以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[画像形成装置の構造の概略]
図1は、本発明の実施形態による画像形成装置の構造を示す模式的な正面図である。図1にはこの画像形成装置100の内部の要素が、あたかも筐体の前面を透かして見えているように描かれている。
図1を参照するに、画像形成装置100はたとえばカラーレーザープリンターであり、給送部10、作像部20、定着部30、複数の発電部401、402、50、610、620、操作部70、動作制御部80、電力制御部90、および出力部95を備えている。給送部10は複数枚のシートSHTを1枚ずつ作像部20へ給送する。作像部20は、給送部10から送られたシートSH2の上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)の4色のトナー像を画像データに基づいて形成する。定着部30はそのトナー像を熱定着させる。複数の発電部401、…、620は周囲の熱、光、または振動を利用して発電する。操作部70は押しボタンまたはタッチパネルを含み、ユーザーによるそれらの操作を通して、ユーザーが要求するジョブの指示を受け付けて、その指示に関する情報を動作制御部80へ伝える。操作部70はまた外部インタフェースを通してネットワークへ接続され、その上の他の電子機器からジョブの要求と画像データとを受信して動作制御部80へ渡す。動作制御部80、電力制御部90、および出力部95は、1枚の基板の上に実装された電子回路である。動作制御部80は操作部70からの情報に基づいて画像形成装置100内の他の要素を制御する。動作制御部80は特に、作像部20に対して画像データを提供する。電力制御部90は、発電部401、…、620から出力される電力を制御する。出力部95はその電力を蓄え、または出力する。この出力電力はたとえば、操作部70、動作制御部80、または電力制御部90によって待機電力または停電時の補助電力として利用される。
[給送部]
図1を参照するに、給送部10は、収容トレイ11、繰り出しローラー12、搬送ローラー13、およびタイミングローラー14を備えている。収容トレイ11は画像形成装置100の下部に内蔵され、複数枚のシートSHTを収容可能である。シートSHTの材質はたとえば紙である。繰り出しローラー12はそれらのシートSHTのうち、最も上に位置するシートSH1を搬送ローラー13へ向けて繰り出す。そのシートSH1はさらに、その搬送ローラー13によってタイミングローラー14へ搬送される。タイミングローラー14はその搬送の開始時点では一般に停止しており、動作制御部80からの駆動信号に応じて回転を開始する。その駆動信号が示すタイミングで、搬送ローラー13から送られたシートSH2はタイミングローラー14から作像部20へ送り出される。
[作像部]
図1を参照するに、作像部20は、4つの作像ユニット21Y、21M、21C、21K、4本の1次転写ローラー22Y、22M、22C、22K、中間転写ベルト23、および2次転写ローラー24を備えている。作像ユニット21Y、…、21Kは水平方向に沿って所定の間隔で配置されている。1次転写ローラー22Y、…、22Kはそれぞれ、作像ユニット21Y、…、21Kの1つと垂直方向で対向するように配置されている。中間転写ベルト23は2本のローラー23L、23Rに掛け渡されて、それらの回転と共に回転する。中間転写ベルト23のうち、水平方向に張られている部分は作像ユニット21Y、…、21Kと1次転写ローラー22Y、…、22Kとの間を通る。中間転写ベルト23が回転すると、その表面の各部が1次転写ローラー22Y、…、22Kに順番に接触する。2次転写ローラー24は、中間転写ベルト23が掛け渡された2本のローラーの一方23Rと平行に設置され、そのローラ23Rとの間に中間転写ベルト23を挟んでいる。中間転写ベルト23と2次転写ローラー24との接触部、すなわちニップに、タイミングローラー14から送り出されたシートSH2が通紙される。
4つの作像ユニット21Y、…、21Kはいずれも同様な構成であり、それぞれが、感光体ドラム25、帯電器26、露光部27、現像器28、クリーナー29、およびイレーサーランプ(図1には示されていない。)を備えている。感光体ドラム25の外周は帯電器26等によって囲まれている。帯電器26は、感光体ドラム25の外周面のうち、対向した部分に均一に帯電させる。露光部27は発光素子とレンズとを含む。発光素子はたとえばレーザダイオードである。露光部27はそれらを利用して感光体ドラム25の外周面上の帯電部分を露光する。そのとき、光が実際に当たった領域が除電される。その領域の形状は、動作制御部80からの駆動信号に従って決定される。こうして、その領域が静電潜像として外周面上に残る。現像器28はその静電潜像の上に、その作像ユニット21Y、…、21Kに割り当てられた色のトナーを乗せて現像する。クリーナー29は感光体ドラム25の外周面のうち、中間転写ベルト23に接触した直後の部分から、残存するトナーを除去する。イレーサーランプは感光体ドラム25の外周面のうち、対向した部分に一様に光を照射して除電する。
1次転写ローラー22Y、…、22Kには電圧が印加されているので、それらと中間転写ベルト23との間に電界が生じる。それらの電界により、感光体ドラム25から中間転写ベルト23の表面へトナー像が転写される。4つの作像ユニット21Y、…、21Kは、中間転写ベルト23の回転に合わせて、それぞれの作像動作のタイミングをずらす。その結果、それらの作像ユニット21Y、…、21Kの感光体ドラム25から、それぞれに割り当てられた色のトナー像が順番に、中間転写ベルト23の表面上の同じ位置へ多重転写されて重なり合う。こうして、カラートナー像が中間転写ベルト23の表面上に形成される。
2次転写ローラー24には電圧が印加されているので、それと中間転写ベルト23との間に電界が生じる。その電界により、中間転写ベルト23上のカラートナー像が、中間転写ベルト23と2次転写ローラー24との間のニップを通過するシートSH2の表面へ転写される。その後、2次転写ローラー24はそのシートSH2を定着部30へ送り出す。
[定着部]
定着部30は、定着ローラー31、加圧ローラー32、および温度センサー34を含む。定着ローラー31と加圧ローラー32とは互いに平行に配置されて接触している。それらの間の接触部、すなわち定着ニップには、作像部20から送り出されたシートSH2が通紙される。定着ローラー31はヒーターとしてハロゲンランプを内蔵しており、そこから放出された熱を、定着ニップに通紙されたシートSH2の部分に対して加える。一方、加圧ローラー32はそのシートSH2の部分に対して圧力を加えて、定着ローラー31に押し付ける。そのシートSH2のうち、作像部20によってトナー像が形成された部分が定着ニップに挟まれると、定着ローラー31からの熱と、加圧ローラー32からの圧力とにより、そのトナー像がシートSH2の表面上に定着する。温度センサー34は定着ローラー31の中央部の近傍に設置されており、定着ローラー31の温度を測定して動作制御部80へ通知する。その温度の測定値は動作制御部80により、ハロゲンランプの発熱量の制御、すなわち温調制御に利用される。
シートSH2は、定着部30で熱定着処理を受けた後、ガイド板35によって定着部30の上部から排出口36へ向けて案内される。排出口36の手前には一対の排出ローラー37が設置されており、それらがシートSH3を外部の排紙トレイ38へ排出する。
[発電部]
