JP2015010293A - 繊維構造体および鉄道車両用座席シートおよび自動車用座席シート - Google Patents
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Abstract
【課題】クッション性、難燃性、耐久性および軽量性に優れた、繊維構造体および鉄道車両用座席シートおよび自動車用座席シートを提供する。【解決手段】捲縮短繊維と、該捲縮短繊維を構成するポリマーよりも25℃以上低い融点を有するポリマーが、熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維とが重量比率で90/10〜10/90となるように混綿されたウエブを積層して得られた、前記熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または前記熱接着性複合短繊維と前記捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなる繊維構造体において、温度350℃中で10秒間乾熱処理したときの収縮率を15%以上とし、必要に応じて該繊維構造体を用いて、鉄道車両用座席シートまたは自動車用座席シートを得る。【選択図】なし
Description
本発明は、クッション性、難燃性、耐久性および軽量性に優れた、繊維構造体および鉄道車両用座席シートおよび自動車用座席シートに関する。
自動車や鉄道車両に搭載される座席用クッション材は、クッション性や耐久性に加え、燃費向上の観点から軽量性の向上が求められ、環境負荷の観点から易リサイクル性、さらに火災時の延焼をできるだけ抑えるために難燃性が要求される。
これらを解決する手段として、例えば、特許文献1では、難燃化したポリウレタン樹脂発泡体を用いることが提案されている。しかしながら、ポリウレタン樹脂発泡体のクッション材は軽量化がなされつつあるとはいえ、まだ重く、廃棄やリサイクル性の点でも十分とはいえなかった。
これらを解決する手段として、例えば、特許文献1では、難燃化したポリウレタン樹脂発泡体を用いることが提案されている。しかしながら、ポリウレタン樹脂発泡体のクッション材は軽量化がなされつつあるとはいえ、まだ重く、廃棄やリサイクル性の点でも十分とはいえなかった。
また、特許文献2では、捲縮短繊維集合体からなるマトリックス中に、無炎試験法による重量残存率が35%以上である耐炎性捲縮短繊維と、熱可塑性弾性繊維とが混入分散され、且つ熱可塑性弾性繊維と他の繊維との交絡点の少なくとも一部が熱融着していることを特徴とする耐熱難燃性クッション材が提案されている。かかる耐熱難燃性クッション材では、熱接着性繊維である熱可塑性弾性繊維自体は燃焼するものであるし、JIS K6400−6のような試験を行うと、溶融物のドリップが発生する場合があった。そして、溶融物のドリップが発生すると自動車や鉄道車両の火災時に燃焼を広げてしまうおそれがあった。また、ドリップしなくても耐炎性または難燃性の繊維と非耐炎性または難燃性の繊維を混合した場合、ローソク効果で燃焼長および燃焼時間が長くなるおそれがあった。
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、クッション性、難燃性、耐久性および軽量性に優れた、繊維構造体および鉄道車両用座席シートおよび自動車用座席シートを提供することにある。
本発明者は上記課題を達成するため鋭意検討した結果、温度350℃における繊維構造体の収縮率が難燃性に影響することを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば「捲縮短繊維と、該捲縮短繊維を構成するポリマーよりも25℃以上低い融点を有するポリマーが、熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維とが重量比率で90/10〜10/90となるように混綿されたウエブを積層して得られた、前記熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または前記熱接着性複合短繊維と前記捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなる繊維構造体であって、温度350℃中で10秒間乾熱処理したときの収縮率が15%以上であることを特徴とする繊維構造体。」が提供される。
その際、JIS K6400−6:2004(ISO3582:2000)の燃焼試験において、燃焼長125mm以下、かつ消火時間が90秒以下、かつドリップを起こさないことが好ましい。また、前記熱接着性複合短繊維において、熱融着成分の重量割合が繊維重量対比20〜50重量%の範囲内であることが好ましい。また、前記熱接着性複合短繊維に、有機リン系難燃剤が繊維重量に対するリン濃度0.05〜2.0重量%で付与されていることが好ましい。また、繊維構造体の密度が30〜55kg/m3の範囲内であることが好ましい。また、繊維構造体の3〜90mmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明によれば、前記の繊維構造体を用いてなる鉄道車両用座席シートが提供される。また、本発明によれば、前記の繊維構造体を用いてなる自動車用座席シートが提供される。
