「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態を図1および図2に基づいて説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、図面における上側を「上」とし、図面における下側を「下」として説明する。
第1実施形態の緩衝器1は、図1に示すように、いわゆる複筒型の油圧緩衝器であり、作動液体としての油液(図示略)が封入されたシリンダ2を有している。シリンダ2は、円筒状の金属製の内筒3と、この内筒3よりも大径で内筒3を覆うように同心状に設けられた有底円筒状の外筒4とを有しており、内筒3と外筒4との間にリザーバ室6が形成されている。
外筒4は、円筒状の金属製の胴部材11と、胴部材11の下部を閉塞する金属製の底部材12とからなっている。底部材12には、胴部材11とは反対側となる外側に取付アイ13が固定されている。
緩衝器1は、シリンダ2の内筒3内に摺動可能に嵌装されたピストン16を備えている。内筒3内に設けられたこのピストン16は、内筒3内をピストン16の軸方向の一側にある上室17(一側室)と、ピストン16の軸方向の他側にある下室18(他側室)とに区画している。内筒3内の上室17および下室18内には作動流体としての油液が封入され、内筒3と外筒4との間のリザーバ室6内には作動流体としての油液とガスとが封入されている。
緩衝器1は、一端側がシリンダ2の内筒3内に配置されてピストン16に連結されると共に他端側がシリンダ2の外部に延出された金属製のピストンロッド21を備えている。ピストン16およびピストンロッド21は一体に移動する。ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を増やす伸び行程において、ピストン16は上室17側へ移動することになり、ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を減らす縮み行程において、ピストン16は下室18側へ移動することになる。
内筒3および外筒4の上端開口側には、ロッドガイド22が嵌合されており、外筒4にはロッドガイド22よりもシリンダ2の外部側である上側にシール部材23が装着されている。ロッドガイド22およびシール部材23は、いずれも環状をなしている。ピストンロッド21は、これらロッドガイド22およびシール部材23のそれぞれの内側に摺動可能に挿通されており、これらロッドガイド22およびシール部材23を介してシリンダ2の外部に延出されている。上室17は、内筒3内のピストン16とロッドガイド22との間に形成されている。
ここで、ロッドガイド22は、ピストンロッド21を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持して、このピストンロッド21の移動を案内する。シール部材23は、その外周部で外筒4に密着し、その内周部で、軸方向に移動するピストンロッド21の外周部に摺接して、内筒3内の油液と、外筒4内のリザーバ室6の高圧ガスおよび油液とが外部に漏洩するのを防止する。
ロッドガイド22は、その外周部が、下部よりも上部が大径となる段差状をなしており、小径の下部において内筒3の上端の内周部に嵌合し大径の上部において外筒4の上部の内周部に嵌合する。外筒4の底部材12上には、下室18とリザーバ室6とを画成するベースバルブ25が設置されており、このベースバルブ25に内筒3の下端の内周部が嵌合されている。外筒4の上端部は、径方向内方に加締められて加締部26とされ、この加締部26とロッドガイド22とがシール部材23を挟持している。下室18は、内筒3内のピストン16とベースバルブ25との間に形成されている。
ピストンロッド21は、主軸部31と、これより小径の取付軸部32とを有しており、主軸部31の取付軸部32側の端部は、軸直交方向に広がる軸段部33となっている。取付軸部32は、シリンダ2内に配置されており、その主軸部31とは反対側の端部にオネジ34が形成されている。取付軸部32には、ピストン16が、オネジ34に螺合された金属製のナット35により締結されている。言い換えれば、ピストンロッド21がピストン16にナット35により締結されている。
緩衝器1は、例えばピストンロッド21のシリンダ2からの突出部分が上部に配置されて車体により支持され、シリンダ2側の取付アイ13が下部に配置されて車輪側に連結される。これとは逆に、シリンダ2側が車体により支持され、ピストンロッド21が車輪側に連結されるようにしても良い。車輪が走行に伴って振動すると該振動に伴ってシリンダ2とピストンロッド21との位置が相対的に変化するが、上記変化はピストン16に形成された流路の流体抵抗により抑制される。
図2に示すように、ピストン16は、軸方向の軸段部33側から順に、規制部材37と、当接ディスク38と、小径ディスク39と、複数枚の単体ディスクが積層されて構成されるバルブディスク40と、ピストン体41(第1バルブ本体)と、複数枚の単体ディスクが積層されて構成されるバルブディスク42(第1ディスク)と、複数枚の単体ディスクが積層されて構成される小径ディスク43と、を有している。これら規制部材37、当接ディスク38、小径ディスク39、バルブディスク40、ピストン体41、バルブディスク42および小径ディスク43は、いずれも金属製である。また、ピストン16は、ピストン体41の外周面に装着されて、内筒3の内周面に摺接する円環帯状の合成樹脂製の摺接部材44を有している。
規制部材37は、円環状をなしており、取付軸部32が内周側に嵌合される。規制部材37は、外径が軸段部33の外径よりも大径となっている。規制部材37は、いずれも薄板からなる当接ディスク38、小径ディスク39、バルブディスク40を構成する単体ディスク、バルブディスク42を構成する単体ディスクおよび小径ディスク43を構成する単体ディスクよりも厚さが厚く高剛性となっている。