発電部401、…、620はそれぞれ環境発電用の素子を利用して、画像形成装置100が周囲の環境へ放出した熱、光、または振動から電力を創り出す。発電部は、熱発電部401、402、光発電部50、および振動発電部610、620を含む。熱発電部401、402は熱電変換素子を利用して、定着部30または排紙トレイ38上のシートSH3の熱を電力として回収する。光発電部50は太陽電池を利用して、画像形成装置100の上面を照らす外光または照明光を電力として回収する。振動発電部610、620は振動発電素子を利用して、給送部10の振動を電力として回収する。
−熱発電部−
図1を参照するに、熱発電部は、画像形成装置100の筐体のうち、内側が定着部30に面した部分の外面に設置されたもの(第1熱発電部)401と、排紙トレイ38の上面に埋め込まれたもの(第2熱発電部)402とを含む。
画像形成装置100の筐体のうち、第1熱発電部401が設置された部分は、次の2つの点で熱電変換素子の設置に適している:(A1)その場所は定着部30からの廃熱により、室温よりも十分に高温に維持される。したがって、熱電変換素子の出力電力が高い。(A2)その場所で熱電変換素子が熱を吸収しても、定着部30の定着ニップの温度が変化しない。したがって、印刷の品質を高く維持したまま、第1熱発電部401を利用することができる。
排紙トレイ38の上面のうち、第2熱発電部402が埋め込まれた部分は、排出口36から排出されたシートSH3によって覆われる。このシートSH3は、定着部30から受けた熱によって温度が高いので、第2熱発電部402はそのシートSH3との接触により、室温よりも十分に高温に維持される。したがって、熱電変換素子の出力電力が高い。
図2の(a)は、図1に示されている熱発電部401、402とそれらの近傍との外観を模式的に示す斜視図である。図2の(a)を参照するに、排出口36の下側では画像形成装置100の筐体の表面が垂直に切り立ち、水平方向から下向きに滑らかに湾曲している排紙トレイ38の上面の端と交差している。第1熱発電部401は、その筐体の表面のうち、排紙トレイ38の上面との交差部分の近傍に設置されている。第2熱発電部402は、その交差部分の近傍に位置する排紙トレイ38の上面部分に埋め込まれている。各熱発電部401、402には複数個の熱電変換素子41がマトリックス状に配置されている。これらの熱電変換素子41は熱発電部401、402ごとに、配線によって直列に接続されている。
図2の(b)は、(a)に示されている熱電変換素子41の上面図と側面図とである。図2の(b)を参照するに、熱電変換素子41は、2枚の基板42、43、複数個のP型半導体素子44P、および、それらと同数個のN型半導体素子44Nを含む。基板42、43はいずれも矩形状の絶縁体、たとえばセラミックであり、両者の幅WDは等しく、一方の基板42の長さL1は他方の基板43の長さL2よりも短い。P型半導体素子44PとN型半導体素子44Nとは、たとえばビスマス(Bi)−テルル(Te)系半導体にそれぞれ、アンチモン(Sb)とセレン(Se)とを微量ずつ添加したものである。半導体素子44P、44Nは2枚の基板42、43の間にマトリックス状に配置され、特にP型半導体素子44PとN型半導体素子44Nとが隣接している。図2には示されていないが、2枚の基板42、43は、互いに対向する表面に導電層を含む。それらの導電層はP型半導体素子44Pの上端を、隣接するN型半導体素子44Nの上端に接続し、下端を、隣接する別のN型半導体素子44Nの下端に接続している。これにより、すべてのP型半導体素子44PとN型半導体素子44Nとが交互に、直列に接続されている。
図3の(a)は、図2の(b)に示されている熱電変換素子41が含む1対の半導体素子44P、44N近傍の模式的な断面図である。図3の(a)を参照するに、2枚の基板の一方42は画像形成装置100の筐体の表面に接触して、定着部30または排紙トレイ38の上のシートSH3からの廃熱を吸収し、他方43は外部空間に露出してその廃熱をその空間へ放出する。このとき、それらの基板42、43の間には温度差ΔTが生じるので、各半導体素子44P、44Nの内部には、図3の(a)に矢印HGRで示されているように、高温の基板42から低温の基板43への向きに熱勾配が生じる。この熱勾配が各半導体素子44P、44Nのキャリア、すなわちホールHLEと電子ELCとを低温側に集中させる結果、各半導体素子44P、44Nの両端間に電位差が生じる(ゼーベック効果)。すべての半導体素子44P、44Nは基板42、43の導電層45、46、47によって直列に接続されているので、その直列接続の両端には、すべての半導体素子44P、44Nにおける電位差の総和が起電力EMFとして現れる。こうして、熱電変換素子41は外部からの廃熱を直流電力へ変換する。
図3の(b)、(c)はそれぞれ、熱電変換素子41の電流−電圧特性曲線、電力−電圧特性曲線を示すグラフである。図3の(b)を参照するに、熱電変換素子41は出力電圧の上昇に伴って出力電流を実質上(すなわち、許容範囲内で)線形に減少させる。したがって、図3の(c)に示されているように、電力−電圧特性曲線は実質上、上に凸の放物線で表される。この放物線の頂点PK、または、その頂点PKの表す電力の最大値が出力される際の電圧値VPKと電流値との対を「最大電力点」という。最大電力点での電圧値VPKは実質上、開放電圧VOPの50%に等しい:VPK=VOP/2。ここで、「開放電圧」は、熱電変換素子41の出力端を負荷から切断して開放したときの電圧値であり、図3の(b)、(c)に示されている特性曲線が原点以外で「電流=0[mA]」、「電力=0[mW]」の座標軸と交わるときの電圧値VOPに等しい。図3の(b)、(c)をさらに参照するに、熱電変換素子41の電流−電圧特性と電力−電圧特性とはいずれも、2枚の基板42、43間の温度差ΔTによって異なる。したがって、その温度差ΔTの変動に伴い、最大電力点PKは、図3の(c)に示されている一点鎖線CVに沿って変位する。
−光発電部−
図1を参照するに、光発電部50は、画像形成装置100の上部に搭載された自動原稿送り装置(ADF)の上面に埋め込まれている。光発電部50は、その上面を照らす外光または照明光を、太陽電池によって電力へ変換する。
図4の(a)、(b)はそれぞれ、光発電部50が内蔵する太陽電池の電流−電圧特性曲線、電力−電圧特性曲線を示すグラフである。図4の(a)を参照するに、太陽電池の出力電流は実質上、出力電圧の広い範囲で一定に保たれ、出力電圧が開放電圧VOPの近傍(たとえば、開放電圧VOPの0.6〜0.7倍)まで到達すると急激に減少する。したがって、図4の(b)に示されているように、出力電圧が、開放電圧VOPに比較的近い値VPKに達したとき、最大電力点PKが現れる。図4の(a)、(b)をさらに参照するに、太陽電池の電流−電圧特性と電力−電圧特性とはいずれも入射光量ISLによって異なるので、その入射光量ISLの変動に伴って最大電力点PKは変位する。
−振動発電部−
図1を参照するに、振動発電部は、給送部10のうち、収容トレイ11の近傍に設置されたもの(第1振動発電部)610と、作像部20の近傍に設置されたもの(第2振動発電部)620とを含む。これらの設置箇所は、給送部10が各種ローラー12、13、14を駆動してシートSH1、SH2を収容トレイ11から作像部20へ搬送する度に、大きく振動する。したがって、振動発電部610、620の出力電力が十分に高い。
図5の(a)は、第1振動発電部610の構造を示す模式図である。第2振動発電部620の構造も同様であるので、以下、第1振動発電部610を例に挙げて、振動発電部の構造を説明する。図5の(a)を参照するに、第1振動発電部610は静電誘導式であり、振動発電素子611と整流回路612とを含む。
