JP2012193465A - 炭素繊維用アクリル系前駆体繊維、その製造方法、及びその前駆体繊維から得られる炭素繊維 - Google Patents

炭素繊維用アクリル系前駆体繊維、その製造方法、及びその前駆体繊維から得られる炭素繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明によれば、良好な紡糸性を有し、焼成工程後の炭化収率に優れた炭素繊維用アクリル系前駆体繊維、及びその前駆体繊維から得られる炭素繊維を低コストで製造できる。
【解決手段】ジブチルフタレート吸収量100(cm/100g)以下、水90質量部とカーボンブラック10質量部とからなる水分散液のpHが7.0以上8.0以下であるカーボンブラックを、ポリアクリロニトリル系重合体100質量部に対し、1〜100質量部を含む混合物で構成される炭素繊維用アクリル系前駆体繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は、良好な紡糸性を有する、焼成工程後の炭化収率に優れた炭素繊維用アクリル系前駆体繊維、及びその前駆体繊維から得られる炭素繊維の製造方法に関するものである。
炭素繊維は力学的、化学的諸特性及び軽量性などにより、航空機部材、鉄道車両部材、船舶部材スポーツ用品用途などに広く使用され、さらに近年では自動車などの一般産業.用途分野などにも使用されようとしている。求められる力学特性力学特性のレベルも高まっており、また生産増加能力の増強も強く要求されている。
従来、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束(以下、PAN系前駆体繊維束という)は次のような工程を経て炭素繊維化処理される。まず、耐炎化処理工程により数十〜数百錘のPAN系前駆体繊維束を200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化熱処理し、得られた耐炎化繊維束を、炭素化処理工程において300℃以上の不活性雰囲気中で焼成し、炭素繊維を得る。
耐炎化工程および炭素化工程は、炭素繊維の物性および生産性を左右する重要な工程である。耐炎化工程ではアクリル系繊維を構成する高分子鎖を酸化させると共に高分子鎖に結合したニトリル基を環化させることにより、引き続く炭素化工程を通過しうる程度に熱的に安定な構造を有する繊維に転換させ、炭素化工程において更に高温の不活性雰囲気で酸化を促進させ、構造を緻密化させることで、高い強度・弾性率を有する炭素繊維を得ることが出来る。
しかし、この炭素繊維を焼成する工程で起こる化学反応により、炭素原子を含んだ分解物が廃棄ガスとして放出され炭化収率が低くなり、生産性が悪くなるなどの問題がある。ここでの炭化収率とは、焼成工程において加わる熱エネルギーにより繊維の一部が焼き飛ばされ、重量減少した後の炭素繊維質量と、焼成工程通過前のアクリル系繊維質量の比(%)を指し、炭素繊維の生産性の指標として用いられる。炭素繊維の製造コスト低減の見地から、焼成工程において炭化収率を向上させ、炭素繊維の生産性を向上させる技術の確立が望まれている。
炭素繊維の炭化収率を向上させるために、炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体に、カーボンブラックをあらかじめ含有させておく方法がある。
例えば、特許文献1に、炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体にカーボンブラックを含有させる技術が開示されている。また特許文献2では、含有させるカーボンブラックを塩基性化合物を分散剤として効率良く分散する技術が記載されている。これらの技術を用いて追試を行ったところ、炭素繊維前駆体組成物は可紡性があり、さらに焼成した炭素繊維の炭化収率は比較的高い値を示した。
特開2007−182657公報 特開2008−169535公報
しかしながら、特許文献1や2に記載の方法では紡糸原液調製時において、カーボンブラックが二次凝集により紡糸原液中に塊状となり、流動性を悪化する傾向にあった。さらには表面が酸性に表面処理されたカーボンブラックと塩基性化合物の分散剤の相互作用により、分散時に紡糸原液の粘度が上昇して流動性を悪化させやすく、紡糸生産性が低下しやすい欠点が見られた。
