JP2013231169A - 熱可塑性樹脂組成物、その製造方法、成形体、及びフィルム - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物、その製造方法、成形体、及びフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】光学特性や耐熱性を維持し、且つ、優れた機械強度(靭性)を有し、成形体表面のブリードアウトが抑制され、成形体表面の滑り特性を有する熱可塑性樹脂組成物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】メタクリル酸エステル単位及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、特定の構造で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、を含むアクリル系樹脂(a)、及び平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)を含み、熱可塑性樹脂組成物中の残存モノマー量が熱可塑性樹脂組成物中の樹脂100質量%に対して、0.2質量%以上0.8質量%以下であり、前記アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、前記ゴム質含有共重合体粒(b)0.1質量部以上100質量部以下である、熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法、成形体、及びフィルムに関する。
近年、ディスプレイ市場の拡大に伴い、画像をより鮮明に見たいという要求が高まっており、単なる透明材料ではなく、耐熱性や機械強度及びより高度な光学特性が付与された光学材料が求められている。
上記光学材料として、透明性、表面硬度、及び光学特性等の観点から、アクリル系樹脂が注目されている。アクリル系樹脂の中でも、特にグルタル酸無水物や無水マレイン酸等を共重合化することにより耐熱性を改良したアクリル系樹脂及びそれを含む樹脂組成物が、光学材料として優れていることが紹介されている。耐熱性の高いアクリル系樹脂は、比較的強度が低いため、フィルムの成形加工性やハンドリング性の面で生産性が劣ることが懸念される。そこで、耐熱アクリル系樹脂の強度を向上させる技術として、グルタル酸無水物単位を含有するアクリル系樹脂に多層構造を有する架橋弾性体を含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、無水マレイン酸単位を含有するアクリル系樹脂にアクリルゴムを添加する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2000−178399号公報 特開平05−119217号公報
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示された技術は、ゴム質成分の添加により耐熱性が低くなることや、樹脂組成物としての粘度が上昇することで、フィルム等の成形時において、樹脂分解による発泡が生じ易くなるという問題がある。そのため、熱安定剤等を添加し、樹脂発泡を抑制する方法が挙げられるが、多量に添加した場合には成形体表面にブリードアウトを起こし、外観不良に繋がる恐れがある。
さらに、近年においては成形体表面に適度な表面滑り性が望まれてきている。特に、フィルム成形時においては、ロールでの原反フィルムをサンプルリングする際、適度な表面滑り性を有することが望ましく、上記技術では、全ての課題を解決することは困難である。ここで用語「表面滑り性」とは、フィルム間の表面密着性のことをいう。フィルム間の表面密着性が強すぎる(表面滑りが殆ど無い)状態であれば、ロールでの原反フィルムとして採取の際にヨレ、歪みがフィルムに生じた場合、部分的に応力が発生してフィルムにヒビや割れが生じる恐れがある。また、原反からある一定幅のフィルムを切り出す場合、フィルムを引き剥がす際に、適度な表面滑り性が望まれる。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、光学特性や耐熱性を維持し、且つ、優れた機械強度(靭性)を有し、成形体表面のブリードアウトが抑制され、成形体表面の滑り特性を有する熱可塑性樹脂組成物、及びその製造方法を提供することを目的とするである。
本発明者らは上記課題に対して鋭意検討を行った結果、特定の組成比からなるアクリル系樹脂(a)と、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)と、を含む樹脂組成物であって、樹脂組成物中の残存モノマー量(質量%)が一定の範囲にあれば、光学特性、耐熱性及び機械強度を維持し、成形体表面のブリードアウトが少なく、成形体表面の滑り性に優れる熱可塑性樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
メタクリル酸エステル単位及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、
芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、
下記式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、
を含むアクリル系樹脂(a)
(式中、XはO又はN−Rを示し、Oは酸素原子、Nは2つの炭素原子とRと結合する窒素原子、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はシクロアルキル基を示す。)、及び
平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)を含み、
熱可塑性樹脂組成物中の残存モノマー量が熱可塑性樹脂組成物中の樹脂100質量%に対して、0.2質量%以上0.8質量%以下であり、
前記アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、前記ゴム質含有共重合体粒子(b)0.1質量部以上100質量部以下である、熱可塑性樹脂組成物。
〔2〕
前記ゴム質含有共重合体粒子(b)は、三層以上の多層構造を有する粒子である、前記〔1〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔3〕
前記ゴム質含有共重合体粒子(b)は、内側から硬質層−軟質層−硬質層の三層構造を有する粒子である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔4〕
メタクリル酸エステル単位及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、
芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、
下記式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、
を含むアクリル系樹脂(a)
(式中、XはO又はN−Rを示し、Oは酸素原子、Nは2つの炭素原子とRと結合する窒素原子、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はシクロアルキル基を示す。)、及び
平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)を含む熱可塑性樹脂組成物を5〜20μmのポリマーフィルターに通過させる工程を含み、
前記ゴム質含有共重合体粒子(b)の添加量が、前記アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、0.1質量部以上100質量部以下である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
〔5〕
更に、前記熱可塑性樹脂組成物が、熱安定剤(c)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及び/又はリン系加工安定剤を0.1質量部以上10質量部以下含む、前記〔4〕に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
〔6〕
前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、成形体。
〔7〕
前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、フィルム。
本発明により、光学特性、耐熱性及び機械強度を有し、且つ、表面ブリードアウトが抑制され、成形体表面の滑り性が良好な熱可塑性樹脂組成物、その製造方法、成形体及びフィルムを提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、重合前のモノマー成分のことを「〜単量体」(「単量体」を省略して化合物名のみ記載する場合もある。)といい、共重合体を構成する構成単位のことを「〜単位」という。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、メタクリル酸エステル単位及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、
芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、
下記式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、
を含むアクリル系樹脂(a)
(式中、XはO又はN−Rを示し、Oは酸素原子、Nは2つの炭素原子とRと結合する窒素原子、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はシクロアルキル基を示す。)、及び
平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)を含み、
熱可塑性樹脂組成物中の残存モノマー量が熱可塑性樹脂組成物中の樹脂100質量%に対して、0.2質量%以上0.8質量%以下であり、
前記アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、前記ゴム質含有共重合体粒子(b)0.1質量部以上100質量部以下である、熱可塑性樹脂組成物。
