JP2012250289A - 熱延薄鋼板の冷却方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】急速冷却時および/または低温巻取り時でのランアウトテーブル上での不均一冷却を抑制することにより、平坦度が優れ、かつ高強度化に適した熱延薄鋼板の冷却方法を提供することである。
【解決手段】板厚が5mm以下の鋼板Pを、仕上げ圧延後のランアウトテーブル3上で冷却するにあたり、良好な平坦度を実現するために、600℃以上の膜沸騰冷却が支配的となる前段側温度域と、冷却が不安定になりやすい600℃以下の遷移沸騰領域または核沸騰領域が支配的となる後段側温度域とで、それぞれの温度域毎に、例えば、前段側50〜200℃/s、後段側30〜110℃/sと、前段側を後段側よりも大きく定めた冷却速度範囲内で、冷却を行うようにしたのである。それにより、局部過冷による不均一冷却が抑制され、平坦度が良好で、かつ材質上所要の急速冷却および低温巻取りを実現することができ、通板および巻取りトラブルも防止される。
【選択図】 図1
【解決手段】板厚が5mm以下の鋼板Pを、仕上げ圧延後のランアウトテーブル3上で冷却するにあたり、良好な平坦度を実現するために、600℃以上の膜沸騰冷却が支配的となる前段側温度域と、冷却が不安定になりやすい600℃以下の遷移沸騰領域または核沸騰領域が支配的となる後段側温度域とで、それぞれの温度域毎に、例えば、前段側50〜200℃/s、後段側30〜110℃/sと、前段側を後段側よりも大きく定めた冷却速度範囲内で、冷却を行うようにしたのである。それにより、局部過冷による不均一冷却が抑制され、平坦度が良好で、かつ材質上所要の急速冷却および低温巻取りを実現することができ、通板および巻取りトラブルも防止される。
【選択図】 図1
Description
この発明は、平坦度の良好な熱延薄鋼板を製造するための仕上げ圧延後の冷却方法に関する。
近年、環境問題等から、自動車の車体軽量化技術の重要性が増大している。鉄鋼材料では、軽量化および安全性の要求に対応するため、高強度化等の材料特性の向上が重視され、鋼板の高強度化による薄肉化が試みられている。成形性を損なわずに鋼板を高強度化するための、例えば、残留オーステナイト相を含む複合組織鋼板の組織制御には、一般に、仕上げ圧延後の急速冷却を伴うため、薄鋼板、とくに、板厚が5mm以下の薄鋼板の場合に、仕上げ圧延後に急速な冷却を行うと、鋼板の平坦度が乱れて、ランアウトテーブル上での圧延材の走行安定性が阻害され、巻取り不良などの通板トラブルが発生する。また、走行中平坦度が乱れると、均一冷却が困難となるため、所定の巻取り温度で巻取ることが難しくなり、良好な平坦度を求めるユーザーには出荷できない。このため、巻取り後に矯正工程を追加せざるを得なくなり、製造コストが上昇して経済性が低下したり、材料特性が損なわれたりする。
従来、平坦度の良好な鋼板の製造方法について、例えば、仕上げ温度Ar3以上、巻取り温度660℃以下で熱間圧延を行ない、その後に所要の温度で連続焼鈍を行なう方法(特許文献1参照)や、仕上げ圧延終了後に、600℃以下の温度域にまでを所要の冷却速度で冷却する方法(特許文献2参照)など、数多く提案されている。また、高温の鋼板を均一に冷却し、温度むらの発生を抑制して冷却後の平坦度の良好な鋼板の製造方法として、仕上げ冷却を前段冷却と後段冷却の2段階に分け、前段冷却を全面膜沸騰冷却で、後段冷却を核沸騰冷却で行う冷却方法が提案されている(特許文献3参照)。
しかし、特許文献1、2に開示された冷却方法では、熱延仕上げ温度から600℃近傍の温度域での冷却制御にしか着目されていなく、冷却能力が大きくなるより低温域での冷却制御については考慮されていなく、例えば、組織制御上、低温巻取りが必要な場合には必ずしも良好な平坦度を実現できるとは言えない。また、特許文献3に開示された冷却方法では、対象が厚鋼板であり、また、それぞれの冷却段階で所要の冷却速度の範囲が開示されておらず、前後段の2段冷却を行なうだけで、熱延薄鋼板、とくに低温巻取りを要する薄鋼板で良好な平坦度を実現できるとは言い難い。
