JP2013121920A - 精製乳酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】発酵により得られた乳酸をイオン交換法により脱塩精製して、ポリマー原料として適切な乳酸を製造するための、精製乳酸の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】固液分離工程22から送られてきた乳酸溶液は第一陽イオン交換塔32に供給された後、第二陽イオン交換塔37に供給され、固液分離工程24へ排出される。第一陽イオン交換塔32の吸着容量が消費されると、アルカリ金属イオンが漏洩し、第二陽イオン交換塔37において吸着除去される。第一陽イオン交換塔32からカルシウムイオンが漏洩し始めた段階で、カルシウムイオン漏洩モニター47がこれを検知する。これにより、弁31、34、39、42を閉じ、代わりに弁51、54、59、62を開く。合わせて、ポンプ36、41を停止し、代わりにポンプ56、61を稼動させる。
【選択図】図5
【解決手段】固液分離工程22から送られてきた乳酸溶液は第一陽イオン交換塔32に供給された後、第二陽イオン交換塔37に供給され、固液分離工程24へ排出される。第一陽イオン交換塔32の吸着容量が消費されると、アルカリ金属イオンが漏洩し、第二陽イオン交換塔37において吸着除去される。第一陽イオン交換塔32からカルシウムイオンが漏洩し始めた段階で、カルシウムイオン漏洩モニター47がこれを検知する。これにより、弁31、34、39、42を閉じ、代わりに弁51、54、59、62を開く。合わせて、ポンプ36、41を停止し、代わりにポンプ56、61を稼動させる。
【選択図】図5
Description
本発明は、精製乳酸の製造方法に関する。
乳酸は、産業用ポリマーであるポリ乳酸や乳酸系共重合体等の樹脂の製造原料として用いられる。これらのポリマーは生分解性を有するため、極めて有益である。一般的にポリ乳酸は、原料であるL−乳酸又はD−乳酸のいずれか一方を濃縮、オリゴマー化し、これを解重合により環状二量体(ラクチド)に変換した後、スズ系触媒等の共存下でラクチドの開環重合を行うことにより製造される(ラクチド法)。その他、ラクチドを経由しない直接重合法がある。いずれの重合方法においても、ポリ乳酸の融点、耐候性、機械特性等を良好に保つためには、ポリ乳酸分子内における乳酸骨格の光学純度を高く保つ必要があり、そのためには光学純度の高いラクチド(LL−ラクチド又はDD−ラクチド)を開環重合する必要がある。これは、通常ポリ乳酸を製造する過程においては、オリゴマー化、それに続く解重合の各工程で光学純度が低下しやすいためである。光学異性体は通常、乳酸又は乳酸オリゴマーの末端カルボキシル基におけるエノール化反応を介して生成することが知られている。したがって、オリゴマー化、解重合の各工程においては、極力乳酸オリゴマーの末端カルボキシル基が電離してエノール化しやすい状態となることを回避する必要がある。なお、通常のホモポリマーよりも高機能な材料として知られるステレオコンプレックスポリマーとは、光学純度の高いLL−ポリ乳酸とDD−ポリ乳酸とのブレンド物であり、ポリマー骨格自体の光学純度が低いポリ乳酸とは異なる。その他、乳酸の光学純度はポリ乳酸の結晶化能に影響を及ぼす。このことは、ポリ乳酸樹脂の繊維、不織布、フィルムその他の最終製品への二次加工性に影響を与える。
また、原料となる乳酸についても当然光学純度の高いものがポリマー原料には向いており、通常、光学純度の高い乳酸を製造できる菌体を用いて各種糖類の発酵により製造される。その際、原料となる糖類は精製グルコース等を含む発酵培地のみならず、ガラクトース、フルクトース、キシロース等の各種ペントース、ヘキトースを含む混合糖系が用いられることが多い。混合糖系としては、例えばセルロースを含む植物バイオマスの加水分解によって得ることができる。しかしながら、混合糖系は、従来のグルコース等を含む発酵培地を利用する系に比べて、植物バイオマスに由来するリグニン等の不純物をより多く含んでいる。発酵液中の乳酸濃度は、プロセス方式や、グルコース等の初期原料濃度により異なる。一般的には、原料添加と発酵液の抜き出しを連続的又は断続的に行うプロセスの場合には3〜6重量%、バッチプロセスの場合には発酵を実施する菌体の生育条件を維持するため15重量%(=初期グルコース濃度)程度で行われる。
発酵により得られた乳酸をポリマー原料として用いるためには、不純物を除去し、濃縮する精製工程が必須となる。(特許文献1)に記載される方法においては、乳酸を乳酸カルシウムの形態で含む乳酸発酵液を加熱し、約60℃〜150℃の温度下で蒸発器により水分蒸発させて乳酸カルシウムを濃縮し、その後、硫酸を添加しカルシウムイオンを硫酸カルシウムとして析出させた後、有機溶媒を用いた抽出操作によりミネラル分、代謝副生成物等の不純物を除去し、精製乳酸を得ている。しかし、このような方式では、溶媒抽出による精製を行っているため、有機溶媒等の再生処理が必要となり、システムが複雑化し、多量の二次廃棄物が発生する等の課題がある。
