JP2016037689A - 炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】繊維束表面に付着するタール状物質等の不純物を効率的に除去し、炭素繊維束が加熱ロールに巻き付くことを抑制可能な炭素繊維束の製造方法の提供。【解決手段】単繊維繊度が1.0dtex以上、総繊度が30000dtex以上であるポリアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維束を酸化性雰囲気中で耐炎化処理した後、不活性雰囲気中で炭素化処理し、電解酸化処理すること、60℃以上の温水又は沸水に浸漬して、温水処理すること、温水処理された繊維束を1〜40℃の水中で超音波処理すること、超音波処理された繊維束を140℃以上3秒以上加熱ロール処理することからなる炭素繊維の製造方法。前記の製造方法により、耐炎化処理、炭素化処理及び電解酸化処理において炭素繊維束の表面に付着した異物等を効率的に除去でき、炭素繊維束を乾燥処理する際に、炭素繊維束が加熱ロールに巻き付きつくことを抑制できる炭素繊維の製造方法。【選択図】なし
Description
本発明はポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法に関するものである。
炭素繊維は、機械的強度、寸法安定性、及び軽量性に優れていることから、航空機、自動車等の構造部材用途、スポーツ用途、及び建築・土木関係等の一般産業用途など、幅広く用途展開されている。そのため近年では、炭素繊維の性能向上だけではなく、価格の低減に対する要求も厳しくなりつつある。
上記用途で使用される場合、炭素繊維は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂(以下、「マトリックス樹脂」と略す)と組み合わせた複合材料(コンポジット)として、様々な用途に利用されている。
従来、複合材料の製造には、フィラメント数が1,000本から10,000本程度の炭素繊維束が原料に用いられてきた。しかし、近年では、炭素繊維の価格を低減するため、フィラメント数が多く、単繊維の繊度が大きな炭素繊維束を、複合材料に用いる取り組みが行われつつある。
ところで、炭素繊維の前駆体繊維束を炭素化して得られる炭素繊維束は、マトリックス樹脂との濡れ性、親和性、接着性が不十分である。そのため、炭素繊維束とマトリックス樹脂をそのまま混合しても、複合材料の強度は不十分である。
上記の問題を解決するため、通常は、炭素繊維束に表面処理を施し、さらに炭素繊維表面にサイジング処理を施すことにより、炭素繊維束とマトリックス樹脂の濡れ性、親和性、接着性を向上している。
炭素繊維を表面処理する方法として、電解酸化処理や薬液酸化処理などの液相酸化処理や、オゾンガスや高温空気処理などの気相酸化処理が知られている。炭素繊維表面に、表面処理を施すことにより、炭素繊維の表面積が増大し、また炭素繊維表面に酸素含有官能基が導入される。この効果により、炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性等が向上する。
特に、電解酸化処理は、操作が容易であること、運転条件の精密な制御が容易であること、炭素繊維の表面に酸素含有官能基を導入しやすい等の点から、薬液酸化処理や気相酸化処理よりも、実用的、かつ効果的な表面処理方法である。
しかし、電解酸化処理後の炭素繊維の表面には、焼成処理や電解酸化処理の時に発生した、炭素繊維前駆体繊維原料に由来するタール状物質、熱分解生成物、あるいは又、低結晶性炭素化物からなる異物(以下、「タール状物質等」と略する)が付着している。
炭素繊維の表面にタール状物質等が付着した状態にあると、炭素繊維束を、引取ロール等を介して装置内を走行させる時に、炭素繊維束が加熱ロールに巻き付きく可能性がある。従って、炭素繊維の表面から、タール状物質等を除去する必要がある。特に、フィラメント数が多く総繊度が大きい炭素繊維束では、炭素繊維束の内部にある炭素繊維についても、上記タール状物質等の除去を十分に行う必要がある。
炭素繊維の表面のタール状物質等を除去する方法として、例えば、温水、若しくは超音波を使用した洗浄が開示されている。例えば、特許文献1には、電解酸化処理後の炭素繊維束を60℃以上の温水中で超音波処理して洗浄する方法が開示されている。特許文献2には、電解酸化処理後の炭素繊維束を、40℃以上の温水又は沸水中で水洗する洗浄方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、炭素繊維表面のタール状物質等を短時間で効率よく除去できるものの、超音波処理を一槽のみで行うため、繊維束から除去されたタール状物質等が、繊維束表面に再付着する問題があった。
また、特許文献2に記載の方法では、所望の洗浄効果を得るためには十分な長さの洗浄浴が必要となり、大量の洗浄水を必要とする問題があった。また、特許文献1と同様に、最初の洗浄槽が温水である場合、除去されたタール状物質等が繊維束表面に再付着する問題があった。
