JP2013234231A - カチオン硬化性樹脂組成物 - Google Patents

カチオン硬化性樹脂組成物 Download PDF

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潤一 中村
Yukihiro Kasano
晋広 笠野
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Abstract

【課題】耐熱性、透明性、硬化性等に優れた硬化物を得ることが可能なカチオン硬化性樹脂組成物、及び、光学部材等の各種用途に有用な硬化物を提供する。
【解決手段】エポキシ化合物及びカチオン硬化触媒を含有してなり、該エポキシ化合物は、水酸基濃度が0.001mol/g以上であるエポキシ化合物を少なくとも1種含み、かつ、該カチオン硬化触媒は、特定のルイス酸とルイス塩基を含んでなる、カチオン硬化性樹脂組成物;上記カチオン硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【選択図】なし

Description

本発明は、カチオン硬化性樹脂組成物に関する。より詳しくは、カチオン硬化性の化合物を含み、熱や光等でカチオン種を発生させるカチオン硬化触媒によるカチオン硬化反応によって硬化し得る樹脂組成物に関する。
カチオン硬化性樹脂組成物は、カチオン硬化性の化合物及びカチオン硬化触媒を含み、熱や光等で触媒からカチオン種を発生し、それによるカチオン硬化反応によって硬化し得る樹脂組成物である。カチオン硬化(重合)は、ラジカル重合に比べ、酸素による硬化阻害が起こらない、硬化時の収縮が小さいといった利点があり、様々な分野への適用が期待されている。具体的には、例えば、電気・電子部材や光学部材、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途への適用が種々検討されており、各用途において要求される特性に優れたカチオン硬化性樹脂組成物の開発が望まれている。
従来のカチオン硬化性樹脂組成物としては、例えば、硬化性の樹脂と、三価のホウ素を含むルイス酸及び窒素含有分子を含んでなる硬化触媒とを含有する硬化性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、このような硬化性樹脂組成物を酸無水物を用いて硬化させることが記載されており、このような組成物を無鉛半田を有するアンダーフィル材料として用いることが記載されている。
また、オニウムカチオンと式(II)で表される特定の構造を有するイミダゾリドアニオンとからなるオニウム塩、及び、そのオニウム塩とカチオン重合性又は架橋性の樹脂とを含む組成物が開示されている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照。)。また、50℃〜100℃の加熱によって活性化されるルイス付加物開始剤を用いてカチオンプロセスによって重合及び/又は架橋可能なシリコーン組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
更に、特定の構造式で表されるホウ素誘導体及びその溶媒和形態のものからなる、有機官能基を有するポリオルガノシロキサンタイプの単量体、オリゴマー及び/又は重合体の重合用及び/又は架橋用熱活性化開始剤、並びに、その熱活性化開始剤と有機官能基を有するポリオルガノシロキサンタイプの単量体、オリゴマー及び/又は重合体を有する重合性及び/又は架橋性組成物が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。特許文献4には、この組成物を歯科修復材料や電気電子部品等の被覆材料として用いることが記載されている。
更に、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、カウンターアニオンにハロゲンイオンを含まないオニウム塩(C)、及びホウ素に直接ハロゲンが置換していないトリ置換ホウ素(D)を必須成分とする樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。特許文献5には、この組成物を半導体封止材料や積層板として用いることが記載されている。
特表2008−544067号公報 国際公開第03/062208号 国際公開第02/092665号 特表2003−515617号公報 特開平11−181060号公報
カンタイ レン(Kangtai Ren)外4名、「マクロモレキュールズ(Macromolecules)」、2002年、第35号、p.1632−1637
ところで、カチオン硬化性樹脂組成物は、種々の用途に適用可能なものが検討されているが、透明性を発現させることもできることから、レンズ等の光学用途における材料として特に有用である。例えば、デジタルカメラモジュールにおいては、携帯電話等に搭載されるために小型化が進み、低コスト化も求められているため、撮像レンズとして従来の無機ガラスに代わって樹脂レンズの採用が進んでいる。このような部材の実装工程においては、低コスト化を実現するため、半田リフロー方式を採用することが主流となっている。そのため、レンズ等の部材を形成するためにカチオン硬化性樹脂組成物を用いる場合には、その硬化物(成形体)にはリフロー工程に耐え得る耐熱性が求められる。
一方、特許文献1に記載のように、酸無水物を用いて樹脂組成物を硬化させる場合には、カチオン硬化触媒を用いたカチオン硬化反応による硬化に比べて短時間で硬化物を得る事が困難であり、また、硬化物の耐熱性がリフロー工程に適用できるほどには高くならないという問題があった。また、特許文献2、非特許文献1では、硬化性が改善するとの記載があり、特許文献3、4では、特定の開始剤を用いるとコスト面で有利であるとの記載があり、特許文献5では、硬化性と保存性が良好であるとの記載がある。
しかし、上記いずれの文献においても、充分な耐熱性、透明性、硬化性等の特性に優れた硬化物を与える樹脂組成物については開示されていない。
このように、従来の技術には、耐熱性、透明性、硬化性等の特性に充分に優れた硬化物を与える樹脂組成物について、更に検討及び工夫する余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、耐熱性、透明性、硬化性等に優れた硬化物を得ることが可能なカチオン硬化性樹脂組成物、及び、光学部材等の各種用途に有用な硬化物を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、カチオン硬化性化合物及びカチオン硬化触媒を必須成分とするカチオン硬化性樹脂組成物について種々検討したところ、カチオン硬化性化合物として、水酸基濃度が0.001mol/g以上であるエポキシ化合物を少なくとも1種含むものを用い、かつ、カチオン硬化触媒として、ホウ素原子を有する特定のルイス酸とルイス塩基を含んでなる化合物を用いると、該樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物が、耐熱性、透明性、硬化性等に優れたものとなることを見出した。そして、このような硬化物がレンズ等の光学用途に極めて有用であることも見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、エポキシ化合物及びカチオン硬化触媒を含有してなり、
該エポキシ化合物は、水酸基濃度が0.001mol/g以上であるエポキシ化合物を少なくとも1種含み、かつ、
該カチオン硬化触媒は、下記一般式(1):
Figure 2013234231
(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。xは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。)で表されるルイス酸と、ルイス塩基を含んでなることを特徴とする、カチオン硬化性樹脂組成物である。
また本発明は、前記カチオン硬化性樹脂組成物に含まれる全エポキシ化合物の総質量に対する総水酸基濃度が0.0005mol/g以上である上記カチオン硬化性樹脂組成物である。
また本発明は、前記エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種である上記カチオン硬化性樹脂組成物;
前記ルイス塩基が窒素原子又はリン原子を有する化合物である上記カチオン硬化性樹脂組成物;
光学材料用である上記カチオン硬化性樹脂組成物である。
更に本発明は、上記カチオン硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」とも称す)は、エポキシ化合物及びカチオン硬化触媒を必須成分とするものであるが、本発明の効果を妨げない範囲でその他の成分を含有してもよく、これらの成分は1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物において、エポキシ化合物(以下、「エポキシ樹脂」とも称す)は、エポキシ基を有し、カチオン硬化反応によって硬化(重合)し得る化合物である。
なお、本明細書における「エポキシ基」とは、3員環のエーテルであるオキシラン環を含むものであり、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基のようにオキシラン環が炭素に結合している基や、グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基のようにエーテル又はエステル結合を含む基、エポキシシクロヘキサン環等を含むものである。
本発明におけるエポキシ化合物は、水酸基濃度(以下、「OH濃度」ともいう)が0.001mol/g以上であるエポキシ化合物を少なくとも1種含むものである。
このようなエポキシ化合物を用いることにより、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、耐熱性、透明性、硬化性が向上する。
なお、上記水酸基濃度とは、エポキシ化合物の単位質量(g)あたりの水酸基のモル数を表すものである。
また、本発明におけるエポキシ化合物は、水酸基濃度が0.001mol/g以上であるエポキシ化合物を少なくとも1種含むものであれば特に限定されず、水酸基を有さないエポキシ化合物や、水酸基を有するが水酸基濃度が0.001mol/g未満であるエポキシ化合物も含有することができる。
なお、本明細書において、水酸基濃度にかかわらず、水酸基を有するエポキシ化合物を「水酸基含有エポキシ化合物」ともいう。
その内、上記水酸基濃度が0.001mol/g以上であるエポキシ化合物を、特に「水酸基含有エポキシ化合物(A)」ともいう。
上記水酸基含有エポキシ化合物(A)の水酸基濃度としては、耐熱性、透明性、硬化性の点から、好ましくは0.0015mol/g以上、より好ましくは0.0018mol/g以上、更に好ましくは0.002mol/g以上である。また、水酸基濃度の上限としては、硬化物の硬度・強度の点から、好ましくは0.02mol/g以下、より好ましくは0.015mol/g以下、更に好ましくは0.01mol/g以下である。
上記エポキシ化合物として、上記好ましい水酸基濃度を有するエポキシ化合物を少なくとも1種含むものを用いることは、本発明の好ましい形態の1つである。
上記エポキシ化合物の水酸基濃度は、後述のようにして求めることができる。
また、上記エポキシ化合物のエポキシ濃度(各エポキシ化合物のエポキシ濃度)としては、硬化性の観点から、好ましくは0.001mol/g以上、より好ましくは0.002mol/g以上、更に好ましくは0.003mol/g以上である。また、硬化物の低収縮化の観点から、好ましくは0.008mol/g以下、より好ましくは0.007mol/g以下、更に好ましくは0.006mol/g以下、特に好ましくは0.005mol/g以下である。
特に、水酸基含有エポキシ化合物(A)のエポキシ濃度が上記範囲にあることが好ましい。
なお、上記エポキシ濃度とは、エポキシ化合物の単位質量(g)あたりのエポキシ基のモル数を表すものである。
上記エポキシ化合物のエポキシ濃度は、後述のようにして求めることができる。