当接ディスク38は、円環状をなして取付軸部32を内周側に嵌合させている。当接ディスク38は、外径が規制部材37の外径よりも大径となっている。小径ディスク39は、円環状をなして取付軸部32を内周側に嵌合させている。小径ディスク39は、外径が規制部材37の外径よりも小径となっている。
バルブディスク40は、これを構成する単体ディスクがいずれも円環状をなして取付軸部32を内周側に嵌合させている。バルブディスク40は、軸方向のピストン体41側ほど外径が大径となっている。バルブディスク40は、軸方向のピストン体41側の端部の外径である最大外径が当接ディスク38の外径よりも大径となっており、軸方向の小径ディスク39側の端部の外径である最小外径が小径ディスク39の外径よりも大径となっている。
ピストン体41は、その径方向の中央に、ピストンロッド21の取付軸部32を嵌合させる嵌合孔50が軸方向に貫通するように形成されて円環状をなしている。また、ピストン体41には、径方向の嵌合孔50よりも外側にて軸方向に延在する直線状の通路51と、径方向の嵌合孔50よりも外側にて軸方向に延在する直線状の通路52とが形成されている。通路51はピストン体41に周方向に等間隔で複数カ所(図面は断面とした関係上一カ所のみ図示)形成されており、通路52もピストン体41に周方向に等間隔で複数カ所(図面は断面とした関係上一カ所のみ図示)形成されている。通路51と通路52とはピストン体41の周方向に交互に配置されている。
また、ピストン体41には、軸方向のバルブディスク40側の端部で複数の通路51を連通させるようにピストン体41の全周にわたって環状をなす環状通路53と、軸方向のバルブディスク42側の端部で複数の通路52を繋ぐようにピストン体41の全周にわたって環状をなす環状通路54とが形成されている。
環状通路53が形成されることで、ピストン体41の軸方向のバルブディスク40側の端部には、ピストン体41の径方向において環状通路53よりも内側の環状の内側シート56と環状通路53よりも外側の環状の外側シート57とがいずれもピストン体41の軸方向に突出して形成されている。言い換えれば、ピストン体41のバルブディスク40側には、環状の外側シート57と、外側シート57の径方向内側の環状の内側シート56とが軸方向に突設されている。複数の通路52は、バルブディスク40側の開口部が、バルブディスク42側の開口部よりも径方向外側に位置しており、外側シート57よりも径方向外側に開口している。
バルブディスク40は、軸方向のピストン体41側の端部の外径である最大外径が外側シート57のバルブディスク40側の端面の外径とほぼ同径となっている。よって、バルブディスク40は、内側シート56および外側シート57に着座可能に載置されている。バルブディスク40は、外側シート57に対しては離着座可能となっている。当接ディスク38は、バルブディスク40の外側シート57からの離座時の所定以上の変形をこれに当接して規制する。バルブディスク40には、外側シート57に当接した状態でも上室17と環状通路53とを連通させる固定オリフィス58が形成されている。
環状通路54が形成されることで、ピストン体41の軸方向のバルブディスク42側の端部には、ピストン体41の径方向において環状通路54よりも内側の内側シート61と環状通路54よりも外側の外側シート62(第1シート)とがいずれもピストン体41の軸方向に突出して設けられている。言い換えれば、ピストン体41のバルブディスク42側には、環状の外側シート62と、外側シート62の径方向内側の環状の内側シート61とが軸方向に突設されている。
バルブディスク42は、これを構成する単体ディスクがいずれも円環状をなして取付軸部32を内周側に嵌合させている。バルブディスク42は、軸方向のピストン体41側ほど外径が大径となっている。バルブディスク42は、軸方向のピストン体41側の端部の外径である最大外径が外側シート62のバルブディスク42側の端面の外径より若干大径となっており、内側シート61および外側シート62に着座可能に載置されている。バルブディスク42は、外側シート62に対しては離着座可能となっている。バルブディスク42には、外側シート62に当接した状態でも環状通路54をバルブディスク42よりも外側に連通させる固定オリフィス63が形成されている。小径ディスク43は、これを構成する単体ディスクがいずれも円環状をなして取付軸部32を内周側に嵌合させている。小径ディスク43は、外径がバルブディスク42の小径ディスク43側の端部の外径である最小外径よりも小径となっている。
ピストン体41には、その外周部に、軸方向のバルブディスク40側に偏って装着ベース部65が形成されており、この装着ベース部65に摺接部材44が装着されている。ピストン体41の外周部には、装着ベース部65よりも軸方向のバルブディスク42側に装着ベース部65よりも小径の嵌合部66が形成されている。嵌合部66は、円筒状の外周嵌合面67と外周嵌合面67から径方向内方に凹む円環状のシール溝68とを有している。嵌合部66は、ピストン体41における軸方向の内側シート61および外側シート62側に設けられており、外周嵌合面67がピストン体41における径方向の外側シート62よりも外周側に設けられている。複数の通路51は、バルブディスク40とは反対側の開口部が、バルブディスク40側の開口部よりも径方向外側に位置しており、外側シート62よりも径方向外側にある装着ベース部65と嵌合部66との間位置に開口している。
ピストン16は、さらに、軸方向の軸段部33側から順に、ピストン体71(第2バルブ本体)と、複数枚の単体ディスクが積層されて構成されるガイドディスク72および複数枚の単体ディスクが積層されて構成されるバルブディスク73(第2ディスク)と、複数枚の単体ディスクが積層されて構成される支持ディスク74と、複数枚の単体ディスクが積層されて構成される当接ディスク75と、規制部材76とを有している。これらピストン体71、ガイドディスク72、バルブディスク73、支持ディスク74、当接ディスク75および規制部材76は、いずれも金属製である。規制部材76は、いずれも薄板からなるガイドディスク72を構成する単体ディスク、バルブディスク73を構成する単体ディスク、支持ディスク74を構成する単体ディスク、当接ディスク75を構成する単体ディスクよりも厚さが厚く高剛性となっている。
