以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態につき説明する。図1〜図7に示される本実施形態の壁パネル1は、図2に示されるように間仕切り壁として増設される。この壁パネル1と既設壁2とで構成される壁構造にあっては、既設壁2に設けられた給電部20から、壁パネル1に設けられたコンセント3に給電されるようになっている。
既設壁2は、例えば複数並べて設けられた壁パネルで構成される。図1に示されるように、既設壁2の下端部には、既設壁2の前方(室内側)に開口した収納溝21が設けられている。収納溝21は、既設壁2の左右方向に長く、例えば既設壁2の左右方向の全長に亘って設けられる。なお、収納溝21は、既設壁2の左右方向の一部にのみ設けてあってもよい。
収納溝21には、給電部20が収納される。給電部20は、例えば差込式の電線コネクタで構成される。給電部20は、図示しない屋内電源に電線40を介して接続される。給電部20は、例えば、既設壁2を施工する際等に、収納溝21に設けられる。
既設壁2の下端部には、収納溝21及び給電部20の前側を覆う幅木5が着脱自在に取り付けられる。
図2に示されるように、間仕切り壁は、既設壁2に直角に隣接するように設けられる。間仕切り壁は、複数並べて設けられた壁パネル1で構成される。各壁パネル1は、図1に示されるように、パネル本体10、コンセント3、及び幅木6を備えている。以下、壁パネル1に設けられる幅木6を壁パネル用幅木6と記載し、既設壁2に設けられる幅木5を既設壁用幅木5と記載する。
パネル本体10は、パネル材100と、パネル材100の下端面に沿って設けられた下縁材7とを備えている。パネル材100は、上下に長い矩形板状に形成されている。パネル材100としては、例えばパネル枠の両面に石膏ボード等の面板を固着したものが用いられる。なお、パネル材100はこれに限られず、下地板の両面に表面板を固着したものや、無垢材等であってもよい。
下縁材7は、パネル本体10の下端部を構成する。下縁材7は左右方向に長い長尺な部材であって、パネル材100の左右方向の全長に亘って設けられている。下縁材7は、例えば金属製である。
図4に示されるように、下縁材7は、上横片部70と、下横片部71と、上横片部70及び下横片部71の後部同士を接続した縦片部72で構成されており、長手方向に直交する断面が略I字状(横倒しのH字状)である。
下縁材7は、前後寸法がパネル材100の厚みよりも小さく、平面視においてパネル材100の厚みの範囲内に設けられている。下縁材7の上横片部70は、上面がパネル材100の下端面に当接され、この状態でパネル材100の下端部に取り付けられている。
下縁材7には、前方に開口する前側の溝部73と、後方に開口する後側の溝部74が形成されている。両溝部73、74はコンセント3を収納する部分として利用される。以下、特に区別する場合には、前側の溝部73を前溝部73と記載し、後側の溝部74を後溝部74と記載する。
前溝部73は、上横片部70及び下横片部71の夫々の縦片部72よりも前方に突出した部分と、縦片部72とで構成されている。後溝部74は、上横片部70及び下横片部71の夫々の縦片部72よりも後方に突出した部分と、縦片部72とで構成されている。すなわち、パネル本体10の下端部には、前溝部73と後溝部74が背中合わせにして形成されている。
図5に示されるように、上横片部70において前溝部73の上面部を構成する部分には、第一掛止部700が形成されている。第一掛止部700は、コンセント3が有する第一被掛止部31が着脱自在に掛止される部分である。
下横片部71において前溝部73の下面部を構成する部分には、第二掛止部710が形成されている。第二掛止部710は、コンセント3が有する第二被掛止部32が着脱自在に掛止される部分である。
第一掛止部700は、上横片部70の下面から後側に向かって一体に突出した突片部で構成されている。第二掛止部710は、下横片部71の上面から後側に向かって一体に突出した突片部で構成されている。第一掛止部700及び第二掛止部710は、前溝部73の長手方向の全長に亘って形成されており、その断面形状は長手方向に亘って夫々同じである。