更に、上記水酸基含有エポキシ化合物(A)における水酸基濃度(mol/g)/エポキシ濃度(mol/g)としては、硬化性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.2以上である。また、硬化物の硬化性の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。
上記エポキシ化合物における水酸基濃度及びエポキシ濃度は、H−NMR測定より、エポキシ化合物中のエポキシ基/水酸基のmol比を求め、別途、測定したエポキシ当量を用いて、質量あたりの各モル濃度を求めることができる。つまり、エポキシ濃度は、エポキシ当量の逆数として求めることができ、水酸基濃度は、上記エポキシ基/水酸基のmol比とエポキシ当量を乗じて得られた値の逆数として算出することができる。
また、エポキシ当量は、例えば、JIS−K7263の中和滴定等により測定することができる。
更に、上記エポキシ化合物における水酸基濃度/エポキシ濃度は、上記のようにして求めた水酸基濃度及びエポキシ濃度から計算して求めることができる。
また、上記カチオン硬化性樹脂組成物に含まれる全エポキシ化合物の総質量に対する総水酸基濃度(全エポキシ化合物の単位質量(g)あたりの水酸基のモル数)は、0.0005mol/g以上であることが好ましい。
上記全エポキシ化合物の総質量に対する総水酸基濃度としては、耐熱性、透明性、硬化性の点から、より好ましくは0.0008mol/g以上、更に好ましくは0.001mol/g以上である。また、当該水酸基濃度の上限としては、硬化物の硬度・強度の点から、好ましくは0.02mol/g以下、より好ましくは0.015mol/g以下、更に好ましくは0.01mol/g以下であり、より更に好ましくは0.005mol/g以下、特に好ましくは0.002mol/g以下である。
また、上記カチオン硬化性樹脂組成物に含まれる全エポキシ化合物の総質量に対する総エポキシ濃度(全エポキシ化合物の単位質量(g)あたりのエポキシ基のモル数)は、0.001mol/g以上であることが硬化性に優れる点で好ましい。より好ましくは0.002mol/g以上、更に好ましくは0.003mol/g以上である。また、硬化時の収縮率が低い点から、好ましくは0.008mol/g以下、より好ましくは0.007mol/g以下、更に好ましくは0.006mol/g以下、特に好ましくは0.005mol/g以下である。
更に、上記カチオン硬化性樹脂組成物に含まれる全エポキシ化合物における水酸基濃度(mol/g)/エポキシ濃度(mol/g)としては、硬化性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.2以上である。また、硬化物の硬化性の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.5以下である。
上記全エポキシ化合物の総質量に対する総水酸基濃度は、カチオン硬化性樹脂組成物において、エポキシ化合物として1種のエポキシ化合物のみを含有する場合は、上記各エポキシ化合物における水酸基濃度と同様にして求めることができるが、エポキシ化合物として2種以上のエポキシ化合物を含有する場合は、上記のようにして求めた各エポキシ化合物の水酸基濃度に、樹脂組成物中における各エポキシ化合物の配合割合を乗じた値の合計として求めることができる。
なお、樹脂組成物中における各エポキシ化合物の配合割合とは、樹脂組成物中に含まれるエポキシ化合物の総質量に対する各エポキシ化合物の質量比(質量分率)を意味する。
また、全エポキシ化合物の総質量に対する総エポキシ濃度は、カチオン硬化性樹脂組成物において、エポキシ化合物として1種のエポキシ化合物のみを含有する場合は、上記各エポキシ化合物におけるエポキシ濃度と同様にして求めることができる。エポキシ化合物として2種以上のエポキシ化合物を含有する場合は、含まれる各エポキシ化合物のエポキシ濃度を求めてから、各エポキシ化合物のエポキシ濃度と配合割合(上記質量分率に同じ)との積を合計することにより総エポキシ濃度を求めることができる。
更に、上記全エポキシ化合物における水酸基濃度/エポキシ濃度は、上記のようにして求めた水酸基濃度及びエポキシ濃度から計算して求めることができる。
上記エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。また、上記エポキシ化合物は、1種でも2種以上でも用いることができる。
上記脂環式エポキシ化合物とは、脂環式エポキシ基を有する化合物である。脂環式エポキシ基としては、例えば、エポキシシクロヘキサン基(エポキシシクロヘキサン骨格)、環状脂肪族炭化水素に直接又は炭化水素を介して付加したエポキシ基(特にオキシラン環)等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、中でも、エポキシシクロヘキサン基を有する化合物であることが好適である。また、硬化速度をより高めることができる点で、分子中に脂環式エポキシ基を2個以上有する多官能脂環式エポキシ化合物が好適である。また、分子中に脂環式エポキシ基を1個有し、かつビニル基等の不飽和二重結合基を有する化合物も、脂環式エポキシ化合物として好ましく用いられる。
上記エポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、イプシロン−カプロラクトン変性−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等が好適である。また、上記エポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物以外の脂環式エポキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、トリグリシジルイソシアヌレート等のヘテロ環含有のエポキシ樹脂等の脂環式エポキシド等が挙げられる。
上記水添エポキシ化合物としては、飽和脂肪族環状炭化水素骨格に直接的又は間接的に結合したグリシジルエーテル基を有する化合物であることが好ましく、多官能グリシジルエーテル化合物が好適である。このような水添エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物の完全又は部分水添物であることが好ましく、より好ましくは、芳香族グリシジルエーテル化合物の水添物であり、更に好ましくは、芳香族多官能グリシジルエーテル化合物の水添物である。具体的には、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールS型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物等が好ましい。より好ましくは、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物である。
上記芳香族エポキシ化合物とは、分子中に芳香環及びエポキシ基を有する化合物である。芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環共役系を有するエポキシ化合物等が好適に挙げられる。中でも、より高屈折率を実現させるため、ビスフェノール骨格及び/又はフルオレン骨格を有する化合物であることが好適である。より好ましくは、フルオレン骨格を有する化合物であり、これによって、更に著しく屈折率を高めることができ、また離型性を更に高めることも可能となる。また、芳香族エポキシ化合物においてエポキシ基がグリシジル基である化合物が好ましいが、中でもグリシジルエーテル基である化合物(芳香族グリシジルエーテル化合物)がより好ましい。また、芳香族エポキシ化合物の臭素化化合物を用いることによっても、より高屈折率を達成できるため好適であるが、アッベ数が若干上がるため、用途に応じて適宜使用することが好ましい。
上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フルオレン系エポキシ化合物、ブロモ置換基を有する芳香族エポキシ化合物等が好適に挙げられる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びフルオレン系エポキシ化合物が好ましい。
上記芳香族グリシジルエーテル化合物としては、例えば、エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック・アラルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるものが好適に挙げられる。
上記高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を、上記ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、更に付加反応させることにより得られるものが好適に挙げられる。
芳香族グリシジルエーテル化合物の好ましい具体例としては、828EL、1003、1007(以上、三菱化学社製)等のビスフェノールA型化合物;オンコートEX−1020、オンコートEX−1010、オグソールEG−210、オグソールPG(以上、大阪ガスケミカル社製)等のフルオレン系化合物等が挙げられ、中でもオグソールEG−210が好ましい。
上記脂肪族エポキシ化合物とは、脂肪族エポキシ基を有する化合物である。脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好適である。
上記脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG600)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類等)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるもの等が好適に挙げられる。中でも、中心骨格にプロピレングリコール骨格、アルキレン骨格、オキシアルキレン骨格を有する脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等がより好適である。
上記エポキシ化合物の各例示の内、水酸基を有するものが水酸基含有エポキシ化合物となる。また、以下に、水酸基含有エポキシ化合物(A)の具体例を例示する。
脂環式エポキシ樹脂:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン3付加物等
水添エポキシ化合物:YX−8034、YX−8040(以上、三菱化学社製)等
芳香族エポキシ化合物:1001、834(以上、三菱化学社製)等
脂肪族エポキシ化合物:デナコールEX−321、デナコールEX−611、デナコールEX−421(以上、長瀬ケムテックス社製)等
また、エポキシ化合物の総質量100質量%に対して、水酸基含有エポキシ化合物(A)の合計量は、耐熱性、透明性、硬化性の観点から、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物においては、エポキシ化合物として、従来のアンチモン系触媒等では硬化し難かった水添エポキシ化合物や芳香族エポキシ化合物を含む場合でも、充分に硬化した硬化物が得られる。これは、本発明の樹脂組成物は、特定量の水酸基を有するエポキシ化合物と、後述の特定のカチオン硬化触媒を有するため、硬化性が向上するものと考えられる。
上記エポキシ化合物の内、硬化性の点から、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物が好ましい。また、硬化速度の観点では、脂環式エポキシ樹脂、水添エポキシ樹脂がより好ましく、硬化物の高屈折化の観点では、芳香族エポキシ樹脂がより好ましい。
また、水酸基含有エポキシ化合物(A)が、これらの化合物すなわち、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。更に、水酸基含有エポキシ化合物(A)が、脂環式エポキシ化合物又は水添エポキシ化合物であることが好ましい。
このように上記エポキシ化合物、特に水酸基含有エポキシ化合物(A)が、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