振動発電素子611は、基体61、可動部62、および支持部63を含む。これらの構造は半導体集積技術(MEMSプロセス)を利用して1枚の半導体基板に作り込まれている。基体61はその半導体基板であり、上面に凹部64を含む。凹部64の底面には帯状のエレクトレット65が複数、それらの長手方向(図5の(a)では、紙面に対して垂直な方向に相当する。)に対して垂直な方向に等間隔で配置されている。「エレクトレット」とは、外部電場が除去された後も電気分極が半永久的に持続する誘電体であり、特に比較的強い電場を周囲に生じさせるものをいう。可動部62は板状部材であり、その端部が支持部63によって基体61の上面に接続されることで、基体61の凹部64の中に浮いた状態で支えられている。可動部62の下面には帯状の電極66が複数、長手方向に対して垂直な方向に等間隔で配置され、エレクトレット65と対向している。エレクトレット65内の電荷の成す電場が電極66に静電誘導を生じさせるので、電極66の表面には、エレクトレット65内の電荷とは逆極性の電荷が蓄積する。支持部63はバネであり、可動部62を基体61の凹部64の中に浮かせたまま、凹部64の底面に対して平行な方向で振動可能に支持する。振動発電部611が外部から振動を受けると、図5の(a)に矢印HDRで示されている方向で可動部62が振動するので、その下面の電極66がエレクトレット65に対して変位する。そのとき、電極66がエレクトレット65から受ける電場が変化するのに伴い、電極66の表面の電荷が再配置されるので、電極66には起電力PWが生じる。この起電力PWの極性は可動部62の振動に同期して反転する。整流回路612は、振動発電素子611の基体61と可動部62との間を接続し、その起電力PWによって生じる交流電流を直流に変換して送出する。
図5の(b)、(c)はそれぞれ、振動発電素子611の電流−電圧特性曲線、電力−電圧特性曲線を示すグラフである。図5の(b)を参照するに、振動発電素子611の出力電圧が上昇すると、その出力電流が減少する。その減少速度は、出力電圧が高いほど大きい。したがって、図5の(c)に示されているように、出力電圧が、開放電圧VOPに比較的近い値VPKに達したとき、最大電力点PKが現れる。図5の(b)、(c)をさらに参照するに、振動発電素子611の電流−電圧特性と電力−電圧特性とはいずれも外部からの振動の大きさVACによって異なるので、その大きさの変動に伴って最大電力点PKは変位する。
[動作制御部]
動作制御部80は、CPU、RAM、およびROMを含む。CPUはファームウェアに従って画像形成装置100内の他の機能部を制御する。RAMはCPUに、ファームウェアを実行する際の作業領域を提供する。ROMは、書き込み不可のメモリーと書き換え可能なメモリー、たとえばEEPROMとを含む。前者はファームウェアを格納し、後者はCPUに環境変数等の保存領域を提供する。
図6は、画像形成装置100の機能ブロック図である。図6を参照するに、動作制御部80はファームウェアに従い、まず、操作部70にユーザーまたはネットワークからジョブの要求JBRまたは画像データIMGを受け付けさせる。動作制御部80は次に、その要求JBRに基づいて、給送部10、作像部20、定着部30、電力制御部90、出力部95等、画像形成装置100の他の機能部の動作を制御する。具体的には、動作制御部80は各機能部に対して駆動信号DS1−DS4を送って、現時点で選択すべき動作モードを指示する。たとえば、動作制御部80は、指示すべき動作モードの種類を環境変数の1つで表して、各機能部にその環境変数の参照を促す。これにより、動作制御部80は各機能部に、指示した動作モードに応じた処理を開始させる。
図7は、画像形成装置100の状態遷移図である。図7を参照するに、画像形成装置100の動作モードは、稼動モードRNG、待機モードWTG、およびスリープモードSLPの3種類に大別される:稼動モードRNGは連続印刷モードともいい、シートの印刷を実行する。このモードでは、給送部10は必要な枚数のシートを連続して給送し、作像部20はトナー像の形成とシートへの転写とを繰り返し、定着部30はシートへの加熱と加圧とを継続する。待機モードWTGは、シートの印刷が可能な状態を準備して維持する。このモードでは、給送部10と作像部20とは停止し、定着部30は定着ローラー31を予熱して適正な温度に保つ。スリープモードSLPは電力消費を必要最小限に抑える。このモードでは、給送部10と作像部20とに加えて定着部30も停止し、特に、内蔵のヒーター31Aへの電源供給を遮断する。
動作制御部80は、現時点での動作モードを示す環境変数の値を、画像形成装置100に生じたイベントに応じて更新する。これにより、各動作モードRNG、WTG、SLPは他のモードへ移行する。たとえば、稼動モードRNGは、停止イベントSTPに応じて待機モードWTGへ移行し、パワーオフイベントPFFに応じてスリープモードSLPへ移行する。停止イベントSTPは、印刷の完了、停止ボタンの押下、およびネットワークからの停止命令の受信を含む。パワーオフイベントPFFは電源オフボタンの押下を含む。稼動モードRNGはまた、新たな印刷の要求JBRが生じたときには継続される。待機モードWTGは、印刷の要求JBRに応じて稼動モードRNGへ移行し、待機期間の満了WTPまたはパワーオフイベントPFFに応じてスリープモードSLPへ移行する。スリープモードSLPは、印刷の要求JBRに応じて稼動モードRNGへ移行し、復帰イベントWKPに応じて待機モードWTGへ移行する。復帰イベントWKPは、任意の押しボタンの押下、タッチパネルへの接触、およびネットワークからの復帰命令の受信を含む。
動作制御部80はさらに、各機能部に対して動作モードごとに必要な情報を提供する。たとえば、稼動モードRNGを指示する場合は次のとおりである:給送部10に対しては、動作制御部80は、連続して給送されるべきシートの種類と枚数、タイミングローラー14に回転を開始させるべきタイミング等を決定して駆動信号DS1で伝える。作像部20に対しては、動作制御部80は画像データIMGに基づいて、各作像ユニット22Y、…、22Kの感光体ドラム25に形成されるべきトナー像に関する情報とその形成のタイミングとを決定して駆動信号DS2で伝える。定着部30に対しては、動作制御部80はまず、温度センサー34の測定値を要求し、その値に基づいて定着ローラー31に対する温調制御量、すなわちヒーター31Aの発熱量を決定して駆動信号DS3で伝える。
[電力制御部]
図8は、電力制御部90と出力部95との機能ブロック図である。図8を参照するに、電力制御部90は電力取出部91と整合制御部92とを含む。電力制御部90はこれらの機能部91、92を利用して、複数の発電部401、620、50から並列に出力される電力を制御する。なお、図8では、他の発電部402、610の図示が省略されている。
電力取出部91は各発電部401、620、50に1つずつ接続され、接続先の発電部の出力を個別に調節する。具体的には、電力取出部91はそれぞれ、測定部911と調節部912とを1つずつ含む。測定部911は発電部401、…、50の1つに接続され、接続先の発電部の出力電圧と出力電流とを測定して、その結果を整合制御部92へ渡す。調節部912は、たとえばスイッチングコンバータを内蔵している。調節部912はそれを利用して、測定部911が接続された発電部の出力電圧または出力電流を調節することにより、その発電部の出力電圧を所定値に一致させる。調節部912は特にその所定値を、整合制御部92から受信される出力電圧の目標値に整合させる。
