JP2012194359A - 眼鏡レンズの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性の高い親水性膜を有する眼鏡レンズの製造方法を提供する。
【解決手段】
最外面にSiOの層を有する無機反射防止膜が形成されたレンズ基材上に、防曇層が設けられた眼鏡レンズの製造方法であって、前記無機反射防止膜のSiOの層を、無機アルカリを含む処理液で処理し、ついで、親水性膜を形成することを特徴とする。前記親水性膜は、加水分解によりシラノール基に変換可能な加水分解性基を有するオルガノシランを処理することにより形成されることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、眼鏡レンズの製造方法に関する。
眼鏡レンズの製造工程において、プラスチックレンズ基材に対して各種表面コーティングを行う前に、プラスチックレンズ基材に付着した余分な樹脂、指紋、およびほこりなどの汚れを洗浄する洗浄工程がある。そして、洗浄方法としては、プラズマ発生装置を用いてプラスチックレンズ基材を処理するプラズマ処理や、アルカリ性の処理液で処理するアルカリ処理が知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、眼鏡レンズ表面に防曇性能を付与する方法としては、眼鏡レンズ表面に親水性が高いスルホン酸基または硫酸基をもつオルガノシランもしくはその加水分解物、または、オルガノシランおよびその加水分解物を用いた親水性の薄膜、すなわち防曇膜を形成することが知られている(例えば、特許文献2参照)。そして、特許文献2において眼鏡レンズに防曇膜を形成するにあたっては、前処理として、眼鏡レンズ基材のプラズマ処理による表面の洗浄及び活性化がおこなわれている。
特開2008−96986号公報 特開2005−224791号公報
しかしながら、特許文献1には、アルカリ処理による洗浄は記載されているものの、防曇膜を形成するにあたっての前処理については記載されていない。また、特許文献2に記載の方法など、一般的に用いられるプラズマ処理では、処理ムラが発生しやすく、衝撃でレンズ表面にダメージが発生することがある。また、特許文献2に記載の防曇膜は、膜を形成する成分によって膜強度を向上するとともに、レンズ表面に固定化されたものであり、耐久性が十分とは言えない。
そこで本発明の目的は、耐久性の高い親水性膜を有する眼鏡レンズの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、最外面がSiOである眼鏡レンズ基材において、従来のプラズマ処理に変えて、アルカリ処理した上で、親水性膜を形成することにより、この親水性膜が高い耐久性を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の眼鏡レンズの製造方法は、最外面にSiOの層を有する無機反射防止膜が形成されたレンズ基材上に、防曇層が設けられた眼鏡レンズの製造方法であって、前記無機反射防止膜のSiOの層を、無機アルカリを含む処理液で処理し、ついで、親水性膜を形成することを特徴とする。
この発明によれば、防曇層として、耐久性の高い親水性膜を有する眼鏡レンズを製造することができる。この発明では、最外面にSiOの層を有する無機反射防止膜が形成されたレンズ基材において、無機反射防止膜のSiOの層をアルカリ処理するので、SiOが活性化され、活性化されたSiOが、形成される親水性膜と化学結合し、化学結合により眼鏡レンズ基材に固定されると考えられる。したがって、眼鏡レンズに耐久性の高い親水性膜を形成できる。
ここで、当該眼鏡レンズ基材は、最外面がSiOの層であるため、例えば一般的なソーダ石灰ガラスに比べて、より多くの反応サイトを有し、親水性膜とより多くの結合を生じると考えられる。したがって、親水性膜の密着性をより高くすることができ、その結果、親水性膜の耐久性を向上することができると考えられる。
なお、無機アルカリを含む処理液による処理とは、光学物品の洗浄工程において用いられる無機アルカリを含む処理液を用い、洗浄工程と同様の手順で行うアルカリ処理である。
そして、本発明の眼鏡レンズの製造方法において、前記親水性膜は、加水分解によりシラノール基に変換可能な加水分解性基を有するオルガノシランを処理することにより形成されることが好ましい。
この発明によれば、オルガノシランが加水分解によりシラノール基に変換され、シラノール基と活性化されたSiOが反応して、化学結合を形成し、親水性膜を形成すると考えられる。したがって、眼鏡レンズに耐久性の高い親水性膜を形成できる。
さらに本発明の眼鏡レンズの製造方法において、前記親水性膜は非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランもしくはその加水分解物の単体および2量体以上の縮合物、または、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランおよびその加水分解物の単体および2量体以上の縮合物であることが好ましい。
