JP2011231294A - インクジェットインク - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水、非プロトン性極性溶媒、着色剤、および式(1):
CnF2n+1CH2CH2O(CH2CH2O)mH (1)
[式中nは2〜16、mは0〜15の数を示す。]
で表されるフッ素系界面活性剤を含み、前記非プロトン性極性溶媒の含有割合を、総量の40質量%以上、75質量%以下としたインクジェットインクである。
【選択図】なし
Description
これに対し、オフセット印刷用として適したオフセットコート媒体は、基材の表面を疎水性でかつ非多孔質のコーティング膜によって被覆しているため、水性のインクジェットインクを用いた印刷には適していなかった。
また印刷したインクジェットインクはコーティング膜の表面ではじかれて、拡がらずに、球状等のできるだけ表面積の小さい形状にまとまろうとする傾向があるため乾燥しにくい上、乾燥してもインクジェットインク中に含まれる顔料等の着色剤が前記コーティング膜の表面に十分に定着されないため、例えばこすると印刷が簡単に滲んでしまうといった問題もある。
前記の条件を満足する有機溶媒としては、例えばアルコール等のプロトン性極性溶媒がよく知られている。しかしプロトン性極性溶媒は、着色剤としての顔料等の分散性を向上させるべくインクジェットインク中に配合される界面活性剤の機能を阻害して、前記分散性を低下させるという問題がある。そのため前記の条件を満足し、しかも界面活性剤の機能を阻害しない非プロトン性極性溶媒が好適に使用される。
かかるインクジェットインクは、前記非プロトン性極性有機溶媒の作用により、オフセットコート媒体の疎水性のコーティング膜に対する浸透性に優れている。そのため前記コーティング膜の表面に、現状よりもシャープかつ鮮明で、しかも乾燥性や定着性に優れた良好な印刷をすることができる。
すなわちベタパターンを連続印刷する等、比較的短時間で多量のインクを消費する印刷をする際に、使用するインクジェットインクの粘度が高く、流動性が低いと、ノズルからの吐出量に対して補給量が追いつかない補給不足が発生して印刷がかすれやすい。
そこでサーマル方式のインクジェットプリンタには、発熱素子の温度をモニタリングして、前記温度が設定値を超えた際に安全装置を作動させて印刷を中断するサーマルシャットダウンの機能が付加される場合があり、かかる機能が付加されたインクジェットプリンタに前記インクジェットインクを用いて、特にベタパターンの連続印刷等をした際にはサーマルシャットダウンが発生しやすい。
そのためインクジェットプリンタの種類や動作によっては、前記インクジェットインクの乾燥によるノズルの詰まりが発生して却って印刷がかすれやすいという新たな問題を生じる。
そして印刷する色調や色濃度等に合わせて前記複数の発熱素子のいずれかに選択的に通電して発熱させて、前記発熱された発熱素子を内蔵するインク室に連通する特定のノズルからインク滴を吐出させることで、前記オフセットコート媒体等の表面に任意の画像や文字が印刷される。
インクジェットプリンタの待機時や停止時には、通常、ヘッドはプリンタのホームポジションに戻されてノズル内のインクジェットインクがノズル外の空気に曝されないように保護されるためノズルの詰まりは生じにくい。
特に前記のように乾燥しやすい特許文献2に記載のインクジェットインクを使用した際にはこの傾向が強く、再吐出時にノズルが詰まって印刷がかすれやすくなる。
CnF2n+1CH2CH2O(CH2CH2O)mH (1)
[式中nは2〜16、mは0〜15の数を示す。]
で表される化合物を含有させて表面張力を調整すると、前記インクジェットインクの流動性を向上させて、高速印刷時にかすれやサーマルシャットタウンを生じにくくできることを見出した。
すなわち非プロトン性極性溶媒の含有割合が40質量%未満では、先に説明したように、相対的に非プロトン性極性溶媒より乾燥しやすい水の含有割合が多くなるため、保護されずにノズル外の空気に曝され続ける時間が長くなった際にノズル内でインクジェットインクが乾燥しやすくなり、再吐出時にノズルが詰まって印刷がかすれやすくなる。
また非プロトン性極性溶媒の含有割合が75質量%を超える場合には、たとえ式(1)で表されるフッ素系界面活性剤を含有させたとしても、インクジェットインクの流動性が低下して、特に高速印刷時にかすれやサーマルシャットタウンを生じやすくなる。
また前記効果をより一層向上することを考慮すると、非プロトン性極性溶媒Pと、フッ素系界面活性剤Fとの質量比P/Fは22以上、特に24以上であるのが好ましく、1300以下、特に1220以下であるのが好ましい。
