JP2013237144A - 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】 合金鋼等の高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】WC基超硬合金、TiCN基サーメット、cBN基超高圧焼結体からなる基体表面に、硬質被覆層として、例えば、Al(CHを反応ガス成分として含有する化学蒸着法で成膜された複合組織層が少なくとも被覆された表面被覆切削工具であって、該複合組織層は、立方晶構造の(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒組織(但し、X、Yは原子比で、0.60≦X≦0.90、0.0005≦Y≦0.005)と、アモルファス相組織から構成され、また、複合組織層は、基体側から、複合組織層の表層側に向かうにしたがって平均粒子幅が漸次増加する粒子幅分布を形成し、さらに、複合組織層中のAl含有割合は、基体側から、複合組織層の表層側に向かうにしたがって漸次増加する組成傾斜構造を有している。
【選択図】 図1

Description

この発明は、合金鋼等の高熱発生を伴うとともに、切刃に対して衝撃的な負荷が作用する高速断続切削加工で、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金、炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットあるいは立方晶窒化ホウ素(以下、cBNで示す)基超高圧焼結体で構成された基体(以下、これらを総称して基体という)の表面に、硬質被覆層として、Ti−Al系の複合窒化物層を物理蒸着法により蒸着形成した被覆工具が知られており、これらは、すぐれた耐摩耗性を発揮することが知られている。
ただ、上記従来のTi−Al系の複合窒化物層を蒸着形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性に優れるものの、高速断続切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、基体の表面に、組成式:(Ti1−XAl)Nで表した場合に、0.35≦X≦0.60(但し、Xは原子比)を満足するTiとAlの複合窒化物からなる硬質被覆層を物理蒸着法で蒸着形成するとともに、硬質被覆層を、上記(Ti,Al)N層の粒状晶組織と柱状晶組織との交互積層構造として構成することが提案されており、そしてこれによって、高硬度鋼の高速断続切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性を発揮するとされている。
ただ、この被覆工具は、物理蒸着法により硬質被覆層を蒸着形成するため、Alの含有割合Xを0.6以上にはできず、より一段と切削性能を向上させることが望まれている。
このような観点から、化学蒸着法で硬質被覆層を形成することで、Alの含有割合Xを、0.9程度にまで高める技術も提案されている。
例えば、特許文献2には、TiCl、AlCl、NHの混合反応ガス中で、650〜900℃の温度範囲において化学蒸着を行うことにより、Alの含有割合Xの値が0.65〜0.95である(Ti1−XAl)N層及び/または、(Ti1−XAl)C層及び/または、(Ti1−XAl)CN層を蒸着形成できることが記載されているが、この文献では、この(Ti1−XAl)N層及び/または、(Ti1−XAl)C層及び/または、(Ti1−XAl)CN層の上にさらにAl層を被覆し、これによって断熱効果を高めることを目的とするものであるから、Xの値を0.65〜0.95まで高めた(Ti1−XAl)N層及び/または、(Ti1−XAl)C層及び/または、(Ti1−XAl)CN層の形成によって、切削性能へ如何なる影響があるかという点についてまでの開示はない。
また、例えば、特許文献3には、TiCl、AlCl、NH、Nの混合反応ガス中、700〜900℃の温度でプラズマを用いない化学蒸着を行うことにより、Alの含有割合Xの値が0.75〜0.93である立方晶の(Ti1−XAl)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成できることが記載されているが、特許文献2と同様、被覆工具としての適用可能性については何らの開示もない。
特開2011−224715号公報 特表2011−516722号公報 米国特許第7767320号明細書
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化、高効率化の傾向にあり、被覆工具には、より一層、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性等の耐異常損傷性が求められるとともに、長期の使用に亘ってのすぐれた耐摩耗性が求められている。
しかし、上記特許文献1に記載される被覆工具は、(Ti1−XAl)N層からなる硬質被覆層が物理蒸着法で蒸着形成され、硬質被覆層中のAl含有量Xを高めることができないため、例えば、合金鋼の高速断続切削に供した場合には、耐チッピング性が十分であるとは言えない。
一方、上記特許文献2、3に記載される化学蒸着法で蒸着形成した(Ti1−XAl)N層については、Al含有量Xを高めることができ、また、立方晶構造を形成させることができることから、所定の硬さを有し耐摩耗性にはすぐれた硬質被覆層が得られるものの、基体との密着強度は十分でなく、また、靭性に劣ることから、合金鋼の高速断続切削に供する被覆工具として用いた場合には、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷が発生しやすく、満足できる切削性能を発揮するとは言えない。