さらに、前記特許文献1、2で処理される炭素繊維束の繊維数は12,000本程度であり、フィラメント数が多く総繊度が大きい炭素繊維束を処理するものでなかった。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、炭素繊維束の表面に付着しているタール状物質等を効率的に除去し、炭素繊維束が加熱ロールに巻き付くことを抑制できる、炭素繊維束の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の態様を有する。
本発明は、単繊維繊度が1.0dtex以上、総繊度が30000dtex以上であるポリアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維束を、酸化性雰囲気中で耐炎化処理し、次いで不活性雰囲気中で炭素化処理すること、前記炭素化処理された繊維束を電解酸化処理すること、前記電解酸化処理された繊維束を、60℃以上の温水又は沸水に9秒以上浸漬して、炭素繊維束の付与張力を0.05g/dtex以上0.2g/dtex以下、炭素繊維束の厚みを0.1mm以上5mm以下とし、さらに温水又は沸水を炭素繊維束の単繊維間を通過するように、炭素繊維束に向けて噴出させながら温水処理すること、前記温水処理された繊維束を、1℃以上40℃以下の水中で周波数25kHz以上で6秒以上、超音波処理すること、前記超音波処理された繊維束を、140℃以上の加熱ロールで3秒以上加熱処理すること、を有する炭素繊維の製造方法に関する。
さらに、本発明は、上記の製造方法により得られる炭素繊維が、下記の吸光度測定1で測定した230nmの吸光度が0.4以下である、炭素繊維の製造方法に関する。
[吸光度測定1]
繊維束2.0g及び浸漬液としてクロロホルム20gを容量50mlのビーカー内に入れる。次に超音波処理装置を用いて、出力100W、周波数40KHzで、90℃の温水中で、該浸漬液を30分間超音波処理する。超音波処理後、該浸漬液から繊維束を取り除き、得られた浸漬液を吸光度測定用のサンプル液とする。分光光度計と石英セル(セル長10mm)を用いて、分光光度計のサンプル側に前記サンプル液を、リファレンス側にクロロホルムを設置して、波長230nmの吸光度測定を行う。
[吸光度測定1]
繊維束2.0g及び浸漬液としてクロロホルム20gを容量50mlのビーカー内に入れる。次に超音波処理装置を用いて、出力100W、周波数40KHzで、90℃の温水中で、該浸漬液を30分間超音波処理する。超音波処理後、該浸漬液から繊維束を取り除き、得られた浸漬液を吸光度測定用のサンプル液とする。分光光度計と石英セル(セル長10mm)を用いて、分光光度計のサンプル側に前記サンプル液を、リファレンス側にクロロホルムを設置して、波長230nmの吸光度測定を行う。
本発明の炭素繊維の製造方法によれば、電解酸化処理後の炭素繊維束の表面に付着した異物等を効率的に除去できる。また、炭素繊維束を乾燥処理等する際に、炭素繊維束が加熱ロールに巻き付きつくことを抑制できる。
以下に本発明の詳細な説明を示す。
(炭素繊維前駆体繊維束)
本発明において、炭素繊維前駆体繊維束は、ポリアクリロニトリル系重合体からなる繊維を束ねた繊維束を使用できる(以下、「ポリアクリロニトリル」を「PAN」と略する。)。PAN系重合体としては、アクリロニトリル(以下、「AN」と略する)の単独重合体や、ANと他の単量体(以下、単に「共重合成分」と略する)との共重合体を用いることができる。
(炭素繊維前駆体繊維束)
本発明において、炭素繊維前駆体繊維束は、ポリアクリロニトリル系重合体からなる繊維を束ねた繊維束を使用できる(以下、「ポリアクリロニトリル」を「PAN」と略する。)。PAN系重合体としては、アクリロニトリル(以下、「AN」と略する)の単独重合体や、ANと他の単量体(以下、単に「共重合成分」と略する)との共重合体を用いることができる。
共重合体の場合、前記共重合成分として、耐炎化促進作用を有する単量体を、該共重合体を構成する全構成単位のうちの0.1〜5モル%以下の含有量で含むことが好ましい。耐炎化促進成分としては、カルボキシル基又はアミド基を一つ以上有するものが好ましく用いられる。共重合成分を0.1モル%以上とすることで、耐炎化処理時間を短縮できる。また、5モル%以下とすることで、耐炎化反応の暴走を抑制できる。0.5モル%以上3.0モル%以下がより好ましく、1.0モル%以上2.0モル%以下がさらに好ましい。
アクリロニトリルと共重合可能な他のモノマーとしては、特に制限は無いが、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが好ましく用いられる。溶媒に対する溶解性やANとの共重合性が優れること、及び焼成工程での耐炎化促進効果に優れていることから、アクリル酸、イタコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミドが好ましい。これらは、1種でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
