JP2004292468A - インクジェット用インク及びその製造方法及びそれを用いるインクジェット記録方法とインクジェット捺染方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、インクの長期保存性が良好で、かつ被印字媒体の材質の違いによる色調再現性に優れた複数の分散染料を有するインクジェット用インク及び及びその製造方法及びそれを用いるインクジェット記録方法とインクジェット捺染方法を提供することにある。
【解決手段】少なくとも複数の分散染料及び分散剤を含有するインクジェット用インクの製造方法において、該複数の分散染料を同一の分散剤を用いて、各々個別に分散した後、該各染料の分散液を混合して製造することを特徴とするインクジェット用インクの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくとも複数の分散染料及び分散剤を含有するインクジェット用インクの製造方法において、該複数の分散染料を同一の分散剤を用いて、各々個別に分散した後、該各染料の分散液を混合して製造することを特徴とするインクジェット用インクの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規のインクジェット用インク及び及びその製造方法及びそれを用いるインクジェット記録方法とインクジェット捺染方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット方式による画像の印刷方法は、インクの微小液滴をインクジェット記録ヘッドより飛翔させ、対象となる記録媒体に付着させて印刷を行う方法である。インクジェット方式は、その機構が比較的簡便で、安価であり、かつ高精細で高品位な画像を形成できることが利点である。
【0003】
このインクジェット方式の利点を生かして、布帛への画像印字、いわゆるインクジェット捺染についても開発が進められている。インクジェット捺染は、従来の捺染方式とは異なり、以下の様な利点を有している。
【0004】
1.高価な彫刻ロールやスクリーン型が不要になり、型製作に要する時間が不要
2.CADシステムと連動させることができるので、デザインの保管が容易
3.図柄に制限が無く、自由に再現できる
4.図柄や配色の変更が容易で、ユーザーの要望に即座に対応可能
5.従来の染色で使用されていて、実績のある染料を使用できる
6.受注後、直ちに印捺作業に取りかかれるため、短期間での生産が可能
等の利点がある。
【0005】
また、インクジェット方式により布帛に図柄を形成するとき、色の濃度を出すため、あるいは滲みを防止する目的で、印字前に布帛を撥水剤や捺染糊等による前処理を行い、布帛表面にインクを止める方法が用いられる。しかしながら、この前処理は、インクジェット印字工程とは別の工程が必要となり、処理時間の延長、あるいは新たな工程を設けることによるコスト増の要因となっている。
【0006】
インクジェット捺染方式においては、例えば、ポリエステル等の合成繊維の染色に対して、一般に分散染料が用いられているが、インクジェット捺染用のインクとしてこの分散染料を用いる場合には、従来の捺染用の染料の重要な選択基準である色調、耐光性等の性能の他に、100nm程度の微細な染料粒子とするための分散適性、記録ヘッドにおけるノズル目詰まり耐性、インク溶剤中での保存安定性等の特性も要求されるため、それらに用いることのできる染料として制限を受けることととなる。
【0007】
このため、単一の染料で要求性能を満たすものがない場合、複数の染料を混合して使用することが行われる。例えば、インクジェット用インクとして、特定のイエロー、マゼンタ、シアンの染料群から選ばれた分散染料を用い、染料を別々に分散し、混合したインクジェット用インクが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。これらの特定の構造を有する染料を選択することにより、画像堅牢性、発色性、分散安定性、吐出安定性に関しては、確かに改良されるものの、複数の染料を含有するインクジェット用インクの場合、その特性の違いにより、問題を生じる場合もある。例えば、複数の分散染料を混合した後、分散した場合には、混合された各染料の分散性の違いにより、染料種毎に平均粒径、粒径分布の違いが生じ、インクを長期間保存した際に、分散安定性に劣る特定の染料が沈降する等の問題があった。また、特許文献1に記載の構成からなるインクジェット用インクでは、捺染用のインクとして使用した際には、複数の染料の分散剤が同一でないために、布などに印字した際、繊維との相互作用が染料によって異なり、印字媒体によって色調が異なるという問題を生じることがわかった。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−239980号公報 (特許請求の範囲)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、インクの長期保存性が良好で、かつ被印字媒体の材質の違いによる色調再現性に優れた複数の分散染料を有するインクジェット用インク及び及びその製造方法及びそれを用いるインクジェット記録方法とインクジェット捺染方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.少なくとも複数の分散染料及び分散剤を含有するインクジェット用インクの製造方法において、該複数の分散染料を同一の分散剤を用いて、各々個別に分散した後、該各染料の分散液を混合して製造することを特徴とするインクジェット用インクの製造方法。
【0012】
2.前記複数の分散染料が、3種以上であることを特徴とする前記1項に記載のインクジェット用インクの製造方法。
【0013】
3.前記1または2項に記載のインクジェット用インクの製造方法により製造されたことを特徴とするインクジェット用インク。
【0014】
4.複数の分散染料及び分散剤を含有するインクジェット用インクにおいて、該複数の分散染料が1−メチル−2−フェニル−3−(2,6−ジクロロ−4−ニトロフェニルアゾ)インドール、C.I.Disperse Violet 57及びC.I.Disperse Blue 60であって、該複数の分散染料を同一の分散剤を用いて、各々個別に分散した後、該各染料の分散液を混合して調製することを特徴とするインクジェット用インク。
【0015】
5.前記同一の分散剤が、リグニンスルホン酸塩であることを特徴とする前記3または4項に記載のインクジェット用インク。
【0016】
6.少なくとも水、水溶性有機溶剤、複数の分散染料及び分散剤を含有し、該水溶性有機溶剤の少なくとも1種が、エチレングリコールであることを特徴とする前記3〜5項のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0017】
7.前記3〜6項のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
【0018】
8.前記3〜6項のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを用いて、布帛を捺染することを特徴とするインクジェット捺染方法。
【0019】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を行った結果、少なくとも複数の分散染料及び分散剤を含有し、該複数の分散染料を同一の分散剤を用いて、各々個別に分散した後、該各染料の分散液を混合して製造したインクジェット用インク、あるいは上記構成において、該複数の分散染料が1−メチル−2−フェニル−3−(2,6−ジクロロ−4−ニトロフェニルアゾ)インドール、C.I.Disperse Violet 57及びC.I.Disperse Blue 60であるインクジェット用インクにより、インクの長期保存性が良好で、かつ被印字媒体の材質の違いによる色調再現性に優れた複数の分散染料を有するインクジェット用インクを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0020】
更に、上記構成に加えて、複数の分散染料が3種以上であること、同一の分散剤が、リグニンスルホン酸塩であること、なくとも水、水溶性有機溶剤、複数の分散染料及び分散剤を含有し、該水溶性有機溶剤の少なくとも1種が、エチレングリコールであるインクジェット用インクにより、上記効果がより一層発揮されることを見出したものである。
【0021】
以下、本発明の詳細について説明する。
はじめに、本発明のインクジェット用インクについて説明する。
【0022】
本発明のインクジェット記録用インク(以下、単にインクともいう)は、少なくとも複数の分散染料及び分散剤を含有し、該複数の分散染料を同一の分散剤を用いて、各々個別に分散した後、該各染料の分散液を混合することが特徴である。
【0023】
本発明のインクにおいて、複数の分散染料とは、同一の色調である分散染料の組み合わせであっても、あるいは異なる色調の分散染料の組み合わせであってもよいが、本発明では、後者の異なる色調からなる分散染料を複数種組み合わせることが、本発明の目的効果をいかんなく発揮させることができ好ましい。
【0024】
