本発明の一実施形態に係る緩衝器を図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の緩衝器10は、液体あるいは気体を作動流体とする流体圧緩衝器である。具体的には、油液を作動流体とする油圧緩衝器である。図1に示すように、緩衝器10は、作動流体が封入されるシリンダ11を有している。このシリンダ11は、図示は略すが一端側(図1,図2における上側)が開口し他端側(図1,図2における下側)が閉塞された有底円筒状をなしている。シリンダ11内には、バルブ本体としてのピストン12が摺動可能に挿入されている。
シリンダ11には、ピストンロッド13が挿入されている。ピストン12は、このピストンロッド13の一端側に、図1〜図3に示すナット14によって連結されている。ピストンロッド13は、他端側(図1,図2における上側)がシリンダ11の外部に延出している。このように一端側がピストン12に連結されたピストンロッド13は、その他端側が、シリンダ11の開口部に装着された図示略のロッドガイドおよびオイルシールに挿通されてシリンダ11の外部へと延出している。ピストン12は、シリンダ11の内部を、シリンダ11の図示略の底部側(図1,図2における下側)の第1室19と、ピストンロッド13が延出する開口側(図1,図2における上側)の第2室20とに画成している。
図2に示すように、ピストンロッド13は、主軸部25と、シリンダ11内の端部にあって主軸部25より小径の取付軸部26とを有している。これにより、主軸部25には、取付軸部26側の端部に軸直交方向に沿う端面27が形成されている。取付軸部26には、主軸部25とは反対側の所定範囲に上記したナット14のメネジ30を螺合させるオネジ28が形成されている。
バルブ本体としてのピストン12は、円環状のピストン本体31と、ピストン本体31の外周面に装着されてシリンダ11の内周面に摺接する円環帯状の摺接部材33とを有している。よって、ピストン本体31と摺接部材33とからなるピストン12は円環状をなしている。
ピストン本体31は、金属製である。ピストン本体31は、焼結により一体成形されている。摺接部材33は合成樹脂製である。ピストン本体31と、これに摺接部材33が一体的に装着されてなるピストン12とは、中心軸線を一致させている。これにより、ピストン本体31とピストン12とは、中心軸線に沿う方向である軸方向が一致し、中心軸線に直交する方向である径方向が一致し、中心軸線回りの方向である周方向が一致する。以下、ピストン本体31およびピストン12の中心軸線をピストン軸心と称する。ピストン本体31およびピストン12の軸方向をピストン軸方向と称する。ピストン本体31およびピストン12の径方向をピストン径方向と称する。ピストン本体31およびピストン12の周方向をピストン周方向と称する。
ピストン本体31の軸方向の第1室19側の一端面31Aは、ピストン12の軸方向の第1室19側の一端面12Aを主体的に構成している。ピストン本体31の軸方向の第2室20側の他端面31Bは、ピストン12の軸方向の第2室20側の他端面12Bを主体的に構成している。
ピストン12の径方向の中央、すなわちピストン本体31の径方向の中央には、ピストンロッド13の取付軸部26を隙間なく挿通させる挿通孔35がピストン軸方向に貫通するように形成されている。挿通孔35は、ピストン12の径方向内側の内周部の内側に形成されている。
ピストン本体31には、その径方向の挿通孔35よりも外側位置にて、いずれもピストン軸方向に直線状に延びる第1通路41、第2通路42および第3通路43が形成されている。第1通路41、第2通路42および第3通路43は、いずれも、ピストン軸方向に平行に形成されている。
ピストン本体31に設けられたこれらの第1通路41、第2通路42および第3通路43は、ピストン12を軸方向に貫通しており、第1室19と第2室20とを連通させることが可能となっている。第1通路41および第3通路43は、ピストン本体31の径方向における外周側に配置されている。第2通路42は、ピストン本体31の径方向における内周側に配置されている。よって、ピストン本体31において、第1通路41および第3通路43よりも挿通孔35に近い位置に第2通路42が配置されている。
図4に示すように、第1通路41、第2通路42および第3通路43は、それぞれピストン本体31に複数ずつ設けられている。第1通路41、第2通路42および第3通路43は、同数、具体的には四カ所ずつ設けられている。
第1通路41と第3通路43とは、ピストン軸心からの距離がほぼ同等になっている。第1通路41と第3通路43とは、ピストン本体31の周方向に交互に等間隔で配置されている。第2通路42は、一つずつが、ピストン周方向における位置を第1通路41と合わせている。
複数の第1通路41は、同形状であって、ピストン軸心から等距離の位置に配置されている。第1通路41は、ピストン周方向の幅がピストン径方向の幅よりも大きい長穴形状である。第1通路41は、ピストン軸心を中心とした円弧状に湾曲している。第1通路41は、図2に示すように、第1室19側の開口41aと第2室20側の開口41bとを有している。開口41aは、ピストン本体31の第1室19側の一端面31Aの外周側に開口しており、ピストン12の第1室19側の一端面12Aの外周側に開口している。開口41bは、ピストン本体31の第2室20側の他端面31Bの外周側に開口しており、ピストン12の第2室20側の他端面12Bの外周側に開口している。図4,図6に示すように、開口41a,41bも、ピストン周方向の幅がピストン径方向の幅よりも大きく、ピストン軸心を中心とした円弧状に湾曲している。