本発明は、合金鋼の高速断続切削等に供した場合であっても、すぐれた耐チッピング性を発揮するとともに、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、上述の観点から、TiとAlの複合炭窒化物(以下、「(Ti,Al)(C,N)」あるいは「(Ti1−XAl)(C1−Y)」で示すことがある)からなる硬質被覆層を化学蒸着で蒸着形成した被覆工具の耐チッピング性、耐摩耗性の改善をはかるべく、鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。
炭化タングステン基超硬合金(以下、「WC基超硬合金」で示す)、炭窒化チタン基サーメット(以下、「TiCN基サーメット」で示す)、または立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体(以下、「cBN基超高圧焼結体」で示す)のいずれかで構成された基体の表面に、
例えば、トリメチルアルミニウム(Al(CH)を反応ガス成分として含有する化学蒸着法により、硬質被覆層として、立方晶構造の(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒組織と、該結晶粒の周囲に存在するTi、Al、CおよびNのうちの1種または2種以上を含むアモルファス相組織からなる複合組織層を少なくとも蒸着形成するとともに、複合組織層の基体側から、複合組織層の表層側に向かうにしたがって、上記立方晶構造の(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒の平均粒子幅が漸次増加する粒子幅分布を形成することによって、少なくとも前記複合組織層を含む硬質被覆層は耐摩耗性を維持しつつ、靱性が向上しかつ基体とのすぐれた密着性を有するようになることを見出したのである。
なお、上記(Ti1−XAl)(C1−Y)層において、X、Yは何れも原子比であって、0.60≦X≦0.90、0.0005≦Y≦0.005を満足するものであるから、従来のPVD法では蒸着形成することができない高Al含有割合Xの立方晶構造の(Ti,Al)(C,N)結晶粒組織とアモルファス相組織とを、トリメチルアルミニウム(Al(CH)を反応ガス成分として含有する化学蒸着法により蒸着形成し得たことがわかる。
また、本発明者等は化学蒸着法により蒸着形成した上記立方晶構造の(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒によれば、該結晶粒のAl含有割合は、複合組織層の基体側から、複合組織層の表層側に向かうにしたがって漸次増加する組成傾斜構造を形成し、これによって、表層側の複合組織層は、すぐれた耐摩耗性を発揮することを見出したのである。
したがって、上記のような複合組織層を備えた被覆工具を、例えば、合金鋼の高速断続切削等に用いた場合には、チッピング、欠損、剥離等の発生が抑えられるとともに、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮することができるのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、または立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された基体の表面に、硬質被覆層が蒸着形成された表面被覆切削工具において、
(a)上記硬質被覆層は、少なくとも、化学蒸着法により蒸着形成された平均層厚1〜20μmの立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒組織と、該結晶粒の周囲に存在するTi、Al、CおよびNのうちの1種または2種以上を含むアモルファス相組織とからなる複合組織層を含み、
(b)前記複合組織層は、その平均組成を、
組成式:(Ti1−XAl)(C1−Y
で表した場合、Al含有割合XおよびC含有割合Y(但し、X、Yは何れも原子比)は、それぞれ、0.60≦X≦0.90、0.0005≦Y≦0.005を満足し、
(c)前記複合組織層の基体側から、0.3μm複合組織層の内部に入った位置Lにおける立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒の基体表面と平行な面内の粒子幅の平均値を平均粒子幅Dとすると、該平均粒子幅Dは0.1μm以下であり、また、複合組織層の表層から、0.3μm複合組織層の内部に入った位置Hにおける基体表面と平行な面内の粒子幅の平均値を平均粒子幅Dとすると、該平均粒子幅Dは0.3〜2μmであり、さらに、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒の平均粒子幅は、複合組織層の基体側から、複合組織層の表層側に向かうにしたがって漸次増加する粒子幅分布を形成していることを特徴とする表面被覆切削工具。

