JP2012126970A - 鋼線、鋼線の製造方法、鋼線を用いたネジ又はボルトの製造方法、及び、鋼線を用いて製造されたネジ又はボルト - Google Patents

鋼線、鋼線の製造方法、鋼線を用いたネジ又はボルトの製造方法、及び、鋼線を用いて製造されたネジ又はボルト Download PDF

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Abstract

【課題】熱処理も表面処理も施すことなく硬度及び延性に優れるネジ又はボルトを鋼線を素材として用いて製造する。鋼線を加工してネジ又はボルトを製造する際に生じる加工硬化に起因して工具寿命が短くなる問題を抑制する。
【解決手段】炭素含有量が0.06質量%以下、引張強さが800〜1220MPa、絞りが70%以上、ビッカース硬さが250〜435、長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径が5μm以下である鋼線を素材として用い、該鋼線を加工することにより、強度区分が8.8(引張強さ800MPa、降伏荷重640MPa)〜12.9(引張強さ1220MPa、降伏荷重1100MPa)であるネジ又はボルトを製造する。前記鋼線は、炭素含有量が0.06質量%以下の鋼製線材を減面率が85〜99%に伸線及び/又は減面率が93〜99%に圧延して加工硬化させることにより製造する。
【選択図】図8

Description

本発明は、鋼線、鋼線の製造方法、鋼線を用いたネジ又はボルトの製造方法、及び、鋼線を用いて製造されたネジ又はボルトに関する。
一般に、ネジ又はボルトを、鋼線を素材として用いて製造する場合、鋼線を、例えば圧造、鍛造、転造あるいは切削等、加工することにより、ネジ又はボルトを製造する。例えば、十字溝付きタッピンネジは、鋼線を圧造して頭部を形成し、頭部にパンチ(工具)を打ち込んで十字溝を打刻し、軸部を転造して螺子部を形成することにより、製造される。また、自動車用のウエルドボルトは、鋼線を圧造してフランジ部を形成し、軸部を転造して螺子部を形成することにより、製造される。その際、フランジ部には車体側部材への接合用の複数の突起が圧造時に突設される。
金属材料を冷間加工すると、塑性変形によって硬度や引張強さ(破断強度)が増加すると共に、伸びや絞り(延性)が減少する、加工硬化と称される現象が生じる。この加工硬化は、加工率が大きいほど顕著となる。
加工率は、例えば、加工前の素材の断面積をS0、加工後の素材の断面積をS1とすると、下記式のように、加工前の素材の断面積S0に対する、加工によって減少した素材の断面積(S0−S1)の比率で定義される値とすることができる。
加工率(%)={(S0−S1)/S0}×100
十字溝付きタッピンネジの場合、頭部は、鋼線の圧造により形成されるから、加工硬化によって頭部の硬度は加工前の鋼線の硬度よりも増加する。同様に、螺子部は、軸部の転造により形成されるから、加工硬化によって螺子部の硬度は加工前の軸部の硬度よりも増加する。十字溝は、硬度が増加した頭部にパンチを打ち込んで打刻されるから、パンチは、相対的に過酷な条件の下で使用される。そのため、パンチ寿命(工具寿命)が短くなるという問題がある。
一方、ウエルドボルトの場合、フランジ部は、鋼線の圧造により形成されるが、その際、フランジ部には車体側部材への接合用の複数の突起が突設されるから、圧造時の加工率が相対的に大きくなる。また、フランジ部内における複数の接合用突起の配置が必ずしも均等でない場合が多く、圧造時の変形がアンバランスなものになりがちである。そのため、フランジ部の加工硬化が顕著となり、フランジ部の延性が加工限界を超えて減少し、圧造時にフランジ部に破断や割れが発生する可能性がある。
特許文献1には、エネルギー消費が大きいという問題がある浸炭焼入れや焼戻し処理を施すことなく、ねじ込み性(硬度)及びねじり強さ(延性)のいずれにも優れる高強度タッピンネジを提供する技術が記載されている。それによれば、タッピンネジは、平均粒径が2μm以下の超微細粒フェライト組織を有し、表面に、金属メッキ皮膜、クロメート処理皮膜あるいは電着塗装皮膜が形成されている。また、タッピンネジは、ビッカース硬さが250〜360であり、表面に、金属メッキ皮膜、クロメート処理皮膜あるいは電着塗装皮膜が形成されている。また、タッピンネジは、タッピンネジの成形体本体に、金属メッキ等の表面処理を施すことにより製造される。
特開2007−2950号公報(段落0009、0010、0017、0020、0025)
特許文献1に記載の技術では、タッピンネジの成形体本体に、熱処理を施す必要はないが、金属メッキ等の表面処理を施す必要がある。そのため、製造工程が増え、製造時間及び製造コストが増大する。
本発明は、前記の事情を鑑みてなされたものであり、熱処理も表面処理も施すことなく硬度及び延性に優れるネジ又はボルトを製造するための素材として用いられ得る鋼線、該鋼線の製造方法、該鋼線を用いたネジ又はボルトの製造方法、及び、該鋼線を用いて製造されたネジ又はボルトを提供することを目的とする。また、鋼線を加工してネジ又はボルトを製造する際に生じる加工硬化に起因して工具寿命が短くなる問題を抑制することを目的とする。
