JP2013510564A - 肺癌におけるチロシンキナーゼ阻害剤に対する応答を予測するための分子バイオマーカー - Google Patents
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Abstract
本発明は、EGFR遺伝子における突然変異を有する肺癌を患っている患者について、前記患者の試料におけるBRCA1遺伝子の発現レベルに基づいて、前記患者のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤による治療に対する応答を予測する方法であって、BRCA1発現レベルが小さいときには患者の陽性反応を示唆しているものとする方法に関する。この陽性反応は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性と通常関連しているEGFR遺伝子におけるT790M突然変異を示す患者においても観察される。
Description
本発明は、薬理ゲノミクスの分野に関し、より詳細には、肺癌を患っており且つEGFR遺伝子に突然変異を有する患者の、BRCA1遺伝子の発現レベルに基づくEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する応答を予測する方法に関する。
非小細胞肺癌(NSCLC)は、毎年世界中で120万の新しい症例がある全ての肺癌の約80%を占める。NSCLCによる死亡は、2001年には世界中で100万人を超え、男性と女性の両方における癌関連死亡の主要原因(それぞれ31%及び25%)である。進行したNSCLCの予後はよくない。最近の米国東海岸癌臨床試験グループによる患者1155人の検査では、使用した化学療法間では差異はなかった:シスプラチン/パクリタキセル、シスプラチン/ゲムシタビン、シスプラチン/ドセタキセル及びカルボプラチン/パクリタキセル。進行するまでの総期間の中央値は3.6カ月であり、生存期間の中央値は7.9カ月であった。
診断時に、NSCLCを患っている患者は、疾患の程度及び治療法の両方を反映した三群に分けることができる:
・第一群の患者には、外科的に切除可能である腫瘍がある(一般的に、ステージI腫瘍、ステージII腫瘍及び選択されたステージIII腫瘍)。この群の予後は、最もよい。
・第二群は、局部的(T3〜T4)及び/又は領域的(N2〜N3)進行性肺癌を患った患者を含む。切除不可能又はN2〜N3疾患を患った患者は、放射線治療と化学療法とを併用して治療される。T3又はN2疾患を患った選択された患者は、外科的切除及び術前や術後の化学療法又は放射線化学療法で効果的に治療され得る。
・最後の群は、遠隔転移(M1)を患った患者を含む。この群は、苦痛緩和放射線療法又は化学療法で治療できる。
・第一群の患者には、外科的に切除可能である腫瘍がある(一般的に、ステージI腫瘍、ステージII腫瘍及び選択されたステージIII腫瘍)。この群の予後は、最もよい。
・第二群は、局部的(T3〜T4)及び/又は領域的(N2〜N3)進行性肺癌を患った患者を含む。切除不可能又はN2〜N3疾患を患った患者は、放射線治療と化学療法とを併用して治療される。T3又はN2疾患を患った選択された患者は、外科的切除及び術前や術後の化学療法又は放射線化学療法で効果的に治療され得る。
・最後の群は、遠隔転移(M1)を患った患者を含む。この群は、苦痛緩和放射線療法又は化学療法で治療できる。
NSCLCを患っている患者の全5年生存率は、過去20年間15%未満を維持している。TNMのステージグループ分け(T=原発腫瘍;N=所属リンパ節;M=遠隔転移)により、同様の予後及び治療の選択肢を持つ患者群を同定することができる。5年生存率は、病理学的ステージIIB(T1−2N1M0、T3N0M0)では約25%であり、ステージIIIA(T3N1M0、T1−2−3N2M0)では13%であり、ステージIIIB(T4N0−1−2M0)では7%と低かった。
多くの調査により、術後の予後決定因子を同定することが試みられ、そして種々の臨床病理学的因子の予後の重要性に関して矛盾した証拠が得られた。予後不良と関連することが分かった因子には次にあげるものなどがある:
・肺疾患症状の存在。
・大きな腫瘍サイズ(>3cm)。
・非鱗状組織。
・TNM確定結節ステーション内の複数リンパ節への転移。
・血管浸潤。
・腫瘍検体における腫瘍血管数の増加。
・肺疾患症状の存在。
・大きな腫瘍サイズ(>3cm)。
・非鱗状組織。
・TNM確定結節ステーション内の複数リンパ節への転移。
・血管浸潤。
・腫瘍検体における腫瘍血管数の増加。
過去数年間、非小細胞肺癌(NSCLC)におけるEGFRに対して直接的に作用する標的療法の開発に努力が向けられていた。EGFRは、大部分のNSCLCに存在する。EGFRは、EGFR(ErbB−1)、Her2/neu(ErbB−2)、Her3(ErbB−3)及びHer4(ErbB−4)を含む密接に関連した受容体のErbBファミリーに属する。EGFRの活性化により、受容体チロシンキナーゼ活性及び一連の下流シグナル伝達事象が生じ、これにより細胞の増殖、運動、接着、浸潤、アポトーシスのブロック、そして化学療法に対する耐性の増加が生じる。EGFR及びそのリガンド、EGF並びに形質転換成長因子アルファは、NSCLCの80%超で発現する。リガンドが結合すると、EGFRは、ホモ二量体化するか、あるいはErbBファミリーの他のものとヘテロ二量体を形成し、受容体リン酸化及び下流シグナル伝達事象の活性化を生じる。EGFRの活性化により、She、Grb2、Src、JAKs、PLD、PLCGAMMA及びPI3Kなどの複数のシグナル伝達メディエーターとの関連、続いてERK1/2、FAK、JNK、STAT及びAktなどのシグナル伝達トランスデューサーの活性化を生じる。腫瘍形成においてEGFRが重要であることから、その機能をブロックする治療薬の開発及び商業化が促進された。
NSCLCを患っている患者の一部分におけるEGFRの二種の低分子阻害剤であるゲフィチニブ(イレッサ)及びエルロチニブ(タルセバ)の治療が、最近において成功を納めたことが、EGFRが有効な標的であるという前提をさらに確実なものとした。いくつかのグループが、それぞれ独自に、肺腺癌において、EGFR遺伝子のキナーゼドメインにおける頻発体細胞突然変異を確認した。これらは、米国において配列決定された肺腺癌試料の16%、及びアジアにおいて配列決定された肺腺癌試料の40%において生じている。突然変異は、ゲフィチニブとエルロチニブの両方に対する感受性と関連しており、これらの薬剤による治療に対する希少且つ劇的な臨床的応答を部分的に説明する。続いて複数のグループが検討したところ、数多くのさらなる肺癌患者からEGFRキナーゼドメイン突然変異が同定された。これらの突然変異は、四つの群又は領域;G719S及びL858Rでのエクソン19欠失、エクソン20挿入及び点突然変異において集まる。これらのキナーゼドメイン突然変異の発生は、扁平上皮癌などの他の組織学的サブタイプの肺癌におけるよりも腺癌において一般的である。最近得られたデータも、免疫組織化学及びEGFR遺伝子コピー数により評価されるEGFR発現が、より応答しやすい患者を同定するのに等しく重要な役割を果たすことがあり、且つゲフィチニブ又はエルロチニブで治療したときの生存期間がより長いことを示唆している。
しかしながら、エルロチニブ及びゲフィチニブに最初から応答したほぼ全ての患者はその後再発する。3つの研究により、再発した患者からの腫瘍においてEGFR T790M突然変異体が同定された。これらの突然変異体が、感作EGFRキナーゼドメイン突然変異と組み合わされると、エルロチニブ及びゲフィチニブの存在下で腫瘍細胞の成長が継続する。EGFR、CL−387,785及びHKI−272の二種の不可逆阻害剤が、生体外でT790M耐性突然変異体の成長を阻害し、獲得耐性を有する腫瘍の治療について有望な方法を提供することが判明した。これらの二種の薬剤のうちHKI−272だけが、現在のところ臨床開発が進んでいる。これは、生体外でナノモル範囲において受容体のキナーゼ活性を阻害することができるパンERBB不可逆阻害剤である。
種々のタイプの癌についての予後マーカーとして好適であるとことが判明したDNA修復に関与する別の遺伝子は、BRCA1である。BRCA1は、転写と共役したヌクレオチド除去修復(TC−NER)に関係しており、その発現の調節により、TC−NERの修飾、したがって、放射線耐性及び化学耐性を生じる。BRCA1発現の上向き調節により、SKOV−3ヒト卵巣癌細胞株におけるシスプラチン耐性が増加し(Husain A等、Cancer Res.1998、58巻(6):1120−3)、BRCA1陰性HCC1937ヒト乳癌細胞株におけるBRCA1の修復により放射線耐性が回復した。BRCA1は、DNA損傷に応答した相同組換え修復(HRR)及び非相同末端結合にも関与している。さらに、BRCA1は、多数のミスマッチ修復タンパク質を含有するBRCA1関連ゲノムサーベイランス複合体と称される巨大DNA修復複合体の成分であり、このことはBRCA1がミスマッチ修復において潜在的役割を果たしている可能性を示している。また、BRCA1とb−チューブリンが有糸***紡錘体の微小管及び中心体に共局在化するので、BRCA1は有糸***紡錘体集合の調節因子であることもできる。最後に、増大したBRCA1発現が、シスプラチン誘発DNA損傷により活性化されるc−Jun N末端キナーゼ経路を介してアポトーシスに関連している。この経路の阻害により、細胞株におけるシスプラチン感受性が増加した。
散発性乳癌と遺伝性乳癌の両方において、改変BRCA1 mRNAの発現が観察された(Kennedy RD等、2002 Lancet、360巻、1007−1014)。これらの患者は、DNA損傷型化学療法には応答するが、抗微小管剤には応答しない。さらに、DNA損傷型化学療法により、BRCA1突然変異保因者に対して、非突然変異保因者よりも顕著な延命効果が与えられる。また、低BRCA1 mRNAレベルの卵巣癌患者も、高BRCA1 mRNAレベルの患者よりも、プラチナ製剤ベースの化学療法により改善された生存期間を示した(Quinn等、2007Clin Cancer Res.第13巻(24):7413−20)。
さらに、BRCA1遺伝子は、NSCLCの予後マーカーであることが判明した。例えば、米国特許出願US2006/0094021及びTaron等 2004(Human Molecular Genetics、2004、第13巻(20):2443−2449)は、BRCA1 mRNA発現レベルがNSCLCにおける化学療法に対する感受性差の良好なマーカーであり、この極めて一般的且つ致死的疾患における生存期間を向上させるためにNSCLC化学療法をカスタマイズする重要なツールが提供できることを開示している。一方、Rosell等(PLoS ONE、2007、2:e1129)は、BRCA1 mRNAの過剰発現がNSCLC患者における生存期間がよくないことと強い相関があることを開示している。
したがって、当該技術分野において、NSCLCを患っている患者の臨床転帰を予測するためのさらなる予後マーカーが必要とされている。
第一の態様によれば、本発明は、肺癌を患っている患者であり、かつEGFR遺伝子において少なくとも突然変異を有する患者のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する応答を予測する方法であって、
(i)前記患者から単離した試料中のBRCA1の発現レベルを測定する工程と、
(ii)工程(i)で得られたBRCA1の発現レベルを標準試料と比較する工程と
を含んでなり、
標準試料と比較してBRCA1の発現レベルが減少した場合には、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に対して応答が良好であることを示し、又は、
標準試料と比較してBRCA1の発現レベルが増加した場合には、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に対して応答が不良であることを示しているとすることを特徴とする方法に関する。
(i)前記患者から単離した試料中のBRCA1の発現レベルを測定する工程と、
(ii)工程(i)で得られたBRCA1の発現レベルを標準試料と比較する工程と
を含んでなり、
標準試料と比較してBRCA1の発現レベルが減少した場合には、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に対して応答が良好であることを示し、又は、
標準試料と比較してBRCA1の発現レベルが増加した場合には、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に対して応答が不良であることを示しているとすることを特徴とする方法に関する。
第二の態様によれば、本発明は、肺癌の治療に使用されるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であって、前記治療すべき患者が、低BRCA1発現レベルを示し且つ前記EGFR遺伝子に少なくとも突然変異を有している、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に関する。
第三の態様によれば、本発明は、
(i)BRCA1発現レベルを検出する試薬と、
(ii)EGFRにおける少なくとも突然変異を検出する試薬と
を含んでなるキットに関する。
(i)BRCA1発現レベルを検出する試薬と、
(ii)EGFRにおける少なくとも突然変異を検出する試薬と
を含んでなるキットに関する。
チロシンキナーゼ阻害剤に対する肺癌患者の応答を判定する方法
本発明の発明者らは、肺癌を患っており且つEGFR受容体において突然変異を有する患者では、その患者からの試料で測定したBRCA1遺伝子の発現レベルが標準試料で測定したBRCA1遺伝子の発現レベルよりも低いとき、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による療法に対して改善された応答を示すことを見出した。本発明の実施例に示すように、エルロチニブに対する無進行生存期間の中央値は、低BRCA1レベルのEGFR突然変異を有する患者では27カ月(95%CI、21.3〜32.7)であり、中BRCA1レベルのEGFR突然変異を有する患者では18カ月(95%CI、6.3〜29.7)であり、高BRCA1レベルのEGFR突然変異を有する患者では10カ月(95%CI、6.7〜13.3)である(P=0.02)(図1参照)。この知見により、肺癌患者のために、BRCA1発現レベルに基づいて、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する応答を予測し、そして個別療法を設計することが可能である。
本発明の発明者らは、肺癌を患っており且つEGFR受容体において突然変異を有する患者では、その患者からの試料で測定したBRCA1遺伝子の発現レベルが標準試料で測定したBRCA1遺伝子の発現レベルよりも低いとき、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による療法に対して改善された応答を示すことを見出した。本発明の実施例に示すように、エルロチニブに対する無進行生存期間の中央値は、低BRCA1レベルのEGFR突然変異を有する患者では27カ月(95%CI、21.3〜32.7)であり、中BRCA1レベルのEGFR突然変異を有する患者では18カ月(95%CI、6.3〜29.7)であり、高BRCA1レベルのEGFR突然変異を有する患者では10カ月(95%CI、6.7〜13.3)である(P=0.02)(図1参照)。この知見により、肺癌患者のために、BRCA1発現レベルに基づいて、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する応答を予測し、そして個別療法を設計することが可能である。
したがって、第一の態様によれば、本発明は肺癌を患っている患者であり、かつEGFR遺伝子において少なくとも突然変異を有する患者のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する応答を予測する方法であって、
(i)前記患者から単離した試料中のBRCA1の発現レベルを測定する工程と、
(ii)工程(i)で得られたBRCA1の発現レベルを標準試料と比較する工程と
を含んでなり、
標準試料と比較してBRCA1の発現レベルが減少した場合には、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に対して反応が良好であることを示し、又は、
