本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、図面における上側を「上」とし、図面における下側を「下」として説明する。
図1に示すように、本実施形態の緩衝器11は、いわゆる単筒型の油圧緩衝器であり、作動流体としての油液が封入されるシリンダ12を有している。シリンダ12は、有底円筒状の一体成形品であり、その上部開口側を覆うようにカバー15が取り付けられている。カバー15にはシリンダ12とは反対側に板状体16が取り付けられている。シリンダ12は、円筒状の胴部21と、胴部21の下部を閉塞する底部22とからなっており、胴部21の底部22とは反対側が開口している。
カバー15は、筒状部25と筒状部25の上端側から径方向内方に延出する内フランジ部26とを有している。カバー15は、胴部21の上端開口部を内フランジ部26で覆い胴部21の外周面を筒状部25で覆うように胴部21の開口側に被せられており、この状態で、筒状部25の一部が径方向内方に加締められて胴部21に固定されている。内フランジ部26の筒状部25とは反対側に板状体16が固定されている。
シリンダ12の胴部21内には、ピストン30が摺動可能に嵌装されている。このピストン30は、シリンダ12内を第1室31と第2室32との2室に区画している。また、シリンダ12の胴部21内には、ピストン30よりも底部22側に区画ピストン35が設けられている。区画ピストン35は、底部22との間に第2室32と区画して室36を形成している。シリンダ12内の第1室31および第2室32内には作動流体としての油液が封入されており、シリンダ12内の室36内には高圧ガスが封入されている。
シリンダ12内には、その開口側からピストンロッド41の一端側が挿入されており、ピストンロッド41はその他端側がシリンダ12の外部へと延出されている。ピストン30は、このピストンロッド41のシリンダ12内に配置される一端側に連結されている。ピストン30およびピストンロッド41は一体に移動する。ピストンロッド41がシリンダ12からの突出量を増やす伸び行程において、ピストン30は第1室31側へ移動することになり、ピストンロッド41がシリンダ12からの突出量を減らす縮み行程において、ピストン30は第2室32側へ移動することになる。第1室31はピストンロッド41が配置されたピストンロッド41側の室となり、第2室32はシリンダ12の底部22側にあるボトム側の室となっている。
シリンダ12の上端開口側には、ロッドガイド42が嵌合されており、ロッドガイド42よりもシリンダ12の外部側である上側にシール部材43が嵌合されている。シリンダ12の上端部は、一部が径方向内方に加締められて、シール部材43を係止している。ロッドガイド42とシール部材43との間には摩擦部材44が設けられている。ロッドガイド42、シール部材43および摩擦部材44は、いずれも環状をなしており、ピストンロッド41は、これらロッドガイド42、摩擦部材44およびシール部材43のそれぞれの内側に摺動可能に挿通されてシリンダ12の外部に延出されている。
ここで、ロッドガイド42は、ピストンロッド41を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持して、このピストンロッド41の移動を案内する。シール部材43は、その外周部でシリンダ12に密着し、その内周部で、軸方向に移動するピストンロッド41の外周部に摺接して、シリンダ12内の油液が外部に漏洩するのを防止する。摩擦部材44は、その内周部でピストンロッド41の外周部に摺接して、ピストンロッド41に摩擦抵抗を発生させる。なお、摩擦部材44は、シールを目的とするものではない。
ピストンロッド41は、ロッドガイド42、シール部材43および摩擦部材44に挿通されてシリンダ12から外部へと延出されるロッド本体51と、ロッド本体51のシリンダ12内側の端部のオネジ52にメネジ54において螺合されてロッド本体51から底部22側に延びる先端ロッド55と、ロッド本体51を内側に挿通させて先端ロッド55に当接する円環部材57と、円環部材57を先端ロッド55との間で挟持するようにオネジ52に螺合されるナット部材58とから構成されている。
ロッド本体51の先端ロッド55側の外周部には、係止部材61が固定されている。ロッド本体51の外周側には、係止部材61とロッドガイド42との間に、円環状のバネ受62,63が設けられている。これらバネ受62,63は、ロッド本体51を内側に挿通させることでロッド本体51に沿って摺動可能となっている。これらバネ受62,63の間には、コイルスプリングからなるリバウンドスプリング64が、その内側にロッド本体51を挿通させるようにして介装されている。ロッドガイド42側のバネ受63のリバウンドスプリング64とは反対には円環状の弾性材料からなる緩衝体65が設けられている。緩衝体65もロッド本体51を内側に挿通させることでロッド本体51に沿って摺動可能となっている。
先端ロッド55は、メネジ54が形成された基軸部71と、これより小径の取付軸部72とを有している。取付軸部72にはピストン30等が取り付けられている。基軸部71の取付軸部72側の端部は、軸直交方向に沿って広がる軸段部73となっている。取付軸部72の外周部には、軸方向の中間位置に軸方向に延在する通路溝75が形成されており、軸方向の基軸部71とは反対側の先端位置にオネジ76が形成されている。通路溝75は、ピストンロッド41の中心軸線に直交する面での断面の形状が長方形、正方形、D字状のいずれかをなすように形成されている。
緩衝器11は、例えばピストンロッド41のシリンダ12からの突出部分が上部に配置されて車体により支持され、シリンダ12の底部22側が下部に配置されて車輪側に連結される。これとは逆に、シリンダ12側が車体により支持され、ピストンロッド41が車輪側に連結されるようにしても良い。車輪が走行に伴って振動すると該振動に伴ってシリンダ12とピストンロッド41との位置が相対的に変化するが、上記変化はピストン30およびピストンロッド41の少なくともいずれか一方に形成された流路の流体抵抗により抑制される。以下で詳述するごとくピストン30およびピストンロッド41の少なくともいずれか一方に形成された流路の流体抵抗は振動の速度や振幅により異なるように作られており、振動を抑制することにより、乗り心地が改善される。上記シリンダ12とピストンロッド41との間には、車輪が発生する振動の他に、車両の走行に伴って車体に発生する慣性力や遠心力も作用する。例えばハンドル操作により走行方向が変化することにより車体に遠心力が発生し、この遠心力に基づく力がシリンダ12とピストンロッド41との間に作用する。以下で説明するとおり、緩衝器11は車両の走行に伴って車体に発生する力に基づく振動に対して良好な特性を有しており、車両走行における高い安定性が得られる。
図2に示すように、ピストン30は、ピストン本体83を有している。ピストン本体83は、互いに連結されて内周部に先端ロッド55の取付軸部72が嵌合される二つの金属製のピストン構成体80,81と、ピストン構成体80,81の外周面に一体に装着されてシリンダ12内を摺動する円環状の合成樹脂製の摺動部材82とを有している。ピストン30は、このピストン本体83が、シリンダ12内を第1室31と第2室32との2室に区画している。
