JP2013245767A - すべり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】すべり軸受は、軸受基体を形成する裏金と、裏金の上に形成されるライニング層17と、ライニング層17に形成されるライニング逃がし部33とライニング平坦部22とを接続する滑らかなライニングつなぎ部35と、ライニング層17の上に形成されるバインダー樹脂と固体潤滑剤とからなる樹脂オーバレイ層29と、を備える。
【選択図】図3
Description
この種の樹脂オーバレイ層は、ライニング層の表面に、溶剤を含んだ樹脂に固体潤滑剤を混ぜた溶液を、スプレーやパッド等で塗布し、焼成して製造される。
しかしながら、固体潤滑剤を含んだ樹脂オーバレイ層は、絶対的な接合強度としては軟質金属を用いたオーバレイ層に比べて弱い。そのため、高周速、高面圧が加わると、固体潤滑剤を含んだ樹脂オーバレイ層がライニング層との界面から剥離を起こすことがあった。
片当り箇所では軸受と軸とが強く接触しやすく、樹脂オーバレイ層がライニング層から剥離しやすい状況になる。
すべり軸受の軸方向端部において、ライニング層にC面取りが施されたものがあるが、C面取りは軸受端部におけるバリ発生を防ぐこと等を目的とし、樹脂オーバレイ層の剥離や片当りの回避については考慮されていない。
(1) 円筒状の部材、又は二つの半円筒状の部材を円筒状になるように組み合わせてなる軸受基体を形成する裏金と、
前記裏金の内周面を覆って設けられるライニング層と、
前記ライニング層の内周面上に、バインダー樹脂と固体潤滑剤とからなる樹脂オーバレイ層と、を備えるすべり軸受であって、
前記すべり軸受は、
前記ライニング層の内周面における各軸受軸方向端部に形成されて軸受端部に向かってライニング層の厚みが漸減する逃がし部と、
前記ライニング層の内周面における軸受軸方向中央部に形成される平坦部と、
前記軸受軸方向中央部と前記各軸受軸方向端部との間にそれぞれ形成されて前記逃がし部と前記平坦部とを滑らかに接続するつなぎ部と、を有することを特徴とするすべり軸受。
尚、本明細中における「折れ曲がり」とは、ライニング層の内周面における軸受軸方向中央部の面と各軸受軸方向端部の面とが交差する接合部の断面半径Rが0.1mm未満の場合であって、断面半径Rが0.1mm以上の場合は「滑らか」とする。
尚、本明細中における「接合部」とは、つなぎ部を形成する複数の面が隣接する面と交差する部分とする。
図1に示すように、本実施形態に係るすべり軸受11は、二つの半円筒状の部材である軸受基体13を円筒状になるように組み合わせて全体として円筒状に形成される。
図2に示すように、軸受基体13を形成する裏金15の内周面には、内周面全域を覆って軸受合金層であるライニング層17が形成され、ライニング層17の内周面上にバインダー樹脂と固体潤滑剤とからなる樹脂オーバレイ層29が形成されている。
図3〜図6は、本発明の一実施形態に係るすべり軸受11の第1実施形態〜第4実施形態にかかるすべり軸受端部の要部断面図及び拡大断面図である。
更に、図3(B)に示すように、軸受軸方向中央部21と両軸受軸方向端部19との間には、ライニング平坦部22とライニング逃がし部33とを曲面で滑らかに接続するライニングつなぎ部(つなぎ部)35がそれぞれ形成されている。
一般的に、軸受端部に軸との接触で高面圧がかかる場合、ライニング層17上の樹脂オーバレイ層29は面圧によって樹脂オーバレイ層29自体が変形や摩耗することで、相手軸に倣う。
図7(C)に示すように、樹脂オーバレイ層29の端角部117の形状が曲面を有する場合であっても、ライニング層17のライニング平坦部22とライニング逃がし部27が直接つながれる場合は、樹脂オーバレイ層29は相手軸に倣いやすいが、ライニング層17の接合部113の形状が折れ曲がり部(接合部113の断面半径Rが0.1mm未満)を有していれば、この剥離が発生する。
更に、図4(B)に示すように、軸受軸方向中央部21と軸受軸方向端部19との間には、ライニングクラウニング部24とライニング逃がし部33とを曲面で滑らかに接続するライニングつなぎ部35がそれぞれ形成されている。
そこで、本第2実施形態にかかるすべり軸受11Bは、ライニング層17において、ライニング逃がし部33からライニングクラウニング部24への変化が、ライニング逃がし部33方向を基準に、ライニング層17における軸受軸方向中央部21の面及び各軸受軸方向端部19の面と交差する接合部が接線方向に連続した面で形成されたライニングつなぎ部35によって、断面半径Rが0.1mm以上の滑らかな曲面となる。そして、バインダー樹脂と固体潤滑剤を含んだ樹脂オーバレイ層29が、ライニング層17の内面に、これらライニング平坦部22a、ライニングつなぎ部35およびライニング逃がし部33の表面に倣って滑らかに形成される。これにより、従来は折れ曲がり部を起点として樹脂オーバレイ層29に生じていた強い応力が生じなくなり、樹脂オーバレイ層29の剥離が回避できる。即ち、ライニング平坦部22aがライニングクラウニング部24を有する場合にも、滑らかなライニングつなぎ部35を形成することができる。