複数の第2通路42は、同形状であって、ピストン軸心から等距離の位置に配置されている。第2通路42は、ピストン周方向の幅がピストン径方向の幅よりも大きい長穴形状である。第2通路42は、ピストン軸心を中心とした円弧状に湾曲している。第2通路42は、図2に示すように、第1室19側の開口42aと第2室20側の開口42bとを有している。開口42aは、ピストン本体31の一端面31Aの内周側に開口しており、ピストン12の一端面12Aの内周側に開口している。開口42bは、ピストン本体31の他端面31Bの内周側に開口しており、ピストン12の他端面12Bの内周側に開口している。開口42aは、一端面31Aにおける開口41aよりもピストン本体31の内周側に開口しており、開口42bは、他端面31Bにおける開口41bよりもピストン本体31の内周側に開口している。図4,図6に示すように、開口42a,42bも、ピストン周方向の幅がピストン径方向の幅よりも大きく、ピストン軸心を中心とした円弧状に湾曲している。
複数の第3通路43は、同形状であって、ピストン軸心から等距離の位置に配置されている。第3通路43は、ピストン軸心を中心とした円弧状に湾曲している。第3通路43は、図2に示すように、第1室19側の開口43aと第2室20側の開口43bとを有している。開口43aは、ピストン本体31の一端面31Aの外周側に開口しており、ピストン12の一端面12Aの外周側に開口している。開口43bは、ピストン本体31の他端面31Bの外周側に開口しており、ピストン12の他端面12Bの外周側に開口している。図4,図6に示すように、開口43a,43bも、ピストン軸心を中心とした円弧状に湾曲している。
図4に示すように、ピストン本体31の一端面31Aには、ピストン周方向に並んで複数、具体的には四カ所の同形状の第1シート51が設けられている。複数の第1シート51は、ピストン本体31においてそれぞれ互いに離れた位置に独立して形成されている。複数の第1シート51は、ピストン周方向に等間隔で設けられている。複数の第1シート51は、円形(円環状)ではない、いわゆる異形シートとなっている。
複数の第1シート51は、ピストン本体31の一端面31Aのうちの第1シート51の外周囲を囲む端面部31aから、図2に示すようにピストン軸方向の外側に突出して設けられている。すなわち、複数の第1シート51は、他端面31Bとは反対側である第1室19側に突出して設けられている。複数の第1シート51は、突出側の先端部に、図4に示すように、枠状のシート本体部52を有している。
複数の第1シート51は、それぞれが個々に、複数の第1通路41のうちの対応するものの第1室19側の開口41aをシート本体部52で全周にわたって囲むように設けられている。具体的に、複数の第1シート51のシート本体部52は、それぞれ一つが一つの第1通路41の開口41aを全周にわたって囲むように設けられている。第1通路41の開口41aが内側に形成されたシート本体部52も、開口41aと同様に、ピストン周方向の幅がピストン径方向の幅よりも大きく、ピストン軸心を中心とした円弧状に湾曲している。
第1シート51に対して第1通路41の数が例えば二倍の場合、第1シート51の一つが、二カ所一組の第1通路41の開口41aの全体を囲むように配置される。すなわち、第1シート51は、第1通路41の開口41aの一つまたは複数を囲むように設けられており、複数のものがピストン周方向に離間して配置されている。
ピストン本体31の周方向に隣り合う第1シート51と第1シート51との間の中央位置に第3通路43が配置されている。
複数の第1シート51のシート本体部52は、それぞれが、一対の径方向シート部53と、外側シート部54と、内側シート部55とを有している。一対の径方向シート部53は、ピストン本体31の径方向に直線状に延びる。外側シート部54は、ピストン本体31の周方向に円弧状に延びる。内側シート部55は、外側シート部54よりもピストン本体31の径方向におけるピストン軸心側でピストン本体31の周方向に円弧状に延びる。
外側シート部54は、ピストン軸心を中心とした円弧状に湾曲している。外側シート部54は、一対の径方向シート部53のピストン本体31の径方向におけるピストン軸心とは反対側の端部同士を結んでいる。内側シート部55は、ピストン軸心を中心とした円弧状に湾曲している。内側シート部55は、一対の径方向シート部53のピストン径方向におけるピストン軸心側の端部同士を結んでいる。複数の第1シート51は、すべての外側シート部54が、ピストン軸心を中心とした同一円上に配置されている。すべての内側シート部55も、ピストン軸心を中心とした同一円上に配置されている。複数の第1シート51のシート本体部52は、それぞれの突出側の先端面であるシート面52aが、図5に示すようにピストン軸心に直交する平面となっている。すべての第1シート51のシート面52aが同一平面に配置されている。
図7に示すように、第1シート51は、ピストン径方向外側の外側シート部54のピストン径方向のシート幅w1が、ピストン径方向内側の内側シート部55のピストン径方向のシート幅w2よりも大きい。また、径方向シート部53のピストン周方向のシート幅w3は、外側シート部54のピストン径方向のシート幅w1と同等であり、内側シート部55のピストン径方向のシート幅w2よりも大きい。なお、シート幅w1は、シート本体部52のシート面52aのうちの外側シート部54に設けられたシート面部54aのピストン径方向の幅である。シート幅w2は、シート面52aのうちの内側シート部55に設けられたシート面部55aのピストン径方向の幅である。シート幅w3は、シート面52aのうちの径方向シート部53に設けられたシート面部53aのピストン周方向の幅である。
ここで、第2通路42と第1シート51との位置関係を示すと、第2通路42は、ピストン径方向において、内側シート部55よりも内周側に配置される。つまり、第1室19側の複数の開口42aは、ピストン径方向において、内側シート部55よりも内周側に配置される。
図4に示すように、ピストン本体31の一端面31Aには、複数の第1シート51よりもピストン径方向のピストン軸心側に、環状をなす第2シート61が、複数の第1シート51とは離間して設けられている。第2シート61は、ピストン本体31において、一端面31Aの複数の第1シート51および第2シート61を囲む端面部31aおよび第2シート61よりもピストン軸心側の端面部31bから、図2に示すようにピストン軸方向の外側に突出して設けられている。すなわち、第2シート61は、他端面31Bとは反対側である第1室19側に突出して設けられている。
