JP4915762B2 - 冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼、高強度成形品並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
この出願の発明は、冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼、これら鋼線又は棒鋼の特性を利用して製造されたねじやボルト等の高強度成形品、並びに、そのような鋼線又は棒鋼並びに成形品の製造方法に関するものである。
ずれの問題点も解決して、従来の、冷間加工前に行なう球状化焼なまし等の軟化処理とともに、冷間加工後に行なう調質処理も省略することのできる技術を開発し、これを新しい発明として提案している(特許文献3)。
ケース1:TS≧700MPa、且つRA≧65%、ここで更に望ましくは、RAについては70%以上にまで高めること、
ケース2:TS≧1000MPa、且つRA≧70%、
ケース3:TS≧1500MPa、且つRA≧60%
を備えた鋼線又は棒鋼を得ることを目標とした。このように、引張強さTSが高水準で且つ、引張強さTSと絞りRAで代用される強度−延性バランスが高水準の特性を備えた鋼線又は棒鋼であれば、ねじやボルト等の締結部品の他、更に軸類のように、従来主として切削加工により成形加工されている部品の製造に対しても、冷間圧造による成形が容易となり、鋼線又は棒鋼から高強度軸類への成形加工歩留りの飛躍的な向上(従来水準は、一般的には60〜65%程度と低い)が可能になる。そして発明者による検討の過程において、実質的にセメンタイトフリーの化学成分組成を有する成分系の鋼を素材とし、これに上記の提案発明の技術を適用し、更に、これを素材(鋼線材)とし、これに適切な冷間加工を施すことにより、従来よりも一層高強度で、且つ冷間加工性にも優れた鋼線又は鋼棒、そして高強度成形品を製造できるのではないかという目途を得た。しかしながら、このことを実際に可能とするためには、化学成分組成として、鋼の標準組織において実質的にセメンタイトが生成しないような鋼を溶製する必要がある。例えば、電磁鋼板向けの高純度純鉄、あるいはこれ以上にC含有量を低下せしめた鋼を製造するための精錬工程を必要とする。
R={(S0−S)/S0}×100・・・・・・(1)
但し、R:鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品に対して施される総減面率(%)、
S0:温間加工開始直前の鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品のC方向断面積、
S:温間加工終了後に得られる材料のC方向断面積、
で表わされる総減面率Rが50%以上となる加工を前記鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品に対して施した冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼の製造方法を提供する。
R’={(S0’−S’)/S0’}×100 ・・・・・・(2)
但し、R’:温間加工された材料に対して施される総減面率(%)、
S0’:冷間加工開始直前の材料のC方向断面積、
S’:冷間加工終了後に得られる材料のC方向断面積、
で表わされる総減面率R’が5%以上となる加工を、上記温間加工された材料に対して施した冷間加工性に優れた上記高強度鋼線又は棒鋼の製造方法を提供する。
R’={1−(daim/d0)2}×100 ・・・・・・(3)
但し、R’(%)は下記(2)式:
R’={(S0’−S’)/S0’}×100 ・・・・・・(2)
S0’:冷間加工開始直前の材料のC方向断面積
S’:冷間加工終了後に得られる材料のC方向断面積
で定義する、
が満たされるように冷間加工条件を設定することにより、冷間加工後の材料の結晶粒径を制御する冷間加工性に優れた上記の高強度鋼線又は棒鋼の製造方法を提供する。