本発明は、炭素(C)含有量が0.06質量%以下、引張強さが800〜1220MPa、絞りが70%以上、ビッカース硬さが250〜435、長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径が5μm以下、である鋼線に関する。
この鋼線においては、チタン(Ti)を0.01〜0.08質量%、又は、ニオブ(Nb)を0.005〜0.05質量%、含有していることが好ましい。
さらに、前記鋼線においては、その他の成分としてマンガン(Mn)を0.1〜0.6質量%含有し、残部が鉄(Fe)及び不可避不純物であることが好ましい。
また、本発明は、炭素(C)含有量が0.06質量%以下の鋼製線材を減面率が85〜99%に伸線及び/又は減面率が93〜99%に圧延して加工硬化させることにより前記鋼線を製造する、鋼線の製造方法に関する。
減面率は、加工前の鋼製線材の断面積をAin、加工後の鋼製線材の断面積をAoutとすると、下記式のように、加工前の鋼製線材の断面積Ainに対する、加工によって減少した鋼製線材の断面積(Ain−Aout)の比率で表される。
減面率(%)={(Ain−Aout)/Ain}×100
なお、85〜99%の減面率又は93〜99%の減面率は、例えば、鋼製線材の線径(直径)を3.4mmから1.3mmに加工することにより85.4%の減面率が達成される。また、鋼製線材の線径を5mmから1.3mmに加工することにより93.2%の減面率が達成される。また、鋼製線材の線径を8mmから1.3mmに加工することにより97.4%の減面率が達成される。また、鋼製線材の線径を10mmから1.3mmに加工することにより98.3%の減面率が達成される。
また、本発明は、前記鋼線を素材として用い、該鋼線を加工することにより、強度区分が8.8(引張強さ800MPa、降伏荷重(耐力ともいう。以下同じ。)640MPa)〜12.9(引張強さ1220MPa、降伏荷重1100MPa)であるネジ又はボルトを製造する、鋼線を用いたネジ又はボルトの製造方法に関する。
また、本発明は、前記鋼線を素材として用い、該鋼線を加工することにより製造された、強度区分が8.8(引張強さ800MPa、降伏荷重640MPa)〜12.9(引張強さ1220MPa、降伏荷重1100MPa)である、鋼線を用いて製造されたネジ又はボルトに関する。
また、本発明は、鋼線を素材として用い、該鋼線を加工することにより、ネジ又はボルトを製造するネジ又はボルトの製造方法であって、製造しようとするネジ又はボルトの所定部分の必要最小硬度Aを決定する工程、鋼線の一部又は全部を所定の加工率で加工することにより前記所定部分を形成した後における該所定部分の硬度が前記必要最小硬度A以上の硬度aとなるように、鋼線の加工前硬度Bを前記加工率に基き決定する工程、決定した加工前硬度Bの鋼線が得られるように、炭素(C)含有量が0.06質量%以下の鋼製線材を減面率が85〜99%に伸線及び/又は減面率が93〜99%に圧延して加工硬化させることにより、炭素(C)含有量が0.06質量%以下、引張強さが800〜1220MPa、絞りが70%以上、ビッカース硬さが250〜435、長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径が5μm以下、である鋼線を製造する工程、及び、得られた鋼線の一部又は全部を前記加工率で加工することにより、前記所定部分を形成する工程、を含む、鋼線を用いたネジ又はボルトの製造方法に関する。
この製造方法においては、製造しようとするネジ又はボルトは樹脂用タッピンネジであり、所定部分は樹脂用タッピンネジの螺子部であることが好ましい。
また、本発明は、鋼線を素材として用い、該鋼線を加工することにより、ネジ又はボルトを製造するネジ又はボルトの製造方法であって、製造しようとするネジ又はボルトの必要最小硬度Xを決定する工程、決定した必要最小硬度X以上の硬度xの鋼線が得られるように、炭素(C)含有量が0.06質量%以下の鋼製線材を減面率が85〜99%に伸線及び/又は減面率が93〜99%に圧延して加工硬化させることにより、炭素(C)含有量が0.06質量%以下、引張強さが800〜1220MPa、絞りが70%以上、ビッカース硬さが250〜435、長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径が5μm以下、である鋼線を製造する工程、及び、得られた鋼線を加工することにより、ネジ又はボルトを製造する工程、を含む、鋼線を用いたネジ又はボルトの製造方法に関する。
この製造方法においては、製造しようとするネジ又はボルトはフランジ部を有するウエルドボルト又は長尺ボルトであることが好ましい。
本発明によれば、熱処理も表面処理も施すことなく硬度及び延性に優れるネジ又はボルトを製造することができる。併せて、鋼線を加工してネジ又はボルトを製造する際に生じる加工硬化に起因して工具寿命が短くなる問題を抑制することができる。