言い換えれば、第2シート61は、その外周囲を囲む端面部31aおよび内周囲を囲む端面部31bよりもピストン軸方向の外側に突出して設けられている。
図4に示すように、第2シート61は、ピストン速度の高速域において減衰力を出すため、後段で説明する第1ディスクバルブにセット荷重を入れるために、第1シート51の異形とは異なりピストン軸心を中心とした円環状をなしている。すなわち、第2シート61は、ピストン周方向の360°に亘って、第1シート51よりもピストン径方向内側に離間している。第1シート51がピストン周方向に断続的に配置されているため、円環状の第2シート61は、第1シート51に対してピストン周方向の位置を重ね合わせてピストン径方向に離間する部分を有している。
ピストン本体31の一端面31Aには、第2シート61に対しピストン径方向内側に隣り合う端面部31bに、すべての第2通路42の開口42aが開口している。第2シート61は、すべての第2通路42の開口42aよりもピストン径方向の外側に、すべての第2通路42の開口42aを囲むように、すべての第2通路42の開口42aとはピストン径方向に離間して設けられている。具体的に、第2シート61は、すべての第1シート51とすべての第2通路42の開口42aとを仕切るように、これらの間に設けられている。
第2シート61は、上記したように、ピストン軸心を中心とした円環状に形成されている。すべての第1シート51のそれぞれの内側シート部55と第2シート61との間には、図5に示すようにピストン軸方向に凹む溝63が設けられている。言い換えれば、すべての第1シート51のそれぞれの内側シート部55と第2シート61との間に隙間が設けられている。溝63の底面は、端面部31aを構成している。第2シート61は、その突出側の先端面であるシート面61aがピストン軸心に直交する平面となっている。
第2シート61は、第2通路42の開口42aを囲むように設けられる。第2シート61は、第1シート51よりもピストン径方向の内側に第1シート51とはピストン径方向に離間して配置されている。図7に示すように、第1シート51は、ピストン径方向内側の内側シート部55のピストン径方向のシート幅w2が、ピストン径方向外側の外側シート部54のピストン径方向のシート幅w1よりも小さくなっている。このように内側シート部55のシート幅w2を小さくした分、第2シート61をピストン径方向の外側に配置できる。また、その分、第2通路42の流路断面積を大きくする等、第2通路42の流路断面積の自由度が高くなり、チューナビリティも高くなる。
図5に示すように、第2シート61の突出方向の高さは、第1シート51の突出方向の高さよりも低くなっている。言い換えれば、第2シート61のシート面61aのピストン軸方向の高さ位置よりも、第1シート51のシート面52aのピストン軸方向の高さ位置の方が、これらの突出方向を正方向とした場合に低くなっている。さらに言い換えれば、ピストン本体31の径方向の外側にある複数の第1シート51は、突出側の先端面であるシート面52aの位置が、径方向の内側にある第2シート61の先端面であるシート面61aの位置よりも、突出方向において内側に位置している。
図4に示すように、ピストン本体31の一端面31Aには、複数の第2通路42の開口42aよりもピストン径方向のピストン軸心側に、環状をなす中央シート66が、すべての第2通路42の開口42aと離間して設けられている。言い換えれば、中央シート66は、すべての第2通路42の開口42aよりもピストン径方向の内側に設けられている。
中央シート66は、挿通孔35の全周を囲むようにピストン本体31の周方向に延びており、ピストン軸心を中心とした円環状をなしている。図2に示すように、中央シート66は、そのピストン周方向外側の端面部31bよりも、ピストン軸方向の外側すなわち他端面31Bとは反対側である第1室19側に突出して設けられている。図5に示すように、中央シート66の突出側の先端面66aがピストン軸心に直交する平面となっている。
第2シート61と中央シート66との間は、これらのシート面61aおよび先端面66aよりもピストン軸方向に凹む環状通路67となっている。図4に示すように、環状通路67は、ピストン軸心を中心とする円環状である。環状通路67の底面に、すべての第2通路42の開口42aが開口している。
図5に示すように、中央シート66の突出方向の高さは、第2シート61の突出方向の高さよりも低くなっている。言い換えれば、第2シート61のシート面61aのピストン軸方向の高さ位置よりも、中央シート66の先端面66aのピストン軸方向の高さ位置の方が、これらの突出方向を正方向とした場合に低くなっている。さらに言い換えれば、中央シート66は、突出側の先端面66aの位置が、第2シート61の突出側の先端面であるシート面61aの位置よりも、突出方向において内側に配置されている。
図6に示すように、ピストン本体31の他端面31Bには、ピストン周方向に並んで複数、具体的には四カ所の同形状の第3シート71が設けられている。複数の第3シート71は、ピストン本体31の周方向に等間隔で設けられている。複数の第3シート71は、ピストン本体31において、他端面31Bのうち第3シート71の外周囲を囲む端面部31cから、図2に示すようにピストン軸方向の外側に突出して設けられている。すなわち、複数の第3シート71は、一端面31Aとは反対側である第2室20側に突出して設けられている。
図6に示すように、複数の第3シート71は、それぞれが個々に、複数の第3通路43のうちの対応するものの開口43bを全周にわたって囲むように設けられている。具体的に、複数の第3シート71は、それぞれ一つが一つの第3通路43の開口43bを全周にわたって囲むように設けられている。
なお、第3シート71に対して第3通路43の数が例えば二倍の場合、第3シート71の一つが、二カ所一組の第3通路43の開口43bの全体を囲むように配置される。ピストン本体31の周方向に隣り合う第3シート71と第3シート71との間の中央位置に、第1通路41の開口41bおよび第2通路42の開口42bが配置されている。