また前記バインダ樹脂は、インクジェットインクの粘度の上昇とそれに伴う流動性の低下とを抑制して高速印刷時にかすれやサーマルシャットタウンを生じにくくすること、並びに印刷時に、保護されずにノズル外の空気に曝され続ける時間が長くなった際にノズル内でインクジェットインクが乾燥して、再吐出時にノズルが詰まって印刷がかすれるのを防止することを考慮すると、重量平均分子量Mwが1000以上であるのが好ましく、3000以下であるのが好ましい。
CnF2n+1CH2CH2O(CH2CH2O)mH (1)
[式中nは2〜16、mは0〜15の数を示す。]
で表される化合物であることを特徴とするものである。
本発明で使用するフッ素系界面活性剤は、前記式(1)を満足するものである。
かかるフッ素系界面活性剤の具体例としては、式(1)中のnが4〜16、mが2〜3の化合物の混合物の溶液である、デュポン(株)製のゾニール(ZONYL)FS−300(有効成分:40質量%)や、前記式(1)中のnが2〜14、mが0〜15の化合物の混合物の溶液である、デュポン(株)製のゾニール(ZONYL)FSO等の少なくとも1種が挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤Fの含有割合は、非プロトン性極性溶媒Pとの質量比P/Fで表して22以上、特に24以上であるのが好ましく、1300以下、特に1220以下であるのが好ましい。
またインクジェットインクのはじきや滲み等を抑制する効果が低下して、オフセットコート媒体の疎水性のコーティング膜の表面に、シャープかつ鮮明で、しかも乾燥性や定着性に優れた良好な印刷をすることができないおそれもある。
却ってインクジェットインクのはじきや滲み等を抑制する効果が低下して、オフセットコート媒体の疎水性のコーティング膜の表面に、シャープかつ鮮明で、しかも乾燥性や定着性に優れた良好な印刷をすることができないおそれがある。
〈非プロトン性極性溶媒〉
非プロトン性極性溶媒としては、水素を生じたり受け取ったりしないため前記フッ素系界面活性剤の機能を妨げるおそれのない種々の非プロトン性極性溶媒が、いずれも使用可能である。
また非プロトン性極性溶媒は、分子量が大きいほどインクジェットインクの粘度を上昇させ、流動性を低下させる傾向があるため、特に高速印刷時にかすれやサーマルシャットタウンを生じやすくなるおそれがある。
また非プロトン性極性溶媒は、沸点が低いほど、当然ながら乾燥しやすい傾向があるため、印刷時に、保護されずにノズル外の空気に曝され続ける時間が長くなった際にノズル内でインクジェットインクが乾燥しやすくなって、再吐出時にノズルが詰まって印刷がかすれるおそれがある。
そのため非プロトン性極性溶媒としては、標準大気圧での沸点が150℃以上、250℃以下であるものを選択して用いるのが好ましい。
非プロトン性極性溶媒の含有割合が40質量%未満では、先に説明したように、相対的に非プロトン性極性溶媒より乾燥しやすい水の含有割合が多くなるため、保護されずにノズル外の空気に曝され続ける時間が長くなった際にノズル内でインクジェットインクが乾燥しやすくなり、再吐出時にノズルが詰まって印刷がかすれやすくなる。
また非プロトン性極性溶媒の含有割合が75質量%を超える場合には、たとえ式(1)で表されるフッ素系界面活性剤を含有させたとしても、インクジェットインクの流動性が低くなって、特に高速印刷時にかすれやサーマルシャットタウンを生じやすくなる。
着色剤としては顔料、染料等が使用可能であり、特に耐久性等に優れた印刷をするためには顔料が好適に使用される。前記顔料としては、水性のインクジェットインクに通常に使用される任意の無機顔料および/または有機顔料を用いることができる。
顔料は、インクジェットインクの色目に応じて1種または2種以上を用いることができる。顔料の含有割合は、インクジェットインクの総量の0.5質量%以上、特に1質量%以上であるのが好ましく、10質量%以下、特に5質量%以下であるのが好ましい。
また有機顔料としては、例えばアゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、またはキレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、またはキノフタロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等の1種または2種以上が挙げられる。
本発明のインクジェットインクには、前記各成分に加えて、さらにバインダ樹脂その他の成分を含有させることもできる。
インクジェットインクにバインダ樹脂を含有させると、前記バインダ樹脂が、オフセットコート媒体のコーティング膜等の疎水性の表面と、顔料とのバインダとして機能するため、印刷の耐水性や耐擦過性を向上できる。また印刷の鮮明性も向上できる。
特にバインダ樹脂として、本質的に水には不溶で、かつ塩基性物質を溶解させたアルカリ水溶液に選択的に可溶であるバインダ樹脂を使用すると、印刷の耐水性をさらに向上できる。