また、(特許文献2)では、乳酸発酵液にイオン交換脱塩処理を行うことで、金属イオン等を除去した後、濃縮・蒸留精製を行うプロセスに関する発明が開示されている。(特許文献2)に記載されている実施例によれば、脱塩対象の乳酸発酵液は、液のpHが2.25と酸性であり、カルシウムイオン及び硫酸イオンを含む。このことから、脱塩対象の乳酸発酵液としては、(特許文献1)で記載されるような、乳酸発酵をカルシウム添加により中和しながら促進し、得られた乳酸カルシウムに硫酸を添加し、硫酸カルシウム沈殿を晶析で除去した後の液を想定していると考えられる。また、上記の脱塩対象乳酸には、発酵工程で用いた混合糖液等の栄養分に由来するナトリウム等の金属イオン系の不純物や、菌体における代謝反応に起因する、コハク酸、酒石酸、ピルビン酸、酢酸等の有機酸の不純物を含有する。したがって、(特許文献2)の方式では、陽イオン交換樹脂によりカルシウムを中心とする金属イオン系の不純物を除去すると共に、陰イオン交換樹脂により、硫酸イオンを中心とする陰イオン系の不純物を除去する。このような方式においては、薬洗によるイオン交換樹脂の再生処理により、無機塩を多く含む排水が発生する。最初に陽イオンを除去し後から陰イオンを除去する場合には、強酸性陽イオン交換樹脂塔、及びそれに続く弱塩基性陰イオン交換樹脂塔による処理を行うことが望ましい。逆に、最初に陰イオンを除去する場合には、強塩基性陰イオン交換樹脂塔、及びそれに続く弱酸性陽イオン交換樹脂塔による処理を行うことが望ましい。これにより、後半のイオン交換樹脂塔における再生処理での排水発生量が低減される。脱塩処理後、残存する水分や各種不純物については蒸留や活性炭処理等により除去される。
一方、(特許文献3)では、ナトリウム等の陽イオン系不純物が含まれる乳酸を用いて、ラクチド法によりポリ乳酸を製造する際、乳酸をラクチドに転換するまでに著しい光学純度の低下が発生し、得られるラクチドはいわゆるメソラクチドを多く含むことが記載されている。これは、ナトリウム等の陽イオン系不純物が乳酸中に多く含まれると、乳酸又は乳酸オリゴマーの末端カルボキシル基が電離してエノール化反応が起きやすい状態となるためと考えられる。したがって、ポリ乳酸の製造に用いる原料乳酸においては、できるだけナトリウム等の陽イオン系不純物が除去されていることが望ましい。このような観点から、(特許文献2)に記載されるイオン交換脱塩の技術は、ポリマー原料用の乳酸の製造にとって適切な技術の一つと考えられる。しかしながら、上記技術の適用においても、次のような課題が残る。
すなわち、陽イオン交換樹脂塔が破過すると、その後は陽イオン系不純物が除去されずに樹脂塔から処理液が排出される。これを回避するためには、樹脂塔が破過する前に再生処理を行う必要があるが、実際には樹脂塔の破過を現場で運転中にモニターする適切な方法がない。特に、微量不純物であるアルカリ金属イオンについては、乳酸や主要不純物であるカルシウムイオンの存在もあり、モニターが困難である。これは、イオン交換樹脂では通常、除去するイオンの種類により吸着選択性が異なることに起因する。吸着選択性は通常、イオンの濃度及び価数が大きく水和イオン半径が小さいほど大きいことが知られている。例えば乳酸中にナトリウム、カリウム、カルシウムの各陽イオンが含まれる場合、濃度に違いがなければ、ナトリウム、カリウム、カルシウムの順番で樹脂塔から漏洩する。カルシウムの漏洩については、主要な不純物であることから、電気伝導度等のモニタリングにより検知できる可能性がある。しかしながら、ナトリウムやカリウムについては濃度が低いため、モニタリングによる検知は困難であり、検知可能なカルシウムの漏洩に基づいて樹脂塔の破過を判定すると、それまでに排出された処理液にはナトリウムやカリウムが漏洩していることとなる。このような乳酸を原料としてポリ乳酸を重合すると、これらのアルカリ金属イオンの作用により、途中工程で得られるラクチドの光学純度が著しく低下するため、適切な重合物が得られない。
本発明は、上述の実情に鑑み、発酵により得られた乳酸をイオン交換法により脱塩精製して、ポリマー原料として適切な乳酸を製造するための、精製乳酸の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意検討を行った結果、陽イオン系の不純物を含む乳酸発酵液をイオン交換樹脂により脱塩する際、陽イオン交換樹脂塔を直列に複数段接続する必要があると考えた。これは、初段の樹脂塔がカルシウムイオンの漏洩により破過する時点において、それまでに漏洩したアルカリ金属等の、カルシウムよりも漏洩しやすい陽イオンを後段の陽イオン交換樹脂塔で吸着除去できるためである。図1に、従来の技術と比較した本発明の特徴を概念的に示す。本発明により、脱塩後の処理液に陽イオン系の不純物が許容できない高濃度で含まれる事象が発生することを抑制することができる。初段の陽イオン交換樹脂塔は、カルシウムイオンに対する吸着選択性が比較的大きな樹脂を用いることが望ましい。そのような樹脂としては通常、架橋度が8〜14%程度のものを選択すると良い。また、本発明者らは、陽イオン系不純物の漏洩に関し、微量成分であるアルカリ金属イオンはモニターが困難である一方、主要成分であるカルシウムイオンについては、その漏洩を電気伝導度等によりモニタリングすることが可能であることを見出した。したがって、陽イオン交換樹脂塔を直列に複数段接続したシステムを用いる際、ある特定の樹脂塔とその後段の樹脂塔との間、例えば初段の樹脂塔と二段目の樹脂塔の間で電気伝導度等をモニタリングすることで、初段の樹脂塔が破過して再生処理が必要となる時点を検知することができる。後段の樹脂塔はその際、必要に応じて再生処理すれば良い。さらに、陽イオン交換樹脂塔を直列に複数段接続するシステムにおいて、後段の樹脂塔では、初段の樹脂塔よりもイオン間の吸着選択性が小さいイオン交換樹脂を用いると、より効率的なシステムが構築できることを見出した。これは、後段の樹脂塔の目的が主に吸着選択性の小さいアルカリ金属イオンの除去にあり、仮に初段の樹脂塔が破過して後段の樹脂塔にカルシウムイオンが流入しても、アルカリ金属イオンの除去を極力妨げないようにするためである。そのようなカルシウムイオンに対する吸着選択性が比較的低いイオン交換樹脂は、図2に示すように通常樹脂の架橋度が小さいものであり、特に架橋度が4%以下のものが望ましい。