JP2011225418A - 光学ガラス - Google Patents
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Abstract
【課題】レンズ表面のクモリが発生しにくく量産性に優れた光学ガラスを提供するものである。
【解決手段】質量%で、SiO2 30〜70%、Al2O3 4〜20%(ただし4%を含まず)、B2O3 15〜60%、Sb2O3 0.001〜0.1%(ただし0.1%を含まず)含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】質量%で、SiO2 30〜70%、Al2O3 4〜20%(ただし4%を含まず)、B2O3 15〜60%、Sb2O3 0.001〜0.1%(ただし0.1%を含まず)含有することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、光学ガラスに関するものである。
CD、MD、DVDその他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話機等の撮像用レンズ、光通信に使用される送受信用レンズ等のレンズとしては非球面形状のレンズが広く用いられている。レンズ用ガラス素材として種々のガラスが提案されており、例えば屈折率1.45〜2.2、アッベ数30以上の光学ガラスとして、特許文献1〜6に示すようなSiO2―B2O3系ガラスが提案されている。
この種のレンズの作製方法は例えば以下のような方法が知られている。
まず、溶融ガラスをノズルの先端から滴下して、液滴状ガラスを作製し(液滴成形)、研削、研磨、洗浄等の必要な処理を施してプリフォームガラスを作製する。または、溶融ガラスを急冷鋳造し一旦ガラスインゴットを作製し、研削、研磨、洗浄してプリフォームガラスを作製する。続いて、プリフォームガラスを加熱して軟化し、高精度な成形表面を持つ金型によって加圧成形し、金型の表面形状をガラスに転写してレンズを作製する。
このような成形方法は一般にモールドプレス成形法と呼ばれており、大量生産に適した方法として近年広く採用されている。
特開2007−169086号公報
特開2006−306635号公報
特開2004−292306号公報
特開2003−176151号公報
特開平7−149536号公報
特開2004−137145号公報
プリフォームガラスをモールドプレス成形すると、ガラス表面にクモリが生じることがある。レンズ表面のクモリは、レンズに透過する光を遮断、散乱させるため致命的な欠陥となりうる。
本発明の目的は、レンズ表面のクモリが発生しにくく量産性に優れた光学ガラスを提供するものである。
本発明者は、種々のテストを行った結果、比較的高粘性のプリフォームガラスをプレスするとクモリが生じやすいことが明らかになった。さらに調査を進めたところ、クモリの原因はガラスに清澄剤として入っているSb2O3が原因であることを突き止めた。その反面、Sb2O3を完全に削減するとガラスの清澄性の悪化が懸念される。そこで本発明者は、クモリ防止と清澄性の両立が可能な組成範囲を見出した。
即ち、本発明の光学ガラスは、質量%で、SiO2 30〜70%、Al2O3 4〜20%(ただし4%を含まず)、B2O3 15〜60%、Sb2O3 0.001%〜0.1%(ただし0.1%を含まず)含有することを特徴とする。
本発明においては、さらにSO3を0.005〜0.5質量%含有することが好ましい。
上記構成によれば、ガラスの清澄性が改善されることから、より高い泡品位を達成することができる。
本発明においては、(酸素原子のモル数の総和/陽イオンのField Strengthの総和)×100で定義されるガラスの塩基性度が11以下であることが好ましい。本発明において「Field Strength(以下F.S.と表記する)」とは下記の式1により求められる。
式1 F.S.=Z/r2
Zはイオン価数、rはイオン半径を示している。尚、本発明におけるZ、rの数値は表1の値(『科学便覧基礎偏 改訂2版(1975年 丸善株式会社発行)』に記載された値)を用いる。