複数の色相の異なる分散染料の組み合わせとしては、例えば、イエロー分散染料とマゼンタ分散染料とから構成されるレッドインク、イエロー分散染料とシアン分散染料とから構成されるグリーンインク、マゼンタ分散染料とシアン分散染料とから構成されるブルーインク、イエロー分散染料、マゼンタ分散染料及びシアン分散染料とから構成されるブラックインク、イエロー分散染料とブルー分散染料とから構成されるブラックインク、マゼンタ分散染料とグリーン分散染料とから構成されるブラックインク、シアン分散染料とレッド分散染料とから構成されるブラックインク等を挙げることができるが、本発明においてはこの組み合わせに限定されるものではない。
【0025】
本発明に用いることのできる分散染料を以下に列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
〔C.I.Disperse Yellow〕
3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232
〔C.I.Disperse Orange〕
1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142
〔C.I.Disperse Red〕
1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328
〔C.I.Disperse Violet〕
1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77
〔C.I.Disperse Green〕
9
〔C.I.Disperse Brown〕
1、2、4、9、13、19
〔C.I.Disperse Blue〕
3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、710、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333
〔C.I.Disperse Black〕
1、3、10、24
等を挙げることができる。
【0027】
本発明のインクにおいては、複数の分散染料をそれぞれ個別に分散して、各染料分散液を調製するが、その際に用いる分散剤の種類が各分散液間で同一であることが特徴である。
【0028】
本発明に係る分散剤としては、例えば、クレオソート油スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物(例えば、花王社製のデモールC)、クレゾールスルホン酸ナトリウムと2−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、フェノールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、β−ナフトールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、β−ナフタリンスルホン酸ナトリウム(例えば、花王社製のデモールN)とβ−ナフトールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸塩(例えば、日本製紙製のバニレックスRN)等が挙げられるが、本発明のインクにおいては、特に、リグニンスルホン酸塩(例えば、日本製紙製のバニレックスRN)等を用いることが、高い分散度と安定性が得られる観点から好ましい。
【0029】
分散剤の使用量は、分散染料に対して、20〜200質量%が好ましい。分散剤が少ないと、微粒子化や分散安定性が劣り、分散剤が多いと、微粒子化や分散安定性が劣り、粘度が高くなり好ましくない。これらの分散剤は単独で使用してもよいが、併用しても良い。
【0030】
また、本発明に係る分散染料の分散の際に、湿潤剤を併せて用いることが好ましく、好ましい湿潤剤とは、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、2−エチルへキシルスルホ琥珀酸ソーダ、アルキルナフタレンスルホン酸ソーダ、フェノールの酸化エチレン付加物、アセチレンジオールの酸化エチレン付加物等である。
【0031】
使用する分散染料の構造により、分散中に、発泡したり、ゲル化したり、流動性が悪くなることが有るので、分散剤や湿潤剤は、湿潤能力や微粒子化能力や分散安定性の他、分散時の発泡、分散液のゲル化、分散液の流動性等を考慮して選定する必要がある。ただし、上記の要求を全て満たす分散剤は無いので、分散する染料に合わせて、最適な分散剤を選定して、必要に応じて、消泡剤等を添加する必要がある。
【0032】
本発明に用いられる分散染料は、分散剤を用いて、公知の方法に従って分散することができ、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を用いることができる。
【0033】
本発明のインクにおいては、インクに含まれる分散染料粒子の体積平均粒径が、各々40〜200nmであることが好ましい。上記の体積平均粒径の範囲に調整することにより、分散染料の粒子が大きくなることによる分散染料粒子が沈降する現象を一段と抑えることができ、インクの保存安定性を一層向上させることができる。分散染料の平均粒径の測定は、レーザードップラー法を用いた市販の粒径測定機器、により求めることができる。
【0034】
次いで、本発明に係る水溶性有機溶剤について説明する。
本発明で用いることのできる水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。好ましい水溶性有機溶剤としては、多価アルコール類が挙げられる。さらに、多価アルコールと多価アルコールエーテルを併用することが、特に好ましい。
【0035】
また、本発明のインクにおいては、水溶性有機溶剤の少なくとも1種がエチレングリコールであることが好ましく、この構成により布帛へのインク浸透が深くなると共に、乾燥が早くなり、極めて好ましい黒色を実現することができる。
【0036】
水溶性有機溶剤は、単独もしくは複数を併用しても良い。水溶性有機溶剤のインク中の添加量としては、総量で5〜60質量%であり、好ましくは10〜35質量%である。
【0037】
本発明のインクにおいては、上記説明した主要構成要素の他に、各種添加剤を用いることができる。
【0038】
添加剤としては、公知の無機塩、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、ヒドロトロープ剤、分散剤、均染剤、濃染剤等を必要に応じて添加することができる。
【0039】
インクの粘度や染料を安定に保つため発色をよくするために、インク中に無機塩を添加することもできる。無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫化マグネシウム等が挙げられる。本発明を実施する場合、これらに限定されるものではない。
【0040】
界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれも用いることができる。
【0041】
陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0042】
陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0043】
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0044】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、花王社製のエマルゲン911)、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、三洋化成工業社製のニューポールPE−62)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
これらの界面活性剤を使用する場合、単独又は2種類以上を混合して用いることができ、インク全量に対して、0.001〜1.0質量%の範囲で添加することにより、インクの表面張力を任意に調整することができ好ましい。
【0046】
インクの長期保存安定性を保つため、防腐剤、防黴剤をインク中に添加してもかまわない。防腐剤・防黴剤としては、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、アビシア社製のPROXEL GXL)などが挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
次いで、本発明で用いることのできるインクジェット捺染方法の詳細について説明する。
【0048】
本発明のインクジェット捺染方法において使用する布帛を構成する素材としては、分散染料で染色可能な繊維を含有するものであれば、特に制限はないが、中でも、ポリエステル、アセテート、トリアセテート等の繊維を含有するものが好ましい。その中でも、少なくともポリエステル繊維が含有されている布帛が特に好ましい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。又、本発明で使用し得る布帛としては、分散染料で染色可能な繊維が100%であることが好適であるが、レーヨン、綿、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、羊毛及び絹等との混紡織布又は混紡不織布等も捺染用布帛として使用することができる。又、上記の様な布帛を構成する糸の太さとしては、10〜100dの範囲が好ましい。