また、乳酸製造プラントの連続運転においては、このように陽イオン交換樹脂塔が直列に設置されたシステムを複数個並列に備えることが望ましい。これにより、ある樹脂塔システムにおいて再生処理が必要となった段階で、通液可能な別の樹脂塔システムに処理系統を切り替え、プラント全体の連続運転を維持することができる。そしてこれらにより、処理液に含まれる陽イオン系不純物の濃度を最小限に抑制し、ポリ乳酸重合工程での光学純度低下に関わる不具合を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)発酵により得られた乳酸を乳酸カルシウムの形態で含有する乳酸カルシウム含有溶液を濃縮精製する精製乳酸の製造方法であって、乳酸カルシウム含有溶液に硫酸を添加し、カルシウムイオンを硫酸カルシウムとして分離する工程、及び硫酸カルシウムを分離した溶液を、直列に設置された複数の陽イオン交換樹脂塔、及び陰イオン交換樹脂塔に供給し、不純物を除去する工程を含む前記精製乳酸の製造方法。
(2)直列に設置された複数の陽イオン交換樹脂塔における、樹脂塔とその後段の樹脂塔との間で、溶液へのカルシウムイオンの漏洩を検知する上記(1)に記載の精製乳酸の製造方法。
(3)直列に設置された複数の陽イオン交換樹脂塔において、後段の樹脂塔のカルシウムイオンに対する吸着選択性が、初段の樹脂塔に比べて低い上記(1)又は(2)に記載の精製乳酸の製造方法。
(1)発酵により得られた乳酸を乳酸カルシウムの形態で含有する乳酸カルシウム含有溶液を濃縮精製する精製乳酸の製造方法であって、乳酸カルシウム含有溶液に硫酸を添加し、カルシウムイオンを硫酸カルシウムとして分離する工程、及び硫酸カルシウムを分離した溶液を、直列に設置された複数の陽イオン交換樹脂塔、及び陰イオン交換樹脂塔に供給し、不純物を除去する工程を含む前記精製乳酸の製造方法。
(2)直列に設置された複数の陽イオン交換樹脂塔における、樹脂塔とその後段の樹脂塔との間で、溶液へのカルシウムイオンの漏洩を検知する上記(1)に記載の精製乳酸の製造方法。
(3)直列に設置された複数の陽イオン交換樹脂塔において、後段の樹脂塔のカルシウムイオンに対する吸着選択性が、初段の樹脂塔に比べて低い上記(1)又は(2)に記載の精製乳酸の製造方法。
本発明によれば、乳酸発酵液の脱塩精製工程が改良され、光学純度の観点から高品質なポリマーを製造するための原料として、不純物濃度が適切なレベル以下に低減された乳酸を製造することができる。また、陽イオン交換樹脂塔を再生処理するタイミングを適切に把握できることから、再生処理に伴い発生する排水量を必要最低限に抑制することができる。さらに、金属イオンを含む塩類を適切に除去することで、後段の蒸留精製工程における設備規模や必要エネルギー量を低減することができ、精製乳酸を製造する際のコストを低減することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
以下、本発明に係る精製乳酸の製造方法を、図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る精製乳酸の製造方法の一実施形態は、発酵により得られた乳酸を乳酸カルシウムの形態で含有する乳酸カルシウム含有溶液を所定の温度とし、逆浸透膜により当該乳酸カルシウム含有溶液に含まれる水分を除去することで、乳酸カルシウムを濃縮する工程を含んでいる。ここで、乳酸カルシウム含有溶液は、乳酸発酵能を有する微生物を利用した発酵プロセスにより得ることができる。発酵プロセスとは、培地に含まれる糖を基質とし、上記微生物による乳酸発酵によって乳酸を生成する工程をいう。
本発明に係る精製乳酸の製造方法の一実施形態は、発酵により得られた乳酸を乳酸カルシウムの形態で含有する乳酸カルシウム含有溶液を所定の温度とし、逆浸透膜により当該乳酸カルシウム含有溶液に含まれる水分を除去することで、乳酸カルシウムを濃縮する工程を含んでいる。ここで、乳酸カルシウム含有溶液は、乳酸発酵能を有する微生物を利用した発酵プロセスにより得ることができる。発酵プロセスとは、培地に含まれる糖を基質とし、上記微生物による乳酸発酵によって乳酸を生成する工程をいう。
なお、この発酵プロセスにおいて上記微生物が基質として利用する糖類は、特に限定されないが、種々の糖化原料から糖化プロセスによって得られる多糖類、オリゴ糖及び単糖類を挙げることができる。糖化プロセスは、一般的に、炭素源、窒素源、及びその他の栄養分を含む発酵原料を、乳酸発酵に好適な糖に変換する工程である。糖化原料としては、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉等の澱粉類、アミロースを含む生ごみ、植物バイオマス等のセルロース等が挙げられる。これらの糖化原料は、破砕機等で破砕し、細分化する等の前処理が施されても良い。
糖化プロセスでは、細分化された糖化原料を消化する酵素を投入することで、糖化原料の一部又は全部を多糖類、オリゴ糖あるいは単糖類にまで分解することができる。消化酵素としては、アミラーゼやセルラーゼを挙げることができる。これら消化酵素による分解処理は、消化酵素の至適温度、例えば約40℃〜約60℃で行われる。これにより、糖化原料が加水分解され、グルコース、マルトース、オリゴ糖や多糖類に変換される。アミラーゼは、工業的にはアスペルギルス・オリゼーや枯草菌等の微生物の生産物として得ることができる。また、得られた糖類を含む溶液には、糖類以外の不純物が含まれている。この場合、例えば遠心分離等で固液分離することで、糖化されなかった澱粉、アミロース等の固形分を除去し、デカンターにより油膜除去した後、液体クロマトグラフィー処理を行うことで、糖類を主に含む溶液を生成することができる。この溶液を発酵プロセスに使用することができる。また、糖化プロセスを経て糖類を含む溶液を生成する代わりに、ショ糖、甜菜糖、廃糖蜜等の糖蜜類を原料として用いることもできる。