(2) 前記(1)に記載の表面被覆切削工具において、前記複合組織層の基体側から、0.3μm複合組織層の内部に入った位置Lを中心に組成分析を行い、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒のAl含有割合を求め、その平均値をX(但し、原子比)とすると、該Al含有割合Xは、0.55≦X≦0.70であり、また、複合組織層の表層から、0.3μm複合組織層の内部に入った位置Hを中心に組成分析を行い、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒のAl含有割合を求め、その平均値をX(但し、原子比)とすると、該Al含有割合Xは、0.80≦X≦0.95であり、さらに、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒のAl含有割合は、複合組織層の基体側から、複合組織層の表層側に向かうにしたがって漸次増加する組成傾斜構造を有していることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3) 前記炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体と、前記複合組織層の間にTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、0.1〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層が存在することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4) 前記硬質被覆層は、1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層を含むことを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
(5) 前記複合組織層は、少なくとも、トリメチルアルミニウムを反応ガス成分として含有する化学蒸着法により蒸着形成されたものであることを特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
なお、“中心に組成分析を行う”とは、後述する電子線マイクロアナライザ装置を用いて求められた組成を言う。
また、本発明における硬質被覆層は、前述のような前記複合組織層をその本質的構成とするが、さらに、従来より知られている下部層や上部層などと併用することにより、一層すぐれた特性を創出することができる。
つぎに、この発明の被覆工具の硬質被覆層について、より具体的に説明する。
この発明の硬質被覆層は、少なくとも、TiとAlの立方晶複合炭窒化物(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒と、該結晶粒の間隙を埋めるTi、Al、CおよびNのうちの1種または2種以上を含むアモルファス相組織とからなる複合組織層を含んでいるが、まず、(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒について説明する。
(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒において、その平均組成を、
組成式:(Ti1−XAl)(C1−Y
で表した場合、Alの含有割合X(原子比)の値が0.60未満になると、高温硬さが不足し耐摩耗性が低下するようになり、一方、X(原子比)の値が0.90を超えると、相対的なTi含有割合の減少により、(Ti1−XAl)(C1−Y)層自体の高温強度が低下し、チッピング、欠損を発生しやすくなることから、X(原子比)の値は、0.60以上0.90以下とすることが必要である。
なお、PVD法によって上記組成の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を蒸着形成した場合には、結晶構造は六方晶であるが、本発明では、後記する化学蒸着法によって蒸着形成していることから、立方晶構造を維持したままで上記組成の(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒を得ることができるので、皮膜硬さの低下はない。
また、上記(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒において、C成分には硬さを向上させ、一方、N成分には高温強度を向上させる作用があるが、C成分の含有割合Y(原子比)が0.0005未満となると高硬度が得られなくなり、一方、Y(原子比)が0.005を超えると、高温強度が低下してくることから、Y(原子比)の値は、0.0005以上0.005以下と定めた。
次に、上記(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒の周囲に存在するTi、Al、CおよびNのうちの1種または2種以上を含むアモルファス相組織であるが、このようなアモルファス相は、反応ガス成分としてトリメチルアルミニウム(Al(CH)を含有する化学蒸着法によって形成される。そして、(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒の周囲に上記アモルファス相組織が形成されることによって、少なくとも複合組織層を含む硬質被覆層の靱性を高められる。
なお、形成されるアモルファス相組織の平均厚さは、成膜条件によって変化するが5〜30nmであり、また、複合組織層の縦断面における平均面積割合は、5〜20面積%であることが望ましい。