【0049】
本発明のインクジェット捺染方法においては、均一な染色物を得るために、水溶性高分子類を布帛に前処理する前に、布帛繊維に付着した天然不純物(油脂、ロウ、ペクチン質、天然色素等)、布帛製造過程で用いた薬剤の残留分(のり剤等)、よごれなどを洗浄しておくことが望ましい。洗浄に用いられる洗浄剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムといったアルカリ、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤といった界面活性剤、酵素等が用いられる。
【0050】
本発明のインクジェット捺染方法の場合、インクを布帛上でにじませずに鮮明な画像を得ることが重要な技術である。にじみ防止の技術としては、水溶性高分子類を布帛に前処理するなどの公知の方法から繊維素材やインクに適した方法を適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0051】
本発明のインクでは、水溶性金属塩、ポリカチオン化合物、水溶性高分子、界面活性剤及び撥水剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物が、0.2〜50質量%付与された布帛に対して使用すれば、高度な滲み防止が可能であり、高精細な画像を布帛にプリントすることができ好ましい。
【0052】
水溶性金属塩としては、KCl、CaCl2などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の無機塩、有機酸塩などを用いることができる。ポリカチオンとしては、各種の4級アンモニウム塩のポリマまたはオリゴマー、ポリアミン塩などを用いることができる。
【0053】
水溶性高分子のひとつである天然水溶性高分子としては、トウモロコシ、小麦等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、アラビアゴムなどの多糖類、ゼラチン、カゼイン、ケラチン等の蛋白質物質、合成水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸系ポリマなどを用いることができる。界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系のものが使用され、代表的には、アニオン系の界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、ナフタレン誘導体のスルホン酸塩等;カチオン系の界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等;両性界面活性剤としては、イミダゾリン誘導体等;ノニオン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物等;が挙げられる。又、撥水剤としては、例えば、シリコン、フッ素系及びワックス系のものが挙げられる。
【0054】
本発明のインクジェット捺染方法においては、滲み防止効果のため、前記の前処理剤を、インク、素材、布帛構造に対応して適宜選択し、布帛中に0.2〜50質量%含有するように、パッド法、コーティング法、スプレー法などで付与せしめるのが好ましい。本発明のインクジェット捺染方法では、上記した分散染料で染色することが可能な繊維が含有されている布帛上に、先に述べた構成のインクを用いてインクジェット記録方法で画像を形成した後(インク付与工程)、インクが付与されている布帛を熱処理し(熱処理工程)、更に熱処理された布帛を洗浄すること(洗浄工程)によって布帛への捺染が完了し、捺染物が得られる本発明の捺染方法において、分散染料を繊維に定着させるには、インクが付与されている布帛を熱処理する方法等により行うが、特に、熱処理に、高温蒸熱法であるHTスチーミング法を用いた場合や、サーモゾル法等を用いた場合に、染料が繊維に良好に染着して本発明の顕著な効果が得られる。また、本発明のインクジェット捺染方法において、未定着の染料を布帛上から除去する方法に関しては、従来公知の洗浄方法を用いることが出来るが、特に還元洗浄を行うことが好ましい。
【0055】
布帛に印字を行うインクジェット捺染方法は、インク出射後印字された布帛を巻き取り、加熱により発色し、布帛を洗浄、乾燥させることが望ましい。本発明に係るインクジェット捺染において、インクを布帛に印字し、ただ放置しておくだけではうまく染着しない。また、長尺の布帛に長時間印字し続ける場合などは、布帛が延々と出てくるため床などに、印字した布帛が重なっていき場所をとるため、印字後、巻き取る操作が必要となる。この操作時に布帛と布帛の間に紙や布、ビニール等の印字に関わらない媒体を挟んでもかまわない。ただし、途中で切断する場合や短い布帛に対しては必ずしも巻き取る必要はない。
【0056】
印字された布帛は直ちに加熱処理しても、しばらくおいてから加熱処理しても用途に合わせて乾燥・発色処理すればよい。加熱処理法としては、オーブン、ヒートロール、スチーム等、用途にあった方法を選択すればよい。
【0057】
加熱処理後は、洗浄が必要である。なぜなら染着に関与しなかった染料が残留することで、色の安定性が悪くなり堅牢度が低下するからである。また、布帛に施した前処理物を除去することも必要である。そのままにしておくと堅牢性の低下ばかりでなく布帛が変色する。そのため除去対象物や目的に応じた洗浄が必須である。
【0058】
洗浄後は、乾燥が必要である。洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したりあるいは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させる。
【0059】
この一連の作用により、インクジェット捺染用インクとしての特徴が生かされ、美しい図柄が印字された布帛が出来上がる。
【0060】
分散染料を用いた染色の際は、高温で発色させる方法だけではなく、キャリヤーを用いてもよい。キャリヤーとして用いられる化合物は、染色促進が大きい、使用法が簡便、安定、人体や環境に対して負荷が少ない、繊維からの除去が簡単、染色堅牢度に影響しないといった特徴を持つものが好ましい。キャリヤーの例としてはo−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、メチルナフタリン、安息香酸アルキル、サリチル酸アルキル、クロロベンゼン、ジフェニルといったフェノール類、エーテル類、有機酸類、炭化水素類などを挙げることができる。これらは、ポリエステルのように100℃前後の温度での染色が難しい難染性繊維の膨潤と可塑化を促進し、分散染料を繊維内に入りやすくする。キャリヤーは、インクジェットプリントに使用する布帛の繊維にあらかじめ吸着させておいてもよいし、インクジェットインク中に含まれていてもよい。
【0061】
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録ヘッドとしては、特に制限はなく、サーマル型、ピエゾ型のいずれも用いることができる。
【0062】
本発明に用いられるインクジェット記録ヘッドのノズル径としては、形成される画像の鮮鋭性の観点から100μm以下が好ましく、また不溶物によるノズル目詰まり耐性の観点から10μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上、50μm以下である。
【0063】
本発明のインクジェット記録方法において、インク飛翔時の液滴体積としては、ヘッド近傍の気流の影響を受けにくくする観点から5pl以上が好ましく、また印字画像の粒状性の観点から150pl以下であることが好ましく、より好ましくは5〜80plである。
【0064】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0065】
《インクの調製》
〔ブラックインクK1の調製〕
(分散液1の調製)
1−メチル−2−フェニル−3−(2,6−ジクロロ−4−ニトロフェニルア
ゾ)インドール 30質量%
リグニンスルホン酸Na(日本製紙製バニレックスRN) 20質量%
エチレングリコール 20質量%
プロキセルGXL(ゼネカ製 防かび剤) 1質量%
イオン交換水 29質量%
上記の混合液をサンドグラインダーを用いて分散して、分散液1を得た。
【0066】
(分散液2の調製)
C.I.Disperse Violet 57 30質量%
リグニンスルホン酸Na(日本製紙製バニレックスRN) 20質量%
エチレングリコール 20質量%
プロキセルGXL(ゼネカ製 防かび剤) 1質量%
イオン交換水 29質量%
上記の混合液をサンドグラインダーを用いて分散して、分散液2を得た。
【0067】
(分散液3の調製)