[アクリル系樹脂(a)]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に含まれるアクリル系樹脂(a)は、メタクリル酸エステル単位及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、下記式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、を含む。
アクリル系樹脂(a)の第一の単位成分となるメタクリル酸エステル単量体及び/又はアクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル等のメタクリル酸エステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルが挙げられる。上記の中でも、透明性や重合し易さの観点からメタクリル酸メチルが好ましい。
アクリル系樹脂(a)の第二の単位成分となる芳香族ビニル化合物単量体としては、特に限定されないが、具体的には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン;α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン等が挙げられる。上記の中でも、耐熱分解性や重合し易さの観点からスチレンが好ましい。
アクリル系樹脂(a)の第三の単位成分となる下記式(1)で表される化合物単量体のうち、XがOであるものとしては、特に限定されないが、具体的には、無水マレイン酸、イタコン酸、エチルマレイン酸、メチルイタコン酸、クロルマレイン酸等の無水物である不飽和ジカルボン酸無水物単量体が挙げられる。上記の中でも、耐熱分解性や耐熱性向上、色度の観点から、無水マレイン酸単量体が好ましい。また、XがN−Rであるものとしては、特に限定されないが、具体的には、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド単量体が挙げられる。
(式中、XはO又はN−Rを示し、Oは酸素原子、Nは2つの炭素原子とRと結合する窒素原子、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はシクロアルキル基を示す。)
アクリル系樹脂(a)を構成する単位の共重合割合は、耐熱性、光弾性係数、光学特性等の観点から、メタクリル酸エステル単位及び/又はアクリル酸エステル単位が40質量%以上90質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が5質量%以上40質量%以下、上記式(1)で表される化合物単位が5質量%以上30質量%以下である。
メタクリル酸エステル単位及び/又はアクリル酸エステル単位の共重合割合が40質量%以上であると、光学特性や重合安定性が良好となる傾向にあり、90質量%以下であると、耐熱性が維持される傾向にある。また、芳香族ビニル化合物単位の共重合割合が5質量%以上であると、光学特性が良好となる傾向にあり、40質量%以下であると、耐候性が維持される傾向にある。さらに、上記式(1)で表される化合物単位が5質量%以上であると、耐熱性が良好となる傾向にあり、30質量%以下であると、着色性や重合安定性が維持される傾向にある。
好ましくは、メタクリル酸エステル単位及び/又はアクリル酸エステル単位が42質量%以上83質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が12質量%以上40質量%以下、上記式(1)で表される化合物単位が5質量%以上18質量%以下である。
より好ましくは、メタクリル酸エステル単位及び/又はアクリル酸エステル単位が45質量%以上78質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が16質量%以上40質量%以下、上記式(1)で表される化合物単位が6質量%以上15質量%以下である。
また、上記式(1)で表される化合物単位の共重合割合に対する芳香族ビニル化合物単位の共重合割合が1倍以上3倍以下であることが好ましい。この割合が1倍以上であれば、芳香族ビニル化合物の添加の効果が大きくなると共に重合体の収率が向上する傾向にあり、3倍以下であれば、樹脂組成物の強度が高くなる傾向にある。
アクリル系樹脂(a)としては、上述した必須構成単量体成分に加え、必要に応じて共重合可能な他の単量体を共重合して得られたアクリル系樹脂も包含される。ここで用いられる共重合可能な他の単量体としては、特に限定されないが、具体的には、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン単量体等が挙げられ、これらの2種以上を共重合することも可能である。
(アクリル系樹脂(a)の製造方法)
アクリル系樹脂(a)を製造する方法としては、ラジカル開始剤を使用した塊状重合が適した方法であるが、溶液重合、乳化重合を用いることも可能である。
ラジカル開始剤としては特に限定されず一般的に使用されているものを用いることができるが、中でも、過酸化系開始剤であるラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを使用すると、アクリル系樹脂(a)の着色が抑制される傾向にある。従って、アクリル系樹脂(a)を重合する際のラジカル開始剤としては、ラウロイルパーオキサイドのようなジアシルパーオキサイドを適用することが好ましい。
アクリル系樹脂(a)の好ましい重合方法としては、例えば、特公昭63−1964号公報に記載された方法等が挙げられる。
アクリル系樹脂(a)のメルトインデックス(ASTM D1238:I条件)は、流動性と成形体強度の観点から、好ましくは1g/10分以上20g/10分以下、より好ましくは3g/10分以上15g/10分以下、さらに好ましくは4g/10分以上10g/10分以下である。
アクリル系樹脂(a)のTg(ガラス転移温度)は、DSC(示差走査熱量測定)を用いて測定でき、実用上、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。Tgが120℃以上であれば耐熱性のアクリル系樹脂(a)となり、このような耐熱アクリル系樹脂(a)であれば、実用温度下での熱変形が低減する傾向にあるため好ましい。具体的には、後述する実施例の「(1)ガラス転移温度(Tg)測定」に記載された方法により測定できる。
アクリル系樹脂(a)は、ブロックポリマーであってもランダムポリマーであってもよいが、耐熱性や剛性、リサイクル性の観点からは、統計的ランダムポリマーであることが好ましい。
アクリル系樹脂(a)の分子量分布の範囲については、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.6〜4.0の範囲にあることが好ましい。より好ましくは1.7〜3.7であり、さらに好ましくは1.8〜3.5の範囲である。Mw/Mnが1.6以上であると、熱可塑性樹脂組成物のフィルム加工性と機械物性のバランスが良好となる傾向にある。また、Mw/Mnが4.0以下であると、溶融流動性が改善し、加工性が良好となる傾向にある。
本実施形態における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて、ポリスチレン換算によって求めることができる。具体的には、後述する実施例の「(2)アクリル系樹脂(a)の重量平均分子量の測定」に記載された方法により測定できる。なお、数平均分子量も同様の手段で求めることができる。
アクリル系樹脂(a)の、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30,000〜300,000、より好ましくは40,000〜200,000、さらに好ましくは50,000〜100,000である。アクリル系樹脂(a)の重量平均分子量が300,000以下であると、押出し加工時に流動性が確保でき、溶融押出、成膜が大きな支障なく行える傾向にある。また、アクリル系樹脂(a)の重量平均分子量が30,000以上であると、成形加工やフィルム製膜が支障なく可能である。
[ゴム質含有共重合体粒子(b)]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に含まれるゴム質含有共重合体粒子(b)は、平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下であり、多層構造を有する。
(多層構造)
ゴム質含有共重合体粒子(b)としては、上記特性を満たすものであれば、特に限定されず、一般的なブタジエン系ABSゴム、アクリル系、ポリオレフィン系、シリコーン系、フッ素ゴム等の多層構造を有するゴム粒子を使用することができる。この中でも、三層以上の多層構造を有する粒子が好ましく、三層以上の多層構造を有するアクリル系ゴム粒子がより好ましい。ゴム質含有共重合体粒子(b)として、上記三層以上の多層構造を有するゴム粒子を用いることにより、成形加工時の熱劣化や、加熱によるゴム質含有共重合体粒子(b)の変形が抑制され、成形体の耐熱性や透明性が維持される傾向にある。
三層以上の多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)としては、特に限定されないが、具体的には、ゴム状ポリマーからなる軟質層と、ガラス状ポリマーからなる硬質層とが積層した多層構造のゴム粒子を挙げることができ、この中でも、内側から硬質層−軟質層−硬質層の三層構造を有する粒子が好ましい。硬質層を最内層と最外層に有することにより、ゴム質含有共重合体粒子(b)の変形が抑制される傾向にあり、中央層に軟質成分を有することにより良好な靭性が付与される傾向にある。
三層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)の最内層(b−i)を形成する共重合体は、硬質層となることが好ましく、メタクリル酸メチル単位65〜90質量%と、これと共重合可能な他の共重合性単量体単位10〜35質量%とを含む共重合体が好ましい。屈折率を適切に制御する観点から、上記他の共重合性単量体は、アクリル酸エステル単量体0.1〜5質量%と、芳香族ビニル化合物単量体5〜35質量%と、共重合性多官能単量体0.01〜5質量%とを含むことがより好ましい。