上記(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶組織と上記アモルファス相組織から構成される複合組織層は、その平均層厚が1μm未満では、基体との密着性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が20μmを越えると、高熱発生を伴う高速断続切削で熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚は1〜20μmと定めた。
この発明では、複合組織層を構成する(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒の平均粒子幅について、基体側の複合組織層ではその平均粒子幅Dを相対的に小さな値(D≦0.1μm)とし、一方、複合組織層の表層側ではその平均粒子幅Dを相対的に大きな値(0.3μm≦D≦2μm)とする。
即ち、複合組織層の基体側から、0.3μm複合組織層の内部に入った位置Lにおける平均粒子幅Dは、0.1μm以下とし、また、複合組織層の表面から、0.3μm複合組織層の内部に入った表層部の位置Hにおける平均粒子幅Dを、0.3μm≦D≦2μmとし、複合組織層の基体側から、複合組織層の表層側に向かって、謂わば、平均粒子幅が漸次増大する層厚方向粒子幅分布を形成する。
この発明は、上記のような層厚方向粒子幅分布を形成することによって、複合組織層の基体側では、複合組織層の密着性を高めることができ、また、表層側の複合組織層は、すぐれた耐摩耗性を具備するようになる。
また、この発明では、上記平均組成を有する(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒は、層全体にわたって均一組成にするのではなく、複合組織層の基体側から、複合組織層の表層側に向かって、上記(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒を構成するAl含有割合が連続的に増加する組成傾斜構造を形成することが望ましい。
即ち、複合組織層の基体側から、0.3μm複合組織層の内部に入った位置Lにおける上記(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒のAl含有割合X(原子比)を0.55以上0.70以下とし、また、複合組織層の表面から、0.3μm複合組織層の内部に入った表層部の位置HにおけるAl含有割合X(原子比)を、0.80以上0.95以下とし、複合組織層の基体側から、複合組織層の表層側に向かって、Al含有割合が漸次増加するAlの組成傾斜構造を構成することが望ましい。
このような組成傾斜構造によって、複合組織層内には、表層側に向かって、その組成に応じた結晶格子定数の違いによる格子ひずみが導入され、その結果として、複合組織層の耐チッピング性が向上する。
また、この発明では、複合組織層を構成する(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒および該結晶粒の粒間を埋めるTi、Al、CおよびNのうちの1種または2種以上を含むアモルファス相組織を、化学蒸着法によって蒸着形成するが、化学蒸着法による成膜条件は、概ね、次のとおりである。
反応ガス組成(容量%):
TiCl 5.0 〜 7.5%、Al(CH0 〜 12%、
AlCl 6 〜 12%、NH 10 〜 15 %、
0〜 15%、C 0 〜 5 %、Ar 0〜 5%、残りH
反応雰囲気温度: 700〜 850℃、
反応雰囲気圧力: 6〜 10kPa、
上記条件の化学蒸着法によって、平均組成が、0.60≦X≦0.90、0.0005≦Y≦0.005(但し、X、Yは何れも原子比)を満足し、
組成式:(Ti1−XAl)(C1−Y
で表されるTiとAlの立方晶複合炭窒化物結晶粒が蒸着形成され、また、該粒子間隙を埋め込むようにTi、Al、CおよびNのうちの1種または2種以上を含むアモルファス相組織が形成される。
また、上記の化学蒸着法によって蒸着形成される(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒の層厚方向粒子幅分布については、蒸着形成の進行とともに反応ガス成分である塩化アルミニウム(AlCl)及び/又はトリメチルアルミニウム(Al(CH)の添加量を成膜工程中に変化させることによって、複合組織層の基体側から、複合組織層の表層側に向かうにしたがって、平均粒子幅が漸次増大する層厚方向粒子幅分布を形成する。
また、上記の化学蒸着法によって蒸着形成される(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒のAlの組成傾斜については、上記層厚方向粒子幅分布についてと同様に、上記Al含有割合が、複合組織層の表層側に向かうにしたがって漸次増加し、また、複合組織層の位置LにおけるAl含有割合X(原子比)が、0.55≦X≦0.70を満足し、また、位置HにおけるAl含有割合X(原子比)が、0.80≦X≦0.95を満足する組成傾斜構造を形成するためには、上記反応ガス成分である塩化アルミニウム(AlCl)及び/又はトリメチルアルミニウム(Al(CH)、の添加量を蒸着形成の進行とともに調整することによって行われる。
したがって、反応ガス成分である塩化アルミニウム(AlCl)及び/又はトリメチルアルミニウム(Al(CH)の添加量は、所望のX値、平均粒子幅、粒子幅分布とともに、Alの組成傾斜等に応じて調整する。