この発明によれば、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランもしくはその加水分解物の単体および2量体以上の縮合物、または、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランおよびその加水分解物の単体および2量体以上の縮合物は、2量体以上の縮合物間、2量体以上の縮合物と単体分子間及び、単体分子間で反応し、親水性膜内で架橋する部位が存在することとなる。これが、隙間を埋める糊の役目を果たすため、膜の強度が高くなり、その結果、親水性膜の耐久性を向上することができる。
また本発明の眼鏡レンズの製造方法において、前記アルカリを含む処理液での処理は、前記最外面にSiOの層を有する無機反射防止膜が形成されたレンズ基材を、前記無機アルカリを含む処理液に0.5分以上30分以内浸漬することが好ましい。
この発明によれば、アルカリを含む処理液により、最外面のSiOが十分に活性化され、シラノール基と反応可能な状態となる。したがって、続いて親水性膜を形成する際、シラノール基と反応し、化学結合を形成するので、耐久性の高い親水性膜を形成できる。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
本実施形態における眼鏡レンズの製造方法により製造される眼鏡レンズは、眼鏡用のプラスチックレンズである。この眼鏡レンズは、レンズ基材と、このレンズ基材の表面に形成されたプライマー層と、このプライマー層の表面に形成されたハードコート層と、このハードコート層の表面に形成された反射防止層と、この反射防止層の表面に形成された防曇層と、を有する。
(1.レンズ基材)
レンズ基材の材質としては、屈折率は特に限定されない。このようなレンズ素材としては、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)やポリカーボネート、あるいは、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるポリチオウレタン系プラスチックが挙げられる。
(2.プライマー層)
プライマー層は、レンズ基材の表面に形成され、表面処理膜全体の耐久性を向上させる役割を担う。
このようなプライマー層としては、極性を有する有機樹脂ポリマーと、酸化チタンを含有する金属酸化物微粒子とを含むコーティング組成物を用いて形成されることが好ましい。有機樹脂ポリマーとしては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の各種樹脂を使用することが可能である。
コーティング用組成物の塗布にあたっては、レンズ基材とプライマー被膜の密着性の向上を目的として、レンズ基材の表面を予めアルカリ処理、酸処理、界面活性剤処理、無機あるいは有機の微粒子による剥離/研磨処理、プラズマ処理を行うことが効果的である。コーティング用組成物の塗布/硬化方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、あるいは、フローコート法等によりコーティング用組成物を塗布した後、40℃以上200℃以下の温度で数時間加熱/乾燥することにより、プライマー層を形成できる。
プライマー層の膜厚は0.01μm以上50μm以下の範囲が好ましい。プライマー層が薄すぎると耐水性や耐衝撃性などの基本性能が実現できず、逆に厚すぎると、表面の平滑性が損なわれ、あるいは、光学的歪や白濁、曇りなどの外観欠点を発生する場合がある。
(3.ハードコート層)
ハードコート層は、酸化チタンを含有する金属酸化物微粒子と、式(1)で示される有機ケイ素化合物とを含むコーティング組成物を用いて形成されることが好ましい。
SiX 3−n (1)
(式中、Rは、重合可能な反応基を有する有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Xは加水分解基であり、nは0または1である。)
酸化チタンとしては、耐候性や耐光性の観点よりルチル型の結晶構造を有することが好ましい。
有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン等があげられる。
ハードコート液を製造する際には、金属酸化物微粒子が分散したゾルと、有機ケイ素化合物とを混合することが好ましい。金属酸化物微粒子の配合量は、ハードコート層の硬度や、屈折率等により決定されるものであるが、ハードコート液中の固形分の5質量%以上80質量%以下、特に10質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
コーティング液の塗布・硬化方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、あるいは、フローコート法によりコーティング用組成物を塗布した後、40℃以上200℃以下の温度で数時間加熱乾燥することにより、ハードコート被膜を形成する。なお、ハードコート層の膜厚は、0.05μm以上30μm以下であることが好ましい。膜厚が0.05μm未満では、基本性能が実現できない。また、膜厚が30μmを越えると表面の平滑性が損なわれ、あるいは、光学歪みが発生してしまう場合がある。
(4.反射防止層)
反射防止層は、ハードコート層の屈折率よりも0.10以上低い屈折率を有し、かつ50nm以上150nm以下の層厚の、無機薄層、有機薄層の単層または多層で構成され、最外層はSiOである。
