発明の詳細な説明
I.定義
本明細書中及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、用語「a」「an」及び「the」は、文脈が明らかにそれとは異なることを示していない限り、例えば、ある単位の1つ以上、又は少なくとも1つを意味し得る。従って、例えば「抗体(an antibody)」に対する言及は、複数のそのような抗体を含み、また、「可変ドメイン(a variable domain)」への言及は、1つ以上の可変ドメイン及び当業者に公知のその同等物が含まれる、などである。本明細書中の用語に対して複数の定義がある場合は、別段の記載がない限り、このセクションでの定義が優先する。
値の範囲が与えられた場合、その範囲の上端と下端との間に入る各値が、文脈が明らかにそれとは異なることを示していない限りはその最小単位の十分の一まで、同様に具体的に開示されていることが理解される。記載された範囲の中の任意の記載された値若しくは間に入る値と、該記載された範囲の中の任意の記載された他の値若しくは間に入る値との間のより小さい各範囲は、本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上端及び下端は、独立して、該範囲に含まれ得るか又は除外され得、また、該より小さい範囲に両端のいずれかが含まれる、いずれの端も含まれない、又は両端とも含まれる各範囲もまた本発明に包含されるが、記載された範囲内に具体的に除外された端があればそれに従う。記載された範囲が一端又は両端を含む場合、それらの含められた端のいずれか又は両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
用語「特異的結合メンバー」とは、互いに対して結合特異性を有する分子ペアのメンバーを表わす。特異的結合ペアのメンバーは、天然に由来するものであっても、又は全体的若しくは部分的に合成により生成されたものであってもよい。分子ペアの1つのメンバーは、分子ペアの他方のメンバーの特定の立体的な及び/又は極性の機構に特異的に結合し、従って相補的である領域を、その表面又は空洞に有する。従って、ペアのメンバーは、互いに対して特異的に結合する特性を有する。特異的結合ペアの種類の例としては、抗原−抗体、Avimer(商標)−基質、ビオチン−アビジン、ホルモン−ホルモン受容体、受容体−リガンド、タンパク質−タンパク質、及び酵素−基質が挙げられる。
用語「抗体」は、天然であるか又は部分的若しくは全体的に合成により製造されたものである免疫グロブリンを表わす。該用語はまた、抗原結合ドメインであるか又はそれに相同である結合ドメインを有する、任意のポリペプチド又はタンパク質も包含する。CDRグラフト抗体もまた、この用語によって意図される。
「ネイティブ抗体」及び「ネイティブ免疫グロブリン」は、通常、約150,000ダルトンのヘテロテトラマーの糖タンパク質で、2本の同一の軽(L)鎖及び2本の同一の重(H)鎖から成る。各軽鎖は、場合によっては、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に連結されており、一方、ジスルフィド結合の個数は、様々な免疫グロブリンのアイソタイプの重鎖の間で様々である。各々の重鎖及び軽鎖はまた、規則的な間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(「VH」)を有し、多数の定常ドメイン(「CH」)がそれに続く。各軽鎖は、一端にある可変ドメイン(「VL」)及び他端にある定常ドメイン(「CL」)を有し;軽鎖の定常ドメインは、重鎖の一つ目の定常ドメインと揃い、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと揃っている。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖の可変ドメイン間のインターフェイスを形成すると考えられている。
用語「可変ドメイン」は、ファミリーのメンバーの間で(即ち、異なるアイソフォームの間で、又は異なる種間で)、配列として幅広く異なるタンパク質のドメインを意味する。抗体に関して、用語「可変ドメイン」は、特定の抗原に対する各特定の抗体の結合及び特異性に用いられる、抗体の可変ドメインを意味する。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均等に分布しない。可変性は、軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方における、超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、「フレームワーク領域」又は「FR」と呼ばれる。未改変の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、4つのFR(それぞれ、FR1、FR2、FR3及びFR4)を含み、これらは、主としてβシート構造をとり、βシート構造を連結し且つ場合によってはβシート構造の部分を形成するループを形成する3つの超可変領域によって連結される。各鎖の超可変領域は、FRによって共に近接して保持され、且つ、他鎖からの超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991)、第647〜669頁を参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合には直接関与しないが、抗体依存性の細胞毒性への抗体の関与など、種々のエフェクター機能を示す。
本明細書で使用する場合、用語「超可変領域」とは、抗原結合に関与する、抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は、相補的な様式で抗原に直接に結合し、それぞれCDR1、CDR2及びCDR3として知られる、3つの「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基を含む。
軽鎖の可変ドメインでは、CDRは、おおよそ、残基24−34(CDRL1)、50−56(CDRL2)及び89−97(CDRL3)に対応し、重鎖の可変ドメインでは、CDRは、おおよそ、残基31−35(CDRH1)、50−65(CDRH2)及び95−102(CDRH3)に対応し(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))、且つ/又は、「超可変ループ」からの残基(即ち、軽鎖の可変ドメインでは、残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)、重鎖の可変ドメインでは、26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3))に対応する(Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。
本明細書中で使用される場合、「可変フレームワーク領域」又は「VFR」とは、抗原結合ポケット又は溝の一部を形成し、且つ/又は抗原と接触し得る、フレームワーク残基を意味する。ある実施形態では、フレームワーク残基は、抗原結合ポケット又は溝の一部であるループを形成する。ループ中のアミノ酸残基は、抗原と接触してもよく、接触しなくてもよい。1つの実施形態では、VFRのループアミノ酸は、抗体、抗体重鎖、又は抗体軽鎖の三次元構造を調べることで決定される。溶媒がアクセス可能なアミノ酸部位について三次元構造を解析することができるが、これはそのような部位が、ループを形成しやすく、且つ/又は抗体の可変ドメインにおける抗原接触を提供しやすいためである。溶媒がアクセス可能な部位のなかには、アミノ酸配列の多様性を許容するものもあり得、多様性がより少ないもの(例、構造的な部位)もあり得る。抗体の可変ドメインの三次元構造は、結晶構造又はタンパク質モデリングから導出され得る。ある実施形態では、VFRは、Kabatら、1991に従って定義された部位である、重鎖の可変ドメインのアミノ酸部位71から78に対応するアミノ酸部位を含み、それらから実質的になり、又はそれらからなる。ある実施形態では、VFRは、CDRH2とCDRH3との間に位置するフレームワーク領域3の一部を形成する。好ましくは、VFRは、標的抗原と接触するため又は抗原結合ポケットの一部を形成するために適切に位置するループを形成する。
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには、5つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMであり、そのうちいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2)に更に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖の定常ドメイン(Fc)は、それぞれ、α、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンについて、サブユニットの構造及び三次元の構成が周知である。
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ若しくは(「κ」)及びラムダ若しくは(「λ」)と呼ばれる、2つのはっきり異なるタイプのうちの1つに割り当てることができる。
用語「抗体の抗原結合部分」、「抗原結合フラグメント」、「抗原結合ドメイン」、「抗体フラグメント」又は「抗体の機能的フラグメント」は、本発明では交換可能に使用され、抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1以上のフラグメントを意味する(例えば、Holligerら、Nature Biotech.23(9):1126−1129(2005)を参照)。これに限定されないが抗体についての用語「抗原結合部分」に含まれる抗体フラグメントの非限定的な例としては、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる単価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなる、dAbフラグメント(Wardら(1989)Nature 341:544−546);並びに(vi)分離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。更には、Fvフラグメントの2つのドメイン、VL及びVHは、別々の遺伝子によりコードされているが、これらは、組換えの方法を用いて、それらをVL及びVH領域がペアになって単価分子を形成している単一のタンパク質鎖とすることができる合成リンカーによって、連結することができる(単一鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;及びHustonら(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883;及びOsbournら(1998)Nat. Biotechnol. 16:778を参照)。このような単鎖抗体もまた、抗体についての用語「抗原結合部分」に包含されることが意図される。完全なIgG分子又は他のアイソタイプをコードする発現ベクターを作成するために、特定のscFvの任意のVH及びVL配列が、ヒト免疫グロブリンの定常領域のcDNA又はゲノム配列に連結され得る。VH及びVLはまた、タンパク質化学又は組換えDNA技術のいずれかを用いて、Fab、Fv又は免疫グロブリンの他のフラグメントの作成にも使用され得る。二重特異性抗体(ダイアボディ)などの他の形態の単鎖抗体もまた、包含される。
「F(ab’)2」及び「Fab」部分は、免疫グロブリン(モノクローナル抗体)を、ペプシン及びパパインなどのプロテアーゼで処理することによって作製することができ、2つのH鎖の各々におけるヒンジ領域の間に存在するジスルフィド結合の近くで免疫グロブリンを消化することにより生成される抗体フラグメントを含む。例えば、パパインは、2つのH鎖の各々におけるヒンジ領域の間に存在するジスルフィド結合の上流でIgGを切断し、VL(L鎖の可変領域)及びCL(L鎖の定常領域)からなるL鎖と、VH(H鎖の可変領域)及びCHγ1(H鎖の定常領域におけるγ1領域)からなるH鎖フラグメントとが、ジスルフィド結合によってそれらのC末端領域において繋がっている、2つの相同な抗体フラグメントを生成する。これらの2つの相同な抗体フラグメントの各々は、Fab’と呼ばれる。ペプシンもまた、2つのH鎖の各々におけるヒンジ領域の間に存在するジスルフィド結合の下流でIgGを切断し、上記2つのFab’がヒンジ領域において繋がったフラグメントよりもわずかに大きい抗体フラグメントを生成する。この抗体フラグメントは、F(ab’)2と呼ばれる。
Fabフラグメントは、軽鎖の定常ドメイン、及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)もまた含む。Fab’フラグメントは、重鎖のCH1ドメインのカルボキシル末端における、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む数個の残基が加えられていることにより、Fabフラグメントとは異なる。Fab’−SHは、本明細書では、定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を有するFab’を意味する。F(ab’)2抗体フラグメントは、元々は、間にヒンジのシステインを有するFab’フラグメントのペアとして生成された。抗体フラグメントの他の化学的結合も知られている。
「Fv」は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、非共有結合的に堅固に会合した、1つの重鎖及び1つの軽鎖の可変ドメインのダイマーからなる。この構成では、各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用し、VH−VLダイマーの表面に、抗原結合部位を規定する。全体としては6つの超可変領域が、抗原結合特異性を抗体に付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は、抗原に対して特異的な3つの超可変領域のみを含む、半分のFv)であっても、結合部位全体よりも親和性が低いとはいえ、抗原を認識して結合する能力を有する。
「単鎖Fv」又は「sFv」抗体フラグメントは、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。ある実施形態では、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、それにより、sFvが抗原結合のために望ましい構造を形成することが可能となる。sFv分子の総説としては、例えば、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、Vol.113、Rosenburg及びMoore編、Springer−Verlag、New York、pp.269−315(1994)を参照されたい。
用語「Avimer(商標)」は、ヒト由来の新たなクラスの治療タンパク質であって、抗体及び抗体フラグメントとは関係なく、且つA−ドメインと呼ばれる(クラスAモジュール、補体型リピート(complement type repeat)若しくはLDL受容体クラスAドメインとも呼ばれる)、いくつかのモジュール式且つ再利用可能な結合ドメインから構成されるものを意味する。これらはin vitroエクソンシャッフリング及びファージディスプレイによって、ヒトの細胞外受容体ドメインから開発された(Silvermanら、2005、Nat.Biotechnol.23:1493−94;Silvermanら、2006、Nat.Biotechnol.24:220)。得られたタンパク質は、単一エピトープ結合タンパク質と比べて、改善された親和性(場合によっては、サブナノモーラー)及び特異性を示し得る複数の独立した結合ドメインを含み得る。例えば、米国特許出願公開公報第2005/0221384号、同第2005/0164301号、同第2005/0053973号並びに同第2005/0089932号、同第2005/0048512号及び同第2004/0175756号を参照されたい。これらの各々は、本明細書で参照することにより、全体として本明細書に組み込まれる。
公知の217個のヒトA−ドメインの各々は、〜35アミノ酸(〜4kDa)を含み、ドメインは、長さとして平均5アミノ酸であるリンカーによって分離されている。ネイティブのA−ドメインは、主にカルシウムの結合及びジスルフィドの形成に介在されて、均一で安定な構造へと、素早く且つ効率よく折りたたまれる。12アミノ酸のみの保存されたスキャフォールドモチーフが、この共通構造のために必要である。最終的な結果として、その各々が別個の機能を表すような複数のドメインを含む、単一のタンパク質鎖となる。該タンパク質の各ドメインは、独立して結合し、また、各ドメインのエネルギー的な寄与は相加的である。これらのタンパク質は、結合活性マルチマー(avidity multimers)にちなんで「Avimer(商標)」と呼ばれた。
本明細書で使用される場合、「天然の」又は「天然に存在する」抗体又は抗体の可変ドメインは、例えば、生殖系列の配列、又はex vivoで得られた分化した抗原特異的なB細胞若しくはその対応するハイブリドーマ細胞株、又は動物の血清からといった、非合成の供給源から同定された、抗体又は抗体の可変ドメインの配列を有する抗体又は抗体の可変ドメインを意味する。これらの抗体には、天然のものであっても、他の方法で誘導されたものであっても、任意の種類の免疫応答で産生された抗体が含まれ得る。天然の抗体には、例えばKabatのデータベースにおいて特定されるような抗体を構成又はコードする、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列が含まれる。
用語「合成ポリヌクレオチド」又は「合成遺伝子」は、対応するポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列が、全体として又は部分的に、設計された、又はde novoで合成された、又は同等の未改変の配列と比較して改変された配列に由来することを意味する。合成遺伝子は、全体的又は部分的に、化学合成によって作製され得るか、又はPCR若しくは同様の酵素的な増幅系によって増幅され得る。合成遺伝子は、ある実施形態では、アミノ酸レベル若しくはポリヌクレオチドレベルのいずれかにおいて(又は両方において)、未改変の遺伝子とは異なり、例えば、合成の発現調節配列の状況内に位置する。合成遺伝子の配列は、例えば、元の配列とは異なるアミノ酸配列若しくはポリヌクレオチドコード配列を与えるような、1つ以上のアミノ酸若しくはポリヌクレオチドの置換、欠失若しくは付加によって変えられた、アミノ酸又はポリヌクレオチド配列を含み得る。合成遺伝子のポリヌクレオチド配列は、未改変の遺伝子と比較して、異なるアミノ酸を有するタンパク質を必ずしもコードしなくても良く、例えば、異なるコドン若しくはモチーフを組み込んでいるが、同一のアミノ酸をコードする(即ち、ヌクレオチドの変化がアミノ酸レベルではサイレント変異として現れ得る)合成ポリヌクレオチド配列も包含し得る。1つの実施形態では、合成遺伝子は、未改変の遺伝子と比較して、SHMに対する感受性の変化を示す。合成遺伝子は、本明細書に記載の方法を用いて、反復で改変され得、且つ、その各連続的な反復において、対応するポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列は、全体的又は部分的に、設計された配列、又はde novoで合成された配列、又は同等の未改変の配列と比較して改変された配列に由来する。
本明細書で使用される場合、用語「半合成ポリヌクレオチド」又は「半合成遺伝子」は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、又は増幅反応のための出発物質として天然のドナー(即ち、末梢血中単球)を利用する他の同様の酵素的な増幅系によって得られた核酸配列から部分的になる、ポリヌクレオチド配列を意味する。残りの「合成」ポリヌクレオチド、即ち、PCR又は他の同様の酵素的な増幅系によって得られたものではない半合成ポリヌクレオチドの部分は、これに限定されないが核酸配列の化学的合成を含む、当該分野において公知の方法を使用してde−novoで合成され得る。
用語「合成可変領域」は、AID及び1つ以上のエラープローンポリメラーゼの活性と組み合わさったときに各位置において可能な広範なアミノ酸配列多様性を生成する、最適なSHMホットスポット及びホットコドン若しくはホットモチーフから実質的になる合成遺伝子内の、合成ポリヌクレオチド配列を意味する。合成可変領域は、抗体又は非抗体ポリペプチドをコードし得、また、合成のフレームワーク配列によって分離され得る。該合成のフレームワーク配列は、SHMを特異的に標的化しない、若しくはSHMに対して感受性ではない、又はSHMに対して耐性である、コドン又はモチーフを包含する。
用語「二重特異性抗体(ダイアボディー)」は、同一のポリペプチド鎖中に、軽鎖の可変ドメイン(VL)に連結された重鎖の可変ドメイン(VH)を含む(VH−VL)、2つの抗原結合部位を持つ小さな抗体フラグメントを意味する。同一鎖上の2つのドメインの間でペアになるのを許容するには短すぎるリンカーを使用することにより、該ドメインは、他鎖の相補的なドメインとペアになることを余儀なくされて、2つの抗原結合部位を作り出す。二重特異性抗体は、例えば、EP 404,097;WO 93/11161;並びにHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)に、より完全に記載されている。
本発明の抗体はまた、ラクダ科動物及びサメの抗体などの重鎖ダイマーも含む。ラクダ科動物及びサメの抗体は、V様ドメイン及びC様ドメインの2つの鎖のホモダイマー対を含む(いずれも軽鎖を有さない)。ラクダ科動物の重鎖ダイマーIgGのVH領域は、軽鎖と疎水性相互作用をする必要がないため、通常軽鎖と接触する重鎖内の領域は、ラクダ科動物においては、親水性のアミノ酸残基に変化している。重鎖ダイマーIgGのVHドメインは、VHHドメインと呼ばれる。サメのIg−NARは、1つの可変ドメイン(V−NARドメインと称される)及び5つのC様の定常ドメイン(C−NARドメイン)のホモダイマーを含む。
ラクダ科動物においては、抗体レパートリーの多様性は、VH又はVHH領域中の、相補性決定領域(CDR)1、2及び3によって決定される。ラクダのVHH領域中のCDR3は、平均16アミノ酸と、比較的長い長さであることを特徴とする(Muyldermansら、1994、Protein Engineering 7(9):1129)。これは、多くの他種の抗体のCDR3領域とは対照的である。例えば、マウスVHのCDR3では、平均9アミノ酸である。
ラクダ科動物の可変領域のin vivoでの多様性を維持している、ラクダ科動物由来の抗体可変領域のライブラリーは、例えば、2005年2月17日に公開された米国特許出願第20050037421号に記載の方法により、作製され得る。
「ヒト化」型の非ヒト(例、マウス)抗体は、非ヒトの免疫グロブリンに由来する最少配列を含むキメラ抗体である。ヒト化抗体は、その殆どの部分について、レシピエントの超可変領域の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する、合成由来、又はマウス、ラット、ウサギ若しくは非ヒト霊長類などの非ヒト由来(ドナー抗体)の超可変領域の残基で置換されたヒトの免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒトの免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒトの残基で置換される。更には、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体には見られない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能を更に洗練させるために行われる。ヒト化抗体は、超可変領域の全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に一致し、且つFRの全て又は実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のFRに一致している、少なくとも1つ(場合によっては2つ)の可変ドメインのうちの実質的に全てを含み得る。ヒト化抗体は、任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部(例えば、ヒトの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部)もまた含み得る。更なる詳細のためには、Jonesら、Nature 321:522−525(1986);Reichmannら、Nature 332:323−329(1988);及びPresta、Curr.Op.Struct.Biol. 2:593−596(1992)を参照されたい。
本発明の「ヒト化抗体」としては、遺伝子工学により作製された半合成の抗体が挙げられ、特には、モノクローナル抗体であって、重鎖及び軽鎖のCDR3が非ヒトモノクローナル抗体(例、マウスモノクローナル抗体)由来であるか、或いは領域が、本明細書に記載されるように、合成可変領域ポリヌクレオチドに由来し(重鎖及び軽鎖の両方)、且つ定常領域が、同様に本明細書に記載されるように、及び所有者が共通である優先の米国仮特許出願第60/904,622号及び同第61/020,124号に記載されるように、合成のヒト定常領域の鋳型由来である、前記モノクローナル抗体が挙げられる。
本明細書で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体(即ち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在し得る自然に生じ得る変異を除いて同一である)の集団から得られる抗体を意味する。モノクローナル抗体は、特異性が高く、単一の抗原部位を対象とする。更には、異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を含み得る従来の(ポリクローナルな)抗体の作製とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるような抗体の性質を示しており、何らかの特定の方法による抗体の製造を必要とすると解釈されてはならない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature 256:495(1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法により作製され得、又は、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)により作製され得る。ある実施形態では、「モノクローナル抗体」は、例えばClacksonら、Nature 352:624−628(1991)及びMarksら、J.Mol.Biol. 222:581−597(1991)に記載される技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーからも単離され得る。
他の実施形態では、モノクローナル抗体は、飽和硫酸アンモニウム沈殿、オイグロブリン沈殿法、カプロン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAE若しくはDE52)、又は抗免疫グロブリンカラム若しくはプロテインAカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって、上述の培養上清又は腹水から単離及び精製され得る。
ポリクローナル抗体(抗血清)又はモノクローナル抗体は、公知の方法により作製され得る。即ち、哺乳類、好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ウマ若しくはウシ、又はより好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモット若しくはウサギを、例えば上で述べた抗原で、必要であればフロインドアジュバントとともに、免疫する。ポリクローナル抗体は、こうして免疫された動物から得られた血清から得ることができる。モノクローナル抗体は、以下のようにして作製される。こうして免疫された動物から得られた抗体産生細胞を、自己抗体を産生できないミエローマ細胞と融合させて、ハイブリドーマを作製する。続いて該ハイブリドーマをクローン化し、該哺乳動物を免疫するのに使用した抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンをスクリーニングする。
本明細書で使用される場合、「細胞内抗体又はそのフラグメント」は、細胞内で発現及び機能する抗体を意味する。細胞内抗体は、ある実施形態では、ジスルフィド結合を欠き、その特異的結合活性を通じて、標的遺伝子の発現又は活性を調節することができる。細胞内抗体は、単離されたVH及びVLドメイン並びにscFvのような、単一のドメインフラグメントを含む。細胞内抗体は、標的タンパク質が位置する細胞内区画において該細胞内抗体が高濃度で発現されるのを可能とする、該細胞内抗体のN末端又はC末端に取り付けられた細胞内輸送シグナルを含み得る。標的遺伝子との相互作用で、細胞内抗体は、標的タンパク質の分解の加速、標的タンパク質の非生理的な細胞内区画への隔離などの機構により、標的タンパク質の機能を調節し、且つ/又は表現型/機能のノックアウトを達成する。細胞内抗体介在性の遺伝子不活性化の他の機構は、標的タンパク質上の触媒部位への結合、又はタンパク質−タンパク質、タンパク質−DNA、若しくはタンパク質−RNAの相互作用に関与するエピトープへの結合など、細胞内抗体が対象とするエピトープに依存し得る。1つの実施形態では、細胞内抗体は、scFvである。
本発明の「タンパク質又はそのフラグメントに反応する抗体を産生する細胞」とは、上記本発明の抗体のいずれかを産生する任意の細胞を意味する。
用語「生殖系列遺伝子セグメント」は、生殖系列(一倍体の配偶子及びそれらが形成される由来である二倍体細胞)の遺伝子を意味する。生殖系列のDNAは、単一の免疫グロブリン重鎖又は軽鎖をコードする多数の遺伝子セグメントを含む。これらの遺伝子セグメントは生殖細胞中に保有されるが、それらが機能的な遺伝子にされるまでは、重鎖又は軽鎖への転写及び翻訳はされ得ない。骨髄におけるB細胞分化の間に、これらの遺伝子セグメントは、108を超える特異性を生み出すことが可能な、動的な遺伝子系により、ランダムにシャッフルされる。これらの遺伝子セグメントの殆どは公開され、生殖系列のデータベースによって集められている。
本明細書で使用される場合、「ライブラリー」は、2以上の同一でないメンバーを含む、複数のポリヌクレオチド、タンパク質又は細胞を意味する。「合成ライブラリー」は、複数の合成ポリヌクレオチド、又は複数の合成ポリヌクレオチドを含む細胞集団を意味する。「半合成ライブラリー」は、複数の半合成ポリヌクレオチド、又は複数の半合成ポリヌクレオチドを含む細胞集団を意味する。「シードライブラリー」は、SHM(例、AID介在性のSHM)に対する感受性が増大又は減少するように改変されており、且つ体細胞超変異が作用したときに、in situでポリヌクレオチド、タンパク質又は細胞のライブラリーを作り出すことができる1つ以上の配列又はその部分を含む、1以上の合成若しくは半合成ポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドを含む細胞の複数を意味する。
本明細書で使用される場合、用語「抗原」は、適切な条件下で、物質に対する免疫応答を誘導でき、且つ該免疫応答の産生物と反応できる物質をいう。例えば、抗原は、抗体(液性免疫応答)又は感作されたTリンパ球(Tヘルパー若しくは細胞介在性の免疫応答)、或いはその両方によって認識され得る。抗原は、毒素及び外来タンパク質などの可溶性物質、又は細菌及び組織細胞などの粒子であり得る。しかしながら、抗原決定基(エピトープ)として知られるタンパク質又は多糖類分子の一部分のみが、抗体又はリンパ球上の特異的受容体と結合する。より広範には、用語「抗原」は、免疫原性であろうがなかろうが、抗体が結合するか又は抗体が所望される任意の物質を意味する。そのような抗原に対して、抗体は、どんな免疫応答とも無関係に、組換えの方法によって同定され得る。
本明細書で使用される場合、用語「親和性」は、2つの物質の可逆的な結合の平衡定数を意味し、Kdとして表される。エピトープに対する抗体の親和性など、リガンドに対するタンパク質の結合の親和性は、例えば約100ナノモーラー(nM)から約0.1nM、約100nMから約1ピコモーラー(pM)、又は約100nMから約1フェムトモーラー(fM)であり得る。本明細書で使用される場合、用語「結合活性」は、2以上の物質の複合体についての希釈後の解離に対する抵抗を意味する。
「エピトープ」は、結合タンパク質(protien)の可変領域の結合ポケットと相互作用する結合性相互作用を形成することができる、抗原又は他の巨大分子の部分を意味する。そのような結合性相互作用は、CDRの1つ以上のアミノ酸残基との分子間接触として現れ得る。抗原結合は、CDR3又はCDR3ペアが関与し得る。エピトープは、直線状のペプチド配列(即ち、「連続的」)であり得るか、又は、不連続なアミノ酸配列(即ち、「コンフォメーショナル」若しくは「不連続的」)から構成され得る。結合タンパク質は、1つ以上のアミノ酸配列を認識し得る。それゆえエピトープは、1つより多くの異なるアミノ酸配列を規定し得る。結合タンパク質によって認識されるエピトープは、ペプチドマッピング及び当業者に周知の配列解析技術によって決定され得る。「潜在性(criptic)エピトープ」又は「潜在的な結合部位」とは、露出されていないか又は未改変のポリペプチド内の認識からは実質的に保護されているが、変性又はタンパク質分解されたポリペプチドの結合タンパク質によって認識され得る、エピトープ又はタンパク質配列の結合部位である。未改変のポリペプチド構造において、露出されていないか、又は一部のみが露出されているアミノ酸配列は、潜在性エピトープの可能性がある。エピトープが露出されていないか、又は一部のみが露出されている場合、エピトープは、ポリペプチドの内部に埋もれている可能性がある。潜在性エピトープの候補は、例えば、未改変のポリペプチドの三次元構造を調べることによって特定することができる。
用語「特異的」とは、特異的結合ペアの1つのメンバーが、その特異的結合パートナー以外の分子には、何らの有意な結合を示さない状況に適用され得る。該用語はまた、例えば、抗原結合ドメインが多数の抗原によって保有される特定のエピトープに特異的である場合にも適用され、この場合、該抗原結合ドメインを保有する特異的結合メンバーは、該エピトープを保有する種々の抗原に対して結合することができるであろう。
用語「結合」は、例えば共有的、静電的、疎水的、及びイオン性及び/又は水素結合の相互作用による2分子間の直接的な会合を意味し、塩橋及び水架橋などの相互作用を含む。
用語「アジュバント」は、免疫応答(特に抗原に対する免疫応答)を増強する、化合物又は混合物を意味する。アジュバントは、抗原を徐放する組織デポとして、及び非特異的に免疫応答を増強するリンパ系のアクチベーターとしても、機能し得る(Hoodら、Immunology、Second編、1984、Benjamin/Cummings:Menlo Park、California、p.384)。アジュバントの非存在下での抗原のみでの最初のチャレンジでは、液性又は細胞性免疫応答は引き起こされないことがしばしばである。既に知られ且つ利用されているアジュバントとしては、以下に限定されないが、完全フロインドアジュバント、不完全フロインドアジュバント、サポニン、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、リゾレシチン、プルロニックポリオールなどの表面活性物質、ポリアニオン、ペプチド、油性若しくは炭化水素エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、並びにBCG(Bacille Calmette−Guerin)及びコリネバクテリウム・パルバムなどの潜在的に有用であるヒトアジュバントが挙げられる。無機塩アジュバントとしては、以下に限定されないが:水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、水酸化亜鉛及び水酸化カルシウムが挙げられる。好ましくは、アジュバント組成物は、約10%(重量比)の植物油及び約1−2%(重量比)のリン脂質を含む脂肪エマルジョンの脂質を更に含む。好ましくは、アジュバント組成物は、連続的な水相中に分散した油状粒子を有し、エマルジョンを形成するポリオールを約0.2%(重量比)から約49%(重量比)の量で有し、エマルジョンを形成する最大15%(重量比)の量の代謝可能な油を任意に有し、且つエマルジョンを安定化させる最大約5%(重量比)の量のグリコールエーテルベースの界面活性剤を任意に有する、エマルジョン形態を任意で更に含む。
本明細書で使用される場合、用語「免疫調節剤」は、免疫応答を調節することができる剤を意味する。そのような調節の例は、抗体産生の増強である。そのような調節の別の例は、T細胞応答の増強である。
抗原からなる組成物又はワクチンへの「免疫応答」とは、宿主内における、目的の組成物又はワクチンに対する細胞介在性及び/又は抗体介在性の免疫応答の発達である。通常、そのような応答は、目的の組成物又はワクチンに含まれる抗原を特異的に対象とする、抗体を産生する主体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞及び/又は細胞傷害性T細胞からなる。
本明細書で使用される場合、用語「ヌクレオチド」は、複素環塩基、糖、及び1以上のリン酸基からなる、ポリヌクレオチドのモノマー単位を意味する。天然に存在する塩基(グアニン、(G)、アデニン、(A)、シトシン、(C)、チミン、(T)、及びウラシル(U))は、プリン又はピリミジンの誘導体であるが、天然に存在する及び天然に存在しない塩基アナログも含まれることを理解すべきである。天然に存在する糖は、ペントース(5炭素の糖)デオキシリボース(DNAを形成する)又はリボース(RNAを形成する)であるが、天然に存在する及び天然に存在しない糖アナログも含まれることを理解すべきである。核酸は、リン酸結合を介して結合し、核酸又はポリヌクレオチドを形成するが、他の多くの結合が当該分野において公知である(以下に限られないが、ホスホロチオエート及びボラノリン酸など)。
本明細書で使用される場合、用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を意味し、リボヌクレオチド(RNA)又はデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれかである。これらの用語は、分子の一次構造に関し、従って、二本鎖及び一本鎖DNA、並びに二本鎖及び一本鎖RNAを含む。これらの用語は、同等のものとして、ヌクレオチドアナログから作られたRNA又はDNAのいずれかのアナログ、並びに以下に限定されないがメチル化及び/又はキャップポリヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチドを含む。
「DNA分子」は、一本鎖形又は二本鎖ヘリックスのいずれかの、デオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン又はシトシン)のポリマー形態を意味する。この用語は、分子の一次構造及び二次構造のみについて言及しており、いかなる特定の三次的な形態に限るものではない。従ってこの用語は、とりわけ、直鎖DNA分子(例、制限フラグメント)、ウイルス、プラスミド及び染色体で見られる二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造を論じる場合、配列は、DNAの転写されない鎖(即ち、mRNAに対応する配列を有する鎖)に沿って5’から3’方向の配列のみを与える通常の慣例に従って本明細書では記載され得る。
DNAの「コード配列」又は「コード領域」とは、in vivoにおいて、適当な発現調節配列の制御下に置かれた場合に、転写され且つポリペプチドに翻訳される二本鎖DNA配列である。コード配列(「オープンリーディングフレーム」又は「ORF」)の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドン及び3’(カルボキシル)末端の翻訳終止コドンにより決定される。コード配列は、以下に限定されないが、原核生物の配列、真核生物のmRNA由来のcDNA、真核生物(例えば哺乳動物)のDNA由来のゲノムDNA配列、及び合成DNA配列を含み得る。ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列は、通常、コード配列の3’側に位置する。用語「非コード配列」又は「非コード領域」は、アミノ酸に翻訳されないポリヌクレオチド配列の領域(例、5’及び3’非翻訳領域)を意味する。
用語「リーディングフレーム」は、二本鎖DNA分子についての各方向毎に3つの、可能な6つのリーディングフレームのうちの1つを意味する。使用されるリーディングフレームが、DNA分子のコード配列内において、アミノ酸をコードするのにどのコドンを使うかを決定する。
本明細書で使用される場合、「アンチセンス」核酸分子は、タンパク質をコードする「センス」核酸に対して相補的(例えば、二本鎖cDNA分子のコード鎖に相補的、mRNA配列に相補的、又は、遺伝子のコード鎖に相補的)な、ヌクレオチド配列を含む。従って、アンチセンスの核酸分子は、センスの核酸分子に水素結合することができる。
用語「塩基対」又は(「bp」):二本鎖DNA分子における、アデニン(A)のチミン(T)とのパートナーシップ、又はシトシン(C)のグアニン(G)とのパートナーシップである。RNAでは、ウラシル(U)がチミンの代わりになる。
本明細書で使用される場合、「コドン」は、転写及び翻訳された場合に、単一のアミノ酸残基をコードする;又は、UUA、UGA、UAGの場合は停止シグナルをコードする、3ヌクレオチドを意味する。アミノ酸をコードするコドンは当該技術分野で周知であり、本明細書での便宜のため、表1にて与えられる。
AA:アミノ酸;Abbr;略称。上に明記したコドンは、RNA配列のためのものであることを理解すべきである。DNAのための対応するコドンは、Uの代わりにTとなる。最適なコドン用法は、例えば、the Wisconson Sequence Analysis Package、Version8.1、Genetics Computer Group、Madison、Wisc.からのプログラム“Human−High.cod”からのコドン用法表に示されるように、発現される遺伝子のためのコドン利用頻度により示される。コドン用法は、例えば、R.Nussinov、“Eukaryotic Dinucleotide Preference Rules and Their Implications for Degenerate Codon Usage”、J.Mol.Biol.149:125−131(1981)にも記載されている。高度に発現するヒト遺伝子において最も頻繁に使用されるコドンは、ヒト宿主細胞における発現のための最適なコドンであって、合成のコード配列を構築するための基礎となると推測される。
本明細書で使用される場合、「揺らぎ位置」は、コドンの三番目の位置を意味する。コドンの揺らぎ位置におけるDNA分子内の変異は、ある実施形態では、アミノ酸レベルでは、サイレント変異又は保存的変異となる。例えばグリシンをコードするコドンは4つ、即ち、GGU、GGC、GGA及びGGGであるため、いかなる揺らぎ位置ヌクレオチドの任意の他のヌクレオチドへの変異も、コードされるタンパク質のアミノ酸レベルでの変化をもたらさず、従って、サイレント置換である。
即ち、「サイレント置換」又は「サイレント変異」とは、コドン内のヌクレオチドが改変されているが、該コドンによってコードされるアミノ酸残基の変化を生じないものである。例としては、コドンの3番目の位置での変異、並びに、AGGに変異してもなおArgをコードするコドン「CGG」における変異など、特定のコドンの1番目の位置における変異が挙げられる。
語句「保存的アミノ酸置換」又は「保存的変異」は、あるアミノ酸を、共通の特性を持つ別のアミノ酸で置き換えることを意味する。個々のアミノ酸の間の共通の特性を定義する有効な方法は、同種生物の対応するタンパク質間のアミノ酸変化の正規化した頻度を解析することである(Schulz,G.E.及びR.H.Schirmer、Principles of Protein Structure、Springer−Verlag)。このような解析に従って、グループ内のアミノ酸が優先的に互いに交換され、従って、タンパク質の全体構造に対する影響が互いに最も似ているアミノ酸のグループが、定義され得る(Schulz,G.E.及びR.H.Schirmer、Principles of Protein Structure、Springer−Verlag)。
このようにして定義されたアミノ酸グループの例としては:Glu、Asp、Asn、Gln、Lys、Arg及びHisからなる「荷電/極性グループ」;Pro、Phe、Tyr及びTrpからなる「芳香族又は環状グループ」;並びにGly、Ala、Val、Leu、Ile、Met、Ser、Thr及びCysからなる「脂肪族のグループ」が挙げられる。
各グループ内でサブグループも特定することができ、例えば、荷電/極性アミノ酸のグループは、Lys、Arg及びHisからなる「正に荷電したサブグループ」;Glu及びAspからなる「負に荷電したサブグループ」、並びにAsn及びGlnからなる「極性サブグループ」からなるサブグループに更に分類することができる。
芳香族又は環状グループは、Pro、His及びTrpからなる「窒素環サブグループ」;並びにPhe及びTyrからなる「フェニルサブグループ」からなるサブグループに更に分類することができる。
脂肪族グループは、Val、Leu及びIleからなる「大きい脂肪族の非極性サブグループ」;Met、Ser、Thr及びCysからなる「脂肪族のわずかに極性のサブグループ」;並びにGly及びAlaからなる「小さい残基のサブグループ」からなるサブグループに更に分類することができる。
保存的変異の例としては、上記のサブグループ内のアミノ酸のアミノ酸置換が挙げられ、例えば、LysをArgにする及びその逆(正電荷が維持され得る);GluをAspにする及びその逆(負電荷が維持され得る);SerをThrにする(遊離の−OHが維持され得る);並びに、GlnをAsnにする(遊離の−NH2が維持され得る)、といったものである。
「半保存的変異」としては、上で挙げた同じグループであって、同一のサブグループを共有しないアミノ酸のアミノ酸置換が挙げられる。例えば、Asnに対するAsp、又はLysに対するAsnの変異は全て、同一グループ内であるが異なるサブグループ内のアミノ酸を伴う。
「非保存的変異」は、例えばLeuに対するLys又はSerに対するPheなど、異なるグループ間でのアミノ酸置換を伴う。
用語「アミノ酸残基」は、カルボキシル基のOH部分及びアルファアミノ基のH部分を除去することにより、対応するアルファアミノ酸から得られるラジカルを意味する。殆どの部分について、本願において使用されるアミノ酸は、アミノ基及びカルボキシル基を含む、タンパク質に見られる天然に存在する、又はそのようなアミノ酸の天然に存在する同化若しくは異化生成物である。或いは、他のタンパク質、毒素、小有機化合物又は抗癌剤への化学的結合を促進するために、非天然のアミノ酸をタンパク質に組み入れることもできる(Dattaら、J Am Chem Soc.2002;124(20):5652−3)。アミノ酸及び保護基を記載するために本明細書で用いられる略称は、IUPAC−IUBコミッション推奨の生化学命名法(Biochemistry(1972)11:1726−1732を参照)に基づく。用語「アミノ酸残基」にはまた、本明細書で言及される任意の特定のアミノ酸のアナログ、誘導体及び同類物(コンジェナー)、並びにC末端若しくはN末端を保護されたアミノ酸誘導体(例、N末端若しくはC末端保護基にて修飾されたもの)も含まれる。例えば、本発明は、カルボキシル基、アミノ基、又は環化のための他の反応性の前駆体官能基を与えながらも、側鎖を長く又は短くしたアミノ酸アナログ、並びに適当な官能基を持つ変種側鎖を有するアミノ酸アナログの使用を意図する。
用語「アミノ酸側鎖」は、K.D.Koppleによる“Peptides and Amino Acids”、W.A.Benjamin Inc.、New York及びAmsterdam、1996、第2頁及び33頁にて定義されたように、−CH−(NH2)COOH部分を除いたアミノ酸の部分である;一般的なアミノ酸のそのような側鎖の例としては、−CH2CH2SCH3(メチオニンの側鎖)、−CH2(CH3)−CH2CH3(イソロイシンの側鎖)、−CH2CH(CH3)2(ロイシンの側鎖)又はH−(グリシンの側鎖)である。
本明細書に記載されるアミノ酸残基は、好ましくは「L」異性体である。しかしながら、抗体(免疫グロブリン)結合の所望の機能特性がポリペプチドによって維持される限り、任意のLアミノ酸残基を「D」異性体の残基で置換することができる。NH2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離のアミノ基を意味する。COOHは、ポリペプチドのカルボキシル末端に存在する遊離のカルボキシル基を意味する。
「アミノ酸モチーフ」とは、アミノ酸の配列で、特定の機能的活性に関連するアミノ酸配列であり、場合によっては、保存されたアミノ酸の総称的な集合である。
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」、「ペプチド」及び「ポリペプチド」は、隣接するアミノ酸残基のアルファアミノ基とカルボキシル基との間のペプチド結合によって互いに連結された任意の長さのアミノ酸残基のポリマーを意味するために交換可能に使用される。ポリペプチド、タンパク質及びペプチドは、直鎖ポリマー、分岐鎖ポリマー又は環状形で存在し得る。これらの用語はまた、翻訳後にin vivoで修飾される形態又は合成中に化学的に修飾される形態も含む。
本明細書において、全てのアミノ酸残基配列は、その左右の方向がアミノ末端からカルボキシル末端へという慣習的な方向である式によって表現されていることに留意すべきである。更には、アミノ酸残基配列の始まり又は終わりのダッシュは、1以上のアミノ酸残基の更なる配列へのペプチド結合を示すことを留意すべきである。
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子」、「組換え遺伝子」及び「遺伝子コンストラクト」は、タンパク質又はその部分をコードするDNA分子又はDNA分子の部分を意味する。DNA分子は、(エクソン配列として)タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含み得、且つイントロン配列を更に含み得る。本明細書で使用される場合、用語「イントロン」は、タンパク質に翻訳されず且つ全ての場合ではないが場合によってはエクソン間に見られる、所与の遺伝子中に存在するDNA配列を意味する。望ましくは、遺伝子は、1以上のプロモーター、エンハンサー、リプレッサー及び/又は遺伝子の活性若しくは発現を調節するための当該分野で周知の他の調節配列に対して作動可能に連結され得る(或いは、それらを有し得る)。
本明細書で使用される場合、用語「相補的DNA」又は「cDNA」には、mRNAの逆転写によって合成され且つ介在する配列(イントロン)が取り除かれた組換えポリヌクレオチドが含まれる。
本明細書で使用される場合、用語「作動可能に連結された」は、機能的に関係するような又は互いに連結されているような、二つのポリヌクレオチド領域間の関係を示す。例えば、プロモーター(又は他の発現調節配列)は、コード配列の転写を調節している(且つ、それを生じさせ得る)場合、該コード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されたプロモーターはコード配列の上流に位置し得るが、必ずしもそれに隣接している必要はない。
「発現調節配列」は、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、内部リボソーム侵入部位(IRES)などの、宿主細胞におけるコード配列の発現を与えるDNA調節配列である。例示的な発現調節配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、Calif.(1990)に記載されている。
「プロモーター」は、細胞内でのRNAポリメラーゼとの結合及び下流(3’方向)のコード配列の転写を開始させることができるDNA調節領域である。本明細書で使用される場合、プロモーター配列は、その3’末端では転写開始部位が境界となり、且つバックグラウンドよりも高く検出され得るレベルの転写を開始させるのに必要な、最小数の塩基又はエレメントを含むように、上流(5’方向)へ広がる。転写開始部位(簡便には、ヌクレアーゼS1でのマッピングにより定義される)、並びに、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)は、プロモーター配列内に見出されるであろう。真核生物のプロモーターは、常にではないが、しばしば、「TATA」ボックス及び「CAT」ボックスを含み得る。原核生物のプロモーターは、−10及び−35のコンセンサス配列に加えて、シャイン−ダルガノ配列を含む。
種々の異なる由来からの、構成的、誘導性及び抑制性プロモーターを含む多数のプロモーターが当該技術分野で周知である。代表的な由来としては、例えば、ウイルス、哺乳動物、昆虫、植物、酵母及び細菌細胞の種類)が挙げられ、これらの由来からの好適なプロモーターは容易に入手可能であるか、或いは、オンライン又は例えばATCCなどの寄託機関、並びに他の商業的若しくは個人的なソースから一般に入手可能な配列に基づいて合成により作製することができる。プロモーターは、一方向性(即ち、一方向で転写を開始させる)であっても、二方向性(即ち、3’若しくは5’のいずれの方向でも転写を開始させる)であってもよい。プロモーターの非限定的な例としては、例えば、T7バクテリア発現系、pBAD(araA)バクテリア発現系、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターとしては、Tet系(米国特許5,464,758号及び5,814,618号)、エクダイソン誘導系(Noら、Proc.Natl.Acad.Sci.(1996)93(8):3346−3351;T−REX TM系(Invitrogen Carlsbad、CA)、Lac Switch(登録商標)(Stratagene、(San
Diego、CA))並びにCre−ERT タモキシフェン誘導性リコンビナーゼ系(Indraら、Nuc.Acid.Res.(1999)27(22):4324−4327;Nuc.Acid.Res.(2000)28(23):e99;米国特許第7,112,715号;及びKramer及びFussenegger、Methods Mol.Biol.(2005)308:123−144)、或いは所望の細胞での発現に好適な、当該技術分野で公知の任意のプロモーターが挙げられる。
本明細書で使用される場合、「最小プロモーター」は、転写開始部位を規定するが、それ自体では、たとえ出来たとしても、効率的に転写を開始させることができない、部分的なプロモーター配列を意味する。このような最小プロモーターの活性は、テトラサイクリン調節性トランスアクチベーターなどのアクチベーターの、作動可能に連結された結合部位への結合に依存する。
用語「IRES」又は「内部リボソーム侵入部位」は、ポリシストロニックなメッセンジャーRNAでコードされるコード配列の翻訳を増強するように作用する、ポリヌクレオチドのエレメントを意味する。IRESエレメントは、典型的なリボソームスキャニングに関与する7−メチルグアノシンキャップをバイパスして、リボソームをメッセンジャーRNA(mRNA)分子に直接集めて結合させることにより、翻訳の開始を仲介する。IRES配列の存在により、所望のタンパク質のキャップ非依存的な翻訳のレベルが増加され得る。初期の刊行物においては、IRES配列は、記述として「翻訳エンハンサー」と呼ばれている。例えば、カルジオウイルスRNAの「翻訳エンハンサー」が、Palmenbergらに対する米国特許第4,937,190号、及びBoris−Lawrieに対する米国特許第5,770,428号に記載されている。
用語「核局在化シグナル」及び「NLS」は、タンパク質又はポリヌクレオチドの核移行、又は細胞の核内でのその保持を仲介することができるドメイン(単数又は複数)を意味する。「強力な核移行シグナル」とは、目的のタンパク質に作動可能に連結された場合に、細胞内局在の90%より多くを核内に仲介できるドメイン(単数又は複数)を表す。NLSの代表例としては、以下に限定されないが、単極性(monopartite)核局在化シグナル、二極性(bipartite)核局在化シグナル並びにN及びC末端モチーフが挙げられる。N末端の塩基性ドメインは、通常、SV40ラージT抗原で最初に発見され単極性NLSを示す、コンセンサス配列K−K/R−X−K/Rに従う。N末端の塩基性ドメインNLSの非限定的な1つの例は、PKKKRKV(配列番号340)である。ヌクレオプラスミンのNLS:KR[PAATKKAGQA]KKKK(配列番号366)に例示される、約10アミノ酸のスペーサーで分離された2つの塩基性アミノ酸クラスターを含む、二極性核局在化シグナルもまた知られている。N及びC末端モチーフとしては、例えば、hnRNP A1の酸性M9ドメイン、酵母の転写リプレッサーMatα2における配列KIPIK(配列番号381)及びU snRNPの複合シグナルが
挙げられる。これらのNLSの大部分は、インポーチンβファミリーの特異的受容体によって直接認識されるようである。
本明細書で使用される場合、用語「エンハンサー」は、例えば、それが作動可能に連結されている遺伝子又はコード配列の転写を増加させるDNA配列を意味する。エンハンサーは、コード配列から何キロベースも離れて位置していてもよく、調節因子の結合、DNAメチル化パターン、又はDNA構造の変化を仲介し得る。種々の異なる由来からの多数のエンハンサーが当該分野において周知であり、クローニングされたポリヌクレオチドとして、又はクローニングされたポリヌクレオチド内で、(例えば、ATCCなどの寄託機関並びに他の商業的若しくは個人のソースから)入手可能である。(一般に使用されるCMVプロモーターなどの)プロモーターを含む多数のポリヌクレオチドは、エンハンサー配列も含む。作動可能に連結されたエンハンサーは、コード配列の上流、内部、又は下流に位置し得る。用語「Igエンハンサー」は、Ig遺伝子座内にマップされたエンハンサー領域に由来するエンハンサーエレメントを意味する(そのようなエンハンサーとしては、例えば、重鎖(ミュー)5’エンハンサー、軽鎖(カッパ)5’エンハンサー、カッパ及びミューのイントロンエンハンサー、並びに3’エンハンサーなどが挙げられる(例えば、Paul WE(編)Fundamental Immunology、第3版、Raven Press、New York(1993)第353−363頁;米国特許第5,885,827号を参照)。
「転写終結配列(ターミネーター配列)」とは、転写の終結をもたらす配列である。転写終結配列は当該分野で公知であり、これに限定されないが、ポリA(例、BghポリA及びSV40ポリA)ターミネーターが挙げられる。転写終結シグナルは、典型的には、3’非翻訳領域(即ち、「3’ut」)、任意のイントロン(介在配列又は「IVS」とも呼ばれる)及び1以上のポリアデニル化シグナル(「p(A)」又は「pA」の領域を含むであろう。転写終結配列はまた、「IVS−pA」、「IVS+p(A)」、「3’ut+p(A)」又は「3’ut/p(A)」とも呼ばれることがある。ターミネーター領域としては、天然又は合成のターミネーターが使用され得る。