ピストン本体83には、軸方向に貫通することで第1室31と第2室32とを連通可能な複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴88と、軸方向に貫通することで第1室31と第2室32とを連通可能な複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴89とが設けられている。つまり、複数の通路穴88内の通路と複数の通路穴89内の通路とが、ピストン30の移動により第1室31と第2室32との間を作動流体である油液が流れるように連通する。通路穴88は、ピストン本体83の円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴89を挟んで等ピッチで形成されており、ピストン本体83の軸方向一側(図2の上側)が径方向外側に軸方向他側(図2の下側)が径方向内側に開口している。
これら半数の通路穴88に対して、減衰力を発生する減衰力発生機構90が設けられている。減衰力発生機構90は、ピストン本体83の軸方向の一端側である第2室32側に配置されて、ピストンロッド41に取り付けられる弁体91(第1弁体)を有している。通路穴88は、その内側の通路が、ピストン30の第1室31側への移動、つまりピストンロッド41およびピストン30が伸び側(図2の上側)に移動する伸び行程において油液が通過する伸び側の通路108(第1通路)を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構90は、伸び側の通路108の油液の流動を抑制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構となっている。弁体91は、通路108に設けられて減衰力を発生させる。
また、残りの半数を構成する通路穴89は、ピストン本体83の円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴88を挟んで等ピッチで形成されており、ピストン本体83の軸線方向他側(図2の下側)が径方向外側に軸線方向一側(図2の上側)が径方向内側に開口している。
これら残り半数の通路穴89に、減衰力を発生する減衰力発生機構92が設けられている。減衰力発生機構92は、ピストン本体83の軸方向の他端側である第1室31側に配置されて、ピストンロッド41に取り付けられる弁体93を有している。通路穴89は、その内側の通路が、ピストン30の第2室32側への移動、つまりピストンロッド41およびピストン30が縮み側(図2の下側)に移動する縮み行程において油液が通過する縮み側の通路119(第1通路)を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構92は、縮み側の通路119内の通路の油液の流動を抑制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構となっている。弁体93は、通路119に設けられて減衰力を発生させる。
ピストン本体83は、円環状をなしており、その内周部に先端ロッド55の取付軸部72が嵌合している。ピストン本体83の軸方向の第2室32側の端部には、通路穴88の第2室32側の開口よりも径方向外側に、弁体91とで減衰力発生機構90を構成する環状のバルブシート部97が形成されている。また、ピストン本体83の軸方向の第1室31側の端部には、通路穴89の第1室31側の開口よりも径方向外側に、弁体93とで減衰力発生機構92を構成する環状のバルブシート部99が形成されている。
ピストン本体83において、バルブシート部97の外周側は、バルブシート部97よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に縮み側の通路穴89の第2室32側の開口が配置されている。また、同様に、ピストン本体83において、バルブシート部99の外周側は、バルブシート部99よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に伸び側の通路穴88の第1室31側の開口が配置されている。
弁体91は、複数枚の有孔円板状のディスク101が重ねられて構成されており、最もピストン本体83側のディスク101の外径が最も大径で、最もピストン本体83とは反対側のディスク101の外径がこれよりも小径となっている。また、積み重ね方向の中間部のディスク101の外径は、これらの中間径となっている。これらディスク101の内周部に取付軸部72が嵌合している。弁体91は、最もピストン本体83側のディスク101でピストン本体83のバルブシート部97に当接して、通路穴88内の通路を開閉する。
弁体91とピストン本体83との間には、複数枚の有孔円板状のディスク103が設けられている。これらディスク103は、いずれもバルブシート部97の内径よりも外径が小径となっている。弁体91のピストン本体83とは反対側には、有孔円板状のディスク104が設けられている。このディスク104は、弁体91のピストン本体83とは反対側の端部のディスク101よりも外径が小径となっている。ディスク104の弁体91とは反対側には、有孔円板状のディスク105が設けられている。このディスク105は、ディスク104よりも外径が大径となっている。これらディスク103〜105の内周部に取付軸部72が嵌合している。
弁体91は、バルブシート部97に離着座可能であり、バルブシート部97から離座することで通路穴88内の通路を第2室32に開放可能であって、第1室31から第2室32への油液の流れを許容しつつ抑制する。弁体91のバルブシート部97に当接するディスク101には、外周側に切欠部107が形成されており、この切欠部107は、ディスク101がバルブシート部97に当接状態にあっても第1室31と第2室32とを連通させる固定オリフィス106をバルブシート部97とで構成している。ディスク105は、弁体91の開方向への規定以上の変形を抑制する。
ピストン本体83に設けられた伸び側の通路穴88内の通路と、固定オリフィス106と、離座時の弁体91とバルブシート部97との隙間とが、伸び行程でのピストン30の移動により第1室31から第2室32に向けて油液が流れ出す伸び側の通路108を構成している。伸び側の減衰力発生機構90は、この伸び側の通路108に設けられて減衰力を発生させる。
弁体93は、複数枚の有孔円板状のディスク111が重ねられて構成されており、最もピストン本体83側のディスク111の外径が最も大径で、最もピストン本体83とは反対側のディスク111の外径がこれよりも小径となっている。また、積み重ね方向の中間部のディスク111の外径は、これらの中間径となっている。これらディスク111の内周部に取付軸部72が嵌合している。弁体93は、最もピストン本体83側のディスク111でピストン本体83のバルブシート部99に当接して、通路穴89内の通路を開閉する。
弁体93とピストン本体83との間には、有孔円板状の複数枚のディスク113が設けられている。これらディスク113は、同外径であり、バルブシート部99の内径よりも外径が小径となっている。弁体93のピストン本体83とは反対側には、有孔円板状のディスク114が設けられている。このディスク114は、弁体93のピストン本体83とは反対側の端部のディスク111よりも外径が小径となっている。ディスク114の弁体93とは反対側には、有孔円板状の複数枚のディスク115が設けられている。これらディスク115は、同外径であり、ディスク114よりも外径が大径となっている。ディスク115のディスク114とは反対側には、有孔円板状のディスク116が設けられている。このディスク116は、ディスク115よりも外径が小径となっている。これらディスク113〜116の内周部に取付軸部72が嵌合している。
