本発明は、かかる各種の要求に応え、2枚のガラス板と、少なくとも1枚以上、好ましくは2枚以上の中間板とが隔置された、ガラス板及び中間板の合計枚数が3枚以上、好ましくは4枚以上の多重タイプの多重ガラス障子の部品点数を低減することができ、かつ組立工程を削減することができる新規な構成を有する多重ガラス障子を提供することを目的とする。
又、外側の2枚のガラス板の間に形成される中空層内に配する中間板の枚数を所定の範囲において任意に選択することができ、又、外側の2枚のガラス板の間に形成される中空層内に中間板が配されて形成される複数層の区画中空層の厚さを選択することにより、断熱性能の最適化を図ることができ、又、注文者の多重ガラス障子の注文グレードに応じて適宜対応することが容易であり、又、住宅、建造物等の解体の際、それらの窓から多重ガラス障子の中空層に配された中間板(例えば、ガラス板)を簡単に取り外すことができ、取り外された中間板を再利用できるようになした多重ガラス障子を提供することを目的とする。
又、一層、断熱性を高めるために、最適な封入ガスの種類の選択とその封入ガス特有なガス層の厚さの選択、複数層の区画中空層への複数種類のガスの封入の要求にも応えることができる高断熱性多層複層ガラスを提供することを目的とする。
又、特に、上記したタイプのガラス板及び中間板の合計枚数が4枚以上の多重タイプの多重ガラス障子においても、障子全体の厚さを抑えることができ、軽量化を図ることができる多重ガラス障子を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、本発明に至ったものであり、下記(1)〜(9)の構成の多重ガラス障子を提供するものである。
なお、本発明の多重ガラス障子は、住宅、その他各種の建造物の窓に使用される内側と外側の2枚のガラス板を枠部材によって隔置して中空層を形成し、かかる中空層内に少なくとも1枚以上の中間板を配した構成のものであり、態様によっては縦框部も有するので、本明細書においては、複層ガラス、あるいは複層ガラス障子と呼ぶよりも、多重ガラス障子と称する。従って、本発明の多重ガラス障子は、いわゆる複層ガラス、多重ガラス、多層ガラス等なども含むものである。
(1)第1のガラス板と第2のガラス板とを有し、これらガラス板間の周囲に枠部材を配してこれらガラス板を隔置し、中空層を形成するとともに、当該中空層がこれらガラス板の周囲において封着されてなり、前記中空層には少なくとも1枚以上の中間板が配されてなる多重ガラス障子であって、前記枠部材には、前記中間板の周辺部の少なくとも一部を保持する中間板保持部が複数列設けられており、当該中間板保持部に前記中間板が配されていることを特徴とする多重ガラス障子。
(2)第1のガラス板と第2のガラス板とを有し、これらガラス板間の周囲に枠部材を配してこれらガラス板を隔置し、中空層を形成するとともに、当該中空層がこれらガラス板の周囲において封着されてなり、前記中空層には少なくとも1枚以上の中間板が配されてなる多重ガラス障子であって、前記枠部材には、前記中間板の周辺部の少なくとも一部を保持する中間板保持部が複数列設けられており、中間板を配する中間板保持部を前記複数列の中間板保持部の中から選択し、当該中間板保持部に前記中間板を配することによって、形成される複数層の区画中空層の厚さ、又は中空層内に配する中間板の枚数を調整できるようになしたことを特徴とする多重ガラス障子。
(3)第1のガラス板と第2のガラス板とを有し、これらガラス板間の周囲に枠部材を配してこれらガラス板を隔置し、中空層を形成するとともに、当該中空層がこれらガラス板の周囲において封着されてなり、前記中空層には少なくとも1枚以上の中間板が配されてなる多重ガラス障子であって、前記枠部材には、前記中間板の周辺部の少なくとも一部を保持する中間板保持部が複数列設けられており、かつ前記枠部材の少なくとも一部に乾燥剤を収納する空間部を有するスペーサー部を備えており、当該中間板保持部に前記中間板が配されていることを特徴とする多重ガラス障子。
(4)第1のガラス板と第2のガラス板とを有し、これらガラス板間の周囲に枠部材を配してこれらガラス板を隔置し、中空層を形成するとともに、当該中空層がこれらガラス板の周囲において封着されてなり、前記中空層には少なくとも1枚以上の中間板が配されてなる多重ガラス障子であって、前記枠部材には、前記中間板の周辺部の少なくとも一部を保持する中間板保持部が複数列設けられ、当該中間板保持部に前記中間板が配されており、かつ前記枠部材の第1のガラス板と第2のガラス板側の少なくとも一部に、縦框部を備えていることを特徴とする多重ガラス障子。
(5)第1のガラス板と第2のガラス板とを有し、これらガラス板間の周囲に枠部材を配してこれらガラス板を隔置し、中空層を形成するとともに、当該中空層がこれらガラス板の周囲において封着されてなり、前記中空層には少なくとも1枚以上の中間板が配されてなる多重ガラス障子であって、前記枠部材には、前記中間板の周辺部の少なくとも一部を保持する中間板保持部が複数列設けられており、当該中間板保持部には、少なくとも1枚以上の化学強化ガラス板からなる中間板が配されていることを特徴とする多重ガラス障子。
(6)前記化学強化ガラス板の板厚が2mm以下であることを特徴とする上記(5)に記載の多重ガラス障子。
(7)第1のガラス板と第2のガラス板とを有し、これらガラス板間の周囲に枠部材を配してこれらガラス板を隔置し、中空層を形成するとともに、当該中空層がこれらガラス板の周囲において封着されてなり、前記中空層には少なくとも1枚以上の中間板が配されてなる多重ガラス障子であって、前記枠部材には、前記中間板の周辺部の少なくとも一部を保持する中間板保持部が、複数列設けられ、当該中間板保持部に前記中間板が配されており、かつ前記枠部材の第1のガラス板と第2のガラス板側の少なくとも一部に縦框部と、前記枠部材の前記中空層側の少なくとも一部に乾燥剤を収納する空間部を有するスペーサー部と、を備えていることを特徴とする多重ガラス障子。
(8)前記枠部材には、前記中間板の周辺部の少なくとも一部を保持する中間板保持部が、2列以上設けられており、当該2列以上の中間板保持部を使用して少なくとも1枚以上の中間板が中空層内に配され、当該中空層が2層以上の区画中空層に分割されていることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の多重ガラス障子。