前溝部73の長手方向における複数個所には、補強材として補強板101が取り付けられる。補強板101は前溝部73の長手方向に直交する板状に形成されている。
補強板101は、上端部から上方に向かって突出した第一突部102と、下端部から下方に向かって突出した第二突部103を有している。
第一突部102は、第一掛止部700と縦片部72の上端部の間に嵌め込まれる。第二突部103は、第二掛止部710と縦片部72の下端部の間に嵌め込まれる。これにより、補強板101は下縁材7に取り付けられ、下縁材7が補強板101によって補強される。
各補強板101の上下方向の中央部には、電線挿通部104が形成されている。電線挿通部104は、補強板101を左右方向に貫通し且つ前方に開口する凹部によって構成されている。
下縁材7の縦片部72には、挿通孔720が下縁材7の長手方向に複数形成されている。図1の例では、挿通孔720が下縁材7の長手方向における両側と中央部の夫々に形成されている。
各挿通孔720は、縦片部72を前後方向に貫通している。各挿通孔720は、縦片部72の上下方向の中央部に形成されている。各挿通孔720の正面視形状は、略横長矩形状であり、コンセント3の正面視形状と略同じである。なお、補強板101は、前溝部73の長手方向において挿通孔720が形成されていない部分に設けられる。図1に示される例では、補強板101は、各挿通孔720の両側に位置するように設けられている。
図5に示されるように、下縁材7の下横片部71には、下方に開口する溝状部711が左右方向に亘って形成されている。壁パネル1は、既設の床面41上に下横片部71の下面を当接した状態で設置される。この際、下横片部71と床面41との間には、床面41に対する摩擦係数が大きなジェルマット等の防振材105が設けられる。防振材105は、下横片部71に形成された溝状部711に収納され、下横片部71と床面41との間で上下に圧縮される。
床面41上に設置された複数の壁パネル1の前溝部73は、一直線状に並べて配置されて互いに連通する。また、間仕切り壁のうち、最も既設壁2側に設置される壁パネル1の前溝部73は、図1に示されるように既設壁2側に開口し、既設壁2の収納溝21に連通する。
コンセント3は、外殻を構成するケース30に図示しない電極(刃受け)を内装したものである。ケース30は、左右に長い略矩形箱状に形成されている。
コンセント3(ケース30)の前面には、図示しないプラグを挿入するためのコンセント口33が左右に複数並べて形成されている。図示例では、コンセント3の前面に4口のコンセント口33が形成されている。
コンセント3の左右両端面のうち、既設壁2と反対側を向く面となる一方の端面には、延長用コンセント口34が形成されている。また、コンセント3の延長用コンセント口34と反対側の端面には、電線42の端部が接続されている。
図5に示されるように、コンセント3の上面部には、パネル本体10の第一掛止部700に着脱自在に掛止される第一被掛止部31が形成されている。コンセント3の下面部には、パネル本体10の第二掛止部710に着脱自在に掛止される第二被掛止部32が形成されている。第一被掛止部31及び第二被掛止部32は、コンセント3の上面部から一体に突出した爪部により構成されている。
コンセント3は、図5(b)に示されるように、下縁材7の挿通孔720に挿通される。これにより、コンセント3の前後方向の中間部は挿通孔720に嵌め込まれる。また、コンセント3の第一被掛止部31は第一掛止部700に掛止され、第二被掛止部32は第二掛止部710に掛止される。さらに、コンセント3の上面は、第一被掛止部31の下面に当接し、コンセント3の下面は、第二被掛止部32の上面に当接する。これにより、コンセント3は、パネル本体10の下縁材7に取り付けられる。
このように取り付けられたコンセント3は、下縁材7の縦片部72よりも前方に突出した過半部が下縁材7の前溝部73に収納され、縦片部72よりも後側に突出した後端部が後溝部74に収納される。
コンセント3は、パネル本体10の下端部に左右方向に複数形成された挿通孔720のうちの任意の挿通孔720に嵌め込まれる。コンセント3をいずれの挿通孔720に嵌め込んだ場合にも、コンセント3は前記と同様に下縁材7に取り付けることができる。すなわち、施工者は、コンセント3が嵌め込まれる挿通孔720を選択することで、コンセント3をパネル本体10の前溝部73に対して左右位置を変更して取付けることができる。