標準試料と比較してBRCA1の発現レベルが増加した場合には、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に対して反応が不良であることを示しているとすることを特徴とする方法(以下「本発明の第一の方法」という。)に関する。
(i)前記患者から単離した試料中のBRCA1の発現レベルを測定する工程と、
(ii)工程(i)で得られたBRCA1の発現レベルを標準試料と比較する工程と
を含んでなり、
標準試料と比較してBRCA1の発現レベルが減少した場合には、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に対して反応が良好であることを示し、又は、
標準試料と比較してBRCA1の発現レベルが増加した場合には、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に対して反応が不良であることを示しているとすることを特徴とする方法(以下「本発明の第一の方法」という。)に関する。
本明細書で使用される用語「応答を予測する」は、一定の療法に対して患者が好ましい応答を示すか又は好ましくない応答を示す可能性を判定することを示す。とりわけ、本明細書で使用される用語「予測」は、患者の進展を判定するのに有用であることができるいずれかのパラメータの個別評価に関する。当業者には理解されるように、チロシンキナーゼによる治療に対する臨床応答の予測は、好ましくはあるけれども、診断又は評価される被験者の100%について正しい必要はない。しかしながら、この用語は、被験者の統計的に有意な部分が、陽性応答を有する高い確率として同定できる必要がある。被験者が統計的に有意であるかどうかは、種々の周知の統計的評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントのt検定、マンホイットニー検定などを用いて、当業者により、さしたる困難もなく判定できる。詳細は、Dowdy and Wearden、Statistics for Research(研究のための統計)、John Wiley & Sons、ニューヨーク、 1983年に記載されている。好ましい信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90% 少なくとも95%である。p値は、好ましくは0.2、0.1又は0.05である。
本明細書で使用される用語「患者」は、哺乳動物として分類される全ての動物を指し、家畜(domestic and farm animals)、霊長類及びヒト、例えば、人間、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ又は齧歯類などが挙げられるが、これらには限定されない。好ましくは、患者は、年齢又は人種を問わず男性又は女性の人間である。
本明細書で使用される用語「臨床応答」は、チロシンキナーゼ阻害剤を用いた療法に対するNSCLCを患っている被験者の応答を指す。化学療法に対する応答を評価するためのここで使用できる規格基準(Miller等、Cancer、1981;47:207−14)には、反応、安定化及び進行などがある。この規格基準は、全ての検出可能な悪性疾患の消失である完全応答(又は完全寛解)、又は一つ以上の病巣(腫瘍病巣)の最大垂直直径の積の合計の約50%超の減少、新しい病巣がないこと、及びいずれの病巣の進行もないこととして定義される部分寛解であることができる。完全又は部分応答が得られた患者は「レスポンダー」とみなされ、その他の全ての患者は「ノンレスポンダー」とみなされる。
本明細書で使用される用語「安定化」は、腫瘍サイズの25%を超える増加の50%未満の減少として定義される。
本明細書で使用される用語「進行」は、腫瘍病巣のサイズの25%増加又は新しい病巣の出現として定義される。
代替治療の有効性を比較するために広く受け入れられている他のパラメータを、治療に対する応答を判定するのに使用できる。例えば、次のようなものが挙げられるが、これらには限定されない:
・本明細書で使用される無病進行は、試験中の期間の間に疾患の再発がない完全寛解の患者の割合である。
・本明細書で使用される無病生存期間(DFS)は、被験者が疾患の兆候を示さずに生存する、疾患の治療後の時間の長さであると理解される。
・本発明で使用される客観的反応は、治療された人々のうちの完全又は部分応答が観察される人の割合である。
・本発明で使用される腫瘍制御は、治療された人々のうちで、6カ月以上の間、完全応答、部分応答、マイナーな応答又は不変が観察される人の割合に関する。
・本明細書で使用される無進行生存期間は、治療の開始から、癌増殖の最初の測定までの時間として定義される。
・本明細書で使用される無進行期間(TTP)は、疾患の治療がなされた後、疾患が悪化し始めるまでの時間に関する。用語「進行」については、上記で定義した。
・本明細書で使用される無病進行は、試験中の期間の間に疾患の再発がない完全寛解の患者の割合である。
・本明細書で使用される無病生存期間(DFS)は、被験者が疾患の兆候を示さずに生存する、疾患の治療後の時間の長さであると理解される。
・本発明で使用される客観的反応は、治療された人々のうちの完全又は部分応答が観察される人の割合である。
・本発明で使用される腫瘍制御は、治療された人々のうちで、6カ月以上の間、完全応答、部分応答、マイナーな応答又は不変が観察される人の割合に関する。
・本明細書で使用される無進行生存期間は、治療の開始から、癌増殖の最初の測定までの時間として定義される。
・本明細書で使用される無進行期間(TTP)は、疾患の治療がなされた後、疾患が悪化し始めるまでの時間に関する。用語「進行」については、上記で定義した。
個々の患者における応答は、当該技術分野において理解されているように、完全応答、部分応答、安定及び進行として特徴づけられる。一つの実施態様によれば、応答は、病理学的完全応答である。例えば、手術又は生体検査時に除去された組織の検査後の病理学者により測定された病理学的完全応答は、一般的に外科検体における浸潤性腫瘍細胞の組織学的証拠がないことを指す。特に、応答は、呼吸困難、咳、息切れ、喘鳴、胸痛及び喀血などの肺癌関連の一つ以上の兆候及び症状が部分的又は完全に消失したことを観察することにより判定できる。
用語「肺癌」は、肺のいずれかの癌を指し、非小細胞肺癌及び小細胞肺癌などがある。好ましい実施態様によれば、本発明の方法は、NSCLCを患った被験者に適用できる。特定の実施態様によれば、NSCLCは、肺の扁平上皮癌、肺の大細胞癌及び肺の腺癌から選択される。さらに、本発明の方法は、NSCLCのいずれのステージ(ステージ0、IA、IB、IIa、IIb、IIIa、IIIb又はIV)を患っている被験者にも適用できる。
本明細書で使用される用語「EGFR遺伝子に少なくとも突然変異を示す患者」は、腫瘍が、EGFRを過剰発現する(例えば、FDA認可EGFR pharmaDxキット(「DAKO」試験;DAKO Notrth America社)、the Zymed EGFRキット又はthe Ventana EGFR 3C6抗体により検出される)か、又は改変チロシンキナーゼ活性を示すEGFR突然変異体を過剰発現する細胞を少なくとも1%、特に少なくとも2%、3%、4%又は5%、特に少なくとも10%含有する患者を指すのに使用できる。
用語「ErbB1」、「上皮成長因子受容体」及び「EGFR」は、本明細書において相互に交換可能に使用され、シグナル伝達経路並びに細胞の成長及び生存を調節し、且つEGF分子に親和性を示すチロシンキナーゼを指す。ErbBファミリー受容体は、4種の密接に関連したサブタイプからなる:ErbB1(上皮成長因子受容体 [EGFR])、ErbB2(HER2/neu)、ErbB3(HER3)及びErbB4(HER4)並びにそれらの変異体(例えば、Humphrey等(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1990、87:4207−4211)に記載のような欠損変異体EGFR)。
EGFR突然変異は、典型的にEGF受容体のチロシンキナーゼドメインに位置しており、チロシンキナーゼ阻害剤に対する感受性を示す突然変異及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性を示す突然変異などが挙げられる。
本明細書で使用される「EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する感受性を示す突然変異」は、エルロチニブなどの阻害剤による処置に反応してEGFRのチロシンキナーゼ活性の阻害を増大させる、EGFRのチロシンキナーゼドメインにおける突然変異を指す。チロシンキナーゼ阻害剤に対する感受性の増加を示すEGFR突然変異体には、エクソン21における位置L858での突然変異、例えば、活性化ループ(エクソン21)におけるL858R、L858P、L861Q又はL861点突然変異、ELREA配列(エクソン19)におけるインフレーム欠失/挿入突然変異、例えば、E746−R748欠失、E746−A750欠失、E749Q及びA750P置換と一緒のE746−R748欠失、delL747−E749欠失とA750P置換との組み合わせ、L747S置換とR748−P753欠失との組み合わせ、L747−S752欠失とE746V置換との組み合わせ、L747−T751欠失とセリン挿入との組み合わせ、位置M766−A767でのAI挿入、位置S768−V769でのSVA挿入、又はG719A、G719C、G710Sなどのヌクレオチド結合ループ(エクソン18)における位置719での置換などがあるが、これらには限定されない。
本明細書で使用される「EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性を与える突然変異」は、前に示した増加した感受性を示すEGFR突然変異体だけでなく、野生型EGFRにおいても、チロシンキナーゼ阻害剤に対するEGFRチロシンキナーゼ活性の感受性の損失を生じる、EGFRのチロシンキナーゼドメインにおける突然変異体を指す。既知のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に耐性を示す突然変異体EGFRには、いずれか一つ以上のEGFRポリペプチド又はこれをコードするヌクレオチド(一つ以上の位置に、イマチニブ耐性表現型を裏付けるc−abl(BCR−ABL)残基に類似する非野生型残基を有する)などがある。EGFRで変異するとき薬剤耐性を与える残基には、とりわけ、例えば、Pループ及び活性化ループ(これらには限定されない)を含むキナーゼドメインからの残基などがある。ここで、EGFRポリペプチドにおける突然変異残基はc−able残基と類似している。意図する耐性EGFR突然変異体は、EGFRにおけるLys714、Leu718、Ser720、Ala722、Phe723、Thr725、Ala750、Thr790、Leu792、Met825、Glu829、Leu833、His870、Thr892、Phe961残基それぞれに対応するアミノ酸位置で非野生型残基を有する。好ましい突然変異には、エクソン20におけるT790M点突然変異及びエクソン20における所定の挿入、例えば、位置D770−N771でのNPG挿入、位置P772−H773でのV挿入などがある。
一定の突然変異体がチロシンキナーゼ活性に対する感受性又は耐性を示すかどうかを判定する方法が従来技術に詳細に説明されており、とりわけゲフィニチブ(Iressa(商標))又はパニツムマブでの治療に応答してEGFRを過剰発現する細胞において測定されるEGFRの自己リン酸化能の検出に基づく、WO2006091889に記載の方法などが挙げられる。
好ましい実施態様によれば、患者は、チロシンキナーゼ阻害剤に対して感受性を示す突然変異を少なくとも示し、そしてこのような阻害剤に対して耐性を示す少なくとも一つの突然変異を示す。さらにより好ましい実施態様によれば、患者は、L858R置換及びELREA欠失からなる群から選択される第一突然変異、並びに、エクソン20におけるT790M点突然変異である第二突然変異を示す。さらにより好ましい実施態様によれば、患者は、L858R/T790M突然変異を示す。
EGFR遺伝子における突然変異及び遺伝子多型は、当該技術分野において知られているいずれかの方法を用いて判定される。典型的には、遺伝子多型又は突然変異の存在は、被験者において、ゲノムに存在する多型性部位の両方のコピーに関して判定される。例えば、完全遺伝子型は、−/−、−/+又は+/+として特徴付けられ得る。ここで、マイナス記号は多型性部位に参照配列が存在することを示し、プラス記号は参照配列以外の多型性変異が存在することを示している。本明細書に記載されている検出手段のいずれも、被験者のゲノムに存在する遺伝子多型の一つ又は両方のコピーに関して被験者の遺伝子型を判定するのに使用することができる。
2種の核酸間の少なくとも一つのヌクレオチドの違いを検出する方法としては、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅又は選択的プライマー伸長などが挙げられるが、これらには限定されない。
例えば、既知の多型性ヌクレオチドが中央に位置するオリゴヌクレオチドプローブ(対立遺伝子特異的プローブ)を調製し、その後完全マッチである場合のみハイブリダイゼーションできる条件下で標的DNAにハイブリダイズさせることができる(Saiki等(1986)Nature 324:163);Saiki等(1989)Proc.Natl.Acad.Sci USA 86:6230;及びWallace等(1979)Nucl.Acids Res.6:3543)。このような対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション法は、遺伝子の異なる多型領域におけるいくつかのヌクレオチド変化の同時検出に使用できる。例えば、特異的多型変異体のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを、ハイブリダイゼーション膜に結合させた後、この膜を標識された試料核酸とハイブリダイゼーションする。次にハイブリダイゼーションシグナルを分析して、試料核酸の多型変異体を同定する。オリゴヌクレオチドを、リソグラフィーを含む種々のプロセスにより固体支持体に結合できる。例えば、チップは最大250,000までのオリゴヌクレオチドを保持できる(GeneChip、Affymetrix)。「DNAプローブアレイ」とも称されるオリゴヌクレオチドを含んでなるこれらのチップを用いた突然変異検出分析は、例えば、Cronin等(Human Mutation、1996、7:244)及びKozal等(Nature Medicine、1996、2:753)に記載されている。次に、固相支持体を、試験核酸と接触させ、そして特異的プローブへのハイブリダイゼーションを検出する。したがって、一つ以上の遺伝子の非常に多くの多型変異体がは、簡単なハイブリダイゼーション実験で同定できる。例えば、本明細書に記載されている多型部位のいずれかでの多型変異体の同定は、単一のハイブリダイゼーション実験でおこなうことができる。
別法として、選択的PCR増幅による対立遺伝子特異的増幅法を使用してもよい。このため、意図する断片の増幅のためのプライマーとして好適なオリゴヌクレオチドを有することが必要である。本明細書で使用される用語「プライマー」は、適切な緩衝剤中、好適な温度で、適切な条件下での鋳型指向DNA合成(例えば、4種の異なるヌクレオチド三リン酸塩及び重合剤、例えば、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ又は逆転写酵素の存在下)の開始点としての役割を果たすSNPを指す。適切なプライマー長は、プライマーの意図する用途により異なるが、典型的には15〜30ヌクレオチドである。短プライマー分子では、一般的により低温で十分に安定な鋳型とのハイブリッド複合体を形成する必要がある。プライマーは、鋳型の完全配列に完全に相補的である必要はないが、それとハイブリダイゼーションするのに十分な相補性がなければならない。用語「プライマー部位」は、プライマーがハイブリダイズする標的DNAの配列を指す。用語「プライマー対」は、増幅されるべきDNA配列の5’末端とハイブリダイズする5’(上流)プライマー、及び増幅されるべき配列の3’末端の相補体とハイブリダイズする3’(下流)プライマーを含む一連のプライマーを指す。
特異的増幅のためにプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、分子の中心(増幅が示差的ハイブリダイゼーションに依存するように)(Gibbs 等 (1989) Nucleic Acids Res. 17:2437−2448)又は適切な条件下でミスマッチがポリメラーゼ伸長を防止又は減少することができる一つのプライマーの極3’末端(Prossner(1993)Tibtech 11:238;Newton等(1989) Nucl. Acids Res. 17:2503)に意図する多型変異体を担持することができる。この手法は、プローブオリゴ塩基伸長用「プローブ」とも称される。さらに、突然変異の領域に新規な制限部位を導入して開裂に基づく検出をおこなうことが望ましい(Gasparini等、1992、Mol. Cell Probe 6:1)。