本発明は、かかる課題を解決するために、本発明の炭素繊維用アクリル系前駆体繊維は次の構成を有する。ジブチルフタレート吸収量が100(cm/100g)以下、水に10質量%となるように分散したときの水分散液のpHが7.0以上8.0以下であるカーボンブラックを、ポリアクリロニトリル系重合体100質量部に対し、1〜100質量部を含む混合物で構成される炭素繊維用アクリル系前駆体繊維の製造方法である。
また、本発明は前記課題を解決するために本発明の炭素繊維の製造方法は次の構成を有する。すなわち、前記した方法により製造される炭素繊維用アクリル系前駆体繊維を耐炎化し、炭素化して得られる炭素繊維の製造方法である。
本発明によれば、良好な紡糸性を有し、焼成工程後の炭化収率に優れた炭素繊維用アクリル系前駆体繊維、及びその前駆体繊維から得られる炭素繊維を低コストで製造できる。
本発明における炭素繊維用アクリル系前駆体繊維は次の構成を有する。すなわちポリアクリロニトリル系重合体100質量部に対し、ジブチルフタレート吸収量が100(cm/100g)以下であり、また水に10質量%となるように分散したときの水分散液のpHが7.0以上8.0以下であるカーボンブラック1〜100質量部を含む混合物で構成される炭素繊維用アクリル系前駆体繊維である。
(ジブチルフタレート(DBP)吸収量)
ジブチルフタレート(DBP)吸収量が100(cm/100g)以下であるカーボンブラックとは、JIS K6217−4(2001)の「DBP吸収量の求め方」に準じ、アブソープトメータを用いて測定したDBP吸収量が100(cm/100g)以下になるものをいう。このDBP吸収量は、カーボンブラックの二次凝集体であるストラクチャーの大きさの指標であり、ストラクチャーが大きすぎると、紡糸原液中での分散性が悪くなり、炭素繊維用アクリル系前駆体繊維を製造する際の可紡性が損なわれるばかりでなく、炭素繊維を製造する際の延伸性不良、得られる炭素繊維の弾性率、強度低下の原因となる。また、かかるDBP吸収量は1〜100(cm/100g)、好ましくは10〜80(cm/100g)、さらに好ましくは30〜70(cm/100g)であることが必要である。DBP吸収量が多いと、カーボンブラックが二次凝集体を形成しやすくなり、紡糸原液の流動性を損なう可能性がある。
本発明におけるカーボンブラックは表面が特に表面処理されていないカーボンブラック、もしくは表面がやや塩基性に表面処理されたカーボンブラックを用いることが好ましい。表面酸化処理の度合いはカーボンブラックを水に濃度10質量%となるように分散したときの水分散液のpHが7.0以上8.0以下、より好ましくは7.5以上8.0以下となるものが良い。かかるpHが7よりも小さいと、紡糸原液中でのカーボンブラックが均一に分散しにくく、紡糸原液に対する分散性が不十分となる可能性がある。
表面酸化処理の度合いは、カーボンブラックを水に10質量%となるように分散したときの水分散液のpHをpH試験器により測定することで求めることが出来る。
また、本発明におけるカーボンブラックは窒素吸着比表面積が40m/g以下であるカーボンブラックを用いることが好ましい。窒素吸着比表面積が40m/g以下であるカーボンブラックとはJIS K6217−2(2001)の「比表面積の求め方―窒素吸着法―単点法」に準じて、自動比表面積測定装置を用いて測定した 窒素吸着比表面積が40m/g以下になるものをいう。この該窒素吸着比表面積は、カーボンブラックの一次粒径の大きさの指標であり、比表面積が大きすぎると、紡糸原液中に細かな粒子が多数存在していることを表すため、カーボンブラックの存在する量が少量である場合は均一に分散しやすくなるが、カーボンブラックの質量部が大きくなると、後述するカーボンブラックの二次凝集体であるストラクチャーを形成しやすくなる。ストラクチャーが大きすぎると紡糸原液中での分散性が悪くなり、炭素繊維用アクリル系前駆体繊維を製造する際の可紡性が損なわれるばかりでなく、炭素繊維を製造する際の延伸性不良、得られる炭素繊維の弾性率、強度低下の原因となる。また、かかる窒素吸着比表面積は1〜40m/g、好ましくは5〜35m/g、さらに好ましくは10〜30m/gであることが良い。
本発明において、炭素繊維用アクリル系前駆体繊維の紡糸原液に含まれるカーボンブラックの配合量は、炭素繊維の炭化収率や紡糸を行う際の取り扱い性の観点から、ポリアクリロニトリル系重合体100質量部に対して1〜100質量部、好ましくは50〜100質量部、より好ましくは80〜100質量部とするのが良い。カーボンブラックの配合量が多すぎると、紡糸原液の流動性が低下するため、口金フィルターの目詰まりや糸切れが発生しやすくなる。
