JP2015113486A - B含有鋼の連続鋳造鋳片 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面割れの発生が抑制されたB含有鋼の連続鋳造鋳片を提供する。
【解決手段】B含有鋼の連続鋳造鋳片は、C:0.050〜0.180%、Si:0.10〜0.40%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.0030%以下、Ti:0.005〜0.030%、Sol.Al:0.005〜0.060%、B:0.0005〜0.0050%、N:0.0015〜0.0070%、および、希土類元素:0.001〜0.050%を含有し、さらにCu、Cr、Ni、Mo、V、NbおよびCaのうち少なくとも1種以上をCu:0.1〜0.5%、Cr:0.2〜2.0%、Ni:0.3〜2.5%、Mo:0.1〜0.8%、V:0.01〜0.10%、Nb:0.005〜0.050%およびCa:0.0005〜0.0060%で含有し、残部がFeおよび不純物からなり、鋼中のTi、希土類元素、BおよびNの含有率が「([%Ti]+[%REM])/([%B]+[%N])≧2.5」の関係を満足する。
【選択図】図2

Description

本発明は、垂直曲げ型または湾曲型の連続鋳造機を用いて製造される、B(ホウ素)含有鋼の連続鋳造鋳片に関する。
垂直曲げ型または湾曲型の連続鋳造機を用いて鋼の鋳片を製造する際、鋳片には、曲げおよびその後の曲げの矯正に伴って、引っ張りの歪みが発生する。この歪みによって、鋳片の表面には、旧オーステナイト粒界に沿って割れが発生することがある。このような割れが特に発生しやすい鋼種の一つとして、Bを含有する鋼が挙げられる。
鋼中には不可避的にNが存在し、Bは、Nとの親和力が非常に大きいため、熱力学的にBNが析出しやすい。また、BやNは、鋼中において拡散しやすい上に、粒界に偏析しやすい。そのため、粒界上にBNが析出しやすい。B含有鋼は、この析出したBNを起点とした脆化が生じやすいため、他の鋼種と比較して高温延性に劣る。
一方、鋼中のBは、鋼の変態点を低下させる特性を有し、粒界の焼入れ性を高めるのに有効な元素である。そのため、B含有鋼は、鋼材の組織を制御して鋼材の強度を高めることが可能であり、ますます需要が高まりつつある高強度厚鋼板に用いられることが多い。また、Bは、鋼材の熱影響部の特性改善に非常に有用な元素である。
このように、高強度厚鋼板を製造する上で、Bは必須添加元素の一つとされる。
しかし、B含有鋼は、上述のように鋳片の表面割れや、この表面割れに伴う鋼板の表面疵が発生しやすいため、表面手入れの頻度が高くなりやすく、歩留まりのロスが増大しやすい。また、これらに起因して、生産性の低下や生産コストの増加が生じる。
そのため、厚鋼板用として、強度や熱影響部について優れた特性を有するB含有鋼の連続鋳造に際し、鋳片の表面割れの防止が図られている。
例えば、特許文献1には、B含有の連続鋳造鋳片の割れ抑制法として、鋼中でBおよびNの含有率を、Ti、ZrおよびHfの含有率に対して所定の関係を満たすように制御する方法が提案されている。
特許文献2には、BおよびNを含有する鋼を垂直曲げ型連続鋳造機により連続鋳造する際の鋳片表面割れを防止する方法として、連続鋳造機内で鋳片が曲げ応力を受ける領域および矯正応力を受ける領域での鋳片の表面温度を所定の温度範囲とする方法が提案されている。
特許文献3には、高強度厚鋼板用のB含有鋼の連続鋳造鋳片について、連続鋳造時や熱間圧延時に表面割れや疵の発生を低減する方法として、BNの平衡析出量を所定の値未満とする方法が提案されている。また、同文献には、鋼中のB、NおよびTiの含有率の範囲が規定されている。
特開昭56−80354号公報 特許第4561755号公報 特開2010−189712号公報
B含有鋼の連続鋳造鋳片の表面割れを抑制する方法は、特許文献1〜3に提案されている。しかし、これらの文献に記載の方法をもってしても、その表面割れを抑制することは未だ不十分である。
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、垂直曲げ型または湾曲型の連続鋳造機を用いて製造した際に、表面割れの発生が抑制された、B含有鋼の連続鋳造鋳片を提供することを目的とする。
上述のように、B含有鋼の鋳片を垂直曲げ型または湾曲型の連続鋳造機を用いて製造する際、鋳片には、曲げおよびその後の曲げが矯正されるに伴って、引っ張り歪みが発生し、この歪みに起因して、粒界割れ等の鋳片の表面割れが発生することがある。
この表面割れは、特に、引張歪みが作用する際の鋳片表面温度が、第III領域の脆化温度域(600〜900℃)にある場合に発生しやすいことが一般に知られている。この温度域は鋼がオーステナイトからフェライトに変態する温度域に相当し、オーステナイト粒界に沿ってフェライトがフィルム状に生成するため、鋼の脆化が生じる。
また、引張歪みが作用する際の鋳片表面温度が、フェライトに変態する温度まで低下していない場合であっても、鋼の成分組成がAlNやNbC等の窒化物や炭化物が生成、析出しやすい成分系であるときには、これらの析出物に起因した脆化も生じやすい。