用語用語「ポリアデニル化」、「ポリアデニル化配列」、「ポリアデニル化シグナル」、「ポリA」、「p(A)」又は「pA」は、ポリアデニル転移酵素の存在下において転写物がポリアデニル化されるのを可能とする、RNA転写物中に存在する核酸配列を意味する。多くのポリアデニル化シグナルが当該分野において知られている。非限定的な例としては、ヒトバリアント成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40後期ポリアデニル化シグナル及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルが挙げられる。
本明細書で使用される場合、用語「スプライス部位」は、真核生物細胞のスプライス機構によって、切断及び/又は対応するスプライス部位へのライゲーションのために好適であると認識され得るポリヌクレオチドを意味する。スプライス部位は、プレmRNA転写物中に存在するイントロンの切断を可能とする。一例では、スプライス部位の5’部分は、スプライスドナーと呼ばれ、対応する3’スプライス部位は、アクセプタースプライス部位と呼ばれる。スプライス部位という用語には、例えば、天然に存在するスプライス部位、遺伝子工学的なスプライス部位、例えば合成のスプライス部位、標準的即ちコンセンサスのスプライス部位、及び/又は、例えば潜在性スプライス部位といった非標準的なスプライス部位が含まれる。
「シグナル配列」は、コード配列の前に含まれ得る。この配列は、ポリペプチドのN末端側のシグナルペプチドをコードし、宿主細胞に対して、該ポリペプチドを細胞表面へ向かわせること、又は該ポリペプチドを培地中へ分泌させることを知らせ、また、このシグナルペプチドは、タンパク質が細胞を離れる前に、宿主細胞によって切り取られる。シグナル配列は、原核生物及び真核生物に由来する種々のタンパク質と関連して見出すことができる。
「翻訳語修飾」は、翻訳が完了した後に、及びリボソームから放出された後に、或いは新生ポリペプチドの翻訳と同時にタンパク質が被る、共有結合性の修飾を含むいずれか1つの修飾又はその組み合わせを包含し得る。翻訳後修飾としては、以下に限定されないが、リン酸化、ミリスチル化、ユビキチン化、グリコシル化、コエンザイム付加、メチル化、S−ニトロシル化及びアセチル化が挙げられる。翻訳語修飾は、タンパク質の活性、細胞内若しくは細胞外の行き先、安定性若しくは半減期、及び/又はリガンド、受容体若しくは他のタンパク質による認識を調節し得るか、或いはそれらに影響し得る。翻訳後修飾は、細胞オルガネラ内、核内又は細胞質内、或いは細胞外で起こり得る。
本明細書で使用される場合、用語「プライマー」は、オリゴヌクレオチドであって、精製された制限消化物として天然に存在するものであれ、合成により生成されたものであれ、核酸鎖に相補的なプライマーの伸長生成物の合成が誘導される条件下、即ち、ヌクレオチド、及びDNAポリメラーゼなどの誘導因子が存在し、且つ適切な温度及びpHの条件下に置かれた時に、合成の開始位置として機能し得る、前記オリゴヌクレオチドをいう。プライマーは一本鎖又は二本鎖のいずれであってもよいが、誘導因子の存在下で所望の伸長生成物の合成を開始させるのに十分な長さでなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーの由来、及び方法の使用など、多くの要因に依存し得る。例えば、診断用途のためには、標的配列の複雑さに応じて、オリゴヌクレオチドプライマーは、それより少ないヌクレオチドを含み得るが、約15から約25又はそれより多くのヌクレオチドを含み得る。
本明細書でのプライマーは、特定の標的ポリヌクレオチド配列の異なる鎖に対して、「実質的に」相補的であるように選択される。これは、プライマーが、それぞれの鎖に対してハイブリダイズするために十分に相補的でなければならないことを意味する。従って、プライマー配列は、鋳型の正確な配列を反映していなくてもよい。例えば、残りのプライマー配列が鎖に相補的であるようにしつつ、非相補的なヌクレオチドフラグメントをプライマーの5’末端に取り付けることができる。或いは、プライマー配列が、鎖の配列とハイブリダイズし、それによって伸長生成物の合成のための鋳型を形成するために十分相補的であれば、非相補的な塩基又はより長い配列をプライマー中に散在させてもよい。
本明細書で使用される場合、用語「制限エンドヌクレアーゼ」及び「制限酵素」は、細菌の酵素であって、その各々が、二本鎖DNAを、特定のヌクレオチド配列において又はその近くで切断するものを意味する。
本明細書で使用される場合、用語「多重クローニング部位」は、複数の異なる制限酵素を認識し得る、ベクターポリヌクレオチドのセグメントを意味する。
「レプリコン」は、in vivoでのDNA複製の自律的な単位として機能する;即ち、それ自身の制御下で複製が可能であり且つ自律的な複製配列を含む、任意の遺伝エレメント(例、プラスミド、エピソーム、染色体、YAC、ウイルス)である。
「ベクター」又は「クローニングベクター」は、それに対して別のポリヌクレオチドセグメントを導入して、該挿入されたセグメントの複製を惹起することができる、プラスミド、ファージ又はコスミドなどのレプリコンである。ベクターは、環状、二本鎖DNAとして存在し得、数キロベース(kb)から(form)数百kbのサイズに及ぶ。好ましいクローニングベクターは、ポリヌクレオチド配列のクローニング及び組換え操作を容易にするため、天然に存在するプラスミドから改変されたものである。そのような多くのベクターが、当該分野において周知である;例えばSambrook(“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”、第2版、Sambrook、Fritsch、及びManiatis編、Cold Spring Harbor Laboratory(1989))、Maniatis(Cell Biology:A Comprehensive Treatise、Vol.3、Gene Sequence Expression、Academic Press、NY、pp.563−608(1980))を参照されたい。
本明細書で使用される場合、用語「発現ベクター」は、宿主細胞内又はin vitro発現系において、あるポリヌクレオチドを発現するために使用されるベクターを意味する。該用語は、プラスミド、エピソーム、コスミド、レトロウイルス又はファージを含み;発現ベクターは、所望のタンパク質をコードするDNA配列を発現させるために使用することができ、1つの態様では、発現調節配列のアセンブリーを含む転写ユニットを含む。プロモーター及び他の調節エレメントの選択は、対象とする宿主細胞又はin−vitro発現系により異なり得る。
本明細書で使用される場合、「組換え系」は、目的の遺伝子の組み込みのための、本出願のベクターと染色体との間の組換えを可能とする系を意味する。組換え系は当該分野において公知であり、Cre/Lox系及びFLP−IN系が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「in−vitro発現系」は、DNA鋳型の転写又は共役転写及び翻訳を可能にする無細胞系を意味する。このような系としては、例えば、古典的なウサギ網状赤血球系並びに新規の無細胞合成系(J.Biotechnol.(2004)110(3):257−63;Biotechnol Annu. Rev.(2004)10:1−30)が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「Cre/Lox」系は、バクテリオファージP1の部位特異的な組み換え系についてAbremskiら(Cell、32:1301-1311
(1983))によって記載されたようなものを意味する。Cre−Lox系の使用方法は、当該分野において公知である;例えば、参照することにより、その全体として本明細書に組み込まれる米国特許第4,959,317号を参照されたい。該系は、loxPで示される組換え部位及びCreで示されるレコンビナーゼからなる。真核生物細胞においてDNAの部位特異的組換えを作り出す方法では、第一及び第二のlox部位を有するDNA配列を真核生物細胞に導入してCreと接触させることにより、lox部位にて組換えを生成することができる。
本明細書で使用される場合、「FLP−IN」組換えは、ポリヌクレオチドの活性化/不活性化及び部位特異的組込み系が哺乳動物細胞のために開発されている系を意味する。該系は、サッカロミセス属由来のリコンビナーゼであるFLPによってトランスフェクトされた配列の組換えに基づく。FLPは、いくつかの細胞株では、特定の標的配列のコピーを迅速且つ正確に組換えることが示されている。FLP−IN系は、例えば、米国特許第5,654,182号及び同5,677,177号に記載されている。
本明細書で使用される場合、用語「トランスフェクション(形質移入)」、「トランスフォーメーション(形質転換)」又は「トランスダクション(形質導入)」は、1つ又は物理的又は化学的な方法を使用して、宿主細胞に1以上の外来ポリヌクレオチドを導入することを意味する。以下に限定されないが、リン酸カルシウムDNA共沈殿(Methods in Molecular Biology、Vol.7、Gene Transfer and Expression Protocols、E.J.Murray編、Humana Press(1991)を参照);DEAE−デキストラン;エレクトロポレーション;カチオン性リポソーム介在トランスフェクション;タングステン粒子促進性の微粒子照射(Johnston,S.A.、Nature 346:776−777(1990));並びにリン酸ストロンチウムDNA共沈殿(Brash D.E.ら、Molec.Cell.Biol. 7:2031−2034(1987))を含む多くのトランスフェクション技術が、当業者に周知である。ファージ又はレトロウイルスベクターは、市販のパッケージ細胞内での感染粒子の成長後に、宿主細胞に導入することができる。
用語「細胞」、「細胞培養物」、「細胞株」、「組換え宿主細胞」、「レシピエント細胞」及び「宿主細胞」は、しばしば交換可能に使用され、それらが使用される文脈から明らかとなるであろう。これらの用語は、初期の対象細胞及びその任意の子孫を含み、移入(transfer)の回数は問わない。全ての子孫が、(意図的若しくは意図的でない変異又は環境の相違に起因して)親細胞と正確に同一であるわけではないが、これらの変化した子孫も、元々の形質転換された細胞の機能と同じ機能を保持している限り、これらの用語に含まれることを理解すべきである。そのような特徴は、例えば、これに限定されないが、特定の組換えタンパク質を産生する能力であるかもしれない。「ミューテーター陽性細胞株」とは、他のベクターエレメントとの組み合わせで超変異を及ぼすために機能するのに十分な細胞因子を含む細胞株である。該細胞株は、当該分野において公知のもの及び本明細書に記載されるもののいずれであってもよい。「クローン」とは、単一の細胞から又は有糸***により共通の祖先から得られた細胞集団である。
「レポーター遺伝子」は、目的の細胞で発現させた場合に、特異的に検出(即ち、検出及び選択)される能力を付与するポリヌクレオチドを意味する。数多くのレポーター遺伝子系が当該分野において知られ、例えば、アルカリホスファターゼ(Berger,J.ら、Gene 66:1−10(1988);Kain,SR.、Methods Mol.Biol. 63:49−60(1997))、ベータ・ガラクトシダーゼ(米国特許第5,070,012号)、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(Gormanら、Mol.Cell.Biol. 2:1044−51(1982))、ベータ・グルクロニダーゼ、ペルオキシダーゼ、ベータ・ラクタマーゼ(米国特許第5,741,657号、第5,955,604号)、触媒抗体、ルシフェラーゼ(米国特許第5,221,623号;第5,683,888号;第5,674,713号;第5,650,289号;第5,843,746号)、並びに天然の蛍光タンパク質(Tsien,RY、Annu.Rev.Biochem. 67 509−544 (1998))が挙げられる。用語「レポーター遺伝子」には、目的のペプチドと相互作用し得る又はそれが所望される(若しくは所望されない)ことにより検出可能なシグナルを作り出す1以上の抗体、エピトープ、結合パートナー、基質、修飾酵素、受容体、又はリガンドの使用に基づいて特異的に検出され得る任意のペプチドも含まれる。レポーター遺伝子には、細胞の表現型を改変し得る遺伝子もまた含まれる。
本明細書で使用される場合、用語「選択マーカー遺伝子」は、ポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチドを保有する細胞が、対応する選択試薬の存在下で、特異的に選択されるように又はされないようにすることを可能にする前記ポリヌクレオチドを意味する。選択マーカーは、陽性、陰性又は二機能性であり得る。陽性の選択マーカーは、該マーカーを保有する細胞の選択を可能とし、陰性の選択マーカーは、該マーカーを保有する細胞が選択的に除かれることを可能とする。選択マーカーのポリヌクレオチドは、発現されるポリヌクレオチドに直接連結されていてもよく、又は、共トランスフェクションにより同一細胞に導入されていてもよい。種々のそのようなマーカーポリヌクレオチドが、二機能性(即ち、陽性/陰性)マーカー(例えば、1992年5月29日公開のWO92/08796号、及び1994年12月8日公開のWO94/28143号を参照;これらは、本明細書で参照することにより、その全体として本明細書に組み込まれる)を含めて、記載されてきた。薬剤耐性遺伝子の選択マーカーの具体例としては、以下に限定されないが、アンピシリン、テトラサイクリン、ブラストサイジン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、ウアバイン又はカナマイシンが挙げられる。選択マーカーの具体例としては、例えば、メトトレキセートへの耐性を付与するDHFRタンパク質(Wiglerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:3567(1980);O’Hareら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78:1527(1981));ミコフェノール酸への耐性を付与するGPFタンパク質(Mulligan及びBerg、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78:2072(1981))、アミノグリコシドG−418への耐性を付与するネオマイシン耐性マーカー(Colberre−Garapinら、J.Mol.Biol.、150:1(1981));ハイグロマイシンへの耐性を付与するハイグロマイシンタンパク質(Santerreら、Gene、30:147(1984))、ウアバインへの耐性を付与するマウスNa+,K+−ATPaseアルファサブユニット(Kentら、Science、237:901-903(1987));並びにZeocin(商標)耐性マーカー(Invitro
gen社より商業的に入手可能)など、細胞増殖抑制剤又は細胞破壊剤に対する耐性を付与するタンパク質をコードするものである。更には、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、Cell、11:223(1977))、ヒポキサンチン−グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska及びSzybalski、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、48:2026(1962))及びアデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、Cell、22:817(1980))を、それぞれtk−、hgprt−又はaprt−細胞において用いることができる。グルタミン合成酵素は、グルタミン(GS)フリー培地での細胞の増殖を可能とする(例えば、米国特許第5,122,464号;第5,770,359号;及び第5,827,739号を参照)。他の選択マーカーは、例えば、ピューロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ、又はアデノシンデアミナーゼをコードする。
「相同性」又は「同一性」又は「類似性」は、2つのペプチド間又は2つの核酸分子間での配列の類似性を意味する。相同性及び同一性は、比較の目的のためにアラインされ得る各配列内の位置を比較することによってそれぞれ決定され得る。比較された配列における対応する位置が同じ塩基又はアミノ酸で占められている場合、該分子は、その位置において同一である;対応する部位が、同一又は類似のアミノ酸残基(例えば立体的及び/又は電気的な性質が類似する)で占められている場合、該分子は、その位置において相同(類似)であるということができる。相同性/類似性又は同一性のパーセンテージとしての表現は、比較された配列により共有される位置における同一又は類似のアミノ酸の個数の関数を参照する。「関連しない」又は「非相同的な」配列は、本発明の配列と、40%未満の同一性、35%未満の同一性、30%未満の同一性、又は25%未満の同一性を共有する。二つの配列の比較において、残基(アミノ酸又は核酸)の不在又は余分な残基の存在もまた、同一性及び相同性/類似性を減少させる。
用語「相同性」は、類似の機能又はモチーフを持つ遺伝子又はタンパク質を同定するために使用される、数学に基づく配列類似性の比較を示す。本発明の核酸及びタンパク質の配列は、例えば、他のファミリーのメンバー、関連する配列又はホモログを同定するために、公共のデータベースに対するサーチを行うための「クエリ配列」として使用され得る。そのようなサーチは、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて行うことができる。BLASTヌクレオチドサーチを、score=100、wordlength=12でNBLASTプログラムを用いて行って、本発明の核酸分子に相同的なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質サーチを、score=50、wordlength=3でXBLASTプログラムを用いて行って、本発明のタンパク質分子に相同的なアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的のためのギャップを入れたアライメントを得るために、Altschulら(1997)Nucleic
Acids Res. 25(17):3389−3402に記載されたようにしてGapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、各々のプログラム(例、XBLAST及びBLAST)のデフォルトのパラメーターを使用することができる(www.ncbi.nlm.nih.govを参照)。
本明細書で使用される場合、「同一性」は、配列のマッチングが最大になるように、即ちギャップ及び挿入を考慮に入れて、配列をアライメントしたときの、2つ以上の配列における対応する位置での同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基のパーセンテージを意味する。同一性は、以下に限定されないが、(Computational Molecular Biology、Lesk、A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects、Smith、D.W.編、Academic Press、New York、1993;Computer Analysis of Sequence Data、Part I、Griffin,A.M.及びGriffin,H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje,G.、Academic Press、1987;及び、Sequence Analysis Primer、Gribskov,M.及びDevereux,J.編、M Stockton Press、New York、1991;並びに、Carillo,H.及びLipman,D.,SIAM J. Applied Math.、48:1073(1988)に記載の方法を含む公知の方法により、容易に計算することができる。同一性を決定する方法は、テストされた配列の間で最大のマッチを与えるように設計されている。更には、同一性を決定する方法は、公的に利用可能なコンピュータープログラムにおいてコード化されている。2つの配列間での同一性を決定するコンピュータープログラムの方法としては、以下に限定されないが、GCGプログラム・パッケージ(Devereux,J.ら、Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschul,S.F.ら、J.Molec.Biol.215:403−410(1990)、並びにAltschulら、Nuc. Acids Res. 25:3389−3402(1997))が挙げられる。BLAST Xプログラムは、NCBI及び他のソースから公的に入手可能である(BLAST Manual、Altschul,S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda、Md. 20894;Altschul,S.ら、J.Mol.Biol. 215:403−410(1990))。周知のSmith Watermanアルゴリズムもまた、同一性の決定のために使用され得る。
DNA配列の「異種」領域とは、より長いDNA配列内の特定可能なDNAのセグメントであって、本来は、そのより長いDNA配列と関連して見出されないものを意味する。従って、異種領域が哺乳動物の遺伝子をコードする場合、該遺伝子は、由来となる生物のゲノムにおいて通常該哺乳動物のゲノムDNAに隣接しないDNAによって隣接され得る。異種コード配列の別の例は、該コード配列それ自体が天然には見出されない配列である(例えば、ゲノムコード配列が、未改変の遺伝子と異なるコドン若しくはモチーフを有するイントロン若しくは合成配列を含むcDNA)。アレル変異体又は自然に生じる変異事象は、本明細書で定義されるようなDNAの非相同的な領域を生じない。
用語「活性化誘導シチジンデアミナーゼ」又は(「AID」)は、DNA配列内で、シトシンのウラシルへの脱アミノ化を仲介することのできる、RNA/DNAエディテイングシチジンデアミナーゼのAID/APOBECファミリーのメンバーを意味する。(例えば、Conticelloら、Mol.Biol.Evol. 22 No 2 367−377 (2005)、“Evolution of the AID/APOBEC Family of Polynucleotide (Deoxy)cytidine Deaminases”及び米国特許第6,815,194号を参照)。好適なAID酵素としては、当該酵素の、例えば霊長類、げっ歯類、鳥類及び硬骨魚類を含む、あらゆる脊椎動物の型のものが挙げられる。AID酵素の代表例としては、以下に限定されないが、ヒト(GenBankアクセッション番号NP_065712)、ラット、ニワトリ、イヌ及びマウス(GenBankアクセッション番号NP_033775)の型が挙げられる。用語「AIDホモログ」は、Apobecファミリーの酵素を意味し、例えばApobecが挙げられ、詳細には、Apobec−1、Apobec3C又はApobec3GなどのApobecファミリーのメンバーから選択され得る(例えばJarmuzら(2002) Genomics、79:285−296)(2002)に記載されている)。AID及びAIDホモログとしてはまた、以下に限定されないが、ポリヌクレオチド配列を脱アミノ化する能力を保持した改変型ポリペプチド(例、ミュータント又はムテイン)が更に挙げられる。用語「AID活性」には、AID及びAIDホモログにより仲介される活性が含まれる。
用語「トランジション変異」は、DNA配列における塩基の変化であって、ピリミジン(シチジン(C)又はチミジン(T)が別のピリミジンによって置換される、或いはプリン(アデノシン(A)又はグアノシン(G)が別のプリンに置換されるものを意味する。
用語「トランスバージョン変異」は、DNA配列における塩基の変化であって、ピリミジン(シチジン(C)又はチミジン(T)がプリン(アデノシン(A)又はグアノシン(G)によって置換される、或いはプリンがピリミジンによって置換されるものを意味する。
用語「塩基除去修復」は、シチジンの脱アミノ化により生じたウリジンヌクレオチドなどの単一の塩基を、DNAから除去するDNA修復経路を意味する。修復は、一本鎖又は二本鎖のDNAからウラシルを認識して除去し、脱塩基部位とするウラシルグリコシラーゼによって開始される。
用語「ミスマッチ修復」は、染色体DNAの複製のエラーにより生じるものなど、ミスマッチ塩基を認識して訂正する修復経路を意味する。
用語「polイータ(polη)」(PolH、RAD30A、XPV、XP−Vとも呼ばれる)は、忠実性の低いDNAポリメラーゼであって、例えばUV誘発性チミジンダイマーを通過する複製といった、損傷を通過する複製において役割を果たすものを意味する。色素性乾皮症のバリアント型タンパク質XPVでは、polイータの遺伝子が欠損している。損傷していないDNAでは、polイータは、100bpあたり約3つの割合で正しくないヌクレオチドを組み込み、そして、WAジヌクレオチド(W=A又はT)を含む鋳型を通過して複製するときに特にエラーを起こしやすい(Gearhart及びWood、2001)。polイータは、免疫グロブリンの可変遺伝子におけるSHMの間のA/Tミューテーターとして重要な役割を果たすことが示されてきた(Zengら、2001)。polイータの代表例としては、以下に限定されないが、ヒト(GenBankアクセッション番号BAA81666)、ラット(GenBankアクセッション番号XP_001066743)、ニワトリ(GenBankアクセッション番号NP_001001304)、イヌ(GenBankアクセッション番号XP_532150)及びマウス(GenBankアクセッション番号NP_109640)の型が挙げられる。
用語「polシータ(polθ)」(PolQとも呼ばれる)は、忠実性の低いDNAポリメラーゼであって、架橋修復(クロスリンク修復)における役割を果たし得(Gearhart及びWood、Nature Rev Immunol 1:187-192(2001))、且つ内因性のATPase−ヘリカーゼドメインを含む(Kawamuraら、Int.J.Cancer 109(1):9−16(2004))ものを意味する。該ポリメラーゼは、誤対合挿入因子及び誤対合伸長因子の両方として機能することにより、脱塩基部位を通過する複製を効率的に行うことができる(Zanら、EMBO Journal 24、3757-3769(2005))。polシータの代表例としては、以下に限定されないが、ヒト(GenBankアクセッション番号NP_955452)、ラット(GenBankアクセッション番号XP_221423)、ニワトリ(GenBankアクセッション番号XP_416549)、イヌ(GenBankアクセッション番号XP_545125)及びマウス(GenBankアクセッション番号NP_084253)の型が挙げられる。polイータ(Pol ete)及びPolシータは、総称して「エラープローンポリメラーゼ」と呼ばれることもある。
本明細書で使用される場合、用語「SHMホットスポット」又は「ホットスポット」又は「ホットスポットモチーフ」は、3〜6ヌクレオチド(即ち、1〜2コドン)のポリヌクレオチド配列又はモチーフであって、抗体遺伝子におけるSHM変異の統計解析による決定で、SHMを起こす傾向の増加を示すものを意味する(SHMについて種々のモチーフの相対的な順位を与える表2及び3、並びに標準的なホットスポット及びコールドスポットを挙げている表7を参照)。該統計解析は、本明細書の他の箇所に記載されるように、非抗体遺伝子におけるSHM変異の解析にも当てはめられ得る。ホットスポットを図中にグラフィカルに表示する目的のために、標準的ホットスポットの最初のヌクレオチドを、文字「H」で表す。
同様に、本明細書で使用される場合、「SHMコールドスポット」又は「コールドスポット」又は「コールドスポットモチーフ」は、3〜6ヌクレオチド(即ち、1〜2コドン)のポリヌクレオチド又はモチーフであって、抗体遺伝子におけるSHM変異の統計解析による決定で、SHMを起こす傾向の減小を示すものを意味する(SHMについて種々のモチーフの相対的な順位を与える表2及び3、並びに標準的なホットスポット及びコールドスポットを挙げている表7を参照)。該統計解析は、本明細書の他の箇所に記載されるように、非抗体遺伝子におけるSHM変異の解析にも当てはめられ得る。コールドスポットを図中にグラフィカルに表示する目的のために、標準的コールドスポットの最初のヌクレオチドを、文字「C」で表す。
用語「体細胞超変異モチーフ」又は「SHMモチーフ」は、1以上のホットスポット及び/又はコールドスポットを含むか、又は含むように改変され得、且つ規定されたアミノ酸の集合をコードする、ポリヌクレオチド配列を意味する。SHMモチーフは任意のサイズであり得るが、サイズとして約2から約20ヌクレオチドのポリヌクレオチドに基づくことが好都合であり、好ましいSHMモチーフは、サイズとして約3から約9ヌクレオチドの範囲である。SHMモチーフは、標準的ホットスポット及び/又はコールドスポットの任意の組み合わせを含むことができ、或いは標準的ホットスポット及び/又はコールドスポットの両方を欠いてもよい。
用語「好ましいSHMモチーフ」は、1以上の好ましいSHMコドンを意味する(下記の表7を参照)。
用語「好ましいホットスポットSHMコドン」、「好ましいホットスポットSHMモチーフ」、「好ましいSHMホットスポットコドン」及び「好ましいSHMホットスポットモチーフ」は全て、以下に限定されないが、コドンAAC、TAC、TAT、AGT及びAGCを含むコドンを意味する。そのような配列は、より大きなSHMモチーフの構成内に埋め込まれている可能性もあり得、SHM介在性の変異誘発をリクルートし得、且つ該コドンにおける標的化されたアミノ酸多様性を生成し得る。
ポリヌクレオチド配列は、該ポリヌクレオチド又はその部分が、該ポリヌクレオチド内でのホットスポット及び/又はコールドスポットの頻度及び/又は位置を増加又は減少させるように改変されている場合、「SHMのために最適化され」ている。ポリヌクレオチド又はその部分が、該ポリヌクレオチド内でのホットスポットの頻度(密度)及び/又は位置を増加させるように、或いは該ポリヌクレオチド内でのコールドスポットの頻度及び/又は位置を減小させるように改変されている場合、「SHM感受性」にされているポリヌクレオチドである。反対に、ポリヌクレオチド又はその部分が、該ポリヌクレオチド内で、ホットスポットの頻度及び/又は位置を減小させるように、並びに/或いはコールドスポットの頻度(密度)及び/又は位置を増加させるように改変されている場合、「SHM耐性」にされているポリヌクレオチドである。1つの実施形態では、コドン使用、及び/又はポリヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸を改変することにより、SHM介在性の変異誘発を起こす感受性(又は率)が、未改変のポリヌクレオチドよりも高い又は低い配列を作製することができる。
ポリヌクレオチド配列の最適化は、ポリヌクレオチド配列における、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約20%、約25%、約50%、約75%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、100%、又はそれらの中の任意の範囲のヌクレオチドを改変することを意味する。ポリヌクレオチド配列の最適化はまた、ポリヌクレオチド配列における、約1個、約2個、約3個、約4個、約5個、約10個、約20個、約25個、約50個、約75個、約90個、約95個、約96個、約97個、約98個、約99個、約100個、約200個、約300個、約400個、約500個、約750個、約1000個、約1500個、約2000個、約2500個、約3000個、又はそれより多い、或いはそれらの中の任意の範囲のヌクレオチドを、ヌクレオチドの一部又は全てがSHM介在性の変異誘発のために最適化されるように改変することを意味する。ホットスポット及び/又はコールドスポットの頻度(密度)の減小は、ポリヌクレオチド配列における、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約20%、約25%、約50%、約75%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、100%、又はそれらの中の任意の範囲のホットスポット又はコールドスポットの減小を意味する。ホットスポット及び/又はコールドスポットの頻度(密度)の増加は、ポリヌクレオチド配列における、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約20%、約25%、約50%、約75%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、100%、又はそれらの中の任意の範囲のホットスポット又はコールドスポットの増加を意味する。
ホットスポット又はコールドスポットの位置又はリーディングフレームは、SHM介在性の変異誘発が、生成するアミノ酸配列に関して、サイレントな変異をもたらし得るものであるのかどうか、或いは、アミノ酸レベルでは、保存的、半保存的又は非保存的な変化を引き起こすものであるのかどうかを支配する要因でもある。以下で論じるように、これらの設計パラメーターは、核酸配列のSHMに対する相対的な感受性又は耐性を更に高めるように操作され得る。従って、SHMのリクルートの程度及びモチーフのリーディングフレームの両方が、SHM感受性及びSHM耐性のポリヌクレオチド配列の設計において考慮される。
本明細書で使用される場合、「体細胞超変異」又は「SHM」は、ポリヌクレオチドの変異であって、該ポリヌクレオチド配列に対する活性化誘導シチジンデアミナーゼ、ウラシルグリコシラーゼ及び/又はエラープローンポリメラーゼの作用によって開始される或いはそれと関連するものを意味する。該用語は、ミスマッチ修復機構及び関連する酵素が介在する変異誘発を含む、初期損傷のエラープローン修復の結果として生じる変異誘発を含むことが意図される。
本明細書で使用される場合、用語「UDG」は、種々の損傷したDNA塩基を認識し、ゲノムの複製前にそれらを除去するいくつかのDNAグリコシラーゼのうちの1つである、ウラシルDNAグリコシラーゼを意味する。DNAグリコシラーゼは、細胞毒性である又はDNAポリメラーゼにエラーを引き起こさせるDNA塩基を除去することができ、また、DNAの塩基除去修復経路の一部である。ウラシルDNAグリコシラーゼは、シチジンの脱アミノ化生成物であるDNA中のウラシルを認識し、その除去を引き起こし、且つ新たな塩基での置換を引き起こし得る。
用語「単離された」は、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドが本発明に従っている状態を意味する。ポリペプチド又はポリヌクレオチドは、それらの本来の環境において、或いは調製がin vitro又はin vivoで実施される組換えDNA技術によるものであるときにはそれらが調製された環境(例、細胞培養物)において、それらと共に見出される他のポリペプチド又はポリヌクレオチドなど、本来関連がある物質を含まない又は実質的に含まないであろう。ポリペプチド又はポリヌクレオチドは、希釈剤又はアジュバントと共に処方されてもよく、且つ実際的な目的のために単離されてもよい − 例えば、ポリペプチド又はポリヌクレオチドは、免疫アッセイでの使用のためのマイクロタイタープレートをコーティングするために使用される場合、ゼラチン又は他の担体と混合されてもよく、或いは、診断又は治療において使用される場合、医薬上許容される担体又は希釈剤と混合されてもよい。ポリペプチド又はポリヌクレオチドは、自然に又は異種真核細胞系によってのいずれかによりグリコシル化されていてもよく、或いは(例えば、原核細胞での発現により生成される場合、)グリコシル化されていなくてもよい。
用語「選択」は、ポリヌクレオチド、タンパク質又は細胞などの1以上のメンバーを、そのようなメンバーのライブラリーから分離することを意味する。選択は、検出及び選択の両方を伴ってよく、例えば、レポーター遺伝子を検出し、次いでそれに従って細胞をソーティングする蛍光活性化細胞選別装置(FACS)を使用することにより、細胞は選択される。
本明細書で使用される場合、「pg」はピコグラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「ug」又は「μg」はマイクログラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「g」はグラムを意味し、「ul」又は「μl」はマイクロリットルを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「l」はリットルを意味し、「kb」はキロベースを意味し、「nM」はナノモーラーを意味し、「pM」はピコモーラーを意味し、「fM」はフェムトモーラーを意味し、「M」はモーラーを意味する。
語句「医薬上許容される」は、生理的に耐容され得、且つ安全でない反応を引き起こさない分子的実体及び組成物を意味する。
II.体細胞超変異
抗体が生成される際、抗原受容体の可変領域(V領域)コード配列内でin vivo点変異が生じ、SHMと呼ばれる観察される変異の率は、他の遺伝子における自然発生的な変異の率よりもおおよそ100万倍大きい。Bachlら、Increased transcription levels induce higher mutation rates in a hypermutating cell line. J Immunol. 2001 Apr 15;166(8):5051−7;Martin及びScharff、AID and mismatch repair in antibody diversification. Nat Rev Immunol. 2002;2(8):605−14。
ヒト及びマウスでは、V−D−J再構成によって抗体特異性の一次レパートリーが作り出された後、抗原遭遇後に該抗原によって誘発されたB細胞内の再構成されたV遺伝子は、更に2つのタイプの遺伝子改変に供される:免疫グロブリン遺伝子の可変領域の多様化を誘発して、二次レパートリーを生成し、それにより液性応答の親和性成熟を可能にするSHM、及び、発現された抗体の定常領域におけるアイソタイプの変化をもたらす特異的な非相同組換えプロセスを伴うクラススイッチ組換え(CSR)。ニワトリ及びウサギでは(ヒト又はマウスではそうではないが)、更なる機構として、遺伝子変換が、V遺伝子の多様性に寄与する主要なものである。
AIDは、活性化B細胞内で発現され、SHM、CSR及び遺伝子変換のための必須のタンパク質因子である(Muramatsuら、2000;Revyら、2000)。AIDは酵素のファミリーであるAPOBECファミリーに属し、このAPOBECファミリーは、代謝性のシチジンデアミナーゼと一部の特徴を共有するが、AIDは1本鎖ポリヌクレオチド内のヌクレオチドを脱アミノ化し、遊離のヌクレオチドを基質として利用できないという点においてそれらとは異なる。AID/APOBECファミリーの他の酵素もまた、1本鎖RNA又はDNA上のシチジンを脱アミノ化するために作用し得る(Conticelloら(2005))。
ヒトAIDタンパク質は、198アミノ酸からなり、予想分子量24kDaを有する。ヒトAID遺伝子は、APOBEC−1に近い、遺伝子座12p13に位置する。AIDタンパク質は、シチジン/デオキシシチジンデアミナーゼモチーフを有し、亜鉛に依存し、また、シチジンデアミナーゼの特異的阻害剤である、テトラヒドロウリジン(THU)によって阻害され得る。
未改変AIDの発見前にも、WRCY(AT/GA/C/AT)モチーフの構成内にあるシチジンにおいて、より頻繁にSHMが生じることが指摘されていた。SHMのためのこのモチーフは、AID脱アミノ化のため、並びにDNAポリメラーゼpolイータ及びpolシータによるエラープローン修復の開始のためのホットスポットモチーフの複合体を表すらしいとする証拠が現在集積されている(Rogozinら(2004);Zanら(2005))。
AID介在性の変異誘発のためには、高レベルのDNA転写が必要であるが、それだけでは十分ではないことが示されてきた。in vivoでは、SHMは、転写開始部位から約80から約100ヌクレオチドで始まるが、その頻度は、プロモーターからの距離の関数として減少する。ネイティブのAIDは、in vitroにおいて、転写伸長複合体と直接相互作用するが、転写開始複合体とは直接相互作用しないことが示されており、この相互作用は、転写開始複合体が、完全に進行性で伸長能力のある転写伸長複合体に変わるときに生じる、開始因子の解離に依存する可能性がある(Besmerら、2006)。
AIDは、1本鎖DNA上のシチジンのみ脱アミノ化できるため、転写のための必要条件は、転写バブルによる1本鎖領域の生成を反映するようである。しかしながら、in vitroでの精製された未改変AIDの研究は、AIDの結合は、配列に依存せず、遺伝子のアクティブな転写により引き起こされるホットスポットの捕捉のためのスキャンする様式を可能とし得ることを示唆している。in vitroでの研究は、未改変AIDが1本鎖DNAに対して0.3から2nMの範囲の見かけのKdを有すること、及び該複合体が4〜8分の半減期を有することを示唆している。精製された未改変AIDの1本鎖DNAに対する代謝回転数は、おおよそ、4分毎に1つの脱アミノ化である(Larijaniら(2006))。
AIDは、転写されているDNA分子のいずれの鎖上でもシチジン残基をウラシル残基へ脱アミノ化するように、DNAに対して作用する。初期(C→U)の損傷が、DNA複製の前又は間に更に修正されない場合、アデノシン(A)が、このUヌクレオチドの反対側に挿入され得、最終的には、C→T又はG→Aのトランジション変異をもたらす。この変化のアミノ酸レベルでの意義は、リーディングフレーム内のコドンの中での該ヌクレオチドの位置に依存する。この変異がコドンの1番目又は2番目の位置にて生じた場合、結果としては恐らく、非保存的なアミノ酸置換である。それに対し、この変化が、コドンリーディングフレームの3番目の位置、揺らぎ位置内で生じた場合、ヌクレオチドの変化の効果はサイレント、即ち保存的なアミノ酸置換となるであろうため、該変異のアミノ酸レベルでの実際の効果はわずかであろう。
或いは、C→Uの損傷、及び潜在的には隣接する塩基は、SHMにおいてエラープローンの様式での修復に繋がるDNA修復機構によって作用され得る。ノックアウトマウスでの研究によって、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)を介した塩基除去修復が、ホットスポットモチーフ近くのA及びT残基の変異を仲介する役割を果たすことが確立された;(Shenら、(2006))。加えて、UDGによる脱塩基部位の創出により、polイータ及びpolシータなどのエラープローンポリメラーゼが集められるという証拠、並びに、これらのポリメラーゼが、周囲の配列の全ての塩基位置において、更なる変異を導入するという証拠が増加している(Watanabeら(2004);Neubergerら(2005))。polイータが、SHMの際のA変異の創出の中心であり、また、優先的にGへと変異される、コード鎖のA又はTの後のアデノシン(W/A)に対して特にエラーを起こしやすいと考えられている。
抗体遺伝子において、コドン用法、並びにそれぞれCDR及びFRにおけるAID活性及びpolイータのエラーに付随する正確なホットスポット/コールドスポットの標的化は、可変領域における変異を最大化し且つフレームワーク領域における変異を最小化する選択圧の下で進化してきたことが観察されている(Zhengら、JEM 201(9):1467−1478(2005))。例えば、Zhengらは、抗体遺伝子内で優先的に使用されるコドン内のC及びGヌクレオチドの正確なアライメントは、殆どのCからT及びGからAへの変異を、サイレント又は保存的なものにしていることを観察している。C及びGの正確な配置と並べて、Zhengらはまた、A及びTは可変領域内のpolイータのホットスポットに優先的に配置され、フレームワーク領域内のそれらの部位からは除外されていることも観察した。
in vivoにおけるSHMの調節、及び、SHMをIg遺伝子座に指示し且つIg遺伝子座に限定する決定因子については、激しい議論及び実験研究の対象であった。in vivoで観察されるSHMの率は、少なくとも部分的には、例えば以下の要因に依存することが示されている:1)特定の細胞タイプ内でのAIDの発現レベル及びAIDの活性レベル;(Martinら(2002)、Rucciら(2006))、2)AIDの翻訳後修飾の度合い及び核内局在の度合い;(McBrideら(2006)、Pasqualucciら(2006)、Mutoら(2006))、3)免疫遺伝子座に特異的なエンハンサー領域、E−boxモチーフ、又は関連するシスに作用する結合因子の存在;(Komoriら(2006),Schoetzら(2006))、4)標的配列の、翻訳開始部位/プロモーター領域への近さ;(Radaら(2001))、5)標的配列の転写率;(Storbら(2001))、6)標的遺伝子のメチル化の度合い;(Larijaniら(2005))、7)細胞のゲノムDNAに組み込まれている場合は、標的遺伝子の遺伝的背景;8)polイータ、MSH2などの補助因子の存在又は不在;(Shenら(2006))、9)標的配列内のホットスポット配列又はコールドスポット配列の存在;(Zhengら(2005))、10)阻害因子の存在;(Santa−Martaら(2006))、11)対象とする細胞タイプ内でのDNA修復速度(Poltoratsky(2006))、12)局所的なDNA又はRNAヘアピン構造の形成;(Steeleら(2006))、並びに13)ヒストンH2Bのリン酸化の状態(Odegardら(2005))。
本発明は、部分的には、時間的及び空間的の両方について制御された超変異のための系を作り出すために、上記因子の一部を最適化することに基づく。
III.体細胞超変異のためのポリヌクレオチドの同定及び解析
抗体配列に関する過去の解析(例えば、Zhengら、J.Exp.Med.(2005);201(9):1467−1478;並びにWang及びWabl、J.Immunol.2005;174(9):5650−4を参照)は、ポリヌクレオチド配列内でのタンパク質の進化の間の、複数回のSHMを関連付ける、基礎となるロジカルな工程を精密化することよりむしろ、SHMに関与するポリヌクレオチド配列のモチーフを同定することに主として基づいていた。
ポリヌクレオチド配列のリーディングフレーム内における1ラウンド以上のSHMという状況、及びコドン用法パターンにおける基礎となる関係性のロジックについてのそのような理解の向上を発達させるための最初のステップとして、本出願は、コンセンサスのホットスポット及びコールドスポットを同定するための統計的なアプローチを使用した。このような統計的なアプローチはまた、AIDによるSHM後の、ヌクレオチドレベルにおける変異の結果及びアミノ酸レベルにおける構造的な結果を、機能的に追跡するためにも使用され得る。
任意の所与のポリヌクレオチド配列から開始し、アミノ酸レベルでの構造的結果として、本明細書中に記載する特性について最適化された少数の可能な配列に迅速に収束するポリヌクレオチド配列を生成するためにこのアプローチを使用することが可能である。
本出願のポリヌクレオチド配列は、完全合成ポリヌクレオチド、完全合成遺伝子、半合成ポリヌクレオチド及び半合成遺伝子を含む。本明細書で使用される場合、用語「半合成ポリヌクレオチド」及び「半合成遺伝子」は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、又は増幅反応のための出発物質として天然のドナー(即ち、末梢血単球)を利用する他の同様の酵素的な増幅系によって得られた核酸配列から部分的になる、ポリヌクレオチド配列を意味する。残りの「合成」ポリヌクレオチド、即ち、PCR又は他の同様の酵素的な増幅系によって得られたものではない半合成(semi−sythetic)ポリヌクレオチドの部分は、これに限定されないが核酸配列の化学合成を含む、当該技術において公知の方法を使用してde novoで合成され得る。
本出願では、ポリヌクレオチドモチーフにおいて観察されるSHM変異の数は、そのモチーフを観察する元々の頻度で条件付けられ、ポリヌクレオチド配列又はモチーフがSHMの「ホットスポット」又は「コールドスポット」である度合いは、およそ50,000の抗体配列において同定されたSHM変異の解析から導出された。SHM「ホット」又は「コールド」モチーフの統計的有意性の一つの指標としては、SHM変異事象の部位においてモチーフが観察された回数(Ns)を、無作為な場合に予期される頻度(Nps)(Nは、データセット中で観察された変異の総数と等しく、psはモチーフを観察する背景確率である)と比較することである。変異の部位で任意のモチーフを観察する背景頻度を計算するために、下記に示す、ヒト生殖系列IGHV配列から直接に得られたジヌクレオチドの遷移確率を使用して、以前に記載されたようにしてマルコフ連鎖を用いた(Tompa、1999)。
変異の部位における、観察されたモチーフ発生数:期待されるモチーフ発生数の差は、Ns−Npsで与えられ、ここで、
は、Npsの標準偏差を表し、各モチーフについてのzスコアは、
で与えられる。
式中、Msは、(変異の部位における)観察されたモチーフ発生数が期待値を超える、標準偏差の数である。この測定規準は、全ての可能なSHM「ホットスポット」及び「コールドスポット」モチーフをランク付けするため、及び、任意のモチーフが、SHM介在性の変異誘発に対して「ホット」又は「コールド」である度合いを特徴付けるために使用され得る。例えば、全ての同等の長さのポリヌクレオチドモチーフのうちで、上位5%又は10%にランク付けされたzスコアを有する3マー、4マー、5マー又は6マーのポリヌクレオチドモチーフを、SHM「ホットスポット」と考えることができる。同様に、全ての同等の長さのポリヌクレオチドモチーフのうちで、下位5%又は10%にランク付けされたzスコアを有する3マー、4マー、5マー又は6マーのポリヌクレオチドモチーフを、SHM「コールドスポット」と考えることができる。1つの側面において、ホットスポットは、例えば、好ましいホットスポットSHMコドン若しくはモチーフ、又はより好ましいホットスポットSHMコドン若しくはモチーフであり得る。以下の表2及び3には、上位の3マー、4マー及び6マーのヌクレオチド配列のランク付けの表を、SHM介在性の変異誘発を引き付ける(即ち、SHMに対してより感受性である)傾向を示す、対応するSHM変異のzスコアと共に、与えている。
SHM介在性の変異誘発を増加又は減少させる能力についての全モチーフのランク付けの他の適用は、野生型配列と比較して、よりコールド又はよりホットな遺伝子コンストラクトを創出することである。遺伝子中の任意の配列位置を、表2及び表3に示されたzスコアに従って、当該アミノ酸と一致する、(出発配列又は未改変配列と比較して)よりホット又はよりコールドなモチーフを有する同等の配列について評価する(evulated)ことができる。そのため、表7からの最も好ましいホットスポット又はコールドスポットが、特定の配列位置を置換するために見出されなかったとしても、コドン配列における縮退が内在的に存在していれば、交換モチーフのSHM特性における相対的な改善が、ほぼ常に為され得る。各モチーフにおける、期待される変異頻度に対する観察された変異頻度の対数オッズベースのスコアは、SHMに対するポリヌクレオチドの累積的なホットさ又はコールドさに関するタイルライブラリーをスコア付けするためにも用いられるかもしれない。
即ち、任意のSHMモチーフを、SHM介在性の変異誘発の確率がより高いモチーフで置換することにより、体細胞超変異に対してより感受性の配列を生成できること、及び、任意のSHMモチーフを、SHM介在性の変異誘発の確率がより低いモチーフで置換することにより、体細胞超変異に対してより耐性の配列を生成できることが理解され得る。
表2及び表3は、SHM介在性の変異誘発を引き付ける能力について、zスコアによりランク付けられた、3マー、4マー及び6マーモチーフを示している。ホット及びコールドホットスポットモチーフの別の可能な表現は、最高のzスコア及び最低のzスコアの間で表されるモチーフのアセンブリーから、位置特異的なマトリクスを構築することによって為され得る。以下に、上位スコアのモチーフである「ホットスポット」の中で過剰に出現した6マーモチーフの1つの例を、位置特異的なマトリクスとして表4に与えた。
1つの非限定的な例において、用語「好ましいホットスポットSHMコドン」又は「好ましいホットスポットSHMモチーフ」は、AID介在性の変異誘発をリクルートし、その位置での標的化されたアミノ酸多様性を生成する、より大きなホットスポットモチーフの構成内に潜在的に埋め込まれているコドン又はモチーフ(以下に限定されないが、コドンTAC、TAT又はAGT、AGCを含む)を意味する。SHMは、定量可能な頻度で「ホットスポット」モチーフの各位置において特異的なヌクレオチド遷移を導入する。ヌクレオチド遷移のこのスペクトルは、3つの可能なリーディングフレームのどれが使用されるかに依存して、種々の可能なサイレント又は非サイレントのアミノ酸遷移を生じる。SHMにより介在される最も可能性の高いコドン遷移と、変異事象の連続的な流れとを規定することによって、セクションVに記載されるように、「好ましいホットスポットSHMコドン」又は「好ましいホットスポットSHMモチーフ」を、各アミノ酸位置でライブラリーの機能性を満足させる特定のアミノ酸遷移群を生成するように、選択できる。
IV.SHMのためのポリヌクレオチド設計ストラテジー
ポリヌクレオチドがSHMを起こす傾向を最大化又は最少化すると同時に、タンパク質の発現、RNAの安定性、及び好都合に位置する制限酵素部位の存在を最大化するヌクレオチドテンプレートを設計する方法が本明細書では提供される。
あるポリヌクレオチドの合成バージョンであって、該ポリヌクレオチドの変異生成率に対するSHMの影響を、野生型がSHMを起こす感受性と比較して、増強又は低減するように改変された(即ち、SHM感受性又はSHM耐性)ものもまた、本明細書では提供される。
SHM感受性配列は、タンパク質の迅速な進化及び改善された変異体の選択を促進し、当該系は、合理的な設計の力を、加速されたランダム変異誘発及び指向された進化と結合させる。
反対に、SHM耐性配列は、タンパク質の迅速な進化及び改善された変異体の選択を促進し、当該系は、合理的な設計の力を、低減されたランダム変異誘発及び指向された進化と結合させる。
本発明にはまた、保存されたドメインがSHM介在性の変異誘発に耐性であるのを可能とすると同時に、所望の配列をSHM介在性の変異誘発への感受性が増加するように標的化し得るものである、SHM耐性ポリヌクレオチド配列も含まれる。
これらの方法を適用可能なポリヌクレオチドとしては、転写され得、且つスクリーニングのための機能的アッセイを備え得る、任意のポリヌクレオチド配列が挙げられる。好ましいポリヌクレオチド配列としては、例えば、特異的結合メンバー、抗体又はそのフラグメント、抗体重鎖又はその部分、抗体軽鎖又はその部分、細胞内抗体、選択マーカー遺伝子、酵素、受容体、ペプチド成長因子及びホルモン、補因子及び毒素などの、タンパク質、ポリペプチド及びペプチドをコードするものが挙げられる。
本明細書において使用するための分子の他の非限定的な例としては、タンパク質又はペプチド配列への翻訳を必要とせずに酵素活性又は結合活性を有するポリヌクレオチドが挙げられ、そのようなポリヌクレオチドとしては、例えば、酵素核酸、アンチセンス核酸、三重鎖形成性オリゴヌクレオチド、2,5−Aキメラ、RsiNA、dsRNA、アロザイム、abdアプタマーが挙げられる。
本発明の生物学的に活性な分子には、他の生物学的に活性なタンパク質分子の薬物動態及び/又は薬力学を調節可能な分子も含まれ、例えば、脂質及びポリマー(例えば、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール及び他のポリエーテル)が含まれる。例えば、ポリペプチドは、例えば以下のようなポリペプチドである:VEGF、VEGF受容体、Diptheria毒素サブユニットA、B.pertussis毒素、CCケモカイン(例えば、CCL1〜CCL28)、CXCケモカイン(例えば、CXCL1〜CXCL16)、Cケモカイン(例えば、XCL1及びXCL2)及びCX3Cケモカイン(例えば、CX3CL1)、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、TNF−α、TNF−β、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−10、IL−12、IL−13、IL−15、TGF−β、TGF−α、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、TPO、EPO、ヒト増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、核補因子、Jak及びStatファミリーメンバー、Gタンパク質シグナル伝達分子(例えば、ケモカイン受容体、JNK、Fos−Jun、NF−κB、I−κB、CD40、CD4、CD8、B7、CD28及びCTLA−4)。
ポリヌクレオチドがSHMを起こす能力を改変するための一つのストラテジーは、目的のポリヌクレオチド配列内のホットスポットの頻度及び位置を調節することを通じるものである。ホットスポット又はコールドスポットの位置又はリーディングフレームは、SHM介在性の変異誘発が、生成するアミノ酸配列に関して、サイレントな変異をもたらし得るものであるのかどうかを支配する重要な要因でもある。SHMのリクルートの程度及びモチーフのリーディングフレームの両方が、ホットスポット及びコールドスポットの設計において考慮される。
最適化されたポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列又はその部分が、野生型のポリヌクレオチド配列と比較して、オープンリーディングフレーム内でのホットスポットの頻度及び/又は位置を増加させるように改変又は設計され、且つ/又は、該ポリヌクレオチド配列のオープンリーディングフレーム内でのコールドスポットの頻度及び/又は位置を減小させるように改変又は設計されている場合、「SHM感受性」にされている。
反対に、最適化されたポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列又はその部分が、野生型のポリヌクレオチド配列と比較して、該ポリヌクレオチド配列のオープンリーディングフレーム内でのホットスポットの頻度及び/又は位置を減少させるように改変され、且つ/又は、該ポリヌクレオチド配列のオープンリーディングフレーム内でのコールドスポットの頻度及び/又は位置を増加させるように改変又は設計されている場合、「SHM耐性」にされている。
ホットスポット、コールドスポット、又はその両方を最適化するために、ポリヌクレオチドの特定の領域を標的化することができる。1つの実施形態において、ポリヌクレオチドの他の領域(例えば、構造的な折りたたみやコンフォメーションに必要な領域など)をコールドにすることができながら、ポリヌクレオチドのある領域をホットにすることができる(例えば、リガンド結合、酵素活性、など)。例えば、抗体遺伝子において、コドン用法、並びにAID活性及びpolイータのエラーに付随する正確なホットスポット/コールドスポットの標的化は、可変領域における変異を最大化し且つフレームワーク領域における変異を最小化する選択圧の下で進化してきたことが観察されている。
コドン用法を選択的に改変して、SHMホットスポット及び/又はコールドスポットの密度を調節することにより、SHM介在性の変異誘発を起こす傾向がより大きい又はより小さいポリヌクレオチド配列を作成することができる。この情報に基づいて、ポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の機能的属性に直接関与すると思われる、該タンパク質の特定の領域を最適化することが可能である。一つの非限定的な例としては、最適化すべきヌクレオチドは、目的の特定の機能的又は構造的属性の内側、又はその約5Å以内に存在し得るアミノ酸をコードし得る。具体的な例としては、抗体のCDR内、受容体の結合ポケット内、酵素の触媒クレフト内、タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン内、補因子の、アロステリック結合部位などの、アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