そこで、この発明の課題は、仕上げ圧延後の冷却速度を制御することにより、急速冷却時および/または低温巻取り時でのランアウトテーブル上での不均一冷却を抑制することにより、平坦度が優れ、かつ高強度化に適した熱延薄鋼板の冷却方法を提供することである。
前記の課題を解決するために、この発明では以下の構成を採用したのである。
即ち、請求項1に係る熱延薄鋼板の冷却方法は、仕上げ圧延後のランアウトテーブル上での、良好な平坦度を実現する熱延薄鋼板の冷却方法であって、前記鋼板の板厚が5mm以下であり、600℃を境として、それよりも高温側を前段側温度域とし、低温側を後段側温度域とし、前段側温度域を主冷却域とする前段側冷却速度および後段側温度域を主冷却域とする後段側冷却速度を、それぞれの温度域毎に定められた冷却速度範囲内にして前記鋼板を冷却することを特徴とする。
このように、鋼板の冷却速度を、比較的安定して冷却が行われる600℃以上の膜沸騰冷却が支配的となる前段側温度域と、冷却が不安定になりやすい600℃以下の遷移沸騰領域または核沸騰領域が支配的となる低温側温度域とで、それぞれの温度域毎に定めた冷却速度範囲内で、上記の両温度域を主冷却域とする冷却をそれぞれ行うことにより、局部過冷による不均一冷却が抑制され、平坦度が良好で、かつ所要の急速冷却および巻取り温度を実現することができる。なお、鋼板の板厚上限を5mmと規定した理由は、5mmを超える鋼板では、板厚が厚いため、急冷しても平坦度があまり乱れないことによる。ここで、主冷却域とするとは、実際の冷却過程で、前段側での冷却終了温度および後段側での冷却開始温度が、両温度域の境界とした温度である600℃から前後しても、主要冷却温度域がそれぞれ前記前段側および後段側温度域にあると見なせる場合をいう。
請求項2に係る熱延薄鋼板の冷却方法は、上記前段側温度域での冷却速度を、前記後段側温度域での冷却速度よりも大きくした冷却方法である。
前記前段側温度域は、比較的安定して冷却が行われる膜沸騰温度域であるため、冷却が不安定になる遷移沸騰または核沸騰温度域である後段側温度域での冷却速度よりも大きくすることにより、組織制御に必要な冷却速度および所要の巻取り温度を確保し、かつ平坦度の乱れを防止することが可能となる。
請求項3に係る熱延薄鋼板の冷却方法は、上記前段側温度域での冷却速度が50〜200℃/sの範囲にあり、後段側温度域での冷却速度が30〜110℃/sの範囲にある冷却方法である。
このように、板厚が5mm以下の薄鋼板では、前段側温度域での冷却速度の上限を200℃/sとし、後段側温度域での冷却速度の上限を110℃/sとすることにより、平坦度の乱れのない良好な状態で、前記薄鋼板を巻取ることができる。なお、前段側温度域および後段側温度域でのそれぞれの冷却速度の下限は、材質上の要求から規定されるものである。
請求項4に係る熱延薄鋼板の冷却方法は、上記鋼板が、Siを0.8%以上含有する鋼板である場合の冷却方法である。
前記薄鋼板には、高強度とともに、伸びフランジ性などの良好な成形性が要求されており、Siは、この伸びフランジ性を劣化させずに強度を向上させるのに有効な元素である。しかし、Si量が0.8%以上と多くなると、鋼鈑表面のスケールにより表面性状が劣化して、不均一冷却が発生しやすくなり、板平坦度がわるくなるため、上述のような冷却方法が有効である。
この発明では、板厚が1〜5mmの薄鋼鈑の仕上げ圧延後のランアウトテーブル上での冷却を、膜沸騰領域が支配的な前段側温度域と、遷移沸騰または核沸騰領域が支配的な後段側温度域とに分け、それぞれの温度域で冷却速度範囲を規定するようにしたので、不均一冷却が抑制されて平坦度の乱れが防止される。また、それぞれの冷却域で冷却速度の上下限を規定するとともに、冷却状態が比較的安定している前段側での冷却速度を、不安定になりやすい後段側での冷却速度よりも大きくすることにより、高強度化等の材質特性上の要求から、急速冷却や低温巻き取りを行なう場合でも、良好な平坦度の状態で前記薄鋼板を巻取ることができる。それにより、製品の材質特性を損なうことなく、ランアウトテーブル上での走行安定性の阻害や巻取り不良などの通板トラブルが防止される。また、良好な平坦度を求めるユーザーに対しても、矯正工程を経ずに出荷することが可能となり、高強度化鋼板など、品質の向上に伴う製造コストの上昇防止に寄与することができる。