発明4に記載の化学成分組成を有する鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品に温間加工を施し、該温間加工は、加工温度が350〜800℃の範囲内において、圧延及び/又は鍛造により材料中へ導入されて残留する塑性ひずみが、3次元有限要素法で計算される前記材料中への平均塑性ひずみで0.7以上となる加工であり、長手方向に垂直な断面における平均結晶粒径が3μm以下の材料を調製し、次いで冷間加工を施し、該冷間加工は、加工温度が350℃未満において、圧延及び/又は引抜きにより材料中へ導入されて残留する塑性ひずみが、3次元有限要素法で計算される材料中への平均塑性ひずみで0.05以上となる加工であり、長手方向に垂直な断面における平均結晶粒径が500nm以下のフェライト主相組織を有する冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼を得、その後、冷間圧造、冷間鍛造及び/又は切削加工により製造する高強度鋼線又は棒鋼の製造方法を提供する。
R={(S0−S)/S0}×100・・・・・・(1)
但し、R:鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品に対して施される総減面率(%)、
S0:温間加工開始直前の鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品のC方向断面積、
S:温間加工終了後に得られる材料のC方向断面積、
で表わされる総減面率Rが50%以上となる加工を前記鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品に対して施す高強度成形品の製造方法を提供する。
ここで、(3)式とは、
R’={1−(daim/d0)2}×100 ・・・・・・(3)
但し、R’(%)は下記(2)式:
R’={(S0’−S’)/S0’}×100 ・・・・・・(2)
S0’:冷間加工開始直前の材料のC方向断面積
S’:冷間加工終了後に得られる材料のC方向断面積
で定義する。
R’={(S0’−S’)/S0’}×100 ・・・・・・(2)
但し、R’:温間加工された材料に対して施される総減面率(%)、
S0’:冷間加工開始直前の材料のC方向断面積、
S’:冷間加工終了後に得られる材料のC方向断面積、
で表わされる総減面率R’が5%以上となる加工を、上記温間加工された材料に対して施した高強度成形品の製造方法を提供する。
R’={1−(daim/d0)2}×100 ・・・・・・(3)
但し、R’(%)は下記(2)式:
R’={(S0’−S’)/S0’}×100 ・・・・・・(2)
S0’:冷間加工開始直前の材料のC方向断面積
S’:冷間加工終了後に得られる材料のC方向断面積
で定義する、
が満たされるように冷間加工条件を設定することにより、冷間加工後の材料の結晶粒径を制御する高強度成形品の製造方法を提供する。
従来、相変態を伴わずに結晶粒を超微細化して、鋼の機械的特性、特に強度及び延性を向上させるための温間加工技術によると、その粒径の最小値は精々0.5μm程度が限界であった。これに対して、本願発明によれば、この温間加工技術により、サブミクロンオーダーにまで超微細化されたセメンタイトフリーの材料に対して、更に冷間加工を施すことにより、材料の長手方向に垂直な断面組織の平均粒径において一層の超微細粒化が可能となる。
この出願の発明に係る冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼、及び高強度成形品の化学成分組成は、金属結晶組織の主相がフェライトであって、C含有量が0.01質量%超えから、0.03質量%までの範囲の炭素鋼乃至低合金鋼にわたって適用される。ここで、成分設計に際し、いかなるC含有量に決定するかは、その他の成分元素含有量を与えた場合に、この出願の発明の明細書に記載されているC含有量と引張強さTSとの関係(例えば、図7、図8)を参照して、製造しようとする対象用途に所望される機械的性質等を満たすべく、適宜行なう。
この出願の発明に係る鋼線又は棒鋼、及びねじ及びボルトに代表される成形品のいずれにおいても、この出願の発明におけるフェライトの平均粒径を規定する。具体的には、鋼線又は棒鋼については、それらの長手方向に垂直方向の断面(C方向断面)において、一方、成形品については、任意方向断面の内の少なくとも1断面において、いずれも500nm以下に、更に望ましくは200nm以下に規定するものである。このようにフェライトの平均粒径を規定するのは、この鋼線又は棒鋼、及び成形品の強度を所望する水準以上に確保するためである。即ち、鋼線又は棒鋼においては、引張強さTSが少なくとも700MPaであること、用途に応じて引張強さTSが1000MPa以上、更に望ましくは1500MPa以上という、優れた特性を得るためであり、しかもこの引張強さTSの各水準に応じて、延性確保のために、絞りRAも高水準に維持された両者の優れたバランスを有する鋼を得るためである。ここで、この引張強さTSと絞りRAとのバランスとは、前述した如く下記に示す通りのバランス:
ケース1:TS≧700MPa、且つRA≧65%、より望ましくは絞りRAの水準を更に向上させて、TS≧700MPa、且つRA≧70%、
ケース2:TS≧1000MPa、且つRA≧70%
ケース3:TS≧1500MPa、且つRA≧60%
を意味する。このような引張強さTSと絞りRAとの各水準の組合せにより、鋼線又は棒鋼を用途に応じた向け先に供給できる。
強度で且つ延性にも優れた鋼線又は棒鋼を、用途に合わせて適切に供給することにより、その加工歩留は、飛躍的に向上する。
この出願の発明に係る鋼線又は棒鋼においては、引張強さTSに代わる強度特性として硬さで表示した規定をする。この硬さとしては、ビッカース硬さHVで285以上であることが望ましい。ビッカース硬さHVが285以上であれば、引張強さがほぼ900MPa確保されるからである。一方、この出願の発明に係るねじ又はボルトに代表される成形品においては、その形状如何により引張試験片の調製が容易でないこともある。そこで、引張強さの代わりの機械的特性として硬さによる規定を十分にしておくべきである。かかる観点から、ねじ又はボルトに代表される成形品に対しては、引張強さの代替として硬さによる規定が、実用品の特性水準評価として、一層重要性を担う。成形品については、更に望ましくはビッカース硬さHVは、引張強さTSで約1000MPa程度に相当する300以上であることがよい。
この出願の発明に係る製造方法の基本的特徴は、まず、この出願の発明に係る冷間加工性に優れた鋼線又は棒鋼を製造するために使用する素材の製造方法として、所定の材料に対して適切な条件下での温間加工を施し、この温間加工により微細粒組織鋼を調製する。ここで得られる材料の結晶粒径は、できるだけ小さいことが望ましく、具体的には温間加工により得られた材料の長手方向に垂直な断面(C方向断面)における平均粒径で、3μm以下であることが必要である。
上記冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼の製造工程の実施の形態として、まず所定の鋼塊、鋳片又は鋼片乃至鋼材に対する望ましい温間加工条件は、加工温度が350〜800℃の範囲内とすべきである。更に、その際に材料中へ導入されて残留する塑性ひずみを確保すべきである。この塑性ひずみ量は、公知の3次元有限要素法による計算で求めることができ(その値を「ε」で表記する)、εが0.7以上であることが望ましい。かかる温間加工条件を採用したのは、相変態による強化機構を実質的に利用せずに鋼の高強度化を実現する方法として、結晶粒を微細化するためである。こうすることにより、鋼の絞りRAを所定の水準以上にすることが、冷間圧造性等の冷間加工性を優れたものにするために、極めて有効であることを発明者は、前記特許文献3としての発明において見出している。
e=−ln(1−R/100)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(4)
で表わされる。但し、Rは下記(1)式:
R={(S0−S)/S0}×100 ・・・・・・(1)
但し、R:鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品に対して施される総減面率(%)
S0:温間加工開始直前の鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品のC方向断面積
S:温間加工終了後に得られる材料のC方向断面積
で表わされる総減面率Rである。
Z=log[(ε/t)exp{Q/(8.31(T+273))}]‥‥‥
‥‥‥‥‥‥(5)
但し、ε:平均塑性ひずみ
t:圧延開始から終了までの時間(s)
Q:定数(結晶組織がbccのとき、254000J/mol)
T:圧延温度(℃)、多パス圧延の場合は各パスの圧延温度を平均し
た温度
で表わされるZener−Hollomon parameterを導入し(但し、対数形式で表記)、結晶粒径は、圧延条件パラメータZの増加につれて微細化することを見出している。図1に、圧延条件パラメータZと平均フェライト粒径との関係を例示する。即ち、図1は、Z≧11となるように圧延を制御することにより、平均フェライト粒径が1μm以下の微細粒組織が得られることを示している。従って、温間圧延温度をZ≧11を
満たすように制御することにより、素材の平均フェライト粒径を3μm未満にすることが可能となる。