また、ピストン16は、ピストン体41とピストン体71との間に介装されるゴム製のシール部材77を有している。
ピストン体71は、円筒状の筒部81と、筒部81の軸方向一端の径方向内側に設けられた底部82とを有する有底筒状をなしている。底部82は、筒部81の軸直交方向に広がって設けられている。筒部81と底部82との間には、内角位置にR面取り83が設けられている。R面取り83は、底部82側ほど小径となっており、筒部81と底部82とを滑らかに繋いでいる。
ピストン体71には、その径方向の中央である底部82の中央に、ピストンロッド21の取付軸部32を嵌合させる嵌合孔85が軸方向に貫通するように形成されている。また、底部82には、径方向の嵌合孔85よりも外側且つR面取り83よりも内側にて底部82の内部を軸方向に貫通する複数の通路86が軸方向の筒部81側に形成されている。複数の通路86は底部82に周方向に等間隔で形成されている。複数の通路86は、ピストン体41側となる軸方向の筒部81側の開口位置に筒部81側ほど大径となるテーパ部87が設けられており、軸方向の筒部81とは反対側が軸方向位置によらず一定内径の一定内径部88となっている。底部82には、軸方向の筒部81とは反対側に、複数の通路86を連通させるようにピストン体71の全周にわたって環状をなす環状通路91が形成されている。
環状通路91が形成されることで、ピストン体71の軸方向のピストン体41とは反対側の端部には、ピストン体71の径方向において環状通路91よりも内側の環状の内側シート92と環状通路91よりも外側の環状の外側シート93(第2シート)とがいずれもピストン体71の軸方向に突出して形成されている。言い換えれば、ピストン体71のピストン体41とは反対側には、環状の外側シート93と、外側シート93の径方向内側の環状の内側シート92とが軸方向に突設されている。
ピストン体71には、筒部81の底部82とは反対側の外周部に底部82から離れるほど小径となるテーパ部95が設けられており、底部82の外周部に、筒部81から離れるほど小径となるテーパ部96が設けられている。ピストン体71は、底部82が、バルブディスク42の外側シート62からの離座時の所定以上の変形をこれに当接して規制する。
ガイドディスク72は、これを構成する単体ディスクがいずれも環状をなして取付軸部32を内周側に嵌合させている。ガイドディスク72には、外周部に周方向に間隔をあけて複数の切欠101が形成されている。ガイドディスク72は、最大外径が、内側シート92のガイドディスク72側の端面の外径よりも大径で、外側シート93のバルブディスク73側の端面の内径よりも小径となっている。支持ディスク74は、これを構成する単体ディスクがいずれも円環状をなして取付軸部32を内周側に嵌合させている。支持ディスク74は、外径がガイドディスク72の最大外径よりも大径となっている。
当接ディスク75は、これを構成する単体ディスクがいずれも円環状をなして取付軸部32を内周側に嵌合させている。当接ディスク75は、外径が支持ディスク74の外径よりも大径となっている。規制部材76は、円環状をなして取付軸部32を内周側に嵌合させており、外径が支持ディスク74の外径よりも大径且つ当接ディスク75の外径よりも小径となっている。
バルブディスク73は、これを構成する単体ディスクがいずれも円環状をなしている。バルブディスク73は、その内径が、ガイドディスク72の最大外径よりも若干大径であって支持ディスク74の外径よりも小径となっており、その外径が、ピストン体71の外側シート93のバルブディスク73側の端面の外径とほぼ同径となっている。バルブディスク73は、外側シート93に離着座可能に載置されており、支持ディスク74に着座可能に載置されている。当接ディスク75は、バルブディスク73の外側シート93からの離座時の所定以上の変形をこれに当接して規制する。
ピストン16をピストンロッド21に組み付ける場合、ピストンロッド21には、取付軸部32をそれぞれの内側に挿通させた状態で、規制部材37と、当接ディスク38と、小径ディスク39と、バルブディスク40と、摺接部材44およびシール部材77が設けられたピストン体41と、バルブディスク42と、小径ディスク43と、ピストン体71と、ガイドディスク72とが、この順に、軸段部33に重ねられる。その際に、予めシール溝68にシール部材77が配置された状態のピストン体41の嵌合部66にピストン体71の筒部81を嵌合させる。
また、ガイドディスク72を内側に挿通させた状態で、バルブディスク73がピストン体71の外側シート93に重ねられる。さらに、取付軸部32をそれぞれの内側に挿通させた状態で、支持ディスク74と、当接ディスク75と、規制部材76とが、ガイドディスク72およびバルブディスク73に、この順に、重ねられる。
このように部品が配置された状態で、規制部材76よりも突出する取付軸部32のオネジ34にナット35が螺合される。これにより、規制部材37と、当接ディスク38と、小径ディスク39と、バルブディスク40と、摺接部材44およびシール部材77が設けられたピストン体41と、バルブディスク42と、小径ディスク43と、ピストン体71と、ガイドディスク72と、支持ディスク74と、当接ディスク75と、規制部材76とは、それぞれ内周側または全部がピストンロッド21の軸段部33とナット35とに挟持されて軸方向にクランプされる。その際に、バルブディスク73は、軸方向にクランプされることはない。ナット35は、汎用の六角ナットである。
このようにしてピストンロッド21に取り付けられた状態のピストン16は、その支持ディスク74と外側シート93との軸方向の最小距離が、バルブディスク73の軸方向厚さよりも短くなっており、これにより、バルブディスク73は、その環状通路91側と下室18側とに圧力差がないとき、セット荷重をもって内周側が全周にわたって支持ディスク74に当接し、セット荷重をもって外周側が全周にわたって外側シート93に当接する。これにより、環状通路91と下室18との連通を遮断する。