好適な乳酸発酵の原料の例として、糖化プロセスで得られた糖類を含む発酵培地の他に、ポリ乳酸の製造過程で得られる乳酸材料を含む再循環系、又は乳酸材料を含有する溶液を調製するため加水分解した再循環ポリ乳酸(例えば、消費者より回収した廃棄物(post−consumer waste)又はポリ乳酸の製造過程で生じた廃棄物)が挙げられる。
発酵プロセスでは、炭酸カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの存在下で、糖類を原料として乳酸発酵を行うことにより、生合成された乳酸が溶液中に乳酸カルシウムとして生成する。その際の糖類の濃度は通常10〜20重量%とすることが好ましい。
乳酸発酵は、細菌類、菌類又は酵母等、代謝によって乳酸を生成する微生物を用いて行うことができる。このような微生物としては、本来的に乳酸発酵能を有する微生物、あるいは乳酸発酵に関与する遺伝子(遺伝子群)が導入され、乳酸発酵能を付与された微生物のいずれも使用することができる。
乳酸発酵能を有する微生物としては、通常は、ラクトバチルス属の細菌が使用される。菌類に関しては、リゾープス属の菌類が使用される。好適な酵母としては、サッカロミセス・セレビシエ等のサッカロミセス属の酵母が使用される。
乳酸発酵は、細菌発酵に関しては、通常、約30℃〜約60℃、酵母発酵に関しては、通常、約20℃〜約45℃の温度範囲で行われる。菌類発酵に関しては、その温度範囲は広範であるが、約25℃〜約50℃の範囲内であることが多い。
発酵プロセスにおいて、乳酸発生に伴うpH低下により、微生物の機能低下を生ずることがある。これを防ぐため、一般的にpH調整剤として、通常、水酸化アルカリ又は水酸化アルカリ土類(水酸化カルシウム)、炭酸カルシウム、石灰乳、アンモニア水、又はアンモニアガスをpH調整剤として添加し、中性を保つ。pH調整剤の添加に伴い、pH調整剤の陽イオンが解離乳酸と結合し、乳酸塩が生成される。特に本発明においては、pH調整剤として、カルシウム塩、すなわち炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等を、乳酸発酵溶液に添加する。これにより、発酵により生成された乳酸が乳酸カルシウムの形態で存在し、乳酸発酵によるpHの低下が防止されるため、乳酸発酵を継続することができる。
以上のように、発酵原料を微生物で発酵させることにより、乳酸を乳酸カルシウムの形態で含有する乳酸カルシウム含有溶液を得る。通常、乳酸カルシウム含有溶液には、不純物と呼ばれる乳酸以外の化合物が含まれるため、遠心分離等の手法を用いて固液分離し、固体分を除去する。不純物の一例として、細胞片、残留炭水化物、栄養分等が挙げられる。不純物は、最終的に得られる精製乳酸の用途によって適宜、所定の濃度以下となるように除去される。発酵液中の乳酸濃度は、製造方法に依存する。バッチ方式の場合には、糖類がほぼ100%の収率で乳酸に変換されるが、連続方式(発酵液を連続抜出、糖類を連続供給)の場合には、3〜6重量%の濃度であると効率が良い。
次に、イオン交換樹脂塔を用いる本発明に係る精製プロセスに先立ち、必要に応じて、不純物を除去した乳酸カルシウム含有溶液の濃縮を実施する。この濃縮工程は、乳酸カルシウム含有溶液に含まれる乳酸カルシウム濃度を高める処理であり、逆浸透膜(RO膜)等により大きな熱エネルギーを用いずに濃縮する方法が望ましい。これにより、精製時の乳酸の収率を増加させることができると同時に、後段の精製プロセスにおける蒸留工程での被処理液量を低減し、精製プロセス全体での処理エネルギーコストを低減することができる。また、蒸留塔における濃縮は分離性に優れるものの、被処理液を高温で保持する必要があり、熱エネルギーの問題だけでなく、乳酸の光学純度低下の要因ともなり得る。本発明の脱塩方式を採用することで、蒸留工程における乳酸の劣化が抑制され、ポリ乳酸製造時の原料収率が向上する。また、イオン交換による脱塩工程の前に乳酸カルシウムの濃縮を行うことで、乳酸発酵液中の不純物濃度も増大する。その結果、イオン交換樹脂に対する不純物金属イオンの吸着速度が増大し、高い空塔速度で脱塩処理が可能となる利点がある。ただし、RO膜による濃縮では、濃縮対象である乳酸カルシウムの濃度が溶解度以上となって析出しないよう、配慮が必要である。なお、上記濃縮工程は必要に応じて省略し、後段の蒸留工程において集中的に乳酸濃縮を行うこともできる。
また、RO膜を用いる濃縮は、乳酸発酵後の乳酸カルシウム含有溶液をほとんど加熱/冷却する必要がないため、乳酸カルシウム含有溶液に不要な熱履歴を加えることがなく、このため、熱履歴に起因する乳酸の光学異性化を低減することができる。ここで、光学異性化とは、L型乳酸とD型乳酸との間の変換(異性化)反応を意味する。工業用途によっては、乳酸の光学純度が重要となる。一例として、食品用途にはL型の光学純度が95%以上であることが必要である。微生物による発酵においては、いずれかの光学異性体を主に生産する。例えば、ラクトバチルス・デルブリュッキは主にD−乳酸を生産し、ラクトバチルス・カゼイは主にL−乳酸を生産する。なお、95%の光学純度とは、含有する乳酸もしくは乳酸塩のうち、95%が2つの光学異性体(L型、D型)のいずれか一方であることを意味する。
このため、乳酸の光学純度は用途によっては重要であり、濃縮工程や蒸留工程における加熱処理により低下することがある。したがって、上述したRO膜による濃縮工程は、熱履歴を極力小さくでき、光学異性化を抑制し、乳酸の光学純度を高く維持することができるため好ましい。