本発明の被覆工具は、例えば、トリメチルアルミニウム(Al(CH)を反応ガス成分として含有する化学蒸着法により、硬質被覆層として、立方晶構造の(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒とTi、Al、CおよびNのうちの1種または2種以上を含むアモルファス相組織からなる複合組織層が、少なくとも蒸着形成され、該硬質被覆層においては、複合組織層の基体側から、複合組織層の表層側に向かうにしたがって、平均粒子幅が漸次増加する粒子幅分布が形成され、また、Al含有割合が漸次増加する組成傾斜構造が形成されることによって、すぐれた密着性、耐チッピング性、耐摩耗性を備え、合金鋼の高速断続切削に用いた場合でも、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮することができるのである。
本発明被覆工具の硬質被覆層縦断面の概略説明図を示す。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格SEEN1203AFSNのインサート形状をもったWC基超硬合金製の基体A〜Dをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、ISO規格SEEN1203AFSNのインサート形状をもったTiCN基サーメット製の基体a〜dを作製した。


つぎに、これらの工具基体A〜Dおよび工具基体a〜dの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、表4に示される条件で、本発明の(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒とアモルファス相とを目標層厚となるように蒸着形成することにより、表7に示される本発明被覆工具1〜15を製造した。
なお、本発明被覆工具11〜15については、表3に示される形成条件で、表6に示される下部層および/または上部層を形成した。
また、比較の目的で、同じく工具基体A〜Dおよび工具基体a〜dの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、表5に示される条件で、比較例の(Ti1−xAl)(C1−y)層を目標層厚で蒸着形成することにより、表8に示される比較例被覆工具1〜13を製造した。
なお、本発明被覆工具11〜15と同様に、比較被覆工具9〜13については、表3に示される形成条件で、表6に示される下部層および/または上部層を形成した。
参考のため、工具基体Aおよび工具基体aの表面に、従来の物理蒸着装置を用いて、アークイオンプレーティングにより、参考例の(Ti1−xAl)(C1−y)層を目標層厚で蒸着形成することにより、表8に示される参考例被覆工具14、15を製造した。
なお、アークイオンプレーティングの条件は、次のとおりである。
(a)上記工具基体Aおよびaを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、アークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、また、カソード電極(蒸発源)として、所定組成のAl−Ti合金を配置し、
(b)まず、装置内を排気して10−2Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつAl−Ti合金からなるカソード電極とアノード電極との間に200Aの電流を流してアーク放電を発生させ、装置内にAlおよびTiイオンを発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、
(c)次に、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−50Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、上記Al−Ti合金からなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に、表6に示される目標平均組成、目標平均層厚の(Al,Ti)N層を蒸着形成し、
参考例被覆工具14、15を製造した。
また、本発明被覆工具1〜15、比較例被覆工具1〜13および参考例被覆工具14、15の各構成層の断面を、走査電子顕微鏡を用いて測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均層厚を求めたところ、いずれも表7および表8に示される目標平均層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。
ついで、上記の本発明被覆工具1〜15の複合組織層について、複合組織層の平均Al含有割合X、平均C含有割合Y、平均粒子幅D,平均粒子幅D、Alの含有割合X,Xについて測定した。
なお、具体的な測定は次のとおりである。
蛍光X線分析装置を用い、複合組織層表面にスポット径100μmのX線を照射し、得られた特性X線の解析結果から平均Al含有割合X、平均C含有割合Yを求めた。
ついで、ダイヤモンド研磨盤を用い基体表面に対し垂直な断面を作成し、電子線マイクロアナライザ装置を用い、複合組織層の基体側から0.3μm複合組織層の内部に入った位置Lをスポットの中心とし、スポット径0.2μmの電子線を照射し、すなわち位置Lを中心とし複合組織層の基体側から0.2μm複合組織層の内部に入った位置から0.4μm複合組織層の内部に入った位置まで電子線を照射し、得られた特性X線の解析結果の10点平均からAlの含有割合Xを求めた。なお、本発明で言う「中心に組成分析を行う」とは、該位置を中心に上記スポット径0.2μmの電子線を照射し、得られた特性X線の解析結果の10点平均から求められた組成を意味する。