SHMホットスポット及びコールドスポットのモチーフについては、本明細書中の他の箇所(例えば、表2、3及び7など)に記載した。この目的のために使用され得る4マーヌクレオチドのホットスポットモチーフの非限定的な例としては、例えば、TACC、TACA、TACT、TGCC、TGCA、TGCT、AACC、AACA、AACT、AGCC、AGCA、AGCT、GGTA、TGTA、AGTA、GGCA、TGCA、AGCA、GGTT、TGTT、AGTT、GGCT、TGCT及びAGCTというヌクレオチド配列、並びにもう一方のDNA鎖にコードされるそれらの相補配列が挙げられる。例示的な3マーコールドスポットモチーフとしては、例えば、CCC、CTC、GCC、GTC、GGG、GAG、GGC及びGACというヌクレオチド配列が挙げられる。
更なる考慮としては、ホットスポット又はコールドスポットのリーディングフレームである。ホットスポットモチーフは、コドンの揺らぎ位置(3番目の位置)においてSHM介在性の変異誘発がより生じやすく、サイレント変異がより生じやすいように、リーディングフレームに対して位置し得る。反対に、ホットスポットモチーフは、コドンの変化により非サイレント変異が生じるように、リーディングフレームに対して位置し得る(データ図示せず)。以下で論じるように、これらの設計パラメーターは、反復のコンピュータアルゴリズムを用いて、好都合に最適化することができる。
ホットスポット及び/又はコールドスポット密度を最適化することに加えて、最適化されたポリヌクレオチドが効率的に翻訳され且つ宿主系において安定であるように、以下の特徴を考慮することも望ましいものであり得る。
CpGジヌクレオチドモチーフの密度:過剰のCGモチーフは、遺伝子サイレンシングに繋がる遺伝子メチル化をもたらし得、対象としている宿主系で高度に転写されている遺伝子において見出される密度に正規化され得る(例えば、Kamedaら、Biochem.Biophys.Res.Commun. (2006)349(4):1269−1277を参照)。
1本鎖配列がステムループ構造を形成する能力:ステムループ構造の形成は、特にコーディングフレームの5’領域の近くに位置する場合、非効率的な転写及び又は翻訳をもたらし得る(例えば、Zuker M.、Mfold web server for nucleic acid folding and hybridization prediction. Nucl. Acid Res. (2003);31(13):3406−3415を参照)。ステムループ構造の形成は、例えば5’末端の近くで、6ヌクレオチドより長い重複又は回文のストレッチを避けることによって最小化され得る。或いは、ループが約25ヌクレオチド(nt)よりも多くを含む場合には、より長いステムが許容される。
コドン用法:適切なコドン用法、即ち、非常にまれなtRNAではなく、より一般的且つ頻繁に使用されるtRNAをコードするコドンを使用することは、使用している発現系における効率的な翻訳を可能とするために重要である(一般には、2000年現在でのGenBank DNA配列データベース中の全タンパク質配列の各々のコドン頻度表を挙げたNakamuraら、Nuc.Acid.Res.(2000)28(1):292、“Codon usage tabulated from international DNA sequence databases: status for the year 2000”を参照されたい)。一般に、コドン用法は、ポリヌクレオチドの転写が開始される遺伝子の5’末端近くにおいてより重要であり、この領域では、レアコドンは極力避けるべきである。目的の生物における発現遺伝子のコーディングフレーム内において10%未満の回数で使用されるコドンの約80%以上を除去することが好ましい。
GC含量:これは一般に、宿主生物において高度に発現している遺伝子のGC含量にあわせるべきであり、例えば哺乳動物の系においては、GC含量は約60%未満であるべきである。
制限部位:制限部位は、所望される場合には熟考して置かれるべきである。同様に、ポリヌクレオチド内の重要な制限部位(即ち、全遺伝子又は他の遺伝子をクローニングするために使用されることが意図される制限部位)は、所望でなければ、揺らぎ位置を改変することによって取り除くべきである。
同一ヌクレオチドのストレッチ:同一ヌクレオチドのストレッチを、6未満の連続ヌクレオチドまで最小化又は除去する。
加えて、開始コドンにおいて、Kozakコンセンサス配列〔即ち、(a/g)cc(a/g)ccATGg〕を含めることにより、発現は更に最適化され得る。この目的のために有用なKozak配列は、当該分野において公知である(Mantyhら、PNAS 92:2662−2666(1995);Mantyhら、Prot.Exp.&Purif. 6,124(1995))。
終止コドンを生成するように1ステップで変異され得る特定のコドン(「好ましくないSHMコドン」)の使用を回避又は最少化する。「好ましくないコドン」には、UGG(Trp)、UGC(Cys)、UCA(Ser)、UCG(Ser)、CAA(Q)、GAA(Glu)及びCAG(Gln)が含まれる。
SHMへの感受性が改変されたポリヌクレオチド配列を設計するための、目的のポリヌクレオチドのコード配列内での配列特異的な制約を超えた更なる設計基準としては、以下の要素を挙げることができる:
プロモーターの選択;強力なプロモーターは、一般により高い割合で転写を誘導し、全体として、より弱いプロモーターと比べ、より高い変異誘発率を生じる。更には、tet−プロモーターなどの誘導性プロモーターは、発現、従ってSHMが、目的のポリヌクレオチドの転写及び変異誘発をオン又はオフに切り換えるように誘導的に制御されることを可能とする。Gossen及びBujard、Tight control of gene expression in mammalian cells by tetracycline−responsive promoters. Proc Natl Acad Sci U S A. 1992 Jun 15;89(12):5547−51;Gossenら、Transcriptional activation by tetracyclines in mammalian cells. Science. 1995 Jun 23;268(5218):1766−9。
転写開始点に対するコード配列の位置;一般に高レベルの変異誘発のためには、目的のポリヌクレオチドは、転写開始部位から、約50ヌクレオチドと2kbとの間に位置しているべきである。
ポリヌクレオチド配列をSHMに対して最適化する1つの簡便なアプローチは、目的の対応するアミノ酸配列をコードするための選択的なコドン用法によって使用され得る可能な選択的なヌクレオチド配列を(上記パラメーターに従って)比較及びスコア付けするコンピュータアルゴリズムを通じて、目的の該アミノ酸配列を解析することを伴う。コドン又はコドン群(タイル又はSHMモチーフ)を漸進的に好ましい配列で繰り返し置換することにより、所望の特性を有するポリヌクレオチド配列をコンピューター上で進化させることが可能である。具体的には、例えば、SHMに対して感受性又はSHMに対して耐性であるが、それでもなお、妥当な翻訳効率、安定性を示し、制限部位を最小化し、且つ対象としている特定の生物におけるレアコドンを回避している配列である。
このアプローチを使用して、出発アミノ酸又はポリヌクレオチド配列に基づいたファイルのライブラリーを作成できる。この解析及び最適化ストラテジーの1つの非限定的な例において、当該ライブラリーは、3コドンに対応する、9ヌクレオチドの群(「タイル」又は「SHMモチーフ」)の解析に基づいて作成できる。各タイルは、上記の属性に関してスコア付けされて、何十万もの9マー順列及びそれら各々のスコアを含む、タイルの初期ライブラリーデータセットを生成し得る。
ライブラリーファイルのセクションの代表的なサンプルを表5に示しており、これは、セリン(S)、アルギニン(R)及びロイシン(L)の3つのアミノ酸のみについて、選択的なコドン用法から生じるヌクレオチド配列における潜在的な多様性を示している。当業者であれば、全ての可能なアミノ酸の組み合わせに対して、公知のコドン用法パターンを使用して、ファイルの完全なセットを容易にまとめることが出来ることを容易に理解する。各配列の隣の括弧内にあるのは、配列識別番号である。
各ポリヌクレオチド配列は、以下の属性に基づいてランク付けされている;SHMホットモチーフ及びコールドモチーフの数、CpGモチーフの数、MaxNt(単一ストレッチ内の最大のヌクレオチド数)及び使用される宿主細胞におけるコドン利用頻度。表4の最後の列に含まれる用語「Log(πp(AA))」は、トリマー内にアミノ酸の各々を観察した個々の確率の積の対数として計算され、以下の式にて与えられる:
Log(πp(AA)=ln(p(コドンi−1|アミノ酸i−1)*p(コドンi|アミノ酸i)*p(コドンi+1|アミノ酸i+1)
各アミノ酸に対する個々の確率は、対象としている生物(この場合、哺乳動物細胞)における、公表されているコドン用法パターンに基づいた(一般にはNakamuraら、Nucleic Acid Res. (2000)28(1):292 Codon usage tabulated from international DNA sequence databases: status for the year 2000を参照)。
上記から容易にわかるように、配列内に存在するホットスポットモチーフ又はコールドスポットモチーフの数(密度)での評価で、コドン用法多様性のみで、体細胞超変異に対する感受性が幅広く異なるポリヌクレオチド配列を作成することが可能である。
この解析から、SHMに最適化され、CpGを最少化し、且つ効率的な翻訳のための最適なコドンを使用する、可能なコドン又はモチーフの組み合わせが容易に同定される。例えば、下記表6に挙げる配列は、最大のホットスポット数を含みコールドスポットを含まないため、上位ランクのホット配列を示している。各配列の隣の括弧内にあるのは、配列識別番号である。
これらのうち、哺乳動物細胞においてより高い使用頻度を有するコドンを含むため、配列AGTAGGCTG及びAGCAGGCTGが好ましい。
可能な全ての9マーヌクレオチドタイルを規定してスコア付けすることで、出発アミノ酸又はヌクレオチドテンプレートをスキャンして、タイルライブラリーからの置換によって改善され得るような遺伝子/タンパク質の位置を同定することが可能である。このプロセスは、perlプログラムSHMredesign.plのようなコンピュータアルゴリズムを用いることで簡便に完了され得る;そのコードを以下に示す:
上に示した可能な3アミノ酸タイルのファイルに加えて、プログラムは、以下の表7に概要したホットスポットモチーフ及びコールドスポットモチーフのファイル、並びにポリヌクレオチド配列に対してアミノ酸配列を翻訳するための遺伝コードリストもまた、必要とする:
ホットスポット又はコールドスポットの密度を最大化するのに最良のコドン用法を見出すために使用できる多くの可能なアプローチ及びコンピュータによる方法が存在すること、並びに、本発明が最適な配列を決定するいずれか1つの特定の方法に限定されることを意図しないことが、認識され得る。
出発アミノ酸テンプレートが与えられる場合には(例えば、元となるDNA配列が公知でない場合)、所与のアミノ酸配列及びその生物における公知のコドン用法の両方と一致するDNAヌクレオチド配列を先ず生成することによってアルゴリズムが始まる。出発ヌクレオチドテンプレートは、ホット又はコールド部位が所与の位置に組み込まれるべきかどうかをperlプログラムSHMredesign.plに指示する更なるラインを含み、これによって、SHMを、例えば抗体分子のCDRを標的化するための領域に向かわせるのと同時に、進化しているタンパク質の部分におけるSHMを抑制又は最小化することが可能となる。ポリヌクレオチド中の所与の9マーSHMモチーフは、その位置で同一の3アミノ酸をコードするであろう可能な他の全てのノナマーオリゴヌクレオチドと比較され得る。
配列又はその部分が、SHMに対して感受性である(「ホット」にされる)場合、アミノ酸配列と一致する全てのヌクレオチド配列の網羅的な検索がなされ、進化しているコンストラクトのヌクレオチド配列は、以下の条件を満たす場合、新たなヌクレオチド配列により置換される:(1)新たな9マーSHMモチーフが、既存の配列よりも多いホットスポットモチーフを含む、(2)新たな9マーが、進化している配列と同等かそれより少ない数のコールドスポットモチーフを含む、(3)新たな9マーが、進化している配列と同等かそれより少ない数のCpG配列モチーフを含む、(4)進化している配列が、その位置での公知の集合コドン用法(aggregate codon usage)と同等又は改善されたコドン用法スコアを有する、及び(5)配列が、4残基を超えるどの1ヌクレオチドストレッチも含まない。
配列又はその部分が、SHMに対して耐性とされている(「コールド」にされている)場合、アミノ酸配列と一致する全てのヌクレオチド配列の網羅的な検索がなされ、進化しているコンストラクトのヌクレオチド配列は、以下の条件を満たす場合、新たなヌクレオチド配列により置換される:(1)新たな9マーSHMモチーフが、既存の配列よりも多いコールドスポットを含む、(2)新たな9マーが、進化している配列と同等かそれより少ない数のホットスポットモチーフを含む、(3)新たな9マーが、進化している配列と同等かそれより少ない数のCpG配列モチーフを含む、(4)進化している配列が、その位置での公知の集合コドン用法と同等又は改善されたコドン用法スコアを有する、及び(5)新たな9マーヌクレオチド配列が、4残基を超えるどの1ヌクレオチドストレッチも含まない。
配列がSHM以外の他の因子のために最適化されている(「中立」にされている)場合、アミノ酸配列と一致する全てのヌクレオチド配列の網羅的な検索がなされ、進化しているコンストラクトのヌクレオチド配列は、以下の条件を満たす場合、新たなヌクレオチド配列により置換される:(1)新たな9マーが、進化している配列と同等かそれより少ない数のCpG配列モチーフを含む、(2)進化している配列が、その位置での公知の集合コドン用法と同等又は改善されたコドン用法スコアを有する、及び(3)新たな9マーのヌクレオチド配列が、4残基を超えるどの1ヌクレオチドストレッチも含まない。
任意の所与のポリヌクレオチド配列から開始し、本明細書中に記載する特性について最適化された少数の可能な配列に迅速に収束するポリヌクレオチド配列を生成するためにこのアプローチを使用することが可能である(実施例1)。
コンピュータ分析後、最終的な最適化ポリヌクレオチドは、標準的な方法論を使用して合成でき、正確な合成を確認するために配列決定され得る。一旦ポリヌクレオチドの配列が確認されると、このポリヌクレオチドはベクター中に挿入することができる。このベクターは、本明細書中に記載するように、宿主細胞中に導入され得、発現、活性、又はSHMに対する感受性の増加及び/若しくは減少に関して試験され得る。
V.SHM介在性の多様化のための合成ライブラリーの構築
合成ポリヌクレオチドライブラリーは、SHMの多様性生成特性及び標的化特性を利用することによって、新規表現型を有するタンパク質の指向された進化及び選択のために使用され得る。
抗体の場合、これは、新たな若しくは変更されたエピトープに結合し得る相補性決定領域(CDR)の標的化した多様化を意味する。4つの、そして実に2つのアミノ酸のアルファベット(セリン及びチロシン)を含む単純化したCDRライブラリーもまた記載されており、高い親和性及び選択性で抗原に結合できることが見出されている。例えば、Fellouse FA、Li B、Compaan DM、Peden AA、Hymowitz SG、Sidhu SS Molecular recognition by
a binary code.J Mol Biol.(2005)348:1153−62;及びFellouse FA、Wiesmann C、Sidhu SS Synthetic antibodies from a four−amino−acid code:a dominant role for tyrosine in antigen recognition.Proc Natl Acad Sci U S A.(2004)101:12467−72を参照のこと。
合成ポリヌクレオチドライブラリーはまた、酵素及び他のタンパク質クラスなどの非抗体性ポリペプチドの場合にも使用することができ、これは、目的の酵素又はタンパク質の生物学的活性(例えば、結合特異性、酵素機能、蛍光又は他の特性)を調節する、該酵素又はタンパク質の領域の標的化された多様化をいう。ライブラリーは通常、ライブラリーの改善された又は機能的なメンバーをライブラリーの非機能的メンバーから同定及び/又は分離する、以下に開示するような1以上の選択ストラテジーと組み合わされる。
静的ライブラリーは、実施形態によっては、そのサイズ及び範囲において限定されている。例えばファージディスプレイライブラリーは1012ほどの多くのメンバーをディスプレイでき、約1016のメンバーを潜在的に含むリボソームライブラリーが構築されている。細菌細胞及び哺乳動物細胞の表面上に提示されたライブラリーは、通常はこれほど複雑ではなく、約109よりも少ないメンバーである。さらに、強固なライブラリーの構築及び選択は通常、この理論的複雑性をさらに制限し、全ライブラリーのスクリーニングを、遅くてコストがかかり、ある場合には実用的でないものにする数倍の冗長性を、ライブラリーが含むことを必要とする。
これらのレベルの複雑性にもかかわらず、このような静的ライブラリーは、ほんの僅かな可能な配列空間のみを調査できる。一つの非限定的な例では、重鎖IgG配列は、CDR1、CDR2及びCDR3の相補性領域内に30より多いアミノ酸を含み得、この単一鎖に2030より多い可能な順列を与え、可能性のあるライブラリーの最大のものさえも小さくする。この制限に起因して、研究者らは、進化するタンパク質配列及びライブラリーのための方法論を調査してきた。本出願で扱うSHMは、親和性成熟を受ける抗体配列を進化させるための機構として、AID及びエラープローンポリメラーゼを使用する。所与の遺伝子のポリヌクレオチドライブラリー内の目的の各位置におけるSHM介在性の変異誘発及び選択を促進するであろう系は、機能的配列空間の選択的調査を可能とするであろう。このような検索ストラテジーにより、はるかに大きな配列多様性の調査が可能となり、それにより、この方法を、新たな機能性及び治療剤の迅速な開発にとって非常に魅力的なものにする。例えば、10アミノ酸ストレッチの各コーディング位置において、少数のホットスポットコドンのみから構成されるライブラリー(210の順列=1.6*104)(ここで、各位置は、SHM下において、生成される多様なアミノ酸群を進化させることが可能である)は、各10のライブラリー位置にて全20アミノ酸の同等の静的ライブラリーをコードするために必要な複雑性/多様性(2010の順列=1.6*1014)についての大きな単純化を表す。
1態様において、本発明は、SHM介在性の変異誘発を介した迅速な進化が可能な、合成動的ライブラリーを含む。このような合成ライブラリーは、以下の特性を有する:i)このライブラリーは合成が容易であり、限定数の別個の機能的配列に基づく;ii)このライブラリーは、選択的変異誘発のために標的化される1以上の合成可変領域を含み且つ高密度の好ましいSHMコドンを含む、合成ポリヌクレオチド配列を含む;iii)このライブラリーは、SHM介在性の変異誘発に対して耐性の1以上の合成フレームワーク領域を含み且つ低密度のSHMホットスポットを含む、合成ポリヌクレオチド配列を含む;iv)このライブラリーは、SHMを介して1ステップで終止コドンに変異し得る特定のコドン(「好ましくないコドン」)(UGG(Trp)、UGC(Cys)、UCA(Ser)、UCG(Ser)、CAA(Gln)、GAA(Glu)及びCAG(Gln)が含まれる)を含まない又は最小数で含む;v)AID介在性の変異誘発は、機能の更なる進化及び選択のために、コドンの出発セットから、各位置において、大きな潜在的多様性を生じる(「好ましいSHMホットスポットコドン」又は「好ましいSHMホットスポットモチーフ」)。
本明細書に記載される遺伝子配列のSHM最適化のための方法は、アミノ酸配列及び他の所望の特性を維持しつつも上述したような「よりホットな」又は「よりコールドな」配列を創出するために、配列を改変するために置換され得る9マータイル(SHMモチーフ)の前もってスコア付けされたライブラリーを使用する。タイルは、本出願では9ヌクレオチドであるように選択されているが、配列に基づく特性を正確に評価することが可能である限りは、任意の長さであり得ることに留意されるべきである。同様に、ホット及びコールドSHMモチーフは、置換のために9マータイルライブラリーをスコア付けするために使用され得、このアプローチと組み合わせて、改良されたコンストラクトを作成するために、例えば統計解析に由来したホット及びコールドのスコアに基づいて、任意の他の大きさ又は決められたSHMホット若しくはコールドスポットモチーフを使用することが可能である。変異誘発だけでなく、コンストラクトを通じた種々の位置での生成するアミノ酸の多様性(又はその欠失)の種をまく方法として、インフレームのSHMホットスポットモチーフの使用に基づいて、タイルはスコア付けされ得る。コンストラクトを通じた種々の位置でのAIDを介する変異誘発に対してポリヌクレオチドを安定化する方法として、インフレームのSHMコールドスポットモチーフの使用に基づいて、タイルはスコア付けされ得る。
ホットスポット又はコールドスポットの密度を最大化するのに最良のコドン用法を見出すために使用できる多くの可能なアプローチ及びコンピュータによる方法が存在すること、並びに本発明が最適な配列を決定するいずれか1つの特定の方法に限定されることを意図しないことが、認識され得る。
VI.ライブラリー設計
目的の特定のタンパク質に関する合成ライブラリーは、(入手可能であれば)任意の公知既存の、構造と活性との関係に関する情報、異なる種間の相同性、及びそのタンパク質のX線又はNMR構造情報、或いは問題のタンパク質ファミリーを考慮して、設計できる。
1態様において、最初のライブラリー設計は以下の工程を含み得る:
1.目的のタンパク質のアミノ酸配列を同定し、対応するポリヌクレオチド配列を決定するか、逆転写する。
2.目的のタンパク質、及び関連タンパク質、又は目的の相同タンパク質に関する任意の適切な構造情報を得る。
3.目的のタンパク質に対して配列比較を実施し、密接に関連した種由来の全ての他のタンパク質及び既知のアイソフォームに対して比較を行ない、特定の実施形態では、配列アラインメントが、種間での保存された及び可変性のアミノ酸配列を同定するために作成され得る。
この情報は、特定のアミノ酸又はタンパク質ドメインが、目的のタンパク質の機能的又は構造的な属性において重要である可能性があるかどうか、タンパク質ファミリーを横断したタンパク質の機能的アイソフォームにわたってそれが保存されているか又はバリアントであるかどうかを確立するために、使用できる。
この情報に基づいて、目的のタンパク質の機能的又は構造的属性に直接関与するように思われる、目的の特定の領域を確立することが可能である。例えば、これらのアミノ酸は、目的の特定の機能的又は構造的属性の内側、又はその5Å以内に存在し得る。具体的な例としては、抗体のCDR内、受容体の結合ポケット内、酵素の触媒クレフト内、タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン内、補因子の、アロステリック結合部位などの、アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
上に示した構造及び配列分析に基づいて、上述したパラメーターを用いて、1以上のポリヌクレオチドを、SHM介在性の変異誘発を増加又は減小するように設計することができる。更には、設計は、以下の概念を1以上取り込み得る:
i)高度に保存されたアミノ酸、又は重要な結合エネルギーに直接寄与することが知られている若しくはそう考えられているアミノ酸は、最初は保存され得、本明細書に記載するようにして、それらの近傍内のコドン用法を、コールドスポットモチーフを生成するように変化させるか、SHMの間の大抵の保存的なアミノ酸変化を促進するように変更することができる。
ii)タンパク質のコア構造フレームワークを維持するのに関与すると思われるアミノ酸ドメインは最初は保存され得、それらのコドン用法を、SHMの間に大抵の保存的なアミノ酸変化を促進するよう変化させることができる。特に重要なフレームワーク領域中のアミノ酸残基は、より高い割合のコールドスポットを使用するように、及びSHMに対して耐性であるか又はSHMの間にサイレント変異を生じるコドン又はモチーフを利用するように、変更できる。
iii)目的の領域中のアミノ酸は、以下に記載するように、高効率のSHMを可能にする合成可変領域を組み込むように変化させることができる。
iv)ポリペプチドの機能又は構造に関して、明確に特定された役割を果たすと同定されないアミノ酸は、効果的なSHMを可能にする(即ち、SHMホットスポットの頻度が最大化でき、SHMコールドスポットの頻度が最小化できる)ために改変され得る。
VII.合成可変領域の設計
AID及びエラープローンポリメラーゼのための全てのSHMホットスポットの、変異原性に対する感受性の序列は、セクションIIIに与えられている。本発明者らはさらに、サイレント変異対非サイレント変異の生成に重要なリーディングフレーム構成を同定した。本明細書中で、本発明者らは、変異が所望される各ライブラリー位置における多様なアミノ酸の生成を導く、高密度の好ましいホットスポットコドン又はモチーフの使用を含む、合成ライブラリーアプローチを記載する。このような高密度のホットスポットモチーフは、効率的な変異誘発を確実にするために、合成可変領域の境界において特に重要である。
A.WACベースのモチーフ
配列WAC(WAC、ここで、W=A又はTが同じ割合でコードされ、参照のリーディングフレームは、各コドンのゆらぎ即ち3番目の位置にCをおく)のみを含むポリヌクレオチド配列は、高密度のホットスポットを提供する。
この単純なパターンは、2つのアミノ酸(アスパラギン(Asn)及びチロシン(Tyr)をコードする2つのコドン(AAC及びTAC)だけを含む4つの可能な6マーヌクレオチドパターンのみを生じるであろう。各配列の隣の括弧内にあるのは、配列識別番号である。
3つの可能なリーディングフレームのいずれかで与えられたWACライブラリーがコードする全てのモチーフは、ホットスポットの集積を生じる。図3は、SHM介在性の機構をリクルートする能力について、これらのモチーフを、全ての他の可能な4096の6マーヌクレオチドの組合せと比較する。より長いアセンブリーは、「コールドスポット」なしの同じ高密度のSHM「ホットスポット」を生じる。縮重コドンのこのアセンブリー(WACW)は、Rogozinらが記載した可能な4マーのホットスポットのサブセット(WRCH(ここで、R=A又はG、H=A又はC又はT、及びW=T又はA))を生じることも、注目に値する。
図4に示されるように、好ましいSHMホットスポットコドンAAC及びTAC(これらは、この合成ライブラリーの基礎である)は、Ig重鎖抗体において観察される等価なSHM変異事象による判断で、かなりのアミノ酸の多様性を生じる、一次及び二次の変異事象のセットを生じ得る。これら2つのコドンから、塩基性アミノ酸(ヒスチジン、リジン、アルギニン)、酸性アミノ酸(アスパラギン酸)、親水性アミノ酸(セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン)、疎水性アミノ酸(アラニン及びフェニルアラニン)、及びグリシンが、SHM事象の結果として生じる。
B.WRCベースのモチーフ
第2の可能な合成高密度SHMモチーフ(ここでは、WRCモチーフと呼ぶ)は、2つのアミノ酸、セリン(Ser)及びチロシン(Tyr)をコードするAGC及びTACという、2つの可能なコドンを含むものである。この実施形態では、以下の4つの可能な6マーヌクレオチドが挙げられる:
各配列の隣の括弧内にあるのは、配列識別番号である。
SHM介在性の変異に対するこのモチーフのホットさ又はコールドさを記述する、全4096の6マーヌクレオチドのzスコアの分布を、図5に示す。WRC合成ライブラリー中の6マーの全ての順列についてのzスコアがこの分布上に重ねられており、点線は全ての可能なモチーフの上位5%を示す。
親和性成熟したIGV重鎖配列中で観察されるような、「好ましいSHMホットスポットコドン」AGC及びTACから開始する、アミノ酸多様性の生成を導く一連の変異事象を、図6に示す。アスパラギン及びチロシンをコードするコドンから開始する、4200の一次及び二次の変異事象は、機能的に多様なアミノ酸のセットを導く。
再び、このモチーフは、図5に示されるように、全ての他の6マーヌクレオチドモチーフと比較すると、非常に高密度の最適なSHMホットスポット及びホットコドンを生じる。WAC合成モチーフと同様、WRC合成モチーフは、SHM、AID及び1以上のエラープローンポリメラーゼの活性と組み合わせたとき、各位置において可能なアミノ酸多様性の広いスペクトルを生じる、好ましいSHMホットスポットコドンを与える(図6)。
従って、1態様において、このような合成可変領域は、目的の特定のドメイン又はサブドメインをコードし、高い程度の多様性が所望される、ポリヌクレオチド配列内の目的の特定の領域へと標的化され得る。
別の態様において、WACモチーフ又はWRCモチーフは、目的のタンパク質のオープンリーディングフレームの全体にわたって、体系的に挿入できる。例えば、100アミノ酸残基のタンパク質について、WACモチーフ又はWRCモチーフがそのタンパク質内の全ての可能な位置に一旦個別に導入された、300の別個のポリヌクレオチドが生成され得るであろう。次いで、これら100個のポリヌクレオチドの各々が、個別に又はライブラリー中にプールした後のいずれかにスクリーニングされ、各位置での最適なアミノ酸置換を同定できるであろう。次いで、各位置での改善された変異が組換えられて、各位置で同定された最良の個々のアミノ酸の全てを含む次世代のコンストラクトを生成できるであろう。
C.領域変異誘発
より大きい領域内の効果的な変異誘発を提供するために、以前に議論したように、コドン又はモチーフが、ホットスポットの密度を増加させるように、1以上の目的の領域の全体にわたって改変され得る。このアプローチは、SHMをどこに標的化すべきか、又はどの特定のアミノ酸が活性に必須であるかについて、先入観を必要としないという利点を有する。
効率的なSHMが必要とされる領域について、改善されたホットスポット密度を有するコドン又はモチーフを挿入するために、コドン用法を変化させること及び保存的アミノ酸置換を行なうことの両方によって合成可変領域を生成することができる。適切なアミノ酸置換は、安定な遺伝子生成及びドメイン構造に関する同じ全般的な基準に注意しながら、以下の表10に列挙するものから選択できる。
いくつかの実施形態において、アミノ酸Trp、Pro及びGlyは、それらの位置が機能的又は構造的役割を示唆する場合、保存される。これらのアミノ酸以外は、最適化すべきアミノ酸が列挙されていない場合、下に列挙するのと同じサブグループからアミノ酸が選択される。
このような合成可変領域では、以前に記載されたようにして設計できる、主にSHM耐性配列を含むフレームワーク領域が散在し得る。
利用可能な情報の量に依存して、WACモチーフ又はWRCモチーフの使用に基づく非常に意欲的な標的化アプローチから、きわめて選択的なアミノ酸置換を使用するより保守的なストラテジーまで、そしてコドン用法のみが変化する慎重なストラテジーにまで及ぶ、多数の異なるライブラリー設計ストラテジーを使用することができる。本発明の利点は、各アプローチが限られた数の独自のヌクレオチド配列のみの生成を生じることであり;したがって、これらのストラテジーは全て、重大なさらなる負担なしに、平行してSHM介在性の多様性に供することができる。
VIII.SHM活性をモニタリングするための方法
様々なベクター及び細胞系列を使用して、抗体及び非抗体タンパク質でのSHMをモニタリングするための当該分野で理解された方法が公知である(Ruckerlら(Mol.Immunol.43(2006);1645−1652)、Baclら(J.Immunol.、2001、166:5051−5057)、Cumbersら(Nat Biotechnol.2002;20(11):1129−1134)、Wangら、(Proc Natl Acad Sci USA.2004;101(19):7352−7356))。更に、シチジン脱アミノ化を直接測定するための様々な方法が、当該分野にて公知である;例えば、Genetic and In vitro assays
of DNA deamination、Cokerら、Meth.Enzymol.408:156−170(2006)参照。
このような方法は、進行性のSHMの率を評価するための迅速な手段を提供する。方法としては、例えば、AID活性の存在下で変異され得るコーディングフレーム内のストップコドンを含むように改変されたレポーター遺伝子又は選択マーカー遺伝子の使用が挙げられる。
AIDは集団に作用するため、(例えば、選択マーカーの)機能を保持若しくは改良する変異、又は機能を減少若しくは除去する変異を生じ得る。これら2つの比率のバランスによって、機能を保持する初期及び稀な変異事象と、それに引き続くこれらのタンパク質の機能を破壊する2次及び3次(terniary)変異事象が生じる。これらの競合の正味の効果は、集団における機能獲得事象の観察で評価される。GFPをサイレンシングするために必要とされる不活性型変異の数に関する3つの異なる仮定を考慮すれば、AIDの酵素活性の比率に依存した時間の関数として、3つの非常に異なる復帰事象のプロファイルを観察することが予期されるであろう。
更に、SHM活性に曝露されたポリヌクレオチドは、そのヌクレオチド配列は改変されているのかどうか、及びどの程度改変されているのかを決定するために、配列決定され得る。様々な時点においてSHMを決定するために、ポリヌクレオチドは培養物からレスキューされ得る。遺伝子の単離及び配列決定方法は、当該分野において周知であり、例えば逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)などの、標準的な技術の使用が挙げられる。簡単に言うと、ポリヌクレオチドは逆転写されて、適切なプライマーを使用するPCRに供され得る。クローンは、Applied Biosystemsなどの会社の自動化DNAシーケンサー(ABI−377又はABI3730 DNA sequencer)を使用して、配列決定され得る。配列は、ヌクレオチド改変頻度について解析され得る。ポリヌクレオチドは、出発物質のポリヌクレオチドと比較され、配列改変について解析され得る。
IX.体細胞超変異(SHM)系
A.合成ポリヌクレオチド配列
SHMの使用のための実用的な系の開発には、変異が、目的の特定の遺伝子(ポリヌクレオチド)又は領域に向けられ(「ホット」にされる)、且つ、系全体の機能性及び/又は安定性を維持するために、細胞又はエピソーム内において機能的に必要とされる構造遺伝子又はマーカー遺伝子には向けられない(「コールド」にされる)ことが要求される。特定の実施形態において、合成遺伝子は、B細胞中にて発現された際に、天然にSHMを起こす遺伝子(即ち抗体遺伝子)である。他の実施形態において、合成遺伝子は、B細胞中にて発現された際に、天然にはSHMを起こさない遺伝子(即ち非抗体遺伝子)である。
本発明は、SHM感受性及びSHM耐性のポリヌクレオチド配列を設計し、且つ細胞環境内又は無細胞環境内でそれらを作製又は生成するための系の開発に基づく。本発明は更に、構造部分又はポリペプチド若しくは構造タンパク質、転写調節領域及び選択マーカーに影響せずに、好適な時間にわたって、SHMの率の増加及び/又は減少を再現性良く維持するために安定である、SHM系の開発に基づく。当該系は、構造タンパク質、転写調節領域及び選択マーカーにおける非特異的な変異誘発を十分に防ぎつつ、目的のポリヌクレオチドにおける標的化されたSHMを高レベルで提供する変異誘発系を、安定して維持することを可能とする。
部分的には、本発明は、高レベルで維持されるSHMを提供し得る、より安定なバージョンのシチジンデアミナーゼの創出に基づく。哺乳動物細胞における野生型AIDの高レベルの過剰発現は、酵素そのものが、それ自身のDNA配列のSHMによる不活性化変異を蓄積し得るか、又は翻訳後修飾によってサイレンシングされ得るかのいずれかであり得ることから、SHM活性の安定な増加を必ずしも導かない(Ronaiら、PNAS USA 2005;102(33):11829−34;Iglesias−Usselら、J.Immunol.Methods.2006、316:59−66)。それゆえ、本SHM系は、SHMに耐性で(コールド)、自己変異率の減少を示す、合成AID遺伝子(配列番号22)を含む。
従って、1つの態様において、本発明は、ホットスポット数が減少するように、及び/又はコールドスポット数が増加するように、ポリヌクレオチドレベルで改変された合成AID遺伝子を含む。この合成遺伝子の1つの実施形態において、遺伝子はまた、改変されたCpGメチル化部位含量を有する。別の態様において、合成遺伝子は、該合成遺伝子が発現されるべき又は変異されるべき生物に特異的なSHMコドン用法のために最適化されている。
さらに、種々の他の成分ヌクレオチド配列(例えば、実施形態によっては全般的な系の一体性を維持するために超変異することが好まれないであろう、コアの系を形成し得るコード配列及び遺伝エレメント)が存在する。これらの成分ヌクレオチド配列には以下が含まれるが限定されない:i)選択マーカー(例えば、ネオマイシン、ブラストサイジン、アンピシリンなど);ii)レポーター遺伝子(例えば、蛍光タンパク質、エピトープタグ、レポーター酵素);iii)遺伝子調節シグナル(例えば、プロモーター、誘導可能な系、エンハンサー配列、IRES配列、転写又は翻訳ターミネーター、kozak配列、スプライス部位、複製起点、リプレッサー);iv)高レベルの増強されたSHM又はその調節、又は測定に使用される酵素又は補助因子(例えば、AID、polイータ、転写因子、及びMSH2);v)シグナル伝達成分(キナーゼ、受容体、転写因子)、及びvi)タンパク質のドメイン又はサブドメイン(例えば、核局在化シグナル、膜貫通ドメイン、触媒ドメイン、タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、並びに他のタンパク質ファミリーで保存されたモチーフ、ドメイン及びサブドメイン)。
従って、本発明の別の態様において、本明細書に記載のSHM系は、本明細書に記載の方法を使用して、ホットスポット数が減小するように及び/又はコールドスポット数が増加するように、全体的又は部分的に、ポリヌクレオチドレベルにおいて改変された任意の合成遺伝子を含み得る。1つの実施形態において、合成遺伝子はまた、改変されたCpGメチル化部位の含量も有する。
少なくとも1つの合成遺伝子を含む発現ベクターが本明細書で提供される。1つの態様では、該発現ベクターは、組込み発現ベクターである。発現ベクターが、組込み発現ベクターである場合、発現ベクターは、組換えを指示する1つ以上の配列を更に含み得る。別の態様では、発現ベクターは、エピソーム発現ベクターである。また別の態様では、発現ベクターは、ウイルス発現ベクターである。
別の態様において、合成遺伝子は、該合成遺伝子が発現及び/又は変異されるべき生物に特異的なSHMコドン用法のために最適化されている。
タンパク質又はその部分をコードするSHM耐性の合成遺伝子であって、該合成遺伝子では、該タンパク質又はその部分をコードする未改変のポリヌクレオチド配列における1つ以上の第1のSHMモチーフが、SHMの確率がより低い1つ以上の第2のSHMモチーフによって置換されており、該SHM耐性の合成遺伝子は、該未改変のポリヌクレオチド配列と比較して、AID介在性の変異誘発率がより低い、前記合成遺伝子が本明細書で提供される。
本発明はまた、SHM耐性の合成遺伝子が、ある改変が遺伝子に為され、次いで後の回の改変が該遺伝子に為されるようにして、段階的又は連続的な様式で作り出され得ることも意図する。そのような連続的又は段階的な改変は、本発明で意図されており、また、それは、当該プロセスを実行する一つの方法であり、且つ本願で主張される遺伝子を作製する一つの方法である。
1つの実施形態では、SHM耐性の合成遺伝子は、未改変の遺伝子に対して、約95%、約90%アミノ、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、又は約50%と約100%の間の任意のパーセンテージの同一性を有するタンパク質又はその部分をコードする。
1つの実施形態では、SHM耐性の合成遺伝子は、以下に限定されないが、1.05倍、1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍若しくはそれより低い、又はそれらの間の任意の範囲を含む、より低いAID介在性の変異誘発率を示す。
1つの実施形態では、SHM耐性の合成遺伝子は、未改変の遺伝子が示すものの約99%未満、約95%未満、約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、又は約50%未満のレベルの、AID介在性の変異誘発率を示す。
他の実施形態において、目的のポリヌクレオチドを標的とする高いSHM介在性の変異誘発率は、該ポリヌクレオチドの迅速な指向された進化を指示するために望ましい。
タンパク質又はその部分をコードするSHM感受性の合成遺伝子であって、該合成遺伝子では、該タンパク質又はその部分をコードする未改変のポリヌクレオチド配列における1つ以上の第1のSHMモチーフが、SHMの確率がより高い1つ以上の第2のSHMモチーフによって置換されており、該SHM感受性の合成遺伝子は、該未改変のポリヌクレオチド配列と比較して、AID介在性の変異誘発率がより高い、前記合成遺伝子が本明細書で提供される。
本発明はまた、SHM感受性の合成遺伝子が、ある改変が遺伝子に為され、次いで後の回の改変が該遺伝子に為されるようにして、段階的(ステップワイズ)又は連続的(シーケンシャル)な様式で作り出され得ることも意図する。そのような連続的又は段階的な改変は、本発明で意図されており、また、それは、当該プロセスを実行する一つの方法であり、且つ本願で主張される遺伝子を作製する一つの方法である。
1つの実施形態では、SHM感受性の合成遺伝子は、未改変の遺伝子に対して、約95%、約90%アミノ、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、又は約50%と約100%の間の任意のパーセンテージの同一性を有するタンパク質又はその部分をコードする。
1つの実施形態では、SHM感受性の合成遺伝子は、以下に限定されないが、1.05倍、1.1倍、1.25倍、1.5倍、2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍若しくはそれより大きい、又はそれらの間の任意の範囲を含む、より高いAID介在性の変異誘発率を示す。
1つの実施形態では、SHM感受性の合成遺伝子は、未改変の遺伝子が示すものの少なくとも約101%、少なくとも約105%、少なくとも約110%、少なくとも約115%、少なくとも約120%、少なくとも約125%、少なくとも約130%、少なくとも約135%、少なくとも約1140%、少なくとも約145%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、少なくとも約5000%、又はそれより高いレベルの、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)介在性の変異誘発率を示す。
タンパク質又はその部分をコードする、選択的に標的化された、SHMに最適化された合成遺伝子であって、該合成遺伝子では、該タンパク質又はその部分をコードする未改変のポリヌクレオチド配列における1つ以上の第1のSHMモチーフが、SHMの確率がより高い1つ以上の第2のSHMモチーフによって置換されており;且つ該タンパク質又はその部分をコードする該未改変のポリヌクレオチド配列における1つ以上の第3のSHMモチーフが、SHMの確率がより低い1つ以上の第4のSHMモチーフによって置換されており;該選択的に標的化された、SHMに最適化された合成遺伝子は、標的化されたAID介在性の変異誘発を示す、前記合成遺伝子が本明細書で提供される。そのような実施形態では、該選択的に標的化された、SHMに最適化された合成遺伝子は、より高いAID介在性の変異誘発率を示すある部分と、より低いAID介在性の変異誘発率を示すある部分とを有する。
本発明はまた、選択的に標的化された、SHMに最適化された合成遺伝子が、ある改変が遺伝子に為され、次いで後の回の改変が該遺伝子に為されるようにして、段階的又は連続的な様式で作り出され得ることも意図する。そのような連続的又は段階的な改変は、本発明で意図されており、また、それは、当該プロセスを実行する一つの方法であり、且つ本願で主張される遺伝子を作製する一つの方法である。
更に本明細書では、変異誘発及び発現系に関与する成分の非特異的な変異誘発を回避しつつ、目的の特定のポリヌクレオチド(例えば、合成遺伝子又は合成遺伝子内の領域)を標的化し得る高レベルの体細胞超変異を可能とする系が提供される。当該系において変異され得るポリヌクレオチドには、発現され得且つAID介在性の変異誘発を介して改変され得る任意のポリヌクレオチド配列が含まれる。そのようなポリヌクレオチドとしては、例えば、特異的結合メンバー、酵素、受容体、神経伝達物質、ホルモン、サイトカイン、ケモカイン、構造タンパク質、補因子、毒素、又は他の任意の目的のポリペプチド若しくはタンパク質或いはそれらの部分を含む、ポリペプチドをコードするものが挙げられる。1つの態様において、そのようなポリヌクレオチドは、可変重鎖若しくは軽鎖又はそれらの部分などの、免疫グロブリンポリペプチド(抗体)をコードする。
本明細書では、少なくとも1つの成分(例えば、ポリヌクレオチド、遺伝子、核酸配列、コード配列、遺伝エレメント、それらの部分など)を含むSHM系(例えば、SHMのための1以上のベクター(例、発現ベクター))が提供される。該成分としては、以下に限定されないが、該成分又はその部分が被るSHMの率に正又は負のいずれかの影響を与えるように野生型から改変されたポリヌクレオチドが挙げられる。
該SHM系の1つの態様において、発現系の少なくとも1つの成分は、該成分が被るSHMの率に負の影響を与えるように、全体的又は部分的に改変されたポリヌクレオチドを含む。この系の1つの態様において、該成分は、以下に限定されないが、AID、又はAIDホモログ、Polイータ、選択マーカー、蛍光タンパク質、EBNA1、又はリプレッサー(若しくはトランスアクチベーター)タンパク質などのタンパク質をコードするポリヌクレオチドである。
該SHM系の1つの態様において、発現系の少なくとも1つの成分は、該成分が被るSHMの率に正の影響を与えるように、全体的又は部分的に野生型から改変されたポリヌクレオチドを含むか;或いは、例えば、抗体遺伝子の超可変領域、転写因子のDNA結合ドメイン、酵素の活性部位、受容体の結合ドメイン、又は目的のサブドメイン若しくはドメインなどの、高いSHMの率を有するポリヌクレオチドを含む。
別の態様において、該SHM系は以下を含む;i)少なくとも1つのポリヌクレオチド(該ポリヌクレオチドが被るSHMの率に正の影響を与えるように、全体的又は部分的に野生型ポリヌクレオチドから改変されたポリヌクレオチドか、或いは、天然に高頻度のホットスポットを有するポリヌクレオチドであり得る);ii)且つ、発現系が、SHMの率に対して負の影響を与えるように、全体的又は部分的に野生型から改変されたポリヌクレオチドも含む。
一つの実施形態において、タンパク質又はその部分をコードするSHM感受性の遺伝子であって、該遺伝子では、該タンパク質又はその部分をコードする未改変のポリヌクレオチド配列における1つ以上の第1のSHMモチーフが、SHMの確率がより高い1つ以上の第2のSHMモチーフによって置換されており、該合成遺伝子は、該未改変のポリヌクレオチド配列よりも高いホットスポットモチーフの密度を有する、前記遺伝子が本明細書で提供される。
別の実施形態において、タンパク質又はその部分をコードするSHM耐性の合成遺伝子であって、該合成遺伝子では、該タンパク質又はその部分をコードする未改変のポリヌクレオチド配列における1つ以上の第1のSHMモチーフが、SHMの確率がより低い1つ以上の第2のSHMモチーフによって置換されており、該合成遺伝子は、該未改変のポリヌクレオチド配列よりも高いコールドスポットの密度を有する、前記合成遺伝子が本明細書で提供される。
さらに別の実施形態において、タンパク質又はその部分をコードする、選択的に標的化された、SHMに最適化された合成遺伝子であって、該合成遺伝子では、該タンパク質又はその部分をコードする未改変のポリヌクレオチド配列における1つ以上の第1のSHMモチーフが、SHMの確率がより高い1つ以上の第2のSHMモチーフによって置換されており;該合成遺伝子は、該未改変のポリヌクレオチド配列よりも高いホットスポットモチーフの密度を有し;且つ、該タンパク質又はその部分をコードする該未改変のポリヌクレオチド配列における1つ以上の第3のSHMモチーフが、SHMの確率がより低い1つ以上の第4のSHMモチーフによって置換されており、該合成遺伝子は、該未改変のポリヌクレオチド配列よりも高いコールドスポットの密度を有し;該選択的に標的化された、SHMに最適化された合成遺伝子は、標的化されたAID介在性の変異誘発を示す、前記合成遺伝子が本明細書で提供される。
さらに別の非限定的な態様において、該合成遺伝子は、好ましいSHMホットスポットモチーフを導入する1以上のアミノ酸変異を含む。
即ち、1つの態様では、本発明は、SHM耐性(「コールド」)又はSHM感受性(「ホット」)遺伝子の作成方法であって、該遺伝子では、合成タンパク質の翻訳効率(即ち、哺乳動物細胞において首尾よく発現される能力)を維持しつつ、ホットスポット又はコールドスポット密度が、未改変の密度から改変されている、前記方法を含む。
1つの態様において、本発明の合成SHM耐性遺伝子は、100ヌクレオチド当たり7ホットスポット未満である、平均ホットスポット密度を有する。別の態様において、該合成SHM耐性遺伝子は、100ヌクレオチド当たり16コールドスポットを上回る、平均コールドスポット密度を有する。
好ましい態様において、本発明の合成SHM耐性遺伝子は、100ヌクレオチド当たり6ホットスポット未満である、平均ホットスポット密度を有する。別の態様において、該合成SHM耐性遺伝子は、100ヌクレオチド当たり18コールドスポットを上回る、平均コールドスポット密度を有する。別の態様において、該合成SHM耐性遺伝子は、100ヌクレオチド当たり20コールドスポットを上回る、平均コールドスポット密度を有する。別の態様において、該合成SHM耐性遺伝子は、100ヌクレオチド当たり22コールドスポットを上回る、平均コールドスポット密度を有する。
1つの態様において、本発明の合成SHM感受性遺伝子は、100ヌクレオチド当たり13コールドスポット未満である、平均コールドスポット密度を有する。別の態様において、該合成SHM感受性遺伝子は、100ヌクレオチド当たり10ホットスポットを上回る、平均ホットスポット密度を有する。
好ましい態様において、本発明の合成SHM感受性遺伝子は、100ヌクレオチド当たり11コールドスポット未満である、平均コールドスポット密度を有する。別の態様において、該合成SHM感受性遺伝子は、100ヌクレオチド当たり13ホットスポットを上回る、平均ホットスポット密度を有する。別の態様において、該合成SHM感受性遺伝子は、100ヌクレオチド当たり14ホットスポットを上回る、平均ホットスポット密度を有する。別の態様において、該合成SHM感受性遺伝子は、100ヌクレオチド当たり16ホットスポットを上回る、平均ホットスポット密度を有する。
別の態様において、合成SHM感受性ポリヌクレオチドは、少なくとも12の連続的なヌクレオチドにわたって、100ヌクレオチド当たり20ホットスポットを上回る、平均ホットスポット密度を有する。別の態様において、合成SHM感受性ポリヌクレオチドは、少なくとも15の連続的なヌクレオチドにわたって、100ヌクレオチド当たり20ホットスポットを上回る、平均ホットスポット密度を有する。別の態様において、合成SHM感受性ポリヌクレオチドは、少なくとも18の連続的なヌクレオチドにわたって、100ヌクレオチド当たり20ホットスポットを上回る、平均ホットスポット密度を有する。別の態様において、合成SHM感受性ポリヌクレオチドは、少なくとも30の連続的なヌクレオチドにわたって、100ヌクレオチド当たり20ホットスポットを上回る、平均ホットスポット密度を有する。
1つの非限定的な例において、合成遺伝子は、オープンリーディングフレーム内に挿入されたストップモチーフを含む遺伝子を含まない。
本明細書に記載の各SHM系において、系はさらに、以下の更なるエレメントの1以上を含み得る:i)AID又はAIDホモログの発現を調節するための誘導性の系、ii)1以上のエンハンサー、iii)1以上のE−ボックス、iv)SHMに関する1以上の補助因子、又は、v)安定なエピソーム発現のための1以上の因子(例えば、EBNA1若しくはEBP2)。
SHM系の別の態様において、当該系は、2つのポリヌクレオチドを含み、両ポリヌクレオチドは、プロモーターの近位に位置する。当該系の1態様において、このプロモーターは、二方向性CMVプロモーターなどの二方向性プロモーターであり得る。
別の態様において、ポリヌクレオチドは、抗体鎖をコードし得る。例えば、重鎖又は軽鎖は、発現のためのベクター中に挿入され得る。別の態様において、ポリヌクレオチドは、任意のタンパク質、即ち、野生型ポリペプチド、非野生型ポリペプチド、合成ポリペプチド、組換えポリペプチド、又はそれらの任意の部分(非限定的には例えば、抗体重鎖又はそのフラグメント、抗体軽鎖又はそのフラグメント、酵素、受容体、構造タンパク質、補因子、合成ペプチド、細胞内抗体、又は毒素)をコードし得る。
所望の性質を有する遺伝子産物を調製するための方法であって、該方法は:a)体細胞超変異の増加を示す遺伝子産物をコードする合成遺伝子を調製することを含み;b)細胞集団において該合成遺伝子を発現させることを含み;該細胞集団は、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)を発現するか、又は誘導因子の添加によりAIDを発現するように誘導され得;且つ、c)該所望の性質を有する変異した遺伝子産物を発現する、該細胞集団内の細胞(単数又は複数)を選択することを含む、前記方法が本明細書で提供される。1つの態様では、該方法は、該細胞集団におけるAIDの発現を活性化又は誘導することを更に含んでも良い。別の態様では、該方法は、(c)において同定された細胞(単数又は複数)から1つ以上のクローン細胞集団を確立することを更に含んでも良い。該方法のまた別の態様では、少なくとも1つの合成遺伝子は、本明細書の他の箇所に記載されるいずれか1つの発現ベクターなどの発現ベクター内に位置する。該方法の1つの態様では、該細胞は、本明細書の他の箇所に記載される細胞である。
所望の性質を有する遺伝子産物を調製するための方法であって、該方法は:a)細胞集団において該遺伝子産物を発現させることを含み;該細胞集団は、体細胞超変異の減少を示す少なくとも1つの合成遺伝子を含み;且つ該細胞集団は、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)を発現するか、又は誘導因子の添加によりAIDを発現するように誘導され得る、前記方法が本明細書で提供される。本明細書では、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにおけるホットスポット及び/又はコールドスポットを改変することにより、SHM感受性又はSHM耐性のポリヌクレオチドを生成する方法が提供される。SHM感受性又はSHM耐性のポリペプチドを生成する方法は、以下を含む:a)ポリペプチド又はその部分を同定すること;b)同定されたポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列を生成すること、c)該ポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸を実質的に変えることなく、該ポリヌクレオチド配列内のホットスポット及び/又はコールドスポットの頻度を増加又は減小させるように該ポリヌクレオチド配列におけるコドン用法を変更するか、又はリーディングフレームに対する該ポリヌクレオチド配列内のホットスポット及び/又はコールドスポットの位置を変更すること;d)該頻度が、ポリヌクレオチド配列を選択すること、及び、b)該所望の性質を有する変異した遺伝子産物(例えば、1つ以上の変異を有する変異した合成遺伝子によってコードされるポリペプチド)を発現する、該細胞集団内の細胞(単数又は複数)を選択することを含む、前記方法が本明細書で提供される。1つの態様では、該方法は、該細胞集団におけるAIDの発現を活性化又は誘導することを更に含んでも良い。別の態様では、該方法は、(b)において同定された細胞(単数又は複数)から1つ以上のクローン細胞集団を確立することを更に含んでも良い。該方法のまた別の態様では、少なくとも1つの合成遺伝子は、本明細書の他の箇所に記載されるいずれか1つの発現ベクターなどの発現ベクター内に位置する。該方法の1つの態様では、該細胞は、本明細書の他の箇所に記載される細胞である。
1つの態様において、合成遺伝子によってコードされるタンパク質は、抗体又はその抗原結合フラグメント、選択マーカー、蛍光タンパク質、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、ホルモン、酵素、受容体、構造タンパク質、毒素、補因子及び転写因子から選択される。
本明細書では、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにおけるホットスポット及び/又はコールドスポットを改変することによる、SHM感受性又はSHM耐性のポリヌクレオチドの生成方法が提供される。SHM感受性又はSHM耐性のポリペプチドの生成方法は、以下を含む:a)ポリペプチド又はその部分を同定すること;b)ポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸を実質的に変える同定されたものをコードするポリヌクレオチド配列を生成すること;d)ホットスポット及び/又はコールドスポットの頻度が所望の程度まで改変されたポリヌクレオチド配列を選択すること。1つの態様において、ホットスポットの頻度は、約0%から約25%改変され得、別の態様において、約25%から約50%改変され得る。なお別の態様において、全ての可能なホットスポット又はコールドスポットの、約50%から約75%、さらに別の態様において、約75%から約100%である。
所望の性質を有する遺伝子産物を調製するための方法であって、該方法は:(a)細胞集団において合成遺伝子を発現させることを含み;該細胞集団は、AIDを発現するか、又は誘導因子の添加によってAIDを発現するように誘導され得;且つ(b)該所望の性質を有する改変された遺伝子産物を発現する該細胞集団内の細胞(単数又は複数)を選択することを含む、前記方法が本明細書では提供される。
本発明の別の態様において、ポリヌクレオチド配列はまた、好ましくないコドン又はモチーフを、より好ましいコドン又はモチーフに置換することによっても改変され得る。
本発明の別の態様において、ポリヌクレオチド配列はまた、ホットスポットの頻度及び又は位置をさらに改変するように、ヌクレオチドを置換又は交換することによって改変され得る。1つの態様において、これらのヌクレオチド置換は、保存的なアミノ酸の交換であり得るか、又はタンパク質ファミリーにわたって変化する領域に位置し得る。
配列をSHMに対して感受性又は耐性にすることによって、SHMのために配列を最適化する方法であって、該方法は;a)ポリヌクレオチド配列を同定するステップを含み;b)該ポリヌクレオチド配列内のホットスポット又はコールドスポットの頻度及び/又は位置を変更するように、並びに、CpGジヌクレオチドの頻度、予測されるステップループ(step−loop)構造の形成;制限部位の頻度、哺乳動物のコドン用法;全体のGC含量を約60%未満に制限すること;6を上回る(>)同一のヌクレオチドストレッチを最小化又は除去すること、からなる最適化因子群から選択される少なくとも2つのパラメーターを変更するように、該ポリヌクレオチド配列におけるコドン用法を変更するステップを含み;該SHM感受性又はSHM耐性の配列は、改変されたSHMへの感受性を示し、且つ未改変のポリヌクレオチド配列と同等のレベルで、細胞内でタンパク質に翻訳される、前記方法が本明細書で提供される。
