JP2014224215A - インクジェット用ブラックインク、インクジェットインクセット、インクジェット捺染方法およびそれにより製造された捺染物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】捺染用分散染料インクに用いるインクジェット用ブラックインクであって、グリコールエーテルを含有する水溶性有機溶剤と、アセトンに溶解した溶液の紫外可視分光吸収において、640nm以上680nm未満の波長域に極大吸収波長を有する第1分散染料、590nm以上640nm未満の波長域に極大吸収波長を有する第2分散染料、さらに590nm未満の波長域に極大吸収波長を有する第1分散染料および第2分散染料とは異なる第3分散染料および第4分散染料を含有する分散染料と、を有するインクジェット用ブラックインク。
【選択図】なし
Description
1.捺染用分散染料インクに用いるインクジェット用ブラックインクであって、グリコールエーテルを含有する水溶性有機溶剤と、アセトンに溶解した溶液の紫外可視分光吸収において、640nm以上680nm未満の波長域に極大吸収波長を有する第1分散染料、590nm以上640nm未満の波長域に極大吸収波長を有する第2分散染料、さらに590nm未満の波長域に極大吸収波長を有する第1分散染料および第2分散染料とは異なる第3分散染料および第4分散染料を含有する分散染料と、を有するインクジェット用ブラックインク。
2.グリコールエーテルが、ジエチレングリコールのアルキルエーテル、トリエチレングリコールのアルキルエーテル、またはジプロピレングリコールのアルキルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種であり、グリコールエーテルの総量が、インクの全質量に対して1質量%以上10質量%未満であり、水溶性有機溶剤の総量が、インクの全質量に対して20質量%以上70質量%未満である上記1記載のインクジェット用ブラックインク。
3.第3分散染料が、アセトンに溶解した溶液の紫外可視分光吸収において、500nm以上550nm未満の波長域に極大吸収波長を有する上記1または2に記載のインクジェット用ブラックインク。
4.第4分散染料が、アセトンに溶解した溶液の紫外可視分光吸収において410nm以上450nm未満の波長域に極大吸収波長を有する上記1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット用ブラックインク。
5.インクジェットインクが、分散染料の分散剤として櫛型ポリマーをさらに含む上記1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット用ブラックインク。
6.第1分散染料がDB−60、第2分散染料がDB−165である上記1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用ブラックインク。
7.第4分散染料がDY−114である上記1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用ブラックインク。
8.第1分散染料がDB−60、第2分散染料がDB−165、第3分散染料がDR343、第4分散染料がDY114である上記1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用ブラックインク。
9.上記1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット用ブラックインクと、イエロー、マゼンダおよびシアンの少なくとも3色とからなるインクジェットインクセット。
10.上記1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット用ブラックインク又は請求項9記載のインクジェットインクセットを用いるインクジェット捺染方法。
11.インクジェット捺染方法における布帛が、ポリエステル繊維、アセテート繊維、ポリアミド繊維またはこれらの紡績繊維である上記10記載のインクジェット捺染方法。
12.上記11記載のインクジェット捺染方法で得られる捺染物。
実施形態に係るインクジェット用ブラックインクは、捺染用分散染料インクセットに用いるインクジェット用ブラックインクであって、グリコールエーテルを含有する水溶性有機溶剤と、分散染料と、を有する。分散染料は、アセトンに溶解した溶液の紫外可視分光吸収において、)640nm以上680nm未満の波長域に極大吸収波長を有する第1分散染料と、590nm以上640nm未満の波長域に極大吸収波長を有する第2分散染料と、さらに590nm未満の波長域に極大吸収波長を有する上記第1分散染料および上記第2分散2染料とは異なる、第3分散染料および第4分散染料とを含有することが好ましい。また、本発明に係るインクジェット用ブラックインクは、イエロー、マゼンダおよびシアンの少なくとも3色のインクと組み合わせ、インクジェットインクセットとすることがより好ましい。