本明細書に記載されている種々の検出法は、多型変異体を同定する前に、まず遺伝子の少なくとも一部分を増幅することを含む。増幅は、当該技術分野において知られている方法に準じて、例えば、PCR及び/又はLCRにより行うことができる。
さらなる増幅法として、例えば、自律配列複製(Guatelli、J.C.等、1990、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.87:1874−1878)、転写増幅システム(Kwoh、D.Y.等、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:1 173−1177)、Q−ベータレプリカーゼ(Lizardi、P.M.等、1988、Bio/Technology 6:1 197)、又は他の核酸増幅法などがある。増幅後、当業者に周知の手法を用いて増幅分子を検出する。これらの検出スキームは、極めて少数しか存在しない核酸分子の検出にとりわけ有用である。
当該技術分野において知られている種々のシークエンス反応のいずれかを使用して、遺伝子の少なくとも一部分を直接配列決定し、試料配列を対応の制御配列と比較することにより多型変異体を検出することができる。典型的なシークエンス反応には、Maxam及びGilbert (Proc. Natl. Acad Sci USA、1977、74:560)又はSanger(Sanger 等、1977、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、74:5463)により開発された手法に基づくものなどがある。また、質量分析法による配列決定を含む種々の自動配列決定法のいずれかを利用して多型変異体(Biotechniques (1995) 19:448)を同定してもよい。例えば、米国特許第5,547,835号及び国際公開公報WO94/16101号、米国特許第5,547,835号及び国際出願WO94121822号並びに米国特許第5,605,798号及び国際出願第PCT/US96/03651号;Cohen等(1996) Adv. Chromatogr.36:127−162;及びGriffin等(1993)Appl Biochem Biotechnol 38:147−159を参照されたい。当業者には、ある実施態様によれば、核酸塩基の一つ、二つ又は三つの存在だけをシークエンス反応で決定する必要があることが明らかであろう。例えば、A−トラックなどの単一のヌクレオチド試験には、一つだけのヌクレオチドを検出すればよく、したがって、改良シークエンス反応を実施できる。
さらに他の好適な配列決定法が、例えば、米国特許第5,580,732号及び米国特許第5,571,676号に開示されている。
場合によっては、被験者からのDNA試料における特異的多型変異体の存在は、制限酵素分析により明らかにすることができる。例えば、特異的多型変異体では、別の多型変異体のヌクレオチド配列にはない制限部位を含んでなるヌクレオチド配列を得ることができる。
他の実施態様によれば、電気泳動移動度の変化を使用して多型変異体を同定することができる。例えば、一本鎖構造多型(SSCP)を使用して、多型変異体間の電気泳動移動度差を検出することができる(Orita等(1989) Proc Natl. Acad. Sci USA 86:2766、Cotton (1993) Mutat Res 285:125−144;及びHayashi (1992)Genet Anal Tech Appl 9:73− 79)。試料の一本鎖DNA断片及びコントロールの核酸を、変性し、そして再生する。一本鎖核酸の二次構造は、配列により異なり、生じた電気泳動移動度の変化により単一の塩基変化であっても検出できる。DNA断片を、標識してもよいし、標識プローブで検出してもよい。アッセイの感度は、二次構造が配列の変化に対してより感度が高いRNA(DNAではなく)を用いて高めることができる。
多型変異体の同一性は、変性剤の濃度勾配を有するポリアクリルアミドゲルにおいて多型変異体を含む核酸の移動を分析すること、例えば、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)により得ることもできる(Myers等(1985) Nature 313:495)。DGGEを分析の方法として使用するとき、DNAを修飾して、例えば、PCRにより約40bpの高融点GCリッチDNAのGCクランプを添加することにより、完全には変性しないようにする。別の実施態様によれば、多型変異体の同定は、例えば、米国特許第4,998,617号及びLandegren、U等、Science 241:1077−1080(1988)に記載されているように、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)を用いて実施する。OLAプロトコルでは、標的の一本鎖の隣接配列にハイブリダイズできるように設計された2つのオリゴヌクレオチドを使用する。オリゴヌクレオチドの一つは分離マーカーに連結、例えば、ビオチニル化し、他は検出可能に標識する。正確な相補配列が標的分子にある場合、オリゴヌクレオチドは、その末端を隣接させ、そしてライゲーション基質を形成するようにハイブリダイゼーションする。ライゲーションにより、標識オリゴヌクレオチドをアビジンなどのビオチンリガンドを用いて回収できる。Nickerson、D.A.等には、PCRとOLAの特性を組み合わせた核酸検出アッセイを記載されている(Nickerson、D.A.等、Proc. Natl. Acad. Sci.(U.S.A.)87:8923−8927(1990)。この方法では、PCRを使用して標的DNAを指数関数的に増幅した後、OLAを用いて検出する。
EGF受容体のチロシンキナーゼドメインにおける突然変異を検出する方法は当該技術分野において知られており、いくつかの対応する診断ツールがFDAにより承認され、市販されており、例えば、非小細胞肺癌を患っている患者における上皮成長因子受容体突然変異の検出用アッセイがある(Genzyme Corp.;Journal of Clinical Oncology、2006 ASCO Annual Meeting Proceedings (Post−Meeting Edition)、VoI 24、No 18S (June 20 Supplement)、2006: Abstract 10060)。好ましい実施態様によれば、EGFRにおける突然変異は、特異的サソリプローブと増幅不応性突然変異システム(ARMS)との組み合わせを使用して、WO07039705号に記載されている方法(Nucleic Acids Res.、1989、17:2503−2516 及び Nature Biotechnology、1999、17:804−807)又は野生型変異体に特異的なPNAプローブを使用することによってなされる突然変異体対立遺伝子の選択的増幅に基づいて、WO08009740に記載されている方法により血清試料で判定する。
別法として、少なくとも一つのキナーゼ活性増大核酸相違の有無を検出することもできる。この場合、WO2005094357号に記載の方法で、Akt及びSTAT5などのEGFRの下流標的の活性化状態を測定することを含む。
本願の一つの実施態様によれば、EGFR突然変異の存在は、当該技術分野において周知の免疫学的方法、例えば、抗体法、例えば、免疫組織化学、免疫細胞化学、FACS走査、免疫ブロット法、ラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロット法、免疫沈降、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び誘導体法(活性化されたEGFRの下流標的に対して直接作用する抗体を使用を用いて測定できる。このような標的としては、例えば、リン酸化STAT3、リン酸化STAT5及びリン酸化Aktなどがある。リン酸特異的抗体を使用して、STAT3、STAT5及びAktの活性化状態を測定できる。STAT3、STAT5及びAktの活性化は、活性化EGFR突然変異の診断指標として有用である。
本明細書で使用される表現「EGFRチロシンキナーゼ阻害剤」は、ATPのγ−リン酸基を、上皮細胞成長因子の受容体(EGFR)のチロシンキナーゼドメインにより触媒されたタンパク質における特異的チロシンの水酸基に転移させる「チロシンキナーゼ」を阻害する化学物質に関する。チロシンキナーゼ活性は、タンパク質のリン酸化を検出することにより測定される。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、当該技術分野において知られている。例えば、チロシンキナーゼ阻害剤は、ATPからタンパク質チロシン残基へのチロシン介在性転移リン酸塩の減少を検出することにより同定される。
チロシンキナーゼ阻害剤は、例えば、erbBチロシンキナーゼ阻害剤である。あるいは、チロシンキナーゼ阻害剤は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤である。チロシンキナーゼ阻害剤は、可逆的チロシンキナーゼ阻害剤である。あるいは、チロシンキナーゼ阻害剤は、不可逆的チロシンキナーゼ阻害剤である。可逆的チロシンキナーゼ阻害剤としては、例えば、HKI−272、BIBW2992、EKB−569、CL−387,CL−785又はそれらの類似物若しくは誘導体などがある。他のチロシンキナーゼ阻害剤としては、米国特許第6,384,051号及び第6,288,082号並びに米国特許出願第20050059678号(これらの内容全体は、引用することによりその全体が本明細書の一部とされる)に記載されたものなどがある。
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤には、例えば、キナゾリンEGFRキナーゼ阻害剤、ピリドピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、ピリミドピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、ピロロピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、ピラゾロ−ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、フェニルアミノピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、オキシインドールEGFRキナーゼ阻害剤、インドロカルバゾールEGFRキナーゼ阻害剤、フタラジンEGFRキナーゼ阻害剤、イソフラボンEGFRキナーゼ阻害剤、キナロンEGFRキナーゼ阻害剤並びにチルホスチンEGFRキナーゼ阻害剤、例えば、以下の特許公開公報並びに前記EGFRキナーゼ阻害剤の全ての薬学的に許容しうる塩及び溶媒和物などがある:国際公開公報WO96/33980、WO96/30347、WO97/30034、WO97/30044、WO97/38994、WO97/49688、WO98/02434、WO97/38983、WO95/19774、WO95/19970、WO97/13771、WO98/02437、WO98/02438、WO97/32881、WO98/33798、WO97/32880、WO97/3288、WO97/02266、WO97/27199、WO98/07726、WO97/34895、WO96/31510、WO98/14449、WO98/14450、WO98/14451、WO95/09847、WO97/19065、WO98/17662、WO99/35146、WO99/35132、WO99/07701及びWO92/20642;ヨーロッパ特許出願EP520722、EP566226、EP787772、EP837063及びEP682027;米国特許第5,747,498、第5,789,427、第5,650,415及び第5,656,643;並びにドイツ国特許出願DE19629652。低分子量EGFRキナーゼ阻害剤のさらなる例として、Traxler、P.、1998、Exp. Opin. Ther. Patents 8(12):1599−1625に記載のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤があるが、これらには限定されない。
本発明で使用できる低分子量EGFRチロシンキナーゼ阻害剤の好ましい具体例として、[6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナドリン−4−イル]−(3−エチニルフェニル)アミン(OSI−774、エルロチニブ又はTARCEVA.RTM.(エルロチニブHCl)としても知られている;OSI Pharmaceuticals/Genentech/Roche)(米国特許第5,747,498号;国際公開公報WO01/34574及びMoyer、J.D.等(1997) Cancer Res.57:4838−4848);CI−1033(正式にはPD183805;Pfizerとして知られている)(Sherwood等、1999、Proc. Am. Assoc. Cancer Res. 40:723);PD−158780(Pfizer);AG−1478(University of California);CGP−59326(Novartis);PKI−166(Novartis);EKB−569(Wyeth);GW−2016(GW−572016又はラパチニブジトシレートとしても知られている;GSK);並びにゲフィチニブ(ZD1839又はIRESSA.TM.としても知られている;Astrazeneca)(Woodburn等、1997、Proc. Am. Assoc. Cancer Res.38:633)などが挙げられる。本発明で使用できる特に好ましい低分子量EGFRキナーゼ阻害剤は、[6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナドリン−4−イル]−(3−エチニルフェニル)アミン(すなわち、エルロチニブ)、その塩酸塩(すなわち、エルロチニブHCl、TARCEVA.RTM.)又は他の塩形態(例えば、エルロチニブメシラート)である。
また、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤として、例えば、EGFRキナーゼに対して活性を有するマルチキナーゼ阻害剤、すなわち、EGFRキナーゼ及び一種以上のさらなるキナーゼを阻害する阻害剤が挙げられる。このような化合物としては、例えば、EGFR及びHER2阻害剤CI−1033(正式にはPD183805としても知られている;Pfizer);EGFR及びHER2阻害剤GW−2016(GW−572016又はラパチニブジトシラートとしても知られている;GSK);EGFR及びJAK2/3阻害剤AG490(チルホスチン);EGFR及びHER2阻害剤ARRY−334543(Array BioPharma);BIBW−2992、不可逆的デュアルEGFR/HER2キナーゼ阻害剤(Boehringer Ingelheim Corp.);EGFR及びHER2阻害剤EKB−569(Wyeth);VEGF−R2及びEGFR阻害剤ZD6474(ZACTIMA.TM.としても知られている;AstraZeneca Pharmaceuticals)並びにEGFR及びHER2阻害剤BMS−599626(Bristol−Myers Squibb)などが挙げられる。
抗体型チロシンEGFRキナーゼ阻害剤には、天然リガンドによるEGFR活性化を部分的又は完全にブロックできるいずれの抗EGFR抗体又は抗体断片が含まれる。抗体型EGFRキナーゼ阻害剤として、Modjtahedi、H.等、1993、Br. J. Cancer 67:247−253;Teramoto、T.等、1996、Cancer 77:639−645;Goldstein等、1995、Clin. Cancer Res.1:1311−1318;Huang、S.M.等、1999、Cancer Res.15:59(8):1935−40;及びYang、X.等、1999、Cancer Res. 59:1236−1243に記載のものが挙げられるが、これらには限定されない。したがって、EGFRキナーゼ阻害剤は、モノクローナル抗体Mab E7.6.3(Yang、X. D.等(1999)Cancer Res.59:1236−43)若しくはMab C225(ATCC受託番号HB−8508)又はそれらの結合特異性を有する抗体若しくは抗体断片であることができる。好適なモノクローナル抗体EGFRキナーゼ阻害剤として、IMC−C225(セツキシマブ又はERBITUX.TM.としても知られている;Imclone Systems)、ABX−EGF(Abgenix)、EMD72000(Merck KgaA、Darmstadt)、RH3(York Medical Bioscience)及びMDX−447(Medarex/Merck KgaA)などが挙げられるが、これらには限定されない。