また、本発明の組成物は、上記エポキシ化合物の中でも、硬化時にエポキシ化合物自体の着色が起こり難く、光による着色や劣化が発生しにくい、すなわち透明性や低着色性、耐光性にも優れる点から、脂環式エポキシ化合物や水添エポキシ化合物を含むことが更に好適である。そのため、これらを含む樹脂組成物とすれば、着色がなく耐光性により優れる光学部材を高生産性で得ることができる。このように、上記エポキシ化合物が、脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記エポキシ化合物が脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態において、水酸基含有エポキシ化合物(A)、脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物の合計量が、上記エポキシ化合物の総量100質量%に対して50質量%以上であることが好適である。これによって、上述した脂環式エポキシ化合物や水添エポキシ化合物を用いることによる作用効果をより発揮することが可能になる。より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
なお、上記合計量を求める際、脂環式エポキシ化合物かつ水酸基含有エポキシ化合物(A)である場合や、水添エポキシ化合物かつ水酸基含有エポキシ化合物(A)である場合は、重複計算せず、いずれかの一方の質量%を用いて計算する。また、水酸基含有エポキシ化合物(A)が芳香族エポキシ化合物や脂肪酸エポキシ化合物の場合は、単に3者(脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、水酸基含有エポキシ化合物(A))の合計とする。
また、エポキシ化合物として、芳香族エポキシ化合物の種類や組成物中の含有量を適宜選択することにより、屈折率等の制御された硬化物を得ることができる。水酸基濃度が0.001mol/g以上であるエポキシ化合物を少なくとも1種含む限り、エポキシ化合物として芳香族エポキシ化合物を100質量%とする形態、並びに、芳香族エポキシ化合物と他のエポキシ化合物とを併用する形態は、いずれも好ましい形態である。後者においては、芳香族エポキシ化合物と、他のエポキシ化合物として脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む形態は、より好適な形態である。
また、エポキシ化合物として芳香族エポキシ化合物を用いた樹脂組成物は、屈折率(高い屈折率)が要求されるレンズ等の用途に好適である。
上記エポキシ化合物はまた、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物であることが好適である。これにより、硬化性がより高められ、各種特性により優れる硬化物を得ることができる。なお、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物としては、同一のエポキシ基を2個以上有する化合物であってもよいし、異なるエポキシ基を2個以上有する化合物であってもよいが、多官能エポキシ化合物としては特に、多官能脂環式エポキシ化合物、多官能水添エポキシ化合物が好ましい。これらを用いることで、更に短時間で硬化物を得ることが可能になる。
上記エポキシ化合物の重量平均分子量は、成形強度の観点から、100以上が好ましく、1000以上がより好ましい。また、透明性の観点から、10000未満が好ましく、5000未満がより好ましい。
上記重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のポリスチレン換算の分子量として求めることができる。本発明においては、後述の実施例に記載の方法により重量平均分子量を測定することができる。
上記エポキシ化合物の含有量としては、耐熱性、硬化性の点から、カチオン硬化性樹脂組成物100質量%に対して、1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは5質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上であり、最も好ましくは50質量%以上である。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、カチオン硬化触媒も必須成分として含有するものである。
上記カチオン硬化触媒は、上記一般式(1)で表されるルイス酸(有機ボラン)と、ルイス塩基を含んでなるものである。これにより、硬化方法としてカチオン硬化を採用することができるため、例えば酸無水物硬化のような付加型硬化を採用する場合と比較して、得られる硬化物が耐熱性、化学的安定性、耐湿性等の、特に光学用途において求められる特性に優れたものとなる。
また、アンチモン系スルホニウム塩等の従来のカチオン硬化触媒を用いた場合と比較して、熱(硬化時の熱、使用環境)による着色が低減され、吸湿性が低く、耐湿熱性や耐UV照射性等の耐久性に優れた硬化物が得られる。なお、用いる触媒に基づく硬化物の着色の有無、程度は通常、400nmにおける透過率の変化からも確認できる。つまり、硬化物の400nmの透過率を測定することによって、硬化物の着色の有無、程度について評価することができる。
なお、カチオン硬化触媒とは、カチオン硬化反応を促進する触媒であり、例えば酸無水物硬化反応における硬化促進剤とは異なる働きをするものである。
上記一般式(1)におけるRは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。上記炭化水素基は特に限定されないが、炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素原子数1〜20の炭化水素基は、全体として炭素原子数が1〜20であれば限定されないが、アルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましい。当該アルキル基、アリール基、アルケニル基は、無置換の基であっても、水素原子の1又は2以上が他の有機基又はハロゲン原子によって置換された基であっても良い。この場合の他の有機基としては、アルキル基(Rで表される炭化水素基がアルキル基である場合には、置換後の炭化水素基は全体として無置換のアルキル基に該当する。)、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
上記一般式(1)におけるxは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。芳香環におけるフッ素原子の結合位置は特に限定されない。xとして好ましくは2〜5であり、より好ましくは3〜5であり、最も好ましくは5である。
また、aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。すなわち、上記ルイス酸は、フッ素原子が結合した芳香環が少なくとも1つ、ホウ素原子に結合したものである。aとしてより好ましくは2以上であり、最も好ましくは3、すなわち、フッ素原子が結合した芳香環がホウ素原子に3つ結合している形態である。
上記カチオン硬化触媒を構成するルイス酸及びルイス塩基の存在形態としては、特に限定されず、ルイス酸とルイス塩基とが、配位形態のように複合体として存在する形態でもよく、単に、混合状態で共存する形態でもよい。好ましくは、ルイス酸に対してルイス塩基が電子的な相互作用を有した状態で存在してなる形態であり、より好ましくは、ルイス酸にルイス塩基の少なくとも一部が配位してなる形態である。
上記ルイス酸として具体的には、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(TPB)、ビス(ペンタフルオロフェニル)フェニルボラン、ペンタフルオロフェニル−ジフェニルボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボラン等が好ましい。硬化物の耐熱性、透明性、硬化性等を向上できる点で、TPBがより好ましい。
なお、本願明細書、実施例等において、本発明にかかるカチオン硬化触媒のうち、ルイス酸としてTPBを含むものをTPB系触媒と表記することもある。
また、上記ルイス酸には、ルイス塩基が配位していてもよいし、他の分子が配位していてもよいし、ルイス塩基と他の分子が配位していてもよい。他の分子としては、水分子が好ましい。
上記ルイス塩基は、上記ルイス酸に配位できるものや、上記ルイス酸と混合できるものであれば特に限定されず、ルイス塩基として通常使用されるものを用いることができる。その内、上記ルイス酸に配位することができるもの、すなわち、上記ルイス酸が有するホウ素原子と配位結合を形成できるものが好ましく、非共有電子対を有する原子を有する化合物が好適である。具体的には、窒素原子、リン原子又は硫黄原子を有する化合物であることが好適である。この場合、ルイス塩基は、窒素原子、リン原子、硫黄原子が有する非共有電子対を上記ルイス酸のホウ素原子に供与することにより、配位結合を形成することとなる。また、一液での保存安定性が向上する点から、窒素原子又はリン原子を有する化合物がより好ましく、窒素原子を有する化合物が更に好ましい。
上記窒素原子を有する化合物として好ましくは、アミン類(モノアミン、ポリアミン)、アンモニア等が挙げられる。より好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するアミン、低沸点のアミン、アンモニアであり、更に好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するポリアミン、アンモニアであり、特に好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するポリアミンである。上記ルイス塩基としてヒンダードアミン構造を有するポリアミンを用いると、ラジカル捕捉効果により硬化物の酸化防止が可能となり、得られる硬化物がより耐熱性(耐湿熱性)に優れたものとなる。一方、上記ルイス塩基としてアンモニア又は低沸点のアミンを用いると、得られる硬化物が低吸水性、耐UV照射性に優れたものとなる。硬化工程でアンモニア又は低沸点のアミンが揮発することにより、最終の硬化物中の、アンモニア又は低沸点のアミンに由来する塩構造が少なくなるため、硬化物の吸水率を低減することができると推測される。特にアンモニアは上述の効果に優れるため好ましい。
上記ヒンダードアミン構造を有するアミンとしては、樹脂組成物の保存安定性と成形時の硬化性の観点より、ホウ素原子と配位結合を形成する窒素原子が第2級又は第3級アミンを構成するものであることが好ましく、ジアミン以上のポリアミンであることがより好ましい。ヒンダードアミン構造を有するアミンとしては、具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;TINUVIN770、TINUVIN765、TINUVIN144、TINUVIN123、TINUVIN744、CHIMASSORB2020FDL(以上、BASF社製);アデカスタブLA52、アデカスタブLA57(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。中でも、1分子に2個以上のヒンダードアミン構造をもつTINUVIN770、TINUVIN765、アデカスタブLA52、アデカスタブLA57が好適である。
上記低沸点のアミンとしては、沸点が120℃以下のアミンを用いることが好ましく、より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは50℃以下であり、一層好ましくは30℃以下であり、特に好ましくは5℃以下である。具体的には、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、エチレンジアミン等の第1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ピペリジン等の第2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン等が挙げられる。