本方法の1つの態様において、工程b)は、最適化因子群の少なくとも3つのパラメーターの変更を伴う。
本方法の1つの態様において、工程b)は、最適化因子群の少なくとも4つのパラメーターの変更を伴う。
本方法の1つの態様において、工程b)は、最適化因子群の少なくとも5つのパラメーターの変更を伴う。
本方法の1つの態様において、工程b)は、最適化因子群の少なくとも6つのパラメーターの変更を伴う。
1つの態様において、工程b)は、perlプログラムSHMredesign.pl(www.PERL.COM/DOWNLOAD.CSP)を使用することによって行われる。
これらの方法は、任意の配列のSHM感受性又はSHM耐性ポリヌクレオチドを生成するために使用され得る。いずれの場合においても、ポリヌクレオチドは、少なくとも18ヌクレオチドのオープンリーディングフレームを含み得、目的のポリヌクレオチドがRNAへと効率的に転写されることを可能とするように、調節エレメントに作動可能に連結され得る。ポリヌクレオチドは、当該分野で理解される標準的な技術を使用して、ベクター中にクローニングすることができる。1つの態様において、ベクターは、本明細書に記載のベクターである。
このような方法を使用して全体的又は部分的に改変されるポリヌクレオチドの非限定的な例としては、野生型ポリヌクレオチド、合成ポリヌクレオチド、組換えポリヌクレオチド、又はそれらの任意の部分が挙げられる。ポリヌクレオチドは、タンパク質又はポリペプチド配列をコードし得る。
本明細書では、本明細書に記載の方法を使用して生成された種々の遺伝子をコードするSHM耐性ポリヌクレオチド配列が提供される。1つの非限定的な実施形態において、遺伝子は、SHMに関与する酵素であり、これには、以下に限定されないが、本明細書に記載の方法によって作られた、活性化誘導シチジンアミナーゼ(AID)、Polイータ、及びUDGが含まれる。
1つの実施形態において、SHMに関与する酵素をコードするSHM耐性ポリヌクレオチドは、脊椎動物由来である。1つの態様において、遺伝子は哺乳動物由来であり、1つの態様において、ラット、イヌ、ヒト、マウス、ウシ、及び霊長類からなる群から選択される哺乳動物由来である。
1つの実施形態において、SHM耐性の酵素は、配列番号22と少なくとも90%同一な核酸配列を有するAIDである。
1つの実施形態において、SHM耐性遺伝子は、配列番号23と少なくとも90%同一な核酸配列を有するPolイータである。
1つの実施形態において、SHM耐性遺伝子は、配列番号24と少なくとも90%同一な核酸配列を有するUDGである。
1つの実施形態において、コールドAIDは、ミューテーター活性の増加を示す変異型酵素である。変異型AIDは、強力な核移行シグナル(NLS)、核外移行シグナルの活性を改変する変異、又は両方を含み得る。
1つの態様において、変異型AIDは、改変されるAIDのミューテーター活性を増強する、AIDの180から198の位置(配列番号311)における独立して選択される1以上の変異によって作られた、改変型の核外移行配列を含む。
変異型AIDの1つの実施形態において、改変型の核外移行配列は、ロイシン181(L181)、ロイシン183(L183)、ロイシン189(L189)、ロイシン196(L196)及び/又はロイシン198(L198)のアミノ酸残基位置における1以上の変異を含む。1つの非限定的な例において、核外移行配列内の各ロイシン残基は、アラニンに変異され得る。
1つの実施形態において、ロイシン181、183、189、196及び198の各々は、グリシン、アラニン、イソロイシン、バリン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸又はリジンにより独立して置換され得る。別の実施形態において、各ロイシンは、グリシン、アラニン又はセリンにより独立して置換され得る。1つの実施形態において、変異タンパク質は、L181A、L183A、L189A、L196A及びL198Aから選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ又は少なくとも4つの変異を含む。
変異型AIDの1つの実施形態において、改変型の核外移行配列は、アスパラギン酸187(D187)、アスパラギン酸188(D188)、アスパラギン酸191(D191)及び/又はスレオニン195(T195)の1つ以上のアミノ酸残基位置における変異を含む。1つの非限定的な例において、改変型の核外移行配列は、D187Eの変異を含む。1つの非限定的な例において、核外移行配列内の各アスパラギン酸残基は、グルタミン酸に変異され得る。別の非限定的な例において、スレオニン195は、イソロイシンに変異され得る。
1つの実施形態において、アスパラギン酸187、188及び191の各々は、セリン、スレオニン、グルタミン酸、アスパラギン又はグルタミンにより独立して置換され得る。別の実施形態において、各アスパラギン酸は、グルタミン酸又はアスパラギンにより独立して置換され得る。1つの態様において、変異タンパク質は、D187E、D188E、D191E、T195I及びL198Aから選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ又は少なくとも4つの変異を含む。
変異型AIDポリペプチドはまた、N末端又はC末端であり得る核局在化シグナルも含み得る。1つの非限定的な例において、変異型AIDは、これに限定されないがPKKKRKV(配列番号340)などの、強力な核局在化シグナルを含み得る。別の非限定的な例において、NLSは、モチーフK−K/R−X−K/Rに従う配列であり得る。
別の態様において、変異型AIDは、強力なNLS及び改変型の核外移行配列の両方を含む。1つの非限定的な例において、改変型の核外移行配列は、1以上の以下の変異を含む:L181A、L183A、L189A、L196A及びL198A。別の非限定的な例において、改変型の核外移行配列は、1以上の以下の変異を含む:D187E、D188E、D191E、T195I及びL198A。
これらの任意の変異型AIDにおいて、遺伝子は、SHM耐性、SHM感受性であり得、又は、SHM感受性に関係なく、選択された宿主細胞でのAIDの発現のために適切な最適コドン用法を含み得る。目的のタンパク質にSHMを標的化するための発現系において使用される場合、変異型AIDはSHM耐性であり得る。
別の実施形態において、SHM耐性遺伝子は、選択マーカー遺伝子である。1つの非限定的な実施形態において、選択マーカー遺伝子は、テトラサイクリン、アンピシリン、ブラストサイジン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン DHFR ネオマイシン、ゼオシンTM、チミジンキナーゼ、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ及びアデノシンデアミナーゼからなる群から選択される。
1つの態様において、SHM耐性遺伝子は、配列番号25と少なくとも90%同一な核酸配列を有するテトラサイクリン耐性遺伝子である。
1つの態様において、SHM耐性遺伝子は、配列番号26と少なくとも90〜95%同一な核酸配列を有するブラストサイジン耐性遺伝子である。
1つの態様において、SHM耐性遺伝子は、配列番号27と少なくとも90%同一な核酸配列を有するピューロマイシン耐性遺伝子である。
1つの態様において、SHM耐性遺伝子は、配列番号28と少なくとも90%同一な核酸配列を有するハイグロマイシン耐性遺伝子である。
1つの態様において、SHM耐性遺伝子は、配列番号29と少なくとも90%同一な核酸配列を有するネオマイシン耐性遺伝子である。
1つの態様において、SHM耐性遺伝子は、配列番号30と少なくとも90%同一な核酸配列を有するゼオシン耐性遺伝子である。
1つの態様において、SHM耐性遺伝子は、配列番号31と少なくとも95%同一な核酸配列を有するチミジンキナーゼである。
本発明にはまた、特定の目的の遺伝子の最適化バージョンであって、SHM介在性の不活性化に特異的に感受性であり、且つSHMの活性化が該遺伝子の機能を選択的にノックアウトするために使用され得るものも含まれる。例えば、目的の遺伝子は、SHM介在性の変異誘発の結果としてストップコドンを導入する、1以上のホットスポットモチーフを含み得る。
本明細書ではまた、種々の目的のタンパク質をコードするSHMに最適化されたポリヌクレオチド配列又はその部分であって、該タンパク質の改良バージョンが本発明のSHM系を使用して迅速に進化されることを可能とするものも提供される。例えば、当該ポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質又はその部分は、より高い親和性、選択性、安定性又は溶解性へと反復して進化され得る抗体遺伝子を含む。
SHMによって最適化され得る他の例示的なポリヌクレオチド配列としては、以下に限定されないが、以下のタンパク質毒素、成長因子、神経伝達物質、補因子、転写因子(例えば、ジンクフィンガー結合タンパク質)、受容体(例えば、Fc受容体)(これら全ては、本発明を使用して進化され得る)が挙げられる。具体的な目的のタンパク質、及びその改良形態への進化については、セクションXにおいて詳細に論じる。
B.ベクター系
本明細書では、構造タンパク質、耐性マーカー及びSHMのための他の因子の変異生成を抑制しつつ、標的核酸配列、遺伝子、又はそれらの部分の選択的な改変を促進するために、本明細書に記載のSHM系のいずれかにおいて使用するためのレプリコンが提供される。
このようなレプリコンは、SHMに耐性である、少なくとも1つの合成ポリヌクレオチド配列を含み得る。1つの態様では、該レプリコンは、SHMのために最適化されている設計されたヌクレオチド配列であるか又はSHMのために最適化されているヌクレオチド配列を含む、少なくとも1つの未改変又は合成の目的のポリヌクレオチド配列を含み得る。ある実施形態では、該レプリコンは、ミューテーター細胞系における1以上の目的のポリヌクレオチドの発現を可能とする発現調節領域を含み得る。
適切なレプリコンは、任意の公知のウイルスベクター若しくは非ウイルスベクター又は人工染色体に基づき得る。発現系は、SHMのための協調的な系を創出するように併せて使用され得る、種々のレプリコンの任意の組み合わせを含み得る。
1つの態様において、本発明のために適切なレプリコンは、SHMに耐性である合成ポリヌクレオチド配列を有する少なくとも1つのポリヌクレオチド配列の挿入又は置換によって作成される。
別の態様において、本発明のために適切なレプリコンは、SHMのために最適化されている合成ポリヌクレオチド配列を有する少なくとも1つのポリヌクレオチド配列の挿入又は置換によって作成される。
別の態様において、本発明のために適切なレプリコンは、SHMのために最適化されている合成ポリヌクレオチド配列を有する少なくとも1つのポリヌクレオチド配列の挿入又は置換によって作成され、且つ該レプリコンはまた、SHMに耐性である合成ポリヌクレオチド配列を有する少なくとも1つのポリヌクレオチド配列も含む。好ましい実施形態において、該レプリコンは、ミューテーター細胞系内の1以上の合成ポリヌクレオチド配列の発現が可能である。
適切なベクターは、本明細書に記載のもの、当該分野で公知のもの、又は将来発見若しくは設計されるものを含む、任意の公知のエピソームベクター又は組込みベクターに基づき得る。
代表的な市販のウイルス発現ベクターには以下が挙げられるがこれらに限定されない:Crucell,Inc.から入手可能なPer.C6系などのアデノウイルスベースの系、Invitrogenから入手可能なpLP1などのレンチウイルスベースの系、並びにStratageneから入手可能なレトロウイルスベクターpFB−ERV及びpCFB−EGSHなどのレトロウイルスベクター。
エピソーム発現ベクターは、宿主細胞において複製可能であり、適切な選択圧の存在下で、宿主細胞内において、染色体外エピソームとして存続する(例えば、Coneseら、Gene Therapy 11:1735−1742(2004)を参照のこと)。代表的な市販のエピソーム発現ベクターとしては、エプスタイン・バー核抗原1(EBNA1)及びエプスタイン・バーウイルス(EBV)複製起点(oriP)を利用するエピソームプラスミドが挙げられるがこれに限定されない。具体例としては、InvitrogenのベクターpREP4、pCEP4、pREP7が挙げられる。EBVベースのベクターの宿主範囲は、EBNA1結合タンパク質2(EPB2)を通じて実質的にあらゆる真核生物細胞種にまで増すことができ(Kapoorら、EMBO.J.20:222−230(2001))、InvitrogenのベクターpcDNA3.1、及びStratageneのpBK−CMVは、EBNA1及びoriPの代わりにT抗原及びSV40複製起点を使用するエピソームベクターの非限定的な例を示す。
組込み発現ベクターは、宿主細胞のDNA中にランダムに組み込まれ得るか、発現ベクターと宿主細胞染色体との間の特異的組換えを可能にする組換え部位を含み得る。このような組込み発現ベクターは、所望のタンパク質の発現をもたらすために、宿主細胞染色体の内因性発現制御配列を利用できる。部位特異的な様式で組み込まれるベクターの例としては、例えば、Invitrogenのflp−in系(例えば、pcDNATM5/FRT)又はcre−lox系(例えば、StratageneのpExchange−6
Core Vectors中に見出され得る)の成分が挙げられる。ランダムな様式で宿主細胞染色体中に組み込まれるベクターの例としては、例えば、InvitrogenのpcDNA3.1(T抗原の非存在下で導入する場合)、PromegaのpCI又はpFN10A(ACT)Flexi(登録商標)が挙げられる。
或いは、発現ベクターは、目的の内因性遺伝子の発現を調節するために、細胞中の遺伝子座に強力なプロモーター又はエンハンサー配列を導入し及び組み込むために使用され得る(Capecchi MR.Nat Rev Genet.(2005);6(6):507−12;Schindehutteら、Stem Cells(2005);23(1):10−5)。このアプローチは、誘導性プロモーター(例えば、Tet−Onプロモーター(米国特許第5,464,758号及び同第5,814,618号))を、目的の内因性遺伝子の誘導性の発現を提供するために、細胞のゲノムDNA中に挿入するためにも、使用できる。活性化コンストラクトは、目的の遺伝子に特異的な所望の遺伝子座への活性化配列の相同組換え又は非相同組換えを可能にするための標的化配列も含むことができる(例えば、Garcia−Otin&Guillou、Front Biosci.(2006)11:1108−36を参照のこと)。或いは、誘導性リコンビナーゼ系(例えば、Cre−ER系)が、4−ヒドロキシタモキシフェンの存在下で導入遺伝子を活性化するために使用され得る(Indraら、Nuc.Acid.Res.(1999)27(22):4324−4327;Nuc.Acid.Res.(2000)28(23):e99;及び、米国特許第7,112,715号)。
発現ベクターに含めるべきエレメントは当該分野で周知であり、例えば上述の合成ポリヌクレオチド配列を有する1以上のポリヌクレオチド配列の挿入又は置換を通じて、任意の既存のベクターを本発明における使用のために容易に改変することができる。
本発明の発現ベクターは、単一レプリコン上又は複数レプリコン内のいずれかで、作動可能に連結された1以上の以下のエレメントを含み得る:発現調節配列、目的の遺伝子のオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチド、転写終結シグナル、複製起点、及び選択マーカー遺伝子。
発現ベクターはまた、1以上の内部リボソーム侵入部位、目的の遺伝子によってコードされるタンパク質の精製を容易にするための1以上のタグ(例えば、VSVタグ、HAタグ、6xHisタグ、FLAGタグ)、1以上のレポーター遺伝子、EBNA1(エピソーム複製が、OriPベースのベクター及び又はEBP2のために所望される場合;EBNA1及びoriPの代替として、SV40 oriと組み合わせて、T抗原も使用され得る)、宿主細胞の染色体DNAに対するベクターのコピー数を検証するために使用され得る遺伝子部分などの、コピー解析のための1以上の部分(例えば、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(hG6PDH)(又はそのバリアント)、SHMのための1又は酵素若しくは因子(例えば、AID、polイータ、UDG、エンハンサー配列)も含み得る。
発現ベクターはまた、標的配列の発現を低減するため(例えば、Polベータのレベルを低減するためなど)のアンチセンス、リボザイム又はsiRNAポリヌクレオチドも含み得る(例えば、Sioud M及びIversen、Curr.Drug Targets(2005)6(6):647−53;Sandyら、Biotechniques(2005)39(2):215−24を参照のこと)。
ある場合には、さらなる特徴付けのために、表面ディスプレイされたタンパク質を分泌タンパク質に変換することが所望され得る。変換は、選択的プロテアーゼ(例えば、第X因子、トロンビン又は任意の他の選択的タンパク分解剤)とのインキュベーションによって切断され得る特異的リンカーの使用によって達成できる。ベクター中のコードされたタンパク質の遺伝子操作を可能にする(即ち、タンパク質のリーディングフレームからの表面結合シグナルの切り出しを可能にする)ポリヌクレオチド配列を含むことも可能である。例えば、随意に目的のタンパク質の結合シグナルの選択的除去及び引き続く細胞内蓄積(又は分泌)を可能にする、1以上の独自の制限部位、又はcre/loxエレメント、又は他の組換えエレメントの挿入。さらなる例には、目的のタンパク質の効率的な細胞表面発現を可能にする、結合シグナル(例えば、膜貫通ドメイン)の周囲の隣接するloxP部位の挿入が含まれる。しかし、細胞におけるcreリコンビナーゼの発現の際、LoxP部位間で組換えが生じ、結合シグナルの喪失を生じ、それにより目的のタンパク質の分泌を導く。
creリコンビナーゼタンパク質をコードするプラスミド(DNA2.0により合成され、発現ベクター中に挿入されたオープンリーディングフレーム(from))は、目的の細胞集団に、一過的にトランスフェクトされ得る(又はウイルスにより形質導入され得る)。発現されたcreリコンビナーゼタンパク質による作用は、さらなる研究のために次に使用され得る、トランスフェクトされた細胞集団における分泌形態の該タンパク質の翻訳及び産生を生じるコード領域の膜貫通部分のin situ除去を導く。
エレメントの順序及び数は、当業者によって決定され得る。
以下の実施例5は、本明細書で提供されるSHM系のいずれかにおいて使用され得るベクターの簡単な説明を提供している。
簡潔に述べれば、1つの態様において、本明細書では、以下を含む、超変異能力を有する(超変異コンピテントな)エピソーム発現ベクターが提供される:1以上の複製起点(例えば、原核生物のori(colE1など)、及び1以上の真核生物の複製起点(oriP若しくはSV40−ori、又はoriP及びSV40 oriの両方など))、1以上の選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性遺伝子)、1以上のb−アクチン若しくはG6PDH断片又はそれらのバリアント、1以上のプロモーター(例えば、pCMVプロモーター)(それらの少なくとも1つは、超変異が所望される遺伝子(単数又は複数)の転写を引き起こす)、核酸配列又は遺伝子を挿入するための1以上の制限部位、任意で、1以上の分泌シグナル、付着シグナル、目的の遺伝子(単数又は複数)のための精製タグ(例えば、ヘマグルチニン(HA)タグ)、内部リボソーム侵入部位(IRES)、1以上のピューロマイシン遺伝子、及び1以上の転写終結シグナル。転写終結シグナルは、3’非翻訳領域、随意のイントロン(介在配列又はIVSとも呼ばれる)及び1以上のポリアデニル化シグナル(p(A))の領域を含み得る。1つの非限定的な例において、エピソーム発現ベクターは、蛍光を増加又は減少させるため又は吸収若しくは発光の波長を変化させるために、SHMのためのベクターに挿入された、蛍光タンパク質のための核酸配列を有し得る。
別の態様において、本明細書では、組換え系及び作動可能に連結された1以上の以下のエレメントを含む組込み発現ベクターが提供される;発現調節配列、目的の遺伝子のオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチド、転写終結シグナル、複製起点及び選択マーカー遺伝子。
発現ベクターはまた、1以上の内部リボソーム侵入部位、目的の遺伝子によってコードされるタンパク質の精製を容易にするための1以上のタグ(例えば、VSVタグ、HAタグ、6xHisタグ、FLAGタグ)、1以上のレポーター遺伝子、コピー解析のための1以上の部分、SHMのための1又は酵素若しくは因子(例えば、AID、polイータ、UDG、Igエンハンサー配列)も含み得る。
1つの非限定的な実施形態において、発現ベクターは、目的の遺伝子の、ゲノム遺伝子座(例えば、Ig遺伝子座)への挿入を可能とするように設計される。
C.転写及び超変異のための系
1.In Vitro発現系及び超変異系
in vitro発現系及び超変異系には、DNAテンプレートの転写又は連動した転写及び翻訳を可能にし、並びにSHMを介した進行性の変異誘発を可能にする、無細胞系が挙げられる。1実施形態において、このようなin vitro翻訳系及び超変異系は、リボソームディスプレイと組み合わせて使用されて、タンパク質の進行性の変異誘発及び選択を可能にすることができる。
in vitro翻訳系としては、例えば、古典的なウサギ網状赤血球系、並びに新規無細胞合成系が挙げられる(J.Biotechnol.(2004)110(3)257−63;Biotechnol Annu.Rev.(2004)10 1−30)。リボソームディスプレイのための系は、例えば、Villemagneら、J.Imm.Meth.(2006)313(1−2)140−148)に記載されている。
1つの態様において、in vitro超変異系は、目的の遺伝子の発現のための発現カセットを含む、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドライブラリーを含み得る。目的の遺伝子は、SHMのために最適化された配列を含む、合成又は半合成の遺伝子であり得る。リボソームディスプレイのために、ポリヌクレオチドは、翻訳後にリボソームに結合したままとなるように、ストップコドンを欠いていても良い。
目的の遺伝子の転写及び又は翻訳をもたらすために、当該系は、例えば精製された70Sリボソームと共に組換え因子を使用することを介する、in vitroでの転写及び翻訳のための、精製又は半精製された成分を含むであろう。進行性のSHMを可能とするために、系は更に、組換え若しくは精製されたAID、及び/又はSHM/DNA修復のための他の因子を含むであろう。最適化されたタンパク質は、表面ディスプレイされたタンパク質について説明したように、機能的な選択を介して選択され、次いで関連するリボソームは、有益な変異の素性を決定するために配列決定されるであろう。
in vitro超変異系であって:a)合成遺伝子を含むポリヌクレオチド;b)組換えAID;及びc)in vitro発現系を含む、系が本明細書で提供される。1態様では、該合成遺伝子は、SHMのために最適化されている。該in vitro系は、転写後の核酸を増幅させるためのポリメラーゼを更に含み得る。該in vitro系は、in vitro翻訳系を更に含み得る。1つの態様では、該ポリヌクレオチドは、本明細書の他の箇所に記載されるいずれか1つの発現ベクターなどの発現ベクター内に位置する。該in vitro系は、本明細書の他の箇所に記載される細胞の細胞集団を更に含み得る。
in vitro変異誘発のためのキットであって:a)組換えAIDタンパク質;b)in vitro転写用の1つ以上の試薬;及びc)合成遺伝子の設計又は使用のための説明書を含む、キットが本明細書で提供される。該キットは、in vitro翻訳用の1つ以上の試薬を更に含み得る。該キットは、例えば本明細書に記載されるいずれか1つの発現ベクターなどの発現ベクターを含むことを更に含み得る。該キットは、本明細書の他の箇所に記載される細胞の細胞集団を更に含み得る。
2.細胞の発現及び超変異系
細胞ベースの発現及び超変異系は、任意の適切な原核生物又は真核生物の発現系を含む。好ましい系は、容易且つ確実に増殖でき、合理的に速い増殖速度を有し、充分特徴付けられた発現系を有し、容易且つ効率的に形質転換又はトランスフェクトできる、系である。
a.原核生物発現系
これらの一般的ガイドラインにおいて、有用な微生物宿主としては、以下に限定されないが、属Bacillus、Escherichia(例えばE.coli)、Pseudomonas、Streptomyces、Salmonella、Erwinia由来の細菌、Bacillus subtilis、Bacillus brevis、種々の株のEscherichia coli(例えば、HB101、(ATCC NO.33694)DH5α、DH10及びMC1061(ATCC NO.53338))が挙げられる。
b.酵母
当業者に公知の多くの酵母細胞株もまた、ポリペプチドの発現のための宿主細胞として利用可能であり、これには、属Hansenula、Kluyveromyces、Pichia、Rhinosporidium、Saccharomyces及びSchizosaccharomyces並びに他の真菌由来のものが含まれる。好ましい酵母細胞としては、例えば、Saccharomyces cerivisae及びPichia pastorisが挙げられる。
c.昆虫細胞
さらに、所望の場合、昆虫細胞系が本発明の方法において利用できる。このような系は、例えば、Kittsら、Biotechniques、14:810−817(1993);Lucklow、Curr.Opin.Biotechnol.、4:564−572(1993);及びLucklowら(J.Virol.、67:4566−4579(1993)に記載されている。好ましい昆虫細胞としては、Sf−9及びHI5(Invitrogen、Carlsbad、Calif.)が挙げられる。
d.哺乳動物発現系
多数の適切な哺乳動物宿主細胞もまた当該分野で公知であり、多くがAmerican Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Boulevard、Manassas、Va.20110−2209から入手可能である。例としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)(ATCC No.CCL61)CHO DHFR細胞(Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97:4216−4220(1980))、ヒト胚性腎臓(HEK)293若しくは293T細胞(ATCC No.CRL1573)、又は3T3細胞(ATCC No.CCL92)。形質転換、培養、増幅、スクリーニング並びに産物の産生及び精製に適切な哺乳動物宿主並びに方法の選択は、当該分野で公知である。他の適切な哺乳動物細胞系は、サルCOS−1(ATCC No.CRL1650)及びCOS−7細胞系(ATCC No.CRL1651)、並びにCV−1細胞系(ATCC No.CCL70)である。さらなる例示的な哺乳動物宿主細胞としては、形質転換された細胞系を含む、霊長類細胞系及びげっ歯類細胞系が挙げられる。正常な二倍体細胞、初代組織のin vitro培養物由来の細胞株、並びに初代外植片もまた、適切である。候補細胞は、選択遺伝子において遺伝子型欠損であり得、又は優性に作用する選択遺伝子を含み得る。他の適切な哺乳動物細胞株には、以下が挙げられるがこれらに限定されない:マウス神経芽細胞腫N2A細胞、HeLa、マウスL−929細胞、Swiss、Balb−c若しくはNIHマウス由来の3T3系、BHK若しくはHaKハムスター細胞系(これらは、ATCCから入手可能である)。これらの細胞系の各々は公知であり、タンパク質発現のために利用可能である。
リンパ系、又はリンパ系由来細胞系(例えば、プレBリンパ球起源の細胞系)もまた目的のものである。具体的な例としては、限定なしに、RAMOS(CRL−1596)、Daudi(CCL−213)、EB−3(CCL−85)、DT40(CRL−2111)、18−81(Jackら、PNAS(1988)85 1581−1585)、Raji細胞、(CCL−86)及びそれらに由来するものが挙げられる。
SHM系において使用するために、本明細書に記載のベクターのいずれかが、AIDの核酸配列を含む別個のベクターで宿主細胞に共トランスフェクションされ得る。1つの態様において、本明細書に記載のベクターは、内在性AIDを含む宿主細胞にトランスフェクションされ得る。別の態様において、本明細書に記載のベクターは、AIDが細胞内で過剰発現されるように、AIDの核酸配列を含む別個のベクターで、内在性AIDを含む宿主細胞に共トランスフェクションされ得る。さらに別の態様において、本明細書に記載のベクターは、内在性AIDを含む又は含まない宿主細胞にトランスフェクションするために、AIDの配列を含むように改変され得る。好ましい実施形態において、AIDは、SHM耐性のポリヌクレオチド配列を含む合成AIDである。
1つの実施形態において、SHM系は、以下から選択される1以上を含む:i)少なくとも1つのポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチドが被るSHMの率に正の影響を与えるように、全体的又は部分的に野生型ポリヌクレオチドから改変されたポリヌクレオチドか、或いは、何らの改変前に、天然に高いパーセンテージのホットスポットを有するポリヌクレオチドのいずれかを含む、前記ポリヌクレオチド;及び、ii)発現系の少なくとも1つの成分は、SHMの率に対して負の影響を与えるように、全体的又は部分的に改変されたポリヌクレオチドを含む。
1つの態様において、SHM系は、SHMの率に負の影響を与えるように、野生型から改変された1以上のポリヌクレオチドを含む。該ポリヌクレオチドは、例えば、SHMのための1以上の因子(例えば、AID、Polイータ、UDG)、1以上の選択マーカー遺伝子、又は1以上のレポーター遺伝子をコードし得る。
別の態様において、SHM系は、SHMの率に正の影響を与えるように、全体的又は部分的に野生型から改変された1以上のポリヌクレオチドを含む。該ポリヌクレオチドは、例えば、酵素、受容体、転写因子、構造タンパク質、毒素、補因子、目的の特異的結合タンパク質をコードする、目的のポリヌクレオチドであり得る。
さらに別の態様において、SHM系は、本来的に高いSHMの率を有するポリヌクレオチド(例えば、免疫グロブリン重鎖若しくは免疫グロブリン軽鎖、又は抗体遺伝子の超可変領域をコードする、目的のポリヌクレオチドなど)を含む。
本明細書に記載されるSHM系はさらに、以下から選択されるさらなるエレメントを1以上含み得る:i)AID又はAIDホモログの発現を調節するための誘導性の系、ii)1以上のIgエンハンサー、iii)1以上のE−ボックス、iv)SHMに関する1以上の補助因子、v)安定なエピソーム発現のための1以上の因子(例えば、EBNA1、EBP2又はori−P)、vi)1以上の選択マーカー遺伝子、AIDの遺伝子を含む1以上の第2のベクター、及びvii)それらの組み合わせ。
1態様において、当該系は、目的の2つのポリヌクレオチドを含み、両ポリヌクレオチドは、プロモーターの近位に位置し、同じ細胞中で同時に発現され及び同時進化される。1実施形態において、このプロモーターは、二方向性CMVプロモーターなどの二方向性プロモーターである。別の実施形態において、目的の2つのポリペプチドは、2つの一方向プロモーターの前に配置される。2つのプロモーターは、同じプロモーターでも異なるプロモーターでもよい。目的の2つのポリヌクレオチドは、同一ベクター内にあっても、異なるベクター上にあっても良い。
1以上の目的のポリヌクレオチドの発現ベクター内への組換え導入後、ベクターは、増幅、精製、標準的なトランスフェクション技術を使用した宿主細胞への導入、及び標準的な分子生物学的技術を使用した特徴付けを為され得る。精製されたプラスミドDNAは、標準的なトランスフェクション/トランスフェクション技術を使用して宿主細胞に導入でき、得られたトランスフォーマント/トランスフェクタントは、抗生物質、選択試薬、及び/又は目的のポリヌクレオチドの発現を誘導するための活性化/トランスアクチベーターシグナル(例えば、ドキシサイクリンなどの誘導可能な試薬)を含む適切な培地で増殖できる。宿主細胞が内在的にAIDを発現する場合、1以上の目的のポリヌクレオチドを含むベクターは、単独で宿主細胞に導入され得る。或いは、該細胞が内在的にはAIDを発現しない場合、AID遺伝子、又はより好ましくは、野生型よりもSHMに耐性である合成のAID遺伝子が、宿主細胞にトランスフェクトされ得る。従って、AIDの発現は、目的のポリヌクレオチドについて上述したように、同一又は異なる発現ベクターを使用することによって達成され得る。
エンハンサー(例えば、Igエンハンサー)は、目的のポリヌクレオチドの発現、及び/又はそれへのSHMの標的化を増すために、ベクター中に挿入され得る。
誘導性の系(例えば、Tet制御された系)が使用される場合、ドキシサイクリンが、目的のポリヌクレオチド又はAIDの発現を誘導するために一定期間にわたって(例えば、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、15時間、20時間、24時間又は任意の他の時間)培地に添加され得、その後、適切なアッセイによる分析がなされる。細胞は、進行性の多様化を提供するための特定の時間にわたって、例えば、1〜3細胞世代、又は特定の場合には3〜6世代、又はある場合には6〜10世代、又はそれより長く、増殖させることができる。
細胞は、本明細書中に記載したように、繰り返し増殖、アッセイ及び選択されて、所望の特性を示す目的のポリヌクレオチドを発現する細胞を選択的に濃縮することができる。適切なアッセイ及び濃縮ストラテジー(例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS);アフィニティ分離、酵素活性、毒性、受容体結合、増殖刺激など)を以下に記載する。
一旦目的の細胞集団が得られると、目的のポリヌクレオチドがレスキューされ得、対応する変異が配列決定され同定される。例えば、総mRNA又は染色体外プラスミドDNAは、SV40 T抗原の共発現によって増幅され得(J.Virol.(1988)62(10)3738−3746)、及び/又は細胞から抽出され得、適切なプライマーを使用する、改変されたポリヌクレオチドをクローニングするためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は逆転写酵素(RT)−PCRのためのテンプレートとして使用され得る。変異体ポリヌクレオチドは、ベクター中にサブクローニングされ得、E.coli中で発現され得る。タグ(例えば、His−6タグ)が、クロマトグラフィーを使用したタンパク質精製を促進するために、カルボキシ末端に付加され得る。
X.目的のタンパク質
本明細書で使用される場合、用語「目的のタンパク質」は、そのタンパク質の改善されたバリアントを迅速に生成、選択及び同定するために、そのタンパク質をコードするポリヌクレオチドをAIDによりSHMのために最適化することが所望される、タンパク質又はその部分に関する。このような最適化されたポリヌクレオチドは、コドン用法の結果として、SHMに対してより感受性にすることができ、それにより、ポリヌクレオチドがAIDに供されたときにアミノ酸変化を誘導し、改善された機能のためにスクリーニングされ得る。反対に、このような最適化されたポリヌクレオチドは、SHMに対してより耐性にすることができ、それにより、コドン用法の結果として、ポリヌクレオチドがAIDに供されたときのアミノ酸変化を低減し、改善された機能のためにスクリーニングされ得る。
しかしながら、本発明はまた、SHMに耐性であるタンパク質をコードするか、又はストップコドンに変換され得るコドンを含むポリヌクレオチド配列に関する組成物及び方法も含むことが理解されるべきである。このような合成遺伝子は、本発明においてある種の利点を付与し、例えば、セクションIXに具体的に開示されている。
アミノ酸又は対応するヌクレオチド配列が公知であるか又は利用可能であり(例えば、本発明のベクター中にクローニングできる)、表現型又は機能が改善され得る任意のタンパク質は、本明細書中に提供するベクター及びSHM系において使用するための候補である。目的のタンパク質としては、例えば、任意の未改変又は合成の供給源由来の、表面タンパク質、細胞内タンパク質、膜タンパク質及び分泌タンパク質が挙げられる。本明細書中に提供されるベクター及びSHM系において使用するためのタンパク質の例示的であるが非限定的なタイプには、抗体重鎖又はその部分、抗体軽鎖又はその部分、酵素、受容体、構造タンパク質、補因子、ポリペプチド、ペプチド、細胞内抗体、選択マーカー、毒素、増殖因子、ペプチドホルモンが含まれ、最適化できる任意の他のタンパク質が含まれる意図である。
生物学的に活性なタンパク質(分子)には、他の生物学的に活性なタンパク質(分子)の薬物動態及び/又は薬力学を調節可能な分子も含まれ、例えば、脂質及びポリマー(例えば、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール及び他のポリエーテル)が含まれる。例えば、ポリペプチドは、例えば以下のようなポリペプチドである:VEGF、VEGF受容体、Diptheria毒素サブユニットA、B.pertussis毒素、CCケモカイン(例えば、CCL1〜CCL28)、CXCケモカイン(例えば、CXCL1〜CXCL16)、Cケモカイン(例えば、XCL1及びXCL2)及びCX3Cケモカイン(例えば、CX3CL1)、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、TNF−α、TNF−β、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−10、IL−12、IL−13、IL−15、TGF−β、TGF−α、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、TPO、EPO、ヒト増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、核補因子、Jak及びStatファミリーメンバー、Gタンパク質シグナル伝達分子(例えば、ケモカイン受容体、JNK、Fos−Jun、NF−κB、I−κB、CD40、CD4、CD8、B7、CD28及びCTLA−4)。
さらに、種々の他の成分ヌクレオチド配列(例えば、ある実施形態においては系全体の完全性を維持するために超変異させることが好まれないコアとなる系を形成できる、コード配列及び遺伝エレメント)が存在する。これらの成分ヌクレオチド配列には以下が挙げられるがこれらに限定されない:i)選択マーカー(例えば、ネオマイシン、ブラストサイジン、アンピシリンなど);ii)レポーター遺伝子(例えば、蛍光タンパク質、エピトープタグ、レポーター酵素);iii)遺伝子調節シグナル(例えば、プロモーター、誘導可能な系、エンハンサー配列、IRES配列、転写又は翻訳ターミネーター、kozak配列、スプライス部位、複製起点、リプレッサー);iv)高レベル増強SHM又はその調節、又は測定のために使用される、酵素又は補助因子(例えば、AID、polη、転写因子及びMSH2);v)シグナル伝達成分(キナーゼ、受容体、転写因子)、並びにvi)タンパク質のドメイン又はサブドメイン(例えば、核局在化シグナル、膜貫通ドメイン、触媒ドメイン、タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、並びに他のタンパク質ファミリーの保存されたモチーフ、ドメイン及びサブドメイン)。
本出願に基づいて、最適化のための適切な候補として目的のタンパク質を選択し、目的のタンパク質の所望の形質をモニタリングするために適切なアッセイを考案することができるであろう。
目的のタンパク質の性質及び目的のタンパク質に関する利用可能な情報の量に依存して、実務者(practioner)は、最適化されたポリヌクレオチドを生成するための変異誘発の前に、以下のストラテジーの任意の組み合わせに従うことができる。
1.最適化なし:目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列内のホットスポットの数を増強させることが望ましいものであり得るが、任意の未改変タンパク質は、何らかの量のSHMを受けると予測され、最適化も実際の配列の何らの具体的な知識もなしに本発明において使用され得ることに、留意すべきである。さらに、ある種のタンパク質(例えば抗体)は、適切なコドン用法を進化させたポリヌクレオチド配列を天然に含み、コドン改変を必要としない。或いは、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(例えば、抗体のフレームワーク領域又はそのフラグメント)内のコールドスポットの数を増強することが望ましいものであり得る。
2.グローバルなホットスポット最適化:ある態様では、タンパク質をコードするポリヌクレオチド中のホットスポットの数は、本明細書中に記載するように、増加させることができる。このアプローチは、遺伝子のコード領域全体に適用でき、それにより、タンパク質全体を、SHMに対してより感受性にする。本明細書中で議論するように、タンパク質内又は関連のタンパク質アイソタイプ間の構造活性関係について比較的あまり知られていない場合に、このアプローチが好まれ得る。
3.選択的ホットスポット改変:或いは、本明細書中で議論するように、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、高密度のホットスポットを提供し、特定の遺伝子座でSHMを介する最大の多様性の種となる、合成可変領域による、目的の領域の標的化した置換を介して、選択的及び又は体系的に改変できる。
当業者は、本明細書中に提供される教示に基づいて、上記のアプローチのいずれか又は全てが本発明を使用して行なわれ得ることを理解するであろう。しかし、グローバルなホットスポット最適化及び選択的ホットスポット改変に関するアプローチは、タンパク質機能のより迅速且つより効率的な最適化に繋がる可能性がある。
目的のタンパク質をコードする最適化されたポリヌクレオチドの設計後、このポリヌクレオチドは標準的方法論を使用して合成され得、正確な合成を確認するために配列決定され得る。一旦ポリヌクレオチドの配列が確認されると、このポリヌクレオチドは本発明のベクター中に挿入され得、次いでこのベクターは本明細書中に記載したように宿主細胞中に導入されて、変異誘発をもたらし得る。
一旦適切な宿主細胞中に導入されると、細胞は、SHMを開始するためにAID及び/又は他の因子を発現するように誘導され得、それにより、目的のタンパク質の進行性の配列多様化を誘導することができる。適切な期間(例えば、2〜10細胞***)後、目的のタンパク質のバリアントを含む得られた宿主細胞がスクリーニングされ、改善された変異体が同定されて細胞集団のために分離され得る。このプロセスは、目的のタンパク質の特性を選択的に改善するために、反復され得る。
細胞表面にディスプレイされたタンパク質は、適切な膜貫通ドメインにインフレームでカップリングされた目的のタンパク質のキメラ分子の生成を介して、生成できる。哺乳動物細胞発現の場合、例えば、MHCタイプ1膜貫通ドメイン、例えば、H2kk由来のもの(ペリ膜貫通ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含む;NCBI遺伝子アクセッション番号AK153419)が使用できる。同様に、原核生物細胞(例えば、E.coli及びStaphylococcus)、昆虫細胞及び酵母におけるタンパク質の表面発現は、当該分野で充分確立されている。総説については、例えば、Winter,G.ら、Annu.Rev.Immunol.(1994)12:433−55;Plueckthun,A.、(1991)Bio/Technology 9:545−551;Gunneriussonら、(1996)J.Bacteriol 78 1341−1346;Ghiasiら、(1991)Virology 185 187−194;Boder及びWittrup、(1997)Nat.Biotechnol.15 553−557;並びにMazorら、(2007)Nat.Biotech.25(5)563−565を参照のこと。
表面ディスプレイされた抗体又はタンパク質は、細胞表面上の分泌タンパク質の分泌及び続く結合(又は会合)を介して、生成できる。抗体又はタンパク質の細胞膜へのコンジュゲート化は、タンパク質合成の間又はタンパク質が細胞から分泌された後のいずれかに生じ得る。コンジュゲート化は、共有結合、結合相互作用(例えば、特異的結合メンバーにより介在される)又は共有結合と非共有結合との組合せによって、生じ得る。
なお別の態様において、タンパク質は、細胞表面上へのディスプレイに特有の第二の結合メンバーに融合した目的の標的に特異的に結合する第一の特異的結合メンバーを含む、抗体又は結合タンパク質融合タンパク質の生成を介して、細胞にカップリングされ得る(例えば、プロテインAとFcドメインとの結合を利用する場合:プロテインAは、細胞表面上に発現されてそこに結合し、分泌された抗体(又はFc融合タンパク質として発現された目的のタンパク質)に結合し、それを局在化させる)。
対応するポリヌクレオチド配列を含む適切な発現ベクターの、適切なミューテーター陽性細胞へのトランスフェクションは、任意の当該分野で認識された又は公知のトランスフェクションプロトコルを使用して実施できる。タンパク質の例示的な表面発現されたライブラリーは、優先の米国出願第60/904,622号及び同第61/020,124号の実施例4及び5に記載されている。
上記トランスフェクション由来の複数の抗体又は結合タンパク質を発現する細胞は、必要に応じて、従来のアッセイ(FACSを含むがこれに限定されない)を使用して、細胞表面上での特定の範囲の該タンパク質の表面発現を示す細胞を選択するために、特徴付けられ得る。
軽鎖及び重鎖の発現の染色は、例えば、市販のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)又はR−フィコエリトリン(R−PE)コンジュゲート化ラット抗マウスIg、κ軽鎖、及びFITC又はR−PEコンジュゲート化ラット抗マウスIg G1モノクローナル抗体(BD Pharmingen)を使用することによって、達成できる。染色は、製造業者が示したプロトコルを使用して、通常は、氷上での30分間にわたる、標識抗体の存在下での試験細胞のインキュベーションによって、実施できる。細胞抗原発現の発現レベルは、Spherotech rainbow calibration particles(Spherotech、IL)を使用して定量できる。
特定の範囲の発現を示すトランスフェクトされた細胞集団が選択できる。例えば、1細胞当たり約10,000、約50,000、約100,000又は約500,000個のタンパク質よりも多い表面コピー数を有する細胞が選択され得、次いで、効率的な親和性プロファイリングのために使用され得る。
安定にトランスフェクトされた細胞の集団は、例えば、適切な選択剤の存在下での2〜3週間の増殖を介して生成できる。得られた細胞ライブラリーは、細胞バンクとして凍結及び保存できる。或いは、細胞は、一過的にトランスフェクトされ、トランスフェクションの数日以内に使用され得る。
ある場合には、さらなる特徴付けのために、表面ディスプレイされたタンパク質を分泌タンパク質に変換することが所望され得る。変換は、選択的プロテアーゼ(例えば、第X因子、トロンビン又は任意の他の選択的タンパク分解剤)とのインキュベーションによって切断され得る特異的リンカーの使用によって達成できる。ベクター中のコードされたタンパク質の遺伝子操作を可能にする(即ち、タンパク質のリーディングフレームからの表面結合シグナルの切り出しを可能にする)ポリヌクレオチド配列を含むことも可能である。例えば、随意に目的のタンパク質の結合シグナルの選択的除去及び引き続く細胞内蓄積(又は分泌)を可能にする、1以上の独自の制限部位、又はcre/loxエレメント、又は他の組換えエレメントの挿入。さらなる例には、目的のタンパク質の効率的な細胞表面発現を可能にする、結合シグナル(例えば、膜貫通ドメイン)の周囲の隣接するloxP部位の挿入が含まれる。しかし、細胞におけるcreリコンビナーゼの発現の際、LoxP部位間で組換えが生じ、結合シグナルの喪失を生じ、それにより目的のタンパク質の分泌を導く。
一旦ポリペプチドが所定の程度まで最適化されると、目的の最適化されたポリペプチドを発現する細胞又は細胞集団が、単離又は濃縮され得、最適化されたポリペプチドの表現型(機能)が、当該分野で認識されたアッセイを使用してアッセイされ得る。
次いで、細胞は再増殖され、SHM再誘導され、多数のサイクルにわたって再スクリーニングされて、所望の機能における改善を繰り返しもたらし得る。任意の時点で、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、進行性の変異誘発をモニタリングするために、レスキュー及び/又は配列決定され得る。
例えば、エピソームプラスミドDNAが、抽出(又はSV40 T抗原との共発現によって増幅(J.Virol.(1988)62(10)3738−3746))され得、次いで抽出されて、標準的な方法論を用いて、ポリヌクレオチド又は目的又は隣接領域に特異的なDNAプライマーを使用するPCRによって増幅され得る。或いは、総RNAが、フローサイトメトリー又は磁気ビーズによって単離された種々の細胞集団から単離され得る。エピソームDNA及び/又は総RNAは、標準的な方法論を用いて、ポリヌクレオチド又は目的又は隣接領域に特異的なプライマーを使用するRT−PCRによって、増幅され得る。クローンは、Applied Biosystemsなどの会社からの自動化DNA配列(ABI−377又はABI 3730 DNAシーケンサー)を使用して、配列決定され得る。配列は、出発配列と比較した、ヌクレオチドの挿入及び欠失の頻度について、分析され得る。
A.抗体及びそのフラグメント
抗体に関して、本発明は、標的タンパク質の機能に対する最も大きい生物学的影響を生じることと結びついた重要な表面エピトープに結合する抗体を選択するためのin vivo免疫の必要性を回避する能力を提供する。さらに、哺乳動物抗体は、標的化SHMのための最適なコドン用法パターンを本来的に処理し、テンプレート設計ストラテジーを大いに単純化する。特定の抗原について、in vivo免疫は、標的の機能に影響を与えないエピトープ選択を導き、それにより、強力かつ有効な抗体候補の選択を妨害する。なお他の実施形態において、本発明は、標的タンパク質の機能を決定する際のそのエピトープの役割の性質により、強力な活性を有する部位特異的抗体の迅速な進化を提供できる。これは、最適なエピトープ位置について標的タンパク質をスキャンし、臨床で使用するためのそのクラスで最高の抗体薬物を産生する能力を提供する。
本明細書中に記載するように、全ての天然に存在する生殖系列の親和性成熟した合成又は半合成の抗体、並びにそれらのフラグメントが、本発明において使用され得る。一般に、このような抗体は、SHMを介して変更されて、以下の機能的形質の1以上を改善できる:親和性、結合活性、選択性、熱安定性、タンパク分解安定性、溶解度、折り畳み、免疫毒性及び発現。抗体形式に依存して、抗体ライブラリーは、宿主細胞において共発現され得る、別個の重鎖ライブラリー及び軽鎖ライブラリーを含むことができる。特定の実施形態において、全長抗体が分泌され得、及び/又は宿主細胞の細胞膜で表面ディスプレイされ得る。なお他の実施形態において、重鎖ライブラリー及び軽鎖ライブラリーは、同じ発現ベクター中又は異なる発現ベクター中に挿入でき、両方の抗体鎖の同時共進化を可能にする。
1実施形態において、抗体又はそのフラグメント(例えば、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、scFv、dsFv、dAb又は単鎖結合ポリペプチド)の特定のサブドメイン中のホットスポット密度を増加させることは、改善された特徴(例えば、結合親和性の増大、結合活性の増大及び/又は非特異的結合の減少のうち1以上)をもたらし得る。別の実施形態において、定常ドメイン(例えばFc)中のホットスポットが増加した合成抗体の使用は、Fc受容体(FcR)に対する結合親和性の増大を生じ得、それにより、シグナルカスケードが調節される。重鎖及び軽鎖、又はそれらの一部は、本明細書中に記載する手順を使用して、同時に改変できる。
本明細書中に提供する方法において使用される細胞内抗体は、細胞質の還元環境における重鎖及び/又は軽鎖のフォールディングを改善又は増強するために、改変され得る。或いは、又はさらに、sFv細胞内抗体は、ドメイン内ジスルフィド結合の非存在下でも適切に折り畳まれ得るであろうフレームワークを安定化するために、改変され得る。細胞内抗体は、例えば、以下の特徴のうち1以上を増大させるためにも、改変され得る:結合親和性、結合活性、エピトープ接近可能性、標的エピトープについての内因性タンパク質との競合、半減期、標的隔絶、標的タンパク質の翻訳後修飾など。細胞内抗体は細胞の内部で作用するので、それらの活性は、酵素活性アッセイのためのアッセイ方法論により類似している。これは以下のセクションBで議論する。
ポリヌクレオチドの同定及び設計
標的化された抗体ライブラリーを設計及び生成するための方法、並びに優れた選択性、種間反応性及びブロッキング活性を有する抗体の選択を提供する最適なエピトープを同定するための方法は、当該分野で公知であり、本明細書中に説明している。このような方法は、本明細書のセクションIV及びV、並びに共通の所有の優先の米国特許出願第60/904,622号及び同第61/020,124号に開示されている。
スクリーニング方法論
改善された形質を有する、表面露出された抗体又は分泌された抗体を検出及び選択するための具体的なスクリーニングは、当該分野で周知であり、セクションXIに詳細に記載される。このようなスクリーニングは、全般的に最良の抗体を進化させるために、複数のパラメーター(例えば、親和性、結合活性、選択性及び熱安定性)の同時選択に基づく数ラウンドの選択を含み得る。
一旦抗体又はそのフラグメントがSHMを使用して最適化されると、最適化された抗体又はそのフラグメントの表現型/機能が、当該分野で認識されたアッセイを使用してさらに分析され得る。抗体又はそのフラグメントのためのアッセイとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:結合親和性、結合活性などを決定できる、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、酵素結合免疫吸着スポット(ELISPOTアッセイ)、変異したIgH鎖のゲル検出及び蛍光検出、スキャッチャード分析、BIACOR分析、ウエスタンブロット、ポリアクリルアミドゲル(PAGE)分析、ラジオイムノアッセイなど。このようなアッセイは、以下のセクションXIにおいてより充分に記載される。
一旦最適化された抗体が同定されると、エピソームDNAが、抽出(又はSV40 T抗原との共発現によって増幅(J.Virol.(1988)62(10)3738−3746))され得、次いで抽出されて、可変重鎖(VH)リーダー領域及び/又は可変軽鎖(VL)リーダー領域特異的なセンスプライマー並びにアイソタイプ特異的なアンチセンスプライマーを使用するPCRに供され得る。或いは、選択されたソートされた細胞集団から総RNAが単離され、可変重鎖(VH)リーダー領域及び/又は可変軽鎖(VL)リーダー領域特異的なセンスプライマー並びにアイソタイプ特異的なアンチセンスプライマーを使用するRT−PCRに供され得る。クローンは標準的な方法論を使用して配列決定され得、得られた配列は、ヌクレオチドの挿入及び欠失の頻度、受容体のリビジョン(revision)並びにV遺伝子選択について分析され得る。得られたデータは、1以上の所望の特性における変化と特定のアミノ酸置換とを連結するデータベースに投入するために使用され得る。次いで、このようなデータベースは、好都合な変異を組換えるため、又は新たに同定された目的の領域(例えば、タンパク質の機能的部分をコードする核酸配列)中に標的化された多様性を有する次世代のポリヌクレオチドライブラリーを設計するために、使用され得る。
B.酵素
酵素及びプロ酵素は、迅速に改善でき、SHMが有用な、ポリペプチドの別のカテゴリーを示す。2つ以上の酵素の同時変異を含む、複数の酵素経路の同時進化への本発明の適用は、特に興味深い。特に留意すべき酵素及び酵素系には、例えば、微生物学的発酵、代謝経路工学、タンパク質製造、バイオレメディエーション、並びに植物の成長及び発達、に関連する酵素が挙げられる。
改善された形質を有する酵素を測定、選択及び進化させるための具体的なハイスループットスクリーニング系が当該分野で周知であり、セクションXIに概説される。このようなスクリーニングは、複数のパラメーター(例えば、pH安定性、Km、Kcat、熱安定性、溶解度、タンパク分解安定性、基質特異性、補因子依存性、及びヘテロ二量体化又はホモ二量体化の傾向)の同時選択に基づく数ラウンドの選択を含み得る。
ポリヌクレオチドの同定及び設計
既に説明したように、変異誘発の開始点は、目的の遺伝子のcDNAクローンか、又はそのアミノ酸若しくはポリヌクレオチド配列のいずれかである。SHMの有効性を最大化するために、出発ポリヌクレオチド配列は、ホットスポット密度を最大化し、且つコールドスポット密度を減少するように改変され得る。このような方法は、本明細書のセクションIV及びV、並びに共通の所有の優先の米国特許出願第60/904,622号及び同第61/020,124号に開示されている。
目的の特定の領域が、目的のタンパク質(単数又は複数)において定義された場合には、これらの領域は、好ましいホットスポットモチーフで標的化され得るか、或いは、既に説明したように、目的の酵素(単数又は複数)のリーディングフレームにわたって、ホットスポットモチーフを体系的に挿入するための走査アプローチが使用され得る。
複数の酵素を伴う特定の酵素経路の共進化のための本発明の特定の利点は、全ての酵素を単一の細胞で同時に共進化できることである。このアプローチは、系の全ての要素が存在する時に、系全体に利点のみを付与する変異を同定するための能力を開発する。例えば、酵素間のヘテロダイマー化を誘導する変異は、連続的な酵素反応を伴う。
スクリーニング方法論
多くのハイスループットスクリーニングアプローチが当該分野で周知であり、改善された酵素を同定及び選択するために容易に適用できる(例えば、Olsenら、Methods.Mol.Biol.(2003)230:329−349;Turner、Trends Biotechnol.(2003)21(11):474−478;Zhaoら、Curr.Opin.Biotechnol.(2002)13(2):104−110;及び、Mastrobattistaら、Chem Biol.(2005)12(12):1291−300を参照のこと)。使用されるスクリーニングの様式は、酵素の性質、及び目的の酵素が細胞内であるか細胞外であるか、そしてさらには膜結合型であるか自由に分泌されるか、に依存し得る。
広い動的ウインドウにわたって有用な定量情報を提供し、高いスクリーニング能力を有する最初のスクリーニングが、好ましい。代表的なスクリーニングアプローチには、例えば、フローサイトメーターを使用した、改善された細胞の変更された能力又は増殖速度に基づくアッセイ、及び/又は細胞のソーティングに基づくアッセイが挙げられる。FACSベースのアプローチは、細胞内蛍光発生反応産物の存在又は変更されたレポーター遺伝子発現を検出でき、酵素活性のFACSベースの最適化のための具体的なプロトコルは、以下の参考文献に総説がある;Farinasら、Comb.Chem.High Throughput Screen(2006)9(4):321−8;Beckerら、Curr.Opin.Biotechnol.(2004)15(4):323−9;Daughertyら、J.Immunol.Methods(2000)243(1−2):211−227。