この状態から環状通路91の圧力がセット荷重分を超えて下室18の圧力よりも高くなると、バルブディスク73は、支持ディスク74のバルブディスク73側の外周角部を支点に撓んで外周側が外側シート93から離れ、環状通路91と下室18とを連通させる。その際に、バルブディスク73は、内周側が全周にわたって支持ディスク74の外周角部に当接した状態のまま、内周縁部が、切欠101が周方向に断続的に複数形成されたガイドディスク72の外周部に案内されて径方向移動が抑制されながら支持ディスク74から離れる方向に移動する。
バルブディスク73は、このように、その内周側が、両面側からクランプされずに片面側のみ支持ディスク74に支持される単純支持構造となっている。
ピストンロッド21に取り付けられた状態のピストン16は、ピストン体41の外側シート62よりも外周側に円筒状の外周嵌合面67を有する嵌合部66と、ピストン体71の円筒状の内周嵌合面107を有する筒部81とがシール部材77を介して嵌合されている。このとき、嵌合部66の外周嵌合面67と筒部81の内周嵌合面107とが軸方向位置を重ね合わせて径方向に対向しており、嵌合部66のシール溝68の軸方向の全長を筒部81の内周嵌合面107が軸方向に横断している。
ここで、筒部81の内周嵌合面107の内径は、嵌合部66の外周嵌合面67の外径よりも大きく、よって、筒部81と嵌合部66とが径方向に隙間をもって嵌合可能となっている。また、内周嵌合面107の内径は、シール溝68に配置されたシール部材77の筒部81への嵌合前の外径よりも小さくなっており、よって、シール溝68に配置されたシール部材77は外径が縮径した状態で筒部81に嵌合する。これにより、嵌合部66と筒部81とは、シール部材77を介して液密的に嵌合する。その結果、ピストン体41とピストン体71との間の内部の中間通路108が、嵌合部66と筒部81との嵌合のための隙間を介して下室18に連通してしまうことを規制する。
また、ピストンロッド21に取り付けられた状態のピストン16は、そのピストン体71の筒部81が、ピストン体41の装着ベース部65から軸方向に離間しており、筒部81のテーパ部95は複数の通路51の方向に向いている。
ピストン体41の複数の通路51は、ピストン体41の軸線方向における上室17側が径方向内側に、軸線方向における下室18側が径方向外側に、それぞれ開口している。そして、これらの通路51の上室17側を結ぶように環状通路53が形成されている。環状通路53の径方向両側の内側シート56および外側シート57と、環状通路53を閉塞するように内側シート56および外側シート57に着座可能に載置されたバルブディスク40とが減衰力発生機構111を構成している。減衰力発生機構111は、ピストン体41の軸方向の一端側である上室17側に配置されて、ピストンロッド21に取り付けられている。
減衰力発生機構111は、上室17から環状通路53および複数の通路51を介する下室18側への油液の流れに対しては閉状態を維持する一方、下室18から複数の通路51および環状通路53を介する上室17側への油液の流れに対して開くものであり、よって、複数の通路51および環状通路53は、ピストンロッド21およびピストン16が縮み側に移動するときに油液が通過する縮み側の通路となっている。つまり、複数の通路51および環状通路53は、縮み行程でのピストン16の移動により、下室18から上室17に向けて油液が流れ出す縮側通路117となっている。縮側通路117はピストン体41の内部を軸方向に貫通している。そして、縮側通路117に対して設けられた減衰力発生機構111は、縮側通路117の油液の流れを抑制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構となっている。
ピストン体41の複数の通路52は、ピストン体41の軸線方向における上室17側が径方向外側に、軸線方向における中間通路108側が径方向内側に、それぞれ開口している。そして、これらの通路52の中間通路108側を結ぶように環状通路54が形成されている。また、ピストン体71の複数の通路86は中間通路108内に開口しており、ピストン体71の複数の通路86を繋ぐ環状通路91は下室18側に配置されている。
環状通路54の径方向両側の内側シート61および外側シート62と、環状通路54を閉塞するように内側シート61および外側シート62に着座可能に載置されたバルブディスク42とが減衰バルブ113を構成しており、内側シート61および外側シート62を含むピストン体41がこの減衰バルブ113の本体部分となっている。減衰バルブ113は、ピストン体41の軸方向の他端側である中間通路108側に配置されてピストンロッド21に取り付けられている。
環状通路91の径方向両側の内側シート92および外側シート93と、環状通路91を閉塞するように内側シート92および外側シート93に着座可能に載置されたバルブディスク73とが減衰バルブ114を構成しており、内側シート92および外側シート93を含むピストン体71がこの減衰バルブ114の本体部分となっている。減衰バルブ114は、ピストン体71の軸方向のピストン体41とは反対側である下室18側に配置されてピストンロッド21に取り付けられている。
そして、これら減衰バルブ113および減衰バルブ114が減衰力発生機構115を構成している。