(9)前記枠部材は、前記第1及び第2のガラス板の間隔を保持する内面部及び外面部と、当該内面部及び外面部に連設され、前記第1及び第2のガラス板の内側に面する側辺部と、乾燥剤を収納する空間部とを有するスペーサー部と、前記第1及び第2のガラス板の周縁部の内側に面する縦框部を有する框部と、を備え、前記枠部材のスペーサー部の中空層側の内面部の中間部には、前記中間板の周辺部の少なくとも一部を保持する中間板保持部が、複数列設けられており、当該中間板保持部に前記中間板が配されていることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の多重ガラス障子。
(10)前記枠部材は、少なくとも別体の2つの部材で構成され、前記2つの部材は透湿防止層を介して一体化されていることを特徴とする上記(1)〜(9)に記載の多重ガラス障子。
上記した本発明の(1)の態様によれば、前記枠部材に、前記中間板の周辺部の少なくとも一部を保持する、溝部、把持部、嵌合部、係止部等の構造を有する中間板保持部が、複数列設けられているので、この中間板保持部に中間板の周縁部を配することにより、隔置された第1のガラス板と第2のガラス板との間の中空層を複数層の区画中空層に形成することができ、多重ガラス障子の断熱性を高めることができる。特に、2枚以上の中間板を上記中空層に配する場合であっても、中間板の挿入、嵌め込み、係止等の配設手段によって、多重ガラス障子の製造を簡略化することができる。
又、複数列の中間板保持部が設けられているので、注文者の多重ガラス障子の注文グレードに適宜応じて中空層に配する中間板の枚数を増加、又は減少させることが容易である。
又、枠部材に中間板保持部を所定の単位幅をもって多数列設ければ、前記単位幅を有する多数列の中間板保持部の中から、中間板を配する中間板保持部の列を選択することにより、区画中空層に封入するガスの種類に応じた最適なガス層の厚さ、あるいは要求される断熱性能を満足する区画中空層の厚さを得ることができる。
上記した本発明の(2)の態様によれば、前記枠部材に、前記中間板の周縁部の少なくとも一部を保持する、前記したような各種の構造を有する中間板保持部が複数列設けられているので、注文者の多重ガラス障子の注文グレードに応じて中空層に配する中間板の枚数を増加、又は減少させることが容易であり、第1のガラス板と第2のガラス板との間の中空層を、注文の要望に応じた複数層の区画中空層に形成することができる。又、複数列の中間板保持部が設けられているので、中間板を配する中間板保持部を、複数列の中間板保持部の中から選択することにより、区画中空層の厚さを選択することができる。
上記した本発明の(3)の態様によれば、前記枠部材には、前記中間板の周縁部の少なくとも一部を保持する前記したような中間板保持部が、複数列設けられており、かつ枠部材の中空層側に乾燥剤を収納する空間部を有するスペーサー部を備えた枠部材が用いられているので、このスペーサー部の中空層側に複数列の中間板保持部の形成が容易であり、このスペーサー部の一部に設けられた複数の中間板保持部を利用すれば、中空層内への中間板の配設作業が容易であり、中空層に複数層の区画中空層を容易に形成することができる。
上記した本発明の(4)の態様によれば、前記枠部材には、前記中間板の周縁部の少なくとも一部を保持する前記したような中間板保持部が複数列設けられており、かつ前記枠部材の第1のガラス板側と第2のガラス板側の少なくとも一部に、縦框部を備えた枠部材が用いられているので、隔置される第1のガラス板と第2のガラス板の周辺部に設けられた前記縦框部を利用して多重ガラス障子とするのが容易である。即ち、従来例の複層ガラス障子において用いられていた枠部材におけるスペーサーと框とは、それぞれ別体となっており、その組立て作業もスペーサーとガラス板とのシール材による接着作業、又框とガラス板とのシール材による組み立て作業を別々に行なうことを必要としたが、本発明の(4)の態様によれば、縦框部を備えた枠部材を用いて第1のガラス板と第2のガラス板とを多重ガラス障子化しているので、障子化の際の部品点数および組み付け工数を削減することができ、多重ガラス障子の組み立てを簡略化することができ、よりコスト低減化を図ることができる。
上記した本発明の(5)及び(6)の態様によれば、前記枠部材には、前記中間板の周辺部の少なくとも一部を保持する中間板保持部が複数列設けられており、当該中間板保持部には、少なくとも1枚以上の化学強化ガラス板、好ましくは板厚が2mm以下の化学強化ガラス板からなる中間板が配されているので、かかる板厚の薄い化学強化ガラス板の使用により多重ガラス障子の軽量化を図ることができ、多重ガラス障子の全体の厚さをスリム化することができる。又、化学強化ガラス板は充分な強度を有していることから、中間板保持部への配設作業の際にも中間板が破損することを防ぐことができる。
上記した本発明の(7)の態様によれば、前記枠部材として、前記中間板の周縁部の少なくとも一部を保持する中間板保持部が複数列設けられており、かつ前記枠部材の第1のガラス板と第2のガラス板側の少なくとも一部に縦框部と、前記枠部材の前記中空層側の少なくとも一部に乾燥剤を収納する空間部を有するスペーサー部とを備えた枠部材が用いられているので、前述した本発明の(3)及び(4)の態様におけるそれぞれの効果を併せ持つことができる。
上記した本発明の(8)の態様によれば、前記枠部材には、前記中間板の周辺部の少なくとも一部を保持する中間板保持部が、2列以上設けられており、当該2列以上の中間板保持部を使用して少なくとも1枚以上の中間板が中空層に配され、当該中空層が2層以上の区画中空層に分割されているので、多層化により断熱性の優れた多重ガラス障子を容易に製造することができる。