本発明で用いるPAN系重合体を製造するには、従来公知の溶液重合、懸濁重合、乳化重合などを適用することができる。ポリアクリロニトリル系重合体溶液の調製に使用される溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、塩化亜鉛水溶液、硝酸などが挙げられる。
(紡糸)
本発明では、PAN系重合体を溶媒に溶解して紡糸原液とし、この紡糸原液を、湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法により口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維状の凝固せしめることにより、炭素繊維前駆体繊維束を製造できる。
(紡糸)
本発明では、PAN系重合体を溶媒に溶解して紡糸原液とし、この紡糸原液を、湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法により口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維状の凝固せしめることにより、炭素繊維前駆体繊維束を製造できる。
本発明において、前記凝固浴は、紡糸原液に用いられる用材を含む水溶液が好適に使用され、含まれる溶剤の濃度を調節して、凝固糸の空隙率を少なくするように設定する。使用する溶剤によって一般的に異なるが、例えばDMAcを使用する場合は、DMAcの濃度は50〜80重量%、好ましくは60〜75重量%である。また凝固浴の温度は低い方が好ましく、通常50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。凝固浴の温度を低くすればより緻密な糸を得ることができるが、温度を下げすぎると凝固糸の引取速度が低下し生産性が低下するので、適切な範囲に設定することが望ましい。
本発明の方法では、洗浄、延伸工程において上記で得られた膨潤糸条を洗浄及び延伸する。なお、洗浄と延伸の順番については、洗浄を先に行っても良く、また同時に行っても良い。洗浄の方法としては、特に制限はないが、一般的に用いられている、水中、特に温水中に浸漬させる方法がよい。
延伸の方法としては、水中、温水中に浸漬させながら延伸する方法、熱板、ローラー等のよる空気中での乾熱延伸法、また熱風が循環している箱型炉内での延伸でも良く、これらに限定されるものではない。経済的な観点から、温水中で行うことが好ましい。また延伸倍率は、1〜8倍とすることが好ましい。ただし、後に二次延伸を行う場合、その延伸倍率を考慮して設定することが好ましい。
本発明の方法では、油剤付与工程において上記で得られた洗浄及び延伸後の糸条を、シリコーン系油剤が入った油浴槽に導いて、糸条にシリコーン系油剤を付与する。油剤としては、シリコーン化合物を含有するシリコーン系油剤を使用する。かかるシリコーン油剤はジメチルシリコーンオイルや有機変性シリコーンオイルを用いることが好ましく、耐熱性の高いアミノ変性シリコーンオイルがより好ましい。通常は、シリコーン化合物とノニオン系乳化剤とを混合し、乳化したものを用いる。また、場合により、酸化防止剤や各種添加剤、さらにシリコーン原子を含まない有機物を混合することもできる。
本発明の方法では、乾燥緻密化において上記で得られたシリコーン系油剤を付与した糸条を乾燥緻密化する。乾燥緻密化の方法としては、熱板や加熱ローラーに接触させることにより行うことが一般的に用いられており、加熱ローラーによる乾燥が好ましく用いられる。乾燥温度が高いほど、シリコーン油剤の架橋反応が促進され、また生産性の観点からも好ましいので、単繊維間の融着が生じない範囲で高く設定できる。具体的には150℃以上が好ましく、180℃以上であればさらに好ましい。また乾燥時間は上記糸条が十分乾燥する時間をとることが好ましい。
本発明の方法では、必要に応じて、上記で得られた乾燥緻密化後の糸条を二次延伸することもできる。二次延伸の方法としては、乾熱延伸、スチーム延伸等が挙げられる。
本発明において、得ようとする炭素繊維用PAN系前駆体繊維の単繊維繊度は好ましくは1.0dtex以上4.5dte以下、より好ましくは1.0dtex以上2.5dtex以下であるのが良い。アクリル系前駆体繊維束のフィラメント数としては、好ましくは30,000以上300,000以下、より好ましくは30,000以上200,000以下、さらに好ましくは30,000以上100,000以下であるのが良い。
かかる単繊維繊度が小さすぎると、可紡性の低下、ローラー、ガイドの接触による糸切れ発生などにより、製糸工程及び焼成工程の工程通過性が低下することがある。また単繊維繊度が大きすぎると、耐炎化後の各単繊維における内外構造差が大きくなり、炭化工程での工程通過性や、得られる炭素繊維の引張強度、引張弾性率が低下するおそれがある。