多層の場合、最外層以外の無機薄層の材質としてはSiOの他に、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、Ta、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WO等の無機物が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。プラスチックレンズの場合は、低温で真空蒸着が可能なSiO、ZrO、TiO、Taが好ましい。
(5.防曇層)
防曇層は、反射防止層の最外層のSiOを、無機アルカリを含む処理液(アルカリ処理液、とも言う。)により処理して活性化させた上で、後述する防曇剤を基材表面に塗布することで形成される。
(アルカリ処理方法)
本実施形態において、アルカリ処理方法としては、超音波洗浄法の適用が好ましい。また必要に応じて公知の物理力を利用した方法、例えば浸漬法、浸漬揺動法、スプレー法、手拭き法などを単独又は組み合わせて利用することができる。アルカリ処理方法の温度、洗浄時間などの洗浄条件も特に限定されるものではなく、レンズ材料の種類、表面状態に応じて適宜調整可能である。具体的には、例えばアルカリ処理方法の温度は、20℃以上90℃以下が好適であり、アルカリ処理性及び蒸発量の低減のためには35℃以上80℃以下がより好ましい。また、処理時間は0.5分以上30分以内程度である。そして、このとき、超音波の発振周波数は20kHz以上100kHz以下の範囲が好ましい。
アルカリ処理後、防曇層を形成する際に、レンズ表面に残存する余分なアルカリ処理液を除去するため、一般的な除去工程をおこなってもかまわない。除去液として、超純水、純水、イオン交換水、蒸留水、水溶性有機溶剤の単独又は2種以上の混合液を使用できる。この除去工程において物理力は特に限定されるものではなく、通常用いられる公知の物理力による工程を利用できる。例えば、浸漬法、超音波洗浄法、浸漬揺動法、スプレー法、手拭き法などの各種の工程を単独又は組み合わせて利用することができる。
また更に、除去工程の次に仕上げ工程として前述の物理力による工程を行うことができる。この場合、乾燥性を向上させるために、水と混和し共沸する揮発性に優れた溶剤を使用することが好ましい。具体的にはイソプロパノール、アセトン等が好適に使用される。
(防曇層の形成) このようにして、アルカリ処理により活性化された基材表面に、防曇剤を塗布することにより防曇層を形成する。防曇剤の塗布方法としては、ディップコーティング法、スピンコーティング法、バーコードコーティング法、スプレーコーティング法等があげられるが、生産性、塗布後の均一性を重視した場合、ディップコーティング法、スピンコーティング法が好ましい。そして、防曇剤を塗布した基材を加熱処理して乾燥硬化する。この乾燥硬化する工程は、防曇剤内の溶媒を除去し、オルガノシランの反応を完結させるために行う。加熱処理の条件については、溶媒が蒸散し、オルガノシランの反応が好適に起こる条件で、かつ、物品自体に影響がない範囲であれば、特に限定しない。好ましくは、50℃以上300℃以下の温度範囲で1分以上24時間以下の加熱処理を行う。反応速度が温度に依存することから、加熱温度が低いほど長時間の処理が好ましい。加熱温度が300℃を越える場合、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランもしくはその加水分解物、または、オルガノシランおよびその加水分解物が分解するなどの影響があるため、避けた方が良い。50℃以上150℃以下で1分以上12時間以下の加熱処理であれば、工程を設計する上でなお好ましい。
防曇層の表面に、さらに防曇特性を向上する目的で、界面活性剤を塗布しても良い。塗布する界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両面界面活性剤などがあげられる。具体的には、前述に記載した界面活性剤を用いることが可能である。界面活性剤は特定の一種または二種類以上を混合して使用しても良い。界面活性剤は、防曇性物品表面に付与される方法で有ればいかなる塗布方法を用いても良い。
(アルカリ処理液)
本実施形態において、アルカリ処理による反射防止層の最外層のSiOの活性化は、以下に説明するアルカリ処理液を用いて行うことが好ましい。
本実施形態のアルカリ処理液は、無機アルカリ1質量%以上50質量%以下、下記式(1)で示されるアルコールおよび水から選ばれる1種または2種以上の溶媒を含む。
1(OR2nOH・・・(1)
(式中、R1は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、又はフェネチル基、R2は炭素数2〜4のアルキレン基を示す。nはR1が水素原子の場合は10以下の整数を示し、R1が水素原子以外の場合は0、又は10以下の整数を示す。)
本実施形態において無機アルカリの濃度は1質量%以上50質量%以下が好ましい。1質量%未満であると十分な防曇層の密着性が得られず、50質量%を超えるとレンズ表面の平滑性が損なわれ曇りが発生する恐れがある。無機アルカリの具体例としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。通常、それぞれ単独で又はそれらの2種以上を混合して用いることができる。
式(1)で示されるアルコールは、通常、それぞれ単独で又はそれらの2種以上を混合して用いることができる。