上記した本発明の(9)の態様によれば、前記枠部材は、前記第1及び第2のガラス板の間隔を保持する内面部及び外面部と当該内面部及び外面部に連設され前記第1及び第2のガラス板の内側に面する側辺部と乾燥剤を収納する空間部とを有するスペーサー部と、前記第1及び第2のガラス板の周縁部の内側に面する縦框部を有する框部とを備え、前記枠部材のスペーサー部の中空層側の内面部の中間部には、前記中間板の周辺部の少なくとも一部を保持する中間板保持部が複数列設けられているので、障子化の際の部品点数および組み付け工数を削減することができ、多重ガラス障子の組み立てを簡略化することができ、よりコスト低減化を図ることができる。又、枠部材の見かけ寸法をより小さくすることができ、それによって、多重ガラス障子における框部及びスペーサー部の占める面積を少なくすることができることにより透視部分のガラス板の面積を大きくすることができ、その結果、採光性能、開放感、眺望性の向上、断熱性の向上を図ることができる。又、このようなスペーサー部と框部とが一体化された枠部材の使用により、第1のガラス板と第2のガラス板とをその内側において隔置しているので、多重ガラス障子のスリム化を図ることが容易であり、意匠性の向上も図ることができる。
上記した本発明の(10)の態様によれば、スペーサー部と框部との間に透湿防止層を介在させたので、多重ガラス障子の外部から中空層に浸入する水分を透湿防止層によって遮断できる。これにより、中空層の結露を防止でき、耐湿性に優れた多重ガラス障子を提供できる。
次に、本発明の多重ガラス障子を、図1〜図14に示した図面に基づいて具体的に説明する。図面は本発明の好ましい実施形態を例示したものであり、本発明は、これら例示の図面とその説明に限定されない。
図1は、本発明に係る多重ガラス障子の正面図、図2は、本発明に係る多重ガラス障子の一部断面概略斜視図を示す。図1、図2において、1は多重ガラス障子、2はガラス板、3aは多重ガラス障子の下辺側の枠体、3bは多重ガラス障子の左右の側辺側の枠体、3cは多重ガラス障子の上辺側の枠体(以下、上辺側の枠体、側辺側の枠体、及び下辺側の枠体を総称する場合、枠体3という。)、4は枠体3により隔置されたガラス板2、2の間に当該ガラス板2、2と隔置して配された中間板、5はガラス板2、2の間に形成された中空層、6は各枠体3a、3b、3cをそれらのコーナー部において連結するコーナー部材を示す。
図3〜図14は、本発明の実施形態に係る多重ガラス障子の要部を説明する部分概略断面図である。図示した例は、多重ガラス障子の中で、下辺側の部分の具体例を示した図面であり、図2のB−B線の矢印方向から見た多重ガラス障子の下辺側の部分の概略断面図である。当該多重ガラス障子10は、第1のガラス板11と第2のガラス板12とを、第1及び第2のガラス板の間の周囲に枠部材13を配して、第1及び第2のガラス板を隔置し、中空層14を形成するとともに、当該中空層14が第1及び第2のガラス板の周囲において接着材又は粘着剤等の封着シール材により封着されてなり、前記枠部材13には中空層14内に配される中間板15の端部を保持する複数例の中間板保持部16が設けられており、前記中空層14内に少なくとも1枚以上の中間板15が前記した枠部材13に設けられた複数例の中間板保持部16を利用して配されるようになっており、かかる中間板15により前記中空層14が複数層の区画中空層に分割される構成となっている。同図において、17は、枠部材13の側辺部と第1のガラス板11と第2のガラス板12の周囲において、枠部材13の側辺部との間を封着する第1の封着シール材であり、18は同様に封着する第2の封着シール材である。
上記した第1のガラス板11及び第2のガラス板12の間に形成された中間の層、及び上記したように中間板の配設により第1のガラス板11及び第2のガラス板12の間に形成された複数層の区画された中間の層を、本明細書においては、中空層と称し、この中空層には、封入ガス、例えば、乾燥空気や、アルゴンガス、クリプトンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスが充填され、断熱性及び/又は防音性が高められ、又枠部材のスペーサー部の空間部に収納された乾燥剤により多重ガラス障子の結露防止性能が付与される。この中空層は、空気層、ガス層、中間層、又は空間層と呼んでもよく、中空層は、空気層、ガス層、中間層、又は空間層などと同義である。
上記した第1のガラス板11及び第2のガラス板12の形状、板厚は、目的とされる多重ガラス障子の形状、寸法に応じて適宜、選ばれるが、通常の住宅用、その他建造物の窓に使用される場合には、一般的には、矩形状の平板状のガラス板であり、それぞれの板厚は、0.7mm〜10mmの範囲であり、第1及び第2のガラス板11、12の寸法は、同一、又はほぼ同寸法であるのが好ましい。又、第1及び第2のガラス板は、板厚が異なっていてもよいし、種類が異なったガラス板であってもよい。又、ガラス板の種類としては、通常、建築用として用いられているフロートガラス板、普通ガラス板、熱線吸収ガラス板、紫外線吸収ガラス板、熱線反射ガラス板、低放射ガラス板(Low−Eガラス板)、型板ガラス、合わせガラス板、線・網入りガラス板、風冷強化ガラス板、化学強化ガラス板や、これらの機能が複合化されたガラス板などが、目的とする要求仕様に応じて適宜使用することができる。
上記した第1及び第2のガラス板11、12の間に、当該ガラス板11、12と所定間隔をおいて隔置して、かつ当該ガラス板11、12と平行に配される1枚、ないし2枚以上の中間板15は、第1及び第2のガラス板11、12の間の中空層14の空間のガスの対流を少なくし、断熱性を高めるために、また防音性能を高めるために配されるものである。
中間板15は、枠部材13の内面側、即ち中空層側に設けられた中間板保持部16に、挿入、嵌め込み、係止等の配設方法によって配することができるように、ガラス板11、12より小寸法の相似形の矩形状とされるのが好ましい。第1及び第2のガラス板11、12が略矩形状である場合、第1及び第2のガラス板11、12は、その周縁の4辺において前記した枠部材13により隔置されて、多重ガラス障子が構成されるのが好ましい。