以下に、この発明の実施形態を添付の図1から図3に基づいて説明する。
図1は、この発明の冷却方法を実施する熱延ミルの仕上げ圧延機以降の冷却設備を模式的に示したものである。仕上げ圧延機1と巻取り機2との間のランアウトテーブル3には、上面側冷却装置4および下面側冷却装置5が設置され、これらの冷却装置4、5は、それぞれ複数の冷却バンク(冷却帯)6、6aを備えている。仕上げ圧延機1の出側、前記冷却装置4、5の中程と出側の、ランアウトテーブル3の上面側には、温度計T1、T2、T3が設置され、前記冷却装置4、5の出側には、同様に、光学的手段によって板平坦度を計測する平坦度計測装置7が設置されている。上面側冷却装置4の各冷却バンク6にはパイプ式の冷却ノズルが、下面側冷却装置5の各バンク6aにはスプレイ式の冷却ノズルが、鋼板を上下面から均一に冷却できるように、それぞれ所要のノズル密度で配置され、各冷却バンク6、6a毎の流量制御が可能となっている。
前記仕上げ圧延機1を通過した板厚が5mm以下の、温度が800〜1000℃の鋼板は、前記冷却装置4、5の前段側の冷却バンクで、鋼板表面温度がおよそ600℃以上の高温域、即ち膜沸騰冷却が主体となる前段側温度域で、所定の冷却速度が実現されるように、上面側および下面側から所要の流量密度の冷却水が供給される。前記鋼板は、引き続いて、前記冷却装置4、5の後段側の冷却バンクで、鋼板表面温度がおよそ600℃以下の低温域、即ち、核沸騰冷却が主体となる後段側温度域で所定の冷却速度が実現されるように、上面側および下面側から所要の流量密度の冷却水が供給される。前記前段側温度域および後段側温度域としては、例えば、900〜600℃および600〜300℃の温度域をとることができる。従って、仕上げ圧延機1を通過した鋼板の冷却開始温度が900℃から前後し、また、冷却終了温度が600℃から前後した場合でも、前記主冷却域が900〜600℃の温度域にある場合には、前段側温度域での冷却と見なすことができる。同様に、後段側の冷却開始温度が600℃から前後し、また、冷却終了温度が300℃から前後した場合でも、主冷却域が600〜300℃の温度域にある場合には、後段側温度域での冷却と見なすことができる。
前段側温度域を主冷却域とする冷却速度CR1は、仕上げ圧延機1出側の温度計T1と冷却装置4、5の中程の温度計T2により測定した、鋼板幅方向の中央部の温度とランアウトテーブル3上での通板速度から算出され、前記後段側温度域を主冷却域とする冷却速度CR2は、同様に、前記中程の温度計T2と冷却装置4、5の出側の温度計T3により測定した、鋼板幅方向の中央部の温度とランアウトテーブル3上での通板速度から算出される。そして、前記温度測定値および通板速度に基づいて、冷却速度CR1およびCR2が、前段側温度域および後段側温度域での温度域毎に定めたそれぞれの冷却速度範囲内に収まるように、冷却装置4、5の冷却水流量が制御される。
質量%で、C:0.1%、Si:1.5%、Mn:1.1%を主要合金組成とする鋼板を、前記仕上げ圧延機1により、板厚2.0mm、板厚2.9mmに仕上げた後、前記冷却装置4、5で、前記前段側温度域および後段側温度域をそれぞれ主冷却域とする冷却を実施した後、前記巻取り機3で巻取った。冷却終了後、巻取る前に、光学的な手法により、ランアウトテーブル3上の鋼板の凹凸形状を、前記平坦度計測装置7で測定し、この凹凸形状からの換算により板平坦度を求めて平坦度レベルで表示した。表1に冷却実績データおよび平坦度レベルFを示す。
