JP2013204089A - 耐食性に優れた鋼材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.01-0.25%、Si:0.01-1.0%、Mn:0.05-3.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.03超-10.0%、Sn:0.01-0.5%を含有し、残部Feおよび不純物からなり、かつ、鋼材表面がAlおよびSnとともにα−FeOOHを含有する保護性錆層で覆われている鋼材であって、保護性錆層中のα−FeOOHのβ−FeOOHに対する比が0.5以上であることを特徴とする、耐食性に優れた鋼材。さらに、Cr、Cu、Ni、Mo、W、Sb、Ti、Zr、Ca、Mg、Nb、V、B、REMの1種または2種以上を含有してもよい。
【選択図】なし
Description
→ 2Fe2+ + Sn4+ なる反応によりFe3+の濃度を低下させることでFe3+の加水分解によるpH低下を抑制するためであり、さらに、Snには溶解後イオンとしてアノード溶解を大幅に抑制する作用があることから、微量で耐食性を大幅に向上させることができる。
Ni, Mo, W, Sbが有効である。
本発明において、鋼材の化学組成を規定する理由は次のとおりである。
Cは、材料としての強度を確保するために必要な元素であり、0.01%以上の含有量が必要である。しかし、0.25%を超えて含有させると溶接性が著しく低下する。また、C含有量の増大とともに、pHが低下する環境でカソードとなって腐食を促進するセメンタイトの生成量が増大するため、耐食性が低下する。このため上限を0.25%とした。Cの下限値は0.02%が好ましく、0.03%がより好ましい。Cの上限値は0.18%が好ましく、0.16%がより好ましい。
Siは脱酸に必要な元素であり、十分な脱酸効果を得るためには0.01%以上含有させる必要がある。しかし、1.0%を超えて含有させると母材および溶接継手部の靱性が損なわれる。このため、Siの含有量を0.01〜1.0%とした。Siの下限値は0.03%が好ましく、0.05%がより好ましい。Siの上限値は0.8%が好ましく、0.6%がより好ましい。
Mnは低コストで鋼の強度を高める作用を有する元素であり、この効果を得るためには0.05%以上の含有量が必要である。しかし、3.0%を超えて含有させると溶接性が劣化するとともに継手靭性も劣化する。このため、Mnの含有量を0.05〜3.0%とした。Mnの下限値は0.2%が好ましく、0.4%がより好ましい。Mnの上限値は2.5%が好ましく、2.0%がより好ましい。
Pは鋼材中に不可避的不純物として存在する。Pは耐酸性を低下させる元素であり、腐食界面のpHが低下する塩化物腐食環境においては耐食性を低下させる。さらには溶接性および溶接熱影響部の靭性を低下させることから、含有量は少なければ少ないほどよい。このため、Pの含有量は0.05%以下に制限する。0.04%以下とすることが好ましく、0.03%未満とすることがより好ましい。
Sは鋼中に不純物として不可避的に存在する。Sは鋼中に腐食の起点となるMnSを形成し、その含有量が0.01%を超えると、耐食性の低下が顕著になる。このため、Sの含有量は0.01%以下に制限する。0.008%以下とすることが好ましく、0.006%以下とすることがより好ましい。
Alは本発明において最も重要な元素であり、0.03%を超えて含有することにより塩化物環境において保護性錆層(α−FeOOH)が形成される。錆層の形成に際して一定の量のAlが保護性錆層に取り込まれる。その形態の詳細は不明であるが、FeがAlに置換された形で保護性錆層(α-(Fe,Al)OOH)が形成されると推測される。この結果、耐食性が著しく向上する。一方で、10.0%を超えて含有させても効果が飽和する。したがって、Alの含有量は0.03%を超えて10.0%以下とする。Alの下限値は0.1%が好ましく、0.5%がより好ましい。Alの上限値は9.0%が好ましく、8.0%がより好ましい。
Snは、低pH塩化物腐食環境における耐食性を大幅に向上させる作用を有する。SnはSn2+として溶解し、2Fe3+ + Sn2+ → 2Fe2+ + Sn4+
なる反応によりFe3+の濃度を低下させることでFe3+の加水分解によるpH低下を抑制する作用を有する、さらに、Snには溶解後イオンとしてアノード溶解を大幅に抑制することができる。さらに、上記のAlを0.03%を超えて含有する鋼材にSnを複合して含有させると、塩化物の多い厳しい腐食環境においてAlを単独で含有する鋼材に比べ著しく保護性の高いSnを含む保護性錆層が形成される。この保護性錆層中のSnも上述同様アノード溶解を抑制する作用を有する。これらの効果を得るにはSnを0.01%以上含有させる必要がある。一方、Snを0.5%を超えて含有させても、前記の効果は飽和するばかりでなく、母材および大入熱溶接継手の靭性が劣化する。したがって、Snの含有量は0.01〜0.5%とする。Snの下限値は0.02%が好ましく、0.03%がより好ましい。Snの上限値は0.4%が好ましく、0.3%がより好ましい。
Crは中性環境での耐食性を著しく向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させることができる。塩化物が多い環境においては腐食界面のpH低下がおこるが、Crを含有させることによりFe2+の溶出が著しく抑えられるため、空気酸化によるFe3+の生成も少なくなる。その結果、Fe3+の加水分解によるpH低下が大幅に抑制されるため、耐食性が著しく向上する。さらに、CrをSnと複合して含有させると、塩化物の多い厳しい腐食環境においても極めて保護性の高い錆層が形成される。しかし、Crを7.0%を超えて含有させると、溶接性が著しく低下する。したがって、Crの含有量は7.0%以下とする。好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.8%以下である。上記効果を効果的に得るためには、Crを0.01%以上含有させることが好ましく、0.05%以上含有させることがより好ましい。