図1に示されるように、コンセント3に接続された電線42は、前溝部73を通して既設壁2の収納溝21に導入され、この後、収納溝21に配置された給電部20に接続される。ここで、電線42の前溝部73に収納される部分は、適宜補強板101の電線挿通部104に通される。
なお、電線42を収納溝21に通して給電部20に接続する作業は、既設壁2から既設壁用幅木5を外した状態で行われる。また、コンセント3が給電部20に近い位置に配置された場合、電線42の余長部分ができることがあるが、この余長部分も前溝部73や収納溝21に収納される。
図5に示されるように、各壁パネル1の前溝部73及び後溝部74には、係合部75が形成されている。係合部75は、壁パネル用幅木6が有する被係合部60が着脱自在に係合される部分である。
係合部75は、溝部73、74の開口側端部の上下縁部の夫々の内面から突出している。各係合部75は、下縁材7の長手方向に亘って形成されている。
図1に示されるように、各壁パネル1は、壁パネル用幅木6を複数有している。壁パネル用幅木6には、壁パネル1の前側に左右に並べて設けられるものと、壁パネル1の後側に左右に並べて設けられるもの(図6参照)とがある。前側の壁パネル用幅木6は、前溝部73のコンセント3以外の箇所を前側から覆う。後側の壁パネル用幅木6は、後溝部74のコンセント3以外の箇所を後側から覆う。前側の壁パネル用幅木6及び後側の壁パネル用幅木6には、共通の幅木が用いられる。
壁パネル用幅木6としては、第一幅木61と第二幅木62の二種類がある。第一幅木61は、前溝部73及び後溝部74の夫々において、コンセント3に対応する箇所に設けられる。第二幅木62は、前溝部73及び後溝部74の夫々において、コンセント3に対応しない箇所に設けられる。
第一幅木61には、コンセント3の前後方向の端部を嵌め込むための嵌込孔610が形成されている。嵌込孔610の正面視形状は、略横長略矩形状であり、コンセント3の正面視形状と略同じである。
図5に示されるように、嵌込孔610の内周面は、室内側(溝部73、74と反対側)に行く程内方に位置するように傾斜したテーパー面611になっている。これに対して、コンセント3の前後両端部の外周面も、室内側程内方に位置するように傾斜したテーパー面35になっている。
第一幅木61には、溝部73、74の係合部75に着脱自在に係合される被係合部60が形成されている。被係合部60は、第一幅木61の上下両端部から溝部73、74側に向かって突出している。各被係合部60は、第一幅木61の長手方向に亘って形成されている。
図5(b)に示されるように、第一幅木61は、溝部73、74に室内側から取り付けられる。具体的には、上下の被係合部60を溝部73、74の対応する係合部75に係合することで、第一幅木61は溝部73、74に取り付けられる。また、この際、第一幅木61の嵌込孔610には、挿通孔720に嵌め込まれたコンセント3の前後方向の端部が嵌め込まれ、第一幅木61のテーパー面611がコンセント3のテーパー面35と接する。
このように第一幅木61が取り付けられた状態におけるコンセント3の前後両面は、対応する嵌込孔610から室内側に露出する。
なお、前溝部73に対応する第一幅木61が取り付けられた状態では、この第一幅木61の嵌込孔610に嵌め込まれたコンセント3の前面は、当該第一幅木61の前面と面一となる。また、後溝部74に対応する第一幅木61が取り付けられた状態では、この第一幅木61の嵌込孔610に嵌め込まれたコンセント3の後面は、当該第一幅木61の後面と面一となる。
溝部73、74に取り付けられた第一幅木61によって、溝部73、74におけるコンセント3の周囲部の室内側が覆われる。また、このように第一幅木61を溝部73、74に取り付けた際、第一幅木61の室内側の面は、パネル材100の室内側の面と面一となる。
壁パネル1の各係合部75及び第一幅木61の各被係合部60は、長手方向に亘って断面形状が同じである。このため、第一幅木61は、溝部73、74の長手方向における位置を調節して取り付けられるようになっている。従って、コンセント3をいずれの挿通孔720に嵌め込んだ場合にも、このコンセント3に対応する位置に第一幅木61を取り付けることができる。