また、本発明によれば、前記の繊維構造体を用いてなる鉄道車両用座席シートが提供される。また、本発明によれば、前記の繊維構造体を用いてなる自動車用座席シートが提供される。
本発明によれば、クッション性、難燃性、耐久性および軽量性に優れた、繊維構造体および鉄道車両用座席シートおよび自動車用座席シートが得られる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明において捲縮短繊維としては、綿、ウール等の天然繊維やカーボン繊維等の無機繊維、セルロース系繊維、アラミド系(パラ型またはメタ型)、ポリオレフィン系、ポリエステル系の合成繊維等、さらには雑綿又は反毛とよばれるリサイクル繊維等も使用できる。なかでも、取扱い性、廃棄性およびリサイクル性の点で合成繊維が好ましい。特にポリエチレンテレフラレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリピバロラクトン、ポリ乳酸(PLA)、ステレオコンプレックスポリ乳酸などのポリエステル、またはこれらの共重合体からなる短繊維ないしそれら短繊維の混綿体、または上記ポリマー成分のうちの2種類以上からなる複合短繊維等を挙げることができる。また、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルや、特開2009−01694号公報に記載された、バイオマスすなわち生物由来の物質を原材料として得られたモノマー成分を使用してなるポリエチレンテレフタレートや、更には、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルなどからなる短繊維でもよい。これら短繊維のうち、繊維形成等の観点から、ポリエチレンテレフタレートまたはポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートからなる短繊維が特に好ましい。
本発明において捲縮短繊維としては、綿、ウール等の天然繊維やカーボン繊維等の無機繊維、セルロース系繊維、アラミド系(パラ型またはメタ型)、ポリオレフィン系、ポリエステル系の合成繊維等、さらには雑綿又は反毛とよばれるリサイクル繊維等も使用できる。なかでも、取扱い性、廃棄性およびリサイクル性の点で合成繊維が好ましい。特にポリエチレンテレフラレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリピバロラクトン、ポリ乳酸(PLA)、ステレオコンプレックスポリ乳酸などのポリエステル、またはこれらの共重合体からなる短繊維ないしそれら短繊維の混綿体、または上記ポリマー成分のうちの2種類以上からなる複合短繊維等を挙げることができる。また、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルや、特開2009−01694号公報に記載された、バイオマスすなわち生物由来の物質を原材料として得られたモノマー成分を使用してなるポリエチレンテレフタレートや、更には、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルなどからなる短繊維でもよい。これら短繊維のうち、繊維形成等の観点から、ポリエチレンテレフタレートまたはポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートからなる短繊維が特に好ましい。
前記の捲縮短繊維において、単繊維の断面形状は通常の丸、扁平、四つ山扁平などのくびれ付き扁平、三角や四角の多角形、丸中空や三角中空等の中空などいずれでもよい。
前記の捲縮短繊維において、単糸繊度としては、2〜100dtex(より好ましくは4〜50dtex、特に好ましくは5〜10dtex)であることが好ましい。単糸繊度が2dtexよりも小さいと、嵩高性が不十分となりクッション性や反発性が乏しくなるおそれがある。逆に、単糸繊度が100dtexよりも大きいとウエブ化が難しく、また、同一目付けであれば、繊維構造体を構成する繊維の本数が少なくなるため十分なクッション性が得られないおそれがある。また、捲縮短繊維の繊維長としては、繊維長が3〜100mmに裁断されていることが好ましい。
前記の捲縮短繊維において、単糸繊度としては、2〜100dtex(より好ましくは4〜50dtex、特に好ましくは5〜10dtex)であることが好ましい。単糸繊度が2dtexよりも小さいと、嵩高性が不十分となりクッション性や反発性が乏しくなるおそれがある。逆に、単糸繊度が100dtexよりも大きいとウエブ化が難しく、また、同一目付けであれば、繊維構造体を構成する繊維の本数が少なくなるため十分なクッション性が得られないおそれがある。また、捲縮短繊維の繊維長としては、繊維長が3〜100mmに裁断されていることが好ましい。