Zはイオン価数、rはイオン半径を示している。尚、本発明におけるZ、rの数値は表1の値(『科学便覧基礎偏 改訂2版(1975年 丸善株式会社発行)』に記載された値)を用いる。
上記構成によれば、ガラスの還元性を示す指標である塩基性度が小さくなり、Sb2O3に起因するプレス時のクモリを効果的に抑制することが可能になる。
本発明においては、モールドプレス成形用であることが好ましい。
上記構成によれば、本発明の効果を的確に享受することができる。
本発明の光学レンズは、上記ガラスからなることを特徴とする。
本発明の光学ガラスの製造方法は、清澄剤として硫酸塩を使用することを特徴とする。
上記構成によれば、ガラスの清澄性が向上し、より泡品位に優れた光学ガラスを製造することができる。
本発明の方法においては、硫酸塩の添加量が、ガラス原料100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。
本発明の光学ガラスは、Sb2O3の含有量を制限することで、プレス時にガラス表面にクモリが生じないガラスを得ることができる。このため、レンズ表面の高い面精度が維持され、量産性に優れたガラスである。また少量のSb2O3を含有させておくことにより、高粘性のガラスであってもガラス溶融を不当に高温、長時間行うことなく清澄することが可能になる。
それゆえ本発明の光学ガラスは、CD、MD、DVDその他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話機等の撮像用レンズ、光通信に使用される送受信用レンズ等といったモールドプレス成形で得られる光学レンズ用硝材として好適である。
本発明のガラスは、質量%で、SiO2 30〜70%、B2O3 15〜60%、Al2O3 4〜20%(ただし4%を含まず)、Sb2O3 0.001〜0.1%(ただし0.1%を含まず)含有する。
上記範囲の組成であれば、屈折率ndが1.45〜2.2、好ましくは1.50〜1.8、アッベ数が30以上、好ましくは40以上の光学定数を有するガラスを容易に設計することができる。
SiO2を30質量%以上含有するSiO2―B2O3−Al2O3系ガラスのような光学ガラスには、一般的にSb2O3が清澄剤として0.1〜0.4質量%程度含まれる(例えば特許文献1〜4)。ところがプレス時にガラスが高温の金型と接触すると、ガラス中のSb2O3が還元されて析出して金型を汚染し、これがガラス表面に付着してクモリとなる。なお以下の記載において、「%」は特に断りがない限り「質量%」を意味する。
そこで本発明はSb2O3を0.1%未満に制限することによって、プレス時にガラス表面で発生するクモリを防止している。Sb2O3の上限は0.08%以下、特に0.05%以下であることが好ましい。
一方、内部に泡がなく、また白金の溶け込みによる着色のないガラスを得る観点から、Sb2O3の下限は0.001%以上に限定される。Sb2O3の下限は好ましくは0.005%以上、0.01%以上であることが好ましい。0.001%未満であると、十分な清澄の効果が得られず、ガラス中に泡が残る。また0.001%未満のSb2O3量で清澄させようとすると、溶融時間を長くしたり、溶融温度を高くしたりして泡を浮上させる方法が考えられるが、これらの方法ではガラス中に溶け込んでくる白金量が多くなり、ガラスが着色するようになる。他にも溶融容器内のガラス融液の深さを浅くして、泡の浮上時間を短くする方法が考えられるが、生産性の面から好ましくない。Sb2O3の含有量が0.001%以上であれば、清澄可能な量のガスが放出されて、溶融時間を極端に長く、或いは溶融温度を極端に高くしなくても、泡を含まず、しかも着色のないガラスを得ることが可能になる。さらにB2O3を15%以上含有していることから、高温粘度の低いガラスとなり易く、さらに泡のないガラスを得ることが容易になる。なおガラス内部の好ましい泡数は20ヶ/g以下である。さらに10ヶ/gが好ましく、特に5ヶ/g以下が好ましい。