弁体93は、バルブシート部99に離着座可能であり、バルブシート部99から離座することで通路穴89内の通路を第1室31に開放可能であって、第2室32から第1室31への油液の流れを許容しつつ抑制する。弁体93のバルブシート部99に当接するディスク111には、外周側に切欠部118が形成されている。この切欠部118は、ディスク111がバルブシート部99に当接状態にあっても第1室31と第2室32とを連通させる固定オリフィス117をバルブシート部99とで構成している。ディスク115は、弁体93の開方向への規定以上の変形を抑制する。
ピストン本体83に設けられた縮み側の通路穴89内の通路と、固定オリフィス117と、離座時の弁体93とバルブシート部99との隙間とが、縮み行程でのピストン30の移動により第2室32から第1室31に向けて油液が流れ出す縮み側の通路119を構成している。縮み側の減衰力発生機構92は、この縮み側の通路119に設けられて減衰力を発生させる。
先端ロッド55の取付軸部72には、ディスク116の弁体93とは反対側に隣接して、バルブ機構131が設けられている。バルブ機構131は、ピストン本体83と共にピストン30を構成している。バルブ機構131は、ケース体132と、通路形成部材133と、弁体134(第3弁体)と、シート部材135と、Oリング136と、弁体137(第3弁体)とを有している。
ケース体132は、有孔円板状の底板部141と、底板部141の外周側から軸方向に延出する円筒状の筒状部142とを有しており、底板部141の内周部に取付軸部72が嵌合している。ケース体132は、底板部141がディスク116に当接しており、筒状部142を底板部141からディスク116とは反対方向に延出させている。
通路形成部材133は、ケース体132の筒状部142内に配置されている。通路形成部材133は、円筒状の通路形成部145と、通路形成部145の軸方向の一端側から径方向内方に突出する円環状の内フランジ部146とを有している。内フランジ部146の内周部に取付軸部72が嵌合しており、通路形成部145がケース体132の底板部141に当接している。通路形成部145には、径方向に貫通する通路溝147が形成されている。取付軸部72の通路溝75は、ケース体132の底板部141を横断しており、内フランジ部146と底板部141との間位置に開口している。通路形成部材133の底板部141とは反対側に弁体134が設けられている。
シート部材135は、円環状をなしており、内周部に取付軸部72が嵌合している。シート部材135は、ケース体132の筒状部142内に配置されて、弁体134の通路形成部材133とは反対側に配置されている。シート部材135は、外周部にOリング136が装着されており、外周部においてケース体132の筒状部142内に嵌合している。その際に、Oリング136がシート部材135とケース体132との隙間をシールする。シート部材135は、ケース体132との間に、中間室150を、第1室31と区画して形成している。
シート部材135には、第1室31と中間室150とを連通させる複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴151と、第1室31と中間室150とを連通させる複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴152とが設けられている。通路穴151は、シート部材135の円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴152を挟んで等ピッチで形成されており、シート部材135の軸方向一側(図2の上側)が径方向外側に軸方向他側(図2の下側)が径方向内側に開口している。
これら半数の通路穴151に対して、減衰力を発生する弁体134を含む減衰力発生機構155が設けられている。減衰力発生機構155の弁体134は、シート部材135の軸方向の一端側にある中間室150側に配置されて、ピストンロッド41に取り付けられている。通路穴151内の通路は、ピストンロッド41およびピストン30が伸び側(図2の上側)に移動するときに油液が通過する伸び側の通路であり、これらに対して設けられた減衰力発生機構155は、伸び側の通路穴151内の通路の油液の流動を抑制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構となっている。
また、残りの半数を構成する通路穴152は、シート部材135の円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴151を挟んで等ピッチで形成されており、シート部材135の軸線方向他側(図2の下側)が径方向外側に軸線方向一側(図2の上側)が径方向内側に開口している。
これら残り半数の通路穴152に対して、減衰力を発生する弁体137を含む減衰力発生機構156が設けられている。減衰力発生機構156の弁体137は、シート部材135の軸方向の他端側である中間室150とは反対側に配置されて、ピストンロッド41に取り付けられている。通路穴152内の通路は、ピストンロッド41およびピストン30が縮み側(図2の下側)に移動するときに油液が通過する縮み側の通路であり、これらに対して設けられた減衰力発生機構156は、縮み側の通路穴152内の通路の油液の流動を抑制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構となっている。
シート部材135の軸方向の中間室150側の端部には、通路穴151の中間室150側の開口よりも径方向外側に、弁体134とで減衰力発生機構155を構成する環状のバルブシート部161が形成されている。また、シート部材135の軸方向の中間室150とは反対側の端部には、通路穴152の第1室31側の開口よりも径方向外側に、弁体137とで減衰力発生機構156を構成する環状のバルブシート部162が形成されている。
シート部材135において、バルブシート部161の径方向外側は、バルブシート部161よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に縮み側の通路穴152の中間室150側の開口が配置されている。また、同様に、シート部材135において、バルブシート部162の径方向外側は、バルブシート部162よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に伸び側の通路穴151の第1室31側の開口が配置されている。
弁体134は、複数枚の有孔円板状のディスク171が重ねられて構成されており、最もシート部材135側のディスク171の外径が最も大径で、最もシート部材135とは反対側のディスク171の外径がこれよりも小径となっている。また、積み重ね方向の中間部のディスク171の外径は、これらの中間径となっている。これらディスク171の内周部に取付軸部72が嵌合している。弁体134は、最もシート部材135側のディスク171でシート部材135のバルブシート部161に当接して、通路穴151内の通路を開閉する。
弁体134とシート部材135との間には、複数枚の有孔円板状のディスク173が設けられている。これらディスク173は、同外径であり、バルブシート部161の内径よりも外径が小径となっている。弁体134のシート部材135とは反対側には、複数枚の有孔円板状のディスク174が設けられている。これらディスク174は、同外径であり、弁体134のシート部材135とは反対側の端部のディスク171よりも外径が小径となっている。ディスク174の弁体134とは反対側には、有孔円板状の複数枚のディスク175が設けられている。これらディスク175は、同外径であり、ディスク174よりも外径が大径となっている。これらディスク173〜175の内周部に取付軸部72が嵌合している。ディスク175は、通路形成部材133の内フランジ部146に当接している。