前記の捲縮短繊維において、捲縮数は3〜40個/2.54cm(好ましくは5〜15個/2.54cm)であることが好ましく、捲縮率としては20〜35%であることが好ましい。かかる捲縮数や捲縮率がこれらの範囲よりも小さいとウエブの嵩が出にくく、ウエブ化が困難となるおそれがある。また同時に、繊維構造体の反発性が乏しく、耐久性の低いものしか得られないおそれがある。逆に、かかる捲縮数や捲縮率がこれらの範囲よりも大きいと、短繊維の絡合が大きすぎてカード等の開繊工程で十分な梳綿をなすことができないおそれがある。
なお、捲縮付与方法としては、熱収縮率の異なるポリマーをサイドバイサイド型に張り合わせた複合繊維を用いてスパイラル状捲縮を付与、異方冷却によりスパイラル状捲縮を付与、通常の押し込みクリンパー方式による機械捲縮を付与など、種々の方法を用いればよいが、嵩高性、製造コスト等の面から機械捲縮を付与するのが最適である。
一方、熱接着性複合短繊維は、前記捲縮短繊維を構成するポリマーの融点よりも25℃以上(より好ましくは25〜150℃)低い融点を有する低融点ポリマーが少なくとも熱融着成分としてその表面に配された短繊維である。加熱により熱融着成分が溶融し、該熱接着性複合短繊維同士の交差点や該熱接着性複合短繊維と前記捲縮短繊維との交差点が融着する。その際、前記融点差が25℃未満では、加工温度が捲縮短繊維の融点温度に近くなるため、捲縮短繊維の物性や捲縮特性、または繊維構造体のクッション性が低下するおそれがあり、また、成型時の収縮率も大きくなるおそれがあり好ましくない。
前記熱接着性複合短繊維において、熱融着成分を形成する低融点ポリマーが熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
かかる熱可塑性エラストマーとしては、耐熱性があり、高温熱成型可能なポリエステル系エラストマーが特に好ましい。ポリエステル系エラストマーとしては熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオールあるいは1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンメタノール等の脂環式ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約400〜5000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−ポリプロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキサイド)クリコールのうち少なくとも1種から構成される三元共重合体を挙げることができる。
かかる熱可塑性エラストマーとしては、耐熱性があり、高温熱成型可能なポリエステル系エラストマーが特に好ましい。ポリエステル系エラストマーとしては熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオールあるいは1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンメタノール等の脂環式ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約400〜5000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−ポリプロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキサイド)クリコールのうち少なくとも1種から構成される三元共重合体を挙げることができる。
特に、捲縮短繊維との接着性や温度特性、強度の面からすればポリブチレン系テレフタレートをハード成分とし、ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルエステルが好ましい。この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分がブチレングリコール成分であるポリブチレンテレフタレートである。むろん、この酸成分の一部(通常30モル%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていてもよく、同様にグリコール成分の一部(通常30モル%以下)はブチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置換されていても良い。また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル部分はブチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルであってよい
また、熱接着性複合短繊維において、芯成分を形成するポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリピバロラクトンまたはこれらの共重合体エステル等を使用できる。
なお、上述のポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消し剤、着色剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていてもよい。