(耐炎化)
炭素繊維前駆体繊維束を、200℃以上300℃以下の酸化性雰囲気中、緊張下あるいは延伸条件下で、60〜100分間加熱処理することにより、耐炎化繊維束を得ることができる。酸化性雰囲気は、酸素を含む気体であれば特に制限はないが、経済性及び安全性を考慮すると、空気が特に優れている。耐炎化装置としては、加熱した酸化性ガスを循環させる方式の熱風循環炉を挙げることができる。通常、熱風循環炉では、炉に入った繊維束を、一旦炉の外部に出した後、炉の外部に配設された折り返しロールによって、繊維束を折り返して、熱風循環炉を再び通過させ、この操作を繰り返す方法が採用されている。酸化性雰囲気としては、空気、酸素、二酸化窒素などが用いられているが、経済性の面から空気が好ましい。
(耐炎化繊維束の密度)
加熱処理後に得られる耐炎化繊維束の密度は、好ましくは1.35〜1.41g/cm3、より好ましくは1.36〜1.40g/cm3となるように加熱処理する。1.35g/cm3以上とすることにより、耐炎化反応が十分に進行し、後に行う不活性ガス雰囲気下での前炭素化処理及び炭素化処理などの高温加熱処理の際に単繊維同士の融着が抑制され、炭素繊維束を安定に生産すること可能となる。繊維密度を1.41g/cm3以下とすることにより、前記繊維束の内部への酸素の導入が適度に保たれ、最終的に得られる炭素繊維の内部構造を緻密にすることができ、性能の優れた炭素繊維束を得ることが可能となる。
(投入密度)
耐炎化工程への前駆体繊維束の投入密度は、高いほど生産性の面では好ましいが、大きくなると雰囲気加熱処理中に発熱反応により繊維束の温度が高くなり分解反応が急激に起こり、繊維束が切断するため、1500dtex/mm以上5000dtex/mm以下が好ましく、2000dtex/mm以上4000dtex/mm以下がより好ましい。
(前炭素化)
前炭素化処理では、耐炎化繊維束を、第1の炭素化炉に投入して前炭素化処理する。第1の炭素化炉内には、温度が300〜800℃の不活性ガスが供給されており、耐炎化処理された繊維束は該不活性雰囲気中を走行する間に前炭素化処理される。なお、第1の炭素化炉内に供給する不活性ガスの流れは、走行する被処理繊維束に対して平行方向でも、垂直方向でもよく、特に限定されない。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなど公知のガスを採用できるが、経済性の面から窒素が望ましい。
(炭素化)
炭素化処理では、前炭素化処理された繊維束を第2の炭素化炉に投入して炭素化処理する。第2の炭素化炉内には、最高温度が1000〜2500℃の不活性ガスが供給されており、前炭素化処理された繊維束は該不活性雰囲気中を走行する間に炭素化処理される。なお、第2の炭素化炉内に供給する不活性ガスの流れは、走行する被処理繊維に対して平行方向でも、垂直方向でもよく、特に限定されない。不活性ガスとしては、先に例示した公知の不活性ガスの中から選択して用いることができるが、経済性の面から窒素が望ましい。
(表面処理)
本発明の炭素繊維束の製造方法は、上述のようにして得られた炭素繊維を、電解液を用いた電解酸化表面処理する工程を有する。電解質としては、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、炭酸などの無機酸、酢酸酪酸、シュウ酸、マレイン酸等の有機酸及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等の単独又は2種以上の混合物がある。
(洗浄方法)
炭素繊維束を表面処理した後、炭素繊維表面には焼成過程で付着したタール・ミスト成分及び表面処理過程で発生した酸化不純物が付着あるいは結晶間のミクロボイドに沈積しており、これらを洗浄除去する必要がある。洗浄が十分でない場合、タール・ミスト成分や酸化不純物はその後の乾燥工程において加熱ロールに付着して、炭素繊維束が加熱ロールに巻き付く原因となる。
(耐炎化)
炭素繊維前駆体繊維束を、200℃以上300℃以下の酸化性雰囲気中、緊張下あるいは延伸条件下で、60〜100分間加熱処理することにより、耐炎化繊維束を得ることができる。酸化性雰囲気は、酸素を含む気体であれば特に制限はないが、経済性及び安全性を考慮すると、空気が特に優れている。耐炎化装置としては、加熱した酸化性ガスを循環させる方式の熱風循環炉を挙げることができる。通常、熱風循環炉では、炉に入った繊維束を、一旦炉の外部に出した後、炉の外部に配設された折り返しロールによって、繊維束を折り返して、熱風循環炉を再び通過させ、この操作を繰り返す方法が採用されている。酸化性雰囲気としては、空気、酸素、二酸化窒素などが用いられているが、経済性の面から空気が好ましい。
(耐炎化繊維束の密度)