複数の第3シート71は、それぞれが、ピストン径方向に延びる一対の径方向シート部73と、ピストン周方向に延びる周方向シート部74とを有している。複数の第3シート71は、そのすべてに共通する、径方向シート部73よりもピストン径方向におけるピストン軸心側に配置される中央シート部75を有している。複数の第3シート71は、すべての周方向シート部74が、ピストン軸心を中心とした同一円上に配置されている。周方向シート部74は、同じ第3シート71を構成する一対の径方向シート部73のピストン径方向における外側端部同士を結んでいる。中央シート部75は、すべての第3シート71の径方向シート部73のピストン径方向におけるピストン軸心側の端部を結びつつ、挿通孔35の全周を囲むように設けられている。共通の中央シート部75を含むすべての第3シート71は、突出側の先端面であるシート面71aが、同一平面に配置されて、ピストン周方向に繋がっている。すべての第3シート71のシート面71aは、ピストン軸心に直交する一つの平面となっている。
図2に示すように、ピストンロッド13の主軸部25の端面27には、取付軸部26を挿通させた状態で、いずれも円環状をなす、一枚の規制部材81と、一枚の規制ディスク82と、一枚の小径ディスク83と、ディスクバルブ84と、ピストン12と、一枚の小径ディスク91と、ディスクバルブ92(第2ディスクバルブ)と、一枚の小径ディスク93と、複数枚の介装ディスク94と、ディスクバルブ95(第1ディスクバルブ)と、一枚の小径ディスク96と、一枚の規制ディスク97と、一枚の規制部材98とが、この順に重ねられており、この状態で、取付軸部26の規制部材98から突出するオネジ28にナット14がメネジ30において螺合されている。このとき、ピストン12は、第1シート51、第2シート61および中央シート66がナット14側に向き、第3シート71が端面27側に向いて取り付けられる。
オネジ28へのナット14の締結により、規制部材81、規制ディスク82、小径ディスク83、ディスクバルブ84、ピストン12、小径ディスク91、ディスクバルブ92、小径ディスク93、介装ディスク94、ディスクバルブ95、小径ディスク96、規制ディスク97および規制部材98は、いずれも、取付軸部26で径方向移動が規制されて積層され、この積層状態でピストンロッド13の端面27とナット14とに挟持される。すると、これらは少なくとも内周側がピストンロッド13に対し軸方向移動不可に固定される。その結果、ディスクバルブ84,92,95は、いずれも内周側のみがピストンロッド13に対し軸方向移動不可にクランプされる。
規制部材81は、円環状をなしている。規制部材81は、取付軸部26を内周側に嵌合させている。規制部材81は、外径が端面27の外径よりも大径となっている。規制ディスク82は、円環状をなして取付軸部26を内周側に嵌合させている。規制ディスク82の外径は、規制部材81の外径よりも大径となっている。小径ディスク83は、円環状をなして取付軸部26を内周側に嵌合させている。小径ディスク83の外径は、規制部材81の外径よりも小径で、端面27の外径とほぼ同径となっている。
ディスクバルブ84は、小径ディスク83側から順に、一枚の単体ディスク101と、一枚の単体ディスク102と、複数枚、具体的には2枚の同外径の単体ディスク103と、複数枚、具体的には2枚の同外径の単体ディスク104とが積層されて構成されている。
単体ディスク101〜104は、いずれも円環状をなして取付軸部26を内周側に嵌合させている。単体ディスク101の外径は、規制部材81の外径よりも小径であって小径ディスク83の外径よりも大径である。単体ディスク102の外径は、単体ディスク101よりも大径である。複数枚の単体ディスク103の外径は、単体ディスク102よりも大径である。複数枚の単体ディスク104の外径は、単体ディスク103よりも大径である。よって、ディスクバルブ84において、単体ディスク101の外径が最も小径で、複数枚の単体ディスク104の外径が最も大径である。
ディスクバルブ84は、最も大径の複数枚の単体ディスク104の外径が、複数の第3シート71の突出側の先端面であるシート面71aのピストン軸心からの最大距離の二倍よりも大径となっている。複数枚の単体ディスク104のうち、最もピストン12側に配置された単体ディスク104は、第3シート71のシート面71aに当接する。単体ディスク104が第3シート71のシート面71aに当接した状態で、ディスクバルブ84は、第3通路43の第2室20側を閉じる。
第1通路41の第2室20側の開口41bおよび第2通路42の第2室20側の開口42bは、ディスクバルブ84で閉塞されることはなく、常時第2室20に連通している。
規制部材81は、単体ディスク101〜104の一枚よりも厚さが厚く、これらで構成されるディスクバルブ84よりも高剛性となっている。また、規制部材81は、規制ディスク82よりも厚さが厚く高剛性となっている。規制ディスク82は、ディスクバルブ84が第3シート71から離座する方向に変形した場合に、ディスクバルブ84に当接して、ディスクバルブ84の変形を抑制する。規制部材81は、規制ディスク82の所定量以上の変形を規制する。
小径ディスク91は、円環状をなして取付軸部26を内周側に嵌合させている。小径ディスク91は、外径が、中央シート66の先端面66aの外径よりも大径で、第2シート61のシート面61aのピストン軸心からの最小距離の二倍よりも小径となっている。これにより、小径ディスク91は、中央シート66の先端面66aに当接する。
ディスクバルブ92は、第2ディスクバルブを構成する。ディスクバルブ92は、ピストン12側から順に、一枚の単体ディスク111と、複数枚、具体的には2枚の同外径の単体ディスク112とを有する。つまり、第2ディスクバルブは、一枚の単体ディスク112と、複数枚の同外径の単体ディスク112とが積層されて構成される。
単体ディスク111,112は、いずれも円環状をなして取付軸部26を内周側に嵌合させている。単体ディスク111は、小径ディスク91よりも外径が大径となっている。
複数枚の単体ディスク112は、外径が単体ディスク111の最大外径と同等になっている。