C.I.Disperse Blue 60 30質量%
リグニンスルホン酸Na(日本製紙製バニレックスRN) 20質量%
エチレングリコール 20質量%
プロキセルGXL(ゼネカ製 防かび剤) 1質量%
イオン交換水 29質量%
上記の混合液をサンドグラインダーを用いて分散して、分散液3を得た。
【0068】
(ブラックインクの調製)
分散液1 7質量%
分散液2 7質量%
分散液3 7質量%
エチレングリコール(EG) 20質量%
ジエチレングリコール(DEG) 10質量%
グリセリン(Gly) 4質量%
イオン交換水 45質量%
上記組成物を十分撹拌、混合した後、金属メッシュフィルターを用いたろ過により粗大粒子を除いて、ブラックインクK1を調製した。
【0069】
〔ブラックインクK2の調製〕
(分散液4の調製)
C.I.Disperse Yellow 149 30質量%
リグニンスルホン酸Na(日本製紙製バニレックスRN) 20質量%
エチレングリコール 20質量%
プロキセルGXL(ゼネカ製 防かび剤) 1質量%
イオン交換水 29質量%
上記の混合液をサンドグラインダーを用いて分散して、分散液4を得た。
【0070】
(分散液5の調製)
C.I.Disperse Red 302 30質量%
リグニンスルホン酸Na(日本製紙製バニレックスRN) 20質量%
エチレングリコール 20質量%
プロキセルGXL(ゼネカ製 防かび剤) 1質量%
イオン交換水 29質量%
上記の混合液をサンドグラインダーを用いて分散して、分散液5を得た。
【0071】
(ブラックインクの調製)
分散液4 7質量%
分散液5 7質量%
分散液3 7質量%
エチレングリコール(EG) 20質量%
ジエチレングリコール(DEG) 10質量%
グリセリン(Gly) 4質量%
イオン交換水 45質量%
上記組成物を十分撹拌、混合した後、金属メッシュフィルターを用いたろ過により粗大粒子を除いて、ブラックインクK2を調製した。
【0072】
〔ブラックインクK3の調製〕
上記ブラックインクK1の調製において、分散液1〜3の調製に用いたエチレングリコールをジエチレングリコールに変更すると共に、ブラックインクの調製条件を下記のように変更した以外は同様にして、ブラックインクK3を調製した。
【0073】
(ブラックインクの調製)
分散液1 7質量%
分散液2 7質量%
分散液3 7質量%
ジエチレングリコール 20質量%
グリセリン 14質量%
イオン交換水 45質量%
〔ブラックインクK4の調製〕
上記ブラックインクK1の調製において、分散液1、分散液2及び分散液3の調製に用いた分散剤(リグニンスルホン酸Na)に代えて、同量のクレオソート油スルホン酸Naのホルマリン縮合物(花王製 デモールC)を分散剤として用いた分散液6、分散液7及び分散液8を調製し、分散液1、分散液2及び分散液3に代えて分散液6、分散液7及び分散液8を用いた以外は同様にして、ブラックインクK4を調製した。
【0074】
〔ブラックインクK5の調製〕
上記ブラックインクK1の調製において、分散液1及び分散液3に代えて、分散液6及び分散液8を用いた以外は同様にして、ブラックインクK5を調製した。
【0075】
〔ブラックインクK6の調製〕
上記ブラックインクK1の調製において、分散液2に代えて、分散液7を用いた以外は同様にして、ブラックインクK6を調製した。
【0076】
〔ブラックインクK7の調製〕
上記ブラックインクK2の調製において、分散液4及び分散液5の調製に用いた分散剤(リグニンスルホン酸Na)に代えて、同量のクレオソート油スルホン酸Naのホルマリン縮合物(花王製 デモールC)を分散剤として用いた分散液9及び分散液10を調製し、分散液4及び分散液5に代えて分散液9及び分散液10を用いた以外は同様にして、ブラックインクK7を調製した。
【0077】
〔レッドインクR1の調製〕
上記ブラックインクK2の調製に用いた分散液4及び分散液5を用いて、下記の調製条件によりレッドインクR1を調製した。
【0078】
分散液4 10質量%
分散液5 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
グリセリン 5質量%
イオン交換水 45質量%
〔レッドインクR2の調製〕
上記レッドインクR1の調製において、分散液4に代えて、上記分散液9を用いた以外は同様にして、レッドインクR2を調製した。
【0079】
〔グリーンインクG1の調製〕
上記ブラックインクK2の調製に用いた分散液3及び分散液4を用いて、下記の調製条件によりグリーンインクG1を調製した。
【0080】
分散液3 10質量%
分散液4 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
グリセリン 5質量%
イオン交換水 45質量%
〔グリーンインクG2の調製〕
上記グリーンインクG1の調製において、分散液4に代えて、上記分散液9を用いた以外は同様にして、グリーンインクG2を調製した。
【0081】
〔ブルーインクB1の調製〕
上記ブラックインクK2の調製に用いた分散液3及び分散液5を用いて、下記の調製条件によりブルーインクB1を調製した。
【0082】
分散液3 10質量%
分散液5 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
グリセリン 5質量%
イオン交換水 45質量%
〔ブルーインクB2の調製〕
上記ブルーインクB1の調製において、分散液5に代えて、上記分散液10を用いた以外は同様にして、ブルーインクB2を調製した。
【0083】
《プリント画像の形成及び評価》
(画像印字)
上記調製した各色インクを、ノズル孔径40μm、駆動周波数20kHz、インク滴70pl、ノズル数64、ノズル密度60dpi(dpiは2.54cmあたりのドット数を示す)であるピエゾ型ヘッドを搭載し、最大記録密度360×360dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタにセットして連続印字を行った。
【0084】
なお、印字は、各単色ベタ画像を出力した。この際使用した布帛は、ポリエステル繊維100%とトリアセテート繊維100%との2種類を準備し、各々に前処理剤(高分子カチオン化合物とグアーガム)に浸し、絞り、乾燥したものを使用した。印字後、布帛を180℃10分間熱処理を行い、水洗、乾燥した。
【0085】
(インク保存性1の評価)
上記調製した各色インクを、ガラス瓶に入れて密栓した後、60℃の恒温槽中で、10日間保存した後、インク中での沈殿物の有無を目視観察し、下記の基準に則り、インク保存性1の評価を行った。
【0086】
○:保存後でも、インク液中での沈殿が全く認められない
△:保存後に、インク中に僅かに沈殿物が認められるが、実用上許容範囲である
×:保存後のインク中に、明らかな凝集物あるいは沈殿物が認められ、吐出時にノズルの目詰まりを起こす恐れがある
(インク保存性2の評価)
インク保存性1で調製した保存後のインクと、未処理のインクとを、上記の方法で、ポリエステル繊維上に印字してベタ画像を形成し、熱処理を行った後の各画像の色度を測定し、保存後のインク画像と未処理のインク画像との色差ΔE1を求め、下記の基準に則りインク保存性2の評価を行った。
【0087】
○:色差ΔE1が1未満
△:色差ΔE1が1以上、3未満である
×:色差ΔE1が3以上
なお、色差ΔE1は、Lab空間における色差公式ΔE=√〔(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2〕により求め、各Lab値はX−rite938 Spectrodensitometer(X−Rite社製)を用いて、測定条件としてD50光源、2°視野にて測定した。
【0088】
(被記録媒体違いの色差の評価)
上記方法に従って、ポリエステル繊維とトリアセテート繊維に印字した各ベタ画像間の色差ΔE2を、上記のΔE1の測定方法と同様にして求め、下記の基準に則り被記録媒体違いによる色差の評価を行った。
【0089】
○:色差ΔE2が1未満
△:色差ΔE2が1以上、3未満である
×:色差ΔE2が3以上
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1より明らかな様に、複数の分散染料を同一の分散剤を用いて、各々個別に分散した後、該各染料の分散液を混合して調製した本発明のインクは、比較例に対し、インク保存性(分散安定性及び色調再現性)が良好で、素材の異なる布帛に印字しても安定した色調が再現されることが分かる。
【0092】
【発明の効果】
本発明により、インクの長期保存性が良好で、かつ被印字媒体の材質の違いによる色調再現性に優れた複数の分散染料を有するインクジェット用インク及び及びその製造方法及びそれを用いるインクジェット記録方法とインクジェット捺染方法を提供することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規のインクジェット用インク及び及びその製造方法及びそれを用いるインクジェット記録方法とインクジェット捺染方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット方式による画像の印刷方法は、インクの微小液滴をインクジェット記録ヘッドより飛翔させ、対象となる記録媒体に付着させて印刷を行う方法である。インクジェット方式は、その機構が比較的簡便で、安価であり、かつ高精細で高品位な画像を形成できることが利点である。