前述のアルコールとして具体的には、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、オクタノールなどの直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基を有するアルコール類;フェノール、クレゾール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどの芳香族アルコール類;シクロヘキサノールなどの脂環式アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。さらに、水酸化ナトリウム等の触媒下、加熱しながら、エチレン、プロピレン、ブチレンなどの炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを、液状又は気体状で、単独又は複数加えて反応させることにより得られたものなどのジオール類;前述のジオールの片末端がメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基で置換されたアルコールが挙げられる。
アルコールは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本実施形態においては、前述のアルカリ処理液組成物にさらに非イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤、またはこれらのうちいずれか一方を含有させることにより、防曇層の密着性を一層向上させることができる。前述の非イオン界面活性剤の具体例は、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールオレイルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル等であり、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。非イオン界面活性剤のHLBは、5〜18の範囲が好ましく、特に9〜16の範囲が好ましい。
前述の陰イオン界面活性剤の具体例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホコハク酸ナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、分岐アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等であり、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、前述の非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤を併用することもできる。
これら非イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤、またはこれらのうちいずれか一方の含有量は特に限定されるものではないが、併用の効果を発現させるためには、本実施形態のアルカリ処理液中に好ましくは0.1質量%以上15質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下添加される。併用の効果の点から0.5質量%以上が好ましく、アルカリ処理液の粘度が適度でハンドリング性に優れ、また除去性も良好であるという点から10質量%以下が好ましい。
本実施形態のアルカリ処理液において、無機アルカリ、式(1)のアルコール、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤の他にアルコール性の3級アミンを含有させることにより、表面処理性を高め防曇層の密着性を向上させることができる。
本実施形態のアルカリ処理液の溶媒としては、アルコールの他に超純水、純水、イオン交換水、蒸留水、通常の水道水などを用いることができる。また、溶媒として、前述のアルコールと水の混合物を使用しても良い。本実施形態のアルカリ処理液において、本実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じて金属イオン封鎖剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、酸化防止剤などの添加剤を適宜併用することができる
(防曇剤)
本実施形態に用いる防曇剤としては、加水分解によりシラノール基に変換可能な加水分解性基を有するオルガノシランが好ましく、さらに防曇剤中の非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランを用いることが好ましい。当該オルガノシランは、単体及び2量体以上の縮合物を含有する。2量体以上の縮合物は、防曇層内の親水性基の密度を向上させる。また、単体で存在するオルガノシランは、基材と層の固定化に加え、2量体以上の縮合物間、2量体以上の縮合物と単体分子間及び、単体分子間で反応し、隙間を埋める糊の役目を果たす。これにより、層の強度及び、基材表面との高い密着性を発現する作用がある。さらに、糊として働く単体には親水性基が含有されるため、膜における親水性基の密度を低下させず、優れた防曇特性を示すことが可能である。