加熱処理後に得られる耐炎化繊維束の密度は、好ましくは1.35〜1.41g/cm3、より好ましくは1.36〜1.40g/cm3となるように加熱処理する。1.35g/cm3以上とすることにより、耐炎化反応が十分に進行し、後に行う不活性ガス雰囲気下での前炭素化処理及び炭素化処理などの高温加熱処理の際に単繊維同士の融着が抑制され、炭素繊維束を安定に生産すること可能となる。繊維密度を1.41g/cm3以下とすることにより、前記繊維束の内部への酸素の導入が適度に保たれ、最終的に得られる炭素繊維の内部構造を緻密にすることができ、性能の優れた炭素繊維束を得ることが可能となる。
(投入密度)
耐炎化工程への前駆体繊維束の投入密度は、高いほど生産性の面では好ましいが、大きくなると雰囲気加熱処理中に発熱反応により繊維束の温度が高くなり分解反応が急激に起こり、繊維束が切断するため、1500dtex/mm以上5000dtex/mm以下が好ましく、2000dtex/mm以上4000dtex/mm以下がより好ましい。
(前炭素化)
前炭素化処理では、耐炎化繊維束を、第1の炭素化炉に投入して前炭素化処理する。第1の炭素化炉内には、温度が300〜800℃の不活性ガスが供給されており、耐炎化処理された繊維束は該不活性雰囲気中を走行する間に前炭素化処理される。なお、第1の炭素化炉内に供給する不活性ガスの流れは、走行する被処理繊維束に対して平行方向でも、垂直方向でもよく、特に限定されない。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなど公知のガスを採用できるが、経済性の面から窒素が望ましい。
(炭素化)
炭素化処理では、前炭素化処理された繊維束を第2の炭素化炉に投入して炭素化処理する。第2の炭素化炉内には、最高温度が1000〜2500℃の不活性ガスが供給されており、前炭素化処理された繊維束は該不活性雰囲気中を走行する間に炭素化処理される。なお、第2の炭素化炉内に供給する不活性ガスの流れは、走行する被処理繊維に対して平行方向でも、垂直方向でもよく、特に限定されない。不活性ガスとしては、先に例示した公知の不活性ガスの中から選択して用いることができるが、経済性の面から窒素が望ましい。
(表面処理)
本発明の炭素繊維束の製造方法は、上述のようにして得られた炭素繊維を、電解液を用いた電解酸化表面処理する工程を有する。電解質としては、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、炭酸などの無機酸、酢酸酪酸、シュウ酸、マレイン酸等の有機酸及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等の単独又は2種以上の混合物がある。
(洗浄方法)
炭素繊維束を表面処理した後、炭素繊維表面には焼成過程で付着したタール・ミスト成分及び表面処理過程で発生した酸化不純物が付着あるいは結晶間のミクロボイドに沈積しており、これらを洗浄除去する必要がある。洗浄が十分でない場合、タール・ミスト成分や酸化不純物はその後の乾燥工程において加熱ロールに付着して、炭素繊維束が加熱ロールに巻き付く原因となる。
このような電解液の付着した炭素繊維の洗浄方法としては、バス式、バイブロ式、シャワー方式などが知られている。しかし、これらの洗浄方式では一般に繊維に直接洗浄水が当たるため、繊維に対するダメージが大きく、炭素繊維束の単繊維切れ、即ち炭素繊維束の毛羽が発生する問題があった。
これらの問題を解決するには、洗浄温度や洗浄時のトウ張力を管理すること重要であり、本発明では、炭素繊維束を60℃以上で温水処理した後に、1℃以上40℃以下の水中で超音波処理することを特徴とする。
(温水処理の温度と時間)
本発明において、前記電解酸化処理された炭素繊維束を、60℃以上の温水又は沸水に9秒以上浸漬して、温水洗浄処理することが望ましい。温度を60℃以上とすることで残存する酸化不純物を効率よく除去できる。温水処理時間は9秒以上とすることで、洗浄効果を十分なものとすることができ、その後の乾燥工程において乾燥ロールに付着し巻き付きを防止できる。また、炭素繊維束を温水又は沸水中に浸漬させながら、炭素繊維束の単繊維間を通過するように温水又は沸水を該炭素繊維束に向けて噴出し、炭素繊維束を温水処理することが好ましい。
(温水処理時の張力)
炭素繊維束が温水又は沸水中に浸漬されている間に、炭素繊維束に付与される張力は0.05g/dtex以上0.2g/dtex以下が好ましく、0.07g/dtex以上0.1g/dtex以下がより好ましい。張力を0.05g/dtex以上とすれば、炭素繊維束が温水浴を通過する際の振動による衝撃を抑えることができ、炭素繊維束の毛羽の発生を抑制できる。また0.2g/dtex以下とすれば、炭素繊維束が温水浴を通過する際に、温水又は沸水が炭素繊維束内部に浸透して酸化不純物を十分に除去できる。
(水処理時の炭素繊維の形態)
本発明において、温水処理時の繊維束のトウ形態は、トウ厚みを0.1〜5mmの範囲とすることが好ましく、1〜3mmとすることがより好ましい。トウ厚みを0.1mm以上とすれば、炭素繊維束の束幅が極端に広がることを防ぎながら繊維束を十分に洗浄することができ、さらに温水浴通過時に炭素繊維束に毛羽が発生することを抑制できる。トウ厚みが5mm以下であれば、トウ内部に洗浄水が浸透して、酸化不純物を十分に除去できる。