次に、上記の通り温間加工により調製された微細粒組織を有し、高強度で且つ加工性に優れている材料に対して、予め施すべき望ましい冷間加工条件は、冷間加工温度が350℃未満であることが望ましい。加工発熱により、冷間加工中にこれよりも高い温度に達すると、引張強さの上昇度合いが低下して望ましくない。次に、冷間加工により材料中への導入される残留ひずみを、所望する引張強さに応じて確保することが必要である。かかる観点から、3次元有限要素法により求められる塑性ひずみεが少なくとも0.05以上となるように冷間加工を施すことが望ましい。これにより結晶の冷間加工組織は加工方向に延伸した形態を呈し、加工方向に対するC方向断面における粒径も細粒化されて、引張強さの上昇が確保される。その際、絞りRAの低下量は小さく抑えられる。 上記冷間加工条件において、加工量としてεを指標とする代わりに、前記(4)式により説明したひずみeを媒介することにより、ε≧0.05に相当する材料の総減面率Rを計算すると、R≧5%が得られる。
R’={1−(daim/d0)2}×100 ・・・・・・(3)
が満たされるように冷間加工条件を設定すれば、所望する超微細粒に近い粒径を有する材料を得ることができる。なお、R’は下記(2)式:
R’={(S0’−S’)/S0’}×100 ・・・・・・(2)
S0’:冷間加工開始直前の材料のC方向断面積
S’:冷間加工終了後に得られる材料のC方向断面積
で定義するものである。
(7)鋼線又は棒鋼のひずみ取り焼なまし
なお、上述した本願発明に係る冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼は、これに対して更に、350℃〜600℃の範囲内の適切な温度におけるひずみ取り焼なましを施すことにより、材料の強度及び硬さの低下が殆どなく、且つ絞りRA及び伸びElは向上する。一層優れた材質特性が備わったものとなって、冷間圧造性が向上すると共に、成形品の寸法・精度の向上効果も得られるからである。
[I]−(1) 実施例1及び実施例2
実施例1と実施例2とは、この出願の発明に係る高強度鋼線又は棒鋼の製造工程が一部異なり、また、実施例1及び2と実施例3とは、その製造工程の他、化学成分組成も異なっている。よって、実施例1及び2と実施例3とは、試験方法及び試験結果を別々に説明する。
実施例1及び実施例2を次の通り試験した。表1に示した化学成分組成を有する鋼を真空溶解炉を用いて溶製し、鋼塊に鋳造した。この化学成分組成は、例えば、JIS G 3507の冷間圧造用炭素鋼線材に属するSWRCH6Aで規定された化学成分組成の内、Si含有量:0.10質量%以下に対して、これを超える0.30質量%を含有するものである。但し、C含有量は低目の0.0245質量%である点が特徴的である。
延は、この出願の発明に係る鋼線又は棒鋼用の素材を調製するものであり、この温間圧延により得られる材料の長手方向に垂直な断面における平均結晶粒径が3μm以下となる条件で行なった。
、(11mm/24mm)×100=46%とかなり小さく、またこのときの孔型寸法から計算した減面率は38%とかなり大きい。従って、このオーバル型カリバーロールによる1パスの温間圧延は、温間圧延終了後の18mm角棒鋼におけるフェライト粒径の微細化を一層促進させる条件になっている。なお、前記第19パス目までのダイヤ型カリバーロールによる圧延過程においては、材料の断面形状をできるだけ正方形に近づけるために、同一カリバーロールに連続2パスずつ通す圧延(所謂「とも通し」)を適宜行なっており、各とも通しはそれぞれ2パスとしてカウントした。また、圧延の各パス毎に材料を長さ方向軸芯の周りに回転させて圧下方向を変化させ、多方向の多パス圧延を行なった。更に、加工発熱も加わって、温間圧延の圧延温度領域でも比較的低温側領域においては、放熱量が比較的小さく、圧延中材料の温度低下に起因する中間加熱の必要性はなかった。
B1111に規定されたM1.6なべ小ねじ(ねじ部の有効断面の直径が1.27mmφ)を選定したので、目標伸線率95%の冷間伸線加工又は目標総減面率95%の冷間圧延加工により径1.3mmφが得られる素材とするためである。M1.6なべ小ねじを選定したのは、その頭部に十字形状のリセス(ドライバーでトルクを与える凹部)を圧造成形するためには、極めて優れた冷間圧造性が要求されるので、後述するM1.6なべ小ねじの十字状「リセス成形試験」により、特段に優れた冷間圧造性を有するか否かを評価するためである。
[I]−(1)−2)−(a) [実施例1における冷間伸線方法と得られた鋼線の確性試験]