以上のような濃縮工程の後、得られた乳酸カルシウム濃縮液に硫酸を添加し、カルシウムイオンを硫酸カルシウムとして分離する。すなわち、乳酸カルシウム濃縮液を酸性化し、乳酸カルシウムの形態で溶液に含まれる乳酸を、解離形態、すなわち塩形態から非解離の酸形態へと変換する。乳酸カルシウムを遊離乳酸へと変換する方法としては、例えば、硫酸等の強鉱酸を濃縮溶液へ添加する方法を挙げることができる。硫酸を乳酸カルシウム濃縮液に添加することにより、硫酸カルシウムと共に遊離乳酸が生成する。硫酸カルシウムは水にほとんど不溶解のため、結晶化により容易に除去することができる。硫酸カルシウムの結晶化及び濾過の方法としては公知のものを用いることができる。例えば、回転ドラム式減圧フィルタ、遠心分離器等により硫酸カルシウムを除去することができる。
次に、硫酸カルシウムを除去した後、溶液に含まれる不純物イオンを除去するため、直列式陽イオン交換樹脂塔と陰イオン交換樹脂塔とを用いた脱塩工程を実施する。まず、硫酸カルシウムを除去した溶液中に残留するカルシウムイオンや、発酵原料に不純物として含まれるナトリウム、カリウム、マグネシウム等の金属陽イオンを、陽イオン交換により除去する。必要に応じて、陽イオン交換の前段に、活性炭による微粒子吸着工程を挿入しても良い。陽イオン交換においては、上記乳酸溶液中の金属陽イオンを、水素イオンで置換するイオン交換樹脂と接触させることによって除去する。陽イオン交換の結果、固形物として析出した金属イオンは、沈降分離等を用いて固液分離し、溶液から除去する。金属イオンを除去した溶液に含まれる、発酵過程の副生成物である乳酸以外の硫酸イオン及び比較的低分子量の有機酸陰イオン、例えば酢酸イオン、ギ酸イオン等は陰イオン交換法によって除去することができる。硫酸イオン及び有機酸陰イオンは、硫酸イオン及び有機酸陰イオンをヒドロキシルイオンで置換する陰イオン交換樹脂と接触させることによって除去する。陰イオン交換は、通常、一段の樹脂塔で行われるが、必要に応じて複数段の樹脂塔により行っても良い。
本脱塩工程では、発酵により得られた乳酸溶液を、陽イオン交換樹脂を用いた樹脂塔を直列に複数段設置したシステムを用いて、金属陽イオンを除去する。その際、上記の樹脂塔システムにおいて、初段の樹脂塔でカルシウムイオンを吸着除去し、後段の樹脂塔で残りの陽イオンを除去することを特徴とする。初段の樹脂塔でカルシウムイオンの漏洩が発生する破過状態になると、その時点までに、カルシウムイオンよりも吸着選択性の低いアルカリ金属イオン等の陽イオンが初段の樹脂塔から排出される処理液中に漏洩している。その際に、後段の陽イオン交換樹脂塔がバックアップとして機能し、これらを吸着除去することができ、脱塩工程終了後の乳酸処理液に陽イオン系の不純物が許容できない高濃度で含まれる事象が抑制される。初段の、カルシウムイオンに対する吸着選択性が比較的大きい陽イオン交換樹脂は通常、架橋度が8〜14%程度のものを選択すると良い。架橋度がある程度大きいイオン交換樹脂では、樹脂表面における吸着孔径が小さく密に存在する。孔径が小さいことは、吸着できるイオンが水和半径の小さなものに限られることを意味する。逆に、後段の樹脂塔にはカルシウムイオンに対する吸着選択性の低い陽イオン交換樹脂を用いることが望ましく、そのようなイオン交換樹脂の架橋度は4%以下のものを選択すると良い。これは、低架橋度の樹脂では、表面の吸着孔径が比較的大きく、水和イオン半径が吸着選択性に及ぼす影響が小さくなる傾向があるためである。また、複数の陽イオン交換樹脂塔において、ある特定の樹脂塔とその後段の樹脂塔との間、例えば初段の樹脂塔と二段目の樹脂塔との間で、初段の樹脂塔から排出される処理液へのカルシウムイオンの漏洩を検知するための計測を行うことで、初段の樹脂塔が破過して再生処理が必要となる時点を判断することができる。後段の樹脂塔はその際、必要に応じて再生処理すれば良い。上記システムにおいては、後段の樹脂塔は基本的に初段のバックアップが目的であり、乳酸発酵プロセスで混入するカルシウムイオン以外の金属イオン量や被脱塩処理液のpHが明確であれば、それに応じて後段の樹脂塔の規模を必要最小限にすることができる。なお、カルシウムイオン濃度は、実質的に硫酸カルシウムの溶解度に支配されるため、乳酸発酵プロセスにおいて混入するカルシウム量には依存しない。後段の樹脂塔の規模に関して、例えば乳酸発酵液単位量当りのナトリウムイオン濃度が1であり、カルシウムイオンによる初段の樹脂塔の破過が乳酸発酵液の処理量として100単位量に到達すると発生する場合、当該pH値における後段の樹脂塔のナトリウムイオン吸着容量が100になる規模に設定すると、初段の再生処理に合わせて、後段の再生処理を行うことができる(実際には、もう少し余裕を持たせた設備規模とすることが好ましい)。初段の樹脂塔と二段目の樹脂塔との間でカルシウムイオン漏洩を検知するための簡便な計測・モニター方法としては、電気伝導度、pH、糖度(屈折率)等を測定する方法が挙げられる。これらの中では、電気伝導度による方法がカルシウムイオンの漏洩に対する感度が強いため望ましい。乳酸製造プラントの連続運転においては、このような直列に設置された複数の陽イオン交換樹脂塔を有するシステムを、複数系統並列に備えることが望ましい。これにより、ある樹脂塔の再生処理が必要となった段階で、通液可能な別の樹脂塔システムに処理系統を切り替え、プラントの連続運転を妨げることを回避できる。