また、本実施形態に用いる防曇剤中の非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランの2量体以上の縮合物は、2量体以上であれば充分な親水性基の密度が得られる。より高い親水性基の密度を得るため、2量体以上の様々な縮合度の縮合物を含むことが望ましく、さらに好ましくは、様々な2量体以上の縮合物のうち、縮合度の小さいものを大きいものよりも多く含み、層内の充填率が低下しないことが好ましい。
本実施形態に用いる防曇剤で用いられる適当な親水性有機溶剤とは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、水などである。親水性有機溶剤は、1種のみでも2種以上の混合溶媒でも良い。
非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシラン含有量は0.1質量%以上25質量%以下とすることが好ましい。0.1質量%より少ないと、防曇層が薄くなり、耐久性に問題がある。25質量%を超える濃度で用いても、防曇層の層厚、性能に変化が見られず、経済的にもデメリットとなってしまう。眼鏡レンズの場合、表面に形成する膜の層厚によっては表面の反射特性が変化し、光線反射率及び透過率が変化して、光学特性が変化してしまうことのない層でなければならず、この場合、含有量は0.1質量%以上2質量%以下とすることが好ましい。
さらに、本実施形態に用いる防曇剤は、防曇層の均一性、外観向上のため、界面活性剤を混合することが可能である。アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両面界面活性剤などの界面活性剤類、およびその反応性誘導体などがあげられるが、オルガノシラン側の硫黄を含む基との相互作用から、好ましくはアニオン性のものが良く、更に好ましくはアニオン性基が硫酸または硫酸塩またはスルホン酸またはスルホン酸塩であるアニオン性界面活性剤が好ましい。用いられる界面活性剤は特定の一種または二種類以上を混合して使用しても良い。界面活性剤は、防曇層の強度を阻害しない範囲で混合可能である。よって、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランもしくはその加水分解物、または、オルガノシランおよびその加水分解物に対して、1質量%以上50質量%以下の範囲で混合が可能である。
具体的に、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;アルキルリン酸カリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルアリル)硫酸エステル塩;特殊反応型アニオン界面活性剤;特殊カルボン酸型界面活性剤;β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等がある。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレン誘導体;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、自己乳化型グリセロールモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル:ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;アルキルアルカノールアミド等がある。
カチオン性界面活性剤および両面界面活性剤としては、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルペンジルジメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩:ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルベタイン;ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイドがある。
また、本実施形態に用いる防曇剤中の非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランもしくはその加水分解物、または、オルガノシランおよびその加水分解物の2量体以上の縮合物は、オルガノシラン総量の1質量%以上70質量%未満である。1質量%未満である場合、層内の親水性基密度が低くなり、充分な防曇特性が得られない。また、70質量%以上である場合、単体のオルガノシランが糊としての充分な役割を果たせず、充分な膜強度が得られない。より高い防曇性能及び層強度を得るためには、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランの単体もしくはその加水分解物の単体、または、オルガノシランおよびその加水分解物の単体と、2量体以上の縮合物の存在比が重要である。しかし、用いるオルガノシランの種類によって、最適比率が存在するため、限定はできないが、2量体以上の縮合物が5質量%以上50質量%未満であることがなお好ましい。
また、本実施形態に用いる防曇剤中の非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランもしくはその加水分解物、または、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランおよびその加水分解物は、スルホン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホン酸基から選ばれる1種以上の官能基を含有する。スルホン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基は、酸化してスルホン酸基または硫酸基とすることが好ましい。