三層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)の最内層(b−i)を形成する共重合体中のアクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、好ましくは、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−へキシルである。芳香族ビニル化合物単量体としては、アクリル系樹脂(a)に使用される単量体と同様のものを用いることができるが、好ましくは、最内層(b−i)の屈折率を調整して光学フィルムの透明性を良好にする観点から、スチレン又はその誘導体が用いられる。共重合性多官能単量体としては、特に限定されないが、好ましくは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、トリアリルイソシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ジビニルベンゼン等から1種又は2種以上を併用して用いる。上記化合物の中でも、(メタ)アクリル酸アリルがより好ましい。
三層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)の中央層(b−ii)を形成する共重合体は、軟質層となることが好ましく、アクリル酸エステル単位55〜75質量%と、これと共重合可能な他の共重合性単量体単位25〜45質量%とを含む共重合体が好ましい。上記他の共重合性単量体としては、好ましくは、芳香族ビニル化合物単量体と、共重合性多官能単量体0.1〜5質量%とを含む。
三層構造からなるゴム質含有共重合体粒子(b)の中央層(b−ii)を形成する共重合体は、光学フィルムに優れた靭性を付与する観点から、軟質なゴム弾性を示す共重合体であることが好ましい。中央層(b−ii)を構成するアクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル等から1種又は2種以上を併用して用いることが好ましい。中でも、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−へキシルがより好ましい。また、アクリル酸エステルと共重合される芳香族ビニル化合物単量体としては、アクリル系樹脂(a)に使用される単量体と同様のものを用いることができるが、好ましくは中央層(b−ii)の屈折率を調整して光学フィルムの透明性を良好にする観点から、スチレン又はその誘導体が用いられる。また、共重合性多官能単量体としては、最内層(b−i)で用いられる共重合性多官能単量体と同様のものを用いることができる。その含有量としては、0.1質量%以上5質量%以下であると、良好な架橋効果を有し、かつ、架橋が適度でゴム弾性効果が大きくなり、結果としてフィルムの靭性が向上する傾向にあるため好ましい。
三層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)の最外層(b−iii)を形成する共重合体は、硬質層となることが好ましく、メタクリル酸メチル単位70〜100質量%と、これと共重合可能な他の共重合性単量体単位0〜30質量%とを含むことが好ましい。
三層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)の最外層(b−iii)の、メタクリル酸メチルと共重合可能な他の共重合性単量体としては、特に限定されないが、好ましくは、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−へキシルである。
(ゴム質含有共重合体粒子(b)の製造方法)
ゴム質含有共重合体粒子(b)の製造方法としては特に制限されず、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合等の公知重合法により得ることが可能である。この中でも、乳化重合により得ることが好ましい。この場合、乳化剤、開始剤の存在下、初めに最内層(b−i)の単量体混合物を添加し重合を完結させ、次に中央層(b−ii)の単量体混合物を添加して重合を完結させ、次いで最外層(b−iii)の単量体混合物を添加して重合を完結させることにより、容易に内側から硬質層−軟質層−硬質層が順に形成された多層構造粒子をラテックスとして得ることができる。このゴム質含有共重合体粒子(b)はラテックスから塩析、噴霧乾燥、凍結乾燥等の公知の方法により粉体として回収できる。
ゴム質含有共重合体粒子(b)は、アクリル系樹脂(a)との屈折率差が0.015以下であることが好ましく、0.012以下であることがより好ましく、0.01以下であることがさらに好ましい。ゴム質含有共重合体粒子(b)と、アクリル系樹脂(a)との屈折率差が0.015以下であると、透明性及び色度に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることが可能となる。
上記屈折率条件を満たすための方法としては、アクリル系樹脂(a)の各単量体の単位組成比を調整する方法、及び/又は、ゴム質含有共重合体粒子(b)に使用される各層における重合体もしくは単量体の組成比を調整する方法等が挙げられる。
屈折率差の測定方法としては、まず、ゴム質含有共重合粒子(b)において、各々1.59及び1.49の屈折率を有する媒質を混合し、比率を変えながら(b)と混合させ、白濁が消失する点をゴム質含有共重合粒子(b)の屈折率(23℃、550nm)とする。そして、別途レーザー屈折計にて測定した、プレス成形したアクリル系樹脂(a)の屈折率との差を算出することにより求めることができる。
(平均粒子径)
また、ゴム質含有共重合体粒子(b)の平均粒子径は、0.04μm以上0.13μm以下であり、好ましくは0.05μm以上0.1μm以下、より好ましくは0.055μm以上0.08μm以下、さらに好ましくは0.06μm以上0.075μm以下である。ゴム質含有共重合体粒子(b)の平均粒子径が0.04μm以上であると、薄肉成形体の靭性を維持でき、0.13μm以下であると、成形体の透明性を保つことができる。特に、100μm以下の膜厚を有する光学フィルムの場合においては、透明性維持のために、平均粒子径は0.1μm以下であることが好ましい。また、後述する70℃環境下で測定した場合のフィルムのヘイズ値(濁度)においては、0.09μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることがより好ましい。さらに、0.04μm以上0.13μmの粒子径に制御することにより、本実施形態の成形体の表面滑り性が良好に維持できる傾向にある。
ゴム質含有共重合体粒子(b)の平均粒子径は、乳化重合終了時のラテックスを透過型電子顕微鏡観察し測定する方法、吸光度法、光散乱法等の公知の方法により測定できる。
また、本実施の熱可塑性樹脂組成物を超薄切片とし、四酸化ルテニウムで軟質層を染色してから透過型電子顕微鏡観察することによっても、ゴム質含有共重合体粒子(b)の粒子径を測定できるが、この場合は、中間層:中央軟質層までの輪郭を観察しており、外層:最外硬質層の輪郭は、ブレンドしたアクリル系樹脂(a)と区別できないことに留意すべきである。
[含有量]
本実施の熱可塑性樹脂組成物中のゴム質含有共重合体粒子(b)の含有量は、トリミング性、機械強度、耐熱性及び透明性の観点から、アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、0.1質量部以上100質量部以下であり、好ましくは5質量部以上80質量部以下、より好ましくは10質量部以上70質量部以下、さらに好ましくは15質量部以上40質量部以下である。ゴム質含有共重合体粒子(b)の含有量が0.1質量部以上であると、フィルム製造時においては、トリミング性及び機械強度に優れるため、トリミング工程においてマイクロクラックや亀裂等を抑制でき、100質量部以下であると、成形体の耐熱性及び透明性を維持することができる。
なお、用語「トリミング工程」とは、フィルムを製造する際に、フィルムの幅を一定に揃えるために両端を切り落とす工程を意味する。この際、フィルムがトリミング性に劣っていると、該工程中にマイクロクラックや亀裂現象等が起こり、フィルムの生産性が著しく低下することとなる。
[残存モノマー量]
本実施の熱可塑性樹脂組成物中の残存モノマー量(質量%)は、熱可塑性樹脂組成物中の樹脂100質量%に対して、0.2質量%以上0.8質量%以下である。残存モノマー量は、例えばGC−1700(FID)(島津社製ガスクロマトグラフィー)を用いて測定することができる。より具体的には、後述する実施例の「(13)残存モノマー量の測定」に記載された方法により測定できる。残存モノマー量は、0.20質量%以上0.80質量%以下の範囲が、フィルムの表面状態が良い。残存モノマー量は、好ましくは0.22質量%以上0.7質量%以下の範囲であり、より好ましくは0.24質量%以上0.6質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは0.25質量%以上0.5質量%以下の範囲である。0.20質量%未満であれば、フィルム等の表面の滑り性が悪く、巻き取り時フィルムが密着する事により巻きムラができ、最終的には連続巻取りが不能で工程停止に至る。0.80質量%より多いと、フィルム等の表面に熱分解物がブリードアウトし、ロール表面等に蓄積し、最終的にフィルムの品位を損ねる。
[その他の添加剤]
(熱安定剤(c))
本実施形態の樹脂組成物は、その他の添加剤を添加してもよい。例えば、熱安定剤(c)としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤等の酸化防止剤等が挙げられ、好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤である。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されないが、具体的には、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、チオジエチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド)、ジエチル((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフェート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート)、ヘキサメチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス((4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上併用して用いてもよい。