また、第一幅木61は上下対称形状である。さらに、各溝部73、74に形成される上下の係合部75は、上下対称位置に形成され且つ上下対称形状である。このため、第一幅木61は、溝部73、74に対して上下反転した状態でも取り付けられるようになっている。
図3に示されるように、第二幅木62は、溝部73、74の長手方向において第一幅木61が設けられていない箇所に取り付けられる。これにより、各溝部73は、その内側に配置された電線42も含めて、第一幅木61と第二幅木62によって長手方向の全長に亘る部分の室内側が覆われる。なお、図3の例では、第一幅木61の両側に第二幅木62が設けられている。
第二幅木62の長手方向と直交する断面形状は、第一幅木61と同じである。以下では、第二幅木62における第一幅木61と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
第二幅木62には、嵌込孔610が形成されていない。例えば、第二幅木62は、断面形状が同一の長尺物を適当な長さに切断することで形成される。なお、長さの異なる第二幅木62を複数種類用意しておき、第一幅木61の取付位置に応じてこれら第二幅木62の中から選択された第二幅木62を壁パネル1に設けるようにしてもよい。
また、図8に示されるように、第一幅木61と第二幅木62の長さを同じとし、第一幅木61と第二幅木62の取付位置を入れ替えてもよい。図8に示される例では、第一幅木61の嵌込孔610が、第一幅木61の長手方向における片側に形成されている。このため、第一幅木61を溝部73、74に対して上下に反転して取り付けた場合、嵌込孔610の左右位置を変更できるようになっている。従って、第一幅木61の取付位置の変更と、第一幅木61の上下の反転とを組み合わせて、コンセント3を左右方向における様々な位置に取り付けることが可能となる。
例えば図8(a)に示される例では、壁パネル1の左右方向における片側に第一幅木61が設けられている。ここで、第一幅木61を図8(b)に示されるように上下に反転して、溝部73、74に取り付けることで、コンセント3を異なる位置に設けることが可能となる。また、図8(c)に示されるように、第一幅木61を任意の第二幅木62と入れ替えて取り付けることでも、コンセント3を異なる位置に設けることができる。なお、図8に示される例では、給電部20は壁パネル1の溝部73に設けられているが、図1に示される例と同様、給電部20は既設壁2の収納溝21に設けてもよい。また、図1に示される例においても、給電部20を図8に示されるように壁パネル1の溝部73に設けてもよい。
また、第二幅木62は、複数の壁パネル1に跨って設けられてもよい。
図1に示されるように、コンセント3の電線42を給電部20に接続した後にあっては、既設壁2の収納溝21に既設壁用幅木5が取り付けられる。これにより、収納溝21内の給電部20及び電線42は既設壁用幅木5で覆われる。
壁パネル1には、複数種類のコンセント3の中から選択されたコンセント3を設けてもよい。本実施形態では、図6に示される片面用コンセント3に代えて、図7に示される両面用コンセント3をパネル本体10に取り付けられるようになっている。
両面用コンセント3は、前後両面にコンセント口33が形成されている。なお、両面用コンセント3のその他の構成は片面用コンセント3と同じである。また、両面用コンセント3は、片面コンセント3と同様に壁パネル1に設けられる。このような両面用コンセント3をパネル本体10に取り付けた場合、壁パネル1の両面においてコンセント口33を利用することが可能になる。
また、複数の壁パネル1によって構成された間仕切り壁には、図1に示される延長用コンセント36を設けてもよい。なお、延長用コンセント36は、コンセント3と同じ壁パネル1に設けられてもよいし、同一の間仕切り壁を構成する他の壁パネル1に設けられてもよい。