表1で、冷却開始温度Tfは、仕上げ圧延機1出側の温度計T1または冷却装置4、5の中程の温度計T2による鋼板幅方向中央部の温度であり、冷却終了温度Tcは、冷却装置5出側の温度計T3による鋼板幅方向中央部の温度である。また、冷却時間は、冷却水が供給されている冷却バンク6(6a)の長さを通板速度で除した値である。平坦度レベル0(零)は、鋼板の凹凸が全くなく、フラットと見なせる状態を表し、数値が大きくなるほど、測定される凹凸形状の高さが高くなって平坦度の乱れが大となる状態を表す。
図2および図3は、表1に示した各板厚についての、冷却速度に対応する平坦度レベルのデータを、主要冷却温度域が前段側温度域にある場合と後段側温度域にある場合とに分けてプロットしたものである。図2から、高温側の前段側温度域を主冷却域とする場合には、2.0mmと薄い板厚でも約180℃/sの冷却速度で平坦度レベルが0、即ち平坦度の乱れが生じないことがわかる。このことから、本発明で対象とした板厚上限の5mmに対しては、比較的安定した膜沸騰冷却が主体の前段側温度域では、少なくとも200℃/sの冷却速度までは、平坦度の乱れが生じないものと見なすことができる。また、図3から、低温側の後段側温度域を主冷却域とする場合には、板厚が2.9mmで約110℃/s、板厚が2.0mmで約100℃/sの冷却速度で平坦度レベルが0、即ち平坦度の乱れが生じていないことがわかる。このように、後段側温度域を主冷却域とする場合には、板厚が2.0mm以下のときには、冷却速度の上限を100℃/s以下とすることが望ましい。
なお、前記前段側温度域および後段側温度域でのそれぞれの下限の冷却速度50℃/sおよび30℃/sは、この冷却速度を下回ると、熱間圧延で製造できる下限の1mm程度の板厚のときでも、残留オーステナト相等を含む所要の複合組織を実現することが困難となる。また、前記前段側温度域および後段側温度域でのそれぞれの冷却速度範囲は、前段側温度域での冷却と後段側温度域との冷却の間に中間冷却を設ける場合、および前段側から後段側にかけて連続冷却を行う場合のいずれにも適用可能である。
1・・・仕上げ圧延機
2・・・巻取り機
3・・・ランアウトテーブル
4、5・・・冷却装置
6、6a・・・冷却バンク
7・・・平坦度計測装置
P・・・鋼板
T1、T2、T3・・・温度計
2・・・巻取り機
3・・・ランアウトテーブル
4、5・・・冷却装置
6、6a・・・冷却バンク
7・・・平坦度計測装置
P・・・鋼板
T1、T2、T3・・・温度計
この発明は、平坦度の良好な熱延薄鋼板を製造するための仕上げ圧延後の冷却方法に関する。
近年、環境問題等から、自動車の車体軽量化技術の重要性が増大している。鉄鋼材料では、軽量化および安全性の要求に対応するため、高強度化等の材料特性の向上が重視され、鋼板の高強度化による薄肉化が試みられている。成形性を損なわずに鋼板を高強度化するための、例えば、残留オーステナイト相を含む複合組織鋼板の組織制御には、一般に、仕上げ圧延後の急速冷却を伴うため、薄鋼板、とくに、板厚が5mm以下の薄鋼板の場合に、仕上げ圧延後に急速な冷却を行うと、鋼板の平坦度が乱れて、ランアウトテーブル上での圧延材の走行安定性が阻害され、巻取り不良などの通板トラブルが発生する。また、走行中平坦度が乱れると、均一冷却が困難となるため、所定の巻取り温度で巻取ることが難しくなり、さらに、鋼板のSi含有量が0.8質量%以上と多くなると、鋼板表面のスケールにより表面性状が劣化して、不均一冷却が発生しやすくなり、板平坦度がわるくなるため、良好な平坦度を求めるユーザーには出荷できない。このため、巻取り後に矯正工程を追加せざるを得なくなり、製造コストが上昇して経済性が低下したり、材料特性が損なわれたりする。
従来、平坦度の良好な鋼板の製造方法について、例えば、仕上げ温度Ar3以上、巻取り温度660℃以下で熱間圧延を行ない、その後に所要の温度で連続焼鈍を行なう方法(特許文献1参照)や、仕上げ圧延終了後に、600℃以下の温度域にまでを所要の冷却速度で冷却する方法(特許文献2参照)など、数多く提案されている。また、高温の鋼板を均一に冷却し、温度むらの発生を抑制して冷却後の平坦度の良好な鋼板の製造方法として、仕上げ冷却を前段冷却と後段冷却の2段階に分け、前段冷却を全面膜沸騰冷却で、後段冷却を核沸騰冷却で行う冷却方法が提案されている(特許文献3参照)。