この中間板15は、第1及び第2のガラス板11、12の間に配されるため、外部には露出しないので、強度の要求度は第1及び第2のガラス板に比べ低くても構わず、板厚の薄い材料を使用することができ、そのため、3重タイプ、あるいはそれ以上の多重タイプの多重ガラス障子あっても、全体の厚さを薄く設計することが可能となる。かかる中間板15としては、ガラス板、プラスチック板、プラスチックフィルム等が使用できる。中間板15としては、透明板であってもよいし、着色されたものであってもよいし、模様付きのものであってもよいし、これらの組合わされたものでもよい。中間板としては、配設される場所、部位、意匠性等に応じて適宜の中間板が使用される。中間板としてガラス板を使用する場合、第1及び第2のガラス板11、12の間に配されるため、全体の厚さを薄くすることができる板厚が2mm以下のガラス板を好ましく使用できる。中間板15がガラス板の場合は、板厚が薄くても、剛性が高いので、中間板保持部16への挿入、嵌め込み、係止等の配設作業も容易であり、又透明性及び耐久性が高いので、多重ガラス障子用の中間板としてより好ましい。
特に、中間板15として、板厚を薄くしても充分な強度を有する化学強化ガラス板を好ましく使用することができる。化学強化ガラス板は、ソーダライムシリケートガラス等のNa成分やLi成分を含有するガラス板を、硝酸カリウム等の溶融塩中に浸漬させ、ガラス板の表面に存在する原子径の小さなNaイオン及び/又はLiイオンと、溶融塩中に存在する原子径の大きなKイオンとをイオン交換してガラス板の表面層に圧縮応力層を形成して強度を高めるという化学強化技術を利用して製造されたガラス板であり、板厚が2mm以下のガラス板でも、充分に高い破壊強度を有する。例えば、2mmの板厚の通常のソーダライムシリケートガラスからなる普通ガラス板に比べ、同厚の普通ガラス板を上記したようなイオン交換処理方法により強化した化学強化ガラス板は、約2〜10倍程度の破壊強度を有する。従って、中間板15として化学強化ガラス板を使用すれば、本発明の多重ガラス障子の中間板の薄板化により軽量化を図ることができ、又多重ガラス障子を製作する際、中間板の割れを防止することができるので、特に好ましい。なお、化学強化ガラス板の場合、切断手段の選択により、あるいは化学強化処理の程度の制御により、後切りができるようにすることが可能であるので、製造された化学強化ガラス板を中間板15としての所定寸法に選択して切断することが可能である。
枠部材13は、第1及び第2のガラス板11、12を、所定間隔をおいて隔置するスペーサー部としての機能を有する構造を有していればよいものである。平面視の形状が矩形の多重ガラス障子である場合、枠部材13は、多重ガラス障子の上辺、下辺、左辺、右辺の4辺に配される。各辺の枠部材は、基本的に単一部材からなっていることがより好ましい。すなわち、各辺の枠部材は、基本的には一つの部材により成型されたものがより好ましい。又、上辺、下辺、左辺、右辺の4辺の枠部材の突き合わせ部には、通常コーナー部材が配され、上辺、下辺、左辺及び右辺の4辺の枠部材が連結され、枠状に形成される。
枠部材13は、中空層側の少なくとも一部に乾燥剤を収納する空間部を有するスペーサー部を備えていることが好ましい。このスペーサー部を備えた枠部材は、上辺、下辺、左辺及び右辺の4辺において備えていることが好ましいが、上辺、下辺、左辺及び右辺の4辺の少なくともいずれか一辺に備えられていてもよい。
また、枠部材13は、前記枠部材の第1のガラス板側及び第2のガラス板側の両方に、あるいはいずれか一方に縦框部を有していてもよい。
なお、枠部材13は、上記したようなスペーサー部や縦框部を有せず、単に第1及び第2のガラス板11、12を隔置する機能を有している構造であってもよい。
平面視の形状が矩形の多重ガラス障子である場合、多重ガラス障子の上辺、下辺、左辺、右辺の4辺に配される枠部材としては、多重ガラス障子の4辺とも同じ構造の枠部材を使用すれば、多重ガラス障子の組み付けにおける部品点数を少なくすることができるとともに、多重ガラス障子の周辺部の外観、意匠を同じようにすることができるので好ましいが、勿論、多重ガラス障子の下辺の枠部材、上辺の枠部材、左辺の枠部材及び右辺の枠部材は、それぞれの各辺に要求される機能を満たすように、それぞれ異なる構造としてもよい。なお、上記したように上辺、下辺、左辺及び右辺の4辺に配される枠部材を共通の構造とし、スペーサー部を備えた構造とした場合、枠部材を用いて多重ガラス障子を作製する際、枠部材13のスペーサー部の空間部への乾燥剤の収納は、必要な辺、又必要な部分に行なえばよい。
本発明の多重ガラス障子においては、図3〜図14に示されるように、枠部材13の中空層14側の内面側で、かつ長手方向には、中空層14内に配される中間板15の端部を保持する複数列の中間板保持部16が設けられている。当該中間板保持部16は、枠部材13の幅方向に所定間隔をおいて複数列、例えば2列以上設けられている。かかる中間板保持部は、平面視の形状が矩形の多重ガラス障子である場合、多重ガラス障子の上辺、下辺、左辺、右辺の4辺のうち、少なくとも対向辺にそれぞれ、対称的に設ければよいが、下辺、左辺及び右辺の3辺、又は上辺、左辺及び右辺の3辺、又は上辺、下辺、左辺及び右辺の4辺に対称的に設けるのが好ましい。
枠部材に設けられる中間板保持部の形状としては、中間板の端部を保持することにより区画中空層が形成される形状であればよく、例えば、中間板の端部を挿入する溝部もしくは嵌合部が、または中間板の端部を係止する把持部もしくは係止部が、またはこれらの組合せが代表的な例として挙げることができる。また、複数の中間板保持部においては、それぞれ同様な構造の形状としてもよいし、また異なる構造を含んでいてもよい。勿論、これら例示された構造に限らず、中間板の周縁部を保持することができる機能を有しているその他の構造ものであってもよい。
例えば、中間板保持部の形状としては、図12(a)に示した様に、枠部材13の多重ガラス障子の中空層側Aに、中間板15の周縁部を挿入して、あるいは嵌め込んで保持できるように、中間板保持部16の溝状部34を形成した形状であってもよいし、図12(b)に示した様に、溝状部34の両側に、中間板15の周辺部を挟持する弾性材料からなるリップ部35、35を形成した形状であってもよいし、図12(c)に示した様に、枠部材13の多重ガラス障子の中空層側Aに、中間板15の端部を係止して、あるいは把持して保持できるように、係止部36(例えば、係止リップ部)を形成した形状であってもよいし、図12(d)に示した様に、枠部材13の多重ガラス障子の中空層側Aに、中間板15の端部を挿入して係止して保持できるように、クッション性又は弾力性のある部材38に中間板の端部の挿入用の切り込み部37を形成した形状であってもよい。