上記リン原子を有する化合物として好ましくは、ホスフィン類である。具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリトルイルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ジフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記硫黄原子を有する化合物として好ましくは、チオール類及びスルフィド類である。チオール類としては、具体的には、メチルチオール、エチルチオール、プロピルチオール、ヘキシルチオール、デカンチオール、フェニルチオール等が挙げられる。スルフィド類の具体例としては、ジフェニルスルフィド、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、メチルフェニルスルフィド、メトキシメチルフェニルスルフィド等が挙げられる。
本発明におけるカチオン硬化触媒において、上記ルイス酸とルイス塩基との混合比は、必ずしも量論比でなくてもよい。すなわち、ルイス酸及びルイス塩基(塩基点量に換算)のいずれか一方が理論量(当量)より過剰に含まれていてもよい。
すなわち、カチオン硬化触媒におけるルイス酸とルイス塩基との混合比が、ルイス酸点であるホウ素の原子数n(a)に対する、ルイス塩基点となる原子の原子数n(b)の比(n(b)/n(a))で表して、1(量論比)でなくても、カチオン硬化触媒として作用する。
カチオン硬化触媒における比n(b)/n(a)は、樹脂組成物の保存安定性、カチオン硬化特性(硬化速度、硬化物の硬化度等)に影響する。
なお、ルイス塩基が、ジアミン類等の如く、ルイス塩基点を分子内に2個有する場合は、カチオン硬化触媒を構成するルイス酸に対するルイス塩基の混合モル比が0.5の場合に、比n(b)/n(a)=1(量論比)となる。このようにして、比n(b)/n(a)は算定される。
カチオン硬化触媒を含んだ樹脂組成物の保存安定性の観点では、ルイス酸がルイス塩基に対して余りに過剰に存在すると、保存安定性が低下する場合があるので、保存安定性により優れる樹脂組成物とするためには、比n(b)/n(a)が0.5以上であることが好ましい。同様の理由から、上記比は0.8以上がより好ましく、0.9以上が更に好ましく、0.95以上が一層好ましく、0.99以上が特に好ましい。
一方、カチオン硬化特性の観点から、ルイス塩基が余りに過剰となると、硬化物の低温硬化性が低下する場合があるので、カチオン硬化特性により優れる組成物とするためには、n(b)/n(a)が100以下であることが好ましい。同様の理由から、比n(b)/n(a)は、20以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましく、5以下であることが特に好ましい。
更に、カチオン硬化特性の観点では、ルイス塩基が窒素原子、硫黄原子又はリン原子を有する化合物からなり、2以上炭素置換された構造(2以上炭素置換された構造とは、これらの原子に炭素原子を介して有機基が2個以上結合した構造を意味する)では、酸解離定数が高く、立体障害が大きい事から、比n(b)/n(a)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.2以下であることが更に好ましい。例えばヒンダードアミンの様な構造では、上記範囲が好ましい。
また、ルイス塩基がアンモニアや立体障害の小さい低沸点アミンである場合は、特にアンモニアである場合は、比n(b)/n(a)が1より大きいことが好ましい。具体的には、好ましくは、1.001以上であり、より好ましくは1.01以上であり、更に好ましくは1.1以上であり、特に好ましくは1.5以上である。
また、カチオン硬化触媒を構成するルイス酸及びルイス塩基の存在形態は、上述したとおりであり、該ルイス酸に対してルイス塩基が電子的な相互作用を有した状態で存在してなることが好ましく、該ルイス酸にルイス塩基の少なくとも一部が配位してなることがより好ましい。更に好ましくは、少なくとも、存在するルイス酸に対して当量に相当するルイス塩基がルイス酸に配位した形態である。ルイス酸に対するルイス塩基の存在比が当量又は当量未満である場合、すなわち、比n(b)/n(a)が1以下である場合は、存在するルイス塩基のほぼ全量がルイス酸に配位してなる形態が好ましい。一方、ルイス塩基が過剰に(当量より多く)含まれる形態においては、ルイス塩基がルイス酸と当量配位し、過剰のルイス塩基は錯体の近傍に存在していることが好ましい。
本発明におけるカチオン硬化触媒として、具体的には、TPB/モノアルキルアミン錯体、TPB/ジアルキルアミン錯体、TPB/トリアルキルアミン錯体等のTPB/アルキルアミン錯体、TPB/ヒンダードアミン錯体等の有機ボラン/アミン錯体;TPB/NH錯体等の有機ボラン/アンモニア錯体;TPB/トリアリールホスフィン錯体、TPB/ジアリールホスフィン錯体、TPB/モノアリールホスフィン錯体等の有機ボラン/ホスフィン錯体;TPB/アルキルチオール錯体等の有機ボラン/チオール錯体;TPB/ジアリールスルフィド錯体、TPB/ジアルキルスルフィド錯体等の有機ボラン/スルフィド錯体等が挙げられる。中でも、TPB/アルキルアミン錯体、TPB/ヒンダードアミン錯体、TPB/NH錯体、TPB/ホスフィン錯体が好適である。
上記樹脂組成物において、カチオン硬化触媒の含有量としては、溶媒等を含まない有効成分量(一般式(1)で表されるルイス酸とルイス塩基との合計量)として、上記エポキシ化合物100質量部に対し、0.01〜10質量部とすることが好適である。0.01質量部未満であると、硬化速度をより充分に高めることができないおそれがある。より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上である。また、10質量部を超える量とすると、硬化時やその硬化物の加熱時等に着色するおそれがある。例えば、硬化物を得た後にその硬化物をリフロー実装する場合には200℃以上の耐熱性が必要であるため、無色・透明性の観点からは、10質量部以下とすることが好適である。より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、上記エポキシ化合物以外に、他のカチオン重合性基を有する化合物(以下、「他のカチオン重合性基含有化合物」ともいう)を更に含有することもできる。
上記カチオン重合性基としては、カチオン硬化性の官能基であればよく、例えば、オキセタン基(オキセタン環)、ジオキソラン基、トリオキサン基、ビニル基、ビニルエーテル基、スチリル基等が挙げられ、オキセタン基が好適である。また、上記カチオン重合性基の硬化特性は、基の種類のみならず、該基が結合した有機骨格にも影響されることになる。
以下では、オキセタン化合物について、具体的に説明する。
上記オキセタン化合物とは、オキセタン基(オキセタン環)を有する化合物である。
上記オキセタン化合物は、硬化速度の観点から、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物と併用することが好ましい。また、耐光性向上の観点では、アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物を用いることが好ましい。一方、硬化物の強度向上の観点から、多官能のオキセタン化合物、すなわち1分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物を用いることが好適である。
上記アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物のうち、単官能のオキセタン化合物としては、例えば、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が好ましい。
上記アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物のうち、多官能のオキセタン化合物としては、例えば、ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕エタン、1,3−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が好ましい。
上記オキセタン化合物としては、具体的には、例えば、ETERNACOLL(R)EHO、ETERNACOLL(R)OXBP、ETERNACOLL(R)OXMA、ETERNACOLL(R)HBOX、ETERNACOLL(R)OXIPA(以上、宇部興産社製);OXT−101、OXT−121、OXT−211、OXT−221、OXT−212、OXT−610(以上、東亜合成社製)等が好適である。
上記他のカチオン重合性基含有化合物を使用する場合、その含有量としては、特に限定されないが、硬化物の強度や硬化性の点から、カチオン硬化性樹脂組成物100質量%に対して、5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることが好ましい。
また、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、可撓性を有する成分(可撓性成分)を含むこともできる。これによって、一体感のある、即ち、靭性の高い樹脂組成物とすることが可能となり、好ましい。
上記可撓性成分としては、上記エポキシ化合物とは異なる化合物であってもよいし、該エポキシ化合物の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
上記可撓性成分として具体的には、(1)−〔−(CH−O−〕−で表されるオキシアルキレン骨格を有する化合物(nは2以上、mは1以上の整数である。好ましくは、nは2〜12、mは1〜1000の整数であり、より好ましくは、nは3〜6、mは1〜20の整数である。)が好適であり、例えば、オキシブチレン基を含むエポキシ化合物(三菱化学社製、YL−7217、エポキシ当量437、液状エポキシ化合物(10℃以上))が好適である。また、その他の好適な可撓性成分としては、(2)高分子エポキシ化合物(例えば、水添ビスフェノール(三菱化学社製、YX−8040、エポキシ当量1000、固形水添エポキシ化合物));(3)脂環式固形エポキシ化合物(ダイセル化学工業社製 EHPE−3150);(4)脂環式液状エポキシ化合物(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2081);(5)液状ニトリルゴム等の液状ゴム、ポリブタジエン等の高分子ゴム、粒径100nm以下の微粒子ゴム等が好ましい。
これらの中でもより好ましくは、末端や側鎖や主鎖骨格等にエポキシ基を含むエポキシ化合物である。
このように上記可撓性成分としては、エポキシ基を含む化合物であることが好ましく、より好ましくは、オキシブチレン基(−〔−(CH−O−〕−(mは、同上。))を含むエポキシ化合物である。
上記可撓性成分を含む場合、その含有量としては、上記エポキシ化合物と可撓性成分との合計量100質量%に対し、40質量%以下であることが好適である。より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。また、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。
本発明における上記触媒を用いることにより、金型離型性が向上する効果や離型剤を減らせる効果が得られ、本発明の樹脂組成物は金型成形材料に好適である。よって、本発明の樹脂組成物においては、従来技術では用いていた離型剤を使用しなくても、金型からの離型が可能となる。そのため、離型剤含有による透明性低下を生じることなく、離型剤による性能への影響を抑えて、金型からの離型性に優れる硬化物が得られる。