弁体134は、バルブシート部161に離着座可能であり、バルブシート部161から離座することで通路穴151内の通路を中間室150に開放可能である。弁体134は、第1室31から中間室150への油液の流れを許容しつつ抑制する。弁体134のバルブシート部161に当接するディスク171には、外周側に切欠部177が形成されている。この切欠部177は、ディスク171がバルブシート部161に当接状態にあっても第1室31と中間室150とを連通させる固定オリフィス176をバルブシート部161とで構成している。ディスク175は、弁体134の開方向への規定以上の変形を抑制する。
弁体137は、有孔円板状の複数枚のディスク181が重ねられて構成されており、最もシート部材135側のディスク181の外径が最も大径で、最もシート部材135とは反対側のディスク181の外径がこれよりも小径となっている。また、積み重ね方向の中間部のディスク181の外径は、これらの中間径となっている。これらディスク181の内周部に取付軸部72が嵌合している。弁体137は、最もシート部材135側のディスク181でシート部材135のバルブシート部162に当接して、通路穴152内の通路を開閉する。
弁体137とシート部材135との間には、複数枚の有孔円板状のディスク183が設けられている。これらディスク183は、同外径であり、バルブシート部162の内径よりも外径が小径となっている。弁体137のシート部材135とは反対側には、複数枚のディスク184が設けられている。これらディスク184は、同外径であり、弁体137のシート部材135とは反対側の端部のディスク181よりも外径が小径となっている。ディスク184の弁体134とは反対側には、有孔円板状のディスク185が設けられている。このディスク185は、ディスク184よりも外径が大径となっている。ディスク185のディスク184とは反対側には、円環状の円環部材186が設けられている。円環部材186は、ディスク185よりも外径が小径となっている。これらディスク183〜185および円環部材186の内周部に取付軸部72が嵌合している。円環部材186は、先端ロッド55の軸段部73に当接している。
弁体137は、バルブシート部162に離着座可能であり、バルブシート部162から離座することで通路穴152内の通路を第1室31に開放可能である。弁体137は、中間室150から第1室31への油液の流れを許容しつつ抑制する。弁体137のバルブシート部162に当接するディスク181には、外周側に切欠部188が形成されている。この切欠部188は、ディスク181がバルブシート部162に当接状態にあっても第1室31と中間室150とを連通させる固定オリフィス187をバルブシート部162とで構成している。ディスク185は、弁体137の開方向への規定以上の変形を抑制する。
図3に示すように、先端ロッド55の取付軸部72には、ディスク105の弁体91とは反対側に隣接して、伸び行程および縮み行程でピストン30の往復動の周波数(以下、ピストン周波数と称す)に感応して減衰力を可変とする周波数感応部200が設けられている。
周波数感応部200は、軸方向のディスク105側から順に、ケース部材201と、弁体202(第2弁体)と、蓋部材203とを有している。ケース部材201と蓋部材203とには、内周部に先端ロッド55の取付軸部72が嵌合している。取付軸部72もケース部材201内に配置される部分が周波数感応部200を構成している。弁体202は、有孔円板状であり、内側に取付軸部72を貫通させて、ケース部材201内に配置されている。蓋部材203は、ケース部材201に嵌合されて、弁体202を収容するハウジング210をケース部材201とで構成する。
ケース部材201は、軸直交方向に沿う有孔円板状の基部211と、基部211の内周端部から軸方向一側に突出する円環状の環状突出部212と、基部211の内周部よりも若干径方向外側から軸方向他側に突出する円筒状の内側円筒状部213と、基部211の径方向の内側円筒状部213よりも外側の中間位置から内側円筒状部213と同側に、内側円筒状部213よりも突出する円筒状のシート部214(第2支持壁部)と、基部211の外周縁部からシート部214と同側に、シート部214よりも延出する円筒状の外周壁部215とを有している。外周壁部215の内周面は一定径の円筒面216となっている。
ケース部材201の基部211および環状突出部212の内周部に先端ロッド55の取付軸部72が嵌合している。取付軸部72の通路溝75は、基部211および環状突出部212を軸方向に横断して、内側円筒状部213と軸方向に重なる位置に開口している。通路溝75は、図2に示すケース体132の底板部141、ディスク116、複数枚のディスク115、ディスク114、弁体93、複数枚のディスク113、ピストン本体83、複数枚のディスク103、弁体91、ディスク104、ディスク105および図3に示すケース部材201の環状突出部212および基部211を軸方向に貫通している。
内側円筒状部213には、周方向部分的に径方向に貫通する切欠部220が複数、周方向に等間隔で形成されており、これにより、ケース部材201における内側円筒状部213の径方向内側と径方向外側とが切欠部220内の通路で常時連通する。シート部214には、周方向部分的に径方向に貫通する切欠部221が複数、周方向に等間隔で形成されており、これにより、ケース部材201におけるシート部214の径方向内側と径方向外側とが切欠部221内の通路で常時連通する。シート部214は、径方向外側が基部211側ほど大径となるように傾斜するテーパ面225となっている。
蓋部材203は、軸直交方向に沿う有孔円板状の基部231と、基部231の内周部よりも若干径方向外側から軸方向一側に突出する円筒状の内側円筒状部232と、基部231の内側円筒状部232よりも径方向外側の中間位置から内側円筒状部232と同側に、内側円筒状部232よりも短く突出する円筒状のシート部233(第1支持壁部)とを有している。内側円筒状部232の外周面は一定径の円筒面234となっている。蓋部材203の基部231の内周部に先端ロッド55の取付軸部72が嵌合している。
シート部233には、周方向部分的に径方向に貫通する切欠部238が複数、周方向に等間隔で形成されており、これにより、蓋部材203におけるシート部233の径方向内側と径方向外側とが切欠部238内の通路で常時連通する。シート部233は、径方向内側が基部231側ほど小径となるように傾斜するテーパ面239となっている。蓋部材203の基部231には、シート部233よりも径方向外側に軸方向に貫通する複数の貫通穴240が周方向に間隔をあけて形成されている。
蓋部材203は、内側円筒状部232およびシート部233をケース部材201の基部211側に突出させる姿勢で、内側円筒状部232が内側円筒状部213に当接する位置まで、ケース部材201の外周壁部215内に嵌合されてハウジング210を構成する。蓋部材203の内側円筒状部232とケース部材201の内側円筒状部213とは、内外径が同径であり、当接して内周壁部241を構成している。
ハウジング210は、径方向内側から順に、内周壁部241、シート部233、シート部214、外周壁部215が同軸状に配置されている。シート部233と外周壁部215との間に貫通穴240が配置されている。ケース部材201のシート部214の基部211とは反対側の先端位置は、蓋部材203の基部231から離間しており、蓋部材203のシート部233の基部231とは反対側の先端位置は、ケース部材201の基部211から離間している。ハウジング210は、剛性が高く変形困難となっている。