整合制御部92は、各測定部911によって測定された値に基づいて、制御対象の発電部401、…、50のすべてが共有すべき出力電圧の目標値を決定し、その目標値を各調節部912へ指示する。
具体的には、整合制御部92はまず、各測定部911から、その接続先の発電部の出力電圧と出力電流との測定値を受信し、それらの値からその発電部の電力−電圧特性、特にその最大電力点を算定する。その算定には周知の方法が利用可能である。たとえば、その算定に「山登り法」が利用される場合、整合制御部92は、各調節部912には発電部の出力電圧を少しずつ変化させ、各測定部911にはその変化の度にその発電部の出力電圧と出力電流との測定を反復させる。整合制御部92はさらに、それらの測定値から各発電部の出力電力の増減を求め、その電力が増えるようにその発電部の出力電圧の変分を決めて、その発電部に接続された調節部912にその変分を指示する。以上の操作を、各発電部の出力電力が増えなくなるまで整合制御部92が繰り返すことにより、その発電部の最大電力点が求まる。
整合制御部92は、すべての発電部について電力−電圧特性を算定した後、それらの特性に基づいて出力電圧の目標値を決定する。整合制御部92は特に、それらの特性が示す最大電力点の分布に合わせて、目標値を決定する際に用いるべき演算を次のように選択する:(1)その分布が第1の範囲内(以下、「簡易設定域」という。)に収まる場合、整合制御部92はその分布の代表値(具体的には、平均値、中間値、または最頻値)を算出して、その値を目標値として決定する;(2)その分布が簡易設定域を超えて第2の範囲内(以下、「詳細設定域」という。)にまで拡がる場合、整合制御部92はすべての発電部にわたって電力−電圧特性を合算してそれらの発電部全体の電力−電圧特性を求め、その全体の特性が示す最大電力点での電圧値を目標値として決定する。整合制御部92が目標値を決定する処理の詳細については後述する。
最大電力点が詳細設定域よりも外に位置する発電部が存在する場合、整合制御部92はその発電部の電力−電圧特性を上記の演算(1)、(2)の対象から除外する。整合制御部92はさらに、その発電部を電力制御の対象からも除外する。具体的には、整合制御部92は、その発電部に接続された電力取出部91にその発電部の出力を遮断させる。
[出力部]
図8を参照するに、出力部95は、定電圧回路96、二次電池97、スイッチ98、および出力ポート99を含む。これらの機能部96−99を利用して出力部95は、各発電部401、…、602から出力された電力を蓄え、または、操作部70、動作制御部80、電力制御部90等の他の機能部へ出力する。
定電圧回路96は電力制御部90と二次電池97との間を接続しており、電力制御部90から出力される電流を二次電池97へ供給する。そのとき、定電圧回路96は、二次電池97に対して印加される電圧のレベルを調節して、動作制御部80から指示された目標値に維持する。
二次電池97はたとえばリチウムイオン電池であり、定電圧回路96と接地導体との間に接続されている。動作制御部80は、定電圧回路96に対して指示すべき目標値を、二次電池97の充電方式に従って変化させる。その充電方式は二次電池97の種類によって決まる。たとえば二次電池97がリチウムイオン電池である場合、動作制御部80はその充電を定電流定電圧方式(CCCV方式)で行う。
スイッチ98は動作制御部80からの指示に応じて、定電圧回路96と二次電池97との間の接続点を出力ポート99へ接続し、またはその接続点を出力ポート99から切断する。動作制御部80はたとえば、スリープモードまたは停電時、スイッチ98に定電圧回路96と二次電池97とを出力ポート99へ接続させる。これにより、発電部401、…、602が創り出した電力、および二次電池97が蓄えている電力が出力ポート99を通して、操作部70、動作制御部80、または電力制御部90へ送られて、待機電力または補助電力として利用される。
[出力電圧の目標値の決定]
−発電部の最大電力点の分布が簡易設定域内に収まる場合−
図9は、3つの発電部401、402、610のそれぞれと、それらの全体との電力−電圧特性曲線を示すグラフである。図9を参照するに、細い実線のグラフGR1は第1熱発電部401の電力−電圧特性曲線を示し、粗い破線のグラフGR2は第2熱発電部402のものを示し、細かい破線のグラフGR3は第1振動発電部610のものを示し、太い実線のグラフGRTは、それらの特性曲線すべての合算を示す。以下、説明の便宜上、これら3つの発電部401、402、610が、画像形成装置100に搭載された発電部のすべてである場合を想定する。
図9には簡易設定域RG1が示されている。簡易設定域RG1は、すべての発電部401、402、610の出力電圧が共通に取り得る範囲の中に、予め静的に設定された1つの区間であり、その幅が次の条件を満たすように決定されている:「すべての発電部の最大電力点での出力電圧が簡易設定域に属する場合、それらの出力電圧の代表値(平均値等)にすべての発電部の出力電圧が揃えられれば、発電部全体で合算された出力電力はその全体の最大電力点での値に十分に近い、すなわち、その値との差が許容範囲内である。」
簡易設定域はたとえば、すべての発電部の最大電力点が簡易設定域の中に位置するときに次の条件が満たされるように設定される:(A)簡易設定域の幅は、発電部の電力−電圧特性曲線の半値全幅を代表する値に等しい;(B)最大電力点での出力電力の半分を発電部全体で合算した値が、いずれの発電部の最大電力点での出力電力をも実質上、すなわち許容範囲を超えては、下回らない。条件(A)が満たされていれば、発電部の最大電力点が簡易設定域の中に位置する限り、その発電部の出力電力は実質上、出力電圧が簡易設定域に属するいずれの値であっても、最大電力点での値の半分を下回らない。さらに、条件(B)が満たされていれば、すべての発電部の出力電圧が簡易設定域内のいずれの値に揃えられても、発電部全体で合算された出力電力は実質上、いずれの発電部の最大電力点での出力電力をも下回らない。したがって、すべての発電部の出力電圧が最大電力点での出力電圧の代表値に揃えられた場合、発電部全体の出力電力がその全体の最大電力点での値に十分に近いと、期待することができる。少なくとも、その全体の出力電力は、発電部の中で最大の電力を出力するもののみから取り出される電力を下回らない。
図9に示されている例では、第1熱発電部401の最大電力点PK1、第2熱発電部402の最大電力点PK2、および第1振動発電部610の最大電力点PK3のいずれにおける電圧も簡易設定域RG1に属する。この場合、整合制御部92はこれらの最大電力点での電圧の代表値VAVを算定して、出力電圧の目標値として決定する。発電部全体の電力−電圧特性曲線GRTから読み取れるとおり、すべての発電部401、…、610の出力電圧が代表値VAVに揃えられた場合、発電部全体での出力電力の合計PAは、それら全体の最大電力点PKTでの値PTに十分に近い。すなわち、すべての発電部401、…、610の出力電圧を各発電部の最大電力点での出力電圧の代表値VAVに揃えさえすれば、発電部全体から取り出し得る最大の電力PTに十分に近い電力PAをその全体から取り出すことができる。
こうして、すべての発電部の最大電力点が簡易設定域の中に位置する場合、整合制御部92は各最大電力点での出力電圧の代表値を出力電圧の目標値として決定する。その結果、発電部全体から取り出し可能な電力を増大させることができる。