単体ディスク111は、最大外径が、第2シート61のシート面61aの外径よりも大径で、第1シート51のピストン軸心からの最小距離の二倍よりも小径となっている。これにより、単体ディスク111は、第2シート61のシート面61aおよび中央シート66の先端面66aに当接する一方で、第1シート51には接触せず、第1シート51との間にピストン径方向の隙間を有する。単体ディスク111は、径方向の内側がクランプされて小径ディスク91に常時当接する一方、径方向外側は、第2シート61に対して離着座する。第2シート61に着座した状態で、単体ディスク111は、第2通路42および環状通路67の第1室19側を閉じる。単体ディスク111を含むディスクバルブ92は、ディスクバルブ95のピストン12側に重ねて設けられており、外周が第2シート61に着座可能に載置されている。
上記したように、第1シート51の内側シート部55のシート幅w2を外側シート部54のシート幅w1よりも小さくした分、第2シート61をピストン径方向の外側に配置できる。その分、ディスクバルブ92の第2シート61への着座位置をピストン径方向の外側に配置でき、その結果、ディスクバルブ92の剛性が下がり第2シート61から離座し易くなる。
単体ディスク111には、第2シート61のシート面61aをピストン径方向に跨いで延びる切欠部121が外周側に形成されている。切欠部121は、U字状で単体ディスク111の外周に抜ける形状を有する。切欠部121は、単体ディスク111を板厚方向に貫通している。単体ディスク111には、このような切欠部121が、周方向に等間隔で複数形成されている。切欠部121は、単体ディスク111が第2シート61のシート面61aに当接した状態でも、第2シート61の内周側と外周側とを連通させて、第2シート61の内周側の第2通路42および環状通路67と、第2シート61の外周側の第1室19とを、第1シート51間の隙間を介して連通させる。つまり、切欠部121は、第2シート61と最も単体ディスク111側の単体ディスク112とで、第1室19と第2室20とを常時連通させる固定オリフィスを構成する。なお、単体ディスク111に切欠部121を設けずに、第2シート61に、単体ディスク111が第2シート61のシート面61aに当接した状態でもその内周側と外周側とを連通させる切欠部を設けても良く、この第2シート61の切欠部と単体ディスク111の切欠部121との両方を設けても良い。
小径ディスク93は、円環状をなして取付軸部26を内周側に嵌合させている。小径ディスク93は、外径が、小径ディスク91よりも小径となっており、中央シート66の先端面66aと同等となっている。
複数枚の介装ディスク94は、小径の環状部材として小径ディスク93とディスクバルブ95との間に配置されている。複数枚の介装ディスク94は、同外径である。複数枚の介装ディスク94は、円環状をなして取付軸部26を内周側に嵌合させている。介装ディスク94は、外径がディスクバルブ92の単体ディスク112の外径と同等になっている。
ここで、第1シート51のシート面52aと、第2シート61のシート面61aとのピストン軸方向の距離は、ディスクバルブ92、小径ディスク93および複数枚の介装ディスク94の全体の厚さに同等となっている。つまり、第1シート51のシート面52aと、第2シート61のシート面61aとのピストン軸方向の距離に応じて、複数枚の介装ディスク94の枚数を増減させ、第1シート51のシート面52aと、第2シート61のシート面61aとのピストン軸方向の距離が、ディスクバルブ92、小径ディスク93および複数枚の介装ディスク94の全体の厚さと同等になるように調整することができる。
ディスクバルブ95は、第1ディスクバルブを構成し、複数枚、具体的には6枚の同外径の単体ディスク125が積層されて構成される。これら単体ディスク125は、いずれも円環状をなして取付軸部26を内周側に嵌合させている。つまり、第1ディスクバルブは、複数枚の同外径の単体ディスク125が積層されて構成される。複数枚の単体ディスク125は、外径が、第1シート51のシート面52aのピストン軸心からの最大距離の二倍よりも大径となっている。ディスクバルブ95の最もディスクバルブ92側の単体ディスク125は、シート面52aに当接して第1シート51のシート本体部52に着座する。単体ディスク125は、この状態で、第1通路41の第1室19側を閉じる。第1シート51およびディスクバルブ95の最もディスクバルブ92側の単体ディスク125には、第1通路41を第1室19に常時連通させる切欠部は形成されていない。内側シート部55の内周側に配置された第2シート61は、ディスクバルブ95と略同心の環状に形成されている。
ディスクバルブ95は、第1シート51に着座可能に載置されている。ディスクバルブ95は、第1シート51への着座位置の径が、ディスクバルブ92の第2シート61への着座位置の径よりも大径となっている。よって、ディスクバルブ95は、ディスクバルブ92よりも剛性が低く開弁し易くなっている。したがって、開弁時は、外側シート部54、内側シート部55の順に離間するように開弁する。また、上記したように、第1シート51の外側シート部54のシート幅w1を内側シート部55のシート幅w2よりも大きくしているため、ディスクバルブ95と外側シート部54との接触面積を確保することができ、外側シートに着座するバルブの受圧面積が小さくなることを抑制することができる。また、ディスクバルブ95が開弁するまでの間に、第1シート51との間から作動流体をリークさせてしまうことを抑制できる。
第1シート51の外側シート部54および内側シート部55のうち、リーク抑制に対する寄与の度合いが高い外側シート部54のシート幅w1に対して、リーク抑制に対する寄与の度合いが低い内側シート部55のシート幅w2を小さくし、その分、第2シート61をピストン径方向の外側に配置している。第2シート61をピストン径方向の外側に配置した分、ディスクバルブ92の第2シート61への着座位置がピストン径方向の外側になり、ディスクバルブ92の剛性が下がって第2シート61から離座し易くなる。また、第2シート61をピストン径方向の外側に配置した分、第2通路42の流路断面積を大きくすることが可能になる。