更に、図5(B)に示すように、軸受軸方向中央部21と両軸受軸方向端部19との間には、ライニング平坦部22とライニング逃がし部33とを平面で滑らかに接続するライニングつなぎ部37がそれぞれ形成されている。ライニングつなぎ部37は、ライニング平坦部22とライニング逃がし部33を平面でつないでおり、各部との接合部41,43には角が存在するが、隣接する面のなす角θ1及びθ2が、常に150度以上180度未満(好ましくは155度以上180度未満)の範囲とされることで、滑らかに接続される。
そこで、本第3実施形態にかかるすべり軸受11Cは、従来は折れ曲がり部を起点として樹脂オーバレイ層29に生じていた強い応力が生じなくなり、樹脂オーバレイ層29の剥離が回避できる。
更に、図6(B)に示すように、軸受軸方向中央部21と両軸受軸方向端部19との間には、ライニング平坦部22とライニング逃がし部33Aとを曲面で滑らかに接続するライニングつなぎ部35Aがそれぞれ形成されている。
そこで、本第4実施形態にかかるすべり軸受11Dは、ライニング層17において、ライニング逃がし部33Aからライニング平坦部22への変化が、ライニング逃がし部33A方向を基準に、ライニング層17における軸受軸方向中央部21の面及び各軸受軸方向端部19の面と交差する接合部が接線方向に連続した面で形成されたライニングつなぎ部35Aによって、断面半径Rが0.1mm以上の滑らかな曲面となる。そして、バインダー樹脂と固体潤滑剤を含んだ樹脂オーバレイ層29が、ライニング層17の内面に、これらライニング平坦部22、ライニングつなぎ部35Aおよびライニング逃がし部33Aの表面に倣って滑らかに形成される。これにより、従来は折れ曲がり部を起点として樹脂オーバレイ層29に生じていた強い応力が生じなくなり、樹脂オーバレイ層29の剥離が回避できる。
なお、図4〜図6において、樹脂オーバレイ層29は、ライニング層17の軸受端部23にも存在しているが、ライニング層17の軸受端部23に樹脂オーバレイ層29が無い場合でも、上記効果は変わらない。更に、樹脂オーバレイ層29の厚さが、軸受軸方向中央部21から軸受端部23に向けて、漸減するように逃がし部33,33A上に形成されてもよい。
また、上述したように、ライニング逃がし部33,33A及びつなぎ部35,35A,37は、平面や曲面であっても、上記効果は達成される。
[すべり軸受材]
通常のすべり軸受11を作製する過程において、ライニング層17におけるライニング平坦部22の内面仕上げと同時にワイヤーバフを使用し、すべり軸受11の両軸受軸方向端部19にライニング逃がし部33を形成する。ライニング逃がし部33は、R面取りカッター、バレル研磨等の方法でも作製できる。これらの工法においては、しゅう動面となる軸受軸方向中央部21に大きな影響を及ぼさないように行うことが必要とされる。その後、ライニング層17の内表面に樹脂オーバレイ層29を施す工程となる。まず、すべり軸受11を油分脱脂し、粗面化処理に代表される物理的処理や、化学的処理を行い、樹脂オーバレイ層29の下地となるライニング層17における接着層の密着をよくする粗面化処理を施す。
その後、固体潤滑剤を含む樹脂オーバレイ層29をライニング層17の内表面に施す。固体潤滑剤を含む樹脂オーバレイ層29を施すには幾つかの方法がある。
先ず、固体潤滑剤を表面に打ち付ける方法としては、ある粒子径の微細粉末である固体潤滑剤、例えばMoS2を圧縮空気と共にライニング表面に投射する方法がある。潤滑剤の粉末の粒度は、0.2〜20μmがよい。ライニング層17は、銅合金層またはアルミ合金層とすることができる。これにより、固体潤滑剤を含んだ樹脂オーバレイ層29の付着されるライニング層17が、安価に形成される。なお、ライニング材質としては、銅合金よりも固体潤滑剤を打ち付け易いアルミ合金がよい。
液状の合成樹脂(例えば、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂またはポリアミド(PA)樹脂の何れか1種またはこれらの組合わせ)をバインダーとし、固体潤滑剤を加える。合成樹脂は、前述した樹脂にポリアミド樹脂やポリエーテルサルホン(PES)樹脂を混ぜて強せん断を加え、ポリマーアロイ化してもよい。固体潤滑剤は、MoS2やグラファイト、h−BN、PTFE等のいずれであってもよい。その混合液を、上記粗面化処理を施したライニング層17の内表面に塗布する。塗布方法は、特に限定されず、エアースプレーやエアレススプレーおよびロールやパッド、スクリーン印刷であっても可能である。また、圧力を加え、布や板等でライニング層17の内表面に擦りつけてもよい。塗布後、溶剤を飛ばすために100℃で乾燥を行う。その後、樹脂を硬化するため、250℃で1時間加熱させ、樹脂オーバレイ層29の製作が完了する。このように製作された樹脂オーバレイ層29は、自己潤滑性および耐摩耗性が付与され、樹脂オーバレイ層29が付着されるライニング層17の初期のなじみ性、耐疲労性、および耐焼付き性が向上する。