弁体202は、有孔円板状の本体部材251と、本体部材251の一方の面252(第1面)の内周側に接合された内周側リップシール253(第1リップシール)と、本体部材251の面252とは反対側の面255(第2面)の外周側に接合された外周側リップシール256(第2リップシール)と、を有している。弁体202は、弾性変形可能、つまり撓み可能となっている。
有孔円板状の本体部材251は、バネ鋼等のバネ性のある金属製であり、ハウジング210内に組み込まれる前の自然状態において一定厚さの平板状をなす。本体部材251は、内径が内周壁部241の外径よりも大径かつシート部233の最小内径よりも小径となっており、外径が外周壁部215の内径よりも小径かつシート部214の最大外径よりも大径となっている。
内周側リップシール253は、ゴム等のシール性のある弾性材料製であり、有孔円板状の基部261と、基部261の外周縁部から軸方向一側に突出する円環状の外周リップ部262と、基部261の内周縁部から外周リップ部262と同側に突出する円環状の内周リップ部263とを有している。ハウジング210内に組み込まれる前の自然状態において内周側リップシール253は、外周リップ部262が基部261から軸方向に離れるほど大径となるテーパ状であり、内周リップ部263が基部261から軸方向に離れるほど小径となるテーパ状である。よって、内周側リップシール253は、中心軸線を含む面での断面の形状がV字状のカップシールである。内周側リップシール253は、基部261の外周リップ部262および内周リップ部263の突出側とは反対側の面において本体部材251の面252の内周縁部側に、本体部材251と同軸をなすように接着されて固定されている。
外周側リップシール256は、ゴム等のシール性のある弾性材料製であり、有孔円板状の基部271と、基部271の外周縁部から軸方向一側に突出する円環状の外周リップ部272と、基部271の内周縁部から外周リップ部272と同側に突出する円環状の内周リップ部273とを有している。ハウジング210内に組み込まれる前の自然状態において外周側リップシール256は、外周リップ部272が基部271から軸方向に離れるほど大径となるテーパ状であり、内周リップ部273が基部271から軸方向に離れるほど小径となるテーパ状である。よって、外周側リップシール256は、中心軸線を含む面での断面の形状がV字状のカップシールである。外周側リップシール256は、内外径共に内周側リップシール253よりも大径となっている。外周側リップシール256は、基部271の外周リップ部272および内周リップ部273の突出側とは反対側の面において本体部材251の面255の外周縁部側に、本体部材251と同軸をなすように接着されて固定されている。
弁体202は、本体部材251の面252が蓋部材203の基部231と対向し、面255がケース部材201の基部211と対向する姿勢で、蓋部材203とケース部材201との間に配置されている。その際に、内周側リップシール253が蓋部材203の内側円筒状部232とシート部233と間に配置され、外周側リップシール256がケース部材201のシート部214と外周壁部215との間に配置される。
ここで、シート部214の基部211とは反対側の先端位置とシート部233の基部231とは反対側の先端位置との軸方向の距離は、シート部214とシート部233とが軸方向に離れた状態であれば本体部材251の厚さよりも狭く設定され、あるいはシート部214とシート部233とが軸方向に重なり合う距離に設定されている。このため、ハウジング210内に配置された状態で、弁体202は、本体部材251が、面255においてシート部214に、面252においてシート部233に、それぞれ支持され、内周側ほどケース部材201の基部211に近づき、外周側ほど蓋部材203の基部231に近づくようにテーパ状に弾性変形する。
ハウジング210内に配置された状態で、弁体202は、液圧が加わらなければ、内周側リップシール253が内周リップ部263の内周部を蓋部材203の内側円筒状部232の円筒面234に全周にわたり締め代をもって当接させ、外周リップ部262の外周部を蓋部材203のシート部233のテーパ面239の切欠部238よりも基部231側に全周にわたり締め代をもって当接させる。言い換えれば、ハウジング210は、内周壁部241が内周側リップシール253の内周部に当接し、シート部233が内周側リップシール253の外周部に当接すると共に、シート部233が本体部材251の面252を支持可能となっている。
ハウジング210内に配置された状態で、弁体202は、液圧が加わらなければ、外周側リップシール256が外周リップ部272の外周部をケース部材201の外周壁部215の円筒面216に全周にわたり締め代をもって当接させ、内周リップ部273の内周部をシート部214のテーパ面225の切欠部221よりも基部211側に全周にわたり締め代をもって当接させる。言い換えれば、ハウジング210は、外周壁部215が外周側リップシール256の外周部に当接し、シート部214が外周側リップシール256の内周部に当接すると共に、シート部214が本体部材251の面255を支持可能となっている。
この状態で、ハウジング210内には、内周壁部241と基部211,231とピストンロッド41の取付軸部72との間と、内周壁部241の切欠部220内と、内周側リップシール253と内周壁部241と本体部材251と基部211とシート部214との間と、シート部214の切欠部221内と、シート部214と外周側リップシール256と本体部材251との間と、からなる室281が形成される。また、外周壁部215と基部211とシート部214と外周側リップシール256との間に室282が形成される。また、外周壁部215と外周側リップシール256と本体部材251と基部231とシート部233との間と、シート部233の切欠部238内と、シート部233と内周側リップシール253と本体部材251との間と、からなる室283が形成される。また、内周壁部241と基部231とシート部233と内周側リップシール253との間に室284が形成される。室283は貫通穴240内の通路を介して第2室32に連通する。
図2に示すシート部材135の通路穴151内の通路と、固定オリフィス176と、離座時の弁体134とバルブシート部161との隙間と、通路形成部材133の通路溝147内の通路を含む中間室150と、先端ロッド55の通路溝75内の通路と、図3に示す室281〜284と、貫通穴240内の通路とが、伸び行程でのピストン30の移動により、第1室31から油液が流れ出すと共に第2室32に向けて油液が流れ出す伸び側の通路291(第2通路)を構成している。
蓋部材203の貫通穴240内の通路と、室281〜284と、先端ロッド55の通路溝75内の通路と、図2に示す中間室150と、シート部材135の通路穴152内の通路と、固定オリフィス187と、離座時の弁体137とバルブシート部162との隙間とが、縮み行程でのピストン30の移動により、第2室32から油液が流れ出すと共に第1室31に向けて油液が流れ出す縮み側の通路292(第2通路)を構成している。中間室150および先端ロッド55の通路溝75内の通路等は、通路291,292で共通となっている。
そして、通路291に、弁体134を含む減衰力発生機構155と、図3に示す弁体202を含む周波数感応部200とが直列に設けられている。通路291に設けられた図2に示す減衰力発生機構155の弁体134は、伸び行程において第1室31から油液が流れ出す通路108に設けられた減衰力発生機構90の弁体91よりも小さな圧力で開弁して減衰力を発生させる。つまり、弁体134は、弁体91よりも剛性が低い。減衰力発生機構90,155のうち、減衰力発生機構155はソフトバルブとなり、減衰力発生機構90はハードバルブとなっている。