なおSb2O3を0.1%未満とすることにより清澄力不足が懸念される場合は、溶融時間を長くする、溶融温度を高くする、溶融時のガラス融液の深さを浅くする、他の清澄剤を併用する等の手段により補完することができる。
他の清澄剤としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩の使用が効果的である。硫酸塩を使用すると、1200〜1500℃で清澄泡を放出し、効果的にガラスを清澄することができる。ただし、硫酸塩の使用量が多すぎると、プレス時にSO2ガスが発生して金型を汚染したり、過剰の清澄作用によりガラスに泡が残存したりする。硫酸塩の添加量は、ガラス原料100質量%に対して5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。また得られるガラス組成中のSO3量は、0.005〜0.5質量%、特に0.01〜0.3質量%であることが望ましい。
硫酸塩以外に、SnO2、CeO2の使用も考えられる。ただしSnO2は、Sb2O3と同様にプレス時のクモリの原因となる恐れがあるため、多量の添加は避けるべきである。SnO2の含有量は0.1%未満であることが好ましい。またCeO2は着色する恐れがあるので、やはり多量の添加は避けるべきである。CeO2の含有量は0.1%未満であることが好ましい。さらにSb2O3、SnO2及びCeO2の合量は、0.1%未満で0.001%以上であることが好ましい。なお清澄剤として広く知られているAs2O3は有害であるので、実質的に含有しないことが望ましい。ここで実質的に含有しないとは0.00001%以下であることを意味する。
本発明の光学ガラスは、(酸素原子のモル数の総和/陽イオンのField Strengthの総和)×100で定義されるガラスの塩基性度が11以下であることが好ましい。塩基性度が11を超えると、ガラス中のSbイオンの還元性が強くなり、プレス時にSbが容易に析出してクモリが発生しやすくなる。
ガラスの塩基性度はガラス中の酸素の電子がガラス中の陽イオンにどのくらい引きつけられているかを示す指標になる。塩基性度の高いガラスではガラス中の陽イオンによる酸素の電子の引きつけが弱い。したがって、塩基性度の高いガラスは、電子を求める傾向の強い陽イオン(金型成分)と接した際、塩基性度の低いガラスに比べガラス中の陽イオンが還元されやすい。
金型にWCが使われる場合、ガラスの塩基性度が11以下、好ましくは9.5以下であればSbイオンが還元しにくくなると考えられる。ガラスの塩基性度が11を超えるとガラス中のSbが還元されやすく、Sb2O3が0.1%未満であってもガラス表面にクモリを生じ、量産性が悪化する可能性がある。
塩基性度の変化は主としてF.S.の影響が大きい。つまりF.S.が大きい成分を増加させると塩基性度が低下する傾向があり、逆にF.S.が小さい成分を増加させると塩基性度が上昇する傾向がある。このためガラスの塩基性度を下げようとする場合、例えば比較的F.S.の大きいSiO2、B2O3、WO3等の組成比を増加させるか、または比較的F.S.の小さいLi2O、Na2O、SrO、BaO等を減少させればよい。
本発明のガラスは、モールドプレス成形が採用可能な低軟化点ガラスである場合に、その効果をより一層享受できる。低軟化点ガラスとは具体的に、ガラス転移点Tgが700℃以下のガラスを指す。成型温度が高くなると、ガラス成分が揮発しやすくなりプレス成型面に凹凸を生じさせたり、金型の劣化を引き起こしたりするため、より好ましいガラス転移点は650℃以下であり、さらに600℃以下が好ましく、特に580℃以下が好ましい。
以下に、ガラスの各成分の含有量及びその範囲に限定した理由を示す。なおSb2O3やその他の清澄剤については既述の通りであり、以下の説明では割愛する。
SiO2は、ガラスの骨格を構成する成分であり、B2O3に次いでアッベ数を高める効果の大きい成分であり、耐候性を向上させる成分でもある。SiO2の含有量が多くなると高温粘性が高くなる。また屈折率が低く、軟化点が高くなる傾向にある。SiO2の含有量が少なくなると耐酸性や耐候性が悪化する傾向がある。SiO2の含有量は30〜70%であり、好ましくは38〜62%、より好ましくは42〜60%、さらに好ましくは48〜60%である。
