JP2013183558A - モータ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電流検出および演算の遅延時間の影響を低減することで電圧演算部の制御ゲインを大きくしたときの発散などの不具合のおそれを回避して、制御の応答性および安定性を向上したモータ制御装置を提供する。
【解決手段】指令電流Id*、Iq*とフィードバック電流Id∧、Id∧とに基づき指令電圧Vd、Vqを演算する電圧演算部2と、指令電圧Vd、Vqに基づき印加電圧を生成して電機子巻線に印加する電圧印加手段4と、所定の検出所要時間をかけて実電流を検出して実測電流Id、Iqとする電流検出手段5と、回転子の角速度ωを検出する角速度検出手段6と、実測電流Id、Iqに基づくとともに指令電圧Vd、Vqおよび角速度ωを考慮して、実測電流Id、Iqの検出終了時よりも検出所要時間だけ以前の実電流を推定し、推定した実電流をフィードバック電流Id∧、Id∧とする電流推定オブザーバ7と、を備える。
【選択図】図1
【解決手段】指令電流Id*、Iq*とフィードバック電流Id∧、Id∧とに基づき指令電圧Vd、Vqを演算する電圧演算部2と、指令電圧Vd、Vqに基づき印加電圧を生成して電機子巻線に印加する電圧印加手段4と、所定の検出所要時間をかけて実電流を検出して実測電流Id、Iqとする電流検出手段5と、回転子の角速度ωを検出する角速度検出手段6と、実測電流Id、Iqに基づくとともに指令電圧Vd、Vqおよび角速度ωを考慮して、実測電流Id、Iqの検出終了時よりも検出所要時間だけ以前の実電流を推定し、推定した実電流をフィードバック電流Id∧、Id∧とする電流推定オブザーバ7と、を備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、モータの電機子巻線に通電する電流をフィードバック制御するモータ制御装置に関する。
近年、三相同期モータの制御装置にインバータを適用する技術が普及し、旧態と比較して格段に制御性能が向上している。インバータを適用した制御装置では、外部からの指令トルクまたは指令電流に基づくとともに、固定子の電機子巻線に流れる各相の電流を検出してフィードバックすることで、矩形波電圧の位相を制御したり、パルス幅変調(PWM)方式により電圧実効値を制御したりして電流を制御する場合が多い。この種の制御技術の一例が特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示されたモータ制御装置は、モータ1相分のモデルを用いて現在の電流値を推定する推定するカレントオブザーバと、モータ1相分のモデルを用いて現在の外乱電圧を推定する外乱オブザーバとを備え、両オブザーバ相互の過去の推定値を用いて電流検出時点の電流推定値を求めて電流制御に使用する。これにより、電流制御の演算遅れが小さくばらつきの少ない電流推定値が得られ、高精度な電流制御が可能になる、と記載されている。
ところで、特許文献1の制御装置では、電圧指令(指令電圧)と電流検出値とを用いて電流推定値を演算する際に生じる位相遅れ(演算遅延時間)を考慮しているが、電流検出値を取得するときの検出所要時間が考慮されていない。電流検出値は通常AD変換器を用いてディジタル計測されるが、AD変換動作時に計測値を安定させるためなどの目的で所定のラッチ時間を必要とする。このため、取得した電流検出値は実際にはラッチ時間相当分だけ過去の値となり、この検出遅延時間が演算誤差の一因となっている。
特許文献1に限らず、一般的な電流制御系において制御性能の向上を目的とした演算処理方法が数多く提案されてきた。その背景として、CPUや周辺機器の性能向上があり、アナログ処理に代わってディジタル処理が一般的になってきた。しかし、背反として演算負荷の増加に伴う演算遅延時間の増加や、AD変換時間および通信遅れなどによって生じる検出遅延時間の増加などが問題となっている。特に、モータ制御装置では、電流検出値の取得遅れは、制御の応答性を向上させる妨げとなっている。つまり、指令電圧を演算する電圧演算部の比例積分制御などで制御ゲイン(比例ゲインや積分ゲインなど)を大きくすると、モータ回転数によっては応答が発散するおそれがあって、制御ゲインに限界があり、制御の応答性や安定性の向上が難しくなっている。