しかし、特許文献1、2に開示された冷却方法では、熱延仕上げ温度から600℃近傍の温度域での冷却制御にしか着目されていなく、冷却能力が大きくなるより低温域での冷却制御については考慮されていなく、例えば、組織制御上、低温巻取りが必要な場合には必ずしも良好な平坦度を実現できるとは言えない。また、特許文献3に開示された冷却方法では、対象が厚鋼板であり、また、それぞれの冷却段階で所要の冷却速度の範囲が開示されておらず、前後段の2段冷却を行なうだけで、熱延薄鋼板、とくに低温巻取りを要する薄鋼板で良好な平坦度を実現できるとは言い難い。
そこで、この発明の課題は、仕上げ圧延後の冷却速度を制御することにより、急速冷却時および/または低温巻取り時でのランアウトテーブル上での不均一冷却を抑制することにより、平坦度が優れ、かつ高強度化に適した、Siを0.8質量%以上含有する熱延薄鋼板の冷却方法を提供することである。
前記の課題を解決するために、この発明では以下の構成を採用したのである。
即ち、請求項1に係る熱延薄鋼板の冷却方法は、仕上げ圧延後のランアウトテーブル上での、良好な平坦度を実現する熱延薄鋼板の冷却方法であって、前記鋼板がSiを0.8%以上含有し、前記鋼板の板厚が1〜5mmであり、600℃が境となるようにランアウトテーブルの中程に温度計を設置して、それよりも高温側を前段側温度域とし、低温側を後段側温度域とし、且つ、前段側温度域での冷却終了温度と、後段側温度域での冷却開始温度が同じ温度となるようにして、前段側温度域と後段側温度域を連続させ、前記前段側温度域での冷却速度を、前記後段側温度域での冷却速度よりも大きくすると共に、前記前段側温度域での冷却速度を50〜200℃/sの範囲内に、前記後段側温度域での冷却速度を30〜110℃/sの範囲内にそれぞれ収まるようにして前記鋼板を冷却することを特徴とする。
このように、鋼板の冷却速度を、比較的安定して冷却が行われる600℃以上の膜沸騰冷却が支配的となる前段側温度域と、冷却が不安定になりやすい600℃以下の遷移沸騰領域または核沸騰領域が支配的となる低温側温度域とで、それぞれの温度域毎に定めた冷却速度範囲内で、上記の両温度域を主冷却域とする冷却をそれぞれ行うことにより、局部過冷による不均一冷却が抑制され、平坦度が良好で、かつ所要の急速冷却および巻取り温度を実現することができる。なお、鋼板の板厚上限を5mmと規定した理由は、5mmを超える鋼板では、板厚が厚いため、急冷しても平坦度があまり乱れないことによる。ここで、主冷却域とするとは、600℃が境となることを狙いとしてランアウトテーブルの中程に温度計を設置して温度を測定するため、実際の冷却過程で、前段側での冷却終了温度および後段側での冷却開始温度が、両温度域の境界とした温度である600℃から前後しても、主要冷却温度域がそれぞれ前記前段側および後段側温度域にあることをいう。前記薄鋼板には、高強度とともに、伸びフランジ性などの良好な成形性が要求されており、Siは、この伸びフランジ性を劣化させずに強度を向上させるのに有効な元素である。しかし、Si量が0.8%以上と多くなると、鋼鈑表面のスケールにより表面性状が劣化して、不均一冷却が発生しやすくなり、板平坦度がわるくなるため、上述のような冷却方法が有効である。
また、前記前段側温度域は、比較的安定して冷却が行われる膜沸騰温度域であるため、冷却が不安定になる遷移沸騰または核沸騰温度域である後段側温度域での冷却速度よりも大きくすることにより、組織制御に必要な冷却速度および所要の巻取り温度を確保し、かつ平坦度の乱れを防止することが可能となる。