本発明の実施形態において製造しようとする樹脂用タッピンネジの、(a)側面図、及び(b)平面図である。 前記樹脂用タッピンネジの製造における、(a)準備工程の手順を示す流れ図、(b)鋼製線材から鋼線を製造する手順を示す流れ図、及び(c)鋼線を素材として樹脂用タッピンネジを製造する手順を示す流れ図である。 前記樹脂用タッピンネジの製造における、鋼線を素材として樹脂用タッピンネジを製造する際の加工率と硬度及び延性との関係(加工硬化)を示す特性図である。 本発明の実施形態において製造しようとするウエルドボルトの、(a)側面図、及び(b)平面図である。 前記ウエルドボルトの製造における、(a)準備工程の手順を示す流れ図、(b)鋼製線材から鋼線を製造する手順を示す流れ図、及び(c)鋼線を素材としてウエルドボルトを製造する手順を示す流れ図である。 前記ウエルドボルトの製造における、鋼線を素材としてウエルドボルトを製造する際の加工率と硬度及び延性との関係(加工硬化)を示す特性図である。 前記樹脂用タッピンネジの製造又は前記ウエルドボルトの製造における、鋼製線材から鋼線を製造する際の冷間圧延に用いられ得るカリバーロールの説明図である。 実施例において鋼製線材をダイス伸線又はロール圧延した場合の減面率と引張強さとの関係を示すグラフである。
本発明者等は、製造しようとするネジ又はボルトの所定部分(例えば樹脂用タッピンネジの螺子部等)の必要最小硬度、あるいは、製造しようとするネジ又はボルト(例えば自動車用のウエルドボルトや長尺ボルト等)の必要最小硬度を、素材として用いる鋼線の硬度で確保しておけば(例えば前記必要最小硬度以上の硬度の鋼線を素材として用いれば)、鋼線を、例えば圧造、鍛造、転造あるいは切削等することにより、ネジ又はボルトの成形体本体に加工した後は、該成形体本体に熱処理や表面処理を施さなくても、該成形体本体には前記必要最小硬度が確保されることに着目した。
その場合に、問題は、鋼線を加工してネジ又はボルトを製造する際に生じる加工硬化である。すなわち、従来は熱処理や表面処理によって実現していたほど大きい硬度の鋼線を加工するのであるから、加工後の硬度は加工硬化によって相対的により大きい硬度まで増加する。そのため、加工を行なうための工具(例えばパンチ等)が相対的により過酷な条件の下で使用されることとなり、工具寿命が短くなる問題がより顕著となる。
この点につき、本発明者等は、鋼線の炭素(C)含有量を0.06質量%以下とすることにより、鋼線の加工硬化を相対的に低く抑えることができ、結果として、加工硬化に起因して工具寿命が短くなる問題を抑制することができることを見出して、本発明を完成したものである。
<鋼線>
本実施形態においては、鋼線は、炭素(C)含有量が0.06質量%以下、引張強さが800〜1220MPa、絞りが70%以上、ビッカース硬さが250〜435、長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径が5μm以下、である。
鋼線の炭素含有量を0.06質量%以下とすることにより、鋼線は純鉄に近い極低炭素含有量の鋼線となり、そのため、鋼線の加工硬化を相対的に低く抑えることができ、結果として、加工硬化に起因して工具寿命が短くなる問題を抑制することができる。また、ネジ又はボルトへの鋼線の冷間加工性の向上が図られる。
炭素含有量は、0.03質量%以下がより好ましく、可能であれば0質量%が望ましい。
鋼線の引張強さを800〜1220MPa、絞りを70%以上、ビッカース硬さを250〜435、長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径を5μm以下とすることにより、熱処理も表面処理も施すことなく硬度及び延性に優れるネジ又はボルトを製造することができる。また、製造しようとするネジ又はボルトの所定部分の必要最小硬度、あるいは、製造しようとするネジ又はボルトの必要最小硬度を、素材として用いる鋼線の硬度で確保することができる。
本実施形態においては、鋼線は、チタン(Ti)を0.01〜0.08質量%、又は、ニオブ(Nb)を0.005〜0.05質量%、含有している。チタン又はニオブを含有する鋼線は、チタン又はニオブの窒化物がフェライト組織の結晶の成長を抑制するので、フェライト組織の結晶粒径のばらつきが小さく均質で、かつフェライト組織の平均結晶粒径が5μm以下の超微細粒組織の鋼線を確実に得ることができる。その結果、鋼線の冷間加工時における加工限界超えに起因する破断や割れの抑制が図られる。つまり、加工限界を上げることができる。なお、チタンとニオブとでは、入手のし易さやコストの観点から、チタンがより好ましく用いられ得る。
チタン含有量を0.01〜0.08質量%とすることにより、結晶粒の微細化、加工限界の上昇が図られる他、ネジ又はボルトへの鋼線の冷間加工性の向上が図られる。
チタン含有量は、0.03〜0.06質量%がより好ましい。
ニオブ含有量を0.005〜0.05質量%とすることにより、結晶粒の微細化、加工限界の上昇が図られる他、ネジ又はボルトへの鋼線の冷間加工性の向上が図られる。
ニオブ含有量は、0.02〜0.03質量%がより好ましい。
本実施形態においては、鋼線は、その他の成分としてマンガン(Mn)を0.1〜0.6質量%含有し、残部が鉄(Fe)及び不可避不純物である。不可避不純物は、例えば、窒素(N)0.007質量%以下、酸素(O)0.005質量%以下等である。鋼線のその他の成分含有量をこのような微少量に規定することにより、鋼線が純鉄に近い鋼線となることが確実に図られる。