−発電部の最大電力点の分布が詳細設定域内にまで拡がる場合−
図10は、4つの発電部401、402、50、610のそれぞれと、それらの全体との電力−電圧特性曲線を示すグラフである。図10を参照するに、細い実線のグラフGR1は第1熱発電部401の電力−電圧特性曲線を示し、粗い破線のグラフGR2は第2熱発電部402のものを示し、細かい破線のグラフGR3は第1振動発電部610のものを示し、一点鎖線のグラフGR4は光発電部50のものを示し、太い実線のグラフGRTは、それらの特性曲線すべての合算を示す。以下、説明の便宜上、これら4つの発電部401、…、610が、画像形成装置100に搭載された発電部のすべてである場合を想定する。
図10には、簡易設定域RG1に加え、詳細設定域RG2が示されている。詳細設定域RG2は、すべての発電部401、…、610の出力電圧が共通に取り得る範囲の中に、予め静的に設定された1つの区間であり、下限が簡易設定域RG1の下限と等しく、上限が実質上、すべての発電部に対して設定可能な出力電圧の上限に等しい。
図10に示されている例では、第1熱発電部401の最大電力点PK1、第2熱発電部402の最大電力点PK2、および第1振動発電部610の最大電力点PK3における電圧は簡易設定域RG1に属する一方、光発電部50の最大電力点PK4における電圧は簡易設定域RG1の上限を超えて、詳細設定域RG2内に位置する。この場合、整合制御部92はまず、4つの発電部401、…、610の全体で電力−電圧特性曲線GR1、…、GR4を合算して、発電部全体の電力−電圧特性曲線GRTを求める。図10を参照するに、各発電部単独の特性曲線GR1、…、GR4が重なる領域では発電部全体の特性曲線GRTが太い実線で表され、それ以外の領域ではその特性曲線GRTが光発電部50の特性曲線GR4と一致する。整合制御部92は次に、発電部全体の特性曲線GRTの形状から最大電力点PKTを特定する。図10の例では、その特性曲線GRTが、各発電部単独の特性曲線GR1、…、GR4が重なる領域内の点PKTと、光発電部50の最大電力点PK4とにピークを持つ。整合制御部92はそれらのピークPKT、PK4の間で電力の大きさを比較して、最大の電力を示すピークPKTを発電部全体の最大電力点として特定する。
こうして、一部の発電部の最大電力点が簡易設定域を超えて詳細設定域内に位置する場合、整合制御部92は、発電部全体の特性曲線GRTの実際の形状からその全体の最大電力点PKTでの電圧を特定し、出力電圧の目標値として決定する。その結果、発電部全体から取り出し可能な電力を増大させることができる。
図9に示されているように、発電部の最大電力点の分布が簡易設定域内に収まっている間、整合制御部92は各最大電力点での出力電圧の代表値を出力電圧の目標値として決定する。一方、図10に示されているように、その分布が簡易設定域を超えて詳細設定域内にまで拡がった場合に初めて、整合制御部92は各発電部の電力−電圧特性曲線を合算して発電部全体の電力−電圧特性曲線の詳細な形状を算定する。発電部の最大電力点の分布から出力電圧の代表値を算定するための演算は、各発電部の特性曲線から発電部全体のものの詳細な形状を算定するための演算よりも計算量が少ないので、整合制御部92は、目標値の決定に要する負担と時間とをいずれも削減することができる。
−発電部の最大電力点の分布が詳細設定域の外にまで拡がる場合−
図11は、4つの発電部401、402、50、610のそれぞれと、それらの全体との電力−電圧特性曲線を示すグラフである。図11に示されているグラフは、図10に示されているものとは、粗い破線のグラフGR2のピークPK2が詳細設定域RG2から外れている点で異なる。これは、排紙トレイ38上のシートSH3の温度が降下した等、環境温度の変動に伴って第2熱発電部402の最大電力点PK2が、図11に示されている矢印AR2の向きに変位して、その点での出力電圧が詳細設定域RG2の下限を下回ったことによる。この場合、発電部全体の電力−電圧特性曲線GRTは、図11に示されている矢印AR2の向きに変形する。
図11を参照するに、第2熱発電部402の最大電力点PK2での出力電力は、他の発電部401、610の最大電力点PK1、PK3での値よりもかなり小さい。たとえば、簡易設定域RG1の幅が、その中に最大電力点を持つ発電部の電力−電圧特性曲線の半値全幅から決められている場合、詳細設定域RG2の下限を下回る最大電力点での出力電力は一般に、簡易設定域RG1の中に位置する最大電力点での値の半分よりも小さい。したがって、発電部全体から取り出し得る電力の中で、第2熱発電部402、すなわち、最大電力点が詳細設定域RG2の下限を下回る発電部からのものが占める割合は一般に、無視されてもよい程度に低い。図11の例では、発電部全体の電力−電圧特性曲線GRTは、その中に第2熱発電部402の電力−電圧特性曲線GR2が合算されていてもいなくても、実質的に同じ形状であり、特に、最大電力点PKTの位置が変わらない。
図11に示されている第2熱発電部402の最大電力点PK2のように、一部の発電部の最大電力点が詳細設定域から外れている場合、整合制御部92は、出力電圧の目標値を決定するための演算の対象から、その一部の発電部の電力−電圧特性曲線を除外する。これにより、整合制御部92は、目標値の正確性を損なうことなく、目標値の決定に要する負担と時間とをいずれも削減することができる。
[電力制御部による処理の流れ]
図12は、電力制御部90による発電部401、…、602に対する電力制御のフローチャートである。この制御は、各発電部401、…、602に接続された電力取出部91内の測定部911がその接続先の発電部の出力電圧と出力電流とを測定する度に開始される。
ステップS1201では、整合制御部92が各発電部の最大電力点を算定する。具体的には、整合制御部92はまず、各発電部401、…、602に接続された測定部911から、その接続先の発電部の出力電圧と出力電流との測定値を受信する。整合制御部92は次に、受信された測定値から各発電部の電力−電圧特性を計算し、たとえば山登り法等を用いてその最大電力点を算定する。その後、処理はステップS1202へ進む。
ステップS1202では、整合制御部92は、ステップS1201で算定された最大電力点のうち、演算の対象とされているものの分布が簡易設定域内に収まるか否かを判断する。その分布が簡易設定域内に収まる場合、処理はステップS1203へ進み、その分布が簡易設定域を超えている場合、処理はステップS1204へ進む。
ステップS1203では、最大電力点の分布が簡易設定域内に収まる。したがって、整合制御部92はその分布の代表値、具体的には、平均値、中間値、または最頻値を算出してその値を、すべての発電部401、…、602が共有すべき出力電圧の目標値として決定する。その後、処理はステップS1208へ進む。
ステップS1204では、最大電力点の分布が簡易設定域を超えている。整合制御部92は、簡易設定域を超えた最大電力点のすべてが詳細設定域の中に位置するか否かを判断する。それらの最大電力点のすべてが詳細設定域の中に位置する場合、処理はステップS1205へ進み、いずれかの最大電力点が詳細設定域をも超えている場合、処理はステップS1207へ進む。
ステップS1205では、最大電力点の分布が、簡易設定域を超えてはいるが、詳細設定域内には収まっている。したがって、整合制御部92は、ステップS1201で計算された発電部の電力−電圧特性曲線のうち、演算の対象とされているものをすべて合算して、発電部全体の電力−電圧特性曲線を求める。その後、処理はステップS1206へ進む。