一旦酵素又は酵素のセットがSHMを使用して最適化されると、最適化された酵素の完全な生化学的分析が、当該分野で認められたアッセイを使用して、さらに分析され得る。さらに、既に議論したように、一旦最適化された酵素が同定されると、エピソームDNAが、抽出又はSV40 T抗原との共発現によって増幅され得(J.Virol.(1988)62(10)3738−3746)、次いで、抽出され、特異的プライマーを使用するPCRに供され得る。或いは、選択された細胞集団から総RNAが取得され得、特異的プライマーを使用するRT−PCRに供され得る。クローンが、標準的な方法論を使用して配列決定され得、得られた配列は、ヌクレオチド変異の頻度について分析され得る。得られたデータは、1以上の所望の特性における変化と特定のアミノ酸置換とを連結するデータベースに投入するために使用され得る。次いで、このようなデータベースは、好都合な変異を組換えるため、又は新たに同定された目的の領域(例えば、タンパク質の機能的部分をコードする核酸配列)中に標的化された多様性を有する次世代のポリヌクレオチドライブラリーを設計するために、使用され得る。
C.受容体
受容体はリガンドに結合し、細胞結合受容体(例えば、抗体(B細胞受容体)、T細胞受容体、Fc受容体、G共役タンパク質受容体、サイトカイン受容体、糖鎖受容体、及びAvimerTMベースの受容体)が挙げられるがこれらに限定されない特異的結合メンバーをコードする、未改変及び合成のポリペプチドの広い属を包含する。
一つの実施形態において、このような受容体は、以下の形質の1以上を改善するためにSHMを介して変更され得る:親和性、結合活性、選択性、熱安定性、タンパク分解安定性、溶解度、二量体化、折り畳み、免疫毒性、シグナル伝達カスケードへのカップリング及び発現。
ポリヌクレオチドの同定及び設計
上述のように、変異誘発の出発点は、目的の遺伝子のcDNAクローン又はそのアミノ酸若しくはポリヌクレオチド配列のいずれかであり得る。SHMの有効性を最大化するために、出発ポリヌクレオチド配列は、ホットスポットの密度を最大化し、コールドスポットの密度を減少させるように改変され得る。このような方法は、本明細書のセクションIV及びVに開示される。
このような受容体は、SHMにより最適化された配列の使用を介して変異誘発のために標的化されるか、SHM耐性配列の使用を介して変異誘発の間に保存されるかのいずれかであり得る、明確に規定されたドメインを保有する。変異誘発のために典型的に標的化されるドメイン(領域)としては、以下に限定されないが、翻訳後修飾の部位、表面露出されたループドメイン、種間のバリエーションの位置、タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン及び結合ドメインが挙げられる。変異誘発の間に保存されるドメイン(領域)としては、膜貫通ドメイン、不変アミノ酸位置、シグナル配列及び細胞内輸送ドメインが挙げられる。或いは、スクリーニングアプローチを使用して、以前に記載したように、目的の受容体のリーディングフレームを通じてホットスポットモチーフを体系的に挿入できる。
スクリーニング方法論
多数のハイスループットスクリーニングアプローチが当該分野で周知であり、改善された受容体を同定及び選択するために容易に適用できる。代表的なスクリーニングアプローチとしては、例えば、結合アッセイ、増殖アッセイ、レポーター遺伝子アッセイ及びFACSベースのアッセイが挙げられる。
一旦酵素又は酵素のセットがSHMを使用して最適化されると、最適化された受容体の完全な薬理学的分析が、当該分野で認められたアッセイを使用してさらに分析され得る。さらに、既に議論したように、一旦最適化された受容体が同定されると、エピソームDNAが、抽出又はSV40 T抗原との共発現によって増幅され得(J.Virol.(1988)62(10)3738−3746)、次いで、抽出され、特異的プライマーを使用するPCRに供される。或いは、総RNAが、選択された細胞集団から取得され、特異的プライマーを使用するRT−PCRに供され得る。クローンは標準的な方法論を使用して配列決定され得、得られた配列は、ヌクレオチド変異の頻度について分析され得る。得られたデータは、1以上の所望の特性における変化と特定のアミノ酸置換とを連結するデータベースに投入するために使用され得る。次いで、このようなデータベースは、好都合な変異を組換えるため、又は新たに同定された目的の領域(例えば、タンパク質の機能的部分をコードする核酸配列)中に標的化された多様性を有する次世代のポリヌクレオチドライブラリーを設計するために、使用され得る。
XI.スクリーニング系及び濃縮系
本明細書中に記載するポリヌクレオチドの合成ライブラリー、半合成ライブラリー又はシードライブラリーの発現により生成されるポリペプチドは、種々の標準的な生理学的手順、薬理学的手順及び生化学的手順を使用して、改善された表現型についてスクリーニングされ得る。このようなアッセイとしては、例えば以下が挙げられる:生化学的アッセイ(例えば、結合アッセイ、蛍光偏光アッセイ、溶解度アッセイ、折り畳みアッセイ、熱安定性アッセイ、タンパク分解安定性アッセイ、及び酵素活性アッセイ(一般には、Glickmanら、J.Biomolecular Screening、7 No.1 3−10(2002);Salazarら、Methods.Mol.Biol.230 85−97(2003)を参照のこと))、並びにある範囲の細胞ベースのアッセイ(シグナル伝達、遊走性、全細胞結合、フローサイトメトリー及び蛍光活性化セルソーティング(FACS)ベースのアッセイが含まれる)。本明細書中に記載する合成ライブラリー又は半合成ライブラリーがコードする目的のポリペプチドを発現する細胞は、任意の当該分野で認められたアッセイ(ペプチドを微粒子にカップリングする方法が挙げられるが、それらに限定されない)で濃縮され得る。
ハイスループット様式でこれらのアッセイを実施することを可能にする、多数のFACS及びハイスループットスクリーニング系が市販されている(例えば、Zymark Corp.、Hopkinton、Mass.;Air Technical Industries、Mentor、Ohio;Beckman Instruments Inc.、Fullerton、Calif.;Precision Systems,Inc.、Natick、Mass.を参照のこと)。これらの系は典型的に、全てのサンプル及び試薬のピペッティング、液体分配時限式インキュベーション、及びアッセイに適した検出器におけるマイクロプレートの最終的な読み取りを含む、手順全体を自動化する。これらの設定可能な系は、ハイスループット及び迅速なスタートアップ、並びに高い程度の柔軟性及びカスタマイズ性を提供する。このような系の製造者は、種々のハイスループット系に関する詳細なプロトコルを提供している。即ち、例えばZymark Corp.は、遺伝子転写、リガンド結合などの調節を検出するためのスクリーニング系を記載する技術告示を提供している。
A.活性を測定するための細胞ベースの方法
1.シグナル伝達ベースのアッセイ
例えば、増殖因子、酵素、受容体及び抗体などのタンパク質は、細胞又は細胞集団内のシグナル伝達に影響を与え得、それにより、レポーター遺伝子アッセイを使用して検出され得る転写活性に影響を与え得る。このようなモジュレーターは、完全アゴニスト又は部分アゴニスト、完全アンタゴニスト又は部分アンタゴニスト、或いは完全インバースアゴニスト又は部分インバースアゴニストとして、機能的に挙動し得る。
従って、1つのアッセイ形式において、シグナル伝達アッセイは、目的のタンパク質によって直接又は間接的に発現が調節されるレポーター遺伝子(これは、種々の標準的な手順によって測定できる)を含む細胞の使用に基づき得る。
レポータープラスミドは、レポーター遺伝子をコードするcDNAを、レポーター遺伝子のコード配列に対して5’側に存在する適切な最小プロモーター(即ち、真核生物細胞における転写開始を支持する任意の配列)の下流に配置することによって、標準的な分子生物学的技術を使用して構築できる。最小プロモーターは、ウイルス供給源由来であり得るか(例えば、SV40初期又は後期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、又はラウス肉腫ウイルス(RSV)初期プロモーター);又は真核生物細胞プロモーター由来であり得る(例えば、βアクチンプロモーター(Ng、Nuc.Acid Res.17:601−615、1989;Quitscheら、J.Biol.Chem.264:9539−9545、1989)、GADPHプロモーター(Alexander,M.C.ら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 85:5092−5096、1988、Ercolani,L.ら、J.Biol.Chem.263:15335−15341、1988)、TK−1(チミジンキナーゼ)プロモーター、HSP(ヒートショックプロテイン)プロモーター、又はTATAボックスを含む任意の真核生物プロモーター)。
レポータープラスミドはまた、モニタリングが所望されるシグナル伝達経路の適切なブランチに対し、通常2回〜7回反復して連結されるコンセンサス認識配列を含む、最小プロモーターに対して5’側のエレメントを典型的に含む。例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:サイクリックAMP応答エレメント(CRE、Stratageneから入手可能なファージミドベクターpCRE−Luc、Cat.No.219076中、細胞内cAMP濃度の変化に応答する)、血清応答エレメント(SRE、StratageneファージミドベクターpSRE−Luc.Cat.No.219080)、核因子B応答エレメント(NF−kB、StratageneファージミドベクターpNFKB−Luc Cat.No.219078)、活性化タンパク質1応答エレメント(AP−1、StratageneファージミドベクターpAP−1−Luc、Cat.No.219074)、血清応答因子応答エレメント(StratageneファージミドベクターpSRF−Luc、Cat.No.219082)、又はp53結合部位。
多数のレポーター遺伝子系が当該分野で公知であり、例えば、アルカリホスファターゼ(Berger,J.ら、(1988)Gene 66 1−10;Kain,S.R.(1997)Methods.Mol.Biol.63 49−60)、β−ガラクトシダーゼ(米国特許第5,070,012号(1991年12月3日に、Nolanらに対して発行された)及びBronstein,I.ら、(1989)J.Chemilum.Biolum.4 99−111を参照のこと)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(Gormanら、Mol Cell Biol.(1982)2 1044−51を参照のこと)、β−グルクロニダーゼ、ペルオキシダーゼ、β−ラクタマーゼ(米国特許第5,741,657号及び同第5,955,604号)、触媒的抗体、ルシフェラーゼ(米国特許第5,221,623号;同第5,683,888号;同第5,674,713号;同第5,650,289号;同第5,843,746号)及び天然に蛍光なタンパク質(Tsien,R.Y.(1998)Annu.Rev.Biochem.67 509−44)が挙げられる。
或いは、遺伝子調節に近接した中間シグナル伝達事象もまた、例えば、細胞内変化(細胞内貯蔵からの放出に起因するカルシウム濃度の変動、膜電位又はpHの変化、イノシトール三リン酸(IP3)又はcAMP濃度の増加、或いはアラキドン酸の放出が挙げられるが、これらに限定されない)に応答するレポーター分子からの蛍光シグナルを測定することによって、観察できる。
本明細書中で使用する場合、アゴニストとは、シグナル伝達を刺激するモジュレーターをいい、上で挙げたコンストラクトのエレメントの種々の組合せを使用して測定できる。本明細書中で使用する場合、部分アゴニストとは、バックグラウンドよりも高いが、完全アゴニストと比較して100%未満であるレベルまで、シグナル伝達を刺激できるモジュレーターをいう。スーパーアゴニストは、完全アゴニスト参照標準と比較して、100%を超えて、シグナル伝達を刺激できる。
本明細書中で使用する場合、アンタゴニストとは、それら自体ではシグナル伝達に対して影響を有さないが、アゴニスト(又は部分アゴニスト)誘導性のシグナル伝達を阻害できるモジュレーターをいう。本明細書中で使用する場合、部分アンタゴニストとは、それら自体ではシグナル伝達について影響を有さないが、アゴニスト(又は部分アゴニスト)誘導性のシグナルを、100%未満であるが測定可能な程度まで、阻害できるモジュレーターをいう。
本明細書中で使用する場合、インバースアゴニストとは、アゴニスト(又は部分アゴニスト)誘導性のシグナル伝達を阻害でき、単独で添加した場合にもシグナル伝達を阻害できるモジュレーターをいう。
2.遊走性アッセイ
細胞表面分子のいくつかのカテゴリー(例えば、GPCR(例えば、ケモカイン受容体、ヒスタミンH4、カンナビノイド受容体など))に対するアゴニスト活性は、細胞運動を導き得る。従って、試験分子の部分又は完全アゴニスト又はアンタゴニスト活性は、例えば、走化性アッセイ(Ghoshら、(2006)J Med Chem.May 4;49(9):2669−2672)、ケモキネシス(Gillianら、(2004)ASSAY and Drug Development Technologies.2(5):465−472)又は走触性(Hintermannら、(2005)J.Biol.Chem.280(9):8004−8015)において、細胞の遊走性に対する影響を介してモニタリングできる。
3.全細胞結合アッセイ
受容体、膜結合抗体及び細胞表面タンパク質を利用する結合アッセイが、目的のタンパク質の活性又は結合選択性をモニタリングするために、全細胞(膜調製物の対語として)を使用して実施され得る。このようなアッセイは、FACSの使用を介して、所望の細胞集団を直接選択するためにも使用できる(Fitzgeraldら、(1998)J Pharmacol Exp Ther.1998 Nov;287(2):448−456;Baker、(2005)Br J Pharmacol.Feb;144(3):317−22)。
多数の蛍光タグ化化合物が、全細胞結合アッセイを実施するために利用可能である。さらに、膜結合抗体の結合親和性及び選択性をプロファイリングするために、特定のペプチドが容易に標識され得る。一般に、ペプチドは、広範な種々の蛍光色素、クエンチャー及びハプテン(例えば、フルオレセイン、R−フィコエリトリン及びビオチン)にコンジュゲート化され得る。コンジュゲート化は、ペプチド合成の間又はペプチドが合成及び精製された後のいずれかに、行なうことができる。
ビオチンは、小さい(244キロダルトン)のビタミンであり、アビジン及びストレプトアビジンタンパク質に高い親和性で結合し、ほとんどのペプチドに対して、それらの生物学的活性を変更することなくコンジュゲート化できる。ビオチン標識したペプチドは、固定化したストレプトアビジン及びアビジンアフィニティゲルを使用して、未標識のペプチドから容易に精製され、ストレプトアビジン又はアビジンとコンジュゲート化されたプローブは、例えば、ELISA、ドットブロット又はウエスタンブロット適用において、ビオチン化ペプチドを検出するために使用できる。
ビオチンのN−ヒドロキシサクシンイミドエステルは、最も一般に使用されるタイプのビオチン化剤である。N−ヒドロキシサクシンイミド活性化ビオチンは、生理的緩衝液中で一級アミノ基と効率的に反応して、安定なアミド結合を形成する。ペプチドはN末端に一級アミンを有し、また、N−ヒドロキシサクシンイミド活性化ビオチン試薬を用いて標識するための標的として利用可能なリジン残基の側鎖中に数個の一級アミンを有することができる。特性及びスペーサーアームの長さが異なるいくつかの異なるビオチンのN−ヒドロキシサクシンイミドエステルが利用可能である(Pierce、Rockford、IL)。スルホ−N−ヒドロキシサクシンイミドエステル試薬は水溶性であり、有機溶媒の非存在下での反応の実施を可能にする。
或いは、ペプチドは、R−フィコエリトリン(赤色蛍光タンパク質)とコンジュゲート化され得る。R−フィコエリトリンは、海藻から単離されたフィコビリンタンパク質である。R−フィコエリトリンをペプチドを標識するのに理想的なものにしている特性がいくつか存在し、これには、広範な潜在的励起波長を含む吸収スペクトル、水性緩衝液中の溶解度、及び低い非特異的結合が含まれる。R−フィコエリトリンはまた、広い範囲にわたって温度及びpHに非依存的な、高い蛍光量子収量(578ナノメートルで0.82)を有する。R−フィコエリトリンとペプチドとのコンジュゲート化は、例えば、Glazer,AN及びStryer L.(1984).Phycofluor probes.Trends Biochem.Sci.9:423−7;Kronick,MN及びGrossman,PD(1983)Immunoassay techniques with fluorescent phycobiliprotein conjugates.Clin.Chem.29:1582−6;Lanier,LL及びLoken,MR(1984)Human lymphocyte subpopulations
identified by using three−color immunofluorescence and flow cytometry analysis:Correlation of Leu−2,Leu−3,Leu−7,and Leu−11 cell surface antigen expression.J Immunol.,132:151−156;Parks,DRら(1984)Three−color immunofluorescence analysis of mouse B−lymphocyte subpopulations.Cytometry 5:159−68;Hardy,RRら(1983)demonstration of B−cell maturation in X−linked immunodeficient mice by simultaneous three−color immunofluorescence.Nature 306:270−2;Hardy RRら(1984)J.Exp.Med.159:1169−88;並びにKronick,MN(1986)The use of phycobiliproteins as fluorescent labels in immunoassay.J Immuno.Meth.92:1−13に記載された、当該分野で認められた技術を使用して達成され得る。
多数の架橋剤が、フィコビリンタンパク質コンジュゲートを産生するために使用でき、これには、N−スクシンイミジル 3−[2−ピリジルジチオ]−プロピオンアミド、(スクシンイミジル 6−(3−[2−ピリジルジチオ]−プロピオンアミド)ヘキサノエート、又は(スルホスクシンイミジル 6−(3−[ピリジルジチオ]−プロピアンアミド)ヘキサノエートが挙げられるがこれらに限定されない。このような架橋剤は、フィコビリンタンパク質の表面露出した一級アミンと反応し、遊離スルフヒドリル基又は一級アミンのいずれかを含むペプチドと反応し得るピリジルジスルフィド基を生成する。
別の選択肢は、フルオレセインイソチオシアネート(分子量389)でペプチドを標識することである。フルオレセイン上のイソチオシアネート基は、ペプチド上のアミノ、スルフヒドリル、イミダゾイル(imidazoyl)、チロシル又はカルボニル基と架橋されるが、一般に、一級及び二級アミンの誘導体だけが安定な生成物を生じる。フルオレセインイソチオシアネートは、それぞれ494ナノメートル及び520ナノメートルの励起波長及び発光波長、並びにpH8の水性緩衝液中で72,0000M−1cm−1のモル吸光係数を有する(Der−Balian G,Kameda,N及びRowley,G.(1988)Fluorescein labeling of Fab while preserving single thiol.Anal.Biochem.173:59−63)。
4.全細胞活性アッセイ
多くのタンパク質(酵素、細胞内抗体及び受容体を含む)は、生きた細胞内で、又は表面上に表面ディスプレイされた場合に、直接的にアッセイできる。典型的には、首尾よいFACSベースのスクリーニングのために、蛍光又は蛍光発生膜透過性物質が必要とされ、多くのこのような試薬は、例えばMolecular Probes(Invitrogen、CA)から市販されている。酵素活性の増加は典型的に、細胞内に捕捉される蛍光産物の産生の増加を生じ、蛍光が低い細胞から例えばFACSによって分離され得る、より高い蛍光を有する細胞を生じる。さらに、多くのハイスループットのマイクロプレートスクリーニングが、酵素活性の事実上任意の既存のアッセイを利用する、タンパク質ライブラリーのスクリーニングのために存在する(一般には、Geddie,ら、Meth.Enzymol.388 134−145(2004)を参照のこと)。
5.細胞増殖アッセイ
種々のタンパク質(例えば、増殖因子、酵素、受容体及び抗体など)の発現又は活性は、アッセイとして又は改善されたタンパク質を分離する手段として利用される宿主細胞の増殖速度に影響を与え得る。
従って、1つのアッセイ形式において、細胞は、限界希釈まで希釈され得、より迅速に増殖する細胞が検出及び選択され得る。1態様において、このような増殖ベースのアッセイは、改善された酵素的代謝経路が必要とされる新規基質(例えば、新たな炭素供給源)の存在下で増殖する能力を含み得る。別の実施形態において、増殖アッセイは毒素の存在下での選択を含み得、この場合、毒素の活性解除機構が必要とされる。別の場合、増殖は、特異的リガンドの存在に応答して所望され得、この場合、リガンドの高親和性の結合が必要とされる。
B.選択及び濃縮のストラテジー
1.フローサイトメトリー及びFACS
フローサイトメトリー及び関連のフローソーティング(蛍光活性化セルソーティング即ちFACSとしても知られる)は、蛍光レポーターによる染色に基づいて、特定の成分又は成分バリアントの存在について個々の細胞が定量的にアッセイされ得る方法である。フローサイトメトリーは、生きた細胞の定量的なリアルタイム分析を提供し、50,000細胞/秒の効率的なセルソーティング速度を達成でき、個々の細胞又は規定された集団を選択することが可能である。多くの市販のFACS系(例えば、BD Biosciences(CA)、Cytopeia(Seattle、WA)、Dako Cytomation(Australia))が利用可能である。
FACSは、複数のパラメーター分析のため及び異なるフルオロフォアとの使用のための、利用可能な広範な波長を発生させることができる、種々のレーザーを備え得る。古典的に、アルゴン、クリプトン、又は両者の混合を使用する水冷イオンレーザーは、いくつかの特異的な線を生じ得る。408nm、568nm及び647nmは、例えば、クリプトンについての主要な輝線であり、488nm、457nm及びその他は、アルゴンの線である。これらのレーザーは、高電圧多相電源及び冷却水を必要とするが、高い出力を生じ得る。さらに、波長可変(tunable)及び非可変ダイオードレーザーが存在し、例えば、408nmの線は、発光ダイオード(LED)を介して安定に生成され得、これは、容易にソーターに追加できる。さらに、色素レーザーを使用して、FACS分析に利用可能な波長の利用可能な範囲をさらに拡張することができる。
FACS分析の間に、細胞は特異的レポーターで染色され、次いで、蛍光部分を励起するレーザーによる照合のための単一細胞ストリームへと、水力学的に集中させられる。蛍光発光は、波長制限された光学経路を介して検出され、個々の細胞に対応する数値データに変換される。フローソーティングの場合、予め規定された発光基準のサブセットが満たされ得、目的の細胞が、静電反発又は機械的作用により、さらなる使用のために収集レセプタクル中へと方向転換される(Herzenberg LA、Sweet RG、Herzenberg LA:Fluorescence activated cell sorting、Sci Amer 234(3):108、Mar 1976)。
FACSベースのアプローチは、シグナル伝達ベースのアッセイ、活性ベースのアッセイ及び結合アッセイと適合し、広範な目的のタンパク質(例えば、抗体、受容体、酵素及び任意の表面ディスプレイされたタンパク質が挙げられる)と適合する。FACSは、ほとんどの哺乳動物、酵母及び細菌細胞、並びに蛍光タグ化ビーズに対して、有効に適用できる。
1実施形態において、FACSは、SHM介在性の多様性を受けているか又は既に受けた、表面ディスプレイされたタンパク質(例えば、表面ディスプレイされた抗体)を発現する細胞のライブラリーをスクリーニングするために使用できる。このアプローチにおいて、細胞表面ディスプレイされたライブラリーが使用され、ディスプレイされたタンパク質は、溶液中で蛍光タグ化抗原と共に最初にインキュベートされる。FACS装置は、ライブラリーのより低い親和性のメンバーから、より高い蛍光強度を有する、ライブラリーの高親和性タンパク質メンバーを分離することができる。FACSベースの選択と組合わせた最適化された結合プロトコルの使用は、フェムトモルレベルまでの親和性を有する抗体を進化させることが可能であると示されている。例えば、Boderら PNAS、(2000)97:10701−10705;Boderら、(2000)Meth.Enzymol.(2000)328:430−444;VanAntwerpら、Biotechnol.Prog.(2000)16:31−37)を参照のこと。
目的の抗原に対する高い親和性を有する抗体及び結合タンパク質を効率的に選択し迅速に進化させるために、目的の抗原に対する広範な親和性を有する抗体の単離を促進でき、標識試薬又はカップリング試薬に結合するタンパク質をなお排除できるプロトコルが、確立され得る。これらのプロトコルは、選択された細胞集団の厳密さにおける前進、並びに細胞に提示される標的抗原の濃度及び密度の低下の両方を含む。
各ラウンドの選択の間に収集された総細胞集団の厳密さ又は分画に関して、最初のスクリーニングは一般に、結合特徴における小さい漸進的改善を有するタンパク質を可能な限り多く捕捉するために、比較的低い選別の係数(discrimination factor)を使用するであろう。例えば、典型的な初回ソーティングは、標的に結合する全細胞の上位10%、上位5%又は上位2%を捕捉し得る。親和性における大きい改善は、そのそれぞれが全体的親和性に対して小さい付加的効果を与える変異の組合わせの結果であり得る(Hawkinsら、(1993)J.Mol.Biol.234:958−964)。従って、例え僅かであっても改善された親和性(2〜3倍)を有する全てのライブラリークローンの回収が、ライブラリースクリーニングの初期段階の間には所望され、ソーティングゲートは、濃縮における犠牲を最小にして可能な限り多くのクローンを回収するために最適化され得る。
これらの選択された細胞は引き続いて回収されて、その集団がFACSソーティング、分析、変異誘発、細胞バンキングの引き続くラウンドが可能になるのに、又は配列情報を決定するのに合理的な数に達するまで、何日もの間標準的な培養条件を使用して増殖され得る。以下に議論するように、より高い親和性のバインダーを同定するための選択の引き続くラウンドは、FACS分析前のプレインキュベーション工程で使用される標識された結合ペプチドの密度及び濃度を漸進的に低下させることによって、達成できる。
ソーティングの首尾よい第一ラウンドの後に、収集された細胞は、集団を増幅するために再増殖され、次いで再ソーティングされ得る。各所望のクローンのより多いコピーが試験した細胞集団内に存在するので、ソーティングのこの段階及び引き続く段階で、より高い濃縮が可能である。例えば、集団中の細胞の上位約1%、上位約0.5%、上位約0.2%、又は上位約0.1%だけが、有意に改善されたクローンを同定するために選択され得る。最適な結合及び選択ストラテジーを確立することに関して、生殖系列抗体を含む第一世代のヒットは、典型的に、低い親和性及び比較的迅速な解離速度(off rate)を有する。例えば、Sagawaら(Mol.Immunology、39:801−808(2003))は、生殖系列Abについての見かけの親和性は、典型的に2×104〜5×106M−1の範囲であるが、この親和性は、親和性成熟の間に約109M−1まで増加する(即ち、解離速度(Koff)を低下させることによって主に介在される効果)ことを観察している。
弱い結合抗体の結合特徴は、初期世代の非最適化ライブラリーのスクリーニングを遅くし得る。なぜなら、特異的だが低い親和性の結合抗体は、典型的に、迅速な解離速度を有し、従って洗浄工程の間に失われる傾向が高いからである。これらの特異的バインダーの喪失は、選択プロセスで使用される成分に非特異的に結合する抗体の単離を生じ得る(Cumbersら、Nat.Biotechnol.2002Nov;20(11):1129−113)。
比較的低い親和性を有する(即ち、約500nMより高いKdを有する)タンパク質の選択を最大化するために、結合相互作用は、スクリーニングプロセスの間の結合ペプチドの解離を防止するために安定化され、カップリング試薬及び支持マトリクスへの結合を排除するための適切なブロッキング試薬を含む。この目的を達成するために、最初のスクリーニングは、非特異的結合を排除するための、カップリング試薬及び標識試薬(例えば、ストレプトアビジン、アビジン及びネイキッドビーズなど)とのプレインキュベーションをも含みつつ、低親和性相互作用の結合強度を増加させるための複数の結合相互作用の使用に基づく結合活性効果を利用するために、高密度の抗原を負荷(ロード)した蛍光タグ化ビーズを使用すべきである(一般には、Aggarwalら、(2006)Bioconjugate Chem.17 335−340;Wrightonら、(1996)Science 273 458−64;Terskikhら(1997)PNAS 94 1663−8;Cwirlaら、(1997)Science 276 1696−9;及びWangら(2004)J.Immunological methods 294 23−35を参照のこと)。
ビーズ負荷密度、洗浄及びプレインキュベーション条件の注意深い制御により、このような低い親和性の結合相互作用でさえ再現性良くモニタリングできることが実証されている(Werthenら、(1993)BBA 326−332)。重要なことに、結合効率に関するこれらの改善は、非特異的反応性の何らの有意な増加なしに生じることが実証されている(Giordanoら、(2001)Nat.Med.7 1249−53)。既に議論したように、選択はまた一般に、これらの弱い結合のライブラリーメンバーの全てが選択されるのを確実にするために、FACSの間に比較的低い厳密さのカットオフを使用することに基づくであろう。
ライブラリーの非特異的メンバー(即ち、結合ペプチドではなく、ビーズ又はカップリング試薬に結合するもの)をさらに排除するために、得られた細胞集団は、別個のカップリング試薬を使用して、ポリマー性結合ペプチド又はインタクトなポリマー性抗原のいずれかを用いて直接スクリーニングされる(例えば、抗原−ストレプトアビジン蛍光複合体を形成するための、ストレプトアビジン−フルオロフォアコンジュゲートにカップリングされたビオチン化抗原の使用を介して)。ビオチン又はフルオロフォアへの結合ペプチドのカップリング又は標識化は、本明細書中及び実施例に記載したように、標準的な当該分野で認められたプロトコルを使用して達成できる。
ストレプトアビジンは、フェムトモルレベルの親和性でビオチンと結合し、生理学的条件下でテトラマーを形成し、それにより、1つのビオチンでビオチン化された抗原とプレインキュベートした場合、4価の複合体(これ以降、以下に記載するように、ストレプトアビジン微小凝集体と呼ぶ)を生成する。ストレプトアビジンのプレローディングは、有効抗原濃度を500倍まで増加させることができ、抗原に特異的に結合する弱い抗原バインダーを単離するために有用である。ストレプトアビジン微小凝集体の使用は、非常に弱い親和性から中程度の親和性(約200nMより高いKd)までの範囲の親和性の抗体を単離するために有用である。さらに、細胞集団との接触前に微小凝集体を生成するために、ビオチン化エピトープを、室温で10〜15分間、ストレプトアビジン−フルオロフォアと予め反応させることができる。微小凝集体を引き続いて、二次試薬(例えば、抗ヒトIgG−フルオロフォアコンジュゲート)の添加の前に、15〜30分間にわたり同時に細胞と接触させる。1つの実験的アプローチにおいて、細胞は、1500×gで5分間遠心分離され、小容量(典型的には500μL〜1mL)のDAPI(PBS、1% BSA、2μg/mL DAPI)中に再懸濁される。「均一なアッセイ条件」と称する第二のアプローチにおいて、細胞は、抗原−ストレプトアビジン微小凝集体及びヤギ抗ヒトIgG−フルオロフォアが添加されるDAPI中に直接再縣濁される。この第二のアプローチは特に、解離時間を最小化することがより適切であり得る場合、より弱く相互作用する抗体(約200nMより高いKd)にとって望ましい。
より高い親和性(Kd>10nMであるが約100nM未満のKd)で、ライブラリーは、出発(野生型)相互作用のKd(見かけのKdは、ソーティングの前に、ある範囲の抗原濃度で実施した一連の分析的FACS実験によって容易に決定できる)よりも理想的には低い結合ペプチドのある濃度での平衡結合条件下で、モノマー結合ペプチド又は全長標的タンパク質と共にライブラリーをインキュベートすることによって、改善された親和性についてより容易に直接スクリーニングされる。これらの条件下で、より高い親和性を有する抗体及び結合タンパク質を保有する細胞は、より弱いバインダーよりもより有意に蛍光標識された結合ペプチドを保有して、集団中の最も蛍光性の細胞がさらなる最適化のために容易に選択されるのを可能にするであろう。典型的に、上位約0.5%〜約0.1%の細胞を選択するFACSソーティングゲートが確立できる。1つの非限定的な方法において、上位約0.2%の細胞が選択される。
Boder及びWittrup(Biotechnol.Prog.(1998)14
55−62)により認識されるように、非常に高い親和性(Kd<10nM)のタンパク質−リガンド相互作用のスクリーニングは、親和性について直接スクリーニングするのではなく、低下した解離速度についてスクリーニングすることによって、達成できる。このアプローチにおいて、細胞は、蛍光結合ペプチドで飽和まで標識され、その後過剰の非蛍光リガンドが添加される。細胞に会合した蛍光は、時間と共に指数関数的に減衰してバックグラウンドレベルに達し、解離反応は、通常冷緩衝液での大規模な希釈により、一定の持続時間の後停止させる。競合反応の持続時間は、異なるライブラリークローンについて、観察された蛍光における差異を決定し、従って、ライブラリーから選択される可能性の高い動力学的改善の範囲を決定する。競合的解離反応について、過剰の非蛍光リガンドの存在は、ゼロの有効正反応速度を生じ得る。競合反応の開始後所与の時間での平均蛍光強度は、解離速度(Koff)の関数である(VanAntwerp及びWittrup(2000)Biotechnol.Prog.16 31−37;Boderら(2000)PNAS 97 10701−10705;並びにFoote及びEisen(2000)PNAS 97 10679−10681)。改善された親和性及びより安定な結合を有する抗体を発現する、集団中の細胞は、競合反応の時間の長さを漸増させ、次いで、さらなる最適化のために集団中に残存する最も蛍光性の細胞を選択することによって、体系的に同定できる。
これらの条件下で、より高い親和性を有する、表面ディスプレイされた抗体及び結合タンパク質を保有する細胞は、ほとんど又は全く結合がないタンパク質を発現する細胞と比較して、有意により多くのビーズ又はストレプトアビジン−ビオチン化抗原微小凝集体結合を示すであろう。最も蛍光標識された細胞(最も高い親和性を有するタンパク質をディスプレイする)は次いで、標準的なFACSソーティングプロトコルを使用して、例えば実施例9に記載するように、集団中の細胞の残部から分離できる。
結合ペプチドへの再現性の良い結合を示すタンパク質を発現する選択された細胞集団が一旦作成されると、これは、抗体又は結合タンパク質が、所望のパターンの交差反応性及び/若しくは特異性(例えば、目的のタンパク質のマウス及びヒト両方のバリアントに対する)、又は関連の遺伝子ファミリーの2つの異なるメンバーに対する(しかし、関連がないか関連性が遠いタンパク質に対してではない))を示すことを確認するために、2以上のインタクトなタンパク質を用いて特徴付けされ得る。
1実施形態において、これは、フローサイトメーターで同時に分析できる2つの異なる色の検出可能なタグ(例えば、FITC及びフィコエリトリン)で標識した2以上のタンパク質種を使用した、マルチパラメータFACSを使用して達成できる。このアプローチを使用して、一方のタンパク質のみへの結合を示すか又は両方のタンパク質に結合可能な細胞を同定することが可能である。求められる二重特異的結合を示す細胞集団は、ソートされた細胞の数に基づいてFACS操作者によって選択され得、多特異性を示す細胞の割合が同定され得る。既に記載したように、これらの選択された細胞は、引き続いて回収され、その集団がFACSソーティング、分析、細胞バンキングの引き続くラウンドを可能にし、又は配列情報を決定するのに合理的な数に達するまで、何日もの間標準的な培養条件を用いて増殖され得る。
ライブラリーから選択されたバインダーはさらに、本明細書中に記載したように特徴付けでき、抗体又は結合タンパク質の配列が、細胞DNAのPCR、選択された細胞集団から単離したRNAのRT−PCR又はエピソームレスキューの後に決定され得る。
候補抗体及び結合タンパク質は、本明細書中に記載するように、増強された結合特性を有する抗体又は結合タンパク質を発現する細胞の集団を進化させるために、超変異及び選択のラウンドに繰り返し供され得る。より高い親和性を有する結合ペプチドに優先的及び/又は選択的に結合する細胞が選択され、増幅される。必要に応じて、別のラウンドの変異誘発が繰り返され、再度、改善された選択的かつ高い親和性の結合を示す細胞が、さらなる増幅及び増殖のために保持される。得られた新規改善されたバリアントはさらに、本明細書中に記載したように特徴付けでき、RT−PCR又はエピソームレスキューの後に、重鎖及び軽鎖の配列が決定され得る。
超変異/選択の最初の1、2又は3ラウンドで同定された変異は、元の親骨格の背景内の新たなテンプレートのセットへと、コンビナトリアルに組換えられ得、得られたテンプレートの全て又はサブセットは、その後、細胞中にトランスフェクトされ得、この細胞が次いでFACSソーティングによって選択される。変異の最良の組み合わせはこうして単離及び同定され、超変異/選択の引き続くラウンドで使用されるか、又は新たに同定されたテンプレートが充分に強力な親和性を示す場合には、さらなる機能的特徴付けのために、実験において代わりに使用されるかのいずれかである。
別の実施形態において、FACSは、SHM介在性の多様性生成を受けているか又は既に受けた細胞内タンパク質を発現する細胞のライブラリーをスクリーニングするために使用され得る。このアプローチにおいて、膜透過性の蛍光発生又は蛍光試薬が使用され、試薬の取り込み及び変換を可能にするために、細胞のライブラリーと共に最初にプレインキュベートされる。FACS機器は、より高い割合の試薬を変換でき、かつより低い活性のメンバーを含む細胞よりも蛍光が強い、ライブラリーの高活性タンパク質メンバーを分離することができる(例えば、Farinas、Comb.Chem.Highthroughput Screen.(2006)9:(4)321−328を参照のこと)。
検出される蛍光部分としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:フルオレセイン(一般にFITCと呼ばれる)、フィコビリタンパク質(例えば、フィコエリトリン(PE)及びアロフィコシアニン(APC)(Kronick,M.N.J.Imm.Meth.92:1−13(1986)))、蛍光半導体ナノ結晶(例えば、超高感度非同位体検出のための量子ドット(QDot)バイオコンジュゲート(Chan WC、Nie S.Science 281:2016−8(1998)))、及びクマリン誘導体(例えば、7−ヒドロキシクマリン由来のFluorescent Acylating Agents)などの化合物。
蛍光はまた、ティール蛍光タンパク質(TFP)などの蛍光タンパク質から、DNAに結合したDAPIなどの細胞成分の化学染色から、細胞性産物を認識する抗体に共有結合によりコンジュゲート化された蛍光部分から、細胞性受容体のリガンドに共有結合によりコンジュゲート化された蛍光部分から、及び細胞性酵素の基質に共有結合によりコンジュゲート化された蛍光部分から、報告され得る。
膜不透過レポーター(例えば抗体)で染色された細胞は、遺伝子、エピソーム又は目的のタンパク質などの成分を回収するための引き続く処理のためにソーティングされ得る。増幅についてインタクトな、表面発現成分について染色された細胞又は細胞膜透過レポーターで染色された細胞もまた、ソーティングされ得る。
2.アフィニティ分離
微粒子の使用に基づくアフィニティ分離は、特定の化合物又は目的の配列への親和性に基づいた、表面ディスプレイされたタンパク質の分離を可能にする。このアプローチは迅速であり、スケールアップが容易に可能であり、生きた細胞を用いて繰り返し使用できる。
官能基で修飾されたか又は種々の抗体若しくはリガンド(例えば、アビジン、ストレプトアビジン又はビオチン)でコーティングされた微粒子表面へ、化合物又はペプチドをカップリングする、常磁性ポリスチレン微粒子が市販されている(Spherotech,Inc.、Libertyville、IL;Invitrogen、Carlsbad、CA)。
1態様において、微粒子の常磁性の特性により磁石を使用した溶液からの分離が可能な常磁性ビーズが、使用され得る。微粒子は、磁石から外されると容易に再縣濁でき、それにより、付着したプローブを見出す、細胞の選択的分離を可能にする。
1実施形態において、ペプチドは、チューブ中で、ポリウレタン層でコーティングされた常磁性ポリスチレン微粒子にカップリングされ得る。微粒子表面上のヒドロキシル基は、p−トルエンスルホニルクロライドとの反応によって活性化される(Nilsson K及びMosbach K.「p−Toluenesulfonyl chloride
as an activating agent of agarose for the preparation of immobilized affinity ligands and proteins.」Eur.J.Biochem.1980:112:397−402)。得られたスルホニルエステルはその後、ペプチドのアミノ基又はスルフヒドリル基と、共有結合により反応できる。ペプチドは、活性化された微粒子の表面上に迅速に吸収され、その後、さらなるインキュベーションにより、共有アミン結合が形成される。微粒子(209微粒子/ミリリットル)は、微粒子1ミリリットル(ml)を含むチューブを磁石上に配置し、微粒子をチューブの磁石側に移動させ、上清を除去し、100ミリモル濃度(mM)のホウ酸塩緩衝液(pH9.5)1ml中に微粒子を再縣濁することによって、2回洗浄される。洗浄後、微粒子は、100mMのホウ酸塩緩衝液(pH9.5)中に109微粒子/mlの濃度で再縣濁される。11ナノモルのペプチドを微粒子に添加し、微粒子/ペプチド混合物を1分間ボルテックスして混合する。少なくとも48時間、ゆっくりした傾斜回転で室温で、微粒子をペプチドとインキュベートする。微粒子上へのペプチドの最適な方向付けを保証するために、ウシ血清アルブミン(BSA)を、インキュベーションが10分間進行した後に、0.1%(重量/体積)の最終濃度になるように、微粒子/ペプチド混合物に添加する。インキュベーション後、微粒子/ペプチド混合物を含むチューブを、微粒子がチューブの磁石側に移動するまで、磁石上に配置する。上清を除去し、微粒子を、1%(重量/体積)BSA含有のリン酸緩衝化生理食塩溶液(PBS)(pH7.2)1mlで、4回洗浄する。最後に、微粒子を、1%(重量/体積)BSA含有のPBS溶液(pH7.2)1ml中に再縣濁する。
或いは、表面カルボン酸を含む常磁性ポリスチレン微粒子は、カルボジイミドで活性化され得、その後ペプチドにカップリングされ、ペプチドの一級アミノ基と微粒子表面上のカルボン酸基との間の安定なアミド結合を生じる(Nakajima N及びIkade Y、Mechanism of amide formation by carbodiimide for bioconjugation in aqueous media,Bioconjugate Chem.1995、6(1)、123−130;Gilles MA、Hudson AQ及びBorders CL Jr、Stability of water−soluble carbodiimides in aqueous solution、Anal Biochem.1990 Feb 1;184(2):244−248;Sehgal D及びVijay IK、a method for the high efficiency of water−soluble carbodiimide−mediated amidation、Anal Biochem.1994 Apr;218(1):87−91;Szajani Bら、Effects of carbodiimide structure on the immobilization of enzymes、Appl Biochem Biotechnol.1991 Aug;30(2):225−231)。微粒子(29微粒子/ミリリットル)を、25mM 2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(pH5)1mlで10分間、室温でゆっくりした傾斜回転で2回洗浄する。洗浄した微粒子を、25mM 2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(pH5)700マイクロリットル(μL)中に再縣濁し、その後、25mM 2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(pH5)中に再縣濁したペプチド21ナノモルを、微粒子溶液に添加する。微粒子/ペプチド混合物をボルテックスによって混合し、室温で30分間ゆっくりした傾斜回転でインキュベートする。この最初のインキュベーション後、25mM 2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(pH5)中に100ミリグラム(mg)/mLで再縣濁した氷冷1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩300μLを、ペプチド/微粒子混合物に添加し、4℃で一晩ゆっくりした傾斜回転でインキュベートする。ペプチドがカップリングした微粒子を、1mlの50mM Tris(pH7.4)/0.1% BSAで、室温で15分間、ゆっくりした傾斜回転で4回洗浄する。洗浄後、ペプチドがカップリングした微粒子を、1%(重量/体積)BSA含有のPBS溶液(pH7.2)1ml中19微粒子の濃度で再縣濁する。
別の選択肢は、その表面がストレプトアビジンの単層と共有結合した常磁性ポリスチレン微粒子に、ビオチン化ペプチドをカップリングすることである。簡潔に述べると、1mlのストレプトアビジン微粒子を、微量遠心分離チューブに移し、チューブを磁石上に配置し、チューブの磁石側に微粒子を集めることによって4回洗浄する。次いで、溶液を除去し、微粒子を、1%(重量/体積)BSA含有のPBS溶液(pH7.2)1ml中に穏やかに再縣濁する。最後の洗浄後、微粒子を、1%(重量/体積)BSA含有のPBS溶液(pH7.2)1ml中に再縣濁し、33ピコモルのビオチン化ペプチドを、微粒子溶液に添加する。微粒子/ペプチド溶液を、ゆっくりした傾斜回転で、室温で30分間インキュベートする。カップリング後、未結合のビオチン化ペプチドを、1%(重量/体積)BSA含有のPBS溶液(pH7.2)で4回洗浄することによって、微粒子から除去する。最後の洗浄後、微粒子/ペプチド混合物を、19微粒子/mlの最終ビーズ濃度になるよう再縣濁する(Argarana CE、Kuntz ID、Birken S、Axel R、Cantor CR.Molecular cloning and nucleotide sequence of the streptavidin gene.Nucleic Acids Res.1986;14(4):1871−82;Pahler A、Hendrickson WA、Gawinowicz Kolks MA、Aragana CE、Cantor CR.Characterization and crystallization of core streptavidin.J Biol Chem 1987:262(29):13933−7)。
本発明において使用するための特定のペプチド配列の同定、選択及び使用は、共有に係る優先出願第60/995,970号(代理人書類番号33547−708.101)(2007年9月28日出願)に開示されている。
XII.データベース
本発明は、特定のタンパク質の配列及び同定された変異(結合ドメインの配列、又は活性部位、並びにそれらの結合特徴、活性、安定性特徴及び3次元分子構造が含まれるが、これらに限定されない)を含む、コンピュータ可読データベースを生成する方法を含む。具体的には、本発明は、目的のタンパク質又はその関連のタンパク質若しくはその部分から生成した変異のデータベースに基づいた、目的のタンパク質の設計及び最適化を助けるための、このようなデータベースの使用を含む。
他の実施形態において、本発明のデータベースは、スクリーニングによって特異的標的に結合することが同定されたタンパク質(単数又は複数)の変異、又はこのようなタンパク質の他の表示(例えば、図的表示又は名称など)を含み得る。
「データベース」とは、読み出し可能なデータの収集を意味する。本発明は、本明細書中に記載するような、タンパク質(単数又は複数)のアミノ酸及び核酸構造(例えば、その配列、構造、及び活性又は結合活性)に関する情報が組み込まれたか又はそのような情報を含む、機械可読媒体を包含する。このような情報は、サブユニット、ドメイン及び/又はそれらの部分(例えば、リガンド結合(結合)若しくはリガンド未結合(未結合)のいずれかの、活性部位、補助結合部位、及び/又は結合ポケットを含む部分)に関するものであり得る。
或いは、情報は、タンパク質中に見出される特定の構造を示す識別子の情報であり得る。本明細書中で使用する場合、「機械可読媒体」とは、コンピュータ又はスキャナにより読み取られ直接アクセスされ得る、任意の媒体をいう。このような媒体は、多くの形態をとり得、これには、不揮発性媒体、揮発性媒体及び伝送媒体が挙げられるが、これらに限定されない。不揮発性媒体(即ち、電源の非存在下で情報を保持できる媒体)には、ROMが含まれる。揮発性媒体(即ち、電源の非存在下で情報を保持できない媒体)には、メインメモリが含まれる。
伝送媒体としては、同軸ケーブル、銅線及び光ファイバー(バスを含むワイヤが含まれる)が挙げられる。伝送媒体は、搬送波(即ち、情報信号を伝達するために、周波数、振幅又は位相などにおいて調節され得る、電磁波)の形態をとることもできる。さらに、伝送媒体は、音波又は光波(例えば、電波及び赤外線通信の間に発生するもの)の形態をとり得る。
このような媒体には以下も挙げられるがこれらに限定されない:磁気記憶媒体(例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク記憶媒体及び磁気テープ);光学記憶媒体(例えば、光ディスク又はCD−ROM);電気記憶媒体(例えば、RAM又はROM)、PROM(即ち、プログラム可能なリードオンリメモリ(ROM))、EPROM(即ち、消去可能PROM)(FLASH−EPROMを含む)、任意の他のメモリチップ又はカートリッジ、搬送波、又はプロセッサが情報を読み出せる任意の他の媒体、及びこれらのカテゴリーのハイブリッド(例えば、磁気/光学記憶媒体)。このような媒体にはさらに、スキャン装置によって読み取られ得、コンピュータ若しくは本明細書中に記載する任意のソフトウェアプログラム(例えば、光学式文字認識(OCR)ソフトウェア)によって容易にアクセスされるフォーマットに変換され得る、アミノ酸又はポリヌクレオチドの配列の表示が記録された、紙が含まれる。このような媒体には、穴のパターンを有する物理的媒体(例えば、パンチカード及び紙テープなど)も含まれる。
具体的には、目的のタンパク質の設計及び最適化を助けるための、データベースから伝送媒体を介した第三者サイトへのデータの伝送が、本発明に含まれる。
種々のデータ記憶構造が、本発明のアミノ酸配列若しくはポリヌクレオチド配列又はそれらの部分及び/或いは活性データが記録された、コンピュータ可読媒体を作成するために利用可能である。データ記憶構造の選択は、記憶された情報にアクセスするために選択される手段に基づき得る。本明細書中に記載するアミノ酸配列若しくはポリヌクレオチド配列又はそれらの部分の全てのフォーマットの表示が、本発明によって企図される。本発明の配列が記憶されたコンピュータ可読媒体を提供することによって、改善されたタンパク質を生成するための、モデリングプログラム及び設計プログラムにおいて使用するためのアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列におけるSHM介在性の変化並びに関連情報に、日常的にアクセスできる。
コンピュータは、本発明のタンパク質若しくはペプチド構造の配列又はその部分(例えば、リガンド結合形態若しくはリガンド未結合形態のいずれかの、活性部位、補助結合部位及び/又は結合ポケットを含む部分)を表示するために使用され得る。用語「コンピュータ」には以下が挙げられるがこれらに限定されない:データを保存でき、1以上のアプリケーション(即ちプログラム)を独立して実行できる、メインフレームコンピュータ、パーソナルコンピュータ、携帯用ラップトップコンピュータ、及び携帯情報端末(「PDA」)。コンピュータとしては、例えば、本発明の機械可読記憶媒体、機械可読記憶媒体中にコード化された機械可読データを処理するための指示を記憶するためのワーキングメモリ、機械可読情報を処理するための、ワーキングメモリ及び機械可読記憶媒体に作動可能に連結された中央演算処理装置、及び構造座標又は三次元表示を表示するための、中央演算処理装置に作動可能に連結されたディスプレイ、を挙げることができる。
本発明のコンピュータとしては、例えば以下も挙げることができる:中央演算処理装置、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)又は「コアメモリ」であり得るワーキングメモリ、大容量記憶装置(例えば、1以上のディスクドライブ又はCD−ROMドライブ)、1以上のブラウン管(「CRT」)ディスプレイターミナル又は1以上のLCDディスプレイ、1以上のキーボード、1以上の入力線、及び1以上の出力線(これらは全て、従来の双方向システムバスによって相互接続される)。本発明の機械可読データは、電話回線又は専用データ回線(そのいずれも、例えばワイヤレスモードの連絡を含み得る)によって接続されたモデム(単数又は複数)を介して、入力及び/又は出力できる。入力ハードウェアもまた(又はその代わりに)、CD−ROMドライブ又はディスクドライブを含み得る。入力デバイスの他の例は、キーボード、マウス、トラックボール、フィンガーパッド又はカーソル指示キーである。出力ハードウェアもまた、従来のデバイスにより実装され得る。例えば、出力ハードウェアとして、CRT、又は任意の他のディスプレイターミナル、プリンター、又はディスクドライブを挙げることができる。CPUは、種々の入力デバイス及び出力デバイスの使用を調整し、大容量記憶装置からのデータアクセス並びにワーキングメモリへの及びワーキングメモリからのアクセスを調整し、データ処理工程の順序を決定する。コンピュータは、本発明のデータを処理するために、種々のソフトウェアプログラムを使用できる。多数のこれらのタイプのソフトウェアの例は、本出願を通じて議論されている。
以下の実施例により本願の構成要素を説明するが、何ら限定して解釈されるべきではない。
実施例1
ブラストサイジンをコードする合成ポリヌクレオチドの作製
選択マーカー、SHMに関与する酵素、又はレポーター遺伝子等のベクターエレメントにおいて体細胞超変異が起こる可能性を減らすことにより、SHMを起こして追跡するためのベクター及びシステムがより安定となり、それによって目的のポリヌクレオチドを体細胞超変異のより効果的な標的とすることが可能となる。
A.ポリヌクレオチド設計
一般的に、配列を本明細書中に記載の教示を用い、そしてセクションIII及びセクションIV中に詳述した通りSHM用に工夫する。以下の実施例において、配列最適化は上記の通りコンピュータープログラムSHMredesign.plを用い、表7に列挙したホットスポット及びコールドスポットモチーフに基づく。
このプログラムを用い、配列内のどの位置も「+」、「−」、又は「.」のいずれかの記号で注記し、その特定位置でSHM感受性においてよりホット、よりコールド、又はニュートラルな変化が所望かどうか指定する。ここで「+」はホットスポット、「−」はコールドスポット、及び「.」はニュートラルポジションを指定する。例えば、ブラストサイジン遺伝子のどの位置でもSHM耐性型を同定するためには以下のブラストサイジンの入力配列が用いられる。
それに比べて、当該遺伝子のどの位置でもSHMにより感受性の、ブラストサイジン遺伝子のよりホットな型を同定するためには以下の入力ファイルが用いられる。
以前に記載された通り、この過程の間に、野生型タンパク質のアミノ酸配列に一致する9塩基に渡る領域の全てのヌクレオチド配列を列挙し、ホットスポットモチーフ、コールドスポットモチーフ、CpGモチーフ、コドン使用頻度、及び同一ヌクレオチドのストレッチの数について記録する。次いで、当該プログラムによりいずれかのランダム配列をよりホット、よりコールド、又はニュートラルなポリヌクレオチドタイルと置換できるかどうか決定する。
図7に示す通り、このアプローチは、イヌAIDに迅速に適用した場合に、当該ヌクレオチド配列の15〜20%の置換により元の配列と相違するコールドに最適化した新たなイヌAID配列の同定に(数百のタイル置換内で)収束する。変化の大半が、反復サイクルの初期に起こり、通常、反復約500回の後に完了する。予想されるとおり、より大きな遺伝子では完全最適化配列に到達するためにより多くの反復回数が必要となる。通常、大半の遺伝子については、反復2000〜3000回の使用で十二分である。
多くの未改変遺伝子の無作為解析により、たいていの哺乳動物遺伝子は、100ヌクレオチド当たり平均約9〜15コールドスポットを創出し、メジアン密度が約13.8コールドスポット/100ヌクレオチドを有し、100ヌクレオチド当たり約7〜13ホットスポットのホットスポット密度(メジアン密度が100ヌクレオチド当たり約8.3ホットスポット)を有するコドンを使用することが示されている。
未改変ブラストサイジン遺伝子についての初期の出発配列、並びにホットスポット、コールドスポット及びCpGの頻度を図8に示す。
1.コールド ブラストサイジン
このアプローチを用いて作製したSHM耐性(コールド)型のブラストサイジンについての最適化配列を、結果生じるホットスポット及びコールドスポット頻度における変化と共に図9に示す。ブラストサイジン配列をより体細胞超変異に耐性にするための当該配列の最適化により約188%のコールドスポット数増加(73増加)、及び約57%のホットスポット数減少(15減少)がもたらされた。全体のコールドスポット頻度は100ヌクレオチド当たり約15コールドスポットの初期密度から100ヌクレオチド当たり約28コールドスポットの平均密度へと増加し、全体のホットスポット頻度は未改変遺伝子中の100ヌクレオチド当たり約9ホットスポットから、SHM耐性型中の100ヌクレオチド当たり約5ホットスポットへと減少した。
2.ホット ブラストサイジン
このアプローチを用いて作製したSHM感受性型のブラストサイジンについての最適化配列を、結果生じるホットスポット及びコールドスポット頻度における変化と共に図10に示す。ブラストサイジン配列をより体細胞超変異に感受性にするための当該配列の最適化により約197%のホットスポット数増加(34増加)、及び約56%のコールドスポット数減少(26減少)がもたらされた。全体のホットスポット頻度は100ヌクレオチド当たり約9ホットスポットの初期密度から100ヌクレオチド当たり約17ホットスポットの平均密度へと増加し、全体のコールドスポット頻度は未改変遺伝子中の100ヌクレオチド当たり約15コールドスポットから、SHM感受性型中の100ヌクレオチド当たり約9コールドスポットへと減少した。