【0003】
このインクジェット方式の利点を生かして、布帛への画像印字、いわゆるインクジェット捺染についても開発が進められている。インクジェット捺染は、従来の捺染方式とは異なり、以下の様な利点を有している。
【0004】
1.高価な彫刻ロールやスクリーン型が不要になり、型製作に要する時間が不要
2.CADシステムと連動させることができるので、デザインの保管が容易
3.図柄に制限が無く、自由に再現できる
4.図柄や配色の変更が容易で、ユーザーの要望に即座に対応可能
5.従来の染色で使用されていて、実績のある染料を使用できる
6.受注後、直ちに印捺作業に取りかかれるため、短期間での生産が可能
等の利点がある。
【0005】
また、インクジェット方式により布帛に図柄を形成するとき、色の濃度を出すため、あるいは滲みを防止する目的で、印字前に布帛を撥水剤や捺染糊等による前処理を行い、布帛表面にインクを止める方法が用いられる。しかしながら、この前処理は、インクジェット印字工程とは別の工程が必要となり、処理時間の延長、あるいは新たな工程を設けることによるコスト増の要因となっている。
【0006】
インクジェット捺染方式においては、例えば、ポリエステル等の合成繊維の染色に対して、一般に分散染料が用いられているが、インクジェット捺染用のインクとしてこの分散染料を用いる場合には、従来の捺染用の染料の重要な選択基準である色調、耐光性等の性能の他に、100nm程度の微細な染料粒子とするための分散適性、記録ヘッドにおけるノズル目詰まり耐性、インク溶剤中での保存安定性等の特性も要求されるため、それらに用いることのできる染料として制限を受けることととなる。
【0007】
このため、単一の染料で要求性能を満たすものがない場合、複数の染料を混合して使用することが行われる。例えば、インクジェット用インクとして、特定のイエロー、マゼンタ、シアンの染料群から選ばれた分散染料を用い、染料を別々に分散し、混合したインクジェット用インクが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。これらの特定の構造を有する染料を選択することにより、画像堅牢性、発色性、分散安定性、吐出安定性に関しては、確かに改良されるものの、複数の染料を含有するインクジェット用インクの場合、その特性の違いにより、問題を生じる場合もある。例えば、複数の分散染料を混合した後、分散した場合には、混合された各染料の分散性の違いにより、染料種毎に平均粒径、粒径分布の違いが生じ、インクを長期間保存した際に、分散安定性に劣る特定の染料が沈降する等の問題があった。また、特許文献1に記載の構成からなるインクジェット用インクでは、捺染用のインクとして使用した際には、複数の染料の分散剤が同一でないために、布などに印字した際、繊維との相互作用が染料によって異なり、印字媒体によって色調が異なるという問題を生じることがわかった。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−239980号公報 (特許請求の範囲)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、インクの長期保存性が良好で、かつ被印字媒体の材質の違いによる色調再現性に優れた複数の分散染料を有するインクジェット用インク及び及びその製造方法及びそれを用いるインクジェット記録方法とインクジェット捺染方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.少なくとも複数の分散染料及び分散剤を含有するインクジェット用インクの製造方法において、該複数の分散染料を同一の分散剤を用いて、各々個別に分散した後、該各染料の分散液を混合して製造することを特徴とするインクジェット用インクの製造方法。
【0012】
2.前記複数の分散染料が、3種以上であることを特徴とする前記1項に記載のインクジェット用インクの製造方法。
【0013】
3.前記1または2項に記載のインクジェット用インクの製造方法により製造されたことを特徴とするインクジェット用インク。
【0014】
4.複数の分散染料及び分散剤を含有するインクジェット用インクにおいて、該複数の分散染料が1−メチル−2−フェニル−3−(2,6−ジクロロ−4−ニトロフェニルアゾ)インドール、C.I.Disperse Violet 57及びC.I.Disperse Blue 60であって、該複数の分散染料を同一の分散剤を用いて、各々個別に分散した後、該各染料の分散液を混合して調製することを特徴とするインクジェット用インク。
【0015】
5.前記同一の分散剤が、リグニンスルホン酸塩であることを特徴とする前記3または4項に記載のインクジェット用インク。
【0016】
6.少なくとも水、水溶性有機溶剤、複数の分散染料及び分散剤を含有し、該水溶性有機溶剤の少なくとも1種が、エチレングリコールであることを特徴とする前記3〜5項のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【0017】
7.前記3〜6項のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
【0018】
8.前記3〜6項のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを用いて、布帛を捺染することを特徴とするインクジェット捺染方法。
【0019】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を行った結果、少なくとも複数の分散染料及び分散剤を含有し、該複数の分散染料を同一の分散剤を用いて、各々個別に分散した後、該各染料の分散液を混合して製造したインクジェット用インク、あるいは上記構成において、該複数の分散染料が1−メチル−2−フェニル−3−(2,6−ジクロロ−4−ニトロフェニルアゾ)インドール、C.I.Disperse Violet 57及びC.I.Disperse Blue 60であるインクジェット用インクにより、インクの長期保存性が良好で、かつ被印字媒体の材質の違いによる色調再現性に優れた複数の分散染料を有するインクジェット用インクを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0020】
更に、上記構成に加えて、複数の分散染料が3種以上であること、同一の分散剤が、リグニンスルホン酸塩であること、なくとも水、水溶性有機溶剤、複数の分散染料及び分散剤を含有し、該水溶性有機溶剤の少なくとも1種が、エチレングリコールであるインクジェット用インクにより、上記効果がより一層発揮されることを見出したものである。
【0021】
以下、本発明の詳細について説明する。
はじめに、本発明のインクジェット用インクについて説明する。
【0022】
本発明のインクジェット記録用インク(以下、単にインクともいう)は、少なくとも複数の分散染料及び分散剤を含有し、該複数の分散染料を同一の分散剤を用いて、各々個別に分散した後、該各染料の分散液を混合することが特徴である。
【0023】
本発明のインクにおいて、複数の分散染料とは、同一の色調である分散染料の組み合わせであっても、あるいは異なる色調の分散染料の組み合わせであってもよいが、本発明では、後者の異なる色調からなる分散染料を複数種組み合わせることが、本発明の目的効果をいかんなく発揮させることができ好ましい。
【0024】
複数の色相の異なる分散染料の組み合わせとしては、例えば、イエロー分散染料とマゼンタ分散染料とから構成されるレッドインク、イエロー分散染料とシアン分散染料とから構成されるグリーンインク、マゼンタ分散染料とシアン分散染料とから構成されるブルーインク、イエロー分散染料、マゼンタ分散染料及びシアン分散染料とから構成されるブラックインク、イエロー分散染料とブルー分散染料とから構成されるブラックインク、マゼンタ分散染料とグリーン分散染料とから構成されるブラックインク、シアン分散染料とレッド分散染料とから構成されるブラックインク等を挙げることができるが、本発明においてはこの組み合わせに限定されるものではない。
【0025】
本発明に用いることのできる分散染料を以下に列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
〔C.I.Disperse Yellow〕
3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232
〔C.I.Disperse Orange〕
1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142
〔C.I.Disperse Red〕
1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328
〔C.I.Disperse Violet〕
1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77