本発明における炭素繊維用アクリル系前駆体繊維の紡糸原液に含まれるカーボンブラックは、カーボンブラックを溶媒に十分分散させた分散液とすることが好ましい。カーボンブラックを分散させる溶媒としては、DMSO、DMF、DMAcなどのポリアクリロニトリル系重合体が可溶な溶媒を用いることができる。
かかる分散液の調整方法は、超音波、自公転式ミキサー、プラネタリーミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、ボールミルおよびビーズミルなど一般的な、固液混合用の方法のいずれでも可能であり、いくつかの方法を組み合わせて調整しても良い。
さらにかかる分散液には、カーボンブラックをより均一に分散することが出来るようにする観点から、さらに塩基性化合物が含まれていることが好ましい。塩基性化合物とは、カーボンブラックの表面が塩基性に表面処理されたものであっても良い。ここでいう塩基性化合物は、具体的にはアミノ基、またはアンモニアを有する化合物であることが好ましい。分子中に含まれるアミノ基は、一級アミノ基、二級アミノ基および三級アミノ基のいずれも使用可能である。アミノ基を有する化合物としては、脂肪族鎖についた脂肪族アミンと、芳香族環に直接ついた芳香族アミンがあり、本発明では脂肪族アミンおよび芳香族アミンいずれを用いても良い。
このようなアミノ基を持つ化合物としては、メチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ベンジルアミン、フェニルエチルアミン、アニリン、ジメチルアニリンなどが好ましく用いられる。
これら塩基性化合物の中でも、より少量でカーボンブラックを均一分散できる観点から、メチルアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミンがさらに好ましく用いられる。
本発明において、塩基性化合物を含有させる場合、その含有量は、カーボンブラックとの相互作用や、炭素繊維用アクリル系前駆体繊維の耐熱性・緻密性の観点から、カーボンブラック100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。5質量部より高いと加える塩基性化合物の含有率が高くなり、後述で加えるポリアクリロニトリル系重合体の有機溶媒に対する溶解性が低下し、製糸後の原糸緻密性が低下し、焼成後の炭素繊維の強度、弾性率の低下に繋がる可能性がある。
本発明の炭素繊維用アクリル系前駆体繊維の紡糸原液に用いるポリアクリロニトリル系重合体には、炭素繊維にしたときの共重合成分に起因する欠陥点を少なくし、炭素繊維の品質ならびに性能の向上目的から、アクリロニトリルが90質量%以上、好ましくは96%質量以上を重合したものが良い。
本発明で用いるポリアクリロニトリル系重合体には、共重合成分、分子量分布、立体規則性などに制約は無く、炭素繊維となすための耐炎化処理を促進させるために、共重合成分として耐炎化促進作用を有する単量体を0.1〜5モル%共重合させるのが良い。耐炎化促進成分としては、カルボキシル基またはアミド基を一つ以上有するものが好ましく用いられる。また耐炎化反応が高くなるほど、短時間で耐炎化処理でき、生産性を高めることが出来ることから耐炎化促進成分の共重合量を多くすることが望ましい。しかし一方で、該共重合量が多くなるほど、発熱速度が大きくなり暴走反応の危険が生じることがあるため、5モル%を超えない範囲とすることが望ましく、0.5〜3モル%がより好ましく、1〜3モル%とすることがさらに好ましい。
耐炎化促進作用を有する単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが好ましく用いられる。焼成工程での耐炎化促進や溶媒に対する溶解性の向上の観点から、アクリルアミド、メタクリルアミドがより好ましく用いられる。
本発明で用いるポリアクリロニトリル系重合体を製造するには、溶液重合、懸濁重合等公知の重合方法の何れでも用いることが出来る。溶液重合を採用する場合、使用する溶媒としては、DMSO,DMF、DMAcなどのポリアクリロニトリル系重合体が可溶な溶媒を用いる。中でもポリアクリロニトリル系重合体の溶解性の観点から、DMAcがより好ましく用いられる。