B含有鋼の場合、鋼中のBが粒界に偏析しやすいため、オーステナイト粒界に沿って脆化の起点となるBNが生成しやすい。さらに、BNは、第III領域よりも高温の温度域から生成し始めるため、鋳片の曲げまたは曲げの矯正を第III領域よりも高温域で行った場合においても、鋳片に表面割れが発生しやすい。以上のことから、B含有鋼は、元来、難鋳造性鋼種であることが知られている。
本発明者らは、B含有鋼の連続鋳造鋳片に生じる表面割れの発生が、オーステナイト粒界に析出するBNの影響を大きく受けることから、この表面割れの発生を抑制する方法として、脆化の起点となる粒界上におけるBNの析出を抑制することに着目し、後述する予備実験等を行った。
その結果、鋼の成分組成を所定の範囲に制御すれば、熱力学的にBNが鋼中に析出する条件であっても、脆化の起点となる粒界上におけるBNの析出を抑制すること、および鋳片の表面割れの発生を抑制することが可能であることを知見した。
本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、その要旨は、下記のB含有鋼の連続鋳造鋳片にある。
質量%で、C:0.050〜0.180%、Si:0.10〜0.40%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.0030%以下、Ti:0.005〜0.030%、Sol.Al:0.005〜0.060%、B:0.0005〜0.0050%、N:0.0015〜0.0070%、および、希土類元素:0.001〜0.050%を含有し、さらにCu、Cr、Ni、Mo、V、NbおよびCaのうち少なくとも1種以上をCu:0.1〜0.5%、Cr:0.2〜2.0%、Ni:0.3〜2.5%、Mo:0.1〜0.8%、V:0.01〜0.10%、Nb:0.005〜0.050%およびCa:0.0005〜0.0060%で含有し、残部がFeおよび不純物からなり、鋼中のTi、希土類元素、BおよびNの含有率が下記(a)式の関係を満足することを特徴とするB含有鋼の連続鋳造鋳片。
([%Ti]+[%REM])/([%B]+[%N])≧2.5 …(a)
ここで、[%Ti]、[%REM]、[%B]および[%N]は、それぞれ鋼中のTi、希土類元素、BおよびNの含有率(質量%)を意味する。
本発明のB含有鋼の連続鋳造鋳片は、鋼中のSol.Alおよび希土類元素の含有率が下記(b)式の関係を満足し、鋼中に存在する酸化物系介在物中の希土類元素の含有率が45質量%以上であるものとすることが好ましい。
[%Sol.Al]/[%REM]≦7 …(b)
ここで、[%Sol.Al]および[%REM]は、それぞれ鋼中のSol.Alおよび希土類元素の含有率(質量%)である。
以下の説明では、鋼の成分組成についての「質量%」を、単に「%」とも表記する。
本発明のB含有鋼の連続鋳造鋳片は、垂直曲げ型または湾曲型の連続鋳造機を用いて製造する際、表面割れの発生が抑制される。さらに、高い高温延性を有しており、厚鋼板用素材として優れた強度および表面性状を有する。また、表面割れの発生が抑制されているため、手入れが不要または軽度の手入れで表面割れを除去できることから、高い生産効率で生産することが可能である。本発明のB含有鋼の連続鋳造鋳片を素材とし、これを熱間圧延して得られた厚鋼板は、優れた強度および表面性状を有する。
鋼Bの粒内で観察されたBNの模式図である。 鋳片の([%Ti]+[%REM])と([%B]+[%N])と疵指数との関係を示す図である。
以下では、まず本発明のB含有鋼の連続鋳造鋳片を完成させるために行った検討の内容を説明し、鋼の成分組成を上述の通り規定した理由について説明する。
1.本発明を完成させるための検討内容
1−1.第1の予備実験
第1の予備実験では、溶融後、凝固させたB含有鋼中に存在するBNの形態について検討した。
1−1−1.実験方法
試料として、表1に示す成分組成を有するB含有鋼を用いた。
Figure 2015113486
鋼Aと鋼Bの相違点は、鋼Aは希土類元素であるNdを含有しないのに対し、鋼BはNdを含有する点にある。鋼Aおよび鋼Bそれぞれを80g、坩堝内で、液相線温度より30℃高い温度まで昇温し、溶融させた。坩堝は、内径20mm、深さ50mmのMgO製とした。溶融させた試料は、5℃/minの冷却速度で冷却、凝固させ、950℃で2min保持した後、急冷した。
急冷により得られた円柱形の試料を、縦方向に切断した。試料の縦断面をナイタール液で腐食させ、オーステナイト粒界を顕出させた。オーステナイト粒界が顕出した面を走査型電子顕微鏡で観察し、BNの存在の有無、および存在していたBNの形態を調査した。
1−1−2.実験結果
電子顕微鏡による観察の結果、オーステナイト粒径は、鋼A、鋼Bともに0.5〜2.0mm程度であり、双方に顕著な差は認められなかった。しかし、BNの析出形態は、鋼Aと鋼Bとで大きく異なっていた。
鋼Aでは、数百nmの大きさのBNが、オーステナイト粒界上で列状に連なって析出していた。一方鋼Bでは、オーステナイト粒界上では列状に連なって析出したBNがほとんど認められず、BNは主に粒内で析出していた。
図1は、鋼Bの粒内で観察されたBNの模式図である。鋼Bで観察されたBNは、同図に示すように、酸化物や酸硫化物(以下「酸化物系介在物」という。)と一体となって析出しており、その酸化物系介在物はNd含有率が45質量%以上であった。具体的には、その酸化物系介在物は、87質量%のNd23と13質量%のAl23からなり、Nd含有率が74.6質量%であった。