蛍光灯のような長波長側の光が少ない光源の下でもブラックに色味がつかないようにするためには、染料の組合わせとして長波長側にも吸収を持たせることが好ましい。この課題を達成するためには、分散染料としてアセトンに溶解した溶液の紫外可視分光吸収において590nm以上630nm未満の波長域に極大吸収波長を有する染料と、650nm以上680nm未満の波長域に極大波長を有する染料の少なくとも2つの染料を有することが好ましいことを知見した。
さらにブラックの色相とするためには、上記2つの分散染料による吸収以外の波長域についてもなるべく均等な分光吸収を持つことが好ましいところ、分散染料を1種追加するだけでは、分光吸収が均等とはいえず不十分であり、最低でも極大吸収波長が異なる2種以上の分散染料があることが好ましいことを知見した。即ち、極大吸収波長が異なる分散染料を2種以上組み合わせることで、短波長側から長波長側までのすべての領域において分光吸収の強度の分布が少なくなり、ブラックの色相を有した演色性の影響が少ないインクを作ることができることを知見した。
一般に複数種の分散染料を組み合わせたインクは、インクジェットにおいてインクの射出性、特に射出時の泡の巻き込みにより発生するキャビテーションによる射出欠やデキャップ性に劣る傾向がある。理由は定かではないが、以下のように考えられる。
単独の分散染料を分散させたインクであれば、その分散染料の性質によって粒子径の分布や分散粒子の形状、インクの乾燥による粒子同士の相互作用が決まり、それによる射出性への影響は一義的なものとなる。
しかし、複数の分散染料を混合する場合は、同じような平均粒子径を備える条件で分散しても、粒子径の分布や分散粒子の形状、乾燥時の粒子間の相互作用が分散染料ごとに異なる。また異粒子間の予期しがたい相互作用が働くことにより、射出条件も微妙に異なったものが混ざり合った状態となって射出安定性が低下する。このような射出安定性の低下は、分散染料種が多いほど、特に4種以上の分散染料が混ざり合ったインクで顕著になる。
以上より、上記の射出欠等のような現象が生じるものと考えられる。
これに対して、インクにグリコールエーテルを加えると、射出性が大幅に改善されることを知見した。理由は定かではないが、以下のように考えられる。
グリコールエーテルは表面エネルギーが低い溶媒であるため、これによって分散されている染料結晶の表面が良く濡らされる。そして、結晶表面近傍にある気泡が取れることで、染料結晶に対する分散剤の吸着が促進されまたは結晶とインク溶媒の親和性が高まる。その結果、分散染料のインク中での安定性がよくなることで、異粒子間の相互作用などが減少して射出安定性が高くなるものと考えられる。
これに対して、グリコールエーテルをインクに加えることで、インク乾燥時の分散物が凝集しにくくなり、デキャップが起こりにくくなることを知見した。
実施形態に係るインクにおける色材としては分散染料が用いられる。分散染料はスルホン酸,カルボキシ基などのイオン性の水溶性基をもたない非イオン性染料で、水への溶解度が小さいため微粉状とし、通常分散剤によって水に分散して合成繊維の染色に用いることが好ましい。顔料と異なり、アセトンやジメチルホルムアミドなどの有機溶媒に可溶であるからである。また、合成繊維中に分子状で拡散して着色することができるからである。
分散染料は、その極大吸収波長から、ブルー染料またはシアン染料、レッド染料またはマゼンタ染料、イエロー染料またはオレンジ染料等に分類される。ブラックの色調を得るためには、これら染料から4種以上の染料を混合して使用することが好ましい。極大吸収波長が異なる分散染料を4種以上組み合わせることで、短波長側から長波長側までのすべての領域において分光吸収の強度の分布が少なくなり、ブラックの色相を有した演色性の影響が少ないインクを作ることができるからである。
好ましいブルー染料またはシアン染料としては、例えば、C.I.Disperse Blue(以下「DB」ともいう)―3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333等が挙げられる。
C.I.Disperse Violet―1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77等が挙げられる。
C.I.Disperse Orange―1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142等が挙げられる。