常温の上記6.0mmφ鋼線材(前述の通り、温間圧延により18mmφに加工し、次いで6.0mmφに切削加工した鋼線材)を、表4に示すように、ダイスNo.1〜No.17の伸線ダイスにより順次伸線して、1.3mmφの鋼線を製造した。伸線中の材料温度は、200℃未満であった。
2)ビッカース硬さ試験機による硬さ測定試験
3)顕微鏡試験によるフェライト粒径(d)の測定試験
4)小ねじのリセス成形試験:線径1.3mmφの鋼線を、JIS B1111に規定されたM1.6なべ小ねじの製造工程でヘッダー加工により予備成形し、次いで頭部に所定の十字形状のリセス(ドライバーによりこのねじを締め込むための十字形状等の窪み部)を冷間圧造により成形する。この成形時にこのリセスに割れが発生する状況を、10倍の拡大鏡で観察する試験である。一般に、リセス割れの発生状況は小ねじのリセス形状により大きく異なるが、M1.6なべ小ねじの十字形状のリセス成形は極めて過酷な圧造成形であり、本明細書では実用的試験であると同時に、特に優れた冷間圧造性の評価試験と位置付けた。割れが認められないものを「良」、微小割れが認められたが概して良好なものを「やや良」、割れたものを「割れ」、大きな割れが発生したものを「割れ大」とした。
いることにある。具体的には、実施例1の1.3mmφ鋼線は、C方向断面における平均フェライト粒径が182nmで、冷間伸線加工の方向にバンブーストラクチャー状に伸びた形態を呈したフェライト主相である。
dsupp=(1−R’/100)1/2×d0 ‥‥‥‥‥‥‥(6)
但し、R’:冷間加工による総断面減少率(%)
d0:冷間加工開始直前におけるC方向断面のフェライト粒径(=
温間加工後の材料のC方向断面のフェライト粒径)により推算する。
daim=(1−R’/100)1/2×d0は・・・・・・・・・(3’)
となる。
常温の上記6.0mmφ鋼線材(前述の通り、温間圧延により18mmφに加工し、次いで6.0mmφに切削加工した鋼線材)を、表6に示したように、第1工程〜第3工程での各コンバインドロールによる冷間圧延により、1.3mmφまで圧延して、鋼線を製造する試験を行なった。
2)ビッカース硬さ試験機による硬さ測定試験
3)顕微鏡試験によるフェライト粒径(d)の測定試験
4)小ねじのリセス成形試験
5)小ねじのねじりトルク試験
上記試験結果を表7に示した。
実施例2の線径3.3mmφのとき:dsupp=385nmに対して、dact=355nm、
実施例2の線径1.8mmφのとき:dsupp=210nmに対して、dact=220nm、そして、
実施例2の線径1.3mmφのとき:dsupp=152nmに対して、dact=190nmとなり、よい一致を示した。
この出願の発明の範囲内にある実施例3として、次の通り試験を行なった。JIS G
3507に規定された冷間圧造用炭素鋼線材の内、SWRCH6Aに属する、表8に示した化学成分組成を有し、熱間圧延により製造された、市販の13mmφの鋼線材を用いた。この鋼線材の成分は、炭素Cが0.03質量%であり、前記実施例1及び実施例2に供した鋼の成分組成に類似している。但し、この実施例3の供試鋼のSi含有量は、実施例1及び2のSi=0.30質量%とは異なり、0.03質量%であり、SWRCH6AのSi含有量規定(Si≦0.10質量%)を満たしている。
項目の試験を行なった。なお、この確性用試験材を採取後の6.0mmφ鋼線材は、引き続き実施例3の試験(前記のとおり)に供した。
2)顕微鏡試験によるフェライト粒径(d)の測定試験
上記試験結果を表9に示した。
2)ビッカース硬さ試験機による硬さ測定試験
3)顕微鏡試験によるフェライト粒径(d)の測定試験
上記試験結果を表10に示す。
実施例3の線径2.1mmφのとき:dsupp=280nmに対して、dact=2
81nm、
実施例3の線径1.8mmφのとき:dsupp=240nmに対して、dact=240nm、そして、
実施例3の線径1.3mmφのとき:dsupp=173nmに対して、dact=186nmとなり、よい一致を示すと共に、微細化されている。
また、温間圧延材に対する冷間圧延により、引張強さTSが更に向上するのみならず、絞りRAも高水準に維持され、両者のバランスが優れていることがわかる。これは、実施例1におけると同様、実施例3においても、C方向断面における平均フェライト粒径が微細化された、冷間伸線加工の方向にバンブーストラクチャー状に伸びた形態を呈したフェライト主相となっているからである。
次に、この出願の発明の範囲外である比較例の第1グループとして、次の試験を行なっった。
2)顕微鏡試験によるフェライト粒径(d)の測定試験
これらの試験結果を表12に示した。