減衰力発生機構115の減衰バルブ113は、中間通路108から環状通路54および複数の通路52を介する上室17側への油液の流れに対しては閉状態を維持する一方、上室17から複数の通路52および環状通路54を介する中間通路108側への油液の流れに対して開くものである。減衰バルブ114は、中間通路108から複数の通路86および環状通路91を介する下室18側への油液の流れに対して開くものである。よって、複数の通路52、環状通路54、中間通路108、複数の通路86および環状通路91は、ピストンロッド21およびピストン16が伸び側に移動するときに油液が通過する伸び側の通路となっている。つまり、複数の通路52、環状通路54、中間通路108、複数の通路86および環状通路91は、伸び行程でのピストン16の移動により、上室17から下室18に向けて油液が流れ出す伸側通路118(通路)となっている。伸側通路118はピストン体41,71の内部を軸方向に貫通している。そして、伸側通路118に対して設けられた減衰力発生機構115は、伸側通路118の油液の流れを抑制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構となっている。
複数の縮側通路117および伸側通路118は、いずれも、ピストン16の内筒3内での摺動により作動流体である油液が流れ出す通路であり、これら縮側通路117および伸側通路118の一部である伸側通路118に、伸側通路118の油液の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰力発生機構115が設けられている。ピストン体41には、伸側通路118の一部である複数の通路51および環状通路53が内部を軸方向に貫通して形成されており、ピストン体71には、伸側通路118の一部である複数の通路86および環状通路91が内部を軸方向に貫通して形成されている。上室17の油液が下室18に向けて流れ出す伸側通路118に減衰バルブ113と減衰バルブ114とが直列に設けられている。
図1に示すように、外筒4の底部材12と内筒3との間には、上記したベースバルブ25が設けられている。このベースバルブ25は、下室18とリザーバ室6とを仕切るベースバルブ部材131と、このベースバルブ部材131の下側つまりリザーバ室6側に設けられた減衰バルブ132と、ベースバルブ部材131の上側つまり下室18側に設けられたサクションバルブ133と、ベースバルブ部材131に減衰バルブ132およびサクションバルブ133を取り付ける取付ピン134とを有している。
ベースバルブ部材131は、円環状をなしており、内周側に取付ピン134が嵌合されている。ベースバルブ部材131には、下室18とリザーバ室6との間で油液を流通させる複数の通路135と、これら通路135の径方向の外側にて、下室18とリザーバ室6との間で油液を流通させる複数の通路136とが形成されている。リザーバ室6側の減衰バルブ132は、下室18から通路135を介するリザーバ室6への油液の流れを許容する一方でリザーバ室6から下室18への通路135を介する油液の流れを抑制する。サクションバルブ133は、リザーバ室6から通路136を介する下室18への油液の流れを許容する一方で下室18からリザーバ室6への通路136を介する油液の流れを抑制する。
減衰バルブ132は、緩衝器1の縮み行程において開弁して下室18からリザーバ室6に油液を流すとともに減衰力を発生させる。サクションバルブ133は、緩衝器1の伸び行程において開弁してリザーバ室6から下室18内に油液を流す。なお、サクションバルブ133は、主としてピストンロッド21の内筒3からの伸び出しにより生じる液の不足分を補うようにリザーバ室6から下室18に実質的に減衰力を発生させることなく液を流す機能を果たす。
第1実施形態の緩衝器1において、伸び行程では、ピストン16の移動により上室17の圧力が高くなるとともに下室18の圧力が低くなり、上室17の油液が、伸側通路118を介して下室18側に流れようとする。ピストン16の移動速度であるピストン速度が極低速のとき、上室17の油液は、伸側通路118を構成する複数の通路52および環状通路54から、減衰バルブ113を構成するバルブディスク42を外側シート62に当接させた状態のまま、バルブディスク42に形成された固定オリフィス63を流れ、伸側通路118を構成する中間通路108、複数の通路86および環状通路91を流れて、減衰バルブ114を構成するバルブディスク73を外側シート93から離間させながらバルブディスク73と外側シート93との隙間を介して下室18に流れる。これにより、減衰バルブ114のバルブディスク73および外側シート93が伸側通路118の油液の流れを抑制してバルブ特性の減衰力を発生させる。このとき、バルブディスク73は、支持ディスク74のバルブディスク73側の外周角部を支点に撓んで外周側が外側シート93から離れ、その際に、内周側が全周にわたって支持ディスク74の外周角部に当接した状態のまま、内周縁部が、ガイドディスク72の外周部に案内されて径方向移動が抑制されながら支持ディスク74から離れる方向に移動する。
また、ピストン速度が上記よりも速くなると、上室17の油液は、複数の通路52および環状通路54から減衰バルブ113を構成するバルブディスク42を外側シート62から離間させながら、バルブディスク42と外側シート62との隙間を介して中間通路108に流れ、中間通路108、複数の通路86および環状通路91を介して、減衰バルブ114を構成するバルブディスク73を外側シート93から離間させながら、バルブディスク73と外側シート93との隙間を介して下室18に流れる。これにより、減衰バルブ113のバルブディスク42および外側シート62と、減衰バルブ114のバルブディスク73および外側シート93とが伸側通路118の油液の流れを抑制してバルブ特性の減衰力を発生させる。
縮み行程では、ピストン16の移動により下室18の圧力が高くなるとともに上室17の圧力が低くなり、下室18の油液が、縮側通路117を介して上室17側に流れる。ピストン速度が低速のとき、下室18の油液は、縮側通路117から、減衰力発生機構111を構成するバルブディスク40を外側シート57に当接させた状態のまま、バルブディスク40に形成された固定オリフィス58を介して上室17側に流れ、減衰力発生機構111の固定オリフィス58が縮側通路117の油液の流れを抑制してオリフィス特性の減衰力を発生させる。また、ピストン速度が上昇すると、下室18から縮側通路117に導入された油液が、バルブディスク40を開きながらバルブディスク40と外側シート57との間を通って上室17に流れ、減衰力発生機構111のバルブディスク40および外側シート57が縮側通路117の油液の流れを抑制してバルブ特性の減衰力を発生させる。