実施形態に係るインクは、グリコールエーテルを含有する水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。グリコールエーテルとしては、ジエチレングリコールのアルキルエーテル、トリエチレングリコールのアルキルエーテル、またはジプロピレングリコールのアルキルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
グリコールエーテルの総量がインクの全質量に対して1質量%以上10質量%未満であり、水溶性有機溶剤の総量がインクの全質量に対して20質量%以上70質量%未満であることが好ましい。グリコールエーテルの総量が1質量%以上であれは射出安定性に対する効果が期待できるが、多すぎるとインクの保存安定性が損なわれる場合があるからである。また、水溶性有機溶剤の総量は、インクの粘度などの液物性を整えたり、界面活性剤を溶解させるために20質量%以上あることが好ましいが、総量が70質量%以上であるとインクの乾燥性が悪くなり、印字後の布帛が乾燥せず、熱処理(発色)前の印字物を重ねたり、巻き取ることが困難になるからである。
実施形態に係るインクは、その表面張力を制御するため、界面活性剤や分散剤を添加することができる。この界面活性剤はインクとの相溶性のよいものが好ましく、分散染料を凝集させない安定なものが好ましい。界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性の何れも用いることが出来る。
使用する分散染料の構造により、分散中に、発泡したり、ゲル化したり、流動性が悪くなる事が有るので、分散剤や湿潤剤は、湿潤能力や微粒子化能力や分散安定性の他、分散時の発泡、分散液のゲル化、分散液の流動性等を考慮して選定する必要がある。また、分散剤や湿潤剤は、布帛への染色性、染着率、均染性、移染性、色の冴え、堅牢度などに及ぼす影響や、高温で発色させる際には分散剤や湿潤剤のタール化により染色が不均一になること等も考慮して選定されることが好ましい。上記の要求を全て満たす分散剤は無いので、分散する染料に合わせて、最適な分散剤を選定して、必要に応じて、消泡剤等を添加することが好ましい。
実施形態に係るインクは水溶性有機溶剤としてグリコールエーテルを含有するが、様々ある分散剤の中でも櫛形ポリマーの分散剤はグリコールエーテルを含む溶媒中での分散安定性が高く、インクの保存安定性が良くなるからである。
櫛型ポリマーとしては、例えば、ビックケミー社のDISPERBYK−190、DISPERBYK−194N、DISPERBYK−2010、DISPERBYK−2015やBYK−154等や、BASF社のJoncrylシリーズの例えばPDX−6102B、PDX−6124、JDX−6639やJDX−6500等が挙げられる。
インクの長期保存安定性を保つため、防腐剤、防黴剤をインク中に添加してもかまわない。防腐剤、防黴剤としては、芳香族ハロゲン化合物(例えばPreventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えばプロキセルGXL)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、実施形態に係るインクは、その諸特性を改善するために、pH調整剤、染料溶解助剤、消泡剤、また、導電率調整剤、濃染剤、均染剤、浸透剤などを含むことができる。
pH調整剤、染料溶解助剤、酸化防止剤、消泡剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類およびそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、4級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、シリコーンエマルジョン、シリコーンコンパウンドなどが挙げられる。
実施形態に係るインクは、水不溶性の染料の場合は染料、分散剤、湿潤剤、媒体および任意の添加剤を混合し分散機を用いることによって分散することができる。分散機としては従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等が使用できる。分散染料の粒径としては平均粒径として300nm以下、最大粒径として900nm以下が好ましい。平均粒径、最大粒径が大きいと、微細なノズルより出射するインクジェット捺染方法において、目詰まりが発生しやすくなり、安定出射できなくなるためである。平均粒子径は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機により求めることができる。具体的粒径測定装置としては、例えばマルバーン社製ゼーターサイザー1000等を挙げることができる。