2)小ねじのリセス成形試験:これも前述の通りである。但し、比較例2については、更に、線径1.3mmφの鋼線について、冷間圧延ままの鋼線試験材に球状化焼なまし処理を施して冷間加工性を向上させた試験材を調製して、これについても、小ねじのリセス
成形試験を行なった。
(1)引張強さTSと絞りRAについて
実施例1〜3及び比較例1〜3のいずれにおいても、冷間加工による総減面率の増加につれて、引張強さTSが上昇し、絞りRAが低下している。総減面率Rを前述したひずみeに変換した値(前記(3)式による)で表記し、これをx軸にとり、ひずみeの変化に対する引張強さTS又は絞りRAの変化の状態を、それぞれ図4及び図5に示す。
(2)M1.6なべ小ねじの十字状リセスの成形性について
一方、リセス成形性試験によれば、引張強さTSが1000MPaを超える比較例2及び3では、試験材を予め球状化焼なまし処理を施した比較例2では、リセス割れは発生せず良好であるが、比較例3では球状化焼なまし処理を施しても、割れが発生している。冷間加工ままで球状化焼なましを施さなかった場合には、比較例2、3共にリセス割れが発生している。但し、引張強さTSが1000MPa未満の比較例1(総減面率95.3%の線径1.3mmφにおいて962MPaである)においては、リセス割れは良好となっている。
比較例の第2グループとして、従来技術により製造された市販のSWCH16A鋼線から製造された生ねじ及び浸炭焼入れねじを、比較例4とした。このねじはM1.6なべ小ねじであって、その化学成分組成は表14に示した。
されて、所定の強度を付与されたM1.6なべ小ねじ(浸炭焼入れねじ)の2種類である。
b ダイヤ型カリバーロールの軸方向長さ、又はオーバル型カリバーロールの長軸長さ
c ダイヤ型カリバーロールの対辺長さ
R ダイヤ型カリバーロールの頂角曲率半径、又はオーバル型カリバーロールの曲率半径
Claims (21)
- 化学成分組成が、C含有量:0.01超え〜0.03質量%、Si含有量:1.0質量%以下で且つMn含有量:2.0質量%以下で、残部がFe及び不可避不純物であって、鋼線又は棒鋼の長手方向に対する垂直断面における平均粒径が500nm以下のフェライト組織を主相とし、引張強さが700MPa以上で且つ絞りが65%以上である機械的性質を有することを特徴とする冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼。
- 化学成分組成が、C含有量:0.01超え〜0.03質量%、Si含有量:1.0質量%以下で且つMn含有量:2.0質量%以下で、残部がFe及び不可避不純物であって、鋼線又は棒鋼の長手方向に対する垂直断面における平均粒径が500nm以下のフェライト組織を主相とし、引張強さが1500MPa以上で且つ絞りが60%以上である機械的性質を有することを特徴とする冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼。
- 化学成分組成が、請求項1又は2に記載の冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼であって、硬さがビッカース硬さHVで285以上であることを特徴とする冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼。
- 化学成分組成が、C含有量:0.01超え〜0.03質量%、Si含有量:1.0質量%以下で且つMn含有量:2.0質量%以下で残部がFe及び不可避不純物からなる高強度成形品であって、成形品の被加工方向に対する垂直断面の平均粒径が500nm以下のフェライト組織を主相とし、且つ引張強さが900MPa以上であることを特徴とする高強度成形品。
- 請求項4に記載の高強度成形品であって、任意方向断面の内の少なくとも1断面における硬さがビッカース硬さHVで285以上であることを特徴とする高強度成形品。
- 請求項4又は5に記載の高強度成形品であって、冷間圧造、冷間鍛造及び/又は切削加工により製造されたことを特徴とする高強度成形品。
- 請求項4から6のいずれかに記載の高強度成形品であって、焼入・焼戻し処理が施されていないことを特徴とする高強度成形品。