また、熱接着性複合短繊維において、芯成分を形成するポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリピバロラクトンまたはこれらの共重合体エステル等を使用できる。
なお、上述のポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消し剤、着色剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていてもよい。
また、熱接着性複合短繊維において、熱融着成分の重量割合が繊維重量対比20〜50重量%(より好ましくは20〜39重量%、特に好ましくは24〜35重量%)であることが好ましい。熱融着成分の重量割合が該範囲よりも大きい場合、繊維構造体の収縮率を後記の範囲とすることができないおそれがある。逆に、熱融着成分の重量割合が該範囲よりも小さい場合、繊維構造体のクッション性が低下するおそれがある。複合形態としては、少なくとも熱融着成分が表面に露出している限り特に限定されず、サイドバイサイド型、芯鞘型、偏心芯鞘型などが例示される。
前記の熱接着性複合短繊維において、単糸繊度としては2〜100dtex(より好ましくは1〜15dtex、特に好ましくは2〜10dtex)が好ましく、繊維長は38〜255mm、捲縮数は4〜70個/2.54cmの範囲が好ましい。この範囲から外れると、混綿、ウエブ化などの工程安定性が悪くなるおそれがある。また、繊維構造体のクッション性能や圧縮耐久性が低下するおそれがある。
また、前記熱接着性複合短繊維に難燃剤を付与することは好ましい。その際、有機リン系難燃剤が繊維重量に対するリン濃度(リン分)0.05〜2.0重量%(より好ましくは0.1〜0.7重量%)で付与されていると、ポリマーの融点が低下することにより繊維構造体の収縮率を後記の範囲とすることができやすく好ましい。特に、熱接着性複合短繊維において熱融着成分の重量割合が大きい場合、熱接着性複合短繊維に難燃剤を付与すると繊維構造体の収縮率を大きくすることができ好ましい。
前記有機リン系難燃剤としては、に、ブロモまたはクロロアルキルまたはアルケニル、ホスフェート、脂肪族ホスホン酸エステル、アルキル酸性リン酸エステル、モノハロゲン化アルキル酸性リン酸エステル、テトラキスハイドロキシメチルホスホニウムの塩、メチロールリン酸グアニル尿素、ジメチロールリン酸グアニル尿素、などが例示される。好ましい有機リン系難燃剤としては、ポリリン酸カルバメート、リン酸グアニジンホルマリン縮合物、リン酸グアニジンからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有する難燃剤などがあげられる。さらに好ましくは、ポリリン酸カルバメートを主成分とする難燃剤である。
有機リン系難燃剤を熱融着成分表面に配する方法は、水分散させた有機リン系難燃剤を紡糸・延伸後に浸漬あるいは塗布、スプレーしてもよいし、短繊維にカットされた後に浸漬あるいはスプレーして表面に配してもよい。また、有機リン系難燃剤が熱融着成分表面からカード工程などで脱落しないよう、バインダー成分を混ぜてもよい。
本発明において、繊維構造体は、上記の捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維とが混綿されたウエブを積層した後に加熱処理することにより、該熱接着性短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または該熱接着性複合短繊維と捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなるものである。その際、捲縮短繊維と熱接着複合短繊維との重量比率は90/10〜10/90であることが肝要である。熱接着性複合短繊維の比率がこの範囲より小さい場合は、固着点が少なくなり、圧縮反発性、圧縮耐久性が低下するおそれがある。逆に、熱接着性複合短繊維の比率がこの範囲よりも大きい場合は、熱接着性複合短繊維の収縮のため、所望の成型物形状が得られにくくなるとともに、生産での品質管理が難しくなり好ましくない。
ここで、下記方法で測定した、温度350℃中で10秒間乾熱処理したときの繊維構造体の収縮率が15%以上(より好ましくは15〜80%、特に好ましくは15〜35%)であることが肝要である。繊維構造体の収縮率を15%以上とすることにより、繊維構造体に着火した際に繊維構造体がすみかやに収縮することにより発火源から遠ざかり、その結果、燃焼時間を短くすることが可能となる。
(収縮率の測定方法)
JIS K6400−6と同様のサンプル片(長辺150mm、短辺50mm)を切り出し、長辺を測長する。このサンプル片を350℃の電気炉でサンプルを10秒間熱処理した後、長辺を測長する。そして、下記式により収縮率(%)を算出する。
収縮率(%)=(l0−l1)/l0×100
ここで、l0は熱処理前の試験片の長辺の長さ(mm)であり、l1は熱処理後の試験片の長辺の長さ(mm)である。