また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として市販のフェノール系酸化防止剤を使用してもよく、このような市販のフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されないが、具体的には、イルガノックス1010(Irganox 1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)、イルガノックス1076(Irganox 1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)、イルガノックス1330(Irganox 1330:3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)、イルガノックス3114(Irganox 3114:1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)、イルガノックス3125(Irganox 3125、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)、スミライザーBHT(Sumilizer BHT、住友化学製)、シアノックス1790(Cyanox 1790、サイテック製)、スミライザーGA−80(Sumilizer GA−80、住友化学製)、スミライザーGS(Sumilizer GS、住友化学製)、ビタミンE(エーザイ製)等が挙げられる。この中でも、特にイルガノックス1010、イルガノックス1076、スミライザーGS等を用いるのが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上併用して用いてもよい。
また、リン系酸化防止剤としては、特に限定されないが、具体的には、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜りん酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、テトラキス(2,4−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ジ−t−ブチル−m−クレジル−ホスフォナイト等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上併用して用いてもよい。
さらに、リン系酸化防止剤として市販のリン系酸化防止剤を使用してもよく、このような市販のリン系酸化防止剤としては、特に限定されないが、具体的には、イルガフォス168(Irgafos 168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)、イルガフォス12(Irgafos 12:トリス[2−[[2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)、イルガフォス38(Irgafos 38:ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜りん酸、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)、アデカスタブ329K(ADK STAB 329K、旭電化製)、アデカスタブPEP36(ADK STAB PEP36、旭電化製)、アデカスタブPEP−8(ADK STAB PEP−8、旭電化製)、Sandstab P−EPQ(クラリアント製)、ウェストン618(Weston 618、GE製)、ウェストン619G(Weston 619G、GE製)、ウルトラノックス626(Ultranox 626、GE製)、スミライザーGP(Sumilizer GP、住友化学製)等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上併用して用いてもよい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物中の熱安定剤(c)の含有量は、アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。熱安定剤の含有量が0.1質量部以上であると、例えばフィルム成形時における樹脂組成物の熱劣化、発泡等が抑制されるため成形性が安定化し、10質量部以下であると、耐熱性、透明性、機械的強度が維持される傾向にある。熱安定剤の含有量としては、より好ましくは0.2質量部以上8質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以上5質量部以下、よりさらに好ましくは0.4質量部以上3質量部以下、さらにより好ましくは0.5質量部以上1質量部以下である。
(紫外線吸収剤)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、紫外線吸収剤をさらに含んでいてもよい。特に、熱可塑性樹脂組成物を光学材料用成形体に用いる場合には、紫外線吸収効果を有していることが好ましく、例えば、液晶ディスプレイ周辺の光学フィルムとして用いる場合は、紫外線吸収効果が要求される。
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、具体的には、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、及びベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。この中でも、好ましくはベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物である。これらは単独で用いても、2種以上併用して用いてもよい。
紫外線吸収剤は、成形加工性に優れる傾向にあるため、20℃における蒸気圧(P)が、好ましくは1.0×10−4Pa以下であり、より好ましくは1.0×10−6Pa以下であり、さらに好ましくは1.0×10−8Pa以下である。ここで、用語「成形加工性に優れる」とは、例えば、フィルム成形時に、低分子化合物のロールへの付着が少ないこと等を示す。例えば、低分子化合物がロールへ付着すると、光学材料用成形体表面へロールを介して低分子化合物が付着し、光学材料用成形体の外観、光学特性を悪化させるため、光学材料として好ましくないものとなる。ここで、用語「低分子化合物」とは、例えば、紫外線吸収剤由来の熱分解物や揮発分のことを言う。
紫外線吸収剤は、成形加工性に優れる傾向にあるため、融点(Tm)が、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは130℃以上であり、さらに好ましくは160℃以上である。
紫外線吸収剤は、成形加工性に優れる傾向にあるため、23℃から260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の紫外線吸収剤の重量減少率が、好ましくは50%以下であり、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは2%以下である。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を成形した光学材料用成形体は、380nmにおける分光透過率が5%以下、且つ400nmにおける分光透過率が65%以上であることが好ましい。紫外領域である380nmの分光透過率が低いほど偏光子や液晶素子の劣化を防ぎ、可視領域である400nm分光透過率が高いほど色再現性に優れる傾向にあるため、光学フィルムとして好ましく用いることができる。各波長における分光透過率を上記範囲内に設計するには、紫外線吸収剤の含有量を、アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下とする。紫外線吸収剤の含有量が0.1質量部以上であると、380nmにおける分光透過率が小さくなり、10質量部以下であると、光弾性係数の増加が小さく、成形加工性、機械強度も向上する。
紫外線吸収剤の含有量の、好ましい範囲は0.2質量部以上8質量部以下、より好ましい範囲は0.3質量部以上5質量部以下、さらに好ましい範囲は0.4質量部以上3質量部以下、特に好ましい範囲は0.5質量部以上2質量部以下である。
ここで、紫外線吸収剤の含有量は、核磁気共鳴装置(NMR)によりプロトンNMRを測定し、ピークシグナルの積分値の比から求める方法や、良溶媒を用いて樹脂組成物から抽出後、ガスクロマトグラフ(GC)で測定する方法等により定量できる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を光学材料用成形体に用いる場合には、光弾性係数の絶対値が小さい方が好ましい。この場合の用語「光弾性係数」とは、外力による複屈折の変化の生じやすさを表す係数で、下式により定義される。
CR[/Pa]=Δn/σR
ここで、σRは伸張応力[Pa]、Δnは応力付加時の複屈折であり、Δnは下式により定義される。
Δn=n1−n2
ここで、n1は伸張方向と平行な方向の屈折率、n2は伸張方向と垂直な方向の屈折率である。
ここで、光弾性係数の値がゼロに近いほど外力による複屈折の変化が小さいことを示す。光弾性係数の絶対値は5.0×10−12/Pa以下であることが好ましく、3.0×10−12/Pa以下であることがより好ましい。光弾性係数が上記範囲内であれば、応力による複屈折の変化が少ないため、液晶表示装置等に使用した場合にコントラストや画面の均一性に優れる傾向にある。本実施形態においては、例えば、紫外線吸収剤の含有量を、上述した好ましい範囲に調整することにより、光弾性係数の絶対値を好ましい範囲に制御できる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、他の重合体を混合することができる。このような重合体としては、特に限定されないが、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、並びにポリアセタール等の熱可塑性樹脂;及びフェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、並びにエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