マンガン含有量を0.1〜0.6質量%とすることにより、ネジ又はボルトへの鋼線の冷間加工性の向上が図られる。
マンガン含有量は、0.2〜0.45質量%がより好ましい。
<鋼線の製造方法>
本実施形態においては、前記鋼線は、炭素含有量が0.06質量%以下の鋼製線材を減面率が85〜99%に伸線及び/又は減面率が93〜99%に圧延して加工硬化させることにより製造することができる。
なお、85〜99%の減面率又は93〜99%の減面率は、例えば、鋼製線材の線径(直径)を3.4mmから1.3mmに加工することにより85.4%の減面率が達成される。また、鋼製線材の線径を5mmから1.3mmに加工することにより93.2%の減面率が達成される。また、鋼製線材の線径を8mmから1.3mmに加工することにより97.4%の減面率が達成される。また、鋼製線材の線径を10mmから1.3mmに加工することにより98.3%の減面率が達成される。
本実施形態で採用し得る伸線や圧延は、特に限定されず、例えば、従来より鋼製線材の冷間圧延の技術分野で行なわれる伸線や圧延を広く採用することができる。伸線としては、例えばダイス伸線やロール伸線等が好ましい。圧延としては、例えば断面形状が六角形の冷間圧延用カリバーロールを用いたロール圧延等が好ましい。
本実施形態においては、伸線のみ行なって鋼製線材を加工硬化させてもよく、圧延のみ行なって鋼製線材を加工硬化させてもよい。また、伸線と圧延を両方行なって鋼製線材を加工硬化させてもよい。いずれの場合も、鋼製線材を減面率が85〜99%に伸線あるいは減面率が93〜99%に圧延することにより、加工硬化が生じて、硬度が増加した鋼線、すなわち、引張強さが800〜1220MPa、ビッカース硬さが250〜435である鋼線が得られる。しかも、得られた鋼線は良好な延性が保たれている(絞りが70%以上)。また、得られた鋼線は、フェライト組織が超微細粒組織の鋼線である(長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径が5μm以下)。
伸線は、得られる鋼線の結晶粒をより微細にする観点、及び、得られる鋼線の寸法精度をより向上させる観点から、好ましく行われる。
鋼製線材の線径は、伸線装置や圧延装置で伸線や圧延が実行可能な線径であればよい。例えば、ロール径(直径)が300〜500mmのカリバーロールを用いた場合には、線径(直径)が25〜35mmの鋼製線材を圧延することができ、ロール径が150〜250mmのカリバーロールを用いた場合には、線径が12〜25mmの鋼製線材を圧延することができ、ロール径が80〜160mmのカリバーロールを用いた場合には、線径が5〜12mmの鋼製線材を圧延することができ、ロール径が60〜80mmのカリバーロールを用いた場合には、線径が2〜5mmの鋼製線材を圧延することができる。
本実施形態においては、鋼製線材を伸線及び/又は圧延する前に、線材の表面に付着しているスケールを除去する観点から、酸洗いやショットブラストを行うことが好ましい。また、併せて、皮膜処理を行なうことも好ましい。
本実施形態においては、鋼製線材を伸線及び/又は圧延した後に、球状化焼鈍を省略することができる。この点においても、エネルギー消費が大きい熱処理を施すことがなく、例えばCO削減への寄与が図られる。
<ネジ又はボルトの製造方法>
本実施形態においては、前記鋼線を素材として用い、該鋼線を、例えば圧造、鍛造、転造あるいは切削等、加工することにより、強度区分が8.8(引張強さ800MPa、降伏荷重640MPa)〜12.9(引張強さ1220MPa、降伏荷重1100MPa)であるネジ又はボルトを製造することができる。このネジ又はボルトのビッカース硬さは250〜435である。強度区分は、好ましくは、8.8〜10.9(引張強さ1040MPa、降伏荷重940MPa)である。この場合のビッカース硬さは250〜380である。
次に、図面を参照して、本実施形態に係る、鋼線を用いたネジ又はボルトの製造方法の具体例を詳しく説明する。
[樹脂用タッピンネジを製造する場合]
図1(a)は、本実施形態において製造しようとする樹脂用タッピンネジ10の側面図、図1(b)は平面図である。樹脂用タッピンネジ10は、頭部11と螺子部12とを有し、頭部11には、ドライバーの先端が嵌合される十字溝13が打刻されている。一般に、タッピンネジ10は、自らワーク(一般に、木材、樹脂、金属板等)にネジを切っていくから、螺子部12の硬度はワークの硬度よりも大きくなければならない。さもないと、螺子部12が潰れてしまうからである。
図2(a)は、樹脂用タッピンネジ10の製造における準備工程の手順を示す流れ図である。まず、製造しようとする樹脂用タッピンネジ10の螺子部12の必要最小硬度Aを決定する。この螺子部12の必要最小硬度Aは、螺子部12が潰れずに自らワーク(本例では樹脂)にネジを切っていくのに必要な螺子部12の最小硬度である。
次いで、鋼線の加工前硬度Bを決定する。鋼線の加工前硬度Bは、鋼線の一部を所定の加工率(本例では螺子部転造の加工率)で加工することにより螺子部12を形成した後における該螺子部12の硬度が前記必要最小硬度A以上の硬度aとなるように、前記加工率(螺子部転造の加工率)に基き決定される。