1−2.第2の予備実験
第2の予備実験では、B含有鋼の高温延性について検討した。
1−2−1.実験方法
試料として、前記表1に示す鋼Aおよび鋼Bの成分組成を有するB含有鋼の丸棒を使用した。丸棒は、直径10mm、長さ190mmの鍛伸材とし、鋳造したままの組織を有しないものとした。この丸棒を、形状を維持したまま、長さ方向の中央の長さ約30mmの部分を溶融させた。その後、溶融状態から1200℃までは、10℃/sの冷却速度で冷却、凝固させ、1200℃以下の温度域では冷却速度を0.4℃/sとして連続的に冷却した。
試料の冷却過程において引張試験を行い、試料を破断させた。その際、引張試験は、試料の中央部分の温度を600〜1000℃の範囲で種々変更した。引張試験における歪み速度は、3×10-4-1とした。この歪み速度は、垂直曲げ型または湾曲型の連続鋳造機内における鋳片の曲げおよび曲げの矯正時に、鋳片に作用する歪み速度と桁数が概ね同じである。
1−2−2.評価方法
評価はB含有鋼の高温延性で行った。高温延性は下記(1)式で定義される、引張試験による破断前後における試料の断面積減少率とした。
RA=(A0−Af)/A0×100 …(1)
ここで、RA:断面積減少率(%)、A0:引張試験前の試料の横断面積(m2)、Af:試料の破断部分の横断面積(m2)である。
垂直曲げ型または湾曲型の連続鋳造機内で鋳片の表面が受ける引張歪み量と鋳片の表面割れの発生との関係から、上記断面積減少率が60%以上の鋼では、連続鋳造時に鋳片の表面割れが発生しないことがわかっている。
また、高温延性の評価と併せて、破断後の試料の破断面観察および組織観察を、走査型電子顕微鏡を用いて行った。組織観察は、破断後の試料を引張方向に平行な方向に切断し、その切断面をナイタール液で腐食させて行った。
1−2−3.鋼Aの評価
鋼Aでは、引張試験を行ったときの試料温度が700〜950℃の範囲で高温延性の低下が確認された。具体的には、断面積減少率が20〜55%であり、連続鋳造時には鋳片の表面割れが発生するおそれのある値であった。
破断後の試料の破断面を観察したところ、破断面の形態は典型的なオーステナイト粒界割れであった。
900℃で引張試験を行った破断後の試料の組織観察を行ったところ、オーステナイト粒界に沿って、数百nmのサイズのBNの析出が確認された。さらに、オーステナイト粒界のBNを起点としたボイド(鋼の割れの起点となる空隙)も散見された。このボイドは、引張の歪みの作用によって生じたと推測される。
1−2−4.鋼Bの評価
鋼Bでは、引張試験を行ったときの試料温度が600〜1000℃の範囲で断面積減少率が60%以上であり、鋼Aよりも高い高温延性を有していた。また、断面減少率は、連続鋳造時に鋳片の表面割れが発生しない値であった。
破断後の試料の破断面を観察したところ、破断面の形態は、粒内延性の様相を呈していた。
900℃で引張試験を行った破断後の試料の組織観察を行ったところ、BNはオーステナイト粒界上ではほとんど析出しておらず、主に粒内で析出していた。また、析出していたBNは、希土類元素であるNdを含有する酸化物系介在物と一体となって析出していた。この酸化物系介在物はNd含有率が45質量%以上であった。
1−3.検討および考察
上記第1および第2の予備実験の結果に加え、さらに行った検討の結果をもとに、連続鋳造中のB含有鋼の鋳片における表面割れの発生を抑制する方法について考察を行った。
その結果、オーステナイト粒界で析出したBNが鋼の脆化要因であること、および鋳片の表面割れの発生の抑制には、連続鋳造時におけるBNの析出形態を制御することが重要であることが確認された。
また、鋼の成分組成が上記(a)式の関係を満足する関係にあれば、BNが、鋼中に均一に分散している希土類元素を含有する酸化物系介在物と複合して粒内で析出し、オーステナイト粒界におけるBNの析出を抑制できることがわかった。
第1および第2の予備実験で用いた鋼Bは、希土類元素としてNdを含有させたが、Nd以外にも、LaやCe、その他のいずれの希土類元素であっても同様の効果が得られることも確認した。ここで、希土類元素とは、Sc、Y、ランタノイド(La、Ce等、原子番号57〜71の15元素)から選ばれた1種以上の金属元素を意味する。
また、BNを、鋼中に分散している希土類元素を含有する酸化物系介在物と一体として粒内で析出させる効果を高めるには、鋼の成分組成が下記(b)式の関係を満足する関係にあるとともに、酸化物系介在物中の希土類元素の含有率が45質量%以上であればよいことがわかった。
[%Sol.Al]/[%REM]≦7 …(b)
ここで、[%Sol.Al]および[%REM]は、それぞれ鋼中のSol.Alおよび希土類元素の含有率(質量%)である。
2.本発明のB含有鋼の成分組成およびその限定理由