B.クローニング及び解析
合成ポリヌクレオチド配列に、無関係な制限部位が確実に無いことを最終的に点検した後、完全なポリヌクレオチド配列を合成し(DNA2.0,MenloPark,CA)、DNA2.0のクローニングベクターのうちの1つにクローニングし(以下表11参照)、正しく合成されていることを確認するため配列決定する。
例えばEボックスモチーフ又はIgエンハンサーエレメントといった他のエレメントは、下記実施例5に記載されるようにオリゴ合成又はPCR増幅のいずれかにより創出する。
新たな合成インサートの機能性を試験するため、上記表11に列挙した制限酵素を用いてDNA2.0ソースベクターからコーディング領域を切り出し、標準的な組み換え分子生物学的技法を用いて発現ベクター(表11)に挿入する。ABシリーズベクターへの選択マーカー(即ち、コールドブラストサイジン、コールドハイグロマイシン、及び未改変ピューロマイシン)の挿入によりそれらをEMCV IRES配列(AB150、AB102、AB179;図33A参照)の下流又はpSVプロモーター(AB161、AB153、AB163;図33B参照)の下流に配置する。
最適化された合成遺伝子の機能活性を試験するために、Hek293細胞を6ウェルマイクロタイターディッシュ中、4x105/ウェルで播種する。24時間後、Roche Applied Sciences (Indianapolis,IN)のFugene6試薬を用い、試薬とDNAの比率をウェル当たり3μL:1μgDNAとしてトランスフェクションを行う。この比率は複数のプラスミドを用いたトランスフェクションについても維持される。トランスフェクションは製造元のプロトコールに従って行う。
体細胞超変異に対する各コンストラクトの相対的安定性/感受性を測定するために、トランスフェクトされた各細胞集団の安定な細胞系を作製し、それらがSHM介在性の変異を蓄積する相対速度を測定するために試験した。これらの変異の大半は機能の損失をもたらすので、相対的変異誘発負荷はFACSを介して蛍光欠失として簡便に測定できる(以下及び実施例4を参照)。
FACS解析。FACS解析前に、細胞をトリプシン処理により回収し、1% w/v BSA含有PBS中で2回洗浄し、2ng/ml DAPIを含有するPBS/1%BSA200μl中に再懸濁する。細胞をCytopeia Influx中、200mW 488nm及び50mW 403nmレーザー励起で解析する。1試料当たり最大百万個の細胞を取得する。DAPI蛍光を460/50バンドパスフィルターを通して測定する。GFP蛍光を528/38バンドパスフィルターを通して測定する。細胞バックグラウンドを超えるGFP蛍光が検出できず、DAPIを排除している生細胞のパーセンテージとして、パーセントGFP発現を報告する。
イヌAID遺伝子の機能を試験するための復帰アッセイ。GFP*(部位特異的変異誘発により82位に導入した終止コドン[Y82stop]を伴うGFP)をAB174(コールド イヌAID)と共トランスフェクションし、トランスフェクションから3日後に細胞をフローサイトメトリーで解析し、抗生物質による選択下に置き、13〜15日間、隔日で更にフローサイトメトリーで解析する。
抗生物質による選択。Hek293細胞の選択に用いられる抗生物質の濃度は殺菌曲線を実行する(即ち、トランスフェクションしていない−従って抗生物質感受性の−細胞を全て殺す最少抗生物質濃度の測定)ことによって経験的に決定する。トランスフェクションから3日後、細胞を4x105/ウェルで播種し、以下の濃度:1.5μg/mlピューロマイシン(Clontech,Mountain View,CA);16μg/mLブラストサイジン(Invitrogen,Carlsbad,CA);及び360μg/mLハイグロマイシン(Invitrogen,Carlsbad,CA)、で選択する。
機能性を測定するために耐性マーカー遺伝子を、16μg/mLブラストサイジン(Invitrogen,Carlsbad,CA);及び360μg/mLハイグロマイシン(Invitrogen,Carlsbad,CA)存在下で2週間の薬剤耐性細胞増殖を促進するその能力に基づき、適切な発現プラスミド(即ち、ブラストサイジンについてはAB102、ハイグロマイシンについてはAB179)でHek293細胞をトランスフェクトすることにより試験する。
コールド ブラストサイジンを含有するAB102でトランスフェクトすることにより、野生型遺伝子に匹敵する割合で、トランスフェクトされたhek293細胞の薬剤耐性コロニーが結果的に作り出された。
実施例2
ハイグロマイシンをコードする合成ポリヌクレオチドの作製
A.ポリヌクレオチド設計
未改変ハイグロマイシンの出発配列を図11に、ホットスポット及びコールドスポット頻度の初期解析と共に示す。
実施例1に記載したとおり、表7に列挙したホットスポット及びコールドスポットモチーフに基づき、コンピュータープログラムSHMredesignを用いて配列最適化を完了する。
1.コールド ハイグロマイシン
反復1回から反復2000回までで、71コールドスポットが更に当該遺伝子に挿入され、存在する12ホットスポットが除去され、61CpGサイトが除去されて、当該遺伝子配列を体細胞超変異により感受性でなくなる。更なる反復による、更なる有益な変化は観察されない。
このアプローチを用いて作製したSHM耐性型のハイグロマイシンについての最適化配列を、結果生じるホットスポット及びコールドスポット頻度における変化と共に図12に示す。ハイグロマイシン配列をより体細胞超変異に耐性にするための当該配列の最適化により約144%のコールドスポット数増加(71増加)、及び約17%のホットスポット数減少(12減少)がもたらされた。全体のコールドスポット頻度は100ヌクレオチド当たり約15コールドスポットの初期密度から100ヌクレオチド当たり約22コールドスポットの平均密度へと増加し、全体のホットスポット頻度は未改変遺伝子中の100ヌクレオチド当たり約7ホットスポットから、SHM耐性型中の100ヌクレオチド当たり約5ホットスポットへと減少した。
コールド ハイグロマイシンを含有するAB179でトランスフェクトすることにより、野生型遺伝子に匹敵する割合で、トランスフェクトされたHek293細胞の薬剤耐性コロニーが作り出された。
2.ホット ハイグロマイシン
逆に言えば、選択マーカー等のベクターエレメントにおける体細胞超変異の確率を高めることにより、将来の使用のためマーカーを「回収」することができる。
ホット ハイグロマイシンコンストラクトの場合、設計したヌクレオチド配列はホットスポットについては最多にし、コールドスポットについては最少にし、CpGリピートについては最少にし、且つ公知の哺乳動物の最適化コドン使用頻度に整合させる。
ハイグロマイシン配列をより体細胞超変異に感受性にするための当該配列の最適化により約183%のホットスポット数増加(61増加)、及び約42%のコールドスポット数減少(35減少)がもたらされた(図13)。全体のホットスポット頻度は100ヌクレオチド当たり約7ホットスポットの初期密度から100ヌクレオチド当たり約13ホットスポットの平均密度へと増加し、全体のコールドスポット頻度は未改変遺伝子中の100ヌクレオチド当たり約15コールドスポットから、SHM感受性型中の100ヌクレオチド当たり約12コールドスポットへと減少した。
B.クローニング及び解析
合成ポリヌクレオチド配列に、無関係な制限部位が確実に無いことを最終的に点検した後、完全なポリヌクレオチド配列を合成し(DNA2.0,Menlo Park,CA)、DNA2.0のクローニングベクターのうちの1つにクローニングし(表11;実施例1を参照)、正しく合成されていることを確認するため配列決定し、活性について上記実施例1に記載されるようにして試験する。
体細胞超変異に対する各コンストラクトの相対的安定性/感受性を測定するために、トランスフェクトされた各細胞集団の安定な細胞系を作製し、それらがSHM介在性の変異を蓄積する相対速度を測定するために試験する。これらの変異の大半は機能の損失をもたらすので、相対的変異誘発負荷はFACSを介して蛍光欠失として簡便に測定できる(実施例4参照)。
実施例3
レポーター遺伝子をコードする合成ポリヌクレオチドの作製
A.ポリヌクレオチド設計
未改変ティール(Teal)蛍光タンパク質(TFP)の出発配列を図14に、ホットスポット及びコールドスポット頻度の初期解析と共に示す。
1.ホットTFP
実施例1に記載したとおり、表7に列挙したホットスポット及びコールドスポットモチーフに基づき、コンピュータープログラムSHMredesignを用いて配列最適化を完了し;得られたTFPのホット及びコールド型をそれぞれ図15及び16に示す。
TFP配列をより体細胞超変異に感受性にするための当該配列の最適化により約170%のホットスポット数増加(28増加)、及び約26%のコールドスポット数減少(27減少)がもたらされた。全体のホットスポット頻度は100ヌクレオチド当たり約6ホットスポットの初期密度から100ヌクレオチド当たり約10ホットスポットの平均密度へと増加し、全体のコールドスポット頻度は未改変遺伝子中の100ヌクレオチド当たり約15コールドスポットから、SHM感受性型中の100ヌクレオチド当たり約11コールドスポットへと減少した。
2.コールドTFP
TFP配列をより体細胞超変異に耐性にするための当該配列の最適化により約120%のコールドスポット数増加(21増加)、及び約10%のホットスポット数減少(4減少)がもたらされた。全体のコールドスポット頻度は100ヌクレオチド当たり約15コールドスポットの初期密度から100ヌクレオチド当たり約18コールドスポットの平均密度へと増加し、全体のホットスポット頻度は未改変遺伝子中の100ヌクレオチド当たり約6ホットドスポットから、SHM耐性型中の100ヌクレオチド当たり約5ホットスポットへと減少した。
B.クローニング及び解析
合成ポリヌクレオチド配列に、無関係な制限部位が確実に無いことを最終的に点検した後、完全なポリヌクレオチド配列を合成し(DNA2.0, Menlo Park,CA)、DNA2.0のクローニングベクターのうちの1つにクローニングし(表11;実施例1を参照)、正しく合成されていることを確認するため配列決定し、活性について下記に記載されるようにして試験する。
Hek293細胞を、同一のCMVプロモーターにより発現が駆動されるホット又はコールドのいずれかの型のTFPを含有する発現ベクター(実施例1で上記されるようなAB102及び136)でトランスフェクトする。トランスフェクションから3日後に安定した発現についての選別を開始した。FACS解析前に、細胞をトリプシン処理により回収し、1% w/v BSA含有PBS中で2回洗浄し、2ng/ml DAPIを含有するPBS/1%BSA200μl中に再懸濁する。細胞をCytopeia Influx中、200mW 488nm及び50mW 403nmレーザー励起で解析する。1試料当たり最大百万個の細胞を取得する。DAPI蛍光を460/50バンドパスフィルターを通して測定する。GFP蛍光を528/38バンドパスフィルターを通して測定する。細胞バックグラウンドを超えるGFP蛍光が検出できず、DAPIを排除している生細胞のパーセンテージとして、パーセントGFP発現を表12Aに報告する。
これらの結果より、ホット及びコールド両型のTFPの、バックグラウンドを上回る良好な発現が示される。この場合、配列を「コールド」にすることにより、タンパク質の相対的な発現が向上するという驚くべき結果がもたらされた。そのような発現の向上によりSHM耐性合成遺伝子に更なる利益がもたらされる。
体細胞超変異に対する各コンストラクトの相対的安定性/感受性を測定するために、トランスフェクトされた各細胞集団の安定な細胞系を作製し、それらがSHM介在性の変異を蓄積する相対速度を測定するために試験する。これらの変異の大半は機能の損失をもたらすので、相対的変異誘発負荷はFACSを介して蛍光欠失として簡便に測定できる(実施例4参照)。
ホットTFP又はコールドTFPいずれかのSHM最適化コーディング配列を含むエピソーム性の発現コンストラクトを個々に、HEK293にAIDとともに安定的に共トランスフェクトし、3週間増殖及び生育させた(これらの実験において用いたコールド イヌAIDはNESを不活性化するL198A変異を含有する;配列番号22)。次いで、細胞ストックを凍結し、ホットTFP及びコールドTFPの各1バイアルを融解し、4日間培養して増殖させ、次いで融解して4日培養したものを、一定分量の更なるオリジナルAID発現コンストラクトで一過的にトランスフェクトすることにより補足的AIDでパルスした(「AIDパルシング」と称される)。AIDパルス後9日目に細胞をトリプシン処理により回収し、1150xgで5分でペレットにし、後に使用するため凍結した。
続いて細胞ペレットを融解し、オリゴヌクレオチド(オリゴ)プライマーGTGGGAGGTCTATATAAGCAGAGC(配列番号339)及びGATCGTCTCACGCGGATTGTAC(配列番号377)を用いてPCRによりTFP ORFを回収した。前者のオリゴは、TFP開始コドンの5’側142ntに位置する、TFPmRNA発現を駆動するために用いられるCMVプロモーターの3’端近くから増幅し、後者のオリゴはTFP終止コドンの3’側1ntで終わる配列と一致する。各PCR反応(全体積50μL)は以下の条件下で35サイクル行った:95℃5分間、35サイクルの(95℃30秒間、55℃30秒間、68℃45秒間)、続いて4℃に冷却前に68℃1分。増幅したPCR産物はTOPO(登録商標)TA cloning vector (Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングし、インサートを配列決定した。合計ホット166及びコールド111のTFP ORFをレスキューし、配列決定し、結果生じる変異のスペクトルを比較した。表12Bに、当該2組の配列中に観察された変異についての全体統計を示す。
変異の頻度はホットスポットを最多にした型のTFP鋳型中ではホットスポットを最少にしたコールドTFP配列に比べておよそ3.8倍高い。本データにより、ポリヌクレオチド配列のSHM最適化が、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドによってもたらされる変異の頻度を増加又は減少のいずれかをさせるために使用できることが示される。
図16Dにホット及びコールドのTFPコンストラクトの代表的なセグメントについての変異を示す。中央列にはTFPのアミノ酸配列(59〜87残基)が1文字表記で示され、2つのコンストラクトをコードする「ホット」及び「コールド」の出発核酸配列がアミノ酸配列の上(ホット)及び下(コールド)に示されている。ホットの配列中に観察された変異を並べて遺伝子配列の上端に重ね、コールドのTFP配列中の変異を下に示す。当該結果によりコーディング配列への「サイレント」な変化がいかにして、AID介在性のSHM率において観察される劇的変化を生み出すかが説明されるが、このことは、工夫された配列を、早い又は遅いSHM率をもたらすのに有効に最適化できることを示している。
図16Eには、本in vitro組織培養システムにおいてAIDにより生成された変異のスペクトルが、他の研究において観察されるもの及びin vivoの親和性成熟の間に見られるものに酷似することが示されている。図16Eには本研究において生成された変異(ボックス(i)左上、n=118)が示され、それらがZanら(ボックス(ii)右上、,n=702)、Wilsonら(左下、n=25000;ボックス(iii))により観察された変異、及びより大規模な、親和性成熟を経たIGHV鎖の解析(右下、n=101,926;ボックス(iv))と比較されている。各チャート中のY軸に出発ヌクレオチドを示し、X軸に最終のヌクレオチドを示し、各正方形中の数でヌクレオチドの遷移が観察される時間のパーセンテージを示す。本研究において、変異のトランジション及びトランスバージョンの頻度は他のデータセットにおいて見られるものに似ている。CからT及びGからAへの変異が、シチジンへのAID活性の直接的な結果であり、変異事象全体の48%を占める。更に、塩基A及びTでの変異が変異事象の30%までを占める(即ち、他のデータセットにおいて観察される頻度よりわずかに少ない)。
図16Fには、変異事象がホットTFP遺伝子の、SHMに最適化したヌクレオチド配列の至る所に分布し、1世代、1000ヌクレオチド当たり約0.08事象の最大瞬間変化率が、オープンリーディングフレームの開始から300ヌクレオチド前後に集中していることが示されている。AIDによる(30日間の)遺伝子の安定したトランスフェクション及び選択により480ヌクレオチド当たり1事象の変異の最大変異率がもたらされる。結果として遺伝子は、1遺伝子当たり0、1、2又はそれ以上の変異を含有し得る。ホットのTFP配列の遺伝子において観察されるSHM介在性事象の分布を、コールドTFPにおいて見られる有意に減少した変異のパターン(図16H)と比較して、図16Gで見ることができる。
したがって本研究により、通常は体細胞超変異を起こさないティール蛍光タンパク質(TFP)等の非類似型の遺伝子の作製が、そのような遺伝子を高率の体細胞超変異の為に標的化するのに使用できることが示される。更に、(同一アミノ酸をコードするが)SHM耐性遺伝子を作製することにより、体細胞超変異のホットスポット数が減少したタンパク質が生じ得、従ってAID介在性の超変異レベルの劇的な減少が起きる。SHM最適化の各例において、哺乳動物のコドン使用頻度及び遺伝子発現レベルに影響する他の因子が工夫された配列の生成において考慮され、それによって適度な翻訳及び発現レベルも示すタンパク質が生じる。従って当該結果により、SHM最適化の本方法を(i)AID活性を発現遺伝子の特定領域に標的化するためにうまく使用でき、(ii)SHM率を速め、又は遅くするために使用できることが示され、(iii)この方法論を用いることによってAIDにより生み出された変異のスペクトルがin vivoで観察されるものと均等であることが示され、(iv)SHMの最適化が、目的の遺伝子上でその発現に有意な負の影響をもたらすことなく、そのAID介在性のSHMの率に正又は負のいずれかの影響を与えるために首尾よく行われ得ることが示される。
実施例4
SHMに関与する酵素をコードする合成ポリヌクレオチドの作製
本明細書中に記載されるシステム及び方法は、例えばAID、Polイータ、Polシータ及びUDG等の酵素に適用できる。
A.活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)
哺乳動物種(例、ラット、チンパンジー、マウス、ヒト、イヌ、ウシ、ウサギ、ニワトリ、カエル、ゼブラフィッシュ、フグ及びテトラオドン(パッファーフィッシュ))間のシチジンデアミナーゼ(AID)の配列変異を解析しヒトと比較すると、ヒト及びカエルほど遠縁の生物が驚くほど高い(70%)配列同一性及び>80%の配列類似性を示すことが証明される。更に、体細胞超変異(SHM)において他の生物由来のAIDがヒトAIDと置換でき、全ての哺乳動物種のAIDが機能的に均等であることが示されている。
図17に、in vivoでのSHM用に有望な開始コンストラクトを同定するためヒトAIDと地球上の他のAIDとの比較を示す。当該図にはヒト(H_sap/1−198)、マウス(M_musc/1−198)、イヌ(C_fam/1−198)、ラット(R_norv/1−199)、及びチンパンジー(P_trog/1−199)由来AIDの配列アラインメントを提供する。図21ではヒト、イヌ及びマウスAIDタンパク質間の配列同一性を図解する。
イヌAIDは全体でヒト及びマウスAIDと94%のアミノ酸同一性を有し、従ってコドン最適化用の開始点として選択する。コドン使用頻度を最適化するために、イヌのアミノ酸配列を逆翻訳し、次いで反復して最適化する。
AIDはC末端の10アミノ酸内に含有される核外搬出シグナルを含有することが知られている(McBride et al.,J Exp Med.2004 Can 3;199(9):1235-44;Ito et al.,PNAS 2004 Feb 17;101(7):1975-80)。下記の実験の目的でイヌAIDは198位でロイシンからアラニンへの変異を含有し、一方ヒトAIDコンストラクトは無変異でインタクトな核外搬出シグナルを保持する。
実施例1中に記載の通り、表7に列挙したホットスポット及びコールドスポットモチーフに基づき、コンピュータープログラムSHMredesignを用いてSHMの配列最適化を完了し、生じるイヌAIDのホット及びコールド型を、それぞれ図19及び20に示す。イヌAIDについての出発配列を図18に、ホットスポット及びコールドスポット頻度の初期解析と共に示す。
1.ホットAID
AID配列をより体細胞超変異に感受性にするための当該配列の最適化により約200%のホットスポット数増加(43増加)、及び約30%のコールドスポット数減少(23減少)がもたらされた。全体のホットスポット頻度は100ヌクレオチド当たり約7ホットスポットの初期密度から100ヌクレオチド当たり約14ホットスポットの平均密度へと増加し、全体のコールドスポット頻度は未改変遺伝子中の100ヌクレオチド当たり約13コールドスポットから、SHM感受性型中の100ヌクレオチド当たり約9コールドスポットへと減少した。
2.コールドAID
AID配列をより体細胞超変異に耐性にするための当該配列の最適化により約186%のコールドスポット数増加(68増加)、及び約35%のホットスポット数減少(14減少)がもたらされた。全体のコールドスポット頻度は100ヌクレオチド当たり約13コールドスポットの初期密度から100ヌクレオチド当たり約25コールドスポットの平均密度へと増加し、全体のホットスポット頻度は未改変遺伝子中の100ヌクレオチド当たり約7ホットドスポットから、SHM耐性型中の100ヌクレオチド当たり約5ホットスポットへと減少した。
合成ポリヌクレオチド配列に、無関係な制限部位が確実に無いことを最終的に点検した後、完全なポリヌクレオチド配列を合成し(DNA2.0,Menlo Park,CA)、DNA2.0のクローニングベクターのうちの1つにクローニングし(表11;実施例1を参照)、正しく合成されていることを確認するため配列決定し、活性について下記及び実施例1の通り試験する。
イヌAID活性を測定するため、コールド型又は野生型のイヌAIDを、標的ベクター配列内のIgエンハンサーエレメント存在下又は非存在下のいずれかで、そのコーディング領域内に(実施例1中に記載の通り)終止コドンを含有するGFP*コンストラクトを発現させる発現ベクターと共に共トランスフェクトする。AIDによる当該終止コドンの変異で、AID活性の直接的な指標である機能的蛍光タンパク質が作り出される。
本実験においては、細胞をトリプシン処理により回収し、1% w/v BSA含有PBS中で2回洗浄し、2ng/ml DAPIを含有するPBS/1%BSA200μl中に再懸濁する。細胞をCytopeia Influx中、200mW 488nm及び50mW 403nmレーザー励起で解析する。1試料当たり最大百万個の細胞を取得し、リバータントは細胞バックグラウンドを超えるGFP蛍光が検出でき、DAPIを排除している生細胞のパーセンテージとして測定される。
図22Aにこの種のアッセイにおけるAID活性の、タンパク質機能への予想される効果を示す。注目すべきは、変異誘発により初めに機能を回復又は改善し後に機能を低減又は無くす変異が生み出され得るという観察結果である。これら2つの比率のバランスにより、これらのタンパク質において、機能を回復する初期の稀少な変異事象、それに続く機能を破壊する第二及び第三の変異事象が生じる。集団中の機能獲得型事象の観察結果におけるこれら競合する割合の正味の効果は、図22Bに見ることができる。サイレンス型GFPに必要な不活性型変異の数に関して3つの異なる仮説を考えると、AIDの酵素活性の率に依存した、時間の関数としての、非常に異なる復帰事象のプロファイルが3通り観察されると予想される。
従って、初期復帰率はAID活性の正確な評価を提供できるが、活性の長期的研究では蛍光の復帰よりもむしろ活性の消失率の解析が必要である。
この可能性を試験するために、蛍光タンパク質を安定して発現する細胞系を、コールド イヌAIDを含有する2通りの濃度の発現ベクターでトランスフェクトする。細胞を培養中に安定的に維持し、表示した時間後全体の蛍光について試料をアッセイする。
FACS解析前に、細胞をトリプシン処理により回収し、1% w/v BSA含有PBS中で2回洗浄し、2ng/ml DAPIを含有するPBS/1%BSA200μl中に再懸濁する。細胞をCytopeia Influx中、200mW 488nm及び50mW 403nmレーザー励起で解析する。DAPI蛍光を460/50バンドパスフィルターを通して測定する。GFP蛍光を528/38バンドパスフィルターを通して測定する。細胞バックグラウンドを超えるGFP蛍光が検出できず、DAPIを排除している生細胞のパーセンテージとして、パーセントGFP発現を報告する。
図22Cに示す結果により、定常的且つ持続的に進行する、(GFPの消光増加として示される)GFP発現の濃度依存的な減少が、コールドAID量を増加させて共発現させる時間と共に示される。当該データは、コールドAIDが標的遺伝子に複数の変異を導入でき、「コールド型」で数日間発現させたとき機能的であり安定でもあるという仮説と整合する。
コールド イヌAIDの、変異誘発を発揮する能力を直接比較するために、コールド イヌAIDと野生型ヒトAIDとを比較する初期復帰アッセイを用意する。Hek293細胞を、上記の通りのGFP*又はCMVプロモーターの5’側に挿入されたカッパE3及びイントロン性エンハンサーを伴うGFP*のいずれかを含有する(上記実施例1中の通りの)発現ベクターで、ヒト又はコールド イヌAIDのいずれかと共にトランスフェクトする。トランスフェクションから3日後に安定的な発現についての選択を開始した。FACS解析前に、細胞をトリプシン処理により回収し、1% w/v BSA含有PBS中で2回洗浄し、2ng/ml DAPIを含有するPBS/1%BSA200μl中に再懸濁する。細胞をCytopeia Influx中、200mW 488nm及び50mW 403nmレーザー励起で解析する。1試料当たり最大百万個の細胞を取得する。DAPI蛍光を460/50バンドパスフィルターを通して測定する。GFP蛍光を528/38バンドパスフィルターを通して測定する。細胞バックグラウンドを超えるGFP蛍光が検出できず、DAPIを排除している生細胞のパーセンテージとして、パーセントGFP発現を報告する。
当該結果(図22C)により、イヌAIDがヒトAIDと比較して有意に亢進された復帰活性を示したことが示される。この実験においては、カッパ3’E及びイントロン性のエンハンサーを発現ベクター中に含めたとき、標的遺伝子に起こる復帰率へのこれらの効果も示される。示される通り、エンハンサーエレメントを含むことにより更に復帰頻度が亢進された。
B.Polイータ
Polイータの未改変の出発配列を図23に、ホットスポット及びコールドスポット頻度の初期解析と共に示す。
上記の通り、表7に列挙したホットスポット及びコールドスポットモチーフに基づき、コンピュータープログラムSHMredesignを用いて配列の最適化を完了し、生じるPolイータのコールド及びホット型を、それぞれ図24及び25に示す。ホット及びコールドスポット密度の変化を以下の表13に要約する:
表13中、「ホットスポット密度」又は「コールドスポット密度」はORF中のヌクレオチド数で除したORF中のホット又はコールドスポットモチーフの総数に100を乗じ、直近の整数に四捨五入したものを指す。
C.Polシータ
Polシータの出発アミノ酸配列及び出発核酸配列をそれぞれ図26及び図27に、ホットスポット及びコールドスポット頻度の初期解析と共に示す。
上記の通り、表7に列挙したホットスポット及びコールドスポットモチーフに基づき、コンピュータープログラムSHMredesignを用いて配列の最適化を完了し、生じるPolシータのコールド及びホット型を、それぞれ図28及び図29に示す。ホット及びコールドスポット密度(100ヌクレオチド当たり)の変化を以下の表14に要約する:
表14中、「ホットスポット密度」又は「コールドスポット密度」はORF中のヌクレオチド数で除したORF中のホット又はコールドスポットの総数に100を乗じ、直近の整数に四捨五入したものを指す。
D.UDG
UDGの出発アミノ酸配列及び出発核酸配列をそれぞれ図30A及び30Bに、ホットスポット及びコールドスポット頻度の初期解析(図30C)と共に示す。
上記の通り、表7に列挙したホットスポット及びコールドスポットモチーフに基づき、コンピュータープログラムSHMredesignを用いて配列の最適化を完了し、生じるUDGのコールド及びホット型を、それぞれホットスポット及びコールドスポット頻度の初期解析(図31B及び31D)と共に、それぞれ図31A及び31Cに示す。ホット及びコールドスポット密度(100ヌクレオチド当たり)の変化を以下の表15に要約する:
表15中、「ホットスポット密度」又は「コールドスポット密度」はORF中のヌクレオチド数で除したORF中のホット又はコールドスポットの総数に100を乗じ、直近の整数に四捨五入したものを指す。
実施例5
体細胞超変異用ベクターの作製
DNA2.0(Menlo Park,CA)により合成された各サブフラグメントからベクターを構築する。ベクターは複数のオープンリーディングフレームを同時に発現でき、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)複製起点(oriP)含有ベクターの複製についてもとから許容状態にあるか、又は許容状態となるようにされた(即ち、ヒトEBP2の共発現を介して(Habel et al.,2004;Kapoor et al.,2001)哺乳動物細胞において安定なエピソーム複製ができる。
ベクターの至る所で、別個(discreet)の断片間での1以上の制限エンドヌクレアーゼ認識配列(制限部位)の戦略的配置を通してプラスミドを、高度にモジュールにする。
A.ベクターフォーマット
最初のフォーマット(図32A)において、ベクターには脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来の内部リボソーム侵入部位(IRES)を含有させた。図32Aに示す通り、ベクター内に含有させるエレメントは互いに機能可能に連結し、ある場合には以下の機能的エレメント:1)CMVプロモーター;2)マルチクローニングサイト;3)目的の遺伝子;4)IRES;5)ブラストサイジンSデアミナーゼ(bsd)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hyg)又はピューロマイシン−N−アセチルトランスフェラーゼ等の真核生物の選択マーカー;6)ターミネーター配列、(3′非翻訳領域、SV40由来の小イントロン及びポリAシグナル(“IVS pA”));7)エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)複製起点(oriP)(任意の遺伝子間スペーサー領域が先行する);8)原核生物の複製起点ColE1;9)ベータラクタマーゼ(bla)遺伝子又はカナマイシン(kan)等の原核生物の選択マーカー;10)(ベータアクチン又はグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)等のコピー数判定のための遺伝子断片、及びIgエンハンサー、を含めた(番号はこのセクション中以下に更に見られる、対応の配列情報を指す)。
第二のフォーマット(図32B)においては、発現ベクターにはIRESは無いが、代わりに選択マーカー遺伝子を発現させるための独立した遺伝子カセットを含有させた。この発現カセットには11)SV40即時型初期プロモーター(pSV)及び真核生物の選択マーカー、並びに上記のようにIVS pAを含めた。ベクター内に含有させるエレメントは図32に示す通り互いに機能可能に連結し、ある場合には以下の機能的エレメント:CMVプロモーター、マルチクローニングサイト、目的の遺伝子、IVS pA;エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)複製起点(oriP)、pSV、選択マーカー、IVS pA、原核生物の複製起点ColE1、ベータラクタマーゼ(bla)遺伝子又はカナマイシン(kan)等の原核生物の選択マーカー、コピー数判定のための遺伝子断片、Igエンハンサー及びマルチクローニングサイト、を含めた。
第三のフォーマット(図33A)においては、ベクターには逆方向に向けられた2つの異なる遺伝子の発現を駆動する二方向性プロモーターを含有させた。1又は2の2又は3シストロン性のメッセージを生成するために、このベクターにはIRES配列も含有させた。ベクター内に含有させるエレメントは図33に示す通り、以前に記載された機能的エレメントと同じ機能的エレメントを用いて、互いに機能可能に連結させる。
第四のフォーマット(図33B)においては、二方向性プロモーター、2又は3シストロン性のメッセージを発現させる1以上のIRES配列、及びそこから真核生物の選択マーカーが発現する独立したシス−連結型カセットを含有させる。
ハイブリッドを形成するために、いずれのベクターも互いに置き換わることができる。更に、所望の遺伝子の条件的発現を達成するため、エピソームベクター上に含有させる構成的で強力な真核生物のプロモーターは、誘導性プロモーター(即ち、リバーステトラサイクリントランスアクチベータープロモーターシステム[prtTA])に置換できる。この場合、目的の他の遺伝子の1つが、(図34に示すように)同一エピソーム上でcisに発現できるトランス活性化因子タンパク質をコードするか、又はトランスフェクトされた別のエピソームベクター上でtransに供給されなければならない。
選択可能な原核生物のマーカー及び複製起点colEIについての方向性は、以下のセクション8及びセクション9(配列番号9−11)、図33−35で記載されるが絶対的ではわけではなく、ベクターの残りの部分に関しては逆転させることができる。同様に、独立した発現カセット(pSV−選択マーカー(又は目的の他の遺伝子)−IVS pA)の方向性も、ベクターの残りの部分に関しては逆転させることができる(即ち、転写がoriPから離れる現在の描写ではなく、oriPに向かう転写)。更に、Igエンハンサー等のエンハンサーエレメントは目的の遺伝子の5’側又は3’側に置くか、或いは排除することができる。
B.機能的エレメントの代表的な配列
1.真核細胞中で働く強力な転写プロモーター。図32−33においては、CMVプロモーターを用い、該配列は配列番号1として提供される(TATAボックス配列を下線で示す)。CMVプロモーターはSacI及びBsrGIサイトを除去するため改変される。
AGCTTGGCCCATTGCATACGTTGTATCCATATCATAATATCTACATTTATATTGGCTCATGTCCAACATTACCGCCATGTTGACATTGATTATTGACTAGTTATTAATAGTAATCAATTACGGGGTCATTAGTTCATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGAGTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTGATGCGGTTTTGGCAGTACATCAATGGGCGTGGATAGCGGTTTGACTCACGGGGATTTCCAAGTCTCCACCCCATTGACGTCAATGGGAGTTTGTTTTGGCACCAAAATCAACGGGACTTTCCAAAATGTCGTAACAACTCCGCCCCATTGACGCAAATGGGCGGTAGGCGTGTACGGTGGGAGGTCTATATAAGCAGAGCTGGTTTAGTGAACCGTCAGATCGCCTA (配列番号1)。
2.マルチクローニングサイト(mcs)領域と称せられる複数の制限部位をコードする領域:
TTCCCTGCAGGATTGTTTAAACACCAGATCTGCTTGAATCCGCGGATAAGAGGACTAGTATTCGTCTCACTAGGGAGAGCTCCTA (配列番号2)。
3.例えば、目的の遺伝子は、特異的結合メンバー、抗体又はその断片、抗体重鎖又は軽鎖、酵素、受容体、ペプチド性増殖ホルモン又は転写因子であり得る。
4.図32−34における脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来の内部リボソーム侵入部位(IRES)は2つのオープンリーディングフレーム(ORF)の2シストロン性の同時発現(一方はそれ自身に対して5’側、もう一方はそれ自身に対して3’側)を可能にする。2つの制限部位(BsrGI及びAscI)を含有する領域を、IRESに対して5’側に示す(小文字)。IRESの3’端はNgoMIVサイトを含む。
tgtacaatccgcgtgagacgatcggcgcgccCGCCCCTCTCCCTCCCCCCCCCCTAACGTTACTGGCCGAAGCCGCTTGGAATAAGGCCGGTGTGCGTTTGTCTATATGTTATTTTCCACCATATTGCCGTCTTTTGGCAATGTGAGGGCCCGGAAACCTGGCCCTGTCTTCTTGACGAGCATTCCTAGGGGTCTTTCCCCTCTCGCCAAAGGAATGCAAGGTCTGTTGAATGTCGTGAAGGAAGCAGTTCCTCTGGAAGCTTCTTGAAGACAAACAACGTCTGTAGCGACCCTTTGCAGGCAGCGGAACCCCCCACCTGGCGACAGGTGCCTCTGCGGCCAAAAGCCACGTGTATAAGATACACCTGCAAAGGCGGCACAACCCCAGTGCCACGTTGTGAGTTGGATAGTTGTGGAAAGAGTCAAATGGCTCTCCTCAAGCGTATTCAACAAGGGGCTGAAGGATGCCCAGAAGGTACCCCATTGTATGGGATCTGATCTGGGGCCTCGGTGCACATGCTTTACATGTGTTTAGTCGAGGTTAAAAAAACGTCTAGGCCCCCCGAACCACGGGGACGTGGTTTTCCTTTGAAAAACACGATGATAATATGGCCGGC (配列番号3)。
5.例えば、ブラストサイジンSデアミナーゼ(bsd)(配列番号4)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hyg)(配列番号5)、又はピューロマイシン−N−アセチルトランスフェラーゼ(配列番号6)等の、哺乳動物の選択マーカー遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)。開始及び終止コドンを下線で示す。各ORFの3’側にクローニング工程で用いられるXbaIサイト(TCTAGA)がある。
ブラストサイジンSデアミナーゼ(bsd;コールドスポット最適化)
ATGGCCAAGCCTTTGTCTCAAGAAGAATCCACCCTCATTGAAAGGGCCACTGCTACAATCAACAGCATCCCCATCTCTGAAGACTACTCTGTCGCCAGCGCAGCTCTCTCCTCTGACGGGAGAATCTTCACTGGTGTCAATGTATATCATTTTACTGGGGGACCTTGCGCAGAGCTTGTGGTCCTGGGGACTGCTGCTGCTGCTGCAGCCGGAAACCTGACTTGTATCGTCGCCATAGGGAATGAGAACAGAGGCATCTTGAGCCCCTGTGGGAGATGCAGACAAGTCCTCCTGGACCTCCATCCTGGGATCAAAGCCATAGTGAAGGACAGTGATGGACAGCCCACAGCCGTTGGGATCAGGGAGTTGCTGCCATCTGGTTATGTGTGGGAGGGCTAATCTAGA (配列番号4)。
ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hyg;コールドスポット最適化)
ATGAAAAAGCCTGAACTGACTGCCACCTCTGTTGAGAAGTTTTTAATAGAGAAGTTTGACTCTGTGTCAGACCTCATGCAGCTTTCTGAGGGAGAGGAGTCTAGAGCCTTTAGCTTTGATGTGGGGGGGAGAGGCTATGTCCTGAGAGTCAATAGCTGTGCAGATGGTTTCTACAAAGATAGGTATGTCTATAGACATTTTGCATCCGCCGCCCTCCCCATTCCAGAGGTCCTTGACATTGGGGAATTCTCAGAGAGCCTGACCTATTGCATTTCCCGGAGAGCCCAGGGTGTGACTCTTCAAGACCTGCCTGAGACAGAACTCCCTGCAGTGCTCCAGCCCGTCGCCGAGGCCATGGATGCAATCGCCGCCGCAGACCTCAGCCAGACCTCGGGGTTTGGGCCCTTTGGCCCCCAGGGGATAGGCCAATACACTACATGGAGAGATTTCATATGCGCTATTGCTGACCCCCATGTGTATCACTGGCAAACTGTGATGGACGACACAGTCTCAGCCTCTGTCGCACAAGCCCTGGACGAGCTGATGCTTTGGGCCGAGGACTGCCCAGAGGTCAGACATCTCGTCCATGCCGACTTTGGGTCAAACAATGTCCTGACGGACAATGGGAGAATCACTGCTGTCATTGACTGGAGCGAGGCCATGTTTGGGGACTCCCAATACGAGGTCGCCAACATCTTCTTCTGGAGACCCTGGTTGGCTTGTATGGAGCAGCAGACCCGTTACTTTGAGAGGAGGCATCCAGAGCTCGCTGGGAGCCCTAGATTGAGGGCCTATATGCTCAGGATAGGGCTTGACCAACTCTATCAGAGCTTGGTTGACGGCAATTTTGATGACGCAGCTTGGGCTCAGGGGAGATGCGACGCCATAGTGAGGAGTGGGGCCGGGACTGTCGGGAGAACTCAGATCGCCAGGAGGTCAGCTGCCGTCTGGACTGACGGCTGTGTAGAAGTCTTAGCCGACTCTGGGAACAGGAGACCCAGCACTCGTCCAGAGGCCAAGGAATGATCTAGA (配列番号5)。
ピューロマイシン−N−アセチルトランスフェラーゼ(Pur;野生型配列)。
開始コドンのすぐ5’側にKozakコンセンサス配列を含有する(下線)。終止コドンも下線で示す。
CACCATGACCGAGTACAAGCCCACGGTGCGCCTCGCCACCCGCGACGACGTCCCCCGGGCCGTTCGCACCCTCGCCGCCGCGTTCGCCGACTACCCCGCCACGCGCCACACCGTGGACCCGGACAGGCACATCGAGCGGGTCACCGAGCTGCAAGAACTCTTCCTCACGCGCGTCGGGCTCGACATCGGCAAGGTGTGGGTCGCGGACGACGGCGCCGCTGTGGCGGTCTGGACCACGCCGGAGAGCGTCGAAGCGGGGGCGGTGTTCGCCGAGATCGGCCCGCGCATGGCCGAGTTGAGCGGTTCCCGGCTGGCCGCGCAGCAACAGATGGAAGGCCTCCTGGCGCCGCACCGGCCCAAGGAGCCCGCGTGGTTCCTGGCTACCGTCGGAGTCTCGCCCGACCACCAGGGCAAGGGTCTGGGCAGCGCCGTCGTGCTCCCCGGAGTGGAGGCTGCCGAGCGTGCCGGGGTGCCCGCCTTCCTCGAGACCTCCGCGCCCCGCAACCTCCCCTTCTACGAGCGGCTCGGCTTCACCGTCACCGCCGACGTCGAGGTGCCCGAAGGACCGCGCACCTGGTGCATGACCCGCAAGCCCGGTGCCTGATCTAGA (配列番号6)。
6.ターミネーター配列、IVS−pA(3’側のBamHIと共に示す)。
GGATCTTTGTGAAGGAACCTTACTTCTGTGGTGTGACATAATTGGACAAACTACCTACAGAGATTTAAAGCTCTAAGGTAAATATAAAATTTTTAAGTGTATAATGTGTTAAACTACTGATTCTAATTGTTGTGGTATTTTAGATTCCAACCTATGGAACTTATGAATGGGAGCAGTGGTGGAATGCCTTTAATGAGGAAAACCTGTTTTGCTCAGAAGAAATGCCATCTAGTGATGATGAGGCTACTGCTGACTCTCAACATTCTACTCCTCCAAAAAAGAAGAGAAAGGTAGAAGACCCCAAGGACTTTCCTTCAGAATTGGTAAGTTTTTTGAGTCATGCTGTGTTTAGTAATAGAACTCTTGCTTGCTTTGCTATTTACACCACAAAGGAAAAAGCTGCACTGCTATACAAGAAAATTATGGAAAAATATTTGATGTATAGTGCCTTGACTAGAGATCATAATCAGCCATACCACATTTGTAGAGGTTTTACTTGCTTTAAAAAACCTCCCACACCTCCCCCTGAACCTGAAACATAAAATGAATGCAATTGTTGTTGTTAACTTGTTTATTGCAGCTTATAATGGTTACAAATAAAGCAATAGCATCACAAATTTCACAAATAAAGCATTTTTATCACTGCATTCTAGTTGTGGTTTGTCCAAACTCATCAATGTATCTTATCATGTCTGGATCC (配列番号7)。
7.EBV oriP配列。このエレメントは、エプスタイン・バー核抗原1(EBNA1)を発現するEBV oriP許容細胞においてエピソーム複製を可能にする。任意の遺伝子間スペーサー領域(小文字)がoriP配列に先行する:
actgtcttctttatcatgcaactcgtaggacaggtgccctggccgggtccGCAGGAAAAGGACAAGCAGCGAAAATTCACGCCCCCTTGGGAGGTGGCGGCATATGCAAAGGATAGCACTCCCACTCTACTACTGGGTATCATATGCTGACTGTATATGCATGAGGATAGCATATGCTACCCGGATACAGATTAGGATAGCATATACTACCCAGATATAGATTAGGATAGCATATGCTACCCAGATATAGATTAGGATAGCCTATGCTACCCAGATATAAATTAGGATAGCATATACTACCCAGATATAGATTAGGATAGCATATGCTACCCAGATATAGATTAGGATAGCCTATGCTACCCAGATATAGATTAGGATAGCATATGCTACCCAGATATAGATTAGGATAGCATATGCTATCCAGATATTTGGGTAGTATATGCTACCCAGATATAAATTAGGATAGCATATACTACCCTAATCTCTATTAGGATAGCATATGCTACCCGGATACAGATTAGGATAGCATATACTACCCAGATATAGATTAGGATAGCATATGCTACCCAGATATAGATTAGGATAGCCTATGCTACCCAGATATAAATTAGGATAGCATATACTACCCAGATATAGATTAGGATAGCATATGCTACCCAGATATAGATTAGGATAGCCTATGCTACCCAGATATAGATTAGGATAGCATATGCTATCCAGATATTTGGGTAGTATATGCTACCCATGGCAACATTAGCCCACCGTGCTCTCAGCGACCTCGTGAATATGAGGACCAACAACCCTGTGCTTGGCGCTCAGGCGCAAGTGTGTGTAATTTGTCCTCCAGATCGCAGCAATCGCGCCCCTATCTTGGCCCGCCCACCTACTTATGCAGGTATTCCCCGGGGTGCCATTAGTGGTTTTGTGGGCAAGTGGTTTGACCGCAGTGGTTAGCGGGGTTACAATCAGCCAAGTTATTACACCCTTATTTTACAGTCCAAAACCGCAGGGCGGCGTGTGGGGGCTGACGCGTGCCATCACTCCACAATTTCAAGAGAAAGAGTGGCCACTTGTCTTTGTTTATGGGCCCCATTGGCGTGGAGCCCCGTTTAATTTTCGGGGGTGTTAGAGACAACCAGTGGAGTCCGCTGCTGTCGGCGTCCACTCTCTTTCCCCTTGTTACAAATAGAGTGTAACAACATGGTTCACCTGTCTTGGTCCCTGCCTGGGACACATCTTAATAACCCCAGTATCATATTGCACTAGGATTATGTGTTGCCCATAGCCATAAATTCGTGTGAGATGGACATCCAGTCTTTACGGCTTGTCCCCACCCCATGGATTTCTATTGTTAAAGATATTCAGAATGTTTCATTCCTACACTAGGATTTATTGCCCAAGGGGTTTGTGAGGGTTATATTGGTGTCATAGCACAATGCCACCACTGAACCCATCGTCCAAATTTTATTCTGGATGCGTCACCTGAAACCTTGTTTTCGAGCACCTCACATACACCTTACTGTTCACAACTCAGCAGTTATTCTATTAGCTAAACGAAGGAGAATGAAGAAGCAGGCGAAGATTCAGGAGAGTTCACTGCCCGCTCCTTGATCTTCAGCCACTGCCCTTGTGACTAAAATGGTTCACTACCCTCGTGGAATCCTGACCCCATGTAAATAAAACCGTGACAGCTCATGGGGTGGGAGATATCGCTGTTCCTTAGGACCCTTTTACTAACCCTAATTCGATAGCATATGCTTCCCGTTGGGTAACATATGCTATTGAATTAGGGTTAGTCTGGATAGTATATACTACTACCCGGGAAGCATATGCTACCCGTTTAGGGTTAACAAGGGGGCCTTATAAACACTATTGCTAATGCCCTCTTGAGGGTCCGCTTATCGGTAGCTACACAGGCCCCTCTGATTGACGTTGGTGTAGCCTCCCGTAGTCTTCCTGGGCCCCTGGGAGGTACATGTCCCCCAGCATTGGTGTAAGAGCTTCAGCCAAGAGTTACACATAAAGG (配列番号8)。
8.DNA2.0(Menlo Park,CA)由来のベクターpJ15及びpJ31由来のEscherichia coli複製起点、colEI配列:colE1
AAAAGGGGCCCGAGCTTAAGACTGGCCGTCGTTTTACAACACAGAAAGAGTTTGTAGAAACGCAAAAAGGCCATCCGTCAGGGGCCTTCTGCTTAGTTTGATGCCTGGCAGTTCCCTACTCTCGCCTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAATACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGGCTAACTACGGCTACACTAGAAGAACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGACGCGCGCGTAACTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGCTTGCGCCGTCCCGTCAAGTCAGCGTAATGCTCTG (配列番号9)。
9A.耐性のためのベータラクタマーゼ(bla)遺伝子の配列。オープンリーディングフレーム(ORF)は逆方向で示される。
CTTACCAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATCTCAGCGATCTGTCTATTTCGTTCATCCATAGTTGCCTGACTCCCCGTCGTGTAGATAACTACGATACGGGAGGGCTTACCATCTGGCCCCAGCGCTGCGATGATACCGCGAGAACCACGCTCACCGGCTCCGGATTTATCAGCAATAAACCAGCCAGCCGGAAGGGCCGAGCGCAGAAGTGGTCCTGCAACTTTATCCGCCTCCATCCAGTCTATTAATTGTTGCCGGGAAGCTAGAGTAAGTAGTTCGCCAGTTAATAGTTTGCGCAACGTTGTTGCCATCGCTACAGGCATCGTGGTGTCACGCTCGTCGTTTGGTATGGCTTCATTCAGCTCCGGTTCCCAACGATCAAGGCGAGTTACATGATCCCCCATGTTGTGCAAAAAAGCGGTTAGCTCCTTCGGTCCTCCGATCGTTGTCAGAAGTAAGTTGGCCGCAGTGTTATCACTCATGGTTATGGCAGCACTGCATAATTCTCTTACTGTCATGCCATCCGTAAGATGCTTTTCTGTGACTGGTGAGTACTCAACCAAGTCATTCTGAGAATAGTGTATGCGGCGACCGAGTTGCTCTTGCCCGGCGTCAATACGGGATAATACCGCGCCACATAGCAGAACTTTAAAAGTGCTCATCATTGGAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGTTCGATGTAACCCACTCGTGCACCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGGCAAAATGCCGCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATATTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTCAGTGTTACAACCAATTAACCAATTCTGAACATTATCGCGAGCCCATTTATACCTGAATATGGCTCATAACACCCCTTGCAGTGCGACTAACGGCATGAAGCTCGTCGGGGCGTACG (配列番号10)。
9B.DNA2.0(Menlo Park,CA)由来のベクターpJ31由来のカナマイシン配列
(kan)。オープンリーディングフレーム(ORF)は逆方向で示される。
CTTAGAAAAACTCATCGAGCATCAAATGAAACTGCAATTTATTCATATCAGGATTATCAATACCATATTTTTGAAAAAGCCGTTTCTGTAATGAAGGAGAAAACTCACCGAGGCAGTTCCATAGGATGGCAAGATCCTGGTATCGGTCTGCGATTCCGACTCGTCCAACATCAATACAACCTATTAATTTCCCCTCGTCAAAAATAAGGTTATCAAGTGAGAAATCACCATGAGTGACGACTGAATCCGGTGAGAATGGCAAAAGTTTATGCATTTCTTTCCAGACTTGTTCAACAGGCCAGCCATTACGCTCGTCATCAAAATCACTCGCATCAACCAAACCGTTATTCATTCGTGATTGCGCCTGAGCGAGGCGAAATACGCGATCGCTGTTAAAAGGACAATTACAAACAGGAATCGAGTGCAACCGGCGCAGGAACACTGCCAGCGCATCAACAATATTTTCACCTGAATCAGGATATTCTTCTAATACCTGGAACGCTGTTTTTCCGGGGATCGCAGTGGTGAGTAACCATGCATCATCAGGAGTACGGATAAAATGCTTGATGGTCGGAAGTGGCATAAATTCCGTCAGCCAGTTTAGTCTGACCATCTCATCTGTAACATCATTGGCAACGCTACCTTTGCCATGTTTCAGAAACAACTCTGGCGCATCGGGCTTCCCATACAAGCGATAGATTGTCGCACCTGATTGCCCGACATTATCGCGAGCCCATTTATACCCATATAAATCAGCATCCATGTTGGAATTTAATCGCGGCCTCGACGTTTCCCGTTGAATATGGCTCATATTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTCAGTGTTACAACCAATTAACCAATTCTGAACATTATCGCGAGCCCATTTATACCTGAATATGGCTCATAACACCCCTTGCAGTGCGACTAACGGCATGAAGCTCGTCGGGGAAATAATGATTTTATTTTGACTGATAGTGACCTGTTCGTTGCAACAAATTGATAAGCAATGCTTTCTTATAATGCCAACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTTTTTTTTTTAGCCTGCTTTTTTGTACAAAGTTGGCATTATAAAAAAGCATTGCTCATCAATTTGTTGCAACGAACAGGTCACTATCAGTCAAAATAAAATCATTATTT (配列番号11)。
10.細胞当たりのエピソームコピー数を判定するために用いる部分。理想的には、当該部分はゲノム中特有に存在する配列を含有する。以下に当該技術において公知の、又は本明細書中に記載するベクターにおいて使用できる2種の断片、ベータアクチン及びG6PDHを示す。BsiWI及びClaIサイトが各断片の境界になる。
ベータアクチン部分。
CGTACGTACTCCTGCTTGCTGATCCACATCTGCTGGAAGGTGGACAGCGAGGCCAGGATGGAGCCGCCGATCCACACGGAGTACTTGCGCTCAGGAGGAGCAATGAAGCTTATCTGAGGAGGGAAGGGGACAGGCAGTGAGGACCCTGGATGTGACAGCTCCAAGCTTCCACACACCACAGGACCCCACAGCCGACCTGCCCAGGTCAGCTCAGGCAGGAAAGACACCCACCTTGATCTTCATTGTGCTGGGTGCCAGGGCAGTGATCTCCTTCTGCATCCTGTCATCGAT (配列番号12)。
ヒトグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(hG6PDH)部分。
CGTACGAGGTGAGGCTGCAGTTCCATGATGTGTCCGGCGACATCTTCCACCAGCAGTGCAAGCGCAACGAGCTGGTGATCCGCGTGCAGCCCAACGAGGCCGTGTACCAGAGAAGGAGCAGTGTGGAGGGTGGGCGGCCTGGGCCCGGGGGACTCCACATGGTGGCAGGCAGTGGCATCAGCAAGACACTCTCTCCCTCACAGAACGTGAAGCTCCCTGACGCCTACGAGCGCCTCATCCTGGACGTCTTCTGCGGGAGCCAGATGCACTTCGTGCGCAGGAATCGAT (配列番号13)。
11.pSV、SV40由来の即時型初期プロモーター。BstBIサイトが当該配列に先行し、NgoMIVサイトがその後に続く。
TTCGAAGCTGTGGAATGTGTGTCAGTTAGGGTGTGGAAAGTCCCCAGGCTCCCCAGCAGGCAGAAGTATGCAAAGCATGCATCTCAATTAGTCAGCAACCAGGTGTGGAAAGTCCCCAGGCTCCCCAGCAGGCAGAAGTATGCAAAGCATGCATCTCAATTAGTCAGCAACCATAGTCCCGCCCCTAACTCCGCCCATCCCGCCCCTAACTCCGCCCAGTTCCGCCCATTCTCCGCCCCATGGCTGACTAATTTTTTTTATTTATGCAGAGGCCGAGGCCGCCTCGGCCTCTGAGCTATTCCAGAAGTAGTGAGGAGGCTTTTTTGGAGGCCTAGGCTTTTGCAAAAAGCTCTGACCCCTCACAAGGAGCCGGC (配列番号14)。
Igエンハンサー。代表的なIgエンハンサー配列としては、重鎖又は軽鎖エンハンサーが挙げられる。カッパ3’エンハンサー領域(Ek3’)(Meyer,K.B.and Neuberger,M.S.,EMBO J.8(7),1959-1964(1989)を参照)、及びカッパイントロン性エンハンサー領域、Eki LOCUS L80040 7466 bp ROD 02−SEP−2003を例示する目的で以下に示す。エンハンサー領域内の少なくとも1種の、活性を有する主要なエレメントがEボックス配列:CAGGTG(N)13CAGGTG[コア配列:CANNTG]Storb et al.,Immunity 19:235-242,2003)である。Ek3’及びEkiエンハンサーエレメントはDr.Neuberger(MRC,UK)より入手する。Ek3’配列を、クローニング用に用いるXhoI及びEcoRIサイトをそれぞれ含有する以下のプライマー:GACTACCTCGAGccagcttaggctacacagag(配列番号276)及びGTAGTCGAATTCCCACATGTCTTACATGGTATATG(配列番号277)を用い、識別番号1352のNeubergerプラスミドから