- 請求項1から3のいずれかに記載の冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼の製造方法であって、請求項1に記載の化学成分組成を有する鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品に温間加工を施し、該温間加工は、加工温度が350〜800℃の範囲内において、圧延及び/又は鍛造により材料中へ導入されて残留する塑性ひずみが、3次元有限要素法で計算される前記材料中への平均塑性ひずみで0.7以上となる加工であり、長手方向に垂直な断面における平均結晶粒径が3μm以下の材料を調製し、次いで冷間加工を施し、該冷間加工は、加工温度が350℃未満において、圧延及び/又は引抜きにより材料中へ導入されて残留する塑性ひずみが、3次元有限要素法で計算される材料中への平均塑性ひずみで0.05以上となる加工であり、長手方向に垂直な断面における平均結晶粒径が500nm以下のフェライト主相組織を形成させることを特徴とする冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼の製造方法。
- 請求項8に記載の冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼の製造方法であって、温間加工は、加工温度が350〜800℃の範囲内において、圧延及び/又は鍛造により、下記(1)式:
R={(S0−S)/S0}×100 ・・・・・・(1)
但し、R:鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品に対して施される総減面率(%)
S0:温間加工開始直前の鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品のC方向断面積
S:温間加工終了後に得られる材料のC方向断面積
で表わされる総減面率Rが50%以上となる加工を前記鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品に対して施すものであることを特徴とする冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼の製造方法。 - 請求項8又は9に記載の冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼の製造方法であって、温間加工は、複数パスで且つ複数方向に施すことを特徴とする冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼の製造方法。
- 請求項8ないし10のいずれかに記載の冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼の製造方法であって、冷間加工は、加工温度が350℃未満において、圧延及び/又は引抜きにより、下記(2)式:
R’={(S0’−S’)/S0’}×100 ・・・・・・(2)
但し、R’:温間加工された材料に対して施される総減面率(%)
S0’:冷間加工開始直前の材料のC方向断面積
S’:冷間加工終了後に得られる材料のC方向断面積
で表わされる総減面率R’が5%以上となる加工を、前記温間加工された材料に対して施すものであることを特徴とする冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼の製造方法。 - 請求項8ないし11のいずれかに記載の冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼の製造方法であって、冷間加工は、前記温間加工後の材料の長手方向に垂直な断面における平均結晶粒径d0を予め推定乃至測定しておき、この材料に対して圧延及び/又は引抜きを施すものであって、当該冷間加工温度が350℃未満において、この冷間加工後の材料の長手方向に垂直な断面における目標平均結晶粒径daimを有する当該材料を得るために、総減面率R’が、下記(3)式:
R’={1−(daim/d0)2}×100 ・・・・・・(3)
但し、R’(%)は下記(2)式:
R’={(S0’−S’)/S0’}×100 ・・・・・・(2)
S0’:冷間加工開始直前の材料のC方向断面積
S’:冷間加工終了後に得られる材料のC方向断面積
で定義する、
が満たされるように冷間加工条件を設定することにより、冷間加工後の材料の結晶粒径を制御することを特徴とする冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼の製造方法。 - 請求項8ないし12のいずれかに記載の冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼の製造方法であって、高強度鋼線又は棒鋼の製造方法は、前記温間加工及び前記冷間加工のいずれの工程中にも、球状化焼なまし処理及び/又は焼入・焼戻し処理を含まないことを特徴とする冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼の製造方法。