本発明のB含有鋼は、以上の検討の結果得られた知見に基づいてなされたものであり、その成分組成は、C:0.050〜0.180%、Si:0.10〜0.40%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.0030%以下、Ti:0.005〜0.030%、Sol.Al:0.005〜0.060%、B:0.0005〜0.0050%、N:0.0015〜0.0070%、および、希土類元素:0.001〜0.050%を含有し、さらにCu、Cr、Ni、Mo、V、NbおよびCaのうちの1種または2種以上を含有し、これらの元素のうち含有するものの少なくとも1種がCu:0.1〜0.5%、Cr:0.2〜2.0%、Ni:0.3〜2.5%、Mo:0.1〜0.8%、V:0.01〜0.10%、Nb:0.005〜0.050%およびCa:0.0005〜0.0060%を満足し、残部がFeおよび不純物からなり、上記(a)式の関係を満足する。
2−1.必須元素
C:0.050〜0.180%
炭素(C)は、一般に、鋼の強度に大きな影響を及ぼす元素として知られている。C含有率が0.050%未満では、高強度厚鋼板等の用途に対して、所定の強度を得ることが困難である。一方、C含有率が0.180%を超えると、鋼の硬度が著しく高くなり、新たな表面疵の原因となるため、鋼の熱処理に特段の工程が必要となる。また、鋼の溶接に際しては、溶接部および熱影響部(HAZ)が硬化するため、厚鋼板として必要となる溶接性を損なうこととなる。これらの理由から、C含有率は0.050〜0.180%とする。C含有率は0.060〜0.180%が好ましい。
Si:0.10〜0.40%
ケイ素(Si)は、一般に、鋼の製造プロセスでは脱酸元素として鋼の酸素(O)含有率を低減するために有効な元素の一つであり、また、鋼を強化する効果も有する。Si含有率が0.10%未満では、溶鋼を十分に脱酸することができない。溶鋼が十分に脱酸されていない状態で連続鋳造を行うと、鋼中に気泡が生成し、製品の欠陥となるばかりでなく、時にはブレークアウトを誘発し、操業ができなくなるという問題も生じる。一方、Si含有率が0.4%を超えると、縞状マルテンサイトを生成するようになり、溶接時にHAZ靭性を低下させるという問題がある。そこで、Si含有率は0.10〜0.40%とする。Si含有率は、0.10%以上、0.30%未満が好ましい。
Mn:0.5〜2.0%
マンガン(Mn)は、一般に、鋼の強度に大きな影響を及ぼす元素として知られている。Mn含有率が0.5%未満では、高強度厚鋼板として十分な強度を得ることが困難である。一方、Mn含有率が2.0%を超えると、固溶強化のため、鋼の強度が著しく高くなり、製品の強度の調整が困難となる。また、Mnは、中心偏析部で濃化するため、含有率が高いほど鋳片や鋳片の圧延後の厚鋼板内で生じる強度むらが著しくなる。そこで、Mn含有率は0.5〜2.0%とする。Mn含有率は0.70〜1.80%が好ましい。
P:0.020%以下
リン(P)は、鋼中に不可避的に含有される不純物元素の一つであり、含有率は低いことが好ましい。Pは、鋼の固液界面における平衡分配係数が小さいため、溶鋼の凝固時に著しく偏析する。このため、P含有率が高い場合には、種々の製品特性に悪影響を及ぼすことが懸念される。また、偏析によりPが濃化した部分は融点が著しく低下するため、鋳片の熱間圧延時には、この濃化部が溶融して製品の疵の原因となることもある。そこで、P含有率は、0.020%以下とする。P含有率は、Pが偏析した部分における種々の問題の発生を防止するため、0.01%未満とすることが好ましい。また、通常の工業的な精錬方法によって製造可能な範囲として、P含有率は0.005%以上とすることが好ましい。
S:0.0030%以下
硫黄(S)は、Pと同様に、鋼中に不可避的に含有される不純物元素の一つであり、含有率はできる限り低いことが好ましい。Sは、これもPと同様に、鋼の固液界面における平衡分配係数が小さいため、溶鋼の凝固時に著しく偏析し、また、偏析によりSが濃化した部分は融点が低下する。Sが濃化した部分は、特に鋳片の圧延時に、表面の疵の発生の原因となる。そこで、S含有率は、0.0030%以下とする。S含有率は、0.0020%以下が好ましい。より高強度が要求される場合等、要求レベルの厳しい条件では、S含有率を0.0020%以下とすることが好ましい。通常の工業的な精錬方法で製造可能な範囲として、S含有率は0.0002%以上とすることが好ましい。
Ti:0.005〜0.030%
チタン(Ti)は、一般的には鋼の強度を向上させる元素である。また、鋼中のNをTiNとして固定するため、Tiを鋼に含有させることにより、BNの生成にも影響を及ぼす。すなわち、Tiを鋼に含有させることにより、BNの生成量が減少するため、連続鋳造機における鋳片の曲げ時、および曲げの矯正時に鋳片の表面割れが発生するのを抑制する効果が得られる。この表面割れ発生の抑制効果は、Ti含有率が0.005%未満では得られない。一方、Ti含有率が0.030%を超えると、Tiの炭化物が多数生成し、溶接時にHAZ靭性を低下させるという問題があり、また、粗大なTiNが生成する原因ともなる。そこで、Ti含有率は0.005〜0.030%とする。また、TiNの生成量が過剰である場合には、鋳片の表面性状が低下する。鋳片の表面割れの発生および鋳片の表面性状の低下の双方を安定的に抑制する観点からは、Ti含有率は0.010〜0.020%が好ましい。
Sol.Al:0.005〜0.060%