通路292に、弁体137を含む減衰力発生機構156と、図3に示す弁体202を含む周波数感応部200とが直列に設けられている。通路292に設けられた減衰力発生機構156の弁体137は、縮み行程において第2室32から油液が流れ出す通路119に設けられた減衰力発生機構92の弁体93よりも小さな圧力で開弁して減衰力を発生させる。つまり、弁体137は、弁体93よりも剛性が低い。減衰力発生機構92,156のうち、減衰力発生機構156はソフトバルブとなり、減衰力発生機構92がハードバルブとなっている。
通路291,292の共通部分に設けられた図3に示す周波数感応部200は、ピストン30が図2に示す第1室31側に移動して、第1室31から第2室32に向け油液が流れる伸び行程のときに、第1室31に連通する室281内の液圧が、第2室32に連通する室283内の液圧よりも高くなる。すると、図4(a)に白抜き矢印で示すように、弁体202が、シート部233を支点として外周側リップシール256を基部231に近づけ内周側リップシール253を基部211に近づけるように変形する。その際に、図4(a)に太実線矢印で示すように、室281内の液圧上昇によって、内周側リップシール253は、内周リップ部263が内周壁部241から離間して、室281から室284に油液を導入することになり、その際の室284の背圧で外周リップ部262がシート部233との隙間をシールした状態を維持する。また、室281内の液圧上昇によって、外周側リップシール256は、内周リップ部273がシート部214から離間して、室281から室282に油液を導入することになり、その際の室282の背圧で外周リップ部272が外周壁部215との隙間をシールした状態を維持する。その結果、弁体202は、ハウジング210内を、第1室31に連通する第1室連通室である室281,282,284と、第2室32に連通する第2室連通室である室283とに画成しつつ変形して、室281,282,284の合計容積を変形前よりも拡大しつつ室283の容積を変形前よりも縮小する。これにより、周波数感応部200は、伸び行程において減衰力を周波数に応じて可変させることができる。
また、周波数感応部200は、ピストン30が第2室32側に移動して、第2室32から図2に示す第1室31に向け油液が流れる縮み行程のときは、第2室32に連通する室283内の液圧が、第1室31に連通する室281内の液圧よりも高くなる。すると、図4(b)に白抜き矢印で示すように、弁体202が、シート部214を支点として内周側リップシール253を基部211に近づけ外周側リップシール256を基部231に近づけるように変形する。その際に、図4(b)に太実線矢印で示すように、室283内の液圧上昇によって、内周側リップシール253は、外周リップ部262がシート部233から離間して、室283から室284に油液を導入することになり、その際の室284の背圧で内周リップ部263が内周壁部241との隙間をシールした状態を維持する。また、室283内の液圧上昇によって、外周側リップシール256は、外周リップ部272が外周壁部215から離間して、室283から室282に油液を導入することになり、その際の室282の背圧で内周リップ部273がシート部214との隙間をシールした状態を維持する。その結果、弁体202は、ハウジング210内を、第2室32に連通する第2室連通室である室283,282,284と、第1室31に連通する第1室連通室である室281とに画成しつつ変形して、室283,282,284の合計容積を変形前よりも拡大しつつ室281の容積を変形前よりも縮小する。これにより、周波数感応部200は、縮み行程においても減衰力を周波数に応じて可変させることができる。
室281は、第1室31に連通する第1室連通室であり、室283は第2室32に連通する第2室連通室である。室282,284は、伸び行程において第1室31に連通する第1室連通室となり、縮み行程において第2室32に連通する第2室連通室となる。
図3に示すように、蓋部材203の軸方向のケース部材201とは反対側には、複数枚の有孔円板状のディスク301が設けられている。これらディスク301は、同外径であり、蓋部材203の径方向における複数の貫通穴240の内接円よりも小径の外径となっている。これらディスク301の蓋部材203とは反対側には、円環状の円環部材302が設けられている。この円環部材302は、ディスク301よりも外径が大径となっている。これらディスク301および円環部材302の内周部に取付軸部72が嵌合している。円環部材302のディスク301とは反対側には、取付軸部72のオネジ76に螺合されてナット310が設けられている。
図2に示す円環部材186、ディスク185、複数枚のディスク184、弁体137、複数枚のディスク183、シート部材135、複数枚のディスク173、弁体134、複数枚のディスク174、複数枚のディスク175、通路形成部材133、ケース体132の底板部141、ディスク116、複数枚のディスク115、ディスク114、弁体93、複数枚のディスク113、ピストン本体83、複数枚のディスク103、弁体91、ディスク104,105、図3に示すケース部材201、蓋部材203、複数枚のディスク301および円環部材302は、それぞれ内周側または全部が、図2に示す先端ロッド55の軸段部73と図3に示すナット310とに挟持されて軸方向にクランプされている。他方、弁体202は、内周側および外周側が共に、軸方向にクランプされることはなく、軸方向両側から径方向の位置をずらしたシート部214,233に支持されている。ナット310は、汎用の六角ナットである。
第1実施形態の緩衝器11の油圧回路図は、図5に示すようになっている。すなわち、第1室31と第2室32とを結ぶ通路108にハードバルブである減衰力発生機構90が、第1室31と第2室32とを結ぶ通路119にハードバルブである減衰力発生機構92が、それぞれ設けられ、通路108,119に固定オリフィス106,117が設けられている。また、第1室31と中間室150との間の通路291にソフトバルブである減衰力発生機構155が、第1室31と中間室150との間の通路292にソフトバルブである減衰力発生機構156が、それぞれ設けられ、通路291,292に固定オリフィス176,187が設けられている。
また、中間室150と第2室32との間に周波数感応部200が設けられている。周波数感応部200は、伸び行程で第1室31から第2室32に向けて油液が流れるときに、第1室31に連通する中間室150から第1室連通室である室281,282,284に油液を受け入れて、これら室281,282,284の容積を拡大しつつ、これらと弁体202で区画された第2室連通室である室283の容積を縮小する。これにより、減衰力を周波数に応じて可変させる。また、周波数感応部200は、縮み行程で第2室32から第1室31に向けて油液が流れるときに、第2室32から第2室連通室である室283,282,284に油液を受け入れて、これら室283,282,284の容積を拡大しつつ、これらと弁体202で区画された第1室連通室である室281の容積を縮小する。これにより、減衰力を周波数に応じて可変させる。