また、この種の制御では、回転子の磁石の回転位置を基準とするdq座標軸を用いた演算により演算負荷を軽減する方法が多用されるが、特許文献1ではモータ1相分のモデルを用いた演算を行っている。このため、同じ演算を3相でそれぞれ行うことになり、演算負荷が増加して演算の遅延時間が大きくなる。
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、電流検出および演算の遅延時間の影響を低減することで電圧演算部の制御ゲインを大きくしたときの発散などの不具合のおそれを回避して、制御の応答性および安定性を向上したモータ制御装置を提供することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する請求項1に係るモータ制御装置の発明は、外部からの指令電流または外部からの指令トルクから求めた指令電流と、モータの固定子に設けられた電機子巻線に流れる実電流を検出してフィードバックしたフィードバック電流とに基づき、前記実電流を前記指令電流に一致させるために前記電機子巻線に印加すべき指令電圧を演算する電圧演算部と、演算された指令電圧に基づき、印加電圧を生成して前記電機子巻線に印加する電圧印加手段と、所定の検出所要時間をかけて前記実電流を検出して実測電流とする電流検出手段と、前記モータの回転子が回転する角速度を検出する角速度検出手段と、前記実測電流に基づくとともに前記指令電圧および前記角速度を考慮して、前記実測電流の検出終了時よりも前記検出所要時間だけ以前の実電流を推定し、推定した実電流を前記フィードバック電流とする電流推定オブザーバと、を備える。
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記モータは前記回転子に磁石を有し前記固定子に前記電機子巻線を有する三相同期モータであり、前記電圧演算部および前記電流推定オブザーバは、前記回転子の磁石の回転位置を基準とするdq座標軸を用いて演算および推定を行う。
請求項3に係る発明は、請求項2において、前記電流推定オブザーバは、前記実測電流から前記推定した実電流を減算した検出偏差に基づくとともに、前記dq座標軸上で表される前記電機子巻線の抵抗、インダクタンス、および誘起電圧定数に対し前記指令電圧および前記角速度を考慮して推定を行う。
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記電流検出手段はアナログ量の実電流をディジタル量の実測電流に変換するAD変換器を含み、前記検出所要時間は前記AD変換器の変換動作時のラッチ時間を含む。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記電圧演算部は、前記指令電流から前記フィードバック電流を減算した指令偏差に基づいて比例積分制御を行う。
請求項1に係るモータ制御装置の発明では、電流推定オブザーバは、実測電流の検出終了時よりも検出所要時間だけ以前の実電流を推定し、推定した実電流をフィードバック電流とする。これにより、検出所要時間の遅れ分が補償され、指令電流、フィードバック電流、および指令電圧が同一時刻の値となるので、電流検出の遅延時間の影響を低減でき演算精度が向上する。さらに、電圧演算部の制御ゲインを大きくしても発散などの不具合が発生しなくなり、制御の応答性および安定性を向上できる。
請求項2に係る発明では、電圧演算部および電流推定オブザーバはdq座標軸を用いて演算および推定を行う。したがって、特許文献1を始めとする三相領域での演算方法と比較して演算負荷が軽減され、演算の遅延時間の影響が低減されて演算精度が向上する。
請求項3に係る発明では、電流推定オブザーバは、実測電流から推定した実電流を減算した検出偏差に基づくとともに、電機子巻線の抵抗、インダクタンス、および誘起電圧定数に対し指令電圧および角速度を考慮して推定を行う。したがって、指令電流が変化して過渡応答が必要とされるときに、モータの電圧方程式に基づいて検出所要時間だけ以前の実電流を精度よく推定でき、過渡応答時の応答性および安定性を向上できる。