上記した特許文献1には、ピストン本体内の作動流体の流路に沿って第1バルブおよび第2バルブを直列に設けるために、ピストン本体を二部品で構成した緩衝器が記載されている。この緩衝器においては、二部品の結合部分からの作動流体の漏れを規制する必要があるため、隙間が生じないように一方の部品に他方の部品を圧入する必要がある。しかし、圧入は部品に歪みを生じることがあり、第1バルブおよび第2バルブのシート部分が変形する等して減衰力特性が不安定となる可能性がある。
これに対して、第1実施形態の緩衝器1は、ピストンロッド21の軸段部33とピストンロッド21に螺合されるナット35とによりピストン16をピストンロッド21に軸力をもって締結する際に、ピストン体41の外側シート62よりも外周側の嵌合部66とピストン体71の筒部81とがシール部材77を介して嵌合されるため、ピストン体41とピストン体71とを圧入せずに隙間なく結合することができる。よって、ピストン体41に突設された内側シート56,61および外側シート57,62と、ピストン体71に突設された内側シート92および外側シート93とに生じる歪みを抑制することができる。その結果、バルブディスク40をピストン体41の内側シート56および外側シート57に安定的に着座させることができ、バルブディスク42をピストン体41の内側シート61および外側シート62に安定的に着座させることができ、バルブディスク73をピストン体71の外側シート93に安定的に着座させることができる。したがって、減衰力特性を安定させることができる。
しかも、圧入部があると、ピストンロッド21の軸段部33とナット35とによるピストン16の締結時に締結軸力がこの圧入部によって損なわれてしまうことがあるが、このようなことがなくなり、ピストン16を規定の締結軸力でピストンロッド21に締結することができる。
また、ピストン体71の筒部81の底部82とは反対側の外周部に底部82から離れるほど小径となるテーパ部95が設けられており、このテーパ部95は複数の通路51の方向に向いているため、縮み行程時にピストン体71の径方向外側から複数の通路51内へ油液が流れ込む際の急激な圧力変動を緩和することができる。よって、異音の発生を抑制することができる。
また、ピストン体71の内部を貫通する複数の通路86のピストン体41側つまり油液の流れの上流側にテーパ部87が設けられているため、複数の通路86で生じる圧力損失を抑制することができる。よって応答性が良好になる。
また、ピストン体71の筒部81と底部82との間の内角位置にR面取り83が設けられているため、ピストン体71とピストン体41との間の中間通路108で生じる圧力損失を抑制することができる。よって応答性が良好になる。
ここで、第1実施形態において、上記とは逆に、ピストン体71の筒部81に内周嵌合面107から径方向外方に凹む環状のシール溝を形成し、このシール溝にシール部材を配置して、これらにピストン体41のシール溝のない嵌合部66を嵌合させても良い。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図3に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図3に示すように、第2実施形態では、ピストン16Aが第1実施形態のピストン16とは一部異なっている。ピストン16Aは、第1実施形態のピストン体41をほぼ二分割した形状のいずれも金属製のピストン体41Aとピストン体41B(第1バルブ本体)とを有している。つまり、ピストン16Aは、ピストン体41Aと、ピストン体41Bと、第1実施形態と同様のピストン体71とを有している。
ピストン16Aは、いずれも第1実施形態と同様の規制部材37、当接ディスク38、小径ディスク39およびバルブディスク40を有しており、バルブディスク40にピストン体41Aが重ねられ、ピストン体41Aのバルブディスク40とは反対側にピストン体41Bが重ねられている。
ピストン体41Aは、その径方向の中央に、ピストンロッド21の取付軸部32を嵌合させる嵌合孔50Aが軸方向に貫通するように形成されて円環状をなしている。また、ピストン体41Aには、径方向の嵌合孔50Aよりも外側にて軸方向に延在する屈曲形状の通路51Aと、径方向の嵌合孔50Aよりも外側にて軸方向に延在する屈曲形状の通路52Aとが形成されている。図3では断面とした関係上一カ所のみ図示しているが、通路51Aおよび通路52Aは、いずれもピストン体41Aに周方向に複数カ所形成されており、ピストン体41Aの周方向に交互に配置されている。
また、ピストン体41Aには、軸方向のバルブディスク40側の端部に、複数の通路51Aを連通させる第1実施形態と同様の環状通路53と、その径方向内側の内側シート56と、環状通路53の径方向外側の外側シート57とが形成されている。複数の通路52Aは、バルブディスク40側の開口部が、バルブディスク40とは反対側の開口部よりも径方向外側に位置しており、外側シート57よりも径方向外側に開口している。
また、ピストン体41Aには、軸方向のバルブディスク40とは反対側の端部で複数の通路52Aを繋ぐようにピストン体41Aの全周にわたって環状をなす環状通路54Aが形成されている。環状通路54Aが形成されることで、ピストン体41Aの軸方向のバルブディスク40とは反対側の端部には、ピストン体41Aの径方向において環状通路54Aよりも内側の内側当接部61Aと環状通路54Aよりも外側の外側当接部62Aとがいずれもピストン体41Aの軸方向に突出して設けられている。複数の通路51Aは、バルブディスク40とは反対側の開口部が、バルブディスク40側の開口部よりも径方向外側に位置しており、外側当接部62Aよりも径方向外側に開口している。