B2O3は、ガラスの高温粘性を下げる効果が顕著であり、高温粘度の低いガラスを得ることを容易にする。B2O3の含有量が少なすぎると清澄性が著しく悪化する。またアッベ数を30以上の値にすることが困難となる。B2O3の含有量が多すぎると耐水性、耐酸性が低下する傾向にある。B2O3の含有量は15〜60%であり、好ましくは20〜40%、より好ましくは20〜30%、さらに好ましくは20〜25%、特に好ましくは20〜23%である。
Al2O3は、SiO2と共にガラスの骨格を構成する成分であり、耐候性を向上させる効果がある。また、ガラス中のアルカリ成分が水に溶出することを抑制する顕著な効果を有する。Al2O3の含有量が多すぎるとガラスの高温粘性が高くなり、清澄性が悪化する。また屈折率が低くなる傾向や、軟化点が高くなる傾向がある。Al2O3の含有量が少なすぎると化学的耐久性が悪化する。またガラスの安定性が悪化する。Al2O3の含有量の範囲は4〜20%(ただし4%を含まず)であり、好ましくは5〜15%、さらに好ましくは8〜13%である。
本発明に係るガラスは、上記した以外の成分も適宜添加することができる。
Li2O、Na2OおよびK2Oは、溶融温度や軟化点を低下させ、作業性を高める効果を有する。その好ましい合量は0〜20%、より好ましい合量は1〜18%、さらに好ましい合量は8〜18%である。Li2O、Na2OおよびK2O合量が多くなると、洗浄工程において表面変質が変質しやすい傾向にある。また、液相温度が上昇して、作業範囲が狭くなり、量産性に悪影響を及ぼす傾向もある。一方、これらの合量が少なくなると軟化点が高くなり、作業性が損なわれる傾向にある。
Na2Oはガラスの高温粘性を低下させて清澄性を向上させる成分である。また溶融温度や軟化点を低下させ、作業性を高める効果を有する。ただし、多すぎるとガラス溶融時のB2O3‐Na2Oで形成される揮発物が多くなり、脈理の生成を助長する傾向にある。好ましいNa2Oの含有量は、0〜12%、特に0.1〜10%が望ましい。
Li2Oは、ガラスの高温粘性を下げて清澄性を上げる成分である。また軟化点を低下させ、作業性を高める効果があるため、必須成分として使用する。好ましいLi2Oの含有量の範囲は0〜12%、より好ましい範囲は0.1〜10%である。12%を越えると分相性が強く、液相温度が高くなって作業性が悪くなる。一方、少ないと溶融温度が高くなる、清澄性が悪化する傾向がある。
K2Oは、Li2OやNa2Oと同様にガラスの高温粘性を下げて清澄性を上げる成分であり、また溶融温度や軟化点を低下させ、作業性を高める効果を有する。ただし、多すぎるとガラス溶融時のB2O3‐K2Oで形成される揮発物が多くなり、脈理の生成を助長する傾向にある。K2Oの含有量は12%以下、特に10%以下であることが望ましい。
MgO、SrO、BaO、CaO及びZnOは、ガラスの高温粘性を下げるのに効果的である。また屈折率を高める成分でもある。その合量が多すぎると、耐候性が低下しレンズ表面のクモリを生じやすくなる。その好ましい合量は0〜20%、さらに0〜10%が好ましい。
CaOは、アルカリ金属酸化物に次いで軟化点を下げる効果が大きいため、アルカリ金属成分と置換することで耐候性や耐酸性を高めることのできる成分である。また、屈折率を高める効果を有する。ただし、多量に含有すると、長期間にわたって高温多湿環境下に曝された場合、ガラス表面が変質しやすい。好ましいCaOの含有量の範囲は0〜15%、より好ましい範囲は0.1〜10%である。
BaOは、耐候性を高め、屈折率を高める成分であるとともに、ガラスの液相温度を低下させて、作業性を向上させる成分である。ただし、多量に含有すると、長期間にわたって高温多湿環境下に曝された場合ガラス表面が変質しやすい。好ましいBaOの含有量の範囲は0〜20%、より好ましい範囲は0.1〜10%である。