請求項4に係る発明では、電流検出手段はアナログ量の実電流をディジタル量の実測電流に変換するAD変換器を含み、検出所要時間はAD変換器の変換動作時のラッチ時間を含んでいる。したがって、電流推定オブザーバは、AD変換器のラッチ時間だけ以前の実電流を推定してフィードバック電流とし、これにより、電圧演算部の制御ゲインを大きくしても発散などの不具合が発生しなくなり、制御の応答性および安定性を向上できる。
請求項5に係る発明では、電圧演算部は、指令電流からフィードバック電流を減算した指令偏差に基づいて比例積分制御を行う。本発明は、上述するように比例積分制御で指令電圧を演算する方式と電流推定オブザーバとを組み合わせることにより、過渡応答時の応答性および安定性を向上する効果が顕著になる。
本発明の実施形態のモータ制御装置1について、図1〜図4を参考にして説明する。図1は、実施形態のモータ制御装置1の全体構成を示すブロック図である。モータ制御装置1は、ソフトウェアで動作するコンピュータを含んで構成されており、制御対象は三相同期モータ9、制御量はモータ9に印加する三相電圧Vu、Vv、Vwである。
三相同期モータ9は、図略の回転子コアに磁石を埋め込み、図略の固定子コアに電機子巻線を巻回して構成した埋込磁石同期モータであり、これに限定されない。モータ制御装置1は、外部から受け取った指令電流、または外部から受け取った指令トルクから求めた指令電流をモータ9に通電すべく、dq座標軸を用いた演算を行って三相電圧Vu、Vv、Vwを制御する。モータ制御装置1は、電圧演算部2、電圧印加手段4、電流検出手段5、角速度検出手段6、および電流推定オブザーバ7で構成されている。
角速度検出手段6は、三相同期モータ9の回転子の回転位相θを検出する角度センサ、および回転位相θを電気角の角速度ωに変換する図略の角速度変換部で構成されている。角度センサは、例えば公知のレゾルバなどを用いて構成でき、検出した回転位相θを角速度変換部に送出する。角速度変換部は、2回の検出によって求めた回転位相θの変化量を経過時間で除算して(時間微分に相当)角速度ωを演算し、電圧印加手段4、電流推定オブザーバ7、および後述の3/2相変換部53に出力する。
電流検出手段5は、所定の検出所要時間をかけてモータ9の実電流を検出して実測電流とする手段であり、2個の電流検出部51v、51w、AD変換器52、および3/2相変換部53で構成されている。2個の電流検出部51v、51wは、モータ9の電機子巻線に接続された三相の入力線91u、91v、91wのうちのV相入力線91vおよびW相入力線91wにそれぞれ設けられている。電流検出部51v、51wは、例えば周知の変流器や分路抵抗器などを用いて構成でき、それぞれV相電流IvおよびW相電流Iwを検出して、アナログ検出信号をAD変換器52に出力する。
AD変換器52は2チャンネルタイプであり、V相電流IvおよびW相電流Iwのアナログ検出信号をディジタル量の実測電流に変換して3/2相変換部53に送信する。3/2相変換部53は、まず、三相電流Iu、Iv、Iwのベクトル和がゼロであることを利用して、三相目のU相電流Iuを演算する。3/2相変換部53は、次に、角速度ωを用いた公知の変換式により、三相電流Iu、Iv、Iwを回転子の磁石の回転位置を基準とするdq座標軸上のd軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換し、電流推定オブザーバ7に出力する。
ここで、三相の入力線91u、91v、91wに流れる実電流を基準としたときに、d軸電流Idおよびq軸電流Iqには、所定の検出所要時間ΔTに相当する遅延時間が生じている。検出所要時間ΔTの内訳は、AD変換器52の変換動作時のラッチ時間が最も大きく、他にAD変換器52から3/2相変換部53への送信所要時間や、3/2相変換部53内部での演算所要時間、3/2相変換部53から電流推定オブザーバ7への出力所要時間などが含まれている。