延長用コンセント36の電線42の端部には、コンセント3及び他の延長用コンセント36に設けられた延長用コンセント口34に接続可能なプラグ360が設けられている。なお、延長用コンセント36のその他の構成は、コンセント3と同じである。また、延長用コンセント36は、コンセント3と同様に壁パネル1に設けられる。
以上説明した本実施形態の壁パネル1は、パネル本体10とコンセント3を備え、パネル本体10の下端部に、前方に開口し左右に長く且つコンセント3を左右方向の位置を変更して配置可能な溝部73が形成されている。また、溝部73においてコンセント3以外の箇所を前側から覆う幅木6をさらに備えている。この壁パネル1にあっては、コンセント3を溝部73の長手方向における位置を変更して配置して、所望の位置にコンセント3を設けることができる。また、溝部73にはコンセント3に接続される電線42を配置できる。さらに、溝部7においてコンセント3が配置されていない箇所を幅木61で覆って外観を良くすることができる。
また、本実施形態のように幅木61にコンセント3の前端部が嵌め込まれる嵌込孔610が形成されることが好ましい。このようにすると、幅木61によりコンセント3の周囲部を覆うことができる。
また、本実施形態の壁構造は、壁パネル1を間仕切り壁として既設壁2に隣接して増設した壁構造であり、既設壁2の下端部に、既設壁2の前面側に開口し且つ既設壁2の左右方向に長い収納溝21が形成されている。また、コンセント3に電力を供給する給電部20が収納溝21内に設けられる。また、溝部73が既設壁2側に開口して収納溝21に連通し、溝部73に配置されたコンセント3が溝部73及び収納溝21に通された電線42を介して給電部20に接続される。また、既設壁2に収納溝21及び給電部20を既設壁2の前側から覆う既設壁用幅木5が設けられる。
この壁構造は、増設した壁パネル1に設けられたコンセント3を、溝部73及び収納溝21に通した電線42を介して、既設壁用幅木5に設けられた給電部20に接続することができ、これにより給電部20からコンセント3に給電できる。また、既設壁2の収納溝21に配置された給電部20及び収納溝21を通る電線42を既設壁用幅木5で覆うことで、外観を良くすることができる。
なお、壁パネル1の厚みが薄い場合、コンセント3の厚みが大きいと、コンセント3を溝部73に配置することが難しくなる。この場合、コンセント3として、以下のコンセント8を用いてもよい。
コンセント8は、図9に示されるように、ベース80、保持部材81、電極82、付勢部材83、及びカバー84を備えている。
ベース80は、図1等に示されるコンセント3のケース30と同様に前溝部73に取り付けられる。ベース80は、絶縁性材料により形成されている。ベース80は、前溝部73の長手方向に長い矩形板状に形成されている。
コンセント8に接続されるプラグ9は、図10に示されるように、プラグ本体90と、プラグ本体90の一面900の両側から突出した端子901(以下、プラグ端子901と記載する)を備えている。プラグ端子901は金属製の栓刃である。
ベース80の厚みは、プラグ本体90から突出したプラグ端子901の突出長さよりも短い。
図9(b)に示されるように、ベース80の前面には、前方に開口した凹部800が形成されている。凹部800は、正面視で左右に長い略矩形状に形成されている。凹部800の奥面部における左右両端部の間の部分には、一段後方に凹んだ凹み801が形成されている。
保持部材81は、絶縁性材料により形成されている。保持部材81は、凹部800の奥部に収納される。保持部材81は、ベース80に対して移動できるよう他の部材に対して固定されない。保持部材81は板状に形成されており、凹み801の奥面部に沿って配置される。保持部材81の左右両端部の間の部分には、前方に突出した嵌合部810が形成されている。嵌合部810は、カバー84が有する被嵌合部840が着脱自在に嵌合される部分となる。
電極82は、プラグ端子901に接続される部分であって、金属製の刃受けで構成されている。電極82は、凹部800の左右両側に設けられる。
各電極82はベース80に取り付けられ、ベース80に対して移動不能となる。各電極82は、凹み801の前側で且つ保持部材81の前側に設けられる。両電極82と凹み801の奥面部の間に配置された保持部材81は、図11(a)に示されるように後面部が凹み801の奥面部に当接した位置と、図9(b)に示されるように前面部が両電極82の後端面に当接した位置との間において、前後方向に移動自在となる。