図2に示すように第3通路43の第1室19側の開口43aは、ディスクバルブ92,95で閉塞されることはなく、常時第1室19に連通している。
小径ディスク96は、円環状をなして取付軸部26を内周側に嵌合させている。小径ディスク96は、その外径が、中央シート66の先端面66aの外径よりも若干小径となっている。規制ディスク97は、円環状をなして取付軸部26を内周側に嵌合させている。規制ディスク97は、その外径が、小径ディスク96の外径よりも大径となっている。規制部材98は、円環状をなしている。規制部材98は、取付軸部26を内周側に嵌合させている。規制部材98は、外径が規制ディスク97の外径よりも小径で、小径ディスク96の外径よりも大径となっている。
規制部材98は、単体ディスク125の一枚よりも厚さが厚く、これらで構成されるディスクバルブ95よりも高剛性となっている。また、規制部材98は、規制ディスク97よりも厚さが厚く高剛性となっている。規制ディスク97は、ディスクバルブ95が第1シート51から離座する方向に変形した場合に、ディスクバルブ95に当接して、ディスクバルブ95の変形を抑制する。規制部材98は、ディスクバルブ95の所定量以上の変形を規制する。
ピストン12の複数の第1通路41、複数の第2通路42および環状通路67と、ピストン12の複数の第1シート51および環状の第2シート61と、複数の第1シート51に着座可能に載置される大径のディスクバルブ95と、第2シート61に着座可能に載置される小径のディスクバルブ92とが、ピストン12に設けられ作動流体の流れを抑制して減衰力を発生させる。ピストンロッド13がシリンダ11からの突出量を増やす伸び側に移動してピストン12が第2室20側に移動する際に、第2室20から第1室19に向けて流れる作動流体の流れを抑制して伸び側の減衰力を発生させる。よって、複数の第1通路41と、複数の第2通路42とは、並列に形成されている。
ピストン12の複数の第3通路43と、ピストン12の複数の第3シート71と、これら第3シート71に着座するディスクバルブ84とが、ピストン12に設けられ作動流体の流れを制御して減衰力を発生させる。ピストンロッド13がシリンダ11への進入量を増やす縮み側に移動してピストン12が第1室19側に移動する際に、第1室19から第2室20に向けて流れる作動流体の流れを抑制して縮み側の減衰力を発生させる。
緩衝器10において、ピストンロッド13がシリンダ11に対して伸び側に移動する伸び行程では、ピストンロッド13とともに移動するピストン12によって第2室20の圧力が第1室19の圧力よりも高められる。これにより、一方で、第2室20の作動流体が、複数の第1通路41にそれぞれの常時開口の開口41bから導入されて開口41aからディスクバルブ95に作用する。また、他方で、第2室20の作動流体が、複数の第2通路42にそれぞれの常時開口の開口42bから導入されて開口42aから環状通路67に出てディスクバルブ92に作用する。
このとき、ピストン12の移動速度であるピストン速度が非常に低いと、複数の第1通路41の作動流体がディスクバルブ95を第1シート51から離座させることはなく、複数の第2通路42および環状通路67の作動流体がディスクバルブ92を第2シート61から離座させることもない。そして、第2室20の作動流体は、複数の第2通路42および環状通路67から、ディスクバルブ92の単体ディスク111の切欠部121を介して第1室19に流れる。これにより、流路断面積が一定となるため、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
ここで、ディスクバルブ95が、ピストン12の一端面12Aの外周側に開口41aを有する複数の第1通路41を開閉することから、第1通路41の開口41aを囲むように設けられた第1シート51への着座位置が、ピストン12におけるピストン径方向の外側となっている。更に、ディスクバルブ95は剛性が低い。このため、ディスクバルブ95は、第1シート51から離座し易い。すなわち、第1ディスクバルブが第2ディスクバルブより先に開弁する。しかも、ディスクバルブ95は、ピストン周方向に離間して配置された複数の、いずれも周長が短い第1シート51、いわゆる異形シートに着座しているため、流量が小さくても負荷される圧力が上昇しやすい。このため、ディスクバルブ95は、さらに開弁し易い。このため、ディスクバルブ95は、ピストン速度が低速の低速域(図8のv1未満の範囲)においても、特にピストン速度が低い微低速域から開弁する。
すなわち、ピストン速度が低速の低速域において、特にピストン速度が低い微低速域から、第1通路41の作動流体がディスクバルブ95を第1シート51から離座させて開弁させる。これにより、第2室20から第1室19に、複数の第1通路41を介してディスクバルブ95と複数の第1シート51との開弁量に応じた流量で作動流体が流れる。このため、図8に実線X1の部分a1に示すように、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
なお、第1シート51において、リーク抑制に対する寄与の度合いが低い内側シート部55のシート幅w2を小さくするものの、リーク抑制に対する寄与の度合いが高い外側シート部54のシート幅w1を、内側シート部55のシート幅w2よりもよりも大きくしている。このため、ディスクバルブ95と外側シート部54との接触面積を確保することができ、ディスクバルブ95が開弁するまでの間の作動流体のリークについては、抑制することができる。
図8に、本実施形態に係る緩衝器のピストン速度と減衰力との関係を示す特性線図を示す。図8において、横軸(Vp)はピストン速度を表す。縦軸(Fd)は、減衰力を表す。図8に示すように、上記低速域よりも高速の中高速域(図8のv1以上の範囲)において、第2室20から第1室19に、複数の第1通路41からディスクバルブ95と複数の第1シート51との間を介して作動流体が流れるのみでは、図8に二点鎖線X2で示すように、減衰力が、ディスクバルブ95の剛性に依存し、ほぼリニアな特性のまま、ピストン速度の上昇に対して上昇する。