ピストンロッド41が伸び側に移動する伸び行程で、図2に示す伸び側のハードバルブである減衰力発生機構90のみが作用する場合には、ピストン30の移動速度(以下、ピストン速度と称す)が遅い時、第1室31からの油液は、通路108を構成する、通路穴88内の通路および固定オリフィス106を介して第2室32に流れ、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図6に実線X1で示すようになり、図6の左端側の低速域(オリフィス域)では、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率が高くなる。また、ピストン速度が速くなると、第1室31からの油液は、通路108を構成する、通路穴88内の通路から伸び側の減衰力発生機構90の弁体91を開きながら、弁体91とバルブシート部97との間を通って、第2室32に流れることになり、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率が、低速域(オリフィス域)よりも、やや下がることになる。
ピストンロッド41が縮み側に移動する縮み行程で、縮み側の減衰力発生機構92のみが作用する場合には、ピストン速度が遅い時、第2室32からの油液は、縮み側の通路119を構成する通路穴89内の通路および固定オリフィス117を介して第1室31に流れオリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図6に実線X2で示すようになり、図6の左端側の低速域(オリフィス域)では、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。また、ピストン速度が速くなると、第2室32から縮み側の通路119を構成する通路穴89内の通路に導入された油液が、基本的に弁体93を開きながら弁体93とバルブシート部99との間を通って第1室31に流れることになり、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率が、低速域(オリフィス域)よりも、やや下がることになる。
以上が、図2に示す減衰力発生機構90,92のみが作用する場合であるが、本実施形態では、図3に示す周波数感応部200が、ピストン速度が同じ場合でも、ピストン周波数に応じて減衰力を可変とする。
つまり、ピストン周波数が高いときの伸び行程では、ピストン速度が遅い時、上記のように減衰力発生機構90のみが作用する場合では固定オリフィス106を介して流れるオリフィス域であっても、第1室31からの油液が、通路穴151内の通路から固定オリフィス176、中間室150、通路溝75内の通路を介して周波数感応部200の室281に導入される。これに応じて、弁体202が、シート部233を支点として外周側リップシール256を基部231に近づけ内周側リップシール253を基部211に近づけるように変形して室281,282,284に油液を導入させながら、室283から貫通穴240内の通路を介して第2室32に油液を排出させる。
このように弁体202が変形して室281,282,284に第1室31から油液を導入することにより、第1室31から通路108を通過して第2室32に流れる油液の流量が減ることになる。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図6に破線X3で示すようになり、図6の左端側の低速域(オリフィス域)から伸び側の減衰力がソフトになる。このとき、弁体202は、シート部233に片方の面252のみが支持されており、軸方向にクランプされていないため、内周側リップシール253が基部211に近づき、外周側リップシール256が基部231に近づくように容易に変形する。
ピストン速度がやや速くなると、第1室31からの油液が、通路穴151内の通路から伸び側のソフトバルブである減衰力発生機構155の弁体134を開きながら、弁体134とバルブシート部161との間を通り、中間室150、通路溝75内の通路を介して周波数感応部200の室281,282,284に導入される。このときも、弁体202が変形して室281,282,284に第1室31からの油液を導入させながら、室283から貫通穴240内の通路を介して第2室32に油液を排出させることになり、第1室31から通路108を通過して第2室32に流れる油液の流量が減ることになる。このため、図6の左端側の低速域において引き続き伸び側の減衰力がソフトになる。
ピストン速度がさらに速くなると、第1室31からの油液は、上記のようにソフトバルブである減衰力発生機構155の弁体134を開いて周波数感応部200の室281,282,284に導入されるのに加えて、通路108を構成する、通路穴88内の通路から伸び側の減衰力発生機構90の弁体91を開きながら、弁体91とバルブシート部97との間を通って、第2室32に流れることになる。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図6の左右方向中間から右側の中高速域で、伸び側の減衰力がソフトになる。
ピストン周波数が高いときの伸び行程では、弁体202の変形の周波数も追従して高くなり、伸び行程の都度、上記のように第1室31からの油液を周波数感応部200の室281,282,284に導入する。
他方で、ピストン周波数が低いときの伸び行程では、弁体202の変形の周波数も追従して低くなるため、伸び行程の初期に、第1室31から室281,282,284に油液が流れるものの、その後は弁体202が停止し、第1室31から通路291を介して室281,282,284に油液が流れなくなる。これにより、第1室31から通路穴88内の通路を含む通路108に導入され、減衰力発生機構90を通過して第2室32に流れる油液の流量が減らない状態となり、ピストン速度に対する減衰力の特性は、減衰力発生機構90のみが作用する場合と同様になって、図6に実線X1で示すように伸び側の減衰力がハードになる。
このように、伸び行程において、図6に実線X1で示すピストン周波数が低いときのハードな特性に対して、ピストン周波数が高いときの特性は、図6に破線X3で示すように、ピストン速度が遅い低速域(オリフィス域)から高速域まで全域にわたってソフトになる。
縮み行程においても、伸び行程と同様に、図3に示す周波数感応部200が、ピストン速度が同じ場合でも、ピストン周波数に応じて減衰力を可変とする。つまり、ピストン周波数が高いときの縮み行程では、ピストン速度が遅い時、上記のように減衰力発生機構92のみが作用する場合では固定オリフィス117を介して流れるオリフィス域であっても、第2室32からの油液が、周波数感応部200の室283に貫通穴240内の通路から導入される。これに応じて、弁体202が、シート部214を支点として内周側リップシール253を基部211に近づけ外周側リップシール256を基部231に近づけるように変形して室283,282,284に油液を導入させながら、室281から、通路溝75内の通路、中間室150、通路穴152内の通路および固定オリフィス187を介して第1室31に油液を排出させる。
このように弁体202が変形して室283,282,284に第2室32から油液を導入することにより、第2室32から通路119を通過して第1室31に流れる油液の流量が減ることになる。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図6に破線X4で示すようになり、図6の左端側の低速域(オリフィス域)から縮み側の減衰力がソフトになる。このとき、弁体202は、シート部214に片方の面255のみが支持されており、軸方向にクランプされていないため、外周側リップシール256が基部231に近づき、内周側リップシール253が基部211に近づくように容易に変形する。