電圧演算部2は、外部からの指令電流とフィードバック電流とに基づき、実電流を指令電流に一致させるために電機子巻線に印加すべき指令電圧を演算する。電圧演算部2は、dq座標軸を用いて演算を行い、図示されるように、d軸およびq軸に関し並行して演算処理を行う。電圧演算部2は、d軸側加算器21およびd軸比例積分制御器22(d軸PI制御器)と、q軸側加算器23およびq軸比例積分制御器24(q軸PI制御器)とで構成されている。
d軸側加算器21は、d軸指令電流Id*からd軸フィードバック電流Id∧を減算してd軸指令偏差ΔIdを求め、d軸比例積分制御器22(d軸PI制御器)に出力する。d軸比例積分制御器22は、比例積分制御により指令d軸電圧Vdを求め、電圧印加手段4に出力する。同様に、q軸側加算器23は、q軸指令電流Iq*からq軸フィードバック電流Iq∧を減算してq軸指令偏差ΔIqを求め、q軸比例積分制御器24(q軸PI制御器)に出力する。q軸比例積分制御器24は、比例積分制御により指令q軸電圧Vqを求め、電圧印加手段4に出力する。d軸フィードバック電流Id∧およびq軸フィードバック電流Iq∧は、後で詳述するように電流推定オブザーバ7から出力された実電流の推定値である。
電圧印加手段4は、演算された指令d軸電圧Vdおよび指令q軸電圧Vqに基づき、三相の印加電圧を生成して電機子巻線に印加する。電圧印加手段4は、図略の2/3相変換部、バッテリ、およびパルス幅変調回路で構成することができる。2/3相変換部は、角速度ωを用いた公知の変換式により、指令d軸電圧Vdおよび指令q軸電圧Vqを三相電圧Vu、Vv、Vwに変換する。パルス幅変調回路は、バッテリの直流出力電圧の正負の極性を切替え制御するとともに、通電時間幅をパルス幅変調(PWM)により制御し、電圧実効値を調整して三相電圧Vu、Vv、Vwを生成し、電機子巻線に印加する。
次に、dq座標軸上で表現される電圧方程式について説明し、引き続き電流推定オブザーバ7の内部構成について説明する。公知のように、磁石埋込型の三相同期モータ9では、電圧方程式として下記の数式1が成り立つ。
数式1を微分方程式で表すと、下記の数式2が成り立つ。数式2で、d軸電流Idおよびq軸電流Iqの実電流を状態変数ベクトルxとし、指令d軸電圧Vdおよび指令q軸電圧Vqを入力ベクトルuとし、係数行列を書き換えると数式3となる。
ここで、電流推定オブザーバ7は、実測されたd軸電流Idおよびq軸電流Iqに基づくとともに指令d軸電圧Vd、指令q軸電圧Vqおよび角速度ωを考慮して、実測電流の検出終了時よりも検出所要時間ΔTだけ以前の実電流を推定する。さらに、推定した実電流をフィードバック電流として電圧演算部2に出力する。本実施形態において、推定した実電流をd軸フィードバック電流Id∧、およびq軸フィードバック電流Iq∧で表し、これを状態変数ベクトルの推定値x∧とする。また、指令d軸電圧Vdおよび指令q軸電圧Vq(入力ベクトルu)に相当する三相電圧Vu、Vv、Vwをモータ9に入力したときのd軸電流Idおよびq軸電流Iqを出力ベクトルyとする。すると、出力ベクトルの推定値y∧は、状態変数ベクトルの推定値x∧に単位行列Cを乗じたもので示される。さらに、電流推定オブザーバ7は、内部で出力ベクトルの推定値y∧をフィードバックすることで演算精度を高める。
以上から、電流推定オブザーバ7の内部構成が定まる。図2は、電流推定オブザーバ7の内部構成を示すブロック図である。図示されるように、電流推定オブザーバ7は、加算器71、乗算器72、加算器73、乗算器74、乗算器75、積分器76、乗算器77、および遅延器78で構成される。
加算器71は、出力ベクトルyからその推定値y∧を減算して検出偏差eを求め、乗算器72に出力する。乗算器72は、検出偏差eをL倍し、乗算結果の(L・e)を加算器73に出力する。ただし、Lは定数係数である。また、乗算器74は、係数行列Bに入力ベクトルuを乗算し、乗算結果の(B・u)を加算器73に出力する。さらに、乗算器75は、係数行列Aに出力側からフィードバックされた状態変数ベクトルの推定値x∧を乗算し、乗算結果の(A・x∧)を加算器73に出力する。
