチェック弁を設け、副通路の縮み行程での上流側に流入側のチェック弁を設けることで、副通路を伸び縮み共用とすることができる。
また、前記副通路の伸び行程での上流側および縮み行程での上流側のうちの少なくとも一方に設けられた前記流入側のチェック弁は、積層ディスクで構成され、該積層ディスクは、上流側となる行程とは反対行程での流出側の第3の減衰弁を構成していることを特徴とする。これにより、部品点数の増大を抑制しつつ、より不連続部の少ない減衰力特性を設定することが可能になる。
また、前記副通路の少なくとも一方の前記チェック弁側には、絞り部が設けられていることを特徴とする。副減衰弁の開弁後の特性をこれら絞り部によって設定することができる。