また、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、各種目的に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。具体的には、二酸化珪素等の無機充填剤;酸化鉄等の顔料;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;離型剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤、可塑剤;難燃剤;帯電防止剤;有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤;着色剤;その他添加剤或いはこれらの混合物等が挙げられる。
〔熱可塑性樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、メタクリル酸エステル単位及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、
芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、
下記式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、
を含むアクリル系樹脂(a)
(式中、XはO又はN−Rを示し、Oは酸素原子、Nは2つの炭素原子とRと結合する窒素原子、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はシクロアルキル基を示す。)、及び
平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)を含む熱可塑性樹脂組成物を5〜20μmのポリマーフィルターに通過させる工程を含み、
前記ゴム質含有共重合体粒子(b)の添加量が、前記アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、0.1質量部以上100質量部以下である。
更に、上記のように、熱可塑性樹脂組成物が、熱安定剤(c)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及び/又はリン系加工安定剤を0.1質量部以上10質量部以下含むことが好ましい。
本実施形態における熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂組成物をポリマーフィルターに通過させる工程を含む方法であれば特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。この中でも、後述する溶融混練工程やフィルム又はシート製造工程において、リーフ型ポリマーフィルターやプリーツ型ポリマーフィルターを通過させることができ、中でもプリーツ型ポリマーフィルターを通過させることが好ましい。
ポリマーフィルターはフィルター目開きが5〜20μmのものであれば特に制限されない。以下、ポリマーフィルターについて、単に「μm」で表記したときはフィルター目開きを言うものとする。好ましいポリマーフィルターとして、材質がSUS304、ポリマーフィルターの径が直径60mmを用いて、熱可塑性樹脂を溶解して、15μmのポリマーフィルターに通過させることにより、残存モノマー量を所定の量に制御できる。従来用いられていたリーフ型ポリマーフィルターでは、円盤型の直径150〜250mm程度のフィルターを濾過面積に合わせて数十枚重ね合わせる為、フィルターハウジング内の容量が大きくなり、樹脂をフィルター内に通過させる際、滞留時間が長く、デッドスペースも多い為、樹脂の劣化が発生し易い構造になっていた。一方、プリーツ型ポリマーフィルターは、濾面がプリーツ形状のシンプルな1本のフィルターで、ハウジング内部の容量を最小限に抑え、且つデットスペースも少ない為、樹脂の滞留時間が短く、熱劣化の起こりにくい構造となっており、残存モノマー量を制御可能となる。
アクリル系樹脂(a)及びゴム質含有共重合体粒子(b)等の溶融混練方法としては、特に限定されないが、具体的には、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて樹脂組成物を製造することができる。本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を使用した光学材料用成形体の形態がフィルム又はシートである場合は、その後、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸フィルム又はシートを押し出し成形することにより製造することができる。押し出し成形により成形体を得る場合は、事前にアクリル系樹脂(a)とゴム質含有共重合体粒子(b)、熱安定剤、及び、必要に応じて紫外線吸収剤を溶融混錬した材料を用いてもよく、押し出し成形時に溶融混錬を経て成形してもよい。
本実施形態における熱可塑性樹脂組成物を延伸加工する場合は、延伸方法は特に制限されるものではなく、機械的流れ方向(MD)に縦一軸延伸、機械的流れ方向に直行する方向(TD)に横一軸延伸する方法等が利用できる。例えば、工業的には、ロール延伸又はテンター延伸による一軸延伸法、ロール延伸とテンター延伸の組み合わせによる逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸フィルムを製造することができる。延伸倍率は、少なくとも一方向に0.1%以上300%以下であることが好ましい。より好ましくは1%以上200%以下であり、さらに好ましくは10%を超えて130%以下である。延伸倍率を上記範囲に調整することにより、光弾性係数、機械強度において好ましい延伸成形体が得られる。
〔成形体〕
本実施形態の成形体は、上記熱可塑性樹脂組成物を含み、光学用途に好適に用いられる。このような成形体は、透明性を表す指標の一つである23℃環境下のヘイズ値(濁度)が、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.2%以下、最も好ましくは1.0%以下である。23℃環境下のヘイズ値が2.0%以下であると、成形体に高度な透明性が付与される傾向にある。成形体は熱可塑性樹脂組成物を公知の方法により成形することにより得ることができる。
〔フィルム〕
さらに、本実施形態のフィルムは、上記熱可塑性樹脂組成物を含み、光学用途に好適に用いられる。このようなフィルムを光学フィルムとして用いた場合は、70℃環境下のヘイズ値が、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.2%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。70℃環境下でのヘイズ値が1.5%以下であると、例えば、液晶ディスプレイ周辺の光学フィルム等で使用した場合に、環境や光源等での温度上昇による透明性の低下が抑制される傾向にある。成形体は熱可塑性樹脂組成物を公知の方法によりフィルム成形することにより得ることができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体は、ビカット値(軟化点温度)が110℃以上であることが好ましく、113℃以上であることがより好ましく、115℃以上であることがさらに好ましい。ビカット値が110℃以上であることにより、成形体の環境による熱収縮変形等が抑制される傾向にある。また、成形体は、シャルピー衝撃強度(ノッチなし)が20KJ/m以上であることが好ましく、22KJ/m以上であることがより好ましく、25KJ/m以上であることがさらに好ましい。シャルピー衝撃強度が20KJ/m以上であることにより、成形体にヒビや割れが発生し難くなり、耐衝撃性を要求される用途に好適に用いることが可能となる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物をフィルムとして用いる場合の膜厚は、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは10μm以上90μm以下、さらに好ましくは20μm以上80μm以下、特に好ましくは30μm以上60μm以下である。特に、液晶ディスプレイ周辺の光学フィルムとして用いる場合には、100μm以下の膜厚が要求されており、耐折強度の観点から薄膜であることが好ましい。
本実施形態の熱可塑性樹脂を用いたフィルムは、MDに対して垂直方向の耐折強度が、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上である。ここで用語「耐折強度」とは、JIS P 8115(国際標準化機構:ISO5626)に従って求めた耐折回数をLogでとった値をいう。MDに対して垂直方向の耐折強度が1.0以上であることにより、光学フィルムを筐体に組み込んだり、取り扱い時にぶつける等の衝撃でも割れてしまうリスクが低減する傾向にある。ここで、用語「MD」とは、フィルム成形時のおける機械的流れ方向を示す。
本実施形態においては、アクリル系樹脂(a)と必要に応じて添加する紫外線吸収剤との組成、延伸倍率及び光学材料用成形体の厚みを好ましい範囲内に調整することにより、平面レタデーション(Re)を制御することができる。
ここで、平面レタデーション(Re)は下式により定義されるものである。
Re=(nx−ny)×d
(式中、nx、ny:平面の主屈折率、d:厚み)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物からなる光学材料用成形体を偏光板保護フィルムとして用いる場合には、光学材料用成形体のReの絶対値は、好ましくは0nm以上50nm以下であり、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは10nm以下、特に好ましくは5nm以下である。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物からなる光学材料用成形体を1/4λ位相差フィルムとして用いる場合には、光学材料用成形体のReの絶対値は、好ましくは100nm以上180nm以下、より好ましくは120nm以上160nm以下、さらに好ましくは130nm以上150nm以下である。
延伸倍率は、得られた延伸フィルムをガラス転移温度よりも20℃以上高い温度で収縮させて以下の関係式から決定できる。
延伸倍率(%)=[(収縮前の長さ/収縮後の長さ)−1]×100
また、延伸温度としては、好ましくはTg(ガラス転移温度)−5℃〜+40℃であり、より好ましくはTg+0℃〜30℃、さらに好ましくはTg+5℃〜20℃の範囲である。ここで、ガラス転移温度はDSC法や粘弾性法により求めることができる。