(超音波処理による洗浄)
炭素繊維束を温水又は沸水中で温水洗浄処理した後、1℃以上40℃以下の水中で超音波処理することにより、炭素繊維束に残存する酸化不純物を除去することができ、後の乾燥処理工程で、炭素繊維束が加熱ロールに巻き付くことを防止できる。
(温水処理の温度と時間)
本発明において、前記電解酸化処理された炭素繊維束を、60℃以上の温水又は沸水に9秒以上浸漬して、温水洗浄処理することが望ましい。温度を60℃以上とすることで残存する酸化不純物を効率よく除去できる。温水処理時間は9秒以上とすることで、洗浄効果を十分なものとすることができ、その後の乾燥工程において乾燥ロールに付着し巻き付きを防止できる。また、炭素繊維束を温水又は沸水中に浸漬させながら、炭素繊維束の単繊維間を通過するように温水又は沸水を該炭素繊維束に向けて噴出し、炭素繊維束を温水処理することが好ましい。
(温水処理時の張力)
炭素繊維束が温水又は沸水中に浸漬されている間に、炭素繊維束に付与される張力は0.05g/dtex以上0.2g/dtex以下が好ましく、0.07g/dtex以上0.1g/dtex以下がより好ましい。張力を0.05g/dtex以上とすれば、炭素繊維束が温水浴を通過する際の振動による衝撃を抑えることができ、炭素繊維束の毛羽の発生を抑制できる。また0.2g/dtex以下とすれば、炭素繊維束が温水浴を通過する際に、温水又は沸水が炭素繊維束内部に浸透して酸化不純物を十分に除去できる。
(水処理時の炭素繊維の形態)
本発明において、温水処理時の繊維束のトウ形態は、トウ厚みを0.1〜5mmの範囲とすることが好ましく、1〜3mmとすることがより好ましい。トウ厚みを0.1mm以上とすれば、炭素繊維束の束幅が極端に広がることを防ぎながら繊維束を十分に洗浄することができ、さらに温水浴通過時に炭素繊維束に毛羽が発生することを抑制できる。トウ厚みが5mm以下であれば、トウ内部に洗浄水が浸透して、酸化不純物を十分に除去できる。
(超音波処理による洗浄)
炭素繊維束を温水又は沸水中で温水洗浄処理した後、1℃以上40℃以下の水中で超音波処理することにより、炭素繊維束に残存する酸化不純物を除去することができ、後の乾燥処理工程で、炭素繊維束が加熱ロールに巻き付くことを防止できる。
超音波処理は、1℃以上40℃以下の水中で行うことが好ましい。発振子を使用する場合の超音波の周波数は25kHz以上で、6秒以上超音波処理することが望ましい。25kHz以上の出力とすれば、また超音波処の時間を6秒以上とすれば、十分な洗浄効果が得られる。
(乾燥工程)
超音波処理後の炭素繊維束は、140℃以上の加熱ロールに3秒以上接触させて乾燥処理した後、400℃以上の熱風で10秒以上乾燥処理する。
(乾燥工程)
超音波処理後の炭素繊維束は、140℃以上の加熱ロールに3秒以上接触させて乾燥処理した後、400℃以上の熱風で10秒以上乾燥処理する。
炭素繊維束に含まれる水分を十分に乾燥除去しておけば、この後のサイジング処理で、炭素繊維束にサイジング剤を均一に塗布できる。
乾燥処理後の炭素繊維束は、加熱ロールに炭素繊維束が巻き付く頻度が1回/10000m以下となるように、上述した温水処理と超音波処理による洗浄条件を選択して、炭素繊維束に付着するタール・ミスト成分及び表面処理工程で酸化されたタール・ミスト成分が十分に除去しておくことが必要である。
(吸光度)
前記温水処理と超音波処理の条件は、処理する炭素繊維束の形態や、処理条件に応じて適宜選択できるが、以下の方法で得られる吸光度が0.4以下となるように、温水処理と超音波処理の条件を選択することが好ましい。吸光度が0.4以下であれば、炭素繊維束の酸化不純物が十分に除去されているため、炭素繊維束の加熱ロールへの巻き付きを防止できる。
『吸光度測定』
繊維束2.0g及び浸漬液として分光分析用のクロロホルム20gを容量50mlのビーカー内に入れる。次に超音波処理装置(IUCHI製、VS−200)を用いて、出力100W、周波数40KHzで、該浸漬液を30分間超音波処理する。超音波処理後、該浸漬液から繊維束を取り除き、得られた浸漬液を吸光度測定用のサンプル液とする。分光光度計(HITACHI製、U−3300)と石英セル(セル長10mm)を用いて、分光光度計のサンプル側に前記サンプル液を、リファレンス側にクロロホルムを設置して、スキャン速度300nm/min、サンプリング間隔1nm、スリット2nmの条件下で、波長200〜350nmの範囲内で吸光度測定を行う。まず分光分析用クロロホルムを用いたリファレンスの測定を行い、得られた結果の波長230nmにおける透過度をT0とする。続いて、前記洗浄液の吸光度を同様に測定し、得られた結果の波長230nmにおける透過度をTとする。前記透過度により算出される吸光度A=−log10(T/T0)を異物の存在量とする。
(吸光度)