ピストン体41Aは、焼結により成形されるものであり、軸方向の中央に対して両側が同じ形状となっており、表裏の区別がない。つまり、軸方向のいずれの向きでもピストンロッド21に取り付けることができる。
ピストン体41Bは、その径方向の中央に、ピストンロッド21の取付軸部32を嵌合させる嵌合孔50Bが軸方向に貫通するように形成されて円環状をなしている。また、ピストン体41Bには、径方向の嵌合孔50Bよりも外側にて軸方向に延在する複数の通路51Bが周方向に等間隔で形成されている。
また、ピストン体41Bには、軸方向のピストン体41A側の端部で複数の通路51Bを繋ぐようにピストン体41Bの全周にわたって環状をなす環状通路53Bが形成されている。環状通路53Bが形成されることで、ピストン体41Bの軸方向のピストン体41A側の端部には、ピストン体41Bの径方向において環状通路53Bよりも内側の内側当接部56Bと環状通路53Bよりも外側の外側当接部57Bとが設けられている。
また、ピストン体41Bには、軸方向のピストン体41Aとは反対側の端部に、複数の通路51Bを連通させる第1実施形態と同様の環状通路54と、その径方向内側の内側シート61と、環状通路54の径方向外側の外側シート62とが形成されている。
ピストン体41Aには、その外周部に、摺接部材44が装着される第1実施形態と同様の装着ベース部65が形成されており、ピストン体41Bには、その外周部に、外周嵌合面67と外周嵌合面67から径方向内方に凹むシール溝68とを有する第1実施形態と同様の嵌合部66が形成されている。嵌合部66は、その外周嵌合面67がピストン体41Bの径方向における外側シート62よりも外周側に設けられている。嵌合部66のシール溝68には、第1実施形態と同様のシール部材77が配置されている。
ピストン16Aは、いずれも第1実施形態と同様のバルブディスク42、小径ディスク43、ピストン体71、ガイドディスク72、バルブディスク73、支持ディスク74、当接ディスク75および規制部材76を有している。
ピストン16Aをピストンロッド21に組み付ける場合、ピストンロッド21には、取付軸部32をそれぞれの内側に挿通させた状態で、規制部材37と、当接ディスク38と、小径ディスク39と、バルブディスク40と、摺接部材44が設けられたピストン体41Aと、シール部材77が設けられたピストン体41Bと、バルブディスク42と、小径ディスク43と、ピストン体71と、ガイドディスク72とが、この順に、軸段部33に重ねられる。その際に、ピストン体41Aおよびピストン体41Bは、内側当接部61Aと内側当接部56Bとを全周にわたって当接させ、外側当接部62Aと外側当接部57Bとを全周にわたって当接させることになる。この状態で、環状通路54Aと環状通路53Bとが連通する。また、この状態で、予めシール溝68にシール部材77が配置された状態のピストン体41Bの嵌合部66にピストン体71の筒部81を嵌合させる。
また、ガイドディスク72を内側に挿通させた状態で、バルブディスク73がピストン体71の外側シート93に重ねられる。さらに、取付軸部32をそれぞれの内側に挿通させた状態で、支持ディスク74、当接ディスク75、規制部材76が、ガイドディスク72およびバルブディスク73に、この順に、重ねられる。
このように部品が配置された状態で、規制部材76よりも突出する取付軸部32のオネジ34にナット35が螺合される。これにより、規制部材37と、当接ディスク38と、小径ディスク39と、バルブディスク40と、摺接部材44が設けられたピストン体41Aと、シール部材77が設けられたピストン体41Bと、バルブディスク42と、小径ディスク43と、ピストン体71と、ガイドディスク72と、支持ディスク74と、当接ディスク75と、規制部材76とは、それぞれ内周側または全部がピストンロッド21の軸段部33とナット35とに挟持されて軸方向にクランプされる。その際に、バルブディスク73は、軸方向にクランプされることはない。
このように軸方向にクランプされることで、ピストン体41Aおよびピストン体41Bは、内側当接部61Aと内側当接部56Bとが全周にわたって隙間なく密着し、外側当接部62Aと外側当接部57Bとが全周にわたって隙間なく密着することになる。言い換えれば、内側当接部61Aと内側当接部56Bとの間が全周にわたって密封され、外側当接部62Aと外側当接部57Bとの間が全周にわたって密封される。つまり、ピストン体41Aおよびピストン体41Bの環状通路54A,53Bからの油液の漏れが規制される。
このようにしてピストンロッド21に取り付けられた状態のピストン16Aは、嵌合部66と筒部81とが、シール部材77を介して液密的に嵌合し、嵌合部66と筒部81との隙間を介して、ピストン体41Bとピストン体71との間の中間通路108が下室18に連通するのを規制する。また、ピストン体71の筒部81のテーパ部95がピストン体41Aの複数の通路51Aの方向に向いている。
ピストン体41Aの複数の通路51Aおよび環状通路53が、ピストンロッド21およびピストン16が縮み側に移動するときに油液が通過する縮側通路117Aとなっており、この縮側通路117Aに減衰力発生機構111が設けられている。
複数の通路52A、環状通路54A、環状通路53B、複数の通路51B、環状通路54、中間通路108、複数の通路86および環状通路91が、ピストンロッド21およびピストン16が伸び側に移動するときに油液が通過する伸側通路118A(通路)となっており、この伸側通路118Aに減衰力発生機構115が設けられている。
ピストン体41Aには、伸側通路118Aの一部である複数の通路52Aおよび環状通路54Aがその内部を軸方向に貫通して形成されており、ピストン体41Bには、伸側通路118Aの一部である環状通路53B、複数の通路51B、環状通路54がその内部を軸方向に貫通して形成されている。