図3は、樹脂用タッピンネジ10の製造における、鋼線を素材として樹脂用タッピンネジ10を製造する際の加工率と硬度及び延性との関係(加工硬化)を示す特性図である。横軸は加工率(%)を表し、本実施形態では、頭部圧造よりも螺子部転造の加工率が大きく、螺子部転造よりも十字溝打刻の加工率が大きい。縦軸は硬度及び延性を表し、本実施形態では、螺子部12の必要最小硬度Aがビッカース硬さ(HV)でおよそ300である。そのため、実線ア(本発明品)を参照すると、螺子部転造の加工率において、必要最小硬度Aよりも大きい硬度a(ビッカース硬さ(HV)でおよそ305)が決定される。
図3において、横軸の左端における硬度は、加工率がゼロの(未加工の)鋼線の硬度、すなわち加工前硬度である。実線ア(本発明品)を参照すると、加工率がゼロの鋼線の加工前硬度Bは、ビッカース硬さ(HV)でおよそ250が決定される。
図2(b)は、樹脂用タッピンネジ10の製造における鋼製線材から鋼線を製造する手順を示す流れ図である。酸洗い・皮膜処理を行なった後、冷間圧延、例えばダイス伸線及び/又はロール圧延を行なう。
より具体的には、決定した加工前硬度B(ビッカース硬さ(HV)でおよそ250)の鋼線が得られるように、炭素含有量が0.06質量%以下の鋼製線材を減面率が85〜99%に伸線及び/又は減面率が93〜99%に圧延して加工硬化させることにより、炭素含有量が0.06質量%以下、引張強さが800〜1220MPa、絞りが70%以上、ビッカース硬さが250〜435、長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径が5μm以下、である鋼線を製造する。
図2(c)は、樹脂用タッピンネジ10の製造における鋼線を素材として樹脂用タッピンネジ10を製造する手順を示す流れ図である。得られた鋼線の一部を頭部圧造の加工率で加工することにより頭部11を形成する。次いで、頭部11を十字溝打刻の加工率で加工することにより頭部11に十字溝13を形成する。次いで、軸部を螺子部転造の加工率で加工することにより螺子部12を形成する。
その際に、図3の実線ア(本発明品)を参照すると、鋼線の炭素含有量を0.06質量%以下とすることにより、鋼線の加工硬化を相対的に低く抑える(硬度の増加を低く抑える、延性の減少を低く抑える)ことができ、結果として、加工硬化に起因して工具寿命が短くなる問題を抑制することができる。より具体的には、十字溝打刻の加工率において頭部11の硬度bはビッカース硬さ(HV)でおよそ320程度にしか上昇していない。そのため、十字溝を打刻するための工具であるパンチの寿命が伸びることになる。
しかも、螺子部12の必要最小硬度A(ビッカース硬さ(HV)でおよそ300)を、素材として用いる鋼線の硬度(加工前硬度Bがビッカース硬さ(HV)でおよそ250、螺子部転造後の硬度aがビッカース硬さ(HV)でおよそ305)で確保しているので、鋼線をタッピンネジ10の成形体本体に加工した後は、該成形体本体に熱処理や表面処理を施さなくても、該成形体本体には前記必要最小硬度Aが確保されている。
本実施形態によれば、熱処理も表面処理も施すことなく硬度及び延性に優れる樹脂用タッピンネジ10を製造することができる。併せて、鋼線を加工して樹脂用タッピンネジ10を製造する際に生じる加工硬化に起因して工具(パンチ)寿命が短くなる問題を抑制することができる。
比較のため、図3の鎖線イ(従来の非調質品:炭素含有量が0.15〜0.25質量%)を参照すると、加工後の硬度は加工硬化によって相対的により大きい硬度まで増加する。そのため、加工を行なうための工具(例えばパンチ等)の使用がより過酷となり、工具寿命が短くなる問題がより顕著となる。つまり、本発明品アは、炭素含有量が相対的に低いから、加工率の増大に伴う硬度の上昇が小さいのに対し、従来の非調質品イは、炭素含有量が相対的に高いから、加工率の増大に伴う硬度の上昇が大きいのである。
また、図3の破線ウ(従来の球状化処理品)を参照すると、鋼線の加工前硬度は小さいが、加工硬化が著しく、従来の非調質品イと同様、十字溝打刻時の硬度の上昇が大きい。
なお、図3の鎖線エ(参考品)は、炭素含有量が0.06質量%以下の鋼製線材をそのまま用いた場合を例示している。つまり、炭素含有量が0.06質量%以下の鋼製線材を減面率が85〜99%に伸線及び/又は減面率が93〜99%に圧延して加工硬化させることによりビッカース硬さ(HV)が250に上昇した鋼線を用いずに、ビッカース硬さ(HV)が120の鋼製線材を用いた場合を例示している。炭素含有量が0.06質量%以下であるから、加工硬化が低く抑えられるが、加工前硬度が小さい(ビッカース硬さ(HV)が120しかない)ため、螺子部必要最小硬度Aが得られないことを示している。
[ウエルドボルトを製造する場合]
図4(a)は、本実施形態において製造しようとするウエルドボルト20の側面図、図2(b)は平面図である。ウエルドボルト20は、フランジ部21と螺子部22とを有し、フランジ部21には、車体側部材への接合用の複数の突起23が突設されている。一般に、ウエルドボルト20は、大荷重にも耐え得るだけの高硬度・高強度が要求される。