- 請求項4ないし7のいずれかに記載の高強度成形品の製造方法であって、請求項4に記載の化学成分組成を有する鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品に温間加工を施し、該温間加工は、加工温度が350〜800℃の範囲内において、圧延及び/又は鍛造により材料中へ導入されて残留する塑性ひずみが、3次元有限要素法で計算される前記材料中への平均塑性ひずみで0.7以上となる加工であり、長手方向に垂直な断面における平均結晶粒径が3μm以下の材料を調製し、次いで冷間加工を施し、該冷間加工は、加工温度が350℃未満において、圧延及び/又は引抜きにより材料中へ導入されて残留する塑性ひずみが、3次元有限要素法で計算される材料中への平均塑性ひずみで0.05以上となる加工であり、長手方向に垂直な断面における平均結晶粒径が500nm以下のフェライト主相組織を有する冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼を得、その後、冷間圧造、冷間鍛造及び/又は切削加工により製造することを特徴とする高強度成形品の製造方法。
- 請求項14に記載の高強度成形品の製造方法であって、温間加工は、複数パスで且つ複数方向に施すことを特徴とする高強度成形品の製造方法。
- 請求項14又は15に記載の高強度成形品の製造方法であって、温間加工は、圧延及び/又は鍛造により、下記(1)式:
R={(S0−S)/S0}×100 ・・・・・・(1)
但し、R:鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品に対して施される総減面率(%)
S0:温間加工開始直前の鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品のC方向断面積
S:温間加工終了後に得られる材料のC方向断面積
で表わされる総減面率Rが50%以上となる加工を前記鋼塊、鋳片、鋼片又は鋼材半成品に対して施すことを特徴とする高強度成形品の製造方法。 - 請求項14ないし16のいずれかに記載の高強度成形品の製造方法であって、冷間加工は、圧延及び/又は引抜きにより、下記(2)式:
R’={(S0’−S’)/S0’}×100 ・・・・・・(2)
但し、R’:温間加工された材料に対して施される総減面率(%)
S0’:冷間加工開始直前の材料のC方向断面積
S’:冷間加工終了後に得られる材料のC方向断面積
で表わされる総減面率R’が5%以上となる加工を、前記温間加工された材料に対して施すものであることを特徴とする高強度成形品の製造方法。 - 請求項14又は17に記載の高強度成形品の製造方法であって、冷間加工は、前記温間加工後の材料の長手方向に垂直な断面における平均結晶粒径d0を予め推定乃至測定しておき、この材料に対して圧延及び/又は引抜きを施すものであって、当該冷間加工温度が350℃未満において、この冷間加工後の材料の長手方向に垂直な断面における目標平均結晶粒径daimを有する当該材料を得るために、総減面率R’が、下記(3)式:
R’={1−(daim/d0)2}×100 ・・・・・・(3)
但し、R’(%)は下記(2)式:
R’={(S0’−S’)/S0’}×100 ・・・・・・(2)
S0’:冷間加工開始直前の材料のC方向断面積
S’:冷間加工終了後に得られる材料のC方向断面積
で定義する、が満たされるように冷間加工条件を設定することにより、冷間加工後の材料の結晶粒径を制御することを特徴とする高強度成形品の製造方法。 - 請求項14ないし18のいずれかに記載の高強度成形品の製造方法であって、前記温間加工及び冷間加工のいずれの工程にも球状化焼きなまし処理及び/又は焼入れ・焼戻し処理を含まないことを特徴とする高強度成形品の製造方法。
- 請求項14ないし19のいずれかに記載の高強度成形品の製造方法であって、前記成形品に焼入・焼戻し処理を施さないことを特徴とする高強度成形品の製造方法。
- 請求項14ないし20のいずれかに記載の高強度成形品の製造方法であって、前記成形品に応力除去焼なまし処理及び/又はベーキング処理を施さないことを特徴とする高強度成形品の製造方法。
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