別の実施態様によれば、アンチセンス法を使用して変異体EGFRのキナーゼ活性を阻害してもよい。この手法では、例えば、アンチセンス核酸でmRNAをマスキングするか、又はリボザイムでmRNAを切断することにより、特異的mRNAの翻訳をブロックするアンチセンス核酸又はリボザイムを利用してもよい。アンチセンス技術についての一般的な考察については、例えば、Antisense DNA and RNA、(Cold Spring Harbor Laboratory、D. Melton、ed.、1988)を参照されたい。
変異体EGFR遺伝子転写の可逆的短期阻害が有用なこともある。このような阻害は、siRNAを使用することにより可能である。RNA干渉(RNAi)技術により、低分子二本鎖RNA(siRNAs)などの低分子RNAを用いることにより、遺伝子の発現を抑制する。そして、この技術では、RNAiが、植物から昆虫、哺乳動物にいたるまでの数多くの生体のほとんどの細胞における遺伝子サイレンシングのための自然生物学的機構であるという事実を利用する(McManus等、Nature Reviews Genetics、2002、3(10) p. 737)。RNAiは、遺伝子のメッセンジャーRNAコピーである分子中間体を確実に破壊することにより、遺伝子が機能タンパク質を産生することを抑制する。siRNAを、以下のようにして、裸形態で使用し、ベクターに取り込むことができる。さらに、アプタマーを使用して変異体EGFR遺伝子転写を特異的に阻害することもできる。これについては、例えば、米国特許第6,699,843号を参照されたい。本発明に有用なアプタマーを、SELEXプロセスを用いて同定してもよい。SELEXの方法は、例えば、米国特許第5,707,796号、第5,763,177号、第6,011,577号、第5,580,737号、第5,567,588号及び第5,660,985号に記載されている。
「アンチセンス核酸」又は「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、RNA又はDNA分子における相補的塩基と細胞質内条件下でハイブリダイズしたとき、後者の役割を阻害する一本鎖核酸分子である。RNAがメッセンジャーRNA転写物の場合には、アンチセンス核酸は逆方向転写物又はmRNA干渉相補的核酸である。現在使用されている「アンチセンス」は、広義にはRNA−RNA相互作用、RNA−DNA相互作用、リボザイム、RNAi、アプタマー及びRnase−H介在性停止を含む。
リボザイムは、他の一本鎖RNA分子をDNA制限エンドヌクレアーゼに多少類似している方法で特異的に切断する能力を有するRNA分子である。リボザイムは、あるmRNAが自身のイントロンを切除する能力を有するという観察結果から見出された。これらのリボザイムのヌクレオチド配列の改変により、研究者は、RNA分子における特異的ヌクレオチド配列を認識し、それを切断する分子を設計することができた(Cech、1989、Science 245(4915)p.276)。これらは配列特異的であるので、特定の配列を有するmRNAのみが不活性化される。
アンチセンス核酸分子は、細胞での発現のための組換え遺伝子によりコードされることができるか(例えば、米国特許第5,814,500号;米国特許第5,811,234号)又は合成することもできる(例えば、米国特許第5,780,607号)。
siRNAは、Brummelkamp等、Science 296;550−553,2002、Jaque等、Nature 418;435−438、2002、Elbashir S.M.等(2001)Nature、411:494−498、McCaffrey等(2002)、Nature、418: 38−39;Xia H等(2002)、Nat.Biotech.20:1006−1010、Novina等(2002)、Nat.Med.8:681−686及び米国特許出願第20030198627号に記載されている。
突然変異した受容体及び正常な受容体の両方を阻害するゲフィチニブなどの薬剤を使用することに対するこのような療法の重要な利点は、突然変異したEGFRに対して特異的に直接作用するsiRNAは、野生型EGFRを阻害をしないはずであるということである。下痢及び皮膚炎を含むゲフィチニブ治療の「副作用」は機能を必要とする正常組織におけるEGFRの阻害の結果であると一般的に思われているので、このことは意味がある。
別の実施態様によれば、化合物は、キナーゼドメインに少なくとも一つの相違があるEGFRをコードするヒト配列に特異的なアンチセンス分子である。投与治療剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に天然核酸からの化学修飾を有する合成オリゴヌクレオチド、又はRNAなどのアンチセンス分子を発現する核酸構築物でもよい。アンチセンス配列は、標的EGFR遺伝子のmRNAに相補的であり、標的遺伝子産物の発現を阻害する(例えば、Nyce等(1997)Nature 385:720を参照されたい。)。アンチセンス分子は、RNAseHの活性化又は立体障害により、翻訳に利用できるmRNAの量を減少させることで遺伝子発現を阻害する。一つの又は複数のアンチセンス分子の組み合わせを投与することもできる。組み合わせは、単一の標的遺伝子とは異なる複数の異なる配列、又はいくつかの異なる遺伝子を補完する配列を含んでなることができる。
好ましい標的遺伝子は、キナーゼドメインに少なくとも一つの核酸の相違を有するEGFRである。一般的に、アンチセンス配列は、動物宿主と同じ起源の種を有する。
アンチセンス分子は、適切なベクターにおける標的遺伝子配列の全て又は一部分の発現により産生してもよい。ここで、ベクターは、標的細胞に導入し、発現させる。転写開始は、アンチセンス鎖をRNA分子として産生するように配向させる。アンチセンスRNAは、内在センス鎖mRNAとハイブリダイズすることにより、標的遺伝子の発現をブロックする。天然転写開始領域又は外来転写開始領域を用いてもよい。
プロモーターは、生体外組換え法によるか、又は染色体への配列の相同組み込みの結果として導入してもよい。筋細胞中で活性である多くの強力なプロモーターは、βアクチンプロモーター、SV40前期及び後期プロモーター、ヒトサイトメガロウィルスプロモーター、レトロウイルスLTRなどをはじめとして当該技術分野において公知である。転写ベクターは、一般的に核酸配列の挿入を提供するプロモーター配列付近に位置する都合のよい制限部位を有する。転写開始領域、標的遺伝子又はその断片、及び転写終結領域を含んでなる転写カセットを調製してもよい。転写カセットを、種々のベクター、例えば、プラスミド;レトロウイルス、例えば、レンチウイルス;アデノウイルス;等に導入してもよい。ここで,ベクターは、一時的又は安定的に、通常少なくとも約1日、より一般的には少なくともほぼ数日間、細胞に維持されることができるものである。
また、アプタマーも有用である。アプタマーは、有望な新しい種類の治療用オリゴヌクレオチド又はペプチドであり、生体外で、例えば、リガンド受容体などの高親和性を有する一定の標的に特異的に結合させるために選択される。それらの結合特性は、オリゴヌクレオチドが分子内核酸塩基対により一緒に保持される三次元構造を形成する能力を反映したものと思われる。アプタマーは、標的タンパク質、リガンド(脂質、炭水化物、代謝物質など)と相互作用する、正常及び改変されたものでもよい合成DNA、RNA又はペプチド配列(例えば、ペプチド核酸(PNA)、チオリン酸化DNAなど)である。さらなる実施態様によれば、変異体EGFRに特異的なRNAアプタマーを、治療法として細胞に導入するか、又は細胞で発現させることができる。
ペプチド核酸(PNA)は、ある点では、オリゴヌクレオチド及びそれらの類似体と同様であり、したがって、DNA及びRNAに似ている化合物である。PNAにおいては、オリゴヌクレオチドのデオキシリボース主鎖が、擬ペプチド主鎖により置き換えられている(Nielsen等、1991 Science 254、1457−1500)。各サブユニット又はモノマーは、この主鎖に結合して天然又は非天然核酸塩基を有している。一つのこのような主鎖は、アミド結合を介して連結したN(2−アミノエチル)グリシンの繰り返し単位から構成されている。PNAは、ワトソン−クリック塩基対及びヘリックスフォールドにより相補的核酸とハイブリダイズする。擬ペプチド主鎖により、優れたハイブリダイゼーション特性(Egholm等、Nature(1993)365、566−568)、酵素分解耐性(Demidov等、Biochem. Pharmacol.(1994)48、1310−1313)及び種々の化学修飾の利用(Nielsen and Haaima Chemical Society Reviews (1997)73−78)が提供される。変異体EGFRに特異的なPNAは、治療手段として細胞に導入するか又は細胞中で発現できる。PNAは、例えば、米国特許出願第20040063906号に記載されている。
好ましい実施態様によれば、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、エルロチニブである。
第一工程において、本発明の第一の方法は、前記患者から単離された試料中におけるBRCA1の発現レベルを測定することを含んでなる。
本明細書で使用される用語「試料」は、被験者から得ることができるいずれかの試料に関する。試料は、体液試料又は組織試料を含む、哺乳動物(例えば、ヒト)からの種々の源から採取することができる。採取試料は、ヒト正常及び腫瘍試料、毛髪、血液、他の生体液、細胞、組織、器官又は体液、例えば、脳組織、血液、血清、唾液を含む痰、血漿、乳頭アスピラント(nipple aspirant)、滑液、脳脊髄液、汗、尿、糞便、膵液、骨梁液(trabecular fluid)、脳脊髄液、涙、気管支洗浄液、ぬぐい液(swabbing)、気管支アスピラント(bronchial aspirant)、***、前立腺液、前頸部液(precervicular fluid)、膣液、および***前液(pre−ejaculate)であることができるが、これらには限定されない。好適な組織試料として、種々の腫瘍又は癌組織、又は器官組織、例えば、生体検査で採取されるものなどがある。
特定の実施態様によれば、前記試料は、腫瘍細胞を含有するいずれかの試料、好ましくは腫瘍組織試料又はその一部分などである。好ましくは、前記腫瘍組織試料は、抗癌治療を受けているか、あるいは以前に受けたことがある、NSCLCを患っている被験者からの肺腫瘍組織試料である。前記試料は、関連医療技術における当業者に周知の方法を用いることにより、従来の方法、例えば、生体検査により得ることができる。生体検査からの試料を得る方法には、塊の粗分割(gross apportioning)若しくは顕微解剖又は他の当該技術分野において知られている細胞分離法などがある。腫瘍細胞は、さらに穿刺吸引細胞診から得ることができる。試料の保存及び取扱いを単純化するために、これらを、ホルマリン固定且つパラフィン包埋するか、又は急速冷凍し、極低温媒体への浸漬により冷凍固化性媒体、例えば、OCT化合物でまず凍結した後包埋することができる。
本明細書で使用される用語「発現レベル」又はその文法的に同等な用語は、被験者における核酸、例えば、RNA若しくはmRNA、又は遺伝子のタンパク質の量の測定値、あるいは前記被験者における遺伝子若しくはタンパク質の活性レベルを意味する。
当業者が理解するように、BRCA1遺伝子の発現レベルは、前記遺伝子のmRNA発現レベルを求めることによるか、又は前記遺伝子によりコードされたタンパク質レベル、すなわち、BRCA1タンパク質を求めることにより測定できる。
したがって、特定の実施態様によれば、BRCA1遺伝子の発現レベルは、前記遺伝子のmRNA発現レベルを求めることにより測定される。
BRCA1遺伝子のmRNAレベルを測定するために、生体試料を処理して組織又は細胞構造を物理的又は機械的に破壊し、細胞内成分を水溶液又は有機溶液に放出してさらなる分析用の核酸を調製してもよい。核酸は、市販の試薬を用いて、当業者に知られている方法により試料から抽出される。次に、RNAを、当該技術分野における典型的な方法のいずれかにより凍結試料又は採取したばかりの試料から抽出する[Sambrook、Fischer and Maniatis、Molecular Cloning、a laboratory manual、(2nd ed.)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、(1989)]。抽出過程中にRNAが分解しないように注意することが好ましい。
発現レベルは、上記で定義した被験者から得たホルマリン固定、パラフィン包埋した組織試料から得たmRNAを用いて求めることができる。この場合、組織試料をまず脱パラフィンする。典型的な脱パラフィン法には、パラフィン包埋した試料を、例えば、キシレンなどの有機溶媒で洗浄することが含まれる。脱パラフィン試料は、低級アルコールの水溶液で再水和することができる。好適な低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールなどがある。脱パラフィン試料を、例えば、低級アルコール性溶液の濃度を減少させながら連続洗浄して元に戻すこともできる。別法として、試料を、同時に脱パラフィン及び再水和する。次に、試料を溶解し、RNAを試料から抽出する。
全ての遺伝子発現プロファイリング法(リアルタイム−PCR、SAGE又はTaqMan(登録商標))が先述した本発明の態様を実施するのに好適であるが、mRNA発現レベルは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT−PCR)により求めることがよくある。検出は、個々の試料又は組織マイクロアレイで実施できる。
特定の実施態様によれば、BRCA1遺伝子のmRNA発現レベルを、定量PCR、好ましくはリアルタイム−PCRにより求める。
種々の試料のmRNA発現値を正規化するために、試験試料における意図するmRNAの発現レベルとコントロールRNAの発現とを比較することが可能である。本明細書で使用される「コントロールRNA」は、発現レベルが、非腫瘍形成細胞に対して腫瘍細胞において変化しないか又は限られた量だけ変化するRNAに関する。好ましくは、コントロールRNAは、ハウスキーピング遺伝子由来であり、構成的に発現され、必須細胞機能を果たすタンパク質をコードするmRNAである。本発明に使用されるハウスキーピング遺伝子としては、例えば、β−2−ミクログロブリン、ユビキチン、18−Sリボソームタンパク質、サイクロフィリン、GAPDH及びβ−アクチンなどが挙げられる。特定の実施態様によれば、コントロールRNAは、β−アクチンmRNAである。一実施態様によれば、相対的遺伝子発現定量化を、内在性コントロールとしてのβアクチン及び標準物質としての市販のRNAコントロールを使用する比較Ct法に準じて算出しておこなう。最終結果を、式 2−(試料ΔCt−標準物質ΔCt)に準じて求める。ここで、標準物質と試料のΔCT値は、βアクチン遺伝子のCT値から標的遺伝子のCT値を減ずることにより求める。
被験者間のばらつき(例えば、年齢、人種などに関する側面)のため、BRCA1遺伝子についての絶対的基準値を確立することは(ほとんど不可能ではないにせよ)極めて困難である。したがって、この場合、BRCA1遺伝子の「高」又は「低」発現についての基準値を、BRCA1の発現レベルについての正常被験者(すなわち、NSCLCと診断されていない人)から単離された試料群の試験を含む従来の手段により百分率を算出することにより求める。その結果、例えば、「高」レベルを、好ましくは、BRCA1遺伝子についての発現レベルが正規母集団において50パーセンタイルと等しいかそれを超える試料、例えば、発現レベルが正規母集団における60パーセンタイルと等しいかそれを超える試料、発現レベルが正規母集団における70パーセンタイルと等しいかそれを超える試料、発現レベルが正規母集団における80パーセンタイルと等しいかそれを超える試料、発現レベルが正規母集団における90パーセンタイルと等しいかそれを超える試料、及び発現レベルが正規母集団における95パーセンタイルと等しいかそれを超える試料に割り当てる。別の実施態様によれば、発現レベルは、中央値に対する値に従って、「高」又は「低」として割り当てられる。この中央値は、試料のより高い半分とより低い半分とを分離する値である。中央値を「高」発現レベル及び「低」発現レベルの患者を選択するためのカットオフ値として用いることにより、集団の最大半分が中央値よりも小さい値を有し、最大半分が中央値よりも大きい値を有している。