しかし、上記樹脂組成物を用いてレンズ等を得る場合、つまり、硬化・成形方法として金型成形を採用する場合において、離型剤を含んでもよい。離型剤としては、カチオン硬化触媒による硬化反応を阻害することなく、むしろ促進する基を有する化合物が好ましい。離型剤として具体的には、アルコール性OH基及び/又はカルボニル基(カルボキシル基及びエステル基を含む)を有する化合物が好ましく、更にカチオン硬化性樹脂組成物への相溶性、離型効果の高い点から、炭素数が8以上の炭化水素基を有するものが好ましい。より好ましくは、炭素数8〜36のアルコール、炭素数8〜36のカルボン酸、炭素数8〜36のカルボン酸エステル、炭素数8〜36のカルボン酸無水物及び炭素数8〜36のカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物である。このような離型剤を含有することで、短時間で硬化できるとともに、金型を用いて硬化する際に容易に金型を剥がすことができ、硬化物の表面に傷をつけることなく外観を制御し、透明性を発現させることができる。よって、上記樹脂組成物を、電気・電子部品材料用途や光学部材用途等により有用なものとすることができる。
上記離型剤として挙げられた化合物の中でもより好ましくは、アルコール、カルボン酸、カルボン酸エステルであり、更に好ましくは、カルボン酸(特に高級脂肪酸)及びカルボン酸エステルである。カルボン酸及びカルボン酸エステルは、カチオン硬化反応を阻害することなく、離型効果を充分に発揮できることから好適である。なお、アミン類は、カチオン硬化反応を阻害する可能性があることから、離型剤として用いない方が好ましい。
上記化合物はまた、直鎖状、分岐状、環状等のいずれの構造であってもよく、分岐しているものが好ましい。
上記化合物の炭素数としては、8〜36の整数であることが好適であるが、これによって、樹脂組成物の透明性や作業性等の機能を損なうことなく、優れた剥離性を示す硬化物となる。炭素数としてより好ましくは8〜20であり、更に好ましくは10〜18である。
上記炭素数が8〜36のアルコールとしては、一価又は多価のアルコールであり、直鎖状のものでも分岐状のものでもよい。上記アルコールとしては、具体的には、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、パルミチルアルコール、マーガリルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ミリシルアルコ−ル、メチルペンチルアルコール、2−エチルブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、3,5−ジメチル−1−ヘキサノール、2,2,4−トリメチル−1−ペンタノール、ジペンタエリスリトール、2−フェニルエタノール等が好適に挙げられる。上記アルコールとしては、脂肪族アルコールが好ましく、中でも、オクチルアルコール(オクタノール)、ラウリルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール(2−エチルヘキサノール)、ステアリルアルコールがより好ましい。
上記炭素数が8〜36のカルボン酸としては、1価又は多価のカルボン酸であり、2−エチルヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、1−ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、1−ヘキサコサン酸、ベヘン酸等が好適に挙げられる。好ましくは、オクタン酸、ラウリン酸、2−エチルヘキサン酸、ステアリン酸である。
上記炭素数が8〜36のカルボン酸エステルとしては、(1)上記アルコールと上記カルボン酸とから得られるカルボン酸エステル、(2)メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、ヘプタノール、グリセリン、ベンジルアルコール等の炭素数1〜7のアルコールと上記カルボン酸との組み合わせで得られるカルボン酸エステル、(3)酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸等の炭素数1〜7のカルボン酸と上記アルコールとの組み合わせで得られるカルボン酸エステル、(4)炭素数1〜7のアルコールと、炭素数1〜7のカルボン酸とから得られるカルボン酸エステルであって、合計炭素数が8〜36となる化合物等が好適に挙げられる。これらの中でも、(2)及び(3)のカルボン酸エステルが好ましく、ステアリン酸メチルエステル、ステアリン酸エチルエステル、酢酸オクチルエステル等がより好ましい。
上記炭素数が8〜36のカルボン酸無水物とは、上記炭素数が8〜36のカルボン酸の無水物である。
上記炭素数が8〜36のカルボン酸塩としては、上記カルボン酸と、アミン、Na、K、Mg、Ca、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Snとの組み合わせで得られるカルボン酸塩等が好適に挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸Zn、ステアリン酸Mg、2−エチルヘキサン酸Zn等が好ましい。
上述の化合物の中でもより好ましくは、ステアリン酸及びステアリン酸エステル等のステアリン酸系化合物、アルコール系化合物であり、更に好ましくは、ステアリン酸系化合物である。
上記離型剤を含む場合、その含有量としては、上記樹脂組成物100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましい。10質量%を超えると樹脂組成物が硬化しにくくなる等のおそれがある。より好ましくは、0.01〜5質量%であり、更に好ましくは、0.1〜2質量%である。
上記樹脂組成物を用いてレンズを形成する場合、樹脂組成物に無機材料を含有する形態も好ましい。上記樹脂組成物が、無機材料を含むことにより、強度が高く、成形加工性に優れ、硬化して得られるレンズは、アッベ数・屈折率が制御されたものとなる(特に珪素化合物は高アッベ数となる)。
上記無機材料としては、金属酸化物粒子等の無機微粒子や、ポリシロキサン化合物等の無機高分子が好適に挙げられる。
上記無機微粒子としては、金属や金属化合物等の無機化合物から構成される微粒子であればよく、特に限定されるものではない。無機微粒子における無機成分としては、金属の酸化物、水酸化物、(酸)窒化物、(酸)硫化物、炭化物、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、(塩基性)炭酸塩、(塩基性)酢酸塩等が例示される。これらの中でも好ましくは、金属の酸化物(金属酸化物)であり、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛であることがより好ましい。用いる硬化性化合物の屈折率やアッベ数にもよるが、通常、屈折率の高い又はアッベ数の低い硬化物を得るためには、酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化亜鉛が好ましく用いられる。一方、屈折率の低い又はアッベ数の高い硬化物を得るためには、シリカを用いることが好ましい。
上記無機微粒子としては、微粒子の樹脂との親和性向上、分散性向上等の目的で、表面処理された粒子も包含される。表面処理剤としては、特に限定されず、微粒子表面に有機鎖、高分子鎖の導入又は表面電荷制御の目的で、各種の有機化合物、無機化合物、有機金属化合物等が用いられる。表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等のカップリング剤;金属アルコキシド類及びこれらの(部分)加水分解・縮合物;金属石鹸;等の有機金属化合物が挙げられる。
上記ポリシロキサン化合物とは、縮合可能な基、すなわち熱によって縮合する官能基を有し、かつシロキサン結合(Si−O−Si結合)を有する化合物である。
上記縮合可能な基としては、例えば、Si−O−R基(Rは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)、Si−OH基(シラノール基)、Si−X基(Xは、ハロゲン原子を表す。)、Si−H基等が好適に挙げられる。
このように、上記縮合可能な基が、Si−O−R基(Rは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)、Si−OH基、Si−X基(Xは、ハロゲン原子を表す。)、及び、Si−H基からなる群より選択される少なくとも1種の基である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。これらの縮合可能な基の中でも、硬化反応性の点で、Si−O−R基、Si−OH基が特に好適である。
上記Si−O−R基において、Rは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表すが、これらのうち2種以上を有するものであってもよい。
また、上記アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜3である。上記アリール基の炭素数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜8、更に好ましくは6〜7である。上記アラルキル基の炭素数は、好ましくは7〜20、より好ましくは7〜8である。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルへキシル基、n−オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロへキシル基、ビシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;鎖状アルキル基の水素原子の一部又は全部が、シクロアルキル基で置換されてなる基;シクロアルキル基の水素原子の一部又は全部が、鎖状アルキル基で置換されてなる基等が挙げられる。
なお、本明細書中、「アルキル基」には、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基だけでなく、環状のアルキル基(シクロアルキル基)を含むものとする。
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等の他、これらの水素原子の一部又は全部がアルキル基等で置換されてなる基(例えば、メチルフェニル基(トルイル基)、ジメチルフェニル基(キシリレン基)、ジエチルフェニル基等)等が挙げられる。
上記アラルキル基としては、ベンジル基等の他、これらの水素原子の一部又は全部がアルキル基等で置換されてなる基(例えば、メチルベンジル基等)等が挙げられる。
上記Rの中でも、アルキル基(すなわち、OR基がアルコキシ基である形態)が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。これによって、後述の第2工程(2次硬化)での収縮をより低減することが可能になる。更に好ましくはメチル基、エチル基であり、反応の制御がしやすい点で、エチル基が特に好ましい。
上記Rは、鎖状(直鎖状、分岐鎖状)構造であってもよいし、環状構造であってもよい。
また、上記Si−X基において、Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が特に好適である。
上記ポリシロキサン化合物の分子構造としては特に限定されないが、通常、鎖状構造(直鎖状、分岐状)、ラダー状構造、環状構造、かご状及び粒子状が例示される。中でも、エポキシ化合物等の樹脂成分への溶解性が高い観点から、鎖状、ラダー状、かご状が好ましい。更に溶解性が高く、光学的な透明性や機械特性がより高い硬化物が得られる観点から、鎖状、ラダー状がより好ましく、特に好ましくはラダー状である。特にラダー状のポリシロキサン化合物を用いると、他の構造のものを用いる場合に比べて、少量の添加で離型性、光学特性(透明性、アッベ数・屈折率等)の制御性、機械的特性を更に向上することができる。すなわち、(1)硬化後の成形金型から硬化物を容易に離型することができる(離型性に優れる)、(2)硬化性樹脂組成物の透明性、アッベ数・屈折率を厳密に制御することができる(制御性に優れる)、(3)硬化物の透明性、アッベ数・屈折率を厳密に制御することができる(制御性に優れる)、(4)硬化物の機械的特性に優れる(弾性率、破壊強度が高い)、等といった添加効果を発揮することができる。