スルホン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基はオルガノシランまたはその加水分解物のどの位置に存在しても良いが、親水性が発現しやすいためには、スルホン酸または硫酸基に変換したときに末端にあることが好ましい。オルガノシランの反応部位は、クロロシランやアルコキシシラン、シラザンの様にシラノールに変換し、縮合及び、物品表面の活性基と反応することが可能な基である。
非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランもしくはその加水分解物の例として、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、2−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、2−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2−メルカプトエチルジメチルメトキシシラン、2−(2−クロロエチルチオエチル)トリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、ジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)ジエトキシメチルシラン、ジメトキシメチル−3−(3−フェノキシプロピルチオプロピル)シラン、3−(2−アセトキシエチルチオプロピル)ジメトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロパンスルホン酸イソプロピルエステル、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルスルホン酸などがあげられる。
また、本実施形態に用いる防曇剤中の非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランのカップリング部位は、親水性有機溶剤中で低温ではゆっくりと、高温になるほどはやく加水分解および縮合が進む。0℃未満では縮合が非常に遅く、2量体以上の縮合物を作製するのに非常に長い時間がかかり、作業性が良くない。70℃を超える温度では縮合が非常に速く進むため、制御が難しい。よって、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランもしくはその加水分解物、または、オルガノシランおよびその加水分解物を親水性有機溶剤に希釈した後、0℃以上70℃以下で0.1時間以上200時間以下保持することが好ましい。さらに、より縮合度の制御を安定的に行うためには、0℃以上40℃以下で2時間以上200時間以下保持するのが好ましい。
非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランの2量体以上の縮合物を作製する際、保管環境によって制御する方法とともに、酸触媒、アルカリ触媒、アミン系触媒、金属化合物触媒から選ばれる1種以上の触媒を用いる方法を組み合わせても良い。
また、本実施形態に用いる防曇剤中の非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランもしくはその加水分解物、または、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランおよびその加水分解物のカップリング部位の縮合および加水分解を酸触媒、アルカリ触媒、アミン系触媒、金属化合物触媒から選ばれる1種以上の触媒によって制御することで、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランの2量体以上の縮合物が、オルガノシラン総量の1質量%以上70質量%未満である防曇剤の作製を更に容易に行うことが可能である。
酸触媒として、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、蟻酸、酒石酸、クエン酸、炭酸があげられる。塩酸、硫酸、硝酸、炭酸等のカルボキシル基を持たない酸については、オルガノシランの加水分解を促進する効果があり、カルボキシル基を持つ酸は、オルガノシランに対し、配位するため、縮合を抑える効果がある。よって、カルボキシル基を持たない酸と、カルボキシル基を混合して用いると、縮合度の制御をより容易に行うことが可能である。
アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニウム化合物等があげられる。アミン系触媒は、具体的には、エチレンジアミン、N,−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、グアニジンなどのアミン、グリシンなどのアミノ酸、2−メチルイミダゾール、2,4−ジエチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾールのいずれでもよいが、加水分解、及び縮合物に対し、水素結合を作り、縮合反応を制御する効果から、ヒドロキシル基を含有するアミンが好ましい。