後述のインクジェット捺染方法において使用される布帛を構成する繊維素材としては、分散染料で染色可能な繊維を含有するものであれば、特に制限はないが、ポリエステル繊維を主体とする布帛が好ましい。ポリエステル繊維を主体とする繊維を織物、編物、不織物等いずれの形態にしたものでもよい。布帛としてはポリエステル繊維が100%であることが好ましいが、トリアセテート100%やレーヨン、絹、ポリウレタン、アセテート、トリアセテート、アクリル、ナイロン及び羊毛等との混紡織物又は混紡不織物等も使用することができる。後述のインクジェット捺染方法における布帛としては、ポリエステル繊維、アセテート繊維、ポリアミド繊維またはこれらの紡績繊維であることが好ましい。
実施形態の別の態様として、上述のインクジェット用ブラックインクを用いる、インクジェット捺染方法が提供される。インクジェット捺染方法は、(イ)布帛に前処理剤を付与する前処理工程と、(ロ)前処理された布帛上にインクを付与し布帛上に画像を形成するプリント工程と、(ハ)布帛上に形成された画像を熱処理する熱処理(発色)工程と、(ニ)未定着の染料を布帛上から除去する洗浄工程と、(ホ)布帛を乾燥させる乾燥工程と、を有する。以下工程毎に説明する。
インクが布帛上で滲むことを防止して、鮮明な画像を得るために、予め布帛に前処理剤で処理する。前処理の方法としては、特に制限されることなく、従来公知の方法から布帛の材質やインクに適した方法を適宜選択することができる。具体的には、例えば、前処理剤として水溶性高分子類、水溶性金属塩、ポリカチオン化合物、界面活性剤、撥水剤等の中から少なくとも1つの物質を選択し、前処理剤の含有量が布帛全質量に対して0.2質量%〜50質量%となるように、パッド法、コーティング法、スプレー法などで布帛に前処理剤を付与させる方法が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系のものが使用され、代表的には、アニオン系の界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、ナフタレン誘導体のスルホン酸塩等;カチオン系の界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等;両性界面活性剤としては、イミダゾリン誘導体等;ノニオン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物等;が挙げられる。
撥水剤としては、例えば、シリコン、フッ素系及びワックス系のものが挙げられる。
これらの、あらかじめ布帛に付与される水溶性高分子や界面活性剤は、インクジェットプリントをし、高温で発色させる際に、タール化などによるよごれの原因とならないために、高温環境に対して安定であることが好ましい。また、これらの、あらかじめ布帛に付与される水溶性高分子や界面活性剤は、インクジェットプリントをし、高温で発色させた後の洗浄処理で布帛から取り除きやすいものが好ましい。
上述の実施形態に係るインクを用いてインクジェット記録方式により布帛上に画像を形成する。インクジェット記録方式を用いたプリンタであれば特に制限されることなく、従来公知のインクジェットプリンタを用いてプリントすることができる。例えばピエゾ式インクジェットプリンタを用いることができる。また実施形態に係るインクは、高速プリントにも適しているため、例えばワンパス式のインクジェットプリンターを用いることができる。
布帛に十分に吸着・固着されていないインク中の染料を、布帛に吸着・固着させるために熱処理を行う。この工程により、インク本来の色相を発現させることができる。具体的な方法としては、蒸気によるスチーミング、乾熱によるベーキング、サーモゾル、過熱蒸気によるHTスチーマー、加圧蒸気によるHPスチーマーなどが利用される。それらはプリントする素材、インクなどにより適宜選択される。また、印字された布帛は直ちに加熱処理しても、しばらくおいてから加熱処理しても用途に合わせて乾燥・発色処理すればよく、いずれの方法を用いてもよい。
未定着の染料を布帛上から除去することにより、色の安定性や堅牢度の低下を防止するために洗浄を行う。この工程は上述の熱処理後に行うことが好ましい。また、未定着の染料の除去と併せて、布帛に施した前処理剤を除去することが好ましい。前処理剤をそのままにしておくと堅牢性の低下ばかりでなく布帛が変色するからである。そのため除去対象物や目的に応じた洗浄を行うことが好ましい。洗浄方法としては、プリントする素材やインクにより適宜、選択される。例えば布帛がポリエステルの場合、一般的には、苛性ソーダ、界面活性剤、ハイドロサルファイトの混合液により洗浄処理される。その際、オープンソーパーなどの連続型や液流染色機などによるバッチ型のいずれの洗浄方法を用いてもよい。