また上記ポリシロキサン化合物は常温で液状であってもよいし、固体状のものであってもよい。
上記ポリシロキサン化合物としては、シルセスキオキサン構造単位(R−SiO1.5)を有する化合物(以下、この化合物を「シルセスキオキサン系化合物」とも称す。)が好ましい。
上記シルセスキオキサン系化合物としては、シロキサン結合(Si−O−Si結合)によって3個の酸素原子と結合するケイ素原子を有する構造単位、すなわちシルセスキオキサン単位を主として含み、かつ、分子内に縮合可能な基を含む化合物(以下、この化合物を「シルセスキオキサン」とも称す。)が好ましい。
このようなシルセスキオキサン系化合物としては、例えば、下記平均組成式(2):
xYySiOz (2)
(Rは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。Yは、縮合基又は縮合原子を表し、Siと結合して上記縮合可能な基を形成するものである。x、y及びzは、それぞれ、Siに対するR、Y及びOの結合割合の平均値を表し、0<x<2、0<y<2、1<z<2、0<(x+y)<2、及び、x+y+2z=4を満たす。)で表される化合物が特に好ましい。
このようなシルセスキオキサン系化合物、特にシルセスキオキサンを用いることによって、耐熱性や機械的特性を向上・改善するとともに、樹脂組成物の経時的な粘度の上昇が抑制されることになる。したがって、上記カチオン硬化性樹脂組成物をハンドリング性により優れる一液型樹脂組成物(一液性カチオン硬化性樹脂組成物)とすることができ、また、より効率的かつ簡便に、優れた物性を有する硬化物を得ることが可能になる。
上記平均組成式(2)において、Rは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、上記アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜3である。上記アリール基の炭素数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜8、更に好ましくは6〜7である。上記アラルキル基の炭素数は、好ましくは7〜20、より好ましくは7〜8である。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルへキシル基、n−オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロへキシル基、ビシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;鎖状アルキル基の水素原子の一部又は全部が、シクロアルキル基で置換されてなる基;シクロアルキル基の水素原子の一部又は全部が、鎖状アルキル基で置換されてなる基等が挙げられる。中でも、表面硬度を更に高めることができる観点から、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。更に好ましくはメチル基である。
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等の他、これらの水素原子の一部又は全部がアルキル基等で置換されてなる基(例えば、メチルフェニル基(トルイル基)、ジメチルフェニル基(キシリレン基)、ジエチルフェニル基等)等が挙げられる。
上記アラルキル基としては、ベンジル基等の他、これらの水素原子の一部又は全部がアルキル基等で置換されてなる基(例えば、メチルベンジル基等)等が挙げられる。
上記Rの中でも、アルキル基が好ましい。また、高屈折率化の観点では、アリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
上記Rは、置換基を有するものであってもよいが、置換基を有さない基であることがより好ましい。
上記ポリシロキサン化合物は、上記Rに代えて、有機樹脂成分(エポキシ基又はオキセタン基を有する化合物等)と結合を形成する基を有するものを用いてもよい。例えば、上記平均組成式(2)中、Rに代えてエポキシ基又はオキセタン基を有する化合物を用いてもよい。ただし、有機樹脂成分の安定性の観点からは、このような化合物は用いない方が好ましい。
上記Yは、縮合基又は縮合原子を表し、Siと結合して上記縮合可能な基を形成するものである。したがって、Yは、OR基(Rは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)、水酸基、ハロゲン原子(X)及び水素原子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好適である。R及びXの好適な形態は、上述したとおりである。
上記平均組成式(2)中のx、y及びzは、0<x<2、0<y<2、1<z<2、0<(x+y)<2、及び、x+y+2z=4を満たすものである。
上記yは、Siに対するYの結合割合の平均値を表し、0を超えて2未満の数であるが、yが2以上であると、Yの縮合により硬化物中に気泡を生じるおそれがある。好ましくは1未満、より好ましくは0.5未満、更に好ましくは0.3未満である。また、0.001より大きい値であることが好ましい。0.001以下では、後述の第2工程におけるシルセスキオキサンの縮合による硬度向上効果が小さくなり、エポキシ樹脂への相溶性も小さいものとなる。より好ましくは0.01より大きい値、更に好ましくは0.05より大きい値、特に好ましくは0.08より大きい値である。
上記zは、1より大きく2未満の数であればよい。好ましくは1.2より大きく1.8未満であり、より好ましくは1.35より大きく1.65未満である。
上記x+yは、0より大きく2未満の数であればよい。好ましくは0.4より大きく1.6未満であり、より好ましくは0.7より大きく1.3未満である。
上記xは、y及びx+yが上述した好適な範囲を満たすものとなるように、適宜設定することが好ましい。
上記ポリシロキサン化合物の好ましい具体例としては、硬化性(硬化時の樹脂強度)の点から、例えば、ポリメチルシロキサン(ポリメチルシルセスキオキサンを含む)、ポリフェニルシロキサン(ポリフェニルシルセスキオキサンを含む)等が挙げられる。
上記ポリシロキサン化合物の重量平均分子量は、硬化物の強度の観点から、1000以上が好ましく、3000以上がより好ましい。また、樹脂の相溶性の観点から、10万未満が好ましく、5万未満がより好ましく、3万未満が更に好ましく、2万未満が特に好ましい。
上記重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のポリスチレン換算の分子量として求めることができる。本発明においては、後述の実施例に記載の方法により重量平均分子量を測定する。
上記ポリシロキサン化合物は、その末端に水酸基(OH基)を有するものが好ましい。
ポリシロキサン化合物における水酸基濃度としては、特に限定されないが、硬化物の強度の点から、ケイ素(Si)1molに対して、0.01mol(ケイ素(Si)100mol%に対して1mol%)以上が好ましく、0.05mol(5mol%)以上がより好ましく、0.1mol(10mol%)以上が最も好ましい。また、樹脂の保存安定性を良好に保つ点から、1mol(100mol%)未満が好ましく、0.8mol(80mol%)未満がより好ましく、0.7mol(70mol%)未満が更に好ましく、0.6mol(60mol%)未満が特に好ましい。
また、上記ポリシロキサン化合物の末端にある水酸基(OH基)濃度は、例えば、NMR、元素分析、蛍光X線分析にて求めることができるが、H−NMRにて、Si、OHの定量を行い、求めることが好ましい。
上記カチオン硬化性樹脂組成物において、上記ポリシロキサン化合物の含有量としては、ポリシロキサン化合物とエポキシ化合物との総量100質量%に対し、5〜99質量%であることが好ましい。ポリシロキサン化合物の含有量が多いほど、耐熱性が高く、すなわち着色しにくく、硬度も高いため好適であるが、ポリシロキサン化合物の含有量が99質量%を超えるほど多すぎると、後述の第1工程(1次硬化)でより充分な硬化物を形成することができず、金型転写性が充分ではなくなり、得られる硬化物を光学部材等の用途に特に有用なものとすることができないおそれがある。
ポリシロキサン化合物の含有量は、ポリシロキサン化合物とエポキシ化合物との総量100質量%に対し、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、最も好ましくは60質量%以上である。また、上限としては、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。
更に、ポリシロキサン化合物中のシロキサン濃度、つまり、官能基を含んだポリシロキサン化合物中のシロキサン骨格部分(例えば3官能の場合はSiO1.5)の濃度は、透過率向上の観点から、ポリシロキサン化合物100質量%に対して、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、85質量%以上が特に好ましい。
また、硬化物中のシロキサン結合の量としては、最終的に得られる硬化物100質量%中のSi含有量に換算して、5質量%以上であることが好ましい。より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。
上記ポリシロキサン化合物(好ましくはシルセスキオキサン系化合物)としては、光学特性の制御の観点から、その他の金属、無機元素を構成成分として含むものであってもよい。金属元素としては、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra等のアルカリ土類金属元素;La、Ce等のランタノイド系金属元素;Ac等のアクチノイド系金属元素;Sc、Y等のIIIa族金属元素;Ti、Zr、Hf等のIVa族金属元素;V、Nb、Ta等のVa族金属元素;Cr、Mo、W等のVIa族金属元素;Mn、Tc、Re等のVIIa族金属元素;Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt等のVIII族金属元素;Cu、Ag、Au等のIb族金属元素;Zn、Cd、Hg等のIIb族金属元素;Al、Ga、In、Tl等のIIIb族金属元素;Ge、Sn、Pb等のIVb族金属元素;Sb、Bi等のVb族金属元素;Se、Te等のVIb族金属元素等を挙げることができ、これらが1種又は2種以上併存していてもよい。これらは、樹脂組成物が目的とする、電気的特性、光学特性、磁気的特性等によって適宜選択することができる。例えば、光学物性のうち、高屈折率の樹脂組成物を得たい場合には、Ti、Zr、In、Zn、La、Al等が好ましい。
上記樹脂組成物において、無機微粒子又はポリシロキサン化合物を含む場合、エポキシ化合物としては、水添エポキシ化合物及び/又は脂環式エポキシ化合物を必須とする形態が好ましい。これにより、高いアッベ数を有するエポキシ化合物とすることができる。
上記樹脂組成物は、無機材料を含有することにより、熱膨張率を低下させることができる。また、無機材料と樹脂との屈折率をあわせることにより、樹脂組成物及びその硬化物(例えばレンズ等)の外観を制御し、透明性を発現させることもでき、電気・電子部品材料や光学用途における材料として特に有用なものとすることができる。更に、無機微粒子を含むことにより、離型効果をより発揮することができる。具体的には、樹脂成分として例えば熱硬化性樹脂(特に、エポキシ化合物)を含む場合、樹脂成分が接着効果を有することとなり、このような樹脂組成物は、硬化させた場合に金型に接着するおそれがある。しかし、無機微粒子を適量加えることにより、離型効果がみられ、硬化物が金型から容易に剥がれることとなる。
上記無機材料を含む場合、その含有量としては、樹脂組成物100質量%に対して、0.01〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜80質量%であり、更に好ましくは、0.2〜60質量%であり、特に好ましくは、0.3〜20質量%であり、最も好ましくは、0.5〜15質量%である。