〔C.I.Disperse Green〕
9
〔C.I.Disperse Brown〕
1、2、4、9、13、19
〔C.I.Disperse Blue〕
3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、710、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333
〔C.I.Disperse Black〕
1、3、10、24
等を挙げることができる。
【0027】
本発明のインクにおいては、複数の分散染料をそれぞれ個別に分散して、各染料分散液を調製するが、その際に用いる分散剤の種類が各分散液間で同一であることが特徴である。
【0028】
本発明に係る分散剤としては、例えば、クレオソート油スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物(例えば、花王社製のデモールC)、クレゾールスルホン酸ナトリウムと2−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、フェノールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、β−ナフトールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、β−ナフタリンスルホン酸ナトリウム(例えば、花王社製のデモールN)とβ−ナフトールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸塩(例えば、日本製紙製のバニレックスRN)等が挙げられるが、本発明のインクにおいては、特に、リグニンスルホン酸塩(例えば、日本製紙製のバニレックスRN)等を用いることが、高い分散度と安定性が得られる観点から好ましい。
【0029】
分散剤の使用量は、分散染料に対して、20〜200質量%が好ましい。分散剤が少ないと、微粒子化や分散安定性が劣り、分散剤が多いと、微粒子化や分散安定性が劣り、粘度が高くなり好ましくない。これらの分散剤は単独で使用してもよいが、併用しても良い。
【0030】
また、本発明に係る分散染料の分散の際に、湿潤剤を併せて用いることが好ましく、好ましい湿潤剤とは、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、2−エチルへキシルスルホ琥珀酸ソーダ、アルキルナフタレンスルホン酸ソーダ、フェノールの酸化エチレン付加物、アセチレンジオールの酸化エチレン付加物等である。
【0031】
使用する分散染料の構造により、分散中に、発泡したり、ゲル化したり、流動性が悪くなることが有るので、分散剤や湿潤剤は、湿潤能力や微粒子化能力や分散安定性の他、分散時の発泡、分散液のゲル化、分散液の流動性等を考慮して選定する必要がある。ただし、上記の要求を全て満たす分散剤は無いので、分散する染料に合わせて、最適な分散剤を選定して、必要に応じて、消泡剤等を添加する必要がある。
【0032】
本発明に用いられる分散染料は、分散剤を用いて、公知の方法に従って分散することができ、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を用いることができる。
【0033】
本発明のインクにおいては、インクに含まれる分散染料粒子の体積平均粒径が、各々40〜200nmであることが好ましい。上記の体積平均粒径の範囲に調整することにより、分散染料の粒子が大きくなることによる分散染料粒子が沈降する現象を一段と抑えることができ、インクの保存安定性を一層向上させることができる。分散染料の平均粒径の測定は、レーザードップラー法を用いた市販の粒径測定機器、により求めることができる。
【0034】
次いで、本発明に係る水溶性有機溶剤について説明する。
本発明で用いることのできる水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。好ましい水溶性有機溶剤としては、多価アルコール類が挙げられる。さらに、多価アルコールと多価アルコールエーテルを併用することが、特に好ましい。
【0035】
また、本発明のインクにおいては、水溶性有機溶剤の少なくとも1種がエチレングリコールであることが好ましく、この構成により布帛へのインク浸透が深くなると共に、乾燥が早くなり、極めて好ましい黒色を実現することができる。
【0036】
水溶性有機溶剤は、単独もしくは複数を併用しても良い。水溶性有機溶剤のインク中の添加量としては、総量で5〜60質量%であり、好ましくは10〜35質量%である。
【0037】
本発明のインクにおいては、上記説明した主要構成要素の他に、各種添加剤を用いることができる。
【0038】
添加剤としては、公知の無機塩、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、ヒドロトロープ剤、分散剤、均染剤、濃染剤等を必要に応じて添加することができる。
【0039】
インクの粘度や染料を安定に保つため発色をよくするために、インク中に無機塩を添加することもできる。無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫化マグネシウム等が挙げられる。本発明を実施する場合、これらに限定されるものではない。
【0040】
界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれも用いることができる。
【0041】
陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0042】
陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0043】
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0044】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、花王社製のエマルゲン911)、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、三洋化成工業社製のニューポールPE−62)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
これらの界面活性剤を使用する場合、単独又は2種類以上を混合して用いることができ、インク全量に対して、0.001〜1.0質量%の範囲で添加することにより、インクの表面張力を任意に調整することができ好ましい。
【0046】
インクの長期保存安定性を保つため、防腐剤、防黴剤をインク中に添加してもかまわない。防腐剤・防黴剤としては、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、アビシア社製のPROXEL GXL)などが挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
次いで、本発明で用いることのできるインクジェット捺染方法の詳細について説明する。
【0048】
本発明のインクジェット捺染方法において使用する布帛を構成する素材としては、分散染料で染色可能な繊維を含有するものであれば、特に制限はないが、中でも、ポリエステル、アセテート、トリアセテート等の繊維を含有するものが好ましい。その中でも、少なくともポリエステル繊維が含有されている布帛が特に好ましい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。又、本発明で使用し得る布帛としては、分散染料で染色可能な繊維が100%であることが好適であるが、レーヨン、綿、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、羊毛及び絹等との混紡織布又は混紡不織布等も捺染用布帛として使用することができる。又、上記の様な布帛を構成する糸の太さとしては、10〜100dの範囲が好ましい。
【0049】
本発明のインクジェット捺染方法においては、均一な染色物を得るために、水溶性高分子類を布帛に前処理する前に、布帛繊維に付着した天然不純物(油脂、ロウ、ペクチン質、天然色素等)、布帛製造過程で用いた薬剤の残留分(のり剤等)、よごれなどを洗浄しておくことが望ましい。洗浄に用いられる洗浄剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムといったアルカリ、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤といった界面活性剤、酵素等が用いられる。
【0050】
本発明のインクジェット捺染方法の場合、インクを布帛上でにじませずに鮮明な画像を得ることが重要な技術である。にじみ防止の技術としては、水溶性高分子類を布帛に前処理するなどの公知の方法から繊維素材やインクに適した方法を適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0051】