ステップS1206では、整合制御部92は、発電部全体の電力−電圧特性曲線の形状を調べて発電部全体の最大電力点を特定し、その点での電圧を出力電圧の目標値に選ぶ。その後、処理はステップS1208へ進む。
ステップS1207では、最大電力点が詳細設定域よりも外に位置する発電部が存在する。したがって、整合制御部92は、その発電部の電力−電圧特性曲線を表す測定値を演算の対象から除外する。その後、処理は、残りの発電部の電力−電圧特性曲線を表す測定値のみを利用して、ステップS1202から繰り返される。
ステップS1208では、整合制御部92が、決定された出力電圧の目標値を、各発電部に接続された調節部912へ指示する。その指示に応じて、調節部912は接続先の発電部の出力電圧または出力電流を調節して、その発電部の出力電圧を、指示された目標値に一致させる。その後、処理は終了する。
電力制御部90は、測定部911に発電部の出力の測定を、周期的に、または、発電部の温度変動等、発電部の動作に影響を与える環境条件の変動が検出される度に繰り返させる。その測定の度に上記の動作を繰り返すことで、電力制御部90は、発電部の環境条件の変動にかかわらず、発電部の全体から安定的に、多くの電力を取り出すことができる。
[本発明の実施形態の利点]
本発明の上記の実施形態による電力制御部90は、以下の例で見るように、すべての発電部に対して個別にMPPT制御を行うものよりも、出力部に備えさせるべき定電圧回路の数が少ない。また、上記の実施形態による電力制御部90は、複数の発電部のうち、最大電力点での電圧が最も高い、またはその点での電力量が最も大きいもののみから電力を取り出すものよりも、取り出し可能な電力量が大きい。
図13の(a)は、本発明の上記の実施形態による電力制御部90と出力部95とのブロック図であり、(b)は、各発電部に異なる定電圧回路を接続する電力制御部と出力部とのブロック図であり、(c)は、いずれかの発電部を出力部に選択的に接続する電力制御部と出力部とのブロック図である。以下、(a)、(b)、(c)に示されている電力制御部と出力部とをそれぞれ、タイプ(I)、(II)、(III)と呼ぶ。図13を参照するに、いずれのタイプも、2つの熱発電部401、402の創り出す電力を使って二次電池97を充電する。以下、説明の便宜上、これらの熱発電部401、402が、画像形成装置100に搭載された発電部のすべてである場合を想定する。
図13の(a)を参照するに、タイプ(I)の電力制御部90は上記のものと同様に、熱発電部401、402に対する電力制御を次のように行う:まず、各電力取出部91に、接続先の熱発電部401、402の出力電圧と出力電流とを測定させる。次に、整合制御部92に、それらの測定値から各熱発電部401、402の電力−電圧特性曲線を算定させる。続いて、整合制御部92に、算定された特性曲線の示す最大電力点での電圧の分布に応じて、その分布の代表値、または、発電部全体での電力−電圧特性曲線の合算から得られる最大電力点での電圧を特定させて、特定された値を、熱発電部401、402の両方が共有すべき出力電圧の目標値として決定させる。その後、各電力取出部91に、接続先の発電部401、402の出力電圧または出力電流を調節させることにより、その発電部の出力電圧を目標値に一致させる。その後、単一の定電圧回路96に、その目標値の電圧を二次電池97の充電電圧へ変換させる。
図13の(b)を参照するに、タイプ(II)はタイプ(I)とは異なり、出力部952の備える定電圧回路96が熱発電部401、402と同数である。タイプ(II)の電力制御部902と出力部952とは、熱発電部401、402に対する電力制御を次のように行う:まず、電力制御部902が、各電力取出部91に、接続先の熱発電部401、402に対するMPPT制御を個別に行わせて、各発電部の出力電圧を最大電力点での値に調節させる。次に、出力部952が、各電力取出部91へ個別に接続された異なる定電圧回路96に、接続先の発電部の出力電圧を二次電池97の充電電圧へ変換させる。
図13の(c)を参照するに、タイプ(III)はタイプ(I)とは異なり、選択部SELが熱発電部401、402のいずれかを選択して共通の定電圧回路96へ接続する。タイプ(III)の電力制御部903は、熱発電部401、402に対する電力制御を次のように行う:まず、各電力取出部91に、接続先の熱発電部401、402に対するMPPT制御を個別に行わせて、各発電部の出力電圧を最大電力点での値に調節させる。次に、選択部SELに、熱発電部401、402の出力する電力量を比較させて、より大きい電力量を出力する方を単一の定電圧回路96へ接続させる。その後、その定電圧回路96に、接続先の発電部の出力電圧を二次電池97の充電電圧へ変換させる。
一例として、図13に示されている熱発電部401、402それぞれの感知する温度差が50℃、30℃である場合を想定する。図14の(a)は、その場合における各熱発電部401、402とそれらの全体との電力−電圧特性曲線を示すグラフである。図14の(a)を参照するに、細い実線のグラフGR1は第1熱発電部401の電力−電圧特性曲線を示し、粗い破線のグラフGR2は第2熱発電部402のものを示し、太い実線のグラフGRTはそれら両方の特性曲線GR1、GR2の合算を示す。図14の(b)は、(a)に示されている各特性曲線GR1、GR2、GRTの最大電力点PK1、PK2、PKTでの電圧値と電力量とを示す表である。
図14の(c)は、(a)、(b)に示されている電力−電圧特性を示す熱発電部401、402からタイプ(I)、(II)、(III)それぞれが取り出す電力量と、それらの間の比とを示す表である。タイプ(I)は、各熱発電部401、402の出力電圧を発電部全体の最大電力点での電圧に実質的に一致させる。したがって、タイプ(I)の取り出す電力量は発電部全体の最大電力点での値315[mW]に等しい。タイプ(II)は、各熱発電部401、402の出力電圧をそれぞれの最大電力点での電圧に一致させる。したがって、タイプ(II)の取り出す電力量は、各熱発電部の最大電力点での値の和245+90.0=335[mW]に等しい。タイプ(III)は、熱発電部401、402の最大電力点での電力量のうち、いずれか大きい方を取り出す。したがって、タイプ(III)の取り出す電力量は、第2熱発電部402の最大電力点での値245[mW]に等しい。
タイプ(I)の取り出す電力量は、タイプ(II)の値には及ばないものの、その90%程度までには達しうる。この程度の電力量の差であれば、単一の定電圧回路をすべての発電部で共用することによる出力部の簡素化の方が有利である。さらに、タイプ(III)の取り出す電力量はタイプ(II)の値の70%程度までにしか達しない。すなわち、タイプ(I)、すなわち本発明の実施形態による電力制御部90は、タイプ(III)よりも多くの電力量を取り出すことができる。
以上のとおり、本発明の実施形態による画像形成装置100は、電力制御部90にすべての発電部401、…、602の出力電圧を同じ目標値に一致させるので、出力部95に単一の定電圧回路96だけですべての発電部の出力電力を蓄積させ、または出力させることができる。この画像形成装置100はさらに、その目標値をすべての発電部の電力−電圧特性に基づいて、特に発電部全体の最大電力点での電圧値に決定する。その結果、発電部の全体から出力部へ出力される電力量の総和が、出力部への出力電圧をいずれかの発電部単独の電力−電圧特性に基づいて決定した場合の電力量よりも増大可能である。こうして、この画像形成装置100は、電力制御部90と出力部95との構成の規模を拡大することなく、発電部401、…、602の全体から取り出し可能な電力量を増大させることができる。