アルミニウム(Al)は、Siと同様に、脱酸元素として鋼のO含有率を低減するのに有効な元素の一つである。Al含有率が0.005%未満では、溶鋼を十分に脱酸することができない。また、製錬工程において十分に脱硫することも困難となる。一方、Al含有率が過剰であると、AlNが生成しやすく、鋳片の表面割れが発生する原因となる。そこで、Al含有率は0.005〜0.060%とする。Al含有率は0.005〜0.050%が好ましい。本明細書でいうAl含有率は、Sol.Al(酸可溶Al)の含有率を意味する。
B:0.0005〜0.0050%
ホウ素(B)は、粒界の焼き入れ性を高める効果、鋼材の組織を制御する効果、および鋼材の強度を高める効果を有する。Bは微量の添加で高い効果を発揮する。しかし、B含有率が0.0005%未満では、引張強度で700〜1200MPaという高強度を得ることができない。一方、B含有率が0.0050%を超えると、その効果が飽和するとともに、鋼の靭性を低下させることとなる。そのため、B含有率は0.0005〜0.0050%とする。厚鋼板のミクロ組織を制御し、Bを添加することによる効果を明確に発現させる観点からは、B含有率を0.0010〜0.0040%とすることが好ましい。
N:0.0015〜0.0070%
窒素(N)は、転炉等を用いて大気雰囲気で鋼を溶製する場合に、鋼中に不可避的に侵入する元素である。Nは、鋼中でTiやB等とともに窒化物を形成する。これらの窒化物は、鋳片の熱間加工の過程でピン止め粒子として結晶粒を微細化する効果を有することから、鋼材の機械的特性に影響を及ぼす。しかし、N含有率が0.0015%未満では結晶粒を微細化する効果は得られない。一方、これらの窒化物が連続鋳造時にオーステナイト粒界に動的析出するため、N含有率が過剰である場合、具体的には0.0070%を超える場合に鋳片の表面割れの原因となる。このため、N含有率は0.0015〜0.0070%とする。組織のピン止め効果を確実に発揮させるとともに、鋳片の中心部等における粗大な炭化物、窒化物の生成に伴う鋼の靭性の低下を防止する観点から、N含有率は0.002〜0.004%が好ましい。
REM:0.001〜0.050%
希土類元素(REM)は、鋼中の酸化物系介在物の形態を制御する元素である。生成したREMを含有する酸化物系介在物はBNと結合する。そのため、REMを含有する酸化物系介在物を鋼中に析出させることにより、オーステナイト粒界上へのBNの析出が抑制される。しかし、REM含有率が0.001%未満では、BNの析出抑制効果は得られない。一方、REMは高価な元素であり、また、過剰に添加するとその効果が飽和するため、0.050%を超えると費用に比べて得られる効果が小さくなる。そのため、REM含有率は0.001〜0.050%とする。REM含有率は、0.001〜0.035%が好ましい。
ここで、REMとは、周期表の第3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、およびランタノイド(LaからLuまで(原子番号57〜71)の15元素)うち、1種以上の元素を意味する。これらの元素のうち、特に、Ce、La、PrおよびNdのうちの1種以上が好ましい。
1−2.選択的必須元素
以上の必須元素の成分組成の調整のみでは、引張強度で700MPa以上の高強度を達成することや、溶接性、耐候性等のその他の特性を発現させることは困難である。これらの特性を得るには、Cu、Cr、Ni、Mo、V、NbおよびCaのうち1種または2種以上を以下の含有率で含有させる必要がある。
Cu:0.1〜0.5%
銅(Cu)は、鋼の焼き入れ性を向上させる元素である。しかし、Cu含有率が0.1%未満では、焼き入れ性の向上効果は得られない。一方、Cu含有率が0.5%を超えると、焼き入れ性の向上効果が過剰となるばかりでなく、鋼材の熱間加工性が低下する。そこで、Cuを含有させる場合は、その含有率は0.1〜0.5%とする。Cu含有率は0.2〜0.5%が好ましい。
また、Cuは、鋼の連続鋳造時には、スタークラックと呼ばれる鋳片の表面割れを誘発する元素でもある。このため、Cu含有率を0.2%以上とする場合には、Cu含有率の1/3以上の含有率となるように後述するNiを添加することが好ましい。
Cr:0.2〜2.0%
クロム(Cr)は、鋼の強度および靭性を高める効果を有する元素である。また、80kgクラス以上の鋼のように、鋼に高強度が要求される場合には実質的に必須の元素である。しかし、Cr含有率が0.2%未満では、鋼の強度および靭性を高める効果は得られない。一方、Cr含有率が2.0%以上では、溶接割れが発生する等の問題が発生する。そこで、Crを含有させる場合は、その含有率は0.2〜2.0%とする。鋼の溶接性を重視する場合には、Cr含有率は0.2〜1.5%とすることが好ましい。
Ni:0.3〜2.5%
ニッケル(Ni)は、固溶強化によって鋼の強度を向上させる効果を有する元素であり、靭性を改善する効果も有する。Ni含有率が0.3%未満ではこれらの効果が得られない。一方、Ni含有率が2.5%を超えた場合、強度および靭性の向上効果は飽和するだけでなく、溶接性を悪化させるという悪影響も生じる。そのため、Niを含有させる場合は、その含有率は0.3〜2.5%とする。Ni含有率は0.4〜2.5%が好ましい。
Mo:0.1〜0.8%