加算器73は、3つの入力である(L・e)、(B・u)、および(A・x∧)を加算して(dx∧/dt)とし、積分器76に出力する。積分器76は、(dx∧/dt)を積分して状態変数ベクトルの推定値x∧を求め、乗算器77に出力するとともに乗算器75にフィードバック出力する。乗算器77は、単位行列Cに推定値x∧を乗算して出力ベクトルの推定値y∧、すなわちd軸フィードバック電流Id∧およびq軸フィードバック電流Iq∧を求める。出力ベクトルの推定値y∧は、電圧演算部2に出力され、かつ遅延器78にフィードバック出力される。遅延器78は、出力ベクトルの推定値y∧を検出遅延時間ΔT相当だけ遅延して加算器71に出力する。
上述した電流推定オブザーバ7の内部構成により、数式4および数式5で示される出力ベクトルの推定値y∧を推定できる。ここで、遅延器78は、モータ9側で実電流の検出に要する検出遅延時間ΔTに相当する遅延を行うので、出力ベクトルの推定値y∧すなわちd軸フィードバック電流Id∧およびq軸フィードバック電流Iq∧は、検出所要時間ΔTだけ以前の実電流を推定した値になる。
また、電流推定オブザーバ7は、推定値y∧のフィードバック制御システムを構成しており、このシステムの極は定数係数Lによって任意に決定できる。つまり、最適に定数係数Lを設定することで、高速でかつ安定した制御を実現できる。
次に、実施形態のモータ制御装置1の作用および効果について、従来技術と比較して説明する。従来技術のモータ制御装置としては、電流推定オブザーバ7を備えず、電流検出手段5で検出したd軸電流Idおよびq軸電流Iqをそのまま電圧演算部2にフィードバックする構成を考える。
図3および図4は、実施形態および従来技術において電流指令(q軸電流指令Iq*)が増加したときのd軸電流Id1、Id2、およびq軸電流Iq1、Iq2の変化をシミュレーションした結果を示す図である。図3および図4の横軸は時間t(sec)、縦軸は電流(%)を表し、図3は実施形態におけるd軸電流Id1およびq軸電流Iq1の変化を示し、図4は従来技術におけるd軸電流Id2およびq軸電流Iq2の変化を示している。シミュレーションの条件として、時刻t0でq軸電流指令Iq*が0%から100%に増加し、d軸電流指令Id*が0%で不変の場合を設定し、実電流をシミュレーションした。
シミュレーションの結果、図3に示される実施形態では、q軸電流Iq1は、時刻t0から急峻に増加し、100%に接近すると増加傾向が鈍化し、滑らかに100%に落ち着いている。換言すれば、高速にかつ安定して応答している。また、d軸電流Id1は、時刻t0以降にごく僅か発生するだけであり、安定している。したがって、電圧演算部2の制御ゲイン(比例ゲインおよび積分ゲイン)をさらに大きくすることも可能である。
これに対し従来技術では、q軸電流Iq2は、時刻t0よりも遅れた時刻t1から急峻に増加し、一時的に100%をオーバーシュートするとともに振動しており、不安定な応答になっている。また、d軸電流Id2も、時刻t0以降で振動して不安定な応答になっている。したがって、両者を比較すると、従来技術よりも実施形態のほうが過渡応答時の応答性および安定性の両面で優れている。
さらに、実施形態のモータ制御装置1の電圧演算部2および電流推定オブザーバ7はdq座標軸を用いて演算および推定を行うので、特許文献1を始めとする三相領域での演算方法と比較して演算負荷が軽減され、演算の遅延時間の影響が低減されて演算精度が向上する。
また、電流推定オブザーバ7は、実測電流Id、Iqから推定した実電流Id∧、Iq∧を減算した検出偏差eに基づくとともに、電機子巻線の抵抗R、インダクタンスLp、Lqおよび誘起電圧定数Keに対し指令電圧Vd、Vqおよび角速度ωを考慮して推定を行う。したがって、指令電流Id*、Iq*が変化して過渡応答が必要とされるときに、モータ9の電圧方程式に基づいて検出所要時間ΔTだけ以前の実電流Id∧、Iq∧を精度よく推定でき、過渡応答時の応答性および安定性を向上できる。
また、電流検出手段5はアナログ量の実電流をディジタル量の実測電流Id、Iqに変換するAD変換器52を含み、検出所要時間ΔTはAD変換器52の変換動作時のラッチ時間を含んでいる。したがって、電流推定オブザーバ7は、AD変換器52のラッチ時間だけ以前の実電流を推定してフィードバック電流Id∧、Iq∧とし、これにより、電圧演算部2の制御ゲインを大きくしても発散などの不具合が発生しなくなり、制御の応答性および安定性を向上できる。