これに対し、中高速域では、複数の第1通路41の作動流体がディスクバルブ95を第1シート51から離座させて開弁させた状態となる上に、複数の第2通路42および環状通路67の作動流体がディスクバルブ92を周長の長い第2シート61から離座させて開弁させる。これにより、第2室20から第1室19に、作動流体が、複数の第1通路41からディスクバルブ95と複数の第1シート51との間を介して流れると共に、複数の第2通路42および環状通路67からディスクバルブ92と一つの周長の長い第2シート61との間を介して流れる。その際に、中高速域の比較的低いピストン速度で、複数の第2通路42および環状通路67の作動流体がディスクバルブ92を第2シート61から離座させて開弁させた状態となり、第2室20から第1室19に、複数の第2通路42および環状通路67からディスクバルブ92と第2シート61との間を介して作動流体が多く流れる。よって、図8に示す実線X1の部分a2に示すように、中高速域の比較的低いピストン速度から、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇を抑える飽和特性の減衰力特性となる。言い換えれば、中高速域において、ピストン速度の上昇に対して減衰力が急激に上昇することなく、徐々に上昇する飽和特性の減衰力特性となる。
このとき、上記したように、第1シート51の内側シート部55のシート幅w2を外側シート部54のシート幅w1よりも小さくした分、ディスクバルブ92の第2シート61への着座位置をピストン径方向の外側に配置できていることから、ディスクバルブ92の剛性が下がり第2シート61から離座し易くなっている。また、第1シート51の内側シート部55のシート幅w2を外側シート部54のシート幅w1よりも小さくした分、第2シート61をピストン径方向の外側に配置でき、第2シート61の周長を長くできている。また、第2シート61をピストン径方向の外側に配置した分、第2通路42の流路断面積を大きくできている。これらのことから、ピストン速度が、より低い状態から、複数の第2通路42および環状通路67の作動流体がディスクバルブ92を第2シート61から離座させて開弁させた状態となる。その上で、開弁状態では、複数の第2通路42および環状通路67からの作動流体が、ディスクバルブ92と第2シート61との間を介してより多く流れる。すなわち、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇を抑える飽和特性の減衰力特性となる。
以上により、複数の第1通路41および複数の第2通路42には、ピストンロッド13が伸び側に移動しこれと一体にピストン12がシリンダ11内を摺動すると、この摺動により作動流体が第2室20から第1室19に向け流れる。これにより、作動流体の流れを制御して減衰力を発生させる。
他方、ピストンロッド13がシリンダ11に対し縮み側に移動する縮み行程では、ピストンロッド13とともに移動するピストン12によって第1室19の圧力が第2室20の圧力よりも高められ、第1室19の作動流体が、複数の第3通路43にそれぞれの常時開口の開口43aから導入されて開口43bからディスクバルブ84に作用する。
このとき、ピストン速度が低速の状態では、第3通路43の作動流体は、ディスクバルブ84を第3シート71から離座させることはない。第1室19の作動流体は、ディスクバルブ92の単体ディスク111の切欠部121、環状通路67および複数の第2通路42を介して第1室19から第2室20に流れる。これにより、流路断面積が一定となるため、図8に示す実線X3の部分b1に示すように、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
ピストン速度が上記低速域よりも高速の中高速域では、第3通路43の作動流体は、ディスクバルブ84を第3シート71から離座させて開弁させる。これにより、第1室19から第2室20に、複数の第3通路43を介してディスクバルブ84と複数の第3シート71との開弁量に応じた流路断面積で作動流体が流れる。このため、図8に示す実線X3の部分b2に示すように、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
以上により、複数の第3通路43には、ピストンロッド13が縮み側に移動しこれと一体にピストン12がシリンダ11内を摺動すると、この摺動により作動流体が第1室19から第2室20に向け流れる。これにより、作動流体の流れを抑制して減衰力を発生させる。
上記した特許文献1には、ピストン速度が低速域でのバルブ特性と高速域でのバルブ特性とを独立して設定できるようにした緩衝器が記載されている。また、特許文献2には、ピストン速度の低速域から中速域にかけての減衰力特性を減衰バルブによるほぼリニアな特性にした緩衝器が記載されている。
第1実施形態の緩衝器10は、ピストン12に、ピストン周方向に離間して配置される複数の第1シート51と、これら第1シート51よりもピストン径方向の内側にこれら第1シート51とピストン径方向に離間して配置される、これら第1シート51よりも低い第2シート61とを設け、さらに、複数の第1シート51に着座可能な大径のディスクバルブ95と、第2シート61に着座可能な小径のディスクバルブ92と、を設けている。
そして、ディスクバルブ95が、ピストン12の一端面12Aの外周側に開口41aを有する複数の第1通路41を開閉することから、ディスクバルブ95は、第1シート51への着座位置が、ピストン12における径方向の外側となっており、剛性が低くなって第1シート51から離座し易い。しかも、ディスクバルブ95は、第1通路41の開口41aを囲むように設けられ、ピストン周方向に離間して配置された複数の周長の短い第1シート51に着座している。このため、負荷される圧力が上昇しやすく、ディスクバルブ95はさらに開弁し易い。よって、ディスクバルブ95は、ピストン速度が低速の低速域から開弁して、第2室20から第1室19に、複数の第1シート51との間を介して作動流体を流す。このため、ピストン速度が低速の低速域から、ほぼリニアな減衰力が発生する。