SrOは、BaOと同様に耐候性を高め、屈折率を高める成分であるとともに、ガラスの液相温度を低下させて、作業性を向上させる成分である。ただし、多量に含有すると、長期間にわたって高温多湿環境下に曝された場合ガラス表面が変質しやすい。好ましいSrOの含有量の範囲は0〜20%、より好ましい範囲は0.1〜10%である。
MgOは、耐候性を高めるとともに、屈折率を高めるために10%まで添加することができる。しかし、含有量が多いと分相する傾向が強く、また液相温度を高める傾向がある。MgOの含有量の好ましい範囲は10%以下、より好ましい範囲は8%以下、さらに好ましい範囲は5%以下である。
ZnOは、屈折率を高めるとともに、耐候性を向上させるため添加する成分であり、5%まで含有することができる。しかし、含有量が多くなると、アッベ数が低下する傾向があるとともに、失透傾向も強くなり、均質なガラスが得られにくくなるため、その含有量は3%以下であることが望ましい。
ZrO2は、屈折率を高めるとともに、耐候性を向上させるために添加する成分である。しかし、含有量が多くなるとアッベ数を低下させる傾向があるとともに、失透傾向も強くなり、均質なガラスが得られなくなるため3%以下であることが好ましく、さらに0.1%未満が好ましい。
La2O3は、アッベ数を低下させることなく屈折率を高める効果がある。しかし、過剰に含有すると、失透する傾向にあるため、含有量は2.5%以下であることが好ましく、1%未満であることがより好ましい。また、モールドプレス成形を行なう場合、含有量が多いと金型と融着する傾向もある。
Bi2O3は、屈折率を高めるために添加することができる。ただし、含有量が多くなるとガラスが着色する傾向があるため5%以下であることが好ましく、0.1%未満がより好ましい。
P2O5は、液相温度を低下させるために添加する成分である。ただし、含有量が多くなるとガラスが分相しやすくなるとともに、洗浄工程で表面がくもる傾向にあるため、その含有量は5%以下であることが望ましく、さらに0.1%未満であることが望ましい。
TiO2、Nb2O5は、屈折率を高めるために有効な成分であるが、一方でアッベ数の低下を著しく引き起こすため、その含有量はTiO2、Nb2O5ともにそれぞれ0.3%以下とすることが好ましく、さらに0.1%未満であることが好ましい。
PbOは、屈折率を高めるために有効な成分であるが、環境負荷物質であるため実質的に含有しないことが好ましい。
F成分は環境に対する影響を考慮し、実質的に含有しない方が好ましい。
次に、本発明の光学ガラスを用いたレンズ等の光学部品の製造方法について説明する。
まず、所望の組成を有するように調合したガラス原料を溶融容器内で溶融する。
清澄剤としてSb2O3や硫酸塩を使用するという観点から、ガラスの溶融温度は1150℃以上であることが好ましい。さらに1200℃以上が好ましく、特に1250℃以上であることが好ましい。なお溶融容器を構成する白金金属からのPt溶け込みによるガラス着色を防止する観点から、溶融温度は1450℃以下が好ましく、さらには1400℃以下が好ましく、特に1350℃以下が好ましく、最適には1300℃以下が好ましい。
また溶融時間が短すぎると、十分に清澄できない可能性があるので、溶融時間は2時間以上であることが好ましく、さらに3時間以上が好ましい。ただし溶融容器からのPt溶け込みによるガラス着色を防止する観点から、溶融時間は8時間以内、特に5時間以内であることが好ましい。
また溶融容器内のガラス融液の深さは、浅すぎると生産性が悪くなるため、30mm以上、特に50mm以上であることが好ましい。一方、深すぎると泡の浮上に時間がかかるため、1m以下、好ましくは0.5m以下が好ましい。
続いて、溶融ガラスをモールドプレス可能な大きさのプリフォームに成形し、プリフォームを加熱軟化してモールドプレスして所望の形状に加工した後、洗浄、乾燥して光学部品を作製する。
プリフォームの成形方法としては、板状や塊状のガラス片から所定の形状に切り出して研磨、洗浄して作製してもよいが、連続的に所定量ずつ滴下してから研削、研磨、洗浄する液滴成形法を用いると、容易に成形できるため好ましい。
以下、本発明の光学ガラスを実施例に基づいて詳細に説明する。
各試料は、次のようにして作製した。