上記した溝状部又は嵌合部には、中間板の周縁部を保持する、ベース部材、バックアップ材を配してもよいし、シーリング材を配してもよいし、又中間板の端部を支持するグレージングチャンネルを配してもよい。なお、本発明の多重ガラス障子にあっては、住宅、建造物等の解体の際、それらの窓から取り外された多重ガラス障子から、その中空層に配されたガラス板等の中間板を簡単に取り外すことができるように、中間板保持部において、中間板の周縁部は中間板保持部に接着していないことが好ましい。
図3〜図8に示した多重ガラス障子10は、単一の部材からなる枠部材13を有し、当該枠部材13の長手方向には、第1のガラス板11及び第2のガラス板12の面方向と平行に延びる溝状部を有する中間板保持部16が3列設けられている。かかる3列の中間板保持部16は、枠部材13の幅方向、即ち第1及び第2のガラス板11、12の間隔の幅方向に所定間隔をおいて設けられている。そして、3列の中間板保持部16の溝状部には、それぞれガラス板などからなる中間板15の端部が挿入され、第1及び第2のガラス板11、12の間の中空層は、3枚の中間板15によって4層に区画された形となっている。
図3に示した多重ガラス障子10においては、中間板保持部16の溝状部の底部において、クッション性材料あるいは弾性材材料などの材料からなるベース部材21によって中間板15の端部が支持され、又中間板保持部16の溝状部の上部の両側部においても、弾性材材料あるいはクッション性材料などの材料からなるリップ部22によって中間板15の周辺部が支持されている。
図3に示した枠部材13は、硬質塩化ビニル樹脂材料、その他の合成樹脂材料により成型されたもの、あるいはアルミニウム材料により成型されたもの、あるいは合成樹脂材料とアルミニウム材料との複合材料からなる単一の部材からなるものがより好ましく選択される。特に、硬質塩化ビニル樹脂材料、その他の合成樹脂材料によりなる枠部材を用いた多重ガラス障子は、断熱効果が高く、結露もしにくく、又遮音性にも優れているので、より好ましい。
枠部材13が、硬質塩化ビニル樹脂材料、その他の合成樹脂材料により成型されたものである場合、枠部材13の外側からの耐透湿性をより一層高めるために、枠部材13の外面側部Sにアルミニウム箔等の透湿防止フィルムを貼りつけることができる。
図示した例は、多重ガラス障子の下辺側の枠部材の構造について説明したものであるが、多重ガラス障子の上辺側の枠部材、左辺側の枠部材、右辺側の枠部材においても基本的に下辺側の枠部材と同様な構造とすることが、枠部材の全体の組立の容易さ、部品点数の低減という点から、より好ましい。
図4に示した多重ガラス障子10おいては、4層に区画された中空層のそれぞれに対応する乾燥剤を収納する個別の空間部23が、枠部材13に備えられている。かかる空間部23を構成する壁部分のうち、中空層側の上辺壁には、中空層と連通する孔あるいはスリット等の連通部24が形成されており、空間部23に収納された乾燥剤(図においては、空間部23内に小さな略円形状をもって表したものが乾燥剤である。以下同様。)が、空間部23の連通部24を通して中空層14との間で呼吸し、中空層14内の乾燥状態を維持するようになっている。
図4に示した例では、中間板保持部16の溝状部の底部において、クッション性材料あるいは弾性材材料などの材料からなるベース部材21によって中間板15の端部が支持され、又中間板保持部16の溝状部の上部の両側部においても、弾性材材料あるいはクッション性材料などの材料からなるバックアップ材25によって中間板15の周辺部が支持されている。
図5に示した多重ガラス障子10においては、枠部材13に乾燥剤を収納する空間部23が備えられているが、この空間部23は、中間板を挿入する溝状部を有する中間板保持部16のそれぞれの下部において連通する共有空間部を有する構造となっている。即ち、図4に示した枠部材13においては、4つの空間部23が個別に形成されているが、図5の例は、図4における4つの空間部23が、枠部材13の中空層側と反対側で、連通する共有空間部を有する構造となっている。図5においても、かかる空間部23の中空層側の上辺壁には、前述したような連通部24が設けられている。
図5に示した例では、中間板保持部16の溝状部の底部において、クッション性材料あるいは弾性材材料などの材料からなるベース部材21によって中間板15の端部が支持され、又中間板保持部16の溝状部の上部の両側部においても、コーキング材26によって中間板15の周辺部が支持されている。
図6に示した多重ガラス障子10においては、4層に区画された中空層のそれぞれに対応する乾燥剤を収納する個別の空間部23が枠部材13に備えられ、かつ前記枠部材13の第1のガラス板11側と第2のガラス板12側の少なくとも一部に縦框部27が備えられている。かかる縦框部27は、枠部材13の側辺、即ち第1のガラス板11と第2のガラス板12の周辺部と当接する部分から、中空層14と反対側(図においては下側)に延びており、第1及び第2のガラス板の端面まで延びて形成されている。これによって、枠部材13の外側の、第1のガラス板11と第2のガラス板12の間の周縁部に、断面形状が略コの字形状の凹状部28が形成されている。縦框部27の高さを所定長さに選び、この凹状部28を利用して、戸車、戸車支持部材、外れ止め部品、補強材、その他、障子機能部品を設けることもできる。この凹状部28内の空間を利用して前記したような障子機能部品を設ければ、枠部材の縦框部によって障子機能部品が外側から隠蔽される状態とすることができる。
図6に示した例においても、図4と同様に、中間板保持部16の溝状部の底部においては、同様のベース部材21によって中間板15の端部が支持され、又中間板保持部16の溝状部の上部の両側部においても、同様のバックアップ材25によって中間板15の周辺部が支持されている。
