JP2015112050A - 焼酎およびその製造方法 - Google Patents
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また、単式蒸留焼酎が有する独特の風味と、連続式蒸留焼酎の安価に製造できるという利点の双方を生かすため、単式蒸留焼酎と連続式蒸留焼酎とを混和した混和焼酎という分野も広まりつつある。
しかし、この油脂成分は、酸化等することにより油臭を発生させるとともに、焼酎を白濁させる原因であるとも考えられている。
また、白濁しておらず透明感のある焼酎に対する消費者の強いニーズに応える必要もある。
(1)単式蒸留機で蒸留した麦焼酎であって、1−ブタノールの濃度が0.30ppm以上であり、濁度が0.10NTU以下であることを特徴とする焼酎。
(2)単式蒸留機で蒸留した芋焼酎であって、1−ブタノールの濃度が0.60ppm以上であり、濁度が0.10NTU以下であることを特徴とする焼酎。
(3)ろ過処理時における焼酎の液温が10℃以上であることを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載の焼酎。
(4)単式蒸留焼酎の製造方法であって、液温を10℃以上とした焼酎をろ過するろ過工程、を含むことを特徴とする焼酎の製造方法。
本発明に係る焼酎の製造方法によると、液温を10℃以上とした焼酎をろ過するろ過工程を含むことから、1−ブタノールの濃度が所定値以上であるとともに濁度が所定値以下である焼酎を製造することができる。その結果、独特な風味を保持するとともに、白濁していない焼酎を製造することができる。
本発明の実施形態に係る焼酎とは、単式蒸留機で蒸留した麦焼酎または単式蒸留機で蒸留した芋焼酎であって、1−ブタノールの濃度が所定値以上であり、濁度が所定値以下であることを特徴とする。
まず、各焼酎の定義等について簡単に説明した後、本発明の実施形態に係る焼酎の特有の事項を説明する。
単式蒸留焼酎とは、穀類または芋類、これらの麹および水を原料として発酵させたアルコール含有物を単式蒸留機により蒸留したものであり、焼酎乙類とも呼ばれる。そして、単式蒸留焼酎は、蒸留が基本的に1回であるため、原料由来の独特な風味を有する。
連続式蒸留焼酎とは、アルコール含有物を連続式蒸留機により蒸留したものであり、焼酎甲類とも呼ばれる。そして、連続式蒸留焼酎は、何度も蒸留を行うため、単式蒸留焼酎と比較し、独特な風味は減少するが、連続蒸留機を用いて製造することから大量生産に適しているため、比較的安価である。
混和焼酎とは、単式蒸留焼酎と連続式蒸留焼酎とを混和したものである。そして、混和焼酎は、混和の割合によって、甲乙混和焼酎(焼酎乙類を5%以上50%未満混和した焼酎)と、乙甲混和焼酎(焼酎乙類を50%以上95%未満混和した焼酎)とに分類される。
麦焼酎とは、主原料(掛原料)として麦類を用いて製造された焼酎である。そして、主原料である麦類としては、オオムギ、ハダカムギ、ライムギ等を用いることができ、特に限定されない。
なお、主原料として麦類を用いて製造された単式蒸留焼酎が麦焼酎であるとともに、主原料として麦類を用いて製造された単式蒸留焼酎に連続式蒸留焼酎を混和させた混和焼酎や、主原料として麦類を用いて製造された連続式焼酎も麦焼酎である。
芋焼酎とは、主原料(掛原料)として芋類を用いて製造された焼酎である。そして、主原料である芋類としては、サツマイモ、ジャガイモ、キャッサバ、ヤマノイモ、サトイモ、コンニャクイモ等を用いることができ、特に制限されない。
なお、主原料として芋類を用いて製造された単式蒸留焼酎が芋焼酎であるとともに、主原料として芋類を用いて製造された単式蒸留焼酎に連続式蒸留焼酎を混和させた混和焼酎や、主原料として芋類を用いて製造された連続式焼酎も芋焼酎である。
本発明の実施形態に係る焼酎は、1−ブタノールを含有する。
そして、1−ブタノールは、構造式がCH3(CH2)3OHで表される化合物であり、n−ブチルアルコールとも呼ばれる。また、この1−ブタノールは、焼酎の独特な風味の付加に関与する成分の1つであり、独特な風味を有するか否かを決定する指標にもなる成分である。
そして、1−ブタノールの濃度の測定については、ガスクロマトグラフィー等により測定することができる。