ピストン速度がやや速くなると、第2室32から貫通穴240内の通路を介して周波数感応部200の室283に導入された油液によって、弁体202が、室283,282,284の容積を拡大しつつ、室281から、通路溝75内の通路、中間室150、通路穴152内の通路を介し、縮み側のソフトバルブである減衰力発生機構156の弁体137を開きながら、弁体137とバルブシート部162との間を介して、第1室31に油液を排出させる。このときも、弁体202が変形して室283,282,284に油液を導入させることによって、第2室32から通路119を通過して第1室31に流れる油液の流量が減ることになる。このため、図6の左端側の低速域において引き続き縮み側の減衰力がソフトになる。
ピストン速度がさらに速くなると、第2室32からの油液は、上記のように周波数感応部200の室283,282,284に導入され、その分の室281の油液が、ソフトバルブである減衰力発生機構156の弁体137を開いて第1室31に導入されるのに加えて、通路119を構成する、通路穴89内の通路から縮み側の減衰力発生機構92の弁体93を開きながら、弁体93とバルブシート部99との間を通って、第1室31に流れることになる。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図6の左右方向中間から右側の中高速域でも、縮み側の減衰力がソフトになる。
ピストン周波数が高いときの縮み行程では、弁体202の変形の周波数も追従して高くなり、縮み行程の都度、上記のように第2室32からの油液を周波数感応部200の室283,282,284に導入する。
他方で、ピストン周波数が低いときの縮み行程では、弁体202の変形の周波数も追従して低くなるため、縮み行程の初期に、第2室32から室283,282,284に油液が流れるものの、その後は弁体202が停止し、第2室32から貫通穴240内の通路を介して室283,282,284に油液が流れなくなる。これにより、第2室32から通路穴89内の通路を含む通路119に導入され、減衰力発生機構92を通過して第1室31に流れる油液の流量が減らない状態となり、ピストン速度に対する減衰力の特性は、減衰力発生機構92のみが作用する場合と同様になって、図6に実線X2で示すように縮み側の減衰力がハードになる。
このように、縮み行程においても、図6に実線X2で示すピストン周波数が低いときのハードな特性に対して、ピストン周波数が高いときの特性は、図6に破線X4で示すように、ピストン速度が遅い低速域(オリフィス域)から高速域まで全域にわたってソフトになる。
上記した特許文献1には、周波数に応じて減衰力を可変とする減衰力可変機構をピストンロッドに設けた緩衝器が記載されている。このような緩衝器において、伸び行程および縮み行程の両方で周波数に応じて減衰力を可変としつつそのための機構の軸方向の長さを短くすることで、緩衝器の軸方向長さ(基本長)を短くしたいという要求がある。
本実施形態の緩衝器11は、ピストンロッド41に設けられた周波数感応部200が、第1室31から第2室32に作動流体が流れる伸び行程で、ハウジング210内を第1室31に連通する第1室連通室としての室281,282,284と第2室32に連通する第2室連通室としての室283とに画成しつつ変形して室281,282,284を拡大しつつ室283を縮小し、第2室32から第1室31に作動流体が流れる縮み行程で、ハウジング210内を第2室連通室としての室283,282,284と第1室連通室としての室281とに画成しつつ変形して室283,282,284を拡大しつつ室281を縮小する板状の弁体202を有するため、伸び行程および縮み行程の両方において減衰力特性を周波数に応じて可変とした上で、軸方向長さを短くすることができる。したがって、緩衝器11の軸方向長さ(基本長)を短くすることができる。
また、ピストン30の移動により第1室31および第2室32の一方から油液が流れ出す通路108,119に減衰力を発生させる弁体91,93を設けている。また、ピストン30の移動により第1室31および第2室32の一方から油液が流れ出す通路291,292に、弁体91,93よりも小さな圧力で開弁して減衰力を発生させる弁体134,137と、第1室31および第2室32の一方から油液が流れ出すとき、ハウジング210内を第1室31側と第2室32側とに画成しつつハウジング210内で変形可能な弁体202を有する周波数感応部200と、を直列に設けている。これにより、ピストン速度が遅い領域から周波数に応じて減衰力を大きく可変させることが可能となる。
加えて、周波数感応部200は、弁体202が、有孔円板状の本体部材251と、本体部材251の面252の内周側に接合された内周側リップシール253と、本体部材251の面252とは反対側の面255の外周側に接合された外周側リップシール256と、を有している。また、ハウジング210は、内周壁部241が内周側リップシール253の内周部に当接し、シート部233が内周側リップシール253の外周部に当接すると共に本体部材251の一方の面252を支持可能となっている。また、ハウジング210は、外周壁部215が外周側リップシール256の外周部に当接し、シート部214が外周側リップシール256の内周部に当接すると共に本体部材251の他方の面255を支持可能となっている。これにより、少ない部品点数で、周波数感応部200を構成することができる。
以上に述べた実施形態は、以下の態様が考えられる。
第1の態様は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダに一端側が挿入されると共に他端側が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンロッドの前記一端側に連結されると共に前記シリンダ内に摺動可能に嵌装されて該シリンダ内をピストンロッド側の第1室およびボトム側の第2室の2室に区画するピストンと、前記ピストンの移動により前記第1室および前記第2室の一方から作動流体が流れ出す第1通路および第2通路と、前記第1通路に設けられて減衰力を発生させる第1弁体と、前記第2通路に設けられ、前記第1室から前記第2室に作動流体が流れる伸び行程で、ハウジング内を前記第1室に連通する第1室連通室と前記第2室に連通する第2室連通室とに画成しつつ変形して第1室連通室を拡大しつつ第2室連通室を縮小し、前記第2室から前記第1室に作動流体が流れる縮み行程で、ハウジング内を第2室連通室と第1室連通室とに画成しつつ変形して第2室連通室を拡大しつつ第1室連通室を縮小する板状の第2弁体を有する周波数感応部と、を備える。これにより、軸方向長さを短くすることができる。
第2の態様は、第1の態様において、前記第2通路には、前記周波数感応部と、前記第1弁体よりも小さな圧力で開弁して減衰力を発生させる第3弁体と、が直列に設けられている。これにより、ピストン速度が遅い領域から周波数に応じて減衰力を大きく可変させることが可能となる。
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記第2弁体は、有孔円板状の本体部材と、前記本体部材の第1面の内周側に接合された第1リップシールと、前記本体部材の前記第1面とは反対側の第2面の外周側に接合された第2リップシールと、を有し、前記ハウジングは、前記第1リップシールの内周部に当接する内周壁部と、前記第1リップシールの外周部に当接すると共に前記本体部材の前記第1面を支持可能な第1支持壁部と、前記第2リップシールの外周部に当接する外周壁部と、前記第2リップシールの内周部に当接すると共に前記本体部材の前記第2面を支持可能な第2支持壁部と、を有する。これにより、少ない部品点数で、周波数感応部を構成することができる。