図7に示した多重ガラス障子10においても、図6と同様に、4層に区画された中空層のそれぞれに対応する乾燥剤を収納する個別の空間部23が枠部材13に備えられ、かつ前記枠部材13の第1のガラス板11と第2のガラス板12側の少なくとも一部に縦框部27が備えられている。図7の例においては、図6における縦框部27が、その終端部から第1及び第2のガラス板11、12の端面方向に屈曲して横方向に延びる屈曲框部29を有しており、かかる屈曲框部29により第1及び第2のガラス板11、12の端面部を保護するとともに、第1及び第2のガラス板11、12をより確実に支持することができる。図7に示した例においても、図6と同様に、枠部材13の第1のガラス板11と第2のガラス板12の間の周縁部に、断面形状が略コの字形状の凹状部28を形成することができる。
図7に示した例における中間板15の中間板保持部16の溝状部への挿入及び支持構造は、図3と同様である。
図8に示した多重ガラス障子10は、図5に示した構造を有する多重ガラス障子の変形例であり、乾燥剤を収納する一連の第1の共有空間部30を、中間板を挿入する溝状部を有する中間板保持部16のそれぞれの下部に別途設けた構造となっている。この例においても、枠部材13には、4つの空間部23が形成されているが、これら各空間部23の下側に連通する第2の共有空間部31が設けられている。上記した第1の共有空間部30と第2の共有空間部31とは、壁体33によって区画されている。図8においても、かかる空間部23の中空層側の上辺壁には、前述したような連通部24が設けられており、又、第2の共有空間部31の上記第1の共有空間部30側にも連通部32が形成されており、第1の共有空間部30に収納された乾燥剤は区画された各中空層14との間で呼吸するようになっている。
図8に示した例における中間板15の中間板保持部16の溝状部への挿入及び支持構造は、図3と同様である。
本発明の多重ガラス障子10においては、枠部材13の中空層14側に、複数列の中間板保持部16が設けられるが、これら複数列の中間板保持部16のうち、どの中間板保持部16を用いて中間板を配するかについては、要求される断熱性能、中空層に充填される封入ガスの種類に応じて適宜決められることができる。
図9において示した例は、枠部材13の中空層側に、4列の中間板保持部16a、16b、16c及び16dが設けられた例であり、これらの中間板保持部のうち、3列の中間板保持部16b、16c及び16dの溝状部を利用して中間板15、15、15を配し、4層の区画された中空層14a、14b、14c及び14dが形成されるようにしたものである。この例は、第1のガラス板11が窓の室外側に位置するように使用される例であり、室外側に配される第1層の中空層14aが、他の中空層14b、14c、14dより、2倍近い厚さとなっている。
図10において示した例は、枠部材13の中空層14側に、3列の中間板保持部16a、16b及び16cが設けられた例であり、これらの中間板保持部のうち、2列の中間板保持部16a及び16cの溝状部を利用して中間板15、15を配し、3層の区画された中空層14a、14b及び14cが形成されるようにしたものである。この例は、第1のガラス板11が窓の室外側に位置するように使用される例であり、中間の中空層14bが、他の中空層14a、14cより、2倍近い厚さとなっている。
図9及び図10に示した例は、枠部材13に、4列、又は3列の中間板保持部が設けられ、これら複数列の中間板保持部16のうち、中間板を配する中間板保持部を選択的に使用するようにした二つの例であるが、枠部材13に設けられる中間板保持部は、更に多数列であってもよく、例えば5列〜10列程度であってもよく、中間板の配設に利用される中間板保持部の列も上記した例に限らず、種々の選択が可能である。図9及び10に示した例は、4列の中間板保持部のうち3列を、又3列の中間板保持部うち2列を、中間板の配設に利用しているが、各列全部を利用して中間板を配設して良いことは勿論である。又、図9においては、4列の中間板保持部のうち3列を中間板の配設に利用しているが、4列の中間板保持部のうち2列を中間板の配設に利用してもよい。中間板保持部の列数がさらに増え、多数列となった場合にも、これらの利用形態は同様である。
又、多数列の中間板保持部を枠部材に形成する場合には、各中間板保持部の間隔を狭くし、より多数列とし、得ようとする厚さの区画された空間層が選択的に形成されるように、中間板の配設に利用される中間板保持部の選択の範囲を増やすことが好ましい。
図11に示した例は、中間板の配設に利用する中間板保持部の選択の列が増えるように、更に多数列の中間板保持部を枠部材に設けた例である。同図においては、枠部材13に7列の中間板保持部16a、16b、16c、16d、16e、16f及び16gを形成した例である。
図11において、枠部材13に設けられる中間板保持部16a〜16gの溝状部の位置としては、得ようとする区画された中空層が得られるように設定された間隔Wa、Wb、Wc、Wd、We、Wf、Wg、Whが選択される。間隔Wa〜Whは、それぞれ一定の基準幅、即ち単位長さとしてもよいし、所定の任意の幅としてもよい。例えば、区画された中空層に封入ガス、例えば、乾燥空気や、アルゴンガス、クリプトンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを充填する場合、その封入ガスの種類によって断熱性の最大効果が得られる封入ガス層の厚さに最適範囲があり、その最適範囲の封入ガス層が複数層得られるように、枠部材13に形成される中間板保持部の位置を設定するのが好ましい。この場合、前述したように、この位置は、中間板保持部16a〜16gの溝状部の中央部の位置を基準として設定するのが好ましい。
例えば、間隔Wa〜Whを同じ長さの単位長さとした場合、ある封入ガスにおいては、ガス層の厚さが、(Wa+Wb)、(Wc+Wd)、(We+Wf)、(Wg+Wh)において断熱性の最大効果が得られる場合には、中間板保持部16b、16d、16fの溝状部を使用して3枚の中間板15を配設すればよい。又、封入ガスとして2種類使用する場合、一方の封入ガスにおいては、ガス層の厚さが、(Wa+Wb+Wc)、(Wf+Wg+Wh)が、又他方の封入ガスにおいては、(Wd+We)において断熱性の最大効果が得られる場合には、中間板保持部16c、16eの溝状部を使用して2枚の中間板15を配設すればよい。