[変形例]
(A)画像形成装置100はカラーレーザープリンターである。画像形成装置はその他に、モノクロレーザープリンター、ファクシミリ、コピー機、複合機(MFP)等、シート上のトナー像を熱定着させる機種であれば、いずれでもよい。
(B)給送部10が扱うシートの材質は紙である。その他に、OHPフィルムのように、その材質が樹脂であってもよい。給送部10はまた、収容トレイを複数備えていてもよく、それらに、A3、A4、A5、B4等、異なるサイズのシートを収容してもよい。給送部10はさらに、両面印刷のための機構を含んでいてもよい。
(C)定着部30では、定着ローラー31に内蔵されたヒーター31Aがハロゲンランプである。ヒーター31Aはその他に、誘導加熱装置であってもよい。定着部30はまた、定着ローラー31に代えて、シートに接触する定着ベルトと、それを加熱するための装置との組み合わせを備えていてもよい。
(D)発電部の設置箇所は、図1に示されているものには限られない。熱発電部は、図1、2の(a)に示されているもの401、402が設置された定着部30の近傍と排紙トレイ38の上面との他にも、電源装置、各種ローラーベルトの駆動用モーター、動作制御部80に内蔵のCPU等、多量の熱を放出する画像形成装置100の要素の近傍に設置されてもよい。光発電部は、図1に示されているもの50が設置されたADFの上面の他にも、画像形成装置100の筐体の前面、側面、背面、操作パネル等、外光または照明光の当たりやすい場所に設置されてもよい。振動発電部は、図1に示されているもの601、602が設置された給送部10内のローラーベルトの近傍の他にも、ADF、作像部内のローラーベルトの近傍、画像形成装置100の筐体に備えられた扉、収容トレイ11、フィニッシャー等、振動を受けやすい画像形成装置100の部分に設置されてもよい。
(E)図3−5に示されている発電部の特性は一例に過ぎず、他の特性を持つ発電部が利用されてもよい。具体的には、熱発電部が利用する熱電変換素子の構造は、図2の(b)に示されているもの41には限られず、基板42、43のサイズと形状、半導体素子44P、44Nの数、形状、サイズ、配列、および種類のいずれが異なっていてもよい。また、熱発電部内では、図2の(a)に示されているもの401、402のように、複数個の熱電変換素子41のすべてが直列に接続されている他に、熱電変換素子の数が1つだけであってもよく、熱電変換素子の直列接続が複数に分けられて、それらが並列に接続されていてもよい。熱発電部はさらに、熱電変換素子に代えて、小型のスターリング発電機を利用してもよい。振動発電部は、図3の(a)に示されている静電誘導式のもの610、620の他に、圧電式または電磁誘導式のものであってもよい。さらに、発電部の種類は、図3−5に示されている熱電変換、光電変換、および振動発電を利用するものの他に、電波発電または風力発電を利用するものであってもよい。
(F)動作制御部80、電力制御部90、および出力部95は、1枚の基板の上に実装されている。その他に、それらの機能部のいずれかが、異なる基板に分離されてもよい。また、それらの機能部が1つのチップに集積化されていてもよい。
(G)動作制御部80は操作部70に、ネットワークから画像データIMGを受信させる。その他に、画像形成装置100がスキャナーまたはカメラを搭載しており、動作制御部80がそれらから画像データを取得してもよい。画像形成装置100がさらに、USBポート、メモリカードスロット等の映像入力端子を備えており、動作制御部80がそれを通して外部の電子機器から画像データを取得してもよい。
(H)電力制御部90では整合制御部92が山登り法を用いて、各発電部401、…、602の電力−電圧特性曲線、特に最大電力点を算定する。その他に、整合制御部が特性曲線と最大電力点との算定に「電圧追従法」を利用してもよい。具体的には、整合制御部は、図3−5に示されているような各発電部の特性曲線を表す数表または数式を予め記憶しておき、その数表または数式を利用して各測定部911の測定値から各発電部の最大電力点での電圧値または電流値を算定してもよい。たとえば、整合制御部は、熱発電部401、402の電力−電圧特性曲線が放物線であることに基づいて、熱発電部401、402の開放電圧の50%を最大電力点での電圧とみなしてもよい。整合制御部はまた、太陽電池の典型的な特性曲線に基づいて、光発電部50の開放電圧の80%を最大電力点での電圧とみなしてもよい。整合制御部はその他に、発電部の出力電圧を特定のレベルに維持したときに測定部911が測定したその発電部の出力電流量と、その発電部の特性曲線を表す数表または数式とから、その発電部の最大電力点を算定してもよい。整合制御部はさらに、発電部の特性曲線を表す数表または数式を利用して、測定部911の測定値からその発電部の特性曲線の形状を推定してもよい。
(I)整合制御部90は、調節部912に対して指示すべき出力電圧の目標値として、発電部全体の最大電力点での電圧と実質的に等しい値を決定する。しかし、その目標値はその他の値であってもよい。たとえば、発電部全体の電力−電圧特性曲線から、発電部全体の最大電力点での電力量に対して、90%等、所望の割合以上の電力量、または、出力部の負荷が得られる電圧の範囲が求められ、その範囲の中から目標値が選択されてもよい。
(J)図9、10に示されている簡易設定域RG1と詳細設定域RG2とは、発電部の最大電力点での電圧に対して設定される。その他に、簡易設定域と詳細設定域とが、発電部の開放電圧等、特定の電力量または出力電流量が得られる出力電圧に対して設定されてもよい。また、簡易設定域の幅は、発電部の電力−電圧特性曲線の半値全幅の他に、最大電力点での電力量に対して、50%とは別の割合以上の電力量が得られる範囲の幅に設定されてもよい。さらに、整合制御部は常に、簡易設定域の中に位置する発電部の最大電力点での電圧の代表値と、詳細設定域の中に最大電力点を持つ発電部の全体の最大電力点での電圧値とのいずれかのみを、出力電圧の目標値として決定してもよい。
(K)動作制御部80は画像形成装置100の動作モードを、図7に示されている稼動モードRNG、待機モードWTG、およびスリープモードSLPの3種類の間で切り替える。整合制御部92はそれらの動作モードに応じて、電力を取り出すべき発電部の種類を分けてもよい。これにより、各動作モードにおいて、不十分な電力しか取り出せないことが明らかな発電部が存在する場合、それに接続された電力取出部91を停止させて、その消費電力を削減することができる。
図15は、図7に示されている動作モードのそれぞれにおいて、各発電部が出力部に接続されるべきか否かを示す表である。図15を参照するに、丸印は、出力部に接続されるべき発電部を示し、バツ印は、出力部に接続されるべきではない発電部を示す。図15の表によれば、第1熱発電部401、第2熱発電部402、光発電部50、および振動発電部610、620のうち、スリープモードSLPでは光発電部50以外は出力部95に接続されるべきではなく、稼動モードRNGではすべての発電部が出力部95に接続されるべきであり、待機モードWTGでは第1熱発電部401と光発電部50とが出力部95に接続されるべきである。