PCRにより増幅する。
EcoRI及びNotI制限部位をそれぞれコードするオリゴヌクレオチドGACTACGAATTCtcctgaggacacagtgatag(配列番号278)及びGTAGTCGCGGCCGCCTAGTTCCTAGCTACTTCTTTA(配列番号279)を用い、Ekiエンハンサー配列をDr.Neubergerのベクター(識別番号Me123)から増幅する。結果生じる断片を適切な制限酵素により消化し、続けてmcs2(以下に記載)へクローニングする:Ek3’はmcs2のXhoI及びEcoRIサイトへクローニングし、次いで結果生じるプラスミドをEcoRIとNotIで消化し、そこへ続けてEki断片をライゲーションしてベクターAB156を生成する。
上記の通り、Eボックスはカッパエンハンサー領域中に存在することが知られている。それ故、アニーリングされるとEcoRI及びNotI突出部を含有する相補的なオリゴヌクレオチドAATTCaggtgctggggtagggagcaggtgctacactgcagaccaggtgctGC(配列番号280)及びggccgcagcacctggtctgcagtgtagcacctgctccctaccccagcacctg(配列番号281)用い、縦列する3つのEボックスから成る合成カセットを合成する。こうしてアニーリングされたオリゴ産物をmcs2のEcoRI及びNotIサイトへクローニングし、ベクターAB157を生成する。
代表的なIg−カッパ遺伝子座3’エンハンサーエレメントを以下に列挙する(アクセッション番号X15878)。
CCAGCTTAGGCTACACAGAGAAACTATCTAAAAAATAATTACTAACTACTTAATAGGAGATTGGATGTTAAGATCTGGTCACTAAGAGGCAGAATTGAGATTCGAAGCCAGTATTTTCTACCTGGTATGTTTTAAATTGCAGTAAGGATCTAAGTGTAGATATATAATAATAAGATTCTATTGATCTCTGCAACAACAGAGAGTGTTAGATTTGTTTGGAAAAAAATATTATCAGCCAACATCTTCTACCATTTCAGTATAGCACAGAGTACCCACCCATATCTCCCCACCCATCCCCCATACCAGACTGGTTATTGATTTTCATGGTGACTGGCCTGAGAAGATTAAAAAAAGTAATGCTACCTTATTGGGAGTGTCCCATGGACCAAGATAGCAACTGTCATAGCTACCGTCACACTGCTTTGATCAAGAAGACCCTTTGAGGAACTGAAAACAGAACCTTAGGCACATCTGTTGCTTTCGCTCCCATCCTCCTCCAACAGCCTGGGTGGTGCACTCCACACCCTTTCAAGTTTCCAAAGCCTCATACACCTGCTCCCTACCCCAGCACCTGGCCAAGGCTGTATCCAGCACTGGGATGAAAATGATACCCCACCTCCATCTTGTTTGATATTACTCTATCTCAAGCCCCAGGTTAGTCCCCAGTCCCAATGCTTTTGCACAGTCAAAACTCAACTTGGAATAATCAGTATCCTTGAAGAGTTCTGATATGGTCACTGGGCCCATATACCATGTAAGACATGTGG (配列番号282)。
代表的なカッパイントロン性エンハンサー領域、Ekiを以下に示す:
TCCTGAGGACACAGTGATAGGAACAGAGCCACTAATCTGAAGAGAACAGAGATGTGACAGACTACACTAATGTGAGAAAAACAAGGAAAGGGTGACTTATTGGAGATTTCAGAAATAAAATGCATTTATTATTATATTCCCTTATTTTAATTTTCTATTAGGGAATTAGAAAGGGCATAAACTGCTTTATCCAGTGTTATATTAAAAGCTTAATGTATATAATCTTTTAGAGGTAAAATCTACAGCCAGCAAAAGTCATGGTAAATATTCTTTGACTGAACTCTCACTAAACTCCTCTAAATTATATGTCATATTAACTGGTTAAATTAATATAAATTTGTGACATGACCTTAACTGGTTAGGTAGGATATTTTTCTTCATGCAAAAATATGACTAATAATAATTTAGCACAAAAATATTTCCCAATACTTTAATTCTGTGATAGAAAAATGTTTAACTCAGCTACTATAATCCCATAATTTTGAAAACTATTTATTAGCTTTTGTGTTTGACCCTTCCCTAGCCAAAGGCAACTATTTAAGGACCCTTTAAAACTCTTGAAACTACTTTAGAGTCATTAAGTTATTTAACCACTTTTAATTACTTTAAAATGATGTCAATTCCCTTTTAACTATTAATTTATTTTAAGGGGGGAAAGGCTGCTCATAATTCTATTGTTTTTCTTGGTAAAGAACTCTCAGTTTTCGTTTTTACTACCTCTGTCACCCAAGAGTTGGCATCTCAACAGAGGGGACTTTCCGAGAGGCCATCTGGCAGTTGCTTAAGATCAGAAGTGAAGTCTGCCAGTTCCTCCCAGGCAGGTGGCCCAGATTACAGTTGACCTGTTCTGGTGTGGCTAAAAATTGTCCCATGTGGTTACAAACCATTAGACCAGGGTCTGATGAATTGCTCAGAATATTTCTGGACACCCAAATACAGACCCTGGCTTAAGGCCCTGTCCATACAGTAGGTTTAGCTTGGCTACACCAAAGGAAGCCATACAGAGGCTAATACCAGAGTATTCTTGGAAGAGACAGGAGAAAATGAAAGCCAGTTTCTGCTCTTACCTTATGTGCTTGTGTTCAGACTCCCAAACATCAGGAGTGTCAGATAAACTGGTCTGAATCTCTGTCTGAAGCATGGAACTGAAAAGAATGTAGTTTCAGGGAAGAAAGGCAATAGAAGGAAGCCTGAGAATATCTTCAAAGGGTCAGACTCAATTTACTTTCTAAAGAAGTAGCTAGGAACTAG (配列番号283)。
C.ベクター構築
ベクターフォーマット1.以下に記載する機能的エレメントは7つの合成DNA断片として順序付けられ、それぞれがDNA2.0(Menlo Park,CA)由来のベクターpJ2又はpJ15中にクローニングされる。pJベクターは両方とも、E.coliの複製起点colE1及び選択マーカー(pJ15についてはamp、pJ2についてはkan)を含有し;制限部位を最少化するために各配列をDNA2.0により改変させている。pJベクターインサートを、望まれる順に正しく断片をアッセンブリすることを可能とする制限部位を境界とする最終的なベクターコンストラクトのために、以下に列挙した遺伝子エレメントを1以上含むように設計する。
共有結合で閉環したプラスミドであるベクターF1は:DNA2.0ベクターpJ15(colE1 ori及びamp耐性マーカーを含有する)、制限部位BsiWI、SacI、BsrGI、NgoMIV、XbaI、BamHI、MluI、おおよそ800bpのEBV oriP、及びAflIIを(順に)含有する(図35A参照)。
インサートF2は、もとからコードされている制限部位Mlu IからNsi Iまでの、高度に反復された部分を含むおおよそ880bpのoriPを含有する。この断片は、制限部位Mlu IからNsi Iまでを用いて、American Type Culture Collection
(catalog number ATCC 59562)から購入されるクローンから回収する。
インサートF3は、pJ2から回収されるが、SV40 3’非翻訳領域及びポリアデニル化シグナル(3’ut/pA)、BamHI制限部位、並びにoriPの残存部位をコードする。当該断片はNsiI及びXbaIサイトが境界となる。
インサートF4は、pJ2から回収されるが、制限部位NgoMIV及びXbaIが境界となる真核生物の抗生物質耐性マーカー、ピューロマイシン−N−アセチルトランスフェラーゼ(pur)を含有する。
インサートF5は、pJ15から回収されるが、制限部位NgoMIV及びBsrGIが境界となるEMCV IRES配列を含有する。
インサートF6は、pJ15から回収されるが、体細胞超変異(SHM)により感受性になるするよう改変される、つまり「ホット」と称される合成型のティール蛍光タンパク質オープンリーディングフレーム(hotTFP)を含有する。当該断片は制限部位BsrGI及びSacIにより描写される。
共有結合で閉環したプラスミドベクターであるF7は:DNA2.0ベクターpJ15(amp耐性マーカー及びcolE1 oriを含有する)、制限部位AflII、BamHI、XbaI、NgoMIV、BsrGI、SacI、マルチクローニングサイト領域1(mcs1)、CMV即時型初期プロモーター、マルチクローニングサイト領域2(mcs2)、細胞当たりのエピソームコピー数を判定するためのベータアクチン(βアクチン)部分、BsiWIを(順に)含有する(図35B参照)。
Mcs1は次の制限部位:(5’)SbfI、PmeI、、BglII、SacII、SpeI、BsmBI、及びSacI(3’)を含有する。Mcs2は(5’)ClaI、XhoI、BclI、EcoRI、AgeI、NotI、及びNheI(3’)を含有する。
プロトタイプベクターAB102は、標準的な分子生物学的操作を用いて以下に記載の通りアッセンブリされる:最終の全コンストラクトを配列解析で確認する。
1.トリプルライゲーションを行って、インサートF5(BsrGI及びNgoMIVを用いて回収)及びF6(SacI及びBsrGIを用いて回収)をベクターF7に組み込み、ベクターANA113を作製する。
2.別にトリプルライゲーションを行って、インサートF2(MluIからNsiI)及びF3(NsiIからXbaI)をベクターF1にインテグレートしベクターANA110を作製する。
3.ダブルライゲーションを行って、インサートF4(XbaIからNgoMIV)をベクターANA110に含めて、ベクターANA119を作製する。
4,最後に、ダブルライゲーションを行って、上記ANA113由来のインサート(BsiWIからNgoMIV)をBsiWI及びNgoMIVで切断したベクターANA119中に取り入れ、AB102を作製する。
制限部位を慎重に配置することでAB102を高度にモジュールにする(図36A及び36Bを参照)。それ故、ある場合は、それに続く殆どのベクターフォーマット(即ち、ベクターフォーマット2−4)は、断片の単純な交換によって作製される。例えば、ブラストサイジンSデアミナーゼ(コールドbsd)及びハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(コールドhyg)のオープンリーディングフレームは、本明細書中に記載のとおりSHM耐性のコドンを用いてDNA2.0で合成される(したがって「コールド」と表示)。これらマーカーは両方とも制限部位NgoMIV及びXbaIが境界となり、従ってpur(やはりNgoMIV及びXbaIで描写される)の代わりに容易にクローニングされてそれぞれbsd又はhygへの耐性を付与する型のベクターを作製する。
同様にして、目的の他の遺伝子を、5’側のmcs1中の特有な制限部位の1つと3’末のBsrGI又はAscIが境界となるように合成する。そのような、当初TFPが占めていた部位(図36A及び36B)にクローニングされる遺伝子としては、他の蛍光タンパク質(GFP及び“GFP*”[インフレームでtyr82の代わりに終止コドンを含有するGFP])、抗体重鎖又は軽鎖等のイムノグロブリン、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID、AICDAとしても知られる)、及びリバーステトラサイクリントランス活性化タンパク質(rtTA)が挙げられる。
1以上のエピソームベクターの同定及び定量を同時に可能にするベータアクチン及びG6PDHには、長さが異なる型がいくつかある。それぞれの型はBsiWI及びClaIサイトを用いて同位置にクローニングする。
CMV即時型初期プロモーターの異なる変形(即ち、SacI、及びBsrGI制限部位が除去された型、及びエンハンサー領域の5’末により多い、又はより少ないヌクレオチドを含む型)は、mcs2(5’)及びmcs1(3’′)にそれぞれ見られる特有の制限部位であるNheI及びSbfIを用いることによってABベクターシリーズのコンストラクト内外で交換される。
ベクターフォーマット5.AB102の誘導体であるAB184は、目的の遺伝子の発現がドキシサイクリン(dox)の添加により誘導できるベクターの典型的な例である(図37A)。AB184は以下の点でAB102と異なる:
TFPオープンリーディングフレームが、コールドコドン型のrtTAコーディング領域で置換されている(例えば、Gossen and Bujard,Proc Natl Acad Sci USA.(1992)89(12):5547-51;Gossen et al.,Science(1995)268(5218):1766-9を参照)。rtTA遺伝子はベクターpJ2中、DNA2.0で合成し、クローニングサイトとしてBglIIを5’(センス)プライマーに含み、AscIを3’(アンチセンス)プライマーに含むようなPCR増幅によって回収される。PCR断片はAB102のBglII(mcs1に見られる)及びAscIサイトにクローニングする(図38)。
hygオープンリーディングフレームはコールドコドンを使用して、DNA2.0によりpJ2中で5’NgoMIVサイト及び3’XbaIサイトを伴うように合成し、ベクターANA112を作製する。このベクター由来のhygインサートは、AB184中、選択マーカーとしてpur(図38)と置換される。
ANA112も、原核生物型耐性マーカーkanを供給するために使用される。部位特異的変異誘発法(SDM)によりkanマーカーの5’にBsiWIサイトを付加し、ANA136を作製する。連続するkan及びcolE1断片はBsiWI及びAflIIを用いてANA136から回収し、AB102中の相同性のあるamp−colE1断片を置換してAB184に対するkan耐性前駆体を生成する。
BstBIサイトを、特有のAflIIサイトの次に付加する(エレメントの順:kan−colE1−AflII−BstBI…)。
最後に、dox−誘導性のコールド イヌAID発現カセットを作り出し、oriPとcolE1 oriとの間に見られるAflIIサイトで当該ベクターに付加する。こうする工程を以下に記載する。
ベクターF10は、DNA2.0で合成し、以下のエレメント:i.pJ2由来のcolE1 ori及びkanマーカー;ii.SacIサイト;iii.ヒト成長ホルモン(hGH)最小プロモーター(配列ACAGTGGGAGAGAAGGGGCCAGGGTATAAAAAGGGCCCACAAGAGACCAGCTCAAGGATTCCAAGGC;配列番号284);iv.SpeIサイト;v.コールドコドンを使用したイヌAID及び核外搬出シグナルを無効にする単一変異(L198A);並びにAgeIサイトを(順に)含有する。
ベクターF10は好ましからざるAflIIサイトをAgeIサイトの3’側に含有していた(図37B)。このサイトは部位特異的変異誘発法により除去する。AflIIサイトを部位特異的変異誘発法によりSacIサイトの5’側に添加し、ANA165を作製する。
上記(a)に列挙されたhGHミニマルプロモーターを含む、7回反復を有するtetオペレーターエレメントをプラスミドpJ51中、DNA2.0で合成し、ベクター7xprtTAを作製する。インサートの順は(5’)AflII−7xprtTAオペレーターエレメント−SacI−hGHプロモーター−及びSpeI(3’)である。当該7x反復をAflII及びSpeIによりpJ51から回収し、ANA165の同じサイトにクローニングし、ANA209を作製する(図38)。
発現カセットを完成させるために、(1)AflIIで切断し、CIP(仔ウシ腸ホスファターゼ)処理したベクターpJ15;と(2)AgeIからAflIIまでのインサート7xprtTA−コールド イヌAIDnes(−);と(3)元々はインサートF3として合成され、AgeI(5’)及びAfl II(3’)制限部位をPCRプライマーに取り込んでいる、PCR増幅した3’ut/pA断片を含めたトリプルライゲーションを行う。これでベクターANA285が作り出される。
最後に、発現誘導カセット(以下の遺伝子マーカー:AflII−7xprtTA−イヌAID−3’ut/pA−AflIIを順に含有する)全体を、BstBIサイトを含み、且つ5’側にAflIIサイトを補ったオリゴを用いるPCRによりANA285から回収する。従って、回収するインサートは以下の遺伝子エレメント:AflII−BstBI−7xprtTA−イヌAID−3’ut/pA−AflII−BstBIを有する。このPCR増幅産物はBstBIで消化し、上記工程(3)中に記載のAB184前駆体中に特有のBstBIサイトにクローニングしAB184を作製する(図37A)。(当該カセット3’末端のAflIIサイトはクローニングベクターの一部であり、PCR増幅インサートにより最終コンストラクトには持ち込まれないことに留意)。
実施例6
新規ランチビオティクス合成法の創出へのSHMの適用
既存の治療法への耐性を伴う細菌の進化は、新規抗生物質の発見及び開発において注目されるきっかけとなる。更なる研究のための理想的な候補は、複合的な作用様式を介して作用し、耐性の獲得を有意に、そしてより困難にするものである。そのような抗生物質の1つが、ナイシンである。
ナイシンはLactococcus lacticの天然産物であるランチビオティクスであり、グラム陽性細菌に対して広範な活性を有し、食物の保存においてListeria monocytogenes及びClostridium botulinum等の病原体に対して一般的に使用される。(BAVIN et al.,Lancet.1952 Jan 19;1(3):127-9)ナイシンはリボソームで翻訳され、ポスト翻訳されたペプチドであるが、食物産業において数十年使用されてきたにもかかわらず、共通の耐性機構の誘導が見られていない。この知見は2つの事実の結果のようである:1つはナイシンの殺菌活性の作用様式が、そのLipid IIへの結合及び二次的な孔形成の誘導に由来することである(Breukink et al.,Nat Rev Drug Discov.2006 Apr;5(4):321-32)。Lipid IIは、グラム陽性細菌によっては容易に改変されない細菌の細胞壁成分であり、その使用は細菌の細胞壁生成の律速段階を形成する。ナイシンは胞子形成阻害にも作用する。
ナイシンは現在、数種の細菌病原体の処置のための臨床前の開発途上にある。ナイシンは、多剤耐性のStreptococcus pneumoniae、バンコマイシン耐性のEnterococcus faecium、及びStrepococcus pyogenes等の数種の病原体への一定範囲の活性を示すが、それらす
べてが、新たな治療が是非とも必要な領域である(Goldstein et al.,J.Antimicrob.Chemother.1998 Aug;42(2):277-8)。ある研究では(マウスにおける)S.pneumoniaeの処置において、ナイシンがバンコマイシンよりも8〜16倍強力であることが示された(Brumfitt et al.,J Antimicrob Chemother.2002 Nov;50(5):731-4)。
これらの有望な特徴にもかかわらず、ナイシン及び他のランチビオティクスはいくつかの重大な限界をかかえている。細菌は、密接に関連する(同系の)種でさえ、ナイシン及び他のランチビオティクスに対する感受性に有意な多様性を示す。第二に、ナイシンは哺乳動物の循環系から迅速に一掃される。ナイシンが真に効果的な治療薬となるには、広範な殺菌活性を伴う改善された薬理動態特性を有することが必要である。ここで、質的改善を伴うナイシンを設計するのにSHMを適用することを検討する。
生物活性を持つナイシンの生合成はたった5つのL.lactisのタンパク質、NisA,NisB,NisC,NisP、及びNisTに依存することが示されている(Kuipers et al.,J Biol Chem.2004 Can 21;279(21):22176-82;Rink et al.,Biochemistry.2005 Jun 21;44(24):8873-82)。NisAは、いくつかのセリン及びスレオニン部位でNisBにより脱水される前駆体ペプチドをコードし、NisCにより5箇所で環状化される修飾ペプチドとなる。最後に、プロテアーゼのNisPにより当該抗生物質前駆体のリーダーペプチドが切断され、トランスポーターのNisTにより培地へと排出される(図47A参照)。それぞれがNisCにより触媒される5つのチオエステル環は、ランチオニンと称され、修飾ペプチド抗生物質であるランチビオティクスファミリーを定義づける。
本経路のモジュール特性、生物活性の容易なアッセイ、広範な特異性及びデヒドラターゼ及びシクラーゼのNisB及びNisCの活性により、これを、SHMによって駆動される共進化に対する理想的な標的とし、新規抗生物質コンストラクトが製造される。1つのアプローチにおいて、そのような戦略はある種の遺伝子、又は遺伝子の部分をSHMに対してより感受性とすることに基づき得るが、一方では他の遺伝子、又はそのような遺伝子の部分をSHMに耐性とすることに基づき得る。
ナイシン生合成に関わる5つの遺伝子のアミノ酸配列を以下に示す:これらの配列においては、太字の残基はそれらの位置がSHMに対してホットにされるものであることを示すが、一方で下線の残基は、SHMに対してコールドにされるものであることを示している。
NisA,ネイティブ遺伝子>NisA|gi|530218|gb|AAA26948.1|ナイシン[Lactococcus lactis]NisA,
MSTKDFNLDLVSVSKKDSGASPRITSISLCTPGCKTGALMGCNMKTATCHCSIHVSK(配列番号285)
NisC,ネイティブ遺伝子>NisC|gi|44045|emb|CAA48383.1|nisC[Lactococcus lactis]
MRIMMNKKNIKRNVEKIIAQWDERTRKNKENFDFGELTLSTGLPGIILMLAELKNKDNSKIYQKKIDNYIEYIVSKLSTYGLLTGSLYSGAAGIALSILHLREDDEKYKNLLDSLNRYIEYFVREKIEGFNLENITPPDYDVIEGLSGILSYLLLINDEQYDDLKILIINFLSNLTKENNGLISLYIKSENQMSQSESEMYPLGCLNMGLAHGLAGVGCILAYAHIKGYSNEASLSALQKIIFIYEKFELERKKQFLWKDGLVADELKKEKVIREASFIRDAWCYGGPGISLLYLYGGLALDNDYFVDKAEKILESAMQRKLGIDSYMICHGYSGLIEICSLFKRLLNTKKFDSYMEEFNVNSEQILEEYGDESGTGFLEGISGCILVLSKFEYSINFTYWRQALLLFDDFLKGGKRK (配列番号286)
NisB,ネイティブ遺伝子>gi|473018|emb|CAA79468。1|NisBタンパク質[Lactococcus lactis]
MIKSSFKAQPFLVRNTILSPNDKRSFTEYTQVIETVSKNKVFLEQLLLANPKLYNVMQKYNAGLLKKKRVKKLFESIYKYYKRSYLRSTPFGLFSETSIGVFSKSSQYKLMGKTTKGIRLDTQWLIRLVHKMEVDFSKKLSFTRNNANYKFGDRVFQVYTINSSELEEVNIKYTNVYQIISEFCENDYQKYEDICETVTLCYGDEYRELSEQYLGSLIVNHYLISNLQKDLLSDFSWDTFLTKVEAIDEDKKYIIPLKKVQKFIQEYSEIEIGEGIEKLKEIYQEMSQILENDNYIQIDLISDSEINFDVKQKQQLEHLAEFLGNTTKSVRRTYLDDYKDKFIEKYGVDQEVQITELFDSTFGIGAPYNYNHPRNDFYESEPSTLYYSEEEREKYLSMYVEAVKNHNVINLDDLESHYQKMDLEKKSELQGLELFLNLAKEYEKDIFILGDIVGNNNLGGASGRFSALSPELTSYHRTIVDSVERENENKEITSCEIVFLPENIRHANVMHTSIMRRKVLPFFTSTSHNEVQLTNIYIGIDEKEKFYARDISTQEVLKFYITSMYNKTLFSNELRFLYEISLDDKFGNLPWELIYRDFDYIPRLVFDEIVISPAKWKIWGRDVNNKMTIRELIQSKEIPKEFYIVNGDNKVYLSQENPLDMEILESAIKKSSKRKDFIELQEYFEDENIINKGQKGRVADVVVPFIRTRALGNEGRAFIREKRVSVERREKLPFNEWLYLKLYISINRQNEFLLSYLPDIQKIVANLGGKLFFLRYTDPKPHIRLRIKCSDLFLAYGSILEILKRSQKNRIMSTFDISIYDQEVERYGGFDTLELSEAIFCADSKIIPNLLTLIKDTNNDWKVDDVSILVNYLYLKCFFQNDNKKILNFLNLVSPKKVKENVNEKIEHYLKLLKVDNLGDQIFYDKNFKELKHAIKNLFLKMIAQDFELQKVYSIIDSIIHVHNNRLIGIERDKEKLIYYTLQRLFVSEEYMK (配列番号287)
NisP,ネイティブ遺伝子>gi|730155|sp|Q07596|NISP_LACLAナイシンリーダーペプチドをプロセッシングするセリンプロテアーゼnisP前駆体
MKKILGFLFIVCSLGLSATVHGETTNSQQLLSNNINTELINHNSNAILSSTEGSTTDSINLGAQSPAVKSTTRTELDVTGAAKTLLQTSAVQKEMKVSLQETQVSSEFSKRDSVTNKEAVPVSKDELLEQSEVVVSTSSIQKNKILDNKKKRANFVTSSPLIKEKPSNSKDASGVIDNSASPLSYRKAKEVVSLRQPLKNQKVEAQPLLISNSSEKKASVYTNSHDFWDYQWDMKYVTNNGESYALYQPSKKISVGIIDSGIMEEHPDLSNSLGNYFKNLVPKGGFDNEEPDETGNPSDIVDKMGHGTEVAGQITANGNILGVAPGITVNIYRVFGENLSKSEWVARAIRRAADDGNKVINISAGQYLMISGSYDDGTNDYQEYLNYKSAINYATAKGSIVVAALGNDSLNIQDNQTMINFLKRFRSIKVPGKVVDAPSVFEDVIAVGGIDGYGNISDFSNIGADAIYAPAGTTANFKKYGQDKFVSQGYYLKDWLFTTANTGWYQYVYGNSFATPKVSGALALVVDKYGIKNPNQLKRFLLMNSPEVNGNRVLNIVDLLNGKNKAFSLDTDKGQDDAINHKSMENLKESRDTMKQEQDKEIQRNTNNNFSIKNDFHNISKEVISVDYNINQKMANNRNSRGAVSVRSQEILPVTGDGEDFLPALGIVCISILGILKRKTKN (配列番号288)
NisT,ネイティブ遺伝子>gi|44044|emb|CAA48382。1|nisT[Lactococcus lactis]
MDEVKEFTSKQFFYTLLTLPSTLKLIFQLEKRYAIYLIVLNAITAFVPLASLFIYQDLINSVLGSGRHLINIIIIYFIVQVITTVLGQLESYVSGKFDMRLSYSINMRLMRTTSSLELSDYEQADMYNIIEKVTQDSTYKPFQLFNAIIVELSSFISLLSSLFFIGTWNIGVAILLLIVPVLSLVLFLRVGQLEFLIQWQRASSERETWYIVYLLTHDFSFKEIKLNNISNYFIHKFGKLKKGFINQDLAIARKKTYFNIFLDFILNLINILTIFAMILSVRAGKLLIGNLVSLIQAISKINTYSQTMIQNIYIIYNTSLFMEQLFEFLKRESVVHKKIEDTEICNQHIGTVKVINLSYVYPNSNAFALKNINLSFEKGELTAIVGKNGSGKSTLVKIISGLYQPTMGIIQYDKMRSSLMPEEFYQKNISVLFQDFVKYELTIRENIGLSDLSSQWEDEKIIKVLDNLGLDFLKTNNQYVLDTQLGNWFQEGHQLSGGQWQKIALARTFFKKASIYILDEPSAALDPVAEKEIFDYFVALSENNISIFISHSLNAARKANKIVVMKDGQVEDVGSHDVLLRRCQYYQELYYSEQYEDNDE (配列番号289)
NisB,NisP及びNisT
上記した通り、SHM耐性(コールド)型の必須遺伝子NisP及びNisTが作り出されることは、これらの遺伝子が、多様性を生み出すための標的となるSHM感受性遺伝子よりも低い割合で変異する傾向にあるであろうことを意味する。NisP及びNisTは両方とも、現在ナイシンに対して広範な特異性を有し、且つ翻訳後修飾されたペプチドに潜在的な多様性を付加しない。この冒頭の例においては、NisBもSHM耐性にされるが、NisAについて以下に概説される指針と同じ指針に従って、選択的に変異させることもできる。ネイティブなNisBポリヌクレオチド及びSHM耐性NisBポリヌクレオチドを、それぞれホットスポット頻度及びコールドスポット頻度の初期解析(図439B及び40B)と共に、それぞれ図39A及び図40Aにおいて提供する。ネイティブなNisPポリヌクレオチド及びSHM耐性NisPポリヌクレオチドを、それぞれホットスポット頻度及びコールドスポット頻度の初期解析(図41B及び42B)と共に、それぞれ図41A及び図42Aにおいて提供する。
NisAペプチド
上記に示す通り、NisAペプチドのリーダーペプチド領域の大半は、この配列がNisBCPTによる基質認識に絶対的に必要であるため、AID介在性の変異誘発に耐性とすることができる。残りのNisAペプチド配列の大部分はAID介在性の変異誘発に感受性とすることができ、あるいは上記に示すとおりランチオニン類の生成に関与する鍵となる残基はSHMに耐性とすることができ、それによってそれらの変異誘発の割合を低減できる。
NisAポリヌクレオチド配列の対応する未改変型ポリヌクレオチド及びSHM耐性(コールド)型ポリヌクレオチドをそれぞれ図44A及び44Dに示す。未改変のホットスポット及びコールドスポット頻度の初期解析(図44B及び44C)をそれぞれSHM耐性のホットスポット及びコールドスポット頻度(図44E及び44F)のそれぞれと比較する。NisAのコドンを最適化することによってリーダー配列中20個のコールドスポットが作り出され、1個以外は全てホットスポットが排除される。そして、当該分子の残りの部分において、野生型配列ではホットスポットが8個なのに比べ17個のホットスポットが作り出される。
NisCタンパク質
上記に太字の残基として概説し、図47Bに示されるように、基質認識及び環状化に関わるNisCの領域は、AID介在性の変異にホット(感受性)にすることができ、それらは活性及び特異性の変化を伴う変異体を作出する蓋然性が高まり、よって改変された修飾及び生物活性を伴う成熟ナイシン分子が作り出される。当該タンパク質の安定性のみを支配する構造領域はコールドにできる。NisCポリヌクレオチド配列の対応する未改変型ポリヌクレオチド及びSHM耐性(コールド)型ポリヌクレオチドをそれぞれ図45A及び46Aに示す。未改変のホットスポット及びコールドスポット頻度の初期解析(図45B及び45C)をそれぞれSHM耐性のホットスポット及びコールドスポット頻度(図46B及び46C)のそれぞれと比較する。
この遺伝子中の標的化ホットスポット作成の具体例を以下に示す:
本実施例では、SHMredesignを用い、更なるホットスポットが目的の領域(LSTG)中へと挿入され、且つコールドスポットが除去されている。更に、フランキング配列は有意に、よりSHM耐性とされている。
合成ポリヌクレオチド配列に、無関係な制限部位が確実に無いことを最終的に点検した後、完全な合成ポリヌクレオチド配列を合成し(DNA2.0,Menlo Park,CA)、適切なクローニングベクターにクローニングし、そして正しく合成されていることを確認するために配列決定することができる。
次いで合成遺伝子を発現ベクターに導入し、適切な細菌株、例えば以前に記載されたLactococcus lactis株(Mota-Meira et al.,FEBS Lett.1997 Jun 30;410(2-3):275-9)にAID(Besmer et al.,Mol Cell Biol.2006 Jun;26(11):4378-85)又はApobec−1酵素等のAIDホモログと共に、形質転換できる。
スクリーニングは、SHMを介して生じる多様性が、現在はほとんどナイシンによって標的化されていないグラム陽性細菌標的と共培養されたL. lactisを進化させることにより遂行され得る。結果的に、選別された標的細菌に対する活性が増強した変異型ナイシン遺伝子を含むL. lactis株が生じるであろう。
工程の進行を評価するために、生じた細胞培養物の培養液上清の質量分析を用いることができる(即ち、病原体への活性が向上した新規ランチビオティクスの同定)。
実施例7
改良受容体生成へのSHMの適用
受容体はリガンドを結合し、抗体(B細胞受容体)、T細胞受容体、Fc受容体、Gタンパク質共役受容体、サイトカイン受容体等の細胞結合受容体を含むが、これらに限定されない広範な一群のポリペプチドを包含する。
Fc受容体(FcR)はイムノグロブリン(Ig)分子のFc部分に特異的な受容体であり、関連の受容体でファミリーを構成する。受容体はそれぞれのイムノグロブリンクラスについて定義されており、そのようなものとして、それらが結合するIgのクラスにより定義される:Fcガンマ受容体(FcγR)はガンマイムノグロブリン(IgG)に結合し、Fcイプシロン受容体(FcεR)はイプシロンイムノグロブリン(IgE)に結合し、Fcアルファ受容体(FcαR)はアルファイムノグロブリン(IgA)に結合する。
Fcγ受容体はたいていの造血細胞上に発現し、IgGの結合を介して、免疫系の恒常性及び感染に対する非修飾宿主防御において重要な役割を果たす。FcγR受容体は3種類のサブファミリーメンバーに同定されている(1)IgGに対する高親和性受容体であるFcγRI;(2)凝集した免疫複合体に強く結合する、IgGに対する低親和性受容体であるFcγRII;(3)免疫複合体に結合する低親和性受容体であるFcγRIII。構造的に関連するにもかかわらず、当該受容体は異なる機能を果たす。
FcγR は3つのサブクラスに同定されている:FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)。それぞれのFcγRサブクラスが2又は3個の遺伝子にコードされ、選択的スプライシング(spicing)で複数の転写産物を生じるため多様なFcγRアイソフォームが存在する。FcγRIサブクラス(FcγRIA、FcγRIB及びFcγRIC)をコードする3つの遺伝子は第1染色体長腕の1q21.1領域中にクラスター化しており;FcγRIIアイソフォーム(FcγRIIA、FcγRIIB及びFcγRIIC)をコードする遺伝子群及びFcγRIII(FcγRIIIA及びFcγRIIIB)をコードする2つの遺伝子は全て1q22領域中にクラスター化している。これらの異なるFcRサブタイプは異なるタイプの細胞で発現する(Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)で総説されている)。例えば、ヒトにおいてはFcγRIIIBは好中球上にのみ見られるが、FcγRIIIAはマクロファージ、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びT細胞亜集団上に見られる。とりわけ、FcγRIIIAはADCCに関連するタイプの細胞の1つであるNK細胞上に存在する唯一のFcRである。
FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIはイムノグロブリンスーパーファミリー(IgSF)の受容体である;FcγRIはその細胞外ドメインに3つのIgSFドメインを有するが、FcγRII及びFcγRIIIはそれらの細胞外ドメインに2つのIgSFドメインしか有しない。
新生児Fc受容体(FcRn)は別のタイプのFc受容体である。FcRnは構造的に主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)と類似し、β2ミクログロブリンに非共有結合するα鎖から成る。
FcγRに対するヒト及びマウス抗体上の結合部位は、233〜239(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)中のEUインデックス番号)残基から成るいわゆる「ヒンジ領域下流」に以前マッピングされている。Woof et al.Molec.Immunol.23:319-330(1986);Duncan et al.Nature 332:563(1988);Canfield and Morrison,J.Exp.Med.173:1483-1491(1991);Chappel et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA88:9036-9040(1991)。
FcγRへの結合に関与すると考えられる他のアミノ酸残基としては:ヒトFcγRIに対してG316−K338(ヒトIgG)(Woof et al.Molec.Immunol.23:319-330(1986));ヒトFcγRIIIに対してK274−R301(ヒトIgG1)(ペプチドベース)(Sarcan et al.Molec.Immunol.21:43-51(1984));ヒトFcγRIIIに対してY407−R416(ヒトIgG)(ペプチドベース)(Gergely et al.Biochem.Soc.Trans.12:739-743(1984));並びにマウスFcγRIIに対してN297及びE318(マウスIgG2b)(Lund et al.,Molec.Immunol.,29:53-59(1992))が挙げられる。ある場合には、IgG3中のPro331をSerに変異させ、この改変IgG3の標的細胞への親和性が解析される:該親和性は未変異のIgG3のそれよりも6倍低く、これはFcγRI結合におけるPro331の関与を示唆している。Morrison et al.,Immunologist,2:119-124(1994);及びCanfield and Morrison,J.Exp.Med.173:1483-91(1991)。
2つのFcγRIIタンパク質間の境界面のダイマー化を妨げる化合物は、一方又は両方の当該FcRタンパク質による細胞シグナル伝達に影響を与え得る。具体的には、FcγRIIのアミノ酸残基117〜131及び150〜164はFcγIIaダイマーの境界領域と考えられ、この領域を模倣するか又はこの領域に結合できる化合物は良好な結合調節因子と考えられる(米国特許第6,835,753号を参照)。
1つの側面において、複数のIgG分子のFc領域の少なくとも一部をコードする合成ポリヌクレオチドは、FcγRIIaのこの領域に対する結合親和性の増大を示す改変IgG分子を作り出すための、本明細書中に記載する方法を用いる体細胞超変異に対する当該部位の感受性が増大するように改変することができる。
他の側面においては、そのようなSHMで改変されたポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドが本明細書中で検討される。1つの実施形態において、SHMで改変されたIgGとしては、Phe121からSer126のヘキサペプチド配列か、又は有意な水素結合相互作用を伴う領域にわたるより短い断片をコードする合成ポリヌクレオチドであって、当該ポリヌクレオチドがSHMに最適化されているポリヌクレオチドが挙げられる。そのようなIg分子は2つのFcγRIIa分子同士のダイマー化の、好適な調節因子である。
FcRのFGループの上側部分は、変異誘発の研究で証明された通り、Ig結合に関与することが示されている。FGペプチド鎖は、“3 Dimensional Structure and Models of Fc Receptors and Uses Thereof.”という名称の米国特許第6,675,105号に記載されるような、FGループにおいて定まった方向にアミノ酸側鎖を突き出す伸張βシートを含有する。βターンの模倣体のように作用でき、且つFGループの先端で、受容体中のそれらと同様にその側鎖を提示する分子も、FcR受容体活性の調節において有効であることがわかっている。
1つの側面において、FGループにおいて定まった方向にアミノ酸側鎖を突き出す伸張βシートを含有するPFペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドは、FcRのこの領域に対する結合親和性の増大を示す改変ポリペプチドを作り出すための、本明細書中に記載する方法を用いる体細胞超変異に対する感受性が増大するように改変することができる。他の側面においては、そのようなSHMで改変されたポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドが本明細書中で検討される。
Fc受容体は正常免疫及び感染抵抗性において役割を果たし、且つ細胞性エフェクターの動員を伴う体液性免疫システムを提供する。Igガンマ(IgG)のFcγRへの結合は、FcγRによる制御と関連する疾患の兆候をもたらし得る。例えば、自己免疫疾患の血小板減少性紫斑病は、血小板のFcγR依存性IgG免疫複合体活性化又はFcγR+食細胞によるそれらの破壊に起因する組織(血小板)損傷を伴う。更に、II型及びIII型過敏性反応を含む様々な炎症性疾患(例、関節リウマチ及び全身性エリテマトーデス)がIgG免疫複合体を伴うことが知られている。II型及びIII型過敏性反応には、補体介在性機構又は食細胞エフェクター機構のいずれかを活性化できるIgGが介在し、組織損傷を引き起こす。
様々な生物学的機構におけるFcRの役割という要因を背景として、イムノグロブリンのFcRへの結合に影響し、FcRによる調節に関連する様々な病気の治療用に使用できる化合物が必要である。
Fc受容体調節因子(イムノグロブリンのFc受容体結合の調節因子)はFcαR、FcεR及びFcγRポリペプチドを調節できる。FcαR、FcεR及びFcγRポリペプチドのFc受容体調節因子をコードするポリヌクレオチドは、本明細書中に記載の方法を用いて、当該ポリペプチドの1以上の部分の、体細胞超変異への感受性を増大及び/又は減少させるように改変できる。そのような方法を用いて作製された改変Fc受容体調節因子を、改変された結合及び活性を示す調節因子を同定するためにアッセイできる。1つの側面において、FcR調節因子はFcγRI、FcγRII及び/又はFcγRIIIと相互作用する。更なる側面において、FcR調節因子はFcγRIIa、FcγRIIb及び/又はFcγRIIcと相互作用する。本明細書中で提供されるFc受容体調節因子は、抗体の凝集体が生成され、且つ抗体の内因性又は外因性抗原との接触により免疫複合体が産生される任意の疾患の治療又は診断を含む、様々な用途に使用できる。当該Fc受容体調節因子により適用可能な治療及び診断としては、非限定的に、免疫複合体疾患;関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、免疫性血小板減少症、好中球減少症、溶血性貧血を含むがこれらに限定されない自己免疫疾患;結節性多発性動脈炎、全身性血管炎を含むがこれらに限定されない血管炎(vasculitities);異種移植拒絶反応;及びデングウィルス−デング出血熱等のフラビウイルス感染及び麻疹ウイルス感染を含むがこれらに限定されない、FcRによるウイルスの取り込みが感染を亢進する感染性疾患が挙げられる。Fc受容体調節因子はIgGが介在する組織損傷を低減するため、そして炎症を低減するためにも使用できる。
本明細書中で提示される、SHMで改変されたFc受容体調節因子は、細胞介在性の抗体依存的細胞毒性、食作用及び炎症性サイトカイン遊離等の、FcRの機能を亢進することにより白血球の機能を亢進させることもできる。亢進したFcRの機能についての治療及び診断としては、病原体除去のために正常抗体が産生される任意の感染;及び未改変又は組み換え抗体が癌及び感染等の治療に使用できる、FcRの機能を要する任意の疾患が挙げられる。イムノグロブリン治療の効果を亢進させるために、例えば、イムノグロブリン(例、正常Ig又はSHMで改変したIg)をFc受容体調節因子(例、SHMで改変した調節因子)と併用して投与できる。
他の側面において、FcRはC1q結合を介して補体経路に関わる。C1q及び2つのセリンプロテアーゼ(C1r及びC1s)が、補体依存性細胞傷害(CDC)経路の最初の成分、複合体C1を形成する。補体カスケードを活性化するためには、C1qがIgG1、IgG2、又はIgG3のうちの少なくとも2つの分子と結合することが必要であるが、IgMの1分子だけが、標的抗原に付着する(Ward and Ghetie,Therapeutic Immunology 2:77-94(1995)80頁)。化学的修飾及び結晶学的研究の結果に基づいて、Burtonら(Nature,288:338-344(1980))はIgG上の、補体サブコンポーネントC1qの結合部位がCH2ドメインの最後の2つ(C末端)のβ鎖を含むことを提唱した。Burtonは後に、アミノ酸残基318〜337を含む領域が補体結合に関与するであろうこと(Molec.Immunol.,22(3):161-206(1985))を提唱した。1つの側面において、標的抗原への親和性増大を示すか、C1qへの結合性増大を示すか、又はその両方となるように改変された、SHMで改変されたIg分子(例、IgG1、IgG2、又はIgG3或いはIgM)が本明細書中で提供される。そのような改変Ig分子は、出発Igと比較して結合及び/又は生物活性における変化を評価するために、当該技術分野において承認されている1以上のアッセイにおいて試験できる。
SHMで改変されたFc受容体調節因子を試験するためのアッセイとしては、例えば、結合アッセイ、血小板凝集阻害アッセイ、ADCC活性の評価、C1q結合の評価、並びに下記の、結合及び機能を試験するための他のアッセイ等、Fc受容体活性を調節する化合物を試験するための当該技術において公知のものが挙げられる。SHMで改変されたFc受容体調節因子の結合及び活性はコントロールのIg分子と比較できる。
結合アッセイ
一例において、可溶性の組み換えFcγRIIaとヒトイムノグロブリンとの相互作用を、BIAcore 2000バイオセンサー(Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)を用い、Hepes緩衝生理食塩液 [HBS:10mM Hepes(pH7.4),150mM NaCl,3.4mM EDTA,0.005%Surfactant P20 (Pharmacia)]中、22℃で、SHMで改変されたFc受容体調節因子存在下で検討した。ヒトIgG1、IgG3、及びIgE(50μg/mL)(非特異的結合のコントロール)モノマーを、アミンカップリングプロトコール(BIAcore,Uppsala,Sweden)を用いてCM−5センサーチップ(BIAcore,Uppsala,Sweden)のカルボキシメチルデキストラン表面に共有結合でカップリングする。更なるチャンネルを該カップリングプロトコールを用いて化学的に処理する。可溶性の組み換えFcγRIIaを、50%結合能に等しい、濃度125μg/mLで使用する。可溶性の組み換えFcγRIIaを、SHMで改変された各Fc受容体調節因子と、室温で30分間プレインキュベートし、その後、センサーチップ表面上に10μL/minで1分間注入し、次いで3分間の解離段階を行う。それぞれの化合物を解析する間に、表面は全て50mMジエチルアミン(pH約11.5)、1M NaClで再生する。それぞれの相互作用について応答の最大値を測定する。非特異的結合応答(IgEチャンネル)を、IgG1及びIgG3への結合から差し引く。SHMで改変されたFc受容体調節因子及び受容体間の緩衝液組成の相違に関して測定値を補正する。
血小板凝集阻害
血小板凝集阻害は本明細書中に記載したような、当該技術分野において承認されているアッセイを用いて試験できる。簡単に言えば、試験化合物を血小板とHAGGとの混合物に添加してコントロール化合物と比較することが手法に含められる。この手法により、試験化合物の血小板凝集体形成を阻害する能力及び当該化合物の添加前に形成された血小板凝集体を粉砕する能力をコントロールと比較して説明する。
血小板には単一クラスのガンマ受容体、FcγRIIaが発現している。FcγRIIaの架橋後、血小板では様々な生化学的及び細胞的な修飾が起き、凝集に至る。血小板活性化を阻害する化合物の能力は、血小板凝集を特異的に測定するアッセイを用いて測定される。
簡単に言えば、血小板は以下のようにして単離される:新鮮な全血30mLをクエン酸を入れた回収バイアル中へ回収し、1000rpmで10分遠心する。血小板に富む血漿を分離し、4本のチューブ中、2000rpmで5分遠心する。上清を除去し、血小板をチューブあたり2mlのTyrodes緩衝液(137mM NaCl、2.7mM KCl、0.36mM NaH2PO4、0.1%デキストロース、30mMクエン酸ナトリウム、1.0mM MgCl2.6H20、pH6.5)中で穏やかに再懸濁し、再び2000rpmで5分遠心する。再度上清を除去し、血小板をチューブあたり0.5mlのHepes含有Tyrodes緩衝液中に再懸濁する(137mM NaCl、2.7mM KCl、0.36mM NaH2PO4、0.1%デキストロース、5mM Hepes、2mM CaCl2 1.0mM MgCl2、6H2O、pH7.35)。血小板数は血液分析器(Coulter)を用いて測定し、Hepes含有Tyrodes緩衝液を用いておおよそ100x105血小板/mLの濃度に調整する。
それぞれの凝集実験について、50μLのFc受容体アゴニスト、熱凝集ガンマグロブリン(“HAGG”、200μg/mL)又はコラーゲン(2μg/mL)の混合物を50μLリン酸緩衝生理食塩液(“PBS”:3.5mM NaH2PO4、150mM NaCl)又はBRI化合物(PBS中5mg/mL)と室温で60分インキュベートする。次いで2つの細胞凝集計を用い、37℃で以下のようにアッセイを行った:ガラスのキュベットをホルダーに置き、予め37℃に加温し、400μLの血小板懸濁液を添加する。安定なベースラインに達した後、100μLのHAGG:PBS、HAGG:BRI化合物又はコラーゲン:PBS、コラーゲン:BRI化合物を血小板懸濁液に添加する。引き続いて起こる血小板の凝集を15分間又は凝集が完了するまでモニターする。凝集スロープの傾きを測定することにより凝集の割合を決定する。
ADCC活性アッセイ
SHMで改変されたFc受容体調節因子のADCC活性を評価するために、様々なエフェクター:標的比を用いてin vitroのADCCアッセイを行うことができる。そのようなアッセイに有用な「エフェクター細胞」としては、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。これに代えて、又はこれに加えてポリペプチド変異体のADCC活性を、in vivo、例えば、ClynesらPNAS(USA)95:652-656(1998)により開示されたような動物モデル中で、で評価できる。
例えばクロム51で標識した標的細胞を調製するため、腫瘍細胞株を組織培養プレート中で増殖させ、滅菌した10mM EDTA(PBS中)を用いて回収する。すべてのアッセイにおいて3+HER2を過剰発現するヒト乳癌細胞株であるSK−BR−3細胞を用いる。剥離した細胞を細胞培養培地で2回洗浄する。細胞(5x106)を200μCiのクロム51(New England Nuclear/DuPont)で37℃で1時間、時折混合しつつ標識する。標識した細胞を細胞培養培地で3回洗浄し、次いで再懸濁して1x105細胞/mLの濃度にする。PBMCアッセイ又はNKアッセイで、オプソニン化されていないか、又はアッセイ前にrhuMAb HER2野生型(HERCEPTINTM)又はSHMで改変されたFcR調節因子とインキュベートすることによりオプソニン化された細胞のいずれかを用いる。
健康で正常なドナーから血液をヘパリン上に回収し、等体積のリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で希釈することにより末梢血単核球を調製する。次いで、製造元の使用説明書に従って血液をLYMPHOCYTE SEPARATION MEDIUM(トレードマーク)(LSM:Organon Teknika)上に積層し、遠心する。単核球をLSMと血漿の境界から回収し、PBSで3回洗浄する。エフェクター細胞を細胞培養培地中に懸濁し、最終濃度1x107細胞/mLにする。
LSMを通して精製後、ナチュラルキラー(NK)細胞を、NK細胞単離キット及び磁気カラム(Miltenyi Biotech)を用い、製造元の使用説明書に従ってネガティブ選択によりPBMCから単離する。単離したNK細胞を回収し、洗浄して細胞培養培地に再懸濁し、2x106細胞/mLの濃度にする。NK細胞であるかどうかはフローサイトメトリー解析で確認する。
エフェクター細胞(PBMC又はNKのいずれか)をマイクロタイタープレートの列に沿って、細胞培養培地で2倍段階希釈(最終容積100μL)していくことにより様々なエフェクター:標的比を調製する。エフェクター細胞の濃度範囲はPBMCについては1.0x107/mL〜2.0x104/mL、NKについては2.0x106/mL〜3.9x103/mLである。エフェクター細胞を滴定後、100μLのクロム51で標識した1x105細胞/mLの(オプソニン化された、又はオプソニン化されていない)標的細胞をプレートの各ウェルに添加する。これで初期のエフェクター:標的比がPBMCについては100:1、NKについては20:1となる。アッセイはすべてデュプリケートで行い、各プレートに自発的溶解(エフェクター細胞無し)及び全溶解(標的細胞に加えて100μL)の1%ドデシル硫酸ナトリウム、1N水酸化ナトリウム)についてのコントロールを両方含める。プレートを37℃で18時間インキュベートし、その後細胞培養液上清をsupernatant collection system (Skatron Instrument,Inc.)を用いて回収し
、Minaxi auto-gamma 5000 series gamma counter (Packard)で1分間計数する。次いで結果を式:%細胞毒性=(試料cpm−自発的溶解)/(全溶解−自発的溶解)x100を用いて%細胞毒性として表す。次いでデータの評価のため4変数曲線近似を用いる。
C1q結合
変異体のC1qへの結合能及び補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介する能力を評価できる。C1q結合を決定するために、C1q結合のELISAを行うことができる。簡単に言えば、アッセイプレートを4℃で一晩、コーティング緩衝液中、SHMで改変されたFc受容体調節因子又はコントロールポリペプチドでコーティングする。次いでプレートを洗浄、ブロッキングする。洗浄後、一定分量のヒトC1qを各ウェルに添加し室温で2時間インキュベートする。更に洗浄後、100μlのペルオキシダーゼ結合ヒツジ抗補体C1q抗体を各ウェルに添加し室温で1時間インキュベートする。次いで洗浄緩衝液でプレートを洗浄し、OPD(O−フェニレンジアミン二塩酸塩(Sigma))を含有する基質緩衝液100μlを各ウェルに添加する。黄呈色により観察される酸化反応を30分間進行させ、100μlの4.5NH2SO4の添加により停止する。次いで、(492〜405)nmでの吸光度を読み取る。
結合及び生物学的活性
次いで、出発ポリペプチドと比較した、結合及び生物学的活性における任意の変化を評価するために、SHMで改変されたFc受容体調節因子を1以上のアッセイに付すことができる。
一例では、SHMで改変されたFc受容体調節因子は未改変ポリペプチドと比較して原則的に受容体結合能を保持する、即ち結合能が約20倍ほどは悪くない(例えば未改変ポリペプチドの結合能より約5ほどは悪くない)。SHMで改変されたFc受容体調節因子の結合能は、例えば蛍光活性化細胞選別(FACS)解析又は放射性免疫沈降法(RIA)等の技法を用いて測定する。
受容体結合を測定するために、少なくとも目的の受容体の結合ドメインを含むポリペプチド(例、FcRのαサブユニットの細胞外ドメイン)をアッセイプレート等の固相にコーティングする。受容体の結合ドメイン単独か、又は受容体融合タンパク質を、標準的な方法を用いてプレート上にコーティングする。受容体融合タンパク質の例としては、(それぞれグルタチオン、キチン、及びニッケルをコーティングしたプレ−ト上にコ−ティングされる)受容体−グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質、受容体−キチン結合ドメイン融合タンパク質、受容体−ヘキサHisタグ融合タンパク質が挙げられる。又は、アッセイプレート上に捕捉分子をコーティングし、融合タンパク質の非受容体部分を介して受容体融合タンパク質を結合するために用いる。例としては、受容体−ヘキサHis尾部の融合を捕捉するために用いるアッセイプレート上にコーティングした抗ヘキサHis F(ab’)2、又は受容体−GSTの融合を捕捉するために用いるアッセイプレート上にコーティングした抗GST抗体が挙げられる。他の実施形態においては、少なくとも受容体の結合ドメインを発現する細胞への結合を評価する。当該細胞は目的のFcRを発現する、天然の造血細胞でもよく、又は試験する細胞の表面に結合ドメインが発現するようにFcR又はその結合ドメインをコードする核酸で形質転換されてもよい。
本明細書中、上記に記載の免疫複合体を、受容体をコーティングしたプレートに添加し、ポリペプチドが受容体に結合するのに十分な時間インキュベートする。次いでプレートを洗浄して未結合の複合体を除去し、公知の方法に従い検体の結合を検出する。例えば、試薬(例、検体に特異的に結合し、任意で検出可能な標識をコンジュゲートした抗体又はその断片―検出可能な標識及びそれらをポリペプチドに結合する方法は、以下、「ポリペプチド変異体の非治療的使用」という題されるセクションに記載する)を用いて結合を検出する。
低親和性受容体結合アッセイ
His6−グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)タグ付の融合タンパク質として発現する組み換えFcγRIIA、FcγRIIB及びFcγRIIIAαサブユニットへのIgGFc領域の結合を測定できる。FcγRIに対するIgG1Fc領域の親和性はナノモルの範囲であるから、SHMで改変されたIgG1Fcの結合は、IgGモノマーの滴定及び標準的なELISAフォーマットでのポリクローナル抗IgGを用いて結合したIgGを測定することにより測定できる。しかしながら、FcγRファミリーの他のメンバー、即ちFcγRIIA、FcγRIIB及びFcγRIIIAのIgGに対する親和性はマイクロモルの範囲にあり、これら受容体へのIgG1モノマーの結合はELISAフォーマットでは信頼性のある測定ができない。
FcγR結合ELISA