本発明で用いる炭素繊維用アクリル系前駆体繊維の紡糸原液を製造するには、前記カーボンブラック分散液に前記ポリアクリロニトリル系重合体を十分に溶解させることで調製される。カーボンブラックの分散液の溶媒はポリアクリロニトリル系重合体が可溶な溶媒である必要が有り、工程の簡略化という観点ではポリアクリロニトリル系重合体の製造時に用いた溶媒と同一であることが好ましい。ポリアクリロニトリル系重合体を溶媒に溶解し、カーボンブラックを加えて分散させると、紡糸原液の粘度が上昇し、流動性が悪くなる恐れがあり、さらには均一に分散しない恐れがある。
本発明において、炭素繊維用アクリル系前駆体繊維は、以下のような工程で製造できる。本発明の方法では、前記した紡糸原液を、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維を凝固せしめる。工業的な観点では、生産性に優れた湿式紡糸法が好ましい。
本発明において、前記凝固浴は、紡糸原液に用いられる用材を含む水溶液が好適に使用され、含まれる溶剤の濃度を調節して、凝固糸の空隙率を少なくするように設定する。使用する溶剤によって一般的に異なるが、例えばDMAcを使用する場合は、DMAcの濃度は50〜80質量%、好ましくは60〜75質量%である。また凝固浴の温度は低い方が好ましく、通常50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。凝固浴の温度を低くすればより緻密な糸を得ることが出来るが、温度を下げすぎると凝固糸の引取速度が低下し生産性が低下するので、適切な範囲に設定することが望ましい。
本発明の方法では、洗浄、延伸工程において上記で得られた膨潤糸条を洗浄及び延伸する。なお、洗浄と延伸の順番については、洗浄を先に行っても良く、また同時に行っても良い。洗浄の方法としては、特に制限はないが、一般的に用いられている、水中、特に温水中に浸漬させる方法がよい。
延伸の方法としては、水中、温水中に浸漬させながら延伸する方法、熱板、ローラー等のよる空気中での乾熱延伸法、また熱風が循環している箱型炉内での延伸でも良く、これらに限定されるものではない。経済的な観点から、温水中で行うことが好ましい。また延伸倍率は、1〜8倍とすることが好ましい。ただし、後に二次延伸を行う場合、その延伸倍率を考慮して設定することが好ましい。
本発明の方法では、油剤付与工程において上記で得られた洗浄及び延伸後の糸条を、シリコーン系油剤が入った油浴槽に導いて、糸条にシリコーン系油剤を付与する。油剤としては、シリコーン化合物を含有するシリコーン系油剤を使用する。かかるシリコーン油剤はジメチルシリコーンオイルや有機変性シリコーンオイルを用いることが好ましく、耐熱性の高いアミノ変性シリコーンオイルがより好ましい。通常は、シリコーン化合物とノニオン系乳化剤とを混合し、乳化したものを用いる。また、場合により、酸化防止剤や各種添加剤、さらにシリコーン原子を含まない有機物を混合することもできる。
本発明の方法では、乾燥緻密化において上記で得られたシリコーン系油剤を付与した糸条を乾燥緻密化する。乾燥緻密化の方法としては、熱板や加熱ローラーに接触させることにより行うことが一般的に用いられており、加熱ローラーによる乾燥が好ましく用いられる。乾燥温度が高いほど、シリコーン油剤の架橋 反応が促進され、また生産性の観点からも好ましいので、単繊維間の融着が生じない範囲で高く設定できる。具体的には150℃以上が好ましく、180℃以上であればさらに好ましい。また乾燥時間は上記糸条が十分乾燥する時間をとることが好ましい。
本発明の方法では、必要に応じて、上記で得られた乾燥緻密化後の糸条を二次延伸することもできる。二次延伸の方法としては、乾熱延伸、スチーム延伸等が挙げられる。
本発明において、得ようとする炭素繊維用アクリル系前駆体繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.5〜2.0dtex、より好ましくは0.6〜1.5dtexである事が良い。かかる単繊維繊度が小さすぎると、可紡性の低下、ローラー、ガイドの接触による糸切れ発生などにより、製糸工程および焼成工程の工程通過性が低下することがある。また単繊維繊度が大きすぎると、耐炎化後の各単繊維における内外構造差が大きくなり、つづく炭化工程での工程通過性や、得られる炭素繊維の引張強度、引張弾性率が低下することがある。
また、本発明の炭素繊維は以下のような工程で製造できる。