モリブデン(Mo)は、鋼板の焼き入れ性を向上させるとともに、強度の向上に寄与する元素である。Moは、Crと同様に、80kgクラス以上の鋼のように、鋼に高強度が要求される場合には実質的に必須の元素である。しかし、Mo含有率が0.1%ではこれらの効果は得られない。一方、Moは高価な元素であり、添加量を増加させると製造コストの増加に繋がるばかりでなく、0.8%以上含有させるとベイナイトやマルテンサイト相等の硬化相が生成し、鋼の熱間加工性や溶接性を悪化させる。そのため、Moを含有させる場合は、その含有率は0.1〜0.8%とする。Mo含有率は0.1〜0.7%が好ましい。
V:0.01〜0.10%
バナジウム(V)は、鋼のフェライト相に固溶するとともに、鋼中で炭窒化物を形成するため、鋼の強度の向上に有効な元素である。しかし、V含有率が0.01%未満では、鋼の強度の向上効果は得られない。一方、V含有率が0.10%を超えると、溶接時にHAZでの炭窒化物の析出状況が変化して靭性に悪影響を及ぼす。また、V含有率が過剰である場合、具体的には0.10%を超える場合、鋳片の内部にVNとして析出し、鋳片の表面割れの原因となる。そのため、Vを含有させる場合は、その含有率は0.01〜0.10%とする。V含有率は0.03〜0.10%が好ましい。
Nb:0.005〜0.050%
ニオブ(Nb)は、鋼中で炭窒化物を形成し、鋼の強度および靭性の向上に有効な元素である。また、Nbは、TMCP(Thermo−Mechanical Control Process)において、鋼中における固溶および析出を制御することにより、鋼板のミクロ組織を制御するために使用される。しかし、Nb含有率が0.005%未満では、鋼の強度および靭性の向上効果ならびに組織制御効果は得られない。一方、Nb含有率を0.050%以上とすると、鋳片を加熱してもNbを固溶させることができず、組織制御が不可能となる。また、Nb含有率が過剰である場合、具体的には0.050%以上である場合、鋳片内部にNbCとして析出し、鋳片の表面割れの原因となる。そのため、Nbを含有させる場合は、その含有率は0.005〜0.050%とする。Nb含有率は0.005〜0.040%が好ましい。
Ca:0.0005〜0.0060%
カルシウム(Ca)は、他の成分元素と異なり、鋼の材料特性には大きな影響を与えない元素である。一方、連続鋳造時において、タンディッシュから鋳型に溶鋼を注入するノズルの閉塞を抑制する効果を有する元素である。そのため、ノズルの閉塞抑制を目的として溶鋼に添加されることがある。また、鋼にCaを添加すると、鋼中のS含有率を低減させ、MnSの生成を抑制する効果も得られる。そのため、鋼中の硫化物の形態制御を目的として溶鋼に添加されることもある。しかし、Ca含有率が0.0005%未満ではこれらの効果は得られない。一方、Ca含有率が0.0060%を超えると、その効果が飽和し、製造コストの増加を招くばかりか、却ってノズルの閉塞を助長することもある。そのため、Caを含有させる場合は、その含有率は0.0005〜0.0060%とする。Ca含有率は、0.0010〜0.0050%が好ましい。
以上の必須元素および選択的必須元素以外の残部は、Feおよび不純物である。ここで、「不純物」とは、鋼材の工業的生産において原料たる鉱石やスクラップ、および製造設備からの溶出成分等から混入するものであり、鋼の性能に悪影響を及ぼさない範囲のものをいう。
2−3.鋼中のTi、REM、BおよびNの含有率の関係
本発明のB含有鋼では、鋼中のTi、REM、BおよびNの含有率が下記(a)式の関係を満足するものとする。
([%Ti]+[%REM])/([%B]+[%N])≧2.5 …(a)
ここで、[%Ti]、[%REM]、[%B]および[%N]は、それぞれ鋼中のTi、REM、BおよびNの含有率(質量%)である。
鋼中のB含有率およびN含有率が高いほど、連続鋳造時に鋳片内にBNが生成しやすく、かつ生成量も多くなるため、得られる鋳片の脆化が生じやすくなる。ところが、TiNは、1300〜1400℃の高温域からBNの析出に先立って生成するため、鋼中のTi含有率が高いと、BNの生成量を低減させることができる。
また、REMは、鋼中で酸化物や酸硫化物(酸化物系介在物)を生成し、鋼中に分散する。鋼の温度が低下するに従って生成するBNは、鋼中に分散したREM酸化物系介在物と一体となって析出するため、オーステナイト粒界上でのBNの析出を抑制できる。
鋼中のTi、REM、BおよびNの含有率が上記(a)式の関係を満足することにより、BNの生成量を低減させるとともに、オーステナイト粒界上でのBNの析出を抑制でき、B含有鋼の脆化を十分に抑制することができる。そのため、本発明のB含有鋼は、垂直曲げ型または湾曲型の連続鋳造機を用いて製造した場合であっても、表面割れの発生が抑制される。
2−4.鋼中のSol.AlおよびREMの含有率の関係、ならびに鋳片内のREM酸化物系介在物の規定
本発明のB含有鋼では、鋼中のSol.AlおよびREMの含有率が下記(b)式の関係を満足し、かつ鋼中に存在する酸化物系介在物中のREM含有率が45質量%以上であることが好ましい。
[%Sol.Al]/[%REM]≦7 …(b)
ここで、[%Sol.Al]および[%REM]は、それぞれ鋼中のSol.Alおよび希土類元素の含有率(質量%)である。