金属化合物触媒としては、アルミニウムアセチルアセトネート、チタンアセチルアセトネート、クロムアセチルアセトナートなどの金属アセチルアセトネート、酢酸ナトリウム、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸スズなどの有機酸金属塩、SnCl4、TiCl4、ZnCl2などのルイス酸、過塩素酸マグネシウムなどがあげられる。3級アミン、有機錫化合物触媒については、その効果を高めるために混合して用いても良いことが一般的に知られている。触媒の量は、それぞれの触媒によって効果が異なるため、一概にはいえないが、層の防曇特性を阻害しないで用いるのが望ましく、具体的には、防曇剤中の固形分に対して、75%以下で混合するのが好ましい。
以下、実施例に基づき本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(防曇剤の作製)
防曇剤Aの作製
3−トリメトキシシリルプロパンスルホン酸イソプロピルエステル0.01molを氷酢酸60mlに溶解し、ここに、30%過酸化水素水35gを、液温を25℃以上30℃以下に保った状態で1時間かけて滴下した。滴下終了後、25℃で一昼夜攪拌した。この液をFT−NMRにて分析したところ、スルホン酸エステル基が酸化、メトキシ基が加水分解され、トリシロキシプロパンスルホン酸が合成されていることがわかった。また、トリシロキシプロパンスルホン酸溶液の固形分濃度を測定したところ、4質量%であった。
このトリシロキシプロパンスルホン酸溶液をエタノールにて0.2%に希釈し、150gとした。ここにN−アミノエチルエタノールアミン0.1gを混合し、30℃で2時間攪拌した(A−1液)。このA−1液の一部を純水で20倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全化合物量中の40質量%であることを確認した。次にA−1液にラウリル硫酸ナトリウムを防曇剤総量に対し、50ppm加え、防曇剤Aとした。
防曇剤Bの作製
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.01molをエタノール1.19mlに溶解し、ここに、0.2N硫酸を0.238g添加し、30℃で2時間攪拌し、メトキシ基の加水分解を行った。ここに7.6%過酸化水素水77.54gを加え、60℃の環境下で24H攪拌し、チオール基の酸化反応とシラノール基の縮合反応をおこなった。
この液をFT−NMRにて分析したところ、メルカプト基が酸化、メトキシ基が加水分解され、トリシロキシプロパンスルホン酸が合成されていることがわかった。この液の一部を純水で200倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全固形分量中の42質量%であることを確認した。また、トリシロキシプロパンスルホン酸溶液の固形分濃度を測定したところ、2.4質量%であった。
このトリシロキシプロパンスルホン酸溶液をエタノールにて固形分濃度が0.15質量%となるよう希釈し、150gの希釈液を得た。この希釈液に、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム(日光ケミカルズ株式会社製ニッコールOTP−100)を防曇剤総量に対して100ppm加え、防曇剤Bとした。
防曇剤Cの作製
ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド0.01mol(4.75g)をt−ブタノール47.5gに溶解し、0.1N硝酸1.7gを加えて25℃で2時間攪拌した。これをFT−NMRにて分析したところ、エトキシ基が加水分解され、ビス[3−(トリシロキシシリル)プロピル]ジスルフィドとなっていることがわかった。
この溶液1.5gをエタノールで100倍に希釈し、全量150gとした。さらに、ここに、1N水酸化ナトリウム溶液0.1g混合し、室温で30分攪拌した(C−1液)。このC−1液の一部を純水で20倍に希釈し、LC/MSで分析したところ、2量体以上の縮合物の存在が確認され、その比率は全化合物量中の30%であることを確認した。次にC−1液にラウリル硫酸ナトリウムを防曇剤総量に対し、50ppm加え、防曇剤Cとした。
(実施例1) レンズ材料として、ハードコート層、反射防止層(最外層がSiOの層)を有する眼鏡用プラスチックレンズ(「セイコースーパーソブリン」セイコーエプソン株式会社製)を準備した。
この眼鏡用プラスチックレンズを4質量%の水酸化カリウムのイソプロパノール溶液に5分間浸漬し、純水で充分に洗浄した。ついで、防曇剤Aに浸漬し、等速引き上げ装置を用いて20cm/分の引き上げ速度で塗工した。
次いで、防曇剤Aを塗布した眼鏡用プラスチックレンズを熱風循環式恒温槽内で、60℃で4時間保持し、基材との反応を完結させ、防曇眼鏡レンズを得た。得られた防曇眼鏡レンズに、白濁等の外観上の不具合は確認されなかった。
(実施例2〜8、比較例1〜3)
実施例2〜8および比較例1〜3において、表1に示す防曇剤およびアルカリ処理条件を用いて実施した以外は、実施例1と同様にして防曇眼鏡レンズを得た。
次に、実施例1〜8および比較例1〜3において形成された防曇層について、耐久性試験を実施し、下記評価方法に基づき評価した。