別の特定の実施態様によれば、BRCA1遺伝子の発現レベルは、前記遺伝子によりコードされているタンパク質レベル、すなわち、BRCA1タンパク質を求めることにより測定される。
実際に、BRCA1タンパク質レベルを定量化するために、本発明の範囲内において、いずれかの従来の方法を使用することができる。前記タンパク質レベルは、従来の方法、例えば、BRCA1タンパク質(又は抗原決定基をを含むその断片)に特異的に結合する能力を有する抗体を用い、続いて得られた抗体−抗原複合体を定量化することにより定量することができるが、これには限定されない。
これらのアッセイで用いる抗体は、例えば、ポリクローナル血清、ハイブリドーマ上清又はモノクローナル抗体、抗体断片、Fv、Fab、Fab’ y F(ab’)2、ScFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体及びヒト化抗体であることができる。それに加えて、抗体を標識してもいいし、標識しなくてもよい。使用できるマーカーの具体例として、放射性同位元素、酵素、蛍光、化学発光試薬、酵素基質又は補因子、酵素阻害剤、粒子、着色剤などが挙げられるが、これらには限定されない。本発明に使用できる多種多様な周知のアッセイがある。これらのアッセイでは、非標識抗体(一次抗体)及び標識抗体(二次抗体)が使用される。これらの手法には、ウエスタンブロット若しくはウエスタントランスファ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、競合EIA(酵素免疫測定)、DAS−ELISA(二重抗体サンドイッチELISA)、免疫細胞化学法及び免疫組織化学法、バイオチップの使用に基づく方法、特異的抗体を含むタンパク質マイクロアレイ、又はディップスティックなどの形式でのコロイド沈殿に基づく方法などが含まれる。BRCA1タンパク質を検出し且つ定量する他の方法には、アフィニティクロマトグラフィー、結合リガンドアッセイなどの方法などが挙げられる。
一方、BRCA1タンパク質レベルの測定は、集めた被験者試料を含む組織マイクロアレイ(TMA)を構成し、免疫組織化学法によりBRCA1タンパク質レベルを測定することにより実施できる。免疫染色強度は、2人の異なる病理学者により評価され、方法の再現性を維持するために、均一で明確なカットオフ基準を用いて記録する。不一致は、同時再評価により解決できる。簡単に述べると、免疫染色の結果は、腫瘍細胞における発現及び各マーカーについての特異的カットオフを考慮して、陰性発現(0)、陽性発現については低発現(1+)、中発現(2+)及び高発現(3+)で記録する。一般的基準として、再現性を容易にし、そして可能であれば、生物学的事象を説明するために、カットオフ値を選択した。
本明細書で使用される用語「BRCA1」又は「乳癌感受性遺伝子1」は、家族性乳癌との遺伝的関連に基づいて同定される腫瘍抑制遺伝子を指す。腫瘍抑制遺伝子は、正常細胞における220キロダルトンの核リンタンパク質をコードする。ヒトにおけるBRCA1遺伝子の突然変異は、乳癌と卵巣癌へのなりやすさと関連している。実際、BRCA1突然変異及びBRCA2突然変異は、家族性乳癌の大部分に関与している。BRCA1遺伝子及びBRCA2遺伝子における遺伝性突然変異は、全ての乳癌及び卵巣癌のほぼ7〜10%を占める。BRCA突然変異を有する女性は、乳癌の生涯リスクが56〜87%であり、卵巣癌の生涯リスクが27〜44%である。さらに、BRCA1遺伝子における突然変異は、種々の他の腫瘍、例えば、増殖性***疾患(PBD)、腹膜の乳頭漿液性癌(PSCP)及び前立腺癌とも関連があるとされている(Schorge等、J.Nat. Ccer/、90:841−845(1998);Arason、Am.J.Hum.Genet.、52:711−717(1993);Langston等、New E7Zg.J;Med.、334:137−142(1996))。
第二工程では、本発明の第一の方法は、第一工程で得られたBRCA1の発現レベルと標準試料とを比較することを含む。
本明細書で使用される用語「標準試料」、「コントロール試料」又はそれらの文法的に等価なものは、本発明の方法のための基準核酸又はタンパク質のソースとして使用される基準核酸又はタンパク質を含有する試料に関する。好ましい実施態様によれば、標準試料は、補助化学療法処置の前に得られた、肺癌被験者、好ましくはNSCLC被験者由来の腫瘍組織生検試料の同量をプールすることにより得られる。
次に、BRCA1核酸又はタンパク質レベルを前記標準試料で測定後、得られた値を試験試料におけるタンパク質又は核酸のレベルと比較する。これにより、試験試料を「低」発現、「通常」発現又は「高」発現として割り当てることができる。基準レベルを得る試料の採取は、好ましくは同種の癌、すなわち、NSCLCを患っている被験者から構成される。
本明細書で使用される表現「発現の低下」とは、一定の遺伝子の発現レベルが標準試料における発現レベルに対して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%あるいはそれを超える減少変化があることを指す。
本明細書で使用されている表現「発現の増加」とは、一定の遺伝子の発現レベルが標準試料における発現レベルに対して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%あるいはそれを超える増加変化があることを指す。
本明細書で使用される、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に言及したときの表現「陽性反応」とは、生理食塩水コントロール又はプラシーボを用いて得られた反応よりも実質的によい反応を指す。この反応は、(1)減速及び完全な成長停止を含む腫瘍成長のある程度の阻害;(2)腫瘍細胞数の減少;(3)腫瘍サイズの減少;(4)隣接する末梢器官及び/又は組織への腫瘍細胞浸潤の阻害(すなわち、減少、減速又は完全停止);(5)転移の阻害;(6)腫瘍の退行又は拒絶を生じる可能性のある抗腫瘍免疫反応の高まり;(7)腫瘍と関連する一つ以上の症状のある程度の軽減;(8)治療後の生存期間の増加;及び/又は(9)治療後の一定の時点での死亡率の減少など(これらには限定されない)の患者に対するメリットを示す任意の評価項目を用いて評価できる。
また、陽性臨床反応も、臨床転帰の種々の測定値で表すことができる。また、陽性臨床転帰は、同等の臨床診断を有する患者集団の転帰に対する個人の転帰の関連で考えることができ、無再発期間(RFI)の間における増加、集団における全生存期間(OS)と比較した生存時間の増加、無病生存期間(DFS)の増加、遠隔再発期間(DRFI)の増加などの種々の評価項目を用いて評価できる。陽性臨床反応の可能性の増加は、癌再発の可能性の減少に相当する。
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に言及したときの、本明細書で使用される用語「陰性反応」は、治療により、評価されている癌の症状の減少がないか、あるいは治療されている癌の症状の増加を生じることを意味する。
本発明の第一の方法は、チロシンキナーゼ阻害剤が以前に化学療法で治療しなかった患者に一次治療として使用されるとき、及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤が以前に通常の化学療法で治療したが、応答しなかったか、あるいは応答が停止した患者に二次治療として使用されるときの両方で、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する、EGFRに少なくとも突然変異を有する肺癌患者の応答を予測するのに好適である。
本明細書で使用される用語「第一選択治療」又は「第一選択療法」は、当該技術分野において認識されている用語であり、一次治療又は一次療法とも称される外科治療及び/又は放射線治療と組み合わせてもよい癌の第一化学療法処置を指すものと理解される。肺癌の治療のための第一選択として使用することができる典型的な抗腫瘍化合物には、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びエトポシドなどの植物性アルカロイド;ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシンを含むアントラサイクリン系抗生物質;フルオロウラシル;ブレオマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン、ダクチノマイシンを含む抗生物質;カンプトテシン及びその類似体などのトポイソメラーゼ阻害剤;並びにシスプラチン及びその類似体、例えば、カルボプラチンを含む白金化合物などがあるが、これらには限定されない。使用するのに好適な他の従来の化学療法剤は、当業者に知られており、アスパラギナーゼ、ブスファン(busuffan)、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、リン酸エストラムスチンナトリウム、フロクシウリジン、フルオロウウラシル(5−FU)、ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミンHCl(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート(MTX)、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、チオグアニン、チオテパ、アムサクリン(m−AMSA)、アザシチジン、ヘキサメチルメラミン(HMM)、ミトグアゾン(メチル−GAG;メチルグリオキサールビスグアニルヒドラゾン;MGBG)、セムスチン(メチル−CCNU)、テニポシド(VM−26)及び硫酸ビンデシンなどが挙げられる。
本明細書で使用される用語「第二選択治療」又は「第二選択療法」は、当該技術分野において認識されている用語であり、初回又は一次治療(第一選択療法又は一次療法)の効力がないか、あるいは効力が停止したときにおこなわれる化学療法処置を指すと理解される。
本発明の治療法
本発明の発明者らは、驚くべきことに、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による治療に対する、EGFR受容体に少なくとも突然変異を有する肺癌患者の応答が、患者が当該患者から単離した試料中のBRCA1レベルの減少を示すときに向上することを見出した。したがって、この結果は、患者が低BRCA1レベルを示すときは、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤を用いて、EGFR受容体に少なくとも突然変異を有する肺癌患者のより効果的な治療を可能とする。したがって、別の態様によれば、本発明は、肺癌の治療を必要とし、EGFR受容体に少なくとも突然変異を有する患者の肺癌の治療方法であって、BRCA1レベルの減少を示す患者にEGFRチロシンキナーゼ阻害剤を投与することを含んでなる方法に関する。また、本発明によれば、BRCA1レベルの減少を示し且つEGFR受容体に少なくとも突然変異を有する患者におけるEGFR受容体に少なくとも突然変異を有する肺癌の治療に使用されるチロシンキナーゼ阻害剤が提供される。また、本発明によれば、EGFR受容体に少なくとも突然変異を有し且つBRCA1レベルの減少を示す患者における肺癌の治療用医薬の製造のためのチロシンキナーゼ阻害剤の使用が提供される。
本発明の発明者らは、驚くべきことに、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による治療に対する、EGFR受容体に少なくとも突然変異を有する肺癌患者の応答が、患者が当該患者から単離した試料中のBRCA1レベルの減少を示すときに向上することを見出した。したがって、この結果は、患者が低BRCA1レベルを示すときは、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤を用いて、EGFR受容体に少なくとも突然変異を有する肺癌患者のより効果的な治療を可能とする。したがって、別の態様によれば、本発明は、肺癌の治療を必要とし、EGFR受容体に少なくとも突然変異を有する患者の肺癌の治療方法であって、BRCA1レベルの減少を示す患者にEGFRチロシンキナーゼ阻害剤を投与することを含んでなる方法に関する。また、本発明によれば、BRCA1レベルの減少を示し且つEGFR受容体に少なくとも突然変異を有する患者におけるEGFR受容体に少なくとも突然変異を有する肺癌の治療に使用されるチロシンキナーゼ阻害剤が提供される。また、本発明によれば、EGFR受容体に少なくとも突然変異を有し且つBRCA1レベルの減少を示す患者における肺癌の治療用医薬の製造のためのチロシンキナーゼ阻害剤の使用が提供される。
本明細書で使用される用語「治療」又はその文法的に等価なものは、治療効果及び/又は予防効果が得られることを意味する。治療効果は、治療している基礎疾患が解消又は改善されることを意味する。また、治療効果は、患者が依然として基礎疾患に悩んでいるにもかかわらず基礎疾患に関連する生理的症状の一つ以上が解消又は改善して患者の改善が見られることで得られる。予防効果については、組成物を、特定の疾患が生じる恐れのある患者、あるいは疾患の診断がなされていない場合でも疾患の生理的症状の一つ以上が報告されている患者に投与することができる。
用語「肺癌」は、本発明の第一の方法に関連して上記で説明した。好ましい実施態様によれば、肺癌は、非小細胞肺癌である。
用語「EGFRチロシンキナーゼ阻害剤」は、本発明の第一の方法に関連して詳細に説明した。好ましい実施態様によれば、チロシンキナーゼ阻害剤は、エルロチニブである。
好ましい実施態様によれば、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、EGFR遺伝子に一つ以上の突然変異を有する患者に投与される。肺腫瘍に一般的に見られるEGFR遺伝子における突然変異は、本発明の第一の方法に関連して上記で定義したものである。好ましい実施態様によれば、EGFR突然変異は、T790M突然変異、L858R突然変異、エクソン19における欠失又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施態様によれば、患者は、チロシンキナーゼ阻害剤に対する感受性を付与することが知られている、L858R突然変異及びエクソン19における欠失、並びにチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性を付与するT790M突然変異からなる群から選択される突然変異を一つ以上有する。
次に、チロシンキナーゼ阻害剤を、当該技術分野において知られているようなBRCA1レベルの減少を示す患者に投与する。投与経路は、静脈内(LV)、筋肉内(LM)、皮下(SC)、皮内(ID)、腹腔内(LP)、くも膜下腔内(LT)、胸膜内、子宮内、直腸、膣内、局所的、腫瘍内などでよい。チロシンキナーゼ阻害剤は、注射によるか、あるいは時間をかけて徐々に点滴することにより非経口投与でき、蠕動手段により送達できる。
投与は、経粘膜的手段又は経皮的手段によるものでよい。経粘膜的投与又は経皮的投与には、バリア透過に適切な浸透剤を製剤に使用する。このような浸透剤は、当該技術分野において一般的に知られており、例えば、経粘膜的投与については、胆汁塩及びフシジン酸誘導体などが挙げられる。さらに、洗浄剤を使用して浸透を容易にしてもよい。経粘膜的投与は、例えば、鼻内噴霧によるか、あるいは座剤を用いておこなってもよい。
経口投与の場合、チロシンキナーゼ阻害剤は、カプセル、錠剤及びトニックなどの通常の経口投与形態に製剤化する。
局所的投与の場合、医薬組成物(キナーゼ活性の阻害剤)を、当該技術分野において一般的に知られている外用軟膏剤、軟膏、ゲル剤又はクリーム剤に製剤化する。
典型的には、チロシンキナーゼ阻害剤を、例えば、単位投与量を注射することにより静脈内投与する。本発明の治療組成物に言及して使用するときの用語「単位投与量」は、被験者のための一回投与量として好適な物理的に個別な単位を指し、この場合の各単位は、必要とされる希釈剤、すなわち、担体又はビヒクルとの関連で、所望の治療効果を生じるように算出された所定量の活性物質を含有する。