表2〜9に記載の組成となるように調合したガラス原料(炭酸塩、酸化物)を、ガラス融液の深さが50mmになるよう白金ルツボに入れ、1400℃で3時間溶融した。なお本実施例ではNa2O原料としてはソーダ灰を使用した。次に、溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、冷却固化した後、アニールを行って試料を作製した。このようにして得られた試料について、ガラス転移点Tg、1300℃におけるガラスの粘度、JOGIS耐水性試験、泡数、クモリ発生確率、Sb析出レベルを評価した。また塩基性度を算出した。結果を表2〜9に示す。
表から明らかなように、本発明の実施例であるNo.2、3、7、8、12、16、17、20、21、24、27、28、30及び32の各試料は、ガラス試料内部の泡数が0〜10ヶ/gであり、クモリ発生確率が0〜7%であった。
ガラス転移点Tgは熱膨張曲線における低温度域の直線と高温度域の直線の交点より求めた。
1300℃におけるガラスの粘度は白金引き上げ法で測定した。
泡数は、1300℃にてリメルトした試料(30×30×10mm)表面を鏡面研磨し、試料中の泡を数えた。数えた泡と試料の重さよりグラムあたりの泡数を算出した。
クモリ発生確率は次のようにして評価した。まずPt−IrがコートされたWC板の上にガラス試料を載置し、Tg+25℃のN2雰囲気にて1分間熱処理する作業を100回行った。その後、ガラス表面のクモリの有無を顕微鏡で観察した。このようにして100個の試料を評価し、クモリ発生確率を求めた。
Sb析出レベルは、WC板上にφ5×5mmのガラス試料を載置し、800℃のN2雰囲気にて15分間熱処理を行った後、WC板のSb量をEPMA(日本電子製、JXA−8900M)のWDXにて面分析を行った。さらにWDXの面分析で得られた総信号量を測定面積で割った平均値を求めた。なおWDXの面分析は電流3×10−8Aで行った。
次に硫酸塩の清澄効果を確認するために、Na2O原料の一部を硫酸塩に置換した試料を用意し、上記と同様の方法を用いて泡数を評価した。具体的にはNo.8及びNo.32のNa2O原料として、硫酸ナトリウム(Na2SO4)を0.05%、0.1%、残部をソーダ灰として試料を作製し、評価に供した。
その結果、表10に示すように、硫酸塩を用いた試料の泡数は何れも0ヶ/gであった。また、ガラス中のSO3は0.005%以上であった。
なおガラス中のSO3量は、ガラスをアルカリ融解し、その液をイオン交換後、イオンクロマトグラフィにて測定を行った。
本発明の光学ガラスは、モールドプレスしても表面にクモリを生じにくく、かつ内部に泡がないことから、量産性に優れている。よってCD、DVD等の光ピックアップレンズや、ビデオカメラ、デジタルカメラ等の光学レンズに好適に使用できる。
Claims (7)
- 質量%で、SiO2 30〜70%、Al2O3 4〜20%(ただし4%を含まず)、B2O3 15〜60%、Sb2O3 0.001〜0.1%(ただし0.1%を含まず)含有することを特徴とする光学ガラス。
- さらにSO3を0.005〜0.5質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
- (酸素原子のモル数の総和/陽イオンのField Strengthの総和)×100で定義されるガラスの塩基性度が11以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学ガラス。
- モールドプレス成形用であることを特徴とする請求項1〜3に記載の光学ガラス。
- 請求項1〜4の何れかに記載の光学ガラスからなることを特徴とする光学レンズ。
- 請求項1〜4の光学ガラスを製造する方法であって、清澄剤として硫酸塩を使用することを特徴とする光学ガラスの製造方法。
- 硫酸塩の添加量が、ガラス原料100質量%に対して5質量%以下であることを特徴とする請求項6に記載の光学ガラスの製造方法。
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