本発明のインクでは、水溶性金属塩、ポリカチオン化合物、水溶性高分子、界面活性剤及び撥水剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物が、0.2〜50質量%付与された布帛に対して使用すれば、高度な滲み防止が可能であり、高精細な画像を布帛にプリントすることができ好ましい。
【0052】
水溶性金属塩としては、KCl、CaCl2などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の無機塩、有機酸塩などを用いることができる。ポリカチオンとしては、各種の4級アンモニウム塩のポリマまたはオリゴマー、ポリアミン塩などを用いることができる。
【0053】
水溶性高分子のひとつである天然水溶性高分子としては、トウモロコシ、小麦等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、アラビアゴムなどの多糖類、ゼラチン、カゼイン、ケラチン等の蛋白質物質、合成水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸系ポリマなどを用いることができる。界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系のものが使用され、代表的には、アニオン系の界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、ナフタレン誘導体のスルホン酸塩等;カチオン系の界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等;両性界面活性剤としては、イミダゾリン誘導体等;ノニオン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物等;が挙げられる。又、撥水剤としては、例えば、シリコン、フッ素系及びワックス系のものが挙げられる。
【0054】
本発明のインクジェット捺染方法においては、滲み防止効果のため、前記の前処理剤を、インク、素材、布帛構造に対応して適宜選択し、布帛中に0.2〜50質量%含有するように、パッド法、コーティング法、スプレー法などで付与せしめるのが好ましい。本発明のインクジェット捺染方法では、上記した分散染料で染色することが可能な繊維が含有されている布帛上に、先に述べた構成のインクを用いてインクジェット記録方法で画像を形成した後(インク付与工程)、インクが付与されている布帛を熱処理し(熱処理工程)、更に熱処理された布帛を洗浄すること(洗浄工程)によって布帛への捺染が完了し、捺染物が得られる本発明の捺染方法において、分散染料を繊維に定着させるには、インクが付与されている布帛を熱処理する方法等により行うが、特に、熱処理に、高温蒸熱法であるHTスチーミング法を用いた場合や、サーモゾル法等を用いた場合に、染料が繊維に良好に染着して本発明の顕著な効果が得られる。また、本発明のインクジェット捺染方法において、未定着の染料を布帛上から除去する方法に関しては、従来公知の洗浄方法を用いることが出来るが、特に還元洗浄を行うことが好ましい。
【0055】
布帛に印字を行うインクジェット捺染方法は、インク出射後印字された布帛を巻き取り、加熱により発色し、布帛を洗浄、乾燥させることが望ましい。本発明に係るインクジェット捺染において、インクを布帛に印字し、ただ放置しておくだけではうまく染着しない。また、長尺の布帛に長時間印字し続ける場合などは、布帛が延々と出てくるため床などに、印字した布帛が重なっていき場所をとるため、印字後、巻き取る操作が必要となる。この操作時に布帛と布帛の間に紙や布、ビニール等の印字に関わらない媒体を挟んでもかまわない。ただし、途中で切断する場合や短い布帛に対しては必ずしも巻き取る必要はない。
【0056】
印字された布帛は直ちに加熱処理しても、しばらくおいてから加熱処理しても用途に合わせて乾燥・発色処理すればよい。加熱処理法としては、オーブン、ヒートロール、スチーム等、用途にあった方法を選択すればよい。
【0057】
加熱処理後は、洗浄が必要である。なぜなら染着に関与しなかった染料が残留することで、色の安定性が悪くなり堅牢度が低下するからである。また、布帛に施した前処理物を除去することも必要である。そのままにしておくと堅牢性の低下ばかりでなく布帛が変色する。そのため除去対象物や目的に応じた洗浄が必須である。
【0058】
洗浄後は、乾燥が必要である。洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したりあるいは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させる。
【0059】
この一連の作用により、インクジェット捺染用インクとしての特徴が生かされ、美しい図柄が印字された布帛が出来上がる。
【0060】
分散染料を用いた染色の際は、高温で発色させる方法だけではなく、キャリヤーを用いてもよい。キャリヤーとして用いられる化合物は、染色促進が大きい、使用法が簡便、安定、人体や環境に対して負荷が少ない、繊維からの除去が簡単、染色堅牢度に影響しないといった特徴を持つものが好ましい。キャリヤーの例としてはo−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、メチルナフタリン、安息香酸アルキル、サリチル酸アルキル、クロロベンゼン、ジフェニルといったフェノール類、エーテル類、有機酸類、炭化水素類などを挙げることができる。これらは、ポリエステルのように100℃前後の温度での染色が難しい難染性繊維の膨潤と可塑化を促進し、分散染料を繊維内に入りやすくする。キャリヤーは、インクジェットプリントに使用する布帛の繊維にあらかじめ吸着させておいてもよいし、インクジェットインク中に含まれていてもよい。
【0061】
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録ヘッドとしては、特に制限はなく、サーマル型、ピエゾ型のいずれも用いることができる。
【0062】
本発明に用いられるインクジェット記録ヘッドのノズル径としては、形成される画像の鮮鋭性の観点から100μm以下が好ましく、また不溶物によるノズル目詰まり耐性の観点から10μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上、50μm以下である。
【0063】
本発明のインクジェット記録方法において、インク飛翔時の液滴体積としては、ヘッド近傍の気流の影響を受けにくくする観点から5pl以上が好ましく、また印字画像の粒状性の観点から150pl以下であることが好ましく、より好ましくは5〜80plである。
【0064】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0065】
《インクの調製》
〔ブラックインクK1の調製〕
(分散液1の調製)
1−メチル−2−フェニル−3−(2,6−ジクロロ−4−ニトロフェニルア
ゾ)インドール 30質量%
リグニンスルホン酸Na(日本製紙製バニレックスRN) 20質量%
エチレングリコール 20質量%
プロキセルGXL(ゼネカ製 防かび剤) 1質量%
イオン交換水 29質量%
上記の混合液をサンドグラインダーを用いて分散して、分散液1を得た。
【0066】
(分散液2の調製)
C.I.Disperse Violet 57 30質量%
リグニンスルホン酸Na(日本製紙製バニレックスRN) 20質量%
エチレングリコール 20質量%
プロキセルGXL(ゼネカ製 防かび剤) 1質量%
イオン交換水 29質量%
上記の混合液をサンドグラインダーを用いて分散して、分散液2を得た。
【0067】
(分散液3の調製)
C.I.Disperse Blue 60 30質量%
リグニンスルホン酸Na(日本製紙製バニレックスRN) 20質量%
エチレングリコール 20質量%
プロキセルGXL(ゼネカ製 防かび剤) 1質量%
イオン交換水 29質量%
上記の混合液をサンドグラインダーを用いて分散して、分散液3を得た。
【0068】
(ブラックインクの調製)
分散液1 7質量%
分散液2 7質量%
分散液3 7質量%
エチレングリコール(EG) 20質量%
ジエチレングリコール(DEG) 10質量%
グリセリン(Gly) 4質量%
イオン交換水 45質量%
上記組成物を十分撹拌、混合した後、金属メッシュフィルターを用いたろ過により粗大粒子を除いて、ブラックインクK1を調製した。
【0069】
〔ブラックインクK2の調製〕
(分散液4の調製)
C.I.Disperse Yellow 149 30質量%
リグニンスルホン酸Na(日本製紙製バニレックスRN) 20質量%
エチレングリコール 20質量%
プロキセルGXL(ゼネカ製 防かび剤) 1質量%
イオン交換水 29質量%
上記の混合液をサンドグラインダーを用いて分散して、分散液4を得た。
【0070】
(分散液5の調製)
C.I.Disperse Red 302 30質量%
リグニンスルホン酸Na(日本製紙製バニレックスRN) 20質量%
エチレングリコール 20質量%
プロキセルGXL(ゼネカ製 防かび剤) 1質量%
イオン交換水 29質量%
上記の混合液をサンドグラインダーを用いて分散して、分散液5を得た。
【0071】
(ブラックインクの調製)