組成物は、製剤と適合する方法で且つ治療的に有効な量で投与される。投与すべき量とタイミングは、治療される被験者、被験者のシステムが活性成分を利用する能力、及び所望の治療効果の程度により異なる。投与するのに必要とされる活性成分の正確な量は、専門家の判断により異なり、各個人に特有である。
本発明の方法を実施するのに有用なチロシンキナーゼ阻害剤は、本明細書に記載されている。当業者に一般的に知られているような、意図する使用に好適である活性成分を含有する製剤又は薬物送達システムを使用できる。経口、直腸、局所又は非経口(吸入、皮下、腹腔内、筋肉内及び静脈内を含む)投与に好適な薬学的に許容しうる担体は、当業者に知られている。担体は、製剤の他の成分と適合し、その受容者に有害ではない点で薬学的に許容しうるものでなければならない。
本明細書で使用される用語「薬学的に許容しうる」、「生理学的に許容しうる」及びそれらの文法的な変形は、組成物に言及したときには、担体、希釈剤及び試薬が相互交換可能に使用され、そしてこれらの物質が望ましくない生理学的効果を生じることなく哺乳動物に投与できることを表す。
非経口投与に好適な製剤は、都合のよいものとしては、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物の無菌水性製剤が挙げられる。したがって、このような製剤は、都合のよいものとしては、蒸留水、蒸留水にブトウ糖5%添加したもの又は生理食塩水を含有する。また、有用な製剤には、適切な溶媒で希釈すると上記非経口投与に好適な溶液となる、上記化合物を含有する濃縮液又は固形物などがある。
腸内投与の場合、化合物を、カプセル、カシェ剤、錠剤又はロゼンジなどの個別単位の不活性担体に配合できる。この場合、個別単位は、所定量の活性化合物を、粉末又は顆粒として、あるいは水性液体又は非水性液体における懸濁液又は溶液、例えば、シロップ、エリキシル、乳剤又はドラフトとして含有する。好適な担体は、澱粉又は糖であることができ、滑剤、矯味矯臭剤、バインダー及び同じ性質の他の物質などを含んでもよい。
錠剤は、必要に応じて一種以上の補助成分とともに、圧縮又は成形により作成することができる。圧縮錠剤は、好適な機械で、活性化合物を、易流動性形態、例えば、粉末又は顆粒剤で、必要に応じて補助成分、例えば、バインダー、滑剤、不活性希釈剤、表面活性又は分散剤と混合して、圧縮することにより調製できる。成形錠剤は、好適な機械で、活性化合物粉末といずれかの好適な担体との混合物を成形することにより調製できる。
シロップ又は懸濁剤は、活性化合物を糖、例えば、ショ糖の濃縮水溶液に添加(これにさらにいずれかの補助成分を添加してもよい)することにより調製できる。このような補助成分は、矯味矯臭剤、糖結晶化抑制剤又は他の成分の溶解度増加剤、例えば、多価アルコール、例えば、グリセロール又はソルビトールを含有してもよい。
直腸投与用製剤は、座剤の基剤用の通常の担体、例えば、ココアバター又はWitepsol S55(ドイツ国のDynamite Nobel Chemical社の商標)を用いた座剤として提供してもよい。
経口投与製剤は、促進剤を用いて提供してもよい。経口的に許容しうる吸収促進剤には、ラウリル硫酸ナトリウム、パルミトイルカミチン(camitine)、Laureth−9、ホスファチジルコリン、シクロデキストリン及びそれらの誘導体などの界面活性剤;デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム及びフシジン酸ナトリウムなどの胆汁塩;EDTA、クエン酸及びサリチル酸塩を含むキレート化剤;並びに脂肪酸類(例えば、オレイン酸、ラウリン酸、アシルカミチン、モノ及びジグリセリド)などがある。他の経口吸収促進剤には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、CHAPS(3−(3−コールアミドプロピル)−ジメチルアンモニオ−1−プロパンスルホネ−ト)、Big−CHAPS(N、N−ビス(3−D−グルコンアミドプロピル)コールアミド)、クロロブタノール、オクトキシノール−9、ベンジルアルコール、フェノール類、クレゾール類及びアルキルアルコール類などがある。本発明にとりわけ好ましい経口吸収促進剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
また、チロシンキナーゼ阻害剤は、リポソーム又は微小球(又は微小粒子)で投与してもよい。患者への投与用リポソーム及び微小球を調製する方法は、当業者に周知である。米国特許第4,789,734号(内容は、引用することによりその全体が本明細書の一部とされる)は、リポソームにおける生物学的物質をカプセル化する方法を記載している。基本的には、物質を水溶液に溶解し、適切なリン脂質及び脂質を、必要ならば界面活性剤とともに添加し、必要に応じて透析するか、あるいは超音波処理する。既知の方法の再検討はG. Gregoriadis、Chapter 14,“Liposomes” Drug Carriers in Biology and Medicine(生物及び医学におるけ薬物担体)、pp.287−341(Academic Press,1979)により提供される。
ポリマー又はタンパク質から形成された微小球は、当業者には周知であり、胃腸管を介して直接血流に入るように作製できる。あるいは、化合物を組み入れ、微小球又は微小球の複合体を埋め込み、数日〜数カ月徐放させることもできる。例えば、米国特許第4,906,474号,第4,925,673号及び第3,625,214号並びにJein、TIPS 19:155−157(1998)(これらに開示されている内容は、引用することによりその全体が本明細書の一部とされる)を参照されたい。
一実施態様によれば、チロシンキナーゼ阻害剤は、静脈内投与後に毛細血管床にとどまる好適な大きさにしたリポソーム又は微粒子に製剤化することができる。リポソーム又は微粒子が虚血組織の周囲の毛細血管床にとどまるとき、薬剤は最も有効である部位に局所投与できる。虚血組織を標的とするのに好適なリポソームは、一般的に約200ナノメータ未満であり、また典型的には、例えば、米国特許第5,593,688号(Baldeschweiler、発明の名称「Liposomal targeting of ischemic tissue」(虚血組織のリポソーム標識)、(ここに開示されている内容は、引用することによりその全体が本明細書の一部とされる)に開示されているように、単層ベシクルである。
好ましい微粒子は、ポリグリコリド、ポリラクチド及びそれらの共重合体などの生分解性ポリマーから調製されたものである。当業者は、所望の薬物放出速度及び所望の投与量などの種々の要因に応じて適切な担体システムを容易に決めることができる。
一実施態様によれば、製剤は、カテーテルを介して血管内に直接に投与される。投与は、例えば、カテーテルにおける穴を介して生じることができる。活性化合物の半減期が比較的長い(1日〜1週間あるいはそれ以上)これらの実施態様では、製剤は、生分解性高分子ヒドロゲル、例えば、米国特許第5,410,016号(Hubbell等)に開示されているようなものに含ませることができる。これらの高分子ヒドロゲルは、組織内腔内に送達され、ポリマーが分解するにつれて活性化合物が経時的に放出される。必要に応じて、高分子ヒドロゲルは、そこに分散された活性化合物を含む微粒子又はリポソームを有することができ、活性化合物を制御放出する別の機構が提供される。
製剤は、単位投与形態での提供が都合よく、薬学技術分野において周知である方法のいずれかにより調製できる。全ての方法は、活性化合物を一種以上の補助成分を構成する担体と関連される工程を含む。一般的に、製剤は、活性化合物を均一且つ均質に液状担体又は微細固体担体と関連させた後、必要に応じて生成物を成形して所望の単位投与形態とすることにより調製する。
製剤は、さらに医薬製剤の技術分野で利用されている一種以上の任意の補助成分、例えば、希釈剤、緩衝液、矯味矯臭剤、バインダー、界面活性剤、増粘剤、滑剤、懸濁剤、防腐剤(酸化防止剤)などを含むことができる。
本発明の方法の化合物は、気道への投与のために、噴霧器用鼻吸入剤、エアロゾル又は溶液、あるいは吹送用超微粒粉末として、単独又はラクトースなどの不活性担体と組み合わせて提供してもよい。このような場合、活性化合物の粒子は、直径が50ミクロン未満が好適であり、10ミクロン未満が好ましく、2〜5ミクロンがより好ましい。
一般的に、経鼻投与の場合、弱酸性pHが好ましい。好ましくは、本発明の組成物のpHは、約3〜5であり、より好ましくは約3.5〜約3.9であり、最も好ましくは3.7である。塩酸などの適切な酸を添加することによりpHを調整できる。
活性成分を溶解又は分散して含有する薬理学的組成物の調製は、当該技術分野においてよく理解されており、製剤に基づいて制限する必要はない。典型的には、このような組成物は、溶液又は懸濁液の形態の注射可能物として調製されるが、使用前に液状溶液又は懸濁液にするのに好適な固形物を調製してもよい。製剤は、乳剤化することもできる。
活性成分は、薬学的に許容でき、活性成分と適合し、本明細書で記載されている治療法に使用するのに好適な量の賦形剤と混合できる。このような賦形剤として、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなど、及びそれらの組み合わせが挙げられる。さらに、必要に応じて、組成物は、活性成分の有効性を高める少量の補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤などを含有することができる。
本発明により投与されるチロシンキナーゼ阻害剤は、その成分の薬学的に許容しうる塩を含むことができる。薬学的に許容しうる塩としては、無機酸、例えば、塩酸若しくはリン酸、又は有機酸、例えば、酢酸、酒石酸、マンデル酸などにより形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基とともに形成される)などが挙げられる。遊離カルボキシル基で形成される塩は、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄、及び有機塩基、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から誘導することもできる。
生理学的に許容しうる担体は、当業者に周知である。液状担体の典型的な例として、活性成分及び水の他に物質を含有しないか、あるいは生理学的pH値でのリン酸ナトリウムなどの緩衝液、生理食塩水又はそれらの両方、例えば、リン酸緩衝生理食塩水を含有する無菌水溶液がある。さらにまた、水性担体は、一種以上のの緩衝塩と、塩、例えば、塩化ナトリウム及び塩化カリウム、ブドウ糖、ポリエチレングリコール及び他の溶質とを含有することができる。
液状組成物は、水の他又は水を除外して液相を含有することもできる。このような追加の液相としては、グリセリン、植物油、例えば、綿実油及び油中水型エマルジョンなどがある。
チロシンキナーゼ阻害剤が、RNA干渉(例えば、siRNA)に基づくものである場合、siRNAは、生体外転写などを用いて化学合成して生成できる。さらに、siRNA分子を、腫瘍に確認される突然変異に正確に対応するように、個々の患者に合わせてカスタマイズすることができる。siRNAは、単一ヌクレオチドだけしか異なっていないヌクレオチド配列間を識別できるので、単一のヌクレオチド置換又はいくつかのヌクレオチドの小さな欠失(両方とも本明細書に記載の腫瘍において確認されている)と関連しているEGFR遺伝子の突然変異型を一意的に標的とするsiRNAを設計することができる。
現在入手できるいくつかの遺伝子送達「ビヒクル」のいずれかにより、腫瘍にsiRNAを送達できる可能性がある。これらには、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス及びレトロウイルス、並びに化学物質介在遺伝子送達システム(例えば、リポソーム)、あるいは機械的DNA送達システム(DNAガン)などがある。このような遺伝子発現のsiRNA介在性阻害のために発現されるオリゴヌクレオチドは、長さが18〜28ヌクレオチドであろう。
本発明のキット
また、本発明によれば、BRCA1遺伝子の発現レベルを同定し、さらにEGFR遺伝子における突然変異の存在を同定するのに好適であり、同定後、肺癌を患っている患者からの試料を解析し、得られた結果に基づいて前記患者のための個別治療を設定することができるキットが提供される。したがって、別の態様によれば、本発明は、
(i)BRCA1の発現レベルを検出するための試薬と、
(ii)EGFRにおける少なくとも突然変異を検出する試薬と
を含んでなるキットに関する。
また、本発明によれば、BRCA1遺伝子の発現レベルを同定し、さらにEGFR遺伝子における突然変異の存在を同定するのに好適であり、同定後、肺癌を患っている患者からの試料を解析し、得られた結果に基づいて前記患者のための個別治療を設定することができるキットが提供される。したがって、別の態様によれば、本発明は、
(i)BRCA1の発現レベルを検出するための試薬と、
(ii)EGFRにおける少なくとも突然変異を検出する試薬と
を含んでなるキットに関する。
本明細書で使用される用語「キット」は、試料のプロセス、方法、アッセイ、分析又は操作を容易にする物品の組み合わせに関連して使用される。これらのキットにより、本発明において記載されている方法を実施するのに必要な器具が提供される。
キットの第一要素は、BRCA1遺伝子の発現レベルを検出する一連の試薬である。
特定の実施態様によれば、キットの試薬は、BRCA1遺伝子によりコードされているmRNAのレベルを特異的に検出することができる。別の実施態様によれば、キットの試薬は、BRCA1タンパク質のレベルを特異的に検出することができる。
BRCA1遺伝子によりコードされているmRNAのレベルを特異的に検出できる薬剤は、
(i)BRCA1遺伝子ヌクレオチド配列の断片を特異的に増幅できるオリゴヌクレオチドプライマー、及び
(ii)BRCA1遺伝子ヌクレオチド配列の断片に相補的なオリゴヌクレオチド プローブである。
(i)BRCA1遺伝子ヌクレオチド配列の断片を特異的に増幅できるオリゴヌクレオチドプライマー、及び
(ii)BRCA1遺伝子ヌクレオチド配列の断片に相補的なオリゴヌクレオチド プローブである。
当業者が理解するように、本発明のキットのオリゴヌクレオチドプライマー及びプローブは、遺伝子発現プロファイリングの全ての手法に使用することができる(RT−PCR、SAGE、TaqMan、リアルタイム−PCR等)。本発明のキットのプライマー及びプローブ形成部は、検出可能に標識してもよい。キットは、例えば、緩衝剤、防腐剤又はタンパク質安定剤を含んでなることもできる。キットは、さらに検出可能な標識(例えば、酵素又は基質)を検出するために必要な成分を含んでなることができる。また、キットは、評価され、試験試料と比較され得るコントロール試料又は一連のコントロール試料を含んでなることができる。キットの各要素は、個々の容器内に入れることができる。種々の容器の全てを、キットを用いて実施されたアッセイの結果を解釈するための説明書とともに、単一のパッケージに入れることができる。
BRCA1タンパク質の発現レベルを特異的に検出することができる薬剤は、BRCA1タンパク質(又は抗原決定基を含むその断片)に特異的に結合する能力を有する抗体である。本発明に用いられる抗体の例は、上記でとりあげた。本発明のキットの抗体は、タンパク質発現レベルを検出する通常の方法、例えば、ウエスタンブロット若しくはウエスタントランスファ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、競合EIA(酵素免疫測定法)、DAS−ELISA(二重抗体サンドイッチELISA)、免疫細胞化学法及び免疫組織化学法、バイオチップの使用に基づく方法、特異的抗体を含むタンパク質マイクロアレイ、又はディップスティックなどの形式でのコロイド沈殿に基づく方法などで使用できる。典型的には、キットは、ポリペプチド又は第一抗体に結合し、検出可能な標識にコンジュゲートする第二の異なる抗体を含んでなる。