前記アルカリ可溶のバインダ樹脂としては、例えばその分子中にカルボキシル基を有しており、そのままでは水に不溶であるが、アンモニア、有機アミン、苛性アルカリ等の塩基性物質を溶解させたアルカリ水溶液に加えるとカルボキシル基の部分が塩基性物質と反応して水溶性の塩を生成して溶解する樹脂が好ましい。
しかし40〜75質量%という多量の非プロトン性極性溶媒を含み、前記非プロトン性極性溶媒の作用によってオフセットコート媒体のコーティングを若干溶かしながらコーティング中に浸透して印刷される本発明のインクジェットインクにおいては、前記バインダ樹脂を使用しても印刷の耐水性、耐擦過性等を実用上問題のない程度まで十分に向上できる。
バインダ樹脂の含有割合は、インクジェットインクの総量の0.1質量%以上、特に0.5質量%以上であるのが好ましく、3質量%以下、特に2質量%以下であるのが好ましい。
〈塩基性物質〉
塩基性物質は、先に説明したようにインクジェットインクをアルカリ性にしてアルカリ可溶のバインダ樹脂を溶解させるとともに、インクジェットヘッドの金属部分等の腐食を防止し、なおかつ顔料の分散安定性を維持するために含有される。前記塩基性物質としてはアンモニア、有機アミン、苛性アルカリ等が挙げられ、特に有機アミンが好ましい。
〈有機酸のエチレンオキシド付加物〉
インクジェットインクに有機酸塩のエチレンオキシド付加物を含有させると、特にサーマル方式のインクジェットプリンタにおいて、前記インクジェットインクのノズルからの吐出の安定性を向上できる。
有機酸塩のエチレンオキシド付加物としては、例えばクエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、D−リンゴ酸、L−リンゴ酸等の種々のモノ〜トリカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、もしくはアンモニウム塩に、さらにエチレンオキシドを付加させた化合物が挙げられる。
で表されるクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等のクエン酸のアルカリ金属塩のエチレンオキシド付加物、およびクエン酸アンモニウムのエチレンオキシド付加物からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
前記化合物の含有割合は、インクジェットインクの総量の0.01質量%以上、特に0.05質量%以上であるのが好ましく、5質量%以下、特に3質量%以下であるのが好ましい。
〈ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル〉
インクジェットインクに式(3):
で表されるポリオキシエチレンフェニルエーテル、および式(4):
で表されるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種を含有させると、先に説明した有機酸塩のエチレンオキシド付加物の機能を補助する働きをして、インクジェットインクの吐出の安定性をさらに向上できる。
前記のうち式(3)で表されるポリオキシエチレンフェニルエーテルにおいて、式中のsが3〜28であるのが好ましいのは、sが前記範囲を外れる化合物は有機酸塩のエチレンオキシド付加物の機能を補助する効果が不十分になるおそれがあるためである。
前記式(3)のポリオキシエチレンフェニルエーテルの具体例としては、sが6である式(5):
また式(4)で表されるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルにおいて、式中のtが3〜28で、かつR1のアルキル基の炭素数が8〜10であるのが好ましいのは、tが前記範囲を外れる化合物や、R1のアルキル基の炭素数が前記範囲を外れる化合物はいずれも、有機酸塩のエチレンオキシド付加物の機能を補助する効果が不十分になるおそれがあるためである。
前記式(4)のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの具体例としては、tが25でR1のアルキル基の炭素数が8である式(6):
なお式(4)の化合物には、R1のアルキル基が、フェニル基上の、ポリオキシエチレン基からみてo位、m位およびp位に結合した3種の化合物があるが、本発明ではいずれの化合物を用いることもできる。また前記3種の化合物のうち2種以上の混合物を用いることもできる。
含有割合が前記範囲未満では、これらの化合物を含有させたことによる、先に説明したインクジェットインクの吐出を安定させる効果を補助する補助効果が不十分になるおそれがある。
なお含有割合は、式(3)(4)の化合物をいずれか単独で使用する場合は前記化合物単独での含有割合であり、2種以上を併用する場合は、併用する化合物の合計の含有割合である。
式(3)(4)の化合物は、それぞれ補助効果のメカニズムが異なっていると考えられるため、両者を併用するのが好ましい。
〈アセチレングリコール類、グリコールエーテル類〉