次に、不純物を除去した後、溶液に含まれる水分を除去して乳酸を濃縮する。この濃縮工程には、減圧、遠心薄膜化等による加熱濃縮等の手法を用いることができる。濃縮工程の温度は約60℃〜約150℃、圧力は4kPa〜10kPa程度が望ましい。濃縮工程により80重量%の乳酸溶液を得ることができる。濃縮の後、蒸留精製により、さらに有機物系の不純物を除去することができる。蒸留には、蒸留塔等の公知の手段を用いることができる。蒸留塔を用いた場合、蒸留温度は60℃〜130℃、蒸留圧力は500Pa〜2000Pa程度とすることが望ましい。蒸留塔は複数用いることができ、通常1〜5基程度が用いられる。蒸留精製により90重量%の乳酸溶液を得ることができる。本発明では、上述した乳酸カルシウム含有溶液に対して逆浸透膜を用いた濃縮を行う場合、加熱による濃縮、蒸留での水分除去量は、逆浸透膜濃縮を用いない場合に比べて低減されるので、省エネルギーを実現できる。蒸留精製工程では高温処理が必要であるため、蒸留時の熱履歴に起因して、僅かながら光学異性体が発生する恐れがある。また、溶液に含まれる不純物の熱劣化に伴い、溶液の色調が濃くなる場合がある。これらに対する仕上げ工程として、以下のような手法を用いることができる。すなわち、発生した光学異性体は、限外濾過膜を用いて除去することができる。例えば、1〜2μm径、0.2〜0.5μm径の限外濾過膜を順に通すことで、99%以上の光学純度を得ることができる。不純物の熱劣化については、着色を低減する目的で、必要に応じて活性炭やイオン交換樹脂等を用いた追加の分離工程を行っても良い。使用目的によって、必要であれば、蒸留、液体クロマトグラフィー等でさらに精製、濃縮を行っても良い。
以上に説明したような、精製乳酸の製造方法に含まれる糖化プロセス及び発酵プロセス、並びに精製プロセスの一実施形態のフローチャートを、それぞれ図3及び4に示す。図3及び4に示すように、まず澱粉等の糖化原料を原料破砕工程1にて破砕し、糖化工程2においてアミラーゼ等の糖化酵素を添加することにより糖化し、未反応の澱粉を固液分離工程3で除去する。続く発酵プロセスにおける乳酸発酵工程11では、得られた糖化液に乳酸菌とpH調整剤として水酸化カルシウムとを添加し、発酵により乳酸を乳酸カルシウムとして含む乳酸カルシウム含有溶液を得る。乳酸カルシウム含有溶液に含まれる固形分を固液分離工程12で分離し、逆浸透膜濃縮工程13にて水分を除去する。次に、図4の精製プロセスにおいて、酸性化工程21において濃縮溶液を硫酸で酸性化し、カルシウムイオンを硫酸カルシウムとして晶析させ、固液分離工程22で分離する。次に、得られた酸性化溶液を陽イオン交換工程23に通し、ナトリウム、マグネシウム等の発酵原料由来の金属イオンや、析出によって除去できなかったカルシウムイオンを金属塩とし、固液分離工程24にて除去する。さらに陰イオン交換工程25にて、不純物に起因する有機酸イオン等を除去し、加熱濃縮工程26並びに蒸留塔による蒸留精製工程27を経て、90重量%乳酸溶液を得る。陽イオン交換工程23と陰イオン交換工程25は、再生処理時にプラントを停止させないため、並列に複数の系統を所有していることが望ましい。最後に、得られた精製乳酸溶液に含まれる光学異性体を、仕上げ工程28により除去し、光学純度99.5%以上の精製乳酸溶液を得ることができる。
図5は、陽イオン交換工程23の詳細を示す図である。はじめに、弁31、34、39、42が開いており、弁33、35、38、40、51、53、54、55、58、59、60、62、72、73、76は閉じているものとする。また、ポンプ45、46、56、61、65、66、74は停止、ポンプ30、36、41は稼動しているものとする。第一陽イオン交換塔32と第三陽イオン交換塔52は、主に乳酸溶液中のカルシウムイオンを除去するためのもので、架橋度8〜14%程度の陽イオン交換樹脂を用いることが望ましい。また、第二陽イオン交換塔37と第四陽イオン交換塔57は、主にカルシウム以外の陽イオンを除去するためのもので、架橋度4%以下の陽イオン交換樹脂を用いることが望ましい。
固液分離工程22から送られてきた乳酸溶液は、ポンプ30により第一陽イオン交換塔32の上部に供給される。乳酸溶液は第一陽イオン交換塔32の内部を重力により流れ落ちて第一陽イオン交換塔32の下部から排出された後、ポンプ36によって第二陽イオン交換塔37の上部に供給される。乳酸溶液は第二陽イオン交換塔37の内部を重力により流れ落ちて第二陽イオン交換塔37の下部から排出された後、ポンプ41により固液分離工程24へ供給される。第一陽イオン交換塔32では初め、全ての陽イオンが吸着除去される。しかし、塔内の吸着容量が消費されると、吸着選択性の小さなアルカリ金属等の陽イオンから順番に第一陽イオン交換塔32から漏洩し始める。第一陽イオン交換塔32から漏洩した陽イオンは、第二陽イオン交換塔37において吸着除去される。第一陽イオン交換塔32からカルシウムイオンが漏洩し始めた段階で、電気伝導度の測定等によるカルシウムイオン漏洩モニター47が検知する。これにより、第一陽イオン交換塔32からのカルシウムイオン漏洩確認を受け、弁31、34、39、42を閉じ、代わりに弁51、54、59、62を開く。合わせて、ポンプ36、41を停止し、代わりにポンプ56、61を稼動させる。これにより、固液分離工程22から送られてきた乳酸溶液は、ポンプ30により第三陽イオン交換塔52の上部に供給される。乳酸溶液は第三陽イオン交換塔52の内部を重力により流れ落ちて第三陽イオン交換塔52の下部から排出された後、ポンプ56により第四陽イオン交換塔57の上部に供給される。乳酸溶液は第四陽イオン交換塔57の内部を重力により流れ落ちて第四陽イオン交換塔57の下部から排出された後、ポンプ61により固液分離工程24へ供給される。