本発明の方法では、耐炎化工程において、前記した炭素繊維用アクリル系前駆体繊維を200〜300℃の酸化性雰囲気中で加熱して、耐炎化繊維束を得る。酸化性雰囲気としては、空気、酸素、二酸化窒素など、公知の酸化性雰囲気を採用できるが、経済性の面から空気が好ましい。耐炎化処理の時間は、炭素繊維の生産性および性能を高める観点から30〜120分が好ましい。耐炎化処理に要する時間を30分以上とすることで、耐炎化反応が十分になって、処理斑を生じにくくなり、また後に行われる炭素化工程で毛羽、束切れを生じにくくなり、結果的に生産性が向上する。一方、耐炎化処理に要する時間を120分以下とすることで、耐炎化装置を大型化したり耐炎化処理速度を下げたりする必要がなくなり、生産性が向上する。
本発明の方法では、前炭素化工程において、前記耐炎化繊維束を第1の炭素化炉に投入して前炭素化処理し、前炭素化繊維束を得る。第1の炭素化炉内は、温度が300℃以上1,000℃未満の不活性雰囲気であり、耐炎化処理されたアクリル系前駆体繊維束は、該不活性雰囲気中を走行する間に前炭素化処理される。なお、第1の炭素化炉内を循環する不活性雰囲気の流れは、走行する被処理繊維に対して平行方向でも、垂直方向でもよく、特に限定されない。不活性雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウムなど公知の不活性雰囲気を採用できるが、経済性の面から窒素が望ましい。
本発明では、炭素化工程において、前記前炭素化繊維束を第2の炭素化炉に投入して炭素化処理し、炭素化繊維束を得る。第2の炭素化炉内は、最高温度が1,000℃以上3,000℃以下の不活性雰囲気であり、前炭素化繊維束は、該不活性雰囲気中を走行する間に炭素化処理される。なお、第2の炭素化炉内の不活性雰囲気の流れは、走行する被処理繊維に対して平行方向でも、垂直方向でもよく、特に限定されない。不活性雰囲気としては、先に例示した公知の不活性雰囲気の中から選択して用いることができるが、経済性の面から窒素が望ましい。
前述のように焼成工程を段階的に行うことで、熱エネルギーによって繊維が分解、焼き飛ばされる質量を極力抑制することにより、得られる炭素繊維の炭化収率は55%以上となる。
さらに得られた炭素化繊維束は、サイジング処理工程の前に、表面処理が行われても良い。例えば、電解液中で電解酸化処理を施したり、気相または液相での酸化処理を施すことによって、複合材料における炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性や接着性を向上させることが好ましい。
サイジング処理工程では、サイジング処理とその乾燥処理を行う。サイジング処理の方法は特に限定されず、炭素化繊維束に所望のサイジング剤を付与することができれば良い。例えば、ローラーサイジング法、ローラー浸漬法およびスプレー法等を挙げることができる。
サイジング処理に用いるサイジング処理液は特に限定されず、種々の高次加工に適した特性を有するものを選択することができる。例えば、均一に糸条に含浸するためには、サイジング剤を含む溶液、エマルジョンまたはサスペンジョン状態としたサイジング処理液とできるもので、それを炭素化繊維束に付着させて、乾燥装置内で溶剤または分散媒を乾燥除去できるものであれば良い。
サイジング処理液中のサイジング剤の主成分としては、エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂などが挙げられ、特に限定しない。
サイジング処理液中のサイジング剤の割合は特に限定されず、0.2〜20質量%が好ましく、より好ましくは3〜10質量%である。サイジング処理液中のサイジング剤の割合を0.2質量%以上とすることで、炭素繊維に所望する機能を充分に付与することができる。また、サイジング処理液中のサイジング剤の割合を20質量%以下とすることで、サイジング剤の付着量が適切なものとなり、後工程で複合材料として利用する際のマトリックス樹脂の含浸性が良好となる。
サイジング処理液に用いる溶媒または分散媒は特に限定されないが、取り扱い性および安全性の面から、水を用いることが好ましい。
炭素繊維束におけるサイジング剤の付着量は、0.3〜5.0質量%が好ましく、0.4〜3.0質量%がより好ましい。サイジング剤の付着量を0.3質量%以上とすることで、炭素繊維に所望する機能を充分に付与することができる。また、サイジング剤の付着量を3.0質量%以下とすることで、後工程で複合材料として利用する際のマトリックス樹脂の含浸性が良好となる。