FcγRIαサブユニット−GST融合物を、100μlの受容体−GST融合物をPBS中1μg/mlで添加することによってNunc F96 maxisorb plates(cat no.439454)上にコーティングし、4℃で48時間インキュベートする。アッセイ前にプレートを250μlの洗浄緩衝液(0.5%TWEEN 20含有PBS pH 7.4)で3回洗浄し、250μlのアッセイ緩衝液(50mM Tris緩衝食塩液、0.05%TWEEN 20、0.5%RIAグレード仔ウシアルブミン(Sigma A7888)、及び2mM EDTA pH 7.4)でブロッキングする。1mlのアッセイ緩衝液中、10μg/mlに希釈した試料をFcγRIαサブユニットでコーティングしたプレートに添加しオービタルシェイカー上、25℃で120分インキュベートする。未結合の複合体を除去するためにプレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、100μlのセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ヒトIgG重鎖特異的抗体(Boehringer Mannheim 1814249)をアッセイ緩衝液中、1:10,000で添加することによりIgG結合を検出し、オービタルシェイカー上、25℃で90分インキュベートする。未結合のHRPヤギ抗ヒトIgGを除去するためにプレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、100μlの基質溶液(PBS中、0.4mg/ml o−フェニレンジアミン二塩酸塩,Sigma P6912,6mM H2O2)を添加し25℃で8分インキュベートすることにより結合した抗IgGを検出する。100μl 4.5N NH2SO4を加えることにより酵素反応を停止し、発色生成物を96ウェルプレートデンシトメーター(Molecular Devices)で490nmで測定する。SHMで改変されたFcR調節因子の結合は親(即ち、野生型又は以前に改変された)分子のパーセントとして表す。
FcRn結合ELISA
IgG変異体のFcRn結合活性測定のため、ELISAプレートを50mM炭酸緩衝液、pH9.6中、2μg/mlストレプトアビジン(Zymed,South San Francisco)で4℃で一晩コーティングし、PBS−0.5%BSA、pH7.2により室温で1時間ブロッキングする。プレートにPBS−0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20、pH7.2中のビオチン化FcRn(Research Organics,Cleveland,Ohio由来のビオチン−X−NHS用いて調製し、1−2μg/mlで使用)を添加し、1時間インキュベートする。PBS−0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20、pH6.0中、IgG標準(1.6−100ng/ml)又は変異体の2倍段階希釈列をプレートに添加し、2時間インキュベートする。上記のpH6.0の緩衝液中の、ペルオキシダーゼ標識されたヤギ抗ヒトIgG F(ab’)2 F(ab’)2(Jackson ImmunoResearch,West Grove,Pa.)、続いて基質としての3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(Kirgaard&Perry Laboratories)を用いて結合したIgGを検出する。工程の間にpH7.2又は6.0のいずれかでPBS−0.05%ポリソルベート20でプレートを洗浄する。Vmax plate reader(Molecular Devices,Menlo Park,Calif.)で450nmの吸光度を読み取る。滴定曲線を4変数非線形曲線近似プログラムを用いて適合させる(KaleidaGraph,Synergy software,Reading,Pa.)。標準滴定曲線の吸収の中央値に対応するIgG変異体の濃度を計算し、次いで標準滴定曲線の吸収の中央値に対応する標準の濃度で除す。
実施例8
酵素経路の最適化のためのAIDの使用
本明細書中に記載するSHMシステムを用いて、代謝的変換の速度又は効率を増大させるため1種以上の酵素をコードするポリヌクレオチドを、体細胞超変異を介して同時に改変できる。目的の経路に関わる酵素としては、例えば、酵母の発酵、抗生物質及び漏出石油の浄化に関連するものが挙げられる(例えば、Ho,.N.W.Y.,Chen Z.and A.Brainard.1998.Appl.and Environ.Microbiol.64:1852-1859;及びSonderegger M.and U.Sauer.2003.Appl.And Environ.Microbiol.69:1990-1998を参照)。
1つの側面において、植物ベースのセルロース系バイオマスをエタノールに変換するための、商業的に実現可能な酵母の発酵システムを開発するため、キシロースを基質として使用するよう遺伝子的に工夫されたSaccharomyces cerevisiaeを、体細胞超変異の段階的導入し、そしてそれに続いて、キシロースを増殖培地中に存在する唯一の炭素源として用いて嫌気的に生育する能力について選別することによりさらに改変できる。
エタノールの利点の1つは、それがガソリンよりも生じる汚染が少ない非化石バイオ燃料であることである。別の利点はエタノールが、植物原料由来の、容易に入手できて再生可能なセルロース系バイオマスから製造できることである。セルロース系バイオマスは五炭糖(主にグルコース及びキシロース)で構成される。しかしながら、酵母のSaccharomyces種(現在グルコースからの工業的な大規模エタノール生産用に用いられている微生物)が現在のところ高収率且つ特定の率でキシロースからエタノール発酵できないことが、セルロース系バイオマスをエタノールに変換するための商業的過程の開発に対する主な障害となっている。
キシロースとアラビノースの両方をエタノールに発酵させ得るSaccharomyces cerevisiae株を開発するために代謝工学に首尾よく用いられている。しかしながら、その組み換え体株や他の天然由来の酵母株はどれも、キシロース単独では嫌気的に生育することができない。
キシロース単独で嫌気的に生育でき、キシロース及びアラビノースをエタノールに発酵させ得るSaccharomyces cerevisiae等の、キシロースを利用する嫌気性真核生物の組み換え体株を作り出すための、キシロース利用経路の1以上の遺伝子の体細胞超変異法が本明細書中で提供される。
1つの側面において、キシロース単独で嫌気的に生育できる酵母株を開発するために、段階的な細胞超変異を使用できる。1つの非制限的な実施形態において、キシロースをキシロース(Xylulose)5−リン酸(Saccharomyces種が発酵できる基質)に変換するために逐次的に作用するPichia stipitis由来の3種の酵素を過剰発現するSaccharomyces cerevisiae株。結果生じるキシロースを利用する酵母株は、植物ベースのセルロース系バイオマスからの、エタノール発酵の有意な改良及び商業的に実現可能なエタノール生産の為の用途を有する。
簡単に言えば、誘導型活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)のSHM耐性ポリヌクレオチド配列を、染色体への安定な挿入によって出発酵母株に導入し、次いでAIDによる段階的な体細胞超変異を、工程間の培養増殖及びキシロースの利用をモニターしつつ誘導する。培養物の増殖率を、600ナノメートルでの光学密度測定によってモニターする。キシロースの利用は、培養培地中のキシロースを測定するための市販の酵素キット(Medichem, Steinenbronn, Germany)を用いてモニターする。
培養物の増殖率及びキシロースの利用が、例えば約2倍に増大すると、次の工程が開始される。1リットル当たりキシロース5グラム及び1リットル当たりグルコース1グラムを含有する好気的ケモスタット培養物を調製する。AID発現を約10世代、約15世代、又は約20世代の間(即ち、おおよそ6−12日)誘導する。AID発現誘導についての世代数は復帰のデータ、DT40のスクリーニングデータ(Cumbers et al.Nat.Biotechnol.2002 Nov;20(11):1129-1134))、及び1.73世代/日という酵母の増殖率に基づいて決定できる。培養増殖率が増大し、且つキシロースが消費される時点で、一定分量の培養液が取り出され、1リットル当たり5グラムのキシロースを唯一の炭素源として含有する新たな好気的ケモスタット培養物が植え継がれる。この培養物において、AID発現を約10世代、約15世代、又は約20世代の間誘導する。再び、増殖率及びキシロース濃度について当該培養物をモニターする。キシロースを消費する増殖集団が得られるとき、通気率を1分当たり1ミリリットル未満に下げ、AID発現を再び約10世代、約15世代、又は約20世代の間誘導する。培養増殖率が安定すると、一定分量の培養液が取り出され、1リットル当たり5グラムのキシロースを唯一の炭素源として含有する新たな好気的ケモスタット培養物が植え継がれ、あらゆる通気が無い中で増殖させ、AID発現を約10世代、約15世代、又は約20世代の間誘導する。培養増殖率及びキシロースの利用をモニターする。
培養物の増殖率が増加し始め、キシロース濃度が減少すると、一定分量の培養液が取り出され、ブチルゴム隔膜及びプラスチックのスクリューキャップで封じた17ミリリットルのPyrexガラスチューブ中での、キシロースを唯一の炭素源とした厳密な嫌気的バッチ培養物が植え継がれる。AID発現を約10世代、約15世代、又は約20世代の間誘導し、増殖率及びキシロースの利用について当該培養物をモニターする。培養物の増殖率が増加し、キシロース濃度が減少すると、一定分量の集団を、唯一の炭素源として1リットル当たり20グラムのキシロースを含有する嫌気的最少培地寒天プレート上に播種する。嫌気気体を提供するために、例えばGasPack Plus System(Becton Dickinson)を用いて、密封した瓶中、30℃(セルシウス)でプレートをインキュベートして嫌気性雰囲気を得る。嫌気性雰囲気は、インジケーターストリップ(Becton Dickinson)を用いてモニターする。
進化した集団の他に親株の、そして、嫌気性キシロースプレートから単離した15クローンの発酵成績を、1リットル当たり50グラムのグルコース及び1リットル当たり50グラムのキシロースを含む嫌気的バッチ培養において比較する。培養物の増殖率、キシロース及びグルコースの利用をモニターする。グルコースの利用は市販のキット(Beckman)を用いて測定する。
SHMの最終工程は、増殖及びキシロースの利用の特徴が最も優良なクローンを採取し、AID発現を誘導し、約15世代の間、複数の連続したバッチ培養で増殖させることである。次いで、この培養物から単離される20個のクローンを、キシロースを唯一の炭素源として厳密な嫌気的培養条件で増殖させる。増殖率が最速のクローンの成績を、嫌気的なキシロースバッチ培養において更に評価する。
実施例9
抗体の親和性成熟に対するSHMの適用
以前に記載したとおり、抗体は増強された特性を伴う変異タンパク質を作り出すための、SHMが適用できる未改変の鋳型を提供する。そのような改良された抗体は、親和性選択に基づき、例えばFACSを介して、又は磁気ビーズへの結合を介して選択し得る。
ニワトリ卵リゾチーム(HyHel)に対する抗体は極めてよく特性解析された、本発明の変異及び選択システムの試験及び最適化を可能にするシステムである。具体的にはHyHel抗体は、親和性の範囲が十分に定義づけられており、且つ配列及び結合特性が解析された、多くの高度に関連付けられた抗体の試験を可能にする。例えば以下の抗体及びその配列変異体(ムテイン)は、生殖細胞系列の配列から始まって完全に親和性成熟した抗体まで、完全に定義付けられた配列を有する(例、Pons et al.,(1999)Protein Science 8:958-68;及びSmith-Gill et al.,(1984)J.Immunology 132:963を参照)。
本発明のシステムを更に最適化するために、ある範囲の高親和性及び低親和性HyHelコンストラクトを作製し、本発明の発現ベクターにクローニングする。次いでこれらベクターを、AIDを発現する変異誘発細胞にトランスフェクトし、磁気ビーズを用いて選別する。結合条件を最適化し、且つアッセイの方法論の正当性を確認するために、野生型HyHelコンストラクトをポジティブコントロールとして用いる。
A.(「野生型」)HyHel10重鎖及び軽鎖コンストラクトの合成及びクローニング
HyHel10重鎖及び軽鎖発現ベクターのプロトタイプを、以下の標準的な分子遺伝学的操作を用い、発現ベクターAB102から出発して(前に記載の通り)作り出す:
AB102中のピューロマイシン耐性マーカーを、NgoMIV及びXbaI制限部位を用いてコールドのbsd又はコールドのhygで置換し、ベクターAB187及びAB185をそれぞれ生成する。
NheI(最もCMVプロモーターに近いmcs2の制限部位)及びSbfI(最もCMVに近いmcs1部位)を用い、わずかに長く、転写がよりロバストな型のCMVプロモーターと、AB102中に見られる元の配列を交換する。元のAB102CMVプロモーターは、TATAボックスの最初のTから上流の553bpの未改変CMV配列を含んでいるが、AB187型はTATAボックスの最初のTから上流の645bpを含む。
「野生型」HyHEL重鎖及び軽鎖(上記の通り)のヌクレオチド配列を、DNA2.0,(Menlo Park,CA)で合成する。クローニングの目的で、BglII及びAscIを重
鎖の境界にし、制限部位SacI及びAscIを軽鎖の境界にする。
細胞表面上にHyHel10 IgG及びそのムテインを発現させるため、重鎖を以下の特徴を有するキメラ分子として作り出す:
Kozakコンセンサス配列;HyHEL10重鎖可変領域;マウスIgG定常領域全長;XhoIサイト;マウスH2kk(MHCI型)膜表在性−貫通ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメイン。H2kk配列は、国立生物工学情報センター(NCBI)のヌクレオチドデータベースのアクセッション番号AK153419から決定する。
細胞表面結合したキメラHyHEL10重鎖全長のヌクレオチド配列は以下に列挙する通りである:
この配列において、BglIIサイトを下線で示し;Kozak配列を下線と斜体で示し、終止コドンを下線と太字で示し;XhoIサイトを囲んだヌクレオチドで示し;二重下線で示す配列はH2kk由来である。TGA終止コドンの3’側のAscIクローニングサイトは斜体のヌクレオチドで示す。
細胞表面結合性キメラHyHEL10重鎖のアミノ酸配列は以下に列挙する通りである。合成XhoIサイトによりコードされる2アミノ酸(leu−glu)を太字及び下線でマークし;太字下線のGluはまた、H2kkドメインの最もアミノ側のアミノ酸を表し;二重下線は推定上の膜貫通ドメインを示し;アスタリスクは終止コドンを示す。
(「野生型」)HyHELカッパ軽鎖のアミノ酸及びヌクレオチド配列。
HyHELカッパ軽鎖のアミノ酸配列。アスタリスクは終止コドンを示す。
MNKLLCCALVFLDISIKWTTQDIVLTQSPATLSVTPGNSVSLSCRASQSIGNNLHWYQQKSHESPRLLIKYASQSISGIPSRFSGSGSGTDFTLSINSVETEDFGMYFCQQSNSWPYTFGGGTKLEIKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC* (配列番号338)。
HyHELカッパ軽鎖のヌクレオチド配列。開始及び終止コドンを下線で示す。SacI及びAscIクローニングサイトを太字で示す。
以下表17に記載される「野生型」重鎖及び軽鎖のムテイン並びに生殖細胞系列配列を、部位特異的変異誘発法及び配列決定によりそれらの配列を確認することによって作り出す。
太字のヌクレオチドは、以下に記載の通り、「野生型」(HyHEL10)配列(「wt」)に比して体細胞超変異を増大させるために、示された変異がSHM最適化コドンに導入されるようになされているコドンを表す。LC=軽鎖;HC=重鎖。BIACORE解析を介して得られる各変異体の親和性測定値も示す。
これらの位置は結合に重要であり、体細胞超変異の間に、対応する生殖細胞系列配列から自然に変異してきたことが以前に示されている。具体的には、HyHEL10の軽鎖配列は、CDR1内に位置する残基、Asn31を含有し、これはHEL抗原の残基Lys96に熱力学上重要な接触をなす。HyHEL10のGly31変異体(コドンGGT)は2.5nM前後の解離定数測定値を有するが、HyHEL10のAsp31変異体(コドンGAT)は110pM前後の解離定数測定値を有し、HyHEL10の野生型Asn31(コドンGAT)は30pM前後の解離定数測定値を有する。
B.細胞のトランスフェクション
Hek 293細胞を6ウェルマイクロタイターディッシュ中、4x105/wellで播種する。24時間後、Roche Applied Sciences(Indianapolis,IN)のFugene6試薬を用い、ウェルあたり3μL:1μgの試薬:DNA比で、それぞれHyHEL重鎖又は軽鎖を含んで、ブラストサイジン又はハイグロマイシン耐性を付与した発現ベクター、AB187又はAB185を用いてトランスフェクションを行う。トランスフェクションは製造元の使用説明書に従って行う。
C.ペプチドの選別
大多数のニワトリ卵リゾチーム(HEL)結合表面を含む、未標識且つビオチン化したモノマーペプチド配列を合成する。当該ペプチドをダイマーとして提示することが、抗体−ペプチド相互作用の親和性を増大させることにより抗体の結合を増強させるかどうかを比較するために、2つのダイマーペプチド配列もまた合成する。タンデムなダイマー及び分枝多重抗原ペプチド(MAP)ダイマーも試験する。ペプチド及びビオチン化又は未標識HELタンパク質を、官能基で修飾されているか、又はストレプトアビジンでコーティングされている常磁性ポリスチレンミクロ粒子表面(Invitrogen,1600 Faraday Ave.PO Box 6482,Carlsbad,CA 92008)にカップリングする。
D.HELタンパク質及びペプチドのトシル基活性化ミクロ粒子へのカップリング
HELタンパク質及びペプチドは、1.5mlの微小遠心チューブ内で2.8ミクロンのトシル基活性化常磁性ポリスチレンミクロ粒子にカップリングする(Nilsson K and Mosbach K.“p-Toluenesulfonyl chloride as an activating agent of agarose for the preparation of immobilized affinity ligands and proteins.”Eur. J.Biochem.1980:112:397-402)。ミクロ粒子(2e09ミクロ粒子/ミリリットル)を洗浄し、1e09ミクロ粒子/mlの濃度で100mMホウ酸緩衝液、pH9.5中に再懸濁する。11ナノモルのペプチド又は6ug/mlのHELをミクロ粒子に添加し、ミクロ粒子/ペプチド混合物を室温で少なくとも48時間、低速で傾斜回転させつつインキュベートする。インキュベートの後、上清を除去し、ミクロ粒子を1%(重量/体積)BSAを含有する1mlリン酸緩衝生理食塩液(PBS)、pH7.2で洗浄する。最後に、ミクロ粒子を1%(重量/体積)BSAを含有する1ml PBS溶液、pH7.2中に再懸濁する。
E.ビオチン化HELタンパク質及びペプチドのストレプトアビジン結合ミクロ粒子へのカップリング
別の選択肢では、その表面が単層のストレプトアビジンに共有結合で連結している常磁性ポリスチレンミクロ粒子にビオチン化ペプチドをカップリングする。簡単に言えば、ストレプトアビジンミクロ粒子を洗浄し、1%(重量/体積)BSAを含有する1ml PBS溶液、pH7.2中に再懸濁し、次いで33ピコモルのビオチン化ペプチド又はおおよそ10μg/mlのビオチン化HELをミクロ粒子溶液に添加する。ミクロ粒子/ペプチド溶液を室温で30分間、低速で傾斜回転させつつインキュベートする。カップリング後、ミクロ粒子洗浄し、再懸濁してミクロ粒子の最終濃度を1e09ミクロ粒子/mlにする(Argarana CE,Kuntz ID,Birken S,Axel R,Cantor CR.Molecular cloning and nucleotide sequence of the streptavidin gene.Nucleic Acids Res.1986;14(4):1871-82;Pahler A,Hendrickson WA,Gawinowicz Kolks MA,Aragana CE,Cantor CR.Characterization and crystallization of core streptavidin.J Biol Chem 1987:262(29):13933-7)。
F.細胞の選別
ペプチド結合常磁性ミクロ粒子に結合する細胞を単離するために、HyHEL親和性抗体の重鎖及び軽鎖を30pM及び800nMで発現する、トランスフェクトされたHEK 293細胞をスクリーニングする。選別用に、抗体を発現しない類似の対照細胞株をネガティブコントロールとして用いる。
細胞を等体積のPBS溶液、pH7.2で洗浄し、1%(重量/体積)BSAを含有するPBS溶液、pH7.2中に再懸濁して最終濃度を1e07細胞/mlにする。1e06個のネイキッドなミクロ粒子を細胞に添加し、ローテーター上、4℃で30分インキュベートすることにより細胞をプレクリアする。未結合の細胞を静かに新たなチューブへ移す。ペプチド結合又はネイキッドなミクロ粒子(1e07)を当該細胞入りのチューブへと移し、細胞:ミクロ粒子混合物をローテーター上、4℃で30分インキュベートする。次いで未結合の細胞を除去し、ミクロ粒子:細胞混合物を冷PBS/1%BSAで洗浄する。ミクロ粒子及び付着細胞を100μl細胞培養培地中に再懸濁し、当初は96ウェルプレートの1ウェルで増殖させる。ミクロ粒子に結合した細胞数を測定し、細胞を次回の選別まで増殖させる。ペプチド結合ミクロ粒子上で選別したミクロ粒子に結合した細胞の数を、ネイキッドなミクロ粒子に結合した細胞及び抗体を発現しない細胞に結合した細胞と比較する。
図48Aでは成熟型HELタンパク質(タンパク質)、HELペプチドモノマー(モノマー)、タンデムなHELダイマー(タンデム)、HEL MAPSダイマー(MAPS)に結合したストレプトアビジンミクロ粒子又は未結合のネイキッドなストレプトアビジンミクロ粒子(ネイキッド)とインキュベートすることにより選別した後の、30pM HyHEL抗体発現細胞(暗灰色)又は抗体なしの細胞(明灰色)を示す。HELタンパク質及びHELペプチドモノマーが結合したミクロ粒子全体が、本実施例において30pM HyHEL抗体発現細胞の単離に有効である。
図48Bにおいて、成熟型HELタンパク質(タンパク質)と結合したトシル基活性化ミクロ粒子又は未結合のネイキッドなトシル基活性化ミクロ粒子(ネイキッド)のいずれかとインキュベートすることにより、800pM HyHEL抗体発現細胞(暗灰色)又は抗体なしの細胞(明灰色)を選別する。HELタンパク質が結合したミクロ粒子全体が、本実施例において800pM HyHEL抗体発現細胞の単離に有効である。
図49Aにおいて、成熟型HELタンパク質(タンパク質)、HELペプチドモノマー(モノマー)、タンデムなHELダイマー(タンデム)、HEL MAPSダイマー(MAPS)に結合したストレプトアビジンミクロ粒子、又は未結合のネイキッドなストレプトアビジンミクロ粒子(ネイキッド)とインキュベートすることにより、30pM HyHEL抗体発現細胞を選別する。HELタンパク質及びHELペプチドモノマーが結合したミクロ粒子全体が、本実施例において30pM HyHEL抗体発現細胞の単離に有効である。
図49Bにおいて、成熟型HELタンパク質(タンパク質)に結合したトシル基活性化ミクロ粒子又は未結合のネイキッドなトシル基活性化ミクロ粒子(ネイキッド)のいずれかとインキュベートすることにより800pM HyHEL抗体発現細胞を選別する。HELタンパク質が結合したミクロ粒子全体が、本実施例において800pM HyHEL抗体発現細胞の単離に有効である。
G.In vitroの親和性成熟
体細胞超変異が、比較的結合が弱い変異体の親和性をどの程度効率的に回復できるか測定するために、以下に記載の通りHyHEL10 Gly31(GGT)変異体(HEK293細胞の表面上に提示)のクローン集団で、SHM存在下50pMFITC−HELに対してFACSに基づく選別を何回も繰り返して行った。
・ 細胞のトランスフェクション
T75培養フラスコで、10%FBSを含有する10mLDMEM培地(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)中に3x106HEK−293細胞を播種することにより、[N31G LC/wt HC]抗HELイムノグロブリン及びAID活性を発現する安定なHEK−293細胞株を生み出した。翌日、500μLOptiMEM(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)、20μL HD−Fugene(Roche Diagnostics Corporation,Indianapolis、IN)、1μgの最適化されたAID発現ベクター(実施例5)、及び各1.5μgの重鎖及び軽鎖発現ベクターを混合し室温でおおよそ25〜30分インキュベートした。インキュベート後、混合物を細胞培養培地に滴下して添加した。
トランスフェクションからおおよそ3日後、細胞増殖培地を10%FBS、50μg/mLゲネチシン、10μg/mL抗真菌性抗生物質溶液、1.5μg/mLピューロマイシン、15μg/mLブラストサイジン、及び350μg/mLハイグロマイシンを含有する10mLDMEM培地(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)と交換し、細胞をおおよそ4週間、周期的に再播種及び細胞培養培地交換しつつインキュベートした。選別期間の最後に、細胞培養を拡大し、保管し、T75細胞培養フラスコで10%FBSを含有する10mLDMEM培地(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)中に[N31G LC/wt HC]抗HELイムノグロブリン及びAID活性を発現する3x106HEK−293細胞を播種した。翌日、500μLOptiMEM(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)、20μL HD−Fugene(Roche Diagnostics Corporation,Indianapolis、IN)、及び3μgの上記AID発現ベクターDNA、を混合し室温でおおよそ25〜30分インキュベートした。インキュベート後、混合物を細胞培養培地に滴下して添加した。おおよそ1週間インキュベートした後、細胞ソーティング用に[N31G LC/wt HC]抗HELイムノグロブリン及びAIDを発現する安定な元のHEK−293細胞及び追加のAID発現ベクターで一過的にトランスフェクトされた培養物を調製した。
2.より高親和性の変異体の選別
[N31G LC/wt HC]抗HELイムノグロブリン及びAID活性を発現するHEK−293細胞系及び追加のAID発現ベクターで一過的にトランスフェクトされた培養物を、細胞を回収し、等体積のPBS溶液、pH7.2で洗浄、各培養液より1e07細胞を1%(重量/体積)BSA及び50pM又は500pM FITC−HELのいずれかを含有する氷冷PBS溶液、pH7.2中に最終濃度2e05細胞/mlで再懸濁することにより、細胞ソーティング用に調製した。
ラウンド1
EZ−Label(登録商標)FITC protein labeling kit(Pierce、Rockford、IL)を用い、製造元の指示に従ってニワトリ卵リゾチーム(Sigma Aldrich、MO)をフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識した。
4℃で30分インキュベートした後、細胞を遠心してペレットとし、体積を200μLに減らした。3mL滅菌チューブに移した後、1:500希釈のPE結合ヤギ抗マウスイムノグロブリンを細胞に添加し、細胞を4℃で30分インキュベートした。次いで、細胞を遠心によりペレットとし、1%(重量/体積)BSAと2ナノグラム/ミリリットルDAPIを含有する氷冷滅菌PBS溶液、pH7.2中に再懸濁した。FITCについて陽性(150mW 488nmレーザーで励起、528/38フィルターにより回収)のIgG陽性の生細胞を、Cytopiea Influx Cell Sorterを用いて流速おおよそ10,000事象/秒で蛍光活性化細胞選別(FACS)により単離した(図51)。HyHEL発現細胞を用いたこのアプローチを用いてより高親和性のクローンを確実に識別でき得るようFACSウィンドーを較正した。
結果ではすべての場合において、細胞の小集団が主なバルクの無変異細胞から明瞭に分離されることを示している。AID発現で新たにトランスフェクトした細胞(図51のパネルB及びD)中では、この細胞集団は一貫して、追加のAID発現ベクターを受容しなかった細胞集団(図51のパネルA及びC)よりも大きなものであった。これらの細胞は下記の通り培養した。
選別した細胞を6ウェルプレートのウェル1つの中で、10%FBS、50μg/mLゲネチシン、10μg/mL抗真菌性抗生物質溶液、1.5μg/mLピューロマイシン、15μg/mLブラストサイジン、及び350μg/mLハイグロマイシンを含有する3mLDMEM培地(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)中に入れた。細胞をコンフルエントになるまで培養し、次いで保管し、細胞密度4x105細胞/mLで6ウェルプレートのウェル1つの中に再播種した。次の日、100μLOptiMEM(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)、4μL Fugene6(Roche Diagnostics Corporation,Indianapolis、IN)、及び1μgのAID発現ベクタープラスミドDNAを混合し室温でおおよそ25〜30分インキュベートした。インキュベート後、混合物を細胞培養培地に滴下して添加し、細胞をおおよそ7日間培養し増殖させた。配列解析のために細胞の試料も分取した。
ラウンド2
次いで、第1ラウンドで上記の通りFITC−HELを用いて選別した細胞を同一の選択条件(即ち、50又は500pM FITC標識HELのいずれかとのインキュベーション)で、第2ラウンドのFACS選別に付した。第1ラウンドで選別した細胞50ミリリットル(1e07細胞)を1%(重量/体積)BSA及びおおよそ50pM又は500pMいずれかのHEL−FITCを含有する氷冷PBS溶液、pH7.2中、4℃で30分インキュベートした。細胞混合物をペレットにし、体積を200μLに減らし、当該細胞を3ml滅菌チューブに移した。1:500希釈のPE結合ヤギ抗マウスIgを細胞に添加し、細胞を4℃で30分インキュベートした。次いで、細胞をペレットとし、1%(重量/体積)BSAと2ナノグラム/ミリリットルDAPIを含有する氷冷PBS溶液1mL、pH7.2中に再懸濁した。FITCについて陽性(150mW 488nmレーザーで励起、528/38フィルターにより回収)のIgG陽性の生細胞を、Cytopiea Influx Cell Sorterを用いて流速おおよそ10,000事象/秒で蛍光活性化細胞選別により単離した(図52)。
2回目の選別の結果では、高親和性のHEL結合を示す細胞集団が有為に大きくなったことが示されたが、このことは増殖及び培養の間にSHMにより高親和性の変異体が形成されたことと整合する。新たにAID発現ベクターでトランスフェクトされ、次いで500pM HELとインキュベートした細胞(図52のパネルD)においては、これは明らかに、蛍光が強い細胞の相当大きな集団である(追加のAID発現ベクターを受容しなかった細胞6.88%に比べ、25.9%の集団;図52のパネルC)。これらの結果より、AID発現ベクターによる再形質転換が変異誘発率の有為な改善の促進に有効なことが示される。
選別した細胞において、ゲートを厳密にして、この工程をさらに2ラウンドの変異誘発の間継続すると(図53、パネルA)、選別した細胞の結合特性に、重大で且つ有意な変化が生じた(図53、パネルB)。
3.機能解析用の分泌イムノグロブリン産生
目的の重鎖及び軽鎖は、更なる機能解析のため、下記の通り分泌型で産生されてもよい。表面ディスプレイライブラリーから得られる重鎖の場合は、膜貫通ドメインを除去して抗体を培地中に直接分泌できるようにするために、これらを優先権の基礎となる米国特許出願番号60/904,622及び61/020,124の実施例5に記載の通り(即ち、XhoIによる消化、続いて再ライゲーション)に処理する。
トランスフェクションのおおよそ1日前に、3x106 HEK−293細胞をT75培養フラスコ中で10mL DMEM/10%FBS培地中に播種し、37℃及び5%CO2で一晩インキュベートした。トランスフェクション当日、500μL OptiMEM(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)、20μL HD−Fugene(Roche Diagnostics Corporation,Indianapolis,IN)及び1.5μgの各重鎖及び軽鎖の発現ベクターを混合し室温でおおよそ25〜30分インキュベートした。インキュベーションの後、この混合物を細胞培養培地へ滴下して添加した。
トランスフェクションからおおよそ3日後、細胞増殖培地を10mL Freestyle medium(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)と交換し、更に7日間細胞をインキュベートした。インキュベーション期間の終わりに、細胞培養液上清を回収し、0.2μm滅菌フィルターを通して濾過した。分泌されたイムノグロブリンは、下記の通りBIACORE解析前に標準的なプロテインAアフィニティーカラムクロマトグラフィーを介して単離した。
標準的なアミンカップリングを用い、HELを研究グレードのCM5センサーチップ上に固定した。3つの表面各々をまず0.1mM N−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)及び0.4mM 1−エチル3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)の1:1混合物を用いて7分間活性化する。次いでHEL密度が異なる3種類の表面を作り出すため、HEL試料を10mM酢酸ナトリウム、pH4.0中で1倍から50倍に希釈し、活性化チップ表面に時間の長さを変えて(10秒〜2分)曝す。次いで、各表面を1Mエタノールアミン、pH8.2を7分注入してブロッキングする。又は、ビオチン化HELを100倍に希釈し、異なる3種の細胞密度(60RU、45RU、12RU;レスポンスユニット(RU)はBiacoreにより称され、表面積当たりの標的分子に関する)で捕捉される時間を変えてストレプトアビジンを含有するセンサーチップ上へ注入する。実験はすべてBiacore(登録商標)2000又はT100光バイオセンサー上で行う。抗HEL抗体は100μg/mLで提供され、HEL結合表面上で試料泳動緩衝液における3倍希釈系列で試験する。結合した抗HEL抗体はセンサー再生溶液で5秒パルスして除去する。データは全て温度を20℃に制御して収集する。抗体注入に対する動的応答を、非線形最小二乗解析プログラムCLAMP(Myszka,D.G.and Morton,T.A.(1998)Trends Biochem.Sci.,23:149-150)を用いて解析する。
4.配列解析
最初の選別において単離された重鎖及び軽鎖の配列は、下記の通り重鎖及び軽鎖のPCR増幅により決定した。
目的の集団から分取した少なくとも50,000個の細胞を4℃、1100xg、5分でペレットにした。ペレットにした細胞を15μL蒸留H2O中に再懸濁し、すぐにPCR反応において使用するか、後の工程用に凍結するかいずれかにした。
全体50μLについて27.6μL H2O、5μL 10xPfx緩衝液、1μL上記細胞、8μLの2.5μM各プライマー(以下に列記)及び0.4μL Pfxポリメラーゼ(Invitrogen Corp.,Carlsbad,CA)から成るPCR反応は以下のフォーマットを用いて行った:95℃x2分を1サイクル、続いて95℃x30秒、55℃30秒間、68℃45秒間を35サイクル、続いて68℃1分間を1サイクル。オープンリーディングフレーム増幅に用いるPCRプライマーは:
オリゴ540:GTGGGAGGTCTATATAAGCAGAGC(配列番号362)、これは重鎖及び軽鎖オープンリーディングフレームの両方についてのATG開始コドンよりおおよそ140ヌクレオチド5’側の、CMVプロモーター領域の3’端にマップされるフォワードプライマーである。
オリゴ554:CAGAGGTGCTCTTGGAGGAGGGT(配列番号363)、これはIgGガンマ鎖定常領域中にマップされる重鎖特異的リバースプライマーである。
オリゴ552:ACACAACAGAGGCAGTTCCAGATT(配列番号364)、これはカッパ定常領域のアミノ末端近くにマップされるカッパ軽鎖特異的リバースプライマーである。
オリゴ577:AGTGTGGCCTTGTTGGCTTGAA(配列番号365)、これは5つの機能性ヒトラムダ遺伝子(IgL1、2、3、6及び7)全てにより共有されるN付近側の定常領域配列へマップされるラムダ軽鎖特異的リバースプライマーである。
重鎖を増幅するために、オリゴ540と554を用いた。
(カッパ及びラムダ両方の軽鎖の混合物が存在するらしい)細胞集団から軽鎖を増幅するために、オリゴ540、552及び577を同時に用いた。この場合、PCR反応混合物中の水体積を19.6μLに調節した。
PCR後、アガロースゲルでの解析のため試料を5μL除去した。次いで、ゲルで可視化したバンドについての反応物を、以下の条件でTaqポリメラーゼ(Invitrogen)存在下、更にPCRにかけた:全体50μLについて、2μL H2O、0.5μL Taq、各2.5mMの0.2μL dNTPs、及び1.5μLx50mM MgCl2(又はMgCl2の代わりに1μLの10xTaq緩衝液を用い、一方H2Oを最終体積50μLを維持するため調節する)を45μLの残存PCR反応物に直接添加した。PCRサイクルは以下のように行った:95℃x2分を1サイクル、続いて95℃x30秒、55℃ 30秒間、72℃ 45秒間を2サイクル、続いて72℃ 1分間を1サイクル。
ゲルで可視化されなかったか、そうでなければ薄すぎて継続できないと判定されたかのいずれかのバンドについての反応物には、1μL Pfx緩衝液、3.7μL H2O、及び0.3μL Pfxポリメラーゼが補填され、そして95℃x2分を1サイクル、続いて95℃x30秒、55℃ 30秒間、68℃ 45秒間を10サイクル、続いて68℃ 1分間を1サイクル行った。
アガロースゲルでの解析後可視化されたバンドについてのPCR反応物を、製造元提示のプロトコールに従ってInvitrogenのTOPO(登録商標)クローニングキットを用いてクローニングした。簡単に言えば、4μLのPCR反応物を1μLの(TOPO(登録商標)キット中で提供される)塩溶液と1μLのTOPO(登録商標)クローニングベクターに添加した。室温で20分インキュベート後、1又は2μLを、製造元提示のプロトコールにより100μL XL1blueを形質転換するために用いた。
更に目的の配列の鋳型由来のリーディングフレームは、以下のようにして回収した:重鎖の鋳型はTOPO(登録商標)クローンを、SgrAI及びNheI(両方共元の重鎖配列全てに存在する)で消化することにより回収した。結果生じるおおよそ500bpの断片(CDR3を全て含む可変領域全体を含有する)を、インタクトな連続する重鎖オープンリーディングフレームを生成するため、既に重鎖定常領域を含んでいる発現ベクターのコグネイト部位に、クローニングした。最終的なIgG分子の細胞表面上における保持を可能にするため、このベクターのある型では実施例9に記載される通り、IgG1定常領域とインフレームで融合する、マウスH2kk遺伝子由来の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインも含まれる。発現ベクターの代替型では、目的の抗体の直接分泌を可能にするため膜貫通領域を欠失させる。
同様に、目的の軽鎖の鋳型をTOPO(登録商標)クローニングベクターから、カッパについてはSbfI及びMunIで、又はラムダについてはSbfI及びAclIを用いて(これらは全て元の配列に存在する)除去した。結果生じる350〜400bpの断片(CDR3を含む軽鎖可変領域全体を含有する)を、インタクトな連続する軽鎖オープンリーディングフレームを生成するため、発現ベクターのコグネイト部位に、クローニングした。
当該結果により、配列決定したクローンのおおよそ23%に、グリシン31からアスパラギン酸(Aspartate)(G31D)への変異をもたらす、軽鎖CDR内の少なくとも1つの変異があることが示された。HELに結合したHyHEL 10の結晶構造(Pons et al.,(1999)Protein Science 8:958-68)に基づくと、この変異は抗原結合の間に更なる水素結合相互作用の形成をもたらすと予想され、それが500pM HEL存在下及びBiacore測定で観察される結合の増大(図52中)の原因となる。(図54A及びBで)観察される変異の型は(図50で示されるように)SHM介在型の変異についての予想される変異パターンに従い、重鎖及び軽鎖のコーディング領域全体に大きく広がる非特異的変異をもたらさなかった。従って、これらの結果により、良好な親和性の区別、抗体及び結合タンパク質の改良変異体の選別を提供する本発明のシステムの能力、及び1種以上の標的タンパク質内で目的の特定領域に向けられた持続的及び単発的な超変異の両方を提供する能力が示される。更に、単一抗体のコンストラクトに組み換えられたとき、野生型タンパク質の親和性を30pMから4pMを超えるまでに改良された少数の更なる変異が同定された(図54C)。この実施例で、単一配列又はライブラリーが選択圧下、及びSHMの存在下でいかに迅速により高親和性の変異体を生成できるか、及びこの変異事象の流れが、上で概要を示したコンピューターアルゴリズムによりいかに正確に予測できるかが示される。
本明細書中で提示したデータにより、体細胞超変異について開示されたシステム及び種ポリヌクレオチドが、目的の標的タンパク質を高レベルで標的変異誘発できることが示される。当該システムでは、回を重ねた変異誘発を可能にし、中立の、及び有害な変異の蓄積を減らす一方、好ましい変異の指定された進化を可能にする選別が可能となる(ともに目的のタンパク質内及び発現系内で)。
5.エピソームレスキュー
エピソームベクターはインテグレートせずに残り、宿主細胞の染色体物質から容易に分離できるので、プラスミドをHirt(Hirt,1967;Kapoor and Frappier,2005;Yates et al.,1984)の方法により回収でき、コンピテントな細菌に形質転換でき、更にコードされたポリペプチドの配列、道程及び/又は特性を確認するためにさらに操作できる。
各細胞当たり平均3個の8,000ベースペアー(bp)の内在エピソームという概算を用いると、細胞百万個当たりおおよそ30ピコグラム(pg)の収率が期待できる(例、式1参照)。エレクトロコンピテントなE.coliへの形質転換効率を、弛緩型環状DNA1μg当たり107コロニーと仮定すれば、それぞれが単一の回収エピソームを表すおおよそ300個のE.coliコロニーが、百万個の哺乳動物細胞から期待できる。
式1:
(106細胞x3エピソーム/細胞)x(660g/モル/bp)x(8000bp/エピソーム)x(106コロニー/μg)x(106μg/g),(6x1023エピソーム/モル)=2.6x10−11g(106細胞当たりのDNA)
プラスミドは、標準的な(例、Qiagen,Inc.のプロトコール(手順については、例、www1.qiagen.com/literature/handbooks/PDF/PlasmidDNAPurification/PLS_QP_Miniprep/1034641_HB_QIAprep_112005.pdf;及びWade-Martins et al.,Nuc Acids Res 27:1674-1682(1999)を参照)のような)アルカリ溶解の手順を用いても回収できる。1つの側面において、哺乳動物細胞をQiagenプロトコール中に記載のE.coliと同様にして処理する。最終溶出液中に存在するエピソームを上記の通りコンピテントなE.coliへ形質転換する。Hirt上清又はアルカリ溶解法のいずれかを使用することは、内在エピソームの単離のため、かなりの細胞集団から始める必要がある。1つの非限定的な例において、形質転換したE.coliコロニーで明らかなように、クローン的に派生した細胞50,000個から開始して、10〜20個の回収エピソームを得ることを期待し得る。
更に、SV40 T抗原の発現によりSV40Oriを含有するベクターが急速に増幅され、従ってエピソームレスキュー前にベクター数を増幅する方法を提供する。この増幅を達成するために、SV40T抗原を発現ベクター(本明細書中に記載)にクローニングし、HyHEL10 HC及びLCエピソームベクターを安定して含有する6.3x10e5 HEK 293細胞へ一過的にトランスフェクトした。0時間(トランスフェクション直前)並びに1、2及び3日目に試料を分取した。細胞をトリプシン処理により回収し、エピソームDNAをQiagen社のミニプレップキットを用いて抽出した。抽出したDNAでE.coliを形質転換し、カルベニシリンプレート上で一晩増殖させ、翌朝コロニーを計数した(表18)。
トランスフェクトされた遺伝子を特性解析する為の別の標準的な方法には、エピソーマルであるか、インテグレートされたか否かに関わらず、関係する細胞集団で直接ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)反応を行い、続いて得られる個々のPCR断片をクローニングし、特性解析することを包含する。この方法は大量の細胞集団から開始する必要が無いという利点を有する。内在性の活性を持つ抗体のオープンリーディングフレームのPCR増幅は、細胞1個程度で首尾よく行うことができる。これには、目的の細胞の単離から、原因となるオープンリーディングフレームの配列決定の時点までの時間を短縮する効果がある。
別の選択肢は、単離細胞でRT−PCRを行うこと、したがって発現しているmRNAを介して内在性ポリペプチドの同定と特性解析を行うことである。
実施例10
工学的に増強された変異体
活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)は、免疫系による親和性成熟の間に体細胞超変異(SHM)、クラススイッチ組み換え(CSR)及び遺伝子変換の事象を開始させる責を担う主要酵素である。当該酵素は進化の間にとりわけよく保存されてきており、ヒト、ラット、ウシ、マウス及びニワトリオルソログがイヌアミノ酸配列にそれぞれ94.4%、93.9%、93.9%、92.4%及び89.4%の同一性を示す。
AIDは予想されるタンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、翻訳後修飾部位及び細胞内標的モチーフをいくつか含有し、当該酵素のカルボキシル末端アミノ酸中に局在する核外搬出シグナル(NES)は、それらのうちの1つである。核局在化シグナル(NLS)がAID内に存在するか否かという疑問に関しては、いくつかのグループがそのようなシグナルは存在すると主張するが(Ito et al.,PNAS 2004 Feb 17;101(7):1975-80)、別のグループは機能するNLSは存在しないと主張し(Brar et al.,J.Biol.Chem.2004 Jun 8;279(25):26395-401;McBride et al.,J.Exp.Med.2004 May 3;199(9):1235-44)、意見が分
かれている。
ネイティブなAIDは、細胞分画、ウェスタンブロット及び免疫組織化学により示されるように、主に細胞の細胞質コンパートメント中に見られる。NESの除去又は無効化により、核における定常的な内在AIDの濃度を高くし、SHMレベルを高くできる傾向があるが、CSRを損なわせ、又は無くしもする(Brar et al,Id.;Durandy et al.,Hum.Mutat.2006 Dec;27(12):1185-91;Ito et al,Id.;McBride et al,Id.)。
上記実施例2では、核外排出を無効化し、それにより核保持を促進するよう設計されたNES内の変異(L198A)を含むSHM耐性型AID(配列番号341)の設計及び構築を記載する。AIDの核局在、ひいては変異誘発因子活性を更に増強するために、アミノ末端近くにSV40 T抗原(Kalderon et al,(1984).Cell 39,499-509)由来の強力な核局在シグナル(NLS;PKKKRKV;配列番号340)を挿入することにより、当該酵素の更に工夫された型を作り出した。AID発現を追跡するため、FLAGエピトープタグも挿入し、強力なNLS及び変異NES配列を両方含有するもの(配列番号342)を作り出した。
C末端のNESを、核外搬出を減らすよう更に改変することにより、更に工夫されたAIDの型も作り出した。これらのコンストラクトはSV40 T抗原NLS有り又は無しで調製した。
最初のNES変異体ペアにおいては、配列番号341(NLS無し)及び配列番号342(NLS有り)のポリヌクレオチド配列を、当該ポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸残基L181、L183、L189、L196及びL198をアラニンに変異させるよう改変して、それぞれ配列番号344(NLS無し)及び配列番号346(NLS有り)のポリヌクレオチド配列、並びにそれぞれ配列番号345(NLS無し)及び配列番号347(NLS有り)のアミノ酸配列とした。
PCRによりムテインを生成し、次いで親DNAを除去するためDpn1で処理した。
アラニンを含有するムテインを生成するため、以下のオリゴを用いた:CAGCTCAGGAGAATCCTCGCCCCCGCTTATGAGGTCGACGACCTC(配列番号352)及びGAGGTCGTCGACCTCATAAGCGGGGGCGAGGATTCTCCTGAGCTG (配列番号353)。
Pfu Taq polymerase(Invitrogen)を製造元のキットの緩衝液及び2.5uMの各デオキシヌクレオチド(Roche)と共に用い、配列番号341又は配列番号3
42として示したポリヌクレオチド配列を含有するベクターを鋳型DNAとして用い、別々のPCR反応を2通り計画した。PCRは、以下のサイクル条件で行った:95℃3分間を1サイクル、続いて[95℃45秒間、55℃45秒間、68℃17分間]を20サイクル、続いて68℃5分間を1サイクル。完了後、反応成功を確認するためPCR反応物5μlを1%アガロースゲルで泳動した。次いで、PCR反応混合物を37℃で少なくとも4時間Dpn1(New England Biolabs)で処理して親DNAを除去した。
5μlのDpn1で処理したPCR反応物を100μLのXL1−Blue super competent cells(Invitrogen)に添加し、製造元提示のプロトコールにより形質転換した。配列を確認後、得られたDNA(4つの所望する変異のうち2つ;即ち181及び183、を含有する)を鋳型として用い、オリゴCCGCTTATGAGGTCGACGACGCCAGAGATGCCTTCCGGACCG(配列番号354)及びAGGGTCCGGAAGGCATCTCTGGCGTCGTCGACCTCATAAGCGG(配列番号355)と共に、上記したものと同じプロトコールを用いて、4つの変異のうちの3番目(即ち、189)を導入した。最後に、オリゴCCAGAGATGCCTTCCGGACCGCCGGGGCTTGATGTACAATC配列番号356)及びGATTGTACATCAAGCCCCGGCGGTCCGGAAGGCATCTCTGG(配列番号357)を用いて、4番目であり最後となる変異(即ち、196)を導入した。
最終的に得られたアラニン含有ムテイン産物をSac1及びBsrG1を用いて消化し、コグネイトな制限酵素で切断したベクター骨格へライゲーションしてそれぞれ配列番号344(NLS無し)及び配列番号346(NLS有り)を生成した。
第二のムテインペアにおいては:配列番号341(NLS無し)及び配列番号342(NLS有り)のポリヌクレオチド配列を、当該ポリヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸残基Asp187、Asp188及びAsp191をグルタミン酸(Glutamate)に変異させ、当該ポリヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸残基Thr195をイソロイシンに変異させるよう改変して、それによりそれぞれ配列番号348(NLS無し)及び配列番号350(NLS有り)のポリヌクレオチド配列、並びにそれぞれ配列番号349(NLS無し)及び配列番号351(NLS有り)のアミノ酸配列を作り出した。
アラニンムテインに関する一連の上記手順と同一の手順を、以下のオリゴ:TCCTCCCCCTCTATGAGGTCGAAGAACTCAGAGAAGCCTTCCGGACCCTCGGGGC(配列番号358)及びGCCCCGAGGGTCCGGAAGGCTTCTCTGAGTTCTTCGACCTCATAGAGGGGGAGGA(配列番号359)を最初のオリゴペアの代わりに用い、以下のオリゴ:AACTCAGAGAAGCCTTCCGGATCCTCGGGGCTTGATGTACAAT(配列番号360)及びATTGTACATCAAGCCCCGAGGATCCGGAAGGCTTCTCTGAGTT(配列番号361)を第二のオリゴペアの代わりに用いた(この場合、第三のPCR反応は不要であった)点を除いて繰り返し、配列番号348及び配列番号350のグルタミン酸含有AIDムテインを生成した。産物を上記の通り処理し、配列番号348(NLS無し)及び配列番号350(NLS有り)を生成した。
結果及び考察
次いで、結果生じる6種のAIDコンストラクトを緑色蛍光タンパク質(GFP)復帰アッセイにおける活性及びイムノグロブリンIgG重鎖(HC)鋳型上の変異頻度について試験した。
GFP復帰アッセイを行うために、チロシン82のTACコドンをTAG終止コドンに改変した(GFP*)。GFP*をAnaptys エピソーム発現ベクターにクローニングし、HEK 293に安定的にトランスフェクトした(注釈:この細胞系はEBNA1を、インテグレートした当該遺伝子のコピーから発現させる)。同様に、各AIDコンストラクトを、安定的にトランスフェクトされしたGFP*細胞系にトランスフェクトし、トランスフェクションから2日後までに細胞を選択(GFP*についてはブラストサイジン、各AIDコンストラクトについてはハイグロマイシン)下に置いた。終止コドンが元のチロシンに復帰するとエピソームを有する細胞に緑色蛍光が誘導された。選択から3、6、及び10日後に蛍光活性化細胞選別装置(FACS)解析によりGFP復帰の頻度を測定した。
結果から、6種のAIDコンストラクトのそれぞれと共トランスフェクトするとバックグラウンドを有意に上回るGFPリバータントが一貫して生じることが示されるが、このことは6種のAIDムテインすべてが機能することを示している。
GFP復帰アッセイには、陽性の復帰細胞を生み出すためAID初期活性及びそれに続くエラープローンポリメラーゼによる作用が共に必要なため、当該結果は機能に関して定性的なyes/noを提供する。実際の復帰率を測定するために、より正確な鋳型変異誘発実験も行われた。従って当該GFP復帰アッセイに加えて、AIDコンストラクト2種(配列番号341;NES中、L198A変異を含有)及び配列番号342(L198A NES変異及びSV40 NLSを含有))を、HyHEL10 IgGのHCにおいて変異を誘発するそれらの能力について試験した(Pons et al,(1999)Protein Science 8:958-68;Smith-Gill et al.(1984)J.Immunology 132:963)。(以前に記載した通り)HyHEL10のHC、HyHEL10軽鎖(LC)のN31Gムテインをコードするエピソーム性発現コンストラクト、及び配列番号341を含有する発現ベクター又は配列番号342を含有する同じベクター骨格のいずれかをHEK 293に共トランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞集団に抗生物質の選択圧(即ち、HC、LC及びAIDについて、それぞれブラストサイジン、ピューロマイシン及びハイグロマイシン)を加え、2ヶ月培養後細胞を回収した。配列番号341を含む発現ベクターでトランスフェクトされた細胞から合計83の鋳型IgG HCを配列決定し、配列番号342を含む発現ベクターでトランスフェクトされた細胞から61の鋳型を配列決定した。AIDの型に対する鋳型当たりの変異のパーセンテージを以下の表20に示す。配列決定のデータから計算された変異頻度は、配列番号341では1438bp当たり1変異が生じ、配列番号342では1059bp当たり1変異が生じる、というものである。
結果からNLSを含有する型のAID(配列番号342)が、鋳型HyHEL10 HC IgG中により多数の変異(1059bp当たり1に対してNLSを含有しないホモログについては1438あたり1)を誘発し、同様に変異を複数含有する鋳型をより多くもたらした(AID−NLSでは2.4%であるのに対してAID+NLSでは鋳型の10%)ことが示される。
配列
コールド イヌAID。核外搬出シグナルを未改変のCTT(Leu198)コドンをGCT(ala、以下に下線で示す)に改変することにより無効にした。
ATGGACTCTCTCCTCATGAAGCAGAGAAAGTTTCTCTACCACTTCAAGAACGTCAGATGGGCCAAGGGGAGACATGAGACCTATCTCTGTTACGTCGTCAAGAGGAGAGACTCAGCCACCTCTTTCTCCCTCGACTTTGGGCATCTCCGGAACAAGTCTGGGTGTCATGTCGAACTCCTCTTCCTCCGCTATATCTCAGACTGGGACCTCGACCCCGGGAGATGCTATAGAGTCACTTGGTTTACCTCTTGGTCCCCCTGTTATGACTGCGCCAGACATGTCGCCGACTTCCTCAGGGGGTATCCCAATCTCTCCCTCCGCATATTCGCCGCCCGACTCTATTTTTGTGAGGACAGGAAAGCCGAGCCCGAGGGGCTCAGGAGACTCCACCGGGCCGGGGTCCAGATCGCCATCATGACATTTAAGGACTATTTCTATTGTTGGAATACATTTGTCGAGAATCGGGAGAAGACTTTCAAAGCCTGGGAGGGGCTCCATGAGAACTCTGTCAGACTCTCTAGGCAGCTCAGGAGAATCCTCCTCCCCCTCTATGAGGTCGACGACCTCAGAGATGCCTTCCGGACCCTCGGGGCTTGA (配列番号341)。
以下のように、ポリヌクレオチド配列(又はアミノ酸配列)の特徴は、5’から3’(又は必要に応じて、N−からC−末端)の方へ、である:
クローニング用に用いるSacI制限部位、囲んだ文字;Kozakコンセンサス、下線;ATG開始コドン(太字大文字);FLAGエピトープタグ(一重下線);NLS(二重下線);コールド イヌAID;TGA終止コドン(太字大文字);クローニング用に用いるBsrGI及びAscI制限部位(囲んだ文字)。*はタンパク質配列中の終止コドンを示す。
下線且つ大文字のGCCコドン(ala)4つは、部位特異的変異誘発法により元の配列(LeuをコードするCTC)から変化させた。
下線且つ大文字のGCCコドン(ala)4つは、部位特異的変異誘発法により元の配列(LeuをコードするCTC)から変化させた。囲み及び下線は上記した通りである。
下線且つ大文字のGAAコドン(Glu)3つは、元の配列(アスパラギン酸をコードするコドン)から変化させた。更に1つの変異T195I、(ACCからATC)も生成した。
下線且つ大文字のGAAコドン(Glu)3つは、元の配列(アスパラギン酸をコードするコドン)から変化させた。更に1つの変異T195I、(ACCからATC)も生成した。囲み及び下線は上記した通りである。
本明細書中、本発明の好ましい実施形態が示され、そして記載されたが、そのような実施形態は単なる例示として提供される。本明細書中に記載される本発明の実施形態の様々な変更が、本発明の実施において採用され得ることを理解すべきである。以下のクレームが本発明の範囲を明示し、それらによってこれらクレームの範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物が包含されることが意図される。
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