JIS K6400−6と同様のサンプル片(長辺150mm、短辺50mm)を切り出し、長辺を測長する。このサンプル片を350℃の電気炉でサンプルを10秒間熱処理した後、長辺を測長する。そして、下記式により収縮率(%)を算出する。
収縮率(%)=(l0−l1)/l0×100
ここで、l0は熱処理前の試験片の長辺の長さ(mm)であり、l1は熱処理後の試験片の長辺の長さ(mm)である。
繊維構造体の収縮率を該範囲内とするには、前記の通り、熱接着性複合短繊維において熱融着成分の重量割合を特定範囲内とするか、および/または、有機リン系難燃剤を熱接着性短繊維に付与するとよい。
本発明の繊維構造体は、前記の捲縮短繊維と前記の熱接着性複合短繊維だけで構成されていてもよいが、必要に応じて他の繊維が含まれていてもよい。
本発明の繊維構造体は、前記の捲縮短繊維と前記の熱接着性複合短繊維だけで構成されていてもよいが、必要に応じて他の繊維が含まれていてもよい。
また、本発明の繊維構造体において、密度としては30〜55kg/m3の範囲内であることが好ましい。この範囲より小さい場合は、ヘタリが大きくなるおそれがある。逆に、この範囲より大きいと軽量性が損なわれるおそれがある。また、かかる繊維構造体の厚さとしては、3〜90mmの範囲内であることが、クッション性能およびその耐久性の点で好ましい。
本発明の繊維構造体を製造する方法としては、特に規定されるものはなく、常法に従ってクロスレイ法でもよいし、特開平8−318066号公報で開示されたような、熱接着性複合短繊維と捲縮短繊維とを繊維構造体の厚さ方向に配列させる方法でもよい。
本発明の繊維構造体を製造する方法としては、特に規定されるものはなく、常法に従ってクロスレイ法でもよいし、特開平8−318066号公報で開示されたような、熱接着性複合短繊維と捲縮短繊維とを繊維構造体の厚さ方向に配列させる方法でもよい。
かくして得られた繊維構造体は、クッション性、難燃性、耐久性および軽量性に優れる。
その際、クッション性としては、25%圧縮応力が400N以下(好ましくは100〜400N)であることが好ましい。25%圧縮応力が400Nよりも大きいとソフト性が不十分となるおそれがある。ただし、本発明でいう25%圧縮応力は、直径100mmの真円状の加圧板を使用し、JIS K6401により測定するものとする。
また、難燃性としては、JIS K6400−6:2004(ISO3582:2000)の燃焼試験において、燃焼長125mm以下、かつ消火時間が90秒以下、かつドリップを起こさないことが好ましい。
その際、クッション性としては、25%圧縮応力が400N以下(好ましくは100〜400N)であることが好ましい。25%圧縮応力が400Nよりも大きいとソフト性が不十分となるおそれがある。ただし、本発明でいう25%圧縮応力は、直径100mmの真円状の加圧板を使用し、JIS K6401により測定するものとする。
また、難燃性としては、JIS K6400−6:2004(ISO3582:2000)の燃焼試験において、燃焼長125mm以下、かつ消火時間が90秒以下、かつドリップを起こさないことが好ましい。
次に、本発明の鉄道車両用座席シートは、前記の繊維構造体を用いてなる鉄道車両用座席シートである。かかる鉄道車両用座席シートは、前記の繊維構造体を用いているので、クッション性、難燃性、耐久性および軽量性に優れる。なお、鉄道車両には、新幹線、高速鉄道、列車、電車などが含まれる。
また、本発明の自動車用座席シートは、前記の繊維構造体を用いてなる自動車用座席シートである。かかる自動車用座席シートは、前記の繊維構造体を用いているので、クッション性、難燃性、耐久性および軽量性に優れる。
なお、前記繊維構造体は、航空機、船、その他各種輸送機などの車輛シート(椅子)用クッション材などとしても好適に使用される。もちろん、家具やオフィスの椅子用、ソファ用、寝具用などとして用いてもよい。
また、本発明の自動車用座席シートは、前記の繊維構造体を用いてなる自動車用座席シートである。かかる自動車用座席シートは、前記の繊維構造体を用いているので、クッション性、難燃性、耐久性および軽量性に優れる。
なお、前記繊維構造体は、航空機、船、その他各種輸送機などの車輛シート(椅子)用クッション材などとしても好適に使用される。もちろん、家具やオフィスの椅子用、ソファ用、寝具用などとして用いてもよい。
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)融点
Du Pont社製 熱示差分析計990型を使用し、昇温20℃/分で測定し、融解ピークをもとめた。融解温度が明確に観測されない場合には、微量融点測定装置(柳本製作所製)を用い、ポリマーが軟化して流動を始めた温度(軟化点)を融点とする。なお、n数5でその平均値を求めた。
Du Pont社製 熱示差分析計990型を使用し、昇温20℃/分で測定し、融解ピークをもとめた。融解温度が明確に観測されない場合には、微量融点測定装置(柳本製作所製)を用い、ポリマーが軟化して流動を始めた温度(軟化点)を融点とする。なお、n数5でその平均値を求めた。