本発明の実施形態に係る焼酎(単式蒸留焼酎)の濁度は、0.10NTU以下である。濁度が0.10NTU以下であると、焼酎の白濁が目立たず、透明感のある焼酎であると消費者に判断されるからである。そして、透明感をより確実なものとするため、濁度は0.05NTU以下であるのが好ましい。
なお、焼酎の濁度の測定については、吸光光度計等により測定することができる。
[焼酎の製造方法]
本発明の実施形態に係る焼酎(単式蒸留焼酎)の製造方法は、液温を10℃以上とした焼酎をろ過するろ過工程、を含むことを特徴とする。そして、本発明の実施形態に係る焼酎の製造方法は、以下に説明する各工程を含んでもよい。
まず、単式蒸留焼酎の製造方法の全体の流れを説明し、その後、本発明の特徴であるろ過工程を説明する。
単式蒸留焼酎の製造方法は、図1に示すように、一次もろみ製造工程S1、二次もろみ製造工程S2、蒸留工程S3、蒸留後ろ過工程S4、割水工程S5、割水後ろ過工程S6等の工程を含んで構成される。
なお、主原料として麦を用いた場合は麦焼酎、芋を用いた場合は芋焼酎、というように、主原料の種類により焼酎の種類が決定される。
割水後ろ過工程S6では、割水工程S5の割水により、アルコール度数が低くなることで析出する油脂成分を除去するためにろ過を施す。
そして、通常、この割水後ろ過工程S6を経た焼酎をビン詰めし、出荷する。
本発明の実施形態に係る焼酎(単式蒸留焼酎)の製造方法は、蒸留後ろ過工程S4および割水後ろ過工程S6のうち少なくとも1つの工程が、焼酎の液温を10℃以上としたろ過工程(以下、適宜「規定のろ過工程」という)であればよく、割水後ろ過工程S6が規定のろ過工程であるのがより好ましい。
(連続式蒸留焼酎の製造方法)
連続式蒸留焼酎の製造方法については、単式蒸留焼酎の製造方法と異なる点を中心に説明する。
まず、連続式蒸留焼酎の製造方法について、単式蒸留焼酎の製造方法と大きく異なる点は、図1に示す蒸留工程S3において、単式蒸留機ではなく連続式蒸留機を用いる点である。そして、連続式蒸留焼酎の製造方法は連続式蒸留機を用いることから、当該蒸留機により蒸留された原酒には、油性成分がほとんど含まれていない。したがって、通常、油性成分を除去するような蒸留後ろ過工程S4や割水後ろ過工程S6の処理は施さず、不純物を取り除く程度の簡易なろ過処理のみ行う。
さらに、通常、連続式蒸留焼酎の製造方法における蒸留の対象は、糖蜜等から作られる酒類原料用アルコールや、穀物等のデンプン質原料を麹等で糖化し発酵させたものが用いられる。
混和焼酎の製造方法は、前記した製造方法で製造された単式蒸留焼酎と、前記した製造方法で製造された連続式蒸留焼酎とを混和する混和工程(図示せず)を含んで構成される。また、混和工程後に、油性成分を除去するための混和後ろ過工程(図示せず)を設けてもよい。
なお、混和工程では、通常、図1に示す割水後ろ過工程S6の後の単式蒸留焼酎と、連続式蒸留焼酎とを混和するが、蒸留工程S3の後、蒸留後ろ過工程S4の後、または割水工程S5の後の単式蒸留焼酎と、連続式蒸留焼酎とを混和してもよい。これらの場合は、混和工程の後に、油性成分を除去するための混和後ろ過工程を設けるのが好ましい。
具体的には、製造する焼酎が混和焼酎である場合、単式蒸留焼酎を製造する際の蒸留後ろ過工程S4、割水後ろ過工程S6、および混和後ろ過工程のうち少なくとも1つの工程が、規定のろ過工程であればよく、混和後のろ過工程が規定のろ過工程であるのがより好ましい。
また、本発明の「規定のろ過工程」を混和焼酎の製造方法に適用する場合は、単式蒸留後(蒸留工程S3の後)の原酒と、連続式蒸留焼酎とを購入し、それぞれを混和した後、規定のろ過工程の処理を施すといった形式であってもよい。
麦焼酎(アルコール度数25度、主原料:麦、麹:麦麹、常圧単式蒸留、無ろ過の状態、市販品)を用意し、ろ過を施さなかったサンプルと、所定の液温にした後、ろ過(フィルター名:セルロース・アセテート、品番:25CS045AN、孔径:0.45μm、販売:アドバンテック(株))を施したサンプルを準備した。
なお、無ろ過のものをサンプルNo.1−0とし、ろ過温度が2℃のものをサンプルNo.1−1、ろ過温度が10℃のものをサンプルNo.1−2、ろ過温度が15℃のものをサンプルNo.1−3、ろ過温度が20℃のものをサンプルNo.1−4、ろ過温度が25℃のものをサンプルNo.1−5とした。
なお、無ろ過のものをサンプルNo.2−0とし、ろ過温度が2℃のものをサンプルNo.2−1、ろ過温度が10℃のものをサンプルNo.2−2、ろ過温度が15℃のものをサンプルNo.2−3、ろ過温度が20℃のものをサンプルNo.2−4、ろ過温度が25℃のものをサンプルNo.2−5とした。