図5(a)は、ウエルドボルト20の製造における準備工程の手順を示す流れ図である。まず、製造しようとするウエルドボルト20の必要最小硬度Xを決定する。このウエルドボルト20の必要最小硬度Xは、ウエルドボルト20が大荷重にも破壊せずに耐え得るのに必要なウエルドボルト20の最小硬度である。
図6は、ウエルドボルト20の製造における、鋼線を素材としてウエルドボルト20を製造する際の加工率と硬度及び延性との関係(加工硬化)を示す特性図である。横軸は加工率(%)を表し、本実施形態では、螺子部転造よりもフランジ部圧造の加工率が大きい。縦軸は硬度及び延性を表し、本実施形態では、ウエルドボルト20の必要最小硬度Xがビッカース硬さ(HV)でおよそ230である。そのため、実線カ(本発明品)を参照すると、加工率がゼロの(未加工の)鋼線の加工前硬度において、必要最小硬度Xよりも大きい硬度x(ビッカース硬さ(HV)でおよそ250)が決定される。
図5(b)は、ウエルドボルト20の製造における鋼製線材から鋼線を製造する手順を示す流れ図である。酸洗い・皮膜処理を行なった後、冷間圧延、例えばダイス伸線及び/又はロール圧延を行なう。
より具体的には、決定した必要最小硬度X以上の硬度x(ビッカース硬さ(HV)でおよそ250)の鋼線が得られるように、炭素含有量が0.06質量%以下の鋼製線材を減面率が85〜99%に伸線及び/又は減面率が93〜99%に圧延して加工硬化させることにより、炭素含有量が0.06質量%以下、引張強さが800〜1220MPa、絞りが70%以上、ビッカース硬さが250〜435、長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径が5μm以下、である鋼線を製造する。
図5(c)は、ウエルドボルト20の製造における鋼線を素材としてウエルドボルト20を製造する手順を示す流れ図である。得られた鋼線の一部をフランジ部圧造の加工率で加工することにより複数の突起23が突設されたフランジ部21を形成する。次いで、得られた鋼線の一部を螺子部転造の加工率で加工することにより螺子部22を形成する。
その際に、図6の実線カ(本発明品)を参照すると、鋼線の炭素含有量を0.06質量%以下とすることにより、鋼線の加工硬化を相対的に低く抑える(硬度の増加を低く抑える、延性の減少を低く抑える)ことができ、結果として、加工硬化に起因して工具寿命が短くなる問題を抑制することができる。より具体的には、螺子部転造の加工率において鋼線の硬度cはビッカース硬さ(HV)でおよそ300程度にしか上昇していない。また、フランジ部圧造の加工率において鋼線の硬度dはビッカース硬さ(HV)でおよそ320程度にしか上昇していない。そのため、工具寿命が伸びることになる。
また、ウエルドボルト20の場合、フランジ部21には、車体側部材への接合用の複数の突起23が突設されるから、圧造時の加工率が相対的に大きくなる。また、フランジ部21内における複数の接合用突起23の配置が均等でない(図4(b)参照)ので、圧造時の変形がアンバランスなものとなる。そのため、フランジ部21の加工硬化が顕著となり、フランジ部21の延性が加工限界Cを超えて減少し、圧造時にフランジ部21に破断や割れが発生する可能性がある。しかしながら、本実施形態では、加工硬化が低く抑えられることにより、圧造時においても加工限界Cを超えることもない(圧造時における鋼線の硬度dはビッカース硬さ(HV)でおよそ320程度)。そのため、圧造時にフランジ部21に破断や割れが発生する問題が抑制される。
しかも、ウエルドボルト20の必要最小硬度X(ビッカース硬さ(HV)でおよそ230)を、素材として用いる鋼線の硬度(加工前硬度xがビッカース硬さ(HV)でおよそ250)で確保しているので、鋼線をウエルドボルト20の成形体本体に加工した後は、該成形体本体に熱処理や表面処理を施さなくても、該成形体本体には前記必要最小硬度Xが確保されている。
本実施形態によれば、熱処理も表面処理も施すことなく硬度及び延性に優れるウエルドボルト20を製造することができる。併せて、鋼線を加工してウエルドボルト20を製造する際に生じる加工硬化に起因して工具寿命が短くなる問題を抑制することができる。また、延性が加工限界Cを超えて減少し、圧造時にフランジ部21に破断や割れが発生する問題が抑制される。
比較のため、図6の鎖線キ(従来の非調質品:炭素含有量が0.15〜0.25質量%)を参照すると、加工後の硬度は加工硬化によって相対的により大きい硬度まで増加する。そのため、加工を行なうための工具の使用がより過酷となり、工具寿命が短くなる問題がより顕著となる。また、延性が加工限界Cを超えて減少し、圧造時にフランジ部21に破断や割れが発生する問題がより顕著となる。つまり、本発明品カは、炭素含有量が相対的に低いから、加工率の増大に伴う硬度の上昇及び延性の減少が小さいのに対し、従来の非調質品キは、炭素含有量が相対的に高いから、加工率の増大に伴う硬度の上昇及び延性の減少が大きいのである。
<冷間圧延用カリバーロール>
図7は、前記樹脂用タッピンネジの製造又は前記ウエルドボルトの製造における、鋼製線材から鋼線を製造する際の冷間圧延(より詳しくはロール圧延)に用いられ得るカリバーロール30の説明図である。図7において、符号31は、カリバーロール30の第1圧延面、符号32は、カリバーロール30の第2圧延面、符号40は、鋼製線材である。