(2)捲縮数、捲縮率
JIS L 1015に記載の方法により測定した。なお、n数5でその平均値を求めた。
JIS L 1015に記載の方法により測定した。なお、n数5でその平均値を求めた。
(3)繊維構造体の密度
JIS K−6401に記載の方法により測定した。なお、3次元形状の繊維クッションの硬さは凹凸を避けるような台座を使用し測定、また、密度に使用する目付は中央の200×200mmを裁断して測定した。
JIS K−6401に記載の方法により測定した。なお、3次元形状の繊維クッションの硬さは凹凸を避けるような台座を使用し測定、また、密度に使用する目付は中央の200×200mmを裁断して測定した。
(4)圧縮残留歪(耐久性)
JIS K6401に記載の方法に準拠し、圧縮板250×300mmを使用、荷重1000Nの荷重で10万回繰返し圧縮し、24時間後に再び厚さを測定した。そして、下記式により圧縮残留歪(%)を算出した。
圧縮残留歪(%)=(t0−t1)/t0×100
ここで、t0は初めの試験片の厚み(mm)であり、t1は試験後の試験片の厚み(mm)である。
JIS K6401に記載の方法に準拠し、圧縮板250×300mmを使用、荷重1000Nの荷重で10万回繰返し圧縮し、24時間後に再び厚さを測定した。そして、下記式により圧縮残留歪(%)を算出した。
圧縮残留歪(%)=(t0−t1)/t0×100
ここで、t0は初めの試験片の厚み(mm)であり、t1は試験後の試験片の厚み(mm)である。
(5)25%硬さ(N)
直径100mmの真円状の加圧板を使用し、JIS K6401により測定した。
直径100mmの真円状の加圧板を使用し、JIS K6401により測定した。
(6)燃焼性
JIS K6400−6の方法で燃焼長、燃焼時間、ドリップ数を測定した。
JIS K6400−6の方法で燃焼長、燃焼時間、ドリップ数を測定した。
(7)収縮率
JIS K6400−6と同様のサンプル片(長辺150mm、短辺50mm)を切り出し、長辺を測長した。このサンプル片を350℃の電気炉でサンプルを10秒間熱処理した後、長辺を測長した。そして、下記式により収縮率(%)を算出した。
収縮率(%)=(l0−l1)/l0×100
ここで、l0は熱処理前の試験片の長辺の長さ(mm)であり、l1は熱処理後の試験片の長辺の長さ(mm)である。
JIS K6400−6と同様のサンプル片(長辺150mm、短辺50mm)を切り出し、長辺を測長した。このサンプル片を350℃の電気炉でサンプルを10秒間熱処理した後、長辺を測長した。そして、下記式により収縮率(%)を算出した。
収縮率(%)=(l0−l1)/l0×100
ここで、l0は熱処理前の試験片の長辺の長さ(mm)であり、l1は熱処理後の試験片の長辺の長さ(mm)である。
[実施例1]
テレフタル酸とイソフタル酸とを80/20(モル%)で混合した酸成分とブチレングリコールとを重合し、得られたポリブチレン系テレフタレート38重量%を更にポリテトラメチレングリコール(分子量2000)62重量%と加熱反応させ、ブロック共重合ポリエーテルポリエステルエラストマーを得た。この熱可塑性エラストマーの融点は155℃であった。この熱可塑性エラストマーを鞘(シース)に、ポリエチレンテレフタレート(融点256℃)を芯(コア)に、表1に示すような鞘/芯の重量比になるように紡糸して偏心シース・コア型複合繊維を得た。得られた複合繊維を2.0倍に延伸したのち、80℃で乾燥し捲縮を発現させたのち、油剤とポリリン酸カルバメート水分散体を付与し、51mmに切断することにより、熱接着性複合短繊維を得た。該熱接着性複合短繊維において、単糸繊度は6.6dtex、捲縮数は13個/2.54cm、捲縮率は30%であった。熱接着性複合短繊維の表面に存在するリン分重量比率(繊維重量対比)は蛍光X線(リガク製システム3270)にて測定した。評価結果を表1に示す。
テレフタル酸とイソフタル酸とを80/20(モル%)で混合した酸成分とブチレングリコールとを重合し、得られたポリブチレン系テレフタレート38重量%を更にポリテトラメチレングリコール(分子量2000)62重量%と加熱反応させ、ブロック共重合ポリエーテルポリエステルエラストマーを得た。この熱可塑性エラストマーの融点は155℃であった。この熱可塑性エラストマーを鞘(シース)に、ポリエチレンテレフタレート(融点256℃)を芯(コア)に、表1に示すような鞘/芯の重量比になるように紡糸して偏心シース・コア型複合繊維を得た。得られた複合繊維を2.0倍に延伸したのち、80℃で乾燥し捲縮を発現させたのち、油剤とポリリン酸カルバメート水分散体を付与し、51mmに切断することにより、熱接着性複合短繊維を得た。該熱接着性複合短繊維において、単糸繊度は6.6dtex、捲縮数は13個/2.54cm、捲縮率は30%であった。熱接着性複合短繊維の表面に存在するリン分重量比率(繊維重量対比)は蛍光X線(リガク製システム3270)にて測定した。評価結果を表1に示す。