一方、第一陽イオン交換塔32については、その間、酸による再生処理を行う。バルブ72、33、35を開くと共に、ポンプ74、45を稼動させる。再生薬剤供給タンク71から、再生薬剤(硫酸等)がポンプ74によりノズル43を経由して第一陽イオン交換塔32の上部から供給される。供給された再生薬剤は、第一陽イオン交換塔32の内部を重力により流れ落ちて第一陽イオン交換塔32の下部から排出された後、ポンプ45により酸廃液タンク75に供給される。所定の再生処理が終了した段階で、バルブ72、33、35を閉じると共に、ポンプ74、45を停止させる。第二陽イオン交換塔37についても、必要に応じて第一陽イオン交換塔32と同様に、酸による再生処理を行う。バルブ72、38、40を開くと共に、ポンプ74、46を稼動させる。再生薬剤供給タンク71から、再生薬剤(硫酸等)がポンプ74によりノズル44を経由して第二陽イオン交換塔37の上部から供給される。供給された再生薬剤は第二陽イオン交換塔37の内部を重力により流れ落ちて第二陽イオン交換塔37の下部から排出された後、ポンプ46により酸廃液タンク75に供給される。所定の再生処理が終了した段階で、バルブ72、38、40を閉じると共に、ポンプ74、46を停止させる。
以下同様に、カルシウムイオン漏洩モニター67により第三陽イオン交換塔52からのカルシウムイオン漏洩の検知を受け、弁51、54、59、62を閉じ、代わりに弁31、34、39、42を開く。合わせて、ポンプ56、61を停止し、代わりにポンプ36、41を稼動させる。これにより、固液分離工程22から送られてきた乳酸溶液はポンプ30により第一陽イオン交換塔32の上部に再び供給される。乳酸溶液は第一陽イオン交換塔32の内部を重力により流れ落ちて第一陽イオン交換塔32の下部から排出された後、ポンプ36により第二陽イオン交換塔37の上部に供給される。乳酸溶液は第二陽イオン交換塔37の内部を重力により流れ落ちて第二陽イオン交換塔37の下部から排出された後、ポンプ41により固液分離工程24へ供給される。そして、第三陽イオン交換塔52については、その間、酸による再生処理を行う。バルブ72、53、55を開くと共に、ポンプ74、65を稼動させる。再生薬剤供給タンク71から、再生薬剤(硫酸等)がポンプ74によりノズル63を経由して第三陽イオン交換塔52の上部から供給される。供給された再生薬剤は第三陽イオン交換塔52の内部を重力により流れ落ちて第三陽イオン交換塔52の下部から排出された後、ポンプ65により酸廃液タンク75に供給される。所定の再生処理が終了した段階で、バルブ72、53、55を閉じると共に、ポンプ74、65を停止させる。第四陽イオン交換塔57についても、必要に応じて第三陽イオン交換塔52と同様に、酸による再生処理を行う。バルブ72、58、60を開くと共に、ポンプ74、66を稼動させる。再生薬剤供給タンク71から、再生薬剤(硫酸等)がポンプ74によりノズル64を経由して第四陽イオン交換塔57の上部から供給される。供給された再生薬剤は第四陽イオン交換塔57の内部を重力により流れ落ちて第四陽イオン交換塔57の下部から排出された後、ポンプ66により酸廃液タンク75に供給される。所定の再生処理が終了した段階で、バルブ72、58、60を閉じると共に、ポンプ74、66を停止させる。
酸廃液タンク75の内部に蓄えられた酸廃液の量が所定の値に達したところで、弁76を開き、酸廃液を排出する。酸廃液を排出後、弁76は閉じられる。酸廃液タンク75から排出された酸廃液は、陰イオン交換工程25において同様に発生する再生薬剤の廃液(通常、苛性ソーダ等のアルカリ廃液)と混合、中和され、無機塩(硫酸ソーダ等)を含む廃液として、系外放出される。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
グルコース水溶液を原料とし、ラクトバチルス属の細菌と共に発酵槽へ投入し、発酵させた。上記発酵槽に水酸化カルシウムを中和剤として添加し、pHを6.2〜6.8に保った。発酵温度は52℃に設定し、72時間発酵させた。得られた乳酸発酵液中の乳酸濃度は、乳酸カルシウム濃度として計測した場合、4.5重量%存在した。なお、乳酸カルシウムの濃度については、液体クロマトグラフィー(日立ハイテクノロジーズ社製、LaChrom L−7000)を用いて測定した。上記乳酸発酵液を、発酵温度である50℃を保持したまま、逆浸透膜(GE Water Technologies社製、Duratherm HWS RO HR)を用いて圧力3MPaにて水分を除去した。その結果、乳酸カルシウム濃度として計測した乳酸濃度が20重量%である濃縮乳酸発酵液が得られた。得られた乳酸発酵液を42℃に冷却し、98%硫酸溶液を加え、溶液中のカルシウムイオンを硫酸カルシウムとして結晶化させた。硫酸カルシウムの結晶は遠心分離により分離した。42℃における硫酸カルシウムの溶解度は3g/Lであり、溶解度以上の硫酸カルシウムは固体として分離することができる。
(実施例1)
グルコース水溶液を原料とし、ラクトバチルス属の細菌と共に発酵槽へ投入し、発酵させた。上記発酵槽に水酸化カルシウムを中和剤として添加し、pHを6.2〜6.8に保った。発酵温度は52℃に設定し、72時間発酵させた。得られた乳酸発酵液中の乳酸濃度は、乳酸カルシウム濃度として計測した場合、4.5重量%存在した。なお、乳酸カルシウムの濃度については、液体クロマトグラフィー(日立ハイテクノロジーズ社製、LaChrom L−7000)を用いて測定した。上記乳酸発酵液を、発酵温度である50℃を保持したまま、逆浸透膜(GE Water Technologies社製、Duratherm HWS RO HR)を用いて圧力3MPaにて水分を除去した。その結果、乳酸カルシウム濃度として計測した乳酸濃度が20重量%である濃縮乳酸発酵液が得られた。得られた乳酸発酵液を42℃に冷却し、98%硫酸溶液を加え、溶液中のカルシウムイオンを硫酸カルシウムとして結晶化させた。硫酸カルシウムの結晶は遠心分離により分離した。42℃における硫酸カルシウムの溶解度は3g/Lであり、溶解度以上の硫酸カルシウムは固体として分離することができる。