洗浄後の布帛を乾燥させる。例えば洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したりまたは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させることができる。
実施形態の別の態様として、上述のインクジェット捺染方法で得られる捺染物が提供される。実施形態に係る捺染物は、演色性の影響による色味の変化が少ない。
(染料分散液A−1の作製)
分散剤としてDISPERBYK−190(ビックケミー社製 くし型ブロックポリマー分散剤 固形分40%)15部をイオン交換水60部に加え、ここへジプロピレングリコールプロピルエーテル5部を混合した。この溶液にC.I.Disperse Blue−165を20部添加し、プレミックスした後、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、染料固形分20%の分散液A−1を得た。
得られた染料分散液の分散粒子のz−平均粒子径を動的光散乱法粒度分布計ゼータサイザーナノS(マルバーン社製)にて測定したところ、0.18μmであった。
なお、分散染料のC.I.Disperse Blue−165をアセトンに0.0005%となるように溶解して得られた溶液について、紫外可視分光吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長は611nmであった。
染料分散液A−1において、分散剤をバニレックスRN(日本製紙(株)製 リグニンスルホン酸ナトリウム)に、ジプロピレングリコールプロピルエーテルをエチレングリコールに変更した以外は同様にして、染料分散液A−2を得た。この染料分散液の分散粒子のz−平均粒子径は0.19μmであった。
染料分散液A−1において、分散染料、分散剤、および溶剤を表1のように変更して、染料分散液A−3〜4、B−1〜4、C−1〜4を得た。これら染料分散液の分散粒子のz−平均粒子径は、いずれも0.2μm未満であった。また、各分散染料のアセトン溶液の極大吸収波長も表1に示す。なお、表中の溶剤の略称の意味は以下の通りである。
DPnP:ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル
EG:エチレングリコール
染料分散液A−1を5%、A−3を15%、B−1を12%、C−1を9%を混合し、ここへイオン交換水、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコール、グリセリン、およびプロキセルGXL(防黴剤 ゼネカ製)の混合液を、それぞれインクとして表2の組成となるように加えて撹拌した後、1μmのフィルターによりろ過してブラックインクK−1を得た。このインク中に含まれる分散粒子のz−平均粒子径は0.17μmであった。
ブラックインクK−1において、染料分散液、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコール、グリセリンの量を表2のように変更して、ブラックインクK−2〜ブラックインクK―9を作成した。
これらインク中に含まれる分散粒子のz−平均粒子径は、いずれも0.2μm未満であった。なお、表中の溶剤の略称の意味は以下の通りである。
DPnP:ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル
EG:エチレングリコール
TEGME:トリエチレングリコールモノメチルエーテル
DEGBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
(画像の形成)
上記調製した各インクを用いてインクジェットプリンタNassenger−V(コニカミノルタ株式会社製)にて、540dpi×720dpiで、100%Dutyの印字率で、前処理を施したポリエステル繊維に15cm×15cmの矩形を印字した。
前処理をしたポリエステル繊維としては、糸の太さ50dのポリエステル繊維に、カルボキシメチルセルロース水溶液に浸し、絞り、乾燥したものを使用した。印字後、布帛を170℃10分間のHTスチーム処理をした後、水洗、0.2%ハイドロサルファイト水溶液で80℃にて還元洗浄を行い、さらにその後十分に水洗、乾燥した。
こうして得られた画像サンプルについて、下記の評価を行った。
室内蛍光灯(昼光色)と屋外太陽光下における、画像サンプルのブラックの色味の違いを下記基準で目視にて評価した。
◎:蛍光灯と太陽光でブラックの色味に全く差がない。
○:蛍光灯と太陽光で、若干色味に差があるが、ほとんど気にならない。
×:蛍光灯と太陽光で色味が異なり、太陽光の下ではブラックが赤っぽく見える。