従来、断面形状が六角形の冷間圧延用カリバーロール30においては、第2圧延面32,32同士がなす角度は90°であり、隣接するロール間の減面率は最大12.5%程度が通例であった。
これに対し、図7に示すように、第2圧延面32,32同士がなす角度を80°とすると、隣接するロール間の減面率を最大17%程度とすることができる。
その結果、冷間圧延のロール工程を例えば20回から15回に減らすことができ、生産性が向上する。
<製造されたネジ又はボルト>
本実施形態においては、前記鋼線を素材として用い、該鋼線を、例えば圧造、鍛造、転造あるいは切削等、加工することにより製造された、強度区分が8.8(引張強さ800MPa、降伏荷重640MPa)〜12.9(引張強さ1220MPa、降伏荷重1100MPa)である、ネジ又はボルトが得られる。このネジ又はボルトのビッカース硬さは250〜435である。強度区分は、好ましくは、8.8〜10.9(引張強さ1040MPa、降伏荷重940MPa)である。この場合のビッカース硬さは250〜380である。
このネジ又はボルトは、熱処理も表面処理も施すことなく製造されたものであり、かつ硬度及び延性に優れているものである。
<ネジ又はボルトの用途>
本実施形態に係るネジ又はボルトは、強度区分が8.8〜12.9のネジ・ボルト関係に使用でき、例えば、樹脂用、金属用、木材用等のいずれの用途にも好ましく良好に使用可能であると共に、例えば、小ネジ、マイクロネジ等の携帯電話機、情報家電、事務機器等で用いられる微小締結部材、バルブスプリング、シャシースプリング、溶接ボルト、長尺ボルト等の自動車、工作機械、建設機械等で用いられる高強度又は高靭性付勢部材、高力ボルト、アンカーボルト等の建物、橋梁等で用いられる高強度締結部材等の加工素材として用いることができる。
例えば、微細結晶粒度による高強度化(軽量化・小型化、冷間での加工が可能)のため、情報製品・家電用ネジ(携帯電話、ビデオカメラ等)や、自動車用高強度ボルト(長尺ボルト、ウエルドボルト等)(900MPa以上)や、ロボット結合ネジや、工作機械、建設機械ボルトや、高強度鋼板結合用タッピンネジや、自動車用高強度鋼板用(1000MPa以上)の結合用タッピンネジ及びボルトや、ロボット、工作機械、建設機械の部材結合用のタッピンネジ及びボルトや、樹脂用タッピンネジ等に好適である。
以下に、実施例を通して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
<鋼線の製造>
炭素含有量が0.06質量%、チタン含有量が0.08質量%、マンガン含有量が0.6質量%、残部が鉄である鋼製線材を、線径が8.0mmと10.0mmの2種類、準備した(引張強さ:300〜400MPa)。各鋼製線材について、冷間圧延として、ダイス伸線又はロール圧延(図7に示したカリバーロールを用いた)を行った。結果を図8に示す。
図8から明らかなように、ダイス伸線では減面率が85%以上で、ロール圧延では減面率が93%以上で、製造された鋼線の引張強さが800MPa以上となった。また、そのときの鋼線の絞りは70%以上、ビッカース硬さは250以上、長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径は5μm以下であった。
<樹脂用タッピンネジの製造>
前記のようにして製造された、引張強さが800MPaの鋼線(絞りが70%、ビッカース硬さが250、長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径が5μm以下)を素材として用い(本発明品)、該鋼線を図2、図3に示したように加工することにより、図1に示した樹脂用タッピンネジ(M2:強度区分8.8)を製造した。
比較のため、SWCH16〜22A(炭素含有量:0.16〜0.22質量%)の鋼線(引張強さが800MPa、ビッカース硬さが250)を素材として用い(比較品)、同様にして、図1に示した樹脂用タッピンネジ(M2:強度区分8.8)を製造した。
その結果、本発明品では、加工限界を90%まで上げることができたが、比較品では、65%までしか上げることができなかった。
また、本発明品では、十字溝打刻後の頭部のビッカース硬さは320までしか上昇しなかったが、比較品では、440まで上昇した。
また、本発明品では、十字溝打刻時のパンチ(60HRCのハイス)の荷重は1パンチ当たり平均6kN〜10kNであったが、比較品では、1パンチ当たり平均2kN〜2.5kNであった。
また、欠損や摩耗によるパンチ寿命は、比較品は、本発明品の3分の1〜4分の1であった。
<ウエルドボルトの製造>
前記のようにして製造された、引張強さが800MPaの鋼線(絞りが70%、ビッカース硬さが250、長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径が5μm以下)を素材として用い(本発明品)、該鋼線を図5、図6に示したように加工することにより、図4に示したウエルドボルト(M6〜M12:強度区分8.8)を製造した。