サンプル中の1−ブタノールの濃度は、SPME(固相マイクロ抽出法)法にて分析を行った。
具体的には、20mlのヘッドスペース用バイアル瓶にサンプル10mlをとり、40℃、15分間ヘッドスペース中の香気成分をSPMEファイバーにて抽出し、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS、アジレント・テクノロジー(株))を用いて分析した。
詳細な条件は次の通りである。
カラム:DB−WAX 30m×0.25mmID×0.25μm、40〜240℃、5℃/min
抽入口:スプリットレス−270℃
ガス流量:ヘリウム
流速:1.0ml/min
焼酎に含まれるパルミチン酸エチル、ステアリン酸エチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチルの抽出方法としては、アルコール5度程度になるように水で希釈した試料をジクロロメタンにて30分間振とうした。振とう後、ジクロロメタン相を回収し、濃縮後、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS、アジレント・テクノロジー(株))を用いて分析を行った。
詳細な条件は次の通りである。
カラム:DB−WAX 30m×0.25mmID×0.25μm、40〜240℃、5℃/min
抽入口:スプリットレス−270℃、注入量:1μl
ガス流量:ヘリウム
流速:1.0ml/min
前記の方法により準備したサンプルの濁度については、液温20℃で、吸光光度計(SHIMADZU社製、UV−1600)を用いて、EBC値(波長:660nm)を計測し、当該EBC値からNTU値を算出した。
なお、NTU値の算出については、「NTU値=EBC値×19.7÷0.245」という式を用いて行った。
前記の方法により準備したNo.1−1〜1−5、No.2−1〜2−5に係るサンプルの香りについて、よく訓練された専門のパネル3名が下記評価基準に則って1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、香りの評価については、サンプルを口に含まずに評価を行った。
5点:極めて強い華やかな香りがある。
4点:強い華やかな香りがある。
3点:華やかな香りがある。
2点:弱い華やかな香りがある。
1点:全く華やかな香りがない。
前記の方法により準備したNo.1−1〜1−5、No.2−1〜2−5に係るサンプルの風味について、よく訓練された専門のパネル3名が下記評価基準に則って1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、風味(香りや味わい)の評価については、サンプルを口に含んで評価を行った。そして、焼酎としての独特な風味とは、麦焼酎の場合は、麦由来の独特な風味のことであり、芋焼酎の場合は、芋由来の独特な風味のことである。
5点:極めて強い独特な風味がある。
4点:強い独特な風味がある。
3点:独特な風味がある。
2点:弱い独特な風味がある。
1点:全く独特な風味がない。
なお、表1および表2には、パルミチン酸エチル、ステアリン酸エチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチルの濃度も参考値として示す。
S2 二次もろみ製造工程
S3 蒸留工程
S4 蒸留後ろ過工程(ろ過工程)
S5 割水工程
S6 割水後ろ過工程(ろ過工程)
Claims (4)
- 単式蒸留機で蒸留した麦焼酎であって、
1−ブタノールの濃度が0.30ppm以上であり、
濁度が0.10NTU以下であることを特徴とする焼酎。 - 単式蒸留機で蒸留した芋焼酎であって、
1−ブタノールの濃度が0.60ppm以上であり、
濁度が0.10NTU以下であることを特徴とする焼酎。 - ろ過処理時における焼酎の液温が10℃以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の焼酎。
- 単式蒸留焼酎の製造方法であって、
液温を10℃以上とした焼酎をろ過するろ過工程、を含むことを特徴とする焼酎の製造方法。
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