分散液4 7質量%
分散液5 7質量%
分散液3 7質量%
エチレングリコール(EG) 20質量%
ジエチレングリコール(DEG) 10質量%
グリセリン(Gly) 4質量%
イオン交換水 45質量%
上記組成物を十分撹拌、混合した後、金属メッシュフィルターを用いたろ過により粗大粒子を除いて、ブラックインクK2を調製した。
【0072】
〔ブラックインクK3の調製〕
上記ブラックインクK1の調製において、分散液1〜3の調製に用いたエチレングリコールをジエチレングリコールに変更すると共に、ブラックインクの調製条件を下記のように変更した以外は同様にして、ブラックインクK3を調製した。
【0073】
(ブラックインクの調製)
分散液1 7質量%
分散液2 7質量%
分散液3 7質量%
ジエチレングリコール 20質量%
グリセリン 14質量%
イオン交換水 45質量%
〔ブラックインクK4の調製〕
上記ブラックインクK1の調製において、分散液1、分散液2及び分散液3の調製に用いた分散剤(リグニンスルホン酸Na)に代えて、同量のクレオソート油スルホン酸Naのホルマリン縮合物(花王製 デモールC)を分散剤として用いた分散液6、分散液7及び分散液8を調製し、分散液1、分散液2及び分散液3に代えて分散液6、分散液7及び分散液8を用いた以外は同様にして、ブラックインクK4を調製した。
【0074】
〔ブラックインクK5の調製〕
上記ブラックインクK1の調製において、分散液1及び分散液3に代えて、分散液6及び分散液8を用いた以外は同様にして、ブラックインクK5を調製した。
【0075】
〔ブラックインクK6の調製〕
上記ブラックインクK1の調製において、分散液2に代えて、分散液7を用いた以外は同様にして、ブラックインクK6を調製した。
【0076】
〔ブラックインクK7の調製〕
上記ブラックインクK2の調製において、分散液4及び分散液5の調製に用いた分散剤(リグニンスルホン酸Na)に代えて、同量のクレオソート油スルホン酸Naのホルマリン縮合物(花王製 デモールC)を分散剤として用いた分散液9及び分散液10を調製し、分散液4及び分散液5に代えて分散液9及び分散液10を用いた以外は同様にして、ブラックインクK7を調製した。
【0077】
〔レッドインクR1の調製〕
上記ブラックインクK2の調製に用いた分散液4及び分散液5を用いて、下記の調製条件によりレッドインクR1を調製した。
【0078】
分散液4 10質量%
分散液5 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
グリセリン 5質量%
イオン交換水 45質量%
〔レッドインクR2の調製〕
上記レッドインクR1の調製において、分散液4に代えて、上記分散液9を用いた以外は同様にして、レッドインクR2を調製した。
【0079】
〔グリーンインクG1の調製〕
上記ブラックインクK2の調製に用いた分散液3及び分散液4を用いて、下記の調製条件によりグリーンインクG1を調製した。
【0080】
分散液3 10質量%
分散液4 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
グリセリン 5質量%
イオン交換水 45質量%
〔グリーンインクG2の調製〕
上記グリーンインクG1の調製において、分散液4に代えて、上記分散液9を用いた以外は同様にして、グリーンインクG2を調製した。
【0081】
〔ブルーインクB1の調製〕
上記ブラックインクK2の調製に用いた分散液3及び分散液5を用いて、下記の調製条件によりブルーインクB1を調製した。
【0082】
分散液3 10質量%
分散液5 10質量%
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
グリセリン 5質量%
イオン交換水 45質量%
〔ブルーインクB2の調製〕
上記ブルーインクB1の調製において、分散液5に代えて、上記分散液10を用いた以外は同様にして、ブルーインクB2を調製した。
【0083】
《プリント画像の形成及び評価》
(画像印字)
上記調製した各色インクを、ノズル孔径40μm、駆動周波数20kHz、インク滴70pl、ノズル数64、ノズル密度60dpi(dpiは2.54cmあたりのドット数を示す)であるピエゾ型ヘッドを搭載し、最大記録密度360×360dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタにセットして連続印字を行った。
【0084】
なお、印字は、各単色ベタ画像を出力した。この際使用した布帛は、ポリエステル繊維100%とトリアセテート繊維100%との2種類を準備し、各々に前処理剤(高分子カチオン化合物とグアーガム)に浸し、絞り、乾燥したものを使用した。印字後、布帛を180℃10分間熱処理を行い、水洗、乾燥した。
【0085】
(インク保存性1の評価)
上記調製した各色インクを、ガラス瓶に入れて密栓した後、60℃の恒温槽中で、10日間保存した後、インク中での沈殿物の有無を目視観察し、下記の基準に則り、インク保存性1の評価を行った。
【0086】
○:保存後でも、インク液中での沈殿が全く認められない
△:保存後に、インク中に僅かに沈殿物が認められるが、実用上許容範囲である
×:保存後のインク中に、明らかな凝集物あるいは沈殿物が認められ、吐出時にノズルの目詰まりを起こす恐れがある
(インク保存性2の評価)
インク保存性1で調製した保存後のインクと、未処理のインクとを、上記の方法で、ポリエステル繊維上に印字してベタ画像を形成し、熱処理を行った後の各画像の色度を測定し、保存後のインク画像と未処理のインク画像との色差ΔE1を求め、下記の基準に則りインク保存性2の評価を行った。
【0087】
○:色差ΔE1が1未満
△:色差ΔE1が1以上、3未満である
×:色差ΔE1が3以上
なお、色差ΔE1は、Lab空間における色差公式ΔE=√〔(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2〕により求め、各Lab値はX−rite938 Spectrodensitometer(X−Rite社製)を用いて、測定条件としてD50光源、2°視野にて測定した。
【0088】
(被記録媒体違いの色差の評価)
上記方法に従って、ポリエステル繊維とトリアセテート繊維に印字した各ベタ画像間の色差ΔE2を、上記のΔE1の測定方法と同様にして求め、下記の基準に則り被記録媒体違いによる色差の評価を行った。
【0089】
○:色差ΔE2が1未満
△:色差ΔE2が1以上、3未満である
×:色差ΔE2が3以上
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1より明らかな様に、複数の分散染料を同一の分散剤を用いて、各々個別に分散した後、該各染料の分散液を混合して調製した本発明のインクは、比較例に対し、インク保存性(分散安定性及び色調再現性)が良好で、素材の異なる布帛に印字しても安定した色調が再現されることが分かる。
【0092】
【発明の効果】
本発明により、インクの長期保存性が良好で、かつ被印字媒体の材質の違いによる色調再現性に優れた複数の分散染料を有するインクジェット用インク及び及びその製造方法及びそれを用いるインクジェット記録方法とインクジェット捺染方法を提供することができた。
Claims (8)
- 少なくとも複数の分散染料及び分散剤を含有するインクジェット用インクの製造方法において、該複数の分散染料を同一の分散剤を用いて、各々個別に分散した後、該各染料の分散液を混合して製造することを特徴とするインクジェット用インクの製造方法。
- 前記複数の分散染料が、3種以上であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用インクの製造方法。
- 請求項1または2に記載のインクジェット用インクの製造方法により製造されたことを特徴とするインクジェット用インク。
- 複数の分散染料及び分散剤を含有するインクジェット用インクにおいて、該複数の分散染料が1−メチル−2−フェニル−3−(2,6−ジクロロ−4−ニトロフェニルアゾ)インドール、C.I.Disperse Violet 57及びC.I.Disperse Blue 60であって、該複数の分散染料を同一の分散剤を用いて、各々個別に分散した後、該各染料の分散液を混合して調製することを特徴とするインクジェット用インク。
- 前記同一の分散剤が、リグニンスルホン酸塩であることを特徴とする請求項3または4に記載のインクジェット用インク。
- 少なくとも水、水溶性有機溶剤、複数の分散染料及び分散剤を含有し、該水溶性有機溶剤の少なくとも1種が、エチレングリコールであることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
- 請求項3〜6のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
- 請求項3〜6のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを用いて、布帛を捺染することを特徴とするインクジェット捺染方法。
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