Cuは、低pH環境における鋼のアノード溶解を抑制することにより耐食性を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、Cuを1.0%を超えて含有させると、効果が飽和するだけでなく、脆化を起こす原因となる。したがって、その含有量は1.0%以下とする。上記効果を効果的に得るためには、Cuを0.02%以上含有させることが好ましく、0.03%以上含有させることがより好ましい。
NiもCuと同様、低pH環境における鋼のアノード溶解を抑制することにより耐食性を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、1.0%を超えて含有させると効果が飽和するだけでなく、コストの著しい上昇につながる。したがって、その含有量は1.0%以下とする。Niの上限値は0.8%が好ましい。上記効果を効果的に得るためには、0.01%以上含有させるのが好ましく、0.02%以上含有させるのがより好ましい。
Moは溶解して酸素酸イオンMoO4 2-の形で錆に吸着し、錆層中の塩化物イオンの透過を抑制する作用効果を有する元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、含有量が1.0%を超えると効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが大幅に上昇する。したがって、Moの含有量は1.0%以下とする。Moの上限値は0.7%が好ましい。上記効果を効果的に得るためには、0.01%以上含有させることが好ましく、0.02%以上含有させることがより好ましい。
WはMoと同様に、溶解して酸素酸イオンの形で存在し、錆層中の塩化物イオンの透過を抑制するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、含有量が1.0%を超えると効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが大幅に上昇する。したがって、Wの含有量は1.0%以下とする。Wの上限値は0.7%が好ましい。上記効果を効果的に得るためには、0.01%以上含有させることが好ましく、0.02%以上含有させることがより好ましい。
Sbは耐酸性に優れた元素であり、低pH環境において鋼のアノード溶解反応を抑制するとともに、水素ガス発生反応やFe3+の還元反応を抑制することで塩化物環境における耐食性を向上させるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、0.2%を超えて含有させると靭性が著しく劣化する。したがって、Sbの含有量は0.2%以下とする。Sbの上限値は0.15%が好ましい。上記効果を効果的に得るためには、0.01%以上含有させることが好ましく、0.02%以上含有させることがより好ましい。
Tiは硫化物の形成により腐食の起点となるMnSの形成を抑える作用効果を有するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、0.2%を超えて含有させると効果が飽和するだけでなく鋼材のコストが上昇する。したがって、Tiの含有量は0.2%以下とする。Tiの上限値は0.15%が好ましい。上記効果を効果的に得るためには、0.001%以上含有させることが好ましく、0.005%以上含有させることがより好ましい。
ZrはTiと同様に硫化物を形成することにより腐食の起点となるMnSの形成を抑える作用効果を有しているので、必要に応じて含有させることができる。ただし、0.2%を超えて含有させると効果が飽和するだけでなく鋼材のコストが上昇する。したがって、Zrの含有量は0.2%以下とする。Zrの上限値は0.15%が好ましい。上記効果を効果的に得るためには、0.001%以上含有させることが好ましく、0.005%以上含有させることがより好ましい。
Caは鋼中に酸化物の形で存在し、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制して、腐食の促進を抑える作用を有しているので、必要に応じて含有させることができる。ただし、0.01%を超えて含有させると効果が飽和する。したがって、Caの含有量は0.01%以下とする。Caの上限値は0.005%が好ましい。上記効果を効果的に得るためには、0.0002%以上含有させることが好ましく、0.0005%以上含有させることがより好ましい。
Mgは、Caと同様に、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制するので、必要に応じて含有させることができる。ただし、0.01%を超えて含有させると効果が飽和する。したがって、Mgの含有量は0.01%以下とする。Mgの上限値は0.005%が好ましい。上記効果を効果的に得るためには、0.0002%以上含有させることが好ましく、0.0005%以上含有させることがより好ましい。
Nbは鋼材の強度を上昇させる元素であるので、必要に応じて含有させることができる。しかし、0.1%を超えて含有させると効果が飽和するため、Nbの含有量は0.1%以下とする。Nbの上限値は0.05%が好ましい。上記効果を効果的に得るためには、0.001%以上含有させることが好ましく、0.003%以上含有させることがより好ましい。