前記温水処理と超音波処理の条件は、処理する炭素繊維束の形態や、処理条件に応じて適宜選択できるが、以下の方法で得られる吸光度が0.4以下となるように、温水処理と超音波処理の条件を選択することが好ましい。吸光度が0.4以下であれば、炭素繊維束の酸化不純物が十分に除去されているため、炭素繊維束の加熱ロールへの巻き付きを防止できる。
『吸光度測定』
繊維束2.0g及び浸漬液として分光分析用のクロロホルム20gを容量50mlのビーカー内に入れる。次に超音波処理装置(IUCHI製、VS−200)を用いて、出力100W、周波数40KHzで、該浸漬液を30分間超音波処理する。超音波処理後、該浸漬液から繊維束を取り除き、得られた浸漬液を吸光度測定用のサンプル液とする。分光光度計(HITACHI製、U−3300)と石英セル(セル長10mm)を用いて、分光光度計のサンプル側に前記サンプル液を、リファレンス側にクロロホルムを設置して、スキャン速度300nm/min、サンプリング間隔1nm、スリット2nmの条件下で、波長200〜350nmの範囲内で吸光度測定を行う。まず分光分析用クロロホルムを用いたリファレンスの測定を行い、得られた結果の波長230nmにおける透過度をT0とする。続いて、前記洗浄液の吸光度を同様に測定し、得られた結果の波長230nmにおける透過度をTとする。前記透過度により算出される吸光度A=−log10(T/T0)を異物の存在量とする。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本実施例においては、各種特性を次のようにして測定した。
<アクリル系前駆体繊維束及び炭素繊維束の総繊度の測定>
アクリル系前駆体繊維束及び炭素繊維束の総繊度は、JIS R 7605に準拠して測定した。
<耐炎化工程への投入密度の測定>
耐炎化工程への投入密度は、下記式より求めた。
耐炎化工程への投入密度(dtex/mm)=前駆体繊維束の総繊度/前駆体繊維束の幅
<耐炎化繊維束の密度の測定>
耐炎化繊維束の密度は、JIS R 7603に準拠して測定した。
<樹脂含浸ストランド特性>
ストランド強度及びストランド弾性率は、JIS R7601に記載された試験法に準拠して測定した。
[実施例1]
アクリロニトリル単位96%、アクリルアミド単位3%、メタクリル酸単位1%からなるアクリロニトリル系重合体(カルボン酸基の量は7.0×10−5当量、極限粘度〔η〕は1.7)を、PAN系重合体の総固形分濃度が21.2重量%となるようDMAcに溶解し、炭素繊維用アクリル系前駆体繊維の紡糸原液を得た。
<アクリル系前駆体繊維束及び炭素繊維束の総繊度の測定>
アクリル系前駆体繊維束及び炭素繊維束の総繊度は、JIS R 7605に準拠して測定した。
<耐炎化工程への投入密度の測定>
耐炎化工程への投入密度は、下記式より求めた。
耐炎化工程への投入密度(dtex/mm)=前駆体繊維束の総繊度/前駆体繊維束の幅
<耐炎化繊維束の密度の測定>
耐炎化繊維束の密度は、JIS R 7603に準拠して測定した。
<樹脂含浸ストランド特性>
ストランド強度及びストランド弾性率は、JIS R7601に記載された試験法に準拠して測定した。
[実施例1]
アクリロニトリル単位96%、アクリルアミド単位3%、メタクリル酸単位1%からなるアクリロニトリル系重合体(カルボン酸基の量は7.0×10−5当量、極限粘度〔η〕は1.7)を、PAN系重合体の総固形分濃度が21.2重量%となるようDMAcに溶解し、炭素繊維用アクリル系前駆体繊維の紡糸原液を得た。
孔径0.0060mm、孔数30000の紡糸口金を用いて、温度38℃、濃度68%のDMAc水溶液(凝固浴)に吐出湿式紡糸法により、凝固糸とした。次いで、凝固糸を60℃から98℃の温水中で脱溶媒しながら、7倍に延伸した。延伸糸をアミノシリコン系油剤1%水溶液中に浸漬した後、180℃の加熱ローラーで乾燥緻密化し、単糸繊度が1.0dtex、フィラメント数60000、総繊度60000dtexの炭素繊維前駆体繊維を得た。得られたポリアクリル系前駆体繊維束を空気中230〜250℃で緊張下に70分間加熱し密度1.37g/cm3の耐炎化繊維束に転換した。この耐炎化繊維束を窒素雰囲気中、最高温度が700℃で緊張下に1分間加熱し前炭素化繊維束とした。この炭素化処理での400〜500℃での昇温速度は200℃/分であった。得られた前炭素化繊維束を窒素雰囲気中、最高温度が1350℃で緊張下に1分間加熱し炭素化繊維束とした。この炭素化処理での1000〜1200℃での昇温速度は400℃/分であった。
得られた炭素化繊維束を電解酸化による表面処理後、85℃の温水で炭素繊維束にかかるトウ張力が0.05g/dtex、トウ厚みが2mmとなる条件で9秒間の洗浄処理を行った。こうして得られた洗浄後の炭素繊維束を2.0g採取し、評価サンプルとした。前記繊維束の230nmにおける吸光度は0.33であった。前記の条件で洗浄した炭素繊維束に対し、超音波洗浄を行った。日本エマソン振動子付き超音波洗浄槽BJ―1112STを使用し、25℃の水中で超音波周波数25KHzで6秒間の超音波処理を行った。こうして得られた洗浄後の炭素繊維束を2.0g採取し、評価サンプルとした。前記繊維束の230nmにおける吸光度は0.27であった。洗浄後の炭素繊維束に対し、140℃以上で3秒以上のロール乾燥工程、400℃以上での10秒以上の熱風乾燥工程を経て乾燥工程中、ロールへの巻きつき回数は0回/10000mだった。