さらに、本実施形態においては、アクリル系樹脂(a)と必要に応じて添加する紫外線吸収剤との組成、延伸倍率及び光学材料用成形体の厚みを好ましい範囲内に調整することにより、厚み方向レタデーション(Rth)を制御することができる。
Rth=((nx+ny)/2)−nz)×d
(式中、nx:成形体面内において屈折率が最大となる方向をxとした場合のx方向の主屈折率、ny:成形体面内においてx方向に垂直な方向をyとした場合のy方向の主屈折率、nz:成形体厚み方向の主屈折率、d:成形体の厚み(nm)である。)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物からなる光学材料用成形体を偏光板保護フィルムとして用いる場合の、厚み方向レタデーション(Rth)の絶対値は、好ましくは−50nm〜−1nm、より好ましくは−30nm〜−1nm、さらに好ましくは−10nm〜−1nmである。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物からなる光学材料用成形体を位相差フィルムとして用いる場合の厚み方向レタデーション(Rth)の値は、好ましくは−400nm〜−1nm、より好ましくは−350nm〜−5nm、さらに好ましくは−300nm〜−10nmである。Rthの値は、MD、TD方向の延伸倍率、フィルム厚さ、アクリル系樹脂の共重合比を好ましい範囲に調整することにより制御可能である。
上記のフィルムには、例えば、反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理等の表面機能化処理を適宜施してもよい。
次に実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
実施例で用いた測定及び評価方法は以下のとおりである。
<測定及び評価方法>
(1)ガラス転移温度(Tg)測定
示差走査熱量測定DSC−7型(PerkinElmer社製)を用い、室温から200℃までの昇温測定において、昇温速度20℃/分で各サンプル重量8.0〜10mgのTgを測定した。
(2)アクリル系樹脂(a)の重量平均分子量の測定方法
アクリル系樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)は、下記の装置、及び条件で測定した。
測定装置 :東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC−8320GPC)
カラム :TSKguardcolumn SuperH−H 1本、TSKgel SuperHM−M 2本、及びTSKgel SuperH2500 1本を順に直列接続して使用した。なお、カラムとしては、高分子量の成分が早く流出し、低分子量の成分は遅く流出するものを用いた。
検出器 :RI(示差屈折)検出器
検出感度 :3.0mV/min
カラム温度:40℃
サンプル :0.02gのアクリル系樹脂(a)のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量 :10μL
展開溶媒 :テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/min
内部標準として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を、サンプルに0.1g/L添加した。
検量線用標準サンプルとしては、単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymer Laboratories製;PMMA Calibration Kit M−M−10)を用いた。
ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準資料10 850
上記の条件で、アクリル系樹脂(a)の流出時間に対する、RI検出強度を測定した。GPC流出曲線におけるエリア面積と、7次近似式の検量線を基にアクリル系樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)を求めた。
(3)ビカット軟化温度(VST)の測定
後述する射出成形により成形した射出成形体(以下、単に「射出成形体」という。)のビカット軟化温度(VST)を、HDT試験装置 (ヒートディストーションテスター)(東洋精機製作所社製)を用いて、ISO306B50に準じて測定した。
(4)シャルピー衝撃強度測定(ノッチなし)
射出成形体のシャルピー衝撃強度測定を、シャルピー衝撃試験機(東洋精機製作所社製)を用いて、ISO179/1eUに準じて測定した。
(5)23℃へイズ測定
3mm厚の射出成形体及び後述するフィルム成形により成形した原反フィルム(以下、単に「原反フィルム」という。)のヘイズ値(23℃)を、NDH5000W(日本電色工業社製)を用いて、JIS−K7136に準じて測定した。
(6)70℃へイズ測定
各原反フィルムを3mm厚のアクリル板で挟み込み、温水で70℃下に保った状態で、NDH5000W(日本電色工業社製)を用いて、ヘイズ値(70℃)を測定した。
(7)フィルム膜厚の測定
マイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて各原反フィルムの中央部の膜厚を測定した。
(8)光弾性係数(CR)の測定
測定光の経路に引張装置(井元製作所株式会社製)を配置し、試験片(原反フィルム)に伸張応力をかけながらその複屈折をRets−RFI(大塚電子製)を用いて測定した。伸張時の歪速度は0.3%/分(チャック間:30mm、チャック移動速度0.1mm/分)、試験片幅は10mmとした。25℃、試験片の0〜0.5%の歪範囲における複屈折の絶対値(|Δn|)をy軸、伸張応力(σR)をx軸としてプロットし、最小二乗近似により線形領域の直線の傾きを求め、光弾性係数の絶対値(|CR|)を計算した。
(9)平面レタデーション(Re)及び厚み方向レタデーション(Rth)の測定
複屈折測定装置RETs−100(大塚電子(株)社製)を用いて、回転検光子法により、25℃、50%RH下でフィルムの平面レタデーション値(Re)を測定した。続いて、入射角θ=40°時のレターデーション(Re40)を測定後、nx、ny、nz(三次元屈折率)と厚み方向のレタデーション値(Rth)を算出した。ここで、|Re|=|nx−ny|×d、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで定義される値である。(式中、d:厚み、nx:フィルム面内において屈折率が最大となる方向(遅相軸方向)をxとした場合のx方向の主屈折率、ny:フィルム面内においてx方向に垂直な方向(進相軸方向)をyとした場合のy方向の主屈折率、nz:フィルム厚み方向の主屈折率を示す)。
(10)耐折強度の測定(靭性の評価)
各原反フィルムの靭性は、以下の耐折強度の測定により評価した。
長さ110mm×幅15mmに裁断したサンプルをJIS P 8115(国際標準化機構:ISO5626)に従って、MD方向に対して垂直方向の耐折回数を測定し、その平均値を示した。下記に試験条件を記載する。
試験条件 試験機:MIT耐揉試験機(東洋精機製作所株式会社)
荷重:2.45N (=250g)
折り曲げ角度:±135°
折り曲げ速度:175cpm
試験片つかみ具
先端半径:R=0.38mm
開き:0.25mm
当該耐折試験の結果は、耐折強度をもって表示する。
耐折強度は次の式で算出される。
耐折強度 = Log n
(式中、nは試験片が損傷(折れ破壊)にいたる試験回数を示す。)
(11)ゴム質含有共重合体粒子(b)の平均粒子径の測定
三層構造のゴム質含有共重合体粒子の乳化液をサンプリングして、固形分500ppmになるように水で希釈し、UV1200V分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて波長550nmでの吸光度を測定した。この値から、透過型電子顕微鏡写真より粒子径を計測したサンプルについて、同様に吸光度を測定して作成した検量線を用いて平均粒子径を求めた。
(12)屈折率の測定
Metricon社製レーザー屈折計Model2010を用いて、アクリル系樹脂(a)プレス品の23℃、550nmでの平均屈折率を測定した。
(13)残存モノマー量の測定
島津ガスクロマトグラフィーGC−1700(FID)を用いて、下記のカラム及び条件で残存モノマー量を測定した。
試験条件 使用カラム:TC−1(無極性)φ0.32mm×30m×0.25μm
キャリアガス:窒素 1.3ml/min
設定温度:INJ/DET=230℃/300℃
(14)成形体の表面滑り性の評価
50μmのフィルム成膜加工時、フィルム巻き取り装置において、フィルム同士の密着状態についての評価を以下○△×で評価した。
○:フィルム同士が密着することなく、ヨレないで巻き取り可能な状態。
△:フィルム同士が一部密着する時があるが、破断には至らない状態。
×:フィルム同士が密着し、最終的には、破断してしまうことがある状態。
(15)耐ブリードアウト性の評価
230℃において100mm×100mm×2mmの平板を10枚成形時、表面状態を目視観察し、以下の○△×のランク付けを行った。
成形体表面のブリード発生数が10枚中1枚以下 :○
成形体表面のブリード発生数が10枚中2〜3枚 :△
成形体表面のブリード発生数が10枚中4枚以上 :×
(16)色度評価
実施例及び比較例で作製した各樹脂組成物を用いて60mm×40mm×3mmのプレートを成形し、そのプレートの黄変度(ΔYI)測定を行い、色度を比較した。ΔYI測定は、日本電色工業株式会社製TC1500−MC装置を用いて、プレートの3mm方向の値(測定光が通過する長さ=3mm)を測定した。下記評価基準に基づいて、色度評価を行った。
ΔYI≦10 ;○
10<ΔYI≦20 ;△
ΔYI>20 ;×
実施例及び比較例で用いた各成分は以下の通りである。
(1)アクリル系樹脂(a)
(1−1)アクリル系樹脂(a−1)
特公昭63−1964に記載された方法で、メタクリル酸メチル−スチレン−無水マレイン酸共重合体であるアクリル系樹脂(a−1)を得た。得られた共重合体の組成は、メタクリル酸メチル74質量%、スチレン16質量%、無水マレイン酸10質量%であり、
共重合体の重量平均分子量は、80,000であり、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は5g/10分であった。
(1−2)アクリル系樹脂(a−2)