また、走査電子顕微鏡(倍率20000倍及び50000倍)を用いて、複合組織層の断面研磨面を工具基体と垂直方向は複合組織層の層厚分の厚さにわたって、工具基体と水平方向は長さ合計10μmに亘って複数視野観察し、水平方向10μmに亘る視野の最左端における複合組織層の基体側から0.3μm複合組織層の内部に入った位置Lにおいて基体表面と平行方向に幅10μmの線Lを引き、線Lの横切る結晶粒について、該結晶粒の粒界と線Lの交点を端点とする線分の長さを該結晶粒の粒子幅として求め、幅10μmの線Lに亘って、結晶粒の粒子幅を求め、平均することで平均粒子幅Dを求めた。なお、本発明で言う「平均粒子幅」は、上記手法で求められた平均粒子幅を意味する。
複合組織層の表面から0.3μm複合組織層の内部に入った位置Hを中心にスポット径0.2μmの電子線を照射し、すなわち位置Hを中心とし複合組織層の表面から0.2μm複合組織層の内部に入った位置から0.4μm複合組織層の内部に入った位置まで電子線を照射し、得られた特性X線の解析結果の10点平均からAlの含有割合Xを求めた。
また、走査電子顕微鏡(倍率20000倍及び50000倍)を用いて、複合組織層の断面研磨面を工具基体と垂直方向は複合組織層の層厚分の厚さにわたって、工具基体と水平方向は長さ合計10μmに亘って複数視野観察し、水平方向10μmに亘る視野の最左端における複合組織層の表面から0.3μm複合組織層の内部に入った位置Hにおいて基体表面と平行方向に幅10μmの線Lを引き、線Lの横切る結晶粒について、該結晶粒の粒界と線Lの交点を端点とする線分の長さを該結晶粒の粒子幅として求め、幅10μmの線Lに亘って、結晶粒の粒子幅を求め、平均することで平均粒子幅Dを求めた。
さらに、複合組織層の結晶構造については、X線回折装置を用い、Cu−Kα線を線源としてX線回折を行った場合、JCPDS00−038−1420立方晶TiNとJCPDS00−046−1200立方晶AlN、各々に示される同一結晶面の回折角度の間(例えば、36.66〜38.53°、43.59〜44.77°、61.81〜65.18°)に回折ピークが現れることを確認することによって調査した。
なお、(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒の周囲に存在するTi、Al、CおよびNのうちの1種または2種以上を含むアモルファス相組織の平均的な厚さは5〜30nmであり、また、複合組織層縦断面に占める平均面積割合5〜20面積%であった。
なお、アモルファス相組織の平均的な厚さ及び平均面積割合は走査電子顕微鏡(倍率20000倍及び50000倍)を用いて、複合組織層の断面研磨面を工具基体と垂直方向は複合組織層の層厚分の厚さにわたって、工具基体と水平方向は長さ合計10μmに亘って複数視野観察することにより求めた。本発明被覆工具1〜10の複合組織層については、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒組織と、該結晶粒の周囲に存在するアモルファス相組織との複合組織からなり、上記二つの組織は走査電子顕微鏡で観察をするとコントラストの違いとして区別でき、水平方向10μmに亘る視野の最左端における複合組織層の基体側から0.3μm複合組織層の内部に入った位置Lにおいて基体表面と平行方向に幅10μmの線Lを引き、また、水平方向10μmに亘る視野の最左端における複合組織層の表面から0.3μm複合組織層の内部に入った位置Hにおいて基体表面と平行方向に幅10μmの線Lを引き、線L及び線Lの横切るアモルファス相組織について、該アモルファス相組織の結晶との界面と線L及び線Lの交点を端点とする線分の長さを該アモルファス相組織の厚さとして求め、幅10μmの線L及び線Lに亘って、アモルファス相組織の厚さを求め、平均することでアモルファス相組織の平均的な厚さを求めた。さらに、視野観察の結果から、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒組織と、該結晶粒の周囲に存在するアモルファス相組織のコントラストの違いを利用した画像処理により平均面積割合を算出した。また、走査電子顕微鏡による観察でコントラストの異なる二つの組織について、透過電子顕微鏡を用いて電子線回折を行った結果、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒組織では、立方晶結晶格子を有するTiとAlの複合炭窒化物結晶の回折像が観察され、アモルファス相組織では、回折像が観察されないことを確認した。
表7に、その結果を示す。
ついで、比較例被覆工具1〜13および参考例被覆工具14、15のそれぞれについても、本発明被覆工具1〜15と同様にして、複合組織層の平均Al含有割合x、平均C含有割合y、平均粒子幅d,平均粒子幅d、Alの含有割合x,xについて測定した。
また、複合組織層の結晶構造についても、本発明被覆工具1〜15と同様にして、調査した。
表8に、その結果を示す。






つぎに、上記の各種の被覆工具をいずれもカッタ径125mmの工具鋼製カッタ先端部に固定治具にてクランプした状態で、本発明被覆工具1〜15、比較例被覆工具1〜13および参考例被覆工具14、15について、以下に示す、合金鋼の高速断続切削の一種である乾式高速正面フライス、センターカット切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