得られた乾燥後の炭素繊維束に対しサイジング剤を付与し、総繊度60000dTexの炭素繊維束とした。この炭素繊維束の樹脂含浸ストランド特性を測定すると弾性率267GPa、強度4.9GPaであった。
[実施例2〜6、比較例1〜6]
実施例2〜7、比較例1〜6については、実施例1で用いた炭素繊維束を表1で示した洗浄条件で処理を行った。得られた洗浄後の炭素繊維束を実施例1と同じ条件で乾燥、サイジング処理を行い、炭素繊維束とした。その結果を表1に示す。
[実施例2〜6、比較例1〜6]
実施例2〜7、比較例1〜6については、実施例1で用いた炭素繊維束を表1で示した洗浄条件で処理を行った。得られた洗浄後の炭素繊維束を実施例1と同じ条件で乾燥、サイジング処理を行い、炭素繊維束とした。その結果を表1に示す。
実施例1〜2と比較例1を比較すると、洗浄時の洗浄温度の影響を確認でき、温度が低いと十分な洗浄効果が得られず、乾燥ロールへタール・ミスト成分が付着し、巻きつき回数が増加した。
実施例1、実施例3と比較例2を比較すると、洗浄時の炭素繊維束にかかる張力の影響を確認でき、張力が高いと十分な洗浄効果が得られず、乾燥ロールへタール・ミスト成分が付着し、巻きつき回数が増加した。
実施例4〜5と比較例3を比較すると、洗浄時における炭素繊維束のトウ形態の影響を確認でき、トウ厚みが大きいと十分な洗浄効果が得られず、乾燥ロールへタール・ミスト成分が付着し、巻きつき回数が増加した。
実施例1、実施例6と比較例4を比較すると洗浄時の洗浄時間の影響を確認でき、洗浄時間が短いと十分な洗浄効果が得られず、乾燥ロールへタール・ミスト成分が付着し、巻きつき回数が増加した。
実施例1と比較例5を比較すると洗浄後の超音波処理の影響が確認でき、超音波照射時間が短いと洗浄効果はほとんど得られず、超音波処理後の吸光度もほとんど低下しなかった。
実施例1と比較例6を比較すると超音波処理時に温水又は沸水を使用することでの洗浄効果を確認できる。90℃の温水で超音波洗浄を120秒間行うことで吸光度は0.17まで低減されることを確認できたが、長大な時間が必要となり連続的な炭素繊維焼成設備への導入にはコスト面から問題となる。
Claims (3)
- 単繊維繊度が1.0dtex以上、総繊度が30000dtex以上であるポリアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維束を、
酸化性雰囲気中で耐炎化処理し、
次いで不活性雰囲気中で炭素化処理すること、
前記炭素化処理された繊維束を電解酸化処理すること、
前記電解酸化処理された繊維束を、60℃以上の温水又は沸水に9秒以上浸漬して、炭素繊維束の単繊維間を通過するように温水又は沸水を該炭素繊維束に向けて噴出し、温水処理すること、
前記温水処理された繊維束を、1℃以上40℃以下の水中で周波数25kHz以上で6秒以上、超音波処理すること、
前記超音波処理された繊維束を、140℃以上3秒以上加熱ロール処理することを有する炭素繊維の製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法により得られる炭素繊維が、
以下の吸光度測定で測定した230nmの吸光度が0.4以下である、請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
[吸光度測定]
繊維束2.0g及び浸漬液としてクロロホルム20gを容量50mlのビーカー内に入れる。次に超音波処理装置を用いて、出力100W、周波数40KHzで、90℃の温水中で、該浸漬液を30分間超音波処理する。超音波処理後、該浸漬液から繊維束を取り除き、残った浸漬液を吸光度測定用のサンプル液とする。分光光度計と石英セル(セル長10mm)を用いて、分光光度計のサンプル側に前記サンプル液を、リファレンス側にクロロホルムを設置して、波長230nmの吸光度測定を行う。 - 前記加熱ロール処理において、加熱ロールへの巻きつき頻度が、1回/10000m以下である、請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
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CN114457463A (zh) * | 2020-11-10 | 2022-05-10 | 中国石油化工股份有限公司 | 一种大丝束碳纤维预氧化炉和预氧化方法 |
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2014
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