図15の表の規定は、各動作モードにおける発電部の動作可能性に基づく。スリープモードSLPでは、給送部10、作像部20、定着部30のいずれもが停止しているので、第1熱発電部401、第2熱発電部402、振動発電部610、620はいずれも発電ができない。稼動モードRNGでは、給送部10、作像部20、定着部30のいずれもが駆動しているので、第1熱発電部401、第2熱発電部402、振動発電部610、620はいずれも発電可能である。待機モードWTGでは、給送部10と作像部20とは停止し、定着部30は定着ローラー31を予熱して適正な温度に保つので、第1熱発電部401は発電可能であるが、第2熱発電部402と振動発電部610、620とは発電ができない。光発電部50は他の発電部とは異なり、いずれの動作モードでも発電可能である。
整合制御部92は動作制御部80から、現時点での動作モードの種類を表す環境変数の値を定期的に取得して、その値から、動作モードがそれまでのものから変更されているか否かを判断する。動作モードが変更されていた場合、整合制御部92は変更後の動作モードにおいて出力部95に接続すべき発電部を図15の表から特定し、特定された発電部のみを出力部95に接続する。具体的には、整合制御部92は、スリープモードSLPでは、第1熱発電部401、第2熱発電部402、振動発電部610、620をいずれも出力部95から遮断し、光発電部50のみを出力部95に接続する。稼動モードRNGでは、整合制御部92は、すべての発電部401、…、620を出力部95に接続する。待機モードWTGでは、整合制御部92は、第1熱発電部401と光発電部50とを出力部95に接続し、第2熱発電部402と振動発電部610、620とを出力部95から遮断する。こうして、整合制御部92に、各動作モードにおいて十分な動作が可能な発電部のみを出力部95に接続させることができる。
なお、画像形成装置100にコピー機能またはスキャナー機能が追加されている場合、動作制御部80は画像形成装置100の動作モードを、それら追加機能のものと上記3種類との間で切り替えてもよい。その場合、図15の表には、それら追加機能の動作モード別に、各発電部が出力部に接続されるべきか否かを示す項目が追加される。
また、整合制御部92は、午前、午後、夜間等、時間帯別に、各発電部が出力部に接続されるべきか否かを示す表に基づいて、各発電部と出力部との間の接続を制御してもよい。たとえば、整合制御部92は光発電部を、外光量が多い日中は出力部に接続し、少ない夜間は出力部から遮断してもよい。
(L)出力部95は、各発電部401、…、620から出力された電力を、待機電力または停電時の補助電力として、操作部70、動作制御部80、または電力制御部90へ供給する。出力部95はその他にその電力を、待機モードでの定着ローラー31の予熱・保温、または排気ファンの駆動に利用させてもよい。また、各発電部からの出力電力が十分に高い場合、出力部95が省略され、電力制御部90の出力が直に負荷へ供給されてもよい。この場合、電力制御部90は、発電部全体から取り出すべき電力量を、その全体の最大電力点での値に代えて、供給先の負荷が必要とする所定値に設定してもよい。
(M)二次電池97は、リチウムイオン電池の他に、ニッケル−カドミウム二次電池またはニッケル−水素二次電池であってもよい。その場合、動作制御部80はそれらの二次電池の充電を定電流方式で行う。
(N)画像形成装置100は、熱発電部401、402、光発電部50、振動発電部610、620を連系させて、共通の二次電池97の充電等に利用する。個々の発電部だけでは、発電量が不十分であっても、または環境条件の変動に対して動作が不安定であっても、画像形成装置100はそれらを連系させることにより、十分に大きな電力量の供給を、環境条件の変動にかかわらず、十分に安定に維持することができる。
このように複数の発電部を連系させるシステムは、画像形成装置以外の電気機器、自動車、加熱機器等、多様に存在しうる。これらのシステムにおいても、上記の電力制御部90と同様な電力制御装置を複数の発電部の出力制御に利用することは、それらの発電部の創り出す電力の利用効率をさらに向上させるのに有効である。
図16の(a)は、複数の発電装置を環境発電に利用する冷蔵庫の斜視図である。図16の(a)を参照するに、この冷蔵庫300は、圧縮機301、熱発電装置302、振動発電装置312、光発電装置322、操作パネル303、制御装置304、および送風機305を備えている。圧縮機301は冷媒を圧縮してその圧力を高める。熱発電装置302は圧縮機301の近傍に設置され、内蔵の熱電変換素子を利用して圧縮機301の表面からの廃熱を電力に変換する。振動発電装置312は冷蔵庫300の扉の中に埋め込まれ、内蔵の振動発電素子を利用して、扉の開閉に伴う振動を電力に変換する。光発電装置322は冷蔵庫300の前面に設置され、内蔵の太陽電池を利用して、前面を照らす外光または照明光を電力に変換する。操作パネル303は冷蔵庫300の扉の前面に組み込まれており、ユーザーの操作から設定情報を解釈して制御装置304へ伝えると共に、その設定情報を画面に表示する。その設定情報は、冷蔵室、冷凍室等の部屋の設定温度、および、急速冷凍等、冷却条件の設定を含む。制御装置304は操作パネル303の裏側に設置され、操作パネル303からの設定情報に従って圧縮機301を制御する。制御装置304は電力制御装置と二次電池とを内蔵している。電力制御装置は、各発電部302、312、322から出力される電力を二次電池に蓄積させる。二次電池はその電力を、制御装置304、送風機305、庫内灯等の負荷へ供給する。送風機305は、冷媒によって冷却された空気を冷蔵室と冷凍室とへ送る。
図16の(b)は、複数の発電装置を環境発電に利用する自動車の斜視図である。図16の(b)を参照するに、この自動車700は、熱発電装置701、振動発電装置711、光発電装置721、および環境発電用電子制御装置(ECU)730を備えている。熱発電装置701はボンネットに埋め込まれ、内蔵の熱電変換素子を利用してエンジンからの廃熱を電力に変換する。振動発電装置702はドアの中に埋め込まれ、内蔵の振動発電素子を利用して、自動車300の走行およびドアの開閉に伴う振動を電力に変換する。光発電装置721はルーフの上面に設置され、内蔵の太陽電池を利用して、ルーフを照らす太陽光を電力に変換する。環境発電用ECU730は車室内に設置され、電力制御装置と二次電池とを内蔵している。電力制御装置は、各発電部701、711、721から出力される電力を二次電池に蓄積させる。二次電池はその電力を他のECU等、車載電子機器へ供給する。
図16に示されているいずれのシステムにおいても、電力制御装置は、すべての発電装置302、312、322、または701、711、721の電力−電圧特性に基づいて発電装置全体の最大電力点を特定し、その点での電圧を、すべての発電装置に共通する出力電圧の目標値として決定する。これにより、すべての発電装置の出力電圧がその目標値に揃うので、電力制御装置は単一の定電圧回路を利用して、その目標値の出力電圧を、二次電池の充電に必要な電圧へ変換することができる。また、その目標値は発電装置全体の最大電力点での値であるので、電力制御装置は、発電装置の全体から多くの電力量を取り出すことができる。
環境発電は、腕時計、携帯電話等のモバイル機器;エアコン、照明等の家電製品;バイク、船舶等の交通手段;デジタルサイネージ、電飾;ビル、工場等でのセンサーネットワークでも利用される。それらのシステムが複数の発電装置を利用する場合、発明による電力制御装置は、上記の実施形態によるものと同様に有効である。すなわち、この電力制御装置は、その構成の規模を拡大することなく、複数の発電装置の全体から多くの電力量を取り出してシステムに利用させることができる。