また、板厚が1〜5mmの薄鋼板では、前段側温度域での冷却速度の上限を200℃/sとし、後段側温度域での冷却速度の上限を110℃/sとすることにより、平坦度の乱れのない良好な状態で、前記薄鋼板を巻取ることができる。なお、前段側温度域および後段側温度域でのそれぞれの冷却速度の下限は、材質上の要求から規定されるものである。
この発明では、Siを0.8質量%以上含有し、板厚が1〜5mmの薄鋼鈑の仕上げ圧延後のランアウトテーブル上での冷却を、膜沸騰領域が支配的な前段側温度域と、遷移沸騰または核沸騰領域が支配的な後段側温度域とに分け、前段側温度域での冷却速度を50〜200℃/sの範囲内に、後段側温度域での冷却速度を30〜110℃/sの範囲内にそれぞれ収まるようにして鋼板を冷却するようにしたので、不均一冷却が抑制されて平坦度の乱れが防止される。また、このようにそれぞれの冷却域で冷却速度の上下限を規定するとともに、冷却状態が比較的安定している前段側での冷却速度を、不安定になりやすい後段側での冷却速度よりも大きくすることにより、高強度化等の材質特性上の要求から、急速冷却や低温巻き取りを行なう場合でも、良好な平坦度の状態で前記薄鋼板を巻取ることができる。それにより、製品の材質特性を損なうことなく、ランアウトテーブル上での走行安定性の阻害や巻取り不良などの通板トラブルが防止される。また、良好な平坦度を求めるユーザーに対しても、矯正工程を経ずに出荷することが可能となり、高強度化鋼板など、品質の向上に伴う製造コストの上昇防止に寄与することができる。
以下に、この発明の実施形態を添付の図1および図2に基づいて説明する。
図1は、この発明の冷却方法を実施する熱延ミルの仕上げ圧延機以降の冷却設備を模式的に示したものである。仕上げ圧延機1と巻取り機2との間のランアウトテーブル3には、上面側冷却装置4および下面側冷却装置5が設置され、これらの冷却装置4、5は、それぞれ複数の冷却バンク(冷却帯)6、6aを備えている。仕上げ圧延機1の出側、前記冷却装置4、5の中程と出側の、ランアウトテーブル3の上面側には、温度計T1、T2、T3が設置され、前記冷却装置4の出側には、同様に、光学的手段によって板平坦度を計測する平坦度計測装置7が設置されている。上面側冷却装置4の各冷却バンク6にはパイプ式の冷却ノズルが、下面側冷却装置5の各バンク6aにはスプレイ式の冷却ノズルが、鋼板を上下面から均一に冷却できるように、それぞれ所要のノズル密度で配置され、各冷却バンク6、6a毎の流量制御が可能となっている。
前記仕上げ圧延機1を通過した、Siを0.8質量%以上含有し、板厚が1〜5mmの、温度が800〜1000℃の鋼板は、前記冷却装置4、5の前段側の冷却バンクで、鋼板表面温度がおよそ600℃以上の高温域、即ち膜沸騰冷却が主体となる前段側温度域で、所定の冷却速度が実現されるように、上面側および下面側から所要の流量密度の冷却水が供給される。前記鋼板は、引き続いて、前記冷却装置4、5の後段側の冷却バンクで、鋼板表面温度がおよそ600℃以下の低温域、即ち、核沸騰冷却が主体となる後段側温度域で所定の冷却速度が実現されるように、上面側および下面側から所要の流量密度の冷却水が供給される。前記前段側温度域および後段側温度域としては、例えば、900〜600℃および600〜300℃の温度域をとることができる。従って、仕上げ圧延機1を通過した鋼板の冷却開始温度が900℃から前後し、また、冷却終了温度が600℃から前後した場合でも、前記主冷却域が900〜600℃の温度域にある場合には、前段側温度域での冷却と見なすことができる。同様に、後段側の冷却開始温度が600℃から前後し、また、冷却終了温度が300℃から前後した場合でも、主冷却域が600〜300℃の温度域にある場合には、後段側温度域での冷却と見なすことができる。
前段側温度域を主冷却域とする冷却速度CR1は、仕上げ圧延機1出側の温度計T1と冷却装置4、5の中程の温度計T2により測定した、鋼板幅方向の中央部の温度とランアウトテーブル3上での通板速度から算出され、前記後段側温度域を主冷却域とする冷却速度CR2は、同様に、前記中程の温度計T2と冷却装置4、5の出側の温度計T3により測定した、鋼板幅方向の中央部の温度とランアウトテーブル3上での通板速度から算出される。そして、前記温度測定値および通板速度に基づいて、冷却速度CR1およびCR2が、前段側温度域および後段側温度域での温度域毎に定めたそれぞれの冷却速度範囲内に収まるように、冷却装置4、5の冷却水流量が制御される。