特公昭63−1964に記載された方法で、メタクリル酸メチル−スチレン−無水マレイン酸共重合体であるアクリル系樹脂(a−2)を得た。得られた共重合体の組成は、メタクリル酸メチル80質量%、スチレン12質量%、無水マレイン酸8質量%であり、
共重合体の重量平均分子量は、85,000であり、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は4.5g/10分であった。アクリル系樹脂(a−2)は、後述する実施例8で用いた。
(1−3)アクリル系樹脂(a−3)
上記と同様の方法により、メタクリル酸メチル51質量%、スチレン45質量%、無水マレイン酸4質量%の共重合組成を有するアクリル系樹脂(a−3)を得た。共重合体の重量平均分子量は、90,000であり、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は4.0g/10分であった。アクリル系樹脂(a−3)は、後述する比較例2で用いた。
(1−4)アクリル系樹脂(a−4)
上記と同様の方法により、メタクリル酸メチル75質量%、スチレン15質量%、無水マレイン酸2質量%、N−フェニルマレイミド8質量%の共重合組成を有するアクリル系樹脂(a−4)を得た。共重合体の重量平均分子量は、85,000であり、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は4.1g/10分であった。アクリル系樹脂(a−4)は、後述する実施例10で用いた。
(1−5)アクリル系樹脂(a−5)
上記と同様の方法により、メタクリル酸メチル85質量%、α−メチルスチレン10質量%、N−フェニルマレイミド5質量%の共重合組成を有するアクリル系樹脂(a−5)を得た。共重合体の重量平均分子量は、80,000であり、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は5.2g/10分であった。アクリル系樹脂(a−5)は、後述する実施例11で用いた。
(1−6)アクリル系樹脂(a−6)
上記と同様の方法により、メタクリル酸メチル70質量%、アクリル酸メチル5質量%、スチレン15質量%、無水マレイン酸10質量%の共重合組成を有するアクリル系樹脂(a−6)を得た。共重合体の重量平均分子量は、90,000であり、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は5.5g/10分であった。アクリル系樹脂(a−6)は、後述する実施例12で用いた。
(2)ゴム質含有共重合体粒子(b)
ゴム質含有共重合体粒子の製造法において用いた略号は、以下の化合物を示す。
MMA;メチルメタクリレ−ト
BA;n−ブチルアクリレ−ト
St;スチレン
MA;メチルアクリレ−ト
ALMA;アリルメタクリレ−ト
PEGDA;ポリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト(分子量200)
DPBHP;ジイソプロピルベンゼンハイドロパ−オキサイド
n−OM;n−オクチルメルカプタン
HMBT;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
(2−1)三層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b−1)
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水4600mL、乳化剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム24gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下80℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。次いで、還元剤としてロンガリツト1.2gを加え均一に溶解した。
第一層として、MMA150g、BA2.5g、St40g、ALMA0.2g、DPBHP0.2gの単量体混合物を加え、80℃で重合した。約15分で反応は完了した。
次いで、第二層として、BA1020g、St660g、PDEGA40g、ALMA7.0g、DPBHP3.5g、ロンガリツト2.0gの単量体混合物を90分にわたって滴下した。滴下終了後60分で反応は完了した。
次いで、第三層1段としてMMA190g、BA2.0g、DPBHP0.2g、n−OM0.1gの単量体混合物を5分にわたって滴下し、滴下終了後、この段階の反応は約15分で完了した。
最後に、第三層2段としてMMA380g、BA2.5g、DPBHP0.4g、n−OM1.2gの単量体混合物を10分にわたって加えた。この段階は約15分で反応が完了した。
温度を95℃に上げ、1時間保持し、得られた乳化液を0.5%塩化アルミニウム水溶液中に投入して重合体を凝集させ、温水で5回洗浄後、乾燥して白色フロック状の材料を得た。得られたゴム質含有共重合体粒子(b−1)の平均粒子径は0.1μmであった。また、アクリル系樹脂(a−1)との屈折率差は0.002であり、アクリル系樹脂(a−2)との屈折率差は0.01であり、アクリル系樹脂(a−3)との屈折率差は、0.019であり、アクリル系樹脂(a−4)との屈折率差は0.002であり、アクリル系樹脂(a−5)との屈折率差は0.015であり、アクリル系樹脂(a−6)との屈折率差は0.003であった。
(2−2)三層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b−2)
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水5600mL、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム40gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下80℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレ−ト1.2gを添加してから5分後に、MMA240g、BA4.2g、St84g、ALMA0.33g及びDPBHP0.33gからなる単量体混合物のうち30質量%を一括添加し、その直後から残りの70質量%を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに60分間保持して最内層の重合を完結させた。
次に、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレ−ト1.0gを添加してから5分後に、BA775g、St495g、ALMA20g、テトラエチレングリコールジアクリレート6.5g及びDPBHP2.6gからなる単量体混合物を90分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに80分間保持して軟質層(中間層)の重合を完結させた。
次に、MMA815g、BA52g、DPBHP1.7g及びn−OM1.0gからなる単量体混合物を60分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに60分間保持した。次いで、95℃に昇温し60分間保持して、最外層の重合を完結させた。このようにして得られた重合体乳化液を少量採取し、吸光度法により平均粒子径を求めたところ、0.08μmであった。残りの乳化液を4質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩析、凝固させ、次いで、脱水・洗浄を繰り返したのち乾燥し、ゴム含有共重合体(b−2)をパウダ−として得た。また、アクリル系樹脂(a−1)との屈折率差は0.003であった。
(2−3)二層構造のゴム含有共重合体粒子(b−3)
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水4500mL、窒素置換しながら70℃に昇温した後、ジへキシルスルフォコハク酸ナトリウム4.6g、過硫酸カリウム4.6gを仕込んだ。続いて、BA360g、St420g、ALMA30gとからなる単量体混合物を2時間かけて添加した後、2時間保持して反応を完結させた。次いで、MMA765g、BA50g及びn−OM0.8gからなる単量体混合物を1時間かけて添加した後、1時間保持して反応を完結させた。得られた重合体乳化液を硫酸ナトリウムを塩析剤として用いて塩析した後、脱水、水洗、脱水、乾燥を行い紛体として二層からなるゴム含有共重合体を回収した。得られた二層構造のゴム含有共重合体(b−3)の平均粒子径は0.13μmであった。また、アクリル系樹脂(a−1)との屈折率差は0.005であった。
(2−4)三層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b’−1)
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水6868mL、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム13.7gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。MMA907g、BA33g、HMBT0.28g及びALMA0.93gからなる混合物(I−1)のうち222gを一括添加し、5分後に過硫酸アンモニウム0.22gを添加した。その40分後から(I−1)の残りの719gを20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに60分間保持した。
次に、過硫酸アンモニウム1.01gを添加した後、BA1067g、St219g、HMBT0.39g、ALMA27.3gからなる混合物(I−2)を140分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに180分間保持した。
次に、過硫酸アンモニウム0.30gを添加した後、MMA730g、BA26.5g、HMBT0.22g、n−OM0.76gからなる混合物(I−3)を40分間かけて連続的に添加し、添加終了後95℃に昇温し30分間保持した。
残りのラテックスを3質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩拆、凝固させ、次いで、脱水、洗浄を繰り返したのち乾燥し、ゴム含有共重合体粒子(b’−1)を得た。得られたゴム質含有共重合体粒子(b’−1)の平均粒子径は0.23μであった。また、アクリル系樹脂(a−1)との屈折率差は0.02であった。