インクジェットインクにアセチレングリコール類および/またはグリコールエーテル類を含有させると、これらの化合物は式(3)のポリオキシエチレンフェニルエーテルおよび/または式(4)のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの補助効果をさらに補完する補完効果を有するため、インクジェットインクの吐出の安定性をさらに向上できる。
アセチレングリコール類の含有割合は、インクジェットインクの総量の0.01質量%以上、特に0.05質量%以上であるのが好ましく、5質量%以下、特に3質量%以下であるのが好ましい。
またインクジェットインクに、式(7):
で表されるアセチレングリコール類を含有させると、先に説明した補完効果に加えて、インクジェットインクの、特にオフセットコート媒体の中でも疎水性の高いグロス調のUV媒体に対する濡れ性を改善する効果を得ることもできる。
前記式(7)で表されるアセチレングリコール類としては、前記例示の各種化合物のうちサーフィノール420〔式(7)中のu、vの数が異なる複数成分の混合物からなり、u+vの平均値が1.3〕、440〔式(7)中のu、vの数が異なる複数成分の混合物からなり、u+vの平均値が3.5〕、465〔式(7)中のu、vの数が異なる複数成分の混合物からなり、u+vの平均値が10〕、485〔式(7)中のu、vの数が異なる複数成分の混合物からなり、u+vの平均値が30〕等が挙げられる。
含有割合が前記範囲未満では、前記化合物を含有させたことによる、先に説明した補完効果が不十分になるおそれがある。また前記範囲を超える場合には、前記化合物が不揮発性の液体であるためインクジェットインクが乾燥しにくくなるおそれがある。またインクジェットインクの保存安定性が低下するおそれもある。
本発明のインクジェットインクには、従来公知の種々の添加剤を含有させてもよい。前記添加剤としては、例えば防かび剤、殺生剤等が挙げられる。
また本発明のインクジェットインクには、先に説明した非プロトン性極性有機溶媒の機能を阻害しない範囲で、他の水溶性の有機溶媒を含有させることもできる。前記他の有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールが挙げられる。
〈実施例1〉
界面活性剤としては式(1)中のnが4〜16、mが2〜3の化合物の混合物の溶液であるフッ素系界面活性剤〔デュポン(株)製のゾニール(ZONYL)FS−300、有効成分:40質量%〕を用いた。
バインダ樹脂としてはアルカリ可溶性のアクリル樹脂〔BASFジャパン(株)製のジョンクリル(JONCRYL、登録商標)682〕を用い、前記アクリル樹脂をインクジェットインク中に溶解させるための塩基性物質としては2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールを用いた。
アセチレングリコール類としては日信化学工業(株)製のサーフィノール(登録商標)420を用い、殺生剤としてはアーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製のプロキセル(PROXEL)XL2を用いた。
〈実施例2〉
フッ素系界面活性剤としてのゾニールFS−300の量を0.1質量部とし、かつ超純水の量を24.1質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例3〉
フッ素系界面活性剤としてのゾニールFS−300の量を5質量部とし、かつ超純水の量を19.2質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例4〉
フッ素系界面活性剤としてのゾニールFS−300の量を0.08質量部とし、かつ超純水の量を24.1質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例5〉
フッ素系界面活性剤としてのゾニールFS−300の量を6質量部とし、かつ超純水の量を18.2質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例6〉
界面活性剤として、式(1)中のnが2〜14、mが0〜15の化合物の混合物の溶液であるフッ素系界面活性剤〔デュポン(株)製のゾニール(ZONYL)FSO、有効成分:50質量%〕1質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈比較例1〉
界面活性剤として、式(8):
CkH2k+1COONH4 (8)
で表され、式中のk=8であるものを主成分として、k=10、12であるものを若干含む混合物の溶液であるフッ素系界面活性剤〔AGCセイミケミカル(株)製のサーフロン(SURFLON)S−111N、有効成分:30質量%〕2.4質量部を用いるとともに、超純水の量を21.8質量部としたこと以外は実施例1と同様にして特許文献1のインクジェットインクを再現した。