質量%で、C:0.1%、Si:1.5%、Mn:1.1%を主要合金組成とする鋼板を、前記仕上げ圧延機1により、板厚2.0mm、板厚2.9mmに仕上げた後、前記冷却装置4、5で、前記前段側温度域および後段側温度域をそれぞれ主冷却域とする冷却を実施した後、前記巻取り機3で巻取った。冷却終了後、巻取る前に、光学的な手法により、ランアウトテーブル3上の鋼板の凹凸形状を、前記平坦度計測装置7で測定し、この凹凸形状からの換算により板平坦度を求めて平坦度レベルで表示した。表1に冷却実績データおよび平坦度レベルFを示す。
表1で、冷却開始温度Tfは、仕上げ圧延機1出側の温度計T1または冷却装置4、5の中程の温度計T2による鋼板幅方向中央部の温度であり、冷却終了温度Tcは、冷却装置4、5の中程の温度計T2または冷却装置4、5出側の温度計T3による鋼板幅方向中央部の温度である。また、冷却時間は、冷却水が供給されている冷却バンク6(6a)の長さを通板速度で除した値である。平坦度レベル0(零)は、鋼板の凹凸が全くなく、フラットと見なせる状態を表し、数値が大きくなるほど、測定される凹凸形状の高さが高くなって平坦度の乱れが大となる状態を表す。
図2は、表1に示した各板厚についての後段側温度域での冷却速度に対応する平坦度レベルのデータを、プロットしたものである。表1に示すように、前段側温度域の要件を満足した上で、板厚が2.9mmで約110℃/s以下、板厚が2.0mmで約100℃/s以下の冷却速度であれば、確実に平坦度レベルが0となること、即ち平坦度の乱れが生じないことがわかる。また、板厚が2.0mm以下のときには、冷却速度の上限を100℃/s以下とすることが望ましい。
なお、前記前段側温度域および後段側温度域でのそれぞれの下限の冷却速度50℃/sおよび30℃/sは、この冷却速度を下回ると、熱間圧延で製造できる下限の1mm程度の板厚のときでも、残留オーステナト相等を含む所要の複合組織を実現することが困難となる。また、前記前段側温度域および後段側温度域でのそれぞれの冷却速度範囲は、前段側温度域での冷却と後段側温度域との冷却の間に中間冷却を設ける場合、および前段側から後段側にかけて連続冷却を行う場合のいずれにも適用可能である。
1・・・仕上げ圧延機
2・・・巻取り機
3・・・ランアウトテーブル
4、5・・・冷却装置
6、6a・・・冷却バンク
7・・・平坦度計測装置
P・・・鋼板
T1、T2、T3・・・温度計
2・・・巻取り機
3・・・ランアウトテーブル
4、5・・・冷却装置
6、6a・・・冷却バンク
7・・・平坦度計測装置
P・・・鋼板
T1、T2、T3・・・温度計
Claims (4)
- 仕上げ圧延後のランアウトテーブル上での、良好な平坦度を実現する熱延薄鋼板の冷却方法であって、前記鋼板の板厚が5mm以下であり、600℃を境として、それよりも高温側を前段側温度域とし、低温側を後段側温度域とし、前段側温度域を主冷却域とする前段側冷却速度および後段側温度域を主冷却域とする後段側冷却速度を、それぞれの温度域毎に定められた冷却速度範囲内にして前記鋼板を冷却することを特徴とする熱延薄鋼板の冷却方法。
- 前記前段側温度域での冷却速度を、前記後段側温度域での冷却速度よりも大きくした請求項1に記載の熱延薄鋼板の冷却方法。
- 前記前段側温度域での冷却速度が50〜200℃/sの範囲にあり、後段側温度域での冷却速度が30〜110℃/sの範囲にある請求項1または2に記載の熱延薄鋼板の冷却方法。
- 前記鋼板が、Siを0.8%以上含有する鋼板である請求項1から3のいずれかに記載の熱延薄鋼板の冷却方法。
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