使用する封入ガスに応じて適宜選択して使用できるように、中間板保持部の溝状部の中心位置同士の間隔は、ある所定の単位長さとするのが好ましい。例えば、この単位長さとしては、約5mm〜10mmの範囲のある値とすることにより、使用する封入ガスへの対応を高めることができる。
中間板保持部に所定列数の溝状部が予め設けられている枠部材を使用することにより、上記したように封入ガスの種類に応じて、多数列の中間板保持部のうち最適な封入ガス層の厚さが得られるように、中間板保持部を選択利用して、断熱性及び防音性に優れた多重ガラス障子を得ることができる。
図4〜11に示した枠部材13においても、図3に示した例と同様に、枠部材13としては、合成樹脂材料、あるいはアルミニウム材料が好ましく使用される。かかる枠部材形成用の合成樹脂材料としては、硬質塩化ビニル樹脂材料、アクリロニトリル・スチレン樹脂材料及びこれらにガラス繊維材を入れたものが、好ましい例として挙げられるが、勿論これらの熱可塑性合成樹脂材料に限定されるものではなく、各種熱可塑性合成樹脂材料も使用できる。
又、枠部材形成材料としては、一種の材料を用いて単一の部材からなる枠部材が得られるようにするのがより好ましいが、これに限らず、複数種の材料を用いて複合材料の単一な部材としてもよい。例えば、異なる樹脂材料を共押し出し成型法により部分的に異なる合成樹脂材料からなる複合構造の枠部材であってもよいし、又、上記したような合成樹脂材料とアルミニウム材料からなる複合構造の枠部材であってもよい。このような複合構造は、所望の枠部材形成材料を一体成型することにより得ることができる。特に、硬質の塩化ビニル樹脂材料やアクリロニトリル・スチレン樹脂材料により、スペーサー部を有する枠部材、あるいはスペーサー部と縦框部を有する枠部材18とを一体成型した枠部材は、障子として用いたとき、断熱性、耐久性に優れ、安価であり、断熱効果が高く、結露がしにくく、遮音性に優れた多重ガラス障子を得ることができるので、より好ましい。
又、枠部材13が、硬質塩化ビニル樹脂材料、その他の合成樹脂材料により成型されたものである場合、枠部材13の外側からの透湿を防止するため、枠部材13の外面側部Sにアルミニウム箔等の透湿防止フィルムを貼りつけることもできることも、図3の例と同様である。
又、図4〜図11に示した例は、多重ガラス障子の下辺側の枠部材の構造について説明したものであるが、多重ガラス障子の上辺側の枠部材、左辺側の枠部材、右辺側の枠部材においても基本的に下辺側の枠部材と同様な構造とするのがより好ましいことも、図3の例と同様である。勿論、多重ガラス障子の上辺側、左辺側、右辺側の枠部材の仕様に応じて、適宜の構造変更を行なってもよい。
又、多重ガラス障子の4辺の枠部材に空間部23を形成した場合、乾燥剤の充填は、4辺のうち必要な辺の枠部材のみ、あるいは必要部分のみでよいことは、図3の場合と同様である。
本発明の多重ガラス障子において使用されるガラス板と枠部材の側辺部との当接する部分の接着に使用される接着材(第1のシール材及び第2のシール材)としては、ガラス板と枠部材の側辺部との間の優れた接着強度、透湿防止性、耐久性、良好な接着面等が得られるように、又ガラス板と枠部材との接着工程の簡略化を考慮して、適宜の接着材が使用される。例えば、枠部材の側辺部が、硬質塩化ビニル樹脂材料やアクリロニトリル・スチレン樹脂材料からなる場合、接着材としては、シリコーン系接着剤、ポリサルファイド系接着剤、ブチル系接着剤、ホットメルト系接着剤、エポキシ系接着剤や、両面接着テープ、両面粘着テープなどが好ましく使用できる。又、枠部材が縦框部を備える場合、ガラス板と縦框部との間の接着に使用される接着材としても、上記と同様に、ガラス板と縦框部との間の優れた接着強度、透湿防止性、耐久性、良好な接着面等が得られるように、又、ガラス板と縦框部との接着工程の簡略化を考慮して、適宜の接着材が使用される。例えば、縦框部が、硬質塩化ビニル樹脂材料やアクリロニトリル・スチレン樹脂材料からなる場合、上記の例と同様に、接着材としては、シリコーン系接着剤、ポリサルファイド系接着剤、ブチル系接着剤、ホットメルト系接着剤、エポキシ系接着剤や、両面接着テープ、両面粘着テープなどが好ましく使用できる。前記接着材は必要に応じて接着力を向上させる目的でプライマーを使用しても良い。
以下、本発明の他の具体例について説明する。
図13及び図14に例示した第1のガラス板41と第2のガラス板42を隔置するために配される枠体45においては、スペーサー部46の内面部47側の中間部に2枚の中間板43a、43b、又は3枚の中間板43a、43b、43cを配することができるように、中間板保持部としての、2列、又は3列の溝状の凹部である溝状部55が設けられている。溝状部55(中間板保持部)が設けられる内面部の位置は、2枚又は3枚の中間板43が配される位置、即ち、所定幅の区画された中空層44a、44b、44c、又は中空層44a、44b、44c、44dに応じて適宜選択することができる。そして、溝状部55の内面の両側には、溝状部55に配される中間板43の周縁部を支持できるように、弾性材料からなるリップ部56、56が設けられており、溝状部55の底部には、溝状部55に配される中間板43の端面部を保護し、位置決めを確実にできるように、弾性材料又はクッション材料等からなるベース部材57が設けられている。図示した例においては、リップ部56、56は、同じレベルで設けられているが、段違いのレベルで設けてもよい。両側のリップ部56、56の形成位置は、中間部に配される中間板43の挿入が容易となるように、適宜設定すればよい。又、この例では、複数列の溝状部55の形成によって、スペーサー部46の乾燥剤が充填される空間部48は、3列あるいは4列に分かれている。