キットの第二要素は、EGFR遺伝子における突然変異を検出するための一連の試薬である。試薬は、例えば、結合又はハイブリダイゼーションの違いにより、遺伝子の特定の形態又は特定の相違(単一または複数)の存在を識別することができるプローブでよい。したがって、典型的なプローブには、核酸ハイブリダイゼーションプローブ、ペプチド核酸プローブ、少なくとも一種のヌクレオチド類似体も含有するヌクレオチド含有プローブ、そして抗体、例えば、モノクローナル抗体及び本明細書に記載の他のプローブなどがある。当業者は、特定の特異性を有するプローブの調製に精通している。当業者は、種々の変数、例えば塩濃度、温度、pHの変化、そしてGC対AT塩基対の親和性の差異に影響する種々の化合物、例えば、塩化テトラメチルアンモニウムの添加など、を調整して遺伝子の二つの変異形態間の識別を最適化できる(Current Protocols in Molecular Biology(分子生物学における最新プロトコル)、F.M. Ausubel、R. Brent、R. E. Kingston、D.D. Moore、J.G. Seidman、K Struhl及びV.B. Chanda (編者)、John Wiley and Sons参照)。このような核酸ハイブリダイゼーションプローブは、二つ以上の相違する部位に及ぶことがある。特記のない限りは、核酸プローブは、塩基対の機能が保持される限りは、一つ以上の核酸類似体、標識又は他の置換基若しくは部分を含むことができる。
当業者は、キットの第二要素の性質がEGFR遺伝子における突然変異を同定するのに使用される方法により異なることは理解するであろう。
検出をディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法により実施する場合、試薬は、例えば、結合又はハイブリダイゼーションの違いにより、特定の遺伝子の形態又は特定の相違(単一または複数)の存在を識別できるプローブであることができる。したがって、典型的なプローブには、核酸ハイブリダイゼーションプローブ、ペプチド核酸プローブ、少なくとも一種のヌクレオチド類似体も含有するヌクレオチド含有プローブ、そして抗体、例えば、モノクローナル抗体及び本明細書に記載の他のプローブなどがある。当業者は、特定の特異性を有するプローブの調製に精通している。当業者は、種々の変数、例えば塩濃度、温度、pHの変化、そしてGC対AT塩基対の親和性の差異に影響する種々の化合物、例えば、塩化テトラメチルアンモニウムの添加などを調整して遺伝子の二つの変異形態間の識別を最適化できる(Current Protocols in Molecular Biology(分子生物学における最新プロトコル)、F.M. Ausubel、R. Brent、R.E. Kingston、D.D. Moore、J.G. Seidman、K Struhl及びV.B. Chanda (編者)、John Wiley and Sons参照)。このような核酸ハイブリダイゼーションプローブは、二つ以上の相違する部位に及ぶことがある。特記のない限りは、核酸プローブは、塩基対の機能が保持される限りは、一つ以上の核酸類似体、標識又は他の置換基若しくは部分を含むことができる。
検出が、ハイブリダイゼーションの前に、標的核酸の増幅をおこなうものである場合、キットは、遺伝子の一つ以上の保存領域に対応し、標的配列、プライマーを増幅するための縮重プライマーを含む、PCR又はリガーゼ連鎖反応(LCR)をおこなうのに適している試薬(例えば、Landegran等、1988.Science 241:1077−1080;及びNakazawa等、1994 Proc. Natl. Acad. Sci. USA91:360−364参照)を含んでなる。
別の増幅法には、以下の方法などがある:自家持続配列複製法(Guatelli等、1990.Proc. Natl. Acad. Sci.USA87: 1874−1878参照)、転写増幅システム(Kwoh等、1989.Proc. Natl. Acad. Sci. USA86:1173−1177参照);Qbレプリカーゼ(Lizardi等、1988.BioTechnology 6:1197参照)又はいずれかの他の核酸増幅法。増幅後、当業者に周知の手法を用いて、増幅された分子を検出する。これらの検出スキームは、このような分子が極めて少ない数で存在する場合には、核酸分子の検出にとりわけ有用である。
本発明に有用なプライマーは、タンパク質のアミノ酸配列又はEGFR遺伝子のキナーゼドメインの核酸配列をガイドとして用いて設計される。プライマーは、遺伝子の相同領域において設計される。ここで、ホモロジーの少なくとも2つの領域は、可変配列の分岐領域により分離されており、配列は長さ又は核酸配列において可変である。例えば、同一又は高度の相同性は、少なくとも約6以上、好ましくは少なくとも8〜10以上の連続するアミノ酸の好ましくは少なくとも80%〜85%以上、より好ましくは少なくとも90〜99%以上のアミノ酸配列が相同である。最も好ましくは、アミノ酸配列は、100%同一である。順方向プライマー及び逆方向プライマーは、知られている遺伝子ファミリーに属するもののうち、一定の位置でのコドン縮退の維持及び種々のアミノ酸の表示に基づいて設計される。本明細書で言及している相同性の程度は、標準配列比較ソフトウエア、例えば、デフォルト設定を用いたタンパク質−BLASTを用いたアミノ酸配列の分析に基づいている(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)。
プライマーは、当業者に知られている標識を用いて標識できる。このような標識には、放射性標識、蛍光標識、染料標識及び酵素標識などがあるが、これらに限定されない。
別の実施態様によれば、試料細胞からのEGFR遺伝子における突然変異は、制限酵素切断パターンにおける変化によって同定できる。この場合、本発明のキットは、野生型及び突然変異型EGFR遺伝子を識別することができる制限エンドヌクレアーゼをさらに含んでなる。
EGFR遺伝子における突然変異を検出する他の方法には、切断剤からの保護を使用してRNA/RNA又はRNA/DNAヘテロ二本鎖におけるミスマッチ塩基を検出する方法などがある。例えば、Myers等、1985.Science230:1242を参照されたい。一般的に、「ミスマッチ切断」の当該技術分野の方法では、最初に野生型EGFR配列を含有する(標識された)RNA又はDNAを、組織試料から得た突然変異の可能性のあるRNA又はDNAとハイブリダイズさせることにより形成されたヘテロ二本鎖を提供する。二本鎖を、コントロール鎖と試料鎖との間の塩基対のミスマッチのため存在する、二本鎖の一本鎖領域を切断する薬剤で処理する。例えば、RNA/DNA二本鎖をRNaseで処理し、DNA/DNAハイブリッドをS1ヌクレアーゼで処置してミスマッチ領域を酵素的に消化することができる。他の実施態様によれば、DNA/DNA又はRNA/DNA二本鎖を、ヒドロキシルアミン又は四酸化オスミウムで処理し、そしてピペリジンで処理してミスマッチ領域を消化できる。ミスマッチ領域を消化後、得られた物質を、変性ポリアクリルアミドゲルによりサイズで分離して突然変異の部位を決定する。例えば、Cotton等、1988.Proc. Natl. Acad. Sci. USA85:4397;Saleeba等、1992.Methods Enzymol.217:286−295を参照されたい。一実施態様によれば、コントロールDNA又はRNAを、検出のために標識することができる。
さらに別の実施態様によれば、ミスマッチ切断反応では、細胞の試料から得たEGFR cDNAにおける点突然変異を検出し且つマッピングするための規定されたシステムにおいて、二本鎖DNAにおけるミスマッチ塩基対を認識する一種以上のタンパク質(いわゆる「DNAミスマッチ修復」酵素)を用いる。例えば、大腸菌のmutY酵素はG/AミスマッチでAを切断し、HeLa細胞由来のチミジンDNAグリコシラーゼはG/TミスマッチでTを切断する。例えば、Hsu等、1994.Carcinogenesis15:1657−1662を参照されたい。典型的な実施態様によれば、突然変異EGFR配列に基づくプローブ、例えば、DEL−1〜DEL−5、G719S、G857V、L883S又はL858R EGFR配列を、試験細胞由来のcDNA又は他のDNA産物にハイブリダイズさせる。二本鎖を、DNAミスマッチ修復酵素で処理し、切断産物がある場合には、電気泳動プロトコルなどから検出できる。例えば、米国特許第5,459,039号を参照されたい。
他の実施態様によれば、電気泳動移動度の変化を使用してEGFR遺伝子における突然変異を同定する。例えば、一本鎖高次構造多型(SSCP)を使用して突然変異体と野生型核酸との間の電気泳動移動度の差異を検出する。例えば、Orita等、1989. Proc. Natl. Acad. Sci. USA:86:2766;Cotton、1993. Mutat. Res. 285:125−144;Hayashi、1992. Genet. Anal. Tech. Appl.9:73−79を参照されたい。試料の一本鎖DNA断片及びコントロールEGFR核酸を変性し、そして再生させる。一本鎖核酸の二次構造は、配列により異なり、得られた電気泳動移動度の変化により、単一塩基の変化であっても検出できる。DNA断片は、標識してもよいし、あるいは標識されたプローブを用いて検出してもよい。アッセイの感度は、二次構造が配列の変化に対する感度がより高いRNA(DNAではなく)を使用することにより高めることができる。一実施態様によれば、対象の方法では、ヘテロ二本鎖解析を利用して、電気泳動移動度の変化に基づいて二本鎖ヘテロ二本鎖分子を分離する。例えば、Keen等、1991. Trends Genet.7:5を参照されたい。
さらに別の実施態様によれば、濃度勾配を有する変性剤を含有するポリアクリルアミドゲルにおける突然変異体又は野生型断片の移動を、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)を用いて評価する。例えば、Myers等、1985. Nature 313:495を参照されたい。DGGEを分析法として使用するとき、例えば、PCRによって高融点GCリッチDNAの約40bpのGCクランプを添加することにより、完全に変性しないようにDNAを修飾する。さらなる実施態様によれば、変性剤濃度勾配の代わりに温度勾配を使用して、コントロールDNA及び試料DNAの移動度の差異を同定する。例えば、Rosenbaum及びReissner、1987. Biophys. Chem. 265:12753を参照されたい。
点突然変異を検出する他の手法として、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅又は選択的プライマー伸長などがあるが、これらに限定されない。例えば、オリゴヌクレオチドプライマーは、既知の突然変異が中央に配置された後、標的DNAに、完全一致の場合にのみハイブリダイズできる条件下でハイブリダイズさせて調製できる。例えば、Saiki等、1986. Nature324:163;Saiki、等、1989. Proc. Natl. Acad. Sci.USA86:6230を参照されたい。オリゴヌクレオチドがハイブリダイゼーション膜に結合し、標識した標的DNAとハイブリダイズしたときには、このような対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、PCR増幅標的DNA又は多数の異なる突然変異にハイブリダイズ。
好ましい実施態様によれば、本発明時のキットは、T790M突然変異、L858R突然変異、エクソン19における欠失又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、EGFR遺伝子における突然変異を同定するための試薬を含んでなる。
キットに存在することができる別の要素は、試薬を定められた境界内に維持することができる充填材である。このような充填材を調製するのに好適な材料には、ガラス、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなど)、ボトル、バイアル、紙、サッシェなどがある。本発明のキットは、さらに本発明の方法において試薬を使用するための説明書を含んでなることができる。前記説明書は、印刷物又は電子サポートの形態であることができる。電子サポートの形態の場合、被験者によって説明書を、電子記憶媒体(磁気ディスク、テープなど)、光媒体(CD−ROM、DVD)などで読み取られることができるように保存することができる。媒体は、追加的に又はその代りに、前記説明書を提供するインターネットウエブサイトを含んでなることができる。
一実施態様によれば、BRCA1遺伝子の発現レベル及び固体支持体上のerbB1のキナーゼドメインにおける相違の検出用キットが提供される。キットは、例えば、一つのアッセイにおいて複数の相違を検出するための材料及び試薬を含んでなることができる。キットは、例えば、固体支持体、特異的な一連の標的ポリヌクレオチド用オリゴヌクレオチドプライマー、ポリメラーゼ連鎖反応試薬及び成分、例えば、DNA合成用酵素、標識物質及び他の緩衝液及び洗浄試薬を含んでなることができる。また、キットは、固体支持体上で特異的標的を増幅するためにキットを使用するための説明書を含んでなることもできる。キットが、例えば、特定の一連の標的ポリヌクレオチドを増幅するために、予め個体支持体上に固定された一連のプライマーを有する調製された固体支持体を含んでなる場合、このような調製された固体支持体の設計及び構成は、上記で説明した通りである。また、キットは、支持体がイン・サイチュ型PCR装置を用いてPCR増幅できる、例えば、イン・サイチュ型又は固相型PCR法を用いて固体支持体上でPCRをおこなうのに必要な試薬を含んでなる。キットに含まれるPCR試薬は、通常のPCR緩衝液、熱安定性ポリメラーゼ(例えば、TaqDNAポリメラーゼ)、ヌクレオチド(例えば、dNTP)並びに他の成分及び標識分子(例えば、上記した直接又は間接標識)を含んでなる。キットは、固定化プライマーを単独又は溶液相プライマーとともに用いてPCR増幅法を実施するように組み立てることができる。あるいは、キットは、BRCA1に特異的なオリゴヌクレオチドを固定した固体支持体及び上記で定義したいずれかの数のEGFR相違を含んでなることができる。試験用生体試料は、BRCA1発現レベルの測定及びEGFRにおける突然変異の有無の判定のために、選択的ハイブリダイゼーション条件下で固体支持体に適用できる。
本発明の固相支持体は、ヌクレオチドハイブリダイゼーション及び合成をサポートするのに好適ないずれかの固体物質及び構造のものであることができる。好ましくは、固相支持体は、少なくとも一つの実質的に剛性な表面であって、上にオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドプライマーを固定できる表面を含んでなる。固相支持体は、例えば、ガラス、合成ポリマー、プラスチック、硬質非メッシュナイロン又はセラミックで作製することができる。他の好適な固体支持体材料は知られており、当業者は容易に入手できる。固体支持体のサイズは、DNAマイクロアレイ技術に有用な標準的マイクロアレイサイズのいずれかであることができ、サイズは本発明の反応を行うために使用される特定の機械に合うように調整してもよい。オリゴヌクレオチドを固定するための固相支持体を誘導体化するための方法および材料は、当業者に知られており、例えば、米国特許第5,919,523号(開示の内容は、引用することによりその全体が本明細書の一部とされる)に記載されている。
固体支持体は、流体が入った容器内に提供してもよいし、あるいは流体が入った容器の一部であることもできる。例えば、固体支持体は、支持体上にポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を封じ込めるように、固体支持体の縁に沿って密閉状態にする側面を有しているチャンバー内に配置することができる。具体例を挙げると、チャンバーは、矩形の支持体のそれぞれの側部に壁を有していて、PCR混合物が確実に支持体上に残るように、さらに全表面がプライマーを提供するのに有用であるようになっている。
本発明のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドプライマーは、固体支持体上の特定の位置にオリゴヌクレオチドを固定(fix)し、固定化(immobilize)し、設け及び/又は適用するための任意の利用可能な手段を使用して、貼り付け、固定化し、設け及び/又は適用される。たとえば、米国特許第5,919,523号、第5,837,832号、第5,831,070号及び第5,770,722号(これらは、引用することによりその全体が本明細書の一部とされる)に記載されているように、フォトリソグラフィー(Affymetrix、Santa Clara、 Calif.)を使用してチップまたは固体支持体上の特定の位置にオリゴヌクレオチドプライマーを適用することができる。また、オリゴヌクレオチドプライマーは、米国特許第5,807,522号(BrownおよびShalon、1998)に記載されているように固体支持体に適用してもよい。さらに、プライマーは、Genetic MicroSystems(Woburn、 Mass.)、GeneMachines(San Carlos、Calif.)又はCartesian Technologies(Irvine、Calif.)によって製造されるものなどのロボットシステムを使用して固体支持体に適用してもよい。