被削材: JIS・SCM440幅97mm、長さ400mmのブロック材
回転速度: 930min−1
切削速度: 360m/min、
切り込み: 1mm、
一刃送り量: 0.1mm/刃、
切削時間: 8分、
表9に、上記切削試験の結果を示す。

原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の平均粒径を有するcBN粉末、TiN粉末、TiCN粉末、TiC粉末、Al粉末、Al粉末を用意し、これら原料粉末を表10に示される配合組成に配合し、ボールミルで80時間湿式混合し、乾燥した後、120MPaの圧力で直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法をもった圧粉体にプレス成形し、ついでこの圧粉体を、圧力:1Paの真空雰囲気中、900〜1300℃の範囲内の所定温度に60分間保持の条件で焼結して切刃片用予備焼結体とし、この予備焼結体を、別途用意した、Co:8質量%、WC:残りの組成、並びに直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもったWC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置に装入し、通常の条件である圧力:4GPa、温度:1200〜1400℃の範囲内の所定温度に保持時間:0.8時間の条件で超高圧焼結し、焼結後上下面をダイヤモンド砥石を用いて研磨し、ワイヤー放電加工装置にて所定の寸法に分割し、さらにCo:5質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびISO規格CNGA120412の形状(厚さ:4.76mm×内接円直径:12.7mmの80°菱形)をもったWC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)に、体積%で、Zr:37.5%、Cu:25%、Ti:残りからなる組成を有するTi合金のろう材を用いてろう付けし、所定寸法に外周加工した後、切刃部に幅:0.13mm、角度:25°のホーニング加工を施し、さらに仕上げ研摩を施すことによりISO規格CNGA120412のインサート形状をもった工具基体イ〜ニをそれぞれ製造した。

つぎに、これらの工具基体イ〜ニの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、表4に示される条件で、本発明の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を目標層厚で蒸着形成することにより、表12に示される本発明被覆工具16〜25を製造した。
なお、本発明被覆工具21〜25については、表3に示される形成条件で、表11に示される下部層および/または上部層を形成した。
また、比較の目的で、同じく工具基体イ〜ニの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、表5に示される条件で、比較例の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を目標層厚で蒸着形成することにより、表13に示される比較例被覆工具16〜24を製造した。
なお、本発明被覆工具21〜25と同様に、比較被覆工具20〜24については、表3に示される形成条件で、表11に示される下部層および/または上部層を形成した。
参考のため、工具基体の表面に、従来の物理蒸着装置を用いて、アークイオンプレーティングにより、参考例の(Ti1−XAl)(C1−Y)層を目標層厚で蒸着形成することにより、表13に示される参考例被覆工具25を製造した。
なお、アークイオンプレーティングの条件は、実施例1に示される条件と同様の条件を用い、前記工具基体の表面に、表13に示される目標平均組成、目標平均層厚の(Al,Ti)CN層を蒸着形成し、参考例被覆工具25を製造した。
また、本発明被覆工具16〜25、比較例被覆工具16〜24および参考例被覆工具25の各構成層の断面を、走査電子顕微鏡を用いて測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均層厚を求めたところ、いずれも表12および表13に示される目標平均層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。
ついで、上記の本発明被覆工具16〜25の複合組織層について、複合組織層の平均Al含有割合X、平均C含有割合Y、平均粒子幅D,平均粒子幅D、Alの含有割合X,X、結晶構造について、実施例1に示される方法と同様の方法を用い測定した。
表12に、その結果を示す。
ついで、比較例被覆工具16〜24および参考例被覆工具25のそれぞれについても、本発明被覆工具16〜25と同様にして、複合組織層の平均Al含有割合x、平均C含有割合y、平均粒子幅d,平均粒子幅d、Alの含有割合x,x、結晶構造について測定した。
表13に、その結果を示す。



つぎに、上記の各種の被覆工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆工具16〜25、比較例被覆工具16〜24および参考例被覆工具25について、以下に示す、浸炭焼入れ合金鋼の乾式高速断続切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