さらに、本実施形態では、比例積分制御で指令電圧Vd、Vqを演算する電圧演算部2と電流推定オブザーバ7とを組み合わせており、過渡応答時の応答性および安定性を向上する効果が顕著になる。
なお、実施形態の電流推定オブザーバ7の内部構成は一例であって、様々な応用や変形が可能である。また、電圧演算部の内部構成も比例積分制御方式に限定されない。
1:モータ制御装置
2:電圧演算部
21:d軸側加算器 22:d軸比例積分制御器
23:q軸側加算器 24:q軸比例積分制御器
4:電圧印加手段
5:電流検出手段
51v、51w:電流検出部 52:AD変換器
53:3/2相変換部
6:角速度検出手段
7:電流推定オブザーバ
71:加算器 72:乗算器 73:加算器 74:乗算器
75:乗算器 76:積分器 77:乗算器 78:遅延器
9:三相同期モータ
Id*:指令d軸電流 Iq*:指令q軸電流
ΔId:d軸指令偏差 ΔIq:q軸指令偏差
Iv、Iw:V相およびW相電流 ω:角速度
u:入力ベクトル
Vd:指令d軸電圧 Vq:指令q軸電圧
x:状態変数ベクトル
x∧:状態変数ベクトルの推定値
y:出力ベクトル
Id:d軸電流 Iq:q軸電流
y∧:出力ベクトルの推定値
Id∧:d軸フィードバック電流 Iq∧:q軸フィードバック電流
2:電圧演算部
21:d軸側加算器 22:d軸比例積分制御器
23:q軸側加算器 24:q軸比例積分制御器
4:電圧印加手段
5:電流検出手段
51v、51w:電流検出部 52:AD変換器
53:3/2相変換部
6:角速度検出手段
7:電流推定オブザーバ
71:加算器 72:乗算器 73:加算器 74:乗算器
75:乗算器 76:積分器 77:乗算器 78:遅延器
9:三相同期モータ
Id*:指令d軸電流 Iq*:指令q軸電流
ΔId:d軸指令偏差 ΔIq:q軸指令偏差
Iv、Iw:V相およびW相電流 ω:角速度
u:入力ベクトル
Vd:指令d軸電圧 Vq:指令q軸電圧
x:状態変数ベクトル
x∧:状態変数ベクトルの推定値
y:出力ベクトル
Id:d軸電流 Iq:q軸電流
y∧:出力ベクトルの推定値
Id∧:d軸フィードバック電流 Iq∧:q軸フィードバック電流
Claims (5)
- 外部からの指令電流または外部からの指令トルクから求めた指令電流と、モータの固定子に設けられた電機子巻線に流れる実電流を検出してフィードバックしたフィードバック電流とに基づき、前記実電流を前記指令電流に一致させるために前記電機子巻線に印加すべき指令電圧を演算する電圧演算部と、
演算された指令電圧に基づき、印加電圧を生成して前記電機子巻線に印加する電圧印加手段と、
所定の検出所要時間をかけて前記実電流を検出して実測電流とする電流検出手段と、
前記モータの回転子が回転する角速度を検出する角速度検出手段と、
前記実測電流に基づくとともに前記指令電圧および前記角速度を考慮して、前記実測電流の検出終了時よりも前記検出所要時間だけ以前の実電流を推定し、推定した実電流を前記フィードバック電流とする電流推定オブザーバと、
を備えるモータ制御装置。 - 請求項1において、前記モータは前記回転子に磁石を有し前記固定子に前記電機子巻線を有する三相同期モータであり、前記電圧演算部および前記電流推定オブザーバは、前記回転子の磁石の回転位置を基準とするdq座標軸を用いて演算および推定を行うモータ制御装置。
- 請求項2において、前記電流推定オブザーバは、前記実測電流から前記推定した実電流を減算した検出偏差に基づくとともに、前記dq座標軸上で表される前記電機子巻線の抵抗、インダクタンス、および誘起電圧定数に対し前記指令電圧および前記角速度を考慮して推定を行うモータ制御装置。
- 請求項1〜3のいずれか一項において、前記電流検出手段はアナログ量の実電流をディジタル量の実測電流に変換するAD変換器を含み、前記検出所要時間は前記AD変換器の変換動作時のラッチ時間を含むモータ制御装置。
- 請求項1〜4のいずれか一項において、前記電圧演算部は、前記指令電流から前記フィードバック電流を減算した指令偏差に基づいて比例積分制御を行うモータ制御装置。
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