〈比較例2〉
界面活性剤として、式(9):
〈比較例3〉
非プロトン性極性溶媒の量を20質量部、超純水の量を51.7質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製しようとしたが、ゲル化してしまった。非プロトン性極性溶媒Pと、フッ素系界面活性剤中の有効成分Fとの質量比P/F=50であった。
界面活性剤として、式(1)中のnが2〜18、mが0〜25の化合物の混合物の溶液であるフッ素系界面活性剤〔デュポン(株)製のゾニール(ZONYL)FSN、有効成分:40質量%〕1質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈高速印刷時のかすれ評価〉
実施例、比較例で調製したインクジェットインクをサーマル方式のインクジェットプリンタ〔ヒューレットパッカード社製のDeskJet(登録商標)6127〕に使用して、インク滴吐出の速度を1秒間あたりの吐出回数(周波数)で表して6.0kHz(1秒間あたり6000滴吐出)から15.0kHz(1秒間あたり15000滴吐出)まで0.6kHzずつ周波数を変化させながら、1/2インチの高さのベタ黒の印刷をした。
○:6.0kHzから15.0kHzまで全くかすれは見られなかった。
△:6.0kHzから12.0kHzまではかすれは見られなかったが、12.6kHz以上で若干のかすれが見られた。
〈再吐出時のかすれ評価〉
実施例、比較例で調製したインクジェットインクをサーマル方式のインクジェットプリンタ〔ヒューレットパッカード社製のDeskJet(登録商標)6127〕に使用し、印刷時にインク滴が吐出されない状態でインクジェットインクが保護されずにノズル外の空気に曝され続ける時間を30秒に設定して、30秒後に複数の縦線を等間隔で印刷した。解像度は300×600dpiに設定した。
○:縦線に欠けは見られなかった。かすれなし。
×:縦線に欠けが見られた。かすれあり。
〈印刷鮮明性の評価〉
実施例、比較例で調製したインクジェットインクをサーマル式のインクジェットプリンタ〔ビデオジェット(株)製のプリントメールワイドアレイ(Print Mail Wide Array)〕に使用してグロス調オフセットコート紙〔Aqueous Ni coat Hi gloss on 120# Centura Gloss Cover〕の表面に10ポイントのアルファベット+バーコードを印刷し、次いで出力3200Wのヒータで約5秒間加熱したのち印刷を観察して、下記の基準で印刷鮮明性を評価した。
○:エッジがシャープに出ている。印刷鮮明性は極めて良好。
△:鮮明性は若干劣るものの、印刷鮮明性は実用レベル。
以上の結果を表2に示す。
また比較例2の結果より、特許文献2に記載された、非プロトン性極性溶媒の含有割合が40質量%未満で、かつ式(1)以外の他のフッ素系界面活性剤を用いたインクジェットインクは乾燥しやすく、保護されずにノズル外の空気に曝され続けた後の再吐出時にかすれを生じることが判った。
これに対し実施例1〜6の結果より、非プロトン性極性溶媒の含有割合が40質量%以上、75質量%以下の範囲内で、かつ式(1)のフッ素系界面活性剤を用いた本発明のインクジェットインクは高速印刷時、および保護されずにノズル外の空気に曝され続けた後の再吐出時のいずれにおいてもかすれを生じるおそれがないことが判った。
さらに各実施例を比較すると、式(1)のnは4〜16、mは2〜3であるのが好ましいこと、非プロトン性極性溶媒Pとフッ素系界面活性剤Fとの質量比P/Fは22以上、1300以下であるのが好ましいことが判った。
Claims (4)
- 疎水性媒体に印刷するためのインクジェットインクであって、水、非プロトン性極性溶媒、着色剤、およびフッ素系界面活性剤を含み、前記非プロトン性極性溶媒の含有割合は、前記インクジェットインクの総量の40質量%以上、75質量%以下であるとともに、前記フッ素系界面活性剤は、式(1):
CnF2n+1CH2CH2O(CH2CH2O)mH (1)
[式中nは2〜16、mは0〜15の数を示す。]
で表される化合物であることを特徴とするインクジェットインク。 - 前記フッ素系界面活性剤は、前記式(1)中のnが4〜16、mが2〜3の化合物である請求項1に記載のインクジェットインク。
- 非プロトン性極性溶媒Pと、フッ素系界面活性剤Fとの質量比P/Fは22以上、1300以下である請求項1または2に記載のインクジェットインク。
- バインダ樹脂をも含み、前記バインダ樹脂は、重量平均分子量Mwが1000以上、3000以下の樹脂である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
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