第2実施形態においても 伸び行程では、ピストン速度が極低速のとき、上室17の油液は、伸側通路118Aを構成する複数の通路52A、環状通路54A、環状通路53B、複数の通路51Bおよび環状通路54から、減衰バルブ113を構成するバルブディスク42を外側シート62に当接させた状態のまま、バルブディスク42に形成された固定オリフィス63および伸側通路118Aを構成する中間通路108、複数の通路86および環状通路91を流れ、減衰バルブ114を構成するバルブディスク73を外側シート93から離間させながらバルブディスク73と外側シート93との隙間を介して下室18に流れる。これにより、減衰バルブ114のバルブディスク73および外側シート93が伸側通路118Aの油液の流れを抑制してバルブ特性の減衰力を発生させる。
また、ピストン速度が上記よりも速くなると、上室17の油液は、複数の通路52A、環状通路54A、環状通路53B、複数の通路51Bおよび環状通路54から、減衰バルブ113を構成するバルブディスク42を外側シート62から離間させながら、バルブディスク42と外側シート62との隙間を介して中間通路108に流れ、中間通路108、複数の通路86および環状通路91から、減衰バルブ114を構成するバルブディスク73を外側シート93から離間させながらバルブディスク73と外側シート93との隙間を介して下室18に流れる。これにより、減衰バルブ113のバルブディスク42および外側シート62と減衰バルブ114のバルブディスク73および外側シート93が伸側通路118Aの油液の流れを抑制してバルブ特性の減衰力を発生させる。
縮み行程では、下室18の油液が、縮側通路117Aを介して上室17側に流れる。ピストン速度が低速のとき、下室18の油液は、縮側通路117Aから減衰力発生機構111を構成するバルブディスク40を外側シート57に当接させた状態のまま、バルブディスク40に形成された固定オリフィス58を介して上室17側に流れ、減衰力発生機構111の固定オリフィス58が縮側通路117Aの油液の流れを抑制してオリフィス特性の減衰力を発生させる。また、ピストン速度が上昇すると、下室18から縮側通路117Aに導入された油液が、バルブディスク40を開きながらバルブディスク40と外側シート57との間を通って上室17に流れ、減衰力発生機構111のバルブディスク40および外側シート57が縮側通路117Aの油液の流れを抑制してバルブ特性の減衰力を発生させる。
第2実施形態においては、第1実施形態と同様の効果を奏することができ、加えて、一のピストン体41Bを、通路51Bの断面積がこれとは異なる他のピストン体41Bに交換するのみで、減衰バルブ114による減衰力特性を変更することができ、ピストン体41Aは減衰力特性の変更時も共用できる。
第2実施形態においても、上記とは逆に、ピストン体71の筒部81に内周嵌合面107から径方向外方に凹む環状のシール溝を形成して、このシール溝にシール部材を配置し、これらにピストン体41Bのシール溝のない嵌合部66を嵌合させても良い。
上記実施形態は、複筒式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らず、外筒をなくしシリンダ内の下室の上室とは反対側に摺動可能な区画体でガス室を形成するモノチューブ式の油圧緩衝器に用いてもよく、あらゆる緩衝器に用いることができる。勿論、上記した縮み側の減衰力発生機構111に本発明を適用したり、上記したベースバルブ25に本発明を適用することも可能である。また、シリンダ2の外部にシリンダ2内と連通する油通路を設け、この油通路に減衰力発生機構を設ける場合にも適用可能である。また、上記実施形態では、油圧緩衝器を例に示したが、流体として水や空気を用いることもできる。
以上に述べた実施形態は、作動流体が封入されたシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内を一側室および他側室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、前記ピストンの摺動により作動流体が流れ出す通路と、前記通路の一部に設けられ作動流体の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰力発生機構と、を備え、前記減衰力発生機構は、前記通路の一部がその内部を貫通する第1バルブ本体と、前記第1バルブ本体に突設された環状の第1シートと、前記第1シートに着座可能に載置された第1ディスクと、前記第1バルブ本体の前記第1シートよりも外周側に嵌合される筒部および底部を有し前記通路の一部がその内部を貫通する有底筒状の第2バルブ本体と、前記第2バルブ本体に突設された環状の第2シートと、前記第2シートに着座可能に載置された第2ディスクと、を備え、前記第1バルブ本体の前記第1シートよりも外周側と前記第2バルブ本体の前記筒部とがシール部材を介して嵌合されている。これにより、第1バルブ本体の第1シートよりも外周側と第2バルブ本体の筒部とがシール部材を介して嵌合されるため、第1バルブ本体と第2バルブ本体とを圧入せずに隙間なく結合することができる。よって、第1バルブ本体に突設された第1シートおよび第2バルブ本体に突設された第2シートに生じる歪みを抑制することができる。その結果、第1ディスクを第1バルブ本体の第1シートに安定的に着座させることができ、第2ディスクを第2バルブ本体の第2シートに安定的に着座させることができる。したがって、減衰力特性を安定させることができる。
また、前記第2バルブ本体の前記筒部の前記底部とは反対側の外周部にテーパ部が設けられているため、第2バルブ本体の筒部の底部とは反対側の外周部に沿って流れる作動流体の急激な圧力変動を抑制することができる。
また、前記第2バルブ本体の前記通路の前記第1バルブ本体側にテーパ部が設けられているため、第2バルブ本体の内部を貫通する通路で生じる圧力損失を抑制することができる。
また、前記第2バルブ本体の前記筒部と前記底部との間の内角位置にR面取りが設けられているため、第1バルブ本体と第2バルブ本体との間の通路で生じる圧力損失を抑制することができる。