(3)熱安定剤(c)
熱安定剤(c)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製のIRGANOX1076(白色粉末)又は住友化学(株)社製のスミライザーGSを用いた。
(4)紫外線吸収剤
紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系化合物である城北化学工業(株)社製JF832(融点(Tm):195℃)を用いた。この紫外線吸収剤を、理学電気(株)社製ThermoPlus TG8120を用いて、23℃から260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の重量減少率を測定したところ、0.03%であった。
[実施例1〜12及び比較例1〜4]
実施例及び比較例の樹脂組成物は、表1に示す各配合比によりヘンシェルミキサーを用いて5分間混合した後、ストランド吐出口に材質SUS304の15μのポリマーフィルター(富士フィルター社製)を設置した30mmベント付き2軸押出し機(ナカタニ機械株式会社製、A型)を用いて250℃でペレタイズ化した。ポリマーフィルターとしてはプリーツ型ポリマーフィルター、(富士フィルター製、1本×330L)を用いた。
[比較例5]
比較例5においてのみポリマーフィルターを設置していない30mmベント付き2軸押出し機(ナカタニ機械株式会社製、A型)を用いて250℃でペレタイズ化した。
<射出成形>
得られた各種ペレットをインラインスクリュー射出成形機(東芝機械株式会社製、IS−75S型)を用いて、成形温度240〜260℃、射出圧力900kgf/cm2、金型温度50℃の条件で所定の試験片を作製し、物性測定を行った。配合比、60×40×3mm射出成形体の成形温度、特性評価を表1に示した。
<フィルム成形>
プラスチック工学研究所製Tダイ装着押出し機(BT−30−C−36−L型/幅400mmTダイ装着/リップ厚0.8mm)を用いて、スクリュー回転数、押し出し機のシリンダー内樹脂温度、Tダイの温度を調整し押出し成形をすることにより未延伸フィルムを得た。フィルムの流れ(押し出し方向)をMD方向、MD方向に垂直な方向をTD方向とした。配合比、成形条件、フィルム光学特性を表1に示した。
表1の結果から明らかなように、実施例1〜12においては、適切なモノマー共重合比率であるアクリル系樹脂(a)、及び適切な粒子径の多層構造のゴム質含有共重合体(b−1)、(b−2)、又は(b−3)を含み、そして、樹脂組成物中の残存モノマー量が適当であったため、光学特性、耐熱性、機械強度及び表面滑り性等に優れる成形体やフィルムを得ることができた。
実施例7と他の実施例との比較により、熱安定剤を用いた方が、耐ブリードアウト性がより向上することがわかった。
実施例8と他の実施例との比較により、アクリル系樹脂(a)と三層構造のゴム質含有共重合体の屈折率差が小さい方が、光学特性が良いことがわかった。
実施例9と他の実施例との比較により、二層より三層構造のゴム質含有共重合体を用いることで、ゴム質含有共重合体の耐熱変形性や耐熱劣化性が向上し、耐熱性、光学特性が向上し、ブリードアウト性や表面滑り性も向上することがわかった。
実施例10では、アクリル系樹脂(a)の第三の単位成分にN−フェニルマレイミドを含有した樹脂を用いたが、他の実施例と同様に耐熱性、機械強度及び表面滑り性等に優れる成形体やフィルムを得ることができた。一方で、他の実施例との比較により、第三の単位成分に無水マレイン酸を用いた方が、色度である光学特性がやや良いことがわかった。
実施例11では、アクリル系樹脂の第二の単位成分にα−メチルスチレンを含有した樹脂を用いた。実施例11と他の実施例との比較により、第二の単位成分にスチレンを用いることで、やや耐熱劣化性が向上することがわかった。また、アクリル系樹脂(a)と三層構造のゴム質含有共重合体の屈折率差が小さい方が、光学特性が良いことがわかった。
実施例12では、アクリル系樹脂(a)の第一の単位成分の一つとしてアクリル酸メチルを含有した樹脂を用いた。実施例12と他の実施例との比較により、第一の単位成分にメタクリル酸エステル系単位を用いることで、耐熱変形性(ビカット軟化温度)が向上することがわかった。
比較例1では、ゴム質含有共重合体を混合していないため、機械強度が低く、残存モノマー量も適切でないために、表面滑り性が好ましくなかった。
また、比較例2では、アクリル系樹脂の共重合組成比が適切でないため、耐熱性及び光学特性が不十分であり、比較例3では、三層構造のゴム質含有共重合体の添加量が多過ぎたために、樹脂粘度が上昇し、表面滑り性や耐ブリードアウト性に悪影響があったと考えられる。
さらに、比較例4ではゴム質含有共重合体粒子(b’−1)の平均粒子径が適切でなく、アクリル系樹脂(a)との屈折率差が大きかったために、光学特性が低下傾向にあり、表面滑り性にもやや悪影響を与えた。
最後に、比較例5では、樹脂組成物中の残存モノマー量が適切でなかったために、表面滑り性が好ましくなかった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を使用した成形体の利用に関しては、耐衝撃性、耐熱性の要求される用途に対して全般的に使用可能であり、家庭用器具、伝達器具、趣味又はスポーツ用器具の部品として、或いは自動車、船舶又は航空機の構造の車体部品若しくは車体部品の部品としての産業上利用可能性を有する。特に、耐衝撃性が要求される外装部品として好適であり、バンパー、フロントグリル、ヘッドランプ、ボディ周辺部品(バイザー等)、タイヤ周辺部品等に用いることが可能である。
また、透明性等の光学特性にも優れているため、光学材料用成形体として好適に用いることが可能である。特に、表面滑り特性に優れるため、シートやフィルム状の製品として好適に用いることが出来る。例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる導光板、拡散板、偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板、視野角制御フィルム、液晶光学補償フィルム等の位相差フィルム、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、レンズ、タッチパネル等、また、太陽電池に用いられる透明基盤等への利用可能性を有する。その他にも、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバー等にも利用することができる。本発明の光学材料用成形体は、例えば反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理等の表面機能化処理をすることもできる。

Claims (7)

  1. メタクリル酸エステル単位及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、
    芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、
    下記式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、
    を含むアクリル系樹脂(a)
    (式中、XはO又はN−Rを示し、Oは酸素原子、Nは2つの炭素原子とRと結合する窒素原子、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はシクロアルキル基を示す。)、及び
    平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)を含み、
    熱可塑性樹脂組成物中の残存モノマー量が熱可塑性樹脂組成物中の樹脂100質量%に対して、0.2質量%以上0.8質量%以下であり、
    前記アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、前記ゴム質含有共重合体粒子(b)0.1質量部以上100質量部以下である、熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記ゴム質含有共重合体粒子(b)は、三層以上の多層構造を有する粒子である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記ゴム質含有共重合体粒子(b)は、内側から硬質層−軟質層−硬質層の三層構造を有する粒子である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. メタクリル酸エステル単位及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、
    芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、
    下記式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、
    を含むアクリル系樹脂(a)
    (式中、XはO又はN−Rを示し、Oは酸素原子、Nは2つの炭素原子とRと結合する窒素原子、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はシクロアルキル基を示す。)、及び
    平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)を含む熱可塑性樹脂組成物を5〜20μmのポリマーフィルターに通過させる工程を含み、
    前記ゴム質含有共重合体粒子(b)の添加量が、前記アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、0.1質量部以上100質量部以下である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  5. 更に、前記熱可塑性樹脂組成物が、熱安定剤(c)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及び/又はリン系加工安定剤を0.1質量部以上10質量部以下含む、請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、成形体。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、フィルム。
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