しかも、第1シート51において、リーク抑制に対する寄与の度合いが低いピストン径方向内側の内側シート部55のシート幅w2を小さくするものの、リーク抑制に対する寄与の度合いが高いピストン径方向外側の外側シート部54のシート幅w1を、内側シート部55のシート幅w2よりもよりも大きくしている。このため、ディスクバルブ95が開弁するまでの微低速域の作動流体のリークについては抑制することができる。
また、上記低速域よりも高速の中高速域においては、第2室20から第1室19に、作動流体が、複数の第1通路41からディスクバルブ95と複数の第1シート51との間を介して流れると共に、複数の第2通路42および環状通路67からディスクバルブ92と一つの周長の長い第2シート61との間を介して流れる。よって、中高速域において、ピストン速度が低い状態から、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇を抑える飽和特性の減衰力特性となる。
このとき、上記したように、第1シート51の内側シート部55のシート幅w2を外側シート部54のシート幅w1よりも小さくした分、ディスクバルブ92の第2シート61への着座位置をピストン径方向の外側に配置できていることから、ディスクバルブ92の剛性が下がり第2シート61から離座し易くなっている。また、第1シート51の内側シート部55のシート幅w2を外側シート部54のシート幅w1よりも小さくした分、第2シート61をピストン径方向の外側に配置でき、周長を長くできている。また、第2シート61をピストン径方向の外側に配置した分、第2通路42の流路断面積を大きくできている。これらのことから、ピストン速度が、より低い状態から、複数の第2通路42および環状通路67の作動流体がディスクバルブ92を第2シート61から離座させて開弁させた状態となり、その上で、開弁状態では、複数の第2通路42および環状通路67からの作動流体が、ディスクバルブ92と第2シート61との間を介してより多く流れる。よって、中高速域において、ピストン速度が、より低い状態から、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇を抑える飽和特性の減衰力特性となる。
また、小径の環状部材としての介装ディスク94を小径ディスク93とディスクバルブ95との間に配置させることで、第1シート51のシート面52aと、第2シート61のシート面61aとのピストン軸方向の距離に応じて、複数枚の介装ディスク94の枚数を増減させ、第1シート51のシート面52aと、第2シート61のシート面61aとのピストン軸方向の距離が、ディスクバルブ92、小径ディスク93および複数枚の介装ディスク94の全体の厚さと同等になるように調整することができる。以上にように構成することで、介装ディスク94の積層する枚数を変更し、ディスクバルブ92の単体ディスク112の枚数を増加、減少させることができる。この場合、ディスクバルブ92に応じて、複数の第2通路42および環状通路67からの作動流体が、ディスクバルブ92と第2シート61との間を介して流れることによって発生する減衰力を調整することができる。
つまり、チューナビリティを確保することができる。
ここで、第1シート51の内側シート部55のシート幅w2を外側シート部54のシート幅w1よりも小さくすることは、特にピストン12の外径が小さい緩衝器10の場合に高い効果を発揮する。具体的には、ピストン12の外径がφ35mmよりも小さいピストン12を有する緩衝器10の場合に、特に効果的である。
以上の実施形態においては、伸び側の減衰力を発生させる側に、本発明の構成を適用しているが、縮み側の減衰力を発生させる側に適用しても良く、伸び側および縮み側の両方に適用しても良い。
以上に述べた実施形態の第1の態様によれば、緩衝器は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダに設けられるバルブ本体と、前記バルブ本体の一端面の外周側に開口する複数の第1通路と、前記第1通路の開口の一つまたは複数を囲むように設けられ、前記バルブ本体の周方向に離間して配置される複数の第1シートと、前記第1シートを構成する、円弧状の外側シート部と、内側シート部と、前記バルブ本体の一端面の前記内側シート部の内周側に開口する複数の第2通路と、前記複数の第1シートを閉塞するように着座可能に載置され、開弁時に前記外側シート部、前記内側シート部の順に離間する環状で内周側がクランプされた大径の第1ディスクバルブと、を有する。前記外側シート部のシート幅が、前記内側シート部のシート幅よりも大きい。これにより、外側シートに着座するバルブの受圧面積が小さくなることを抑制することができる。
第2の態様によれば、第1の態様において、前記内側シート部の内周側に、前記第1ディスクバルブと略同心の環状に形成され、前記複数の第2通路を囲む第2シートを有することを特徴とする。これにより、中高速域において、ピストン速度の上昇に対して減衰力が急激に上昇することなく、徐々に上昇する飽和特性の減衰力特性となる。
第3の態様によれば、第1または第2の態様において、前記バルブ本体は、ピストンであることを特徴とする。これにより、ピストンロッドの移動により、作動流体の流れを制御して減衰力を発生させる。
第4の態様によれば、第1乃至第3の何れか一態様において、前記ピストンに対して突出する前記第1シートより前記第2シートを低く形成し、前記第1ディスクバルブの前記バルブ本体側に重ねて、外周が前記第2シートに着座するように環状の第2ディスクバルブを設けたことを特徴とする。これにより、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇を抑える飽和特性の減衰力特性となる。
第5の態様によれば、第1乃至第4の何れか一態様において、前記第1ディスクバルブが前記第2ディスクバルブより先に開弁することを特徴とする。これにより、ピストン速度が低速の低速域においても、バルブ特性の減衰力が発生する。
第6の態様によれば、第1乃至第5の何れか一態様において、前記第1ディスクバルブと前記第2ディスクバルブとの間には前記第2ディスクバルブより小径の環状部材を設けたことを特徴とする。これにより、チューナビリティを確保することができる。