本実施例では、図1乃至図6に示した各実施形態の構成に係るすべり軸受11と、つなぎ部を有しない図7に示した比較例に係る従来の構成のすべり軸受とに対して、焼付き試験を行った。
実施例1〜7及び比較例1、2に係るすべり軸受の共通条件は以下とした。
軸受寸法 φ48mm×W15.5mm
軸受面圧 荷重漸増
軸材質 S55C(焼入れ)
軸粗さ 0.5μm RZJIS
例えば、上記各実施形態においては、滑らかなつなぎ部が1つの曲率を有する曲面状のつなぎ部35,35A及び1つの平面状のつなぎ部37で形成されたが、本発明はこれに限定されるものではなく、つなぎ部35,35A,37は、軸受軸方向に併設された2以上の面で形成された接合部を有するように構成することもできる。即ち、曲面状のつなぎ部35,35Aが複数の曲率を有し、複数の接合部が接線方向に連続した面で形成され、つなぎ部35,35Aが曲面となるように形成することで、滑らかなつなぎ部35,35Aを構成することができる。また、平面状のつなぎ部37が複数の接合部を有し、各接合部において隣接する面のなす角が、常に150度以上180度未満の範囲となるように形成することで、滑らかなつなぎ部37を構成することができる。
また、上記実施形態においては、二つの半円筒状の部材である軸受基体13を円筒状になるように組み合わせたすべり軸受11を例に説明したが、本発明に係るすべり軸受は、ライニング層があり、固体潤滑を含んでなる樹脂オーバレイ層があれば円筒状のブシュ形状でも適用できる。
13…軸受基体
15…裏金
17…ライニング層
19…軸受軸方向端部
21…軸受軸方向中央部
23…軸受端面
29…合成樹脂被覆層(樹脂オーバレイ層)
33…端部面取り部
35…つなぎ部
Claims (8)
- 円筒状の部材、又は二つの半円筒状の部材を円筒状になるように組み合わせてなる軸受基体を形成する裏金と、
前記裏金の内周面を覆って設けられるライニング層と、
前記ライニング層の内周面上に、バインダー樹脂と固体潤滑剤とからなる樹脂オーバレイ層と、を備えるすべり軸受であって、
前記すべり軸受は、
前記ライニング層の内周面における各軸受軸方向端部に形成されて軸受端部に向かってライニング層の厚みが漸減する逃がし部と、
前記ライニング層の内周面における軸受軸方向中央部に形成される平坦部と、
前記軸受軸方向中央部と前記各軸受軸方向端部との間にそれぞれ形成されて前記逃がし部と前記平坦部とを滑らかに接続するつなぎ部と、
を有することを特徴とする、すべり軸受。 - 前記つなぎ部が、軸受軸方向に併設された2以上の面で形成された接合部を有することを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。
- 前記接合部において隣接する前記面のなす角が、常に150度以上180度未満の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のすべり軸受。
- 前記接合部が接線方向に連続した面で形成され、つなぎ部が曲面となることを特徴とする請求項2に記載のすべり軸受。
- 前記平坦部が、裏金とライニング層の接合面に略平行に存在する中央平坦部と、前記中央平坦部と前記つなぎ部との間に存在するクラウニング部とからなることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のすべり軸受。
- 前記逃がし部が、曲面であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のすべり軸受。
- 前記固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、グラファイト、又はポリテトラフルオロエチレンから選択される1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のすべり軸受。
- 前記バインダー樹脂が、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂またはポリアミド樹脂の何れか1種またはこれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のすべり軸受。
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