比較のため、SWCH45K(炭素含有量:0.45質量%)の鋼線(引張強さが800MPa、ビッカース硬さが250)を素材として用い(比較品)、同様にして、図4に示したウエルドボルト(M6〜M12:強度区分8.8)を製造した。
その結果、本発明品では、加工限界を90%まで上げることができたが、比較品では、65%までしか上げることができなかった。
また、本発明品では、圧造後のフランジ部のビッカース硬さは320までしか上昇しなかったが、比較品では、535まで上昇した。その結果、比較品では、フランジ部の延性が加工限界を超えて減少し、圧造時にフランジ部に破断や割れが発生した。
本発明は、鋼線、鋼線の製造方法、鋼線を用いたネジ又はボルトの製造方法、及び、鋼線を用いて製造されたネジ又はボルトの技術分野において、広範な産業上の利用が期待される。
10 樹脂用タッピンネジ
11 頭部
12 螺子部
13 十字溝
20 ウエルドボルト
21 フランジ部
22 螺子部
23 接合用突起
30 冷間圧延用カリバーロール
31 第1圧延面
32 第2圧延面
40 鋼製線材

Claims (10)

  1. 炭素(C)含有量が0.06質量%以下、
    引張強さが800〜1220MPa、
    絞りが70%以上、
    ビッカース硬さが250〜435、
    長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径が5μm以下、
    である鋼線。
  2. チタン(Ti)を0.01〜0.08質量%、又は、ニオブ(Nb)を0.005〜0.05質量%、含有している請求項1に記載の鋼線。
  3. その他の成分としてマンガン(Mn)を0.1〜0.6質量%含有し、
    残部が鉄(Fe)及び不可避不純物である請求項1又は2に記載の鋼線。
  4. 炭素(C)含有量が0.06質量%以下の鋼製線材を減面率が85〜99%に伸線及び/又は減面率が93〜99%に圧延して加工硬化させることにより請求項1から3のいずれか1項に記載の鋼線を製造する、鋼線の製造方法。
  5. 請求項1から3のいずれか1項に記載の鋼線を素材として用い、該鋼線を加工することにより、強度区分が8.8(引張強さ800MPa、降伏荷重640MPa)〜12.9(引張強さ1220MPa、降伏荷重1100MPa)であるネジ又はボルトを製造する、鋼線を用いたネジ又はボルトの製造方法。
  6. 請求項1から3のいずれか1項に記載の鋼線を素材として用い、該鋼線を加工することにより製造された、強度区分が8.8(引張強さ800MPa、降伏荷重640MPa)〜12.9(引張強さ1220MPa、降伏荷重1100MPa)である、鋼線を用いて製造されたネジ又はボルト。
  7. 鋼線を素材として用い、該鋼線を加工することにより、ネジ又はボルトを製造するネジ又はボルトの製造方法であって、
    製造しようとするネジ又はボルトの所定部分の必要最小硬度Aを決定する工程、
    鋼線の一部又は全部を所定の加工率で加工することにより前記所定部分を形成した後における該所定部分の硬度が前記必要最小硬度A以上の硬度aとなるように、鋼線の加工前硬度Bを前記加工率に基き決定する工程、
    決定した加工前硬度Bの鋼線が得られるように、炭素(C)含有量が0.06質量%以下の鋼製線材を減面率が85〜99%に伸線及び/又は減面率が93〜99%に圧延して加工硬化させることにより、炭素(C)含有量が0.06質量%以下、引張強さが800〜1220MPa、絞りが70%以上、ビッカース硬さが250〜435、長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径が5μm以下、である鋼線を製造する工程、及び、
    得られた鋼線の一部又は全部を前記加工率で加工することにより、前記所定部分を形成する工程、
    を含む、鋼線を用いたネジ又はボルトの製造方法。
  8. 製造しようとするネジ又はボルトは樹脂用タッピンネジであり、所定部分は樹脂用タッピンネジの螺子部である、請求項7に記載の鋼線を用いたネジ又はボルトの製造方法。
  9. 鋼線を素材として用い、該鋼線を加工することにより、ネジ又はボルトを製造するネジ又はボルトの製造方法であって、
    製造しようとするネジ又はボルトの必要最小硬度Xを決定する工程、
    決定した必要最小硬度X以上の硬度xの鋼線が得られるように、炭素(C)含有量が0.06質量%以下の鋼製線材を減面率が85〜99%に伸線及び/又は減面率が93〜99%に圧延して加工硬化させることにより、炭素(C)含有量が0.06質量%以下、引張強さが800〜1220MPa、絞りが70%以上、ビッカース硬さが250〜435、長手方向に垂直な断面におけるフェライト組織の平均結晶粒径が5μm以下、である鋼線を製造する工程、及び、
    得られた鋼線を加工することにより、ネジ又はボルトを製造する工程、
    を含む、鋼線を用いたネジ又はボルトの製造方法。
  10. 製造しようとするネジ又はボルトはフランジ部を有するウエルドボルト又は長尺ボルトである、請求項9に記載の鋼線を用いたネジ又はボルトの製造方法。
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