各電極82には、プラグ端子901が差し込まれる差込溝820が形成されている。各電極82の差込溝820は、前後方向に貫通している。
付勢部材83は、凹部800の左右両端部に夫々設けられている。各付勢部材83は、前後方向に伸縮する圧縮ばねであり、その後端部は凹部800の後端部(詳しくは凹部800の奥面部の左右方向の端部)に連結されている。なお、本実施形態の付勢部材83はばねであるが、ばね以外の弾性体等を付勢部材83として用いても構わない。
カバー84は、絶縁性材料によって形成されている。カバー84の正面から見た外形は、凹部800と略同大同形である。カバー84の後面部における左右両端部は、対応する付勢部材83の前端部に連結される。すなわち、カバー84は、付勢部材83を介して凹部800の奥面部に連結され、凹部800に対して前後方向に移動自在とされる。カバー84は、図9(a)に示されるように凹部800に収納された収納位置から、図10(b)に示されるように、凹部800より突出した突出位置との間で移動自在とされる。
図9(b)に示されるように、カバー84において各電極82に対応する箇所には、上下に長く後方に開口した電極収納溝841が形成されている。各電極収納溝841の横幅は、対応する電極81の横幅と略同じであり、各電極収納溝841には、後方の対応する電極82を出し入れ自在に収納できるようになっている。
各電極収納溝841の奥部の左右方向における中央部には、対応するプラグ端子901を挿通可能な端子挿通孔842が形成されている。端子挿通孔842は、電極収納溝841の奥部を前後方向に貫通しており、カバー84の前面から前方に開口している。端子挿通孔842は、図9(a)に示されるように、縦長矩形状に形成されている。図9(b)に示されるように、端子挿通孔842の横幅は、電極収納溝841の横幅よりも小さく、プラグ端子901の厚みと略同じである。
カバー84の後面部には、保持部材81の嵌合部810に着脱自在に嵌合される被嵌合部840が形成されている。被嵌合部840は、カバー84の後面の左右両側から後方に向かって突出している。カバー84は、両被嵌合部840を両嵌合部810の内側に嵌め込むことで、保持部材81に取り付けられる。
カバー84の前後長さは、凹部800の奥行寸法よりも短い。このため、カバー84は、図9(b)に示されるように、凹部800内に完全に収めた状態で配置することができる。カバー84が図9(b)に示される収納位置に配置されたとき、カバー84の各電極収納溝841には、対応する電極82が収納される。また、カバー84の前面が、ベース80の前面と面一となる。
カバー84は、前記収納位置に配置されたとき、両被嵌合部840が両嵌合部810に嵌合して保持部材81に取り付けられる。この取付状態においては、カバー84は圧縮された付勢部材83により前方へ付勢される。ただし、保持部材81は、両電極82の後端面に当接し、前方への移動が規制され、保持部材81及びこれに取り付けられたカバー84はこの位置で保持される。すなわち、カバー84は、両電極82によって前方への移動が規制された保持部材81によって凹部800に収納された収納位置に保持される。
カバー84が前記収納位置に配置された状態にあるコンセント8には、プラグ9を接続することができる。この接続は、両プラグ端子901の先部を、カバー84の対応する端子挿通孔842に前方から挿入することで行われる。
このようにすると、各プラグ端子901の先部は、図10(a)に示されるように対応する差込溝820に挿入され、各プラグ端子901は対応する電極82に接触する。このプラグ端子901の挿入は、プラグ端子901の先端部が電極82よりも後方に突出する位置まで行われる。このように各プラグ端子901が電極82の差込溝820に挿通されると、各プラグ端子901の突出先端部によって保持部材81の嵌合部810が後方に押し動かされ、カバー84の被嵌合部840と保持部材81の嵌合部810の嵌合が外れる。すなわち、保持部材81によるカバー84の保持が解除され、カバー84は前後方向に移動可能となる。そして、保持部材81から外れたカバー84は、両付勢部材83の付勢力によって、図10(b)に示されるようにケース30の前面より前方に突出した突出位置まで移動する。また、これに伴い、カバー84の各電極収納溝841は対応する電極82に沿って前方に移動し、これにより各電極82は電極収納溝841の後方に配置される。