(耐久性試験)
純水流水下で基板表面を500gの荷重をかけ、スポンジで100往復払拭した。
(評価方法)
(評価1:接触角)
接触角の測定には、接触角計(DM−700 協和界面科学株式会社製)を使用し、液滴法による純水の接触角を測定した。接触角としては、防曇性の観点から、7°以下が好ましい。
(評価2:防曇性)
40℃の飽和水蒸気中に防曇眼鏡レンズを3分間保持した。3分間保持後、表面に形成された水膜の状態を以下の評価基準に従い、目視で評価した。
◎:均一な水膜形成
○:水膜の不均一部分が10%以上50%未満
△:水膜の不均一部分が50%以上
×:全面水滴状
これらの結果を表1に示す。
なお、表1において、IPAはイソプロパノール、EtOHはエタノールを示す。
Figure 2012194359
表1からわかるように、実施例1〜8および比較例1〜3はともに、初期の接触角と防曇性は良好であるが、耐久試験後、比較例では防曇性が低下している。
耐久性試験では、流水で払拭しているが、流水で払拭して防曇性が低下するということは、防曇剤を構成する分子の基板との反応が不十分であることを意味する。これに対し、アルカリ処理を行った実施例1〜8では、耐久試験後も防曇性の低下は見られなかった。すなわち、アルカリ処理により基材表面が活性化され、防曇剤を構成する分子との反応サイトが増加し、これにより、防曇剤を構成する分子が反応して、基板上に密に結合して固定されたためであると考えられる。
なお、実施例1において、耐久性試験後の防曇性がやや低下している。これは、実施例2に比べてアルカリ処理時間が短く、生成するシラノール基の密度が小さくなり、防曇剤を構成する分子との反応性サイトが減少するためと考えられる。また、実施例3は、実施例2に比べてアルカリ処理時間が長い。これにより、基材表面が荒らされて表面脆弱層(WBL)が形成されたり、SiO層が薄くなり、干渉色が変化したことが考えられる。実施例6においては、アルカリ処理液の溶媒が水の場合、耐久性試験後の防曇性がやや低下している。これは溶媒のぬれ性がイソプロパノールおよびエタノールと比較して悪いためであると考えられる。
(比較例4〜9)
比較例4〜9について、レンズ材料として、ソーダ石灰ガラス(SCHOTT B270)またはチオウレタン系樹脂プラスチックレンズ(セイコーエプソン株式会社製 「セイコースーパーソブリン」)を用い、表2に示す防曇剤およびアルカリ処理条件を用いて、実施例1と同様に防曇眼鏡レンズを得た。得られた防曇眼鏡レンズについて、前記評価方法により評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2012194359
表2に示すように、ガラス基板の場合、アルカリ処理時間を増加すると初期の防曇性は向上するが、耐久性は実施例に比べて劣るものであった。また、プラスチックレンズでは、初期状態でも防曇性は発現していなかった。
以上のようにガラス基板およびプラスチック基板を用いた場合の防曇性は、実施例に比べて劣る結果となった。すなわち、本発明のアルカリ処理は、最外層がSiOの層である反射防止膜を有するレンズ基材で効果を発揮する。実施例において用いたレンズ基板の最外層は100%SiOである。これに対し、比較例で用いたガラス基板は、ソーダ石灰ガラスであるため、Na等、SiO以外の成分を約30%含む。このSiO以外の成分は、アルカリ処理によって活性化されにくく、防曇剤を構成する分子との結合が形成されにくいと考えられ、その結果、防曇層の耐久性が向上しなかったと考えられる。

Claims (4)

  1. 最外面にSiOの層を有する無機反射防止膜が形成されたレンズ基材上に、防曇層が設けられた眼鏡レンズの製造方法であって、
    前記無機反射防止膜のSiOの層を、無機アルカリを含む処理液で処理し、
    ついで、親水性膜を形成する
    ことを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
  2. 請求項1に記載の眼鏡レンズの製造方法において、
    前記親水性膜は、加水分解によりシラノール基に変換可能な加水分解性基を有するオルガノシランを処理することにより形成される
    ことを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の眼鏡レンズの製造方法において、
    前記親水性膜は、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランもしくはその加水分解物の単体および2量体以上の縮合物、または、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシランおよびその加水分解物の単体および2量体以上の縮合物である
    ことを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法において、
    前記アルカリを含む処理液での処理は、前記最外面にSiOの層を有する無機反射防止膜が形成されたレンズ基材を、前記無機アルカリを含む処理液に0.5分以上30分以内浸漬する
    ことを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
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