本発明の一態様によれば、生体試料由来の標的ポリヌクレオチドの固相増幅であって、複数のオリゴヌクレオチドプライマー群が固相支持体上に固定される固相増幅がおこなわれる。好ましい実施態様によれば、群内のプライマーは、配列が同一であり、標的ポリヌクレオチドの規定された配列に対して相補的であり、適切な条件下で標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、そして核酸合成(すなわち、鎖伸長又は延長)のための初期プライマーとして好適である第一の一連のプライマーを少なくとも含んでなる。参照配列の特定の領域をカバーする選択されたプライマーを、群として、個別の位置にて、固体支持体上に固定する。好ましくは、群間の距離は、増幅産物を検出するために使用される検出手段の分解能よりも大きい。好ましい実施態様によれば、プライマーを固定してマイクロアレイまたはチップを形成し、これを自動化処理により処理及び分析することができる。固定したプライマーは、核酸増幅手段に好適な条件下での標的ポリヌクレオチドの固相増幅に使用される。このようにして、erbB1遺伝子のキナーゼドメインにおける種々の潜在的相違の有無を、1つのアッセイ法で決定することができる。
マイクロアレイ上のイン・サイチュ型PCR反応は、実質的に、例えば、Embretson等、Nature 362:359−362(1993);Gosden等、BioTechniques 15(1):78−80(1993);Heniford等 Nuc. Acid Res.21(14):3159−3166 (1993);Long等、Histochemistry 99:151−162 (1993);Nuovo等、PCR Methods and Applications 2(4):305−312(1993);Patterson等 Science 260:976−979(1993)に記載されているようにおこなうことができる。
あるいは、erbB1のキナーゼドメインにおける相違は、支持体上でPCRを実施することなく、固相法によって決定することができる。それぞれがerbB1のキナーゼドメインに明確な相違を含む複数のオリゴヌクレオチドプローブを、二組、三組又は四組で固相支持体に結合してもよい。試験生体試料における相違の有無は、当業者に知られており且つ上記した選択的ハイブリダイゼーション法によって検出してもよい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、単に実例を示すだけであり、本発明の範囲を限定するものではない。
患者
217人のEGFR突然変異を有する非小細胞肺癌患者を、スペイン肺癌グループプログラム1の一部分としてエルロチニブで予め治療した。治療前腫瘍組織が得られた129人の患者について、T790M突然変異が存在するかどうかを調査した。これらの患者についての臨床所見及び反応(表1)は、217人全ての患者における所見及び反応と同様であった。T790Mは、45人の患者(35%)に見られた。T790M突然変異を有する患者と突然変異のない患者の間には、所見又は初期反応において差がなかった(表1)。
217人のEGFR突然変異を有する非小細胞肺癌患者を、スペイン肺癌グループプログラム1の一部分としてエルロチニブで予め治療した。治療前腫瘍組織が得られた129人の患者について、T790M突然変異が存在するかどうかを調査した。これらの患者についての臨床所見及び反応(表1)は、217人全ての患者における所見及び反応と同様であった。T790Mは、45人の患者(35%)に見られた。T790M突然変異を有する患者と突然変異のない患者の間には、所見又は初期反応において差がなかった(表1)。
無進行期間及び全生存期間
無進行生存期間の中央値は、T790M突然変異を有する患者では12カ月(95%CI、7.6〜16.4)であり、T790M突然変異を有しない患者では18カ月(95%CI、14.1〜21.9;P=0.05)であった(図1)。全生存期間はT790M突然変異を有する患者では27カ月(95%CI、14.9〜39)であり、T790M突然変異を有しない患者では29カ月(95%CI、24.8〜33.2;P=0.47)であった。
無進行生存期間の中央値は、T790M突然変異を有する患者では12カ月(95%CI、7.6〜16.4)であり、T790M突然変異を有しない患者では18カ月(95%CI、14.1〜21.9;P=0.05)であった(図1)。全生存期間はT790M突然変異を有する患者では27カ月(95%CI、14.9〜39)であり、T790M突然変異を有しない患者では29カ月(95%CI、24.8〜33.2;P=0.47)であった。
del19を有する患者81人からなるサブグループでは、無進行生存期間は、T790M突然変異を有する患者では12カ月(95%CI、7.8〜16.2)であり、T790M突然変異を有しない患者では20カ月(95%CI、12.9〜27.1;P=0.03)であった(図2A)。L858Rを有する患者48人からなるサブグループでは、無進行生存期間は、T790M突然変異を有する患者では16カ月(95%CI、6.3〜26.6)であり、T790M突然変異を有しない患者では15カ月(95%CI、10.3〜19.7;P=0.83)であった(図2B)。一次治療としてエルロチニブ処置した患者65人からなるサブグループでは、無進行生存期間は、T790M突然変異を有する患者では8カ月(95%CI、3.5〜12.5)であり、T790M突然変異を有しない患者では18カ月(95%CI、13.2〜22.7;P=0.04)であった(図2C)。二次治療としてエルロチニブ処置した患者64人からなるサブグループでは、無進行生存期間は、T790M突然変異を有する患者では13カ月(95%CI、9.4〜16.6)であり、T790M突然変異を有しない患者では18カ月(95%CI、9.9〜26.1;P=0.35)であった(図2D)。
多変量解析では、不良無進行生存期間との関連は、T790M突然変異の存在(危険率、1.9;95%CI、1.1〜3.6;P=0.02)、男性(危険率、2.9;95%CI、1.3〜5.1;P=0.006)、二次治療としてのエルロチニブ(危険率、0.48;95%CI、0.26〜0.89;P=0.02)及び現喫煙者(危険率、3;95%CI、1.2〜7.8;P=0.02)との間にみられた(表2)。
生存期間についての多変量解析では、短生存期間と、二次治療としてのエルロチニブ(危険率、0.48;95%CI、0.26〜0.89;P=0.02)及びECOGパフォーマンスステータス2(危険率、3.31;95%CI、1.24〜8.81;P=0.02)との間に関連があった(表3)。
BRCA1 mRNA発現レベル
エルロチニブに対するBRCA1 mRNAの発現と、T790Mステータスと、臨床転帰との間の関係を、T790M突然変異解析を実施した後でも十分な治療前腫瘍組織が入手できた129人の患者のうちの81人について評価した。これらの患者81人におけるエルロチニブに対する所見及び初期反応は、全ての患者129人における所見及び初期反応と同様であった。T790M突然変異の有無による遺伝子発現レベルの差はなかった(表4)。表5及び表6は、BRCA1発現レベルによるT790M突然変異を有する患者及び有しない患者の所見を示す。
エルロチニブに対するBRCA1 mRNAの発現と、T790Mステータスと、臨床転帰との間の関係を、T790M突然変異解析を実施した後でも十分な治療前腫瘍組織が入手できた129人の患者のうちの81人について評価した。これらの患者81人におけるエルロチニブに対する所見及び初期反応は、全ての患者129人における所見及び初期反応と同様であった。T790M突然変異の有無による遺伝子発現レベルの差はなかった(表4)。表5及び表6は、BRCA1発現レベルによるT790M突然変異を有する患者及び有しない患者の所見を示す。
エルロチニブに対する無進行生存期間中央値は、低BRCA1レベルの患者では27カ月(95%CI、21.3〜32.7)であり、中BRCA1レベルの患者では18カ月(95%CI、6.3〜29.7)であり、高BRCA1レベルの患者では10カ月(95%CI、6.7〜13.3)であった(P=0.02)(図3)。全生存期間は、低BRCA1レベルの患者では33カ月(95%CI、28.3〜37.6)であり、中又は高BRCA1レベルの患者では得られなかった(P=0.18)(図4)。
T790M突然変異を有する患者28人では、無進行生存期間中央値は、低BRCA1レベルの患者では19カ月(95%CI、0〜41.2)であり、中BRCA1レベルの患者では4カ月(95%CI、0〜11.7)であり、高BRCA1レベルの患者では8カ月(95%CI、0〜20.2)であった(P=0.15)(図5A)。T790M突然変異を有しない患者53人では、無進行生存期間中央値は、低BRCA1レベルの患者では27カ月であり、中BRCA1レベルの患者では得られず、高BRCA1レベルの患者では12カ月(95%CI、5.6〜18.4)であった(P=0.15)(図5B)。一次治療としてエルロチニブ処置した患者47人からなるサブグループでは、無進行生存期間は、低BRCA1レベルの患者では27カ月(95%CI、17〜36.9)であり、中BRCA1レベルの患者では9カ月(95%CI、3.7〜14.3)であり、高BRCA1レベルの患者では16カ月(95%CI、8.5〜23.5)であった(P=0.09)(図5C)。一次治療としてエルロチニブ処置した患者34人からなるサブグループでは、無進行生存期間は、低BRCA1レベルの患者では得られず、中BRCA1レベルの患者では24カ月であり、高BRCA1レベルの患者では9カ月(95%CI、3.6〜14.4)であった(P=0.01)(図5)。
多変量解析(T790M、性別、パフォーマンスステータス、喫煙歴、del19対L858R、一次対二次治療、脳又は骨転移の有無及びBRCA1m RNAレベルを含む)では、短無進行生存期間と、T790M突然変異の存在(危険率、3.96;95%CI、1.77〜8.89;P=0.001)、男性(危険率、3.18;95%CI、1.31〜7.69;P=0.01)、脳転移の存在(危険率、4.55;95%CI、1.55〜13.62;P=0.006)、中BRCA1レベル(危険率、4.36;95%CI、1.46〜13.10;P=0.008)及び高BRCA1レベル(危険率、5.81;95%CI、1.96〜17.19;P=0.001)との間に関連性があった(表7)。生存期間についての多変量解析において、より短い生存期間と、パフォーマンスステータス1(危険率、10.1;95%CI、1.85〜55.16;P=0.008)及び高BRCA1レベル(危険率、5.20;95%CI、1.18〜22.84;P=0.03)との間に関連性があった(表8)。
要約すれば、本発明の発明者らは、BRCA1の発現レベルを、肺癌を患い且つEGFR遺伝子において少なくとも突然変異を有する患者におけるバイオマーカーとして使用して、前記患者のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する反応を予測することができることを見出した。耐性T790M突然変異の存在及びBRCA1の発現レベルによる、エルロチニブに対する感受性を与えるEGFRにおける少なくとも突然変異を有する患者のTTP(進行までの期間)を、表9に示す。
Claims (17)
- 肺癌を患っている患者であり、かつEGFR遺伝子における突然変異を少なくとも有する患者のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する応答を予測する方法であって、
(i)前記患者から単離した試料中のBRCA1の発現レベルを測定する工程と、
(ii)工程(i)で得られたBRCA1の発現レベルを標準試料と比較する工程と
を含んでなり、
標準試料と比較してBRCA1の発現レベルが減少した場合には、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に対して応答が良好であることを示しており、
標準試料と比較してBRCA1の発現レベルが増加した場合には、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤での治療に対して応答が不良であることを示しているとすることを特徴とする、方法。 - 前記肺癌が、非小細胞肺癌である、請求項1に記載の方法。
- 前記EGFRチロシンキナーゼ阻害剤が、エルロチニブである、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記EGFRチロシンキナーゼ阻害剤が、一次化学療法又は二次化学療法として使用されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記EGFR遺伝子における前記少なくとも一つの突然変異が、チロシンキナーゼ阻害剤に対して感受性を与える突然変異、及びチロシンキナーゼ阻害剤に対して耐性を与える突然変異からなる群から選択されるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記患者が、チロシンキナーゼ阻害剤に対して感受性を与える突然変異と、チロシンキナーゼに対して耐性を与える突然変異とをEGFR遺伝子において同時に有していることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
- チロシンキナーゼ阻害剤に対して感受性を与えるEGFR遺伝子における突然変異が、L858R突然変異及びエクソン19におけるELREA欠失からなる群から選択されるものであり、及び/又は、チロシンキナーゼ阻害剤に対して耐性を与える突然変異が、T790M突然変異である、請求項5又は6に記載の方法。
- 前記試料が、腫瘍細胞を含有してなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 肺癌の治療に使用されるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であって、治療すべき患者が、低BRCA1発現レベルを示し、かつEGFR遺伝子において少なくとも突然変異を有している患者である、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤。
- 前記肺癌が、非小細胞肺癌である、請求項8に記載のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤。
- 前記EGFRチロシンキナーゼ阻害剤が、エルロチニブである、請求項9に記載のEGFRチロシンキナーゼ。
- 請求項8〜10のいずれか一項に記載のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であって、
前記EGFR遺伝子における少なくとも一つの突然変異が、チロシンキナーゼ阻害剤に対して感受性を与える突然変異、及びチロシンキナーゼ阻害剤に対して耐性を与える突然変異からなる群から選択されるものである、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤。 - 前記患者が、チロシンキナーゼ阻害剤に対して感受性を与える突然変異と、チロシンキナーゼに対して耐性を与える突然変異とをEGFR遺伝子において同時に有している患者である、請求項11に記載のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤。
- チロシンキナーゼ阻害剤に対して感受性を与えるEGFR遺伝子における突然変異が、L858R突然変異及びエクソン19におけるELREA欠失からなる群から選択されるものであり、及び/又は、チロシンキナーゼ阻害剤に対して耐性を与える突然変異がT790Mである、請求項12に記載のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤。
- 前記チロシンキナーゼ阻害剤が、一次化学療法又は二次化学療法として使用される、請求項8〜13のいずれか一項に記載のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤。
- (i)BRCA1の発現レベルを検出する試薬と、
(ii)EGFRにおける少なくとも突然変異を検出する試薬と
を含んでなるキット。 - 前記EGFR突然変異が、T790M突然変異、L858R突然変異、エクソン19におけるELREA欠失又はこれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項15に記載のキット。
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