上記樹脂組成物は、上述した必須成分や好適な含有成分の他に、本発明の作用効果を損なわない限りにおいて、カチオン硬化触媒以外の硬化触媒・硬化剤、硬化促進剤、反応性希釈剤、不飽和結合を有さない飽和化合物、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、熱重合開始剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤等の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)、溶媒等を含有してもよい。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、上記エポキシ化合物及びカチオン硬化性触媒を混合し、必要に応じて上記他の成分等も混合して、調製することができる。
また、各成分を混合する際には、必要に応じて、各成分又は混合物を加熱して、均一組成になるように混合することもできる。加熱温度としては、硬化性樹脂の分解温度以下、又は、反応温度以下であれば特に限定されないが、触媒添加前であれば、好ましくは140〜20℃、より好ましくは120〜40℃である。
上記樹脂組成物は、耐熱性、透明性、硬化性の点から、塩素濃度が低いことが好ましい。
上記樹脂組成物は、粘度が10000Pa・s以下であることが好ましい。これによって、加工特性に優れ、例えば、成形体形成用途(特に金型成形体の形成用途)により優れるものとなる。より好ましくは1000Pa・s以下、更に好ましくは200Pa・s以下である。また、0.01Pa・s以上であることが好ましく、0.1Pa・s以上であることがより好ましい。更に好ましくは1Pa・s以上、一層好ましくは5Pa・s以上であり、特に好ましくは10Pa・s以上である。
上記粘度の測定は、樹脂組成物について、R/Sレオメーター(米国ブルックフィールド社製)を用いて、40℃、回転速度D=1/sの条件下で行うことが可能である。なお、粘度20Pa・s以上では、RC25−1の測定治具を使用し、粘度20Pa・s未満では、RC50−1の治具を使用できる。また、回転速度D=1/s時点の粘度が測定できないものについては、回転速度D=5〜100/sの値を外挿して、樹脂組成物の粘度として評価可能である。
上記カチオン硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物もまた、本発明の1つである。
上記樹脂組成物の硬化方法としては、熱硬化や光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)等の種々の方法を好適に用いることができる。熱硬化としては30〜400℃程度で硬化することが好ましく、光硬化としては10〜10000mJ/cmで硬化することが好ましい。硬化は1段階で行ってもよく、また、1次硬化(予備硬化)、2次硬化(本硬化)のように2段階で行ってもよい。例えば、レンズ等のように金型成形を必要とする場合においては、脱型操作を必要とするが、脱型操作の前に1次硬化を行い、脱型操作後に2次硬化を行うといった硬化・成形方法が好ましく採用される。
以下に、2段階硬化を行う場合について、詳述する。
2段階硬化法としては、1次硬化に相当する第1工程として、樹脂組成物を10〜100000mJ/cmで光硬化させるか、又は、80〜200℃で熱硬化させる工程と、該第1工程で得た硬化物を200℃を超え500℃以下で熱硬化させる、2次硬化に相当する第2工程とを含む方法を採用することが好ましい。
上記第1工程においては、熱硬化の場合には、硬化温度を80〜200℃とすることが好ましい。より好ましくは100℃以上、160℃以下である。また、硬化温度は、80〜200℃の範囲内で、段階的に変化させてもよい。
上記熱硬化工程における硬化時間は、例えば、10分以内であることが好ましく、より好ましくは5分以内、更に好ましくは3分以内である。また、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上である。
上記熱硬化工程はまた、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気下、減圧下又は加圧下のいずれの雰囲気下でも行うことができる。例えば、生産性向上等の観点から、樹脂組成物を型内で所定の温度・時間で保持した後、型から取り出して空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気内に静置して熱処理することも可能である。また、光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)を組み合わせてもよい。
上記第1工程としてはまた、金属、セラミック、ガラス、樹脂製等の型(「金型」と称す。)を用いた硬化工程であることが好適である。金型を用いた硬化工程とは、例えば、射出成形法、圧縮成形法、注型成形法、サンドイッチ成形法等の金型成形法で通常行われる硬化工程であればよいが、第1工程がこのような金型を用いた硬化工程であれば、耐磨耗性、低収縮性、寸法精度及び金型転写性等の各種物性に優れ、かつ着色がなく透明な硬化物を容易に製造できる。
上記第1工程が金型を用いた硬化工程である場合には、第1工程の後であって、かつ第2工程の前に、脱型工程を行うことが好適である。脱型工程を含む形態、すなわち第1工程で得た硬化物を金型から取り出し、取り出した硬化物を次の第2工程に供する形態とすることによって、高価な金型を有効に回転(リサイクル)でき、かつ金型の寿命を長くすることができるため、低コストで硬化物を得ることが可能になる。
この場合、上記樹脂組成物を硬化剤及び必要に応じて他の成分を含む1液組成物とし、目的とする硬化物の形状に合わせた金型内に該1液組成物を充填(射出・塗出等)して硬化させ、その後、硬化物を金型から取り出す方法が好適に用いられる。
上記硬化方法において、第2工程では、上記第1工程で得た硬化物(好ましくは、脱型工程によって金型から取り出した硬化物)を200℃を超え、500℃以下で熱硬化させることが好ましい。硬化温度としては、下限は、より好ましくは250℃以上、更に好ましくは300℃以上、特に好ましくは330℃以上、最も好ましくは350℃以上である。上限は、より好ましくは400℃以下である。また、硬化温度は、200℃を超え、500℃以下の温度範囲内で、段階的に変化させてもよい。
上記第2工程における硬化時間は、得られる硬化物の硬化率が充分となる時間とすればよく特に限定されないが、製造効率を考慮すると、例えば、30分間〜30時間とすることが好適である。より好ましくは1〜10時間である。
上記第2工程はまた、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気のいずれの雰囲気下でも行うことができる。中でも特に、酸素濃度が低い雰囲気下で上記第2工程を行うことが好ましい。例えば、酸素濃度が10体積%以下である不活性ガス雰囲気下で行うことが好適である。より好ましくは3体積%以下、更に好ましくは1体積%以下、特に好ましくは0.5体積%以下、最も好ましくは0.3体積%以下である。
上記硬化方法で得られる硬化物の強度としては、金型から取り出して形状を保てる程度の強度であればよく、例えば、9.8×10Pa以上の力で押し出したときの形状変化の割合が10%以下の圧縮強度であることが好ましい。形状変化の割合としては、好ましくは1%以下であり、より好ましくは0.1%以下であり、更に好ましくは0.01%以下である。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、上述のように耐熱性、透明性、硬化性等に優れた硬化物を与えることができるものである。
上記硬化物は、例えば、光学材料(部材)、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途に有用なものである。中でも特に、光学材料、オプトデバイス部材、表示デバイス部材等に好適に用いることができる。このような用途として具体的には、例えば、眼鏡レンズ、(デジタル)カメラや携帯電話用カメラや車載カメラ等のカメラ用撮像レンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ等のレンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光伝送用接合材料、フィルター、回折格子、プリズム、光案内子、ウォッチガラス、表示装置用のカバーガラス等の透明ガラスやカバーガラス等の光学用途;フォトセンサー、フォトスイッチ、LED、発光素子、光導波管、合波器、分波器、断路器、光分割器、光ファイバー接着剤等のオプトデバイス用途;LCDや有機ELやPDP等の表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、ディスプレイ保護膜、ディスプレイバックライト、導光板、反射防止フィルム、防曇フィルム等の表示デバイス用途等が好適である。
これらの用途の中でも、光学材料が特に好適である。このように上記硬化物が光学材料である形態や、上記カチオン硬化性樹脂組成物が光学材料用の樹脂組成物である形態もまた、本発明の好適な形態に含まれる。
上記光学材料としては、特に、レンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光伝送用接合材料であることが好適である。レンズとして好ましくは、カメラレンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ及び光ピックアップレンズであり、より好ましくはカメラレンズである。カメラレンズの中でも、携帯電話用撮像レンズ及びデジタルカメラ用撮像レンズ等の撮像レンズが好ましい。また、これら微小光学レンズであることが好適である。
なお、上記樹脂組成物が光学材料用の樹脂組成物である場合は、光学材料の用途に応じて適宜その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、具体的には、UV吸収剤、IRカット剤、反応性希釈剤、顔料、洗料、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、熱重合開始剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、消泡剤等が好適に挙げられる。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、上記カチオン硬化性触媒を用いることによって、アンチモン系カチオン硬化触媒を用いた場合に比べて、環境負荷の低減の観点からも有用であり、特に光学材料用途においてその有用性は高い。特に、世界需要が高く更に需要増加が見込まれるカメラ用撮像レンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ等のレンズ、LED用封止材、光学用接着剤において、本発明の樹脂組成物を用いる価値は高い。また、本発明の樹脂組成物から得られる硬化物は、吸水率が低いことから、カメラレンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ及び光ピックアップレンズの各用途において好ましく用いられる。より好ましくはカメラレンズの用途であり、カメラレンズの中でも、携帯電話用撮像レンズ及びデジタルカメラ用撮像レンズ等の撮像レンズが更に好ましい用途である。硬化物における吸水は、膨張、クラックの発生等の原因となるが、吸水によるこれらの僅かな変化が光学特性に現われ易い上述した微小光学レンズには、本発明の硬化物を用いることは有効である。
更に、本発明の樹脂組成物から得られる硬化物は、リフロー耐熱性が高く、可視光透過率の低減や着色が抑えられる。携帯電話、テレビ、パソコン、車載用途等の各種素子は、製造工程の簡略化、低コスト化等の理由から、半田リフロープロセスを採用する流れにある。本発明の樹脂組成物又は該組成物から得られた硬化物は、半田リフロープロセスに供されても光学特性低下が抑制されることから、半田リフロープロセスを採用する各種素子の部材(例えばレンズ、フィルター、接着剤等の光学材料)として有用である。