サイジング処理後の乾燥処理では、サイジング処理液の溶媒または分散媒を乾燥除去する。その際の条件は、120〜300℃の温度で、10秒〜10分間の範囲が好適であり、より好適には150〜250℃の温度で、30秒〜4分間の範囲である。乾燥温度を120℃以上とすることで、溶媒を充分に除去することができる。また、乾燥温度を300℃以下とすることで、サイジング処理された炭素繊維束の品質を維持することができる。
乾燥処理の方法は特に限定されず、例えば、蒸気を熱源とするホットロールに接触させて乾燥させる方法や、熱風が循環している装置内で乾燥させる方法を挙げることができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本実施例においては、各種特性を次のようにして測定した。
<炭素系微粒子の窒素吸着比表面積>
JIS K6217−2(2001)の「比表面積の求め方―窒素吸着法―単点法」に準じて、自動比表面積測定装置を用いて測定した。
<カーボンブラックのDBP吸収量>
JIS K6217−4(2001)の「DBP吸収量の求め方」に準じ、アブソープトメータを用いて測定した。
<カーボンブラックのpH測定>
カーボンブラック10gを水100mlに加え、攪拌しながら加熱し、沸騰後冷却し、上澄み液のpHを測定した。
<炭化収率>
カーボンブラック分散液にポリアクリロニトリル系重合体を十分に溶解させた紡糸原液に対し水を加えて溶媒を除去後、重合体組成物を単離する。重合体組成物を垂直流方式バッチ耐炎化炉にて230℃で40分、さらに260℃で40分、昇温時間を計10分とし合計90分の耐炎化処理を行う。その後、サンプルを凍結乾燥して粉砕し、示差熱熱質量(TG/DTA:TAインスツルメンツ DTA Q−500)測定器を用いて50℃/分の昇温速度で1100℃まで加熱した。このとき加熱後の試験体の質量をa、測定前の試験体質量をbとし、質量比a/b×100(%)を、その試験体の炭化収率とした。
<可紡性評価>
カーボンブラックとポリアクリロニトリル系重合体の固形分濃度が21.2質量%となるようにDMAcに溶解して調製した紡糸原液を作成し、その紡糸原液を口金ホール数2000、口金孔径0.075mmの口金から、吐出量を2L/hrに調整し、DMAc67質量%、水33質量%の凝固浴中に吐出する湿式紡糸を行う。その際、引き取り速度を徐々に上げていき、糸切れした糸が凝固浴中で観察された時の速度(限界凝固浴速度)を可紡性の指標とする。
(実施例1)
アクリロニトリル単位96%、アクリルアミド単位3%、メタクリル酸単位1%からなるアクリロニトリル系重合体(カルボン酸基の量は7.0×10−5当量、極限粘度(η)は1.7)を、DMAcに溶解し、ポリアクリロニトリル重合体を調製した。また、カーボンブラック(東海カーボン社製、製品名:シーストS)を重合体の固形分100質量部に対して100質量部秤量し、DMAcに分散させ、更にメチルアミンを1質量部加えた状態でオークスミキサー(ダイナミックミキサー)にて100rpmで30分攪拌し、その後ビーズミル(アシザワ社製、製品名:TYPE STISTS)にて20rpmで20分を行い、カーボンブラック分散液を得た。このカーボンブラック分散液に対し、前記ポリアクリロニトリル系重合体を、カーボンブラックとポリアクリロニトリル系重合体の総固形分濃度が21.2質量%となるよう溶解させ、オークスミキサー(ダイナミックミキサー)にて100rpmで30分攪拌することで目的とする炭素繊維用アクリル系前駆体繊維の紡糸原液を得た。なお、用いたカーボンブラックのDBP吸収量およびpHと、得られた紡糸原液の可紡性の測定結果を表1に合わせて示す。この紡糸原液の炭化収率、可紡性を測定したところ、炭化収率は74.2%と高い値を示し、限界凝固浴速度は18m/minであった。
孔径0.075mm、孔数2000の紡糸口金を用いて、温度38℃、濃度68%のDMAc水溶液(凝固浴)に吐出湿式紡糸法により、凝固糸とした。ついで、凝固糸を60℃から98℃の温水中で脱溶媒しながら、6倍に延伸した。延伸糸をアミノシリコン系油剤1%水溶液中に浸漬した後、180℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化し、単糸繊度が1.2dtex、フィラメント数2000の炭素繊維前駆体繊維を得た。
得られた炭素繊維前駆体繊維を6本合糸し、トータルフィラメント数12,000とした上で、230〜260℃の空気中において延伸比0.94で延伸しながらで耐炎化処理し、耐炎化繊維を得た。