硫酸カルシウム固体を分離した酸性化乳酸溶液(pH1.5)を、第一陽イオン交換樹脂塔(三菱化学社製、強酸性陽イオン交換樹脂ダイヤイオンPK220、架橋度11%)及び第二陽イオン交換樹脂塔(三菱化学社製、強酸性陽イオン交換樹脂ダイヤイオンPK208、架橋度4%)に流通させた。その後、遠心分離により金属塩を除去した。続いて陰イオン交換樹脂塔(三菱化学社製、弱塩基性陰イオン交換樹脂ダイヤイオンWA30)に流通させ、その後の遠心分離により、硫酸塩、有機酸塩を除去した。陰イオン交換樹脂については、高濃度の乳酸液の流通に伴う樹脂の急激な膨潤の影響を回避するため、前処理として濃度1%の乳酸水溶液を樹脂に流通させることで、樹脂の緩やかな膨潤を誘導した。以上のようなイオン交換樹脂を用いた精製により、残留カルシウムイオンと、発酵原料由来のナトリウム、カリウム、マグネシウム等の陽イオン、発酵時に生成する不純物としての硫酸イオン、有機酸イオンを50meq/Lまで低減することができた。
第一陽イオン交換樹脂塔においては、当初陽イオンの漏洩がない時間帯が継続した後、ナトリウム、カリウム、カルシウムの順にイオンの漏洩が開始された。しかし、その際でも、第二陽イオン交換樹脂塔を経た処理液からは各種陽イオンの漏洩は認められなかった。第一陽イオン交換樹脂塔において、カルシウムイオンの漏洩開始時刻はナトリウムイオンの漏洩開始時刻の約二倍程度の時間経過があった後に認められ、イオン濃度は140ppm程度に到達した。その際、カルシウム濃度の上昇にあわせて、モニターしていた電気伝導度が有意に上昇し、この段階で硫酸によるイオン交換樹脂の再生処理を行った。また、第二陽イオン交換樹脂塔についても、合わせてイオン交換樹脂の再生処理を行った。これにより、各陽イオン交換樹脂塔の吸着能力は回復した。
イオン交換処理後の溶液を、100℃、10kPaにて加熱濃縮し、80重量%の乳酸溶液を得た。濃縮した乳酸溶液を、130℃、1kPaで蒸留し、不純物を除去すると共に、90重量%の乳酸溶液を得た。得られた90重量%乳酸溶液を、2μm径、0.5μm径の限外濾過膜を順に通すことで、99.5%の光学純度を得た。測定は液体クロマトグラフィーにより実施した。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、図5等においては、2つの陽イオン交換樹脂塔を直列に設置する場合について説明したが、これに限定されず、3つ以上の陽イオン交換樹脂塔を直列に設置しても良い。その場合、溶液へのカルシウムイオンの漏洩の検知は、通常は初段の樹脂塔と2段目の樹脂塔との間で行うが、必要に応じて、2段目以降の樹脂塔とそれより後段の樹脂塔との間で検知を行っても良い。その他、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることが可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1 原料破砕工程
2 糖化工程
3 固液分離工程
11 乳酸発酵工程
12 固液分離工程
13 逆浸透膜濃縮工程
21 酸性化工程
22 固液分離工程
23 陽イオン交換工程
24 固液分離工程
25 陰イオン交換工程
26 加熱濃縮工程
27 蒸留精製工程
28 仕上げ工程
31、33、34、35、38、39、40、42、51、53、54、55、58、59、60、62、72、73、76 弁
30、36、41、45、46、56、61、65、66、74 ポンプ
32 第一陽イオン交換塔
37 第二陽イオン交換塔
52 第三陽イオン交換塔
57 第四陽イオン交換塔
47、67 カルシウムイオン漏洩モニター
71 再生薬剤供給タンク
75 酸廃液タンク
2 糖化工程
3 固液分離工程
11 乳酸発酵工程
12 固液分離工程
13 逆浸透膜濃縮工程
21 酸性化工程
22 固液分離工程
23 陽イオン交換工程
24 固液分離工程
25 陰イオン交換工程
26 加熱濃縮工程
27 蒸留精製工程
28 仕上げ工程
31、33、34、35、38、39、40、42、51、53、54、55、58、59、60、62、72、73、76 弁
30、36、41、45、46、56、61、65、66、74 ポンプ
32 第一陽イオン交換塔
37 第二陽イオン交換塔
52 第三陽イオン交換塔
57 第四陽イオン交換塔
47、67 カルシウムイオン漏洩モニター
71 再生薬剤供給タンク
75 酸廃液タンク
Claims (3)
- 発酵により得られた乳酸を乳酸カルシウムの形態で含有する乳酸カルシウム含有溶液を濃縮精製する精製乳酸の製造方法であって、
乳酸カルシウム含有溶液に硫酸を添加し、カルシウムイオンを硫酸カルシウムとして分離する工程、及び
硫酸カルシウムを分離した溶液を、直列に設置された複数の陽イオン交換樹脂塔、及び陰イオン交換樹脂塔に供給し、不純物を除去する工程
を含む前記精製乳酸の製造方法。 - 直列に設置された複数の陽イオン交換樹脂塔における、樹脂塔とその後段の樹脂塔との間で、溶液へのカルシウムイオンの漏洩を検知する請求項1に記載の精製乳酸の製造方法。
- 直列に設置された複数の陽イオン交換樹脂塔において、後段の樹脂塔のカルシウムイオンに対する吸着選択性が、初段の樹脂塔に比べて低い請求項1又は2に記載の精製乳酸の製造方法。
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