鋼中のSol.AlおよびREMの含有率が上記(b)式の関係を満足しない場合、鋼中に存在する酸化物系介在物は、REM酸化物の生成量が少ないため、Al23を主体とするものとなりやすい。また、このようなAl23を主体とする酸化物系介在物は、粗大なクラスターを形成しやすい。さらに、この酸化物系介在物中のREM含有率が45質量%未満である場合には、介在物による粗大なクラスターの形成が顕著になり、鋼中で偏在するため、酸化物系介在物が鋼中で均一に分散した状態が得られにくい。また、酸化物系介在物中のREM含有率が低い場合には、その酸化物系介在物と一体としてBNを析出させることが困難となる。
一方、鋼中のSol.AlおよびREMの含有率が下記(b)式の関係を満足し、鋼中に存在する酸化物系介在物中のREM含有率が45質量%以上である場合には、酸化物系介在物が鋼中で均一に分散した状態が得られやすいとともに、この酸化物系介在物にBNを一体化させることにより、BNを効果的に結晶粒内に析出させることが容易である。そのため、オーステナイト粒界上でのBNの析出をより抑制することができ、高い高温延性を得ることができ、鋳片の表面割れの発生をより抑制することができる。
本発明のB含有鋼の効果を確認するため、以下の2つの連続鋳造試験を行い、その結果を評価した。
1.第1試験
1−1.試験方法
溶鋼は、容量が2.5tの高周波誘導炉を用いて、SiおよびMnによる予備複合脱酸を施したものを2.5t溶製した。溶製した溶鋼は、高周波誘導炉から取鍋に上から注入して移し替えた。取鍋内にはあらかじめ金属AlおよびNdを装入しておき、溶鋼を注入することによって溶鋼中にAlおよびNdを溶解させ、溶鋼の成分組成を鋳造すべき目標の組成に最終調整した。
連続鋳造機は、垂直部の長さが1.3mの垂直曲げ型の連続鋳造機を用いた。成分組成を調整した溶鋼を、取鍋からタンディッシュを介して連続鋳造機に注入し、厚さ100mm、幅500mmの鋳片を連続鋳造した。鋳造速度は0.70〜1.20m/minとし、2次冷却の比水量は0.7〜1.6L/kg−steelとした。
鋳造した鋼の成分組成を表2に示した。同表には、下記(a)式の左辺(([%Ti]+[%REM])/([%B]+[%N]))の値も「TR/BN」として示した。
([%Ti]+[%REM])/([%B]+[%N])≧2.5 …(a)
ここで、[%Ti]、[%REM]、[%B]および[%N]は、それぞれ鋼中のTi、希土類元素、BおよびNの含有率(質量%)である。
Figure 2015113486
本発明例1〜6は、本発明の規定を満たしていた。比較例1〜6は、いずれも本発明の規定のうち、上記(a)式の関係を満たさなかった。
得られた鋳片は、表面からスケールを除去して酸洗処理を行った。その後、鋳片の天側(連続鋳造機の湾曲部において内周面側であった面)および鋳片の地側(連続鋳造機の湾曲部において外周面側であった面)の双方に対して、JIS Z2343に規定された染色浸透探傷試験(いわゆるカラーチェック法)により、鋳片の割れや疵の発生の有無を目視で観察し、その程度を確認した。
1−2.試験結果
評価項目は、鋳片の表面割れの程度とした。表面割れの程度は、0、1、2および3の4段階の疵指数に指標化して評価した。前記表2には、鋼の成分組成と併せて疵指数を示した。各疵指数の意味する内容は以下の通りである。
「0」:鋳片の表面に疵が全く確認されず、鋳片の表面状態は非常に健全であった。
「1」:確認された鋳片の単位長さ当たりの疵の個数が10個/m以下と少なく、かつ確認された疵が、鋳片の表面をグラインダによって最大3mm旋削する軽度の手入れにより容易に除去できる程度の実用上問題ないレベルであった。
「2」:確認された鋳片の単位長さ当たりの疵の個数が30〜40個/mと鋳片全面に疵が散見される状態であり、かつ確認された疵が、鋳片の表面をグラインダで3mm旋削する軽度の手入れによっては完全には除去できないレベルであった。
「3」:鋳片のコーナー部に深さ3mm以上の割れが顕著に観察され、その鋳片を次工程で使用するには、鋳片の幅方向両端を30mm以上切断しなければならず、歩留まりの大幅な低下を伴うレベルの疵であった。
表2に示すように、本発明例1〜6は、いずれも疵指数が0または1であり、鋳片の表面品質は、実用上支障のないレベルであった。特に、本発明例3および6は、疵指数が0であり、鋳片の表面に疵が全く確認されず、鋳片の表面状態は非常に健全であった。
一方、比較例1〜4は、いずれも疵指数が2または3であり、鋳片の表面品質は、実用上許容できないレベルであった。これは、本発明の規定のうち、上記(a)式の関係を満たさなかったため、鋼中でのBNの生成量が多く、オーステナイト粒界上でBNが析出したためと考えられる。比較例4は、鋼がREMとしてNdを含有しているものの、上記(a)式の関係を満たさなかったため、表面割れが発生したと考えられる。
比較例1および3は、疵指数が3であり、鋳片全面に疵が散見される状態であるのみならず、鋳片のコーナー部での割れも顕著で、鋳片の幅方向両端を切断しなければ使用できない程度であった。
図2は、鋳片の([%Ti]+[%REM])と([%B]+[%N])と疵指数との関係を示す図である。同図からわかるように、上記(a)式の関係を満たす場合に疵指数が0または1であり、満たさない場合に疵指数が2または3であった。
2.第2試験
2−1.試験方法
使用した溶鋼が表3に示す成分組成のものであること以外は、第1試験と同じ条件とした。同表には、下記(b)式の左辺の値も示した。
[%Sol.Al]/[%REM]≦7 …(b)