図13及び図14に例示した本発明の多重ガラス障子の枠体45に設けられた縦框部51を有する框部53は、隔置された第1のガラス板41及び第2のガラス板42の周縁部において内装される構造となっている。又、框部53の屈曲框部52、52は、縦框部51、51の、スペーサー部46の側辺部49、49と反対側の終端部からガラス板41、42側に屈曲し、横方向に延び、ガラス板の端面部を保護し、支える部分であり、更に必要に応じてガラス板の脱落を防ぐ部分であり、屈曲框部52、52の屈曲部分の先端の長さは、ガラス板の略板厚程度の長さ、あるいはガラス板の外側に若干はみ出る程度の長さとされるのが好ましい。上記したように、本発明の好ましい態様においては、枠体45の一体化された框部53の縦框部51とスペーサー部46の側辺部49、49とが、連続した面となっているので、この枠体45の框部53の縦框部51とスペーサー部46の側辺部49、49の色調、面状態等を考慮すれば、この框部の縦框部及びスペーサー部の側辺部を多重ガラス障子の周辺部における意匠面とすることができる。
上記した本発明の多重ガラス障子の実施態様の例においては、枠体45のスペーサー部46の側辺部49、49と、框部53の縦框部51、51とは、第1及び第2のガラス板41、42とが面する部分において、封着性の優れた接着材層54によりガラス板41、42と接着され、第1及び第2のガラス板41、42の間に形成される中空層44の気密が維持できるように封着されている。
又、スペーサー部46の内面部47には、図13、14に示されるような薄板部58を設けることが好ましい。この薄板部58は、空間部48と中空層44との間に通気可能にする通気孔を設ける加工が施されやすいように形成されたものであり、形成された通気孔を通して乾燥剤により中空層44の乾燥状態を維持し、結露を防止できるようにすることができる。
図13、14においては、多重ガラス障子の枠体の構造を下端側の枠体45を例にしてその構造について具体的に説明したが、上端側の枠体3c及び左右の側端側の枠体3bの構造も、基本的には下端側の枠体5の構造と同様とすることができる。
次に、本発明の多重ガラス障子を、住宅、建造物の窓に適用した例を説明する。
図15に示した、引き違い窓に適用された状態の本発明に係る多重ガラス障子60a、60bの下辺側の枠体61の溝部62においては、戸車63が戸車取付け部材64を介して回転自在に装着されており、窓枠65の上辺に設けられた走行レール66に沿って多重ガラス障子60a、60bが走行するように構成されている。ここにおいて、戸車取付け部材64の左右の下端部67と、縦框部68の下端との間には、それぞれ端部保護カバー69が配されており、この端部保護カバー69の走行レール66側には、走行レール66と接触するヒレ部70が設けられている。
なお、図15において、左右の多重ガラス障子60a、60bの戸車取付け部材64は、それぞれ異なる構造のものを例示している。
又、多重ガラス障子の上辺側の枠体71の溝部72には、窓枠73の下辺に設けられた走行レール74が納まり、走行レール74に沿って多重ガラス障子60a、60bがガイド走行できるように、ヒレ部75、75を有する凹部76を有する端部保護カバー77が装着されている。
図16は、図15に示した引き違い窓に適用された多重ガラス障子の召合せ部分を説明するための図面であり、多重ガラス障子の側辺側の枠体80の溝部81に装着される端部保護カバー82には、多重ガラス障子60a、60b同士の召合せ部分において相互に接触する召合せ部気密材83が設けられており、一方、窓枠65の多重ガラス障子60a、60bの側端部と召合う部分においては縦枠部気密材85が設けられている。なお、図16においては、図15における各部と同一の部分については、同一の符号をもって表示している。
図17〜図19には、枠体45のスペーサー部46と框部53とを、別体で構成し、透湿防止層86を介して接着材により一体化した枠体45がそれぞれ示されている。すなわち、図17、図18に示す枠体45は、図13に示した枠体45に対応したものであり、図19に示す枠体45は、図14に示した枠体45に対応したものである。
図17〜図19に示した分離型の枠体45は、スペーサー部46と框部53との間に透湿防止層86を介在させている。そして、透湿防止層86は、スペーサー部46と框部53との各々の対向面45A、53Aの全面に当接されて介在されている。これにより、多重ガラス障子の外部から中空層44a、44b、44c、44dに浸入する水分を透湿防止層86によって遮断できる。これにより、中空層44a、44b、44c、44dの結露を防止でき、耐湿性に優れた多重ガラス障子を提供できる。
また、透湿防止層86を多重ガラス障子の表面から露出させずに、スペーサー部46と框部53との間に介在させたので、透湿防止層86をスペーサー部46と框部53とによって保護することができる。これによって、多重ガラス障子の耐湿性を長期にわたって維持できる。
透湿防止層86としては、透湿防止塗料を塗布し、硬化されてなる層、及び透湿防止フィルム状体を貼り付けてなる層が好ましい。
透湿防止塗料としては、代表的には、フッ素樹脂系塗料、ポリ塩化ビニリデン樹脂系塗料などが挙げられる。
又、透湿防止フィルム状体としては、透湿防止性能を有する金属被覆フィルム、セラミック被覆フィルム、金属及びセラミックの複合被覆フィルム、金属テープ、フィルム自身が透湿防止性能をもった樹脂からなる透湿防止樹脂フィルム、又は透湿防止樹脂被覆フィルムが挙げられる。例えば、金属被覆フィルムとしては、プラスチックフィルム担体に透湿防止性能を有するアルミを真空蒸着法、スパッター法等の手段により被覆したアルミ被覆フィルムが代表的な例として挙げられる。又、セラミック被覆フィルムとしては、プラスチックフィルム担体に透湿防止性能を有する金属酸化物(例えば、SiO2)を真空蒸着法、スパッター法等の手段により被覆したセラミック被覆フィルムが代表的な例として挙げられる。又、金属テープとしては、アルミ金属テープ、ステンレス金属テープが代表的な例として挙げられる。透湿防止樹脂フィルムとしては、フッ素樹脂フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルムなどが代表的な例として挙げられる。
なお、図17〜図19の実施形態では、スペーサー部46と框部53とを分離したが、スペーサー部46、框部53を分離型に構成してもよい。スペーサー部46を分離型とした場合には、複数の硬質スポンジを使用してガラス板を隔置すればよい。