次いで、該熱接着性複合短繊維と、捲縮短繊維として常法にて得られたポリエチレンテレフタレート短繊維(単糸繊度15dtex、繊維長64mm、捲縮数9個/2.54cm、捲縮率34%、断面形状は丸中空、融点256℃)とを(前者/後者)30/70の割合で混綿し、通常のカード機でウエブを作製し、通常のクロスレイヤ機を使用し繊維を厚みに対して水平方向に重ね合わせたウエブをさらにオーブンにて熱風190℃×20分間熱処理を行い、繊維構造体(厚さ40mm、密度50kg/m3)を得た。
得られた繊維構造体はクッション性、難燃性、耐久性および軽量性に優れたものであった。かかる繊維構造体の耐久性と25%硬さと燃焼性、収縮率を表1に示す。
次いで、かかる繊維構造体を用いて鉄道車両用座席シートおよび自動車用座席シートを得た。
得られた繊維構造体はクッション性、難燃性、耐久性および軽量性に優れたものであった。かかる繊維構造体の耐久性と25%硬さと燃焼性、収縮率を表1に示す。
次いで、かかる繊維構造体を用いて鉄道車両用座席シートおよび自動車用座席シートを得た。
[実施例2、3、比較例1、2]
実施例1において、熱接着性複合短繊維の鞘/芯の重量比および熱接着性複合短繊維の表面に存在するリン分重量比率(繊維重量対比)を表1に記載の通り変更すること以外は実施例1と同様にした。得られた繊維構造体の耐久性と25%硬さと燃焼性、収縮率を表1に示す。
実施例1において、熱接着性複合短繊維の鞘/芯の重量比および熱接着性複合短繊維の表面に存在するリン分重量比率(繊維重量対比)を表1に記載の通り変更すること以外は実施例1と同様にした。得られた繊維構造体の耐久性と25%硬さと燃焼性、収縮率を表1に示す。
本発明によれば、クッション性、難燃性、耐久性および軽量性に優れた、繊維構造体および鉄道車両用座席シートおよび自動車用座席シートが得られ、その工業的価値は極めて大である。
Claims (8)
- 捲縮短繊維と、該捲縮短繊維を構成するポリマーよりも25℃以上低い融点を有するポリマーが、熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維とが重量比率で90/10〜10/90となるように混綿されたウエブを積層して得られた、前記熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または前記熱接着性複合短繊維と前記捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなる繊維構造体であって、
温度350℃中で10秒間乾熱処理したときの収縮率が15%以上であることを特徴とする繊維構造体。 - JIS K6400−6:2004(ISO3582:2000)の燃焼試験において、燃焼長125mm以下、かつ消火時間が90秒以下、かつドリップを起こさない、請求項1に記載の繊維構造体。
- 前記熱接着性複合短繊維において、熱融着成分の重量割合が繊維重量対比20〜50重量%の範囲内である、請求項1または請求項2に記載の繊維構造体。
- 前記熱接着性複合短繊維に、有機リン系難燃剤が繊維重量に対するリン濃度0.05〜2.0重量%で付与されている、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造体。
- 繊維構造体の密度が30〜55kg/m3の範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維構造体。
- 繊維構造体の厚さが3〜90mmの範囲内である、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維構造体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の繊維構造体を用いてなる、鉄道車両用座席シート。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の繊維構造体を用いてなる、自動車用座席シート。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013135151A JP2015010293A (ja) | 2013-06-27 | 2013-06-27 | 繊維構造体および鉄道車両用座席シートおよび自動車用座席シート |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018171549A (ja) * | 2017-03-31 | 2018-11-08 | 帝人フロンティア株式会社 | 水処理ろ材 |
CN109023721A (zh) * | 2018-10-23 | 2018-12-18 | 昆山吉美川纤维科技有限公司 | 一种密度梯度纤维垫的制备方法及纤维垫 |
CN110337509A (zh) * | 2017-03-03 | 2019-10-15 | 帝人富瑞特株式会社 | 纤维结构体及其制备方法 |
-
2013
- 2013-06-27 JP JP2013135151A patent/JP2015010293A/ja active Pending
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