ここで、[%Sol.Al]および[%REM]は、それぞれ鋼中のSol.AlおよびREM(ここではNd)の含有率(質量%)である。
Figure 2015113486
表3に示す本発明例2a〜2eは、いずれもSol.AlおよびNd以外の成分の含有率は前記表2に示す本発明例2と同じであるため、Sol.AlおよびNdのみ含有率を示した。本発明例2a〜2eは、いずれも本発明で規定する成分組成および上記(a)式の関係を満たす本発明例である。
このうち、本発明例2a、2bおよび2cは、鋼中のSol.AlおよびREMの含有率が下記(b)式の関係を満足し、本発明例2dおよび2eは満足しなかった。
得られた鋳片は、第1試験と同様にカラーチェック法により、鋳片の割れや疵の発生の有無を目視で観察し、その程度を確認した。
第2試験では、さらに、各鋳片について、鋼中の酸化物系介在物について、成分組成の評価も行った。得られた鋳片の幅方向中央部の表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置からサンプルを切り出した。切り出したサンプルを走査型電子顕微鏡で観察し、無作為に酸化物系介在物(酸化物または酸硫化物)を20個抽出した。抽出した酸化物系介在物は、成分組成をEDS(エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X−ray spectrometry))によって分析した。20個の酸化物系介在物のREM(ここではNd)の含有率を、その鋳片内の酸化物系介在物中のREM含有率とした。
2−2.評価結果
評価項目は、鋳片の表面割れの程度、および鋼中の酸化物系介在物中のNd含有率とした。表面割れの程度は、第1試験と同様に、0、1、2および3の4段階の疵指数に指標化して評価した。前記表3には、鋼の成分組成と併せて疵指数および鋼中の酸化物系介在物中のNd含有率を示した。
表3に示すように、本発明例2dおよび2eは、本発明の規定を満たしており、疵指数は1と、鋳片の表面品質が実用上支障のないレベルであった。しかし、軽度ではあるものの、手入れを必要とする疵が確認された。これは、上記(b)式の関係を満たさず、かつ鋼中の酸化物系介在物中のREM含有率が45質量%未満であったため、オーステナイト粒界上でのBNの析出は抑制されたものの、若干析出したためと考えられる。
一方、本発明例2a〜2cは、いずれも鋳片の表面に疵が全く確認されず、実用上表面の手入れが一切不要であるレベルの表面性状であった。これは、上記(b)式の関係を満たすとともに、鋼中の酸化物系介在物中のNd含有率が45質量%以上であったため、鋳片内の酸化物系介在物の形態がより適正に制御され、この介在物と一体としてBNが析出し、オーステナイト粒界上でのBNの析出がより抑制されたためと考えられる。
本発明のB含有鋼の連続鋳造鋳片は、垂直曲げ型または湾曲型の連続鋳造機を用いて製造する際、表面割れの発生が抑制される。さらに、高い高温延性を有しており、厚鋼板用素材として優れた強度および表面性状を有する。また、表面割れの発生が抑制されているため、手入れが不要または軽度の手入れで表面割れを除去できることから、高い生産効率で生産することが可能である。本発明のB含有鋼の連続鋳造鋳片を素材とし、これを熱間圧延して得られた厚鋼板は、優れた強度および表面性状を有する。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.050〜0.180%、Si:0.10〜0.40%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.0030%以下、Ti:0.005〜0.030%、Sol.Al:0.005〜0.060%、B:0.0005〜0.0050%、N:0.0015〜0.0070%、および、希土類元素:0.001〜0.050%を含有し、
    さらにCu、Cr、Ni、Mo、V、NbおよびCaのうち少なくとも1種以上をCu:0.1〜0.5%、Cr:0.2〜2.0%、Ni:0.3〜2.5%、Mo:0.1〜0.8%、V:0.01〜0.10%、Nb:0.005〜0.050%およびCa:0.0005〜0.0060%で含有し、
    残部がFeおよび不純物からなり、
    鋼中のTi、希土類元素、BおよびNの含有率が下記(a)式の関係を満足することを特徴とするB含有鋼の連続鋳造鋳片。
    ([%Ti]+[%REM])/([%B]+[%N])≧2.5 …(a)
    ここで、[%Ti]、[%REM]、[%B]および[%N]は、それぞれ鋼中のTi、希土類元素、BおよびNの含有率(質量%)を意味する。
  2. 鋼中のSol.Alおよび希土類元素の含有率が下記(b)式の関係を満足し、
    鋼中に存在する酸化物系介在物中の希土類元素の含有率が45質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のB含有鋼の連続鋳造鋳片。
    [%Sol.Al]/[%REM]≦7 …(b)
    ここで、[%Sol.Al]および[%REM]は、それぞれ鋼中のSol.Alおよび希土類元素の含有率(質量%)を意味する。
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