前記突出位置に配置されたカバー84の前面は、プラグ本体90のプラグ端子901が設けられた面900に近接する。ここで、近接とは、カバー84の前面がプラグ本体90の面の近傍に配置されること、又はカバー84の前面がプラグ本体90の面900に当接することを意味する。
また、カバー84が突出位置に配置されたとき、プラグ本体90から突出した各プラグ端子901の突出基部は、カバー84の対応する端子挿通孔842及び電極収納溝841に収納される。このため、プラグ本体90から突出した各プラグ端子901は、全部又は大部分がカバー84によって覆われた非露出状態となる。
利用者は、コンセント8に接続されたプラグ9のプラグ本体90を引っ張ることで、両プラグ端子901を電極82及び端子挿通孔842から引き抜くことができる。ここで、利用者は、コンセント8に接続されたプラグ9を引き抜くにあたって、突出位置に配置されたカバー84を図11(a)に示されるように後方に押し込むことで、両プラグ端子901を電極82及び端子挿通孔842から簡単に引き抜けるようになっている。
すなわち、利用者によって突出位置に配置されたカバー84が後方に押し込まれると、カバー84によって保持部材81が凹み801の奥面部に当接するまで押し込まれる。また、さらにカバー84が後方に押し込まれると、図11(a)に示されるようにカバー84の両被嵌合部840が保持部材81の両嵌合部810に嵌合する。
そして、この状態で利用者によるカバー84の後方への押込み力が解除されると、両付勢部材83によりカバー84及びこれに取り付けられた保持部材81が前方に移動する。このカバー84と保持部材81の前方への移動は、図11(b)に示されるように、保持部材81の前面が両電極82の後端面に当接する位置まで行われる。このとき、保持部材81によって両プラグ端子901の先端面が前方に押し動かされる。これにより、両プラグ端子901は、電極82からわずかに抜け出た状態、すなわち、抜けやすい状態となり、利用者は、このプラグ9をコンセント8から簡単に引き抜くことが可能となる。
また、このようにプラグ9が引き抜かれると、カバー84は、付勢部材83の付勢力により保持部材81が電極82の後端面に当接する位置まで移動し、図9(b)に示される状態に復帰する。なお、コンセント8のカバー84は、利用者がコンセント8からプラグ9を引き抜いた後に、後方に押し込むことによっても、図9(b)に示される状態に復帰させることができる。
以上説明したコンセント8は、前方に開口する凹部800と、凹部800に設けられてプラグ端子901に接触する電極82と、凹部800に設けられて電極82を覆うカバー84とを備えている。カバー84は、電極82に対応する位置に設けられて、プラグ端子901を挿入するための前後方向に貫通した端子挿通孔842を有している。カバー84は、凹部800に収納された収納位置から凹部800より前方に突出した突出位置まで移動自在に設けられる。コンセント8は、カバー84を前方に付勢する付勢部材83と、カバー84を収納位置で保持し且つこの保持を解除可能な保持部材81とをさらに備えている。
このコンセント8は、プラグ端子901を端子挿通孔842に挿通して電極82に接触させることで、プラグ9を接続することができる。また、保持部材81によるカバー84の保持を解除することで、付勢部材83の付勢力によってカバー84を凹部800より前方に突出した突出位置に配置し、このカバー84によりプラグ端子901の突出基部側を覆うことができる。また、カバー84を凹部800に収納された収納位置に配置し、このカバー84を保持部材81で保持することで、コンセント8の厚みを小さくすることができる。このため、コンセント8の非使用時においては、コンセント8の厚みを小さくしてコンセント8を邪魔になり難くすることができる。また、コンセント8の保管時においては、コンセント8の厚みを小さくして嵩張らないようにできる。