屋外太陽光下における、画像サンプルのブラックの色彩について、下記基準で目視にて評価した。
◎:色に色相が感じられず、純粋にブラックの色である。
○:若干ブラック以外の色が感じられるが、ほとんど気にならない。
×:赤みがかたり、青みがかたりするなど、ブラックに他の色味が加わって見える。
25℃、相対湿度25%の条件で100%Dutyの画像を連続10回プリントし、10回目の画像を観察した。
◎:画像欠陥はみられない。
○:画像欠陥(インク射出不良によるかすかなスジ)がわずかに見られる。
×:インク射出不良による画像欠陥がかなり見られる。
インクを50℃にて1カ月間保存した後、インク中に含まれる分散粒子のz−平均粒子径について、保存前後で比較をした。
◎:保存前後でz−平均粒子径はほとんど変わらない。
○:保存後のz−平均粒子径が保存前と比べて1.5倍未満である。
×:保存後のz−平均粒子径が保存前と比べて1.5倍以上である。
評価結果を表3に示す。なお、表中において、評価結果に×が1つでもあるインクは実用上問題がある。
Claims (12)
- 捺染用分散染料インクに用いるインクジェット用ブラックインクであって、
グリコールエーテルを含有する水溶性有機溶剤と、
アセトンに溶解した溶液の紫外可視分光吸収において、640nm以上680nm未満の波長域に極大吸収波長を有する第1分散染料、590nm以上640nm未満の波長域に極大吸収波長を有する第2分散染料、さらに590nm未満の波長域に極大吸収波長を有する前記第1分散染料および前記第2分散染料とは異なる第3分散染料および第4分散染料を含有する分散染料と、
を有することを特長とするインクジェット用ブラックインク。 - 前記グリコールエーテルが、ジエチレングリコールのアルキルエーテル、トリエチレングリコールのアルキルエーテル、またはジプロピレングリコールのアルキルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記グリコールエーテルの総量が、前記インクの全質量に対して1質量%以上10質量%未満であり、
前記水溶性有機溶剤の総量が、前記インクの全質量に対して20質量%以上70質量%未満であることを特長とする請求項1記載のインクジェット用ブラックインク。 - 前記第3分散染料が、アセトンに溶解した溶液の紫外可視分光吸収において、500nm以上550nm未満の波長域に極大吸収波長を有することを特長とする請求項1または2に記載のインクジェット用ブラックインク。
- 前記第4分散染料が、アセトンに溶解した溶液の紫外可視分光吸収において410nm以上450nm未満の波長域に極大吸収波長を有することを特長とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット用ブラックインク。
- 前記インクジェットインクが、前記分散染料の分散剤として櫛型ポリマーをさらに含むことを特長とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット用ブラックインク。
- 前記第1分散染料がDB−60、前記第2分散染料がDB−165であることを特長とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用ブラックインク。
- 前記第4分散染料がDY−114であることを特長とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用ブラックインク。
- 前記第1分散染料がDB−60、前記第2分散染料がDB−165、前記第3分散染料がDR343、前記第4分散染料がDY114であることを特長とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用ブラックインク。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット用ブラックインクと、イエロー、マゼンダおよびシアンの少なくとも3色とからなるインクジェットインクセット。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット用ブラックインク又は請求項9記載のインクジェットインクセットを用いることを特長とするインクジェット捺染方法。
- 前記インクジェット捺染方法における布帛が、ポリエステル繊維、アセテート繊維、ポリアミド繊維またはこれらの紡績繊維であることを特長とする請求項10記載のインクジェット捺染方法。
- 請求項11記載のインクジェット捺染方法で得られることを特長とする捺染物。
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