続いて400℃〜700℃の窒素雰囲気中において、延伸比1.0で延伸しながら予備炭化処理を行い、更に最高温度1350℃の窒素雰囲気中において、延伸比を0.95に設定して炭化処理を行い炭素繊維を得た。
(実施例2)
分散させるカーボンブラックをシーストSから三菱化学製、製品名:#5に変更した以外は実施例1と同様にして紡糸原液および炭素繊維を得た。なお、用いたカーボンブラックのDBP吸収量およびpHと、得られた紡糸原液の可紡性の測定結果を表1に合わせて示す。この紡糸原液の炭化収率、可紡性を測定したところ、炭化収率は72.2%と高く、限界凝固浴速度は14m/minと、炭素繊維用アクリル系前駆体繊維を得るに十分な値を示した。
(比較例1)
分散させるカーボンブラックをシーストSから旭カーボン社製、製品名:SUN BLACK X605に変更した以外は実施例1と同様にして紡糸原液を得た。なお、用いたカーボンブラックのDBP吸収量およびpHと、得られた紡糸原液の可紡性の測定結果を表1に合わせて示す。この紡糸原液の炭化収率、可紡性を測定したところ、炭化収率は68.4%であったが、紡糸原液中に塊状のカーボンブラックが観察され、フィルターですぐに目詰まりを起こし凝固浴で糸切れが多発したため、限界凝固浴速度を測定することが出来ず、可紡性が十分とは言えなかった。
(比較例2)
分散させるカーボンブラックをシーストSから旭カーボン社製、製品名:SUN BLACK X45に変更した以外は実施例1と同様にして紡糸原液を得た。なお、用いたカーボンブラックのDBP吸収量およびpHと、得られた紡糸原液の可紡性の測定結果を表1に合わせて示す。この紡糸原液の炭化収率、可紡性を測定したところ、炭化収率は74.1%であったが、紡糸原液の流動性が悪く、口金フィルターに分散しきれなかったカーボンブラックの凝集によって目詰まりを起こし吐出不良となったため、限界凝固浴速度を測定することが出来ず、可紡性が十分とは言えなかった。
(比較例3)
分散させるカーボンブラックをシーストSから三菱化学製、製品名:MA−100に変更した以外は実施例1と同様にして紡糸原液を得た。なお、用いたカーボンブラックのDBP吸収量およびpHと、得られた紡糸原液の可紡性の測定結果を表1に合わせて示す。この紡糸原液の炭化収率、可紡性を測定したところ、炭化収率は75.6%であったが、紡糸原液の流動性が悪く、口金フィルターに発達したカーボンブラックの凝集により目詰まりを起こし凝固浴で糸切れが多発したため、可紡性が十分とは言えなかった。
Figure 2012193465

Claims (4)

  1. ジブチルフタレート吸収量100(cm/100g)以下、水90質量部とカーボンブラック10質量部とからなる水分散液のpHが7.0以上8.0以下であるカーボンブラックを、ポリアクリロニトリル系重合体100質量部に対し、1〜100質量部含む混合物で構成される炭素繊維用アクリル系前駆体繊維。
  2. 前記カーボンブラックが窒素吸着比表面積40m/g以下である請求項1に記載の炭素繊維用アクリル系前駆体繊維。
  3. カーボンブラックを溶媒に分散させた分散液と、ポリアクリロニトリル系重合体を溶媒に分散させた重合体溶液とを混合して紡糸原液とし、湿式または乾湿式紡糸法により、前駆体繊維を製造する炭素繊維用アクリル系前駆体繊維の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維用アクリル系前駆体繊維を耐炎化し、炭素化して得られる炭素繊維。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016540131A (ja) * 2013-06-21 2016-12-22 コーロン インダストリーズ インク 炭素繊維用ポリアクリロニトリル系前駆体繊維及びその製造方法
JP2018138628A (ja) * 2017-02-24 2018-09-06 三菱ケミカル株式会社 ポリアクリロニトリル系共重合体、炭素繊維前駆体繊維、耐炎化繊維束の製造方法および炭素繊維束の製造方法
GB2591249A (en) * 2020-01-22 2021-07-28 Mersen Scotland Holytown Ltd Thermal insulation materials suitable for use at high temperatures, and process for making said materials

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