VはNbと同様に鋼材の強度を上昇させる元素であり、また、MoやWと同様に、溶解して酸素酸イオンの形で存在しさび層中の塩化物イオンの透過を抑制する作用も有するので、必要に応じて含有させることができる。しかし、含有量が0.5%を超えると効果が飽和するばかりでなくコストが著しく上昇する。したがって、Vの含有量は0.5%以下とする。Vの上限値は0.3%が好ましい。上記効果を効果的に得るためには、0.005%以上含有させることが好ましく、0.01%以上含有させることがより好ましい。
Bは焼入性を向上させて強度を高める元素であるので、必要に応じて含有させることができる。しかし、Bの含有量が0.01%を超えると、強度を高める効果が飽和し、また、母材、HAZともに靱性劣化の傾向が著しくなる。したがって、Bの含有量は0.01%以下とする。焼入れ性と強度を高める効果を効果的に得るためには、0.0003%以上含有させることが好ましい。
REM
REM(希土類元素)は鋼の溶接性を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させることができる。しかし、含有量が0.01%を超えると効果が飽和するため、REMの含有量は0.01%以下とする。REMの上限値は0.005%が好ましい。上記効果を効果的に得るためには、0.0002%以上含有させることが好ましく、0.0005%以上含有させることがより好ましい。
錆層中にAlが含有されることにより、塩化物環境において著しく高い保護性が発揮される。保護性錆層中のAl量は多ければ多いほうがよい。本発明における鋼材においては、保護性錆層中のAl量は金属換算で1.5〜2000 mg/m2とするのが好ましい。
本発明においては、鋼材に添加したSnが高い割合で固溶していることが好ましい。特に、Sn中の固溶Snの割合が95.0%以上であると、保護性錆が形成され、十分な耐食性を確保することができるからである。先に述べたように、耐食性を向上させるのは腐食により溶解したSnイオンであることから、難溶性の析出物中にSnが含有されて鋼中への固溶度が低くなると、耐食性向上作用が十分でなくなる。また、固溶Snの割合が低いと、保護性錆形成に寄与するSnの量が減少するため、保護性錆の形成が不十分となりやすい。
上記に説明した本発明の鋼材は、そのまま使用しても良好な耐食性を示す。しかし、その表面を有機樹脂や金属からなる防食被膜で被覆した場合には、従来の鋼材に比べ防食被膜の耐久性が向上し、耐食性が一段と向上する。
y=A・xB ・・・ (1)
の形で近似し、求めた係数Bが0.8以下である場合、保護性錆層が形成されているとした。なお、保護性さびが形成されていない場合は腐食減量あるいは腐食深さが試験期間とともに直線的に増加するため、係数Bが1に近い値となる。
Claims (9)
- 質量%で、C:0.01-0.25%、Si:0.01-1.0%、Mn:0.05-3.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.03超-10.0%、Sn:0.01-0.5%を含有し、残部Feおよび不純物からなり、かつ、鋼材表面がAlおよびSnとともにα−FeOOHを含有する保護性錆層で覆われている鋼材であって、保護性錆層中のα−FeOOHのβ−FeOOHに対する比の比が0.5以上であることを特徴とする、耐食性に優れた鋼材。
- さらに、鋼材表面が金属換算で1.5-2000 mg/m2のAlおよび0.5-100 mg/m2のSnを含有する保護性錆層で覆われていることを特徴とする、請求項1に記載の耐食性に優れた鋼材。
- 鋼材中の全Sn中の固溶Snの割合が95%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の耐食性に優れた鋼材。
- さらに、質量%で、Cr:7.0%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Mo:1.0%以下、W:1.0%以下、Sb:0.2%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載の耐食性に優れた鋼材。
- さらに、質量%で、Ti:0.2%以下、Zr:0.2%以下の1種または2種を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれかに記載の耐食性に優れた鋼材。
- さらに、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下の1種または2種を含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれかに記載の耐食性に優れた鋼材。
- さらに、質量%で、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、B:0.01%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれかに記載の耐食性に優れた鋼材。
- さらに、質量%で、REM:0.01%以下を含有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれかに記載の耐食性に優れた鋼材。
- 鋼材表面の少なくとも一部に防食処理が施されたことを特徴とする、上記(1)〜(8)のいずれかの耐食性に優れた鋼材。
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