本発明の組成物に用いるカチオン硬化触媒がTPB系触媒である場合には、該組成物から得られる硬化物の吸水率が特に低く、耐熱性にも優れることから、TPB系触媒をカチオン硬化触媒とするカチオン硬化性樹脂組成物は、上述した各光学材料用途に特に有用である。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、上述のような構成であるので、耐熱性、透明性、硬化性等に優れた硬化物を与えることができるものである。特に、エポキシ化合物として、水酸基濃度が0.001mol/g以上であるエポキシ化合物を少なくとも1種含むものを用いることにより、硬化性に優れ、得られた硬化物における400nmの透過率が改善され、着色が低減される。このような硬化物は、光学材料、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途に好適に適用でき、特に光学材料として有用である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<TPB触媒の調製>
調製例1
以下のようにして、TPB含有粉末A(TPB:86.5質量%、水:0.3質量%、γ−ブチロラクトン:13.2質量%)を調製した。
国際公開第1997/031924号に記載された合成法にしたがって、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素(TPB)含有量7%のアイソパーE(脂肪族炭化水素溶媒、エクソンモービル社製)溶液189gを調製した。この溶液にγ−ブチロラクトン2.22gを60℃で滴下した。滴下途中から白色結晶が析出した。反応液を室温まで冷却した後、得られたスラリーを吸引ろ過し、n−ヘプタンで洗浄した。得られたケーキを40℃で減圧乾燥した後、白色結晶であるTPB・γ−ブチロラクトン錯体を14.1g得た。この錯体は、γ−ブチロラクトン濃度13.2質量%(GC分析)、水分量0.3質量%(カールフィッシャー水分計)であり、TPB含有率は86.5質量%であった。NMR分析、GC分析では、TPB、γ−ブチロラクトン、水以外のピークは検出されなかった。
H−NMR(CDCl)ppm (標準物質:TMS 0ppm)
δ=2.44(2H,m)γ−ブチロラクトン
δ=2.83(2H,t)γ−ブチロラクトン
δ=4.46(2H,t)γ−ブチロラクトン
δ=8.74(2H,s)水
19F−NMR(CDCl)ppm (標準物質:CFCl 0ppm)
δ=−135.5(6F,m)
δ=−156.9(3F,dd)
δ=−163.9(6F,d)
調製例2(TPB/ヒンダードアミン(アデカスタブLA−57)錯体の調製)
調製例1で得られたTPB含有粉末Aの2g((TPB純分:1.73g,0.003379mol)、(水:0.006g,0.000333mol))に対して、水を0.1g(0.005549mol)、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した。その後、アデカスタブLA−57を0.741g添加し、室温で混合して均一溶液とし、TPB触媒を調整した。
<樹脂組成物及び硬化物の調製>
実施例1
エポキシ化合物としてYX−8034(水添エポキシ樹脂、三菱化学社製)100g、ステアリン酸0.5gを80℃で混合した。その後、40℃に冷却し、調製例2で得られたTPB触媒0.5gを均一になるように混合して、樹脂組成物(1)を得た。当該樹脂組成物を、後述の方法(硬化工程)により硬化させ、硬化物を得た。
実施例2〜5、比較例1〜5
樹脂組成物を構成するエポキシ化合物の種類及び量を表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(2)〜(5)、比較樹脂組成物(1)〜(5)を得た。当該樹脂組成物を、後述の方法により硬化させ、硬化物を得た。
上記実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、以下の方法により硬化させ、硬化物を得た。
<硬化工程>
(第1工程)
SUS304(日本テストパネル社製、表面800番仕上げ)の金属板を2枚用いて、1000μm間隔のギャップを形成し、各樹脂組成物の注型成形を行った。150℃×2分で1次硬化を行った後、脱型した。
(第2工程(キュア))
第1工程での硬化後、N雰囲気下(特に断りのない限り、0.2〜0.3体積%の酸素濃度で実施した)、以下の条件で硬化の処理を行った。
条件:250℃×1時間(250℃の乾燥機へ直接試料を投入)
上記実施例及び比較例において、エポキシ化合物の各物性を以下のようにして求めた。また、結果を表1〜2に示す。
<エポキシ化合物のエポキシ当量、水酸基濃度、エポキシ濃度、総発熱量>
(1)各エポキシ化合物におけるエポキシ当量は、製造メーカーの評価データを採用した。エポキシ当量の評価データが無い場合には、JIS−K7263の中和滴定により測定する。
(2)各エポキシ化合物における水酸基濃度及びエポキシ濃度は、H−NMR測定より、エポキシ化合物中のエポキシ基/水酸基のmol比を求め、上記のようにして測定したエポキシ当量を用いて求めた。つまり、エポキシ濃度は、エポキシ当量の逆数として求め、水酸基濃度は、上記エポキシ基/水酸基のmol比とエポキシ当量を乗じて得られた値の逆数として算出した。
(3)樹脂組成物において、エポキシ化合物として1種のエポキシ化合物のみを含有する場合は、全エポキシ化合物のエポキシ当量、総エポキシ濃度、総水酸基濃度は、上記各エポキシ化合物におけるエポキシ当量、エポキシ濃度、水酸基濃度と同様にして求めた。
また、樹脂組成物において、エポキシ化合物として2種以上のエポキシ化合物を含有する場合、含まれる各エポキシ化合物のエポキシ濃度を求めてから、各エポキシ化合物のエポキシ濃度と配合割合との積を合計することにより、全エポキシ化合物の総質量に対する総エポキシ濃度を求めた。全エポキシ化合物のエポキシ当量は、全エポキシ濃度の逆数として求めた。なお、上記配合割合とは、各実施例の樹脂組成物中に含まれるエポキシ化合物の総質量に対する各エポキシ化合物の質量比(質量分率)を意味する。
更に、樹脂組成物において、エポキシ化合物として2種以上のエポキシ化合物を含有する場合の、全エポキシ化合物の総質量に対する総水酸基濃度は、上記のようにして求めた各エポキシ化合物の水酸基濃度に、樹脂組成物中における各エポキシ化合物の配合割合(上記同様にエポキシ化合物の総質量に対する各エポキシ化合物の質量比(質量分率)を意味する)を乗じた値の合計として求めた。
(4)総発熱量は、実施例・比較例の樹脂組成物を用いて評価した。示差走査熱量計(品番SII6200、セイコーインスツルメンツ社製)を用い、昇温速度10℃/minにて40℃から280℃到達までに発生する熱量の総和を総発熱量とした。
(5)エポキシ化合物1molあたりの総発熱量は、エポキシ当量に総発熱量を乗じた値として求めた。
上記実施例及び比較例で得られた硬化物のTg、透過率、硬化特性を以下のようにして求めた。また、結果を表2に示す。
<Tg>
動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて、上述の1次硬化後及び2次硬化後の硬化物のTgを測定した。40〜200℃を10℃/minの昇温速度で測定し、tanδよりTgを求めた。
<硬化物の透過率(着色の有無)>
上記第2工程後(2次硬化後)の硬化物について、波長400nmにおける透過率を吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。
<硬化特性>
サンプル瓶(マルエム社製、スクリュー管No.7)に樹脂組成物16gを評取し、35℃の乾燥機に30分間保管した(35℃に調温した)。試料中心部に温度センサーを設置した。135℃のオイルバスを準備し、サンプル瓶内の樹脂液面が、オイルバスの液面の10mm下となるようにサンプル瓶をオイルバスにセットした。樹脂中のセンサーをモニターし、50℃から180℃に到達するまでの時間(秒)を硬化特性として評価した。
Figure 2013234231
Figure 2013234231
表1〜2中の略号等は、下記のとおりである。
YX−8034:水添エポキシ樹脂、三菱化学社製
YX−8000:液状水添エポキシ樹脂、重量平均分子量409、三菱化学社製
CELL−2021P:液状脂環式エポキシ樹脂『セロキサイドCELL−2021P』、重量平均分子量260、ダイセル化学工業社製
EHPE−3150CE:脂環式エポキシ樹脂、ダイセル化学工業社製
セロキサイド2081:液状脂環式エポキシ樹脂、ダイセル化学工業社製
828US:液状芳香族エポキシ樹脂、三菱化学社製
YL−6810:芳香族エポキシ樹脂、三菱化学社製
1001:芳香族エポキシ樹脂、三菱化学社製
また、表2記載のエポキシ当量(g/mol)、総エポキシ濃度(mol/g)、OH/エポキシ濃度比、総発熱量(J/g)は、2種以上のエポキシ化合物が含まれる場合、配合割合を反映したエポキシ化合物の総和より算出した(上述のエポキシ化合物の各物性の測定の(3)、(4)より算出した値である)。
上記各実施例及び比較例から、以下のことがわかった。
カチオン硬化触媒としてTPB系触媒を用いた例を比較すると、エポキシ化合物として、水酸基濃度が0.001mol/g以上であるエポキシ化合物を少なくとも1種含むものを用いた各実施例は、エポキシ化合物として、水酸基濃度が0.001mol/g以上であるエポキシ化合物を含まないものを用いた各比較例に比べて、2次硬化後の透過率が高いことがわかった。これは、特定のエポキシ化合物を用いると、耐熱性を有し、2次硬化時の着色をより低減できることを示している。また、各実施例は、各比較例に比べて、硬化性に優れることがわかった。これは、特定のエポキシ化合物を用いると、エポキシ化合物1molあたりの総発熱量が大きくなり、エポキシ基が開環し易くなり、硬化性が良くなったためと考えられる。
上記実施例においては、カチオン硬化性樹脂組成物として、特定のエポキシ化合物及び特定のカチオン硬化触媒を用いることによって、耐熱性、透明性、硬化性等に優れた硬化物を与えることができるものであり、そのような作用機序は、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物においてすべて同様に発現されるものと考えられる。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。

Claims (6)

  1. エポキシ化合物及びカチオン硬化触媒を含有してなり、
    該エポキシ化合物は、水酸基濃度が0.001mol/g以上であるエポキシ化合物を少なくとも1種含み、かつ、
    該カチオン硬化触媒は、下記一般式(1):
    Figure 2013234231
    (式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。xは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。)で表されるルイス酸と、ルイス塩基を含んでなる
    ことを特徴とするカチオン硬化性樹脂組成物。
  2. 前記カチオン硬化性樹脂組成物に含まれる全エポキシ化合物の総質量に対する総水酸基濃度が0.0005mol/g以上であることを特徴とする請求項1に記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
  3. 前記エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
  4. 前記ルイス塩基は、窒素原子又はリン原子を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
  5. 前記カチオン硬化性樹脂組成物は、光学材料用であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のカチオン硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
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