被削材: JIS・SCM415(硬さ:HRC62)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 220 m/min、
切り込み: 0.15mm、
送り: 0.12mm/rev、
切削時間: 5分、
表14に、上記切削試験の結果を示す。

表7〜9および表12〜14に示される結果から、本発明被覆工具1〜25は、硬質被覆層として、少なくとも、立方晶構造の(Ti1−XAl)(C1−Y)結晶粒と、該結晶粒の周囲に存在するアモルファス相組織からなる複合組織層が形成され、該複合組織層は、複合組織層の基体側から、複合組織層の表層側に向かうにしたがって、平均粒子幅が漸次増加する粒子幅分布が形成され、また、Al含有割合が漸次増加する組成傾斜構造を有することによって、合金鋼の高速ミーリング切削加工または高速断続切削加工ですぐれた密着性、耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する。
これに対して、比較例被覆工具1〜13、16〜24、参考例被覆工具14、15、25については、いずれも、硬質被覆層にチッピング、欠損、剥離等の異常損傷が発生するばかりか、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、合金鋼の高速断続切削加工ばかりでなく、各種の被削材の被覆工具として用いることができ、しかも、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。









Claims (5)

  1. 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、または立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された基体の表面に、硬質被覆層が蒸着形成された表面被覆切削工具において、
    (a)上記硬質被覆層は、少なくとも、化学蒸着法により蒸着形成された平均層厚1〜20μmの立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒組織と、該結晶粒の周囲に存在するTi、Al、CおよびNのうちの1種または2種以上を含むアモルファス相組織とからなる複合組織層を含み、
    (b)前記複合組織層は、その平均組成を、
    組成式:(Ti1−XAl)(C1−Y
    で表した場合、Al含有割合XおよびC含有割合Y(但し、X、Yは何れも原子比)は、それぞれ、0.60≦X≦0.90、0.0005≦Y≦0.005を満足し、
    (c)前記複合組織層の基体側から、0.3μm複合組織層の内部に入った位置Lにおける立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒の基体表面と平行な面内の粒子幅の平均値を平均粒子幅Dとすると、該平均粒子幅Dは0.1μm以下であり、また、複合組織層の表層から、0.3μm複合組織層の内部に入った位置Hにおける基体表面と平行な面内の粒子幅の平均値を平均粒子幅Dとすると、該平均粒子幅Dは0.3〜2μmであり、さらに、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒の平均粒子幅は、複合組織層の基体側から、複合組織層の表層側に向かうにしたがって漸次増加する粒子幅分布を形成していることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 請求項1に記載の表面被覆切削工具において、前記複合組織層の基体側から、0.3μm複合組織層の内部に入った位置Lを中心に組成分析を行い、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒のAl含有割合を求め、その平均値をX(但し、原子比)とすると、該Al含有割合Xは、0.55≦X≦0.70であり、また、複合組織層の表層から、0.3μm複合組織層の内部に入った位置Hを中心に組成分析を行い、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒のAl含有割合を求め、その平均値をX(但し、原子比)とすると、該Al含有割合Xは、0.80≦X≦0.95であり、さらに、立方晶構造のTiとAlの複合炭窒化物結晶粒のAl含有割合は、複合組織層の基体側から、複合組織層の表層側に向かうにしたがって漸次増加する組成傾斜構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体と、前記複合組織層の間にTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、0.1〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層が存在することを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記硬質被覆層は、1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記複合組織層は、少なくとも、トリメチルアルミニウムを反応ガス成分として含有する化学蒸着法により蒸着形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。



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